(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-31
(45)【発行日】2023-11-09
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20231101BHJP
B60W 30/08 20120101ALI20231101BHJP
B60W 40/04 20060101ALI20231101BHJP
B60R 21/0134 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
G08G1/16 C
B60W30/08
B60W40/04
B60R21/0134 311
(21)【出願番号】P 2019187636
(22)【出願日】2019-10-11
【審査請求日】2022-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【氏名又は名称】山田 強
(72)【発明者】
【氏名】小林 敦
(72)【発明者】
【氏名】福万 真澄
(72)【発明者】
【氏名】貴田 明宏
【審査官】宮本 礼子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-068754(JP,A)
【文献】特開2007-210563(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
B60W 10/00 - 10/30
B60W 30/00 - 60/00
B60R 21/0134
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両周辺を撮像する撮像装置(11)と、自車両と物体との衝突を回避又は衝突被害を軽減する安全装置(30)とを備えた車両に適用され、前記撮像装置の撮像画像による自車両周辺の移動物の検知情報に基づいて、前記安全装置を作動させる制御装置(22)であって、
移動物の前記検知情報として、前記撮像装置の撮像画像により算出された移動物の移動進路を取得する進路取得部と、
移動物の前記移動進路と自車両の側面部(MS)とが交差する場合に、前記安全装置を作動させる制御部と、
を備え、
前記制御部は
、
自車両の走行時において、移動物の前記移動進路と自車両の側面部とが交差する場合に、その交点が、自車両の側面部のうち自車両の進行方向後側となる後側領域(MSR)にあれば、前記交点が、自車両の側面部のうち前記後側領域よりも進行方向前側の前側領域(MSF)にあるときよりも、前記安全装置の作動を制限
し、
自車両の側面部のうち自車両の進行方向後側の端部から所定長さ分の領域を前記後側領域としており、
更に、自車両から移動物までの距離、及び移動物の移動速度の少なくともいずれかに基づいて、前記後側領域において自車両の進行方向後側の端部からの領域長さを設定する設定部を備える制御装置。
【請求項2】
自車両周辺を撮像する撮像装置(11)と、自車両と物体との衝突を回避又は衝突被害を軽減する安全装置(30)とを備えた車両に適用され、前記撮像装置の撮像画像による自車両周辺の移動物の検知情報に基づいて、前記安全装置を作動させる制御装置(22)であって、
移動物の前記検知情報として、前記撮像装置の撮像画像により算出された移動物の移動進路を取得する進路取得部と、
移動物の前記移動進路と自車両の側面部(MS)とが交差する場合に、前記安全装置を作動させる制御部と、
を備え、
前記制御部は、
自車両の走行時において、移動物の前記移動進路と自車両の側面部とが交差する場合に、その交点が、自車両の側面部のうち自車両の進行方向後側となる後側領域(MSR)にあれば、前記交点が、自車両の側面部のうち前記後側領域よりも進行方向前側の前側領域(MSF)にあるときよりも、前記安全装置の作動を制限し、
自車両から移動物までの距離が所定値よりも大きいこと、及び移動物の移動速度が所定値よりも大きいことの少なくともいずれかを満たすことを条件に、この移動物の移動進路と自車両の側面部との交点が前記後側領域にある場合に前記安全装置の作動を制限し、いずれも満たさない場合に、前記安全装置の作動を制限しない制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、自車両の側面部のうち自車両の進行方向後側の端部から所定長さ分の領域を前記後側領域とする
請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
自車両が前進走行しているか後退走行しているかを判定する走行判定部を備え、
前記制御部は、自車両が前進走行している場合に、自車両の側面部のうち自車両の後端(PR)から所定長さ分の領域を前記後側領域とし、自車両が後退走行している場合に、自車両の側面部のうち自車両の前端(PF)から所定長さ分の領域を前記後側領域とする
請求項1から3までのいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、自車両の進行方向後側に移動する移動物について、この移動物の移動進路と自車両の側面部との交点が前記後側領域にある場合に前記安全装置の作動を制限する
請求項1から4のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項6】
自車両周辺を撮像する撮像装置(11)と、自車両と物体との衝突を回避又は衝突被害を軽減する安全装置(30)とを備えた車両に適用され、前記撮像装置の撮像画像による自車両周辺の移動物の検知情報に基づいて、前記安全装置を作動させる制御装置(22)であって、
移動物の前記検知情報として、前記撮像装置の撮像画像により算出された移動物の移動進路を取得する進路取得部と、
移動物の前記移動進路と自車両の側面部(MS)とが交差する場合に、前記安全装置を作動させる制御部と、
を備え、
前記制御部は
、
自車両の走行時において、自車両の側面部における自車両の進行方向前側となる前側領域(MSF)と前記前側領域よりも進行方向後側の後側領域(MSR)とのうち前記前側領域のみを使って、移動物の前記移動進路と自車両の側面部とが交差するか否かを判定し、交差すると判定した場合に、前記安全装置の作動を許可
し、
自車両の側面部のうち自車両の進行方向後側の端部から所定長さ分の領域を前記後側領域としており、
更に、自車両から移動物までの距離、及び移動物の移動速度の少なくともいずれかに基づいて、前記後側領域において自車両の進行方向後側の端部からの領域長さを設定する設定部を備える制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自車両周辺の物体を検知し、検知された物体と自車両との衝突を予測する装置が知られている(例えば、特許文献1)。この装置では、自車両の前端部に組み付けられたレーダセンサから送受信される超音波に基づいて、自車両周辺の物体を検知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
レーダセンサに代えて、自車両に搭載された撮像装置により撮像された画像に基づいて、自車両周辺の物体を検知することも可能であり、例えば物体が移動物である場合、移動物の位置座標から移動物の移動進路を算出することが可能である。しかし、撮像装置により撮像された画像に基づいて移動物の移動進路を取得する場合、移動物の位置座標に誤差が生じることがあり、その誤差に起因して、移動物の移動進路に誤差が生じることが考えられる。
【0005】
移動物の移動進路に誤差が生じる場合、安全装置の作動に悪影響が及ぶことが懸念される。つまり、自車両の走行時において移動物が自車両の側面部に向かって移動してくる場合には、移動物の移動進路と自車両の側面部とが交差することに基づいて、自車両の側面部への移動物の衝突を回避すべく安全装置が作動される。しかし、仮に移動物の移動進路が誤って算出されていると、安全装置が不要に作動されることが懸念される。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、移動物の移動進路における誤差に起因する安全装置の不要作動を抑制できる制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する手段は、自車両周辺を撮像する撮像装置と、自車両と物体との衝突を回避又は衝突被害を軽減する安全装置とを備えた車両に適用され、前記撮像装置の撮像画像による自車両周辺の移動物の検知情報に基づいて、前記安全装置を作動させる制御装置であって、移動物の前記検知情報として、前記撮像装置の撮像画像により算出された移動物の移動進路を取得する進路取得部と、移動物の前記移動進路と自車両の側面部とが交差する場合に、前記安全装置を作動させる制御部と、を備え、前記制御部は、自車両の走行時において、移動物の前記移動進路と自車両の側面部とが交差する場合に、その交点が、自車両の側面部のうち自車両の進行方向後側となる後側領域にあれば、前記交点が、自車両の側面部のうち前記後側領域よりも進行方向前側の前側領域にあるときよりも、前記安全装置の作動を制限する。
【0008】
撮像装置の撮像画像に基づいて自車両周囲の移動物が検知される場合には、移動物の位置座標に誤差が生じることがあり、その誤差に起因して、移動物の移動進路に誤差が生じることが考えられる。移動物の移動進路に誤差が生じる場合、安全装置の作動に悪影響が及ぶことが懸念される。つまり、自車両の走行時において移動物が自車両の側面部に向かって移動してくる場合には、移動物の移動進路と自車両の側面部とが交差することに基づいて、自車両の側面部への移動物の衝突を回避すべく安全装置が作動される。しかし、仮に移動物の移動進路が誤って算出されていると、安全装置が不要に作動されることが考えられる。
【0009】
この点、上記構成では、自車両の走行時において、自車両の側面部と移動物の移動進路とが交差する場合に、その交点が、自車両の側面部のうち自車両の進行方向後側となる後側領域にあれば、その交点が、自車両の側面部のうち後側領域よりも進行方向前側の前側領域にあるときよりも、安全装置の作動が制限される。この場合、自車両の進行方向後側の端部付近に向けて移動物が移動してきても、移動物と衝突することなく自車両が通り抜けられる可能性がある。自車両の側面部において、進行方向後側の後側領域に安全装置の作動制限領域が定められていることで、移動物の座標誤差に起因する安全装置の不要作動を抑制することができる。その結果、自車両の運転支援を適正に実施することができる。
【0010】
また、上記課題を解決する別の手段は、自車両周辺を撮像する撮像装置と、自車両と物体との衝突を回避又は衝突被害を軽減する安全装置とを備えた車両に適用され、前記撮像装置の撮像画像による自車両周辺の移動物の検知情報に基づいて、前記安全装置を作動させる制御装置であって、移動物の前記検知情報として、前記撮像装置の撮像画像により算出された移動物の移動進路を取得する進路取得部と、移動物の前記移動進路と自車両の側面部とが交差する場合に、前記安全装置を作動させる制御部と、を備え、前記制御部は、自車両の走行時において、自車両の側面部における自車両の進行方向前側となる前側領域と前記前側領域よりも進行方向後側の後側領域とのうち前記前側領域のみを使って、移動物の前記移動進路と自車両の側面部とが交差するか否かを判定し、交差すると判定した場合に、前記安全装置の作動を許可する。
【0011】
上記構成では、自車両の走行時において、自車両の側面部における前側領域と後側領域とのうち前側領域のみを使って、移動物の移動進路と自車両の側面部とが交差するか否かを判定して、安全装置の作動を許可する。自車両の側面部において、進行方向後側の後側領域に安全装置の作動判断を行わない不判断領域が定められていることで、移動物の座標誤差に起因する安全装置の不要作動を抑制することができる。その結果、自車両の運転支援を適正に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】自車両が前進走行している場合における前側領域及び後側領域を示す図。
【
図4】自車両が後退走行している場合における前側領域及び後側領域を示す図。
【
図5】自車両から移動物までの距離と後側領域の領域長さとの関係を示すグラフ。
【
図6】移動物の相対速度と後側領域の領域長さとの関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施形態)
以下、本発明に係る制御装置を、車載の運転支援装置100に適用した実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0014】
図1に示すように、本実施形態に係る運転支援装置100は、カメラ11と、ソナー装置12と、画像処理ECU21と、車両ECU22と、安全装置30と、を備えている。
【0015】
カメラ11は、例えば単眼カメラである。カメラ11は、自車両の前端、後端、及び両側面にそれぞれ取り付けられており、自車両周辺を撮像する。カメラ11は、撮像した撮像画像の画像情報を画像処理ECU21に送信する。なお、本実施形態において、カメラ11が「撮像装置」に相当する。
【0016】
ソナー装置12は、例えば、ミリ波帯の高周波信号(超音波)を送信波とするレーダ装置である。ソナー装置12は、自車両の前端、後端、及び両側面にそれぞれ搭載されており、自車両周辺の物体までの距離を計測する。具体的には、所定周期で探査波を送信し、複数のアンテナにより反射波を受信する。この探査波の送信時刻と反射波の受信時刻とにより、物体上の複数の検出点を検出し、これにより当該物体までの距離を計測する。加えて、複数のアンテナが受信した反射波の位相差により、物体の方位を算出する。物体までの距離及び物体の方位が算出できれば、その物体の自車両に対する相対位置を特定することができる。
【0017】
また、ソナー装置12は、物体で反射された反射波の、ドップラー効果により変化した周波数により、物体の相対速度を算出する。これにより、自車両周辺に存在している物体が静止物であると検知される。具体的には、物体の相対速度と自車両の車速との和がゼロとなる場合に、物体が静止物であると検知される。ソナー装置12は、自車両周辺の静止物の検知情報を車両ECU22に送信する。なお、静止物の検知情報には、静止物の自車両に対する相対位置の情報が含まれる。
【0018】
ECU21,22は、CPU、ROM、RAM、フラッシュメモリ等からなる周知のマイクロコンピュータを備えた制御装置である。ECU21,22は、各種信号を取得し、取得した情報に基づき、各種制御を実施する。
【0019】
具体的には、画像処理ECU21は、カメラ11の撮像画像に基づいて、自車両周辺の移動物を検知する。具体的には、画像処理ECU21は、カメラ11の撮像画像に写る各物体の自車両に対する相対位置を算出する。また、画像処理ECU21は、この相対位置に基づいて、各物体の移動速度を算出する。画像処理ECU21は、カメラ11から所定周期毎に送信される画像情報に基づき、物体のオプティカルフローを算出し、算出したオプティカルフローに基づいて当該物体の移動速度を算出する。ここで、オプティカルフローとは、画像中において輝度変化した境界線を構築する点としての境界点を複数検出し、検出した複数の境界点を動きベクトルとして表したものである。これにより、自車両周辺に存在している移動物が検知される。
【0020】
そして、画像処理ECU21は、相対位置及び相対速度に基づいて、移動物の移動進路を算出する。つまり、画像処理ECU21は、カメラ11の撮像画像に基づいて移動物の移動進路を算出する。画像処理ECU21は、移動物の検知情報を車両ECU22に送信する。なお、検知情報には、検知された移動物の自車両に対する相対位置、相対速度、及び移動進路の情報が含まれる。
【0021】
車両ECU22は、画像処理ECU21から送信される自車両周辺の移動物の検知情報に基づいて、安全装置30を作動させる。安全装置30は、自車両と物体との衝突を回避又は衝突被害を軽減する装置であり、ブレーキ装置31と、シートベルト装置32と、警報装置33と、を備えている。なお、本実施形態において、車両ECU22が「制御装置」に相当する。
【0022】
ブレーキ装置31は、車両ECU22から出力される衝突回避信号に基づいて、自車両を減速させる。シートベルト装置32は、車両ECU22から出力される衝突回避信号に基づいて、シートベルトを巻き取ってシートベルトを緊張させる。警報装置33は、車両ECU22から出力される衝突回避信号に基づいて、運転者等に衝突可能性を報知する装置であり、例えば自車の車室内に設置されたスピーカやブザー等の聴覚的に報知する装置、ディスプレイ等の視覚的に報知する装置が存在する。
【0023】
車両ECU22には、ヨーレートセンサ13、操舵角センサ14、車速センサ15が接続されている。ヨーレートセンサ13は、たとえば自車両の中央位置に設けられており、自車両の操舵量の変化速度に応じたヨーレート信号を車両ECU22に出力する。操舵角センサ14は、たとえば車両のステアリングロッドに取り付けられており、運転者の操作に伴うステアリングホイールの操舵角の変化に応じた操舵角信号を車両ECU22に出力する。車速センサ15は、たとえば自車両のホイール部分に取り付けられており、車輪の回転方向を検出するとともに、車輪速度に応じた車速信号を車両ECU22に出力する。
【0024】
ところで、カメラ11の撮像画像に基づいて移動物の移動進路を推定する場合、移動物の相対位置に誤差が生じることがあり、その誤差に起因して、移動物の移動進路に誤差が生じることが考えられる。特に、カメラ11が単眼カメラである場合、撮像画像の画面内方向における相対位置に比べて、撮像画像の奥行方向における相対位置の算出精度が悪く、移動物の相対位置に誤差が生じることが考えられる。
【0025】
移動物の移動進路に誤差が生じる場合、安全装置30の作動に悪影響が及ぶことが懸念される。つまり、自車両の走行時において移動物が自車両の側面部MSに向かって移動してくる場合には、移動物の移動進路と自車両の側面部MSとが交差することに基づいて、自車両の側面部MSへの移動物の衝突を回避すべく安全装置30が作動される。しかし、仮に移動物の移動進路が誤って算出されていると、安全装置30が不要に作動されることが懸念される。
【0026】
そこで、本実施形態では、自車両の走行時において、作動制限処理を実施する。作動制限処理では、自車両の側面部MSと移動物の移動進路とが交差する場合に、その交点が、自車両の側面部MSのうち自車両の進行方向前側となる前側領域MSFにあれば、安全装置30の作動を許可する。また、その交点が、自車両の側面部MSのうち前側領域MSFよりも進行方向後側の後側領域MSRにあれば、安全装置30の作動を許可しないようにしている。
【0027】
図2に、本実施形態の作動制限処理のフローチャートを示す。車両ECU22は、自車両の走行時において、所定周期毎に作動制限処理を繰り返し実施する。
【0028】
作動制限処理を開始すると、まずステップS10において、画像処理ECU21から送信される移動物の検知情報に基づいて、自車両周辺に移動物が存在しているか否かを判定する。ステップS10で否定判定すると、作動制限処理を終了する。
【0029】
ステップS10で肯定判定すると、ステップS12において、移動物の検知情報として、移動物の移動進路を取得する。例えば移動物は、自車両の走行に伴って、自車両の進行方向後方に移動するため、ステップS10では、自車両の進行方向後方に移動する移動物の移動進路を取得するとよい。なお、本実施形態において、ステップS12の処理が「進路取得部」に相当する。
【0030】
続くステップS14において、自車両が前進走行しているか否かを判定する。前進走行しているか否かの判定は、車速センサ15が検出する車輪の回転方向や、変速装置のシフト位置情報に基づいて判定される。なお、本実施形態において、ステップS14の処理が「走行判定部」に相当する。
【0031】
自車両が前進走行している場合には、ステップS14で肯定判定し、ステップS16において、自車両CSの前端から前側領域MSFを設定する。ここで、前側領域MSFとは、自車両の側面部MSのうち自車両の進行方向前側となる領域を意味する。自車両の側面部MSは、前側領域MSFと、前側領域MSFよりも進行方向後側の後側領域MSRとに区分されており、ステップS16では、前側領域MSF及び後側領域MSRを共に設定する。ステップS18についても同様である。
【0032】
自車両が後退走行している場合には、ステップS14で否定判定し、ステップS18において、自車両CSの後端から前側領域MSFを設定する。なお、設定される前側領域MSF及び後側領域MSRについては、
図3,4を用いて後述する。本実施形態において、ステップS16,S18の処理が「設定部」に相当する。
【0033】
続くステップS20において、ステップS12で取得された移動物の移動進路と、ステップS16,18で設定された前側領域MSFとの間に交点が存在するか否かを判定する。車両ECU22には、カメラ11の位置に対する前側領域MSFの相対位置が予め取得されており、前側領域MSFの相対位置と移動物の移動進路とに基づいて、交点が存在するか否かを判定する。なお、ステップS10において複数の移動物が検知されている場合には、各移動物に対してそれぞれ判定を実施する。
【0034】
ステップS20で肯定判定すると、ステップS22において、その移動物を安全装置30の作動対象に設定し、作動制限処理を終了する。つまり、ステップS22の処理では、自車両の走行時において、移動物の移動進路と自車両の側面部MSとが交差する場合に、その交点が、自車両の側面部MSのうち自車両の進行方向前側となる前側領域MSFにあれば、安全装置30の作動を許可する。そのため、当該移動物と自車両との間の距離が閾値よりも小さくなると、安全装置30に衝突回避信号が出力され、安全装置30が作動する。つまり、移動物の移動進路と自車両の側面部MSとが交差する場合に、安全装置30を作動させる。
【0035】
ステップS20で否定判定すると、ステップS24において、移動物の検知情報に含まれる移動物の相対位置に基づいて算出される自車両から移動物までの間の距離Lが、所定値Lthよりも大きいか否かを判定する。ステップS24で否定判定すると、ステップS22に進む。
【0036】
ステップS24で肯定判定すると、ステップS26において、移動物の検知情報に含まれる移動物の相対速度Vが、所定値Vthよりも大きいか否かを判定する。ステップS26で否定判定すると、ステップS22に進む。
【0037】
ステップS26で肯定判定すると、ステップS28において、その移動物を安全装置30の作動対象外に設定し、作動制限処理を終了する。ステップS26で肯定判定する場合には、移動物の移動進路と自車両の側面部MSとが交差しない場合とともに、移動物の移動進路と自車両の側面部MSとが交差する場合に、その交点が、自車両の側面部MSのうち自車両の進行方向後側となる後側領域MSRにある場合が含まれる。そのため、ステップS28の処理は、自車両の走行時において、移動物の移動進路と自車両の側面部MSとが交差する場合に、その交点が、自車両の側面部MSのうち自車両の進行方向後側となる後側領域MSRにあれば、安全装置30の作動を許可しない処理ということができる。
【0038】
なお、ステップS28の処理は、ステップS22において、距離Lが所定値Lthよりも大きいと判定され、かつ、ステップS24において、移動物の相対速度Vが所定値Vthよりも大きいと判定された場合に実施される。そのため、ステップS28の処理は、距離Lが所定値Lthよりも大きいこと、及び移動物の相対速度Vが所定値Vthよりも大きいことを条件に、この移動物の移動進路と自車両の側面部MSとの交点が、後側領域MSRにある場合に安全装置30の作動を許可しない処理ということができる。なお、本実施形態において、ステップS20~S28の処理が「制御部」に相当する。
【0039】
続いて、
図3,4を用いて、作動制限処理をより具体的に説明する。
図3には、自車両CSが前進走行している場合に設定される前側領域MSF及び後側領域MSRが示されている。この場合、自車両CS周辺の移動物DSは、自車両CSの前進走行に伴い自車両CSの進行方向後方(自車両の後方)に移動する。
【0040】
図3に、移動物DSの移動進路W1,W2を示す。また、これらの移動進路W1,W2は移動物DSの検知誤差により生じる誤差を含んでおり、その誤差をΔWとして示している。自車両CSの側面部MSのうち、自車両CSの進行方向後側の端部である自車両CSの後端PRから所定長さ分の領域が後側領域MSRであり、後側領域MSRよりも進行方向前側の領域が前側領域MSFである。
【0041】
移動物DSが移動進路W1に沿って移動する場合には、その移動進路W1は、自車両CSに対して前側領域MSFで交差する。この場合、安全装置30の作動が許可される。つまり、移動物DSの移動進路W1が自車両CSの前側領域MSFに交差する場合には、移動進路W1における誤差ΔWの有無にかかわらず、移動物DSが自車両CSに衝突する可能性が高いと考えられる。したがって、移動物DSの移動進路W1が自車両CSの前側領域MSFに交差することに基づいて、安全装置30の作動が許可される。
【0042】
また、移動物DSが移動進路W2に沿って移動する場合には、その移動進路W2は、自車両CSに対して後側領域MSRで交差する。この場合には、安全装置30の作動が許可されない。つまり、移動物DSの移動進路W2が自車両CSの後側領域MSRに交差する場合には、移動進路W2に誤差ΔWが含まれていると、移動物DSが自車両CSに向けて接近してきても、移動物DSと衝突することなく自車両CSが通り抜けられる可能性がある。移動物DSと衝突することなく自車両CSが通り抜けられる状況であるのに、安全装置30が作動されるとそれは不要作動となる。したがって、移動物DSの移動進路W2が自車両CSの移動進路W2に交差する場合には、安全装置30の作動が許可されないようになっている。
【0043】
図4には、自車両CSが後退走行している場合に設定される前側領域MSF及び後側領域MSRが示されている。この場合、自車両CS周辺の移動物DSは、自車両CSの後退走行に伴い自車両CSの進行方向後方(自車両の前方)に移動する。
【0044】
図4に、移動物DSの移動進路W11,W12と、その移動進路W11,W12に含まれる誤差ΔWを示している。自車両CSの側面部MSのうち、自車両CSの進行方向後側の端部である自車両CSの前端PFから所定長さ分の領域が後側領域MSRであり、後側領域MSRよりも進行方向前側の領域が前側領域MSFである。
【0045】
なお、後退走行は、前進走行よりも車速が小さく、移動物DSの相対速度VAが小さくなることが考えられるため、自車両CSが後退走行している場合の後側領域MSRの長さは、前進走行している場合の後側領域MSRの長さよりも小さいとよい。
【0046】
移動物DSが移動進路W11に沿って移動する場合には、その移動進路W11は、自車両CSに対して前側領域MSFで交差する。この場合、移動進路W11における誤差ΔWの有無にかかわらず、移動物DSが自車両CSに衝突する可能性が高いため、安全装置30の作動が許可される。
【0047】
また、移動物DSが移動進路W12に沿って移動する場合には、その移動進路W12は、自車両CSに対して後側領域MSRで交差する。この場合、移動進路W12に誤差ΔWが含まれていると、移動物DSが自車両CSに向けて接近してきても、移動物DSと衝突することなく自車両CSが通り抜けられる可能性があるため、不要作動を抑制すべく、安全装置30の作動が許可されない。
【0048】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0049】
・本実施形態では、自車両の走行時において、自車両の側面部MSと移動物の移動進路とが交差する場合に、その交点が、自車両の側面部MSのうち自車両の進行方向前側となる前側領域MSFにあれば、安全装置30の作動が許可される。また、その交点が、自車両の側面部のうち前側領域MSFよりも進行方向後側の後側領域MSRにあれば、安全装置30の作動が許可されない。この場合、自車両の進行方向後側の端部付近に向けて移動物が移動してきても、移動物と衝突することなく自車両が通り抜けられる可能性がある。自車両の側面部MSにおいて、進行方向後側の後側領域MSRに安全装置30の作動不許可領域(作動制限領域)が定められていることで、移動物の相対位置の誤差に起因する安全装置30の不要作動を抑制することができる。その結果、自車両の運転支援を適正に実施することができる。
【0050】
・特に、自車両の走行に伴い自車両の進行方向後側に移動する移動物が自車両の側面部MSに向かって移動してくる場合には、移動物の移動進路が誤って算出されることによっては、自車両の進行方向後側を通過する移動物が、自車両の進行方向後側の端部付近に交差するように算出される。その結果、安全装置30が不要に作動されることが考えられる。
【0051】
この点、本実施形態では、自車両の進行方向後側に移動する移動物について、その移動物の移動進路と自車両の側面部MSとの交点が後側領域MSRにある場合に、安全装置30の作動を許可しない。これにより、自車両の走行に伴い自車両の進行方向後側に移動する移動物に対して、安全装置30の作動を正しく行わせることができる。
【0052】
・本実施形態では、自車両の側面部MSにおいて自車両の進行方向後側の端部を基準として、その端部から所定長さ分の領域が後側領域MSRとして定められている。この場合、車両全長は車種等により異なるが、自車両の進行方向後側の端部を基準に後側領域MSRが定められていることで、車両全長の違いにかかわらず、安全装置30の作動不許可領域を適正に設定することができる。
【0053】
・具体的には、自車両が前進走行しているか後退走行しているかを判定し、自車両が前進走行していると判定された場合には、自車両の側面部MSのうち自車両の後端PRから所定長さ分の領域を後側領域MSRとする。また、自車両が後退走行している場合に、自車両の側面部MSのうち自車両の前端PFから所定長さ分の領域を後側領域MSRとする。そのため、自車両が前進走行しているか後退走行しているかを加味しつつ、そのいずれにおいても後側領域MSRを適正に設定することができる。
【0054】
・本実施形態では、自車両から移動物までの距離Lが所定値Lthよりも大きいこと、及び移動物の移動速度が所定値Vthよりも大きいことを条件に、この移動物の移動進路と自車両の側面部MSとの交点が後側領域MSRにある場合に、安全装置30の作動を許可しない。そのため、カメラ11の撮像画像に基づき算出された相対位置は、自車両から移動物までの距離Lや、移動物の移動速度に応じて誤差の程度が変わることを加味しつつ、安全装置30を適正に作動させることができる。
【0055】
・本実施形態では、自車両の走行時において、自車両の側面部MSにおける前側領域MSFと後側領域MSRとのうち前側領域MSFのみを使って、移動物の移動進路と自車両の側面部MSとが交差するか否かを判定して、安全装置30の作動を許可する。自車両の側面部MSにおいて、進行方向後側の後側領域MSRに安全装置30の作動判断を行わない不判断領域が定められていることで、移動物の座標誤差に起因する安全装置30の不要作動を抑制することができる。その結果、自車両の運転支援を適正に実施することができる。
【0056】
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0057】
・前側領域MSF及び後側領域MSRを、移動進路Wの誤差ΔWの大きさに応じて設定するようにしてもよい。ここで、移動進路Wの誤差ΔWは、自車両CSから移動物DSまでの距離LAが長いほど大きくなり、移動物DSの相対速度VAが大きいほど大きくなる。そのため、自車両CSから移動物DSまでの距離LA及び移動物DSの相対速度VAに基づいて、各領域MSF,MSRを設定する。
【0058】
具体的には、
図2のステップS16,S18において、
図5の関係を用いて後側領域MSRの領域長さを設定する。
図5の関係によれば、自車両CSからの距離LがLAより短ければ、領域長さとしてX1が設定され、距離LがLAより長ければ、領域長さとしてX1よりも長いX2が設定される。つまり、L<LAであれば、後側領域MSRが狭い領域として設定され、L>LAであれば、後側領域MSRが広い領域として設定される。
【0059】
又は、
図2のステップS16,S18において、
図6の関係を用いて後側領域MSRの領域長さを設定する。
図6の関係によれば、相対速度VがVAより小さければ、領域長さとしてX1が設定され、相対速度VがVAより大きければ、領域長さとしてX1よりも長いX2が設定される。つまり、V<VAであれば、後側領域MSRが狭い領域として設定され、V>VAであれば、後側領域MSRが広い領域として設定される。
【0060】
自車両CSからの距離Lに基づいて後側領域MSRを設定する処理と、相対速度Vに基づいて後側領域MSRを設定する処理とはそれらの両方が実施されてもよいし、いずれか一方のみが実施されてもよい。
【0061】
本構成によれば、カメラ11の撮像画像に基づいて移動物の相対位置を算出する場合に、その相対位置の誤差の程度が、自車両から移動物までの距離Lや、移動物の移動速度に依存して変わることを加味しつつ、自車両の側面部MSにおいて後側領域MSRを適正に設定することができる。
【0062】
・カメラ11は、単眼カメラに限られず、例えばステレオカメラでもよい。カメラ11がステレオカメラである場合、撮像画像の画面内方向における相対位置だけでなく、撮像画像の奥行方向における相対位置の算出精度もよいため、移動物の相対位置に誤差が生じないとも考えられる。
【0063】
しかし、車外温度の上昇によりステレオカメラを取り付けるフレームに歪みが生じることがあり、この場合には、移動物の相対位置に誤差が生じる。本実施形態では、ステレオカメラを取り付けるフレームに歪みが生じた場合でも、安全装置30の不要作動を抑制することができる。
【0064】
・上記実施形態では、自車両から移動物までの距離Lが所定値Lthよりも大きいこと、及び移動物の相対速度Vが所定値Vthよりも大きいことを条件に、この移動物の移動進路と自車両の側面部MSとの交点が後側領域MSRにある場合に安全装置30の作動を許可しない例を示したが、これを変更してもよい。例えば、自車両から移動物までの距離Lが所定値Lthよりも大きいこと、及び移動物の相対速度Vが所定値Vthよりも大きいことのいずれか一方を条件に、この移動物の移動進路と自車両の側面部MSとの交点が後側領域MSRにある場合に、安全装置30の作動を許可しないようにしてもよい。
【0065】
・上記実施形態では、移動体の移動進路と自車両の側面部MSとが交差する場合に、その交点が前側領域MSFにあれば、安全装置30の差動を許可し、その交点が後側領域MSRにあれば、安全装置30の作動を許可しない例を示したが、これに限られない。移動体の移動進路と自車両の側面部MSとの交点が後側領域MSRにあれば、その交点が前側領域MSFにあるときよりも、安全装置30の作動を制限するのであれば、その形態を問わない。
【0066】
例えば、移動体の移動進路と自車両の側面部MSとの交点が後側領域MSRにあれば、その交点が前側領域MSFにあるときよりも、安全装置30を作動し難くしてもよい。安全装置30を作動し難くする例として、例えば、移動体の移動進路と自車両の側面部MSとの交点が後側領域MSRにあれば、その交点が前側領域MSFにあるときよりも、安全装置30を作動させる条件を厳しくしてもよい。
【0067】
安全装置30を作動させる条件の例としては、例えば、衝突時間(TTC)と閾値との比較により衝突するか否かを判定するときには、この閾値が上記条件に相当する。そして、移動体の移動進路と自車両の側面部MSとの交点が後側領域MSRにあれば、その交点が前側領域MSFにあるときよりも閾値を小さくし、衝突時間ギリギリになるまで衝突すると判定しないようにすることで、安全装置30を作動させる条件を厳しくする。
【0068】
・上記実施形態では、車両ECU22が制御装置に相当する例を示したが、これに限られず、画像処理ECU21と車両ECU22とを合わせたものが制御装置に相当してもよい。つまり、制御装置が撮像装置の撮像画像に基づいて、自車両周辺の移動物の検知情報を生成してもよい。
【符号の説明】
【0069】
11…カメラ、22…車両ECU、30…安全装置、MS…側面部、MSF…前側領域、MSR…後側領域。