(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-31
(45)【発行日】2023-11-09
(54)【発明の名称】IR有機光電素子及びこれを含む有機イメージセンサー
(51)【国際特許分類】
H10K 30/60 20230101AFI20231101BHJP
H01L 27/146 20060101ALI20231101BHJP
H10K 30/30 20230101ALI20231101BHJP
H10K 39/32 20230101ALI20231101BHJP
H10K 85/60 20230101ALI20231101BHJP
H10K 101/30 20230101ALN20231101BHJP
H10K 101/40 20230101ALN20231101BHJP
【FI】
H10K30/60
H01L27/146 E
H10K30/30
H10K39/32
H10K85/60
H10K101:30
H10K101:40
(21)【出願番号】P 2019098479
(22)【出願日】2019-05-27
【審査請求日】2022-05-13
(31)【優先権主張番号】10-2018-0060395
(32)【優先日】2018-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung-ro,Yeongtong-gu,Suwon-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 東 ソク
(72)【発明者】
【氏名】李 啓 滉
(72)【発明者】
【氏名】尹 晟 榮
(72)【発明者】
【氏名】李 光 熙
(72)【発明者】
【氏名】陳 勇 完
【審査官】佐竹 政彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/025545(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0051125(KR,A)
【文献】特開2006-024791(JP,A)
【文献】特開2015-201619(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 30/00-39/38
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向するアノードとカソードと、
前記アノードとカソードとの間に配置され、
赤外線領域の光を吸収すると同時に、吸収によって発生したエキシトン(exciton)の正孔を分離して前記アノードに伝達する「赤外線吸収及び正孔伝達複合単一層」(以下、「」省略)と、
前記カソードと前記赤外線吸収及び正孔伝達複合単一層との間に配置され、可視光線領域の光を実質的に吸収せず、かつ前記赤外線吸収及び正孔伝達複合単一層により発生した前記エキシトンの電子を分離して前記カソードに伝達する電子伝達層と、を有し、
前記赤外線吸収及び正孔伝達複合単一層は、正孔伝達物質と、
仕事関数レベルが5.6eVを超える金属酸化物と、を含み、
前記正孔伝達物質は、4,4’,4”-トリス(N-(2-ナフチル)-N-フェニル-アミノ)-トリフェニルアミン)、N,N-ジフェニル-N,N-ビス(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)ビフェニル-4,4’-ジアミン)、N(ビフェニル-4-イル)9,9-ジメチル-N-(4(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル)-9H-フルオレン-2-アミン、ジ-[4-(N,N-ジ-p-トリル-アミノ)-フェニル]シクロヘキサン、又は9,9-ビス[4-N,N-ビス-ビフェニル-4-イル-アミノフェニル]-9H-フルオレンであることを特徴とするIR有機光電素子。
【請求項2】
前記赤外線吸収及び正孔伝達複合単一層は、正孔伝達物質と、
金属酸化物と、を含み、
前記正孔伝達物質は、前記アノードの仕事関数と前記金属酸化物の仕事関数との間のHOMOレベルを有する物質であることを特徴とする請求項1に記載のIR有機光電素子。
【請求項3】
前記正孔伝達物質のHOMOレベルと前記金属酸化物の仕事関数との差は、0.01~0.84eVであることを特徴とする請求項2に記載のIR有機光電素子。
【請求項4】
前記正孔伝達物質のHOMOレベルは、4.7eV超5.6eV以下であることを特徴とする請求項2に記載のIR有機光電素子。
【請求項5】
前記正孔伝達物質は、2.8eV~4.0eVのエネルギーバンドギャップを有して可視光を透過する物質であることを特徴とする請求項2に記載のIR有機光電素子。
【請求項6】
前記金属酸化物は、モリブデン酸化物又はレニウム酸化物であることを特徴とする
請求項1に記載のIR有機光電素子。
【請求項7】
前記金属酸化物は、前記赤外線吸収及び正孔伝達複合単一層に対し、50体積%以上で含まれることを特徴とする請求項2に記載のIR有機光電素子。
【請求項8】
互いに対向するアノードとカソードと、
前記アノードとカソードとの間に配置される可視光吸収層又はUV吸収層と、
前記アノードと前記可視光吸収層又はUV吸収層との間に配置される
赤外線領域の光を吸収すると同時に、吸収によって発生したエキシトン(exciton)の正孔及び前記可視光吸収層が可視光を吸収し、吸収によって発生したエキシトンの正孔を分離して前記アノードに伝達する「赤外線吸収及び正孔伝達複合単一層」(以下、「」省略)と、
前記カソードと前記可視光吸収層又はUV吸収層との間に配置され、可視光線領域の光を実質的に吸収せず、かつ前記赤外線吸収及び正孔伝達複合単一層により発生した前記エキシトンの電子を分離して前記カソードに伝達する電子伝達層と、を有し、
前記赤外線吸収及び正孔伝達複合単一層は、正孔伝達物質と、
仕事関数レベルが5.6eVを超える金属酸化物と、を含み、
前記正孔伝達物質は、4,4’,4”-トリス(N-(2-ナフチル)-N-フェニル-アミノ)-トリフェニルアミン)、N,N-ジフェニル-N,N-ビス(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)ビフェニル-4,4’-ジアミン)、N(ビフェニル-4-イル)9,9-ジメチル-N-(4(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル)-9H-フルオレン-2-アミン、ジ-[4-(N,N-ジ-p-トリル-アミノ)-フェニル]シクロヘキサン、又は9,9-ビス[4-N,N-ビス-ビフェニル-4-イル-アミノフェニル]-9H-フルオレンであることを特徴とする有機イメージセンサー。
【請求項9】
前記正孔伝達物質は、前記アノードの仕事関数と前記金属酸化物の仕事関数との間のHOMOレベルを有する物質であることを特徴とする
請求項8に記載の有機イメージセンサー。
【請求項10】
前記正孔伝達物質のHOMOレベルと前記金属酸化物の仕事関数との差は、0.01~0.84eVであることを特徴とする
請求項9に記載の有機イメージセンサー。
【請求項11】
前記正孔伝達物質のHOMOレベルは、4.7eV超5.6eV以下であることを特徴とする
請求項9に記載の有機イメージセンサー。
【請求項12】
前記正孔伝達物質は、2.8eV~4.0eVのエネルギーバンドギャップを有して可視光を透過する物質であることを特徴とする
請求項9に記載の有機イメージセンサー。
【請求項13】
前記金属酸化物は、モリブデン酸化物又はレニウム酸化物であることを特徴とする
請求項8に記載の有機イメージセンサー。
【請求項14】
前記金属酸化物は、前記赤外線吸収及び正孔伝達複合単一層に対し、50体積%以上で含まれることを特徴とする
請求項9に記載の有機イメージセンサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
有機光電素子及びこれを含む積層型イメージセンサーに関し、特に、素子構造が単純化され、工程が簡単なIR有機光電素子及びこれを含む有機イメージセンサーに関する。
【背景技術】
【0002】
既存のシリコンフォトダイオードベースのCMOSイメージセンサーの性能をさらに改善することや、新たな応用先を拡大する需要が増加している。
特に、低照度感度向上に対する技術的改善と吸収波長変化による既存のRGBカラーイメージセンシング領域を拡大するために赤外線(IR)波長吸収に対する研究が最近活発に行われている。
すなわち、RGBカラーイメージに赤外線吸収を追加して低照度状況で感度改善をさせる方案がその代表的な例である。
【0003】
最近パナソニック社によって公開された論文(下記に示す非特許文献1)によれば、可視光吸収層の下に赤外線吸収層を位置させて可変電圧に応じて「RGB+IR」モードを同時に実現してナイトビジョン(Night Vison)、非破壊検査(Non-destructive Inspection)用センサーとして活用しようとする研究が行われている。
しかし、パナソニック社のダイオード構造の断面図を見れば、下部電極の上に下部バッファ層、赤外線吸収層、可視光吸収層、上部バッファ層が順次積層されており、その上に上部電極が形成される。
すなわち、赤外線吸収を強化するために既存のフォトダイオード構造のバッファ層/可視光吸収層のほかに赤外線吸収層をさらに含むことによって、有機物吸収層に対する積層工程が追加される。
【0004】
特に、上記構造の場合、可視光吸収層と赤外線吸収層の有機分子構造及び物性差によって、低電圧(middle Voltage)では可視光のみ動作し、高電圧(high voltage)では可視光と赤外線とが同時に駆動される二元システムでセンサーの駆動時に動作電圧依存性を示し、特に低電圧駆動が求められるモバイルイメージセンサーでの使用が制限される短所がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Mpixel Organic-Film Stacked RGB-IR Image Sensor with Electrically Controllable IR Sensitivity、2017 IEEE International Solid-State Circuits Conference
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は上記従来のシリコンフォトダイオードベースのCMOSイメージセンサーにおける問題点に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、上記端緒を克服し、素子構造が単純化され、工程が簡単なIR有機光電素子を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、前記有機光電素子を含む積層型RGB-IRイメージセンサー、又は、前記有機光電素子を含む積層型UV-IRイメージセンサーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためになされた本発明によるIR有機光電素子は、互いに対向するアノードとカソードと、前記アノードとカソードとの間に配置され、赤外線領域の光を吸収すると同時に、吸収によって発生したエキシトン(exciton)の正孔を分離して前記アノードに伝達する「赤外線吸収及び正孔伝達複合単一層」(以下、「」省略)と、前記カソードと前記赤外線吸収及び正孔伝達複合単一層との間に配置され、可視光線領域の光を実質的に吸収せず、かつ前記赤外線吸収及び正孔伝達複合単一層により発生した前記エキシトンの電子を分離して前記カソードに伝達する電子伝達層と、を有し、前記赤外線吸収及び正孔伝達複合単一層は、正孔伝達物質と、仕事関数レベルが5.6eVを超える金属酸化物と、を含み、前記正孔伝達物質は、4,4’,4”-トリス(N-(2-ナフチル)-N-フェニル-アミノ)-トリフェニルアミン)、N,N-ジフェニル-N,N-ビス(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)ビフェニル-4,4’-ジアミン)、N(ビフェニル-4-イル)9,9-ジメチル-N-(4(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル)-9H-フルオレン-2-アミン、ジ-[4-(N,N-ジ-p-トリル-アミノ)-フェニル]シクロヘキサン、又は9,9-ビス[4-N,N-ビス-ビフェニル-4-イル-アミノフェニル]-9H-フルオレンであることを特徴とする。
【0008】
上記目的を達成するためになされた本発明による有機イメージセンサーは、互いに対向するアノードとカソードと、前記アノードとカソードとの間に配置される可視光吸収層又はUV吸収層と、前記アノードと前記可視光吸収層又はUV吸収層との間に配置される赤外線領域の光を吸収すると同時に、吸収によって発生したエキシトン(exciton)の正孔及び前記可視光吸収層が可視光を吸収し、吸収によって発生したエキシトンの正孔を分離して前記アノードに伝達する「赤外線吸収及び正孔伝達複合単一層」(以下、「」省略)と、前記カソードと前記可視光吸収層又はUV吸収層との間に配置され、可視光線領域の光を実質的に吸収せず、かつ前記赤外線吸収及び正孔伝達複合単一層により発生した前記エキシトンの電子を分離して前記カソードに伝達する電子伝達層と、を有し、前記赤外線吸収及び正孔伝達複合単一層は、正孔伝達物質と、仕事関数レベルが5.6eVを超える金属酸化物と、を含み、前記正孔伝達物質は、4,4’,4”-トリス(N-(2-ナフチル)-N-フェニル-アミノ)-トリフェニルアミン)、N,N-ジフェニル-N,N-ビス(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)ビフェニル-4,4’-ジアミン)、N(ビフェニル-4-イル)9,9-ジメチル-N-(4(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル)-9H-フルオレン-2-アミン、ジ-[4-(N,N-ジ-p-トリル-アミノ)-フェニル]シクロヘキサン、又は9,9-ビス[4-N,N-ビス-ビフェニル-4-イル-アミノフェニル]-9H-フルオレンであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るIR有機光電素子及びこれを含む有機イメージセンサーによれば、素子構造が単純化され、工程が簡単なIR有機光電素子を提供できる。
また、低電圧で駆動が可能であり、低照度で感度を向上させるRGB-IRイメージセンサーを提供できる。
また、低電圧で駆動が可能であり、紫外線と赤外線とを同時にセンシングできるUV-IRイメージセンサーを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1の実施形態によるIR有機光電素子の概略構成を示す断面図である。
【
図2】
図1のIR有機光電素子のエネルギーレベルを示す図である。
【
図3】
図1のIR有機光電素子の他のエネルギーレベルを示す図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態による(RGB-IR)有機イメージセンサーの概略構成を示す断面図である。
【
図5】
図4の(RGB-IR)有機イメージセンサーのエネルギーレベルを示す図である。
【
図6】
図4の(RGB-IR)有機イメージセンサーの他のエネルギーレベルを示す図である。
【
図7】
図4に例示した(RGB-IR)イメージセンサーの概略構成を示す斜視図である。
【
図8】
図4に例示した(RGB-IR)イメージセンサーの概略構成を示す他の斜視図である。
【
図9】
図4に例示した(RGB-IR)イメージセンサーの概略構成を示す他の斜視図である。
【
図10】本発明の第3の実施形態による(UV-IR)有機イメージセンサーの概略構成を示す断面図である。
【
図11】各種試料における正孔伝達物質と金属酸化物の共蒸着薄膜の吸光係数を測定した結果を示すグラフである。
【
図12】各種試料における金属酸化物薄膜の吸光係数を測定した結果を示すグラフである。
【
図13】本発明の実施例1、2及び比較例1によるイメージセンサーの波長に応じた外部量子効率(EQE)を示すグラフである。
【
図14】本発明の実施例3、4及び比較例2によるイメージセンサーの波長に応じた外部量子効率(EQE)を示すグラフである。
【
図15A】本発明の実施形態による多様な有機イメージセンサーの概略構成を示す断面図である。
【
図15B】本発明の実施形態による多様な有機イメージセンサーの概略構成を示す断面図である。
【
図15C】本発明の実施形態による多様な有機イメージセンサーの概略構成を示す断面図である。
【
図15D】本発明の実施形態による多様な有機イメージセンサーの概略構成を示す断面図である。
【
図16】本発明の一実施形態による電子装置1600の概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明に係るIR有機光電素子及びこれを含む有機イメージセンサーを実施するための形態の具体例を図面を参照しながら説明する。
【0012】
以下、本技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように実施形態を詳細に説明する。
しかし、実施形態は多様な異なる形態に具現でき、ここで説明する実施形態に限定されない。
図面で複数層及び領域を明確に表現するために厚さを拡大して示した。
明細書全体にわたって類似部分に対しては同じ図面符号を付けた。
層、膜、領域、板などの部分が他の部分「上に」あるという時、これは他の部分「真上に」ある場合だけでなく、その中間にまた他の部分がある場合も含む。反対にある部分が他の部分の「真上に」あるという時には中間に他の部分がないことを意味する。
数値と関連して本明細書で「約」又は「実質的に」という用語が用いられる場合、該数値は明示されている数値を中心として±10%の公差を含むのを意味する。
範囲が指定される場合、範囲には0.1%ずつ増分された値が含まれ得る。
【0013】
本明細書において、別途の定義がない限り、「置換された」とは、化合物中の水素原子が、ハロゲン基(F、Br、Cl、又はI)、ヒドロキシ基、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アジド基、アミジノ基、ヒドラジノ基、ヒドラゾノ基、カルボニル基、カルバミル基、チオール基、エステル基、カルボキシル基又はその塩、スルホン酸基又はその塩、リン酸又はその塩、C1~C20のアルキル基、C2~C20のアルケニル基、C2~C20のアルキニル基、C6~C30のアリール基、C7~C30のアリールアルキル基、C1~C20のアルコキシ基、C1~C20のヘテロアルキル基、C3~C20のヘテロアリールアルキル基、C3~C30のシクロアルキル基、C3~C15のシクロアルケニル基、C6~C15のシクロアルキニル基、C2~C20のヘテロシクロアルキル基、及びこれらの組み合わせから選択された置換基で置換されたことを意味する。
【0014】
図1は、本発明の第1の実施形態によるIR有機光電素子の概略構成を示す断面図である。
図1を参照すると、本発明の一実施形態によるIR有機光電素子100は、互いに対向する第1電極10と第2電極20、及び第1電極10と第2電極20との間に位置する赤外線吸収及び正孔伝達複合単一層30を含む。
赤外線吸収及び正孔伝達複合単一層30と第2電極20との間には電子伝達層40を含む。
【0015】
第1電極10と第2電極20の内のいずれか一つは、アノード(anode)であり、他の一つはカソード(cathode)である。
第1電極10と第2電極20の内の少なくとも一つは、透光電極であり得、透光電極は、例えば酸化インジウムスズ(indium tin oxide:ITO)又は酸化インジウム亜鉛(indium zinc oxide:IZO)のような透明導電体、又は薄い厚さの単一層又は複数層の金属薄膜で作られ得る。
第1電極10と第2電極20の内の一つが不透光電極の場合、例えば、アルミニウム(Al)のような不透明導電体で作られ得る。
【0016】
赤外線吸収及び正孔伝達複合単一層30は、赤外線領域の光を吸収し、吸収によって発生したエキシトン(exciton)の正孔を分離してアノード10に伝達する役割をする。
すなわち、赤外線領域の波長を吸収すると同時に、吸収によって発生したエキシトンの正孔を分離してアノード10に伝達する役割をする。
すなわち、赤外線吸収及び正孔伝達複合単一層30は、赤外線吸収による低照度感知と共に、アノード10に移動する正孔の個数を高めて有機光電素子100の効率を上げる役割をする。
赤外線吸収及び正孔伝達複合単一層30は、正孔伝達物質と金属酸化物を共に共蒸着して形成することで、正孔伝達機能と共に赤外線吸収能を示すようにすることができる。
【0017】
図2及び
図3は、
図1のIR有機光電素子のエネルギーレベルを示す図、及びIR有機光電素子の他のエネルギーレベルを示す図である。
図2に例示するように、正孔伝達物質HTLは、約2.8eV以上のエネルギーバンドギャップを有して可視光を透過できる透明性を有すると同時にアノードの仕事関数(workfunction)と金属酸化物の仕事関数との間のHOMOレベルを有することによって、正孔を分離及び移動させ得る正孔伝達物質であり得る。
ここで、HOMOレベルは、真空レベル(vacuum level)を0eVとする時のHOMOレベルの絶対値をいう。
正孔伝達物質のエネルギーバンドギャップは、例えば約2.8~4.0eVであり得る。
正孔伝達物質のHOMOレベルと金属酸化物の仕事関数との差(Δd1)は、例えば約0.01~0.89eVであり得る。
正孔伝達物質のHOMOレベルは、例えば4.7eV超5.6eV以下であり得る。
【0018】
正孔伝達物質は、例えばアミン系化合物であり得、例えば4,4’,4”-トリス(N-(2-ナフチル)-N-フェニル-アミノ)-トリフェニルアミン)(4,4’,4”-Tris(N-(2-naphthyl)-N-phenyl-amino)-triphenylamine)、N,N-ジフェニル-N,N-ビス(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)ビフェニル-4,4’-ジアミン)(N,N-diphenyl-N,N-bis(9-phenyl-9H-carbazol-3-yl)biphenyl-4,4’-diamine)、N(ビフェニル-4-イル)9,9-ジメチル-N-(4(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル)-9H-フルオレン-2-アミン(N(diphenyl-4-yl)9,9-dimethyl-N-(4(9-phenyl-9H-carbazol-3-yl)phenyl)-9H-fluorene-2-amine)、ジ-[4-(N,N-ジ-p-トリル-アミノ)-フェニル]シクロヘキサン(Di-[4-(N,N-di-p-tolyl-amino)-phenyl]cyclohexane)、9,9-ビス[4-N,N-ビス-ビフェニル-4-イル-アミノフェニル]-9H-フルオレン(9,9-Bis[4-N,N-bis-biphenyl-4-yl-amino)phenyl]-9H-fluorene)であり得るが、これらに限定されるものではない。
【0019】
金属酸化物は、正孔伝達物質のHOMOレベルより仕事関数が低い物質であり得、仕事関数が5.6eV超であり得る。
好ましくは仕事関数レベルが5.7eV~6.0eVであり得る。
図2には仕事関数レベルが5.7eVのモリブデン酸化物(MoOx)を含む場合のエネルギーレベルを示す図を、
図3には仕事関数レベルが6.0eVのレニウム酸化物(ReOx)を含む場合のエネルギーレベルを示す図を例示しているが、これに限定されるものではない。
図2及び
図3では、説明の便宜上、HTLと金属酸化物(MoOx,ReOx)とを区分して示しているが、これらは互いに共蒸着されて形成されるので、実際はこれらのエネルギーレベルが混在して存在し得る。
【0020】
赤外線吸収及び正孔伝達複合単一層30に含まれた正孔伝達物質は、赤外線吸収及び正孔伝達複合単一層30に対し、約50体積%以下で含まれ得る。
好ましくは、上記範囲内で約0.01体積%~20体積%で含まれ得、より好ましくは、上記範囲内で約0.01体積%~10体積%で含まれ得る。
赤外線吸収及び正孔伝達複合単一層30に含まれた金属酸化物は、赤外線吸収及び正孔伝達複合単一層30に対し、約50体積%以上で含まれ得る。
好ましくは、上記範囲内で約80体積%~99.9体積%で含まれ得、より好ましくは、上記範囲内で約90体積%~99.9体積%、例えば約90体積%~99体積%で含まれ得る。
【0021】
電子伝達層40は、可視光線領域の光を実質的に吸収せず、かつ赤外線吸収及び正孔伝達複合単一層30により発生したエキシトンの電子を分離してカソード20に伝達する役割をする。
すなわち、電子伝達層40は、カソード20に移動する電子の個数を高めて有機光電素子100の効率を上げる役割をする。
したがって、電子伝達層40は、電子伝達物質で構成され得る。
電子伝達物質は、約2.8eV以上のエネルギーバンドギャップを有して光を透過できる透明性を有すると同時にカソード20の仕事関数と可視光吸収体のLUMOレベルとの間のLUMOレベルを有する物質であり得る。
ここで、LUMOレベルは、真空レベル(vacuum level)を0eVとする時のLUMOレベルの絶対値をいう。
電子伝達物質のエネルギーバンドギャップは、例えば約2.8~4.0eVであり得る。
【0022】
図2及び
図3に例示するように電子伝達層40のLUMOレベルは、カソードの第2電極20の仕事関数より高いLUMOレベルを有し得る。
電子伝達物質のLUMOレベルは、例えば約3.6eV超4.3eV未満であり得る。
一例として電子伝達層40のLUMOレベルと赤外線吸収及び正孔伝達複合単一層30のLUMOレベルとの差(Δd2)は、例えば約0.01~0.84eVであり得る。
電子伝達物質は、例えばカルボン酸無水物であり得、例えば1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(1,4,5,8-Naphthalenetetracarboxylic dianhydride)であり得るが、これに限定されるものではない。
【0023】
図1に例示するIR有機光電素子は、デジタルカメラのイメージセンサー、携帯電話用カメラのイメージセンサー、赤外線カメラ及びCCTVのイメージセンサー、PC通信用カメラのイメージセンサー、X線検出センサーなどに適用されるが、これに限定されるものではない。
【0024】
図4は、本発明の第2の実施形態による有機積層型(RGB-IR)イメージセンサー1000の概略構成を示す断面図であり、
図5及び
図6は、有機積層型(RGB-IR)イメージセンサーの互いに異なるエネルギーレベルをそれぞれ示す図であり、
図7~
図9は、有機積層型(RGB-IR)イメージセンサーの互いに異なる斜視図をそれぞれ示す。
【0025】
図4を参照すると、有機積層型(RGB-IR)イメージセンサー1000は、互いに対向する第1電極10と第2電極20、及び第1電極10と第2電極20との間に位置する可視光吸収層50を含む。
可視光吸収層50の一面には赤外線吸収及び正孔伝達複合単一層30を、他面には電子伝達層40を含む。
第1電極10と第2電極20の内のいずれか一つは、アノード(anode)であり、他の一つはカソード(cathode)である。
第1電極10と第2電極20の内の少なくとも一つは透光電極であり得、透光電極は、例えば、酸化インジウムスズ(indium tin oxide:ITO)又は酸化インジウム亜鉛(indium zinc oxide:IZO)のような透明導電体、又は薄い厚さの単一層又は複数層の金属薄膜で作られ得る。
第1電極10と第2電極20の内の一つが不透光電極の場合、例えば、アルミニウム(Al)のような不透明導電体で作られ得る。
【0026】
可視光吸収層50は、可視光線の所定波長領域の光を吸収する可視光吸収体を含む。
可視光吸収体は、n型半導体又はp型半導体として、可視光線領域の内の緑色波長領域の光、青色波長領域の光、又は赤色波長領域の光を選択的に吸収でき、約400nm~700nmの範囲で最大吸収波長(λmax)を有する物質であり得る。
緑色波長領域の光を吸収する場合、可視光吸収体は、下記に示す化学式1で表される化合物(Subphthalocyanine誘導体)であり得る。
【化1】
【0027】
化学式1において、
R1~R12はそれぞれ独立して水素、置換又は非置換されたC1~C30アルキル基、置換又は非置換されたC6~C30アリール基、置換又は非置換されたC3~C30ヘテロアリール基、ハロゲン原子、ハロゲン含有基又はこれらの組み合わせであり、Xは陰イオンである。
化学式1で表される化合物は、約500nm~600nmで最大吸収波長(emax)を有する可視光吸収体であり、緑色波長領域で波長選択性が高い。
化学式1で表される化合物は、n型半導体又はp型半導体として作用し得、pn接合を形成するための別途のp型半導体又はn型半導体なしに可視光吸収体として単独で含まれ得る。
【0028】
化学式1で表される化合物は、例えば、下記に示す化学式1a~1eで表される化合物の内の一つであり得るが、これに限定されるものではない。
【化1a】
【化1b】
【化1c】
【化1d】
【化1e】
【0029】
赤色波長領域の光を吸収する場合、可視光吸収体は、CuPc(Copper Phthalocyanine)、ZnPc(Zinc Phthalocyanine)であり得る。
青色波長領域の光を吸収する場合、可視光吸収体はBP3T(Biphenyl Tri-thiophene)又はC60であり得る。
【0030】
赤外線吸収及び正孔伝達複合単一層30は、赤外線領域の光を吸収し、吸収によって発生したエキシトンの正孔と可視光吸収層50が可視光を吸収し、吸収によって発生したエキシトンの正孔を分離してアノード10に伝達する役割をする。
したがって、赤外線吸収及び正孔伝達複合単一層30は、赤外線吸収による低照度感度の向上と共にアノード10に移動する正孔の個数を高めて有機光電素子100の効率を上げる役割をする。
正孔伝達物質と金属酸化物を共に共蒸着して形成した複合単一層30は、正孔伝達機能と共に赤外線吸収能を示す。
【0031】
図5に例示したように正孔伝達物質HTLは、約2.8eV以上のエネルギーバンドギャップを有して光を透過できる透明性を有すると同時に、アノード10の仕事関数(workfunction)と金属酸化物の仕事関数との間のHOMOレベルを有することによって、正孔を分離及び移動させ得る正孔伝達物質であり得る。
ここで、HOMOレベルは、真空レベル(vacuum level)を0eVとする時のHOMOレベルの絶対値をいう。
正孔伝達物質のエネルギーバンドギャップは、例えば、約2.8~4.0eVであり得る。
正孔伝達物質のHOMOレベルと金属酸化物の仕事関数との差(Δd1)は、例えば約0.01~0.84eVであり得る。
正孔伝達物質のHOMOレベルは、例えば4.7eV超5.6eV以下であり得る。
【0032】
正孔伝達物質は、例えばアミン系化合物であり得、例えば4,4’,4”-トリス(N-(2-ナフチル)-N-フェニル-アミノ)-トリフェニルアミン)(4,4’,4”-Tris(N-(2-naphthyl)-N-phenyl-amino)-triphenylamine)、N,N-ジフェニル-N,N-ビス(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)ビフェニル-4,4’-ジアミン)(N,N-diphenyl-N,N-bis(9-phenyl-9H-carbazol-3-yl)biphenyl-4,4’-diamine)、N(ビフェニル-4-イル)9,9-ジメチル-N-(4(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル)-9H-フルオレン-2-アミン(N(diphenyl-4-yl)9,9-dimethyl-N-(4(9-phenyl-9H-carbazol-3-yl)phenyl)-9H-fluorene-2-amine)、ジ-[4-(N,N-ジ-p-トリル-アミノ)-フェニル]シクロヘキサン(Di-[4-(N,N-di-p-tolyl-amino)-phenyl]cyclohexane)、9,9-ビス[4-N,N-ビス-ビフェニル-4-イル-アミノフェニル]-9H-フルオレン(9,9-Bis[4-N,N-bis-biphenyl-4-yl-amino)phenyl]-9H-fluorene)であり得るが、これに限定されるものではない。
【0033】
金属酸化物は、正孔伝達物質のHOMOレベルより仕事関数が低い物質であり得、仕事関数が5.6eV超であり得る。
好ましくは、仕事関数レベルが5.7eV~6.0eVであり得る。
図5には仕事関数レベルが5.7eVのモリブデン酸化物(MoOx)を含む場合のエネルギーレベルを示す図を、
図6には仕事関数レベルが6.0eVのレニウム酸化物(ReOx)を含む場合のエネルギーレベルを示す図を例示しているが、これに限定されるものではない。
【0034】
赤外線吸収及び正孔伝達複合単一層30に含まれた正孔伝達物質は、赤外線吸収及び正孔伝達複合単一層30に対し、約50体積%以下で含まれ得る。
好ましくは、上記範囲内で約0.01体積%~20体積%で含まれ得、より好ましくは、上記範囲内で約0.01体積%~10体積%で含まれ得る。
赤外線吸収及び正孔伝達複合単一層30に含まれた金属酸化物は、赤外線吸収及び正孔伝達複合単一層30に対し、約50体積%以上で含まれ得る。
好ましくは、上記範囲内で約80体積%~99.9体積%で含まれ得、より好ましくは、上記範囲内で約90体積%~99.9体積%、例えば約90体積%~99体積%で含まれ得る。
【0035】
電子伝達層40は、可視光線領域の光を実質的に吸収せず、かつ赤外線吸収及び正孔伝達複合単一層30により発生したエキシトンと可視光吸収層50により発生したエキシトンの電子を分離してカソード20に伝達する役割をする。
すなわち、電子伝達層40は、カソード20に移動する電子の個数を高めて(RGB-IR)イメージセンサー1000の効率を上げる役割をする。
したがって、電子伝達層40は、電子伝達物質で構成され得る。
電子伝達物質は、約2.8eV以上のエネルギーバンドギャップを有して光を透過できる透明性を有すると同時にカソード20の仕事関数と可視光吸収体のLUMOレベルとの間のLUMOレベルを有する物質であり得る。
ここで、LUMOレベルは、真空レベル(vacuum level)を0eVとする時のLUMOレベルの絶対値をいう。
電子伝達物質のエネルギーバンドギャップは、例えば約2.8~4.0eVであり得る。
【0036】
図5及び
図6に例示したように電子伝達層40のLUMOレベルは、カソードの第2電極20の仕事関数と可視光吸収層50のLUMOレベルとの間のLUMOレベルを有し得る。
電子伝達物質のLUMOレベルは、例えば約3.6eV超4.3eV未満であり得る。
一例として電子伝達層40のLUMOレベルと可視光吸収層50のLUMOレベルとの差(Δd3)は、例えば約0.01~0.84eVであり得る。
電子伝達物質は、例えばカルボン酸無水物であり得、例えば1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(1,4,5,8-Naphthalenetetracarboxylic dianhydride)であり得るが、これに限定されるものではない。
【0037】
図7~
図9は、
図4に例示した有機積層型(RGB-IR)イメージセンサー1000の概略構成のいくつかを例示する斜視図である。
有機積層型(RGB-IR)イメージセンサー1000は、
図7に例示するように、赤外線吸収及び正孔伝達複合単一層30で構成されるIR有機光電素子の上部に赤色有機光電素子55R、緑色有機光電素子55G、青色有機光電素子55Bが単一層にてベイヤ形態で配列された形態で構成される。
図7のように形成する場合、すべてのイメージセンサーを有機層で形成してフレキシブルなイメージセンサーを実現できる。
【0038】
一方、有機積層型(RGB-IR)イメージセンサー1000は、
図8に例示するように、赤外線吸収及び正孔伝達複合単一層30で構成されるIR有機光電素子の上部に赤色有機光電素子55R、緑色有機光電素子55G、青色有機光電素子55Bがそれぞれ積層された構造を有することによってイメージセンサーの大きさを減らして小型化イメージセンサーを実現でき、クロストークを減らし得る。
【0039】
また、
図9に例示するように、赤外線吸収及び正孔伝達複合単一層30で構成されるIR有機光電素子の上部に赤色有機光電素子55R及び青色有機光電素子55Bが配列された単一層と、その上部に緑色有機光電素子55Gの一層で構成し、赤色有機光電素子55Rと青色有機光電素子55Bはベイヤ形態で配列された層で構成して感度をより向上させることもできる。
【0040】
図4~
図9を参照して説明した有機積層型(RGB-IR)イメージセンサー1000は、赤外線吸収層と正孔伝達用バッファ層が2層で形成された従来のイメージセンサーとは異なり、赤外線吸収及び正孔伝達複合単一層30が、単一薄膜で実現できるので、低電圧(例:3V)駆動条件で可視光(可視光波長領域の入射光92)と赤外線(赤外線波長領域の入射光92)とを同時に吸収し得る。
したがって、低照度下でも感度を向上させることができる。したがって、ナイトビジョンや非破壊検査用センサーとして活用できる。
【0041】
図10は、本発明の第3の実施形態によるIR有機光電素子を含む有機積層型(UV-IR)イメージセンサーの概略構成を示す断面図である。
図10を参照すると、有機積層型(UV-IR)イメージセンサー2000は、
図4に例示した有機積層型(RGB-IR)イメージセンサー1000で可視光吸収層50の代わりに非可視光吸収層2050、より具体的にはUV吸収層が形成される点を除いては、有機積層型(RGB-IR)イメージセンサー1000と基本的な構造は同一である。
【0042】
非可視光(UV)吸収層2050は、UVを吸収できるn型物質又はn型とp型物質が混合されたBHJ(Bulk Heterojunction)型物質で構成され得る。
非可視光吸収物質としては、NTCDA(Naphthalenetetracarboxylic dianhydride)、NTCDI(Naphthalenetetracarboxylic diimide)等が用いられ得る。
図10に例示した有機積層型(UV-IR)イメージセンサー2000は、低電圧駆動条件でUV(紫外線波長領域の入射光92)と赤外線(赤外線波長領域の入射光92)を同時に吸収できるので、診断センサー、特殊センサーなどに適用できる。
【0043】
以下では実施例により上述した本発明の実施形態をより詳細に説明する。
ただし、下記の実施例は、単に説明を目的とするものであり、本発明の範囲を制限するものではない。
図11は、各種試料における正孔伝達物質と金属酸化物の共蒸着薄膜の吸光係数を測定した結果を示すグラフであり、
図12は、各種試料における金属酸化物薄膜の吸光係数を測定した結果を示すグラフである。
【0044】
≪吸光特性測定≫
薄膜状態の吸光特性は、TNATA(4,4’,4”-Tris(N-(2-naphthyl)-N-phenyl-amino)-triphenylamine)[HOMO Level:5.16 eV]のみを高真空(<10-7Torr)下で0.5~1.0Å/s速度で熱蒸着(thermal evaporation)して80nmの厚さの薄膜で準備した試料1(丸数字1)と、
TNATA[HOMO Level:5.16 eV]と、レニウム酸化物(ReOx,Work function:6.0 eV)を1:1の体積比で同一条件で共蒸着して得た試料2(丸数字2)と、
TNATA[HOMO Level:5.16 eV]とモリブデン酸化物(MoOx,Work function:5.7 eV)を1:1の体積比で同一条件で共蒸着して得た試料3(丸数字3)を準備した後、
「Cary 5000 UV spectroscopy」(Varian社製)を用いて可視光線-赤外線(Vis-IR)を照射して吸光係数を測定した。
その結果を
図11に示した。
【0045】
一方、同一条件でレニウム酸化物(ReOx,Work function:6.0 eV)のみを蒸着した試料(丸数字4)と、
モリブデン酸化物(MoOx,Work function:5.7 eV)のみを蒸着した試料(丸数字5)を準備した後、
同一方式で吸光係数を測定した結果を
図12を示した。
【0046】
図11及び
図12の試料1、試料4、試料5の結果から正孔伝達物質(TNATA)又は金属酸化物(MoOx、ReOx)だけでは赤外線吸収能力を示さないことがわかる。
一方、正孔伝達物質(TNATA)とレニウム酸化物の共蒸着薄膜(試料2)又は正孔伝達物質(TNATA)とモリブデン酸化物の共蒸着薄膜(試料3)の場合、1000~1500nm波長帯の短波長赤外線(Short Wave Infra Red)領域の波長を吸収する能力を示すことを確認できる。
【0047】
≪外部量子効率(EQE)の測定≫
〔実施例1〕(RGB-IR)反射型イメージセンサーの製造
ガラス基板の上にITO(仕事関数:4.7eV)をスパッタリングで積層して約100nmの厚さのアノードを形成し、その上にTNATAとモリブデン酸化物(MoOx)とを1:1の体積比で共蒸着して50nmの厚さの赤外線吸収及び正孔伝達複合単一層を形成した。
次いで、化学式1aで表される化合物を蒸着して可視光吸収層を形成した。
次いで、活性層上に50nmの厚さの活性層を形成した。
次いで、活性層上に、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物からなる電子伝達層を形成し、その上にアルミニウム(Al)を熱蒸着して70nmの厚さのカソードを形成して(RGB-IR)反射型イメージセンサーを製造した。
【0048】
〔実施例2〕RGB-IR反射型イメージセンサーの製造
TNATAとレニウム酸化物(ReOx)とを1:1の体積比で共蒸着して50nmの厚さの赤外線吸収及び正孔伝達複合単一層を形成した点を除いては、実施例1と同様にして(RGB-IR)反射型イメージセンサーを製造した。
【0049】
〔比較例1〕反射型イメージセンサーの製造
アノード上にTNATAを50nmの厚さに蒸着して赤外線吸収及び正孔伝達複合単一層の代わりに正孔伝達層を形成した点を除いては、実施例1と同様にして反射型イメージセンサーを製造した。
【0050】
〔実施例3〕(RGB-IR)透過型イメージセンサーの製造
ガラス基板の上にITOをスパッタリングで積層して約100nmの厚さのアノードを形成し、その上にTNATAとモリブデン酸化物(MoOx)とを1:1の体積比で共蒸着して50nmの厚さの赤外線吸収及び正孔伝達複合単一層を形成した。
次いで、化学式1aで表される化合物を蒸着して可視光吸収層を形成した。
次いで、活性層上に50nmの厚さの活性層を形成した。
次いで、活性層上に、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物からなる電子伝達層を形成し、その上にITOをスパッタリングで積層して約70nmの厚さのカソードを形成して(RGB-IR)透過型イメージセンサーを製造した。
【0051】
〔実験例4〕RGB-IR透過型イメージセンサーの製造
TNATAとレニウム酸化物(ReOx)とを1:1の体積比で共蒸着して50nmの厚さの赤外線吸収及び正孔伝達複合単一層を形成した点を除いては、実施例3と同様にして(RGB-IR)透過型イメージセンサーを製造した。
【0052】
〔比較例2〕透過型イメージセンサーの製造
アノード上にTNATAを50nmの厚さに蒸着して赤外線吸収及び正孔伝達複合単一層の代わりに正孔伝達層を形成した点を除いては、実施例3と同様にして透過型イメージセンサーを製造した。
【0053】
<外部量子効率(EQE)の測定>
外部量子効率(EQE)は、「IPCE measurement system」(McScience社、韓国)設備を用いて測定した。
先に、Si光ダイオード(Hamamatsu社、日本)を用いて設備を補正(calibration)した後、実施例1~4及び比較例1及び2によるイメージセンサーを設備に装着して波長範囲約400~1800nm領域で外部量子効率を測定した。
【0054】
図13は、本発明の実施例1、2及び比較例に1によるイメージセンサーの波長に応じた外部量子効率(EQE)を示すグラフであり、
図14は、3Vでの本発明の実施例3、4及び比較例2によるイメージセンサーの波長に応じた外部量子効率(EQE)を示すグラフである。
図13及び
図14から実施例1~4による有機光電素子は、約500nm~600nmの緑色波長領域で良好な外部量子効率(EQE)を示すと同時に1000~1500nm波長帯の短波長赤外線(SWWIR,Short Wave InfraRed)領域でも良好な外部量子効率(EQE)を示すことを確認できる。
また、1V又は3Vの駆動電圧でも短波長赤外線の外部量子効率(EQE)が10%以上(
図14)又は30%以上(
図13)を示すことから低電圧駆動が可能であることを確認できる。
【0055】
図15A、
図15B、
図15C、及び
図15Dは、本発明の実施形態による多様な有機イメージセンサーの概略構成を示す断面図である。
図15A~
図15Dを参照すると、有機イメージセンサー(1500A、1500B、1500C、及び/又は1500D)は、互いに対向する第1電極10及び第2電極20を含み得る。
【0056】
一実施形態において、第1電極10はアノードであり得、第2電極20はカソードであり得るが、これに限定されるのではない。
図15A~
図15Dに示すように、有機イメージセンサー(1500A、1500B、1500C、及び/又は1500D)は、第1電極10と第2電極20との間に一つ以上の吸収層60を含み得、有機イメージセンサー(1500A、1500B、1500C、及び/又は1500D)は、第2電極20(例えば、アノード)と吸収層60との間に電子伝達層40をさらに含み得る。
一実施形態において、電子伝達層40は省略することもできる。
【0057】
一実施形態において、吸収層60は、単一の連続した層であり得る。
例えば、吸収層60は、単一の可視光吸収層50(
図4参照)、又は単一のUV吸収層2050(
図10参照)であり得る。
一実施形態において、吸収層60は、多重の層(60-1~60-N)(Nは正の整数)を含むこともできる。
少なくとも2以上の分離された多重の層(60-1~60-N)は、入射光92の互いに異なる波長領域の光を吸収するように構成することができる。
例えば、多重の層(60-1~60-N)の内の少なくともいずれか1層は、可視光波長領域の入射光を吸収するように構成され、残りの層は非可視光波長領域の入射光(例えば、紫外線波長領域の入射光又は赤外線波長領域の入射光)を吸収するように構成することもできる。
多重の層(60-1~60-N)は、垂直方向D1に沿って垂直にスタックされるか、又は水平方向D2に沿って平行方向にスタックされ得る。
【0058】
図に示すように、垂直方向D1は、赤外線吸収及び正孔伝達複合単一層30の表面30Sに直交又は実質的に直交(例えば、製作公差及び/又は材料許容誤差の範囲内で直交)し、水平方向D2は、表面30Sに平行に又は実質的に平行(例えば、製作公差及び/又は材料許容誤差の範囲内で平行)であり得る。
互いに異なる多重の層(60-1~60-N)は、互いに異なる波長領域の入射光92を吸収するように構成され得る。
互いに異なる波長光線領域は、一つ以上の可視光線波長領域、一つ以上の赤外線波長光線領域、及び一つ以上の紫外線波長領域を含み得る。
分離された多重の層(60-1~60-N)は、可視光線吸収層50又は紫外線吸収層2050の内のいずれか一つであり得る。
【0059】
一実施形態において、互いに異なる多重の層(60-1~60-N)は、相異なる可視光線吸収層、例えば、少なくとも分離された多重の層(60-1~60-N)の内の一部は、(緑色、青色、赤色)有機光電素子(55G、55B、及び/又は55R)の吸収層の内のいずれか1層であり得る。
例えば、分離された多重の層(60-1~60-N)は、紫外線波長領域内の相違する波長領域の光を吸収するように構成されたUV吸収層であり得る。
【0060】
図15Aを参照すると、吸収層60は、お互いに対して水平に(例えば、水平方向D2に)積層され、集合的に積層された層(60-2~60-N)を含む多重の層(60-1~60-N)は、層(60-1)下で垂直に(例えば、方向D1に)移動する。
図15Aに示すように、層(60-2~60-N)は、水平方向に積層されており、層(60-2~60-N)の上部面及び/又は下部面が互いに同一平面であるか、又は実質的に同一平面(例えば、製作公差及び/又は材料許容誤差の範囲内で同一平面)上にあるように形成され得る。
【0061】
図15A~
図15Bを参照すれば、層(60-2~60-N)のそれぞれは少なくとも一つ以上の波長領域の入射光92を吸収することができるように構成されることによって、層(60-1)とは相違する集合的な波長領域の入射光92を吸収することもできる。
例えば、層(60-2~60-N)は、互いに可視光線波長領域の入射光92(例えば、赤色光、緑色光、青色光など)を集合的に吸収するように構成され、層(60-1)は紫外線波長領域の入射光92を吸収するように構成することができる。
一実施形態において、層(60-2~60-N)は、可視光波長領域とは相違する波長領域の入射光92(例えば、紫外線波長領域及び/又は赤外線波長領域)を吸収するように構成することもできる。
例えば、層(60-2~60-N)の内の少なくとも一つが可視光線波長領域の入射光92を吸収するように構成され、残りの内の少なくとも一つが可視光波長領域とは相違する波長領域の入射光92(例えば、紫外線波長領域及び/又は赤外線波長領域)を吸収するように構成することもできる。
【0062】
図15Bを参照すると、層(60-2~60-N)と層(60-1)の相対的な位置関係は
図15Aとは異なって互いに入れ替えることもできる。
つまり、層(60-1)上に層(60-2~60-N)を配置することもできる。
又は、
図15Cを参照すると、多重の層(60-1~60-N)は、水平方向D2に積層された水平積層構造のみを含むこともできる。
図15Cにおいて、多重の層(60-1~60-N)の上部面及び/又は下部面は互いに同一平面であるか、又は実質的に同一平面(例えば、製作公差及び/又は材料許容誤差の範囲内で同一平面)上にあるように形成することもできる。
【0063】
図15Dを参照すると、吸収層60は、第1多重層(60-1~60-y)と第2多重層(60-(y+1)~60-N)を含み、第1多重層と第2多重層は互いに垂直方向D1に積層され得る。
第1多重層と第2多重層を形成する各層は、互いに水平方向D2に積層され得る。
第1多重層と第2多重層のそれぞれの上部面及び/又は下部面は互いに同一平面であるか、又は実質的に同一平面(例えば、製作公差及び/又は材料許容誤差の範囲内で同一平面)上にあるように形成することもできる。
一方、
図15Dにおいて第1多重層に属する一層と第2多重層に属する一層に対する水平方向D2を基準としたオフセット距離(offset distance)は「x」であり得る。
「x」は、実際値(real value)であり得、ヌル値(null value)であり得る。
【0064】
図16は、本発明の一実施形態による電子装置1600の概略構成を示すブロック図である。
図16を参照すると、電子装置1600は、バス1610を通じて共に電気的に接続されたプロセッサー1620、メモリ1630、及びイメージセンサー1640を含むことができる。
イメージセンサー1640は、上述した本発明のものと同一である。
【0065】
メモリ1630は、一時的でないコンピュータ読取可能媒体であり得、コマンドのプログラムを保存することができる。
プロセッサー1620は、保存されたコマンドプログラムを実行して、一つ以上の機能を実行することができる。
例えば、プロセッサー1620は、イメージセンサー1640によって生成された電気信号を処理するように構成される。
プロセッサー1620は、電気信号を処理することに基づく出力(例えば、ディスプレイインターフェース上に表示されるイメージ)を生成するように構成することができる。
【0066】
尚、本発明は、上述の実施形態に限られるものではない。本発明の技術的範囲から逸脱しない範囲内で多様に変更実施することが可能である。
【符号の説明】
【0067】
10 第1電極(アノード)
20 第2電極(カソード)
30 赤外線吸収及び正孔伝達複合単一層
40 電子伝達層
50 可視光吸収層
55(R、G、B) (赤色、緑色、青色)有機光電素子
60 吸収層
60-1~60-N 多重の層
92 入射光
100 有機光電素子
1000 有機積層型(RGB-IR)イメージセンサー
2000 有機積層型(UV-IR)イメージセンサー
2050 UV吸収層