(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-31
(45)【発行日】2023-11-09
(54)【発明の名称】ポリオレフィン系樹脂発泡体シート、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 9/06 20060101AFI20231101BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20231101BHJP
B29C 48/76 20190101ALI20231101BHJP
C08J 9/12 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
C08J9/06 CES
B29C44/00 E
B29C48/76
C08J9/12
(21)【出願番号】P 2019177237
(22)【出願日】2019-09-27
【審査請求日】2022-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】濱田 哲史
(72)【発明者】
【氏名】杉江 幸弘
(72)【発明者】
【氏名】三上 洋輝
【審査官】芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-037766(JP,A)
【文献】特開2000-007810(JP,A)
【文献】特開2019-059932(JP,A)
【文献】特開2019-137795(JP,A)
【文献】特開平07-145259(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00-9/42
B29C 44/00-44/60
B29C 48/00-48/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
見掛け密度が0.02~0.2g/cm
3であり、かつMDにおける平均気泡径(μm)とTDにおける平均気泡径(μm)の平均値に前記見掛け密度(g/cm
3)を乗じた値が25~60であ
り、
MDにおける気泡径の標準偏差が150μm以上であり、かつTDにおける気泡径の標準偏差が70μm以上である、ポリオレフィン系樹脂発泡体シート。
【請求項2】
前記平均値が350~900μmである請求項1に記載のポリオレフィン系樹脂発泡体シート。
【請求項3】
MDにおける気泡径の標準偏差が
220μm以上であり、かつTDにおける気泡径の標準偏差が
85μm以上である請求項1又は2に記載のポリオレフィン系樹脂発泡体シート。
【請求項4】
MD、TDそれぞれにおける気泡径に関して、全気泡数に対する、6つの気泡径範囲:0~199μm(範囲1)、200~399μm(範囲2)、400~599μm(範囲3)、600~799μm(範囲4)、800~999μm(範囲5)、1000~1199μm(範囲6)それぞれに属する気泡の数の割合を気泡径含有率として求め、
MDにおける気泡径含有率が、前記6つの範囲のうち、範囲3~5のうちのいずれかの範囲が最大値となり、
TDにおける気泡径含有率が、前記6つの範囲のうち、範囲2~4のうちのいずれかの範囲が最大値となる請求項1~3のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂発泡体シート。
【請求項5】
MD、TDそれぞれにおける気泡径に関して、全気泡数に対する、6つの気泡径範囲:0~199μm(範囲1)、200~399μm(範囲2)、400~599μm(範囲3)、600~799μm(範囲4)、800~999μm(範囲5)、1000~1199μm(範囲6)それぞれに属する気泡の数の割合を気泡径含有率として求め、
前記MDにおける気泡径に関しては、前記6つの気泡径範囲のうち、少なくとも4つの範囲において連続して、気泡径含有率が5%以上であり、
前記TDにおける気泡径に関しては、前記6つの気泡径範囲のうち、少なくとも3つの範囲において連続して、気泡径含有率が5%以上である請求項1~4のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂発泡体シート。
【請求項6】
ポリオレフィン系樹脂発泡体シートが架橋体であり、かつゲル分率が20~60%である請求項1~5のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂発泡体シート。
【請求項7】
ポリオレフィン系樹脂発泡体シートを構成するポリオレフィン系樹脂が、ポリプロピレン系樹脂を含む請求項1~6のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂発泡体シート。
【請求項8】
前記ポリオレフィン系樹脂がさらにポリエチレン系樹脂を含有する請求項7に記載のポリオレフィン系樹脂発泡体シート。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂発泡体シートの製造方法であって、
ポリオレフィン系樹脂及び熱分解型発泡剤を含み、かつ気体が混入された発泡性組成物を発泡させる、ポリオレフィン系樹脂発泡体シートの製造方法。
【請求項10】
前記発泡性組成物を構成する成分をベント式押出機により混練し、その混練時に、ベントを介して前記ベント式押出機内部に気体を供給し、前記気体を発泡性組成物に混入させる、請求項9に記載のポリオレフィン系樹脂発泡体シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン系樹脂発泡体シート、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン系樹脂発泡体シートは、断熱材、クッション材等として汎用されている。例えば、自動車分野では、天井材、ドア、インスツルメントパネル等の車輌用内装材として使用される。これらの車両用内装材は、通常、ポリオレフィン系発泡体シートを基材として、真空成形や圧縮成形等により二次加工して所定の形状に成形される。そのため、車輌用内装材に使用されるポリオレフィン系樹脂発泡体シートは、二次加工する際の成形性が必要とされる。
【0003】
例えば、特許文献1には、成形性を良好にすることを目的としたポリオレフィン系樹脂発泡体シートが開示される。具体的には、密度0.036g/cc以上0.133g/cc未満の発泡体において、160℃破断点伸び(%)を150%以上とし、かつ破断点伸び(%)に160℃で測定された100%モジュラス(MPa)を乗じた値を7以上とし、かつ架橋度を30~50%とすることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両用内装材に使用される発泡体においては、手触り感を良好にするために、高い柔軟性が求められることがある。柔軟性を高めるためには、見掛け密度を低くすることが一般的である。しかし、ポリオレフィン系樹脂発泡体シートは、見掛け密度を低くすると破断伸度が低くなり、良好な成形性を維持することが難しい。
【0006】
そこで、本発明は、良好な成形性を維持しつつ、発泡体の柔軟性を高めることが可能なポリオレフィン系樹脂発泡体シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討の結果、見掛け密度を所定範囲内に調整しつつ、平均気泡径と密度を乗じた値を所定の範囲内とすることで、上記課題を解決できることを見出し、以下の本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下の(1)~(10)を提供する。
(1)見掛け密度が0.02~0.2g/cm3であり、かつMDにおける平均気泡径(μm)とTDにおける平均気泡径(μm)の平均値に前記見掛け密度(g/cm3)を乗じた値が25~60である、ポリオレフィン系樹脂発泡体シート。
(2)前記平均値が350~900μmである上記(1)に記載のポリオレフィン系樹脂発泡体シート。
(3)MDにおける気泡径の標準偏差が150μm以上であり、かつTDにおける気泡径の標準偏差が70μm以上である上記(1)又は(2)に記載のポリオレフィン系樹脂発泡体シート。
(4)MD、TDそれぞれにおける気泡径に関して、全気泡数に対する、6つの気泡径範囲:0~199μm(範囲1)、200~399μm(範囲2)、400~599μm(範囲3)、600~799μm(範囲4)、800~999μm(範囲5)、1000~1199μm(範囲6)それぞれに属する気泡の数の割合を気泡径含有率として求め、
MDにおける気泡径含有率が、前記6つの範囲のうち、範囲3~5のうちのいずれかの範囲が最大値となり、
TDにおける気泡径含有率が、前記6つの範囲のうち、範囲2~4のうちのいずれかの範囲が最大値となる上記(1)~(3)のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂発泡体シート。
(5)MD、TDそれぞれにおける気泡径に関して、全気泡数に対する、6つの気泡径範囲:0~199μm(範囲1)、200~399μm(範囲2)、400~599μm(範囲3)、600~799μm(範囲4)、800~999μm(範囲5)、1000~1199μm(範囲6)それぞれに属する気泡の数の割合を気泡径含有率として求め、
前記MDにおける気泡径に関しては、前記6つの気泡径範囲のうち、少なくとも4つの範囲において連続して、気泡径含有率が5%以上であり、
前記TDにおける気泡径に関しては、前記6つの気泡径範囲のうち、少なくとも3つの範囲において連続して、気泡径含有率が5%以上である上記(1)~(4)のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂発泡体シート。
(6)ポリオレフィン系樹脂発泡体シートが架橋体であり、かつゲル分率が20~60%である上記(1)~(5)のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂発泡体シート。
(7)ポリオレフィン系樹脂発泡体シートを構成するポリオレフィン系樹脂が、ポリプロピレン系樹脂を含む上記(1)~(6)のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂発泡体シート。
(8)前記ポリオレフィン系樹脂がさらにポリエチレン系樹脂を含有する上記(7)に記載のポリオレフィン系樹脂発泡体シート。
(9)上記(1)~(8)のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂発泡体シートの製造方法であって、
ポリオレフィン系樹脂及び熱分解型発泡剤を含み、かつ気体が混入された発泡性組成物を発泡させる、ポリオレフィン系樹脂発泡体シートの製造方法。
(10)前記発泡性組成物を構成する成分をベント式押出機により混練し、その混練時に、ベントを介して前記ベント式押出機内部に気体を供給し、前記気体を発泡性組成物に混入させる、上記(9)に記載のポリオレフィン系樹脂発泡体シートの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、良好な成形性を維持しつつ、発泡体の柔軟性を高めることが可能なポリオレフィン系樹脂発泡体シートを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について実施形態を用いてより詳細に説明する。
<発泡体シート>
本発明のポリオレフィン系樹脂発泡体シート(以下、単に「発泡体シート」ともいう)は、見掛け密度が0.02~0.2g/cm3である。本発明では、上記見掛け密度を有する発泡体シートにおいて、MDにおける平均気泡径(μm)とTDにおける平均気泡径(μm)の平均値(以下、「気泡径平均値」ともいう。単位:μm)に見掛け密度(g/cm3)を乗じた値(以下、「X値」ともいう)が25~60となるものである。
発泡体シートにおいて、X値が25以上であることは、同程度の見掛け密度を有する従来の発泡体シートに比べて、気泡径平均値が大きいことを意味する。同程度の見掛け密度でありながら、気泡径平均値が大きいと、同程度の見掛け密度を有する従来の発泡体シートに比べて柔軟性が高くなる。また、本発明では、発泡体シートの伸度に関しては、同程度の見掛け密度を有する従来の発泡体シートと同程度になる。したがって、本発明の発泡体シートは、良好な成形性を維持しつつ、柔軟性を高めることが可能になる。
【0010】
一方で、X値が25未満となると、同程度の見掛け密度を有する従来の発泡体シートと、気泡径平均値が同程度となる。したがって、良好な成形性を維持しつつ発泡体の柔軟性を高めることが難しくなる。また、X値が60より大きくなると発泡体シートを製造することが難しくなり、また、気泡径平均値が必要以上に大きくなることで機械強度が低くなったり成形性が低くなったりする。
成形性、柔軟性を良好にする観点、さらには製造容易性の観点から、X値は、27.5以上が好ましく、30以上がより好ましく、32.5以上がさらに好ましく、また、55以下が好ましく、50以下がより好ましく、47.5以下がさらに好ましい。
【0011】
(見掛け密度)
本発明の発泡体シートは、見掛け密度が0.02~0.2g/cm3である。見掛け密度が0.02g/cm3未満となると、発泡体シートの伸度を高くすることが難しく、成形性を良好に維持できない。一方で、見掛け密度が0.2g/cm3より高くなると、柔軟性を良好に維持することが難しい。発泡体シートの伸度を高くして成形性を良好にする観点から、見掛け密度は、0.03g/cm3以上が好ましく、0.04g/cm3以上がより好ましく、0.045g/cm3以上がさらに好ましい。また、柔軟性を優れたものとする観点から、見掛け密度は、0.15g/cm3以下が好ましく、0.11g/cm3以下がより好ましく、0.08g/cm3以下がさらに好ましい。
【0012】
(気泡径)
本発明の発泡体シートの気泡平均値は、好ましくは350~900μmである。発泡体シートは、気泡平均値を350μm以上とすることで、発泡体シートの柔軟性を高めやすくなる。また、900μm以下とすることで、機械強度が良好となり、成形性も良好に維持しやすい。柔軟性を高める観点から、気泡平均値は、より好ましくは450μm以上、さらに好ましくは500μm以上である。また、機械強度を高めて、成形性も良好にする観点から、発泡体シートの気泡平均値は、より好ましくは800μm以下、さらに好ましくは700μm以下である。
【0013】
本発明の発泡体シートのMDにおける平均気泡径は、好ましくは500~1000μmである。MDにおける平均気泡径を500μm以上とすることで、発泡体シートの柔軟性を高めやすくなる。また、1000μm以下とすることで、機械強度が良好となり、成形性も良好に維持しやすい。MDにおける平均気泡径は、より好ましくは600μm以上、さらに好ましくは660μm以上である。MDにおける平均気泡径は、機械強度を高めて、成形性も良好にする観点から、より好ましくは900μm以下、さらに好ましくは860μm以下である。
【0014】
また、発泡体シートのTDにおける平均気泡径は、好ましくは250~600μmである。TDにおける平均気泡径を250μm以上とすることで、発泡体シートの柔軟性を高めやすくなる。また、TDにおける平均気泡径を600μm以下とすることで、機械強度が良好となり、成形性も良好に維持しやすい。TDにおける平均気泡径は、より好ましくは300μm以上、さらに好ましくは320μm以上である。TDにおける平均気泡径は、機械強度を高めて、成形性も良好にする観点から、より好ましくは500μm以下、さらに好ましくは450μm以下である。
なお、本明細書において「MD」は、Machine Directionを意味し、ポリオレフィン系樹脂発泡シートの押出方向等と一致する方向を意味する。また、「TD」は、Transverse Directionを意味し、MDに直交しかつ発泡シートに平行な方向を意味する。更に「ZD」は、Thickness Directionを意味し、MD及びTDのいずれにも垂直な方向である。
【0015】
本発明の発泡体シートの気泡は、その気泡径が広い範囲にわたって分布するように形成されている。気泡径を広い範囲にわたって分布させると、気泡間距離が長い部分が設けられ、それにより、発泡体シートの伸度が低下することを防止でき、成形性を良好に維持できる。また、一定の大きさ以上の気泡も一定数存在することになるので柔軟性も良好になりやすい。
【0016】
気泡径の分布は、例えば標準偏差で表され、従って、本発明では、気泡径の標準偏差が一定値以上となることが好ましい。具体的には、MDにおける気泡径の標準偏差は、150μm以上が好ましく、190μm以上がより好ましく、220μm以上がさらに好ましい。また、TDにおける気泡径の標準偏差は、70μm以上が好ましく、85μm以上がより好ましく、98μm以上がさらに好ましい。
MDにおける気泡径の標準偏差は、300μm以下が好ましく、280μm以下がより好ましく、250μm以下がさらに好ましい。また、TDにおける気泡径の標準偏差は、180μm以下が好ましく、140μm以下がより好ましく、125μm以下がさらに好ましい。
【0017】
また、発泡体シートの気泡径の分布は、全気泡数に対する、以下の6つの気泡径範囲それぞれに属する気泡の数の割合(気泡径含有率)によっても表される。なお、発泡体シートの各気泡の気泡径は、整数値で求めるとよい。
範囲1: 0~199μm 範囲2:200~399μm
範囲3:400~599μm 範囲4:600~799μm
範囲5:800~999μm 範囲6:1000~1199μm
【0018】
本発明では、MDにおける気泡径に関しては、上記した6つの気泡径範囲のうち、少なくとも4つの範囲において連続して、気泡径含有率が5%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましく、15%以上であることがさらに好ましい。このように気泡径含有率が連続して高くなることは、広い気泡径の範囲にわたって気泡が均等に分散していることを意味する。本発明では、広い気泡径の範囲にわたって気泡が均等に分散することで成形性を良好に維持しつつ、柔軟性を高めやすくなる。
【0019】
また、同様の観点から、MDにおける気泡径に関しては、少なくとも5つの範囲において連続して、気泡径含有率が5%以上であることも好ましく、10%以上であることがより好ましい。さらに、MDにおける気泡径に関しては、少なくとも3つの範囲において連続して、気泡径含有率が15%以上であることも好ましく、20%以上であることがより好ましい。
なお、例えば「4つの範囲において連続して、気泡径含有率がX%以上である」とは、範囲2、3、4、5のように、気泡径範囲が連続する4つの範囲のいずれもが気泡径含有率がX%以上となることを意味する。したがって、後述する実施例1~3は、いずれも6つの範囲において連続して気泡径含有率が5%以上となる。また、実施例1、2、4は、いずれも5つの範囲において連続して気泡径含有率が10%以上となる。
【0020】
一方で、TDにおける気泡径に関しては、上記した6つの範囲のうち、少なくとも3つの範囲において連続して、気泡径含有率が5%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましく、また、少なくとも4つの範囲において連続して、気泡径含有率が5%以上であることも好ましい。本発明では、TDにおける気泡径も均等に分散することで成形性及び柔軟性がより一層向上する。
【0021】
また、MDにおける気泡径含有率は、上記した6つの範囲のうち、範囲3~5のうちのいずれかの範囲が最大値となることが好ましく、また、その最大値は18~40%であることが好ましい。すなわち、MDにおける気泡径400~999μmの範囲内の気泡が多く含有されることが好ましく、それにより、成形性と柔軟性をバランスよく高めやすくなる。
また、TDにおける気泡径含有率は、上記した6つの範囲のうち、範囲2~4のうちのいずれかの範囲が最大値となることが好ましく、範囲2、3のうちのいずれかの範囲が最大値となることがより好ましい。また、その最大値は20~50%であることが好ましく、30~48%であることがさらに好ましい。すなわち、TDにおける気泡径200~799μmの範囲内の気泡が多く含有されることが好ましく、それにより、成形性と柔軟性をバランスよく高めやすくなる。
なお、本明細書において、気泡径含有率が最大値となる範囲が、2つ以上ある場合には、その2つ以上のうちいずれか1つが上記した特定の範囲(例えばMDでは、範囲3~5)であればよいが、いずれもが上記した特定の範囲であることが好ましい。
【0022】
(架橋度)
本発明の発泡体シートは、架橋体であることが好ましい。架橋体である場合、発泡体シートの架橋度を表すゲル分率(%)は、20~60%であることが好ましい。ゲル分率(%)を上記範囲内にすると、発泡体シートの機械強度及び伸度を良好に維持しつつ、柔軟性が優れたものとなる。これら観点から、発泡体シートのゲル分率(%)は、25~55%がより好ましく、30~50%がさらに好ましい。
なお、架橋度は、実施例に記載の方法で、溶媒不溶解分を採取し、試験片の重量Aと不溶解分の重量Bを求め、下記式により算出される。
架橋度(重量%)=(B/A)×100
【0023】
(シートの厚み)
発泡体シートの厚みは、0.5~5.0mmであることが好ましく、1~4mmであることがより好ましい。厚みがこれら範囲であると、発泡体シートから成形される成形体を車輌用内装材に好適に使用できる。
【0024】
(独立気泡率)
本発明の発泡体シートは、独立気泡を有するものであることが好ましい。独立気泡を有するとは、全気泡に対する独立気泡の割合(「独立気泡率」という)が70%以上となることを意味する。独立気泡率は、好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは85%以上、より更に好ましくは90%以上である。
独立気泡率は、ASTM D2856(1998)に準拠して求めることができる。市販の測定器では、乾式自動密度計アキュピック1330等が挙げられる。
【0025】
(伸度)
本発明の発泡体シートは、160℃におけるMD伸度(%)が150%以上であることが好ましく、また160℃におけるTD伸度(%)が130%以上であることが好ましい。160℃における伸度(%)を上記下限値以上とすることで、発泡体シートを成形体に成形する二次成形時に発泡体シートが十分に伸張して、成形性が良好となる。
成形性を良好にする観点から、160℃におけるMD伸度(%)は180%以上であることがより好ましく、200%以上であることがさらに好ましい。160℃におけるTD伸度(%)は150%以上であることがより好ましく、180%以上であることがさらに好ましい。
160℃におけるMD伸度(%)及びTD伸度(%)は、成形性の観点から高ければ高いほどよいが、160℃におけるMD伸度(%)は、一定の機械強度などを確保する観点から、500%以下が好ましく、450%以下がより好ましい。また、160℃におけるTD伸度(%)は、一定の機械強度などを確保する観点から、450%以下が好ましく、400%以下がより好ましい。
なお、160℃におけるMD伸度(%)とは、測定温度160℃でJIS K6251に準じて測定した、MDにおける破断時の伸びである。160℃におけるTD伸度(%)とは、測定温度160℃でJIS K6251に準じて測定した、TDにおける破断時の伸びである。
【0026】
(25%圧縮硬さ)
本発明の発泡体シートは、25%圧縮硬さが180kPa以下であることが好ましく、150kPa以下であることがより好ましく、120kPa以下であることがさらに好ましく、100kPa以下であることが特に好ましい。発泡体シートは、上記のとおり、25%圧縮硬さを低くすることで、柔軟性が優れたものとなり、成形品の手触り感が良好となる。25%圧縮硬さは、柔軟性の観点から低ければ低い方がよいが、一定の伸度及び機械強度を確保する観点からは、15kPa以上であることが好ましく、30kPa以上であることがより好ましく、40kPa以上であることがさらに好ましい。
【0027】
(ポリオレフィン系樹脂)
本発明の発泡体シートは、ポリオレフィン系樹脂を含有する。ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、オレフィン系ゴムなどが挙げられる。これらポリオレフィン系樹脂のうち、発泡体シートの一定の機械強度を確保して、高温下でも良好な成形性を確保する観点から、少なくともポリプロピレン系樹脂を含有することが好ましい。ポリオレフィン系樹脂は、柔軟性を確保する観点から、ポリプロピレン系樹脂に加え、ポリエチレン系樹脂を含有することがより好ましい。
【0028】
<ポリプロピレン系樹脂>
ポリプロピレン系樹脂としては、特に限定されず、例えば、プロピレン単独重合体(ホモポリプロピレン)、プロピレンと他のオレフィンとの共重合体が挙げられる。プロピレンと他のオレフィンとの共重合体は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、ランダムブロック共重合体の何れであってもよいが、ランダム共重合体(ランダムポリプロピレン)が好ましい。
プロピレンと共重合される他のオレフィンとしては、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン等のα-オレフィンが挙げられ、これらの中ではエチレンが好ましい。したがって、エチレン-プロピレンランダム共重合体がより好ましい。
【0029】
ポリプロピレン系樹脂の含有量は、発泡体シートを構成する樹脂全量に対して、好ましくは40~90質量%である。ポリプロピレン系樹脂の含有量を40質量%以上とすることで、機械強度、及び高温下における成形性などを確保しやすくなる。また、90質量%以下とすることでポリエチレン系樹脂などの他の樹脂を一定量配合でき、柔軟性などを確保しやすくなる。ポリプロピレン系樹脂の含有量は、上記観点から、より好ましくは50~75質量%である。
【0030】
ポリプロピレン系樹脂の中でも、成形性などの観点からプロピレン単独重合体(ホモポリプロピレン)、又はランダムポリプロピレンが好ましい。ポリプロピレン系樹脂は、1種を単独で使用してもよいし2種以上を併用してもよいが、2種以上併用することが好ましく、成形性、機械強度、及び柔軟性などの観点から、ホモポリプロピレンとランダムポリプロピレンを併用することが好ましい。
ホモポリプロピレンとランダムポリプロピレンを併用する場合、成形性、機械強度、柔軟性などをバランスよく良好にできる観点から、ホモポリプロピレンに対するランダムポリプロピレンの質量比(ランダム/ホモ)は、0.5~5であることが好ましく、1~4であることが好ましく、1.4~3であることがさらに好ましい。
【0031】
ポリプロピレン系樹脂は、その230℃におけるメルトフローレート(以下、「MFR」ともいう)が0.1~20g/10分であることが好ましい。ポリプロピレン系樹脂のMFRを上記範囲内とすると、樹脂の流れ性が良好になる一方で、樹脂の流動性が高くなりすぎるのを防止し、後述する発泡性組成物を発泡体シートに加工する際の加工性が良好になる。これら観点から、ポリプロピレン系樹脂の上記MFRは、0.3~15g/10分であることより好ましく、0.4~12g/10分であることさらに好ましい。
【0032】
ポリプロピレン系樹脂は、MFRが異なる少なくとも2種のポリプロピレン系樹脂(第1及び第2のポリプロピレン系樹脂)を併用することも好ましい。MFRが互いに異なる複数種のポリプロピレン系樹脂を使用することで、柔軟性、機械強度を確保しつつ、加工性も良好になりやすい。
具体的な第1のポリプロピレン系樹脂のMFRは、0.1~5.0g/10分であることが好ましく、0.3~3.0g/10分であることがより好ましく、0.4~2.0g/10分であることがさらに好ましい。
また、第2のポリプロピレン系樹脂のMFRは、第1のポリプロピレン系樹脂のMFRより高く、具体的には4~20g/10分であることが好ましく、5~15g/10分であることがより好ましく、6~12g/10分であることがさらに好ましい。
なお、第1のポリプロピレン系樹脂がランダムポリプロピレン、第2のポリプロピレン系樹脂がホモポリプロピレンであることが好ましい。
【0033】
<ポリエチレン系樹脂>
ポリエチレン系樹脂としては、特に限定されず、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンなどが挙げられ、中でも直鎖状低密度ポリエチレンが好ましい。直鎖状低密度ポリエチレンとしては、エチレン/1-ブテン共重合体、エチレン/1-ヘキセン共重合体、エチレン/4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン/1-オクテン共重合体などが挙げられるが、中でもエチレン/1-ヘキセン共重合体が好ましい。
直鎖状低密度ポリエチレンは、密度が0.880~0.940g/cm3のポリエチレンであり、好ましくは密度が0.900~0.930g/cm3のものである。なお、密度とは、JIS K 7112に準拠して測定したものである。
また、加工性及び柔軟性などの観点から、ポリエチレン系樹脂の190℃におけるメルトフローレート(MFR)は、0.5~20g/10分が好ましく、3~15g/10分がより好ましく、5~12g/10分がさらに好ましい。
【0034】
ポリエチレン系樹脂の含有量は、発泡体シートを構成する樹脂成分全量に対して、好ましくは10~60質量%である。ポリエチレン系樹脂の含有量を10質量%以上とすることで柔軟性を確保しやすくなる。また、60質量%以下とすることでポリプロピレン系樹脂などの他の樹脂を相当量配合でき、発泡体シートの機械強度などを確保しやすくなる。これら観点からポリエチレン系樹脂の含有量は、より好ましくは25~50質量%である。
【0035】
<オレフィン系ゴム>
オレフィン系ゴムとしては、2種以上のオレフィン系モノマーが実質的にランダムに共重合した非晶性又は低結晶性のゴム状物質が好ましく、成形性及び柔軟性をバランスよく向上させる観点から、エチレン-α-オレフィン系共重合ゴムがより好ましい。
エチレン-α-オレフィン系共重合ゴムに使用されるα-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、2-メチルプロピレン、3-メチル-1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン等の炭素数3~15、好ましくは炭素数3~10のα-オレフィンの1種又は2種以上が挙げられる。
【0036】
エチレン-α-オレフィン系共重合ゴムは、エチレン単位及びα-オレフィン単位に加え、他のモノマー単位を有していてもよい。
前記他のモノマー単位を形成するモノマーとしては、炭素数4~8の共役ジエン、炭素数5~15の非共役ジエン、ビニルエステル化合物、不飽和カルボン酸エステル、不飽和カルボン酸等が挙げられる。
炭素数4~8の共役ジエンとしては、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン(イソプレン)、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン等が挙げられる。
炭素数5~15の非共役ジエンとしては、ジシクロペンタジエン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、1,4-ヘキサジエン、1,5-ジシクロオクタジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、5-ビニル-2-ノルボルネン等が挙げられる。
ビニルエステル化合物としては、酢酸ビニル等が挙げられる。
不飽和カルボン酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等が挙げられる。
不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。
これらのモノマーは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。上記の中では炭素数5~15の非共役ジエンが好ましく、入手容易性の観点から、5-エチリデン-2-ノルボルネン、1,4-ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン(DCPD)がより好ましい。
エチレン-α-オレフィン系共重合ゴムの中でも、エチレン-プロピレン共重合体(EPR)、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体(EPDM)が好ましく、中でも、EPDMがより好ましい。
【0037】
オレフィン系ゴムとしては、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)も挙げられる。オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、ブレンド型、動的架橋型、重合型のいずれも使用可能である。オレフィン系熱可塑性エラストマーの具体例としては、ハードセグメントとしてポリプロピレンと、ソフトセグメントとしてエチレン、プロピレン及び必要に応じて少量のジエン成分を有する共重合体とを含むものが挙げられる。該共重合体としては、例えば、エチレン-プロピレン共重合体(EPR)、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体(EPDM)などが挙げられる。
【0038】
ポリオレフィン系樹脂としては、上記以外の樹脂成分を使用してもよい。具体的には、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アルキルアクリレ-ト共重合体、又は無水マレイン酸を共重合した変性共重合体等が挙げられる。
また、本発明の効果を阻害しない限り、発泡体シートは、スチレン系熱可塑性エラストマーなどのポリオレフィン系樹脂以外の樹脂を含有してもよい。ポリオレフィン系樹脂以外の樹脂は、樹脂成分全量に対して、例えば25質量%以下含有され、好ましくは10質量%以下含有される。
【0039】
<発泡性組成物>
本発明の発泡体シートは、上記ポリオレフィン系樹脂などの樹脂成分を含有する発泡性組成物を発泡してなるものであり、架橋しかつ発泡してなるものが好ましい。発泡性組成物は、添加剤として発泡剤を通常含有するものであり、また、架橋助剤及び酸化防止剤などを含有することが好ましい。
【0040】
(発泡剤)
発泡剤としては、熱分解型発泡剤が使用され、例えば分解温度が160~270℃程度の有機系又は無機系の化学発泡剤を用いることができる。
有機系発泡剤としては、アゾジカルボンアミド、アゾジカルボン酸金属塩(アゾジカルボン酸バリウム等)、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、N,N'-ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物、ヒドラゾジカルボンアミド、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、トルエンスルホニルヒドラジド等のヒドラジン誘導体、トルエンスルホニルセミカルバジド等のセミカルバジド化合物等が挙げられる。
無機系発泡剤としては、炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、亜硝酸アンモニウム、水素化ホウ素ナトリウム、無水クエン酸モノソーダ等が挙げられる。
これらの中では、微細な気泡を得る観点、及び経済性、安全面の観点から、アゾ化合物、ニトロソ化合物が好ましく、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、N,N'-ジニトロソペンタメチレンテトラミンがより好ましく、アゾジカルボンアミドが特に好ましい。これらの熱分解型発泡剤は、単独で又は2以上を組み合わせて使用することができる。
熱分解型発泡剤の添加量は、発泡体の気泡が破裂せずに適切に発泡ができるように、樹脂成分100質量部に対して1~20質量部が好ましく、2~15質量部がより好ましく、5~10質量部がさらに好ましい。
【0041】
(架橋助剤)
架橋助剤としては、多官能モノマーを使用することができる。例えば、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等の3官能(メタ)アクリレート系化合物、トリメリット酸トリアリルエステル、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸トリアリルエステル、トリアリルイソシアヌレート等の1分子中に3個の官能基を持つ化合物、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9-ノナンジオールジメタクリレート、1,10-デカンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート等の2官能(メタ)アクリレート系化合物、ジビニルベンゼン、フタル酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル等の1分子中に2個の官能基を持つ化合物、エチルビニルベンゼン、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート等が挙げられる。
架橋助剤は、単独で又は2以上を組み合わせて使用することができる。上記した中では、(メタ)アクリレート系化合物が好ましい。
架橋助剤を発泡性組成物に添加することによって、少ない電離性放射線量で発泡性組成物を架橋することが可能になる。そのため、電離性放射線の照射に伴う各樹脂分子の切断、劣化を防止することができる。
架橋助剤の含有量は、樹脂成分100質量部に対して0.2~20質量部が好ましい。この含有量を0.2質量部以上とすると発泡性組成物を発泡する際、所望する架橋度に調整しやすくなる。また、20重量部以下とすると発泡性組成物に付与する架橋度の制御が容易となる。架橋助剤の含有量は、樹脂成分100質量部に対して0.5~10質量部がより好ましく、1~8質量部がさらに好ましい。
【0042】
(酸化防止剤)
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤等が挙げられるが、これらの中では、フェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤が好ましく、フェノール系酸化防止剤とイオウ系酸化防止剤とを組み合わせて使用することがより好ましい。
酸化防止剤の含有量は、樹脂成分100質量部に対して0.1~10質量部が好ましく、0.2~5質量部がより好ましい。
【0043】
また、発泡体組成物は、必要に応じて、酸化亜鉛、ステアリン酸亜鉛、尿素等の分解温度調整剤、トリアゾール系化合物等の発泡助剤、難燃剤、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、充填剤、顔料等の上記以外の添加剤を含有してもよい。
【0044】
<発泡体シートの製造方法>
発泡体シートは、ポリオレフィン系樹脂などの樹脂成分、及び熱分解型発泡剤などの添加剤を含む発泡性組成物を、必要に応じて架橋した後、発泡させることにより製造することができる。また、本発明では、樹脂成分、添加剤などの各成分を混練して発泡性組成物を得る際に、気体を混入させることが好ましい。
発泡性組成物に気体を混入させることで、その混入した気体が熱分解型発泡剤を発泡する際の起点となって、各気泡の気泡径を大きくしやすくなる。そのため、上記したX値を25以上に調整しやすくなる。また、発泡体シートの気泡径を広い範囲にわたって分布させやすくなり、気泡径の標準偏差なども大きくしやすくなる。
【0045】
本発明の発泡体シートは、具体的には、以下の工程(1)~(3)を有する方法により製造することが工業的に有利である。
工程(1):ポリオレフィン系樹脂、及び熱分解型発泡剤を含む発泡性組成物の各成分を混練装置に供給して混練した後、シート状の発泡性組成物を得る工程
工程(2):工程(1)で得た発泡性組成物に電離性放射線を照射して架橋する工程
工程(3):工程(2)で架橋した発泡性組成物を、発泡剤の分解温度以上に加熱して発泡させ、発泡体を得る工程
【0046】
上記工程(1)における混練装置としては、例えば、単軸押出機、二軸押出機等の押出機、バンバリーミキサー、ロール等の汎用混練装置等が挙げられるが、押出機が好ましい。
工程(1)では、上記のとおり、各成分を混練する際に発泡性組成物に気体を混入させる。
例えば、押出機の場合には、内部にスクリューが配置されるシリンダーに、ベントが設けられたベント式押出機を使用するとよい。そして、混練時に、ベントを開放してベントを介して押出機内部に気体を供給し、その供給された気体を発泡性組成物に混入させるとよい。混入される気体は、大気でもよいが、発泡性組成物の劣化を防ぐ観点から、窒素ガスなどの不活性ガスなどでもよい。
また、押出機で混練を行う際の押出機内部の圧力は、大気圧付近であることが好ましく、例えば、絶対圧で500~1000mmHgであることが好ましく、より好ましくは大気圧である。また、気体を混入される時間は、特に限定されないが、例えば20分~3時間、好ましくは40分~2時間である。
【0047】
また、工程(2)において使用される電離性放射線としては、α線、β線、γ線、電子線等を挙げることができるが、電子線が好ましい。電離性放射線の照射量は、所望の架橋度を得ることができればよいが、0.1~10Mradが好ましく、0.2~5Mradがより好ましく、0.5~3Mradが更に好ましい。
工程(3)において、発泡性組成物を加熱発泡させる温度は、発泡剤として使用される熱分解型発泡剤の分解温度によるが、通常140~300℃、好ましくは150~260℃である。
また、工程(3)において、発泡体シートは、発泡後、又は発泡しつつMD又はCDの何れか一方又は双方に延伸することが好ましい。発泡体シートは、延伸することで上記した気泡径を有しやすくなる。
【0048】
[積層体]
本発明の発泡体シートは、単体で使用されてもよいが、少なくとも一方の面に例えばシート状素材などが積層され、積層体として使用されてもよい。積層体において、シート状素材は、通常、発泡体シートに接着される。シート状素材としては、樹脂シート、熱可塑性エラストマーシート、布帛等が挙げられ、積層体が車輌用内装材に使用される場合には、ポリ塩化ビニルシート、ポリ塩化ビニルとABS樹脂との混合樹脂からなる樹脂シート、熱可塑性エラストマーシート、織物、編物、不織布、皮革、人工皮革、合成皮革等の各種の布帛が好ましくは使用される。これらシート状素材は、積層体が成形体に成形された際、成形体において表面に配置されることが好ましい。
また、積層体において上記シート状素材は、発泡体シートの一方の面のみに設けられてもよいし、両面に設けられてもよい。例えば、積層体が車輌用内装材に使用される場合には、発泡体シートの一方の面に上記樹脂シート、熱可塑性エラストマーシート、布帛が積層されるとともに、他方の面にポリエチレン、ポリプロピレン等からなる樹脂シートが配置されてもよい。
【0049】
[成形体]
本発明において、上記発泡体シート又は積層体は、公知の方法で成形されて、成形体となるものである。成形方法としては、真空成形、圧縮成形、スタンピング成形等が挙げられ、特に限定されない。また、成形体がシート状素材を有する積層体を成形したものである場合には、シート状素材の表面に凹凸が付されてもよい。
成形体は、断熱材、クッション材等として使用されるが、好ましくは、自動車分野において、天井材、ドア、インスツルメントパネル等の車輌用内装材として使用される。
【実施例】
【0050】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0051】
各物性の測定方法、及び発泡体の評価方法は以下のとおりである。
(1)見掛け密度
発泡体シートの見掛け密度はJISK 7222に準拠して測定した。
(2)架橋度(ゲル分率)
発泡体シートから約100mgの試験片を採取し、試験片の重量A(mg)を精秤する。次に、この試験片を120℃のキシレン30cm3中に浸漬して24時間放置した後、200メッシュの金網で濾過して金網上の不溶解分を採取、真空乾燥し、不溶解分の重量B(mg)を精秤する。得られた値から、下記式によりゲル分率(重量%)を算出した。
ゲル分率(重量%)=100×(B/A)
【0052】
(3)気泡径、標準偏差、気泡径含有率、及びX値
発泡体シートを50mm四方にカットして液体窒素に1分間浸した後、カミソリ刃でMD及びZDに平行な面に沿って切断した。その後、デジタルマイクロスコープ(株式会社キーエンス社製、製品名VHX-900)を用いて200倍の拡大写真を撮り、MDにおける長さ2mm分の切断面に存在する全ての気泡についてMDの気泡径を測定した。気泡径は整数の値として求めた。その操作を5回繰り返し、全ての気泡の気泡径の平均値を、MDにおける平均気泡径とした。また、全ての気泡の気泡径に基づき標準偏差を求めた。さらに、全ての気泡について、明細書に記載した範囲1~6のいずれに属するかを特定し、各範囲に属する気泡の数より、各範囲の気泡径含有率を算出した。
発泡体サンプルをTD方向及びZD方向に平行な面に沿って切断したこと以外は上記と同様にして、200倍の拡大写真を撮り、TDにおける長さ2mm分の切断面に存在する全ての気泡についてTDの気泡径を測定し、その操作を5回繰り返し、全ての気泡の気泡径の平均値を、TDにおける平均気泡径とした。また、MDと同様に、TDにおける標準偏差、及び範囲1~6の気泡径含有率を算出した。
また、MDにおける平均気泡径を「MD」,TDにおける平均気泡径を「TD」とすると、(MD+TD)/2を気泡平均値とした算出し、その気泡平均値と見掛け密度を乗じることでX値も求めた。
【0053】
(4)MFR
MFRは、JIS K7210に基づき、ポリプロピレンは温度230℃、荷重2.16kgf、ポリエチレンは温度190℃、荷重2.16kgfの条件で測定された値である。
(5)伸度
伸度は、160℃において、JIS K6251に記載の方法に準拠して測定した。
(6)25%圧縮硬さ
25%圧縮硬さは、JIS K6767に準拠して23℃環境下で測定した。
【0054】
実施例、比較例で使用した各成分は以下のとおりである。
(ポリプロピレン系樹脂)
・ランダムPP(プロピレンとエチレンのランダム共重合体)・・・プライムポリマー社製「B221WA」、230℃でのメルトフローレート(MFR)=0.5g/10分
・ホモPP(プロピレン単独重合体)・・・プライムポリマー社製「S135」、230℃でのメルトフローレート(MFR)=9g/10分
(ポリエチレン系樹脂)
・LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン:エチレン-ヘキセン共重合体)・・プライムポリマー社製「ULT-ZEX 20100J」、190℃でのメルトフローレート(MFR)=8.5g/10分、密度=0.915g/cm3
(添加剤)
・架橋助剤
1,9-ノナンジオールジメタクリレート
トリメチロールプロパントリメタクリレート
・酸化防止剤
フェノール系酸化防止剤
イオウ系酸化防止剤
・発泡剤
ADCA(アゾジカルボンアミド)
・発泡助剤
CDA-1・・株式会社ADEKA製「アデカスタブCDA-1」
【0055】
実施例1~4
各実施例において、表1に示す樹脂成分及び添加剤を、表1に示した部数でベント式の単軸押出機に投入して、樹脂温度190℃にて溶融混練して押し出し、シート状の発泡組成物を得た。この際、単軸押出機のベントを解放して内部の圧力760mmHgで1時間以上溶融混練することで、単軸押出機の内部に大気を供給し、発泡組成物に気体を混入させた。
得られたシート状の発泡組成物の両面から加速電圧800kVで電子線を所定の架橋度になるよう、表1の照射量で照射することにより発泡性組成物を架橋した。その後、架橋した発泡性組成物を、MD及びTDに延伸しつつ250℃の気相オーブンで発泡させ、発泡体シートを得たとした。各実施例の発泡体シートの評価結果を表1に示す。
【0056】
比較例1~4
単軸押出機のベントを開放せずに、ベントを真空引きしながら樹脂成分及び添加剤を単軸押出機で混練した以外は実施例1~4と同様に実施した。
【0057】
【0058】
以上の実施例1~4の発泡体シートは、気泡平均値×見掛け密度で算出されるX値が25~60であるため、見掛け密度が同じである比較例1~4それぞれと比較すると、160℃における伸度が同程度でありながらも、25%圧縮硬さが低くなり、柔軟性が向上したことが理解できる。