(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-31
(45)【発行日】2023-11-09
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池、電流制御回路及びリチウムイオン二次電池の容量回復方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/058 20100101AFI20231101BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20231101BHJP
H01M 10/0566 20100101ALI20231101BHJP
H01M 10/42 20060101ALI20231101BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20231101BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
H01M10/058
H01M10/052
H01M10/0566
H01M10/42 P
H01M10/44 P
H02J7/00 S
H02J7/00 Y
H02J7/00 301C
(21)【出願番号】P 2019212564
(22)【出願日】2019-11-25
【審査請求日】2022-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】今野 真
(72)【発明者】
【氏名】中島 健作
【審査官】梅野 太朗
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/136683(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/008342(WO,A1)
【文献】特開2016-051570(JP,A)
【文献】特開2007-305475(JP,A)
【文献】特開2011-103178(JP,A)
【文献】特開2013-161625(JP,A)
【文献】特開2016-091613(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/05-10/0587;10/36-10/39
H01M10/42-10/48
H02J7/00-7/12;7/34-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極端子と接続された正極と、負極端子と接続された負極と、電解液と、前記正極、前記負極又は前記電解液にリチウムイオンを供給するリチウムイオン供給極と、ケースと、を有するリチウムイオン二次電池であって、
前記ケースの内部に、前記リチウムイオン供給極と前記正極若しくは前記負極との接続を制御する、スイッチング素子を含む電流制御回路を備えるとともに、前記ケースの外部には、制御信号を発生する制御信号発生機構を備え、
前記スイッチング素子は、前記制御信号発生機構からの制御信号に基づいて動作
し、
前記スイッチング素子は半導体素子であり、前記制御信号発生機構は正極端子と負極端子間にパルスもしくは交流の制御信号を発生させ、半導体素子に流れる電流を制御することにより半導体素子のオン・オフ制御を行うことを特徴とするリチウムイオン二次電池。
【請求項2】
前記電流制御回路は、前記スイッチング素子、及び、前記スイッチング素子と直列に接続された抵抗器を備えていることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項3】
前記電流制御回路は、前記スイッチング素子、前記スイッチング素子と直列に接続されたダイオードを備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項4】
正極端子と接続された正極と、負極端子と接続された負極と、電解液と、前記正極、前記負極又は前記電解液にリチウムイオンを供給するリチウムイオン供給極と、ケースと、を有するリチウムイオン二次電池において前記リチウムイオンを供給するリチウムイオン供給極と前記正極若しくは前記負極との接続を制御する電流制御回路であって、
前記電流制御回路は、前記ケースの内部に配設されるとともにスイッチング素子を有し、
前記スイッチング素子は、前記ケースの外部
に配設された制御信号発生機構から発信される制御信号に基づいて動作
し、
前記スイッチング素子は半導体素子であり、前記制御信号発生機構は正極端子と負極端子間にパルスもしくは交流の制御信号を発生させ、半導体素子に流れる電流を制御することにより半導体素子のオン・オフ制御を行うことを特徴とする電流制御回路。
【請求項5】
前記電流制御回路は、前記スイッチング素子、及び、前記スイッチング素子と直列に接続された抵抗器を備えていることを特徴とする請求項
4に記載の電流制御回路。
【請求項6】
前記電流制御回路は、前記スイッチング素子、及び、前記スイッチング素子と直列に接続されたダイオードを備えていることを特徴とする請求項
4又は
5に記載の電流制御回路。
【請求項7】
請求項1~
3のいずれか1項に記載されたリチウムイオン二次電池の容量回復方法であって、
前記制御信号発生機構から制御信号を発生させることにより、前記スイッチング素子を介して前記リチウムイオン供給極と前記正極若しくは負極とを接続し、充放電前又は前記充放電の期間内の所定時期に、リチウムイオン供給極からリチウムイオンを前記正極、前記負極又は電解液に供給し、リチウムイオン二次電池の容量を回復させることを特徴とするリチウムイオン二次電池の容量回復方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池、電流制御回路及びリチウムイオン二次電池の容量回復方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電や風力発電等の負荷平準化装置、コンピュータ等に代表される電子機器の瞬時電圧低下対策装置、電気自動車やハイブリッドカーのエネルギー回生装置などのような蓄電システムにおいては、エネルギー容量が大きくてかつ急速充放電が可能な蓄電デバイスが必要とされている。このような急速充放電や長寿命化が可能な蓄電デバイスとして、リチウムイオン二次電池及びリチウムイオンキャパシタが提唱されている。
【0003】
リチウムイオン二次電池は、正極にコバルト酸リチウム等のリチウム金属酸化物を用い、リチウムイオンをリチウムイオン金属酸化物として電荷を蓄えることができる。又、負極では、炭素材料の層間などにリチウムイオンを蓄えることができる。さらに、非水電解液を用い、電極間の電位差を大きくとることができるため、大きなエネルギーを蓄えることができる。
【0004】
従来のリチウムイオン二次電池は、正極及び負極間のリチウムイオンの受け渡しによって充放電が行われるが、一部のリチウムイオンが負極中に捕捉されたままになるため、初期において不可逆容量分、容量が減少するとともに、充放電を長期間に渡って繰り返すことにより、受け渡しに関与するリチウムイオンの量が減少し、容量が次第に低下していくという問題があった。
【0005】
上記課題に対し、リチウムイオン二次電池にリチウムイオン供給源となる第3電極第三電極を設ける技術が提案されているが、第三電極からの端子を電池のケース外部に設けた場合には、他の電極との接続やオン・オフを行う設備が必要となり、電極の構成が複雑となるという問題があった。
【0006】
これらの問題を解消するため、例えば、特許文献1には、正極および負極とともに予めリチウムを含んだリチウム極の三電極を有し、各電極間の電気的絶縁・接続機能を備えていることを特徴とする三電極を有するリチウムイオン二次電池が提案されている。
【0007】
そして、上記リチウムイオン二次電池では、封口を行う前に、形状記憶合金等を用い、電池の温度を上昇させて、形状記憶合金を延ばし、リチウム極を負極に接続して放電させ、リチウム極から負極へリチウムイオンを移動させ、その後に、絶縁・接続機能によりリチウム極と負極を絶縁するとともに、負極と正極とを接続し、負極から正極へリチウムイオンを移動させている。
【0008】
上記のリチウムイオン二次電池によれば、リチウム極と負極との間で電極反応を予め行わせることにより、不可逆容量分のリチウムイオンを負極に移動させ、初回の充電に生じる不可逆容量を解消することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1によれば、特許文献1に記載の方法で、初期の不可逆容量を解消することができるとしているが、充放電を繰り返した後の容量を回復させることについては、何の記載も示唆もなかった。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、従来からの電池の構成を大きく変えることなく、初期の不可逆容量を解消することができるとともに、充放電の繰り返しにより減少した容量を回復することができるリチウムイオン二次電池、該リチウムイオン二次電池が備える電流制御回路、及び、該電流制御回路を用いたリチウムイオン二次電池の容量回復方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち、本発明のリチウムイオン二次電池は、正極端子と接続された正極と、負極端子と接続された負極と、電解液と、上記正極、上記負極又は上記電解液にリチウムイオンを供給するリチウムイオン供給極と、ケースと、を有するリチウムイオン二次電池であって、
上記ケースの内部に、上記リチウムイオン供給極と上記正極若しくは負極との接続を制御する、スイッチング素子を含む電流制御回路を備えるとともに、上記ケースの外部には、制御信号を発生する制御信号発生機構を備え、上記スイッチング素子は、上記制御信号発生機構からの制御信号に基づいて動作することを特徴とする。
【0013】
上記リチウムイオン二次電池によれば、充放電前又は上記充放電の期間内の所定時期に、上記ケースの内部のスイッチング素子を含む電流制御回路を上記ケースの外部から制御して、上記リチウムイオン供給極と上記正極若しくは負極とを接続することにより、正極、負極又は電解液にリチウムイオンを供給することができ、初期の不可逆容量を解消することができるとともに、充放電の繰り返しにより減少した容量を回復させることができる。
【0014】
また、本発明のリチウムイオン二次電池は、上記ケースの内部に電流制御回路を備え、上記ケースの外部との接続端子としては、正極端子及び負極端子のみを有しているので、従来と接続方法を変えることなく、本発明のリチウムイオン二次電池を使用することができる。
【0015】
本発明のリチウムイオン二次電池では、上記電流制御回路は、上記スイッチング素子、及び、上記スイッチング素子と直列に接続された抵抗器を備えていることが望ましい。
【0016】
本発明のリチウムイオン二次電池において、上記電流制御回路が、上記スイッチング素子、及び、上記スイッチング素子と直列に接続された抵抗器を備えていると、上記リチウムイオン供給極と上記正極若しくは負極との接続時にリチウムイオン供給極と正極若しくは負極との間に流れる電流を適切な範囲に保つことができる。
【0017】
本発明のリチウムイオン二次電池では、上記電流制御回路は、上記スイッチング素子、上記スイッチング素子と直列に接続されたダイオードを備えていることが望ましい。
【0018】
本発明のリチウムイオン二次電池において、上記電流制御回路が、上記スイッチング素子、上記スイッチング素子と直列に接続されたダイオードを備えていると、上記リチウムイオン供給極と上記正極若しくは負極との接続時に、過放電などにより電位が逆転した場合であっても、電流が目的の方向と逆に流れるのを防止することができ、逆流により事故等が発生するのを防止することができる。
【0019】
本発明のリチウムイオン二次電池では、上記スイッチング素子は磁気スイッチであり、上記制御信号発生機構は磁気により上記磁気スイッチのオン・オフ制御を行うことが望ましい。
【0020】
本発明のリチウムイオン二次電池において、上記スイッチング素子が磁気スイッチであり、上記制御信号発生機構は磁気により上記磁気スイッチのオン・オフ制御を行うことができると、任意の時期に、簡易な操作でリチウムイオン供給極と正極若しくは負極との接続・絶縁を行うことができる。
【0021】
本発明のリチウムイオン二次電池では、上記スイッチング素子は半導体素子であり、上記制御信号発生機構は、正極端子と負極端子間にパルスもしくは交流の制御信号を発生させ、半導体素子に流れる電流を制御することにより半導体素子のオン・オフ制御を行うことが望ましい。
【0022】
本発明のリチウムイオン二次電池において、上記スイッチング素子が半導体素子であり、上記制御信号発生機構は正極端子と負極端子間にパルスもしくは交流の制御信号を発生させ、半導体素子に流れる電流を制御することにより半導体素子のオン・オフ制御を行うことができると、任意の時期に、簡易な操作でリチウムイオン供給極と正極若しくは負極との接続・絶縁を行うことができる。
【0023】
本発明の電流制御回路は、正極端子と接続された正極と、負極端子と接続された負極と、電解液と、上記正極、上記負極又は上記電解液にリチウムイオンを供給するリチウムイオン供給極と、ケースと、を有するリチウムイオン二次電池において上記リチウムイオンを供給するリチウムイオン供給極と上記正極若しくは上記負極との接続を制御する電流制御回路であって、
上記電流制御回路は、上記ケースの内部に配設されるとともにスイッチング素子を有し、
上記スイッチング素子は、上記ケースの外部から発信される制御信号に基づいて動作することを特徴とする。
【0024】
本発明の電流制御回路によれば、上記電流制御回路に備わったスイッチング素子を上記ケースの外部から制御信号に基づいてオン・オフさせることができるので、充放電前又は上記充放電の期間内の所定時期に、正極、負極又は電解液にリチウムイオンを供給することができ、初期の不可逆容量を解消することができるとともに、充放電の繰り返しにより減少した容量を回復させることができる。
【0025】
本発明の電流制御回路では、上記電流制御回路は、上記スイッチング素子、及び、上記スイッチング素子と直列に接続された抵抗器を備えていることが望ましい。
【0026】
本発明の電流制御回路において、上記電流制御回路が、上記スイッチング素子、及び、上記スイッチング素子と直列に接続された抵抗器を備えていると、上記リチウムイオン供給極と上記正極若しくは負極との接続時にリチウムイオン供給極と正極若しくは負極との間に流れる電流を適切な範囲に保つことができる。
【0027】
本発明の電流制御回路では、上記電流制御回路は、上記スイッチング素子、及び、上記スイッチング素子と直列に接続されたダイオードを備えていることが望ましい。
【0028】
本発明の電流制御回路において、上記電流制御回路が、上記スイッチング素子、及び、上記スイッチング素子と直列に接続されたダイオードを備えていると、上記リチウムイオン供給極と上記正極若しくは負極との接続時に、過放電などにより電位が逆転した場合であっても、電流が目的の方向と逆に流れるのを防止することができ、逆流により事故等が発生するのを防止することができる。
【0029】
本発明の電流制御回路では、上記スイッチング素子は磁気スイッチであり、上記制御信号発生機構は、磁気による制御信号を発生させ、磁気スイッチに入力する電流を制御することによりオン・オフ制御を行うことが望ましい。
【0030】
本発明の電流制御回路において、上記スイッチング素子が磁気スイッチであり、上記制御信号発生機構は磁気による制御信号を発生させ、磁気スイッチに入力する電流を制御することによりオン・オフ制御を行うことができると、任意の時期に、簡易な操作でリチウムイオン供給極と正極若しくは負極との接続・絶縁を行うことができる。
【0031】
本発明の電流制御回路では、上記スイッチング素子は半導体素子であり、上記制御信号発生機構は正極端子と負極端子間にパルスもしくは交流の制御信号を発生させ、半導体素子に流れる電流を制御することにより半導体素子のオン・オフ制御を行うことが望ましい。
【0032】
本発明の電流制御回路において、上記スイッチング素子が半導体素子であり、上記制御信号発生機構は正極端子と負極端子間にパルスもしくは交流の制御信号を発生させ、半導体素子に流れる電流を制御することにより半導体素子のオン・オフ制御を行うことができると、任意の時期に、簡易な操作でリチウムイオン供給極と正極若しくは負極との接続・絶縁を行うことができる。
【0033】
本発明のリチウムイオン二次電池の容量回復方法は、上記のリチウムイオン二次電池の容量回復方法であって、
上記制御信号発生機構から制御信号を発生させることにより、上記スイッチング素子を介して上記リチウムイオン供給極と上記正極若しくは負極とを接続し、充放電前又は上記充放電の期間内の所定時期に、リチウムイオン供給極からリチウムイオンを上記正極、上記負極又は電解液に供給し、リチウムイオン二次電池の容量を回復させることを特徴とする。
【0034】
本発明のリチウムイオン二次電池によれば、上記ケースの外部に設けられた制御信号発生機構から制御信号を発生させることにより、上記ケースの内部に設けられた電流制御回路を構成するスイッチング素子のオン・オフを行うことができるので、簡易な操作で、充放電前又は上記充放電の期間内の所定時期に、正極、負極又は電解液にリチウムイオンを供給することができ、初期の不可逆容量を解消することができるとともに、充放電の繰り返しにより減少した容量を回復させることができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明のリチウムイオン二次電池によれば、上記ケースの内部のスイッチング素子を含む電流制御回路を使用して、充放電前又は上記充放電の期間内の所定時期に、リチウムイオン供給極と正極若しくは負極とを接続することにより、正極、負極又は電解液にリチウムイオンを供給することができ、初期の不可逆容量を解消することができるとともに、充放電の繰り返しにより減少した容量を回復させることができる。また、従来と接続方法を変えることなく、本発明のリチウムイオン二次電池を使用することができる。
【0036】
また、本発明の電流制御回路によれば、上記電流制御回路に備わったスイッチング素子を上記ケースの外部から制御信号に基づいてオン・オフさせることができるので、充放電前又は上記充放電の期間内の所定時期に、正極、負極又は電解液にリチウムイオンを供給することができ、初期の不可逆容量を解消することができるとともに、充放電の繰り返しにより減少した容量を回復させることができる。
【0037】
さらに、本発明のリチウムイオン二次電池の容量回復方法によれば、上記ケースの外部に設けられた制御信号発生機構から制御信号を発生させることにより、上記ケースの内部に設けられた電流制御回路を構成するスイッチング素子のオン・オフを行うことができるので、簡易な操作で、充放電前又は上記充放電の期間内の所定時期に、正極、負極又は電解液にリチウムイオンを供給することができ、初期の不可逆容量を解消することができるとともに、充放電の繰り返しにより減少した容量を回復させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1A】
図1Aは、本発明の正極とリチウム極を接続する形態のリチウムイオン二次電池の一実施形態を模式的に示す概略断面図である。
【
図1B】
図1Bは、本発明の負極とリチウム極を接続する形態のリチウムイオン二次電池の別の一実施形態を模式的に示す概略断面図である。
【
図2】
図2は、電流制御回路の一例を示す回路図である。
【
図3】
図3は、トランジスタを含むスイッチング回路を示す回路図である。
【
図4】
図4は、MOS-FETを含むスイッチング回路を示す回路図である。
【
図5】
図5は、本発明のリチウムイオン二次電池の他の実施形態を模式的に示す概略断面図である。
【0039】
(発明の詳細な説明)
本発明のリチウムイオン二次電池は、正極端子と接続された正極と、負極端子と接続された負極と、電解液と、上記正極、上記負極又は上記電解液にリチウムイオンを供給するリチウムイオン供給極と、ケースと、を有するリチウムイオン二次電池であって、
上記ケースの内部に、上記リチウムイオン供給極と上記正極若しくは負極との接続を制御する、スイッチング素子を含む電流制御回路を備えるともに、上記ケースの外部には、制御信号を発生する制御信号発生機構を備え、上記スイッチング素子は、上記制御信号発生機構からの制御信号に基づいて動作することを特徴とする。
【0040】
図1Aは、本発明の正極とリチウム極を接続する形態のリチウムイオン二次電池の一実施形態を模式的に示す概略断面図であり、
図1Bは、本発明の負極とリチウム極を接続する形態のリチウムイオン二次電池の別の一実施形態を模式的に示す概略断面図である。
図1Aに示すように、リチウムイオン二次電池10は、正極端子11tと配線11aを介して接続された正極11及び負極端子13tと配線13aを介して接続された負極13と、電解液15と、正極11、負極13又は電解液15にリチウムイオンを供給するリチウムイオン供給極17と、ケース19と、正極11、負極13及びリチウムイオン供給極17が直接接触し短絡することを防ぎつつ、電解液やリチウムイオン等を通過させる役割を有するセパレータ14とを含んで構成されている。
【0041】
また、ケース19の内部には、リチウムイオン供給極17と正極11との接続を制御する、スイッチング素子21を含む電流制御回路20を備えるともに、ケース19の外側には、制御信号を発生する制御信号発生機構30を備えている。
電流制御回路としては、
図1Bに示すように、負極13とリチウムイオン供給極17とをスイッチング素子27を介して接続する電流制御回路25を備えていてもよい。なお、図示はしていないが負極13とリチウムイオン供給極17とをスイッチング素子27を介して接続する電流制御回路25及び正極11とリチウムイオン供給極17とをスイッチング素子21を介して接続する電流制御回路20の両方の電流制御回路を備えていてもよい。
【0042】
電流制御回路20の構成は、特に限定されるものではなく、スイッチング素子、及び、スイッチング素子と直列に接続された抵抗器を備えていてもよく、スイッチング素子、及び、上記スイッチング素子と直列に接続されたダイオードを備えていてもよいが、抵抗器とダイオードの両方を備えていることが望ましい。
【0043】
図2は、電流制御回路20の詳しい一例を示す回路図である。
リチウムイオン供給極17に接続された配線17aには、ダイオード11d及び抵抗器11eが配設されており、スイッチング素子21を介して正極11と接続されている。これにより電流制御回路20に、過放電などによって電位が逆転した場合などの逆電流が流れるのを防止することができ、電流制御回路20に流れる電流を好ましい範囲に収めることができる。電流制御回路25にも、ダイオード及び抵抗器が配設されていてもよい。抵抗器の抵抗値は、50Ω~10kΩが望ましい。
【0044】
電流制御回路を構成するスイッチング素子は、磁気スイッチであり、リチウムイオン二次電池のケースの外部に設けられた制御信号発生機構は、磁気により上記磁気スイッチのオン・オフ制御を行う方式のものであってもよく、電流制御回路を構成するスイッチング素子は半導体素子であり、上記制御信号発生機構は、正極端子と負極端子間にパルスもしくは交流の制御信号を発生させ、半導体素子に流れる電流を制御することにより半導体素子のオン・オフ制御を行う方式のものであってもよい。
【0045】
磁気スイッチを用いたスイッチング方法としては、従来から用いられている方法で、例えば、リードスイッチを磁石によって動作させるリードスイッチ形のスイッチング方法、ホール効果を利用し、磁界によって生じるホール電圧を増幅して検出するホース素子をスイッチング素子として用いる方法、磁気抵抗効果を利用し、磁界による素子の抵抗増加を利用する方法等が挙げられるが、いずれの方法を使用してもよい。
【0046】
制御信号発生機構としては、例えば、電磁コイル又は磁石を用いて、スイッチング素子に作用させる磁界の強さを制御することにより、電流制御回路の接続、絶縁を制御することができる。
これらのなかでは、リードスイッチを使用し、ケースの外部に配置された磁石をリードスイッチに近づけたり、遠ざけたりすることにより、スイッチングを行う方法が簡易であり、望ましい。
【0047】
スイッチング素子として、半導体素子を用いる方法は、トランジスタを含むスイッチング回路を使用する方法、MOS-FETを含むスイッチング回路を使用する方法が挙げられる。
【0048】
図3は、トランジスタを含むスイッチング回路を示す回路図である。
正極端子および負極端子間に流す電流の直流成分をリチウムイオン二次電池の充放電に使用し、交流またはパルス成分を制御信号として使用することができる。
正極端子と負極端子間の配線にコンデンサを備え直流成分をカットし、制御信号源40からの制御信号が、正極端子及び負極端子を通してケースの内部に伝達される。ケースの内部では、正極端子と負極端子からそれぞれコンデンサで直流成分がカットされた制御信号が電流制御回路に伝達される。制御信号はトランジスタのベース-エミッタ間にそれぞれ接続され、制御信号に連動してコレクタ-エミッタ間でスイッチングが行われる。エミッタ側は、リチウム極に直接接続され、コレクタ側は、正極に接続されているが、抵抗器によって電流が制限されている。
【0049】
図4は、MOS-FETを含むスイッチング回路を示す回路図である。
正極端子および負極端子間に流す電流の直流成分をリチウムイオン二次電池の充放電に使用し、交流またはパルス成分を制御信号として使用することができる。
正極端子と負極端子間の配線にコンデンサを備え直流成分をカットし、制御信号源50からの制御信号が、正極端子及び負極端子を通してケースの内部に伝達される。ケースの内部では、正極端子と負極端子からそれぞれコンデンサで直流成分がカットされた制御信号が電流制御回路に伝達される。制御信号はMOS-FETのゲート(G)-ソース(S)間にそれぞれ接続され、制御信号に連動してソース(S)-ドレイン(D)間でスイッチングが行われる。ソース側は、リチウム極に直接接続され、ドレイン側は、正極に接続されているが、抵抗器によって電流が制限されている。なお、MOS-FETを用いたスイッチング回路では、制御信号によって、ゲート-ソース間のコンデンサを充電し、安定してゲート電圧が得られるので、制御信号の極性に関係なくスイッチングがオンの状態を容易に得ることができる。
なお、これらの電流制御回路は、一例でありどのような回路でも同様に外部からの制御信号に従ってドープ電極と正極若しくは負極とのスイッチングを行うことができる。
【0050】
上記のダイオード、抵抗器及びスイッチング素子は、それぞれの素子を接続することにより回路を構成してもよく、基板にこれらの素子を配設し、電解液に耐性のある樹脂等で被覆してもよく、それらの素子を電解液に耐性のある容器の内部に配設し、接続してもよい。
【0051】
図5は、本発明のリチウムイオン二次電池の他の実施形態を模式的に示す概略断面図である。
図1に示すリチウムイオン二次電池では、電流制御回路は、電極とケースとの間の空間に配置されていたが、
図5に示すリチウムイオン二次電池10では、電流制御回路20は、ケース19の内側に貼り付けられた態様で配設されていてもよい。
この場合には、ケース19の内側に貼り付けられた電流制御回路20を電解液に耐性のある樹脂等で被覆することより、より簡単に電流制御回路20を保護することができる。
図5には、示されていないが、電流制御回路20は、
図2に示した電流制御回路と同様にダイオード及び抵抗器が配設されていてもよい。また、電流制御回路としては、
図5に示すように、正極11とリチウムイオン供給極17とをスイッチング素子21を介して接続する電流制御回路20で構成されていてもよいが、負極13とリチウムイオン供給極17とをスイッチング素子を介して接続する電流制御回路で構成されていてもよい。
電流制御回路20を構成するダイオード、抵抗器及びスイッチング素子は、上記の実施形態の場合と同様に、それぞれの素子を接続してもよく、基板にこれらの素子を配設し、ケース19の内側に貼り付けるとともに、電解液に耐性のある樹脂等で被覆してもよく、それらの素子を電解液に耐性のある容器の内部に配設し、ケース19の内側に貼り付けてもよい。
【0052】
次に、電流制御回路及び制御信号発生機構以外の本発明のリチウムイオン二次電池を構成する部材について説明する。
リチウムイオン供給極の構成は特に限定されるものではないが、例えば、リチウム金属、リチウムアルミニウム等のリチウム合金、ステンレス鋼板やアルミニウム板等を集電板とし、活物質としてシリコン、チタン酸リチウム、オリビン酸鉄、Li3V2(PO4)3、LixV2O3等のリチウム元素と一種又は二種以上の遷移金属元素とを含むリチウム含有化合物を集電板に塗布したもの、黒鉛にリチウムイオンをプレドープしたもの等が挙げられる。
【0053】
図1では、詳しい構成を省略しているが、正極11及び負極13は、集電体と集電体の一方の面または両面に配置される活物質層とから構成されている。
【0054】
正極に用いられる正極活物質としては、特に限定されないが、LiMnO2、LixMn2O4(0<x<2)、Li2MnO3、LixMn1.5Ni0.5O4(0<x<2)等の層状構造を持つマンガン酸リチウム又はスピネル構造を有するマンガン酸リチウム;LiCoO2、LiNiO2又はこれらの遷移金属の一部を他の金属で置き換えたもの;LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2などの特定の遷移金属が半数を超えないリチウム遷移金属酸化物;これらのリチウム遷移金属酸化物において化学量論組成よりもLiを過剰にしたもの;LiFePO4等のオリビン構造を有するもの等があげられる。
また、これらの金属酸化物に、アルミニウム、鉄、リン、チタン、ケイ素、鉛、錫、インジウム、ビスマス、銀、バリウム、カルシウム、水銀、パラジウム、白金、テルル、ジルコニウム、亜鉛、ランタン等により一部置換した材料も使用することができる。特に、LiαNiβCoγAlδO2(1≦α≦2、β+γ+δ=1、β≧0.7、γ≦0.2)又はLiαNiβCoγMnδO2(1≦α≦1.2、β+γ+δ=1、β≧0.6、γ≦0.2)が好ましい。正極活物質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
上記正極活物質を正極として使用する際には、正極活物質を含む正極活物質層を板状に成形しそのまま正極としてもよいし、集電体の表面に上記正極活物質粒子を含む正極活物質層を形成して正極としてもよい。後者の形態における正極活物質粒子の平均粒子径は、特に制限されないが、正極活物質の高容量化、反応性、サイクル耐久性の観点からは、好ましくは1~100μm、より好ましくは1~20μmである。このような範囲であれば、二次電池は、高出力条件下での充放電時における電池の内部抵抗の増大が抑制され、充分な電流を取り出しうる。なお、正極活物質が2次粒子である場合には該2次粒子を構成する1次粒子の平均粒子径が10nm~1μmの範囲であるのが望ましいといえるが、本発明では、必ずしも上記範囲に制限されるものではない。ただし、製造方法にもよるが、正極活物質が凝集、塊状などにより2次粒子化したものでなくても良いことはいうまでもない。かかる正極活物質の粒径および1次粒子の粒径は、レーザー回折法を用いて得られたメディアン径を使用できる。なお、正極活物質粒子の形状は、その種類や製造方法等によって取り得る形状が異なり、例えば、球状(粉末状)、板状、針状、柱状、角状などが挙げられるがこれらに限定されるものではなく、いずれの形状であれ問題なく使用できる。好ましくは、充放電特性などの電池特性を向上し得る最適の形状を適宜選択するのが望ましい。
【0056】
負極に用いられる負極活物質としては、リチウムを可逆的に吸蔵および放出できるものであれば特に限定されないが、負極活物質の例としては、SiやSn等の金属、TiO、Ti2O3、TiO2若しくはSiO2、SiO、SnO2などの金属酸化物、Li4/3Ti5/3O4若しくはLi7MnNなどのリチウムと遷移金属との複合酸化物、Li-Pb系合金、Li-Al系合金、Li、又は、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、活性炭、カーボンファイバー、コークス、ソフトカーボン若しくはハードカーボンなどの炭素材料等が挙げられる。このうち、リチウムと合金化する元素を用いることにより、従来の炭素系材料に比べて高いエネルギー密度を有する高容量及び優れた出力特性の電池を得ることが可能となる。上記負極活物質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記のリチウムと合金化する元素としては、以下に限定されるものではないが、例えば、Si、Ge、Sn、Pb、Al、In、Zn、H、Ca、Sr、Ba、Ru、Rh、Ir、Pd、Pt、Ag、Au、Cd、Hg、Ga、Tl、C、N、Sb、Bi、O、S、Se、Te、Cl等が挙げられる。
【0057】
上記活物質のうち、炭素材料、並びに/又は、Si、Ge、Sn、Pb、Al、In及びZnからなる群より選択される少なくとも1種以上の元素を含む活物質が好ましく、炭素材料、Si、又は、Snの元素を含むものがより好ましい。
【0058】
負極又は正極を構成する集電体は導電性材料から構成され、その一方の面または両面に活物質層が配置される。集電体を構成する材料は特に限定されないが、例えば、金属、導電性高分子材料、非導電性高分子材料に導電性フィラーが添加された導電性を有する樹脂等を用いることができる。
【0059】
金属としては、アルミニウム、ニッケル、鉄、ステンレス鋼、チタン、銅などが挙げられる。これらの他、ニッケルとアルミニウムとのクラッド材、銅とアルミニウムとのクラッド材、あるいはこれらの金属の組み合わせのめっき材などが好ましい。また、金属表面にアルミニウムが被覆されてなる箔であってもよい。なかでも導電性や電池作動電位の観点からは、アルミニウム、ステンレス鋼、銅等が好ましい。
【0060】
また、導電性高分子材料としては、例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアクリロニトリル、及び、ポリオキサジアゾールなどが挙げられる。このような導電性高分子材料は、導電性フィラーを添加しなくても十分な導電性を有するため、製造工程の容易化または集電体の軽量化の点において有利である。
【0061】
非導電性高分子材料としては、例えば、ポリエチレン(PE;高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE))、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアミド(PA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、およびポリスチレン(PS)等が挙げられる。
【0062】
上記の導電性高分子材料又は非導電性高分子材料には、必要に応じて導電性フィラーが添加されていてもよい。特に、集電体の基材となる樹脂が非導電性高分子のみからなる場合は、樹脂に導電性を付与するために導電性フィラーを添加する必要がある。導電性フィラーは、導電性を有する物質であれば特に制限なく用いることができる。例えば、導電性、耐電位性、またはリチウムイオン遮断性に優れた材料として、金属および導電性カーボン等が挙げられる。金属としては、特に限定されないが、Ni、Ti、Al、Cu、Pt、Fe、Cr、Sn、Zn、In、Sb、およびKからなる群から選択される少なくとも1種の金属もしくはこれらの金属を含む合金又は金属酸化物を含むことが好ましい。また、導電性カーボンとしては、特に限定されないが、アセチレンブラック、バルカン、ブラックパール、カーボンナノファイバー、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノバルーン、及び、フラーレンからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。導電性フィラーの添加量は、集電体に十分な導電性を付与できる量であれば特に限定されないが、一般的には、5~35質量%程度である。
【0063】
電解液は、特に限定されないが、溶媒に電解質として金属塩を溶解させた溶液を用いることができる。
溶媒としては、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)等の環状カーボネート類、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)等の鎖状カーボネート類、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸エチル等の脂肪族カルボン酸エステル類、γ-ブチロラクトン等のγ-ラクトン類、1,2-ジエトキシエタン(DEE)、エトキシメトキシエタン(EME)等の鎖状エーテル類、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン等の環状エーテル類、ジメチルスルホキシド、1,3-ジオキソラン、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、プロピルニトリル、ニトロメタン、エチルモノグライム、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、3-メチル-2-オキサゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エチルエーテル、1,3-プロパンスルトン、アニソール、N-メチルピロリドン、フッ素化カルボン酸エステル等の非プロトン性有機溶媒等があげられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0064】
金属塩としては、特に限定されないが、リチウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等を用いることができる。
金属塩として、リチウム塩を用いる場合、リチウム塩としては、LiPF6、LiAsF6、LiAlCl4、LiClO4、LiBF4、LiSbF6、LiCF3SO3、LiC4F9CO3、LiC(CF3SO2)2、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、LiB10Cl10、低級脂肪族カルボン酸リチウム、クロロボランリチウム、四フェニルホウ酸リチウム、LiBr、LiI、LiSCN、LiCl、イミド類等があげられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
上記本発明のリチウムイオン二次電池において、セパレータの材料は、特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等の多孔質フィルムや不織布を用いることができる。また、セパレータとしては、それらを積層したものを用いることもできる。また、耐熱性の高い、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、セルロース、ガラス繊維を用いることもできる。また、それらの繊維を束ねて糸状にし、織物とした織物セパレータを用いることもできる。
【0066】
本発明のリチウムイオン二次電池を構成するケースは、従来より使用されている材料を用いることができ、例えば、防爆安全弁を備えたアルミニウム合金製のケース、ニッケルめっき鋼板製のケース等が挙げられる。
【0067】
バインダは、活物質層中の構成部材同士または活物質層と集電体とを結着させて電極構造を維持する目的で添加される。バインダとしては、特に限定されないが、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリイミド、PTFE、SBRなどの合成ゴム系バインダ等が挙げられる。
【0068】
本発明の電流制御回路は、上記構成のリチウムイオン二次電池において上記リチウムイオンを供給するリチウムイオン供給極と上記正極若しくは上記負極との接続を制御する電流制御回路であって、スイッチング素子を有し、上記スイッチング素子は、ケース外部から発信される制御信号に基づいて動作することを特徴とする。
この電流制御回路について、上記の本発明のリチウムイオン二次電池の説明のなかで詳しく説明したので、ここではその詳しい説明を省略する。
【0069】
本発明のリチウムイオン二次電池の容量回復方法は、上記のリチウムイオン二次電池の容量回復方法であって、
上記制御信号発生機構から制御信号を発生させることにより、上記スイッチング素子を介して上記リチウムイオン供給極と上記正極若しくは負極とを接続し、充放電前又は上記充放電の期間内の所定時期に、リチウムイオン供給極からリチウムイオンを上記正極、上記負極又は電解液に供給し、リチウムイオン二次電池の容量を回復させることを特徴とする。
【0070】
本発明のリチウムイオン二次電池の構成については、上述したので、ここでは、上記リチウムイオン二次電池を用いた容量回復方法について説明する。
【0071】
まず、最初にリチウムイオン二次電池の充放電を始める前に、電流制御回路及び制御信号発生機構を用い、例えば、リチウムイオン供給極と正極又は負極とを接続することにより、リチウムイオンを正極又は電解液に供給することにより、負極又は正極に捕捉され、減少したリチウムイオンの不足分を補うことができ、初期の不可逆容量を解消することができ、初期における電池の容量を規格の値より増加させることができる。
【0072】
また、上記充放電を繰り返し行うことにより容量が減少した場合、所定時期に、電流制御回路及び制御信号発生機構を用い、例えば、リチウムイオン供給極と正極又は負極とを接続することにより、正極、負極又は電解液にリチウムイオンを供給することができ、充放電の繰り返しにより減少した容量を回復させることができる。この上記充放電の繰り返しによる容量減少に対する容量回復処理は、複数回行うことができ、例えば、車両にリチウムイオン二次電池を搭載した場合には、定期点検時等に上記容量回復処理を行うことにより、1回の充電で走行可能な距離を延ばすことができる。
【符号の説明】
【0073】
10 リチウムイオン二次電池
11 正極
11a、13a、17a 配線
11t 正極端子
11d ダイオード
11e 抵抗器
13 負極
13t 負極端子
14 セパレータ
15 電解液
17 リチウムイオン供給極
19 ケース
20、25 電流制御回路
21、27 スイッチング素子
30 制御信号発生機構
40、50 制御信号源