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特許7377096埋設金属管の防食装置及び埋設金属管の防食施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-31
(45)【発行日】2023-11-09
(54)【発明の名称】埋設金属管の防食装置及び埋設金属管の防食施工方法
(51)【国際特許分類】
   C23F 13/10 20060101AFI20231101BHJP
   C23F 13/02 20060101ALI20231101BHJP
   C23F 13/22 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
C23F13/10 A
C23F13/02 A
C23F13/02 J
C23F13/22
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019232479
(22)【出願日】2019-12-24
(65)【公開番号】P2021101033
(43)【公開日】2021-07-08
【審査請求日】2022-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】池田 幸平
【審査官】▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05415745(US,A)
【文献】特表2017-524812(JP,A)
【文献】特開2012-102385(JP,A)
【文献】特開平07-294479(JP,A)
【文献】特表2019-501277(JP,A)
【文献】特表2015-525832(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23F 13/00-13/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
防食の対象となる埋設金属管より卑な金属で構成されている犠牲陽極材を有する交換部と、
地中に埋設可能、かつ、前記交換部を収容可能であり、イオンを透過することができるように形成されている埋設部と、
前記犠牲陽極材の残量を検出可能な検出部と、
前記検出部による検出結果を報知可能な報知部と、
を具備し、
前記交換部は、
前記埋設部に対して交換可能であり、
前記報知部は、
前記交換部に設けられている、
埋設金属管の防食装置。
【請求項2】
前記交換部は、
把持可能な取手部を具備し、
前記報知部は、
前記取手部に設けられている、
請求項1に記載の埋設金属管の防食装置。
【請求項3】
前記埋設部は、
地上から前記交換部を出し入れ可能な開口部を具備する、
請求項1又は請求項2に記載の埋設金属管の防食装置。
【請求項4】
前記交換部は、
前記犠牲陽極材を収容すると共に、イオンを透過することができるように形成された収容部を具備する、
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の埋設金属管の防食装置。
【請求項5】
前記検出部による検出結果を発信可能な発信部をさらに具備する、
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の埋設金属管の防食装置。
【請求項6】
地中に埋設された埋設金属管が露出するように地面を掘削して穴を形成する掘削工程と、
中空状に形成された埋設部を前記穴の内部に設置する埋設部設置工程と、
犠牲陽極材を有する交換部を前記埋設部の内部に設置し、前記交換部と前記埋設金属管とを電気的に接続する収容工程と、
を具備し、
前記交換部は、
前記埋設部に対して交換可能であり、前記犠牲陽極材の残量を報知可能な報知部を具備している、
埋設金属管の防食施工方法。
【請求項7】
前記埋設金属管が電気的に遮断された複数の部位に分かれている場合、前記複数の部位ごとに前記埋設部及び前記交換部を設ける、
請求項6に記載の埋設金属管の防食施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、埋設金属管の防食装置及び埋設金属管の防食施工方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、埋設金属管の防食装置の技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1には、犠牲陽極を用いて、埋設された既設金属管の電気化学的腐食の進行を抑制する既設金属管の防食方法が記載されている。上記既設金属管の防食方法は、既設金属管まで到達するように地面を掘削し、掘削により形成された穴に犠牲陽極を差し込むと共に、既設金属管に犠牲陽極を溶接する構成とされている。
【0004】
ここで、上記犠牲陽極は、既設金属管の防食に伴い腐食(消耗)することから、当該犠牲陽極の設置から所定の期間が経過すれば交換する必要がある。
【0005】
しかしながら、上記既設金属管の防食方法では、犠牲陽極の残量の確認や交換を行うたびに地面を掘削して犠牲陽極を露出させる必要があり、犠牲陽極の管理のために大がかりな作業を要する。このため、埋設金属管の防食装置の管理を容易に行うことが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特公昭60-4276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、埋設金属管の防食装置の管理を容易に行うことができる埋設金属管の防食装置及び埋設金属管の防食施工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、請求項1においては、防食の対象となる埋設金属管より卑な金属で構成されている犠牲陽極材を有する交換部と、地中に埋設可能、かつ、前記交換部を収容可能であり、イオンを透過することができるように形成されている埋設部と、前記犠牲陽極材の残量を検出可能な検出部と、前記検出部による検出結果を報知可能な報知部と、を具備し、前記交換部は、前記埋設部に対して交換可能であり、前記報知部は、前記交換部に設けられているものである。
【0010】
請求項2においては、前記交換部は、把持可能な取手部を具備し、前記報知部は、前記取手部に設けられているものである。
【0011】
請求項3においては、前記埋設部は、地上から前記交換部を出し入れ可能な開口部を具備するものである。
【0012】
請求項4においては、前記交換部は、前記犠牲陽極材を収容すると共に、イオンを透過することができるように形成された収容部を具備するものである。
【0013】
請求項5においては、前記検出部による検出結果を発信可能な発信部をさらに具備するものである。
【0015】
請求項6においては、地中に埋設された埋設金属管が露出するように地面を掘削して穴を形成する掘削工程と、中空状に形成された埋設部を前記穴の内部に設置する埋設部設置工程と、犠牲陽極材を有する交換部を前記埋設部の内部に設置し、前記交換部と前記埋設金属管とを電気的に接続する収容工程と、を具備し、前記交換部は、前記埋設部に対して交換可能であり、前記犠牲陽極材の残量を報知可能な報知部を具備しているものである。
【0016】
請求項においては、前記埋設金属管が電気的に遮断された複数の部位に分かれている場合、前記複数の部位ごとに前記埋設部及び前記交換部を設けるものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0018】
請求項1においては、埋設金属管の防食装置の管理を容易に行うことができる。また、犠牲陽極材の残量を容易に把握することができる。
【0019】
請求項2においては、犠牲陽極材の残量を容易に把握することができる
【0020】
請求項3においては、埋設金属管の防食装置の管理を容易に行うことができる
【0021】
請求項4においては、犠牲陽極材の出し入れを容易に行うことができる
【0022】
請求項5においては、犠牲陽極材の残量を容易に把握することができる。
【0024】
請求項においては、埋設金属管の防食装置の管理を容易に行うことができる。
【0025】
請求項においては、埋設金属管の防食を効果的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態に係る防食装置を示した断面図。
図2】(a)水道管の腐食を示した模式図。(b)犠牲陽極材による水道管の防食を示した模式図。
図3】防食装置を示した斜視図。
図4】埋設部を示した斜視図。
図5】交換部を示した斜視図。
図6】交換部を示した平面図。
図7】水道管の防食施工方法を示したフローチャート。
図8】(a)掘削工程において地面を掘削している状態を示した断面図。(b)掘削工程において掘削が完了した状態を示した断面図。
図9】(a)溶接工程を示した断面図。(b)ブロック設置工程を示した断面図。
図10】(a)埋設部設置工程を示した断面図。(b)収容工程を示した断面図。
図11】継手構造の水道管に防食装置を接続した例を示した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の一実施形態に係る防食装置1は、地中に埋設された水道管Pの腐食を抑制するものである。
【0028】
以下では、まず、図1及び図2(a)を用いて水道管Pについて説明する。
【0029】
図1に示す水道管Pは、水を所定の場所に送るための配管である。水道管Pは、鋼鉄製の鋼管によって形成される。水道管Pの径寸法(例えば口径75mm、100mm等)は用途に応じて適宜設定可能である。
【0030】
水道管Pは、所定の埋設深さ(例えば、車両が通行可能な道路においては地面Gから1.2m以上、歩道においては地面Gから0.6m以上等)となるように地中に埋設される。上記地面Gは、アスファルトにより舗装されている。
【0031】
このような地中に埋設された鋼製の水道管Pは、時間の経過に伴い金属のイオン化が進むことで腐食する。すなわち、図2(a)に示すように、水道管Pは、表面の組織が不均一であることや、傷や付着物等が原因で、イオン化し易い(卑な)部分(部分P1)とイオン化し難い(貴な)部分(部分P2)とが生じる場合がある。このような場合、水道管Pが埋設された地中(土壌)には、土壌中の水分を通じて部分P1から部分P2へ電流(腐食電流)が流れる。この際に、部分P1において、当該部分がイオン化する(鉄イオンとなり溶解する)陽極反応が起こることで腐食が発生する。本実施形態に係る防食装置1は、このような水道管Pの腐食を防止(抑制)することができる。
【0032】
次に、図1から図6までを用いて防食装置1について説明する。
【0033】
防食装置1は、図1に示すように、水道管Pの近傍に埋設される。本実施形態では、防食装置1は、水道管Pの真上(平面視において少なくとも一部が水道管Pと重複する位置)に位置するように埋設される。なお、図1には便宜上1つの防食装置1を図示してるが、本実施形態では、防食装置1を水道管Pの長さ方向に所定の間隔を空けて複数配置することを想定している。上記間隔は、水道管Pの種類や土壌の環境等を考慮して適宜設定される。防食装置1は、埋設部10及び交換部20を具備する。
【0034】
図1図3及び図4に示す埋設部10は、地中に埋設されると共に、後述する交換部20を収容可能なものである。埋設部10は、略円柱形状とされている。また、埋設部10は、中空状に形成されている。埋設部10は、本体部11、蓋部14及び蝶番部15を具備する。
【0035】
本体部11は、交換部20を収容可能な部分である。本体部11は、略円筒形状とされている。本体部11は、イオン(後述する犠牲陽極材21のイオン)を透過することができるように形成されている。また、本体部11は、地面G上を走行する車両等による荷重に耐え得る強度を有する材料で形成される。本実施形態では、本体部11を、イオンを透過可能な多孔質セラミックスで形成している。本体部11は、上開口部12及び下開口部13を具備する。
【0036】
上開口部12は、本体部11の上部において開口する部分である。上開口部12を介して、交換部20の出し入れが可能となる。
【0037】
下開口部13は、本体部11の下部において開口する部分である。
【0038】
なお、上述した例では、本体部11の材料を多孔質セラミックスとしたが、本体部11の材料としては上述した例に限られない。例えば、本体部11の材料をポリプロピレン等としてもよい。本体部11の材料としては、イオンの透過性や強度の観点から、種々の材料を採用可能である。
【0039】
蓋部14は、上開口部12を開閉可能なものである。蓋部14は、平面視略円形状とされている。蓋部14の材料としては、本体部11と同様、多孔質セラミックスとしてもよく、金属等その他の材料でもよい。
【0040】
蝶番部15は、本体部11及び蓋部14を開閉可能に接続するものである。なお、蝶番部15としては、蓋の開閉に用いられる種々の蝶番の構成を採用可能である。
【0041】
図1図3図5及び図6に示す交換部20は、水道管Pの腐食を抑制する犠牲陽極を構成すると共に、埋設部10に交換可能(出し入れ可能)に収容されるものである。交換部20は、犠牲陽極材21及び収容部22を具備する。
【0042】
犠牲陽極材21は、水道管Pの腐食を抑制可能なものである。犠牲陽極材21は、水道管P(鉄)よりも卑な金属(イオン化し易い金属)で構成される。本実施形態では、犠牲陽極材21をマグネシウムで構成している。なお、犠牲陽極材21としては、マグネシウムに限られず、亜鉛等、鉄よりも卑な種々の金属を採用可能である。また、犠牲陽極材21の材料としては、上述した例に限られず、水道管Pの腐食を抑制する観点から、種々の材料を採用可能である。
【0043】
収容部22は、犠牲陽極材21を収容するものである。収容部22は、イオンを透過することができるように形成されている。また、収容部22は、犠牲陽極材21の体積が減少して変形した場合でも、当該収容部22の形状を保持可能な材料で形成される。本実施形態では、収容部22を、イオンを透過可能なフィルムで形成している。なお、収容部22の材料としては、上記フィルムに代えて、多孔質セラミックスや不織布等、種々の材料を採用可能である。収容部22は、本体部23、検出部24、発信部25、取手部26及び報知部27を具備する。
【0044】
本体部23は、収容部22の大部分を構成し、犠牲陽極材21を収容可能な部分である。本体部23は、上部が開口する有底円筒形状とされている。また、本体部23の平面視における外径は、埋設部10の本体部11の内径よりも小さく形成される。
【0045】
検出部24は、本体部23に収容された犠牲陽極材21の残量を検出可能なものである。すなわち、検出部24は、犠牲陽極材21の腐食(溶解)による重量や体積の減少に基づいて残量を検出する。なお、図5では、検出部24を模式的に示している。
【0046】
検出部24としては、犠牲陽極材21の重量の変化に基づいて、犠牲陽極材21の残量を検出する構成を採用可能である。具体的には、検出部24は、犠牲陽極材21の重量を検出可能な重量センサを有し、当該重量センサの検出結果に基づいて犠牲陽極材21の残量を検出する構成を採用可能である。
【0047】
なお、検出部24としては、上述した構成に限られない。例えば、犠牲陽極材21の上端部のレベルの変化に基づいて、犠牲陽極材21の残量を検出する構成を採用可能である。具体的には、検出部24は、犠牲陽極材21の上方から、長さの異なる複数本(例えば3本)の電極を犠牲陽極材21に埋め込むように接続し、当該複数の電極間の通電の有無を検出する構成を採用可能である。これにより、複数の電極間の通電の有無により、犠牲陽極材21の体積の減少に伴う犠牲陽極材21の上端の高さの変化を検出することができる。すなわち、犠牲陽極材21の上端の高さが所定の電極の下端よりも下がれば、当該電極と他の電極との犠牲陽極材21を介した通電がなくなる。これにより、検出部24は、当該高さの低下に基づく犠牲陽極材21の残量の検出が可能となる。
【0048】
また、検出部24としては、上述した構成に限られない。例えば、所定の電極を介して犠牲陽極材21に電圧を印加した際の電極間の抵抗値に基づいて犠牲陽極材21の残量を検出する構成等、犠牲陽極材21の残量を検出可能な種々の構成を採用可能である。
【0049】
発信部25は、検出部24による検出結果を発信可能なものである。発信部25は、検出部24の検出結果を、防食装置1の外部の受信装置に送信可能とされている。上記受信装置としては、例えば、適宜のパーソナルコンピュータ等を採用可能である。なお、図5では、発信部25を模式的に示している。
【0050】
発信部25は、所定の時間間隔毎に検出結果を発信する構成としてもよく、また、犠牲陽極材21の残量が所定量以下となったことを検出部24が検出した場合に検出結果を発信する構成としてもよい。
【0051】
発信部25は、例えば、水道管Pを管理する所定の管理施設に、無線通信により検出結果を発信する構成を採用可能である。これによれば、上記管理施設において、複数の防食装置1の検出結果を収集し、一元管理することができる。
【0052】
なお、発信部25からの検出結果の収集方法としては、上述したように、検出結果を無線通信により管理施設に直接発信する方法に限られない。例えば、道路(地面G)を走行しながら、下方に位置する発信部25からの検出結果を受信可能な受信装置を備えた車両を用いて、発信部25からの検出結果を収集する方法を採用可能である。
【0053】
取手部26は、収容部22の取手(使用者により把持される部分)を構成するものである。取手部26は、略帯形状とされている。取手部26は、本体部23の開口の縁部における2箇所を接続するように設けられる。取手部26を把持することで、交換部20の持ち運びや出し入れが容易となる。取手部26は、被接続部26aを具備する。
【0054】
被接続部26aは、リード線Aの一端部が着脱自在に接続される部分である。リード線Aの他端部は、図1に示すように水道管Pに溶接されている。被接続部26aは、本体部23に犠牲陽極材21が収容された状態で、当該犠牲陽極材21と電気的に接続される。これにより、被接続部26aにリード線Aを接続することで、犠牲陽極材21と水道管Pとを電気的に接続することができる。
【0055】
図6に示す報知部27は、検出部24による犠牲陽極材21の残量の検出結果を報知可能なものである。報知部27は、取手部26の上面に設けられる。報知部27は、点灯部27a及びスイッチ部27bを具備する。
【0056】
点灯部27aは、点灯により犠牲陽極材21の残量を表示可能なものである。図例では、4つの点灯部27aを設けた例を示している。これにより、点灯部27aを点灯させた数で、犠牲陽極材21の残量を段階的に表示することができる。
【0057】
スイッチ部27bは、点灯部27aによる犠牲陽極材21の残量の表示のオンオフを切り替える操作が可能なものである。図例では、スイッチ部27bとして、犠牲陽極材21の残量に応じた点灯部27aを点灯させるスイッチ(オンスイッチ)と、点灯部27aの点灯を停止するスイッチ(オフスイッチ)と、を設けている。
【0058】
ここで、上述した検出部24は、スイッチ部27bによる操作を契機として犠牲陽極材21の残量を検出する構成を採用可能である。すなわち、スイッチ部27bによる操作を契機として、検出部24による犠牲陽極材21の残量を検出すると共に、報知部27により検出結果を表示する構成を採用可能である。
【0059】
交換部20は、上述した検出部24、発信部25及び報知部27の動作を制御する所定の制御部を内蔵する構成を採用可能である。
【0060】
また、交換部20は、検出部24、発信部25及び報知部27に、動作のための電力を供給する電力供給源(バッテリー)を内蔵する構成を採用可能である。この場合、交換部20の一部(例えば取手部26)を、バッテリーを内蔵すると共に着脱可能な構成とし、当該部分を交換することでバッテリー交換を可能とした構成を採用可能である。また、電力供給源としては、上述したようなバッテリーに限られず、例えば、熱や振動により発電可能な発電部としてもよい。
【0061】
なお、電力供給源としては、交換部20に内蔵されるものに限られない。例えば、交換部20(防食装置1)の外部からの電力を用いて検出部24、発信部25及び報知部27を作動させる構成としてもよい。
【0062】
上述の如き防食装置1は、被接続部26aにリード線Aを接続することで、犠牲陽極材21と水道管Pとが電気的に接続される。これにより、水道管Pの防食が可能となる。
【0063】
すなわち、水道管Pよりもイオン化し易い(卑な)犠牲陽極材21が水道管Pに電気的に接続されることで、図2(b)に示すように、地中(土壌)には、犠牲陽極材21から水道管Pへ電流(防食電流)が流れる。上記防食電流により腐食電流が打ち消され、水道管Pの腐食を抑制することができる。この際には、水道管Pよりもイオン化し易い犠牲陽極材21がイオン化する(マグネシウムイオンとなり溶解する)陽極反応が起こる。上記陽極反応に伴い犠牲陽極材21は消耗(重量や体積が減少)する。本実施形態では、犠牲陽極材21(交換部20)の交換の目安(犠牲陽極材21が消耗し使用不能となる期間)を5年程度としている。
【0064】
次に、以下では、上述の如き防食装置1を設置し、水道管Pの防食を図るための防食施工方法について説明する。
【0065】
本実施形態に係る防食施工方法は、図7に示すように、主として掘削工程S1、溶接工程S2、ブロック設置工程S3、埋設部設置工程S4及び収容工程S5を具備する。
【0066】
図7及び図8に示す掘削工程S1は、地中に埋設された水道管Pが露出するように地面Gを掘削して穴Gaを形成する工程である。掘削工程S1においては、図8(a)に示すように、アスファルトで舗装された地面Gを掘削可能なコアボーリングマシン等の適宜の掘削機械Mが用いられる。
【0067】
図8(b)は、掘削が完了し、穴Gaを介して水道管Pが露出している状態を示している。本実施形態においては、水道管Pの上方から、垂直に地面Gを掘削する構成としている。これにより、平面視において水道管Pと重複するように穴Gaが形成される。上記穴Gaの内径は、防食装置1(埋設部10)の外径よりも大きく形成される。
【0068】
図7及び図9(a)に示す溶接工程S2は、水道管Pの露出した部分にリード線Aの他端部を溶接する工程である。溶接工程S2における溶接方法は、アーク溶接やテルミット溶接等、種々の溶接方法を採用可能である。
【0069】
図7及び図9(b)に示すブロック設置工程S3は、ブロックBを設置する工程である。ブロックBは、防食装置1の荷重を受ける部材である。ブロックBは、コンクリート等の圧縮荷重に対する耐力が大きい材料で形成される。ブロックBの平面視における面積は、防食装置1(埋設部10)の平面視における面積よりも大きい。ブロックBは、穴Gaの水道管Pの露出した部分をある程度埋め戻した状態で設置される。これにより、ブロックBが直接水道管Pに載置されて、水道管Pに直接荷重が掛かることを抑制することができる。また、ブロックBを設置したことで防食装置1の沈み込みを抑制することができる。ブロックBは、孔部Baを有する。
【0070】
孔部Baは、ブロックBを上下方向に貫通する孔である。孔部Baを介してリード線AをブロックBの上方へ通すことができる。
【0071】
図7及び図10(a)に示す埋設部設置工程S4は、埋設部10を上記穴Gaの内部に設置する工程である。埋設部設置工程S4においては、埋設部10をブロックBに載置するようにして設置し、その後、下開口部13を介してリード線Aを埋設部10の内部に導入する。
【0072】
また、埋設部設置工程S4においては、埋設部10を設置した後、穴Gaの埋設部10の周囲の空間を埋め戻す。この際には、埋設部10の周囲の地面Gを新たにアスファルトで舗装する。また、この際には、埋設部10の上端部(蓋部14)及びアスファルトで舗装された地面Gを、略同一平面状とする。
【0073】
図7及び図10(b)に示す収容工程S5は、交換部20を埋設部10の内部に設置し、交換部20と水道管Pとを電気的に接続する工程である。具体的には、まず、埋設部10の蓋部14を開放し、開口させた埋設部10の内部に交換部20を収容する。ここで、埋設部10の本体部11の内面と、交換部20と、の間に隙間が形成される場合には、当該隙間にイオンを伝達可能な物質を充填する。これにより、犠牲陽極材21のイオンを伝達させ易くすることができる。上記イオンを伝達可能な物質は、例えばゲル状のものを採用可能である。なお、上記イオンを伝達可能な物質に代えて、地中の地下水等を利用して上記隙間をイオンを伝達可能に埋めるようにしてもよい。この場合は、埋設部10の下開口部13を介して導入された地下水を利用してもよい。
【0074】
次に、リード線Aの一端部を、交換部20の被接続部26aに接続する。これにより、交換部20と水道管Pとが電気的に接続される。次に、図1に示すように、埋設部10の蓋部14を閉鎖する。以上により防食装置1の設置が完了する。
【0075】
上述の如き防食装置1によれば、交換部20を容易に出し入れすることができ、防食装置1の管理を容易に行うことができる。すなわち、犠牲陽極材21(交換部20)を直接地中に埋設するのではなく、埋設部10に収容する構成としている。これにより、交換部20の設置や犠牲陽極材21の残量の確認、交換等の防食装置1の管理を行う際に、犠牲陽極材21の全体を露出させるような大規模な掘削作業等が不要となる。
【0076】
また、本実施形態では、埋設部10の蓋部14を開放することで、地上からの交換部20の出し入れを可能としている。これにより、交換部20の交換等の際に掘削作業自体が不要になるため、防食装置1の管理をより容易に行うことができる。
【0077】
以上の如く、本実施形態に係る埋設金属管(水道管P)の防食装置1は、
防食の対象となる埋設金属管(水道管P)より卑な金属で構成されている犠牲陽極材21を有する交換部20と、
地中に埋設可能、かつ、前記交換部20を収容可能であり、イオンを透過することができるように形成されている埋設部10と、
を具備するものである。
【0078】
このように構成することにより、犠牲陽極材21(交換部20)を容易に出し入れすることができ、防食装置1の管理を容易に行うことができる。すなわち、犠牲陽極材21(交換部20)を直接地中に埋設するのではなく、埋設部10に収容する構成とすることにより、大規模な掘削作業等が不要となり、交換部20を容易に出し入れすることができる。これによって、犠牲陽極材21の残量の確認や交換作業等を容易に行うことができる。
【0079】
また、このように構成することにより、埋設金属管(水道管P)の防食を効果的に行うことができる。すなわち、犠牲陽極材21から埋設金属管(水道管P)への防食電流を流通させ易くすることで、埋設金属管(水道管P)の防食を効果的に行うことができる。また、埋設金属管(水道管P)より溶け易い犠牲陽極材21を用いることで、埋設金属管(水道管P)の防食を効果的に行うことができる。
【0080】
また、前記埋設部10は、
地上から前記交換部20を出し入れ可能な開口部(上開口部12)を具備するものである。
【0081】
このように構成することにより、犠牲陽極材21(交換部20)を容易に出し入れすることができ、防食装置1の管理を容易に行うことができる。すなわち、地上から交換部20を出し入れ可能とすることにより、交換部20を出し入れする際の掘削作業が不要になる。
【0082】
また、前記交換部20は、
前記犠牲陽極材21を収容すると共に、イオンを透過することができるように形成された収容部22を具備するものである。
【0083】
このように構成することにより、犠牲陽極材21(交換部20)の出し入れを容易に行うことができる。すなわち、犠牲陽極材21を収容部22に収容することで、犠牲陽極材21が溶解して変形等した場合でも、収容部22ごと犠牲陽極材21を容易に持ち運ぶことができる。また、本実施形態では、収容部22に取手部26を設けたことで、犠牲陽極材21(交換部20)をより容易に持ち運ぶことができる。
【0084】
また、防食装置1は、
前記犠牲陽極材21の残量を検出可能な検出部24をさらに具備するものである。
【0085】
このように構成することにより、犠牲陽極材21の残量(消耗具合)を容易に把握することができる。すなわち、検出部24の検出結果を取得することで、犠牲陽極材21の残量を容易に把握することができる。
【0086】
また、防食装置1は、
前記検出部24による検出結果を報知可能な報知部27をさらに具備するものである。
【0087】
このように構成することにより、犠牲陽極材21の残量(消耗具合)を容易に把握することができる。すなわち、報知部27による報知を確認することによって、犠牲陽極材21の残量を容易に把握することができる。
【0088】
また、防食装置1は、
前記検出部24による検出結果を発信可能な発信部25をさらに具備するものである。
【0089】
このように構成することにより、犠牲陽極材21の残量(消耗具合)を容易に把握することができる。すなわち、発信部25により発信される検出結果を受信することで、犠牲陽極材21の残量を容易に把握することができる。例えば、埋設部10に収容された交換部20(犠牲陽極材21)を取り出すことなく、外部から犠牲陽極材21の残量を把握することができる。
【0090】
また、本実施形態に係る埋設金属管(水道管P)の防食方法は、
地中に埋設された埋設金属管(水道管P)が露出するように地面Gを掘削して穴Gaを形成する掘削工程S1と、
中空状に形成された埋設部10を前記穴Gaの内部に設置する埋設部設置工程S4と、
犠牲陽極材21を有する交換部20を前記埋設部10の内部に設置し、前記交換部20と前記埋設金属管(水道管P)とを電気的に接続する収容工程S5と、
を具備するものである。
【0091】
このように構成することにより、犠牲陽極材21(交換部20)を容易に出し入れすることができ、防食装置1の管理を容易に行うことができる。
【0092】
なお、本実施形態に係る水道管Pは、本発明に係る埋設金属管の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る上開口部12は、本発明に係る開口部の実施の一形態である。
【0093】
以上、本発明の第一実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0094】
例えば、本実施形態では、検出部24、発信部25及び報知部27を交換部20に設けた例を示したが、このような態様に限られない。例えば、検出部24、発信部25及び報知部27の一部又は全部を、埋設部10に設けた構成としてもよい。
【0095】
また、本実施形態では、報知部27を、表示による報知を行うものとしたが、このような態様に限られない。例えば、報知部27を、音声等による報知を行うもの構成としてもよい。また、防食装置1に、このような報知部27を設けない構成としてもよい。
【0096】
また、本実施形態では、防食装置1に発信部25を設けた例を示したが、このような態様に限られない。例えば、防食装置1に発信部25を設けない構成としてもよい。
【0097】
また、本実施形態では、防食装置1に検出部24を設けた例を示したが、このような態様に限られない。例えば、防食装置1に検出部24を設けない構成としてもよい。
【0098】
また、本実施形態では、防食装置1を、水道管Pの真上に位置するように埋設した例を示したが、このような態様に限られない。例えば、防食装置1を、平面視において水道管Pの側方(平面視において水道管Pと重複しない位置)に埋設した構成としてもよい。
【0099】
また、本実施形態では、防食装置1の下方にブロックBを配置したが、このような態様に限られない。例えば、ブロックBの設置に代えて、埋設部10の下端部を拡径して、埋設部10の沈み込みを抑制可能な構成としてもよい。また、上述したようなブロックBや埋設部10の沈み込みを抑制可能な手段を設けない構成としてもよい。
【0100】
また、本実施形態では、埋設金属管を水道管Pとしたが、このような態様に限られない。埋設金属管としては、ガス管や電気管等、種々の金属管を採用可能である。
【0101】
また、本発明に係る防食装置1の収容部22としては、イオン透過性を有していなくてもよい。例えば、収容部22として、イオン透過性を有しない材料(例えば樹脂等)から形成され、側面に複数の孔を有する円筒部材を用い、上記側面の孔に適宜イオン透過膜を貼り付けたものについても実施可能である。
【0102】
また、本発明に係る防食施工方法は、複数の水道管Pが継手を介して接続される場合でも適用可能である。複数の水道管Pが継手で接続される場合、水道管P同士をシールするために、ゴム等の弾性材料からなるシール部が設けられる場合がある。このような場合は、複数の水道管P同士が電気的に遮断される。
【0103】
以下では、図11を用いて、継手構造の水道管Pが電気的に遮断された状態で接続されている場合の、防食装置1の適切な配置について説明する。
【0104】
図11に示す継手構造の水道管Pは、一端部に挿し口Paが設けられ、他端部に挿し口Paが挿通される受口Pbが設けられる。図11に示すように、一の水道管Pの挿し口Paが他の水道管Pの受口Pbに挿通されることで、複数の水道管Pが接続される。上記各水道管Pが接続される部分には、挿し口Paの外面と受口Pbの内面との間をシールするシール部Pcが介在される。
【0105】
シール部Pcは、ゴム等の導電性を有さない弾性材料により形成される。従って、各水道管Pは電気的に遮断されることになる。この場合、一の水道管Pのみに接続された防食装置1は、電気的に接続されていない他の水道管Pに対しては防食効果が発揮されない。従って、この場合には、図11に示すように、防食装置1は水道管Pのそれぞれに電気的に接続されるように配置される。
【0106】
なお、継手構造の水道管Pを防食する場合であっても、複数の水道管P同士を電気的に接続した場合には、複数の水道管Pに対して一つの防食装置1を配置することが可能である。水道管P同士を電気的に接続する方法としては、例えば、複数の水道管P同士を適宜のリード線等で接続することが考えられる。また、シール部Pcを、導電性を有する材料により構成することも考えられる。
【0107】
また、水道管Pとしては、例えば、ダクタイル鉄管等の種々の金属管を採用可能である。
【0108】
以上の如く、本実施形態に係る埋設金属管(水道管P)の防食方法は、
前記埋設金属管(水道管P)が電気的に遮断された複数の部位に分かれている場合、前記複数の部位ごとに前記埋設部10及び前記交換部20を設けるものである。
【0109】
このように構成することにより、埋設金属管(水道管P)の防食を効果的に行うことができる。
すなわち、犠牲陽極材21と電気的に接続されていない埋設金属管に対しては、防食効果が発揮されない。そこで、埋設金属管(水道管P)が電気的に遮断された複数の部位に分かれている場合、それぞれの部位に対して埋設部10及び交換部20を設ける(すなわち、電気的に接続する)ことで、各部位に対して防食効果を発揮することができる。
【符号の説明】
【0110】
1 防食装置
10 埋設部
12 上開口部(開口部)
20 交換部
21 犠牲陽極材
22 収容部
24 検出部
25 発信部
27 報知部
P 水道管(埋設金属管)
G 地面
Ga 穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11