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特許7377019区画貫通処理充填部材、区画貫通処理構造及び区画貫通処理構造の施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-31
(45)【発行日】2023-11-09
(54)【発明の名称】区画貫通処理充填部材、区画貫通処理構造及び区画貫通処理構造の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/94 20060101AFI20231101BHJP
   F16L 5/04 20060101ALI20231101BHJP
   F16L 5/02 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
E04B1/94 F
E04B1/94 T
F16L5/04
F16L5/02 D
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019139181
(22)【出願日】2019-07-29
(65)【公開番号】P2021021275
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 秀康
(72)【発明者】
【氏名】荻野 敦史
(72)【発明者】
【氏名】島本 倫男
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-183259(JP,A)
【文献】特開2017-036787(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62-1/99
F16L 5/02-5/04
H02G 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
仕切り部に形成され、かつ内部に長尺の挿通体が挿通される区画貫通部を防火構造とするために用いる区画貫通処理充填部材であって、
前記区貫通部を充填する充填材を収納する容器と、
前記区画貫通部に配置し、前記充填材を受け止めるための充填材受け具とを備え、
前記充填材受け具は、前記容器の一部に脱着可能に配設されている区画貫通処理充填部材。
【請求項2】
前記容器は、前記充填材を吐出する吐出部を有する請求項1に記載の区画貫通処理充填部材。
【請求項3】
前記容器は、スプレー式容器である請求項1又は2に記載の区画貫通処理充填部材。
【請求項4】
前記充填材受け具は、前記吐出部を覆うように配設されている請求項2に記載の区画貫通処理充填部材。
【請求項5】
前記充填材は、樹脂成分と熱膨張性材料とを含む熱膨張性樹脂組成物から形成される請求項1~4のいずれか1項に記載の区貫通処理充填部材。
【請求項6】
スリーブ状に前記区画貫通部に挿入され、かつスリーブ内部に挿通体が通される挿入部材をさらに備え、
前記挿入部材は、筒状である前記容器の外周面に脱着可能に配設されている請求項1~5のいずれか1項に記載の区貫通処理充填部材。
【請求項7】
前記挿入部材は、耐火材及び不燃材料の少なくともいずれかである請求項6に記載の区画貫通処理充填部材。
【請求項8】
前記挿入部材は、樹脂成分と熱膨張性材料とを含む熱膨張性樹脂組成物から形成される請求項6又は7に記載の区画貫通処理充填部材。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の区画貫通処理充填部材を用いて区画貫通部を防火構造処理した区画貫通処理構造であって、
前記区画貫通部に配置された充填材受け具と、
前記容器に収納された充填材が前記充填材受け具に受け止められて形成した充填構造
とを備える区画貫通処理構造。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか1項に記載の区画貫通処理充填部材を用意する工程と、
前記区画貫通処理充填部材から充填材受け具を取り外し、前記充填材受け具を前記区画貫通部に配置する工程と、
前記容器に収納された充填材を前記区画貫通部に導入する工程と、
前記充填材受け具が前記充填材を受け止め、充填構造を形成する工程
とを含む区画貫通処理構造の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物などの仕切り部に用いる区画貫通処理充填部材、区画貫通処理構造及び区画貫通処理構造の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
集合住宅、オフィスビル、学校等の建築物において、壁等の仕切り部には、ケーブル類、配管類などの長尺の挿通体を通すために、区画貫通部が設けられることがある。区画貫通部は、いずれかの区画で火災が発生した際に、他の区画への延焼を防止するために、防火措置を施した構造(防火構造)にすることが求められている。仕切り部は、2枚の壁部からなり、壁部間が中空部となっている中空壁が一般的である。
【0003】
区画貫通部を防火構造とする方法は、例えば、長尺の挿通体と貫通孔の間隙に、耐火パテや、耐火パテを袋体内部に詰めた耐火パックなどの不定形充填材を充填する方法が知られている。不定形充填材を使用する場合、各壁部の貫通孔内部と、挿通体の間には、耐火材よりなる筒状部材などが合わせて配設されることもある(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
しかし、特許文献1に示されるように、各壁部の貫通孔の内周面と、挿通体の間を耐火パテによって塞ぐ場合には、作業性が悪く、作業者によって性能にばらつきが生じるという問題がある。特許文献2に示す耐火パックを使用すると、作業性は向上するものの、不定形充填材の容積が一定となってしまい、貫通孔の大きさによっては、貫通孔と挿通体の間を適切に塞ぐことができなくなるおそれがある。さらに、不定形充填材により貫通孔と挿通体の間を塞ぐ場合、中空壁においては、各壁部の貫通孔と挿通体の間を充填するために、中空壁の両側から作業を行う必要があり、作業性が低下する。
【0005】
そこで、上記種々の問題を抱えている不定形充填材を充填する方法に代えて、スプレー及びコーキングガン等の液状の充填材を吐出し、貫通孔と挿通体の間を充填して塞ぐ方法(以下、「吐出充填法」と称す。)が提案されている(例えば、特許文献3参照)。スプレー及びコーキングガン等による吐出充填法によって、区画貫通部の充填が容易となり、作業性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6150933号公報
【文献】特許第6348320号公報
【文献】特許第6480775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
区画貫通部に充填材を充填する場合には、区画貫通部に充填材受け具を設置した後に充填材を充填しなければ、充填材を適切に充填できないことがある。そこで、充填材を区画貫通部の適した箇所に留めるために、区画貫通部に充填材を受け止める充填材受け具を設置した後に充填作業を行うことがある。つまり、区画貫通部に充填材を充填する作業には、充填材と充填材受け具を共に準備しておくことを要する。しかし、充填材と充填材受け具は、別部材であり、いずれか一方を手配し忘れた場合には作業が滞ってしまう問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、区画貫通部に充填材を充填する作業を部材の手配忘れで滞らせることのない区画貫通処理充填部材、区画貫通処理構造及び区画貫通処理構造の施工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の要旨は、以下のとおりである。
[1]仕切り部に形成され、かつ内部に長尺の挿通体が挿通される区画貫通部を防火構造とするために用いる区画貫通処理充填部材であって、前記区画貫通部を充填する充填材を収納する容器と、前記区画貫通部に配置し、前記充填材を受け止めるための充填材受け具とを備え、前記充填材受け具は、前記容器の一部に脱着可能に配設されている区画貫通処理充填部材。
[2]前記容器は、前記充填材を吐出する吐出部を有する[1]に記載の区画貫通処理充填部材。
[3]前記容器は、スプレー式容器である[1]又は[2]に記載の区画貫通処理充填部材。
[4]前記充填材受け具は、前記吐出部を覆うように配設されている[2]又は[3]に記載の区画貫通処理充填部材。
[5]前記充填材は、樹脂成分と熱膨張性材料とを含む熱膨張性樹脂組成物から形成される[1]~[4]のいずれかに記載の区貫通処理充填部材。
[6]スリーブ状に前記区画貫通部に挿入され、かつスリーブ内部に挿通体が通される挿入部材をさらに備え、前記挿入部材は、筒状である前記容器の外周面に脱着可能に配設されている[1]~[5]のいずれかに記載の区貫通処理充填部材。
[7]前記挿入部材は、耐火材及び不燃材料の少なくともいずれかである[6]に記載の区画貫通処理充填部材。
[8]前記挿入部材は、樹脂成分と熱膨張性材料とを含む熱膨張性樹脂組成物から形成される[6]又は[7]に記載の区画貫通処理充填部材。
[9][1]~[8]のいずれかに記載の区画貫通処理充填部材を用いて区画貫通部を防火構造処理した区画貫通処理構造であって、前記区画貫通部に配置された充填材受け具と、前記容器に収納された充填材が前記充填材受け具に受け止められて形成した充填構造とを備える区画貫通処理構造。
[10][1]~[8]のいずれかに記載の区画貫通処理充填部材を用意する工程と、前記区画貫通処理充填部材から充填材受け具を取り外し、前記充填材受け具を前記区画貫通部に配置する工程と、前記容器に収納された充填材を前記区画貫通部に導入する工程と、前記充填材受け具が前記充填材を受け止め、充填構造を形成する工程とを含む区画貫通処理構造の施工方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、区画貫通部に充填材を充填する作業を部材の手配忘れで滞らせることのない区画貫通処理充填部材、区画貫通処理構造及び区画貫通処理構造の施工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1の実施形態に係る区画貫通処理部材を示す斜視図(その1)である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る区画貫通処理構造を示す断面図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る区画貫通処理部材における充填材受け具を示す斜視図(その1)である。
図4】本発明の第1の実施形態に係る区画貫通処理部材における充填材受け具を示す斜視図(その2)である。
図5】本発明の第2の実施形態に係る区画貫通処理部材を示す斜視図である。
図6】本発明の第2の実施形態に係る区画貫通処理構造を示す断面図である。
図7】本発明の第3の実施形態に係る区画貫通処理部材を示す斜視図である。
図8】本発明の第3の実施形態に係る区画貫通処理構造を示す断面図である。
図9】本発明の第4の実施形態に係る区画貫通処理構造の被覆機能部材を示す斜視図(その1)である。
図10】本発明の第4の実施形態に係る区画貫通処理構造の被覆機能部材を配置した状態を示す断面図である。
図11】本発明の第4の実施形態に係る区画貫通処理構造の被覆機能部材を示す斜視図(その2)である。本発明の実施形態に係る区画貫通処理構造の被覆機能部材を示す斜視図(その1)である。
図12】本発明のその他の実施形態に係る区画貫通処理部材を示す斜視図である。
図13】本発明のその他の実施形態に係る区画貫通処理構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について実施形態を用いてより詳細に説明する。
【0013】
(第1の実施形態)
[区画貫通処理充填部材]
本発明の第1の実施形態に係る区画貫通処理充填部材1は、図1(A)に示すように、仕切り部に形成され、かつ内部に長尺の挿通体が挿通される区画貫通部を防火構造とするために用いる区画貫通処理充填部材1である。区画貫通処理充填部材1は、区画貫通部を充填する充填材を収納する容器2と、区画貫通部に配置し、充填材を受け止めるための充填材受け具3とを備える。そして、本発明の実施形態に係る区画貫通処理充填部材1は、図1(B)に示すように、充填材受け具3は、容器2の一部に脱着可能に配設されている。
【0014】
区画貫通処理充填部材1は、図2に示すように、仕切り部11の区画貫通部15を防火構造するために用いる部材である。
仕切り部11は、建築物の壁面において区画間(第1の区画Aと、第2の区画B)を仕切る部材であり、仕切り部11の一方の外面11A側から他方の外面11B側に貫通する区画貫通部15を有する。本実施形態における仕切り部11は、中空壁であり、間隔(中空部13)を介して配置される2枚の壁材(仕切り材)12A,12Bから構成される。そのため、区画貫通部15は、一方の壁材12Aに形成された貫通孔13Aと、他方の壁材12Bに形成された貫通孔13Bと、これらの間にある中空部13によって構成される。そして、一方の壁材12Aの外面が仕切り部11の外面11Aを構成し、他方の壁材12Bの外面が仕切り部11の外面11Bを構成する。
挿通体21は、ケーブル類、配管類などであるが、図2ではケーブル21Aと配管21Bの両方が挿通される態様を示す。
【0015】
(容器)
容器2は、内部に充填材を収納可能な形態であり、充填材を吐出可能な容器であれば特に限定はなく、例えば、スプレー式容器、コーキングガン用カートリッジ及びチューブ状容器等が挙げられる。中でも、容器2は、スプレー式容器及びコーキングガン用カートリッジ等の吐出充填法に使用可能なものであることが好ましい。吐出充填法に使用可能な容器2を採用することで、充填の作業性を向上させることができる。
【0016】
また、容器2は、充填材受け具3を脱着可能に配設することができる形態であれば特に限定はなく、例えば、ネジ等による係止、フック等による引掛け、互いの凹凸形状による嵌合のように容器2に充填材受け具3を固定し、脱着可能な形態を取りうる。
容器2に充填材受け具3を配設する位置としては、充填材受け具3の着脱容易性の観点から、容器2の端部(上端、下端、又はその両方)に配設することが好ましい。図1(A)及び図1(B)に示すように、容器2が吐出部2Aを有する形態である場合は、吐出部2Aからの吐出防止及び吐出部2Aの破損防止の観点から、吐出部2Aを覆うように充填材受け具3を配設することが好ましい。
【0017】
《充填材》
容器2に収納する充填材は、区画貫通部15を充填して防火構造とすることが可能な材料であれば特に限定はなく、例えば、耐火パテ、熱膨張性材料及び不燃発泡ウレタンが挙げられる。充填材としては、火災等により加熱されたときに、区画貫通部15内で膨張することにより、耐火性を向上させることができる熱膨張性材料を採用することが好ましい。
【0018】
耐火パテとしては、公知の熱膨張性又は非熱膨張性の粘土状の耐火材を用いることができる。
【0019】
熱膨張性材料としては、加熱することにより発泡する発泡剤、バーミキュライト、熱膨張性黒鉛などの熱膨張性層状無機物が挙げられ、中でも熱膨張性黒鉛が好ましい。熱膨張性黒鉛を使用することで、火災の加熱により適切に膨張され、また、膨張後の膨張残渣の機械強度が優れ、耐火性を良好にしやすくなる。
【0020】
熱膨張性材料の膨張開始温度は、特に限定されないが、例えば、150~350℃であることが好ましく、170~300℃であることがより好ましく、180~280℃であることが更に好ましい。これら下限値以下とすることで、火災以外の加熱により、熱膨張性材料が誤って膨張することを防止する。また、上限値以下とすることで、火災の加熱により確実に熱膨張性材料を膨張させやすくなる。
また、熱膨張性材料の膨張開始温度は、所定量(例えば、100mg)の熱膨張性材料を一定の昇温速度(例えば、10℃/分)で昇温させ、法線方向の力が立ち上がる温度を計測することにより測定可能である。測定装置としては測定温度制御が可能であり、かつ法線方向の応力を測定できるものであればよく、例えばレオメーターを使用すればよい。
熱膨張性部材の膨張倍率は3倍以上であることが好ましく、10倍以上が好ましい。膨張倍率の上限は、特に限定されないが、例えば50倍である。なお、膨張倍率は、熱膨張性部材を電気炉に供給し、600℃で30分間加熱した後、試験片の厚さを測定し、(加熱後の試験片の厚さ)/(加熱前の試験片の厚さ)により算出するとよい。
【0021】
以下、熱膨張性材料が、熱膨張性黒鉛である場合の熱膨張性樹脂組成物について詳細に説明する。熱膨張性樹脂組成物は、樹脂成分と熱膨張性材料とを含有する。熱膨張性樹脂組成物の樹脂成分としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、エラストマーが挙げられる。
熱可塑性樹脂の例としては、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩素化ポリ塩化ビニル樹脂(CPVC)、フッ素樹脂、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリレート、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリブタジエン、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリアセタール、ポリアミド、ポリエチレン(PE)およびポリプロピレン(PP)、エチレン酢酸ビニル(EVA)等のポリオレフィン、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体(EPDM)、クロロプレン(CR)、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリカーボネート、ポリスチレン(PS)、ポリフェニレンサルファイド、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル-スチレン-アクリロニトリル共重合体(ASA)、アクリロニトリル/エチレン-プロピレン-ジエン/スチレン共重合体(AES)等が挙げられる。
熱硬化性樹脂の例としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、熱硬化性ポリイミド等が挙げられる。
【0022】
エラストマーの例としては、天然ゴム、シリコーンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、ニトリルブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、およびフッ素ゴム等のゴムが挙げられる。また、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、エステル系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマー、および塩化ビニル系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマーも挙げられる。
熱膨張性樹脂組成物の樹脂成分は、1種であってもよいし2種以上を組み合わせてもよい。
【0023】
熱膨張性樹脂組成物は、可塑剤を含有してもよい。可塑剤は、樹脂成分がポリ塩化ビニル樹脂などの熱可塑性樹脂である場合に好ましく使用される。可塑剤の具体的としては、例えば、ジ-2-エチルヘキシルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジヘプチルフタレート(DHP)、ジイソデシルフタレート(DIDP)等のフタル酸エステル可塑剤、ジ-2-エチルヘキシルアジペート(DOA)、ジイソブチルアジペート(DIBA)、ジブチルアジペート(DBA)等のアジピン酸エステルや、アジピン酸ポリエステルなどの脂肪酸エステル可塑剤、エポキシ化大豆油等のエポキシ化エステル可塑剤、トリー2-エチルヘキシルトリメリテート(TOTM)、トリイソノニルトリメリテート(TINTM)等のトリメリット酸エステル可塑剤、トリメチルホスフェート(TMP)、トリエチルホスフェート(TEP)等の燐酸エステル可塑剤、鉱油等のプロセスオイルなどが挙げられる。
可塑剤は1種もしくは2種以上を使用することができる。
熱膨張性樹脂組成物が可塑剤を含有する場合、熱膨張性樹脂組成物における可塑剤の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、例えば0.3質量部以上150質量部以下の範囲であり、好ましくは10質量部以上100質量部以下の範囲である。可塑剤は、これら下限値以上とすると、柔軟性が良好になりやすく、上限値以下となると、充填構造に適度な強度が付与される。
【0024】
樹脂成分と可塑剤の合計含有量は、樹脂組成物全量基準で、10質量%以上90質量%以下が好ましく、25質量%以上80質量%以下がより好ましく、40質量%以上70質量%以下がさらに好ましい。これら下限値以上とすることで、柔軟性を確保して、充填を容易にすることができる。また、上限値以下とすることで、熱膨張性黒鉛、無機充填剤などの成分を十分な量配合することが可能になる。
なお、樹脂成分と可塑剤の合計含有量とは、樹脂成分と可塑剤の両方が含有される場合には、これらの合計含有量を意味し、可塑剤を含有しない場合には樹脂成分単独の含有量を意味する。
【0025】
熱膨張性黒鉛は、従来公知の物質であり、天然鱗片状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等の粉末を、濃硫酸、硝酸、セレン酸等の無機酸と、濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等の強酸化剤とにより処理してグラファイト層間化合物を生成させたものである。生成された熱膨張性黒鉛は炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物である。
本発明に使用される熱膨張性黒鉛は、酸処理して得られた熱膨張性黒鉛がアンモニア、脂肪族低級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等で中和されたものなども使用することもできる。
脂肪族低級アミンとしては、例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン等が挙げられる。
アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物としては、例えば、カリウム、ナトリウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム等の水酸化物、酸化物、炭酸塩、硫酸塩、有機酸塩等が挙げられる。
【0026】
熱膨張性黒鉛の粒度は、特に限定されないが、20~200メッシュの範囲のものが好ましい。粒度は、下限値以上となると黒鉛の膨張度が大きくなりやすく、発泡性が良好になる。また、上限値以下とすることで、樹脂と混練する際の分散性が良好となる。
【0027】
熱膨張性樹脂組成物における熱膨張性黒鉛の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、例えば3質量部以上300質量部以下である。熱膨張性黒鉛の含有量は、3質量部以上となることで、熱膨張性が良好となる。また、300質量部以下となることで、充填容易性が向上する。これら観点から、熱膨張性黒鉛の含有量は、好ましくは10質量部以上200質量部以下の範囲であり、より好ましくは15質量部以上100質量部以下の範囲である。
【0028】
熱膨張性樹脂組成物は、さらに無機充填材を含有してもよい。無機充填材は、一般に熱膨張性樹脂組成物に使用されている無機充填材であれば、特に限定はない。具体的には、例えば、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドーンナイト、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム、タルク、クレー、マイ力、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セビオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカバルン、窒化アルミニウム、亜リン酸アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコニア鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、脱水汚泥等が挙げられる。無機充填材は一種もしくは二種以上を使用することができる。
無機充填剤を含有する場合、熱膨張性樹脂組成物における無機充填材の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、好ましく3質量部以上200質量部以下の範囲であり、より好ましくは10質量部以上150質量部以下の範囲である。
【0029】
また本発明に使用する熱膨張性樹脂組成物には、その物性を損なわない範囲で、必要に応じて、熱安定剤、滑剤、加工助剤、酸化防止剤、帯電防止剤、顔料、架橋剤、架橋促進剤等の熱膨張性樹脂組成物に一般的に使用される添加剤が添加されてもよい。これらの中では加工助剤を使用することが好ましい。
【0030】
熱膨張性部材は、例えば以下のようにして製造することができる。まず、所定量の樹脂成分、熱膨張性材料、及びその他の必要に応じて配合される添加剤を、混練ロールなどの混合機で混合して、熱膨張性樹脂組成物を得る。熱膨張性樹脂組成物は、適宜溶剤が添加されて、希釈されてもよい。
【0031】
不燃発泡ウレタンは、難燃性のウレタン樹脂組成物からなり、吐出充填法によりウレタン樹脂組成物を区画貫通部15に吐出すると、ウレタン樹脂組成物はすぐに発泡し、時間が経つと発泡した状態で硬化し、区画貫通部15内を充填する。ウレタン樹脂組成物は、難燃性かつ発泡性のウレタン樹脂組成物であり、好ましくは硬化性ウレタン樹脂組成物である。
【0032】
ウレタン樹脂組成物は、主剤としてのポリイソシアネート化合物、硬化剤としてのポリオール化合物、触媒、発泡剤、整泡剤および添加剤を含む。添加剤としては、リン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤、ハロゲン含有難燃剤および金属水酸化物からなる群より選ばれる少なくとも一つの難燃剤を使用するとよい。
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート等が挙げられる。
ポリオール化合物としては、例えばポリラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、芳香族ポリオール、脂環族ポリオール、脂肪族ポリオール、ポリエステルポリオール、ポリマーポリオール、ポリエーテルポリオール等が挙げられる。
【0033】
ウレタン樹脂組成物に使用する触媒としては、泡化触媒、三量化触媒及び樹脂化触媒等が挙げられる。
ウレタン樹脂組成物に使用する発泡剤としては、例えば、水、低沸点の炭化水素、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)、エーテル化合物等の有機系物理発泡剤、窒素ガス、酸素ガス、アルゴンガス、二酸化炭素ガス等の無機系物理発泡剤等が挙げられる。
ウレタン樹脂組成物に使用する整泡剤としては、例えば、ポリオキシアルキレン整泡剤、シリコーン整泡剤等の界面活性剤等が挙げられる。
【0034】
ウレタン樹脂組成物を使用する場合、ポリイソシアネート化合物を含む1液と、ポリオール化合物を含む2液とを別の収納室に収納して、各収納室から供給された1液と2液とを、混合部などで混合して得たウレタン樹脂組成物を吐出させるとよい。各収納室は、別々の容器に設けられてもよいし、1つの容器内に2つの収納室が設けられてもよい。ポリオール化合物を含む2液には、通常、触媒、発泡剤、整泡剤、難燃剤、その他の添加剤が含まれる。
容器2としては、取り扱い性の観点から、1つの容器内に2つの収納室が設けられることが好ましい。そして、その容器を区画貫通処理充填部材1の容器2とするとよい。
別々の容器の場合には、一方の容器を区画貫通処理充填部材1の容器2としてもよい。また、両方の容器を区画貫通処理充填部材1の容器2としてもよい。この場合、2つの容器2それぞれに充填受け具3が設けられることになるので、後述する図2に示すように中空壁などに対して充填受け具3が2つ必要とされる場合などに好適である。
【0035】
本発明に使用するウレタン樹脂組成物には、その物性を損なわない範囲で、必要に応じて、熱安定剤、滑剤、加工助剤、酸化防止剤、帯電防止剤、顔料、架橋剤、架橋促進剤等のウレタン樹脂組成物に一般的に使用される添加剤が添加されてもよい。
【0036】
(充填材受け具)
充填材受け具3は、貫通孔13A側より挿入される充填材を受け止め、区画貫通部15を充填材で充填することに寄与する。
充填材受け具3は、金属、樹脂材料、ゴム材料などにより形成される。充填材受け具3は、例えば、図3に示すように、2つに分割されて一対の分割片30A,30Bからなり、分割片30A,30Bが突き合わされた状態で構成される。分割片30A,30Bは、例えば、互いの突き合わせ面それぞれに凸部、凹部などが設けられ、それらが嵌め合わされることなどで、互いに固定されてもよい。
充填材受け具3は、キャップ状であり、天面31と、天面31に立設される側面32とを有し、側面32は充填材を十分に受け止められるように一定の高さを有する。充填材受け具3(側面32)の内径は、貫通孔13Aの直径よりも小さくなる。また、天面31には、挿通体21が通されるための孔31Aが設けられる。
孔31Aは、円形でもよいが、挿通体21の形状に応じて円形以外のいかなる形状でもよい。孔31Aは、挿通体21のサイズより小さいものでもよい。また、孔31Aの代わりに切り込みであってもよい。孔31Aのサイズが挿通体21より小さくても、また、孔31Aの代わりに切り込みが設けられても、充填材受け具3がゴム、樹脂材料で形成される場合には、挿通体21が孔31A(又は切り込み)に挿入されると、天面31が撓んで孔31A(又は切り込み)内部に挿通体21を挿入できる。
【0037】
本実施形態では、充填材受け具3は、天面31があることで、区画貫通部15の挿通体21の軸方向において、貫通孔13Aから吐出される充填材5を効率的に受け止めることができる。つまり、天面31は、区画貫通部15の挿通体21の軸方向における充填材を受け止める受け部としての機能を有する。天面31は、挿通体21の軸方向に対して、傾斜する面、軸方向に垂直な面、又はこれらの組み合わせであることが好ましく、充填材を良好に受け止める観点から、垂直な面を含むことがより好ましい。
【0038】
なお、充填材受け具3は、上記した構成に限定されず、容器2に配設可能であって、区画貫通部15で充填材を受け止められる部材であればいかなる形状であってもよい。例えば、充填材受け具3は、図4に示すように、2つに分割しておらず、1体型のものであってもよい。充填材受け具3は、キャップ状であり、天面38と側面39とを有し、天面38に孔38Aが設けられる。また、充填材受け具3には、孔38Aから外周面に向かうスリット37Aを有しており、スリット37Aは、天面38及び側面39にわたって形成される。充填材受け具3はスリット37Aを有することで、2つに分割されなくても、挿通体21をスリット37Aを介して孔38Aの内部に挿入させることができる。なお、充填材受け具3においても、孔38Aの代わりに天面38に切り込みが設けられてもよい。
【0039】
充填材受け具3としては、充填材5を受け止めることが可能な材料であれば特に限定はなく、例えば、樹脂系部材、繊維系部材、金属系部材、ガラス及び木材等が挙げられる。
樹脂系部材としては、例えば、ポリエチレン(PE)系やポリプロピレン(PP)系等のポリオレフィン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS)樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、エチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂、各種ナイロン(Ny)等のポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂(PVDC)等が挙げられる。
繊維系部材としては、例えば、薄葉紙、クラフト紙、チタン紙、リンター紙及び板紙等が挙げられる。
金属系部材としては、例えば、アルミニウム、鉄、チタン、マグネシウム、ステンレス鋼及び銅等が挙げられ、これらの単体及びその合金を含む。
充填材受け具3は、上記のうちの2種以上の部材を複合した複合部材であってもよい。
【0040】
本発明の第1の実施形態に係る区画貫通処理充填部材1によれば、区画貫通部15に充填材を充填する作業に要する、充填材及び充填材受け具3が一体となっているため、いずれか一方を手配し忘れることがなく、作業を滞らせることがない。
【0041】
[区画貫通処理構造]
本発明の第1の実施形態に係る区画貫通処理構造は、図2に示すように、上述の区画貫通処理充填部材1を用いて区画貫通部15を防火構造処理した区画貫通処理構造であって、区画貫通部15に配置された充填材受け具3と、容器に収納された充填材が充填材受け具3に受け止められて形成した充填構造5とを備える。
【0042】
本発明の第1の実施形態に係る区画貫通処理構造によれば、区画貫通部15の一方の貫通孔13Aと他方の貫通孔13Bのそれぞれに対して処理を施すことによって、貫通孔13A,13Bのそれぞれが充填材による充填構造5によって覆われるので、区画貫通部15の貫通孔13A、13Bとが連通するのを防止することができる。よって、本発明の実施形態に係る区画貫通処理構造により、区画貫通部15に適切な防火構造を形成することができる。
【0043】
[区画貫通処理構造の施工方法]
本発明の第1の実施形態に係る区画貫通処理構造の施工方法は、上述の区画貫通処理充填部材1を用意する工程と、区画貫通処理充填部材1から充填材受け具3を取り外し、充填材受け具3を区画貫通部15に配置する工程と、充填材を区画貫通部15に導入する工程と、充填材受け具3が充填材を受け止め、充填構造5を形成する工程とを含む。
【0044】
本発明の第1の実施形態に係る区画貫通処理構造の施工方法によれば、区画貫通部15の一方の貫通孔13Aが、充填材による充填構造5によって覆われるので、区画貫通部15の一方の貫通孔13Aと他方の貫通孔13Bとが連通するのも防止される。よって、本発明の実施形態に係る区画貫通処理構造の施工方法により、区画貫通部15に適切な防火構造を形成することができる。
【0045】
(第2の実施形態)
第2の実施形態において第1の実施形態と相違する点は、図5に示すように、スリーブ状に区画貫通部15に挿入され、かつスリーブ内部に挿通体21が通される挿入部材4をさらに備える点である。以下、第2の実施形態について、第1の実施形態との相違点を説明する。また、以下では、異なる実施形態の説明でも、同一の構成を有する部材には同一の符号を付す。
【0046】
挿入部材4は、筒状である容器2の外周面に脱着可能に配設されている。
挿入部材4は、図5に示すようなスリーブ状である、又は、シート状若しくはロール状でありスリーブ状に変形可能なものである。挿入部材4がスリーブ状に変形可能なものとは、シート状若しくはロール状のものを端部と端部とを向かい合わせてスリーブ状にして区画貫通部15に挿入するものをいう。挿入部材4の厚さは特に限定されないが、例えば0.01~10mm、好ましくは0.05~5mmである。挿入部材4は、スリーブ状に変形可能なように、柔軟性を有するとよい。また、スリーブ状の挿入部材4は、挿通体21を内部に配置することを容易にするために、図5に示すような軸方向の両端間に切れ込み4Aがあるとよい。
【0047】
挿入部材4は、耐火材及び不燃材料の少なくともいずれかより構成される。耐火材は、加熱により膨張する熱膨張性部材、又は、水酸化アルミニウム及び水酸化マグネシウム等の水酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸化物、酸化マグネシウム等の酸化物、リン及びリン化合物等の無機材料を含む樹脂組成物であるパテ状混合物であることが好ましい。挿入部材として4は、例えば、充填材として上述した熱膨張性材料と同等のものを用いることができる。熱膨張性部材は、火災時に膨張することで火災の延焼を防止する。挿入部材4としての熱膨張部材は、熱膨張性樹脂組成物より形成される。熱膨張性樹脂組成物は、樹脂成分と熱膨張性材料とを含有する。熱膨張性部材が、樹脂成分を含有する熱膨張性樹脂組成物により形成されることで、挿入部材4の湾曲や変形が容易となり、上記のとおりにシート状若しくはロール状のものをスリーブ状にすることができる。
挿入部材4における不燃材料とは、建築基準法及び建築基準法施行令において定められるものである。挿入部材4における不燃材料としては、モルタル、鋼製スリーブなどの金属管、無機繊維やその成形体などが挙げられる。
【0048】
挿入部材4は、図6に示すように、外周面が貫通孔13A,13Bの内周面の形状に適合できるように、円形、楕円形、又は、これらに近似する形状を有すればよい。挿入部材4の外周面が貫通孔13A,13Bの内周面の形状に適合することで、中空部13と仕切り部11の外部が連通することを防止することができる。
【0049】
本発明の第2の実施形態に係る区画貫通処理構造の施工方法は、充填材受け具3を区画貫通部15に配置する工程の前に、区画貫通部15に挿入部材4を配置する工程をさらに含むことが好ましい。当該工程を含むことで、区画貫通部15に、一方の貫通孔13Aから他方の貫通孔13Bまで通される挿入部材4を設けることになり、中空部13と仕切り部11の外部が連通することを防止することができる。
【0050】
本発明の第2の実施形態に係る区画貫通処理充填部材1によって処理を行うことで、区画貫通部15の一方の貫通孔13Aが充填構造5によって覆われ、区画貫通部15に挿入部材4を設けることで中空部13と仕切り部11の外部が連通することを防止することができるので、片側施工により区画貫通部15に適切な防火構造を形成することができる。
【0051】
(第3の実施形態)
第3の実施形態において第1の実施形態と相違する点は、図7に示すように、充填材受け具3に代わって、スリーブ状に区画貫通部15に挿入され、かつスリーブ内部に挿通体21が通される挿入部材4を備える点である。以下、第3の実施形態について、第1の実施形態との相違点を説明する。また、以下では、異なる実施形態の説明でも、同一の構成を有する部材には同一の符号を付す。
【0052】
第3の実施形態における挿入部材4は、充填材受け具としての機能を発揮する。すなわち、容器2から吐出などされた充填材は、挿入部材4の内周面に積層するようにして充填され、充填構造5が形成される。
挿入部材4は、外周面が貫通孔13A,13Bの内周面の形状に適合するものであり、図8に示すように、区画貫通部15に挿入することで中空部13と仕切り部11の外部が連通することを防止する。
なお、挿入部材4の詳細については、第2の実施形態の記載と重複するので省略する。
【0053】
第3の実施形態においては、挿入部材4が第1の実施形態における充填材受け具3としての機能を発揮することで、区画貫通部15の一方の貫通孔13Aが充填構造5によって覆うことができる。また、挿入部材4が区画貫通部15に設けられることで中空部13と仕切り部11の外部が連通することを防止することができる。よって、第3の実施形態に係る区画貫通処理充填部材1は、片側施工により区画貫通部15に適切な防火構造を形成することができる。
【0054】
(第4の実施形態)
第4の実施形態において第1の実施形態と相違する点は、図9に示すように、被覆機能部材50をさらに備える点である。以下、第4の実施形態について、第1の実施形態との相違点を説明する。また、以下では、異なる実施形態の説明でも、同一の構成を有する部材には同一の符号を付す。
【0055】
被覆機能部材50は、充填構造5によって覆われた区画貫通部15の一方の貫通孔13Aをさらに覆う部材である。被覆機能部材50は、金属、樹脂材料、ゴム材料などにより形成される。被覆機能部材50は、例えば、図9に示すように、2つに分割されて一対の分割片50A,50Bからなり、分割片50A,50Bが突き合わされた状態で構成される。分割片50A,50Bは、例えば、互いの突き合わせ面それぞれに凸部、凹部などが設けられ、それらが嵌め合わされることなどで、互いに固定されてもよい。
被覆機能部材50は、キャップ状であり、天面51と、天面51に立設される側面52とを有する。被覆機能部材50(側面52)の内径は、貫通孔13Aの直径よりも大きくなる。また、天面51には、挿通体21が通されるための孔51Aが設けられる。
孔51Aは、円形でもよいが、挿通体21の形状に応じて円形以外のいかなる形状でもよい。孔51Aは、挿通体21のサイズより小さいものでもよい。また、孔51Aの代わりに切り込みであってもよい。孔51Aのサイズが挿通体21より小さくても、また、孔51Aの代わりに切り込みが設けられても、被覆機能部材50がゴム、樹脂材料で形成される場合には、挿通体21が孔51A(又は切り込み)に挿入されると、天面51が撓んで孔51A(又は切り込み)内部に挿通体21を挿入できる。
【0056】
被覆機能部材50は、シート状カバー材3によって貫通孔13Aが覆われた後に、図10に示すように、仕切り部11の外面11Aに取り付けられる。ここで、被覆機能部材50は、上記のように2つの分割片50A,50Bに分割されていることで、挿通体21を両側から挟み込むようにして突き合わされて外面11Aに取り付けるとよい。
また、被覆機能部材50は、仕切り部11の外面11Aに粘着剤、接着剤、ビス、タッカーなどの公知の固定手段によって固定されてもよいし、外面11Aに凹部や凸部などが設けられ、被覆機能部材50は嵌合などにより外面11Aに固定されてもよい。
【0057】
被覆機能部材50は、化粧材としての機能を発揮するものである。被覆機能部材50は、化粧材としての機能に限定されず、様々な機能を区画貫通処理構造に付与することができる。例えば、被覆機能部材50は、区画貫通処理構造55に遮音、防臭、制振などの機能を付与してもよい。なお、遮音性能、防臭性能とは、一方の外面11A(又は11B)側から他方の外面11B(又は11A)に音漏れや、臭い漏れなどが生じることを防止する機能である。また、制振性能は、挿通体21が振動することを防止する機能である。
【0058】
被覆機能部材50は、貫通孔13Aを覆うことで、一定の遮音性能、及び防臭性能を発揮し、また、挿通体21を孔51Aの内周面により支持することで一定の制振性能を発揮するが、被覆機能部材50は、所望する機能に応じて材料を適宜選択すればよい。例えば、被覆機能部材50は、遮音機能を付与したい場合には、発泡体、ゴム材料などの遮音材により形成するとよいし、防臭機能を付与したい場合には、被覆機能部材50を構成する樹脂材料、ゴム材料などに防臭剤、脱臭剤などを配合するとよい。また、被覆機能部材50は、制振機能を付与したい場合には、ゴム材料などにより形成するとよい。さらに、被覆機能部材50には、付与したい機能に応じて、その内面(例えば、天面51の内面)などに追加的な部材を取り付けてもよく、例えば、遮音材、防臭剤、脱臭剤などを取り付けてもよい。
【0059】
以上のように、本実施形態では、区画貫通処理構造に被覆機能部材50を設けることで、区画貫通部15に適切な防火構造を形成しつつ、様々な機能を付与することができる。また、被覆機能部材50を取り付ける場合でも、部品点数の増加を防止でき、また、全ての作業を仕切り部11の一方側(外面11A側)から行うことができるので作業性が向上する。
【0060】
なお、被覆機能部材は、上記した構成に限定されない。例えば、被覆機能部材57は、図11に示すように、2つに分割しておらず、1体型のものであってもよい。被覆機能部材57は、上記した被覆機能部材50と同様に、キャップ状であり、天面58と側面59とを有し、天面58に孔58Aが設けられる。また、被覆機能部材57には、孔58Aから外周面に向かうスリット57Aを有しており、スリット57Aは、天面58及び側面59にわたって形成される。被覆機能部材57はスリット57Aを有することで、2つに分割されなくても、挿通体21をスリット57Aを介して孔58Aの内部に挿入させることができる。なお、被覆機能部材57においても上記した被覆機能部材50と同様に、孔58Aの代わりに天面58に切り込みが設けられてもよい。
【0061】
なお、被覆機能部材は、上記構成に限定されず、他のいかなる構成であってもよく、例えば、3つ以上に分割されてもよい。また、例えば、被覆機能部材は、仕切り部11(すなわち、外面11A)に固定されていたが、仕切り部11に固定される必要はなく、例えば、シート状カバー材及び挿入部材のいずれかに固定されてもよい。この場合、被覆機能部材は、外周側からシート状カバー材及び挿入部材のいずれかに接着剤、粘着剤、ビス、タッカーなどの公知の固定手段によって固定されてもよいし、これらに嵌合などされることで固定されてもよい。
【0062】
(その他の実施形態)
例えば、以上の説明では、容器2に配設する充填材受け具3は、1つとして示したが、図12に示すように、容器2に配設する充填材受け具3が複数であってもよい。容器2に充填材受け具3を複数配設する形態は、図12に示したように、容器2の異なる端部に設けてもよく、一端部に充填材受け具3を重ねて配設してもよい。
【0063】
また、以上の説明では、仕切り部11は、内部に中空部13がある中空壁であったが、中空壁に限定されず、中空が設けられない壁であってもよく、図13示すように、例えば1枚の壁材からなるものでもよい。また、仕切り部11は、建築物の壁に限定されず、建築物の天井、床であってもよい。仕切り部は、天井、床の場合でも、2枚の仕切り材の間に中空部を有する構造であってもよいし、中空部がない構造であり、例えば1枚の仕切り材から構成されてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1…区画貫通処理充填部材
2…容器
3…充填材受け具
4…挿入部材
5…充填構造
11…仕切り部
13…中空部
15…区画貫通部
21…挿通体
50,57…被覆機能部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13