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特許7377067質量補正を有する誘導結合プラズマ質量分析装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-31
(45)【発行日】2023-11-09
(54)【発明の名称】質量補正を有する誘導結合プラズマ質量分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/62 20210101AFI20231101BHJP
【FI】
G01N27/62 E
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019199537
(22)【出願日】2019-11-01
(65)【公開番号】P2020071235
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-07-12
(31)【優先権主張番号】62/754,672
(32)【優先日】2018-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】399117121
【氏名又は名称】アジレント・テクノロジーズ・インク
【氏名又は名称原語表記】AGILENT TECHNOLOGIES, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】杉山 尚樹
(72)【発明者】
【氏名】アミル・リバ
(72)【発明者】
【氏名】マーク・リー・ケリンスク
(72)【発明者】
【氏名】グレン・デイヴィッド・ウッズ
【審査官】吉田 将志
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-505339(JP,A)
【文献】特開2001-133439(JP,A)
【文献】特表2017-535040(JP,A)
【文献】特開平02-122258(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/60 - G01N 27/70
G01N 27/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)を通過するイオンビーム中の多原子イオンの質量フィルタリングを制御するための方法であって、
目標同位体を有する多原子イオンの正確な質量を表す多原子イオン質量データを求め、その正確な質量が、目標同位体、及び前記イオンビーム中に前記多原子イオンを形成するために前記ICP-MSで使用されるセルガスに基づいており、
前記求められた多原子イオン質量データに基づいて第1の制御信号を生成し、
ICP-MSを通り抜けてイオン検出器に進むイオンビーム中の多原子イオンを質量に基づいてフィルタリングするためにICP-MSに前記第1の制御信号を出力することを含む、方法。
【請求項2】
前記多原子イオン質量データは、前記目標同位体を有する多原子イオンの正確な質量を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記多原子イオン質量データを含む質量データをメモリに格納することを更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記求めることは、メモリに格納された前記多原子イオン質量データにアクセスすることを含む、請求項1~3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記求めることは、前記目標同位体を有する多原子イオンの正確な質量を計算することを含む、請求項1~4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記求めることは、前記目標同位体を有する多原子イオンの正確な質量を求めるために、テーブルルックアップを実行することを含む、請求項1~4の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
質量偏差補正データをメモリに格納することを更に含み、前記質量偏差補正データが目標同位体およびセルガスに基づいている、請求項1~6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記ICP-MSは、イオン質量をフィルタリングするように制御される第1及び第2の質量分析器を有するトリプル四重極ICP-MSを含み、前記第2の質量分析器に印加される1つ又は複数の電圧信号を制御するために、前記第1の制御信号が、前記第2の質量分析器に出力される、請求項1~7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)において使用するために構成可能な元素分析計システムであって、
ユーザが多原子イオンに含まれる目標同位体を分析するための選択を入力することを可能にするユーザインターフェースと、
前記ユーザインターフェースに結合され且つ前記入力された選択を表すデータを受け取るように構成された1つ又は複数のプロセッサとを含み、前記1つ又は複数のプロセッサは、
目標同位体を有する多原子イオンの正確な質量を表す多原子イオン質量データを求め、その正確な質量が、目標同位体、及びイオンビーム中に前記多原子イオンを形成するために前記ICP-MSで使用されるセルガスに基づいており、
前記求められた多原子イオン質量データに基づいて第1の制御信号を生成し、
ICP-MSを通過するイオンビーム中の多原子イオンを質量に基づいてフィルタリングするように前記第1の制御信号の前記ICP-MSへの出力を開始するように更に構成されている、誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)。
【請求項10】
元素分析計システムであって、
誘導結合プラズマ質量分析装置と、
前記誘導結合プラズマ分析装置に結合されたワークステーションとを含み、前記ワークステーションは、
ユーザが多原子イオンに含まれる目標元素同位体を分析するための選択を入力することを可能にするユーザインターフェースと、
前記ユーザインターフェースに結合され且つ前記入力された選択を表すデータを受け取るように構成された1つ又は複数のプロセッサとを含み、前記1つ又は複数のプロセッサは、
目標元素同位体の第1の正確な質量(EM1)を求め、
質量偏差補正が前記多原子イオンに含まれる前記目標元素同位体の元素分析に必要とされるか否かを評価し、
質量偏差補正が必要とされる場合、前記多原子イオンに対応する質量数およびリアクションセル中の反応物質に対応する質量偏差補正の関数として前記目標元素同位体の第2の正確な質量(EM2)を求めることを行うように更に構成されている、元素分析計システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は概して、質量分析計を用いた元素分析および質量分析計を用いる応用形態に関する。
【0002】
説明
質量分析計は、目標元素を分析するために様々な応用形態において使用される。目標元素は、多原子イオンに含まれ得る。元素分析計は、目標元素の分析を行うために質量分析計を使用する。例えば、目標元素は、調査中の試料にロード(loaded:投入)され得る。これら試料は、固体、液体、又はガスの形態であることができる。例示的な応用形態において、試料は、環境分析の一部として土壌、空気、又は水から取得され得る。目標元素は、重金属、有毒物質、又は他のタイプの元素を含む可能性がある。他の応用形態において、試料は、品質管理、製造、化学分析、又は他のタイプの応用形態の一部として収集または試験され得る。
【0003】
誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)は、試料中の微量金属の濃度を測定するような、試料の元素分析のために利用されることが多い。ICP-MSシステムは、試料の分子を原子へ分解し、次いで元素分析に備えて原子をイオン化するためのプラズマを生成するプラズマベースのイオン源を含む。一般的な動作において、液体試料は、ネブライザ(一般にニューマティック支援型からなる)により霧状にされ、即ちエアロゾル(微細な噴霧またはミスト)に変換され、エアロゾル化した試料がプラズマ源により生成されたプラズマプルームへ送られる。プラズマ源は、2つ以上の同心管を有する流入(flow-through:フロースルー)プラズマトーチとして構成される。一般に、アルゴンのようなプラズマ形成ガスがトーチの外管を流れ、適切なエネルギー源(一般に、無線周波数(RF)をエネルギー源とする負荷コイル)によりプラズマへ付勢される。エアロゾル化した試料は、トーチの同軸中心管(又はキャピラリ)を流れて、生成されたままのプラズマへ放出される。プラズマにさらされることにより、試料の分子は原子へ分解され、又は代案として試料の分子は部分的に分子断片へ分解され、原子または分子断片がイオン化される。
【0004】
一般に正に帯電された結果としての検査対象イオンは、プラズマ源から抽出され、イオンビームとして質量分析器へ送られる。四重極質量分析器は、それらの質量対電荷(m/z)比に基づいて異なる質量のイオンをスペクトル的(分光的)に分解するために、時間的に変化する電場、又は電場と磁場の組み合わせを印加し、イオン検出器が、質量分析器からイオン検出器に到着する所与のm/z比の各タイプのイオンをカウント(計数)する。別の例として、飛行時間型(TOF)質量分析器は、飛行管の中を通って押し流されるイオンの飛行時間を測定し、それからm/z比が導出され得る。次いで、ICP-MSシステムは、質量(m/z比)のピークのスペクトルとして取得されたようにデータを提示する。各ピークの強度は、試料の対応する元素の濃度(存在度)を示す。
【0005】
タンデム四重極ICP-MSシステム(ICP-MS QQQ又は簡単にICP-QQQ)において、2つの質量分析器がリアクタント(反応)/コリジョン(衝突)セルの両側に設けられる。2つの質量分析器は、個々の質量フィルタとして働くことができる。質量シフト(マスシフト)と呼ばれる1つの従来の技術において、2つの四重極(Q1、Q2)が、スペクトル干渉を避けることに役立つように異なる値(Q2がQ1に等しくない)に設定される。
【0006】
ICP-QQQを含むICP-MSを用いた元素分析の従来の手法において、目標元素のために、電子回路、磁場、データ取得の時間などを設定するために単一の同位元素形態において目標元素の正確な質量値を使用することが知られている。各元素同位体に与えられる従来の正確な質量は、以下の式(1)により定義される。
正確な質量=質量数+質量偏差 (1)
ここで、質量数は、目標同位体(目標同位元素)の質量数であり、質量偏差は、目標同位元素の質量数の関数である。
【0007】
正確な質量値を求めるためのこの式(1)は、元素分析計ツールを構成するユーザに有用である。ユーザは、ユーザにより容易に記憶または知られている整数である目標同位元素の質量数を選択することができる。元素分析計ツールは、式(1)に従って正確な質量値を得るために必要な質量偏差値を探索(ルックアップ)することができる。動作中、質量分析がICP-MSシステムにおいて行われ、この場合、目標同位元素は、ICP-MSシステムを通過するイオンビーム中に存在する。イオンビーム中の目標同位元素は、得られた正確な質量を用いてICP-MSシステムにおいてフィルタリング及び検出される。
【0008】
例えば、75の質量数を有するヒ素同位体を分析するために、ユーザは、75Asに対して質量数75を選択することができる。78の質量数を有するセレン同位体を分析するために、ユーザは、78Seに対して質量数78を選択することができる。元素分析計ツールは、正確な質量を得るために、質量数および適切な質量偏差値(質量数に基づいてテーブルルックアップから得られる)を合算することができる。得られた正確な質量を用いて、ICP-MSシステムにおいて質量分析を制御する。幾つかの従来のシステムにおいて、目標元素同位体のこの質量偏差の値がメモリに格納されて、質量数から目標元素同位体の正確な質量を計算することを可能にする。このように、たとえ目標元素が同位体であっても、ユーザは、ユーザが一般に使用するのにより容易である質量数値を選択または入力することにより、元素の目標同位体を依然として識別することができると同時に、元素分析計ツールは、ICP-MSシステムを通り抜けるイオン流においてより正確に質量を分析するために正確な質量値を得る。
【0009】
しかしながら、幾つかのICP-MS応用形態において、多原子イオンがイオン流に存在する。例えば、多原子イオンは、リアクタント(反応)セルにおける反応物質とイオン流の反応から生じるかもしれない。この場合、多原子イオンは、これらの正確な質量に従って、フィルタリング及び検出される必要がある。従来の手法は、多原子イオンの質量数を求めて、当該多原子イオンと同じ質量数を有する単一元素の質量偏差値を使用することになっている。本発明者は、この従来の手法がエラーにつながり多原子イオンの正確な質量を得ないことに気付いた。
【0010】
例えば、目標元素同位体(質量数49を有するチタンTi)を有するイオンビームは、リアクタントセルにおいてアンモニア(NH)と反応して、質量数133を有する多原子イオン49TiNH(NHの出力ビームを生成するかもしれない。この質量数133は、元素セシウム(Cs)の質量数133と同じである。従来の手法は単にTiNH(NH多原子イオンに対してCsの利用可能な質量偏差値を適用する。しかしながら、これはエラーにつながる。多原子イオンTiNH(NHの質量数133と足されるCsの質量偏差値(-0.094548amu)は、多原子イオンの正確な質量を表しておらず、多原子イオンの正確な質量ではない。本発明者によって最初に認識されたように、この従来の手法は、目標元素または多原子イオン内の同位体を含む、多原子イオン及びその成分の正確な質量を表さない。
【0011】
本発明の実施形態は、これらの問題を克服し、さらにいっそう正確な元素分析を提供する。
【0012】
本明細書で説明される実施形態は、目標元素を有する多原子イオンに対して求められた正確な質量を用いて目標元素を分析するためのシステム及び方法を含む。一特徴において、求められた正確な質量は、多原子イオンに含まれる場合に目標元素の正確な質量を考慮する。本明細書の実施形態において正確な質量を求めることは、従来の正確な質量を求めること又は単一原子に基づいた既知の質量シフトと異なり、それらより正確である。一実施形態において、正確な質量を求めることは、目標多原子イオンに対応する質量数およびリアクションセル中の反応物質に対応する質量偏差補正の関数である。例えば、関数は、目標多原子イオンに対応する質量数とリアクションセル中の反応物質に対応する質量偏差補正の和であることができる。
【0013】
更なる実施形態において、本明細書で説明されるように、多原子イオン中の目標元素に関して正確な質量を求めることを用いた元素分析は、ICP-MSシステムにおいて行われる。更なる特徴において、多原子イオン中の目標元素に関して正確な質量を求めることは、ICP-MSシステムにおける質量のフィルタリングにおいて四重極を設定するために使用される。例において、本明細書で説明されるような正確な質量を求めることは、ソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア、又はそれらの任意の組み合わせで行われることができ、ICP-MSシステムのコントローラの一部として含まれ得る。一例において、多原子イオン中の目標元素同位体の元素分析に関して本明細書で説明されるように、質量補正を開始するために質量設定情報をユーザが入力することを可能にするために、ユーザインターフェースが設けられ得る。本発明の任意の実施形態において、正確な質量は、計算された正確な質量のイオンをフィルタリングして通す又は取り除くために使用され得る。例えば、ひとたび多原子イオンの正確な質量が求められれば、ICP-MSシステムは、正確な質量を含む質量範囲内のイオンを保持するように設定され得る。逆に、ICP-MSシステムは、係る質量範囲のイオンをフィルタリングして取り除くように設定され得る。
【0014】
本発明の他のデバイス、装置、システム、方法、特徴および利点は、以下の図面および詳細な説明を考察する際に当業者に明らかである又は明らかになるであろう。係る全ての追加のシステム、方法、特徴および利点は本説明内に含まれること、本発明の範囲内にあること、及び添付の特許請求の範囲により保護されることが意図されている。
【0015】
本明細書へ組み込まれる及び本明細書の一部を構成する添付図面は、実施形態の1つ又は複数の例を示し、例示的な実施形態の説明と共に、本発明の実施形態の原理および具現化形態を説明する働きをする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本開示の一実施形態による、誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)に結合された元素分析計および質量フィルタコントローラを有するシステムの図である。
図2】本開示の一実施形態による、ICP-MSを通過するイオンビーム中の多原子イオンの質量フィルタリングを制御するための方法を示す流れ図である。
図3A】本開示の一実施形態による、多原子イオン質量データを有するルックアップテーブルの図である。
図3B】従来の単原子イオン質量および質量偏差データを有するルックアップテーブルの図である。
図4】本開示の一実施形態による、トリプル四重極誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-QQQ)を用いた元素分析計システムの図である。
図5】本開示の一実施形態による、例示的なイオンガイドの略斜視図である。
図6】本開示の一実施形態による、電圧源と共に、図5に示されたような例示的なイオンガイドの略側面図である。
図7】本開示の一実施形態による、ICP-QQQを用いて、多原子イオンに含まれる目標元素同位体を分析するための方法を示す流れ図である。
図8】本開示の一実施形態による、更なる細部において図7の質量分析計を初期化することを示す流れ図である。
図9】本開示の一実施形態による、更なる細部において図7の第1の四重極(Q1)の設定を示す流れ図である。
図10】本開示の一実施形態による、更なる細部において図7の第2の四重極(Q2)の設定を示す流れ図である。
図11】本開示の一実施形態による、更なる細部において図7の出力信号を生成することを示す流れ図である。
図12】表およびグラフの形態において、異なる質量数の同位体に関する正確な質量および従来の質量偏差の例を示す図である。
図13】本開示の一実施形態による、ICP-QQQを用いる元素分析計システムのユーザインターフェースのパネルの図である。
図14】49の元の原子質量数のイオンに関してSOH及びPOイオンにより、スペクトル干渉を解決するために49TiNH(NHとして49Tiを測定するためのICP-QQQシステムにおける質量フィルタリングの一例を示す図である。
図15】NHセルガスのモードにおいて、133Cs及び49TiNH(NHの例示的なQ2走査質量スペクトルを示す図である。
【0017】
本発明の例示的な実施形態の説明
以下の例示的な実施形態の説明において、「一実施形態」、「実施形態」、「例示的な実施形態」、「特定の実施形態」などに対する言及は、説明された実施形態が特定の特徴要素、構造または特性を含むことができるが、あらゆる実施形態が特定の特徴要素、構造または特性を必ずしも含まないかもしれないことを示す。更に、係る言い回しは、必ずしも同じ実施形態に言及しない。更に、特定の特徴要素、構造または特性が実施形態に関連して説明される場合、明確に説明されているか否かに関わらず、他の実施形態に関連して係る特徴要素、構造または特性に影響を及ぼすために当業者の知識の範囲内であると具申する。
【0018】
概観
目標元素を有する多原子イオンに関して求められる正確な質量を用いて目標元素を分析するためのシステム及び方法が、本開示において説明される。実施形態において、正確な質量は、多原子イオン中の目標元素に関して求められる。例において、これは、目標元素が多原子イオン中に存在する場合に生じる質量偏差を補正することを含む。質量偏差の補正は、異なる目標元素およびコリジョン/リアクタントセルにおいて使用される異なるセルガスのために取得され得る。
【0019】
一実施形態において、正確な質量を求めることは、目標多原子イオンに対応する質量数とリアクションセルにおける反応物質に対応する質量偏差補正の関数である。このように、一特徴に従って、正確な質量が、目標元素を有する多原子イオンを含む多原子イオンに関して求められる。
【0020】
実施形態において、本明細書で説明されるような質量偏差補正を用いて求められる正確な質量値は、ICP-MSシステムに制御信号を印加するために使用され得る。例えば、制御信号は、目標元素を有する多原子イオンに関して求められた正確な質量に基づいて四重極を設定することを含むことができる。実施形態は、オンマスモード又はマスシフトモードで動作されるICP-MSシステムを含むことができる。実施形態は、単一四重極またはトリプル四重極ICP-MSシステムを含む。トリプル四重極ICP-QQQシステムを有する実施形態において、質量偏差補正に基づいて求められる正確な質量は、Q2がQ1に等しくない場合、第2の四重極質量分析器(Q2値)を設定するために適用され得る。単一四重極ICP-Qシステムを有する実施形態において、質量偏差補正に基づいて求められる正確な質量は、四重極質量分析器(Q値)を設定するために適用され得る。
【0021】
測定および元素分析の精度を改善する幾つかの追加の利点が実現される。第1に、目標原子/原子イオンを含有する多原子イオンがイオンの正確な質量において測定されるので、信号強度が最大化される。第2に、目標イオンが質量分析計の正確なピーク頂点において測定されるので、安定した及び再現性のある分析が達成される。最後に、スペクトル干渉を避けるマスシフト方法において目標同位体を含有する多原子イオン中の目標同位体を測定する場合に、広ダイナミックレンジにおける線形性が達成される。これら利点は、以下の更なる実施形態の説明において、さらにいっそう明らかになるであろう。
【0022】
用語
本明細書で使用される限り、「目標元素」は、以下に限定されないが、任意の同位元素、イオン、又は原子の同位体イオンを含む原子を意味する。目標元素は、重金属、有毒物質、化学元素、又は他のタイプの元素を含むことができる。
【0023】
「目標同位体」または「目標元素同位体」は、目標元素の同位体を意味する。
【0024】
質量に関連する用語
本明細書で使用される限り、元素に関する用語「質量数」は、原子核における陽子(Z)及び中性子(N)の総数を意味し、Z+Nに等しい。
【0025】
本明細書で使用される限り、用語「正確な質量」は、中性子、陽子および電子から構成される原子、分子または化合物(又はそれらのイオン)の質量を意味する。例えば、本明細書で使用されるような多原子イオンの正確な質量は、所定の同位体成分を有する、中性子、陽子および電子から構成された多原子イオンの計算された質量であることができる。
【0026】
本明細書で使用される限り、用語「質量偏差」は、正確な質量と質量数の差を意味する。
【0027】
本明細書で使用される限り、用語「質量偏差補正」は、本開示で説明されるように、目標元素が多原子イオンに存在する場合に(例えば、多原子イオン中の目標同位体)、質量の変化を考慮する質量の補正を意味する。
【0028】
ICP-MS用語
本明細書で使用される限り、用語「流体」は、導管を流れることが可能な任意の物質に言及するために一般的な意味で使用される。かくして、用語「流体」は一般に、特別の定めのない限り又は文脈が別段に示さない限り、液体またはガスを意味することができる。
【0029】
本明細書で使用される限り、用語「液体」は一般に、溶液、混濁液、又は乳剤を意味することができる。固体粒子および/または気泡は、液体内に存在することができる。
【0030】
本明細書で使用される限り、用語「エアロゾル」は一般に、観測および測定されるのに十分に長くガス状媒質に混濁された液滴および/または固体粒子の集合を意味する。エアロゾルの小滴または粒子のサイズは一般に、マイクロメートル(μm)のオーダーである。かくして、エアロゾルは、液滴および/または固体粒子、及び液滴および/または固体粒子を混入させる又は担っているガスを含むものとみなされ得る。
【0031】
本明細書で使用される限り、用語「原子化」は、分子を原子に分解するプロセスを意味する。例えば、原子化は、プラズマ助長環境において行なわれ得る。液体試料の場合、「霧化」は、エアロゾルを形成するために液体試料を霧状にすることを必然的に伴うことができ、後にエアロゾルをプラズマにさらす又はプラズマからの熱にさらすことが続く。
【0032】
本明細書で使用される限り、「液体試料」は、液体マトリックスに溶解した又は保持された関心のある1つ又は複数の異なるタイプの被検物質を含む。液体マトリックスは、マトリックス成分を含む。「マトリックス(基質)成分」の例は、以下に限定されないが、水および/または他の溶剤、酸、塩および/または溶解固形物のような可溶性物質、非溶解固形物質または微粒子、及び分析の関心の無い任意の他の化合物を含む。
【0033】
本開示の便宜上、特別の定めのない限り又は文脈が別段に示さない限り、「コリジョン(衝突)/リアクション(反応)セル」は、コリジョンセル、リアクションセル、或いは例えば衝突モードと反応モードとの間で切換え可能であることによりコリジョンセル及びリアクションセルの双方として動作するように構成されたコリジョン/リアクションセルを意味する。
【0034】
本開示の便宜上、特別の定めのない限り又は文脈が別段に示さない限り、「衝突/反応ガス」は、コリジョン/リアクションセル内のイオンと反応せずに係るイオンと衝突するために利用される不活性衝突ガス、又はコリジョン/リアクションセル内で検査対象イオン又は干渉イオンと反応するために利用される反応ガスを意味する。
【0035】
本明細書で使用される限り、用語「検査対象イオン」は一般に、分析されている試料の成分をイオン化することにより生成される任意のイオンを意味する。ICP-MSの具体的状況において、検査対象イオンは一般に、金属、又は希(ノーブル)ガス(例えば、アルゴン)を除いた他の元素の正の単原子イオンであるか、或いは衝突/反応ガスを、金属、又は希ガスを除いた他の元素の正の単原子イオンと反応させることにより生成されたプロダクトイオンである。
【0036】
ICP-MSを用いる元素分析計システム
図1は、一実施形態による元素分析計システム100の図である。システム100は、ワークステーション120に結合された誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)110を含む。イオン源およびインターフェース(図示せず)を用いて、ICP-MS110への経路に沿ってイオンビームを生成することができる。試料は、分析のために元素を導入するために、イオンビーム経路へ同様に導入され得る。ワークステーション120は、元素分析計122及び質量フィルタコントローラ124を含む。ワークステーション120はメモリ130及びユーザインターフェース140に結合される。メモリ130は質量データ135を格納する。
【0037】
一実施形態において、ワークステーション120は、以下に限定されないがメモリ130を含むメモリに結合された及びユーザインターフェース140に結合された1つ又は複数のプロセッサを有するコンピューティングデバイスである。ワークステーション120は、コンピュータ(デスクトップ、タブレット、又は携帯型デバイス)を含むコンピューティングデバイスの任意のタイプ、又はコンピューティングデバイスの組み合わせであることができる。元素分析計122及び質量フィルタコントローラ124はそれぞれ、ソフトウェア、ハードウェア、ファームウェア、又はそれらの組み合わせで実現され得る。ユーザインターフェース140により、ユーザが、多原子イオン中に含まれる目標同位体を分析するために元素分析計122に選択を入力することを可能にする。ユーザインターフェース140は、データを入出力するために、キーボード、タッチスクリーン、マウス、トラックパッド、マイクロホン、スピーカ又は他のユーザ入力または出力デバイスのような、周辺機器に結合され得る。
【0038】
ICP-MS110は、以下に限定されないが、単一またはトリプル四重極MS(ICP-Q又はICP-QQQ)、又は飛行時間型、磁場型、又は質量/電荷比のような質量に基づいてイオンを分離するための他の技術を用いるMSを含む、任意のタイプの誘導結合プラズマ質量分析装置であることができる。ワークステーション120は、ICP-MS110に結合されて、ICP-MSを制御するために1つ又は複数の制御信号を提供する。また、ワークステーション120は、元素分析計122により更なる処理および分析のためにICP-MS110からデータも受け取る。例えば、ICP-MSは、イオン検出器へ入射するフィルタリングされたイオンビーム中に目標同位体を有する多原子イオンを検出するイオン検出器を含むことができる。イオン検出器は、未処理データを生成し、未処理データを前処理し、検出された多原子イオンを表す未処理データ又は前処理された未処理データを、分析する、格納する、及びユーザに表示するために元素分析計122に出力する。
【0039】
一例において、元素分析計122は、ICP-MS110を通過するイオンビーム中の検査対象イオンを検出するためにICP-MS110を制御するツールである。検査対象イオンは目標元素を有する。これら目標元素は、分析されている元素の異なる同位体(目標同位体とも呼ばれる)を含む。検査対象イオンは多原子イオンを含む可能性がある。目標元素を有する多原子イオンは、イオンビームがセルガスを有するコリジョンセル又はリアクションセルを通過する際に生じる。また、多原子イオンは、分析されている異なる目標同位体も含む可能性がある。
【0040】
一特徴において、元素分析計122は、質量フィルタコントローラ124を含む。図2は、一実施形態による多原子イオン200の質量フィルタリングを制御するための方法の流れ図である(ステップ210~230)。簡略して、質量フィルタコントローラ124の動作は、図2に示されたルーチン及び図3A及び図3Bの表データの例に関連しても説明される。しかしながら、図2の方法および図3A図3Bの例示的なデータは、図1のシステムに制限されることは意図されておらず、本説明を与えられる当業者に明らかなように、他の構成において使用され得る。同様に、図1のシステムは、図2の方法および図3A及び図3Bの例示的なデータに制限されることを必ずしも意図されていない。
【0041】
一実施形態において、質量フィルタコントローラ124は、目標同位体を有する多原子イオンを表す多原子イオン質量データを求め(ステップ210)、求められた多原子イオン質量データに基づいて1つ又は複数の制御信号125を生成する(ステップ220)。質量フィルタコントローラ124は、質量に基づいてICP-MS110を通ってイオン検出器に進むイオンビーム中の多原子イオンをフィルタリングするために、制御信号(単数または複数)125をICP-MS110に出力する。一例において、質量フィルタコントローラ124は、ユーザインターフェース140に結合された1つ又は複数のプロセッサで具現化され、元素分析計122に対する入力選択を表すデータを受け取るように構成される。例えば、入力選択は、セルガス及び分析されている目標同位体を識別する選択を含むことができる。
【0042】
一実施形態において、質量フィルタコントローラ124は、目標同位体を有する多原子イオンの正確な質量に等しい多原子イオン質量データを求める。質量データ135は、多原子イオン質量データを含む質量データを入れることができる。一実施形態において、質量フィルタコントローラ124は、目標同位体を有する多原子イオンの正確な質量を求めるために、メモリ130に格納された多原子イオン質量データ135にアクセスすることができる。例えば、質量フィルタコントローラ124は、目標同位体を有する多原子イオンの正確な質量を求めるためにテーブルルックアップを行うことができる。別の実施形態において、質量フィルタコントローラ124は、目標同位体を有する多原子イオンの正確な質量を計算することができる。例えば、これら正確な質量は、セルガス及び分析されている目標同位体を識別する入力選択から求められ得る。
【0043】
更なる実施形態において、質量データ135は、メモリ130に質量偏差補正データを格納することができる。質量偏差補正データは、目標同位体、及びイオンビーム中に多原子イオンを形成するためにICP-MSに使用されるセスガスに基づく。質量偏差補正データは、単原子イオン、元素および同位体に関して求められた従来の質量データに対する補正であることができる。このように、質量偏差補正データは、目標同位体を有する多原子イオンの正確な質量に等しい多原子イオン質量データを求めるために、従来の質量データと合算され得る。
【0044】
例えば、図3Aに示されるように、メモリ130は、表(テーブル)300を格納することができる。表300は、様々な多原子イオンの質量データのエントリの行を含むことができる。一例において、行は、多原子イオンに関する以下の情報、即ち、質量数、正確な質量(amu単位)、amu単位の質量偏差(Δm)、amu単位の質量偏差補正、及び多原子イオン識別子を有する幾つかのフィールド又は列を含むことができる。多原子イオン識別子は、特定の多原子イオンの任意の識別子であることができる。一例において、この識別子は、多原子イオンが求められることを可能にする目標元素同位体値およびセルガス値を含むことができる。
【0045】
一例において、質量フィルタコントローラ124は、特定の多原子イオンに関する質量偏差補正データを得るために、表300の探索(ルックアップ)を行うことができる。この探索された質量偏差補正データは、目標同位体を有する多原子イオンの正確な質量に等しい多原子イオン質量データを求めるために、従来の質量データと合算され得る。
【0046】
対照的に、図3Bに示されるように、従来の正確な質量を求めることに関して、メモリ130は、単原子イオンに関する従来の正確なデータと共に表(テーブル)320を格納することができる。表320は、単原子イオンに関する質量データのエントリの行を含むことができる。一例において、行は、単原子イオンに関する以下の情報、即ち質量数、正確な質量(amu単位)、amu単位の質量偏差(Δm)、及び単原子イオン識別子を有する幾つかのフィールド又は列を含むことができる。
【0047】
質量フィルタコントローラ124は更に、生成された1つ又は複数の制御信号125をICP-MS110に出力する。生成される制御信号125のタイプは、ICP-MS110で使用される質量フィルタリングを設定する。一実施形態において、ICP-MS110は、四重極Q値に従って制御される質量分析器を有する単一四重極ICP-MSである。質量フィルタコントローラ124は、求められる多原子イオン質量データに従ってQ値を特定(識別)する制御信号125を生成し、ICP-MS110を通過するイオンビームの質量フィルタリングを制御するために当該制御信号を質量分析器に出力する。
【0048】
別の実施形態において、ICP-MS110は、第1及び第2の四重極Q1及びQ2のそれぞれに従って、ICP-MS110を通過するイオンビームにおいてイオン質量をフィルタリングするように制御された第1及び第2の質量分析器を有するトリプル四重極ICP-MSである。一実施形態において、質量フィルタコントローラ124は、求められる多原子イオン質量データに従ってQ2値を特定する制御信号125を生成し、ICP-MS110を通過するイオンビームの質量フィルタリングを制御するために第2の質量分析器に制御信号125を出力する。第1の質量分析器に関する他の四重極値(Q1)及び第1と第2の質量分析器との間のリアクタント(反応)セルに関するQ値は、従来の技術に従って設定され得る。一例において、質量フィルタコントローラ124は、トリプル四重極ICP-MSがスペクトル干渉を低減するためのマスシフトモードで動作している場合のようにQ2がQ1に等しくない場合に、求められる多原子イオン質量データに従ってQ2値を特定する制御信号125を生成する。
【0049】
実施形態において、質量フィルタコントローラ124は、質量分析器に印加される1つ又は複数の電圧信号を制御するために、質量分析器に制御信号125を出力するように構成され得る。例えば、質量フィルタコントローラ124は、質量分析器に結合された電源に制御信号125を出力するように構成され得る。次いで、電源は、受け取られた制御信号に基づいて、1つ又は複数の電圧信号を生成することができる。一具現化形態において、1つ又は複数の電圧信号は、DC電圧信号(U)及びAC電圧信号(Vp)であることができる。例えば、U及びVp電圧は、第2の質量分析器を通過するイオンビームの質量フィルタリングを制御するために(Q2に従って)第2の質量分析器の四重極電極に印加され得る。このように、電圧信号は、求められる多原子イオン質量データを考慮して生成されることができ、この結果、さらにいっそう正確にイオンビーム中のイオンをフィルタリングすることができる。
【0050】
例示的な多原子イオン及びセルガス
実施形態において、セルガスは、以下の既知のセルガスの何れかを含むことができる、即ち、アンモニア(NH)、酸素(O)メタン(CH)、エタン(C)、プロパン(C)、フッ化メタン(CHF)、四フッ化炭素(CF)、一酸化窒素(NO)、亜酸化窒素(NO)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO)、アセチレン(C)、プロピレン(C)、窒素(N)、アルゴン(Ar)、ネオン(Ne)、キセノン(Xe)、クリプトン(Kr)、水素(H)及びヘリウム(He)である。アジレント・テクノロジーズ・インクにより発行された「Agilent 8900 Triple Quadrupole ICP-MS, Hardware Maintenance Manual」、Appendix A、Table 5、128-129頁、2016年を参照。目標元素同位体、及びそれらの結果として生じる多原子イオンの例も、アジレント・テクノロジーズ・インクにより発行され、N. Sugiyama及びK. Nakano著「Reaction Data for 70 Elements Using O2, NH3, and H2 gas with theAgilent 8800 Triple Quadrupole ICP-MS, Technical Note」、Table 2A-2B、6-13頁、2014年により説明された元素イオン及び反応プロダクトイオンを含むことができる。これら元素の利用可能な同位体を含む目標元素イオンとして使用され得る例示的な元素(Mより示された)は、以下の通りである。即ち、Li、Be、B、Na、Mg、Al、Si、P、S、Cl、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Se、Br、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Sn、Sb、Te、I、Cs、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、W、Re、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、Pb、Bi、Th、及びUである。例えば、以下の目標元素および同位体(M)は、この説明を与えられる当業者に明らかなように、3つの異なるセルガスH、O及びNHにより生成された反応物質から形成された多原子イオン内に含まれる可能がある。同文献を参照。係る例示的な多原子イオンは、以下のように各セルガスと反応することから形成され得る。即ち、水素Hの場合、M、MH、MH 、MH 、酸素Oの場合、M、MO、MO 、MO 、及びアンモニアNHの場合、M、M(NH)、M(NH、M(NH、MNH(NH、MNH(NH、M(NH 、MNH(NH 、MNH(NH 、及びM(NH である。同文献を参照。これら実施形態および例は、例示であり、本発明を制限することは意図されていない。
【0051】
特定の同位体に関して求められる正確な質量の値、及び多原子イオンにおいて目標同位体の元素分析に使用されるセルガスの更なる例は、後述される。別段の指示がない限り、本明細書の例において、正確な質量、質量偏差、及び質量偏差補正に与えられる数値は、原子質量単位(amu)である。1amu(u又はDaとも呼ばれる)は、1.66053×10-27キログラム(kg)に等しい質量の標準単位であり、炭素Cの原子の質量の1/12である。
【0052】
アンモニア(NH)セルガスの場合のチタン(Ti)同位体
一例において、目標同位体(49Ti)は、TiNH(NHとして多原子イオンにおいて検出される。これは、元の質量数49において、3216OH及び3118のスペクトル干渉から離れてICP-MSシステムにおいて行われ得る。トリプル四重極において、Q1は、質量数49を有するイオン(従来の正確な質量計算を用いて)が通過されることを可能にするように制御される。そのため、目標イオン49Ti及び干渉イオン31183216OHを含む49の質量を有するイオンがQ1質量分析器フィルタを通過して、NHガスで満たされたリアクション(反応)セルに入る。49TiのみがNHと反応してTiNH(NHを形成する。第2の四重極設定値Q2は、TiNH(NH多原子イオンのみがイオン検出器に送られることを可能にするために質量数133に設定される。
【0053】
Q2がQ1に等しくない場合、目標元素同位体は、使用する計算の代わりに、多原子イオンと同じ原子番号を有する単一原子または原子イオンに対応する正確な質量を用いて、それを含有する多原子イオンの正確な質量を求めることによって測定される。正確な質量を求めることに基づいて、RF及びDC電圧の振幅または周波数が正確に測定するために質量分析器の四重極設定値Q2に印加され、多原子イオンTiNH(NHに関する出力信号を生成する。
【0054】
一実施形態において、TiNH(NHの正確な質量数は、質量数から以下に与えられる式に続いて計算される。
【0055】
セルガスがアンモニアNHである場合、以下の計算が適用される。即ち
目標プロダクトイオンは、T(NH、TH(NH、TN(NH、TNH(NH、又はTNH(NH、ここで、Tは、測定されるべき目標同位体、例えばT=49Ti及びi=0、1、2又は3である。
Ma:目標元素同位体の質量数、Mp:目標同位体を含有する多原子イオンの質量数。
EMa:目標元素同位体の正確な質量、EMp:目標同位体を含有する多原子イオンの正確な質量。
Num of N:多原子イオンに含有される窒素原子の数。
Num of H:多原子イオンに含有される水素原子の数。
EMn:窒素同位体14N原子の正確な質量、EMn=14.003074
EMh:水素同位体H原子の正確な質量、EMh=1.007825
N1=INT(Mp-Ma)/17;*)INT(A)は、Aを超えない最大整数。
N2=Mp-Ma-17*N1
N1×17=Mp-Maの場合、目標プロダクトイオンは、T(NH)N1であり、「Num of N」=N1、「Num of H」=3×N1
N2=14である場合、目標プロダクトイオンはTN(NH)N1であり、「Num of N」=N1+1、「Num of H」=3×N1
N2=15の場合、目標プロダクトイオンはTNH(NH)N1であり、「Num of N」=N1+1、「Num of H」=3×N1+1
N2=16の場合、目標プロダクトイオンはTNH(NH)N1であり、「Num of N」=N1+1、「Num of H」=3×N1+2
上記の何れでもない場合、目標プロダクトイオンはTH(NH)N1であり、「Num of N」=N1、「Num of H」=Mp-Ma-14×「Num of N」
EMp=EMa+EMn×「Num of N」+EMh×「Num of H」)。
【0056】
この場合、NHセルガスが使用される際、49TiNH(NHが形成される。多原子イオンの質量数は、133であり、求められる及び使用される正確な質量は、133.072785である。
【0057】
図14は、リアクションセルにおいて反応物質としてNHセルガスを用いてICP-MS/MSにおいてTiNH(NHとしてチタン(Ti)の同位体49Tiを測定するための例示的な元素分析計システムの図を示す。多原子イオンの質量数は、133である(質量数の合計=49+14×5+1×14=133)。当該方法において、Q1は、49の質量数を有するイオンが通過されることを可能にするために、質量数49に設定される(正確な質量は、以下のステップ734で説明されるように従来の計算に従って48.947865である)。Q2は、133の質量数を有するイオンが検出器に送られることを可能にするために、質量数133に設定される(従来の計算による正確な質量数は132.905452である)。リアクションセルは、NHガスで満たされ、この場合、目標イオン49Tiは、NH分子と反応して、TiNH(NHを形成する。このように、元の質量数49におけるスペクトル干渉から離れて、133の異なる質量において49Tiが検出され得る。
【0058】
一特徴において、多原子イオンTiNH(NHを検出するために、Q2は、133の質量数から計算された正確な質量に基づいて制御される。発明者により認識されるように、従来の質量を求めることが使用される場合、即ち多原子イオンTiNH(NHの正確な質量が従来の方法により133の質量数から計算された正確な質量と異なる場合、エラーが生じる。
【0059】
133Csの正確な質量=132.905452。49TiNH(NH=133.072785(49Ti、14N及びHの正確な質量は、48.947865、14.003074、及び1.007825である)。133Csの質量偏差は-0.094548であり、後続の多原子イオンの質量偏差は+0.072785である。0.167333amuの差がある。
【0060】
当該差は、元素分析における問題、即ち低信号および/または非線形較正の原因となる。
【0061】
水蒸気(HO)セルガスの場合のチタン(Ti)同位体
セルガスが水HOの蒸気である場合、以下のことが適用される。即ち、
目標プロダクトイオンは、T(HO)、又はTH(HO)、TO(HO)、又はTOH(HO)、Tは、測定されるべき目標同位体、例えばT=49Ti及びi=0、1、2又は3である。
Ma:目標元素同位体の質量数、Mp:目標同位体を含有する多原子イオンの質量数。
EMa:目標元素同位体の正確な質量、EMp:目標同位体を含有する多原子イオンの正確な質量。
Num of O:多原子イオンに含有される酸素原子の数。
Num of H:多原子イオンに含有される水素原子の数。
EMo:酸素同位体16O原子の正確な質量、EMo=15.994915
EMh:水素同位体H原子の正確な質量、EMh=1.007825
N1=INT(Mp-Ma)/18;*)INT(A)は、Aを超えない最大整数。
N2=Mp-Ma-18*N1
N1×18=Mp-Maの場合、目標プロダクトイオンは、T(HO)N1であり、「Num of O」=N1、「Num of H」=2×N1
N2=17である場合、目標プロダクトイオンはTOH(HO)N1であり、「Num of O」=N1+1、「Num of H」=2×N1+1
N2=16の場合、目標プロダクトイオンはTO(HO)N1であり、「Num of O」=N1+1、「Num of H」=2×N1
上記の何れでもない場合、目標プロダクトイオンはTH(HO)N1であり、「Num of O」=N1、「Num of H」=Mp-Ma-1B×「Num of O」
EMp=EMa+EMo×「Num of O」+EMh×「Num of H」*)。
【0062】
この場合、HOセルガスが使用される際、49Ti12(HO)が形成される。多原子イオンの質量数は133であり、求められる及び使用される正確な質量は、133.084025である。
【0063】
メタン(CH)セルガスの場合のチタン(Ti)同位体
セルガスがメタンCHである場合、以下のことが適用される。即ち、
目標プロダクトイオンは、T(CH、又はTH(CH、TC(CH、又はTCH(CH、又はTCH(CH、又はTCH(CH、Tは、測定されるべき同位体、例えばT=49Ti及びi=0、1、2又は3である。
Ma:目標同位体の質量数、Mp:目標同位体を含有する多原子イオンの質量数。
EMa:目標同位体の正確な質量、EMp:目標同位体を含有する多原子イオンの正確な質量。
Num of C:多原子イオンに含有される炭素原子の数。
Num of H:多原子イオンに含有される水素原子の数。
EMc:炭素同位体12C原子の正確な質量、EMc=12.000000
EMh:水素同位体H原子の正確な質量、EMh=1.007825
N1=INT(Mp-Ma)/16;*)INT(A)は、Aを超えない最大整数。
N2=Mp-Ma-16*N1
N1×16=Mp-Maの場合、目標プロダクトイオンは、T(CH)N1であり、「Num of C」=N1、「Num of H」=4×N1
N2=12である場合、目標プロダクトイオンはTC(CH)N1であり、「Num of C」=N1+1、「Num of H」=4×N1
N2=13の場合、目標プロダクトイオンはTCH(CH)N1であり、「Num of C」=N1+1、「Num of H」=4×N1+1
N2=14の場合、目標プロダクトイオンはTCH(CH)N1であり、「Num of C」=N1+1、「Num of H」=4×N1+2
N2=15の場合、目標プロダクトイオンはTCH(CH)N1であり、「Num of C」=N1+1、「Num of H」=4×N1+3
上記の何れでもない場合、目標プロダクトイオンはTH(CH)N1であり、「Num of C」=N1、「Num of H」=Mp-Ma-16×「Num of N」
EMp=EMa+EMc×「Num of C」+EMh×「Num of H」)。
【0064】
セシウム同位体
一例において、目標セシウム同位体は、多原子イオンの一部として測定される。目標元素同位体は、質量数133を有する133Csである。133Csの原子イオンとして測定される。一例において、133Csの本明細書で使用される正確な質量は、目標同位体がそれを含有する多原子イオンとして測定される場合、132.905452である。
【0065】
チタン同位体
一例において、目標チタン同位体は49Tiである。質量数133を有する49TiNH(NHの多原子イオンとして測定される。一例において、本明細書の一実施形態における49TiNH(NHの正確な質量は、目標同位体がそれを含有する多原子イオンとして測定される場合、133.072785である。
【0066】
トリプル四重極ICP-MS(ICP-QQQ)を用いる元素分析計システムの実施形態は、詳細に後述される。これら実施形態は、質量偏差補正を考慮する多原子イオン中の目標元素の正確な質量を求めることを含む。
【0067】
トリプル四重極ICP-MS(ICP-QQQ)を用いる試料分析
更なる実施形態において、多原子イオンの正確な質量を求めることが、分析されている試料のイオンビームにおいて質量をフィルタリングするために行われる。多原子イオン質量データを求めることを用いた試料分析の例は、タンデムICP-QQQ410(図4)及びロッド電極(図5及び図6)を有する例示的なシステムに関連して説明される。簡略して、図4図6に示されたシステムの動作は更に、目標元素を分析するための方法(図7図11)及び図12図15の例に関連して説明される。
【0068】
図4は、一実施形態によるICP-QQQシステム410の図である。一般に、ICP-QQQ質量分析計システムを含むICP-MSシステムの構造および様々な構成要素の動作は、当業者に知られており、従って、開示されている主題を理解するための必要に応じて、本明細書において簡潔にのみ説明される。
【0069】
ICP-QQQシステム410は、タンデム質量分析計405を含む。イオン源402及びインターフェース412が、タンデム質量分析計405への入力帯電プラズマビームを提供するために設けられ得る。イオン源402は、試料を霧化およびイオン化するためのプラズマ源を含むことができる。示された実施形態において、プラズマ源は、ICPトーチのような流入(flow-through:フロースルー)プラズマトーチである。動作中、ガス源がプラズマ形成ガスを供給する。プラズマ形成ガスは一般に、必ずしもでないが、アルゴンである。試料は、矢印462により示されるように、試料インジェクタを流れて、活性プラズマへ注入され得る。試料がICPトーチの加熱区域を流れ、プラズマと最終的に相互作用する場合、試料は、当業者により認識される原理に従って、乾燥、気化、原子化およびイオン化を受け、それにより検査対象イオンが試料の成分(特に原子)から生成される。
【0070】
試料は、試料導入セクションを介して領域462のプラズマビームへ導入され得る。例えば、試料源404は、分析されるべき試料を提供することができる。ポンプ及びネブライザが、試料をエアロゾルへ変換するために使用され得る。霧化ガスは、イオン源402においてプラズマを形成するために利用されるプラズマ形成ガスと同じガスであることができるか、又は異なるガスであることができる。試料供給源404は、例えば1つ又は複数のバイアル(小瓶)を含むことができる。複数のバイアルは、1つ又は複数の試料、様々な標準溶液、チューニング液、較正液、リンス液などを含むことができる。試料供給源404は、様々なバイアルを切換えるように構成された自動装置を含むことができ、それによりシステム410において使用するための特定のバイアルの選択が可能になる。
【0071】
別の実施形態において、試料はガスであることができ、ネブライザを必要としない。別の実施形態において、試料供給源404は、液体またはガス試料を収容する加圧リザーバである又は当該加圧リザーバを含むことができ、ポンプを必要としない。別の実施形態において、試料供給源404は、例えば、液体クロマトグラフィー(LC)又はガスクロマトグラフィー(GC)機器のような、分析分離機器の出力であることができる。ICP-MSシステムへの試料導入用の他のタイプのデバイス及び手段は、知られており、本明細書で説明される必要がない。
【0072】
インターフェース412は、大気圧(101.3kPa(760トル))で又はおおよそ大気圧で一般に動作しているイオン源402とICP-QQQ405の他の真空領域との間の減圧の段階を提供することができる。真空システム490は、タンデム質量分析計405のセクションを真空にするために真空状態を適用するために使用され得る。例えば、真空システム490は、内部領域において所望の内圧または真空レベルを維持することができ、そのように行なう際にICP-QQQ405から関心のある検査対象でない中性分子を除去する。真空システム490は、真空にされるべき領域のポートと連絡する適切なポンプ及び通路を含むことができる。
【0073】
タンデム質量分析計405は、ビーム経路464に沿って配列され、コリジョン/リアクタントセル430の両側に配置された第1及び第2の四重極質量分析器420、440を含む。コリジョン/リアクションセル430は、異なる実施形態においてイオン衝突用またはイオン反応用のセルガスを有するセルであることができる。イオンレンズ414は、ビーム経路に沿って第1の四重極質量分析器420の前に、タンデム質量分析計405の入力側に配置され得る。イオン検出器450は、ビーム経路に沿って第2の四重極質量分析器440の後に、タンデム質量分析計405の出力側に配置され得る。イオン検出器450は、ワークステーション120に出力信号を提供するように結合され得る。
【0074】
コリジョン/リアクションセル430は、第1と第2の四重極質量分析器420、440の間にビーム経路464に沿って配置される。衝突(コリジョン)/反応(リアクション)ガス源438(例えば、加圧リザーバ)は、コリジョン/リアクションセル430の内部へ衝突/反応ガスの1つ又は複数(例えば、混合物)を流入するように構成され得る。コリジョン/リアクションセル430は、QQQ構成において中央の「Q」(図4においてQで示される)に対応する四重極電極を有するイオンガイド435を含むことができる。一実施形態において、電源がワークステーション120から制御信号を受け取り、セル430を介してイオンを案内するために所望の無線周波数(RF)場を生じさせるように四重極電極に印加されるべきAC電圧信号を生成する。RF場は、長手方向軸に対して半径方向にイオンの偏倚を制限することにより、長手方向軸に沿った経路464上にイオンビームを収束する働きをする。一実施形態において、セル430内のイオンガイド435は、質量フィルタリングの能力を備えないRFのみのデバイスである。別の実施形態において、イオンガイド435は、当業者により理解されるように、DC電位をRF電位に重畳することにより、質量フィルタの役割を果たすことができる。
【0075】
第1及び第2の四重極質量分析器420、440は、ビーム経路464に沿ってタンデム質量分析計405を通過するイオンの質量をフィルタリングするように働く。イオンガイド425及び445はそれぞれ、第1の四重極質量分析器420及び第2の四重極質量分析器440において電極を有する。質量分析器420は、第1の(又は事前セル)四重極質量フィルタQ1として働く。質量分析器440は、第2の(最終)四重極質量フィルタQ2に対応する。第1の四重極質量分析器420は、どのイオンがコリジョン/リアクションセル430に入るかを制御するために使用される第1の四重極値(Q1)を有する。第2の四重極質量分析器440は、どのイオンが検出器450に進むかを制御するために使用される第2の四重極値(Q2)を有する。
【0076】
一実施形態において、イオンガイド425は、本明細書で説明されるように、目標元素に関する正確な質量に基づいて、DC電位をRF電位に重畳することにより、事前セル質量フィルタの役割を果たすことができる。一実施形態において、イオンガイド445は、後述されるように、目標元素を有する多原子イオンに関する正確な質量に基づいて、DC電位をRF電位に重畳することにより(例えば、U、Vp電圧信号)、事後セル質量フィルタの役割を果たすこともできる。一実施形態において、電源は、ワークステーション120から制御信号125を受け取り、第1及び第2の四重極質量分析器420、440を通り抜けるイオンを案内およびフィルタリングするために所望のRF場を生成するように四重極電極に印加されるべきDC及びAC電圧信号(例えば、U、Vp電圧信号)を生成する。
【0077】
例示的なイオンガイドは、図5図6に関連して更に詳細に説明される。図5は、一実施形態による質量分析器440内のイオンガイド445の一例の略斜視図である。イオンガイド445は、質量分析器440内の入口と出口との間に配置される。入口レンズ522が入口に配置されることができ、出口レンズ524が出口に配置され得る。
【0078】
イオンガイド445は、複数のイオンガイド電極503(又は「ロッド電極」)を含む。イオンガイド電極503は、イオンガイド445の長手方向軸Lの周りに互いから間隔を置いて周方向に配置される。各イオンガイド電極503は、長手方向軸Lから(及び長手方向軸Lに垂直に)半径方向距離の所に配置され、長手方向軸Lに沿って延ばされている。従って、イオンガイド電極503は、入口レンズ522の近くにイオンガイド入口507、イオンガイド電極503の軸の長さだけイオンガイド入口507から軸方向に間隔を置いて及び出口レンズ524の近くに配置されたイオンガイド出口509、及びイオンガイド入口507からイオンガイド出口509まで延びる軸方向に細長いイオンガイド内部511を画定する。
【0079】
図5は、四重極構成(4つのイオンガイド電極)を有するイオンガイド445の一実施形態を示す。他の実施形態において、イオンガイド445は、高次の多極構成、例えば六重極(6つのイオンガイド電極)、八重極(8つのイオンガイド電極)、又は更に高次の多極構成を有することができる。イオンガイド電極503は、円形断面を有する円筒形であることができる。代案として、四重極の場合、イオンガイド内部511に面するイオンガイド電極503の表面は、双曲線プロファイルを有することができる。別の代替として、イオンガイド電極503は、多角形(山稜型、例えば正方形、長方形など)断面を有することができる。
【0080】
図6は、電圧源610を有する、図5に示されたイオンガイド445の略(長手方向)側面図である。電圧源610は、イオンガイド445の様々な構成要素にDC及びAC電位を印加するために利用され得る。一例において、電圧源610は、電圧源RF+DC1として概略的に示されるような、イオンガイド電極503と連絡する第1のDC供給源DC1に重畳されるRF供給源RFを含む。電圧源610は更に、出口レンズ524に結合された第2のDC供給源DC2を含み、更に入口レンズ522に結合された第3のDC供給源DC3を含むことができる。様々なRF及びDC供給源は、同じ又は異なる電圧源の一部であることができ、電源を含むことができる。電圧源610は、ワークステーション120又はICP-QQQ410の一部として1つ又は複数の別個の構成要素として提供され得るか、又はワークステーション120とICP-QQQ410との間に、或いはワークステーション120又はICP-QQQ410に電気結合され得る。
【0081】
特定の応用形態に応じて、イオンガイド425及び435は、上述されたようなイオンガイド445と同じ又は類似することができる。同じ又は類似する電圧源610を利用して、イオンガイド445と同様にイオンガイド425及び435にRF及びDC電位を印加することができるが、質量分析器420における及びセル430を通り抜けるイオン流における質量フィルタリングを設定するために調整され得る。
【0082】
質量分析器420、440は、ICP-MSに適した任意のタイプであることができる。質量分析器の例は、以下に限定されないが、多極電極構造(例えば、四重極質量フィルタ、線形イオントラップ、三次元ポールトラップなど)、飛行時間型(TOF)分析器、扇形磁場および/または扇形電場機器、静電的トラップ(例えば、Kingdon, Knight and ORBITRAP(登録商標)トラップ)、及びイオンサイクロトロン共鳴(ICR)トラップ(FT-ICR又はFTMS、ペニングトラップとしても知られている)を含む。一実施形態に従って、コリジョン/リアクションセル430は、(更に後述されるように)イオンパルス又はパケットとしてイオンを放出するように構成されるが、非パルス動作用に構成された四重極質量フィルタ440又は他の多極デバイス、扇形機器(例えば、扇形磁場および/または扇形電場を含む、二重収束機器を含む)などのような、コリジョン/リアクションセル430からイオンパルス(単数または複数)を受け取る連続ビーム(例えば、非パルス、非トラッピング、又は非格納)質量分析機器と連係して利用され得る。
【0083】
イオン検出器450は、質量分析器440から出力された質量識別されたイオンの流動(又は流れ)を収集および測定するように構成された任意のデバイスであることができる。イオン検出器の例は、以下に限定されないが、電子増倍管、光電子増倍管、マイクロチャネルプレート(MCP)検出器、イメージ電流検出器、及びファラデーカップを含む。イオン検出器450(イオンを受け取る少なくとも前方部)は、質量分析器440のイオン出口に対して90度の角度に向けられることができる。しかしながら、他の実施形態において、イオン検出器450は、質量分析器440のイオン出口と軸上にあることができる。
【0084】
動作中、質量分析器420は、イオンビームを受け取り、コリジョン/リアクションセル430にイオンビームを出力する前に、事前セル質量フィルタとしてそれらの異なる質量対電荷(m/z)比に基づいてイオンを分離または分類する。質量分析器440は、コリジョン/リアクションセル430からイオンビームを受け取り、それらの異なる質量対電荷(m/z)比に基づいてイオンを分離または分類する。分離されたイオンは質量分析器440を通過し、イオン検出器450に到着する。イオン検出器450は、各イオンを検出および計数し、電子検出器信号(イオン測定値信号)を元素分析計のようなワークステーション120のデータ収集構成要素に出力する。質量分析器420、440により行なわれる質量識別により、イオン検出器450が、他のm/z比を有するイオン(試料の異なる検査対象元素から導出される)とは別に、特定のm/z比を有するイオンを検出および計数することが可能になり、それにより、分析されている各イオン質量(ひいては各検査対象元素)のイオン測定値信号が生成される。様々なm/z比を有するイオンは、順次に検出および計数され得る。
【0085】
元素分析計122は、イオン検出器450から受け取った信号を処理し、検出された各イオンの相対信号強度(存在量)を示す質量スペクトルを生成する。所与のm/z比(従って、所与の検査対象元素)で測定されたそのような信号強度は、ICP-QQQ405により処理された試料のその元素の濃度に正比例する。このように、分析されている試料に含まれる化学元素の存在が確認されることができ、且つ化学元素の濃度が求められ得る。
【0086】
特に図4に示されていないが、イオンガイド及び他のイオン光学系を通るイオン光学軸は、質量分析器440への入口を通るイオン光学軸からオフセットすることができ、イオン光学系は、当該オフセットを介してイオンビームを操向するように設けられ得る。この構成により、更なる中性種がイオン経路464から除去される。
【0087】
動作は、目標元素を分析するための方法(図7図11)、例示的なユーザインターフェース(図13)、並びに単原子イオンの正確な質量および多原子イオン中の目標元素の分析に関する質量偏差補正を用いた正確な質量の例(図12及び図14図15)に関連して更に説明される。
【0088】
ICP-MSを用いた多原子イオンに含まれる目標元素同位体の分析
図7は、本開示の一実施形態によるICP-MSを用いて多原子イオンに含まれる目標元素同位体を分析するための方法700を示す流れ図である(ステップ710~760)。簡略して、方法700は、システム410に関連して説明されるが、必ずしも元素分析計システム410に制限されない。また、方法700は、例示であり且つ本発明を制限することが意図されていない多原子イオン中の目標元素同位体の例に関連して説明される。
【0089】
初期化
第1に、目標元素同位体の元素分析のための質量分析計は、初期化される(ステップ710)。例えば、プラズマ源408とイオン検出器450との間のリアクションセルの両側にイオン経路に沿って直列に配列された第1及び第2の四重極質量分析器を含むタンデム質量分析計405が初期化される。
【0090】
図8は、初期化ステップ710を行うための例示的な方法を示す(ステップ810~840)。ステップ810において、パラメータが元素分析計システム410に入力される。一実施形態において、ユーザがパラメータを入力することを可能にするために、ユーザインターフェースが使用され得る。一特徴に従って、これら入力パラメータは、質量偏差補正により求められる正確な質量を考慮して多原子イオンに含まれる目標元素同位体を識別するパラメータを含むことができる。これらパラメータは、目標元素の質量数を識別すること、質量シフト計算を実行するか否かを選択すること、及び正確な質量を求めるために質量偏差補正を実行するか否かを選択することを含むことができる。
【0091】
図13に示された1つの例示的な具現化形態において、ユーザインターフェース制御パネル1300は、ディスプレイ装置を閲覧するユーザに表示され得る。例えば、目標元素がチタン同位体(49)である場合を考察すると、それは、アンモニウム化合物(NH(NH)を用いて多原子イオン中でのその存否に関して分析されている。制御は、ユーザが質量シフトを選択すること(ボタン1302)、モードを調整すること(プルダウンリスト1304)、質量スケール(Mass Scale)表示に進むこと(ボタン1306)、及び元素情報(Element Information)を表示すること(ボタン1308)を可能にするために提供される。
【0092】
制御パネル1300は、ユーザが目標元素を選択することを可能にする第1のパネル1310を含むことができる。図13に示されるように、パネル1310は、元素周期表の図表示を示すことができる。選択(例えば、Ti)のために利用可能であることができる元素は、背景色と異なる色で強調され得る。ユーザは、制御パネル1300上での選択を可能にするユーザインターフェースを通じて元素Tiを選択することができる。例えば、ユーザは、元素Tiを選択するために、周辺装置(例えば、マウス又はトラックパッド)又はタッチスクリーン(指またはスタイラスペンに応答)を使用することができる。音声または他のタイプの制御も同様に使用され得る。
【0093】
選択された元素Tiに関連する入力の更なる特徴付けを可能にするために、更なるパネル1320が表示され得る。例えば、チェックボックス又は他のタイプのユーザインターフェース要素を用いて、ユーザが、目標元素同位体として分析されることが望まれているTiのどの同位体を選択するかを可能にすることができる。この場合、5.41%の同位体の百分率存在量を有する、Ti=49に関するチェックボックスが選択されたように示される。
【0094】
Q1値、Q2値および質量シフト値に関して選択される入力パラメータの概要を示すために、更なるパネル1330が表示され得る。この例において、Q1=49及びQ2=133、及び84の質量シフトが表示される。パネル1340は、ユーザが質量を設定するか否か、予め定義されたシフトを設定するか否か、NHクラスターのタイプを選択するか否か、又はカスタムシフトを設定するか否かを選択することを可能にするチェックボックス又は他のユーザインターフェース要素と共に表示され得る。
【0095】
図13の例示的なユーザインターフェースにおいて、ユーザがTune mode(モードを調整)NHを選択したことが看取され得る。また、ユーザは、Mass Pair(質量ペア);Q1=49及133のQ2もユーザ設定することができる。それに応じて、元素分析計122は、49Tiを含有する及び133の質量数を有するNH(アンモニアのクラスターイオン)の多原子イオンとして、目標元素(被検物質)を測定する。次いで、新たな質量偏差補正が、本明細書で説明されるように、Q2の正確な質量を計算するために適用される。Go to Mass Scale(質量スケールに進む)ボタン1306が選択された場合、ユーザは、パネル1310中の元素を選択する代わりに、関心のある質量数を選択することができる。Element information(元素情報)ボタン1308は、関心のある同位体での潜在的なスペクトル干渉を提供し、例えば49Tiの場合、3217O、48CaHなどの潜在的な干渉が示される。これは、ユーザが測定されるべき同位体を選択することに役立つことができる。
【0096】
例えば、顧客がQ1=49、Q2=133を設定することを望む場合ように、質量シフトを設定するために、3つの仕方が存在する。即ち、
1.直接入力;ユーザはQ1に関して49及びQ2に関して133を直接的に入力
2.「setmass shift(質量シフトを設定)」の使用;ユーザはQ1に関して49を入力し、Q2に関して予め定義されたシフトを選択
NH及び+83(NH(NH)が目標多原子イオンである場合、+18(NH)及び+83(NH(NH)にチェックマークを付ける
Q2=Q1+200である場合、ユーザはそれにチェックマークを付けるためにカスタムシフトも使用して200を入力する。
【0097】
ステップ820において、試料は、帯電したイオン流を形成するためにイオン経路に沿ってプラズマ源から放出されるプラズマに導入するためにロードされる。試料は、液体、固体またはガスの形態であることができる。試料は、特定の用途に依存して変化することができる。環境試験において、例えば、試料は、土壌、大気、水源、又は試験されている他の物質から取り出され得る。例えば、チタン同位体(49Ti)の場合、ロードされる試料は、土壌試料であるかもしれない。
【0098】
ステップ830において、設定電圧が、質量分析計を通るイオン経路に沿って帯電したイオン流を収束する1つ又は複数のイオンレンズに印加される。係る電圧を印加することはよく知られており、タンデム質量分析計405のイオン経路Lに沿って帯電したイオン流を収束するためにイオンレンズ414に如何にして設定電圧を印加することは、本説明を与えられる当業者に容易に明らかであろう。
【0099】
同様に、ステップ840において、セルガス流が、設定された流量でリアクションセル430に反応物質として加えられる。用途に応じてセルガス流を加えることは、よく知られており、リアクションセル430において反応物質として役立つセルガス流を或るガス流量で如何にして加えるかは、本説明を与えられる当業者には容易に明らかであろう。例えば、チタン同位体(49Ti)の場合、セルガス流は、或る流量で加えられるアンモニア化合物であるかもしれない。
【0100】
第1の正確な質量(EM1)を求めること
ステップ720において、目標元素同位体の第1の正確な質量(EM1)は、目標元素同位体に対応する質量数、及び目標元素同位体に対応する第1の質量偏差(質量シフトとも呼ばれる)の関数として求められる。第1の正確な質量(EM1)を求めることはよく知られており、本説明を与えられる当業者に明らかであるように、EM1を求めるための従来の方法が使用され得る。例えば、目標元素同位体(Ti)の場合、目標元素同位体(Ti)に対応する質量数(49)及び目標元素同位体(Ti)に対応する第1の質量偏差に等しい正確な質量が求められ得る。EM1のこの求めることは、メモリに格納された目標元素同位体値および第1の質量偏差値(質量シフト値とも呼ばれる)のテーブル(表)における探索に基づいて自動的に質量フィルタコントローラ124により、或いはグラフ又はプロットで提供される同様の値からの計算により直接的に、行われ得る。例えば、図3Bの表320におけるエントリ330の探索が実行され得る。単一原子または単一イオン中の目標元素同位体の正確な質量EM1を求めるための任意の従来の技術が使用され得る。図12は、正確な質量および異なる質量数の同位体の質量偏差の例を表およびグラフの形態で示す。これら正確な質量および質量偏差は、単一原子または単一イオン中の目標同位体に適する。
【0101】
質量偏差補正を用いた第2の正確な質量(EM2)を求めること
前述されたように、一特徴に従って、本発明者は、第2の正確な質量を求めることに使用され得る新たな質量偏差補正を発見した。本発明者は、目標元素同位体が多原子イオンにおいて分析されている場合に、この新たな質量偏差補正が有益であることを見出した。これは、従来の質量シフト技術を用いてエラーが生じる場合に更に有用である。本発明者は、これらエラーがトリプル四重極(ICP-QQQ)を用いるタンデム質量分析計において生じることを見出し、この場合、スペクトル喪失が、Q1に等しくないQ2を設定することにより避けられることをしばしば試みた。
【0102】
ステップ730において、質量偏差補正が必要であるか否かを判定するために、評価が行われる。一実施形態において、質量フィルタコントローラ124は、多原子イオンに含まれる目標元素同位体の元素分析に質量偏差補正が必要であるか否かを評価する。一実施形態において、この評価は、Q2値がQ1値に等しい(又は等しくない)か否かを比較することを含む。例えば、質量偏差補正は、Q2がQ1に等しくない場合に必要とされる。
【0103】
質量偏差補正が必要である場合、制御は、ステップ732に移り、多原子イオン中の目標元素同位体の第2の正確な質量(EM2)を求める。一実施形態に従って、第2の正確な質量(EM2)は、目標多原子イオンに対応する質量数、及びリアクションセルにおける反応物質に対応する質量偏差補正の関数として求められる。例えば、Q2がQ1に等しくない場合、目標元素同位体のEM2は、目標多原子イオンに対応する質量数とリアクションセルにおける反応物質に対応する質量偏差補正の和として求められる。目標元素同位体(Ti)及びリアクションセルにおける反応ガスNHの場合、Q2=133及びQ1=49(Q2はQ1に等しくない)である。次いで、目標多原子イオンに対応する質量数(133)及びリアクションセルにおける反応物質に対応する質量偏差補正に等しい第2の正確な質量が求められる。EM2のこの求めることは、メモリに格納された目標元素同位体値および質量偏差補正値のテーブルにおける探索に基づいて自動的に質量フィルタコントローラ124により、或いはグラフ又はプロットで提供された同様の値からの計算により直接的に、行われ得る。例えば、図3Aにおける表300中のエントリ310の探索が実行され得る。
【0104】
質量偏差補正が必要とされない場合(即ち、Q2=Q1)、制御はステップ734に移り、目標元素同位体の第2の正確な質量(EM2)を求める。一実施形態に従って、第2の正確な質量(EM2)は、目標イオンに対応する質量数の関数として求められる。例えば、Q2がQ1に等しい場合、目標元素同位体のEM2は、目標イオンに対応する質量数133と従来のセシウムの質量偏差の和として求められる(セシウムは、単一原子の正確な質量を得るための従来の質量偏差データが利用可能である質量数133を有する単一原子である)。EM2のこの求めることは、メモリに格納された目標元素値および質量偏差値のテーブルにおける探索に基づいて自動的に質量フィルタコントローラ124により、或いは図12に示されたようなグラフ又はプロットで提供された同様の値からの計算により直接的に、行われ得る。
【0105】
例示的なEM1及びEM2を求めること
一例において、目標元素同位体は、質量数133を有する多原子イオンTiNH(NHに含まれる質量数49を有するチタン(Ti)を含み、リアクタントセル中の反応物質は、NHセルガスを含む。ステップ720において、第1の正確な質量(EM1)は、約48.947865に等しい値を有する第1の正確な質量(EM1)である。質量偏差補正が必要とされる場合、得られる第2の正確な質量(EM2)は、約133.072785に等しい値を有する第2の正確な質量(EM2)である(ステップ732、行310)。質量偏差補正が必要とされない場合、第2の正確な質量(EM2)を求めることは、約132.905452に等しい値を有する第2の正確な質量(EM2)を得る(ステップ734、行330)。
【0106】
第1及び第2の四重極(Q1、Q2)を設定
ステップ740において、第1の四重極(Q1)は、ステップ720からの求められた第1の正確な質量(EM1)に基づいて質量分析計に設定される。この設定は、Q1に等しい質量数未満の質量をフィルタリングするように制御電圧を印加することを含むことができる。図9は、ステップ740に関する例示的な具現化形態を更に詳細に示す。第1に、一組のDC及びAC制御電圧(AC1、DC1)が、求められた第1の正確な質量(EM1)に基づいて計算される(ステップ910)。次いで、Q1に等しい質量数未満の質量をフィルタリングするために、一組の求められたDC及びAC制御電圧(AC1、DC1)が印加される(ステップ920)。
【0107】
ステップ750において、第2の四重極(Q2)が、ステップ732又はステップ734から求められた第2の正確な質量(EM2)に基づいて、質量分析計に設定される。この設定は、Q2に等しい質量数未満の質量をフィルタリングするために制御電圧を印加することを含むことができる。図10に示された更なる例において、ステップ750は、求められた第2の正確な質量(EM2)に基づいて一組のDC及びAC制御電圧(AC2、DC2)を計算すること(ステップ1010)を含むことができる。次いで、Q2に等しい質量数未満の質量をフィルタリングするために、一組の求められたDC及びAC制御電圧(AC2、DC2)が印加される(ステップ1020)。
【0108】
ステップ740及びステップ750は、ワークステーション120において実行され得る。一実施形態において、質量フィルタコントローラ124は、ステップ910及びステップ1010における計算を実行し、制御信号を電圧源610に出力することができる。次いで、電圧源610はステップ920及びステップ1020を実行し、個々の制御電圧を四重極質量分析器420及び440に印加することができる。
【0109】
一実施形態において、電圧制御信号は、印加されるDC(U)及びAC振幅(Vp)を有する電圧信号である。実際の電圧U及びVpは、本明細書で説明されるように、よく知られた四重極質量フィルタ制御に類似するが、イオンの正確な質量(EM1及びEM2)を用いて計算される。例えば、電圧U及びVpは、以下の式1に基づいて計算され得る。即ち
a=8eU/(mr)、q=4eVp/(mr) (式1)
ここで、a、qは、マシュー方程式の正規化されたパラメータであり、
f:ACの周波数、U:印加されるDC電圧、V:印加されるAC振幅
m:イオンの正確な質量(上記のEM1又はEM2)、及び
r:四重極の電極間の有効な半径。
【0110】
四重極質量フィルタの質量分解能(Δm)は、「a」及び「q」により求められる。一例において、a=0.237に関して、q=0.706がΔm=1amuに使用される。
【0111】
使いやすいように、ユーザは、目標元素同位体を選択するために、ユーザインターフェース140を通じて質量数を入力することができる。しかし、質量フィルタコントローラ124は、イオンの正確な質量(EM1又はEM2)を用いて、Qポールフィルタに印加される実際の電圧U及びVpを計算することができる。例えば、入力質量数から正確な質量(EM2)を計算するために、質量フィルタコントローラ124は、
49TiがTiNH(NHとして、及び49+14×5+1×14=133であるべき目標多原子イオンの質量数として測定される場合に、
第2の四重極Q2の電圧U及びVpを計算する及び第2の四重極Q2に電圧U及びVpを印加する(ステップ1010及び1020)ために使用される133.072785に等しい正確な質量(EM2)を求める(ステップ732)ことができる。
【0112】
DC及びAC電圧は、本説明を与えられる当業者に明らかであるように、所望のイオン流、並びにセル430及び質量分析器420、440を通じてフィルタリングすることに従って様々な態様で電極に印加され得る。本明細書で説明されるように、感度を改善するためにイオンの正確な質量に基づいて電圧(U、Vp)を計算することに加えて、他の技術を用いて、電場およびイオン流を制御することができる。
【0113】
一実施形態において、第1のDC供給源DC1は、イオンガイド電極503に負のDCバイアス電位を印加し、その負のDCバイアス電位はイオンガイド電極503の長さに沿って一定である。別の実施形態において、第1のDC供給源DC1は、イオンガイド電極503の長さに沿って軸方向DC電位勾配を生成するように構成され得る。このために、第1のDC供給源は、イオンガイド電極503の入口端部および出口端部にそれぞれ結合され得る2つの異なるDC電位を供給することができる。例えば、DC電位は、入口端部および出口端部においてイオンガイド電極503の導電層または抵抗層に結合され得る。軸方向DC電位勾配の印加は、イオンが順方向に移動することを保ち、イオンが出口レンズ522を介してイオンガイド546を逃れることを防止するのに有用であることができる。更に、第2のDC供給源DC2は、出口レンズ524に出口DC電位を印加することができる。軸方向DC電位勾配に加えて又はそれに対する代案として、所望の時間量の間にイオンガイド536へイオンを送った後、入口レンズ522に印加されるDC電位DC3は、イオンがセル入口レンズ522を介してイオンガイド536を逃れることを防止するために、及び追加のイオンがイオン源108からイオンガイド536へ送られることを阻止するために増大され得る。
【0114】
出力信号生成
ステップ760において、システム100(元素分析計122)は、目標元素同位体の多原子イオン中の1つ又は複数の元素を表す出力信号を生成する。図11に示されるように、一実施形態において、ステップ760は、以下のステップ(1110~1130)を含むことができる。これらステップは、イオン検出器150に結合された元素分析計122の制御下で実行され得る。
【0115】
第1に、元素分析計122は、所定の積分時間を待つ(ステップ1110)。この所定の積分時間は、分析されている目標元素、検出器450でのイオン流の強度または強さ、又は他の設計考慮事項に依存して変化することができる予め設定された時間であることができる。この時間中、元素分析計122は、積分信号を得るために、検出器450により出力された検出信号を積分する(ステップ1120)。次いで、積分信号は、出力され得る(ステップ1130)。元素分析計122は、メモリに格納するための、リモートサイトに送るための、又は表示するための出力信号として積分信号を出力することができる。
【0116】
利点は、目標元素イオンがそれらを含有する多原子イオンとして検出される方法における目標元素原子または目標元素イオンのより正確な測定である。
【0117】
チタン及びアンモニアセルガスの例は、例示であり、制限することを意図されていない。別の例において、水蒸気セルガスが使用される。目標元素同位体は、質量数133を有する多原子イオンTi12(HO)に含まれる質量数49を有するチタン(Ti)を含み、リアクタントセル中の反応物質は、HOセルガスを含む。ステップ720において、第1の正確な質量(EM1)は、約48.947865に等しい値を有する第1の正確な質量(EM1)である。質量偏差補正が必要とされる場合、得られる第2の正確な質量(EM2)は、約133.084025に等しい値を有する第2の正確な質量(EM2)である(ステップ732)。質量偏差補正が必要とされない場合、第2の正確な質量(EM2)を求めることは、約132.905432(従来の質量偏差値)に等しい値を有する第2の正確な質量(EM2)を得る。
【0118】
例において、異なるセルガスに従って、多数の異なる多原子イオン中の任意の又は全ての異なる目標同位体のこれら数に関して正確な質量を求めることに関する質量偏差補正値は、質量フィルタコントローラ124により探索またはアクセスするためにテーブルに又はメモリに格納され得る。代案として、異なるセルガスに従って、多数の異なる多原子イオン中の任意の又は全ての異なる目標同位体のこれら数に関して質量偏差補正を考慮する正確な質量の値は、システムコントローラにより探索またはアクセスするためにテーブルに又はメモリに格納され得る。いっそう更なる例において、正確な質量(又は質量偏差補正を考慮する正確な質量の値)を求めることに関する質量偏差補正値は、質量フィルタコントローラ124により直接的に計算され得る。
【0119】
実施形態において、MS(四重極MS、TOFMS、扇形場MSなど)を用いる元素分析計は、MSの動作を制御するために、本明細書で説明されたように求められた正確な質量を使用することができる。例えば、質量フィルタコントローラ124は、多原子イオン中の目標イオンの正確な質量に基づいて、(RFの振幅または周波数、磁場の強度、又はデータ取得時間により)MSを制御することができる。質量フィルタコントローラ124は、測定されるべき元素同位体を含有する多原子イオン中にある場合に目標イオンの質量数から正確な質量を得るために異なる計算または変換テーブルを使用することができる。正確な質量は、単原子イオンとして評価される場合の目標イオンの正確な質量と異なる。
【0120】
更なる実施形態において、四重極を有するICP-MS(ICP-QQQ)を用いる元素分析計は、ICP-QQQの動作を制御するために、本明細書で説明されたように求められた正確な質量を使用することができる。一実施形態において、質量フィルタコントローラ124は、ICP-QQQが質量シフト(マスシフト)を実行するように設定されている(例えば、Q2がQ1に等しくない)場合に、多原子イオン中の目標イオンの正確な質量に基づいて、ICP-QQQの第2の四重極(Q2)を制御することができる。第2の四重極を設定するために、システムコントローラは、多原子イオン中の目標イオンの求められた正確な質量に基づいて、(RFの振幅または周波数、磁場の強度、又はデータ取得時間により)MSを制御することができる。質量フィルタコントローラ124は、(Q1及びQ2がリアクタントセルの前後のMSで設定された質量数に基づいている)Q2=Q1である場合に比べてQ1がQ2に等しくない場合に、目標イオンの質量数から正確な質量を得るために異なる計算または変換テーブルを使用することができる。質量フィルタコントローラ124は、測定されるべき元素同位体を含有する多原子イオン中にある場合に目標イオンの質量数から正確な質量を得るために異なる計算または変換テーブルを使用することができる。正確な質量は、単原子イオンとして評価される場合の目標イオンの正確な質量と異なる。
【0121】
図15は、NHセルガスモードにおいて、133Cs及び49TiNH(NHの例示的なQ2走査質量スペクトルを示す。図15は、133Csと多原子イオンの正確な質量の差を示す。一テストにおいて、ICP-MS機器、アジレント・テクノロジーズ・インクから市販されているAgilent 8900 ICP-MS/MSシステムが、原子の正確な質量に基づいて動作され、そのため133Csが133の質量において正確に測定されたが、49TiNH(NHはそうでなかった。図15において看取され得るように、133Cs及び49Ti多原子スペクトルのオーバーレイ(1510、1520)は、133Csの公称の質量が従来の計算の下で求められる際の従来の方法の下での質量偏差を示し、この場合、真のピーク最大値が、Ti多原子イオンに関してそらすために示される。真のピーク最大値の差が、1515において示される。この差は、本明細書において本発明者により説明されるように補正される質量偏差の例である。
【0122】
例示的なコンピューティングシステム
一実施形態において、ワークステーション120(元素分析計122及び質量フィルタコントローラ124を含む)は、全体的な制御を提供する(例えば、システムコントローラ)メイン電子プロセッサ、及び専用の制御動作または特定の信号処理タスクのために構成された1つ又は複数の電子プロセッサ(例えば、グラフィックス・プロセッシング・ユニット、即ちGPU、デジタル・シグナル・プロセッサ、即ちDSP、特定用途向け集積回路、即ちASIC、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ、即ちFPGAなど)を表すことができる1つ又は複数のプロセッサ(一般に電子回路ベース)を含むことができる。また、ワークステーション120は、データ及び/又はソフトウェアを格納するための1つ又は複数のメモリ(揮発性および/または不揮発性)(以下に限定されないが、メモリ130を含む)も含むことができる。また、ワークステーション120は、1つ又は複数のタイプのユーザインターフェース・デバイス(例えば、UI140)を制御する及び当該ユーザインターフェース・デバイスと当該ユーザインターフェース・デバイスと通信するワークステーション120の構成要素との間にインターフェースを提供するための1つ又は複数のデバイス・ドライバも含むことができる。係るユーザインターフェース・デバイスは、ユーザ入力デバイス(例えば、キーボード、キーパッド、タッチスクリーン、マウス、ジョイスティック、トラックボール、及び同類のもの)、及びユーザ出力デバイス(例えば、ディスプレイ画面、プリンタ、可視的表示器または警報、可聴式指示器または警報、及び同類のもの)を含むことができる。様々な実施形態において、ワークステーション120は、1つ又は複数のユーザ入力デバイス及び/又はユーザ出力デバイスを含むと、又は少なくともそれらと通信するとみなされ得る。
【0123】
また、ワークステーション120は、メモリに及び/又は1つ又は複数のタイプのコンピュータ可読媒体に包含された1つ又は複数のタイプのコンピュータ・プログラム又はソフトウェアも含むことができる。コンピュータ・プログラム又はソフトウェアは、ICP-MSシステム100及び410の様々な動作を制御または実行するための持続性命令(例えば、論理命令)を含むことができる。コンピュータ・プログラム又はソフトウェアは、アプリケーション・ソフトウェア及びシステム・ソフトウェアを含むことができる。システム・ソフトウェアは、ハードウェアとアプリケーション・ソフトウェアとの間の相互作用を含む、ワークステーション120の様々な機能を制御および管理するためのオペレーティング・システム(例えば、Microsoft Windows(登録商標)またはApple iOS(登録商標)オペレーティング・システム)を含むことができる。特に、オペレーティング・システムは、ユーザ出力デバイスを介して表示可能であり、且つユーザがユーザ入力デバイスの使用と相互作用することができる、グラフィカル・ユーザ・インターフェース(GUI)を提供することができる。また、ワークステーション120は、GUIによりグラフ形状で提示するためのフォーマット・データを含む、イオン検出器450により出力されたイオン測定値信号を受け取って処理するための1つ又は複数のデータ取得/信号調整構成要素(DAQ)(ハードウェア、ファームウェア及び/又はソフトウェアで具現化され得るような)も含むことができる。
【0124】
ワークステーション120(質量フィルタコントローラ124を含む)は更に、コリジョン/リアクションセル430の動作を制御する且つイオン源402の動作、イオン光学系414の動作、及びICP-MSシステム100及び410に設けられた任意の他のイオン処理デバイスの動作と当該セルの動作を連係して働かせる及び/又は同期させるように構成されたセルコントローラ(又は制御モジュール)を含むことができる。セル430及び他の構成要素のこの制御動作は、質量分析器420、440に関して上述された質量フィルタ制御に加えて提供され得る。
【0125】
理解されるように、図1は、本開示と一致するワークステーション120の例に関するハイレベルな概略描写である。追加の構造、デバイス、電子回路、及びコンピュータ関連または電子プロセッサ関連の構成要素のような他の構成要素が、実際の具現化形態に必要とされる場合に、含まれ得る。また、理解されるように、ワークステーション120は、提供され得る構造(例えば、電気回路、機構、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェアなど)を表すことが意図された機能ブロックとして概略的に表される。様々な機能ブロック及びそれらの間の何らかの信号リンクが、例示のためだけに任意に配置されており、何らかの態様で制限しない。当業者により理解されるように、実際には、ワークステーション120の機能は、様々な態様で実施されることができ、図1に示された及び本明細書において例により説明された厳密な態様で必ずしも実施されない。
【0126】
本明細書において、例示的な実施形態が、元素分析計システム及び方法の文脈において説明される。これらは、ソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア又はそれらの任意の組み合わせで実現され得る本明細書で説明されるような正確な質量を求めることに関する制御論理回路を有するワークステーション120を含む。以下の説明は、例示だけであり、決して制限されることを意図されていない。他の実施形態は、本開示の利益を有する当業者に容易にそれら自体で示唆するであろう。添付図面に示されたような例示的な実施形態の具現化形態に対して詳細に言及される。同じ参照符号は、図面および以下の説明の全体にわたって可能な限り、同じ又は同様の要素を参照するために使用される。
【0127】
更なる実施形態
1.誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)を通過するイオンビーム中の多原子イオンの質量フィルタリングを制御するための方法であって、その方法は、目標同位体を有する多原子イオンの正確な質量を表す多原子イオン質量データを求め;前記求められた多原子イオン質量データに基づいて第1の制御信号を生成し;ICP-MSを通り抜けてイオン検出器に進むイオンビーム中の多原子イオンを質量に基づいてフィルタリングするためにICP-MSに前記第1の制御信号を出力することを含む。
2.前記多原子イオン質量データは、前記目標同位体を有する多原子イオンの正確な質量を含む、上記1に記載の方法。
3.前記多原子イオン質量データを含む質量データをメモリに格納することを更に含む、上記1又は2に記載の方法。
4.前記求めることは、メモリに格納された前記多原子イオン質量データにアクセスすることを含む、上記1~3の何れか1項に記載の方法。
5.前記求めることは、前記目標同位体を有する多原子イオンの正確な質量を計算することを含む、上記1~4の何れか1項に記載の方法。
6.前記求めることは、前記目標同位体を有する多原子イオンの正確な質量を求めるために、テーブルルックアップを実行することを含む、上記1~4の何れか1項に記載の方法。
7.質量偏差補正データをメモリに格納することを更に含み、前記質量偏差補正データが目標同位体およびセルガスに基づいている、上記1~6の何れか1項に記載の方法。
8.前記ICP-MSは、イオン質量をフィルタリングするように制御される第1及び第2の質量分析器を有するトリプル四重極ICP-MSを含み、前記第2の質量分析器に印加される1つ又は複数の電圧信号を制御するために、前記第1の制御信号が、前記第2の質量分析器に出力される、上記1~7の何れか1項に記載の方法。
9.前記1つ又は複数の電圧信号は、DC電圧信号(U)及びAC電圧信号(Vp)を含み、前記第2の質量分析器を通過するイオンビームの質量フィルタリングを制御するために前記第2の質量分析器の四重極電極に前記U及びVp電圧を印加することを更に含む、上記8に記載の方法。
10.前記ICP-MSは、質量分析器を有する単一四重極ICP-MSを含み、前記質量分析器を通過するイオンビームの質量フィルタリングを制御するために、前記第1の制御信号が前記質量分析器に出力される、上記1~7の何れか1項に記載の方法。
11.未処理データを得るために前記イオン検出器に入射する目標同位体を有する多原子イオンを検出して処理し、前記検出された多原子イオンを表す前処理されたデータを分析およびユーザに表示するために出力することを更に含む、上記1~7の何れか1項に記載の方法。
12.格納された命令を有する持続性コンピュータ可読記憶デバイスであって、少なくとも1つのプロセッサにより実行された際に、前記命令により、前記少なくとも1つのプロセッサが、誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)を通過するイオンビーム中の多原子イオンの質量フィルタリングを制御するための動作を実行するものにおいて、前記動作は、目標同位体を有する多原子イオンの正確な質量を表す多原子イオン質量データを求め;前記求められた多原子イオン質量データに基づいて第1の制御信号を生成し;ICP-MSを通過するイオンビーム中の多原子イオンを質量に基づいてフィルタリングするように前記ICP-MSに前記第1の制御信号を出力することを含む。
13.誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)において使用するために構成可能な元素分析計システムであって、当該システムは、ユーザが多原子イオンに含まれる目標同位体を分析するための選択を入力することを可能にするユーザインターフェースと;前記ユーザインターフェースに結合され且つ前記入力された選択を表すデータを受け取るように構成された1つ又は複数のプロセッサとを含み、前記1つ又は複数のプロセッサは、目標同位体を有する多原子イオンの正確な質量を表す多原子イオン質量データを求め;前記求められた多原子イオン質量データに基づいて第1の制御信号を生成し;ICP-MSを通過するイオンビーム中の多原子イオンを質量に基づいてフィルタリングするように前記第1の制御信号の前記ICP-MSへの出力を開始するように構成されている。
14.前記多原子イオン質量データは、前記目標同位体を有する多原子イオンの正確な質量を含む、上記13に記載のシステム。
15.前記多原子イオン質量データを含む質量データを格納するメモリを更に含む、上記13又は14に記載のシステム。
16.前記1つ又は複数のプロセッサは、前記メモリに格納された前記多原子イオン質量データにアクセスするように構成されている、上記15に記載のシステム。
17.前記1つ又は複数のプロセッサは、前記目標同位体を有する多原子イオンの正確な質量を計算するように構成されている、上記13~16の何れか1項に記載のシステム。
18.前記1つ又は複数のプロセッサは、前記目標同位体を有する多原子イオンの正確な質量を求めるために、テーブルルックアップを実行するように更に構成されている、上記13~16の何れか1項に記載のシステム。
19.前記1つ又は複数のプロセッサは、質量偏差補正データをメモリに格納するように更に構成され、前記質量偏差補正データは、目標同位体、及び前記イオンビーム中に前記多原子イオンを形成するために前記ICP-MSで使用されるセルガスに基づいている、上記13~18の何れか1項に記載のシステム。
20.前記ICP-MSは、イオン質量をフィルタリングするように制御される第1及び第2の質量分析器を有するトリプル四重極ICP-MSを含み、前記1つ又は複数のプロセッサは、前記第2の質量分析器に印加される1つ又は複数の電圧信号を制御するために、前記第1の制御信号を、前記第2の質量分析器に出力するように構成される、上記13~19の何れか1項に記載のシステム。
21.前記第2の質量分析器に結合された電源を更に含み、前記電源は、前記第2の質量分析器に印加される前記1つ又は複数の電圧信号を生成し、前記1つ又は複数の電圧信号は、DC電圧信号(U)及びAC電圧信号(Vp)を含み、前記第2の質量分析器を通過するイオンビームの質量フィルタリングを制御するために前記第2の質量分析器の四重極電極に前記U及びVp電圧を印加することを更に含む、上記20に記載のシステム。
22.前記ICP-MSは、質量分析器を有する単一四重極ICP-MSを含み、前記質量分析器を通過するイオンビームの質量フィルタリングを制御するために、前記第1の制御信号が前記質量分析器に出力される、上記13~19の何れか1項に記載のシステム。
23.前記ICP-MSは、イオン検出器を含み、前記イオン検出器は、未処理データを得るために前記イオン検出器に入射する目標同位体を有する多原子イオンを検出し、前記ICP-MSは、前記検出された多原子イオンを表す前処理されたデータを分析およびユーザに表示するために出力する、上記13~22の何れか1項に記載のシステム。
24.多原子イオンに含まれる目標元素同位体を分析するための方法であって、その方法は、前記目標元素同位体の元素分析のために質量分析計を初期化し、前記質量分析計がプラズマ源、イオン経路に沿って直列にリアクションセルの両側に配列された第1及び第2の四重極質量分析器、及び検出器を含み;目標元素同位体の第1の正確な質量(EM1)を求め;質量偏差補正が前記多原子イオンに含まれる前記目標元素同位体の元素分析に必要とされているか否かを評価し;質量偏差補正が必要とされる場合に、前記多原子イオン中に存在する際に前記目標元素同位体の第2の正確な質量(EM2)を求め;前記求められた第1の正確な質量に基づいて前記第1の四重極(Q1)質量分析器を設定し;前記求められた第2の正確な質量に基づいて前記第2の四重極(Q2)質量分析器を設定し;前記目標元素同位体を有する検出された多原子イオンを表す出力信号を生成することを含む。
25.目標元素同位体のEM1を求めることは、単原子イオン中の目標元素同位体に対応する質量数の関数としてEM1を求めることを含み;質量偏差補正が必要とされる場合、EM2を求めることは、前記多原子イオンに対応する質量数およびリアクションセル中の反応物質に対応する質量偏差補正の関数としてEM2、を求めることを含む、上記24に記載の方法。
26.前記目標元素同位体の前記第1の正確な質量(EM1)を求めることは、前記目標元素同位体に対応する質量数および前記目標元素同位体に対応する第1の質量偏差の関数に等しい第1の正確な質量(EM1)値を求めることを含み、前記目標元素同位体の第2の正確な質量(EM2)を求めることは、前記目標多原子イオンに対応する質量数およびリアクションセル中の反応物質に対応する質量偏差補正の関数に等しい第2の正確な質量(EM2)値を求めることを含む、上記24に記載の方法。
27.前記第1及び第2の正確な質量(EM1、EM2)をそれぞれ求めることは、メモリ中の格納された質量データから第1及び第2の正確な質量のそれぞれにアクセスする又は前記第1及び第2の正確な質量のそれぞれを計算することを含む、上記24に記載の方法。
28.前記目標元素同位体は、質量数133を有する多原子イオンTiNH(NHに含まれる質量数49を有するチタン(Ti)を含み、前記リアクションセル中の反応物質は、NHセルガスを含む、上記24に記載の方法。
29.前記目標元素同位体は、質量数133を有する多原子イオンTi12(HO)に含まれる質量数49を有するチタン(Ti)を含み、前記リアクションセル中の反応物質は、HOセルガスを含む、上記24に記載の方法。
30.前記質量分析計を初期化することは、ユーザがユーザインターフェースを通じてパラメータを入力することを可能にし;帯電したイオン流を形成するために前記イオン経路に沿って前記プラズマ源から放出されたプラズマに導入するために試料をロードし;前記帯電したイオン流を前記質量分析計の前記イオン経路に沿って収束する1つ又は複数のイオンレンズに設定電圧を印加し;前記リアクションセル中の反応物質としてセルガス流を設定流量で加えることを含む、上記24~29の何れか1項に記載の方法。
31.前記求められた第1の正確な質量に基づいて前記質量分析計の前記第1の四重極(Q1)を設定することは、質量数未満の質量をフィルタリングするように制御電圧を印加することを含む、上記24~30の何れか1項に記載の方法。
32.前記求められた第2の正確な質量に基づいて前記質量分析計の前記第2の四重極(Q2)を設定することは、質量数未満の質量をフィルタリングするように制御電圧を印加することを含む、上記24~31の何れか1項に記載の方法。
33.元素分析計システムであって、誘導結合プラズマ質量分析装置と、前記誘導結合プラズマ分析装置に結合されたワークステーションとを含み、前記ワークステーションは、ユーザが多原子イオンに含まれる目標元素同位体を分析するための選択を入力することを可能にするユーザインターフェースと;前記ユーザインターフェースに結合され且つ前記入力された選択を表すデータを受け取るように構成された1つ又は複数のプロセッサとを含み、前記1つ又は複数のプロセッサは、以下の動作、即ち、目標元素同位体の第1の正確な質量(EM1)を求め;質量偏差補正が前記多原子イオンに含まれる前記目標元素同位体の元素分析に必要とされるか否かを評価し;質量偏差補正が必要とされる場合、前記多原子イオンに対応する質量数および前記リアクションセル中の反応物質に対応する質量偏差補正の関数として前記目標元素同位体の第2の正確な質量(EM2)を求めることを行う。
34.格納された命令を有する持続性コンピュータ可読記憶デバイスであって、少なくとも1つのプロセッサにより実行された際に、前記命令により前記少なくとも1つのプロセッサが、上記1~7の何れかに記載された方法を実行する。
【0128】
実施形態および応用形態が図示および説明されたが、本開示の利益を有する当業者には明らかなように、上述されたものよりも更に多くの変形形態が、本明細書に開示された発明の概念から逸脱せずに可能である。従って、本発明は、上記の説明に基づいて制限されない。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15