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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-31
(45)【発行日】2023-11-09
(54)【発明の名称】船舶
(51)【国際特許分類】
   B63B 25/08 20060101AFI20231101BHJP
   F17C 7/00 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
B63B25/08 A
F17C7/00 A
B63B25/08 G
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019228934
(22)【出願日】2019-12-19
(65)【公開番号】P2021095066
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】518022743
【氏名又は名称】三菱造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】石田 聡成
(72)【発明者】
【氏名】森本 晋介
(72)【発明者】
【氏名】小形 俊夫
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-125039(JP,A)
【文献】特開平8-310482(JP,A)
【文献】国際公開第2008/009930(WO,A2)
【文献】国際公開第03/066423(WO,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1885710(KR,B1)
【文献】特開2001-32998(JP,A)
【文献】特開昭60-232286(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1788751(KR,B1)
【文献】村上彰男,西垣丈志,杉崎公俊,大久保克己,上門正樹,高島顕,道場康二,“多目的LPG船のカーゴタンクシステムの研究”,川崎重工技報,日本,川崎重工業株式会社 明石技術研究所,1993年07月20日,第118号,pp.65-72,ISSN 0387-7906
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 25/08,
F17C 6/00, 7/00,13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船体と、
前記船体内に設けられて、液化アンモニア及び液化二酸化炭素の一方が貯留されたタンクと、
前記タンク内に液化アンモニア及び液化二酸化炭素の他方を供給する供給ラインと、
前記タンク内に貯留された液化アンモニア及び液化二酸化炭素の一方を払い出した後に前記供給ラインを通して前記タンク内に液化アンモニア及び液化二酸化炭素の他方を供給する際に、前記タンクに残留しているアンモニアガス及び二酸化炭素ガスの一方と、前記供給ラインにより前記タンク内に供給された液化アンモニア及び液化二酸化炭素の他方が気化したアンモニアガス及び二酸化炭素ガスの他方と、が混合された混合気体を排出する排出ラインと、
前記船体内に設けられ、水が貯留されているとともに、前記排出ラインから排出された前記混合気体が導入される水タンクと、
を備える船舶。
【請求項2】
前記水タンク内の前記水を加熱する加熱部と、
前記加熱部で前記水を加熱することで前記水から分離した気体を排出する分離ガス排出ラインと、を備える
請求項1に記載の船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
液化ガスを運搬する船舶等には、液化ガスを貯留するタンクが設けられている。このようなタンクでは、メンテンナンス等によりタンク開放する際に、タンク内に残留した液化ガスと酸素とが接触しないように、まずタンク内に不活性なイナートガスを充満させ、その後、タンク内のイナートガスを大気等に置換する場合がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-193653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記液化ガスを貯留するタンクにおいては、タンクに貯留するガスの種類を切り換える場合がある。この際、切換前にタンクに貯留されていた第一のガスの残留ガスと、切替後にタンクに貯留される第二のガスとの接触により不具合が生じる可能性がある。この不具合としては、例えば、第一のガスと第二のガスとが化学反応して、固形物等が生成されてしまうことが例示できる。また、第一のガスが第二のガスに混入し、切替後に、タンク内に第一のガスが残留してしまう可能性もある。そのため、タンクに貯留するガスの種類を切り換える場合には、特許文献1のイナートガスの場合と同様に、タンク内の第一のガスを不活性ガスに置換した後に、第二のガスをタンク内に積み込むような運用をする必要がある。
しかしながら、上記したような手法では、タンク内に積み込むガスの種類を切り替える際に、第一のガスのタンク外への払い出し、タンク内の不活性ガス等への置換、タンク内への第二のガスの積込、といった工程を順次実行する必要があるため、タンク内に積み込むガスの種類を切り替える作業に要する手間と時間が掛かってしまう。また、タンク内の残留ガスの種類によっては、残留ガスをタンクから大気中に直接放出することができず、残留ガスの処理に手間が掛かることもある。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、タンク内に積み込むガスの種類を切り替える作業に要する手間と時間を抑えることができる船舶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係る船舶は、船体と、前記船体内に設けられて、液化アンモニア及び液化二酸化炭素の一方が貯留されたタンクと、前記タンク内に液化アンモニア及び液化二酸化炭素の他方を供給する供給ラインと、前記タンク内に貯留された液化アンモニア及び液化二酸化炭素の一方を払い出した後に前記供給ラインを通して前記タンク内に液化アンモニア及び液化二酸化炭素の他方を供給する際に、前記タンクに残留しているアンモニアガス及び二酸化炭素ガスの一方と、前記供給ラインにより前記タンク内に供給された液化アンモニア及び液化二酸化炭素の他方が気化したアンモニアガス及び二酸化炭素ガスの他方と、が混合された混合気体を排出する排出ラインと、前記船体内に設けられ、水が貯留されているとともに、前記排出ラインから排出された前記混合気体が導入される水タンクと、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示の船舶によれば、タンク内に積み込むガスの種類の切替を効率良く行い、作業に要する手間と時間を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の実施形態に係る船舶の概略構成を示す平面図である。
図2】本開示の実施形態に係る船舶が適用されるタンクにおいて、タンクに液化二酸化炭素を積み込んだ状態を示す側断面図である。
図3】本開示の実施形態に係る船舶が適用されるタンクにおいて、タンクに液化アンモニアを積み込んだ状態を示す側断面図である。
図4】本開示の実施形態に係る船舶において、液化アンモニアを払い出したタンクにアンモニアガスが残留した状態を示す側断面図である。
図5】本開示の実施形態に係る船舶において、タンクに液化二酸化炭素を供給し、混合ガスが水タンクに送り込まれる状態を示す側断面図である。
図6】本開示の実施形態に係る船舶において、液化二酸化炭素を払い出したタンクに二酸化炭素ガスが残留した状態を示す側断面図である。
図7】本開示の実施形態に係る船舶において、タンクに液化アンモニアを供給し、混合ガスが水タンクに送り込まれる状態を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態に係る船舶について、図1図7を参照して説明する。
(船舶の船体構成)
図1図2に示す本開示の実施形態の船舶1は、例えば、液化二酸化炭素と、液化アンモニアと、を選択的に運搬可能とされている。この船舶1は、船体2と、タンク21と、上部供給ライン32と、供給ラインとしての下部供給ライン33と、排出ライン35と、水タンク50と、を少なくとも備えている。
【0010】
(船体の構成)
図1に示すように、船体2は、その外殻をなす、一対の舷側3A,3Bと、船底(図示無し)と、甲板5と、を有している。舷側3A,3Bは、左右舷側をそれぞれ形成する一対の舷側外板を備えている。船底(図示無し)は、これら舷側3A,3Bを接続する船底外板を備えている。これら一対の舷側3A,3B及び船底(図示無し)により、船体2の外殻は、船首尾方向Daに直交する断面において、U字状を成している。この実施形態で例示する甲板5は、外部に露出する全通甲板である。船体2には、船尾2b側の甲板5上に、居住区を有する上部構造7が形成されている。
【0011】
船体2内には、上部構造7よりも船首2a側に、貨物搭載区画(ホールド)8が形成されている。貨物搭載区画8は、甲板5に対して下方の船底(図示無し)に向けて凹み、上方に開口している。
【0012】
(タンクの構成)
タンク21は、貨物搭載区画8内に、複数配置されている。この実施形態において、タンク21は、貨物搭載区画8内に、例えば計7個が配置されている。貨物搭載区画8内におけるタンク21のレイアウト、設置数は何ら限定するものではない。この実施形態において、各タンク21は、例えば、水平方向(具体的には、船首尾方向)に延びる円筒状である。なお、タンク21は、円筒状に限られるものではなく球形であってもよい。
【0013】
(供給ラインの構成)
図2に示すように、上部供給ライン32、及び下部供給ライン33は、各タンク21に設けられている。
上部供給ライン32は、タンク21の外部からタンク21の内部に至っている。上部供給ライン32の先端には、タンク21内の上部に開口する開口部32aが形成されている。ここで、タンク内の上部とは、タンク21内の領域のうち、船高さ方向(言い換えれば、タンク21の上下方向)におけるタンク21の中央よりもタンク21の上端に近い側の領域を意味しており、一例として、タンク21の頂部を挙げることができる。この上部供給ライン32には、開閉弁32vが設けられている。また、上部供給ライン32には、排出ライン35が分岐接続されている。
【0014】
下部供給ライン33は、タンク21の外部からタンク21の内部に至っている。下部供給ライン33の先端には、タンク21内の下部に開口する開口部33aが形成されている。ここで、タンク21内の下部とは、タンク21内の領域のうち、船高さ方向におけるタンク21の中央よりもタンク21の下端に近い側の領域を意味しており、一例として、タンク21の底部を挙げることができる。この下部供給ライン33には、開閉弁33vが設けられている。
【0015】
(排出ラインの構成)
排出ライン35は、タンク21に積み込むガスの種類を切り替える際に、タンク21に貯留されていたアンモニア及び二酸化炭素の少なくとも一方を含む気体を、タンク21の外部に排出する。排出ライン35の一端側は、上部供給ライン32から分岐している。この排出ライン35には、開閉弁35vが設けられている。
【0016】
(水タンクの構成)
水タンク50は、船体2(図1参照)内に設けられている。水タンク50は、例えば、船体2内に設けられたバラストタンクであってもよい。水タンク50は、その内部に水Wが貯留可能とされる。水タンク50に貯留される水Wは、海水であってもよい。水タンク50内には、排出ライン35の他端が配置されている。これにより、排出ライン35を通してタンク21から排出される気体が水タンク50内の水Wに導入される。
【0017】
この実施形態で例示する水タンク50には、加熱部52が設けられている。加熱部52は、水タンク50内の水Wを加熱可能に構成されている。例えば、タンクから排出された気体に含まれる成分(二酸化炭素やアンモニア)が水Wを介して化学反応を起こして、その化学反応により生成された物質(例えば炭酸アンモニウム)が水タンク50内の水Wに溶け込んでいる場合がある。この場合、加熱部52により水タンク50内の水Wを加熱することで、上記化学反応する前の成分(二酸化炭素、アンモニア及び水)に分離することが可能となる。
【0018】
さらに、この実施形態で例示する水タンク50には、分離ガス排出ライン53が接続されている。この分離ガス排出ライン53によって、加熱部52によって分離された上記成分を含む気体が、船外に排出可能になっている。
【0019】
(タンクへの液化ガスの積込、及び払い出し)
上記タンク21には、液化二酸化炭素Lcと、液化アンモニアLaとの何れか一方が選択的に積み込まれる。
船舶1は、液化二酸化炭素Lc、及び液化アンモニアLaの何れか一方のみを繰り返し運搬する場合、以下のようにして、タンク21への液化二酸化炭素の積込、又はタンク21への液化アンモニアの積込を行う。
【0020】
(タンクへの液化二酸化炭素の積込)
図2に示すように、液化二酸化炭素Lcをタンク21に積み込むには、下部供給ライン33に、船外の液化二酸化炭素供給設備等から液化二酸化炭素Lcが供給される配管(図示無し)を接続する。開閉弁33vを開状態にし、船外から下部供給ライン33に液化二酸化炭素Lcを送り込む。すると、液化二酸化炭素Lcは、開口部33aからタンク21内に積み込まれる。このようにして、タンク21内に液化二酸化炭素Lcが貯留される。また、タンク21内の上部には、液化二酸化炭素Lcの一部が気化した二酸化炭素ガスGcが存在する。なお、液化二酸化炭素Lcのタンク21への積込は、開閉弁32vを開状態にし、上部供給ライン32を通して行ってもよい。
【0021】
(タンクへの液化アンモニアの積込)
図3に示すように、液化アンモニアLaをタンク21に積み込むには、下部供給ライン33に、船外の液化アンモニア供給設備等から液化アンモニアLaが供給される配管(図示無し)を接続する。開閉弁33vを開状態にし、船外から下部供給ライン33に液化アンモニアLaを送り込む。すると、液化アンモニアLaは、開口部33aからタンク21内に積み込まれる。このようにして、タンク21内に液化アンモニアLaが貯留される。また、タンク21内の上部には、液化アンモニアLaの一部が気化したアンモニアガスGaが存在する。なお、液化アンモニアLaのタンク21への積込は、開閉弁32vを開状態にし、上部供給ライン32を通して行ってもよい。
【0022】
(液化アンモニアから液化二酸化炭素へのガス置換)
タンク21内に積み込む液化ガスを、液化アンモニアから液化二酸化炭素に置換する場合、まず、タンク21内の液化アンモニアLaを、船外の液化アンモニア回収設備等に払い出す。タンク21内に貯留された液化アンモニアLaを払い出すには、開閉弁33vを開状態にし、例えば、カーゴポンプ(図示無し)により下部供給ライン33を通してタンク21内から液化アンモニアLaを吸い出す。これにより、タンク21内の液化アンモニアLaが、下部供給ライン33を通して、船外の液化アンモニア回収設備等に払い出される。
タンク21内の液化アンモニアLaを払い出した後には、図4に示すように、タンク21内に、アンモニアガスGaが残留している。
【0023】
続いて、図5に示すように、液化二酸化炭素Lcをタンク21の下部に供給する。液化二酸化炭素Lcをタンク21に供給するには、開閉弁33vを開状態にし、船外から下部供給ライン33に液化二酸化炭素Lcを送り込む。液化二酸化炭素Lcは、開口部33aからタンク21内に積み込まれる。液化二酸化炭素Lcは、タンク21内のアンモニアガスGaよりも比重が大きい。このため、タンク21内に送り込まれた液化二酸化炭素Lcは、タンク21の下部に貯留される。アンモニアガスGaは、タンク21内で、液化アンモニアLaの上方に貯留される。また、タンク21の上部には、液化二酸化炭素Lcが気化することで生成された二酸化炭素ガスGcも溜まる。つまり、タンク21内に液化二酸化炭素Lcを供給すると、タンク21の上部には、アンモニアガスGaと二酸化炭素ガスGcとの混合ガスGmが貯留される。
【0024】
上記のようにタンク21内に液化二酸化炭素Lcを送り込むときには、排出ライン35に設けられた開閉弁35vを開く。液化二酸化炭素Lcをタンク21の下部に供給し続けると、タンク21内における液化二酸化炭素Lcの量が増えるにしたがって、タンク21の上部のアンモニアガスGaと二酸化炭素ガスGcとの混合ガスGmは、タンク21内で上方に押し上げられる。押し上げられた混合ガスGmは、タンク21内の上部に開口した開口部32aから、上部供給ライン32に流れ込む。上部供給ライン32に流れ込んだ混合ガスGmは、排出ライン35を通して水タンク50内の水Wに導入される。
【0025】
すると、混合ガスGmに含まれる成分であるアンモニア(NH)と二酸化炭素(CO)は、水W中に放出され、水W(HO)を介して化学反応を起こす。そして、この化学反応により固体の炭酸アンモニウム((NHCO)や炭酸水素アンモニウム(NH・HCO)が生成される。生成された炭素アンモニウムや炭酸水素アンモニウムは、水W中に溶け込んだ状態で水タンク50内に貯留される。
【0026】
なお、タンク21内に液化二酸化炭素Lcを送り込みはじめた初期の段階で、タンク21の上部から、混合ガスGmではなく、アンモニアガスGaのみが上部供給ライン32に排出されるのであれば、アンモニアガスGaは、水タンク50に送り込まず、上部供給ライン32を通して船外に設けられたアンモニアガス回収設備等で回収しても良い。
【0027】
タンク21内に、所定量の液化二酸化炭素Lcが貯留されたら、開閉弁33v、35vを閉状態にする。これにより、タンク21内に積み込む液化ガスを、液化アンモニアLaから液化二酸化炭素Lcに置換する作業が完了する。
【0028】
(液化二酸化炭素から液化アンモニアへのガス置換)
タンク21内に積み込む液化ガスを、液化二酸化炭素から液化アンモニアに置換する場合、まず、タンク21内の液化二酸化炭素Lcを、船外の液化二酸化炭素回収設備等に払い出す。タンク21内に貯留された液化二酸化炭素Lcを払い出すには、開閉弁33vを開状態にし、例えば、カーゴポンプ(図示無し)により下部供給ライン33を通してタンク21内から液化二酸化炭素Lcを吸い出す。これにより、タンク21内の液化二酸化炭素Lcが、下部供給ライン33を通して、船外の液化二酸化炭素回収設備等に払い出される。
タンク21内の液化二酸化炭素Lcを払い出した後、図6に示すように、タンク21内には、二酸化炭素ガスGcが残留している。
【0029】
続いて、図7に示すように、タンク21の下部に、液化アンモニアLaを供給する。液化アンモニアLaをタンク21に供給するには、開閉弁33vを開状態にし、船外から下部供給ライン33に液化アンモニアLaを送り込む。すると、液化アンモニアLaは、開口部33aからタンク21内に積み込まれる。
【0030】
液化アンモニアLaは、タンク21内の二酸化炭素ガスGcよりも比重が大きい。そのため、タンク21内に送り込まれた液化アンモニアLaは、タンク21の下部に貯留される。二酸化炭素ガスGcは、タンク21内で、液化二酸化炭素Lcの上方に貯留される。また、タンク21の上部には、液化アンモニアLaが気化することで生成されたアンモニアガスGaも溜まる。つまり、タンク21内に液化アンモニアLaを供給すると、タンク21の上部には、二酸化炭素ガスGcとアンモニアガスGaとの混合ガスGmが貯留される。
【0031】
上記のようにタンク21内に液化アンモニアLaを送り込むときには、排出ライン35に設けられた開閉弁35vを開く。液化アンモニアLaをタンク21の下部に供給し続けると、タンク21内における液化アンモニアLaの量が増えるにしたがって、タンク21の上部の二酸化炭素ガスGcとアンモニアガスGaとの混合ガスGmが、タンク21内で上方に押し上げられる。押し上げられた混合ガスGmは、タンク21内の上部に開口した開口部32aから、上部供給ライン32に流れ込む。上部供給ライン32に流れ込んだ混合ガスGmは、排出ライン35を通して水タンク50内の水Wに導入される。
【0032】
すると、混合ガスGmに含まれる成分であるアンモニア(NH)と二酸化炭素(CO)は、水W中に放出され、水W(HO)を介して化学反応を起こす。そして、この化学反応により固体の炭酸アンモニウム((NHCO)や炭酸水素アンモニウム(NH・HCO)が生成される。この生成された炭酸アンモニウムや炭酸水素アンモニウムは、水Wに溶け込んだ状態で水タンク50内に貯留される。
【0033】
なお、タンク21内に液化アンモニアLaを送り込みはじめた初期の段階で、タンク21の上部から、混合ガスGmではなく、二酸化炭素ガスGcのみが上部供給ライン32に排出されるのであれば、二酸化炭素ガスGcは、水タンク50に送り込まず、そのまま船外に設けられた二酸化炭素回収設備等で回収したり、船外に放出したりしてもよい。
【0034】
タンク21内に、所定量の液化二酸化炭素Lcが貯留されたら、開閉弁33v、35vを閉状態にする。これにより、タンク21内に積み込む液化ガスを、液化二酸化炭素Lcから液化アンモニアLaに置換することができる。
【0035】
(水タンク内の水の熱分解処理)
上記のようにして、水タンク50内の水Wは、加熱部52を作動させることで熱分解処理を行うことができる。加熱部52を作動させると、炭酸アンモニウムや炭酸水素アンモニウムが溶け込んだ水Wが加熱される。水タンク50内の水Wを、例えば58℃以上に加熱すると、炭酸アンモニウムや炭酸水素アンモニウムが、アンモニアと二酸化炭素と水Wに熱分解される。これら熱分解されたアンモニア及び二酸化炭素は、分離ガス排出ライン53等を通して船外に設けられた処理設備等に排出される。
【0036】
(作用効果)
上記実施形態の船舶1では、アンモニアガスGa及び二酸化炭素ガスGcの一方が残留した(貯留された)タンク21と、タンク21内に液化アンモニアLa及び液化二酸化炭素Lcの他方を供給する下部供給ライン33と、下部供給ライン33から液化アンモニアLa及び液化二酸化炭素Lcの他方を供給する際に、液化アンモニアLa及び液化二酸化炭素Lcの他方から気化した気体と、タンク21内に残留しているアンモニアガスGa及び二酸化炭素ガスGcの一方の気体と、が混合された混合気体を排出する排出ライン35と、排出ライン35から排出された混合気体が導入される水タンク50と、を備えている。
【0037】
このような構成では、アンモニアガスGa及び二酸化炭素ガスGcの一方が残留したタンク21内に、下部供給ライン33を通して液化アンモニアLa及び液化二酸化炭素Lcの他方を供給すると、アンモニアと二酸化炭素とが混合された混合気体がタンク21から排出される。この混合気体は、排出ライン35を通して水タンク50内に導入され、水W内に放出される。そして、タンク21内でアンモニアと二酸化炭素と水とが接触することで化学反応が起こり、炭酸アンモニウムや炭酸水素アンモニウムが生成される。これら炭酸アンモニウムや炭酸水素アンモニウムは、水Wに溶け込み貯留される。したがって、ガスの種類を切り替える際にタンク21から排出される気体や生成物を、船外に排出する必要がなくなる。つまり、タンク21から排出される気体を大気中に放出することが困難な場合であっても、ガスの種類の切替作業を行うことができる。その結果、タンク21内に積み込むガスの種類の切替を効率良く行い、ガスの種類を切り替える作業に要する手間と時間を抑えることができる。
【0038】
上記実施形態の船舶1では、更に、水タンク50内の水Wを加熱する加熱部52と、加熱部52で水Wを加熱することで水Wから分離した気体を排出する分離ガス排出ライン53と、を備えている。
このような構成では、ガスの種類を切り替える際に、混合気体と水との化学反応によって生成された生成物の溶け込んでいる水タンク50内の水Wを、加熱部52で加熱することができる。そのため、水Wに溶け込んでいた炭酸アンモニウムや炭酸水素アンモニウムを熱分解させて、二酸化炭素ガスやアンモニアガス等の気体を水Wから分離することができる。そして、水タンク50内の水Wから分離した気体を、分離ガス排出ライン53から排出することができるので、例えば、ガスの種類を切り替える作業の状況に関わらず、適宜のタイミングで、水Wから分離した気体の処理を行うことができる。
【0039】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
なお、上記実施形態では、水タンク50に加熱部52を備えるようにしたが、加熱部52は、船外の処理設備等に設けるようにしてもよい。その場合、水タンク50内の水Wは、排出ライン35から排出された気体に含まれる成分や生成物が溶け込んだまま、船外に排出し、船外の処理設備等で処理する。
また、上記実施形態では、上部供給ライン32に排出ライン35が分岐接続されている場合を例示したが、上部供給ライン32を省略してタンク21に排出ライン35を直接接続してもよい。
さらに、上記実施形態では、下部供給ライン33によりタンク21の下部から液化アンモニアLa又は液化二酸化炭素Lcをタンク21内に供給する場合について説明したが、下部に限られず、例えば、タンク21の上部や中央から液化アンモニアLa又は液化二酸化炭素Lcをタンク21内に供給するようにしてもよい。
【0040】
<付記>
実施形態に記載の船舶1は、例えば以下のように把握される。
【0041】
(1)第1の態様に係る船舶1は、船体2と、前記船体2内に設けられて、アンモニア及び二酸化炭素の一方が貯留されたタンク21と、前記タンク21内にアンモニア及び二酸化炭素の他方を供給する供給ライン33と、前記供給ライン33を通してタンク21内にアンモニア及び二酸化炭素の他方を供給する際に、前記タンク21に貯留されていたアンモニア及び二酸化炭素の一方と、前記供給ライン33により前記タンク21ないに供給されたアンモニア及び二酸化炭素の他方と、が混合された混合気体を排出する排出ライン35と、前記船体2内に設けられ、水Wが貯留されているとともに、前記排出ライン35から排出された前記混合気体が導入される水タンク50と、を備える。
【0042】
この船舶1は、タンク21に積み込むガスの種類を切り換える場合、アンモニア及び二酸化炭素の一方が貯留されたタンク21内に、供給ライン33を通してアンモニア及び二酸化炭素の他方を供給する。すると、排出ライン35から、アンモニア及び二酸化炭素の混合された混合気体が排出される。このタンク21から排出された混合気体は、排出ライン35を通して水タンク50に送り込まれる。タンク21内に送り込まれた混合気体が水Wと接触することで、例えば炭酸アンモニウムや炭酸水素アンモニウムが生成物として生成される。この生成物は、水タンク50に導入されることで水Wに溶け込む。
このようにして、タンク21に積み込むガスの種類を切り替える際に、タンク21から排出される混合気体を水Wと化学反応させて、水タンク50に貯留させることができる。したがって、ガスの種類を切り替える際にタンク21から排出される気体や生成物を、船外に排出する必要がない。つまり、タンク21から排出される気体を大気中に放出することが困難な場合であっても、ガスの種類の切替作業を行うことができる。その結果、タンク21内に積み込むガスの種類の切替を効率良く行い、ガスの種類を切り替える作業に要する手間と時間を抑えることができる。
【0043】
(2)第2の態様に係る船舶1は、(1)の船舶1であって、前記水タンク50内の前記水Wを加熱する加熱部52と、前記加熱部52で前記水Wを加熱することで前記水Wから分離した気体を排出する分離ガス排出ライン53と、を備える。
【0044】
これにより、上記生成物が溶け込んだ水タンク50内の水Wを加熱することができる。そのため、水Wに溶け込んでいた炭酸アンモニウムや炭酸水素アンモニウムを熱分解させて、二酸化炭素ガスやアンモニアガス等の気体を水Wから分離することができる。また、水タンク50内の水Wから分離した気体を、分離ガス排出ライン53から排出することができるので、例えば、タンク21内のガスの種類を切り替える作業の状況に関わらず、適宜のタイミングで、水Wから分離した気体の処理を行うことができる。
【符号の説明】
【0045】
1…船舶
2…船体
2a…船首
2b…船尾
3A、3B…舷側
5…甲板
7…上部構造
8…貨物搭載区画
21…タンク
32…上部供給ライン
32a…開口部
32v…開閉弁
33…供給ライン
33…下部供給ライン(供給ライン)
33a…開口部
33v…開閉弁
35…排出ライン
35v…開閉弁
50…水タンク
52…加熱部
53…分離ガス排出ライン
Da…船首尾方向
Ga…アンモニアガス
Gc…二酸化炭素ガス
Gm…混合ガス
La…液化アンモニア
Lc…液化二酸化炭素
W…水
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7