(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-31
(45)【発行日】2023-11-09
(54)【発明の名称】制御装置および補正方法
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20231101BHJP
G06F 3/045 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
G06F3/041 520
G06F3/045 F
G06F3/041 590
(21)【出願番号】P 2019196594
(22)【出願日】2019-10-29
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鍜治本 晋明
【審査官】塩屋 雅弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-156948(JP,A)
【文献】特開2001-265512(JP,A)
【文献】特開平10-091351(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
G06F 3/045
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抵抗膜方式のタッチパネルに対するタッチ位置の数を示すタッチ点数が1点である1点タッチである場合に該1点タッチの入力座標を補正する第1の補正処理を行い、
前記タッチ点数が2点である2点タッチである場合に、該2点タッチの入力座標
を、第1の補正処理とは異なる第2の補正処理を行う補正部
を備え
、
前記第1の補正処理は、
前記タッチパネルが備える外付けされた外付け抵抗を除いた前記タッチパネルのタッチ時に発生する前記タッチパネル内部の抵抗値の総和である総抵抗値を用いて前記1点タッチの入力座標を補正し、
前記第2の補正処理は、
前記総抵抗値を用いて前記2点タッチの入力座標を補正した後に、さらに前記外付け抵抗分の抵抗値に応じた補正係数を乗算することで、前記2点タッチの入力座標を補正する、
制御装置。
【請求項2】
抵抗膜方式のタッチパネルに対するタッチ位置の数を示すタッチ点数が1点である1点タッチである場合に該1点タッチの入力座標を補正する第1の補正処理を行い、
前記タッチ点数が2点である2点タッチである場合に、該2点タッチの入力座標を、第1の補正処理とは異なる第2の補正処理を行う制御部
を備え、
前記第1の補正処理は、
前記タッチパネルが備える外付けされた外付け抵抗を除いた前記タッチパネルのタッチ時に発生する前記タッチパネル内部の抵抗値の総和である総抵抗値を用いて前記1点タッチの入力座標を補正し、
前記第2の補正処理は、
前記総抵抗値を用いて前記2点タッチの入力座標を補正した後に、さらに前記外付け抵抗分の抵抗値に応じた補正係数を乗算することで、前記2点タッチの入力座標を補正する、
制御装置。
【請求項3】
抵抗膜方式のタッチパネルに対するタッチ位置の数を示すタッチ点数を判定する判定工程と、
前記判定工程によって判定された前記タッチ点数が1点である1点タッチである場合に該1点タッチの入力座標を補正する第1の補正処理を行う第1の補正工程と、
前記タッチ点数が2点である2点タッチである場合に該2点タッチの入力座標を補正する、第1の補正処理とは異なる第2の補正処理を行う第2の補正工程と
を含
み、
前記第1の補正処理は、
前記タッチパネルが備える外付けされた外付け抵抗を除いた前記タッチパネルのタッチ時に発生する前記タッチパネル内部の抵抗値の総和である総抵抗値を用いて前記1点タッチの入力座標を補正し、
前記第2の補正処理は、
前記総抵抗値を用いて前記2点タッチの入力座標を補正した後に、さらに前記外付け抵抗分の抵抗値に応じた補正係数を乗算することで、前記2点タッチの入力座標を補正する、
補正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置および補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、抵抗膜方式のタッチパネルがある。かかるタッチパネルは、操作面に設けられた2相の抵抗膜それぞれの端子間電圧に基づいて、タッチ位置が示す入力座標を算出する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、この種のタッチパネルにおいては、抵抗膜それぞれに外付けした抵抗(以下、外付け抵抗)を設けることで、静電気などのノイズの影響を低減するものも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、外付け抵抗が十分に大きい場合、外付け抵抗の分だけ端子間電圧がずれるため、外付け抵抗にあわせて入力座標を補正する必要がある。この際、タッチ位置が1点である1点タッチ時と2点である2点タッチ時において、同様の補正を行うと、1点タッチ時と2点タッチ時とで入力座標の算出精度にずれが生じ、双方の入力座標を精度よく導出することができない。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、入力座標を精度よく導出することができる制御装置および補正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、実施形態に係る制御装置は、判定部と、補正部とを備える。前記判定部は、抵抗膜方式のタッチパネルに対するタッチ位置の数を示すタッチ点数を判定する。前記補正部は、前記判定部によって判定された前記タッチ点数が1点である1点タッチである場合と、前記タッチ点数が2点である2点タッチである場合とで、異なる座標補正によって前記タッチ位置が示す入力座標を補正する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、入力座標を精度よく導出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1E】
図1Eは、2点タッチ時における入力座標の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、マイコンが実行する処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、実施形態に係る制御装置および補正方法について説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
まず、
図1A~
図1Eを用いて、本実施形態に係る制御装置および補正方法の概要について説明する。
図1Aは、入力システムの構成例を示す図である。
図1Bおよび
図1Cは、タッチパネルの概要を示す図である。
図1Dは、抵抗膜の模式図である。
図1Eは、2点タッチ時における入力座標の一例を示す図である。
【0012】
図1Aに示すように、実施形態に係る入力システム1は、タッチパネル10、タッチIC20およびマイコン30を備える。タッチパネル10は、抵抗膜方式のタッチパネルであり、
図1Bに示すように、第1抵抗膜11および第2抵抗膜12を有する。
【0013】
例えば、第1抵抗膜11は、タッチパネル10におけるX軸座標の入力座標を検出するための抵抗膜であり、第2抵抗膜12は、タッチパネル10におけるY軸座標の入力座標を検出するための抵抗膜である。また、
図1Bに示す例では、第1抵抗膜11と第2抵抗膜12との間に抵抗Rzが設けられる。
【0014】
また、タッチパネル10は、操作面(不図示)およびA/D変換器13(
図2参照)を有しており、操作面が押圧された場合に、第1抵抗膜11および第2抵抗膜12それぞれの端子間電圧の値をA/D変換し、A/D変換後の変換値(以下、単に「変換値」と記載する)をタッチIC20へ出力する。
【0015】
図1Aに示すタッチIC20は、タッチパネル10から入力された変換値に基づいて、タッチ位置に対応する入力座標を算出する。タッチIC20によって算出された入力座標は、マイコン30へ入力される。
【0016】
また、
図1Aに示すマイコン30は、制御装置の一例であり、タッチIC20から入力される入力座標を補正する。ここで、本実施形態に係るマイコン30は、タッチ位置が1点である1点タッチである場合と、タッチ位置が2点である2点タッチ時である場合とで、異なる座標補正を適用して入力座標を補正する。これにより、1点タッチおよび2点タッチの双方で、入力座標の精度を高めることができる。
【0017】
ここで、
図1Bおよび
図1Cを用いて、抵抗膜方式のタッチパネル10の基本的な原理について簡単に説明しておく。抵抗膜方式のタッチパネル10では、第1抵抗膜11および第2抵抗膜12の端子間電圧の変化、言い換えれば、各抵抗膜の抵抗の変化によって、タッチ位置に対応する入力座標を算出する。
【0018】
具体的には、
図1Bに示すように、例えば、タッチ位置が1点である1点タッチ時においては、端子XP-XN間の端子間抵抗を端子間抵抗値Rxとすると、「Rx=Rx1+Rx2」となる。この際、端子YP-YN間の端子間抵抗を端子間抵抗Ryとすると、「Ry=Ry1+Ry2」となる。
【0019】
このため、タッチIC20は、1点タッチ時においては、第1抵抗膜11および第2抵抗膜12それぞれの端子間電圧の変化に基づいて、タッチ位置が示す入力座標を算出することができる。また、タッチ位置が2点である2点タッチ時においては、2点タッチの距離が長くなるにつれて、第1抵抗膜11および第2抵抗膜12それぞれで並列接続される抵抗の数が増える。言い換えれば、2点タッチ間の距離が長くなるにつれて、端子間抵抗が減少することになる。
【0020】
このため、タッチIC20は、2点タッチ時においては、2点タッチ間の距離と、端子間抵抗との関係を示す距離情報に基づいて2点タッチ間の距離を求め、かかる2点タッチ間の距離に基づいて、各タッチ位置の入力座標を算出する。なお、距離情報の一例については、
図4を用いて後述する。
【0021】
ここで、本実施形態に係る入力システム1では、タッチパネル10に外付けした抵抗(以下、「外付け抵抗」と記載する)をさらに設けることで、静電気などのノイズに対する耐性を高めることが可能である。
【0022】
具体的には、
図1Dに示すように、例えば、第1抵抗膜11および第2抵抗膜12の両端にそれぞれ外付け抵抗Reが設けられる。例えば、第1抵抗膜11の抵抗値の総和が800Ωであり、第2抵抗膜12の抵抗値の総和が300Ωであるのに対して、外付け抵抗Reは、それぞれ100Ωであるものとする。
【0023】
ここで、外付け抵抗Reの抵抗値が十分に小さい場合、外付け抵抗Reを無視して入力座標を算出したとしても外付け抵抗Reが入力座標に与える影響は少ない。つまり、外付け抵抗Reに用いる抵抗が十分に小さい場合には、外付け抵抗Reを考慮せず、入力座標を算出することができる。
【0024】
これに対して、外付け抵抗Reの抵抗値が大きくなるにつれて、入力座標を補正する必要が生じる。具体的には、上記の変換値は、外付け抵抗Reの抵抗値を含んだ値であり、かかる変換値に基づいて算出された入力座標は、実際の入力座標よりも外付け抵抗Re分だけずれることになる。
【0025】
また、外付け抵抗Reが十分に大きい場合には、
図1Dに示すように、入力座標を算出可能なエリアが限定されるため、端子間電圧の値をA/D変換した変換値に対して、有効エリアAを設ける必要がある。
【0026】
ここで、有効エリアAとは、変換値の全範囲(同図に示す例では0~1024)よりも小さい範囲であり、外付け抵抗Re分の抵抗値に対応する範囲を上記の全範囲から除いたエリアである。言い換えれば、有効エリアAとは、タッチ位置が示す入力座標を算出可能なエリアである。
【0027】
ここで、1点タッチ時においては、端子間電圧に基づいて算出した入力座標に対して、外付け抵抗Re分の抵抗値を補正することで、適切な入力座標を導出することができる。これに対して、
図1Eに示すように、2点タッチ時において、同様の補正を行うと、入力座標Xが実際のタッチ位置Pよりもタッチパネル10の外側にずれることになる。これは、2点タッチ時においては、外付け抵抗Re分を予め考慮して入力座標を算出するためである。
【0028】
そこで、実施形態に係る補正方法では、1点タッチ時と、2点タッチ時とで、異なる座標補正により、入力座標を補正することとした。例えば、実施形態に係る補正方法では、1点タッチ時においては、総抵抗値に基づいて座標補正を行うとともに、2点タッチ時においては、総抵抗値に基づく座標補正をスキップする。なお、総抵抗値とは、タッチパネル10に対するタッチ時に発生するタッチパネル10内部の抵抗値の総和である。
【0029】
これにより、実施形態に係る補正方法では、1点タッチ時および2点タッチ時の双方において、入力座標の補正を適切に行うことが可能となる。特に、実施形態に係る補正方法によれば、外付け抵抗Reの抵抗値の制限を緩和することが可能である。
【0030】
次に、
図2を用いて、実施形態に係る入力システム1の構成例について説明する。
図2は、入力システム1のブロック図である。まず、タッチパネル10について説明する。
図2に示すように、タッチパネル10は、第1抵抗膜11、第2抵抗膜12およびA/D変換器13を備える。
【0031】
第1抵抗膜11は、タッチパネル10のX軸方向に沿う1対の電極によって構成される端子を有し、第2抵抗膜12は、タッチパネル10のY軸方向に沿う1対の電極によって構成される端子を有する。それぞれの端子で検出される端子間電圧は、外付け抵抗Reを介してA/D変換器13へ出力される。
【0032】
A/D変換器13は、第1抵抗膜11および第2抵抗膜12それぞれから入力されるアナログの端子間電圧をデジタルの変換値へ変換する。すなわち、A/D変換器13は、端子間電圧を端子間電圧のレベル(強度)に応じた数値へ変換する。また、A/D変換器13によって変換された変換値は、タッチIC20へ出力される。
【0033】
続いて、タッチIC20について説明する。
図2に示すように、タッチIC20は、記憶部21と、制御部22とを備える。記憶部21は、たとえば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置によって実現され、
図2の例では、マップ情報21aと、距離情報21bとを記憶する。
【0034】
マップ情報21aは、端子間電圧の変換値と、各入力座標との関係を示すマップに関する情報である。上述の例において、変換値は、X軸およびY軸のそれぞれについて端子間電圧のレベルに応じて0~1024の値をとり、それぞれの数値が示す入力座標を示すマップがマップ情報21aとして、記憶部21に記憶される。
【0035】
距離情報21bは、2点タッチ時における2点タッチ間の距離と、端子間抵抗との関係を示す情報である。
図3は、距離情報21bの一例を示す図である。
図3の例において、縦軸は、端子間抵抗値を示し、横軸は、2点間距離を示す。なお、2点間距離とは、2点タッチ時におけるそれぞれのタッチ位置の距離を示す。
【0036】
図3に示すように、2点間距離が長くなるにつれて、端子間抵抗値が低くなる。これは、上述のように、2点間距離が長くなるにつれて、第1抵抗膜11および第2抵抗膜12それぞれにおいて、並列接続される抵抗成分が増えるためである。すなわち、直列接続された抵抗成分が並列接続されるためである。
【0037】
そして、2点間距離と、端子間抵抗値との関係は、実験やシミュレーション等によって予め導出することができ、かかる関係が距離情報21bとして記憶部21に記憶される。
【0038】
図2の説明に戻り、制御部22について説明する。制御部22は、例えば、コントローラであり、例えば、CPUやMPU等によって、記憶部21に記憶されている各種プログラムがRAMを作業領域として実行されることにより実現される。また、制御部22は、例えば、ASICやFPGA等の集積回路により実現することができる。
【0039】
また、
図2に示すように、制御部22は、算出部22aを備える。算出部22aは、A/D変換器13によって変換されたデジタルの変換値に基づいて、タッチ位置が示す入力座標を算出する。
【0040】
具体的には、算出部22aは、1点タッチである場合、マップ情報21aを参照し、変換値に対応する入力座標を算出する。すなわち、算出部22aは、第1抵抗膜11の端子間電圧に基づいて入力座標のX軸座標を算出し、第2抵抗膜12の端子間電圧に基づいて入力座標のY軸座標を算出する。
【0041】
また、算出部22aは、2点タッチである場合、2点タッチ間の重心座標を求めるとともに、距離情報21bを参照して、端子間抵抗値から2点間距離を算出する。
【0042】
その後、算出部22aは、重心座標および2点間距離に基づいて、ゴースト除去を行い、2点タッチそれぞれの入力座標を算出する。ここで、
図4を用いて、ゴースト除去について説明する。
図4は、ゴーストの具体例を示す図である。
【0043】
図4に示すように、例えば、タッチIC20は、タッチ位置P1およびタッチ位置P2がそれぞれ同時に押圧された場合、タッチ位置P1およびタッチ位置P2に加えて、2つのゴーストGが検出される。
【0044】
そのため、算出部22aは、タッチ位置P1およびタッチ位置P2と、2つのゴーストGとを識別し、ゴーストGを除去する。なお、ゴースト除去については、特に限定されず、既存の手法を適宜用いることができる。
【0045】
算出部22aは、ゴースト除去を行うと、タッチ位置P1およびタッチ位置P2それぞれに対応する入力座標を算出する。そして、算出部22aによって算出された入力座標は、マイコン30へ入力される。
【0046】
図2の説明に戻り、マイコン30について説明する。
図2に示すように、マイコン30は、記憶部31と、制御部32とを備える。記憶部31は、たとえば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置によって実現され、
図2の例では、正規化情報31aを記憶する。
【0047】
正規化情報31aは、タッチパネル10の操作領域を分割した分割エリアごとに入力座標を正規化するための係数に関する情報である。
図5は、分割エリアの一例を示す図である。
図5に示す例では、例えば、各分割エリアがそれぞれ矩形の領域である場合を示す。
【0048】
そして、分割エリアそれぞれに入力座標のX軸座標およびY軸座標それぞれを正規化するための係数が対応付けられた情報を正規化情報31aとして記憶部31に記憶される。
【0049】
図2の説明に戻り、制御部32について説明する。制御部32は、例えば、コントローラであり、例えば、CPUやMPU等によって、記憶部31に記憶されている各種プログラムがRAMを作業領域として実行されることにより実現される。また、制御部32は、例えば、ASICやFPGA等の集積回路により実現することができる。
【0050】
また、
図2に示すように、制御部32は、判定部32aと、補正部32bと、表示制御部32cとを備える。判定部32aは、抵抗膜方式のタッチパネル10に対するタッチ位置の数を示すタッチ点数を判定する。
【0051】
本実施形態において、判定部32aは、タッチ点数が1点である1点タッチかタッチ点数が2点である2点タッチであるかを判定する。例えば、判定部32aは、タッチIC20のレジスタ値を参照することで、タッチ点数を判定することができる。判定部32aによる判定結果は、補正部32bへ通知される。
【0052】
補正部32bは、判定部32aによって判定されたタッチ点数が1点である1点タッチである場合と、タッチ点数が2点である2点タッチである場合とで、異なる座標補正によってタッチ位置が示す入力座標を補正する。
【0053】
まず、1点タッチ時における補正部32bの処理について説明する。補正部32bは、1点タッチ時においては、総抵抗を算出し、かかる総抵抗値を座標補正に適用し、入力座標を補正する。ここで、総抵抗値とは、タッチパネル10に対するタッチ入力に伴い生じるタッチパネル10内部の抵抗値の総和である。
【0054】
総抵抗値は、例えば、上述の変換値と、商品出荷前またはタッチパネル10の起動時に実施するキャリブレーションにおいて設定した各種パラメータとから算出することができる。補正部32bは、第1抵抗膜11(X軸座標)および第2抵抗膜12(Y軸座標)それぞれの変換値に対して総抵抗値をそれぞれ算出する。ここで、第1抵抗膜11および第2抵抗膜12が有する抵抗の経年変化や、温度変化に伴う抵抗値の変化を反映させた値であり、外付け抵抗Reや各種ICの内部抵抗を除いた値となる。
【0055】
したがって、補正部32bは、総抵抗値を座標補正に適用することで、外付け抵抗Reに基づく入力座標のずれ、および、経年変化や、温度変化に伴う入力座標のずれを適切に補正することができる。
【0056】
一方、上述のように、2点タッチ時において、タッチIC20によって算出された入力座標は、外付け抵抗Reを予め考慮した値となる。したがって、2点タッチ時において算出された入力座標に対して、総抵抗値に基づく座標補正を適用すると、外付け抵抗Reの分だけ、実際のタッチ位置から外側に入力座標がずれてしまう。
【0057】
このため、補正部32bは、2点タッチ時においては、1点タッチ時において適用した総抵抗値に基づく座標補正をスキップする。つまり、2点タッチ時においては、タッチIC20によって算出された入力座標を適用する。
【0058】
このように、補正部32bは、1点タッチ時と、2点タッチ時とで異なる座標補正を行うことで、1点タッチおよび2点タッチそれぞれで入力座標の精度を上げることができる。
【0059】
また、補正部32bは、座標補正の一環として、入力座標を正規化する。入力座標を正規化は、正規化情報31aを参照し、各入力座標に対応する分割エリアの係数を乗算することで行われる。
【0060】
表示制御部32cは、補正部32bによって補正された入力座標を画面解像度にあわせて変換するとともに、変換した入力座標に基づいて画面表示を切り替える。
【0061】
ここで、入力座標を画面解像度にあわせて変換するとは、表示画面1ピクセルと、入力座標の1座標とを対応させることを示し、表示画面を切り替えるとは、例えば、ポインタ等を現在の入力座標にあわせて動かすことを示す。表示制御部32cによる各種処理結果は、図示しない表示部等に出力される。
【0062】
次に、
図6を用いて、実施形態に係るマイコン30が実行する処理手順について説明する。
図6は、マイコン30が実行する処理手順を示すフローチャートである。なお、以下に示す処理手順は、タッチIC20による入力座標の算出毎に、マイコン30の制御部32によって繰り返し実行される。
【0063】
図6に示すように、マイコン30は、タッチIC20から入力された入力座標に基づいて、タッチ位置判定を行い(ステップS101)、タッチ位置が1点タッチか否かを判定する(ステップS102)。
【0064】
マイコン30は、ステップS102の判定処理において、1点タッチであった場合(ステップS102,Yes)、抵抗値に基づいて座標補正を実施する(ステップS103)。
【0065】
また、マイコン30は、ステップS102の判定処理において、1点タッチでなかった場合、すなわち、2点タッチであった場合(ステップS102,No)、ステップS103の処理を省略し、ステップS104の処理へ移行する。
【0066】
その後、マイコン30は、入力座標を正規化するとともに(ステップS104)、入力座標に対して、画面解像度にあわせた解像度変換を行い(ステップS105)、解像度変換を行った入力座標に基づいて表示切り替えを行い(ステップS106)、処理を終了する。
【0067】
上述したように、実施形態に係るマイコン30(制御装置の一例)は、判定部32aと、補正部32bとを備える。判定部32aは、抵抗膜方式のタッチパネル10に対するタッチ位置の数を示すタッチ点数を判定する。補正部32bは、判定部32aによって判定されたタッチ点数が1点である1点タッチである場合と、タッチ点数が2点である2点タッチである場合とで、異なる座標補正によってタッチ位置が示す入力座標を補正する。したがって、実施形態に係るマイコン30によれば、入力座標を精度よく導出することができる。
【0068】
ところで、上述した実施形態では、2点タッチ時において、総抵抗値に基づく座標補正をスキップする場合について説明したが、これに限定されるものではない。この点の詳細について
図7を用いて説明する。
図7は、補正係数を示す模式図である。
【0069】
上述のように、2点タッチ時において、総抵抗値に基づく座標補正を実施すると、入力座標が実施のタッチ位置よりも外付け抵抗Rwの分だけタッチパネル10の外側にずれることになる。
【0070】
これに対して、総抵抗値に基づく座標補正を適用後の入力座標に対して、補正係数を乗算することで、入力座標を補正することにしてもよい。ここで、補正係数とは外付け抵抗Reに応じた係数であり、総抵抗値に基づく座標補正によるずれを元に戻すための係数である。
【0071】
図7に示す例では、総抵抗値に基づく座標補正により、入力座標X1へ補正された場合を示し、補正係数により、入力座標が入力座標X2へ再補正した場合を示す。この場合においても、1点タッチ時および2点タッチ時の双方において、入力座標を精度よく導出することができる。
【0072】
ところで、上述した実施形態では、タッチIC20によって算出された入力座標に対して座標補正を実施する場合について説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、端子間電圧を外付け抵抗Reに基づいて補正した後に、入力座標を算出することにしてもよい。
【0073】
また、上述した実施形態では、タッチパネル10、タッチIC20およびマイコン30がそれぞれ別々の構成である場合について説明したが、適宜、統合または分散を行うことにしてもよい。
【0074】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0075】
1 入力システム
10 タッチパネル
11 第1抵抗膜
12 第2抵抗膜
13 A/D変換器
20 タッチIC
22a 算出部
30 マイコン(制御装置の一例)
32a 判定部
32b 補正部
32c 表示制御部