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特許7377001作業者転倒検知システム及び作業者位置検知システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-31
(45)【発行日】2023-11-09
(54)【発明の名称】作業者転倒検知システム及び作業者位置検知システム
(51)【国際特許分類】
   G08B 21/02 20060101AFI20231101BHJP
   G08B 25/04 20060101ALI20231101BHJP
   A61B 5/107 20060101ALI20231101BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
G08B21/02
G08B25/04 K
A61B5/107 300
A61B5/11 200
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019063842
(22)【出願日】2019-03-28
(65)【公開番号】P2020166348
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000242633
【氏名又は名称】北陸電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004059
【氏名又は名称】弁理士法人西浦特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100091443
【弁理士】
【氏名又は名称】西浦 ▲嗣▼晴
(74)【代理人】
【識別番号】100130720
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼見 良貴
(74)【代理人】
【識別番号】100130432
【弁理士】
【氏名又は名称】出山 匡
(72)【発明者】
【氏名】古谷 将吾
(72)【発明者】
【氏名】澤田 拓哉
【審査官】吉村 伊佐雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-222355(JP,A)
【文献】特開2010-061418(JP,A)
【文献】特開2018-000230(JP,A)
【文献】特開2016-177401(JP,A)
【文献】特開2007-279837(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0161915(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0010380(US,A1)
【文献】特開2013-131159(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B5/06-5/22
G08B19/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者が転倒しているか否かを判定する作業者転倒検知システムであって、
前記作業者に装着された三軸加速度センサと、
前記三軸加速度センサが検知する三軸方向成分の値から重力方向に対する前記三軸加速度センサの三軸の傾き方向を決定する傾き方向決定部と、
前記三軸の傾き方向と前記作業者の姿勢との関係を対応付けた姿勢データを予め記憶する姿勢データ記憶部と、
前記傾き方向決定部が決定した前記三軸の傾き方向と前記姿勢データとに基づいて、前記作業者の姿勢を判定する姿勢判定部と、
前記姿勢判定部の判定結果に基づいて、前記作業者が転倒しているか否かを判定する転倒判定部とからなり、
前記転倒判定部は、前記姿勢判定部が予め定めたサンプリング周期で予め定めた回数判定した前記作業者の姿勢のうち、予め定めた転倒と判断できる姿勢の判定結果が一番多いときに、前記作業者が転倒していると判断するように構成されている作業者転倒検知システム。
【請求項2】
前記転倒判定部が、予め定めた待機回数または待機期間、前記作業者が転倒していると判断し続けている場合に、警報信号を発生するように構成されている請求項1に記載の作業者転倒検知システム。
【請求項3】
前記三軸加速度センサが検知する三軸方向成分の変化量から前記作業者が動いたか否かを前記姿勢判定部の判定動作と同期して予め定めた判定基準に基づいて判定する動き判定部をさらに備え、
前記動き判定部が、前記作業者が動いていないと判定していることを前提として、前記転倒判定部が、予め定めた待機回数または待機期間、前記作業者が転倒していると判断し続けている場合に前記警報信号を発生するように構成されている請求項に記載の作業者転倒検知システム。
【請求項4】
前記動き判定部の前記予め定めた判定基準は、前記変化量が予め定めた閾値以上あるときを前記作業者が動いたと仮判定し、該仮判定が判定された回数が、前記予め定めた回数中で予め定めた規定回数以上である場合に、前記作業者が動いていると判定するように定められている請求項3に記載の作業者転倒検知システム。
【請求項5】
前記作業者転倒検知システムは、前記作業者のヘルメットに装着されており、
前記警報信号に基づいて警報音を発生する警報音発生器が前記ヘルメットに装着されており、
前記転倒判定部が前記警報信号を発生すると、前記動き判定部の前記閾値が、前記警報音が原因となって発生する振動を検知しないレベルに変更されることを特徴とする請求項4に記載の作業者転倒検知システム。
【請求項6】
1以上の作業者が移動する移動領域内の予め定めた複数の設置位置にそれぞれ設置されて、ビーコンIDを含むビーコン信号を発生する複数のビーコン信号発生器と、
前記1以上の作業者に装着されて1以上の前記ビーコン信号を受信し、受信した1以上の前記ビーコン信号の電波強度から位置決定用のビーコン信号を定めて該ビーコン信号発生器の前記ビーコンIDを位置決定用のビーコンIDとして決定して保存するビーコンID決定保存部と、前記位置決定用のビーコンIDと自身を特定する端末IDを含む位置決定用情報を発信する発信部を有する1以上の通信端末器と、
前記1以上の通信端末器が、それぞれ決定した前記位置決定用のビーコンID及び前記端末IDと、前記移動領域内の前記予め定めた複数の設置位置の情報に基づいて、前記1以上の作業者の前記移動領域内における位置を決定する位置決定部とを備えた作業者位置検知システムであって、
前記通信端末器には、前記作業者に装着された三軸加速度センサと、前記三軸加速度センサが検知する三軸方向成分の値から重力方向に対する前記三軸加速度センサの三軸の傾き方向を決定する傾き方向決定部と、前記三軸の傾き方向と前記作業者の姿勢との関係を対応付けた姿勢データを予め記憶する姿勢データ記憶部と、前記傾き方向決定部が決定した前記三軸の傾き方向と前記姿勢データとに基づいて、前記作業者の姿勢を判定する姿勢判定部と、前記姿勢判定部の判定結果に基づいて、前記作業者が転倒しているか否かを判定する転倒判定部とからなる作業者転倒検知システムがさらに設けられており、
前記転倒判定部は、前記姿勢判定部が予め定めたサンプリング周期で予め定めた回数判定した前記作業者の姿勢のうち、予め定めた転倒と判断できる姿勢の判定結果が一番多いときに、前記作業者が転倒していると判断するように構成されており、
前記通信端末器の前記発信部は、前記位置決定用情報と一緒に前記作業者転倒検知システムが判定した判定結果の情報を前記位置決定部に送信するように構成されており、
前記位置決定部は、前記判定結果が前記作業者が転倒していることを示しているときに、前記作業者の位置情報と一緒に前記作業者が転倒していることを知らせる警報を発生する警報発生部をさらに備えていることを特徴とする作業者位置検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業者が転倒しているか否かを判定する作業者転倒検知システム及び作業者転倒検知システムを備えた作業者位置検知システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ロボットや製造機械の導入により倉庫、工場等の作業現場において、実際に働いている作業者の数が減っている。そのため作業者が転倒したときに、誰もそのことに気づかないと、作業者の命にかかわる危険性がある。そこで、従来から、人の転倒を検知し、報知する転倒検知システムの開発が行われている。
【0003】
例えば、特開2016-177401号公報(特許文献1)では、加速度センサが出力する加速度データから所定基準値(閾値)を超える加速度ピークを検出し、該加速度ピークに基づいて、人の転倒を検知している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-177401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のシステムの場合、加速度データが閾値を超えたかを判断した上で、さらに、加速度ピークに基づいて転倒を検知するが、一度の転倒検知だけで結論を出すと、誤判定をする可能性が高くなる。また、加速度ピークで転倒を検知するため、閾値を超える大きな加速度が生じないと転倒を検知できない。そのため、閾値の設定によっては、閾値を超えない程度の加速度しか生じないまま倒れた状態になってしまっているような場合等に転倒を検知することができないことがある。
【0006】
本発明の目的は、従来よりも高い精度で、作業者の転倒を判定することが可能な作業者転倒検知システム及び作業者位置検知システムを提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、転倒の誤判定が少ない作業者転倒検知システム及び作業者位置検知システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、作業者が転倒しているか否かを判定する作業者転倒検知システムに関するものである。本発明の作業者転倒検知システムは、作業者に装着された三軸加速度センサと、三軸加速度センサが検知する三軸方向成分の値から重力方向に対する三軸加速度センサの三軸の傾き方向を決定する傾き方向決定部と、三軸の傾き方向と作業者の姿勢との関係を対応付けた姿勢データを予め記憶する姿勢データ記憶部と、傾き方向決定部が決定した三軸の傾き方向と姿勢データとに基づいて、作業者の姿勢を判定する姿勢判定部と、姿勢判定部の判定結果に基づいて、作業者が転倒しているか否かを判定する転倒判定部とからなる。
【0009】
作業者転倒検知システムは、例えば、上記構成要素が1つの携帯端末装置にまとめられていてもよい。また、作業者に装着する三軸加速度センサと、その他の構成要素を備え、三軸加速度センサからの信号を受信して転倒を判定する管理サーバのように、各構成要素が分離して存在していてもよいのはもちろんである。
【0010】
なお、三軸加速度センサは、作業者に直接装着してもよいし、作業者が装着するヘルメットやベルトに装着してもよい。
【0011】
本発明によれば、姿勢判定部が、三軸加速度センサから得られた三軸の傾き方向と、三軸の傾き方向と作業者の姿勢との関係を対応付けた姿勢データとから作業者の姿勢を判定することで、常時、作業者の姿勢を監視する。そして、本発明では、姿勢判定部で判定する判定結果のうち、一部を、転倒と判断できる姿勢(以下、「転倒姿勢」)であるとして定めておくことで、作業者が転倒している可能性があることを検知する。ただし、転倒判定部は、一度の転倒姿勢になったことの判定結果だけで作業者が転倒したと判定すると、誤判定になる可能性が高いため、姿勢判定部の判定結果に基づいて、作業者が転倒しているか否かを判定する。したがって、本発明によれば、三軸加速度センサの出力に基づいて、従来よりも高い精度で転倒を判定することが可能である。
【0012】
転倒判定部は、姿勢判定部が予め定めたサンプリング周期で予め定めた回数判定した作業者の姿勢のうち、予め定めた転倒と判断できる姿勢の判定結果が一番多いときに、作業者が転倒していると判断するように構成されていてもよい。このようにすると複数回の判定結果のうち、最も多い判定結果で転倒か否かが判定されるため、判定回数を多くして、判定精度を高めることができる。
【0013】
作業者が転倒したと判定した場合、本発明の作業者転倒検知システムは警報信号を発生する。警報信号は直ちに発生してもよいが、予め定めた待機回数または待機期間、作業者が転倒していると判断し続けている場合に、警報信号を発生するようにしてもよい。このようにすれば警報信号を発生する前に作業者が動いて転倒してない姿勢に戻った場合に、警報信号を誤って発生することを防止できる。
【0014】
なお、警報信号に基づいて、何を行うかは任意である。例えば、転倒していると判断された作業者の周囲にいる人に対して、転倒の事実を知らしめるため、警報音を出すようにしてもよい。また、遠隔地で監視を行う管理サーバが存在する場合には、警報信号を受信したら転倒したと判断された作業者の近くにいる他の作業者に対して、救護を指示することも可能である。
【0015】
本発明の作業者転倒検知システムは、三軸加速度センサが検知する三軸方向成分の変化量から作業者が動いたか否かを姿勢判定部の判定動作と同期して予め定めた判定基準に基づいて判定する動き判定部をさらに備えていてもよい。そして、動き判定部が、作業者が動いていないと判定していることを前提として、転倒判定部が、予め定めた待機回数または待機期間、作業者が転倒していると判断し続けている場合に警報信号を発生するように構成されていてもよい。このようにすれば、転倒姿勢で、静止状態にあることがわかるため、確実に転倒を疑わせる状態にあると判定でき、さらに誤報を減らすことができる。
【0016】
なお、動き判定部の予め定めた判定基準は、変化量が予め定めた閾値以上あるときを作業者が動いたと仮判定し、該仮判定が判定された回数が、予め定めた回数中で予め定めた規定回数以上である場合に、作業者が動いていると判定するように定めることができる。このようにすると動き判定部の判定が、転倒判定部の判定の前提となるため、転倒判定部の判定結果の信憑性を高めることができる。
【0017】
作業者転倒検知システムが、作業者のヘルメットに装着されるものであり、警報信号に基づいて警報音を発生する警報音発生器がヘルメットに装着されている場合には、転倒判定部が警報信号を発生すると、動き判定部の閾値が、警報音が原因となって発生する振動を検知しないレベルに変更されることが好ましい。このようにすれば、警報音による振動を検知したことで、作業者が動いている(意識がある)と誤判断されないようにすることができる。
【0018】
本発明の作業者転倒検知システムは、移動領域内における1以上の作業者の位置を決定する作業者位置検知システムに組み込むことも可能である。
【0019】
作業者位置検知システムは、1以上の作業者が移動する移動領域内の予め定めた複数の設置位置にそれぞれ設置されて、ビーコンIDを含むビーコン信号を発生する複数のビーコン信号発生器と、1以上の作業者に装着されて1以上のビーコン信号を受信し、受信した1以上のビーコン信号の電波強度から位置決定用のビーコン信号を定めて該ビーコン信号発生器のビーコンIDを位置決定用のビーコンIDとして決定して保存するビーコンID決定保存部と、位置決定用のビーコンIDと自身を特定する端末IDを含む位置決定用情報を発信する発信部を有する1以上の通信端末器と、1以上の通信端末器が、それぞれ決定した位置決定用のビーコンID及び端末IDと、移動領域内の予め定めた複数の設置位置の情報に基づいて、1以上の作業者の移動領域内における位置を決定する位置決定部とを備えており、通信端末器に作業者転倒検知システムを設けることができる。
【0020】
そして、通信端末器の発信部は、位置決定情報と一緒に作業者転倒検知システムが判定した判定結果の情報を位置決定部に送信するように構成されている。位置決定部は、判定結果が作業者が転倒していることを示しているときに、作業者の位置情報と一緒に作業者が転倒していることを知らせる警報を発生する警報発生部をさらに備えている。
【0021】
このようにすれば、作業者が転倒していることだけでなく、作業者が転倒している位置も合わせて知らせることができるため、転倒した作業者の救護に出向いたり、救護を向かわせることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】作業者の位置及び転倒検知システムの概念図である。
図2】実際のビーコン信号発生器の配置状態の一例を示す図である。
図3】通信端末器5の具体的な内部構成の一例を示すブロック図である。
図4図2に示した実際の配置状態において、作業者の位置を決定する作業者位置検知システムの主要部の構成を示すブロック図である。
図5】(A)~(C)は、三軸加速度センサ57aの出力値の軽量化処理の一例である。
図6】(A)~(C)は、傾き方向決定部57cが決定する三軸の傾き方向の一例である。
図7】三軸加速度センサ57aを中心にして想定される球体と、その球体の表面を56分割した仮想領域を示す図である。
図8】三軸加速度センサ57aの加速度値に基づく姿勢番号の変換表である。
図9】(A)及び(B)は、作業者の姿勢と、姿勢番号の関係性を示す図である。
図10】作業者Wの転倒を検知するまでの処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明の作業者転倒検知システム及び作業者位置検知システムの実施の形態を詳細に説明する。
【0024】
<全体構成>
図1(A)は、作業者転倒検知システム及び作業者位置検知システムを備えた本実施の形態の作業者の位置及び転倒検知システム1の全体構成を示すブロック図であり、図1(B)は本実施の形態を実際に実施する場合のシステムの概念図である。図2は、実際のビーコン信号発生器の配置状態の一例を示す図であり、図3は通信端末器5の具体的な内部構成の一例を示すブロック図であり、図4図2に示した実際の配置状態において、作業者の位置を決定する作業者位置検知システムの主要部の構成を示すブロック図である。
【0025】
本実施の形態では、1以上の作業者が移動する移動領域内における1以上の作業者の位置を検知する作業者位置検知システム1Bと、作業者が転倒していることを検知すると危険姿勢検知情報を発生する作業者転倒検知システム1Aと、警報発生装置1Cを備えている。作業者の位置及び転倒検知システム1は、作業者が転倒していることを作業者転倒検知システム1Aが検知すると、警報発生装置1Cに警報信号を発生させる。警報発生装置1Cは、例えば、作業者位置検知システム1Bと一緒に用いられる作業者の作業者転倒検知システムの警報音発生器または作業者のヘルメットに装着した警報音発生器で警報を発生する。
【0026】
<作業者位置検知システム>
図1(B)に示すように、このシステム1は、作業者Wが移動する移動領域MA内の予め定めた位置に設置された複数のビーコン信号発生器3a,3b,3c,3dと、作業者Wが装着する通信端末器5と、通信端末器5と電気通信回線NWで接続された管理サーバ7(位置決定部70)とから構成されており、移動領域MA内のいずれの位置に作業者Wが存在するのか、決定するシステムである。図1(B)には、移動領域MA内にある4つの区域MA1~MA4の4区域に1つのビーコン信号発生器3a,3b,3c,3dを配置しているように表示しているが、実際は、図2に示すように、1つの区域内に複数のビーコン信号発生器101~10N(Nは正の整数)を所定の間隔を開けて配置している。
【0027】
図2において、WA及びWBは作業者であり、5A及び5Bは各作業者が携帯する通信端末器である。複数のビーコン信号発生器101~10Nは、作業者の移動を妨げず、且つ移動領域に存在する物体の影響を避けるために、例えば移動領域内の天井に取り付けられるのが好ましい。図2に示すように、各ビーコン信号発生器101、102・・・108は、相互に所定の距離を空けてマトリクス状に配置される。各ビーコン信号発生器101、102・・・108は予め定められた電波強度で、固有のID(識別子)を含むビーコン信号を下方に向けて発する。
【0028】
複数の通信端末器5A~5Nは、複数のビーコン信号発生器101~10Nの発する各ビーコン信号を無指向性アンテナにより受信し、受信した結果をデータに変換して無線通信により管理サーバ7内の位置決定部70に送信する。なお通信端末器5A~5Nが一時データ記憶部を備えていれば、通信端末器は測定データを全て一時データ記憶部に記憶しておき、後からデータを位置決定部70に送信するようにしてもよいのは勿論である。
【0029】
図3は、通信端末器5の具体的な内部構成の一例を示している。通信端末器5は、作業者Wがそれぞれ装着するものであり、ビーコン信号発生器3a,3b,3c,3d(101~10N)からのビーコン信号を受信する受信部51と、受信した1以上のビーコン信号の電波強度から位置決定用のビーコン信号を定めて該ビーコン信号発生器3のビーコンIDを位置決定用のビーコンIDとして決定するビーコンID決定部53と、位置決定用のビーコンIDと自身を特定する端末IDを含む位置決定用情報を発信する発信部55を有する。通信端末器5はさらに作業者転倒検知システム57を備えているが、これについては後述する。本実施の形態では、作業者Wがかぶるヘルメットの後頭部の外側に装着されている。
【0030】
図4に示すように、実際は、複数の通信端末器5A~5Nが、ビーコンID決定保存部54A~54Nを含むビーコンID決定部53A~53Nと発信部55A~55Nを内蔵している。複数の通信端末器5A~5Nは、複数の作業者WA~WNのそれぞれに1個ずつ装着されて、複数のビーコン信号発生器101~10Nの発する各ビーコン信号を無指向性アンテナにより受信し、受信した結果を内蔵の各ビーコンID決定部53A~53Nで処理する。図2では、移動体WA、WBがそれぞれ通信端末器5A、5Bを装着している。
【0031】
各通信端末器5A~5Nは、受信部51A~51Nと、ビーコンID決定保存部54A~54Nを含むビーコンID決定部53A~53Nと発信部55A~55Nとを備えている。ビーコンID決定保存部54A~54Nは、所定の判定周期(具体的には例えば1秒)で、受信した1以上のビーコン信号の電波強度から位置決定用のビーコン信号を決定して該位置決定用のビーコン信号を発生するビーコン信号発生器のビーコンIDを位置決定用のビーコンIDとして決定して保存する。発信部55A~55Nは、位置決定用のビーコンIDと自身を特定する端末IDを含む位置決定用情報を位置決定部70に送信する。
【0032】
位置決定部70は、各通信端末器5A~5Nから周期的に送信される位置決定用のビーコンIDと端末IDと、各ビーコン信号発生器101~10Nの移動領域内における予め定めた複数の設置位置の情報(移動領域内におけるビーコン信号発生器の設置位置を地図データとして記憶した情報に相当)とに基づいて、所定の決定周期(具体的には例えば5秒)で、各移動体WA・・・の移動領域内における位置を決定する。なお本実施の形態において、電波強度は、直接的に位置の決定に利用されるものではなく、位置決定用のビーコンIDの更新の条件判断に利用されるものであり、電波強度によって詳細な現在位置を決定するものではない。
【0033】
なお本実施の形態では、どのビーコン信号発生器の電波が届く範囲内に作業者(通信端末器)が存在するか否かを現在位置の決定とする。したがってビーコン信号発生器からどの程度の距離の位置に作業者(通信端末器)がいるかまでは、決定しない。したがって位置決定に要する演算が複雑になることはない。
【0034】
そして本実施の形態では、ビーコンID決定部53A~53NのビーコンID決定保存部54A~54Nが、位置決定用のビーコンIDの決定に採用した1つのビーコン信号の前回の電波強度と今回の電波強度との強度差が、予め定めた限界閾値以下になるまでは、位置決定用のビーコンIDの更新をしない。ビーコン信号の電波強度は、ビーコン信号発生器に近い領域では、電波強度(RSSI)の変化率(強度差)が大きく、ビーコン信号発生器から離れるほど電波強度(RSSI)の強度差(変化率)が小さくなる。そこでビーコンID決定保存部54A~54Nは、位置決定用のビーコンIDの決定に採用した1つのビーコン信号の前回の電波強度と今回の電波強度との強度差が、予め定めた限界閾値以下になるまで(見方を変えると、前回の位置決定用のビーコンIDの決定に用いたビーコン信号発生器から通信端末器がある程度離れるまで)、位置決定用のビーコンIDの更新をしない。このようにすると、作業者WA~WNが複数のビーコン信号の出力範囲の境界領域に入った場合でも、前回決定した位置決定用のビーコンIDが保持される。そして前回の位置決定用のビーコンIDの決定に用いたビーコン信号発生器から作業者(通信端末器)がある程度離れたことを電波強度の強度差により検知すると、位置決定用のビーコンIDの更新をすることになる。位置決定部70は、位置決定用のビーコンIDの更新を受けて、作業者の現在位置の更新を行う。
【0035】
これを図2に即して説明すると、通信端末器5Aを装着した作業者WAは、作業領域R内で移動を繰り返しつつ作業を行っている。このような場合、単純に電波強度のみで位置決定用のビーコンID(現在位置)を決定すると、作業者WAの位置は短い時間にビーコン信号発生器101、102、103及び104の間で頻繁に切り替わり、変動してしまう。本実施の形態では、例えば作業者WAがビーコン信号発生器103の設置されている方向からビーコン信号発生器102が設置されている作業領域内に移動してきたとすると、4つのビーコン信号発生器101~104の中で最初に位置決定用のビーコンID(現在位置)の決定に用いたビーコン信号発生器103の電波強度だけが問題となり、ビーコン信号発生器103の前回の電波強度と今回の電波強度との強度差が、予め定めた限界閾値以下にならない限り、位置決定用のビーコンID(現在位置)を更新しない。
【0036】
図2の例で作業者WAはビーコン信号発生器103から遠く離れることなくある作業領域内でのみ移動していれば、他のビーコン信号発生器101、102または104の方が電波強度が高くなったとしても、それだけでは位置決定用のビーコンID(現在位置)が更新されない。そしてその作業領域内での作業が終了し、作業者WAが移動すると、ビーコン信号発生器103の前回と今回の電波強度の強度差が小さくなり、これは作業者WAがビーコン信号発生器103から遠く離れたためなので、その時点で最も電波強度の高いビーコン信号発生器のビーコンIDを位置決定用のビーコンIDとして採用して現在位置を更新する。例えば、作業者がビーコン信号発生器102が発生するビーコン信号の電波領域内に入れば、ビーコン信号発生器102のビーコンIDによって特定される位置が作業者が現在存在する現在位置として更新される。
【0037】
このように制御すると、例えば1秒以内に通信端末器5Aを装着した作業者WAがビーコン信号発生器103付近に居るにも拘わらず、ビーコン信号発生器103からのビーコン信号を正しく受信することができなかった場合に電波強度が実際の値より低い値が測定され、より遠いビーコン信号発生器102等のビーコン信号が採用されて現在位置が更新されるという誤作動を防ぐ、という効果も得られる。
【0038】
この限界閾値は、2以上のビーコン信号発生器101・・・の出力の受信による誤検出を防止できるように定める。理論的には限界閾値は、2以上のビーコン信号発生器101・・・の出力範囲が重なる境界領域内においては、強度差(位置決定用のビーコンIDの決定に採用した1つのビーコン信号の前回の電波強度と今回の電波強度との差)が限界閾値以下にならないように定めれば位置決定用のビーコンIDが頻繁に切り替わってしまうことを防止して、正確な位置検出を実現できる。具体的な数値は、ビーコン信号発生器101・・・の発する電波強度や設置間隔等に基づいて定められる。
【0039】
ビーコンID決定保存部54A~54Nは、決定周期の1周期の期間内に決定周期よりも短い測定周期(本実施の形態では1/10秒)で受信した複数のビーコン信号の電波強度の平均的な値を算出し、この平均的な値を電波強度と決定し、内部メモリに保存する。ビーコンID決定保存部54A~54Nは、この平均的な値に基づいて、位置決定用のビーコンIDの決定を行う。すなわちビーコンID決定保存部54A~54Nは、前回の電波強度の平均的な値を内部メモリに記録して保持しておき、位置決定用のビーコンIDの決定時には、内部メモリから読み出した前回の電波強度と、新たに算出した今回の電波強度の平均的な値とを比較するようにしている。このように平均的な値を用いると、測定データのバラツキを補正することができ、測定の誤りの影響を最小限に抑えることができる。
【0040】
この実施形態において「平均的な値」は、1周期の期間内に決定周期よりも短い所定の測定周期で受信した、複数のビーコン信号の複数の電波強度の単純平均として求めているが、他の実施形態では複数のビーコン信号の電波強度の中央値として求めたり、複数のビーコン信号の電波強度の最大値と最小値を除く残りの電波強度の単純平均値として求めるようにしている。
【0041】
<作業者転倒検知システム>
本実施の形態の作業者転倒検知システム1Aは、作業者が転倒しているか否かを判定するためのシステムである。図3に示すように、作業者転倒検知システム57は、三軸加速度センサ57aと、動き判定部57bと、傾き方向決定部57cと、姿勢データ記憶部57dと、姿勢判定部57eと、転倒判定部57fと、警報音発生器57gとを備えている。この作業者転倒検知システム57によれば、姿勢判定部57eが、三軸加速度センサ57aから得られた三軸の傾き方向と、三軸の傾き方向と作業者の姿勢との関係を対応付けた姿勢データとから作業者の姿勢を判定することで、常時、作業者の姿勢を監視する。そして、姿勢判定部57eで判定する判定結果のうち、一部を、転倒と判断できる姿勢(以下、「転倒姿勢」)であるとして定めておくことで、作業者が転倒している可能性があることを検知する。ただし、転倒判定部57fは、一度の転倒姿勢になったことの判定結果だけで作業者が転倒したと判定すると、誤判定になる可能性が高いため、姿勢判定部57eが予め定めたサンプリング周期で予め定めた回数判定した作業者の姿勢のうち、予め定めた転倒と判断できる姿勢の判定結果が一番多いときに、作業者が転倒していると判断するように構成されている。また本実施の形態では、三軸加速度センサ57aが検知する三軸方向成分の変化量から作業者が動いたか否かを姿勢判定部57eの判定動作と同期して予め定めた判定基準に基づいて判定する動き判定部57bをさらに備えている。そして、動き判定部57bが、作業者が動いていないと判定していることを前提として、転倒判定部57fが、予め定めた待機回数または待機期間、作業者が転倒していると判断し続けている場合に警報信号を発生するように構成されている。その結果、転倒姿勢で、静止状態にあることがわかるため、確実に転倒を疑わせる状態にあると判定でき、さらに誤報を減らすことができる。したがって、本実施の形態によれば、三軸加速度センサ57aの出力に基づいて、従来よりも高い精度で転倒を判定することが可能である。
【0042】
なお、動き判定部57bの予め定めた判定基準は、変化量が予め定めた閾値以上あるときを作業者が動いたと仮判定し、該仮判定が判定された回数が、予め定めた回数(例えば30回)中で予め定めた規定回数(例えば2回)以上である場合に、作業者が動いていると判定するように定めることができる。このようにすると動き判定部57bの判定が、転倒判定部57fの判定の前提となるため、転倒判定部57fの判定結果の信憑性を高めることができる。
【0043】
本実施の形態で採用する三軸加速度センサ57aは、X軸と、X軸と直交するY軸と、X軸及びY軸の双方に直交するZ軸の3軸方向の加速度を検出するものである。本実施の形態では、作業者Wが直立状態において、X軸が作業者Wの左右方向、Y軸が作業者Wの上下方向、Z軸が作業者Wの前後方向になるよう、ヘルメットに装着されている。
【0044】
動き判定部57bは、作業者が静止状態にいるか否かを判定するためのものであり、三軸加速度センサ57aが検知する三軸方向成分の変化量から作業者が動いたか否かを判定する。具体的には、加速度値の変化があらかじめ設定された閾値以下で、動きがない時間の割合が増加した場合に、作業者が静止状態にいると判定する。
【0045】
また、傾き方向決定部57cは、三軸加速度センサ57aが検知する三軸方向成分の値から重力方向に対する三軸加速度センサ57aの三軸の傾き方向を決定する。
【0046】
姿勢データ記憶部57dは、三軸の傾き方向と作業者の姿勢との関係を対応付けた姿勢データを予め記憶している。
【0047】
姿勢判定部57eは、傾き方向決定部57cが決定した傾き方向と、姿勢データ記憶部57dの姿勢データとに基づいて、作業者Wの姿勢を判定する。
【0048】
転倒判定部57fは、動き判定部57bの判定結果(後述の「第1の判定条件」)及び姿勢判定部57eの判定結果(後述の「第2の判定条件」)に基づいて、作業者が転倒しているか否かを判定する。作業者Wが転倒していると判断すると、警報信号を発生する。そして警報音発生器57gは、警報信号に基づいて警報音を発生するものであり、作業者Wの周囲に作業者Wの転倒を報知する。
【0049】
転倒判定部57fは、姿勢判定部57eが予め定めたサンプリング周期(例えば320ms)で予め定めた回数(例えば30回)判定した作業者の姿勢のうち、予め定めた転倒と判断できる姿勢の判定結果が一番多いときに、作業者が転倒していると判断するように構成することができる。このようにすると複数回の判定結果のうち、最も多い判定結果で転倒か否かが判定されるため、判定回数を多くして、判定精度を高めることができる。
【0050】
なお転倒判定部57fが、作業者が転倒したと判定した場合、警報信号は直ちに発生してもよいが、予め定めた待機回数または待機期間(例えば1分)、作業者が転倒していると判断し続けている場合に、警報信号を発生するようにしてもよい。このようにすれば警報信号を発生する前に作業者が動いて転倒してない姿勢に戻った場合に、警報信号を誤って発生することを防止できる。本実施の形態のように、警報音発生器57gを通信端末器5内に設ける場合には、転倒していると判断された作業者の周囲にいる人に対して、転倒の事実を知らしめるため、警報音を出す。また本実施の形態では、遠隔地で監視を行う管理サーバ7側にも警報発生装置1Cが存在しているので、警報信号を受信したら転倒したと判断された作業者の近くにいる他の作業者に対して、救護を指示することが可能である。
【0051】
<第1の判定条件:作業者が静止状態にいるか否か>
転倒判定部57fが作業者が転倒しているか否かを判定する第1の判定条件を説明する。第1の判定条件は、動き判定部57bによるものであり、判定を行うに先立ち、本実施の形態では、三軸加速度センサ57aの出力値の軽量化処理を行っている。
【0052】
図5(A)~(C)は、三軸加速度センサ57aの出力値の軽量化処理の一例である。図5(A)~(C)の例は、X軸方向(作業者の左右方向)の出力値の軽量化処理であるが、Y軸及びZ軸それぞれについて、同様の処理を行っている。
【0053】
図5(A)は、三軸加速度センサ57aのX軸方向の出力値を示すグラフであり、作業者Wが右方向に傾くとマイナス値が出力され、作業者Wが左方向に傾くとプラス値が出力されている。図5(B)は、(A)に基づいて、各単位時間当たりの前回値と現在値の出力値を比較した変化量である。図5(C)は、(B)に示した変化量が閾値(この場合には、「2」)以上になったときを0と1の2値で記録したウェイクアップフラグである。すなわち、作業者Wの動きがある状態では、1が記録される割合が増加するのに対して、作業者Wの動きがない状態では、0が記録される割合が増加する。したがって、0が記録される割合が所定の割合を超えた場合に(例えば、直近30回中28回以上)、動き判定部57bは、作業者Wが「静止状態」にあると判定することができる。
【0054】
<第2の判定条件:作業者が転倒姿勢にいるか否か>
転倒判定部57fが作業者が転倒しているか否かを判定する第2の判定条件を説明する。第2の判定条件は、姿勢判定部57eによるものであり、上述の通り、姿勢判定部57eは、傾き方向決定部57cの決定した傾き方向と、姿勢データ記憶部57dの姿勢データとに基づいて、作業者Wの姿勢を判定している。
【0055】
まず、本実施の形態における、三軸の傾き方向に基づく「転倒疑いあり」「転倒疑いなし」の定義を説明する。図6(A)~(C)は、傾き方向決定部57cが決定する三軸の傾き方向の一例である。この例では、Z軸(作業者の前後方向)を中心にして三軸加速度センサ57a(すなわち作業者)が回転した場合の重力加速度Gに対するX軸及びY軸の傾き方向を示している。角度は、下方向(重力加速度Gの向き)が90°であり、上方向(重力加速度Gの反対方向)が-90°であり、左右方向(重力加速度Gと直交する方向)が0°と定義してある。
【0056】
本例では、図6(A)に示すように、X軸が-60°≦θX≦60°の範囲内にあり、且つ、Y軸が30°≦θY≦90°の範囲内にある場合には、作業者が立っていて「転倒の疑いなし」と定めている。また、作業者Wの状態としては考えにくいが、図6(C)に示すように、X軸が-60°<θX<60°の範囲内にあり、且つ、Y軸が-90°≦θY<-30°の範囲内にある場合には、「転倒の疑いなし(逆さ)」と定めている。
【0057】
これに対して、図6(B)に示すように、X軸が-90°≦θX≦-60°の範囲内にあり、且つ、Y軸が-30°≦θY<30°の範囲内にある場合には、「転倒の疑いあり」と定めている。本実施の形態では、これら定義を踏まえ、次の軽量化処理を行っている。
【0058】
本実施の形態では、三軸加速度センサ57aを中心にして、図7に示すような球体を想定して球体の表面を56分割し、重力加速度Gが56の仮想領域のどれを指し示すかを判定することで作業者Wの姿勢を判定している。このために、まず、三軸加速度センサ57aが出力する各軸の出力値を、500mGを境に分岐させ、下記の通り2bitに変換している:
U L 加速度値
0 1 500mG≦G値
0 0 0≦G値<500mG
1 1 -500mG≦G値<0
1 0 G値<-500mG
その上で、姿勢データ記憶部57dが記憶している図8に示した変換表に基づいて、姿勢番号に変換している(なお、図8の変換表において、XUは、X軸のU値であり、XLはX軸のL値であり、他も同様である)。
【0059】
例えば、XU=0,XL=0,YU=1,YL=0,ZU=1,ZL=1の場合には、姿勢番号7(図9(A)の状態)と判定され、XU=0,XL=0,YU=1,YL=0,ZU=0,ZL=1の場合には、姿勢番号5(図9(B)の状態)と判定される。先述の「転倒の疑いあり」の定義に合わせ、姿勢番号17~40のいずれかに該当した場合に、「転倒姿勢」と判定されることになる。なお、後述のように、本実施の形態では、所定回数(例えば、直近30回)中、「転倒姿勢」と分類される姿勢番号が最も多くなった場合に、「転倒の疑いあり」と判定する。
【0060】
<転倒判定のフローチャート>
本実施の形態では、図10に示すフローチャートにしたがって、作業者Wの転倒を検知している。
【0061】
転倒判定部57fは、予め定めたサンプリング周期(本例では、320ms)毎に三軸加速度センサ57aからX軸、Y軸、Z軸の3軸の加速度値を読み出し(ステップST1,ST2)、動き判定部57bと姿勢判定部57eに出力する。
【0062】
動き判定部57bは、前回(320ms前)と現在の加速度値の変化量が閾値以上あるか否かを判定する(ステップST3)。この判定は、上述の通り、図5(A)~(C)に示した方法で判定しており、変化量が閾値以上ある場合には、ウェイクアップフラグを"1"にし(ステップST4)、変化量が閾値以上ない場合には、ウェイクアップフラグを"0"にして(ステップST5)、転倒判定部57fに出力する。
【0063】
姿勢判定部57eは、得られた加速度値に基づいて、上述の方法で姿勢番号を算出し(ステップST6)、転倒判定部57fに出力する。
【0064】
転倒判定部57fは、得られた姿勢番号及びウェイクアップフラグをバッファに保存する(ステップST7)。
【0065】
次に、転倒判定部57fは、バッファ内にウェイクアップフラグ"0"が閾値以上(上述のように、例えば、直近30回中28回以上)あるか否かを判定する(ステップST8)。閾値以上ある場合には、作業者Wが「静止状態」にあることが判定されたことになり、第1の転倒条件がクリアされたことになる(ステップST9)。第1の転倒条件がクリアされた場合には、転倒判定部57fは、さらに、バッファで一番多い姿勢番号が転倒姿勢に分類されるか否かを判定する(ステップST10)。すなわち、所定回数(例えば、直近30回)中、「転倒姿勢」と分類される姿勢番号(姿勢番号17~40のいずれか)が最も多くなった場合に、第2の転倒条件がクリアされたことになる(ステップST11)。その後、この状態、すなわち、第1の転倒条件及び第2の転倒条件の両方が満たされた状態が所定時間(例えば、320ms×188回=約1分)経過した場合(ステップST12)、転倒判定部57fは、作業者Wが転倒していると判定し、警報信号を発生する(ステップST13)。警報音発生器57gは、警報信号を受けて警報音を発生する(同ステップST13)。この際、警報音が原因となって発生する振動を動き判定部57bが検知してしまうと、作業者Wが動いていると判定され、第1の転倒条件が満たされなくなってしまうため、動き判定部57bが判定する変化量の閾値を振動時用の閾値に変更し(具体的には、閾値を上げる)、STARTに戻ってループする(ステップST14)。
【0066】
本実施の形態では、ステップST13で、通信端末器5の発信部55は、位置決定用情報と一緒に、作業者転倒検知システム57が判定した判定結果も管理サーバ7に送信するようになっている。警報発生装置1Cは、判定結果が作業者Wが転倒していることを示しているときには、作業者Wの位置情報と一緒に作業者が転倒していることを知らせる警報を発生する。
【0067】
第1の転倒条件をクリアしなかった場合(ステップST8)、または、第2の転倒条件をクリアしなかった場合(ステップST10)には、いずれの場合も作業者Wは転倒していないと判定できる(ステップST15)。警報音発生器57gが警報音を発生している場合には、転倒判定部57fは、警報音を止めるように信号を発生し(同ステップST15)、また、動き判定部57bが判定する変化量の閾値が振動時用の閾値に変更されている場合には、通常時用に戻し、STARTに戻ってループする(ステップST16)。
【0068】
上記実施の形態は、一例として記載したものであり、その要旨を逸脱しない限り、本発明は本実施例に限定されるものではない。例えば、上記例では、作業者位置検知システムに作業者転倒検知システムを組み入れているが、作業者転倒検知システム単独で運用してもよいのはもちろんである。また、上記例では、第1の転倒条件と第2の転倒条件の両方を用いて作業者Wの転倒を判定しているが、第2の転倒条件のみに基づいて作業者Wの転倒を判定することも可能である。ただし、この場合は短時間で判定を行うと誤判定が増加する可能性があるため、図10のステップST12の時間を増加させる等の変更が望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明によれば、従来よりも高い精度で、作業者の転倒を判定することが可能な作業者転倒検知システム及び作業者位置検知システムを提供することができる。また、転倒の誤判定が少ない作業者転倒検知システム及び作業者位置検知システムを提供することができる。
【符号の説明】
【0070】
1 作業者の位置及び転倒検知システム
1A 作業者転倒検知システム
1B 作業者位置検知システム
1C 警報発生装置
3(3a,3b,3c,3d)(101~10N) ビーコン信号発生器
5(5A~5N) 通信端末器
51(51A~51N) 受信部
53(53A~53N) ビーコンID決定部
54(54A~54N) ビーコンID決定保存部
55(55A~55N) 発信部
57 作業者転倒検知システム
57a 三軸加速度センサ
57b 動き判定部
57c 傾き方向決定部
57d 姿勢データ記憶部
57e 姿勢判定部
57f 転倒判定部
57g 警報音発生器
7 管理サーバ
70 位置決定部
W 作業者
MA 移動領域
MA1~MA4 区域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10