(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-31
(45)【発行日】2023-11-09
(54)【発明の名称】車両開閉体の開閉制御装置
(51)【国際特許分類】
E05F 15/41 20150101AFI20231101BHJP
E05F 15/63 20150101ALI20231101BHJP
E05F 11/54 20060101ALI20231101BHJP
B60J 5/00 20060101ALI20231101BHJP
B60J 5/04 20060101ALI20231101BHJP
B60J 5/10 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
E05F15/41
E05F15/63
E05F11/54 A
B60J5/00 D
B60J5/04 C
B60J5/10 K
(21)【出願番号】P 2019192128
(22)【出願日】2019-10-21
【審査請求日】2022-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000138462
【氏名又は名称】株式会社ユーシン
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】林 悦子
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-112855(JP,A)
【文献】特開2017-36602(JP,A)
【文献】特開2017-166252(JP,A)
【文献】特開2005-232753(JP,A)
【文献】特開2013-122157(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0147402(US,A1)
【文献】特開2014-159712(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0006728(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0179733(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 15/00-15/79
E05F 11/54
B60J 5/00- 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の開口部を開閉する車両開閉体を開閉駆動する開閉駆動部と、
前記車両開閉体の回動速度が予め設定された目標速度となるように、前記開閉駆動部をフィードバック制御
して前記車両開閉体を自動開閉し、前記自動開閉の目標速度は加速域と減速域のうちの一方、定速域、及び前記加速域と第1の減速域のうちの他方の3段階で実行される、する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記自動開閉中、前記目標速度と前記車両開閉体の回動速度の差が予め設定された閾値を超えると特定の処理を実行し、
前記特定の処理は、前記目標速度を前記減速域よりも減速度合いの大きい停止用目標速度に変更し、前記停止用目標速度に従って前記開閉駆動部を駆動制御し、
前記車両開閉体の前記回動速度が予め設定された許容速度範囲内となると前記車両開閉体の回動動作を停止させる
、車両開閉体の開閉制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記
特定の処理の終了後、前記開閉駆動部を駆動制御して、前記車両開閉体を開放動作させる反転処理を実行する、請求項1に記載の車両開閉体の開閉制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記車両開閉体の回動速度が前記目標速度となるように、前記開閉駆動部の駆動回路に送信するPWM信号のデューティ比をフィードバック制御する、請求項1
又は2に記載の車両開閉体の開閉制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両開閉体の開閉制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両開閉体を停止する必要が生じた場合、即時に車両開閉体の回動を停止する挟込検出処理(ショートブレーキ:モータの正極と負極を短絡させてモータの駆動を停止させる処理)を実行するようにした車両開閉体の開閉制御装置が公知である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、車両開閉体の移動速度が速いときに前記挟込検出処理を実行した場合、車両開閉体が急停止し、その反動で車両開閉体が振動してしまう。車両開閉体と車体との間に異物を挟み込んでいる場合、車両開閉体の回動方向を反転させる反転処理を行う必要があるが、車両開閉体が振動している状態では反転処理は実行できない。また、振動が収まるまでの時間は、路面の傾斜や気温、ドアの開度等によって相違する。このため、挟込検出処理を実行してから反転処理を実行するまでの待機時間(ショートブレーキ出力時間)を予測して設定するのは難しく、待機時間を必要以上に長く設定せざるを得ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、車両開閉体を短時間で停止させることのできる車両開閉体の開閉制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、車体の開口部を開閉する車両開閉体を開閉駆動する開閉駆動部と、前記車両開閉体の回動速度が予め設定された目標速度となるように、前記開閉駆動部をフィードバック制御して前記車両開閉体を自動開閉し、前記自動開閉の目標速度は加速域と減速域のうちの一方、定速域、及び前記加速域と第1の減速域のうちの他方の3段階で実行される、する制御部と、備え、前記制御部は、前記自動開閉中、前記目標速度と前記車両開閉体の回動速度の差が予め設定された閾値を超えると特定の処理を実行し、前記特定の処理は、前記目標速度を前記減速域よりも減速度合いの大きい停止用目標速度に変更し、前記停止用目標速度に従って前記開閉駆動部を駆動制御し、前記車両開閉体の前記回動速度が予め設定された許容速度範囲内となると前記車両開閉体の回動動作を停止させる、車両開閉体の開閉制御装置を提供する。
【0007】
この構成によれば、車両開閉体の回動が妨げられていることを検出しても、即座に車両開閉体の回動動作を停止させるのではなく、車両開閉体の回動速度を十分に減速させてから停止するようにしている。このため、車両開閉体から振動が発生しにくくなり、車両開閉体の回動動作の停止開始から完全に停止するまでに要する時間を短縮化することができる。
【0008】
前記制御部は、前記特定の処理の終了後、前記開閉駆動部を駆動制御して、前記車両開閉体を開放動作させる反転処理を実行するのが好ましい。
【0009】
この構成によれば、車両開閉体が振動しないようにスムーズに停止させた後、反転処理を実行するようにしているので、特定の処理から短時間で反転処理を開始させることができる。
【0012】
前記制御部は、前記車両開閉体の回動速度が前記目標速度となるように、前記開閉駆動部の駆動回路に送信するPWM信号のデューティ比をフィードバック制御するのが好ましい。
【0013】
この構成によれば、車両開閉体の回動速度をスムーズに低下させることができ、停止状態で振動が発生することを防止しやすくなる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、車両開閉体を停止させる場合であっても、その回動動作を直ちに停止させるのではなく、減速させてから停止させるようにしている。このため、車両開閉体が振動しにくくなり、結果として停止時間を短縮化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態に係る車両の後方部を示す斜視図である。
【
図2】
図1のスピンドルドライブ機構を示す断面図である。
【
図3】本実施形態に係る開閉制御装置を示すブロック図である。
【
図4】
図2の開閉制御装置で実行する自動開放処理を示すフローチャートである。
【
図5】
図4の認証処理を示すフローチャートである。
【
図6】
図4の解錠処理を示すフローチャートである。
【
図7】
図4の開閉処理を示すフローチャートである。
【
図8】
図1に示すバックドアの開閉位置と回動速度の関係を示すグラフである。
【
図9】
図2の開閉制御装置で実行する挟込検出処理を示すフローチャートである。
【
図10】本実施形態に係る開閉制御装置で挟込検出処理を実行する場合のバックドアの目標速度と実際の回動速度の変化を示すグラフである。
【
図11】従来の方法でバックドアを停止させる場合のバックドアの目標速度と実際の回動速度の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。
【0019】
図1に示すように、車体1の後方部には開口部2が形成されている。開口部2には車両開閉体の一例であるバックドア3が設けられている。バックドア3は、上方部に設けた支軸(図示せず)を中心として車体1に回動可能に取り付けられている。バックドア3は、開閉駆動部の一例であるスピンドルドライブ機構4により回動する。すなわち、スピンドルドライブ機構4は、バックドア3の両側にそれぞれ配置され、駆動によりバックドア3を、支軸を中心として開口部2を開放する全開位置と、開口部2を閉鎖する全閉位置との間で回動させる。
【0020】
図2に示すように、各スピンドルドライブ機構4は、電動モータ等が収容される第1ハウジング5と、スピンドル等が収容される第2ハウジング6とを備える。
【0021】
第1ハウジング5の一端部にはドア側連結部材7が固定されている。ドア側連結部材7は、バックドア3に設けたジョイントボール8と回動可能に連結されている。第1ハウジング5内には電動モータ9が収容されている。電動モータ9の回転数は回転センサ10によって検出されるようになっている。回転センサ10には、ホール素子を使用する磁気センサ、LED(発光ダイオード)及びPD(フォトダイオード)を使用する光学センサ等が使用できる。電動モータ9の回転軸9aは、減速ギア機構11を介して第2ハウジング6内のスピンドル12に接続されている。第1ハウジング5の他端部は第2ハウジング6に連結されている。
【0022】
第2ハウジング6には、スピンドル12とスピンドルナット13が収容されている。スピンドル12にはスピンドルナット13が螺合している。スピンドルナット13は、スピンドル12の正逆回転により第2ハウジング6内を軸方向に往復移動する。スピンドルナット13の前端部には筒状のプッシュロッド14の後端部が固定されている。プッシュロッド14の前端部には外筒15の前端部が固定されている。プッシュロッド14と外筒15は同軸上に配置されている。プッシュロッド14と外筒15の間には、外径側にコイルスプリング16が、内径側に内筒17がそれぞれ配置されている。また、プッシュロッド14の前端部には車体側連結部材18が固定されている。車体側連結部材18は車体1に設けたジョイントボール19と回動可能に連結されている。
【0023】
スピンドルドライブ機構4では、電動モータ9を駆動して回転軸9aを正回転させると、スピンドル12が正回転し、スピンドルナット13が第2ハウジング6の他端側へと移動する。これにより、第2ハウジング6に対する外筒15及びプッシュロッド14の突出量が増加し、バックドア3が開方向に回動する。また、電動モータ9を駆動して回転軸9aを逆回転させると、スピンドルナット13も逆回転し、スピンドルナット13が第2ハウジング6の一端側へと移動する。これにより、第2ハウジング6に対する外筒15及びプッシュロッド14の突出量が減少し、バックドア3が閉方向に回動する。
【0024】
図3に示すように、バックドア3には、ドアラッチ装置20、バックドア開閉装置21、ドア開スイッチ22、ドア閉スイッチ23、等が設けられている。ここでは、ドア開スイッチ22とドア閉スイッチ23で機能を分けているが、両方の機能を備えたドア開閉スイッチとしてもよい。また、ドア開スイッチ22とドア閉スイッチ23は、バックドア3の外側に設けられるハンドルスイッチ、内部に設けられるゲートスイッチ、運転席にあるドライバ用スイッチ等(これらスイッチを設ける位置は特に限定されるものではない。)で代用してもよいし、電子キー26にある操作スイッチで代用してもよい。
【0025】
ドアラッチ装置20は、ラッチ24を正逆回転させるラッチモータ25を備える。ラッチ24の回転位置は、フルラッチスイッチ26、ハーフラッチスイッチ27及びリリーススイッチ28などによってそれぞれ検出される。フルラッチスイッチ26は、ラッチ24が車体1の開口部2に露出するストライカに完全に係合するフルラッチ位置を検出する。リリーススイッチ28は、ラッチ24がストライカから離脱可能な状態に移行したリリース位置を検出する。ハーフラッチスイッチ27は、フルラッチ位置とリリース位置の間のハーフラッチ位置を検出する。
【0026】
ドア開スイッチ22及びドア閉スイッチ23はバックドア3の外面に設けられている。ドア開スイッチ22又はドア閉スイッチ23を操作すると、ドア開操作信号又はドア閉操作信号が制御装置29に出力される。制御装置29では、ドア開操作信号又はドア閉操作信号に基づいてスピンドルドライブ機構4にPWM(Pulse Width Modulation)信号を出力する。スピンドルドライブ機構4は、モータ駆動回路30にてPWM信号を受信し、このPWM信号に基づいて電動モータ9を駆動制御してバックドア3を全閉位置から全開位置又はその逆へと回動させる。
【0027】
続いて、バックドア3の自動開放処理について説明する。
【0028】
図4に示すように、バックドア3の自動開放処理は、認証処理(ステップS100)、解錠処理(ステップS200)及び開閉処理(ステップS300)により行う。
【0029】
図5に示すように、認証処理では、制御装置29で、ドア開スイッチ22からドア開操作信号を受信したか否かを判断する(ステップS110)。ドア開操作信号を受信すれば、BCM30に電子キーの認証を要求する(ステップS111)。
【0030】
BCM30では、制御装置29からの認証要求を受けると(ステップS120)、電子キーに対して認証コードの送信要求を行う(ステップS121)。BCM30で、電子キーから送信された認証コードを受信すれば(ステップS122)、受信した認証コードと、予め登録されている正規コードとを比較し(ステップS123)、比較結果を制御装置29に送信する(ステップS124)。
【0031】
制御装置29では、比較結果に基づいて、認証コードと正規コードが合致していれば(ステップS112:YES)、解錠処理を実行し(ステップS113)、合致していなければ(ステップS112:NO)、自動開放処理を終了する。
【0032】
図6に示すように、解錠処理(ステップS200)では、ドアラッチ装置20にリリース信号を出力する(ステップS201)。ドアラッチ装置20では、入力されたリリース信号に基づいてラッチモータ25を駆動する。ここで、リリーススイッチ28によってラッチ24がリリース位置に回動しているか否かを判断する(ステップS202)。ラッチ24がリリース位置に回動し、リリーススイッチ28からオン信号が入力されれば、開閉処理(ステップS300)を実行する。所定時間内にリリーススイッチ28からオン信号が入力されなければ、ドアラッチ装置20で不具合が発生したとしてエラーを報知し(ステップS203)、自動開放処理を終了する。
【0033】
図7に示すように、開閉処理(ステップS300)では、スピンドルドライブ機構4にPWM信号を出力し(ステップS301)、バックドア3の開放動作を開始させる。この間、回動位置算出処理を実行する。回動位置算出処理では、回転センサ10によって電動モータ9の回転数を検出する(ステップS302)。そして、バックドア3の全閉位置からの電動モータ9の回転数に基づいて、バックドア3の回動位置を算出する(ステップS303)。
【0034】
本実施形態では、回転センサ10は、一方のスピンドルドライブ機構4に設けられており、他方のスピンドルドライブ機構4は、この回転センサ10によって検出された回転速度に基づいて、モータ駆動回路30に出力するPWM信号のデューティ比がフィードバック制御される。但し、回転センサ10を両方のスピンドルドライブ機構4に設け、検出される回転速度の平均値を算出し、スピンドルドライブ機構4毎に制御を行ってもよい。また、両方で算出された平均値に基づいて両方のスピンドルドライブ機構4をフィードバック制御するようにしてもよい。
【0035】
バックドア3の開放動作は、全閉位置から全開位置までを、加速域、定速域、減速域の3段階で行う。
図8のグラフでは、横軸がバックドア3の開閉位置(電動モータ9の回転数)、縦軸がバックドア3の回動速度(電動モータ9の回転速度:回転軸9aの単位時間当たりの回転数)をそれぞれ示す。原点Oが全閉位置、右端Xが全開位置、左側の直角三角形が加速域、中央の長方形が定速域、右側の直角三角形が減速域である。台形状のグラフが目標速度TSの変化を示す。
【0036】
加速域では、目標速度TSは電動モータ9の回転数に対して回転速度が徐々に大きくなる加速用目標速度ATSに設定されている。そして、この加速用目標速度ATSが得られるように、モータ駆動回路30に出力するPWM信号のデューティ比をフィードバック制御する。これにより、バックドア3は停止状態から加速しながら回動する。
【0037】
定速域では、目標速度TSは電動モータ9の回転速度が一定値に維持される定速用目標速度CTSに設定されている。そして、この定速用目標速度CTSが得られるように、モータ駆動回路30に出力するPWM信号のデューティ比をフィードバック制御する。これにより、バックドア3は一定速度で回動する。
【0038】
減速域では、目標速度TSは電動モータ9の回転速度が徐々に減少する減速用目標速度DTSに設定されている。そして、この減速用目標速度DTSが得られるように、モータ駆動回路30に出力するPWM信号のデューティ比をフィードバック制御する。これにより、バックドア3の回動速度が徐々に低下して全開位置で停止する。
【0039】
以上のようにしてバックドア3が全開位置に回動したと判断すれば(ステップS304)、スピンドルドライブ機構4の電動モータ9へのPWM信号の出力を停止し(ステップS305)、ドアの自動開放処理を終了する。なお、バックドア3が全開位置に回動したか否かは、例えば、ステップS303で算出したバックドア3の回動位置や、電動モータ9の駆動開始からの経過時間等に基づいて判断すればよい。
【0040】
なお、バックドア3の自動閉鎖処理は、前述の自動開放処理とバックドア3の回動方向が相違する以外は同じであり、加速域、定速域及び減速域の3段階で、同様な制御により行われる。よって、ここでの自動閉鎖処理についての説明は省略する。
【0041】
自動開放処理の途中で、バックドア3が障害物に衝突した場合、あるいは自動閉鎖処理の実行途中で、バックドア3と車体1との間に異物が挟まった場合には、次のようにしてバックドア3の挟込検出処理を実行し、後述するようにして反転処理を実行する。
【0042】
まず、自動閉鎖処理の実行途中で、バックドア3と車体1の間に異物が挟まった場合のバックドア3の挟込検出処理について説明する。
【0043】
図9に示すように、挟込検出処理では、バックドア3の実際(現時点)の回動位置と、その実際の回動位置に於ける目標速度とを読み込む(ステップS401)。また、このときのバックドア3の実際の回動速度を読み込む(ステップS402)。バックドア3の実際の回動位置は、バックドア3の全閉位置又は全開位置からの電動モータ9の回転数から得られる。バックドア3の実際の回動速度は、電動モータ9の回転速度から得られる。
【0044】
目標速度と実際の回転速度との差を算出する(ステップS403)。そして、この速度差が予め設定した閾値を超えるか否かを判断する(ステップS404)。閾値は、通常のバックドア3の開閉で電動モータ9の回転速度Sが変動する範囲を超えた値とすればよい。電動モータ9の回転速度Sが目標速度TSに対して(±α)の変動があるとすれば、閾値TLは、TL>|TS-S|+αを満足するように設定すればよい。
【0045】
速度差が閾値を超えていれば、バックドア3の回動速度が遅く、バックドア3の回動動作が何らかの理由により妨げられていると判断し、バックドア3の回動動作を次のようにして停止させる。バックドア3の回動動作が途中で停止される要因として、例えば、バックドア3の自動閉鎖処理を実行しているとき、バックドア3と車体1との間に異物を挟み込み、それ以上バックドアをドア閉方向に回動できない場合がある。また、バックドア3の自動開放処理を実行しているとき、車庫の天井等がバックドア3に当接し、それ以上バックドアをドア開方向に回動できない場合もある。
【0046】
バックドア3の回動動作の停止では、目標速度TSを予め設定した停止用目標速度STSに変更して回動速度を徐々に減速させる(ステップS405)。停止用目標速度STSは、自動開閉処理の減速域でバックドア3の回動速度を低下させる場合の減速用目標速度DTSよりも、電動モータ9の回転数に対する回転速度の低下度合い(減速度合い)が大きく設定されている。但し、直ちに停止させる場合のような減速度合いよりも小さく設定されている。これにより、バックドア3の回動速度を無理なくスムーズに低下させることができる。
【0047】
バックドア3の回動速度が十分に減速され、許容速度範囲内となれば(ステップS406)、その回動動作を完全に停止させる(ステップS407)。ここで、許容速度範囲には、バックドア3の回動動作が完全に停止している状態と、バックドア3の回動動作を停止させたとしても、バックドア3に発生する振動が許容範囲に抑えられている状態とが含まれる。また、振動の許容範囲とは、バックドア3の振動がほぼないか、あったとしても後述する反転処理で不具合を発生させない範囲を意味する。
【0048】
バックドア3が停止すれば、続いてバックドア3の反転処理を実行する。
【0049】
バックドア3の反転処理では、モータ駆動回路30にPWM信号を出力し、電動モータ9を逆回転させる。バックドア3を逆方向に回動させるのは、通常、挟込検出処理で異物が挟み込まれた状態であるため、バックドアを逆方向に回動させる必要がある。特に、挟み込まれた異物が人であれば、早急にその挟込状態を解消しなければならない。そこで、反転処理での目標速度(反転目標速度)を設定し、バックドア3が反転目標速度で回動するように、モータ駆動回路30に出力するPWM信号のデューティ比をフィードバック制御により増減させる。これにより、ユーザの意思に応じた制御を行うことができる。すなわち、異物、特に、その異物が身体の一部の挟込状態を早急に解消することができる。なお、反転処理でバックドア3を完全に全開位置まで回動させる必要はないが、再度挟込状態とならないように、十分に挟込状態を解消できる位置まで回動させるのが好ましい。
【0050】
図10に、自動開放処理によってバックドア3を回動させ、前記挟込検出処理によって停止させ、前記反転処理によって回動を再開する場合の目標速度TSと実際の回動速度RSの変化を示す。また、
図11に、自動開放処理によってバックドア3を回動させ、前記挟込検出処理を実行することなく、直ちに停止させた場合の目標速度と実際の速度の変化を示す。
【0051】
図11に示すように、バックドア3の回動を直ちに停止させた(実線で示す目標速度TSに従ってフィードバック制御を行わず、直ちに挟込検出処理を実行した)場合、停止後にバックドア3の実際の回動速度RSが1点鎖線で示すように変動し、バックドア3が大きく振動していることが分かる。バックドア3が振動している状態での再駆動すなわち反転駆動では、フィードバック制御しようとしても、外乱が大きくて速度が安定しないため、正常に行うことができない。このため、振動が収まるまで待機する必要がある。そこで、電動モータ9の再駆動には、バックドア3の振動が収まる時間よりも長い十分な時間を確保している。
【0052】
一方、
図10に示すように、前記挟込検出処理によってバックドア3の回動を停止させる場合、(実線で示す)目標速度TSに従って徐々に(1点鎖線で示す)回動速度RSを低下させるための時間は必要となるが、その後にバックドア3の回動速度RSが変動、すなわち振動することが殆どない。したがって、電動モータ9を再駆動するまでの待機時間を短く設定することができ、全体としてバックドア3の回動停止から再び回動させるまでに要する時間を短縮化することができる。
【0053】
なお、本発明は、前記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0054】
前記実施形態では、バックドア3を減速させながら停止させるようにしたが、その回動速度が予め設定した設定速度以下であれば、減速させる必要がないため、直ちにその回動動作を停止させるようにしてもよい。バックドア3の回動速度が設定速度以下であるか否かの判断は、回転センサ10で検出される電動モータ9の回転軸9aの回転速度に基づいて判断すればよい。検出される回転速度が予め設定した値よりも小さければ、バックドア3の回動速度を減速させることなく、直ちに停止させようにすればよい。
【0055】
前記実施形態では、車両開閉体の一例としてバックドア3を開閉制御する場合について説明したが、スライドドアやガルウィング等の他のタイプのドアであっても同様に開閉制御することができる。
【0056】
前記実施形態では、スピンドルドライブ機構4を2つ設ける場合について説明したが、1又は3以上設ける場合であっても同様に開閉制御するようにすればよい。
【0057】
前記実施形態では、前述の各処理をソフトウェアで実行する構成としたが、これらの処理を実行するハードウェアで構成することもできる。
【符号の説明】
【0058】
1…車体
2…開口部
3…バックドア
4…スピンドルドライブ機構
5…第1ハウジング
6…第2ハウジング
7…ドア側連結部材
8…ジョイントボール
9…電動モータ
10…回転センサ
11…減速ギア機構
12…スピンドル
13…スピンドルナット
14…プッシュロッド
15…外筒
16…コイルスプリング
17…内筒
18…車体側連結部材
19…ジョイントボール
20…ドアラッチ装置
21…バックドア開閉装置
22…ドア開スイッチ
23…ドア閉スイッチ
24…ラッチ
25…ラッチモータ
26…フルラッチスイッチ
27…ハーフラッチスイッチ
28…リリーススイッチ
29…制御装置
30…モータ駆動回路