(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-31
(45)【発行日】2023-11-09
(54)【発明の名称】基板処理方法および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20231101BHJP
H01L 21/027 20060101ALI20231101BHJP
B08B 3/10 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
H01L21/304 648G
H01L21/304 647Z
H01L21/304 643A
H01L21/30 572B
B08B3/10 Z
(21)【出願番号】P 2019156360
(22)【出願日】2019-08-29
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】鰍場 真樹
(72)【発明者】
【氏名】村元 僚
(72)【発明者】
【氏名】宗徳 皓太
(72)【発明者】
【氏名】難波 敏光
(72)【発明者】
【氏名】吉原 直彦
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-077069(JP,A)
【文献】特開2002-261068(JP,A)
【文献】特開2006-093473(JP,A)
【文献】特開2006-303143(JP,A)
【文献】特開2017-175041(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/42
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面と前記第1の面と反対の第2の面とを有する基板を保持する工程と、
前記基板の前記第2の面上に、加圧されているオゾン水を配置する工程と、
前記基板の処理のためのユースポイントで前記オゾン水を加熱する工程と、
前記基板の前記第2の面の少なくとも一部に間隔を空けて対向する対向面を有する圧力保持部を配置する工程と、
を備え
、
前記オゾン水を配置する工程は、前記基板の前記第2の面の少なくとも一部と前記圧力保持部の前記対向面との間に前記オゾン水を供給する工程を含み、
前記圧力保持部は、
前記基板の前記第2の面に間隔を空けて対向する主部と、
前記主部の縁に配置され、前記主部から前記基板の前記第2の面へ向かって延び、前記基板の前記第2の面に対向するウイング部と、
を含む、基板処理方法。
【請求項2】
前記ウイング部は、前記基板の前記第2の面にギャップ長HGを空けて対向しており、かつ内周長LIの筒形状を有しており、
前記圧力保持部は、前記基板の前記第2の面と前記主部との間へ前記オゾン水を供給し断面積SCを有する供給部を含み、
SC > LI・HG
が満たされている、請求項
1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記圧力保持部は、前記オゾン水を受け入れるための複数の導入路を有しており、
前記オゾン水を配置する工程は、前記圧力保持部の前記複数の導入路へ前記オゾン水を導入する工程を含む、請求項
1または2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
第1の面と前記第1の面と反対の第2の面とを有する基板を保持する工程と、
前記基板の前記第2の面上に、加圧されているオゾン水を配置する工程と、
前記基板の処理のためのユースポイントで前記オゾン水を加熱する工程と、
前記基板の前記第2の面の少なくとも一部に間隔を空けて対向する対向面を有する圧力保持部を配置する工程と、
を備え
、
前記オゾン水を配置する工程は、前記基板の前記第2の面の少なくとも一部と前記圧力保持部の前記対向面との間に前記オゾン水を供給する工程を含み、
前記圧力保持部は、前記オゾン水を受け入れるための複数の導入路を有しており、
前記オゾン水を配置する工程は、前記圧力保持部の前記複数の導入路へ前記オゾン水を導入する工程を含む、基板処理方法。
【請求項5】
前記オゾン水を加熱する工程は、
前記基板を加熱する工程と、
前記基板からの熱を前記オゾン水へ伝導させる工程と、
を含む、請求項1
から4のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記基板を加熱する工程は、前記基板を前記第2の面から加熱する工程を含む、請求項
5に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記基板を加熱する工程は、前記基板を前記第1の面から加熱する工程を含む、請求項
5に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記オゾン水を加熱する工程は、第1の温度を有する前記オゾン水に、前記第1の温度よりも高い第2の温度を有する温水を混合する工程を含む、請求項1
から4のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記圧力保持部は、前記オゾン水を通すためのオゾン水経路と、前記温水を通すための温水経路とを有しており、前記オゾン水経路は前記圧力保持部内で前記温水経路に合流しており、前記オゾン水経路の断面積は、前記温水経路から離れた部分に比して、前記温水経路につながる部分において小さい、請求項8に記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記オゾン水を配置する工程は、前記基板の前記第2の面上に配置された前記オゾン水の圧力を制御する工程を含む、請求項1から
9のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項11】
前記圧力保持部の前記複数の導入路へ前記オゾン水を導入する工程は、前記複数の導入路の各々の断面積よりも大きな断面積を有する配管から前記複数の導入路へ前記オゾン水を分岐させる工程を含む、請求項10に記載の基板処理方法。
【請求項12】
第1の面と前記第1の面と反対の第2の面とを有する基板を保持する工程と、
前記基板の前記第2の面上に、加圧されているオゾン水を配置する工程と、
を備え、前記オゾン水を配置する工程は、前記基板の前記第2の面上に配置された前記オゾン水の圧力を制御する工程を含
み、
前記基板の前記第2の面の少なくとも一部に間隔を空けて対向する対向面を有する圧力保持部を配置する工程をさらに備え、
前記オゾン水を配置する工程は、前記基板の前記第2の面の少なくとも一部と前記圧力保持部の前記対向面との間に前記オゾン水を供給する工程を含み、
前記圧力保持部は、
前記基板の前記第2の面に間隔を空けて対向する主部と、
前記主部の縁に配置され、前記主部から前記基板の前記第2の面へ向かって延び、前記基板の前記第2の面に対向するウイング部と、
を含む、基板処理方法。
【請求項13】
第1の面と前記第1の面と反対の第2の面とを有する基板を保持する工程と、
前記基板の前記第2の面上に、加圧されているオゾン水を配置する工程と、
を備え、前記オゾン水を配置する工程は、前記基板の前記第2の面上に配置された前記オゾン水の圧力を制御する工程を含
み、
前記基板の前記第2の面の少なくとも一部に間隔を空けて対向する対向面を有する圧力保持部を配置する工程をさらに備え、
前記オゾン水を配置する工程は、前記基板の前記第2の面の少なくとも一部と前記圧力保持部の前記対向面との間に前記オゾン水を供給する工程を含み、
前記圧力保持部は、前記オゾン水を受け入れるための複数の導入路を有しており、
前記オゾン水を配置する工程は、前記圧力保持部の前記複数の導入路へ前記オゾン水を導入する工程を含む、基板処理方法。
【請求項14】
第1の面と前記第1の面と反対の第2の面とを有する基板を処理するための基板処理装置であって、
前記基板を保持する基板保持部と、
前記基板の前記第2の面上に、加圧されているオゾン水を配置する圧力保持部と、
前記加圧されているオゾン水の圧力を制御する圧力制御部と、
を備え
、
前記圧力保持部は、前記基板の前記第2の面の少なくとも一部に間隔を空けて対向する対向面を有しており、前記基板の前記第2の面の少なくとも一部と前記圧力保持部の前記対向面との間に前記オゾン水が供給され、
前記圧力保持部は、
前記基板の前記第2の面に間隔を空けて対向する主部と、
前記主部の縁に配置され、前記主部から前記基板の前記第2の面へ向かって延び、前記基板の前記第2の面に対向するウイング部と、
を含む、基板処理装置。
【請求項15】
第1の面と前記第1の面と反対の第2の面とを有する基板を処理するための基板処理装置であって、
前記基板を保持する基板保持部と、
前記基板の前記第2の面上に、加圧されているオゾン水を配置する圧力保持部と、
前記加圧されているオゾン水の圧力を制御する圧力制御部と、
を備え
、
前記圧力保持部は、前記基板の前記第2の面の少なくとも一部に間隔を空けて対向する対向面を有しており、
前記基板の前記第2の面の少なくとも一部と前記圧力保持部の前記対向面との間に前記オゾン水を供給するために前記オゾン水が導入されるように、前記圧力保持部は、前記オゾン水を受け入れるための複数の導入路を有している、基板処理装置。
【請求項16】
前記基板の処理のためのユースポイントで前記オゾン水を加熱する加熱部
をさらに備える、
請求項14または15に記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理方法および基板処理装置に関し、特に、オゾン水を用いた基板処理方法と、そのために用いられる基板処理装置とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ウエハ(基板)上でレジスト膜を用いた工程が行われた後、多くの場合、基板からこのレジスト膜が除去される。特に、イオン注入工程用の注入マスクとして用いられたレジスト膜は除去されにくいことから、一般に、強い作用を有する洗浄液が用いられる。強い作用を有する洗浄液としては、硫酸・過酸化水素水・混合液(sulfuric acid/hydrogen peroxide mixture:SPM)が、従来から広く知られている。しかしながら、廃液処理の負担が大きいことなどから、近年、SPMを用いない基板処理方法が求められている。
【0003】
特開2008-311591号公報は、硫酸などの環境負荷の大きい薬剤を使用せずに、基板の表面に残留している残留有機物を、オゾン水中に基板を浸漬させて除去する基板処理方法を開示している。この方法は、基板に付着する残留有機物の除去処理の効率を向上させることを意図している。具体的には、加熱手段において予め加熱されたオゾン水が、密閉された基板処理槽へ供給され、大気圧よりも高い高圧状態とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記公報に記載の技術によれば、基板処理槽内においてオゾン水が基板に触れる位置が、オゾン水のユースポイント(POU:Point of Use)である。この技術によれば、オゾン水は、ユースポイントに達する前に、加熱手段において予め加熱される。よってオゾン水は、ユースポイントに位置するときだけでなく、加熱手段からユースポイントに達するまでの期間も高温状態にある。本発明者らの検討によれば、この場合、オゾン水がユースポイントに達する前にオゾン水のオゾン濃度が低下しやすい。その結果、オゾンによる処理効果が弱くなってしまう。
【0006】
本発明は以上のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、基板へのオゾンの作用を強めることができる基板処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様は、基板処理方法であって、第1の面と第1の面と反対の第2の面とを有する基板を保持する工程と、基板の第2の面上に、加圧されているオゾン水を配置する工程と、基板の処理のためのユースポイントでオゾン水を加熱する工程と、を備える。
【0008】
第2の態様は、第1の態様の基板処理方法であって、オゾン水を加熱する工程は、基板を加熱する工程と、基板からの熱をオゾン水へ伝導させる工程と、を含む。
【0009】
第3の態様は、第2の態様の基板処理方法であって、基板を加熱する工程は、基板を第2の面から加熱する工程を含む。
【0010】
第4の態様は、第2の態様の基板処理方法であって、基板を加熱する工程は、基板を第1の面から加熱する工程を含む。
【0011】
第5の態様は、第1の態様の基板処理方法であって、オゾン水を加熱する工程は、第1の温度を有するオゾン水に、第1の温度よりも高い第2の温度を有する温水を混合する工程を含む。
【0012】
第6の態様は、第1から第5の態様の基板処理方法であって、オゾン水を配置する工程は、基板の第2の面上に配置されたオゾン水の圧力を制御する工程を含む。
【0013】
第7の態様は、第1から第6の態様の基板処理方法であって、基板の第2の面の少なくとも一部に間隔を空けて対向する対向面を有する圧力保持部を配置する工程をさらに備え、オゾン水を配置する工程は、基板の第2の面の少なくとも一部と圧力保持部の対向面との間にオゾン水を供給する工程を含む。
【0014】
第8の態様は、第7の態様の基板処理方法であって、圧力保持部は、基板の第2の面に間隔を空けて対向する主部と、主部の縁に配置され、主部から基板の第2の面へ向かって延び、基板の第2の面に対向するウイング部と、を含む。
【0015】
第9の態様は、第8の態様の基板処理方法であって、ウイング部は、基板の第2の面にギャップ長HGを空けて対向しており、かつ内周長LIの筒形状を有しており、圧力保持部は、基板の第2の面と主部との間へオゾン水を供給し断面積SCを有する供給部を含み、SC>LI・HGが満たされている。
【0016】
第10の態様は、第7から第9の態様の基板処理方法であって、圧力保持部は、オゾン水を受け入れるための複数の導入路を有しており、オゾン水を配置する工程は、圧力保持部の複数の導入路へオゾン水を導入する工程を含む。
【0017】
第11の態様は、第10の態様の基板処理方法であって、圧力保持部の複数の導入路へオゾン水を導入する工程は、複数の導入路の各々の断面積よりも大きな断面積を有する配管から複数の導入路へオゾン水を分岐させる工程を含む。
【0018】
第12の態様は、基板処理方法であって、第1の面と第1の面と反対の第2の面とを有する基板を保持する工程と、基板の第2の面上に、加圧されているオゾン水を配置する工程と、を備える。オゾン水を配置する工程は、基板の第2の面上に配置されたオゾン水の圧力を制御する工程を含む。
【0019】
第13の態様は、第1の面と第1の面と反対の第2の面とを有する基板を処理するための基板処理装置であって、基板を保持する基板保持部と、基板の第2の面上に、加圧されているオゾン水を配置する圧力保持部と、基板の処理のためのユースポイントでオゾン水を加熱する加熱部と、を備える。
【0020】
第14の態様は、第1の面と第1の面と反対の第2の面とを有する基板を処理するための基板処理装置であって、基板を保持する基板保持部と、基板の第2の面上に、加圧されているオゾン水を配置する圧力保持部と、加圧されているオゾン水の圧力を制御する圧力制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0021】
第1の態様によれば、基板の第2の面上に加圧されているオゾン水を配置することによって、基板の第2の面上に加圧されていないオゾン水を配置する場合に比して、基板の第2の面上でのオゾン水中のオゾン濃度を高く維持しやすくなる。さらに、オゾン水をユースポイントで加熱することによって、オゾン水をユースポイントより前で加熱する場合に比して、オゾン水中のオゾン濃度がユースポイントに至る前に低下してしまうことが避けられる。以上から、基板の第2の面上のユースポイントへ高温かつ高濃度のオゾン水を供することができる。これにより、ユースポイントでのオゾン水の化学反応を促進することができる。よって、基板へのオゾンの作用を強めることができる。
【0022】
第2の態様によれば、オゾン水は、基板からの熱をオゾン水へ伝導させることによって加熱される。これにより、オゾン水をユースポイントで加熱することができる。
【0023】
第3の態様によれば、基板を加熱する工程は、基板を第2の面から加熱する工程を含む。これにより、第1の面および第2の面のうち処理される面である第2の面を優先的に加熱することができる。
【0024】
第4の態様によれば、基板を加熱する工程は、基板を第1の面から加熱する工程を含む。これにより、加熱の悪影響が第2の面上に及びにくくなる。
【0025】
第5の態様によれば、オゾン水を、温水と混合することによって加熱することができる。
【0026】
第6の態様によれば、オゾン水を配置する工程は、基板の第2の面上に配置されたオゾン水の圧力を制御する工程を含む。これにより、オゾン水による基板の処理を安定的に行うことができる。
【0027】
第7の態様によれば、基板の第2の面の少なくとも一部と圧力保持部の対向面との間にオゾン水を供給する工程を含む。これにより、基板の第2の面の少なくとも一部と圧力保持部の対向面との間でオゾン水へ圧力をかけやすくなる。
【0028】
第8の態様によれば、圧力保持部は、主部の縁に配置されたウイング部を有している。これにより、圧力保持部内の圧力が高めやすくなる。
【0029】
第9の態様によれば、SC>LI・HGが満たされている。これにより、圧力保持部内の圧力が、より高めやすくなる。
【0030】
第10の態様によれば、オゾン水が圧力保持部の複数の導入路へ導入される。これにより、新鮮なオゾン水が導入される位置のむらが抑えられる。よって、オゾン水の失活に起因しての処理むらを抑えることができる。
【0031】
第11の態様によれば、圧力保持部の複数の導入路の各々の断面積よりも大きな断面積を有する配管から複数の導入路へオゾン水が分岐される。これにより、導入路内のオゾン水の圧力が維持しやすくなる。よって、導入路内のオゾン水のオゾン濃度が維持しやすくなる。
【0032】
第12の態様によれば、加圧されているオゾン水の圧力が制御される。これにより、基板処理を安定的に行うことができる。
【0033】
第13の態様によれば、基板の第2の面上に加圧されているオゾン水を配置することによって、基板の第2の面上に加圧されていないオゾン水を配置する場合に比して、基板の第2の面上でのオゾン水中のオゾン濃度を高く維持しやすくなる。さらに、オゾン水をユースポイントで加熱することによって、オゾン水をユースポイントより前で加熱する場合に比して、オゾン水中のオゾン濃度がユースポイントに至る前に低下してしまうことが避けられる。以上から、基板の第2の面上のユースポイントへ高温かつ高濃度のオゾン水を供することができる。これにより、ユースポイントでのオゾン水の化学反応を促進することができる。よって、基板へのオゾンの作用を強めることができる。
【0034】
第14の態様によれば、加圧されているオゾン水の圧力が制御される。これにより、基板処理を安定的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明の実施の形態1における基板処理システムの構成の例を概略的に示す平面図である。
【
図2】
図1の基板処理システムに含まれる制御部の構成を概略的に示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施の形態1における基板処理装置の構成を概略的に示す側面図である。
【
図4】本発明の実施の形態1における基板処理装置の構成を概略的に示す部分断面図である。
【
図5】本発明の実施の形態1における基板処理方法を概略的に示すフロー図である。
【
図6】本発明の実施の形態2における基板処理装置の構成を概略的に示す断面図である。
【
図7】本発明の実施の形態3における基板処理装置の構成を概略的に示す部分断面図である。
【
図8】本発明の実施の形態4における基板処理装置の構成を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
【0037】
<実施の形態1>
図1は、本実施の形態1における基板処理システム100の構成の例を概略的に示す平面図である。基板処理システム100は、ロードポートLPと、インデクサロボットIRと、センターロボットCRと、制御部90と、少なくとも1つの処理ユニットDP(
図1においては4つの処理ユニット)とを含む。複数の処理ユニットDPは、ウエハWF(基板)を処理するためのものであり、そのうちの少なくとも1つが、基板処理装置101に対応する。基板処理装置101は、ウエハWFに付着した有機物を除去する処理に用いることができる枚葉式の装置である。この有機物は、典型的には、使用済のレジスト膜である。このレジスト膜は、例えば、イオン注入工程用の注入マスクとして用いられたものである。
【0038】
制御部90は、基板処理システム100に備えられた各部の動作を制御することができる。キャリアCの各々は、ウエハWFを収容する収容器である。ロードポートLPは、複数のキャリアCを保持する収容器保持機構である。インデクサロボットIRは、ロードポートLPと基板載置部PSとの間でウエハWFを搬送することができる。センターロボットCRは、基板載置部PSおよび少なくとも1つの処理ユニットDPのいずれかひとつから他のひとつへとウエハWFを搬送することができる。以上の構成により、インデクサロボットIR、基板載置部PSおよびセンターロボットCRは、処理ユニットDPの各々とロードポートLPとの間でウエハWFを搬送する搬送機構として機能する。
【0039】
未処理のウエハWFはキャリアCからインデクサロボットIRによって取り出され、基板載置部PSを介してセンターロボットCRに受け渡される。センターロボットCRはこの未処理のウエハWFを処理ユニットDPに搬入する。処理ユニットDPはウエハWFに対して処理を行う。処理済みのウエハWFはセンターロボットCRによって処理ユニットDPから取り出され、必要に応じて他の処理ユニットDPを経由した後、基板載置部PSを介してインデクサロボットIRに受け渡される。インデクサロボットIRは処理済みのウエハWFをキャリアCに搬入する。以上により、ウエハWFに対する処理が行われる。
【0040】
図2は、制御部90(
図1)の構成を概略的に示すブロック図である。制御部90は、電気回路を有する一般的なコンピュータによって構成されていてよい。具体的には、制御部90は、CPU(Central Processing Unit)91、ROM(Read Only Memory)92、RAM(Random Access Memory)93、記憶装置94、入力部96、表示部97および通信部98と、これらを相互接続するバスライン95とを有している。
【0041】
ROM92は基本プログラムを格納している。RAM93は、CPU91が所定の処理を行う際の作業領域として供される。記憶装置94は、フラッシュメモリまたはハードディスク装置等の不揮発性記憶装置によって構成されている。入力部96は、各種スイッチまたはタッチパネル等により構成されており、オペレータから処理レシピ等の入力設定指示を受ける。表示部97は、例えば液晶表示装置およびランプ等により構成されており、CPU91による制御の下、各種の情報を表示する。通信部98は、LAN(Local Area Network)等を介してのデータ通信機能を有している。記憶装置94には、基板処理システム(
図1)を構成する各装置の制御についての複数のモードが予め設定されている。CPU91が処理プログラム94Pを実行することによって、上記複数のモードのうちの1つのモードが選択され、該モードによって各装置が制御される。また、処理プログラム94Pは、記録媒体に記憶されていてもよい。この記録媒体を用いれば、制御部90に処理プログラム94Pをインストールすることができる。また制御部90が実行する機能の一部または全部は、必ずしもソフトウェアによって実現される必要は無く、専用の論理回路などのハードウェアによって実現されてもよい。
【0042】
図3および
図4のそれぞれは、本実施の形態1における基板処理装置の構成を概略的に示す側面図および部分断面図である。基板処理装置101はウエハWFを処理するためのものである。ウエハWFは、裏面S1(第1の面)と、処理面S2(第1の面と反対の第2の面)とを有しており、少なくとも処理面S2が基板処理装置101によって処理される。基板処理装置101は、基板保持機構M1と、圧力印加機構M2と、加熱機構M3(加熱部)とを有している。
【0043】
基板保持機構M1は、ウエハWFを保持する機能を有している。また基板保持機構M1は、ウエハWFを回転させる機能を有していてよい。圧力印加機構M2は、ウエハWFの処理面S2上に、大気圧に比して加圧されているオゾン水LQを配置する圧力保持機能を有している。また圧力印加機構M2は、加圧されているオゾン水LQの圧力を制御する圧力制御機能を有していてよい。加熱機構M3は、ウエハWFの処理のためのユースポイントでオゾン水LQを加熱する加熱機能を有している。本実施の形態においては、加熱機構M3は、ウエハWFを加熱する加熱機能を有しており、オゾン水LQは主に、加熱されたウエハWFからの熱伝導によって加熱される。
【0044】
基板保持機構M1(
図3)は、排気路12を有する真空チャック11(基板保持部)と、真空ポンプ13と、回転軸14と、回転モータ15とを有している。真空ポンプ13が排気路12を排気することによってウエハWFの裏面S1が真空チャック11上に吸着される。これにより真空チャック11はウエハWFを保持する。回転軸14は真空チャック11を支持している。回転モータ15が矢印RCに示すように回転軸14を回転させることによって、真空チャック11が回転する。これにより、真空チャック11に保持されたウエハWFが回転する。
【0045】
圧力印加機構M2(
図3)は、圧力ノズル31(圧力保持部)と、オゾン水源41と、圧力調整器42(圧力制御部)と、圧力計50と、アーム61と、軸62と、角度調整器63と、高さ調整器64とを有している。オゾン水源41は、純水中にオゾンガスを溶解させることによってオゾン水を生成する。生成されたオゾン水は、圧力調整器42を介して圧力ノズル31に供給される。圧力調整器42は、ポンプなどの昇圧装置、または、減圧弁などの減圧装置である。
【0046】
圧力ノズル31は、ウエハWFの処理面S2上に、加圧されているオゾン水LQを配置することができる。加圧されているオゾン水LQの圧力は、圧力調整器42によって制御されてよい。圧力の制御は、圧力調整器42が圧力ノズル31へオゾン水を吐出する圧力を調整することによって行われ得る。この調整は、圧力計50によって検出される圧力ノズル31内の圧力を参照して行われてよい。オゾン水源は、圧力調整器42を介して圧力ノズル31へオゾン水を供給する。
【0047】
圧力ノズル31は、アーム61の一方端に支持されている。アーム61の他方端は軸62に支持されている。軸62は、高さ方向に沿って延在している。軸62は回転することができ、その回転角度は、矢印RN(
図3)に示すように、アクチュエータである角度調整器63によって調整される。これにより、軸62からアーム61が延びる方向が調整される。これにより、矢印SN(
図3)に示すように、圧力ノズル31の位置がウエハWFの処理面S2上でスキャンされる。また軸62は高さ方向において変位することができ、その高さ位置は、アクチュエータである高さ調整器64によって調整される。これにより、矢印HN(
図3)に示すようにアーム61の高さが調整される。これにより、圧力ノズル31とウエハWFの処理面S2との間のギャップ長HGが調整される。これにより圧力ノズル31内のオゾン水LQの圧力を調整することができるので、高さ調整器64は、一種の圧力制御部である。
【0048】
圧力ノズル31は、ウイング部31Aと、主部31Bと、供給部31Cとを有している。主部31Bは、ウエハWFの処理面S2に間隔を空けて対向する。ウイング部31Aは、主部31Bの縁に配置され、主部31BからウエハWFの処理面S2へ向かって延び、ウエハWFの処理面S2に対向する。本実施の形態においては、ウイング部31Aは筒形状を有している。供給部31Cは、ウエハWFの処理面S2と主部31Bとの間へオゾン水LQを供給する。
【0049】
加熱機構M3は、ウエハWFの処理のためのユースポイントでオゾン水LQを加熱することができる。本実施の形態においては、加熱機構M3はウエハWFを加熱する。そして、加熱されたウエハWFからの熱がオゾン水LQへ伝導することによって、オゾン水LQが加熱される。ウエハWFの加熱は、処理面S2および裏面S1の少なくともいずれかへ行われればよい。また加熱方法は、例えば、光照射または熱伝導を用いて行われてよい。光照射の場合、光LT(
図4)のエネルギーを吸収することによってウエハWFの温度が上昇する。熱伝導の場合、ウエハWFへの熱伝導によってウエハWFの温度が上昇する。本実施の形態においては、加熱機構M3は、ランプヒータ81および伝導ヒータ82の少なくともいずれかを有している。
【0050】
ランプヒータ81は、光LT(
図4)をウエハWFの処理面S2へ照射する。ランプヒータ81は、光LTを発する発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)を有することが好ましい。光LTの波長は、ウエハWFによって吸収されやすいものであることが好ましい。この観点で、ウエハWFがシリコンウエハの場合、光LTは、波長450nm程度および550nm程度にピーク強度を有することが好ましい。ランプヒータ81は、圧力ノズル31の外側の主部31B上に取り付けられていてよい。これにより、圧力ノズル31のスキャン(
図3:矢印SN)に同期してランプヒータ81をスキャンさせることができる。この場合、光LTがウエハWFに主部31Bを介して達するので、主部31Bは光LTを透過する材料からなる必要があり、例えば、石英ガラスのような透明材料からなる。
【0051】
次に、本実施の形態1におけるウエハ(基板)処理方法について、以下に説明する。
【0052】
ステップS10(
図5)にて、インデクサロボットIRおよびセンターロボットCR(
図1)が、ウエハWFをロードポートLPから基板処理装置101へ搬送する。
【0053】
ステップS30(
図5)にて、基板保持機構M1(
図3)がウエハWFを保持する。具体的には、真空ポンプ13による排気によって真空チャック11がウエハWFの裏面S1を吸着する。次に、回転モータ15が回転軸14を回転させることによって(矢印RC)、ウエハWFが回転させられる。
【0054】
ステップS40(
図5)にて、圧力印加機構M2(
図3)がウエハWFの処理面S2上に、加圧されているオゾン水LQを配置する。具体的には、まず圧力ノズル31(
図4)が配置される。このように配置された圧力ノズル31は、ウエハWFの処理面S2の一部に間隔を空けて対向する対向面(下面)を有する。この対向面とウエハWFの処理面S2の一部との間にオゾン水LQが供給される。このとき、ウエハWFが回転され(
図3:矢印RC参照)、かつ、圧力ノズル31がスキャンされる(
図3:矢印SN参照)。これにより、処理面S2の全体へ、加圧されたオゾン水を作用させることができる。またスキャンがなされることによって、未だあまり失活が進んでいない新鮮なオゾン水LQが配置される位置が均一化される。
【0055】
オゾン水LQが供給される際、圧力ノズル31のウイング部31A(
図4)は、ウエハWFの処理面S2に、ゼロよりも大きなギャップ長HGを空けて対向している。ウイング部31Aの筒形状が内周長LIを有し、かつ供給部31Cの内部が断面積SCを有する場合、SC>LI・HGが満たされていることが好ましい。なお、供給部31Cは円筒形状を有することが好ましく、その場合、断面積SCは、円筒形状の内側直径D1(
図4)を用いて、SC=π・(D1/2)
2によって算出される。またウイング部31Aは円筒形状であることが好ましく、その場合、内周長LIは円筒形状の内側直径D2を用いて、LI=π・D2によって算出される。
【0056】
上記のように圧力ノズル31内においてウエハWFの処理面S2上にオゾン水LQが配置される際に、オゾン水LQが単に加圧されるというだけでなく、オゾン水LQの圧力が制御されることが好ましい。この制御は、圧力調整器42が圧力ノズル31へオゾン水を吐出する圧力を調整することによって行われ得る。これに代わって、あるいはこれと共に、ギャップ長HGが調整されてもよい。圧力の制御は、圧力計50を参照して行われることが好ましい。
【0057】
ギャップ長HG(
図4)がゼロよりも大きいことから、供給されたオゾン水LQは、矢印EV(
図4)に示すようにウエハWFの処理面S2上において圧力ノズル31の外部へと漏れ出す。よって本実施の形態においては、圧力ノズル31内のオゾン水LQは、オゾン水源41から供給される新鮮なものへと置換され続ける。なお、漏れ出したオゾン水LQは、矢印FL(
図3)に示すように処理面S2上から流れ落ちる。
【0058】
ステップS50(
図5)にて、加熱機構M3(
図4)がウエハWFの処理のためのユースポイントでオゾン水LQを加熱する。ユースポイントは、圧力ノズル31の内部であり、より具体的には、圧力ノズル31の内部のオゾン水LQのうち処理面S2に接する部分である。本実施の形態においては、加熱機構M3は、まずウエハWFを加熱する。ウエハWFは、処理面S2から加熱されてよく、それに代わってあるいはそれと共に、裏面S1から加熱されてもよい。加熱されたウエハWFからの熱は、温度差に起因して、オゾン水LQに伝導させられる。その結果、オゾン水LQはユースポイントで加熱される。オゾン水LQは、オゾン水源41と圧力ノズル31との間では加熱されないことが好ましい。上記のようにユースポイントで加熱されたオゾン水が処理面S2に作用することによって、ウエハWFの処理が行われる。具体的には、ウエハWFの洗浄、例えばレジスト除去、が行われる。
【0059】
ステップS60(
図5)にて、上記処理の後、ウエハWFのリンス工程が行われる。リンス工程は、基板処理装置101がリンス機能も有している場合、基板処理装置101によって行われてよく、あるいは他の処理ユニットDP(
図1)によって行われてもよい。
【0060】
ステップS80(
図5)にて、インデクサロボットIRおよびセンターロボットCR(
図1)が、リンスされたウエハWFを処理ユニットDPからロードポートLPへ搬送する。
【0061】
以上により、ウエハWFへの処理が完了する。なお、オゾン水LQには、オゾンに加えて他の物質が溶解されていてもよく、例えば、アンモニアおよび過酸化水素の少なくともいずれかが溶解されていてよい。またオゾン水LQには気泡が混入されていてもよく、例えばオゾン気泡が混入されていてよい。
【0062】
本実施の形態によれば、ウエハWFの処理面S2上に加圧されているオゾン水LQを配置することによって、ウエハWFの処理面S2上に加圧されていないオゾン水LQを配置する場合に比して、ウエハWFの処理面S2上でのオゾン水LQ中のオゾン濃度を高く維持しやすくなる。一般に、大気圧よりも十分に高い圧力下では200~300ppm程度の高濃度オゾン水を準備することができるが、これが大気圧下の環境へ開放されると、オゾン濃度は60ppm程度にまで急速に低下してしまう。また本実施の形態によれば、オゾン水LQをユースポイントで加熱することによって、オゾン水LQをユースポイントより前で加熱する場合に比して、オゾン水LQ中のオゾン濃度がユースポイントに至る前に低下してしまうことが避けられる。以上から、ウエハWFの処理面S2上のユースポイントへ高温かつ高濃度のオゾン水LQを供することができる。これにより、ユースポイントでのオゾン水LQの化学反応を促進することができる。よって、ウエハWFの処理面S2へのオゾンの作用を強めることができる。
【0063】
オゾン水LQは、ウエハWFからの熱をオゾン水LQへ伝導させることによって加熱される。これにより、オゾン水LQをユースポイントで加熱することができる。
【0064】
ウエハWFは処理面S2から加熱されてよい。この場合、裏面S1および処理面S2のうち処理される面である処理面S2を優先的に加熱することができる。あるいはウエハWFは裏面S1から加熱されてよい。この場合、加熱の悪影響が処理面S2上に及びにくくなる。
【0065】
ウエハWFの処理面S2上に配置されたオゾン水LQの圧力は制御されることが好ましい。これにより、オゾン水LQによるウエハWFの処理を安定的に行うことができる。
【0066】
オゾン水LQは、ウエハWFの処理面S2の一部と圧力ノズル31の対向面との間に供給される。これにより、ウエハWFの処理面S2の一部と圧力ノズル31の対向面との間でオゾン水LQへ圧力をかけやすくなる。
【0067】
圧力ノズル31は、主部31Bの縁に配置されたウイング部31Aを有している。これにより、圧力ノズル31内の圧力が高めやすくなる。特に、前述したように式SC>LI・HGが満たされている場合、圧力ノズル31内の圧力が、より高めやすくなる。
【0068】
基板保持部として真空チャック11が用いられることによって、ウエハWFの裏面S1を、おおよそ均一に支持することができる。これにより、オゾン水LQの圧力に起因してのウエハWFの反りを防止することができる。なお基板保持部は真空チャックに限定されるわけではなく、メカニカルチャックであってもよい。
【0069】
(実施の形態2)
図6は、本実施の形態2における基板処理装置102の構成を概略的に示す断面図である。以下、主に基板処理装置101(
図3および
図4:実施の形態1)との相違について説明する。
【0070】
基板保持機構M1は、実施の形態1の場合と同様であってよい。ただし本実施の形態においては、ウエハWFは必ずしも回転させられる必要はない。よって回転軸14および回転モータ15は省略されてもよい。
【0071】
圧力印加機構M2は、ウイング部31Aと主部31Bと供給部31Cとを有する圧力ノズル31(
図4:実施の形態1)に代わって、ウイング部32Aと主部32Bと供給部32Cとを有する圧力カップ32(圧力保持部)を含む。主部32Bは、ウエハWFの処理面S2の全体に間隔を空けて対向する対向面(図中、下面)を有している。これにより、加圧されたオゾン水LQを、圧力カップ32の対向面とウエハWFの処理面S2の全体との間に供給することができる。
【0072】
本実施の形態においては、圧力カップ32のウイング部32Aと、真空チャック11との間に挟まれることになるように、シール材51が設けられている。シール材51は、真空チャック11と圧力カップ32のウイング部32Aとの一方に固定されていてよく、真空チャック11と圧力カップ32のウイング部32Aとが接近した際に、真空チャック11と圧力カップ32のウイング部32Aとの間を封止する。シール材51による封止能力は、真空チャック11へ圧力カップ32のウイング部32Aが押し付けられる荷重LDに依存する。この荷重は荷重調整器49によって調整されてよい。封止能力の調整によって、加圧されているオゾン水LQの圧力を制御することができるので、荷重調整器49は、一種の圧力制御部である。封止能力を超えて圧力カップ32内に圧力が加わると、シール材51でのオゾン水LQの漏洩(矢印EV1)が生じる。さらに、圧力カップ32に、必要に応じて排圧を行うための逆止弁52(圧力制御部)が取り付けられていてもよい。逆止弁52の設定圧力を超えて圧力カップ32内に圧力が加わると、逆止弁52でのオゾン水LQの漏洩(矢印EV2)が生じる。これによって、加圧されているオゾン水LQの圧力を制御することができる。
【0073】
なお、図示された構成においては、真空チャック11と圧力カップ32のウイング部32Aとが鉛直方向に対向する箇所でシール材51による封止が行われるが、変形例として、真空チャックとウイング部とが水平方向に対向する箇所でシール材による封止が行われてもよい。
【0074】
基板保持機構M1が回転軸14および回転モータ15を有する場合、真空チャック11の回転に同期して圧力カップ32を矢印RSに示すように回転可能とするための機構が設けられる。例えば、圧力カップ32を回転させる回転モータ48が設けられる。
【0075】
圧力印加機構M2は、オゾンガス源43および圧力調整器44を有していてよい。オゾンガス源43はオゾンガスを生成する。生成されたオゾンガスは圧力調整器44を介して圧力カップ32に供給される。圧力調整器44は、ポンプなどの昇圧装置、または、減圧弁などの減圧装置である。圧力印加機構M2がこれらの構成を有する場合、オゾン水LQを圧力カップ32中に貯留した後、加圧されているオゾンガスを圧力カップ32中に導入することによって、圧力カップ32内の圧力を高めることができる。この場合、オゾン水源41に接続された圧力調整器42は省略されてよい。
【0076】
本実施の形態によっても、実施の形態1とほぼ同様の効果が得られる。また基板保持部として真空チャック11が用いられることによって、基板保持部と圧力カップ32との間を満たすのに必要なオゾン水LQの体積を抑えることができる。なお、この体積の増大が許容されるのであれば、基板保持部はメカニカルチャックであってよい。
【0077】
さらに本実施の形態によれば、実施の形態1と異なり、スキャン(
図3:矢印SN)のための機構が不要である。また実施の形態1と異なり、ウエハWFの回転のための機構も省略することができる。ただし、装置の複雑化が許容されるのであれば、本実施の形態においてもウエハWFが回転されることが好ましい。この回転により、ウエハWFの処理面S2上へ付着した気泡が振り払われる。よって、気泡が局所的に付着していることに起因しての処理むらの発生を防止することができる。
【0078】
(実施の形態3)
図7は、本実施の形態3における基板処理装置103の構成を概略的に示す断面図である。以下、主に基板処理装置101(
図3および
図4:実施の形態1)との相違について説明する。
【0079】
本実施の形態においては、圧力印加機構M2は、圧力ノズル31(
図3および
図4:実施の形態1)に代わって圧力ノズル33を有している。圧力ノズル33は、圧力ノズル31と同様、ウエハWFの処理面S2上で、ギャップ長HGを保ちつつ、スキャンされる(
図3:矢印SN参照)。ギャップ長HGは、例えば0.5mm程度である。スキャンの実施およびギャップ長HGの制御のための機構は、実施の形態1のものと同様であってよい。圧力ノズル33は、オゾンに対して耐性のある材料からなる必要があり、例えば、石英またはテフロン(登録商標)からなる。
【0080】
圧力ノズル33は、オゾン水経路33oと、温水経路33hとを有している。オゾン水経路33oの入口と、温水経路33hの入口とは、互いに独立している。温水経路33hは、圧力ノズル33を貫通して、処理面S2に対向する対向面(図中、圧力ノズル33の下面)に達している。この対向面は平坦であってよい。またこの対向面の外縁は、円形であってよく、その直径は、例えば60mm程度である。オゾン水経路33oは圧力ノズル33内で温水経路33hに合流している。
【0081】
オゾン水経路33oの断面積は、温水経路33hから離れた部分に比して、温水経路33hにつながる部分において、小さいことが好ましい。言い換えれば、温水経路33hから離れた部分の断面積C6に比して、温水経路33hにつながる部分の断面積C7は小さい。この構成によって、オゾン水の圧力を、温水と混合される直前まで、より高く保つことができる。よって、オゾン水源41からのオゾン水のオゾン濃度を、温水と混合される直前まで、高く維持しやすくなる。なお、ここでいう断面積は、経路の延在方向に垂直な面における面積である。
【0082】
また本実施の形態においては、加熱機構M3は、圧力ノズル33の温水経路33hの入口に接続された温水源83を有している。温水源83は、オゾン水源41からのオゾン水の温度(第1の温度)よりも高い温度(第2の温度)を有する温水を生成する。この第2の温度は、40℃以上であり、好ましくは70℃以上である。
【0083】
上記構成により、圧力ノズル33内において、第1の温度を有するオゾン水に、第1の温度よりも高い第2の温度を有する温水が混合される。これにより、加熱されたオゾン水LQを得ることができる。例えば、処理面S2上へ、温度75℃かつ濃度40ppmのオゾン水を配置することができる。
【0084】
(実施の形態4)
図8は、本実施の形態4における基板処理装置104の構成を概略的に示す断面図である。以下、主に基板処理装置103(
図7:実施の形態3)との相違について説明する。
【0085】
本実施の形態においては、圧力印加機構M2は、圧力ノズル33(
図7:実施の形態3)に代わって圧力ノズル34を有している。
【0086】
圧力ノズル34は、温水を通すために、温水経路33h(
図7:実施の形態3)と同様の温水経路34hを有している。また圧力ノズル34は、オゾン水源41からのオゾン水を受け入れるための複数の導入路34oを有している。導入路34oは、処理面S2に対向する対向面(図中、圧力ノズル34の下面)に達する少なくとも1つの導入路34o1を含んでよく、好ましくは、図示されているように複数の導入路34o1を含む。また導入路34oは、圧力ノズル34内で温水経路34hに合流する導入路34o2を含んでよい。本実施の形態においては、ウエハWFの処理面S2上にオゾン水LQを配置するために、オゾン水が複数の導入路34oへ導入される。この構成によって、新鮮なオゾン水が導入される位置のむらが抑えられる。よって、オゾン水の失活に起因しての処理むらを抑えることができる。
【0087】
オゾン水を圧力ノズル34の複数の導入路34oへ導入する際、オゾン水LQは配管45から複数の導入路34oへ分岐させられる。ここで、配管45の断面積C8は、複数の導入路34oの各々の断面積C9よりも大きいことが好ましい。この構成によって、オゾン水の圧力を、温水と混合される直前まで、より高く維持しやすくなる。よって、オゾン水源41からのオゾン水のオゾン濃度を、温水と混合される直前まで、高く維持しやすくなる。なお、ここでいう断面積は、配管45または導入路34oの延在方向に垂直な面における面積である。
【0088】
配管45と、複数の導入路34oのそれぞれとの間には、バルブ47が挿入されていることが好ましい。個々のバルブ47の開閉を制御することによって、ウエハWFの処理面S2における処理むらを低減することができる。
【0089】
例えば、圧力ノズル34は、円形の外縁を有する対向面(図中、下面)を有しており、その中心に温水経路34hの出口が配置され、径方向(図中、横方向)に沿って複数の導入路34o1の出口が配列される。この構成により、径方向における処理むらを抑えることができる。また、上述したようにバルブ47の制御がなされる場合、径方向における処理むらをさらに抑えることができる。なお変形例として、導入路34o1が省略されて導入路34o2のみが設けられてもよく、これにより構成を単純化することができる。ただしこの変形例においては、圧力ノズル34の対向面(図中、下面)の中心にのみ新鮮なオゾン水が供給されるので、中心から離れるほど、より失活の進んだオゾン水しか供給されなくなる。よって処理むらが生じやすくなる。
【0090】
なお圧力ノズル34の上記以外の特徴については、前述した圧力ノズル33(
図7:実施の形態3)とほぼ同様であるため、その説明を省略する。
【0091】
この発明は詳細に説明されたが、上記の説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。上記各実施形態および各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせたり、省略したりすることができる。
【符号の説明】
【0092】
11:真空チャック(基板保持部)
12:排気路
13:真空ポンプ
14:回転軸
15,48:回転モータ
31,33,34:圧力ノズル(圧力保持部)
31A,32A:ウイング部
31B,32B:主部
31C,32C:供給部
32:圧力カップ(圧力保持部)
33h:温水経路
33o:オゾン水経路
34h:温水経路
34o,34o1,34o2:導入路
41:オゾン水源
42,44:圧力調整器
43:オゾンガス源
45:配管
47:バルブ
49:荷重調整器
50:圧力計
51:シール材
52:逆止弁
61:アーム
62:軸
63:角度調整器
64:高さ調整器
81:ランプヒータ
82:伝導ヒータ
83:温水源
101~104:基板処理装置
LQ:オゾン水
M1:基板保持機構
M2:圧力印加機構
M3:加熱機構
S1:裏面(第1の面)
S2:処理面(第2の面)
WF:ウエハ(基板)