(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-31
(45)【発行日】2023-11-09
(54)【発明の名称】ソレノイド、電磁弁、及び緩衝器
(51)【国際特許分類】
H01F 7/16 20060101AFI20231101BHJP
H01F 7/121 20060101ALI20231101BHJP
F16F 9/34 20060101ALI20231101BHJP
F16F 9/46 20060101ALI20231101BHJP
F16K 31/06 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
H01F7/16 N
H01F7/16 D
H01F7/16 E
H01F7/16 F
F16F9/34
F16F9/46
F16K31/06 305E
F16K31/06 305J
F16K31/06 305S
F16K31/06 385C
F16K31/06 305G
F16K31/06 310Z
(21)【出願番号】P 2019163879
(22)【出願日】2019-09-09
【審査請求日】2022-03-23
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593056543
【氏名又は名称】株式会社タカコ
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】小林 義史
(72)【発明者】
【氏名】安部 友泰
(72)【発明者】
【氏名】古田 雄亮
(72)【発明者】
【氏名】段下 直明
(72)【発明者】
【氏名】土井 康平
(72)【発明者】
【氏名】袰谷 正俊
【審査官】木下 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-275735(JP,A)
【文献】実開昭52-070328(JP,U)
【文献】特開2011-256951(JP,A)
【文献】特開2014-173716(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0094741(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 7/16
H01F 7/121
F16F 9/34
F16F 9/46
F16K 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルと、
前記コイルの軸方向の一端側に位置する第一固定鉄心と、
前記第一固定鉄心と間隙をもって前記コイルの軸方向の他端側に位置する第二固定鉄心と、
前記第一固定鉄心と前記第二固定鉄心との間に介装される環状のフィラーリングと、
前記第一固定鉄心と前記第二固定鉄心との間に配置されて、前記コイルへの通電により前記第一固定鉄心に吸引される第一可動鉄心と、
前記第一固定鉄心と前記第二固定鉄心との間に配置されて、前記コイルへの通電により前記第二固定鉄心に吸引される第二可動鉄心と、
前記第一可動鉄心を前記第二固定鉄心側へ付勢するばねと、
前記第一可動鉄心の前記第二可動鉄心に対する前記第二固定鉄心側への移動を規制する規制部とを備え、
前記第一可動鉄心は、内外二重に配置される内筒部及び外筒部と、前記内筒部と前記外筒部の軸方向の一端をつなぐ連結部と、前記内筒部の他端に位置する内側底部とを有し、前記内側底部を前記第二固定鉄心側へ向けて前記フィラーリングの内側に摺動可能に挿入されており、
前記第二可動鉄心は、有底筒状で、外側底部と、前記外側底部の外周縁に起立して内径が前記内筒部の外径より大きい中間筒部とを有し、前記外側底部を前記第二固定鉄心側へ向けて前記中間筒部を前記外筒部の内側に摺動可能に挿入しており、
前記ばねは、一端側を前記内筒部の内側に挿入されて、前記内側底部と前記第一固定鉄心との間に介装されており、
前記第一可動鉄心は、前記第一固定鉄心及び前記第二固定鉄心に対する前記コイルの軸方向に直交する方向への移動を規制されている
ことを特徴とするソレノイド。
【請求項2】
請求項
1に記載のソレノイドを備えて圧力制御通路の途中に設けられる電磁弁であって、
前記圧力制御通路を開閉する弁体を備え、
前記ソレノイドは、前記コイルへの通電時に生じる前記第二可動鉄心を前記第二固定鉄心側へ吸引する力を前記弁体に前記圧力制御通路を閉じる方向へ付与する
ことを特徴とする電磁弁。
【請求項3】
請求項
2に記載の電磁弁を備える緩衝器であって、
シリンダと、
前記シリンダ内に軸方向へ移動可能に挿入されるロッドと、
前記シリンダと前記ロッドが軸方向へ相対移動する際に液体が流れる主通路と、
前記主通路を開閉する主弁体と、
途中に絞りが設けられて、前記主通路の前記主弁体より上流側の圧力を前記主弁体の背面に減圧して導く圧力導入通路と、
前記圧力導入通路の前記絞りより下流に接続されて、前記電磁弁が設けられる前記圧力制御通路とを備えている
ことを特徴とする緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソレノイドと、ソレノイドを備えた電磁弁と、ソレノイドを含む電磁弁を備えた緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ソレノイドの中には、コイルと、コイルへの通電により磁界が発生すると、磁束が流れてコイルの軸方向の一方へ引き寄せられる可動鉄心とを備え、この可動鉄心を引き寄せる力を推力として他の部材(対象物)に付与するとともに、その推力を通電量に応じて変更できるものがある。このようなソレノイドは、例えば、電磁弁に利用されている。
【0003】
そして、その電磁弁の中には、圧力制御通路の途中に設けられ、ソレノイドの他に、圧力制御通路を開閉する弁体と、この弁体を開く方向へ付勢するばねとを備え、ソレノイドで弁体に閉じる方向の推力を与えるものがある。この電磁弁によれば、ソレノイドへ供給する電流量を増やすほど電磁弁の開弁圧が高くなり、電磁弁の上流側の圧力を高められる。このような電磁弁は、例えば、緩衝器に利用されている。
【0004】
そして、その緩衝器の中には、電磁弁の他に、緩衝器の伸縮時に液体が流れる主通路と、この主通路を開閉する主弁体とを備え、主弁体の背面に形成される背圧室に電磁弁を設けた圧力制御通路を接続するものがある。この緩衝器によれば、ソレノイドへ供給する電流量を増やして電磁弁の開弁圧を高くするほど主弁体の背圧(背圧室の圧力)が高くなり、発生する減衰力を大きくできる(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、緩衝器が車両のサスペンション等に利用される場合、車両が良路を走行する通常走行時の乗り心地を良好にする上では、通常走行時に発生する減衰力を小さくするのが好ましい。そして、従来のソレノイドを含む電磁弁を備えた緩衝器では、ソレノイドへ供給する電流量を小さくしたときに発生する減衰力を小さくできるので、通常走行時の消費電力を抑えて節電できる。とはいえ、従来の緩衝器において、ソレノイドへの通電が断たれるフェール時に電磁弁が全開となって主弁体の背圧が最小となってしまっては、フェール時の減衰力が不足してしまう。
【0007】
このため、特開2014-173716号公報に記載の緩衝器に設けられる電磁弁の弁体は、圧力制御通路を開閉する二つの開閉部を有する。そして、一方の開閉部がばねによって開く方向へ付勢されるとともに、ソレノイドによって閉じる方向の推力を付与される圧力制御時の開閉部として機能する。その一方、他方の開閉部は、ソレノイドの非通電時にばねの付勢力によって一方の開閉部が全開となった状態で、圧力制御通路における一方の開閉部で開閉される部分より下流側を閉じる。
【0008】
さらに、上記緩衝器は、圧力制御通路における一方の開閉部で開閉される部分と他方の開閉部で開閉される部分の間に接続されて、途中にパッシブ弁を設けたフェール通路を備えている。これにより、ソレノイドの非通電時に電磁弁における他方の開閉部で圧力制御通路が閉塞されると、背圧室の液体がフェール通路を通過するようになり、主弁体の背圧がパッシブ弁の開弁圧に設定される。このため、従来の緩衝器においても、フェール時に緩衝器の減衰力が不足しない。
【0009】
しかし、上記緩衝器のように、背圧室に接続されて主弁体の背圧を設定する通路として、圧力制御通路とフェール通路の二つを設け、ソレノイドの通電時と非通電時とで背圧室に接続される通路を切換えるようにしたのでは、緩衝器の構造が複雑化してコストがかかる。そうかといって、電磁弁の弁体をばねで閉じる方向へ付勢し、ソレノイドで弁体へ開く方向の推力を与えるようにした場合、ソレノイドの通電時と非通電時とで背圧室に接続される通路を切換える必要はないものの、発生する減衰力を小さくする場合にソレノイドへ供給する電流量を大きくしなければならず、通常走行時の消費電力が大きくなってしまう。
【0010】
つまり、ソレノイドが緩衝器の減衰力を可変にする電磁弁に利用される場合等には、ソレノイドへ供給する電流量が小さい場合に弁体等の対象物に与える推力を小さくするとともに、ソレノイドの非通電時にも、上記推力と同方向へ対象物を付勢したい場合があるが、従来のソレノイドでは、そのようにはできない。このため、従来のソレノイドを緩衝器の減衰力を可変にする電磁弁に利用した場合には、緩衝器の構造が複雑になったり、車両の通常走行時の消費電力が大きくなったりする問題がある。
【0011】
そこで、本発明は、このような問題を解決するために創案されたものであり、ソレノイドへ供給する電流量が小さい場合に対象物に与えるソレノイドの推力を小さくできるとともに、ソレノイドの非通電時にも通電時の推力と同方向へ対象物を付勢できるソレノイド、電磁弁、及び緩衝器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するソレノイドは、コイルの軸方向の一端側と他端側に位置する第一固定鉄心及び第二固定鉄心と、第一固定鉄心と第二固定鉄心との間に介装される環状のフィラーリングと、第一固定鉄心及び第二固定鉄心の間に位置してコイルへの通電により第一固定鉄心と第二固定鉄心にそれぞれ吸引される第一可動鉄心及び第二可動鉄心と、第一可動鉄心を第二固定鉄心側へ付勢するばねと、第一可動鉄心の第二可動鉄心に対する第二固定鉄心側への移動を規制する規制部とを備え、第一可動鉄心は、内外二重に配置される内筒部及び外筒部と、内筒部と外筒部の軸方向の一端をつなぐ連結部と、内筒部の他端に位置する内側底部とを有し、内側底部を第二固定鉄心側へ向けてフィラーリングの内側に摺動可能に挿入されており、第二可動鉄心は、有底筒状で、外側底部と、外側底部の外周縁に起立して内径が内筒部の外径より大きい中間筒部とを有し、外側底部を第二固定鉄心側へ向けて中間筒部を外筒部の内側に摺動可能に挿入しており、ばねは、一端側を内筒部の内側に挿入されて内側底部と第一固定鉄心との間に介装されており、第一可動鉄心は、第一固定鉄心及び第二固定鉄心に対するコイルの軸方向に直交する方向への移動を規制されている。
【0013】
上記構成によれば、ソレノイドの非通電時に、第一可動鉄心がばねの付勢力を受けて第二固定鉄心側へと進み、規制部によって第一可動鉄心の第二可動鉄心に対する第二固定鉄心側への移動が規制されると、ばねの付勢力が規制部を介して第一可動鉄心から第二可動鉄心へと伝わる。その一方、ソレノイドの通電時に第一可動鉄心が第一固定鉄心に吸引されてその吸引方向へ動くと、第一可動鉄心によってばねが圧縮され、そのばねの付勢力が第二可動鉄心へ伝わらなくなる。また、ソレノイドの通電時には、第二可動鉄心が第二固定鉄心に吸引されるとともに、ソレノイドへ供給する電流量を大きくするほど第二可動鉄心を第二固定鉄心へ吸引する力が大きくなる。
【0014】
このため、ソレノイドの通電時に第二可動鉄心を吸引する力を推力として対象物に付与するようにすると、ソレノイドへ供給する電流量を大きくするほど対象物へ付与する推力が大きくなり、ソレノイドへ供給する電流量を小さくするほど対象物へ付与する推力を小さくできる。さらに、非通電時には、ばねの付勢力が第一可動鉄心、規制部、及び第二可動鉄心を介して対象物に作用する。ばねの付勢力の方向は、ソレノイドの通電時に第二可動鉄心を吸引する力の方向と同じであるので、上記構成によれば、ソレノイドの非通電時にも、通電時と同方向へ対象物を付勢できる。
【0015】
また、上記構成によれば、第一可動鉄心の第一固定鉄心及び第二固定鉄心に対するコイルの軸方向に直交する方向、即ち、径方向への移動が規制されているこれにより、径方向へずれた第一可動鉄心によって第二可動鉄心の移動が妨げられることがなく、第二可動鉄心の円滑な上下動を保障できる。
【0024】
上記構成によれば、コイルが励磁されたとき、磁路が第一固定鉄心、第一可動鉄心、第二可動鉄心、及び第二固定鉄心を通過するようにして、第一可動鉄心を第一固定鉄心へ吸引させるとともに、第二可動鉄心を第二固定鉄心へ吸引させられる。さらに、第一可動鉄心の内側にばねの収容スペースを確保できる。
【0025】
加えて、上記構成によれば、第一可動鉄心が第二固定鉄心側へ移動すると、第一可動鉄心の内側底部が第二可動鉄心の外側底部に接近する。このため、その接近方向の移動を規制できるように規制部を配置すれば、その規制部で第一可動鉄心の第二可動鉄心に対する第二固定鉄心側への移動を規制でき、規制部を容易に配置できる。
【0026】
さらに、上記構成によれば、第二可動鉄心が、フィラーリング内に摺動可能に挿入される第一可動鉄心のさらに内側に摺動可能に挿入されるので、第一可動鉄心が移動時に径方向へずれることも、径方向へずれた第一可動鉄心とフィラーリングとの間に第二可動鉄心が挟み込まれることもない。このため、径方向へずれた第一可動鉄心とフィラーリングの間に第二可動鉄心が挟み込まれて、その移動時の摺動抵抗が大きくなる心配がない。
【0027】
また、上記ソレノイドが圧力制御通路の途中に設けられる電磁弁に設けられていて、その電磁弁がソレノイドの他に、圧力制御通路を開閉する弁体を備え、ソレノイドがコイルへの通電時に生じる第二可動鉄心を第二固定鉄心側へ吸引する力を弁体に圧力制御通路を閉じる方向へ付与するとしてもよい。このようにすると、ソレノイドへ供給する電流量の変更により電磁弁の開弁圧を調整し、この電磁弁より上流側の圧力を電磁弁の開弁圧に設定できる。
【0028】
さらに、前述のように、上記ソレノイドでは、供給される電流量が大きくなるほど対象物に付与する推力を大きくできる。このため、上記電磁弁では、ソレノイドへ供給する電流量を大きくするほどソレノイドが弁体に閉じ方向へ与える推力が大きくなって、電磁弁の開弁圧を高くできる。加えて、前述のように、上記ソレノイドでは、非通電時においてもばねで通電時の推力と同方向へ対象物を付勢できるので、上記電磁弁では、非通電時の開弁圧をばねの仕様に応じて決められる。
【0029】
また、上記ソレノイドを含む電磁弁が緩衝器に設けられていて、その緩衝器がシリンダと、このシリンダ内に軸方向へ移動可能に挿入されるロッドと、シリンダとロッドが軸方向へ相対移動する際に液体が流れる主通路と、この主通路を開閉する主弁体と、途中に絞りが設けられて主通路の主弁体より上流側の圧力を主弁体の背面に減圧して導く圧力導入通路と、圧力導入通路の絞りより下流に接続されて上記電磁弁が設けられる圧力制御通路とを備えていてもよい。
【0030】
このようにすると、シリンダとロッドが軸方向へ相対移動する際に主通路を通過する液体の流れに対して主弁体によって抵抗を付与すれば、緩衝器がその抵抗に起因する減衰力を発生できる。また、主弁体の背圧が電磁弁の開弁圧に設定されるので、ソレノイドへ供給する電流量の変更により主弁体の背圧を調整できる。そして、主弁体の背圧を高くするほど主弁体が開き難くなって発生する減衰力が大きくなる。このため、上記構成によれば、ソレノイドへ供給する電流量の変更により発生する減衰力を大小調節できる。
【0031】
さらに、前述のように、上記電磁弁では、ソレノイドへ供給する電流量を大きくするほど電磁弁の開弁圧を高くできるので、上記緩衝器では、ソレノイドへ供給する電流量を大きくするほど主弁体の背圧を高くでき、発生する減衰力を大きくできる。つまり、上記緩衝器では、ソレノイドへ供給する電流量が小さい場合に発生する減衰力を小さくできるので、上記緩衝器を車両のサスペンションに利用した場合には、通常走行時の消費電力を少なくできる。また、これによりソレノイドの発熱を抑制して緩衝器の温度変化を小さくできるので、液温変化に起因する減衰力特性(ピストン速度に対する減衰力の特性)の変化を小さくできる。
【0032】
加えて、前述のように、上記電磁弁では、非通電時の開弁圧をばねの仕様に応じて決められるので、上記緩衝器では、ソレノイドの非通電時においても主弁体の背圧を高められる。これにより、上記緩衝器では、フェール時の減衰力が不足するのを防止できる。さらに、上記緩衝器では、主弁体の背圧を設定する通路として圧力制御通路を設ければよく、ソレノイドの通電時と非通電時とで背圧設定用の通路を切換える必要がないので、緩衝器の構造が複雑になるのを抑制し、コストを低減できる。
【発明の効果】
【0033】
本発明のソレノイド、電磁弁、及び緩衝器によれば、ソレノイドへの供給電流量が小さい場合に対象物に与えるソレノイドの推力を小さくできるとともに、ソレノイドの非通電時にも通電時の推力と同方向へ対象物を附勢できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の第一の実施の形態に係るソレノイドを含む電磁弁を備えた緩衝器の縦断面図である。
【
図2】本発明の第一の実施の形態に係るソレノイドを含む電磁弁を拡大して示した縦断面図である。
【
図3】本発明の第一の実施の形態に係るソレノイドの部分拡大断面図である。
【
図4】本発明の第一の実施の形態に係るソレノイドにおける供給電流量と、弁体を押し下げる方向へ作用する力との関係を示した特性図である。
【
図5】本発明の第一の実施の形態に係るソレノイドの第一の変形例を示し、その変形例に係るソレノイドの部分拡大断面図である。
【
図6】本発明の第一の実施の形態に係るソレノイドの第二の変形例を示し、その変形例に係るソレノイドの部分拡大断面図である。
【
図7】(a)は、本発明の第二の実施の形態に係るソレノイドの部分拡大断面図である。(b)は、(a)のY部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。いくつかの図面を通して付された同じ符号は、同じ部品(部分)か対応する部品(部分)を示す。
【0036】
各実施の形態では、ソレノイドは電磁弁に利用され、その電磁弁は緩衝器に利用され、さらにその緩衝器は車両のサスペンションに利用されている。しかし、本発明に係るソレノイド、そのソレノイドを備える電磁弁、及びその電磁弁を備える緩衝器の利用目的は上記限りではなく、適宜変更できる。
【0037】
<第一の実施の形態>
図1に示すように、本発明の第一の実施の形態に係るソレノイドを含む電磁弁Vを備えた緩衝器Dは、シリンダ1と、このシリンダ1内に摺動自在に挿入されるピストン10と、一端がピストン10に連結されて他端がシリンダ1外へ突出するピストンロッド11とを備える。そして、車両における車体と車軸の一方にシリンダ1が連結され、他方にピストンロッド11が連結される。このように、緩衝器Dは車体と車軸との間に介装される。
【0038】
そして、車両が凹凸のある路面を走行する等して車輪が上下に振動すると、ピストンロッド11がシリンダ1に出入りして緩衝器Dが伸縮し、ピストン10がシリンダ1内を
図1中上下(軸方向)に移動する。なお、
図1では、ピストンロッド11がシリンダ1から上方へ突出した状態を示しているが、緩衝器Dをどのような向きで車両に取り付けてもよい。
【0039】
つづいて、シリンダ1の軸方向の一端部には、内側にピストンロッド11の挿通が許容される環状のヘッド部材12が装着されている。このヘッド部材12は、ピストンロッド11を摺動自在に支持するとともにシリンダ1の一端を塞ぐ。その一方、シリンダ1の他端はボトムキャップ13で塞がれている。このようにしてシリンダ1内は密閉されており、そのシリンダ1内に液体と気体が封入されている。
【0040】
より詳しくは、シリンダ1内には、ピストン10から見てピストンロッド11とは反対側にフリーピストン14が摺動自在に挿入されている。そして、そのフリーピストン14のピストン10側に、作動油等の液体が充填された液室Lが形成されている。その一方、フリーピストン14から見てピストン10とは反対側に、圧縮気体が封入されたガス室Gが形成されている。
【0041】
このように、シリンダ1内の液室Lとガス室Gは、フリーピストン14で仕切られている。そして、緩衝器Dの伸縮時にピストンロッド11がシリンダ1に出入りすると、フリーピストン14がシリンダ1内を
図1中上下(軸方向)に動いてガス室Gを拡大したり縮小したりして、シリンダ1に出入りするピストンロッド11の体積分を補償する。
【0042】
なお、液室Lとガス室Gは、フリーピストン14以外にもブラダ又はベローズ等で仕切られていてもよい。つまり、膨縮可能なガス室Gを形成する可動隔壁の構成は、フリーピストン14に限らず適宜変更できる。さらに、シリンダ1に出入りするピストンロッド11の体積分を補償するための構成は、ガス室Gに限らず適宜変更できる。例えば、ガス室Gに替えて液体と気体を収容するリザーバを設け、緩衝器の伸縮時にシリンダとリザーバとの間で液体をやり取りするようにしてもよい。また、緩衝器Dを両ロッド型にして、ピストンの両側にピストンロッドを設けてもよく、その場合には、ピストンロッド体積を補償するための構成自体を省略できる。
【0043】
つづいて、シリンダ1内の液室Lは、ピストン10でピストンロッド11側の伸側室L1と、その反対側(反ピストンロッド側)の圧側室L2とに区画されている。そのピストン10は、
図2に示すように、有底筒状で、外周にシリンダ1の内周に摺接するピストンリング10aが装着される筒部10bと、この筒部10bの一端を塞ぐ底部10cとを含む。以下、説明の便宜上、特別な説明がない限り、
図2中上下となる方向を単に「上」「下」とする。
【0044】
すると、ピストン10は、底部10cを下側へ、筒部10bを上側へ向けて配置され、その筒部10bがピストンロッド11の先端部に形成された有天筒状のケース部11aに、筒状のガイド15を介して連結される。そして、そのガイド15の下端とピストン10との間には、環状の弁座部材16が固定されている。さらに、ガイド15の内側には、弁座部材16に離着座する主弁体2が上下動可能に設けられている。
【0045】
その主弁体2は、上下に分離可能な第一弁体部2Aと第二弁体部2Bとを有し、主弁体2とピストン10の底部10cとの間には、中間室L3が形成されている。この中間室L3は、ピストン10で圧側室L2と仕切られている。また、ピストン10の底部10cには、中間室L3と圧側室L2とを連通する伸側と圧側のポート10d,10eが形成されている。さらに、底部10cの下側には伸側のポート10dの出口を開閉する伸側バルブ20が積層され、底部10cの上側には圧側のポート10eの出口を開閉する圧側バルブ21が積層されている。
【0046】
また、伸側のポート10dの入口は中間室L3に開口しており、この中間室L3の圧力が伸側バルブ20を開く方向へ作用する。そして、中間室L3の圧力を受けて伸側バルブ20が開くと、中間室L3の液体が伸側のポート10dを通って圧側室L2へと向かう。その一方、圧側のポート10eの入口は圧側室L2に開口しており、この圧側室L2の圧力が圧側バルブ21を開く方向へ作用する。そして、圧側室L2の圧力を受けて圧側バルブ21が開くと、圧側室L2の液体が圧側のポート10eを通って中間室L3へと向かう。
【0047】
つづいて、主弁体2は、前述のように、上下に分離可能な第一弁体部2Aと第二弁体部2Bとを有する。第一弁体部2Aは、環状であって、その先端部を弁座部材16の内側に軸方向へ移動自在に挿入しつつ、弁座部材16に離着座可能となっている。その一方、第二弁体部2Bは、頭部2aと、この頭部2aの下端から外周側へ張り出すフランジ部2bとを含む。そして、第二弁体部2Bは、頭部2aとフランジ部2bのそれぞれをガイド15の内周に摺接させつつ、その下端が第一弁体部2Aに離着座可能となっている。
【0048】
また、ガイド15には、伸側室L1に開口する通孔15aが形成されており、伸側室L1の圧力が、第一弁体部2Aと第二弁体部2Bの両方を押し上げて、第一弁体部2Aを弁座部材16から離座させる方向へ作用する。そして、伸側室L1の圧力を受けて第一弁体部2Aが第二弁体部2Bとともに上方へ移動して弁座部材16から離座すると、伸側室L1の液体が第一弁体部2Aと弁座部材16との間にできる隙間を通って中間室L3へと向かう。
【0049】
中間室L3は、弁座部材16、第一弁体部2A、及びピストン10の筒部10bの内周側であって、ピストン10の底部10cと第二弁体部2Bとの間に形成されており、この中間室L3の圧力は、第一弁体部2Aに対しては押し下げる方向へ、第二弁体部2Bに対しては押し上げる方向へ作用する。つまり、中間室L3の圧力は、第一弁体部2Aと第二弁体部2Bを上下に分離し、第二弁体部2Bを第一弁体部2Aから離座させる方向へ作用する。そして、中間室L3の圧力を受けて第二弁体部2Bが上方へ移動して第一弁体部2Aから離座すると、中間室L3の液体が第一弁体部2Aと第二弁体部2Bとの間にできる隙間と、通孔15aを通って伸側室L1へと向かう。
【0050】
以上をまとめると、本実施の形態では、ガイド15の通孔15aと、中間室L3と、伸側と圧側のポート10d,10eによって伸側室L1と圧側室L2とを連通する主通路Mが形成されている。そして、その主通路Mに、主弁体2が設けられるとともに、この主弁体2と直列に伸側バルブ20と圧側バルブ21とが設けられている。
【0051】
つづいて、主弁体2の背面となるフランジ部2bの上面上側には、背圧室L4が形成されている。この背圧室L4の圧力は、第二弁体部2Bを第一弁体部2Aとともに押し下げる方向へ作用する。また、第二弁体部2Bには、途中に絞りOが設けられて伸側室L1の圧力を減圧して背圧室L4へ導く圧力導入通路p1と、この圧力導入通路p1の絞りOより下流に接続される圧力制御通路p2と、中間室L3から背圧室L4へ向かう液体の流れのみを許容するとともに、中間室L3の圧力を減圧して背圧室L4へと導く減圧通路p3が形成されている。
【0052】
そして、上記した圧力制御通路p2の途中に本実施の形態に係るソレノイドS1を含む電磁弁Vが設けられている。その電磁弁Vは、第二弁体部2Bに設けられた弁座22に離着して圧力制御通路p2を開閉する弁体としてのスプール3と、このスプール3に下向きの推力を与えるソレノイドS1とを有して構成される。そして、スプール3がソレノイドS1の推力を受けて下向きに進むと弁座22に着座して圧力制御通路p2を閉じる。このように、ソレノイドS1の推力は、スプール3を閉じる方向へ作用する。
【0053】
その一方、背圧室L4の圧力は、スプール3を押し上げる方向へ作用する。そして、背圧室L4の圧力が高まって、その圧力等に起因する上向きの力がソレノイドS1等に起因する下向きの力に打ち勝つようになると、スプール3が上方へ移動して弁座22から離座し、圧力制御通路p2を開く。つまり、背圧室L4の圧力は、スプール3を開く方向へ作用し、その背圧室L4の圧力がスプール3の開弁圧に達すると、スプール3が圧力制御通路p2を開く。このように、スプール3が弁座22に離着座して圧力制御通路p2を開閉することを、電磁弁Vが開閉するともいう。
【0054】
また、本実施の形態では、電磁弁Vが開くと、背圧室L4の液体が圧力制御通路p2を通り、第二弁体部2Bの頭部2aとソレノイドS1との間にできる上側隙間L5へ流出する。この上側隙間L5は、第二弁体部2Bに形成される連通路p4によって中間室L3と連通されている。これにより、電磁弁Vが開くと、液体が圧力制御通路p2を通って背圧室L4から上側隙間L5へ向かうとともに、連通路p4を通って上側隙間L5から中間室L3へと向かう。さらに、連通路p4によって上側隙間L5と中間室L3の圧力が略同じになる。
【0055】
つづいて、本実施の形態に係るソレノイドS1は、ピストンロッド11のケース部11a内に軸方向に沿うように収容されるコイル4と、このコイル4の上側に配置される第一固定鉄心5と、この第一固定鉄心5と空隙をもってコイル4の下側に配置される第二固定鉄心6と、第一固定鉄心5と第二固定鉄心6との間に上下動可能に配置される第一可動鉄心7及び第二可動鉄心8と、第一可動鉄心7を下向きに付勢するばね9と、第一可動鉄心7の第二可動鉄心8に対する下方への移動量を制限する板ばね90と、第二可動鉄心8の下方への移動量を制限する板ばね91を備える。
【0056】
ここで、コイル4の中心を通る中心線Xに沿う方向がコイル4の軸方向であり、ここでいう上下とは、コイル4の軸方向の両側にあたる。このため、第一固定鉄心5は、コイル4の軸方向の一端側に配置され、第二固定鉄心6は、コイル4の軸方向の他端側に配置されているといえる。また、ばね9は、第一可動鉄心7を第二固定鉄心6側へ付勢し、板ばね90は、第一可動鉄心7の第二可動鉄心8に対する第二固定鉄心6側への移動を規制する規制部として機能し、板ばね91は、第二可動鉄心8の第二固定鉄心6側への移動を規制する規制部として機能するといえる。
【0057】
以下に、本実施の形態に係るソレノイドS1を構成する各部について、詳細に説明する。
【0058】
コイル4は、通電のためのハーネス40とモールド樹脂で一体化されており、そのハーネス40は、ピストンロッド11の内側を通って緩衝器Dの外方へ延びて電源に接続されている。また、第一固定鉄心5、第二固定鉄心6、第一可動鉄心7、及び第二可動鉄心8はそれぞれ磁性体からなり、コイル4に通電すると磁束が発生し、その磁束が第一固定鉄心5、第一可動鉄心7、第二可動鉄心8、第二固定鉄心6、ケース部11aの経路で流れ、第一可動鉄心7が第一固定鉄心5へ向けて上方へ吸引されるとともに、第二可動鉄心8が第二固定鉄心6へ向けて下方へ吸引される。
【0059】
第一固定鉄心5と第二固定鉄心6との間には、非磁性体からなる環状のフィラーリング41が介装されており、このフィラーリング41によって第一固定鉄心5と第二固定鉄心6との間に磁気的な空隙が形成される。また、そのフィラーリング41の内側に、第一可動鉄心7と第二可動鉄心8が配置されている。これら第一可動鉄心7と第二可動鉄心8は、ともに有底筒状で、第一可動鉄心7が第二可動鉄心8の内側に上下(軸方向)に移動可能に挿入されるとともに、第二可動鉄心8がフィラーリング41の内側に上下(軸方向)に移動可能に挿入されている。
【0060】
図3に示すように、外筒である第二可動鉄心8は、外側底部8aと、その外側底部8aの外周縁に起立する外筒部8bとを有し、外側底部8aを下方(第二固定鉄心6側)へ向け、外筒部8bをフィラーリング41の内周に摺接させている。その一方、内筒である第一可動鉄心7は、内側底部7aと、その内側底部7aの外周縁に起立する内筒部7bと、内筒部7bの先端部外周に位置する環状のガイド部7cとを有し、内側底部7aを下方(第二固定鉄心6側)へ向けて内筒部7bを外筒部8b内に挿入するとともに、外筒部8bから上方へ突出させたガイド部7cをフィラーリング41の内周に摺接させている。
【0061】
第一可動鉄心7の内側底部7aには、その肉厚を貫通する連通孔7dが形成されており、液体がその連通孔7dを比較的抵抗なく移動できる。これにより、第一可動鉄心7の上側(第一固定鉄心5側)に液体が閉じ込められることがなく、第一可動鉄心7の円滑な上下動が保障されている。その第一可動鉄心7の内筒部7bの内側に、ばね9が挿入されている。本実施の形態において、そのばね9はコイルばねであり、ばね9の一端が内側底部7aに突き当たる。その一方、ばね9の他端は第一固定鉄心5で支えられていて、ばね9が第一可動鉄心7を下向きに付勢する。
【0062】
また、第二可動鉄心8における外筒部8bの内径は、第一可動鉄心7における内筒部7bの外径よりも大きく、外筒部8bと内筒部7bとの間に環状の隙間が形成されており、液体がその隙間を比較的抵抗なく移動できる。また、第二可動鉄心8の外側底部8aには、その肉厚を貫通する連通孔8cが形成されており、液体がその連通孔8cを比較的抵抗なく移動できる。これにより、外筒部8bの先端上側(第一固定鉄心5側)にできる空間L6、又は外側底部8aの上側(第一固定鉄心5側)にできる空間L7に液体が閉じ込められて、第二可動鉄心8の移動を妨げる減衰力が発生するのを抑制できる。
【0063】
さらに、本実施の形態では、第一可動鉄心7がそのガイド部7cをフィラーリング41で支えられつつ上下(軸方向)に移動するので、その移動時にフィラーリング41に対して偏心しない。そのフィラーリング41は、第一固定鉄心5と第二固定鉄心6とで挟持され、これらに対して固定的に設けられているので、フィラーリング41によって第一可動鉄心7がコイル4の中心線Xに直交する方向(径方向)へずれるのが防止される。このため、第一可動鉄心7がその移動時に径方向へずれてフィラーリング41との間に第二可動鉄心8の外筒部8bを挟み込み、第二可動鉄心8の移動時のフリクションを大きくしてしまうのを防止できる。これにより、第二可動鉄心8の円滑な上下動が保障される。
【0064】
つづいて、第二可動鉄心8の外側底部8aの上下に、前述のように規制部として機能する板ばね90,91が配置されている。より詳しくは、第一の規制部である上側の板ばね90は、第二可動鉄心8の外側底部8aと、これと上下に向かい合う第一可動鉄心7の内側底部7aとの間に位置し、第二の規制部である下側の板ばね91は、第二可動鉄心8の外側底部8aと、これと上下に向かい合う第二固定鉄心6との間に位置する。
【0065】
また、上側の板ばね90は、第二可動鉄心8の外側底部8aに積層される環板状の座部と、この座部から外周側へ放射状に伸び、斜め上向きに起立する複数の脚部とを含む。その一方、下側の板ばね91は、第二固定鉄心6に積層される環状の座部と、この座部から内周側へ伸び、斜め上向きに起立する複数の脚部とを含む。このように、上下の板ばね90,91が、それぞれ複数の脚部を含み、隣り合う脚部の間に隙間ができるので、板ばね90,91が液体の流れを妨げない。
【0066】
そして、第一可動鉄心7が第二可動鉄心8に対して下方へ移動していくと、第一可動鉄心7の内側底部7aが板ばね90に突き当たる。すると、第一可動鉄心7の第二可動鉄心8に対する下方への移動が規制され、以降は、第一可動鉄心7が第二可動鉄心8と一体となって下方へ進むようになる。また、第二可動鉄心8が下方へ移動していくと、第二可動鉄心8の外側底部8aが板ばね91に突き当たってこれを圧縮し、それ以上は下方へ移動しなくなる。
【0067】
第二固定鉄心6の中心部には貫通孔が形成されており、その貫通孔にスプール3の軸部3aが移動自在に挿通されている。そして、その軸部3aの先端が第二可動鉄心8の外側底部8aに突き当たる。これにより、コイル4への通電を断った状態では、第一可動鉄心7がばね9の付勢力を受けて下向きに進み、板ばね90を介して第二可動鉄心8に突き当たるので、スプール3がばね9の付勢力による下向きの力を受ける。これに対して、コイル4へ通電して第一可動鉄心7を第一固定鉄心5へ吸引し、第二可動鉄心8を第二固定鉄心6へ吸引すると、ばね9が第一可動鉄心7で圧縮されてその付勢力がスプール3へと伝わらなくなるが、スプール3は第二可動鉄心8を吸引する力による下向きの力を受ける。
【0068】
また、第一の規制部である板ばね90は、第一可動鉄心7の内側底部7aと、これと上下(軸方向)に向かい合う第二可動鉄心8の外側底部8aとの接近を規制して、コイル4への通電時に第一可動鉄心7と第二可動鉄心8とが吸着するのを防止する。同様に、第二の規制部である板ばね91は、第二可動鉄心8の外側底部8aと、これと上下(軸方向)に向かい合う第二固定鉄心6との接近を規制して、コイル4への通電時に第二可動鉄心8が第二固定鉄心6に吸着するのを防止する。
【0069】
なお、第一、第二の規制部は、それぞれ板ばね90,91に限られず、ゴム、合成樹脂、又はアルミ等の非磁性体のリング又はシートであってもよく、このような場合には、そのリング又はシートが液体の流れを妨げないよう、連通孔7d,8cの出入り口の外周側等に配置されるとよい。さらに、通電時における第一可動鉄心7の第二可動鉄心8に対する移動、及び第二可動鉄心8の第二固定鉄心6に対する移動が妨げられないのであれば、第一、第二の規制部は磁性体であってもよく、第一可動鉄心7又は第二可動鉄心8の一部が第一の規制部として機能したり、第二可動鉄心8又は第二固定鉄心6の一部が第二の規制部として機能したりしてもよい。
【0070】
その一方、第一固定鉄心5と第一可動鉄心7との間には規制部が設けられておらず、コイル4への通電時に第一可動鉄心7は第一固定鉄心5に吸着される。このように、コイル4への通電時に第一可動鉄心7が第一固定鉄心5に吸着されると、第一可動鉄心7でばね9を圧縮し、このばね9の付勢力が第二可動鉄心8側へ伝わらないようにする第一可動鉄心7の姿勢を安定的に維持できる。しかし、必ずしもコイル4への通電時に第一可動鉄心7が第一固定鉄心5に吸着されなくてもよい。
【0071】
つづいて、
図4には、ソレノイドS1へ供給する電流量と、ソレノイドS1がスプール3に与える力との関係が示されている。この
図4中、Iaは、第一固定鉄心5から離れた状態にある第一可動鉄心7を第一固定鉄心5に吸着させるのに最低限必要な電流量であり、Ibは、第一固定鉄心5と第一可動鉄心7の吸着状態を維持するのに最低限必要な電流量である。なお、Icについては、後述する。
【0072】
まず、コイル4へ供給する電流量がゼロの場合、つまり、ソレノイドS1の非通電時には、ばね9の付勢力により第一可動鉄心7が押し下げられて板ばね90を介して第二可動鉄心8に突き当たり、第二可動鉄心8がスプール3とともに押し下げられる。このように、ソレノイドS1の非通電時には、スプール3が第二可動鉄心8、板ばね90、及び第一可動鉄心7を介してばね9による下向きの力を受ける。つまり、ソレノイドS1の非通電時には、ソレノイドS1はスプール3に、ばね9の付勢力に起因する下向きの力を与える。
【0073】
次に、ソレノイドS1へ供給する電流量を増やしていく場合、第一可動鉄心7を第一固定鉄心5へ吸引する上向きの力が大きくなるとともに、第二可動鉄心8を第二固定鉄心6へ吸引する下向きの力も大きくなる。このような場合、ソレノイドS1へ供給する電流量がIa未満の領域では、スプール3にばね9の付勢力が伝わるものの、第一可動鉄心7を下方へ付勢するばね9の力の一部が第一可動鉄心7を上方(第一固定鉄心5側)へ吸引する力により相殺される。このため、電流量がIa未満の領域では、ソレノイドS1へ供給する電流量を増やすほどソレノイドS1がスプール3に与える下向きの力が減少する。
【0074】
その一方、ソレノイドS1へ供給する電流量を増やしていく場合であって、その電流量がIa以上の領域では、ばね9の付勢力に抗して第一可動鉄心7が第一固定鉄心5に引き寄せられて吸着される。このような状態では、ばね9の付勢力が第二可動鉄心8へ伝わらなくなって、第二可動鉄心8を第二固定鉄心6へ吸引する力のみがスプール3を押し下げる方向へ作用する。この第二可動鉄心8を吸引する下向きの力は、ソレノイドS1へ供給する電流量に比例して大きくなるので、ソレノイドS1へ供給する電流量がIa以上の領域では、ソレノイドS1へ供給する電流量を増やすほど、その電流量に比例してソレノイドS1がスプール3に与える下向きの力が増加する。
【0075】
反対に、ソレノイドS1へ供給する電流量を減らしていく場合、第一可動鉄心7を第一固定鉄心5へ吸引する上向きの力が小さくなるとともに、第二可動鉄心8を第二固定鉄心6へ吸引する下向きの力も小さくなる。このような場合であっても、ソレノイドS1へ供給する電流量がIb以上の領域では、第一可動鉄心7が第一固定鉄心5に吸着されて、ばね9の付勢力が第二可動鉄心8へ伝わらない状態が維持される。このため、ソレノイドS1へ供給する電流量がIb以上の領域では、ソレノイドS1へ供給する電流量を減らすほど、その電流量に比例してソレノイドS1がスプール3に与える下向きの力が減少する。
【0076】
その一方、ソレノイドS1へ供給する電流量を減らしていく場合であって、その電流量がIb未満の領域では、ばね9の付勢力によって第一可動鉄心7と第一固定鉄心5との吸着状態が解除されて、ばね9の付勢力が第二可動鉄心8へ伝わるようになる。このため、電流量がIb未満の領域では、ソレノイドS1へ供給する電流量を減らすほどソレノイドS1がスプール3に与える下向きの力が増加する。
【0077】
図4からもわかるように、第一可動鉄心7と第一固定鉄心5の吸着を維持するのに最低限必要な電流量であるIbは、離間した状態にある第一可動鉄心7を第一固定鉄心5に吸着させるのに最低限必要な電流量であるIaより小さい(Ia>Ib)。このため、ソレノイドS1に供給する電流量に対するソレノイドS1がスプール3に与える力の特性は、ヒステリシスをもった特性となる。なお、
図4では、理解を容易にするため、ソレノイドS1へ供給される電流量が小さい領域を誇張して記載している。
【0078】
そして、本実施の形態では、ソレノイドS1へ供給する電流量を制御して、ソレノイドS1がスプール3に与える力を制御しようとする場合、一旦Ia以上の電流供給をして第一可動鉄心7を第一固定鉄心5に吸着させた後、ソレノイドS1へ供給する電流量がIbより大きなIc以上となる範囲で制御される。これにより、ソレノイドS1への通電量を制御する正常時には、第一可動鉄心7が第一固定鉄心5に吸着された状態が維持されるので、ソレノイドS1へ供給する電流量と、ソレノイドS1がスプール3に与える下向きの力が比例関係となり、その力はソレノイドS1へ供給する電流量を増やすほど大きくなる。
【0079】
その正常時(制御時)において、ソレノイドS1への通電によって生じる磁力に起因してソレノイドS1がスプール3に与える力をソレノイドS1の「推力」という。つまり、ソレノイドS1の推力は、ソレノイドS1へ供給する電流量の制御によって制御される。また、本実施の形態では、ソレノイドS1へ供給する電流量とソレノイドS1がスプール3に与える推力との関係が比例関係となり、供給電流量を増やすほど推力が大きくなり、供給電流量を減らすほど推力が小さくなる。
【0080】
その一方、ソレノイドS1への通電を断つフェール時においては、ソレノイドS1のばね9によってスプール3が下向きに付勢され、その付勢力は、ばね定数等のばね9の仕様に応じて予め決められる。また、フェール時(非通電時)にスプール3を付勢するばね9の付勢力の方向は、正常時にスプール3に付与される推力の方向と同じである。
【0081】
以下に、本実施の形態に係るソレノイドS1を含む電磁弁Vを備えた緩衝器Dの作動について説明する。
【0082】
緩衝器Dの伸長時にピストン10がシリンダ1内を上方へ移動して伸側室L1を圧縮し、伸側室L1の圧力が上昇すると、伸側室L1の液体が圧力導入通路p1を通って背圧室L4へ流入し、背圧室L4の圧力が上昇する。そして、この背圧室L4の圧力が、スプール3の開弁圧に達するとスプール3(電磁弁V)が開き、背圧室L4の液体が圧力制御通路p2、上側隙間L5、及び連通路p4を通って中間室L3へと向かう。これにより、緩衝器Dの伸長時には、背圧室L4の圧力が電磁弁Vの開弁圧に制御される。
【0083】
また、緩衝器Dの伸長時に第一弁体部2A及び第二弁体部2Bに作用する伸側室L1の圧力等による上向きの力が背圧室L4の圧力等による下向きの力を上回るようになると、第一弁体部2Aと第二弁体部2Bが上方へ移動する。すると、第一弁体部2Aと弁座部材16との間に隙間ができて、伸側室L1の液体がその隙間を通って中間室L3へ移動するとともに、中間室L3の液体が伸側バルブ20を開いて圧側室L2へと移動する。
【0084】
このように、緩衝器Dの伸長時には、主弁体2における第一弁体部2Aと伸側バルブ20が開き、主通路Mを伸側室L1から圧側室L2へ向かう液体の流れに対して、主弁体2と伸側バルブ20によって抵抗が付与される。このため、緩衝器Dの伸長時には伸側室L1の圧力が高まり、緩衝器Dがその伸長作動を妨げる伸側の減衰力を発揮する。
【0085】
また、ソレノイドS1への通電量を制御する正常時においては、ソレノイドS1へ供給する電流量を増やすほどスプール3に下向き(閉じ方向)に作用するソレノイドS1の推力が大きくなる。このため、ソレノイドS1へ供給する電流量を増やすほどスプール3(電磁弁V)の開弁圧が高くなり、これにより背圧室L4の圧力が高くなる。
【0086】
さらに、背圧室L4の圧力は、第二弁体部2B及び第一弁体部2Aに下向き(閉じ方向)に作用するので、ソレノイドS1へ供給する電流量を増やして背圧室L4の圧力を高くすればするほど、主弁体2における第一弁体部2Aの開弁圧が高くなり、発生する伸側の減衰力が大きくなる。このように、正常時においては、ソレノイドS1でスプール3の開弁圧を調整することで、伸側の減衰力が大小調整される。なお、
図2,3には、正常時にスプール3が開いた状態が示されている。
【0087】
その一方、ソレノイドS1への通電を断つフェール時には、スプール3(電磁弁V)の開弁圧がばね9の付勢力に応じて決まる。このため、フェール時における背圧室L4の圧力は、ばね9の仕様に応じて決まり、これにより発生する伸側の減衰力が決まる。前述のように、正常時においては、ばね9の付勢力がスプール3には伝わらないので、ばね9の仕様は、正常時の伸側の減衰力を考慮せずに自由に設定できる。
【0088】
反対に、緩衝器Dの収縮時にピストン10がシリンダ1内を下方へ移動して圧側室L2を圧縮し、圧側室L2の圧力が上昇すると、圧側室L2の液体が圧側バルブ21を開いて中間室L3へと移動するとともに、中間室L3の液体が減圧通路p3を通って背圧室L4へと移動する。このとき、スプール3の下流側に位置する上側隙間L5の圧力が中間室L3の圧力と略同圧となっていて、スプール3の上流側に位置する背圧室L4の圧力よりも高くなる。このため、スプール3は閉じた状態に維持される。そして、このような状態では、ソレノイドS1の推力がスプール3を介して第二弁体部2Bに下向きに作用する。
【0089】
また、前述のように、中間室L3の圧力は、第二弁体部2Bに対してのみ上向きに作用するので、その第二弁体部2Bに作用する中間室L3の圧力等による上向きの力がソレノイドS1の推力等による下向きの力を上回るようになると、第二弁体部2Bのみが上方へ移動する。すると、第二弁体部2Bと第一弁体部2Aとの間に隙間ができて、中間室L3の液体がその隙間を通って伸側室L1へと移動する。
【0090】
このように、緩衝器Dの収縮時には、圧側バルブ21と主弁体2における第二弁体部2Bが開き、主通路Mを圧側室L2から伸側室L1へと向かう液体の流れに対して、圧側バルブ21と主弁体2によって抵抗が付与される。このため、緩衝器Dの収縮時には圧側室L2の圧力が高まり、緩衝器Dがその収縮作動を妨げる圧側の減衰力を発揮する。
【0091】
また、ソレノイドS1への通電量を制御する正常時においては、ソレノイドS1へ供給する電流量を増やしてソレノイドS1の推力を大きくするほど、第二弁体部2Bに作用する下向き(閉じ方向)の力が大きくなる。このため、ソレノイドS1へ供給する電流量を増やしてソレノイドS1の推力を大きくするほど、主弁体2における第二弁体部2Bの開弁圧が高くなり、発生する圧側の減衰力が大きくなる。このように、正常時においては、ソレノイドS1によって、スプール3を介して第二弁体部2Bを下向きに押す力を調整することで、圧側の減衰力が大小調整される。
【0092】
その一方、ソレノイドS1への通電を断つフェール時には、ばね9の付勢力がスプール3を介して第二弁体部2Bへ伝わる。このため、フェール時における圧側の減衰力も、ばね9の仕様に応じて決まる。前述のように、正常時においては、ばね9の付勢力がスプール3には伝わらないので、ばね9の仕様は、正常時の圧側の減衰力を考慮せずに自由に設定できる。
【0093】
以下、本実施の形態に係るソレノイドS1、ソレノイドS1を備えた電磁弁V、及びソレノイドS1を含む電磁弁Vを備えた緩衝器Dの作用効果について説明する。
【0094】
本実施の形態に係るソレノイドS1は、コイル4と、このコイル4の軸方向の一端側に位置する第一固定鉄心5と、この第一固定鉄心5と間隙をもってコイル4の軸方向の他端側に位置する第二固定鉄心6と、第一固定鉄心5と第二固定鉄心6との間に配置されてコイル4への通電により第一固定鉄心5に吸引される第一可動鉄心7と、第一固定鉄心5と第二固定鉄心6との間に配置されて、コイル4への通電により第二固定鉄心6に吸引される第二可動鉄心8と、第一可動鉄心7を第二固定鉄心6側へ付勢するばね9と、第一可動鉄心7の第二可動鉄心8に対する第二固定鉄心6側への移動を規制する板ばね(規制部)90とを備えている。そして、第一可動鉄心7は、第一固定鉄心5及び第二固定鉄心6に対するコイル4の軸方向に直交する方向への移動を規制されている。
【0095】
上記構成によれば、ソレノイドS1の非通電時に、第一可動鉄心7がばね9の付勢力を受けて第二固定鉄心6側へと進み、板ばね90によって第一可動鉄心7の第二可動鉄心8に対する第二固定鉄心6側への移動が規制されると、第一可動鉄心7と第二可動鉄心8が一体となって第二固定鉄心6側へ動くようになる。このため、ソレノイドS1の非通電時には、ばね9の付勢力が第一可動鉄心7と板ばね90を介して第二可動鉄心8へと伝わる。
【0096】
その一方、ソレノイドS1の通電時に第一可動鉄心7が第一固定鉄心5に吸引されてその吸引方向へ動くと、第一可動鉄心7によってばね9が圧縮され、そのばね9の付勢力が第二可動鉄心8へ伝わらなくなる。また、ソレノイドS1の通電時には、第二可動鉄心8が第二固定鉄心6に吸引されるとともに、ソレノイドS1へ供給する電流量を大きくするほど第二可動鉄心8を第二固定鉄心6へ吸引する力が大きくなる。
【0097】
このため、ソレノイドS1の通電時に第二可動鉄心8を吸引する力を推力としてスプール3等の対象物に付与するようにすると、ソレノイドS1へ供給する電流量を大きくするほど対象物へ付与する推力が大きくなり、ソレノイドS1へ供給する電流量を小さくするほど対象物へ付与する推力を小さくできる。さらに、非通電時には、ばね9の付勢力が第一可動鉄心7、板ばね(規制部)90、及び第二可動鉄心8を介して対象物に作用する。ばね9の付勢力の方向は、ソレノイドS1の通電時に第二可動鉄心8を吸引する力の方向と同じであるので、上記構成によれば、ソレノイドS1の非通電時にも、通電時と同方向へ対象物を付勢できる。
【0098】
また、上記構成によれば、前述のように、ソレノイドS1の通電時にばね9の付勢力に抗して第一可動鉄心7が第一固定鉄心5側へ動くと、ばね9の付勢力が第二可動鉄心8に伝わらなくなり、これによりスプール(対象物)3にも伝わらなくなる。このため、通電時におけるソレノイドS1の推力と、非通電時にばね9によって対象物に与えられる付勢力とを個別に自由に設定できる。なお、本実施の形態では、ばね9は、コイルばねであるが、皿ばね等のコイルばね以外のばねでもよい。
【0099】
また、本実施の形態のソレノイドS1の第一可動鉄心7は、第一固定鉄心5及び第二固定鉄心6に対するコイル4の軸方向(コイル4の中心線Xに沿う方向)に直交する方向への移動を規制されている。換言すると、第一可動鉄心7は、第一固定鉄心5及び第二固定鉄心6に対し、コイル4の径方向へは動かない。これにより、径方向へずれた第一可動鉄心7によって第二可動鉄心8の移動が妨げられることがなく、第二可動鉄心8の円滑な上下動を保障できる。その結果、前述のように、第二可動鉄心8を吸引する力を推力として対象物へ付与する場合に、ソレノイドS1へ供給する電流量に対する推力の特性にヒステリシスが生じるのを抑制し、推力の制御を容易にできる。
【0100】
また、本実施の形態に係るソレノイドS1は、第一固定鉄心5と第二固定鉄心6との間に介装される環状のフィラーリング41を備えている。そして、第二可動鉄心8は有底筒状で、外側底部8aと、この外側底部8aの外周縁に起立する外筒部8bとを有し、外側底部8aを第二固定鉄心6側へ向けてフィラーリング41の内側に軸方向へ移動可能に挿入されている。さらに、第一可動鉄心7も有底筒状で、内側底部7aと、この内側底部7aの外周縁に起立して外径が外筒部8bの内径より小さい内筒部7bとを有し、内側底部7aを第二固定鉄心6側へ向けて内筒部7bを第二可動鉄心8の外筒部8bの内側に軸方向へ移動可能に挿入している。また、ばね9は、一端側を第一可動鉄心7の内筒部7bの内側に挿入されて、内側底部7aと第一固定鉄心5との間に介装されている。
【0101】
上記構成によれば、コイル4が励磁されたとき、磁路が第一固定鉄心5、第一可動鉄心7、第二可動鉄心8、及び第二固定鉄心6を通過するようにして、第一可動鉄心7を第一固定鉄心5へ吸引させるとともに、第二可動鉄心8を第二固定鉄心6へ吸引させられる。さらに、第一可動鉄心7の内側にばね9の収容スペースを確保しつつ第一可動鉄心7と第二可動鉄心8を小型化できるので、ソレノイドS1を小型にできる。
【0102】
また、上記構成によれば、第一可動鉄心7が第二固定鉄心6側へ移動すると、第一可動鉄心7の内側底部7aが第二可動鉄心8の外側底部8aに接近するので、これらの接近方向の移動を規制できるように板ばね(規制部)90を配置すれば、第一可動鉄心7の第二可動鉄心8に対する第二固定鉄心6側への移動を規制できる。そして、そのように板ばね90を配置するには、例えば、本実施の形態のように板ばね90を内側底部7aと外側底部8aとの間に配置すればよく、このようにするのは容易である。つまり、上記構成によれば、板ばね(規制部)90を容易に配置できる。
【0103】
さらに、上記ソレノイドS1では、第二可動鉄心8の外筒部8bが第一可動鉄心7の内筒部7bとフィラーリング41との間に位置しているが、前述のように、第一可動鉄心7は、第一固定鉄心5及び第二固定鉄心6に対する径方向(コイル4の軸方向に直交する方向)への移動を規制されている。また、フィラーリング41は、第一固定鉄心5と第二固定鉄心6との間に介装されていて、これらに対して固定的に設けられている。このため、上記ソレノイドS1によれば、第一可動鉄心7が第一固定鉄心5に吸着される際にフィラーリング41に対して径方向へずれることがない。よって、上記ソレノイドS1によれば、径方向へずれた第一可動鉄心7とフィラーリング41の間に第二可動鉄心8の外筒部8bが挟み込まれて、その移動時の摺動抵抗が大きくなり、これにより第二可動鉄心8の円滑な上下動が妨げられるのを防止できる。
【0104】
また、本実施の形態に係るソレノイドS1の第一可動鉄心7は、第二可動鉄心8の外筒部8b外へ突出する内筒部7bの先端部外周に位置してフィラーリング41の内周に摺接するガイド部7cを有している。この場合、フィラーリング41とガイド部7cとの間にできる摺動隙間が非常に狭く、外筒部8bと内筒部7bとの間にできる隙間よりも狭くなる。換言すると、フィラーリング41の内径とガイド部7cの外径との差が、外筒部8bの内径と内筒部7bの外径との差よりも小さくなる。
【0105】
上記構成によれば、フィラーリング41で第一可動鉄心7のガイド部7cを支えることにより、第一可動鉄心7が第一固定鉄心5及び第二固定鉄心6に対して径方向(コイル4の軸方向に直交する方向)にずれるのを防止でき、そのずれ防止のための構成を簡易にできる。さらに、上記構成によれば、フィラーリング41に嵌合するガイド部7cの軸方向長さ、即ち、フィラーリング41とガイド部7cとの嵌合長を長くすれば、第一可動鉄心7がフィラーリング41内で傾いて第二可動鉄心8の円滑な上下動を妨げるのを防止できる。このため、上記ソレノイドS1によれば、第一可動鉄心7によって第二可動鉄心8の円滑な上下動が妨げられるのをより確実に防止できる。
【0106】
しかし、第一可動鉄心7の第一固定鉄心5及び第二固定鉄心6に対する径方向(コイル4の軸方向に直交する方向)のずれを規制するための構成は上記の限りではなく、適宜変更できる。
図5,6には、第一可動鉄心7の第一固定鉄心5及び第二固定鉄心6に対する径方向(コイル4の軸方向に直交する方向)のずれを規制するための構成の変形例を示している。以下、本実施の形態に係るソレノイドS1の各変形例について具体的に説明する。
【0107】
本実施の形態のソレノイドS1の第一の変形例では、
図5に示すように、第一固定鉄心5に第一可動鉄心7側へ開口する凹部5aが形成されている。そして、第一可動鉄心7は、
図3に示すガイド部7cに替えて、内筒部7bの先端から軸方向に延長されるガイド部7eを有し、そのガイド部7eを凹部5a内に摺動可能に挿入している。この場合、ガイド部7eと凹部5aの周壁との間にできる摺動隙間が非常に狭く、凹部5a周壁の径とガイド部7eの外径との差が、外筒部8bの内径と内筒部7bの外径との差よりも小さくなる。
【0108】
上記構成によれば、第一固定鉄心5の凹部5aとガイド部7eとの嵌め合いによって第一可動鉄心7の第一固定鉄心5及び第二固定鉄心6に対する径方向(コイル4の軸方向に直交する方向)のずれを防止でき、そのずれ防止のための構成を簡易にできる。さらに、上記構成によれば、ガイド部7eの軸方向長さを長くして嵌合長を大きくすれば、第一可動鉄心7のフィラーリング41内での傾きを抑制し、第二可動鉄心8の円滑な上下動が第一可動鉄心7によって妨げられるのをより確実に防止できる。
【0109】
つづいて、本実施の形態のソレノイドS1の第二の変形例では、
図6に示すように、第一固定鉄心5には、第一可動鉄心7側へ突出するパイプ50が取り付けられている。そして、そのパイプ50が第一可動鉄心7の内筒部7bの内側に摺動可能に挿入されている。この場合、パイプ50と内筒部7bとの間にできる摺動隙間が非常に狭く、内筒部7bの内径とパイプ50の外径との差が、外筒部8bの内径と内筒部7bの外径との差よりも小さくなる。
【0110】
上記構成によれば、第一固定鉄心5に設けたパイプ50と第一可動鉄心7の内筒部7bとの嵌め合いによって第一可動鉄心7の第一固定鉄心5及び第二固定鉄心6に対する径方向(コイル4の中心線Xに直交する方向)のずれを防止でき、そのずれ防止のための構成を簡易にできる。さらに、上記構成によれば、パイプ50の軸方向長さを長くして嵌合長を大きくすれば、第一可動鉄心7のフィラーリング41内での傾きを抑制し、第二可動鉄心8の円滑な上下動が第一可動鉄心7によって妨げられるのをより確実に防止できる。
【0111】
また、本実施の形態に係るソレノイドS1は、圧力制御通路p2を開閉するスプール(弁体)3とともに電磁弁Vを構成する。そして、ソレノイドS1は、コイル4への通電時に生じる第二可動鉄心8を第二固定鉄心6側へ吸引する力をスプール(弁体)3に圧力制御通路p2を閉じ方向へ付与する。これにより、ソレノイドS1へ供給する電流量の変更により電磁弁Vの開弁圧を調整し、この電磁弁Vより上流側の圧力を電磁弁Vの開弁圧に設定できる。
【0112】
さらに、前述のように、本実施の形態のソレノイドS1では、通電時において供給される電流量が大きくなるほど対象物に付与する推力を大きくできる。これにより、本実施の形態のソレノイドS1を備える電磁弁Vでは、ソレノイドS1へ供給する電流量を大きくするほどスプール3の開弁圧を高くできる。加えて、前述のように、本実施の形態のソレノイドS1では、非通電時においてもばね9によって通電時の推力と同方向へ対象物を付勢できる。これにより、本実施の形態のソレノイドS1を備える電磁弁Vでは、非通電時の開弁圧をばね9の仕様に応じて決められる。
【0113】
また、本実施の形態のソレノイドS1を含む電磁弁Vは緩衝器Dに設けられている。この緩衝器Dは、電磁弁Vの他に、シリンダ1と、シリンダ1内に軸方向へ移動可能に挿入されるピストンロッド11と、シリンダ1とピストンロッド11が軸方向へ相対移動する際に液体が流れる主通路Mと、この主通路Mを開閉する主弁体2と、途中に絞りOが設けられて、主通路Mにおける主弁体2より上流側の圧力を主弁体2の背面に減圧して導く圧力導入通路p1と、圧力導入通路p1の絞りOより下流に接続されて上記電磁弁Vが設けられる圧力制御通路p2とを備えている。
【0114】
上記構成によれば、シリンダ1とピストンロッド11が軸方向へ相対移動する際、主通路Mを通過する液体の流れに対して主弁体2によって抵抗が付与されて、その抵抗に起因する減衰力が発生する。また、主弁体2の背圧が電磁弁Vの開弁圧に設定されるので、ソレノイドS1へ供給する電流量の変更により主弁体2の背圧を調整できる。そして、主弁体2の背圧を高くするほど主弁体2の第一弁体部2Aが開き難くなって発生する伸側の減衰力が大きくなる。このため、上記構成によれば、ソレノイドS1へ供給する電流量の変更により発生する伸側の減衰力を大小調節できる。
【0115】
さらに、前述のように、本実施の形態のソレノイドS1を含む電磁弁Vでは、ソレノイドS1へ供給する電流量を大きくするほど電磁弁Vの開弁圧を高くできる。これにより、本実施の形態のソレノイドS1を含む電磁弁Vを備えた緩衝器Dでは、ソレノイドS1へ供給する電流量を大きくするほど主弁体2の背圧を高くでき、発生する伸側の減衰力を大きくできる。
【0116】
つまり、上記緩衝器Dでは、ソレノイドS1へ供給する電流量が小さい場合に発生する伸側の減衰力を小さくできるので、上記緩衝器Dを車両のサスペンションに利用した場合には、通常走行時の消費電力を少なくできる。また、これによりソレノイドS1の発熱を抑制して緩衝器Dの温度変化を小さくできるので、液温変化に起因する減衰力特性(ピストン速度に対する減衰力の特性)の変化を小さくできる。
【0117】
加えて、前述のように、本実施の形態のソレノイドS1を含む電磁弁Vでは、非通電時の開弁圧をばね9の仕様に応じて決められる。このため、本実施の形態のソレノイドS1を含む電磁弁Vを備えた緩衝器Dでは、ソレノイドS1の非通電時においても主弁体2の背圧を高められる。これにより、上記緩衝器Dでは、ソレノイドS1への通電を断つフェール時であっても、伸側の減衰力が不足するのを防止できる。さらに、上記緩衝器Dでは、背圧室L4に接続されて主弁体2の背圧を設定する通路として圧力制御通路p2を設ければよく、ソレノイドS1の通電時と非通電時とで背圧室L4に接続される通路を切換える必要がないので、緩衝器Dの構造が複雑になるのを抑制し、コストを低減できる。
【0118】
なお、本実施の形態では、緩衝器Dの伸長時にのみ電磁弁Vで主弁体2の背圧を制御して、収縮時には電磁弁VにおけるソレノイドS1の推力を主弁体2に直接的に閉じ方向へ作用させている。しかし、緩衝器Dの収縮時に電磁弁Vで主弁体の背圧を制御してもよいのは勿論である。
【0119】
また、シリンダ1に出入りするロッドは、必ずしもピストンが取り付けられたピストンロッドでなくてもよく、電磁弁Vで背圧を制御される主弁体の位置はピストン部に限らない。例えば、前述のように緩衝器がリザーバを備える場合には、伸側室又は圧側室とリザーバとを接続する通路を主通路として主弁体を設け、その主弁体の背圧を電磁弁Vで制御してもよい。また、緩衝器がユニフロー型となっていて、その伸縮時に液体が伸側室、リザーバ、圧側室の順に一方向で循環する場合には、その循環通路を主通路として主弁体を設け、その主弁体の背圧を電磁弁Vで制御してもよい。
【0120】
<第二の実施の形態>
つづいて、
図7に示す本発明の第二の実施の形態に係るソレノイドS2について説明する。本実施の形態に係るソレノイドS2は、第一の実施の形態のソレノイドS1と同様に、電磁弁に利用されており、
図2に示す第一の実施の形態のソレノイドS1を、そのまま本実施の形態のソレノイドS2に置き換えることができる。また、本実施の形態に係るソレノイドS2の基本的な構造は、第一の実施の形態に係るソレノイドS1と同様であり、共通の構成については同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0121】
本実施の形態のソレノイドS2と、第一の実施の形態に係るソレノイドS1の大きな違いは、第一可動鉄心と第二可動鉄心の配置を内外逆にしたことにある。より具体的には、本実施の形態では、第一可動鉄心7Aは、内外二重に配置される内筒部7f及び外筒部7gと、これらの軸方向の一端をつなぐ連結部7hと、内筒部7fの他端に位置する内側底部7iとを有し、内側底部7iを下方(第二固定鉄心6側)へ向けて外筒部7gをフィラーリング41の内周に摺接させている。その一方、第二可動鉄心8Aは、有底筒状で、外側底部8dと、その外側底部8dの外周縁に起立する中間筒部8eとを有し、外側底部8dを下方(第二固定鉄心6側)へ向けて中間筒部8eを第一可動鉄心7Aの外筒部7gの内周に摺接させている。
【0122】
第一可動鉄心7Aの内側底部7iには、その肉厚を貫通する連通孔7jが形成されており、液体がその連通孔7jを比較的抵抗なく移動できる。これにより、第一可動鉄心7Aの上側(第一固定鉄心5側)に液体が閉じ込められることがなく、第一可動鉄心7Aの円滑な上下動が保障されている。その第一可動鉄心7Aの内筒部7fの内側に、ばね9が挿入されている。本実施の形態においても、そのばね9はコイルばねであり、ばね9の一端が内側底部7iに突き当たる。その一方、ばね9の他端は第一固定鉄心5で支えられていて、ばね9が第一可動鉄心7Aを下向きに付勢する。
【0123】
また、第二可動鉄心8Aの外側底部8dにも、その肉厚を貫通する連通孔8fが形成されており、液体がその連通孔8fを比較的抵抗なく移動できる。また、第二可動鉄心8Aにおける中間筒部8eの内径は、第一可動鉄心7Aにおける内筒部7fの外径よりも大きく、中間筒部8eと内筒部7fとの間に環状の隙間ができる。このため、中間筒部8eの先端上側(第一固定鉄心5側)にできる空間L8と、外側底部8dと内側底部7aとの間にできる空間L9が一続きになる。そして、その一続きの空間に連通孔8fが通じているので、その空間に液体が閉じ込められて、第二可動鉄心8Aの移動を妨げる減衰力が発生するのを抑制できる。
【0124】
さらに、本実施の形態では、第一可動鉄心7Aがその外筒部7gをフィラーリング41で支えられつつ上下(軸方向)に移動するので、その移動時にフィラーリング41に対して偏心しない。そのフィラーリング41は、第一固定鉄心5と第二固定鉄心6とで挟持され、これらに対して固定的に設けられているので、フィラーリング41によって第一可動鉄心7Aがコイルの中心線に直交する方向(径方向)へずれるのが防止される。
【0125】
また、第二可動鉄心8Aは、その中間筒部8eを第一可動鉄心7Aの外筒部7gで支えられつつ上下(軸方向)に移動する。このように、本実施の形態のソレノイドS2では、第二可動鉄心8Aが、フィラーリング41内に挿入される第一可動鉄心7Aのさらに内側に挿入されている。これにより、第一可動鉄心7Aが第一固定鉄心5に吸着される際に径方向へずれるのも、径方向へずれた第一可動鉄心7Aとフィラーリング41との間に第二可動鉄心8Aが挟み込まれるのも防止でき、径方向へずれた第一可動鉄心7Aとフィラーリング41との間に第二可動鉄心8Aが挟み込まれてその移動時の摺動抵抗が大きくなる心配がない。
【0126】
加えて、本実施の形態では、
図7(b)に示すように、第一可動鉄心7Aの外筒部7gの先端部内周には、その中心側へ向けて突出する突部7kが設けられ、この突部7kによって外筒部7gの内周にフッ素樹脂製のシート70が保持されている。これにより、第二可動鉄心8Aの中間筒部8eと第一可動鉄心7Aの外筒部7gの摺動性が良好になる。なお、シート70の素材は、良好な摺動性をもつ素材であれば、フッ素樹脂に限らず適宜変更できる。さらには、シート70を省略して中間筒部8eを外筒部7gの内周に直接摺接させてもよい。
【0127】
つづいて、本実施の形態においても、第二可動鉄心8Aの外側底部8dの上下に、規制部として機能する板ばね90,91が配置されている。より詳しくは、第一の規制部である上側の板ばね90は、第二可動鉄心8Aの外側底部8dと、これと上下に向かい合う第一可動鉄心7Aの内側底部7iとの間に位置し、第二の規制部である下側の板ばね91は、第二可動鉄心8Aの外側底部8dと、これと上下に向かい合う第二固定鉄心6との間に位置する。
【0128】
そして、第一可動鉄心7Aが第二可動鉄心8Aに対して下方へ移動していくと、第一可動鉄心7Aの内側底部7iが板ばね90に突き当たる。すると、第一可動鉄心7Aの第二可動鉄心8Aに対する下方への移動が規制され、以降は、第一可動鉄心7Aが第二可動鉄心8Aと一体となって下方へ進むようになる。また、第二可動鉄心8Aが下方へ移動していくと、第二可動鉄心8Aの外側底部8dが板ばね91に突き当たってこれを圧縮し、それ以上は下方へ移動しなくなる。
【0129】
さらに、第二固定鉄心6の中心部には貫通孔が形成されており、その貫通孔にスプール3の軸部3aが移動自在に挿通されている。そして、その軸部3aの先端が第二可動鉄心8Aの外側底部8dに突き当たる。これにより、コイルへの通電を断った状態では、第一可動鉄心7Aがばね9の付勢力を受けて下向きに進み、板ばね90を介して第二可動鉄心8Aに突き当たるので、スプール3がばね9の付勢力による下向きの力を受ける。これに対して、コイルへ通電して第一可動鉄心7Aを第一固定鉄心5へ吸引し、第二可動鉄心8Aを第二固定鉄心6へ吸引すると、ばね9が第一可動鉄心7Aで圧縮されてその付勢力がスプール3へと伝わらなくなるが、スプール3は第二可動鉄心8Aを吸引する力による下向きの力を受ける。
【0130】
また、第一の規制部である板ばね90は、第一可動鉄心7Aの内側底部7iと、これと上下(軸方向)に向かい合う第二可動鉄心8Aの外側底部8dとの接近を規制して、コイルへの通電時に第一可動鉄心7Aと第二可動鉄心8Aとが吸着するのを防止する。同様に、第二の規制部である板ばね91は、第二可動鉄心8Aの外側底部8dと、これと上下(軸方向)に向かい合う第二固定鉄心6との接近を規制して、コイルへの通電時に第二可動鉄心8Aが第二固定鉄心6に吸着するのを防止する。なお、第一、第二の規制部は、それぞれ板ばね90,91に限られず、第一の実施の形態と同様に変更できる。
【0131】
その一方、第一固定鉄心5と第一可動鉄心7Aとの間には規制部が設けられておらず、コイルへの通電時に第一可動鉄心7Aは第一固定鉄心5に吸着される。このように、コイルへの通電時に第一可動鉄心7Aが第一固定鉄心5に吸着されると、第一可動鉄心7Aでばね9を圧縮し、このばね9の付勢力が第二可動鉄心8A側へ伝わらないようにする第一可動鉄心7Aの姿勢を安定的に維持できる。しかし、必ずしもコイルへの通電時に第一可動鉄心7Aが第一固定鉄心5に吸着されなくてもよい。
【0132】
本実施の形態に係るソレノイドS2へ供給する電流量と、ソレノイドS2がスプール(対象物)3に与える力との関係は、第一の実施の形態のソレノイドS1と同様に、
図4に示すようになる。また、本実施の形態に係るソレノイドS2を含む電磁弁を備えた緩衝器の作動についても、第一の実施の形態のソレノイドS1を含む電磁弁Vを備えた緩衝器Dの作動と同様である。
【0133】
以下、本実施の形態に係るソレノイドS2の作用効果について説明する。なお、第一の実施の形態のソレノイドS1と同様の構成については、同様の作用効果があるのは勿論であり、ここでの詳細な説明を省略する。また、本実施の形態に係るソレノイドS2を備えた電磁弁、及びソレノイドS2を含む電磁弁を備えた緩衝器の作用効果についても、第一の実施の形態のソレノイドS1、ソレノイドS1を備えた電磁弁V、及びソレノイドS1を含む電磁弁Vを備えた緩衝器Dの作用効果と同様であるので、ここでの詳細な説明を省略する。
【0134】
本実施の形態に係るソレノイドS2は、コイルと、このコイルの軸方向の一端側に位置する第一固定鉄心5と、この第一固定鉄心5と間隙をもってコイルの軸方向の他端側に位置する第二固定鉄心6と、第一固定鉄心5と第二固定鉄心6との間に配置されてコイルへの通電により第一固定鉄心5に吸引される第一可動鉄心7Aと、第一固定鉄心5と第二固定鉄心6との間に配置されて、コイルへの通電により第二固定鉄心6に吸引される第二可動鉄心8Aと、第一可動鉄心7Aを第二固定鉄心6側へ付勢するばね9と、第一可動鉄心7Aの第二可動鉄心8Aに対する第二固定鉄心6側への移動を規制する板ばね(規制部)90とを備えている。そして、第一可動鉄心7Aは、第一固定鉄心5及び第二固定鉄心6に対するコイルの軸方向に直交する方向への移動を規制されている。
【0135】
上記構成によれば、ソレノイドS2の非通電時に、第一可動鉄心7Aがばね9の付勢力を受けて第二固定鉄心6側へと進み、板ばね90によって第一可動鉄心7Aの第二可動鉄心8Aに対する第二固定鉄心6側への移動が規制されると、第一可動鉄心7Aと第二可動鉄心8Aが一体となって第二固定鉄心6側へ動くようになる。このため、ソレノイドS2の非通電時には、ばね9の付勢力が第一可動鉄心7Aと板ばね90を介して第二可動鉄心8Aへと伝わる。
【0136】
その一方、ソレノイドS2の通電時に第一可動鉄心7Aが第一固定鉄心5に吸引されてその吸引方向へ動くと、第一可動鉄心7Aによってばね9が圧縮され、そのばね9の付勢力が第二可動鉄心8Aへ伝わらなくなる。また、ソレノイドS2の通電時には、第二可動鉄心8Aが第二固定鉄心6に吸引されるとともに、ソレノイドS2へ供給する電流量を大きくするほど第二可動鉄心8Aを第二固定鉄心6へ吸引する力が大きくなる。
【0137】
このため、ソレノイドS2の通電時に第二可動鉄心8Aを吸引する力を推力としてスプール3等の対象物に付与するようにすると、ソレノイドS2へ供給する電流量を大きくするほど対象物へ付与する推力が大きくなり、ソレノイドS2へ供給する電流量を小さくするほど対象物へ付与する推力を小さくできる。さらに、非通電時には、ばね9の付勢力が第一可動鉄心7A、板ばね(規制部)90、及び第二可動鉄心8Aを介して対象物に作用する。ばね9の付勢力の方向は、ソレノイドS2の通電時に第二可動鉄心8Aを吸引する力の方向と同じであるので、上記構成によれば、ソレノイドS2の非通電時にも、通電時と同方向へ対象物を付勢できる。
【0138】
また、上記構成によれば、前述のように、ソレノイドS2の通電時にばね9の付勢力に抗して第一可動鉄心7Aが第一固定鉄心5側へ動くと、ばね9の付勢力が第二可動鉄心8Aに伝わらなくなり、これによりスプール(対象物)3にも伝わらなくなる。このため、通電時におけるソレノイドS2の推力と、非通電時にばね9によって対象物に与えられる付勢力とを個別に自由に設定できる。なお、本実施の形態では、ばね9は、コイルばねであるが、皿ばね等のコイルばね以外のばねでもよい。
【0139】
また、本実施の形態のソレノイドS2の第一可動鉄心7Aは、第一固定鉄心5及び第二固定鉄心6に対するコイルの軸方向(コイルの中心線Xに沿う方向)に直交する方向への移動を規制されている。換言すると、第一可動鉄心7Aは、第一固定鉄心5及び第二固定鉄心6に対し、コイルの径方向へは動かない。これにより、径方向へずれた第一可動鉄心7Aによって第二可動鉄心8Aの移動が妨げられることがなく、第二可動鉄心8Aの円滑な上下動を保障できる。その結果、前述のように、第二可動鉄心8Aを吸引する力を推力として対象物へ付与する場合に、ソレノイドS2へ供給する電流量に対する推力の特性にヒステリシスが生じるのを抑制し、推力の制御を容易にできる。
【0140】
また、本実施の形態に係るソレノイドS2は、第一固定鉄心5と第二固定鉄心6との間に介装される環状のフィラーリング41を備えている。そして、第一可動鉄心7Aは、内外二重に配置される内筒部7f及び外筒部7gと、内筒部7fと外筒部7gの軸方向の一端をつなぐ連結部7hと、内筒部7fの他端に位置する内側底部7iとを有し、内側底部7iを第二固定鉄心6側へ向けてフィラーリング41の内側に摺動可能に挿入されている。その一方、第二可動鉄心8Aは、有底筒状で、外側底部8dと、この外側底部8dの外周縁に起立して内径が第一可動鉄心7Aの内筒部7fの外径より大きい中間筒部8eとを有し、外側底部8dを第二固定鉄心6側へ向けて中間筒部8eを第一可動鉄心7Aの外筒部7gの内側に摺動可能に挿入している。さらに、ばね9は、一端側を第一可動鉄心7Aの内筒部7fの内側に挿入されて、内側底部7iと第一固定鉄心5との間に介装されている。
【0141】
上記構成によれば、コイルが励磁されたとき、磁路が第一固定鉄心5、第一可動鉄心7A、第二可動鉄心8A、及び第二固定鉄心6を通過するようにして、第一可動鉄心7Aを第一固定鉄心5へ吸引させるとともに、第二可動鉄心8Aを第二固定鉄心6へ吸引させられる。さらに、第一可動鉄心7Aの内側にばね9の収容スペースを確保できる。
【0142】
また、上記構成によれば、第一可動鉄心7Aが第二固定鉄心6側へ移動すると、第一可動鉄心7Aの内側底部7iが第二可動鉄心8Aの外側底部8dに接近するので、これらの接近方向の移動を規制できるように板ばね(規制部)90を配置すれば、第一可動鉄心7Aの第二可動鉄心8Aに対する第二固定鉄心6側への移動を規制できる。そして、そのように板ばね90を配置するには、例えば、本実施の形態のように板ばね90を第一可動鉄心7Aの内側底部7iと第二可動鉄心8Aの外側底部8dとの間に配置すればよく、このようにするのは容易である。つまり、上記構成によれば、板ばね(規制部)90を容易に配置できる。
【0143】
さらに、上記ソレノイドS2では、フィラーリング41内に摺動可能に挿入される第一可動鉄心7Aの外筒部7gの内側に、第二可動鉄心8Aの中間筒部8eが摺動可能に挿入されている。このように、第二可動鉄心8Aは、フィラーリング41内に挿入される第一可動鉄心7Aのさらに内側に挿入されるので、第一可動鉄心7Aが第一固定鉄心5に吸着される際に径方向へずれることも、径方向へずれた第一可動鉄心7Aとフィラーリング41との間に第二可動鉄心8Aが挟み込まれることもない。このため、上記構成によれば、径方向へずれた第一可動鉄心7Aとフィラーリング41の間に第二可動鉄心8Aが挟み込まれて、その移動時の摺動抵抗が大きくなり、これにより第二可動鉄心8Aの円滑な上下動が妨げられるのを防止できる。
【0144】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0145】
D・・・緩衝器、M・・・主通路、O・・・絞り、p1・・・圧力導入通路、p2・・・圧力制御通路、S1,S2・・・ソレノイド、V・・・電磁弁、1・・・シリンダ、2・・・主弁体、3・・・スプール(弁体)、4・・・コイル、5・・・第一固定鉄心、5a・・・凹部、6・・・第二固定鉄心、7,7A・・・第一可動鉄心、7a,7i・・・内側底部、7b,7f・・・内筒部、7c,7e・・・ガイド部、7g・・・外筒部、7h・・・連結部、8,8A・・・第二可動鉄心、8a,8d・・・外側底部、8b・・・外筒部、8e・・・中間筒部、9・・・ばね、11・・・ピストンロッド(ロッド)、41・・・フィラーリング、50・・・パイプ、90・・・板ばね(規制部)