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特許7377027斜板式アキシャルピストンポンプ・モータ
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  • 特許-斜板式アキシャルピストンポンプ・モータ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-31
(45)【発行日】2023-11-09
(54)【発明の名称】斜板式アキシャルピストンポンプ・モータ
(51)【国際特許分類】
   F04B 1/22 20060101AFI20231101BHJP
   F03C 1/253 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
F04B1/22
F03C1/253
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019156764
(22)【出願日】2019-08-29
(65)【公開番号】P2021032217
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000241267
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクトフルードパワーシステム
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 宣尚
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-210615(JP,A)
【文献】特開平08-151975(JP,A)
【文献】実開昭63-152920(JP,U)
【文献】実開平04-132465(JP,U)
【文献】特開2012-135230(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 1/22
F03C 1/253
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体へ回転自在に軸支した回転軸と、回転軸と回転方向に係合して本体へ回転自在に軸支したシリンダブロックと、シリンダブロックに軸方向へ往復動自在に配置した複数のピストンと、各ピストンとシリンダブロックとにより区画形成して作動流体を吸排する複数の作動室と、本体に配置しシリンダブロックより突出した各ピストンの先端部と当接して各ピストンの往復動量を設定する斜板と、本体に固定配置しシリンダブロックと摺接して作動流体が流通する一対の吸排ポートを形成した側板とを備え、回転軸は少なくとも二つの軸受で本体へ回転自在に軸支し、回転軸を軸支する少なくとも二つの軸受は本体の一つの部材に配置し、本体にはすべり軸受を備えた支持軸を固定配置し、シリンダブロックは軸心に支持軸を嵌挿する支持孔を形成し、シリンブロックをすべり軸受で支持軸へ回転自在に軸支し、本体の一つの部材に配置する二つの軸受は軸方向の外方と内方に離間して配置し、軸方向の内方に配置する軸受をすべり軸受とし、このすべり軸受は筒状に形成して先端につば部を有し、つば部を本体の一つの部材の段部に係合して軸方向に位置決めすることを特徴とする斜板式アキシャルピストンポンプ・モータ。
【請求項2】
前記二つの軸受の間に前記回転軸を挿通して挿通箇所を密封する環状の密封部材を設け、密封部材は前記二つの軸受で挟持したことを特徴とする請求項1に記載の斜板式アキシャルピストンポンプ・モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダブロックに複数のピストンを軸方向へ往復動自在に配置し、ピストンの往復動量を斜板で設定する斜板式アキシャルピストンポンプ・モータに関し、特に水等の低粘度の作動流体に好適な斜板式アキシャルピストンポンプ・モータに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の斜板式アキシャルピストンポンプ・モータは、回転軸をシリンダブロックの軸心を貫通してシリンダブロックに固定し、回転軸はシリンダブロックを貫通した両端を軸受により本体へ回転自在に軸支し、シリンダブロックには複数のピストンを軸方向へ往復動自在で周方向へ等間隔に配置し、ピストンの往復動量を設定する斜板を本体に固定し、ポンプ作動では、回転軸でシリンダブロックを回転駆動することでピストンが往復動して水の吸入吐出が行われる。また、モータ作動では、供給される水の水圧によりピストンが往復動することで回転軸がシリンダブロックとともに回転する。そして、シリンダブロックの外周を本体に配置した軸受で支持し、回転軸を軸支する軸受の摩耗を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-51957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、かかる従来の斜板式アキシャルピストンポンプ・モータでは、シリンダブロックの外周を本体に配置した軸受で支持しており、シリンダブロックは回転軸より大径で、大径のシリンダブロックの外周を軸支する軸受は大径で大型のもとなり、回転軸とシリンダブロックとの同芯度を確保して軸支するのに、大型の軸受は高精度にしなければならず、安価に制作できない問題点があった。
【0005】
本発明の課題は、シリンダブロックの外周を軸支する軸受を不要にし、安価に制作し得る斜板式アキシャルピストンポンプ・モータを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を達成すべく、本発明は次の手段をとった。即ち、
本体へ回転自在に軸支した回転軸と、回転軸と回転方向に係合して本体へ回転自在に軸支したシリンダブロックと、シリンダブロックに軸方向へ往復動自在に配置した複数のピストンと、各ピストンとシリンダブロックとにより区画形成して作動流体を吸排する複数の作動室と、本体に配置しシリンダブロックより突出した各ピストンの先端部と当接して各ピストンの往復動量を設定する斜板と、本体に固定配置しシリンダブロックと摺接して作動流体が流通する一対の吸排ポートを形成した側板とを備え、回転軸は少なくとも二つの軸受で本体へ回転自在に軸支し、回転軸を軸支する少なくとも二つの軸受は本体の一つの部材に配置し、本体にはすべり軸受を備えた支持軸を固定配置し、シリンダブロックは軸心に支持軸を嵌挿する支持孔を形成し、シリンブロックをすべり軸受で支持軸へ回転自在に軸支し、本体の一つの部材に配置する二つの軸受は軸方向の外方と内方に離間して配置し、軸方向の内方に配置する軸受をすべり軸受とし、このすべり軸受は筒状に形成して先端につば部を有し、つば部を本体の一つの部材の段部に係合して軸方向に位置決めすることを特徴とする斜板式アキシャルピストンポンプ・モータがそれである。
【0007】
この場合、前記二つの軸受の間に前記回転軸を挿通して挿通箇所を密封する環状の密封部材を設け、密封部材は前記二つの軸受で挟持してもよい。
【発明の効果】
【0008】
以上詳述したように、請求項1に記載の発明は、本体にはすべり軸受を備えた支持軸を固定配置し、シリンダブロックは軸心に支持軸を嵌挿する支持孔を形成し、シリンタブロックをすべり軸受で支持軸へ回転自在に軸支した。このため、シリンダブロックは支持孔に嵌挿する支持軸に備えたすべり軸受で軸支するから、すべり軸受は、従来ポンプ・モータの如き、シリンダブロックの外周を軸支する軸受に比し、小径で小型のものにでき、安価に制作できる。また、シリンダブロックは小径のすべり軸受で軸支するため、従来ポンプ・モータに比し、シリンダブロックとすべり軸受との間の寸法公差を小さくでき、回転するシリンダブロックの径方向への振れを抑制することができる。さらにまた、回転軸を軸支する少なくとも二つの軸受は本体の一つの部材に配置するため、従来ポンプ・モータの如き、二つの軸受をそれぞれ本体の別の部材に配置するものに比し、二つの軸受の同芯度を精度よく配置することができるから、回転する回転軸の径方向への振れを抑制でき、回転軸と回転方向に係合するシリンダブロックに回転軸の振れを伝播することなくでき、シリンダブロックを良好に回転できる。
【0009】
また、請求項に記載の発明は、回転軸を軸支する二つの軸受は本体の一つの部材に軸方向の外方と内方に離間して配置し、軸方向の内方に配置する軸受をすべり軸受とした。このため、回転軸は本体の軸方向内方ですべり軸受で軸支するから、回転軸をすべり軸受により面接触で軸支する箇所をシリンダブロックの近傍とすることができ、回転による回転軸の振れをシリンダブロックにより一層伝播することなくできる。
【0010】
また、請求項に記載の発明は、二つの軸受の間に回転軸を挿通して挿通箇所を密封する環状の密封部材を設け、密封部材は二つの軸受で挟持した。このため、密封部材を容易に軸方向へ位置決めして本体に組付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態を示した斜板式アキシャルピストンポンプ・モータの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、斜板式アキシャルピストンポンプ・モータを斜板式アキシャルピストンポンプとした本発明の一実施形態を図面に基づき説明する。
図1において、1は本体で、円筒状の筒部材2の両端開口を前蓋部材3と後蓋部材4とで閉塞して構成し、内部に空間Fを形成する。本体1は両蓋部材3、4間に筒部材2を挟持して両蓋部材3、4を複数のボルト部材5で締結する。6は本体1の前蓋部材3へ回転自在に軸支した回転軸で、前蓋部材3を貫通して先端を外部に突出すると共に、後端を空間Fに突出する。回転軸6は先端に図示しない電動機と結合するキー7を有すると共に、後端に後述詳記するシリンダブロック8と回転方向に係合するスプライン9を形成する。
【0013】
本体1の一つの部材としての前蓋部材3には、回転軸6を回転自在に軸支する二つの軸受10、11を軸方向の外方と内方に離間して配置する。軸方向の外方に配置する軸受10はラジアル玉軸受で、外部に露呈する。軸方向の内方に配置する軸受11は樹脂材から筒状に形成したすべり軸受で、先端に有したつば部11Aを前蓋部材3の段部3Aに係合して軸方向に位置決めする。12は環状の密封部材としてのメカニカルシールで、ラジアル玉軸受10とすべり軸受11との間に配置して回転軸6を挿通して挿通箇所を密封する。メカニカルシール12は両軸受10、11で挟持して軸方向に位置決めする。
【0014】
前蓋部材3は、空間Fに面する内方端面を傾斜面3Bに形成する。傾斜面3Bには円板状の斜板13を固定し、斜板13の軸心を回転軸6が遊嵌する。傾斜面3Bは回転軸6の軸線Gと直行する線Lに対して一定の角度α傾斜する。後蓋部材4には支持軸14を固定して設け、支持軸14は空間Fに向けて突出する。支持軸14には樹脂材から筒状に形成したすべり軸受15A、15B、15Cを3個外嵌して備える。シリンダブロック8は一端面に開口して軸心に支持孔8Aを形成する。支持孔8Aには支持軸14を嵌挿し、シリンダブロック8をすべり軸受15A、15B、15Cで支持軸14へ回転自在に軸支する。シリンダブロック8は一端面と対向する他端面に開口して軸心にスプライン溝8Bを形成する。スプライン溝8Bには回転軸6のスプライン9を係合し、シリンダブロック8を回転軸6で回転駆動する。
【0015】
シリンダブロック8は他端面に開口して径方向の外周側で周方向へ等間隔に複数のピストン孔8Cを形成する。各ピストン孔8Cにはピストン16を軸方向へ往復動自在に嵌挿し、作動室17を区画形成する。各ピストン16は先端部に枢着したシュー18を介して斜板13に当接する。斜板13は傾斜した角度αに基づき各ピストン16の往復動量を設定する。各シュー18はばね19のばね力がリテーナ20、リテーナ板21を介して付与され、斜板13に押し付けられる。
【0016】
作動室17は、各ピストン16の図1右方向への往動で容積が増加して作動流体としての水を吸入すると共に、各ピストン16の図1左方向への複動で容積が減少して水を吐出する。各作動室17には接続孔22を接続し、各接続孔22はシリンダブロック8の一端面に周方向へ等間隔に開口する。シリンダブロック8の一端面に摺接する側板23を設け、側板23は後蓋部材4の空間Fに面する内方端面に固定し、軸心を支持軸14が挿通する。側板23には一対の吸排ポート24A、24Bを貫通形成し、両吸排ポート24A、24Bは半円弧状で側板23の軸心に対して対称位置に配置する。
【0017】
一方の吸排ポート24Aはピストン16の往動で容積が増加する作動室17に連通し、作動室17に吸入する水を流通する吸入ポートとして機能する。他方の吸排ポート24Bはピストン16の復動で容積が減少する作動室17に連通し、作動室17から吐出する水を流通する吐出ポートとして機能する。25A、25Bは後蓋部材4に形成した一対の吸排流路で、一方の吸排流路25Aは吸入ポートとして機能する一方の吸排ポート24Aに接続し、他方の吸排流路25Bは吐出ポートとして機能する他方の吸排ポート24Bに接続する。
【0018】
次にかかる構成の作動を説明する。
図1の状態で、回転軸6を回転駆動すると、シリンダブロック8が回転軸6とともに回転する。シリンダブロック8の回転に伴い、各ピストン16は斜板13の傾斜角度αに応じた往復動量で往復動し、各作動室17の容積を増減する。
【0019】
シリンダブロック8の回転により容積が増加する作動室17には、吸排流路25Aより吸排ポート24Aを流通して水が吸入される。また、シリンダブロック8の回転により容積が減少する作動室17の水は、吸排ポート24Bを流通して吸排流路25Bより吐出される。このように、シリンダブロック8の回転に伴い水の吸入と吐出を連続して行うポンプ作動をする。そして、回転軸6の回転駆動を停止すると、ポンプ作動を停止する。
【0020】
かかる作動において、本体1にはすべり軸受15A、15B、15Cを備えた支持軸14を固定配置し、シリンダブロック8は軸心に支持軸14を嵌挿する支持孔8Aを形成し、シリンタブロック8をすべり軸受15A、15B、15Cで支持軸14へ回転自在に軸支した。このため、シリンダブロック8は支持孔8Aに嵌挿する支持軸14に備えたすべり軸受15A、15B、15Cで軸支するから、すべり軸受15A、15B、15Cは、従来ポンプ・モータの如き、シリンダブロックの外周を軸支する軸受に比し、小径で小型のものにでき、安価に制作できる。また、シリンダブロック8は小径のすべり軸受15A、15B、15Cで軸支するため、従来ポンプ・モータに比し、シリンダブロック8とすべり軸受15A、15B、15Cとの間の寸法公差を小さくでき、回転するシリンダブロック8の径方向への振れを抑制することができる。さらにまた、回転軸6を軸支する少なくとも二つの軸受10、11は本体の一つの部材3に配置するため、従来ポンプ・モータの如き、二つの軸受をそれぞれ別の部材に配置するものに比し、二つの軸受10、11の同芯度を精度よく配置することができるから、回転する回転軸6の径方向への振れを抑制でき、回転軸6と回転方向に係合するシリンダブロック8に回転軸6の振れを伝播することなくでき、シリンダブロック8を良好に回転できる。
【0021】
また、回転軸6を軸支する二つの軸受10、11は本体1の一つの部材3に軸方向の外方と内方に離間して配置し、軸方向の内方に配置する軸受をすべり軸受11とした。このため、回転軸6は本体1の軸方向内方ですべり軸受11で軸支するから、回転軸6をすべり軸受11により面接触で軸支する箇所をシリンダブロック8の近傍とすることができ、回転による回転軸6の振れをシリンダブロック8により一層伝播することなくできる。
【0022】
また、二つの軸受10、11の間に回転軸6を挿通して挿通箇所を密封する環状の密封部材12を設け、密封部材12は二つの軸受10、11で挟持した。このため、密封部材12を容易に軸方向へ位置決めして本体1に組付けることができる。
【0023】
なお、前述の一実施形態では、斜板式アキシャルピストンポンプ・モータを斜板式アキシャルピストンポンプとしたが、斜板式アキシャルピストンモータとしてもよい。この場合には、外部から供給された水によりシリンダブロック8が回転駆動され、シリンダブロック8で回転軸6を回転する。また、斜板13の傾斜角度を一定の角度αとした定容量型としたが、斜板の傾斜角度を変更可能とした可変容量型としてもよい。さらにまた、作動流体として水を用いたが、クーラント液であってもよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0024】
1:本体
3:前蓋部材(一つの部材)
6:回転軸
8:シリンダブロック
8A:支持孔
10:ラジアル玉軸受
11、15A、15B、15C:すべり軸受
13:斜板
14:支持軸
16:ピストン
23:側板
24A、24B:吸排ポート
図1