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特許7377065エチレン系共重合体組成物およびその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-31
(45)【発行日】2023-11-09
(54)【発明の名称】エチレン系共重合体組成物およびその用途
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/04 20060101AFI20231101BHJP
   C08F 210/02 20060101ALI20231101BHJP
   C08J 9/04 20060101ALI20231101BHJP
   B32B 5/24 20060101ALI20231101BHJP
   A43B 13/04 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
C08L23/04
C08F210/02
C08J9/04 101
C08J9/04 CES
B32B5/24 101
A43B13/04 A
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019196474
(22)【出願日】2019-10-29
(65)【公開番号】P2021070720
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂井 達弥
(72)【発明者】
【氏名】野田 公憲
(72)【発明者】
【氏名】神谷 希美
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-308619(JP,A)
【文献】国際公開第2015/129414(WO,A1)
【文献】特表2015-521670(JP,A)
【文献】国際公開第2006/123670(WO,A1)
【文献】特開平11-206406(JP,A)
【文献】特開2019-019289(JP,A)
【文献】特開2007-106985(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08F 6/00-246/00
C08J 9/04
B32B 5/24
A43B13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンと、炭素数3~20のα-オレフィンとのみを共重合してなる共重合体であって、下記(a)、(b)、(c)および(d)の要件をすべて満たすエチレン系共重合体(A)と、
エチレンと、炭素数3~20のα-オレフィンとのみを共重合してなる共重合体であって、密度が0.850~0.873g/cm3の範囲にあるエチレン系共重合体(B)と
を含むことを特徴とするエチレン系共重合体組成物;
(a)1H-NMRにより求められる炭素数1000個あたりのビニル基含有量が0.003~0.3個の範囲にある。
(b)MFR10/MFR2.16が7~20の範囲にある。(ただし、MFR10は、ASTM D1238の方法により190℃、10kg荷重で測定したメルトフローレートであり、MFR2.16は、ASTM D1238の方法により190℃、2.16kg荷重で測定したメルトフローレートである。)
(c)密度が0.875~0.910g/cm3の範囲にある。
(d)ASTM D1238の方法により190℃、2.16kg荷重で測定したメルトフローレート(MFR2.16)が、0.01~200g/10分の範囲にある。
【請求項2】
前記エチレン系共重合体(A)が、エチレン由来の構成単位の含有量が60~98mol%の範囲にあり、炭素原子数3~20のα-オレフィン由来の構成単位の含有量が2~40mol%の範囲にある共重合体であることを特徴とする請求項1に記載のエチレン系共重合体組成物。
【請求項3】
前記エチレン系共重合体(A)の融点が、50~120℃の範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載のエチレン系共重合体組成物。
【請求項4】
前記エチレン系共重合体(A)がエチレン・1-ブテン共重合体であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のエチレン系共重合体組成物。
【請求項5】
前記エチレン系共重合体(A)と前記エチレン系共重合体(B)との質量比[(A)/(B)]が、5/95~80/20の範囲であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のエチレン系共重合体組成物。
【請求項6】
さらにエチレン・極性モノマー共重合体(C)を含むことを特徴する請求項1~5のいずれかに記載のエチレン系共重合体組成物。
【請求項7】
前記エチレン系共重合体(A)と前記エチレン・極性モノマー共重合体(C)との質量比[(A)/(C)]が1/99~39/61の範囲であることを特徴とする請求項6に記載のエチレン系共重合体組成物。
【請求項8】
さらに発泡剤(D)、架橋剤(E)、またはそれらの組合せを含むことを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載のエチレン系共重合体組成物。
【請求項9】
さらに架橋助剤(F)を含むことを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載のエチレン系共重合体組成物。
【請求項10】
請求項8または9に記載のエチレン系共重合体組成物を架橋発泡させて得られることを特徴とする発泡体。
【請求項11】
請求項10に記載の発泡体からなる層と、ポリオレフィン、ポリウレタン、ゴム、皮革および人工皮革からなる群から選ばれる少なくとも一種の素材からなる層とを有することを特徴とする積層体。
【請求項12】
請求項10に記載の発泡体または請求項11に記載の積層体を用いてなることを特徴とする履物。
【請求項13】
請求項10に記載の発泡体または請求項11に記載の積層体を用いてなることを特徴とする履物用部品。
【請求項14】
前記履物用部品が、ミッドソール、インナーソールまたはソールであることを特徴とする請求項13に記載の履物用部品。
【請求項15】
請求項1~9のいずれかに記載のエチレン系共重合体組成物を発泡させる工程を含む発泡体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン系共重合体組成物、該組成物からなる発泡体、およびその用途に関する。詳しくは、異なる2種のエチレン・α-オレフィン共重合体を含む組成物、該組成物からなる発泡体、およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
履物あるいは履物用部品、たとえばスポーツシューズ等の靴底(主にミッドソール)にも、樹脂の架橋発泡体が使用されている。履物あるいは履物用部品には、軽量で、長期間の使用による変形を抑え、過酷な使用条件に耐え得る機械強度および反発弾性を有する条件が要求されるためである。
【0003】
靴底用には従来、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)を過酸化物架橋した架橋発泡体が広く使用されている。このエチレン・酢酸ビニル共重合体を用いて成形される架橋発泡体は、比較的比重が高く、かつ圧縮永久歪が大きいため、たとえば靴底に用いた場合、重く、かつ長期の使用により靴底が圧縮され反発弾性等の機械強度が失われていくという問題がある。このため、エチレン・酢酸ビニル共重合体系の発泡体の圧縮永久歪や機械強度をさらに向上させる目的で、エチレン・酢酸ビニル共重合体よりも架橋効率の良い、エチレン・1-ブテンゴム(EBR)、エチレン・オクテンゴム(EOR)などのポリオレフィン系ゴムのブレンドが試みられてきた。
【0004】
また、結晶性が低い材料ほど反発弾性が良いことが知られているため、特に高い反発弾性が求められる場合には、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)とエチレン・プロピレン・ジエン共重合体(EPDM)とのブレンドが試みられた。しかしながらその場合には熱収縮性や機械強度が不足する問題があり、結晶性の高いポリオレフィン系ゴムをさらに添加して機械強度を補うケースがあった。
【0005】
一方で、エチレン・α-オレフィン共重合体は、従来より種々の用途に用いられている。たとえば、エチレン・α-オレフィン共重合体を用いた架橋発泡体は、機械的強度が高く、軽量でかつ柔軟であることから、建築用外装材、内装材、ドアグラスランなどの自動車部品、包装材料、日用品などに用いられている。ここで、架橋をともなわない発泡体は、軽量化は達成されるものの機械的強度は低いため、発泡体を前述のような用途に用いる場合には、樹脂の架橋反応を行うことにより、発泡体内の分子鎖を結合させ、機械的強度の向上が図られている。
【0006】
本願出願人は、エチレン・α-オレフィン共重合体を用いた架橋発泡体が、より軽量な履物用部品素材として好適であることを見出し、従来より種々検討している。具体的には、エチレン系重合体とEPDMとからなる組成物からなる発泡体(特許文献1参照)、ビニル基を有するエチレン・α-オレフィン共重合を含む組成物からなる発泡体(特許文献2、特許文献3参照)が、低比重で圧縮永久歪が小さく、履物用部品に好適であることを見出している。また、密度の異なる2種のエチレン・1-ブテン共重合体を含む組成物からなる未架橋発泡体が、層間接着性に優れることを見出している(特許文献4参照)。
【0007】
さらに特許文献5には、ビニル基を有するエチレン・α-オレフィン共重合体を含む発泡性配合物を用いて得た、高硬度および低圧縮永久歪を有する架橋発泡体が、履物用途などに有用なことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開番号2007/132731号
【文献】国際公開番号2015/129414号
【文献】特開2008-308619号公報
【文献】特開2004-43606号公報
【文献】特表2015-521670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ソールなどの履物用部品の用途に好適であり、軽量性、熱収縮性、圧縮永久歪、機械強度等の特性にバランスよく優れた架橋発泡体を製造し得る組成物、該組成物を用いた発泡体、およびそれを用いた履物用部品を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下の〔1〕~〔15〕に関する。
〔1〕
エチレンと、炭素数3~20のα-オレフィンとのみを共重合してなる共重合体であって、下記(a)、(b)、(c)および(d)の要件をすべて満たすエチレン系共重合体(A)と、
エチレンと、炭素数3~20のα-オレフィンとのみを共重合してなる共重合体であって、密度が0.850~0.873g/cm3の範囲にあるエチレン系共重合体(B)と
を含むことを特徴とするエチレン系共重合体組成物;
(a)1H-NMRにより求められる炭素数1000個あたりのビニル基含有量が0.003~0.3個の範囲にある。
(b)MFR10/MFR2.16が7~20の範囲にある。(ただし、MFR10は、ASTM D1238の方法により190℃、10kg荷重で測定したメルトフローレートであり、MFR2.16は、ASTM D1238の方法により190℃、2.16kg荷重で測定したメルトフローレートである。)
(c)密度が0.875~0.910g/cm3の範囲にある。
(d)ASTM D1238の方法により190℃、2.16kg荷重で測定したメルトフローレート(MFR2.16)が、0.01~200g/10分の範囲にある。
【0011】
〔2〕
前記エチレン系共重合体(A)が、エチレン由来の構成単位の含有量が60~98mol%の範囲にあり、炭素原子数3~20のα-オレフィン由来の構成単位の含有量が2~40mol%の範囲にある共重合体であることを特徴とする〔1〕に記載のエチレン系共重合体組成物。
〔3〕
前記エチレン系共重合体(A)の融点が、50~120℃の範囲であることを特徴とする〔1〕または〔2〕に記載のエチレン系共重合体組成物。
【0012】
〔4〕
前記エチレン系共重合体(A)がエチレン・1-ブテン共重合体であることを特徴とする〔1〕~〔3〕のいずれかに記載のエチレン系共重合体組成物。
〔5〕
前記エチレン系共重合体(A)と前記エチレン系共重合体(B)との質量比[(A)/(B)]が、5/95~80/20の範囲であることを特徴とする〔1〕~〔4〕のいずれかに記載のエチレン系共重合体組成物。
【0013】
〔6〕
さらにエチレン・極性モノマー共重合体(C)を含むことを特徴する〔1〕~〔5〕のいずれかに記載のエチレン系共重合体組成物。
〔7〕
前記エチレン系共重合体(A)と前記エチレン・極性モノマー共重合体(C)との質量比[(A)/(C)]が1/99~39/61の範囲であることを特徴とする〔6〕に記載のエチレン系共重合体組成物。
【0014】
〔8〕
さらに発泡剤(D)、架橋剤(E)、またはそれらの組合せを含むことを特徴とする〔1〕~〔7〕のいずれかに記載のエチレン系共重合体組成物。
〔9〕
さらに架橋助剤(F)を含むことを特徴とする〔1〕~〔8〕のいずれかに記載のエチレン系共重合体組成物。
【0015】
〔10〕
〔8〕または〔9〕に記載のエチレン系共重合体組成物を架橋発泡させて得られることを特徴とする発泡体。
〔11〕
〔10〕に記載の発泡体からなる層と、ポリオレフィン、ポリウレタン、ゴム、皮革および人工皮革からなる群から選ばれる少なくとも一種の素材からなる層とを有することを特徴とする積層体。
【0016】
〔12〕
〔10〕に記載の発泡体または〔11〕に記載の積層体を用いてなることを特徴とする履物。
〔13〕
〔10〕記載の発泡体または〔11〕に記載の積層体を用いてなることを特徴とする履物用部品。
【0017】
〔14〕
前記履物用部品が、ミッドソール、インナーソールまたはソールであることを特徴とする〔13〕に記載の履物用部品。
〔15〕
〔1〕~〔9〕のいずれか記載のエチレン系共重合体組成物を発泡させる工程を含む発泡体の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ソールなどの履物用部品の用途に好適であり、軽量性、熱収縮性、圧縮永久歪、機械強度等の特性にバランスよく優れた架橋発泡体を製造し得る組成物、該組成物を用いた発泡体、積層体、およびそれらを用いた履物用部品、履物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について具体的に説明する。
<エチレン系共重合体組成物>
本発明に係るエチレン系共重合体組成物は、後述するエチレン系共重合体(A)と、エチレン系共重合体(B)とを含む。また必要に応じて、エチレン・極性モノマー共重合体(C)、発泡剤(D)、架橋剤(E)、およびその他の成分をさらに含むことができる。
【0020】
エチレン系共重合体(A)
本発明に係るエチレン系共重合体(A)は、エチレンと、炭素数3~20のα-オレフィンとのみからなる共重合体であり、好ましくは、エチレンと炭素数3~10のα-オレフィンとの共重合体である。すなわち、本発明に係るエチレン系共重合体(A)は、エチレン由来の構成単位と、炭素数3~20のα-オレフィン由来の構成単位とからなる共重合体である。
【0021】
共重合成分である炭素数3~20のα-オレフィンとしては、たとえば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン等が挙げられる。炭素数3~20のα-オレフィンは、好ましくは炭素数3~10のα-オレフィンである。共重合成分である炭素数3~20のα-オレフィンは、1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。
本発明に係るエチレン系共重合体(A)としては、これらのうち特に、エチレン・1-ブテン共重合体であることが好ましい。
【0022】
エチレン系共重合体(A)を構成するα-オレフィンの種類は、エチレン系共重合体(A)を製造する際の共重合モノマーの種類により明確であるが、エチレン系共重合体中のα-オレフィンの種類は、たとえば、10mmφの資料管中で約200mgのエチレン系共重合体を1mlのヘキサクロロブタジエンに均一に溶解させた試料の13C-NMRスペクトルを、温度120℃、周波数25.05MHz、スペクトル幅1500Hz、パルス繰り返し時間4.2秒、45°パルス幅6μsecの測定条件下で測定して同定することができる。
【0023】
本発明において、エチレン系共重合体(A)のエチレン由来の構成単位の含有量(エチレン含有量)は、特に限定されるものではないが、通常全構造単位中50~99モル%、好ましくは60~98モル%、より好ましくは75~97モル%の範囲にある。また、エチレン系共重合体(A)の炭素原子数3~20のα-オレフィン由来の構成単位の含有量(α-オレフィン含有量)は、通常全構造単位中1~50モル%、好ましくは2~40モル%、より好ましくは3~25モル%の範囲にある。
【0024】
本発明に係るエチレン系共重合体(A)は、下記要件(a)、(b)、(c)および(d)を同時に満たす。
(a)1H-NMRにより求められる炭素数1000個あたりのビニル基含有量が0.003~0.3個の範囲にある。
(b)MFR10/MFR2.16が7~20の範囲にある。
(c)密度が0.875~0.910g/cm3の範囲にある。
(d)メルトフローレート(MFR2.16)が、0.01~200g/10分の範囲にある。
【0025】
以下、これらの各要件についてさらに説明する。
(a)ビニル基含有量
本発明に係るエチレン系共重合体(A)は、1H-NMRにより求められる炭素数1000個あたりのビニル基含有量が、0.003~0.3個、好ましくは0.01~0.2個、より好ましくは0.02~0.1個、さらに好ましくは0.025~0.09個の範囲にある。
ビニル基含有量(ビニル型二重結合量)の具体的な測定方法は、後述する実施例の測定・評価方法において詳述する。
【0026】
本発明に係るエチレン系共重合体(A)中において、ビニル基は通常共重合体の末端部に存在する。本発明に係るエチレン系共重合体(A)は、炭素数1000個あたりのビニル基の含有量が上記の範囲であり、架橋性を有する。ビニル基の含有量が上記範囲にあると、得られる成形体の機械的強度が優れるため好ましい。ビニル基の含有量が、エチレン系共重合体(A)の炭素数1000個あたり0.3個を越えて多いと、共重合体のビニル基量が多くなりすぎ、加熱成形時の架橋や重合体主鎖の切断が過度に起こりやすくなり、成形加工時のMFR2.16の変動や、やけ等の問題を生じることがある。
【0027】
(b)MFR 10 /MFR 2.16
本発明に係るエチレン系共重合体(A)は、MFR10/MFR2.16が、7~20、好ましくは7.2~15、より好ましくは7.5~12の範囲にある。ここで、MFR10は、ASTM D1238の方法により190℃、10kg荷重で測定したメルトフローレート(g/10分)であり、MFR2.16は、ASTM D1238の方法により190℃、2.16kg荷重で測定したメルトフローレート(g/10分)である。
【0028】
MFR10/MFR2.16は、共重合体の長鎖分岐の程度の指標の一つとなると考えられている値であり、MFR10/MFR2.16値が上記の範囲では、長鎖分岐を有することが特定される。MFR10/MFR2.16値が7未満である場合には、長鎖分岐が少ないことが表される。エチレン系共重合体のMFR10/MFR2.16値が7未満では、これを多く含む組成物から架橋発泡体を製造する場合に、得られる架橋発泡体の形状の精度が低いものとなり、架橋発泡体の寸法にばらつきが出る場合がある。またエチレン系共重合体のMFR10/MFR2.16値が20を超えて大きすぎる場合には、強度などの物性が低下する場合がある。
【0029】
(c)密度
本発明に係るエチレン系共重合体(A)は、密度が0.875~0.910g/cm3、好ましくは0.876~0.910g/cm3、より好ましくは0.876~0.908g/cm3の範囲にある。なお、エチレン系共重合体(A)の密度は、ASTM D1505により23℃で測定した値である。密度がこのような範囲を満たす場合には、得られる成形体や架橋発泡体が、柔軟性と強度のバランスや、剛性と耐衝撃強度のバランスに優れるため好ましい。
【0030】
(d)メルトフローレート(MFR 2.16
本発明に係るエチレン系共重合体(A)は、ASTM D1238の方法により190℃、2.16kg荷重で測定したメルトフローレート(MFR2.16)が、0.01~200g/10分の範囲にあり、好ましくは0.1~100g/10分、より好ましくは0.1~40g/10分、さらに好ましくは0.1~25g/10分、特に好ましくは0.1~10g/10分の範囲であるのが望ましい。
【0031】
エチレン系共重合体(A)のメルトフローレート(MFR2.16)は、分子量が大きいほど小さくなる傾向を有する。分子量の調節方法については「エチレン系共重合体(A)の製造」の項で述べる。MFR2.16が上記上限値以下であることは、得られる成形体の強度が向上する点で好ましく、MFR2.16が上記下限値以上であることは、エチレン系重合体(A)の溶融成形時の流動性が向上する点で好ましい。
【0032】
(e)Mw/Mn
本発明に係るエチレン系共重合体(A)は、特に限定されるものではないが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定値から求められる重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比として算出される分子量分布(Mw/Mn)が、好ましくは1.5~3.5、より好ましくは1.5~3.0である。Mw/Mnは、オレフィン重合用触媒の項で記したとおりに重合用触媒を適切に選択することで上記範囲内にすることができる。また、上記範囲内にあることは、溶融成形性および得られる成形体の強度が向上する点で好ましい。
【0033】
(f)融点(Tm)
本発明に係るエチレン系共重合体(A)は、特に限定されるものではないが、DSCの吸熱曲線から求められる融点(Tm)が、通常40~130℃、好ましくは50~120℃、より好ましくは55~110℃の範囲である。エチレン系共重合体(A)の融点が上記範囲であると、反発弾性と熱収縮のバランスの点で好ましい。
【0034】
<エチレン系共重合体(A)の製造方法>
本発明に係るエチレン系共重合体(A)は、上述の要件(a)、(b)、(c)および(d)を満たすものであればよく、その製造方法を特に限定するものではないが、たとえば、オレフィン重合用触媒の存在下に、エチレンと、炭素数3~20のα-オレフィンの少なくとも一種とを共重合させることにより好適に製造することができる。
【0035】
・オレフィン重合用触媒
本発明のエチレン系共重合体(A)は、上述した特性を有するものであり、その製造方法は何ら限定されるものではないが、たとえば、下記触媒成分〔A〕および〔B〕からなるオレフィン重合用触媒の存在下に、エチレンと、炭素数3~20のα-オレフィンから選ばれる1種以上とを共重合することにより製造することができる。
〔A〕下記一般式[I]で表される架橋型メタロセン化合物。
【0036】
【化1】
(式[I]中、Mは遷移金属を表し、pは遷移金属の原子価を表し、Xは同一でも異なっていてもよく、それぞれは水素原子、ハロゲン原子または炭化水素基を表し、R1およびR2は同一でも異なっていてもよいMに配位したπ電子共役配位子を表し、QはR1とR2とを架橋する2価の基を表す。)
【0037】
〔B〕(b-1)有機アルミニウムオキシ化合物、
(b-2)前記メタロセン化合物〔A〕と反応してイオン対を形成する化合物、および
(b-3)有機アルミニウム化合物
から選ばれる少なくとも1種の化合物。
【0038】
共重合は、たとえば、このようなオレフィン重合用触媒の存在下に、エチレンおよびα-オレフィンから選ばれる1種以上のモノマーを0~200℃の温度で溶媒の共存下で溶液重合することによって行うことができる。
【0039】
しかしながら本発明に係るエチレン系共重合体(A)は、上述した特性を満たす限り上記製造方法には何ら限定されるものではなく、たとえば、共重合において上記式[I]とは異なる構造のメタロセン化合物を使用しても良いし、前記触媒成分〔B〕以外の助触媒を使用してもよいし、公知の二種類以上のエチレン系共重合体を用いて、反応器ブレンドや物理ブレンド等の手法によって調製してもよい。
【0040】
以下、触媒成分〔A〕および〔B〕を含むオレフィン重合用触媒の存在下に、エチレンと、炭素数3~20のα-オレフィンから選ばれる1種以上とを共重合する、エチレン系共重合体(A)を製造する上述の方法についてさらに説明する。
【0041】
触媒成分〔A〕
触媒成分〔A〕は、上記式[I]で表される架橋型メタロセン化合物である。上記式[I]中、Mで表される遷移金属としては、たとえば、Zr、Ti、Hf、V、Nb、TaおよびCrが挙げられ、好ましい遷移金属はZr、TiまたはHfであり、さらに好ましい遷移金属はZrまたはHfである。
【0042】
一般式[I]中、R1およびR2で表されるπ電子共役配位子としては、η-シクロペンタジエニル構造、η-ベンゼン構造、η-シクロヘプタトリエニル構造、およびη-シクロオクタテトラエン構造を有する配位子が挙げられ、特に好ましい配位子はη-シクロペンタジエニル構造を有する配位子である。η-シクロペンタジエニル構造を有する配位子として、たとえば、シクロペンタジエニル基、インデニル基、水素化インデニル基、フルオレニル基などが挙げられる。これらの基は、ハロゲン原子、アルキル、アリール、アラルキル、アルコキシ、アリールオキシなどの炭化水素基、トリアルキルシリル基などの炭化水素基含有シリル基、鎖状または環状アルキレン基などでさらに置換されていてもよい。
【0043】
一般式[I]中、Qで表されるR1とR2とを架橋する基は、2価の基であれば特に限定されないが、たとえば、直鎖または分枝鎖アルキレン基、非置換または置換シクロアルキレン基、アルキリデン基、非置換または置換シクロアルキリデン基、非置換または置換フェニレン基、シリレン基、ジアルキル置換シリレン基、ゲルミル基、ジアルキル置換ゲルミル基などが挙げられる。
【0044】
触媒成分〔A〕としては、後述する実施例で用いるメタロセン錯体を具体的に例示することができるが、これらの化合物に何ら限定されるものではない。
このような触媒成分〔A〕は、触媒成分〔B〕とともにオレフィン重合用触媒として用いるのが好ましい。
【0045】
触媒成分〔B〕
触媒成分〔A〕を、エチレン系共重合体(A)を製造するためのオレフィン重合触媒の成分として用いる場合、オレフィン重合触媒は、(b-1)有機アルミニウムオキシ化合物、(b-2)触媒成分〔A〕と反応してイオン対を形成する化合物、および(b-3)有機アルミニウム化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物から構成される触媒成分〔B〕を含むことが好ましい。ここで、触媒成分〔B〕は、重合活性と生成オレフィン重合体の性状の視点から、次の[c1]~[c4]のいずれかの態様で好ましく用いられる。
[c1] (b-1)有機アルミニウムオキシ化合物のみ、
[c2] (b-1)有機アルミニウムオキシ化合物と(b-3)有機アルミニウム化合物、
[c3] (b-2)触媒成分〔A〕と反応してイオン対を形成する化合物と(b-3)有機アルミニウム化合物、
[c4] (b-1)有機アルミニウムオキシ化合物と(b-2) 触媒成分〔A〕と反応してイオン対を形成する化合物。
【0046】
ただし、触媒成分〔A〕として、一般式[I]においてQがシリレン基であるメタロセン化合物を用いる場合は、〔B〕成分としては、(b-2)触媒成分〔A〕と反応してイオン対を形成する化合物が使用されることはなく、上記の好ましい〔B〕成分; [c1]~[c4]においても、[c1]と[c2]のみが採用される。
【0047】
以下、触媒成分〔B〕を構成しうる各成分について具体的に説明する。
(b-1)有機アルミニウムオキシ化合物
有機アルミニウムオキシ化合物(b-1)としては、従来公知のアルミノキサンをそのまま使用できる。具体的には、下記一般式[II]および/または一般式[III]で表される化合物が挙げられる。
【0048】
【化2】
(式[II]または[III]中、Rは炭素数1~10の炭化水素基、nは2以上の整数を示す。)で代表される化合物を挙げることができ、特にRがメチル基であるメチルアルミノキサンでnが3以上、好ましくは10以上のものが利用される。(一般式[II]または[III]においてRがメチル基である有機アルミニウムオキシ化合物を、以下「メチルアルミノキサン」と呼ぶ場合がある。)
【0049】
また、有機アルミニウムオキシ化合物(b-1)としては、飽和炭化水素に溶解するメチルアルミノキサン類縁体を用いることも好ましく、たとえば下記一般式[IV]のような修飾メチルアルミノキサンを例示できる。
【0050】
【化3】
(式[IV]中、Rは炭素数2~20の炭化水素基、m、nは2以上の整数を示す。)
【0051】
前記一般式[IV]で表わされる修飾メチルアルミノキサンは、トリメチルアルミニウムとトリメチルアルミニウム以外のアルキルアルミニウムを用いて調製され(例えば、US4960878やUS5041584等に製造法が開示)、東ソー・ファインケム社等メーカーからトリメチルアルミニウムとトリイソブチルアルミニウムを用いて調製された、Rがイソブチル基であるものがMMAO、TMAOといった商品名で商業生産されている(例えば、「東ソー研究・技術報告」第47巻55(2003)参照)。
【0052】
さらに有機アルミニウムオキシ化合物(b-1)としては、特開平2-78687号公報に例示されているベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物を用いてもよく、下記一般式[V]で表されるボロンを含んだ有機アルミニウムオキシ化合物を用いてもよい。
【0053】
【化4】
(式[V]中、Rcは炭素原子数が1~10の炭化水素基を示す。Rdは、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子または炭素原子数が1~10の炭化水素基を示す。)
なお、上述した(b-1)有機アルミニウムオキシ化合物中には若干の有機アルミニウム化合物が混入していても差し支えない。
【0054】
(b-2)触媒成分〔A〕と反応してイオン対を形成する化合物
上記触媒成分〔A〕と反応してイオン対を形成する化合物(b-2)(以下、「イオン性化合物(b-2)」と略称する場合がある。)としては、特表平1-501950号公報、特表平1-502036号公報、特開平3-179005号公報、特開平3-179006号公報、特開平3-207703号公報、特開平3-207704号公報、USP5321106号などに記載されたルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物などを挙げることができる。さらに、イオン性化合物(b-2)としては、ヘテロポリ化合物およびイソポリ化合物も挙げることができる。
【0055】
本発明において、好ましく採用されるイオン性化合物(b-2)は、下記一般式[VI]で表される化合物である。
【0056】
【化5】
【0057】
式[VI]中、Re+としては、H+、カルベニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプチルトリエニルカチオン、遷移金属を有するフェロセニウムカチオンなどが挙げられる。Rf~Riは、互いに同一でも異なっていてもよく、有機基、好ましくはアリール基である。
【0058】
前記カルベニウムカチオンとして具体的には、トリフェニルカルベニウムカチオン、トリス(メチルフェニル)カルベニウムカチオン、トリス(ジメチルフェニル)カルベニウムカチオンなどの三置換カルベニウムカチオンなどが挙げられる。
【0059】
前記アンモニウムカチオンとして具体的には、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリ(n-プロピル)アンモニウムカチオン、トリイソプロピルアンモニウムカチオン、トリ(n-ブチル)アンモニウムカチオン、トリイソブチルアンモニウムカチオンなどのトリアルキルアンモニウムカチオン、N, N-ジメチルアニリニウムカチオン、N, N-ジエチルアニリニウムカチオン、N, N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムカチオンなどのN, N-ジアルキルアニリニウムカチオン、ジイソプロピルアンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオンなどのジアルキルアンモニウムカチオンなどが挙げられる。
【0060】
前記ホスホニウムカチオンとして具体的には、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリス(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリス(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオンなどのトリアリールホスホニウムカチオンなどが挙げられる。
【0061】
上記のうち、Re+としては、カルベニウムカチオン、アンモニウムカチオンなどが好ましく、特にトリフェニルカルベニウムカチオン、N, N-ジメチルアニリニウムカチオン、N, N-ジエチルアニリニウムカチオンが好ましい。
【0062】
カルベニウム塩であるイオン性化合物(b-2)としては、具体的には、トリフェニルカルベニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリス(4-メチルフェニル)カルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリス(3,5-ジメチルフェニル)カルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどを挙げることができる。
【0063】
アンモニウム塩であるイオン性化合物(b-2)としては、トリアルキル置換アンモニウム塩、N,N-ジアルキルアニリニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩などを挙げることができる。
【0064】
トリアルキル置換アンモニウム塩であるイオン性化合物(b-2)としては、具体的には、たとえばトリエチルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラフェニルボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(p-トリル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(o-トリル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(2,4-ジメチルフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(3,5-ジメチルフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(4-トリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(o-トリル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラフェニルボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(p-トリル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(o-トリル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(2,4-ジメチルフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(3,5-ジメチルフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(4-トリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムなどが挙げられる。
【0065】
N,N-ジアルキルアニリニウム塩であるイオン性化合物(b-2)としては、具体的には、たとえばN,N-ジメチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラキス(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0066】
ジアルキルアンモニウム塩として具体的には、たとえばジ(1-プロピル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラフェニルボレートなどが挙げられる。
【0067】
その他のイオン性化合物(b-2)としては、本出願人によって開示(特開2004-51676号公報)されているイオン性化合物も制限無く使用が可能である。
上記のイオン性化合物(b-2)は、1種単独で用いてもよく、2種以上混合して用いることもできる。
【0068】
(b-3) 有機アルミニウム化合物
有機アルミニウム化合物(b-3)としては、例えば下記一般式[VII]で表される有機アルミニウム化合物、下記一般式[VIII]で表される第1族金属とアルミニウムとの錯アルキル化物などを挙げることができる。
【0069】
Ra mAl(ORbnHpXq … [VII]
(式[VII]中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+p+q=3である。)
【0070】
上記一般式[VII]で表される有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリn-ブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウムなどのトリn-アルキルアルミニウム;
トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリsec-ブチルアルミニウム、トリtert-ブチルアルミニウム、トリ2-メチルブチルアルミニウム、トリ3-メチルヘキシルアルミニウム、トリ2-エチルヘキシルアルミニウムなどのトリ分岐鎖アルキルアルミニウム;
トリシクロヘキシルアルミニウム、トリシクロオクチルアルミニウムなどのトリシクロアルキルアルミニウム;
トリフェニルアルミニウム、トリトリルアルミニウムなどのトリアリールアルミニウム;
ジイソプロピルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどのジアルキルアルミニウムハイドライド;
一般式(i-C4H9xAly(C5H10z (式中、x、y、zは正の数であり、z≦2xである。)などで表されるイソプレニルアルミニウムなどのアルケニルアルミニウム;
イソブチルアルミニウムメトキシド、イソブチルアルミニウムエトキシドなどのアルキルアルミニウムアルコキシド;
ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジブチルアルミニウムブトキシドなどのジアルキルアルミニウムアルコキシド;
エチルアルミニウムセスキエトキシド、ブチルアルミニウムセスキブトキシドなどのアルキルアルミニウムセスキアルコキシド;
一般式Ra 2.5Al(ORb0.5などで表される平均組成を有する部分的にアルコキシ化されたアルキルアルミニウム;
ジエチルアルミニウムフェノキシド、ジエチルアルミニウム(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシド)などのアルキルアルミニウムアリーロキシド;
ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジブチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジイソブチルアルミニウムクロリドなどのジアルキルアルミニウムハライド;
エチルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミドなどのアルキルアルミニウムセスキハライド;
エチルアルミニウムジクロリドなどのアルキルアルミニウムジハライドなどの部分的にハロゲン化されたアルキルアルミニウム;
ジエチルアルミニウムヒドリド、ジブチルアルミニウムヒドリドなどのジアルキルアルミニウムヒドリド;
エチルアルミニウムジヒドリド、プロピルアルミニウムジヒドリドなどのアルキルアルミニウムジヒドリドなどその他の部分的に水素化されたアルキルアルミニウム;
エチルアルミニウムエトキシクロリド、ブチルアルミニウムブトキシクロリド、エチルアルミニウムエトキシブロミドなどの部分的にアルコキシ化およびハロゲン化されたアルキルアルミニウムなどを挙げることができる。
【0071】
M2AlRa 4 … [VIII]
(式[VIII]中、M2はLi、NaまたはKを示し、Raは炭素原子数が1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示す。)で表される周期律表第1族金属とアルミニウムとの錯アルキル化物。このような化合物としては、LiAl(C2H54、LiAl(C7H154 などを例示することができる。
【0072】
また、上記一般式[VII]で表される化合物に類似する化合物も使用することができ、例えば窒素原子を介して2以上のアルミニウム化合物が結合した有機アルミニウム化合物を挙げることができる。このような化合物として具体的には、(C2H52AlN(C2H5)Al(C2H52などを挙げることができる。
【0073】
(b-3)有機アルミニウム化合物としては、入手容易性の点から、トリメチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムが好ましく用いられる。
【0074】
・エチレン系共重合体(A)の製造
本発明に係るエチレン系共重合体(A)は、上述のオレフィン重合用触媒の存在下に、エチレンと、炭素数3~20のα-オレフィンの少なくとも一種とを共重合させることにより好適に製造することができる。共重合は、たとえば、溶媒の共存下で溶液重合することによって行うことができる。ここで重合温度は、特に限定されるものではないが、たとえば140℃以上、好ましくは150℃以上とすることができる。このような温度で共重合反応を行うと、得られるエチレン系共重合体(A)のMFR10/MFR2.16を大きくすることができ、またビニル基含有量を多いものとすることができるため好ましい。
【0075】
重合の際には、各成分の使用法、添加順序は任意に選ばれるが、例えば触媒成分〔A〕および触媒成分〔B〕を任意の順序で重合器に添加する方法を例示することができる。
上記方法においては、各触媒成分の2つ以上が予め接触されていてもよい。
【0076】
上記のようなオレフィン重合用触媒を用いて、エチレンと炭素数3~20のα-オレフィンの少なくとも一種との共重合を行い、本発明のエチレン系共重合体(A)を製造する場合、触媒成分〔A〕は、反応容積1リットル当り、通常10-9~10-1モル、好ましくは10-8~10-2モルになるような量で用いられる。
【0077】
成分(b-1)は、成分(b-1)と、成分〔A〕中の全遷移金属原子(M)とのモル比[(b-1)/(M)]が通常1~10000、好ましくは10~5000となるような量で用いられる。成分(b-2)は、成分〔A〕中の全遷移金属(M)とのモル比[(b-2)/(M)]が、通常0.5~50、好ましくは1~20となるような量で用いられる。成分(b-3)は、重合容積1リットル当り、通常0~5ミリモル、好ましくは約0~2ミリモルとなるような量で用いられる。
【0078】
ここで、エチレンと、炭素数3~20のα-オレフィンとの仕込みモル比は、目的とするエチレン系共重合体(A)の特性に応じて適宜選択すればよく、特に限定されないが、通常、エチレン:α-オレフィン=10:90~99.9:0.1、好ましくはエチレン:α-オレフィン=30:70~99.9:0.1、さらに好ましくはエチレン:α-オレフィン=50:50~95.0:5.0である。
【0079】
炭素数3~20のα-オレフィンとしては、直鎖状または分岐状のα-オレフィン、例えばプロピレン、1-ブテン、2-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセンなどを挙げることができる。これらのα-オレフィンの中では、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテンおよび1-オクテンが特に好ましく用いられる。本発明では、これらのうち炭素数3~10のα-オレフィンがより好ましく用いられる。
【0080】
エチレン系共重合体(A)の製造に好ましく採用される「溶液重合」とは、共重合反応に不活性な炭化水素溶媒中にポリマーが溶解した状態で重合を行う方法の総称である。本発明に関わる溶液重合における重合温度は、通常0~200℃程度の範囲とすることができるが、好ましくは140℃以上、より好ましくは150℃以上とすることが望ましい。
【0081】
本発明に関わる溶液重合においては、重合温度が0℃に満たない場合、その重合活性は極端に低下するので生産性の点で実用的でなく、さらにエチレン系共重合体(A)のビニル基含量が低下する場合がある。また、0℃以上の重合温度領域では温度が高くなるに従い、重合時の溶液粘度が低下し、重合熱の除熱も容易となり、さらに、エチレン系共重合体(A)のビニル基含量が増加する。しかしながら、重合温度が200℃を超えると、重合活性が極端に低下する場合もある。本発明に係るエチレン系共重合体(A)は、比較的高いMFR10/MFR2.16値を有し、ビニル基含量が比較的多いものであることから140℃以上、好ましくは150℃以上の比較的高温で共重合を行うことが好ましい。
【0082】
重合圧力は、通常常圧~10MPaゲージ圧、好ましくは常圧~8MPaゲージ圧の条件下であり、共重合は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。反応時間(共重合反応が連続法で実施される場合には平均滞留時間)は、触媒濃度、重合温度などの条件によっても異なり適宜選択することができるが、通常1分間~3時間、好ましくは10分間~2.5時間である。さらに重合を反応条件の異なる2段以上に分けて行うことも可能である。得られるエチレン系共重合体(A)の分子量は、重合系中の水素濃度や重合温度を変化させることによっても調節することができる。さらに、使用する触媒成分〔B〕の量により調節することもできる。重合系に水素を添加する場合、その量は生成するエチレン系共重合体1kgあたり0.001~5,000NL程度が適当である。また、得られるエチレン系共重合体(A)のビニル基量は、重合温度を高くすること、水素添加量を極力少なくすることで増加させることができる。また、得られるエチレン系共重合体(A)のMFR10/MFR2.16は、大きいほど長鎖分機構造を多く含有することを表す指標となるが、後述の実施例のような配位重合の場合、エチレン系共重合体(A)中の長鎖分岐構造は、β-水素脱離反応により生成した末端ビニル基を有する分子鎖(マクロモノマー)が、再挿入することにより生成すると考えられている。このため、溶液中のマクロモノマー濃度とエチレン濃度との比([マクロモノマー]/[エチレン])を増減させることで、エチレン系共重合体(A)のMFR10/MFR2.16の値を制御することができる。一般的に[マクロモノマー]/[エチレン]が高いとエチレン系重合体中の長鎖分岐量は増加し、[マクロモノマー]/[エチレン]が低いとエチレン系重合体中の長鎖分岐量は低下する。溶液中の[マクロモノマー]/[エチレン]を増減させる手法には具体的には以下の[1]~[4]のような方法が挙げられる。
【0083】
[1] 重合温度
重合温度が高いほどβ-水素脱離反応は起こり易くなる。そのため、重合温度を高くすれば、[マクロモノマー]/[エチレン]が大きくなり、エチレン系共重合体中の長鎖分岐量は増加する。
【0084】
[2] ポリマー濃度
溶液中のポリマー濃度を高くすれば、相対的にマクロモノマー濃度も高くなるため、[マクロモノマー]/[エチレン]が大きくなり、エチレン系共重合体中の長鎖分岐量は増加する。
【0085】
[3] エチレン転化率
エチレン転化率を高くすれば、溶液中のエチレン濃度が低くなるため、[マクロモノマー]/[エチレン]が大きくなり、エチレン系共重合体中の長鎖分岐量は増加する。
【0086】
[4] 溶媒種
重合溶媒を低沸点の溶媒にすると、溶液中のエチレン濃度が低くなるため、[マクロモノマー]/[エチレン]が大きくなり、エチレン系共重合体中の長鎖分岐量は増加する。
【0087】
他にも、β-水素脱離反応を制御する以外にAlへの連鎖移動反応等を制御することによって[マクロモノマー]/[エチレン])を増減させ、エチレン系重合体中の長鎖分岐量を変化させることもできる。
【0088】
溶液重合において用いられる溶媒は通常、不活性炭化水素溶媒であり、好ましくは常圧下における沸点が50℃~200℃の飽和炭化水素である。具体的には、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素が挙げられる。なおベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類やエチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素も本発明の高温溶液重合に関わる「不活性炭化水素溶媒」の範疇に入り、その使用を制限するものではない。前記したように、本発明に係る高温溶液重合においては、従来繁用されてきた芳香族炭化水素溶解タイプの有機アルミニウムオキシ化合物のみならず、脂肪族炭化水素や脂環族炭化水素に溶解するMMAOのような修飾メチルアルミノキサンを使用できる。この結果、溶液重合用の溶媒として脂肪族炭化水素や脂環族炭化水素を採用すれば、重合系内や生成するエチレン系重合体中に芳香族炭化水素が混入する可能性をほぼ完全に排除することが可能となった。すなわち、本発明に関わる高温溶液重合方法は、環境負荷を軽減化でき人体健康への影響を最小化できるという特徴も有するのである。
【0089】
物性値のばらつきを抑制するため、重合反応により得られたエチレン系共重合体(A)および所望により添加される他の成分は、任意の方法で溶融され、混練、造粒などを施されるのが好ましい。
【0090】
・グラフト変性
本発明のエチレン系共重合体(A)は、一部または全部を極性モノマーによりグラフト変性して用いても良い。
【0091】
この極性モノマーとしては、水酸基含有エチレン性不飽和化合物、アミノ基含有エチレン性不飽和化合物、エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物、芳香族ビニル化合物、不飽和カルボン酸あるいはその誘導体、ビニルエステル化合物、塩化ビニル、カルボジイミド化合物などが挙げられる。
【0092】
極性モノマーとしては、特に不飽和カルボン酸またはその誘導体が特に好ましい。不飽和カルボン酸またはその誘導体としては、カルボン酸基を1以上有する不飽和化合物、カルボン酸基を有する化合物とアルキルアルコールとのエステル、無水カルボン酸基を1以上有する不飽和化合物等を挙げることができ、不飽和基としては、ビニル基、ビニレン基、不飽和環状炭化水素基などを挙げることができる。
【0093】
具体的な化合物としては、例えばアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ナジック酸〔商標〕(エンドシス-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸)等の不飽和カルボン酸;またはその誘導体、例えば酸ハライド、アミド、イミド、無水物、エステル等が挙げられる。かかる誘導体の具体例としては、例えば塩化マレニル、マレイミド、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、グリシジルマレエート等が挙げられる。
【0094】
これらの不飽和カルボン酸および/またはその誘導体は、1種単独で使用することもできるし、2種以上を組み合せて使用することもできる。これらの中では、不飽和ジカルボン酸またはその酸無水物が好適であり、特にマレイン酸、ナジック酸またはこれらの酸無水物が好ましく用いられる。
【0095】
変性は、被変性体に、極性モノマーをグラフト重合させることにより得られる。被変性体に、上記のような極性モノマーをグラフト重合させる際には、極性モノマーは、被変性体100質量部に対して、通常1~100質量部、好ましくは5~80質量部の量で使用される。このグラフト重合は、通常ラジカル発生剤の存在下に行なわれる。
【0096】
ラジカル発生剤としては、例えば後述するラジカル発生剤(C)において挙げるものと同じものを用いることができる。
【0097】
ラジカル発生剤は、被変性体および極性モノマーとそのまま混合して使用することもできるが、少量の有機溶媒に溶解してから使用することもできる。この有機溶媒としては、ラジカル発生剤を溶解し得る有機溶媒であれば特に限定することなく用いることができる。
【0098】
また被変性体に極性モノマーをグラフト重合させる際には、還元性物質を用いてもよい。還元性物質を用いると、極性モノマーのグラフト量を向上させることができる。被変性体の極性モノマーによるグラフト変性は、従来公知の方法で行うことができる。
【0099】
このようにして得られる変性体の変性量(極性モノマーのグラフト量)は、変性体を100質量%とした場合に通常0.1~50質量%、好ましくは0.2~30質量%、さらに好ましくは0.2~10質量%であることが望ましい。
【0100】
本発明のエチレン系共重合体(A)の一部または全部を極性モノマーによりグラフト変性して用いると、他の樹脂との接着性、相溶性に優れ、また得られた成形体表面の濡れ性が改良される場合がある。
【0101】
また、極性モノマー、例えば不飽和カルボン酸および/またはその誘導体の含有量が上記範囲にあることにより、本発明のエチレン系共重合体(A)の一部または全部をグラフト変性して用いた場合、極性基含有樹脂(たとえばポリエステル、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリアミド、PMMA、ポリカーボネート等)に対して高い接着強度を示す。
【0102】
また、本発明のエチレン系共重合体(A)の一部または全部をグラフト変性して得られたグラフト変性エチレン系共重合体(A)には、該変性物の有する特性を損なわない範囲で、他の重合体、例えば熱可塑性樹脂やエラストマー等を配合することができる。それらの配合は、グラフト変性段階でも変性後の混合であってもよい。
【0103】
エチレン系共重合体(B)
本発明に係るエチレン系共重合体(B)は、エチレンと、炭素数3~20のα-オレフィンとのみを共重合してなる共重合体であり、好ましくは、エチレンと、炭素数3~10のα-オレフィンとのみを共重合してなる共重合体である。すなわち、本発明に係るエチレン系共重合体(B)は、エチレン由来の構成単位と、炭素数3~20のα-オレフィン由来の構成単位とからなる共重合体であり、好ましくは、エチレン由来の構成単位と、炭素数3~10のα-オレフィン由来の構成単位とからなる共重合体である。共重合成分である炭素数3~20のα-オレフィンの種類、およびその同定方法は、エチレン系共重合体(A)と同様である。
【0104】
本発明において、エチレン系共重合体(B)のエチレン由来の構成単位の含有量(エチレン含有量)は、特に限定されるものではないが、通常全構造単位中50~99モル%、
好ましくは60~98モル%、より好ましくは70~95モル%の範囲にある。また、エチレン系共重合体(B)の炭素原子数3~20のα-オレフィン由来の構成単位の含有量(α-オレフィン含有量)は、通常全構造単位中1~50モル%、好ましくは2~40モル%、より好ましくは5~30モル%の範囲にある。
【0105】
本発明に係るエチレン系共重合体(B)の密度は、通常0.850~0.873g/cm3、好ましくは0.853~0.873g/cm3、より好ましくは0.855~0.870g/cm3の範囲にある。なお、エチレン系共重合体(B)の密度は、ASTM D1505により23℃で測定した値である。
【0106】
本発明に係るエチレン系共重合体(B)は、特に限定されるものではないが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定値から求められる重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比として算出される分子量分布(Mw/Mn)が、好ましくは1.5~3.5、より好ましくは1.5~3.0である。
【0107】
本発明に係るエチレン系共重合体(B)は、特に限定されるものではないが、ASTM D1238の方法により190℃、2.16kg荷重で測定したメルトフローレート(MFR2.16)が、通常0.1~100g/10分、好ましくは0.1~80g/10分、より好ましくは0.1~40g/10分の範囲であるのが望ましい。
【0108】
このようなエチレン系共重合体(B)は、低密度のエチレン・α-オレフィン共重合体を製造する公知の方法により適宜製造することができ、また、市販品を用いてもよい。本発明において、エチレン系共重合体(B)として好適に用いることのできる市販品としては、例えば、(商品名:タフマー(登録商標)、三井化学株式会社製)、(商品名:エンゲージ(登録商標)、ザ・ダウ・ケミカル社製)等が挙げられる。
【0109】
本発明のエチレン系共重合体組成物中において、エチレン系共重合体(B)の含有量は、特に限定されるものではないが、上述したエチレン系共重合体(A)との質量比[(A)/(B)]が、通常1/99~95/5、好ましくは5/95~80/20、より好ましくは10/90~75/25の範囲である。エチレン系共重合体(A)とエチレン系共重合体(B)との配合比がこのような範囲を満たす場合には、反発弾性と熱収縮、機械特性のバランスに優れるため好ましい。
【0110】
エチレン・極性モノマー共重合体(C)
本発明のエチレン系共重合体組成物は、エチレン・極性モノマー共重合体(C)を含有してもよい。
本発明に係るエチレン・極性モノマー共重合体(C)の極性モノマーとしては、不飽和カルボン酸、その塩、そのエステル、そのアミド、ビニルエステル、一酸化炭素などを例示することができる。より具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和カルボン酸、これら不飽和カルボン酸のリチウム、ナトリウム、カリウムなどの1価金属の塩やマグネシウム、カルシウム、亜鉛などの多価金属の塩、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸nブチル、アクリル酸イソオクチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソブチル、マレイン酸ジメチル等の不飽和カルボン酸エステル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのようなビニルエステル、一酸化炭素、二酸化硫黄などの一種または二種以上などを例示することができる。
【0111】
エチレン・極性モノマー共重合体(C)としてより具体的には、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体のようなエチレン・不飽和カルボン酸共重合体、前記エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のカルボキシル基の一部または全部が上記金属で中和されたアイオノマー、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸イソブチル共重合体、エチレン・アクリル酸nブチル共重合体のようなエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体、エチレン・アクリル酸イソブチル・メタクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸nブチル・メタクリル酸共重合体のようなエチレン・不飽和カルボン酸エステル・不飽和カルボン酸共重合体およびそのカルボキシル基の一部または全部が上記金属で中和されたアイオノマー、エチレン・酢酸ビニル共重合体のようなエチレン・ビニルエステル共重合体などを代表例として例示することができる。
【0112】
これらの中ではとくにエチレンと、不飽和カルボン酸、その塩、そのエステルおよび酢酸ビニルから選ばれる極性モノマーとの共重合体が好ましく、特にエチレン・(メタ)アクリル酸共重合体またはそのアイオノマーやエチレン・(メタ)アクリル酸・(メタ)アクリル酸エステル共重合体またはそのアイオノマー、エチレン・酢酸ビニル共重合体が好ましく、エチレン・酢酸ビニル共重合体が最も好ましい。
【0113】
上記エチレン・極性モノマー共重合体(C)としては、極性モノマーの種類によっても異なるが、極性モノマー含量が通常1~50質量%、とくに5~45質量%ものが好ましい。このようなエチレン・極性モノマー共重合体としてはまた、成形加工性、機械的強度などを考慮すると、190℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレートが0.05~500g/10分、とくに0.1~100g/10分のものを使用するのが好ましい。エチレンと不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸エステル、ビニルエステルなどとの共重合体は、高温、高圧下のラジカル共重合により得ることができる。またエチレンと不飽和カルボン酸の金属塩の共重合体(アイオノマー)は、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体と相当する金属化合物を反応させることによって得ることができる。
【0114】
本発明に係るエチレン・極性モノマー共重合体(C)がエチレン・酢酸ビニル共重合体の場合、エチレン・酢酸ビニル共重合体中の酢酸ビニル含有量は、通常10~30質量%、好ましくは15~30質量%、さらに好ましくは15~25質量%である。
【0115】
また、このエチレン・酢酸ビニル共重合体は、メルトフローレート(MFR;ASTM D1238,190℃、荷重2.16kg)が、通常0.1~50g/10分、好ましくは0.5~20g/10分、さらに好ましくは0.5~5g/10分である。
【0116】
本発明のエチレン系共重合体組成物において、エチレン・極性モノマー共重合体(C)は任意成分であるが、用いた場合には、得られた発泡体層がポリウレタン、ゴム、皮革等からなる他の層と接着性に優れ、積層体としても好ましい。
【0117】
特にエチレン・極性モノマー共重合体(C)がエチレンと不飽和カルボン酸の共重合体である場合、上記の割合で用いると、引き裂き強度特性およびにポリウレタン、ゴム、皮革等からなる他の層と接着性に優れる架橋発泡体を提供することができる組成物を得ることができる。
【0118】
本発明のエチレン系共重合体組成物中において、エチレン・極性モノマー共重合体(C)((C)成分)の含有量は、特に限定されるものではないが、上述したエチレン系共重合体(A)((A)成分)との質量比[(A)/(C)]が、通常1/99~39/61、好ましくは1/99~29/71、より好ましくは1/99~19/81の範囲である。(A)成分と(C)成分との配合比がこのような範囲を満たす場合には、成型性に優れるため好ましい。
【0119】
発泡剤(D)
本発明のエチレン系共重合体組成物は、必要に応じて発泡剤(D)を含んでもよい。発泡剤(D)を含有するエチレン系共重合体組成物は、発泡体、架橋発泡体の製造に好適に用いられる。
【0120】
本発明のエチレン系共重合体組成物が発泡剤(D)を含有する場合、その含有量は、発泡剤(D)の種類にもよるが、エチレン系共重合体(A)、エチレン系共重合体(B)および必要に応じてエチレン・極性モノマー共重合体(C)ならびにその他の樹脂成分の合計100質量部(すなわち全樹脂成分100質量部)に対して、発泡剤(D)が0.1~30質量部、好ましくは0.1~25質量部、さらに好ましくは0.5~20質量部の範囲であるのが望ましい。
【0121】
本発明において、発泡剤(D)としては、化学発泡剤、物理発泡剤のいずれも用いることができる。
【0122】
化学発泡剤としては、具体的には、
アゾジカルボンアミド(ADCA)、
1,1'-アゾビス(1-アセトキシ-1-フェニルエタン)、
ジメチル-2,2'-アゾビスブチレート、
ジメチル-2,2'-アゾビスイソブチレート、
2,2'-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)、
1,1'-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、
2,2'-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチル-プロピオンアミジン]等のアゾ化合物;
N,N'-ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)等のニトロソ化合物;
4,4'-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、
ジフェニルスルホン-3,3'-ジスルホニルヒドラジド等のヒドラジン誘導体;
p-トルエンスルホニルセミカルバジド等のセミカルバジド化合物;
トリヒドラジノトリアジンなどの有機系熱分解型発泡剤、さらには、
炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム等の重炭酸塩、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム等の炭酸塩;
亜硝酸アンモニウム等の亜硝酸塩、
水素化合物などの無機系熱分解型発泡剤が挙げられる。中でも、アゾジカルボンアミド(ADCA)、炭酸水素ナトリウムが特に好ましい。
【0123】
また、発泡時に化学反応を必ずしも伴わない発泡剤である物理発泡剤としては、たとえば、メタノール、エタノール、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン等の各種脂肪族炭化水素類;ジクロルエタン、ジクロルメタン、四塩化炭素等の各種塩化炭化水素類;フロン等の各種フッ化塩化炭化水素類などの有機系物理発泡剤、さらに、空気、二酸化炭素、窒素、アルゴン、水などの無機系物理発泡剤等が挙げられる。これらの中で、蒸気にする必要が無く、安価で、環境汚染、発火の可能性が極めて少ない二酸化炭素、窒素、アルゴンが最も優れている。
【0124】
本発明において発泡剤(D)として物理発泡剤を用いると、発泡剤の分解残さがないため、組成物の架橋発泡時における金型汚れを防止することができる。しかも、物理発泡剤は、粉状ではないので、混練性に優れている。また、この物理発泡剤を用いると、得られる発泡体の異臭(ADCA分解時に生成するアンモニア臭など)を防止することができる。
【0125】
また、本発明においては、発泡剤(D)として、臭気、金型汚れ等の悪影響を生じない範囲で、上記のような化学発泡剤を用いることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよく、物理発泡剤と化学発泡剤とを組み合わせて用いてもよい。
【0126】
物理発泡剤の貯蔵方法としては、小規模な生産であれば、二酸化炭素、窒素などをボンベに入った状態で使用し、射出成形機および押出成形機等に減圧弁を通して供給することができるし、またポンプ等により昇圧し、射出成形機および押出成形機等に供給する場合もある。
【0127】
また、大規模に発泡製品を製造する設備であれば、液化二酸化炭素、液化窒素などの貯蔵タンクを設置し、熱交換機を通し、気化し、配管により、減圧弁により射出成形機および押出成形機等に供給する。
また、液状の物理発泡剤の場合、貯蔵圧力としては、0.13~100MPaの範囲が
好ましい。
【0128】
上記発泡剤(D)として化学発泡剤を用いる場合、化学発泡剤は、エチレン系共重合体(A)、エチレン系共重合体(B)および必要に応じてエチレン・極性モノマー共重合体(C)ならびにその他の樹脂成分の合計100質量部(すなわち全樹脂成分100質量部)に対して、通常2~30質量部、好ましくは3~20質量部、より好ましくは5~15質量部の割合で用いられる。ただし、化学発泡剤の使用量は、使用する発泡剤の種類・グレードにより発生ガス量が異なるため、目的の発泡倍率により、適宜増減され得る。
【0129】
また、発泡剤(D)として物理発泡剤を用いる場合、物理発泡剤の添加量は、所望の発泡倍率に応じて、適宜決定されるが、エチレン系共重合体(A)、エチレン系共重合体(B)および必要に応じてエチレン・極性モノマー共重合体(C)ならびにその他の樹脂成分の合計100質量部(すなわち全樹脂成分100質量部)に対して、通常0.1~15質量部、好ましくは0.5~10質量部である。
【0130】
本発明のエチレン系共重合体組成物は、必要に応じて、発泡剤(D)とともに発泡助剤を含有してもよい。発泡助剤は、発泡剤(D)の分解温度の低下、分解促進、気泡の均一化などの作用をする。このような発泡助剤としては、酸化亜鉛(ZnO)、ステアリン酸亜鉛、サリチル酸、フタル酸、ステアリン酸、しゅう酸等の有機酸、尿素またはその誘導体などが挙げられる。
【0131】
架橋剤(E)
本発明のエチレン系共重合体組成物は、必要に応じて架橋剤(E)を含んでもよい。架橋剤(E)を含有するエチレン系共重合体組成物は、架橋成形体、架橋発泡体の製造に好適に用いられる。
【0132】
架橋剤(E)としては、架橋剤として作用するラジカル発生剤を特に制限なく用いることができる。
本発明のエチレン系共重合体組成物が架橋剤(E)を含有する場合、その含有量は、樹脂成分の特性や所望の架橋程度に応じて適宜決定されるが、エチレン系共重合体(A)、エチレン系共重合体(B)および必要に応じてエチレン・極性モノマー共重合体(C)ならびにその他の樹脂成分の合計100質量部(すなわち全樹脂成分100質量部)に対して、好ましくは0.1~2.0質量部、より好ましくは0.3~1.8質量部、さらに好ましくは0.6~1.6質量部の範囲であることが望ましい。架橋剤(E)をこのような量で含有するエチレン系共重合体組成物を用いると、適度な架橋構造を有する成形体や発泡成形体を製造することができる。
【0133】
架橋剤(E)としては、有機過酸化物が好ましく用いられ、具体的には、
ジクミルペルオキシド、
ジ-t-ブチルペルオキシド、
2,5-ジメチル-2,5-ジ-(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、
2,5-ジメチル-2,5-ジ-(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、
1,3-ビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、
1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、
n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルペルオキシ)バレレート、
ベンゾイルペルオキシド、
p-クロロベンゾイルペルオキシド、
2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、
t-ブチルペルオキシベンゾエート、
t-ブチルペルベンゾエート、
t-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、
ジアセチルペルオキシド、
ラウロイルペルオキシド、
t-ブチルクミルペルオキシドなどの有機ペルオキシドが挙げられる。これらの中で、ジクミルペルオキシドが好ましい。
【0134】
本発明のエチレン系共重合体組成物が、架橋剤(E)を含む場合には、架橋剤(E)とともに必要に応じて架橋助剤を含有することも好ましい。架橋助剤としては、例えば、硫黄、p-キノンジオキシム、p,p'-ジベンゾイルキノンジオキシム、N-メチル-N-4-ジニトロソアニリン、ニトロソベンゼン、ジフェニルグアニジン、トリメチロールプロパン-N,N'-m-フェニレンジマレイミドのようなペルオキシ架橋用助剤;あるいはジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート(TAC)、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)が挙げられる。
【0135】
また、架橋助剤としては、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタクリレート等の多官能性メタクリレートモノマー:ビニルブチラート、ビニルステアレートのような多官能性ビニルモノマーなどが挙げられる。中でも、トリアリルシアヌレート(TAC)、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)が好ましい。
【0136】
本発明のエチレン系共重合体組成物においては、このような架橋助剤は、架橋助剤と架橋剤(E)との質量比[架橋助剤/架橋剤(E)]が1/30~5/1、好ましくは1/20~3/1、さらに好ましくは1/15~2/1になる量、特に好ましくは1/10~1/1になる量で用いられることが望ましい。
【0137】
任意成分
本発明のエチレン系共重合体組成物は、本発明の目的を祖行わない範囲で、必要に応じて、上述した各成分以外の成分を任意成分として含有してもよく、たとえば、フィラー、耐熱安定剤、耐候安定剤、難燃剤、塩酸吸収剤、顔料などの各種添加剤、上述の成分(A)~(C)以外の樹脂成分等を含有してもよい。各種添加剤としては、オレフィン系樹脂に添加し得る添加剤として公知のものが挙げられる。
【0138】
エチレン系共重合体組成物の調製
本発明のエチレン系共重合体組成物は、上述した各成分を公知の方法により逐次または同時に混合して調製することができる。本発明のエチレン系共重合体組成物は、ペレット状、シート状等の形態とすることも好ましい。
【0139】
本発明のエチレン系共重合体組成物のペレットは、エチレン系共重合体(A)、エチレン系共重合体(B)、および必要に応じて、エチレン・極性モノマー共重合体(C)、発泡剤(D)、架橋剤(E)ならびに添加剤等の任意成分を、上述した割合によりヘンシェルミキサ-等で混合し、バンバリ-ミキサー、ロール、押出機等の混練機で、発泡剤(D)や架橋剤(E)が分解しない温度にて溶融可塑化し、均一に混合分散させて造粒機により調製することができる。なお架橋発泡の方法としては後述するように例えば、熱処理による架橋、電離性放射線架橋等が挙げられる。熱処理による架橋の場合には、この組成物中に、架橋剤(E)および架橋助剤(E)を含有することが好ましい。また、電離性放射線による架橋の場合には、架橋助剤を配合する場合がある。
【0140】
また、本発明のエチレン系共重合体組成物のシートは、たとえば上記のようにして得られたペレットを押出機あるいはカレンダー成形機を用いて調製することができる。あるいはエチレン系共重合体組成物を構成する各成分を、ブラベンダーなどで混練した後、カレンダーロールでシート状に成形する方法、プレス成形機でシート化する方法、または押出機を用いて混練した後Tダイまたは環状ダイを通してシート化する方法などにより、未架橋かつ未発泡状態の発泡性シートを調製することができる。
本発明のエチレン系共重合体組成物は、射出成形や発泡成形などの各種成形用途に用いることができ、また、架橋体あるいは架橋発泡体の製造に好適に用いることができる。
【0141】
<発泡体の製造>
本発明では、上述の本発明のエチレン系共重合体組成物を用いて、架橋発泡体等の発泡体を製造することができる。発泡体の製造には、発泡剤(D)、架橋剤(E)またはそれらの組み合わせを含むエチレン系共重合体組成物が好適に用いられる。
【0142】
発泡体の製造に用いられるエチレン系共重合体組成物は、未架橋かつ未発泡状態であり、溶融状態であってもよいし、また、冷却固化したペレットまたはシートであってもよい。
本発明の発泡体(非架橋または架橋発泡体)は、その製造方法については特に制限はないが、たとえば以下のような方法により調製することができる。
【0143】
たとえば、上述の本発明のエチレン系共重合体組成物からなるシートを、カレンダー成形機、プレス成形機、Tダイ押出機を用いて得ることができる。このシート成形時においては、発泡剤(D)および有機ペルオキシドなどの架橋剤(E)の分解温度以下でシート成形することが好ましく、具体的には、例えば100~130℃の、樹脂成分が溶融状態となる温度条件に設定してシート成形することが好ましい。
【0144】
エチレン系共重合体組成物からなるシートから、一次発泡体を製造する方法としては、例えば、130~200℃に保持された金型に、金型の容積に対して1.0~1.2の範囲に裁断して、金型内に挿入し、金型の型締め圧力は例えば30~300kgf/cm2とし、保持時間は例えば10~90分の条件下で、一次発泡体(非架橋または架橋発泡体)を作製する。すなわち熱処理により発泡体(非架橋または架橋発泡体)を製造する。なお保持時間は、金型の厚さに依存するため、この範囲を超えて、適宜増減され得る。
【0145】
上記(架橋)発泡体用金型は、その形状は特に制限はされないが、通常シートが得られるような形状を有している金型が用いられる。この金型は、溶融樹脂および発泡剤分解時に発生するガスが抜けないように、完全に密閉された構造とすることが好ましい。また、型枠としては、内面にテーパーが付いている型枠が樹脂の離型性の面から好ましい。
【0146】
また上記方法以外にも、エチレン系共重合体組成物を押出し機から押出し、大気中に解放すると同時に発泡させる押出し発泡法により、本発明の発泡体を製造することもできる。すなわち熱処理により発泡体を製造することができる。
【0147】
また、エチレン系重合体組成物を、発泡剤(D)および架橋剤(E)の分解温度以下で金型内に射出して、金型内で例えば130℃~200℃程度の温度に保って架橋発泡させる方法(射出発泡法)も挙げることができる。すなわち熱処理により発泡体を製造することができる。
【0148】
上記方法により得られた発泡体を、圧縮成形により所定の形状の付与を行うことができる。このときの圧縮成形条件の一例をあげると、金型温度が130~200℃、型締め圧力が30~300kgf/cm2、圧縮時間が5~60分、圧縮比が1.1~3.0、好ましくは1.3~2の範囲である。
【0149】
また、電離性放射線照射による架橋方法により架橋発泡体を得るには、たとえば、有機系熱分解型発泡剤である発泡剤(D)を含むエチレン系共重合体組成物を、有機系熱分解型発泡剤の分解温度未満の温度で溶融混練し、得られた混練物をたとえばシート状に成形し、シート状の発泡体を得て、次いで、得られたシート状の発泡体に電離性放射線を所定量照射してシート状発泡体を架橋させた後、得られたシート状の架橋発泡体を有機系熱分解型発泡剤の分解温度以上に加熱して発泡させることによって、シート状の架橋発泡体を得ることができる。すなわち熱処理により発泡体を製造することができる。電離性放射線としては、α線、β線、γ線、電子線、中性子線、X線などが用いられる。このうちコバルト-60のγ線、電子線が好ましく用いられる。
【0150】
発泡体の製品形状としては、たとえばシート状、厚物ボード状、ネット状、型物などが挙げられる。
上記のようにして得られた架橋発泡体について、圧縮成形により所定の形状の付与を行うことにより二次発泡体を製造することができる。このときの圧縮成形条件の一例をあげると、金型温度が130~200℃、型締め圧力が30~300kgf/cm2、圧縮時間が5~60分、圧縮比が1.1~3.0の範囲である。
【0151】
上記のような製造法のうちでも、エチレン系重合体組成物を熱処理して発泡体を得ることが好ましい。本発明に係る発泡体は、架橋発泡体であることが好ましい。
【0152】
本発明に係るエチレン系重合体組成物を発泡させて得られる本発明の発泡体は、比重が0.03~0.30であることが好ましい。また本発明に係る発泡体の、圧縮永久歪(CS、%)と比重(d)とは、特に制限はないが、CS≦-279×(d)+95を満たすことが、軽量でかつ圧縮永久歪が小さい発泡体を提供できる点から好ましい。この別の態様の発泡体も後述する積層体、履物または履物用部品に好ましく用いられる。
【0153】
<積層体>
本発明の積層体は、上述した本発明の発泡体からなる層と、ポリオレフィン、ポリウレタン、ゴム、皮革および人工皮革からなる群から選ばれる少なくとも一種の素材からなる層とを有する積層体である。
【0154】
上記のポリオレフィン、ポリウレタン、ゴム、皮革および人工皮革は、特に制限はなく、従来公知のポリオレフィン、ポリウレタン、ゴム、皮革、人工皮革を用いることができる。このような積層体は、特に履物ないし履物用部品の用途に好適である。
【0155】
<履物、履物用部品>
本発明の履物ないし履物用部品は、上記した、本発明の発泡体または積層体を用いてなる。履物用部品としては、たとえば靴底、靴のミッドソール、インナーソール、ソール、サンダルなどが挙げられる。本発明の履物または履物用部品は、本発明の発泡体または積層体を用いているため、軽量で、長期間の使用による変形を抑えることができる。
【実施例
【0156】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0157】
以下の実施例及び比較例において、各種物性は以下のようにして測定あるいは評価した。
[共重合体の物性評価]
二重結合量
二重結合量の定量は、エチレン・α-オレフィン共重合体の1H-NMR測定(日本電子(株)製、「ECX400P型核磁気共鳴装置」)により行った。ここで、二重結合に由来するシグナルとして、ビニル型二重結合、ビニリデン型二重結合、2置換オレフィン型二重結合および3置換オレフィン型二重結合が観測される。各シグナルの積分強度から二重結合量を定量した。なお、エチレン・α-オレフィン共重合体の主鎖メチレンシグナルをケミカルシフト基準(1.2ppm)とした。
【0158】
【化6】
各式中、*は水素原子以外の原子との結合手を示す。
【0159】
各水素原子a~eのピークは、下記付近に観測される。
・水素原子aのピーク:4.60ppm
・水素原子bのピーク:4.85ppm
・水素原子cのピーク:5.10ppm
・水素原子dのピーク:5.25ppm
・水素原子eのピーク:5.70ppm
二重結合量の定量式は、以下のとおりである。
・ビニル型二重結合量={(シグナルbの積分強度)+(シグナルeの積分強度)}/3
・ビニリデン型二重結合量=(シグナルaの積分強度)/2
・2置換オレフィン型二重結合量=(シグナルdの積分強度)/2
・3置換オレフィン型二重結合量=(シグナルcの積分強度)
【0160】
これらの結果から、炭素数1000個あたりのビニル基含有量(ビニル型二重結合量)および炭素数1000個あたりのビニリデン基含有量(ビニリデン型二重結合量)を求めた。
【0161】
密度d
密度d(g/cm3)は、ASTM D1505に従い、23℃にて求めた。
MFR
MFR(メルトフローレート、g/10分)は、ASTM D1238に従い、190℃にて求めた。2.16kg荷重での測定値をMFR2.16、10kg荷重での測定値をMFR10とした。
【0162】
分子量分布(Mw/Mn)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、オルトジクロロベンゼン溶媒、140℃にて求めた。Waters社製ゲル浸透クロマトグラフAllianceGPC-2000型を用い、以下のようにして測定した。分離カラムは、TSKgel GNH6-HTを2本、およびTSKgel GNH6-HTLを2本であり、カラムサイズはいずれも直径7.5mm、長さ300mmであり、カラム温度は140℃とし、移動相にはo-ジクロロベンゼン(和光純薬工業)および酸化防止剤としてBHT(武田薬品)0.025質量%を用いて、1.0ml/分で移動させ、試料濃度は15mg/10mlとし、試料注入量は500μlとし、検出器として示差屈折計を用いた。標準ポリスチレンは、分子量がMw<1000、およびMw>4×106については東ソー社製を用いて、1000≦Mw≦4×106についてはプレッシャーケミカル社製を用いた。
【0163】
融点(Tm)
示差走査熱量計〔SII社 DSC220〕を用いて、約5.0mgの試料を窒素雰囲気下で30℃から昇温速度10℃/minで200℃まで昇温し、その温度で10分間保持した。さらに降温速度10℃/minで30℃まで冷却し、その温度で5分間保持した後、昇温速度10℃/minで200℃まで昇温した。この2度目の昇温の際に観測される吸熱ピークを融解ピークとし、融解ピークが現れる温度を融点(Tm)として求めた。
【0164】
[架橋発泡体の物性評価]
比重
比重は、JIS K7222に従って測定した。サンプルは、発泡体が立方体であれば最大面積の平面の四辺からそれぞれ20mm以上内部、また該平行平面の表面からスキンを残した状態でサンプリングした。例えばミッドソールの場合、端部からそれぞれ20mm以上内部、略平行平面の両表面からスキンを残した状態でサンプルを調製した。
【0165】
測定は発泡体の5部位の平均とする。また発泡体の品質の均一性の尺度である、5部位の比重の測定値の最大値と最小値との差が0.08以下であることが好ましく、0.06以下であることがさらに好ましい。前記範囲が0.08を超えると、成型体品質(硬度、機械物性、圧縮永久歪など)が一定でない事を意味する。
【0166】
アスカーC硬度
アスカーC硬度は、JIS K7312-1996付属書2記載の「スプリング硬さ試験タイプC試験方法」に従って、23℃環境下にて測定を行った。
【0167】
反発弾性
反発弾性は、JIS K6255に準じて測定を行った。サンプルは上記(2)圧縮永久歪み(CS)に使用するサンプルと同じ方法で調製したサンプルを準備し、23℃雰囲気下にて測定を行った。
【0168】
層間引き裂き強度
層間引き裂き強度は、試験温度23℃環境下、試験機はインテスコー205Xを用いて測定を行った。短冊状に幅25mm、厚さ15mmに調製したサンプルをチャック間30mmにセットし、試験速度50mm/minで厚み方向に剥離した。層間引裂き強度S(N/mm)は次式にて計算した。
S=S0/S1
S0:引裂き応力(N)
S1:サンプル幅(mm)
【0169】
圧縮永久歪み(CS)
圧縮永久歪み(CS)は、JIS K6262に準じて測定を行った。サンプルは、発泡体をφ30mm、厚み15mm以上の円柱形に切り出し、円柱の2つの平行平面のそれぞれについて、該平行平面の表面から抜き出し、片方にスキンを残した状態で厚み10mmとしたものを用いた。
【0170】
なお、サンプル採取対象となる発泡体が、種々の形状の立体である場合でも、φ30mm、厚み15mm以上の円柱形に切り出し、円柱の2つの平行平面のそれぞれについて、該平行平面の表面から抜き出し、片方にスキンを残した状態で厚みを10mmとすることでサンプルとした。
【0171】
発泡体から円柱形への切り出し、および平行平面の表面からの発泡体の切り取りは円柱抜きダンベル型を使用することができる。このサンプルを、50%圧縮、50℃環境にて6時間静置し、圧縮から解放して30分後に測定した。圧縮永久歪み(CS)(%)は、以下の式により算出した。
【0172】
CS=(t0-t1)/(t0-t2)×100
t0:サンプル原厚(mm)
t1:サンプルを圧縮装置から取り出し30分後の厚み(mm)
t2:スペーサー厚み(mm)
【0173】
熱収縮率
熱収縮率は、成型後の発泡体を70℃環境にて60分熱処理し、23℃環境下に取り出し30分後に測定した。熱収縮率(Sh)(%)は、以下の式により算出した。
Sh=s1/s0×100
s0:熱処理前のサンプル縦長さ(mm)
s1:熱処理後のサンプル縦長さ(mm)
【0174】
[実施例1]
【0175】
エチレン・1-ブテン共重合体(A-1)の製造
攪拌羽根を備えた内容積100Lのステンレス製重合器(攪拌回転数=250rpm)を用いて、重合温度130℃、重合圧力2.5MPaGで、連続的にエチレンと1-ブテンとの共重合を行った。重合器側部より毎時、脱水精製したヘキサンを22L、エチレンを4.8kg、1-ブテンを2.0kgの速度で、また水素を100NL、ジ(p-トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリドを0.003mmol、メチルアルミノキサンをアルミニウム換算で1.5mmol、トリイソブチルアルミニウムを5mmolの速度で連続的に供給し、共重合反応を行った。生成したエチレン・1-ブテン共重合体のヘキサン溶液を、重合器側壁部に設けられた排出口を介して、重合器内溶液量28Lを維持するように液面制御弁の開度を調節しながら連続的に排出した。得られたエチレン/1-ブテン共重合体のヘキサン溶液を加熱器に導いて180℃に昇温し、触媒失活剤として、毎時、メタノールを80mLで添加し重合を停止させ、減圧した脱揮工程に連続的に移送して乾燥することにより、エチレン・1-ブテン共重合体(A-1)を得た。
【0176】
上記のようにして得られたエチレン・1-ブテン共重合体(A-1)は、密度dが0.905g/cm3、MFR2.16が0.5g/10min、MFR10が3.9g/10min、Mw/Mnが2.1、ビニル型二重結合量が0.049個/1000C、融点が94℃、収量が毎時7.0kgであった。
【0177】
エチレン・1-ブテン共重合体(B-1)の製造
攪拌羽根を備えた実質内容積1Lのステンレス製重合器(攪拌回転数=500rpm)を用いて、重合温度125℃で、満液状態で連続的にエチレンと1-ブテンとの共重合を行った。重合器側部より液相へ毎時、ヘキサンを1.73L、エチレンを56g、1-ブテンを100gの速度で、また水素を0.4NL、ビス(p-トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,1,4,4,7,7,10,10-オクタメチル-1,2,3,4,7,8,9,10-オクタヒドロジベンズ(b,h)-フルオレニル)ジルコニウムジクロリドを0.00015mmol、メチルアルミノキサン/トルエン溶液をアルミニウム換算で0.075mmol、トリイソブチルアルミニウムを1.0mmolの速度で連続的に供給し、重合圧力3.8MPaGになるように保持し共重合反応を行った。なお、連続的に得られたエチレン・1-ブテン共重合体のヘキサン溶液をホールドドラムに貯め、そこに触媒失活剤として、毎時、メタノールを0.2mlで添加し重合を停止した。
【0178】
得られたエチレン・1-ブテン共重合体のヘキサン溶液を、1時間毎に抜き出し2Lのメタノール中で重合溶液からポリマーを析出し、真空下130℃、10時間乾燥しエチレン/1-ブテン共重合体(B-1)を得た。
【0179】
上記のようにして得られたエチレン・1-ブテン共重合体(B-1)は、密度dが0.861g/cm3、MFR2.16が0.5g/10min、MFR10が5.1g/10min、Mw/Mnが2.0、ビニル型二重結合量が0.020個/1000C、収量が毎時49.0gであった。
【0180】
架橋発泡体の製造
上記で得たエチレン・1-ブテン共重合体(A-1)5質量部、エチレン・1-ブテン共重合体(B-1)20質量部、エチレンビニルアセテート共重合体(VA含量=28wt%)[商品名 エバフレックスEV270]75質量部、アクリレート誘導体マスターバッチ[商品名 ZnRicon50]0.6質量部、酸化亜鉛2.0質量部、ステアリン酸0.7質量部、アクリレート誘導体マスターバッチ[商品名 IB50]0.6質量部、酸化チタン5.0質量部、ステアリン酸亜鉛1.0質量部、ジクミルペルオキシド(DCP)1.0質量部、アゾジカルボンアミド3.9質量部、および、シリコンゴム(商品名CF201U、ダウコーニング社製)2質量部からなる混合物を、ロールにより、ロール表面温度120℃で10分間混練した後、2軸テーパースクリューが付属された単軸押出機を使用し、混合物が架橋、発泡を開始しない温度以下(130℃程度)でペレット化した。
【0181】
得られたペレットを、射出発泡成形機(KingSteel社製)へ投入し、架橋発泡体を得た。金型条件は100kg/cm2、170℃、7分であり、射出発泡の条件(射出シリンダー条件)は、射出圧力90kg/cm2、シリンダー温度設定:C1/C2/C3/C4=80/85/90/95℃、射出速度:C1/C2/C3/C4=28/26/24/22%に設定した。金型サイズは、厚み10mm、縦180mm、横60mmとした。
【0182】
得られた架橋発泡体を、成形直後に、60℃で30分間アニーリングを実施し、24時間後に比重、圧縮永久歪み、アスカーC硬度、反発弾性、層間引裂き強度、熱収縮率を上記方法に従って測定した。その結果を表1に併せて示す。
【0183】
[実施例2]
架橋発泡体の製造ならびに物性評価および成形安定性評価
実施例1において、エチレン・1-ブテン共重合体(A-1)を10質量部、エチレン・1-ブテン共重合体(B-1)を15質量部、アゾジカルボンアミドを4.1質量部としたことの他は、実施例1と同様にして架橋発泡体の製造ならびに物性の評価を行った。結果を表1に併せて示す。
【0184】
[比較例1]
エチレン・1-ブテン共重合体(A’-2)の製造
攪拌羽根を備えた実質内容積1Lのステンレス製重合器(攪拌回転数=500rpm)を用いて、重合温度130℃で、満液状態で連続的にエチレンと1-ブテンとの共重合を行った。重合器側部より液相へ毎時、ヘキサンを1.82L、エチレンを56g、1-ブテンを40gの速度で、また水素を0.6NL、ビス(p-トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,1,4,4,7,7,10,10-オクタメチル-1,2,3,4,7,8,9,10-オクタヒドロジベンズ(b,h)-フルオレニル)ジルコニウムジクロリドを0.0001mmol、メチルアルミノキサン/トルエン溶液をアルミニウム換算で0.05mmol、トリイソブチルアルミニウムを1.0mmolの速度で連続的に供給し、重合圧力3.8MPaGになるように保持し共重合反応を行った。なお、連続的に得られたエチレン・1-ブテン共重合体のヘキサン溶液をホールドドラムに貯め、そこに触媒失活剤として、毎時、メタノールを0.2mlで添加し重合を停止した。
【0185】
得られたエチレン・1-ブテン共重合体のヘキサン溶液を、1時間毎に抜き出し2Lのメタノール中で重合溶液からポリマーを析出し、真空下130℃、10時間乾燥しエチレン・1-ブテン共重合体(A’-2)を得た。
【0186】
上記のようにして得られたエチレン・1-ブテン共重合体(A’-2)は、密度dが0.905g/cm3、MFR2.16が1.2g/10min、MFR10が7.9g/10min、Mw/Mnが2.0、ビニル型二重結合量が0.020個/1000C、融点が94℃、収量が毎時43.5gであった。
【0187】
架橋発泡体の製造ならびに物性評価および成形安定性評価
実施例1において、エチレン・1-ブテン共重合体(A-1)をエチレン・1-ブテン共重合体(A’-2)としたことの他は、実施例1と同様にして架橋発泡体の製造ならびに物性の評価を行った。結果を表1に併せて示す。
【0188】
[比較例2]
架橋発泡体の製造ならびに物性評価および成形安定性評価
比較例1において、エチレン・1-ブテン共重合体(A’-2)を10質量部、エチレン・1-ブテン共重合体(B-1)を15質量部、アゾジカルボンアミドを3.8質量部としたことの他は、比較例1と同様にして架橋発泡体の製造ならびに物性の評価を行った。結果を表1に併せて示す。
【0189】
[比較例3]
架橋発泡体の製造ならびに物性評価および成形安定性評価
比較例1において、エチレン・1-ブテン共重合体(A’-2)を0質量部、エチレン・1-ブテン共重合体(B-1)を25質量部としたことの他は、比較例1と同様にして架橋発泡体の製造ならびに物性の評価を行った。結果を表1に併せて示す。
【0190】
【表1】
架橋発泡体の評価結果および成形安定性評価結果
特定のエチレン・α-オレフィン共重合体を含有する本発明のエチレン系共重合体組成物を用いた実施例1~2は、ビニル基含量の少ないエチレン・α-オレフィン共重合体を用いた比較例1~2や、エチレン・α-オレフィン共重合体を用いていない比較例3と比べ、熱収縮率に優れ、圧縮永久歪みが小さい傾向が認められる。
【産業上の利用可能性】
【0191】
本発明のエチレン系共重合体組成物は、各種成形体、発泡体の製造に好適であり、特に架橋成形体、架橋発泡体の製造に好適であって、従来公知の用途に制限なく用いることができる。たとえば、本発明のエチレン系共重合体組成物、およびそれを用いた成形体、発泡体、積層体は、自動車内装表皮材、ウェザーストリップスポンジ、ボディパネル、ステアリングホイール、サイドシールド等の自動車内外装部品;地盤改良用シート、上水板、騒音防止壁等の土木・建材;工業部品;靴底、サンダル等の履物用部品;電線被覆材、コネクター、キャッププラグ等の電気・電子部品;ゴルフクラブグリップ、野球バットグリップ、水泳用フィン、水中眼鏡等のスポーツ・レジャー用品;ガスケット、防水布、ガーデンホース、ベルト、水切りシート、化粧用パフ等の雑貨などが挙げられる。特に、靴底、靴のミッドソール、インナーソール、ソール、サンダルなどの履物用部品として好適に用いることができる。