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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-31
(45)【発行日】2023-11-09
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
   F24C 3/12 20060101AFI20231101BHJP
   F24C 3/02 20210101ALI20231101BHJP
   A47J 37/06 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
F24C3/12 A
F24C3/02 F
F24C3/12 X
A47J37/06 316
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019235173
(22)【出願日】2019-12-25
(65)【公開番号】P2021103065
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】301071893
【氏名又は名称】株式会社ハーマン
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 慶太
(72)【発明者】
【氏名】横山 敬仁
【審査官】柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-174058(JP,A)
【文献】特開2000-037174(JP,A)
【文献】特開2011-189013(JP,A)
【文献】特開2001-221445(JP,A)
【文献】特開平07-008228(JP,A)
【文献】特開2017-209148(JP,A)
【文献】特開2016-053433(JP,A)
【文献】特開2019-215126(JP,A)
【文献】特開平11-037465(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 3/12
F24C 3/02
A47J 37/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱庫と、
前記加熱庫に収容され、加熱対象物が載置されて前記加熱対象物に熱を伝導させる伝熱皿と、
前記加熱対象物及び前記伝熱皿を加熱する加熱部と、
前記伝熱皿の温度を検知する温度検知部と、
前記温度検知部により検知される検知温度を所定の温度範囲内に維持するために前記加熱部による加熱及び加熱停止を繰り返すように前記加熱部を制御して、前記加熱対象物から不要成分を除去する所定の不要成分除去工程を実行する制御部と、を備え
前記所定の温度範囲は、前記所定の不要成分除去工程において加熱対象とする前記加熱対象物がメイラード反応を起こす温度を上限とし、かつ、水の沸点を下限とす
加熱調理器。
【請求項2】
前記加熱部は、前記伝熱皿より上側に配置されて前記加熱対象物を加熱する上バーナと、前記伝熱皿より下側に配置されて前記伝熱皿を加熱する下バーナと、を有し、
前記制御部は、前記所定の不要成分除去工程において、前記上バーナと前記下バーナの少なくとも一方による加熱及び加熱停止を繰り返すことにより、前記検知温度を前記所定の温度範囲内に維持する
請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記制御部は、前記所定の不要成分除去工程において、前記上バーナと前記下バーナのうちの火力の小さい方による加熱及び加熱停止を繰り返すことにより、前記検知温度を前記所定の温度範囲内に維持する
請求項に記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記制御部は、
前記所定の不要成分除去工程の後、前記上バーナによる加熱を行うと共に前記下バーナによる加熱を停止して、前記検知温度が前記所定の温度範囲を超えるように前記加熱部を制御する所定の加熱調理工程を実行する
請求項2又は3に記載の加熱調理器。
【請求項5】
前記制御部は、前記所定の不要成分除去工程において、所定の実行時間を経過した時に、前記所定の不要成分除去工程を終了し、
前記所定の実行時間は、前記所定の不要成分除去工程において加熱対象とする前記加熱対象物に応じて決まる
請求項1~4のいずれかに記載の加熱調理器
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、加熱調理器が開示されている。この加熱調理器は、加熱調理部に配置された調理物を加熱する加熱手段と、加熱手段による調理物の加熱を制御する制御手段と、加熱調理部又は調理物の温度を検知する温度検知手段とを備えている。制御手段は、加熱調理において温度検知手段により検知される温度を目標温度範囲に収まるように加熱手段を制御する目標温度維持制御を行う。目標温度維持制御では、調理メニューが「ホットケーキ」の場合には、目標温度範囲は172℃~180℃に設定され、調理メニューが「野菜炒め」の場合には、目標温度範囲は220℃~230℃に設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-189013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した加熱調理器にあっては、調理物から所定の不要成分のみを除去しにくいという問題があった。
【0005】
本開示は上記事由に鑑みてなされており、加熱対象物から所定の不要成分のみを除去しやすい加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る加熱調理器は、加熱庫と、伝熱皿と、加熱部と、温度検知部と、制御部と、を備える。前記伝熱皿は、前記加熱庫に収容され、加熱対象物が載置されて前記加熱対象物に熱を伝導させる。前記加熱部は、前記加熱対象物及び前記伝熱皿を加熱する。前記温度検知部は、前記伝熱皿の温度を検知する。前記制御部は、前記温度検知部により検知される検知温度を所定の温度範囲内に維持するように前記加熱部を制御する所定の不要成分除去工程を実行する。前記制御部は、前記温度検知部により検知される検知温度を所定の温度範囲内に維持するように前記加熱部を制御して、前記加熱対象物から不要成分を除去する所定の不要成分除去工程を実行する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様に係る加熱調理器にあっては、加熱対象物から所定の不要成分のみを除去しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態に係る加熱調理器の斜視図である。
図2図2は、同上の加熱調理器が有する加熱庫を、前後方向と直交する断面で示した断面図である。
図3図3は、同上の加熱庫であって、一部を断面で示した斜視図である。
図4図4は、同上の加熱調理器のガス供給路を示した図である。
図5図5は、同上の加熱調理器のブロック図である。
図6図6は、同上の加熱調理器の乾燥モードにおける検知温度のタイムチャートである。
図7図7は、同上の加熱調理器の脂落としモードにおける検知温度のタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示に係る加熱調理器について、実施形態に基づいて説明する。なお、本開示に係る加熱調理器の実施形態は、下記実施形態に限定されるものではなく、本開示に係る技術的思想を逸脱しない範囲において、種々の変更が可能である。
【0010】
(実施形態)
(1)概要
以下、加熱調理器1について、加熱調理器1の設置状態における方向を用いて説明する。具体的には、図1に示すように、加熱調理器1から見て、設計上、利用者が位置する方向を前方とすると共にその反対を後方と規定する。また、加熱調理器1を前方から見たときを基準にして、左右方向を規定する。
【0011】
図1図2に示すように、加熱調理器1は、加熱庫20と、伝熱皿5と、加熱部24と、温度検知部46と、制御部16(図5参照)と、を備える。伝熱皿5は、加熱庫20に収容され、加熱対象物が載置されて加熱対象物に熱を伝導させる。加熱部24は、加熱対象物及び伝熱皿5を加熱する。温度検知部46は、伝熱皿5の温度を検知する。制御部16は、温度検知部46により検知される検知温度を所定の温度範囲内に維持するように加熱部24を制御して、加熱対象物から不要成分を除去する所定の不要成分除去工程を実行する。
【0012】
この加熱調理器1にあっては、加熱対象物から所定の不要成分のみを除去しやすい。
【0013】
(2)詳細な説明
図1に示す加熱調理器1は、グリル付きのガスコンロであって、詳しくはキッチンカウンター(図示せず)に形成された孔に、上方より挿入されて設置されるドロップインコンロである。
【0014】
以下、一実施形態に係る加熱調理器1について詳述する。本実施形態の加熱調理器1は、図2に示すように、加熱庫20と、伝熱皿5と、加熱部24と、温度検知部46と、制御部16(図5参照)と、を備えている。
【0015】
図1に示すように、加熱調理器1は、ケーシング10を備えている。ケーシング10は、上方に開口した箱状に形成されている。ケーシング10には、複数のコンロバーナ11が設置されている。天板12はケーシング10上に設置されている。天板12はケーシング10の上面を覆っている。複数のコンロバーナ11の各々は、天板12を貫通して上方に突出している。
【0016】
加熱調理器1は、複数のコンロバーナ11にそれぞれ対応する複数のコンロ用操作部15を備えている。利用者は、各コンロ用操作部15を操作することで、対応するコンロバーナ11の点火と消火の切換え及び火力の変更を行うことができる。
【0017】
図2及び図3に示すように、本実施形態の加熱庫20は、前方に開口した箱状に形成されている。加熱庫20は、ケーシング10と天板12とで囲まれた空間に配置されている。加熱庫20は、底部200、左右の側壁部201、後壁部202及び天井部203を有している。加熱庫20の内側には、底部200、左右の側壁部201、後壁部202及び天井部203で囲まれた加熱空間が形成されている。加熱空間には、肉又は魚等の加熱対象物及び伝熱皿5が配置される。
【0018】
図3に示すように、加熱庫20の前端部には、開口部23が形成されている。加熱庫20の内部空間は、開口部23を介してケーシング10(図1参照)の前方に開放される。加熱対象物は、開口部23を通して加熱庫20に出し入れされる。
【0019】
本実施形態の加熱庫20には、開口部23を開閉するグリル扉22(図1参照)と、グリル扉22を支持した支持機構21(図2)とが設けられる。支持機構21は、加熱庫20に設置されており、グリル扉22を前後方向に移動可能に支持している。支持機構21は、例えば、一対のスライドレールで構成される。グリル扉22を前後方向に移動することで、加熱庫20の開口部23はグリル扉22によって開閉される。
【0020】
図2及び図3に示すように、加熱調理器1は、伝熱皿5を備えている。伝熱皿5は、加熱庫20に収容される。加熱庫20で加熱される加熱対象物は、伝熱皿5に載せられた状態で加熱庫20内に配置される。すなわち、伝熱皿5は、加熱対象物受けとして機能する。なお、加熱庫20では伝熱皿5も加熱されるため、伝熱皿5が加熱対象物に含まれてもよいが、本説明では便宜上、伝熱皿5は加熱対象物に含まれないものとして説明する。
【0021】
伝熱皿5は、金属製である。伝熱皿5は、上方に開口した浅底の容器状に形成されている。伝熱皿5は、上方から見て矩形状で水平方向に広がった板状の底板部50と、底板部50の周縁から上方に向けて突出した周壁部51とを有している。底板部50は、加熱対象物が載せられる部分である。すなわち、本実施形態では、底板部50によって、加熱対象物が載せられる板状の載置部が構成されている。
【0022】
なお、伝熱皿5は、上方に開口した容器状の本体と、この本体の上開口部を塞ぐ蓋とで構成されてもよい。この場合、本体の底部によって載置部が構成される。また、伝熱皿5は、平板状の皿等であってもよく、この場合、伝熱皿5の全体が載置部となる。伝熱皿5には、加熱対象物が載置される。伝熱皿5は、載置された加熱対象物に熱を伝導させる。
【0023】
本実施形態の加熱庫20には、伝熱皿5を取り外し可能に支持する支持体6が更に設けられる。支持体6は、伝熱皿5を下方から支持している。支持体6は、上方から見て枠状に形成されている。支持体6は、例えば、金属製の線材を変形させ、この線材の両端を溶接等でつなぐことによって形成される。
【0024】
支持体6の前端部は、グリル扉22に着脱可能に連結されている。支持体6及び伝熱皿5は、グリル扉22と連動する。グリル扉22が図1に示すように開口部23を閉じる閉じ位置に配置されたとき、支持体6及び伝熱皿5は、加熱庫20内に配置される。利用者は、グリル扉22を閉位置より前方に動かすことで、支持体6及び伝熱皿5を、加熱庫20の開口部23よりも前方に配置することができる。
【0025】
図2及び図3に示すように、加熱調理器1は、加熱部24を備えている。加熱部24は、加熱対象物及び伝熱皿5を加熱する。本実施形態における加熱部24は、下バーナ25と、上バーナ26と、を有する。
【0026】
下バーナ25は、伝熱皿5より下側に配置されて、直接的には伝熱皿5を輻射熱により加熱するが、伝熱皿5を介した熱伝導により間接的に加熱対象物を加熱する。下バーナ25は、300kcal/hの弱火と、1400kcal/hの強火と、切(すなわち0kcal/h)の三種類のいずれかの火力が選択可能である。
【0027】
上バーナ26は、伝熱皿5より上側に配置されて、主に加熱対象物を輻射熱により加熱するが、伝熱皿5も輻射熱により加熱する。上バーナ26は、弱火と、弱火よりも火力の大きい強火と、切の三種類のいずれかの火力が選択可能である。上バーナ26の弱火は、本実施形態では下バーナ25の弱火より小さい火力であるが、下バーナ25の弱火より大きい火力であってもよいし、下バーナ25の弱火と同じ火力であってもよい。同様に、上バーナ26の強火は、本実施形態では下バーナ25の強火より小さい火力であるが、下バーナ25の強火より大きい火力であってもよいし、下バーナ25の強火と同じ火力であってもよい。
【0028】
加熱調理器1には、図4に示すガス供給路28が設けられる。ガス供給路28は、上バーナ26及び下バーナ25に都市ガス等の燃料ガスを供給する。本実施形態のガス供給路28は、主流路280と、主流路280から分岐した一対の分岐路とを有している。主流路280には、燃料ガスが供給される。一対の分岐路のうちの一方は、上バーナ26に通じる上バーナ用流路281であり、他方は下バーナ25に通じる下バーナ用流路282である。
【0029】
加熱調理器1は、下バーナ25及び上バーナ26の単位時間当たりの加熱量(火力)を変更する加熱量変更部27を有している。本実施形態の加熱量変更部27は、開閉弁270、上バーナ用点火プラグ271、上バーナ用火力調節部272、下バーナ用点火プラグ273及び下バーナ用火力調節部274を有している。
【0030】
主流路280には、開閉弁270が設けられている。開閉弁270は、例えば、電磁弁である。開閉弁270が開いた状態で、主流路280に供給された燃料ガスは、下バーナ25及び上バーナ26に供給される。
【0031】
上バーナ26には、上バーナ26を点火するための上バーナ用点火プラグ271が設置されている。下バーナ25には、下バーナ25を点火するための下バーナ用点火プラグ273が設置されている。開閉弁270が開いた状態で、上バーナ用点火プラグ271が作動することにより、上バーナ26は点火される。開閉弁270が開いた状態で、下バーナ用点火プラグ273が作動することにより、下バーナ25は点火される。開閉弁270が閉じることで、下バーナ25及び上バーナ26は、消火される。
【0032】
本実施形態の上バーナ用火力調節部272は、上バーナ用流路281に設けられた電磁弁である。ガス供給路28は、上バーナ用流路281における上バーナ用火力調節部272の上流側と下流側とを接続するバイパス路34を有している。バイパス路34の一部は、上バーナ用流路281よりも流路断面積が小さい流路35である。
【0033】
上バーナ26の火力は、上バーナ用火力調節部272が開閉されることにより、調節される。上バーナ用火力調節部272が開いた状態では、主流路280から上バーナ用流路281に供給された燃料ガスは、上バーナ用火力調節部272と流路35との両者を通過して上バーナ26に供給される。この場合、上バーナ26の火力は、「強火」になる。一方、上バーナ用火力調節部272が閉じた状態では、主流路280から上バーナ用流路281に供給された燃料ガスは、上バーナ用火力調節部272及び流路35のうちの流路35のみを通過して上バーナ26に供給される。この場合、上バーナ26に供給される燃料ガスの流量は、上バーナ用火力調節部272が開いた状態にあるときよりも少なくなり、上バーナ26の火力は、「弱火」になる。
【0034】
本実施形態の下バーナ用火力調節部274は、下バーナ用流路282に設けられた電磁弁である。ガス供給路28は、下バーナ用流路282における下バーナ用火力調節部274の上流側と下流側とを接続するバイパス路44を有している。バイパス路44の一部は、下バーナ用流路282よりも流路断面積が小さい流路45である。
【0035】
下バーナ25の火力は、下バーナ用火力調節部274が開閉されることにより、調節される。下バーナ用火力調節部274が開いた状態では、主流路280から下バーナ用流路282に供給された燃料ガスは、下バーナ用火力調節部274と流路45との両者を通過して下バーナ25に供給される。この場合、下バーナ25の火力は、「強火」になる。一方、下バーナ用火力調節部274が閉じた状態では、主流路280から下バーナ用流路282に供給された燃料ガスは、下バーナ用火力調節部274及び流路45のうちの流路45のみを通過して下バーナ25に供給される。この場合、下バーナ25に供給される燃料ガスの流量は、下バーナ用火力調節部274が開いた状態にあるときよりも少なくなり、下バーナ25の火力は、「弱火」になる。
【0036】
上バーナ用火力調節部272及び下バーナ用火力調節部274の各々は、電磁弁に限定されない。例えば、上バーナ用火力調節部272は、上バーナ用流路281に設けられた流量制御弁であってもよい。また、下バーナ用火力調節部274は、下バーナ用流路282に設けられた流量制御弁であってもよい。また、上バーナ用火力調節部272及び下バーナ用火力調節部274の各々は、対応する下バーナ25及び上バーナ26の火力を3段階以上調節可能であってもよい。
【0037】
図2及び図3に示すように、加熱調理器1は、温度検知部46を備えている。温度検知部46は、サーミスタを有する。なお、温度検知部46は、サーミスタを有するものでなくてもよく、例えば熱電対や赤外線センサを有するものであってもよく、特に限定されない。
【0038】
温度検知部46は、加熱庫20に設けられる。温度検知部46は、加熱庫20に配置された伝熱皿5の底板部50の温度を検知する。温度検知部46は、下バーナ25の平面視における中央部に設置されている。温度検知部46は、加熱庫20内に配置された伝熱皿5の下方に位置する。なお、温度検知部46は、加熱庫20内に配置された伝熱皿5の側面に位置してもよく、温度検知部46の位置は限定されない。
【0039】
温度検知部46は、温度検知部46の上端部に位置する検出部461を有している。検出部461は、上下方向に移動可能である。検出部461には、例えば、ばね等の付勢部材により、上方に向かう力が加えられている。
【0040】
加熱庫20内に伝熱皿5が配置されたとき、検出部461は、伝熱皿5の底板部50の下面に接触する。これにより、加熱対象物(詳しくは、伝熱皿5の底板部50)の温度が、温度検知部46によって検出可能になる。
【0041】
上述した各種構成を有する加熱庫20は、グリル装置として機能する。
【0042】
本実施形態の加熱調理器1は、グリル装置を操作するための操作部として、図1に示すグリル用操作部14を備えている。グリル用操作部14は、ケーシング10の前面に設けられたカンガルーポケット方式の操作部である。グリル用操作部14は、不使用時にはケーシング10内に配置され、使用時にはケーシング10から前方に突出した位置に配置される。
【0043】
図示しないが、グリル用操作部14は、オートメニュー操作部と、点火消火操作部と、を有している。オートメニュー操作部は、利用者が調理モードの選択を行うために用いられる。すなわち、本実施形態では、オートメニュー操作部が、複数の調理モードの中から任意の調理モードを選択するための調理モード選択部を構成している。点火消火操作部は、利用者が、選択した調理モードによるグリル装置の自動調理の開始の指令を行うために用いられる。なお、グリル用操作部14は、例えば、ケーシング10の前面に固定的に設けられた操作パネル等であってもよい。
【0044】
本実施形態のオートメニュー操作部は、調理メニューを選択するための調理メニュー選択操作部と、選択された調理メニューにおける火加減を選択するための火加減選択操作部と、を有している。すなわち、本実施形態の調理モードは、複数の調理メニューの中から選択された調理メニューと、調理メニュー毎に選択された火加減とを組み合わせたモードである。
【0045】
調理メニューとしては、「トースト」、「鶏もも焼き」、「ホイル焼き」、「魚の切り身」、「魚の姿焼き」等に加え、「乾燥」(以下、乾燥モードという)及び「脂落とし」(以下、脂落としモードという)が選択可能である。なお、調理メニューとしては、乾燥モード及び脂落としモードは必須であるが、その他の「トースト」等の調理メニューについては任意であり、また、「トースト」等の調理メニューに限定されず、他の調理メニューであってもよい。
【0046】
図5に示すように、加熱調理器1は、制御部16を備えている。制御部16は、例えば、マイクロコンピューターにより構成される。制御部16は、加熱量変更部27に電気的に接続されている。すなわち、制御部16は、開閉弁270、上バーナ用点火プラグ271、上バーナ用火力調節部272、下バーナ用点火プラグ273及び下バーナ用火力調節部274に、電気的に接続されている。また、制御部16は、温度検知部46、グリル用操作部14及びコンロ用操作部15にも、電気的に接続されている。
【0047】
制御部16は、下バーナ25及び上バーナ26における加熱条件を制御する。ここで、加熱部24における加熱条件とは、加熱部24における点火(燃焼の開始)、消火(燃焼の停止)及び火力の調節である。
【0048】
利用者は、グリル装置によって自動調理を行うとき、まず、加熱庫20内に加熱対象物を配置する。次に利用者は、オートメニュー操作部の調理メニュー選択操作部を操作して、調理メニューを選択する。利用者は、この後、オートメニュー操作部の火加減選択操作部を操作して、選択された調理メニューにおける火加減を選択する。これにより、複数の調理モードの中から任意の調理モードが決定される。次に、利用者は、点火消火操作部を操作して自動調理の開始の指令を行う。
【0049】
制御部16は、グリル用操作部14から自動調理の開始の指令を受けたとき、調理モード毎に設定された複数の制御条件の中から、選択された調理モードに対応する制御条件を決定し、この制御条件と、温度検知部46で検知した検知温度とに基づいて、加熱量変更部27を自動で制御する。このようにして、調理モードに応じた自動調理が実行される。
【0050】
自動調理では、加熱量変更部27が制御部16によって制御され、これにより、調理モード毎に設定された自動調理工程が実行される。
【0051】
以下、図6に基づいて、調理モードのうち、乾燥モードを実行する場合の一例について説明する。乾燥モードは、加熱対象物から不要成分を除去するために行う調理モードである。加熱対象物から不要成分を除去するとは、加熱対象物から不要成分の少なくとも一部を除去することをいう。言い換えれば、加熱対象物から不要成分を除去するとは、加熱対象物から不要成分の全部を除去するか、あるいは、加熱対象物に含まれる不要成分を低減することをいう。
【0052】
乾燥モードは、加熱対象物に含まれる水分を除去する調理モードである。すなわち、乾燥モードでは、不要成分は水分である。乾燥モードにおいて想定している加熱対象物は、主に水分を多く含む果物である。加熱対象物が含む水分の割合は、特に限定されない。また、乾燥モードにおける加熱対象物は、油脂を多く含まないものであることが好ましく、特に水分の割合よりも油脂の割合の方が小さいものであることが好ましい。なお、乾燥モードにおける加熱対象物は、油脂を多く含まないものに限定されないし、果物にも限定されない。
【0053】
利用者は、加熱調理器1によって乾燥モードによる自動調理を行うとき、まず、加熱庫20内に加熱対象物として例えばバナナを配置する。加熱対象物としてのバナナは、輪切りにスライスされた状態で、切断面が伝熱皿5の上面に載置されて、伝熱皿5ごと加熱庫20内に配置される。
【0054】
次に利用者は、オートメニュー操作部の調理メニュー選択操作部を操作して、調理メニューとして「乾燥」を選択する。次に、利用者は、調理メニュー選択操作部を操作して、乾燥モードのサブメニューとして加熱対象物の種類を選択する。加熱対象物の種類としては、本例では、「バナナ」、「りんご」、「ドライフルーツ(一般)」、「ビーフジャーキー」のいずれかが選択可能である。本例では、利用者は、「バナナ」を選択する。次に、利用者は、点火消火操作部を操作して、乾燥モードの開始の指令を行う。
【0055】
乾燥モードにおいては、制御部16は、初期加熱工程(図6中の符号T11で示される工程)と、不要成分除去工程(図6中の符号T12~T17で示される工程)と、を実行する。初期加熱工程では、制御部16は、下バーナ25及び上バーナ26を強火として、加熱する。本例では、初期加熱工程は、検知温度が125℃に到達するまで実行されるが、前記の温度は125℃に限定されない。
【0056】
乾燥モードにおける不要成分除去工程は、温度検知部46により検知される検知温度を所定の温度範囲内に維持するように、制御部16が加熱部24を制御して、加熱対象物から不要成分を除去する工程である。制御部16は、所定の不要成分除去工程において、所定の実行時間を経過した時に、所定の不要成分除去工程を終了する。実行時間については後述する。
【0057】
乾燥モードにおいて検知温度を維持する温度範囲は、不要成分除去工程において加熱対象とする加熱対象物がメイラード反応を起こす温度を上限とし、かつ、水の沸点を下限とする。メイラード反応は、加熱対象物としての食材に含まれる還元糖とアミノ化合物(アミノ酸、ペプチド及びタンパク質)を加熱した時等に見られる、褐色物質(メラノイジン)を生み出す反応(褐変反応)である。メイラード反応が生じる温度は、食材によって異なる。加熱対象物となる食材において、メイラード反応が生じる温度の下限値は、平均的には150℃である。
【0058】
本例では、不要成分除去工程において検知温度が維持される温度範囲の上限は、メイラード反応が生じる一般的な温度である150℃である。なお、温度範囲の上限は、150℃に限定されない。すなわちメイラード反応が生じる温度は一定ではないため、温度範囲の上限は、様々な食材においてメイラード反応が生じる例えば140℃、160℃等、140℃~160℃の範囲に適宜設定されるのが好ましい。また、温度範囲の上限は、例えば130℃、120℃等、メイラード反応が生じる温度よりも低い温度に設定されてもよい。
【0059】
不要成分除去工程において検知温度が維持される温度範囲の下限は、水の沸点である100℃である。なお、温度範囲の下限は、例えば110℃、120℃等、水の沸点よりも高い温度に設定されてもよい。
【0060】
本例では、不要成分除去工程では、制御部16は、所定の不要成分除去工程において、上バーナ26による加熱及び加熱停止を繰り返すことにより、検知温度を所定の温度範囲内に維持する。上バーナ26により加熱を行う時の火力は、本例では弱火とするが、強火としてもよく、限定されない。火力を弱火とする場合には、火力を強火とする場合よりも、不要成分除去工程中に加熱を行う時間が長くなるが、細かな制御がしやすくなる。
【0061】
本例では、下バーナ25による加熱及び加熱停止を繰り返す。この場合、下バーナ25により加熱を行う時の火力は、本例では弱火とするが、強火としてもよく、限定されない。上述したように、火力を弱火とする場合には、細かな制御がしやすくなる。
【0062】
本例では、不要成分除去工程において、検知温度を所定の温度範囲内に維持するために、125℃を閾値として、検知温度が125℃未満の温度から125℃に上昇した時点か、検知温度が125℃超の温度から125℃に下降した時点で、下バーナ25及び上バーナ26による加熱と加熱停止とを切り換える。
【0063】
工程T11(初期加熱工程)において125℃未満の検知温度が上昇して、125℃に到達すると、工程T12に移行して下バーナ25及び上バーナ26による加熱を停止する。工程T12の開始により不要成分除去工程が開始する。
【0064】
下バーナ25及び上バーナ26による加熱を停止した後(すなわち工程T12に移行した後)、しばらくは検知温度が上昇するが、その後、検知温度は下降に転じる。125℃超の検知温度が下降して、125℃に到達すると、工程T13に移行して下バーナ25及び上バーナ26による加熱を再開する。
【0065】
下バーナ25及び上バーナ26による加熱を再開した後(すなわち工程T13に移行した後)、しばらくは検知温度が下降するが、その後、検知温度は上昇に転じる。125℃未満の検知温度が上昇して、125℃に到達すると、工程T14に移行して下バーナ25及び上バーナ26による加熱を停止する。
【0066】
以降はこれを繰り返す。工程T15は下バーナ25及び上バーナ26による加熱を行う工程、工程T16は下バーナ25及び上バーナ26による加熱を停止する工程、工程T17は下バーナ25及び上バーナ26による加熱を行う工程である。温度維持工程は、実行時間の間、実行される。
【0067】
実行時間は、予め固定的に決められてもよい。この場合実行時間は、不要成分除去工程において加熱対象とする加熱対象物に応じて決まることが好ましい。すなわち、サブメニューとして選択した「バナナ」、「りんご」、「ドライフルーツ(一般)」、「ビーフジャーキー」により、それぞれ最適な実行時間に決められることが好ましい。これにより、加熱対象物の種類に応じた最適な不要成分除去工程の実行時間を決めることができる。
【0068】
本例では、不要成分除去工程は、物体の熱容量の変化が所定値を超えると、終了する。乾燥モードの場合、加熱対象物における不要成分は水分であり、不要成分除去工程において加熱対象物に含まれる水分が減少する。加熱対象物における水分の減少量(減少割合)が所定値を超えると、目的を達成したものとして、不要成分除去工程を終了する。加熱対象物における水分の減少量(減少割合)は、熱容量の変化として検知可能である。加熱対象物はバナナであり、乾燥モードを実行して終了することにより、乾燥が進んだバナナであるバナナチップが作製される。不要成分除去工程を終了するための熱容量の変化の所定値は、どの程度乾燥が進んだバナナチップを作製したいかにより、適宜決められる。
【0069】
制御部16は、熱容量の変化を基に、乾燥モードの不要成分除去工程を終了する。
【0070】
制御部16は、不要成分除去工程において、検知温度を基に、伝熱皿5及び伝熱皿5に載置される物体の熱容量の変化を求める。本例では、伝熱皿5に載置される物体は、載置される加熱対象物(バナナのスライス)そのものである。
【0071】
制御部16は、検知温度の所定の変化に要する時間を基に、熱容量の変化を求める。例えば、不要成分除去工程(T12~T17)のうち、一番初めの工程T12に要する時間を記憶する。一番初めの工程T12に要する時間は、制御部16が有するメモリや記憶装置、あるいは外部記憶装置に適宜記憶される。次に、工程T12と同様の工程、すなわち、検知温度が125℃未満から125℃に到達することにより開始し、125℃を超えた検知温度が下降して125℃に到達することにより終了する工程T14及び工程T16に要する時間を記憶する。工程(T12、T14、…)に要する時間が長い程、熱容量が大きい。伝熱皿5及び伝熱皿5に載置される物体の熱容量と、工程に要する時間との関係は、予め、計算、実験又は経験則等により求められる。乾燥モードでは、時間の経過に従って加熱対象物に含まれる水分の減少が進むため、伝熱皿5及び伝熱皿5に載置される物体の熱容量は小さくなり、工程に要する時間は短くなる。
【0072】
不要成分除去工程においては、検知温度が所定の温度範囲を維持するように設計されているが、例えば外乱により、検知温度が所定の温度範囲を逸脱することがあっても構わない。
【0073】
また、工程T12と同様の工程に要する時間を、伝熱皿5及び伝熱皿5に載置される物体の熱容量の変化を求めるために採用する代わりに、工程T13と同様の工程に要する時間を採用してもよい。また、工程T12と同様の工程と、これに連続する工程T13と同様の工程を合わせた時間を採用してもよく、工程の選び方は限定されない。
【0074】
本例では、工程T12と工程T13とに要する時間の合計と、工程T12と同様の工程(工程T16)とこれに連続する工程T13と同様の工程(工程T17)を合わせた時間とを比較して、所定の条件を満たしたため、工程T17終了後に、不要成分除去工程を終了する。本例では、不要成分除去工程の実行時間は、予め決められるものではない。
【0075】
このように、伝熱皿5及び伝熱皿5に載置される物体の熱容量の変化を基に不要成分除去工程を終了するため、的確に不要成分除去工程を終了することができる。
【0076】
また、本例では、一つの閾値を基に不要成分除去工程が実行されているが、二つ以上の閾値を基に不要成分除去工程が実行されてもよい。例えば、検知温度が第一の閾値未満から第一の閾値に到達することにより開始し(同時に加熱部24による加熱を停止する)、検知温度が第二の閾値超から第二の閾値に到達することにより終了する(同時に加熱部24による加熱を開始する)工程と、検知温度が第二の閾値超から第二の閾値に到達することにより開始し(同時に加熱部24による加熱を開始する)、検知温度が第一の閾値未満から第一の閾値に到達することにより終了する(同時に加熱部24による加熱を停止する)工程を繰り返してもよい。不要成分除去工程における具体的な制御方法は限定されない。
【0077】
次に、図7に基づいて、脂落としモードを実行する場合の例について説明する。なお、本例は乾燥モードと大部分において同じであるため、同じ部分については説明を省略し、主に異なる部分について説明する。
【0078】
脂落としモードは、加熱対象物に含まれる油脂を除去する調理モードである。すなわち、脂落としモードでは、不要成分は油脂である。脂落としモードにおいて想定している加熱対象物は、主に油脂を多く含む肉類である。加熱対象物が含む油脂の割合は、特に限定されない。なお、脂落としモードにおける加熱対象物は、油脂を多く含まないものに限定されないし、肉類にも限定されない。
【0079】
利用者は、加熱調理器1によって乾燥モードによる自動調理を行うとき、まず、加熱庫20内に加熱対象物として例えば鶏のもも肉を配置する。加熱対象物としての鶏のもも肉は塊となっており、数か所において点接触に近い状態で伝熱皿5の上面に載置されて、伝熱皿5ごと加熱庫20内に配置される。
【0080】
次に利用者は、オートメニュー操作部の調理メニュー選択操作部を操作して、調理メニューとして「脂落とし」を選択する。次に、利用者は、調理メニュー選択操作部を操作して、脂落としモードのサブメニューとして加熱対象物の種類を選択する。加熱対象物の種類としては、本例では、「鶏肉」、「牛肉」、「豚肉」、「魚」のいずれかが選択可能である。本例では、利用者は、「鶏肉」を選択する。次に、利用者は、点火消火操作部を操作して、脂落としモードの開始の指令を行う。
【0081】
脂落としモードにおいては、制御部16は、初期加熱工程(図7中の符号T21で示される工程)と、所定の不要成分除去工程(図7中の符号T22~T25で示される工程)と、を実行する。初期加熱工程では、制御部16は、下バーナ25及び上バーナ26を強火として、加熱する。本例では、初期加熱工程は、検知温度が80℃に到達するまで実行されるが、温度は80℃に限定されない。
【0082】
脂落としモードにおいて検知温度を維持する温度範囲は、水の沸点を上限とし、かつ、不要成分除去工程において加熱対象とする加熱対象物から油脂が溶出する温度を下限とする。
【0083】
加熱対象物となる食材において、加熱対象物から油脂が溶出する温度は、平均的には60℃である。本例では、不要成分除去工程において検知温度が維持される温度範囲の下限は、油脂が溶出する一般的な温度である60℃である。なお、温度範囲の下限は、60℃に限定されない。すなわち加熱対象物から油脂が溶出する温度は一定ではないため、温度範囲の下限は、様々な食材において油脂が溶出する例えば30℃、40℃、50℃、70℃等、30℃~70℃の範囲に適宜設定されるのが好ましい。また、温度範囲の下限は、例えば80℃、90℃等、加熱対象物から油脂が溶出する温度よりも高い温度に設定されてもよい。
【0084】
不要成分除去工程において検知温度が維持される温度範囲の上限は、水の沸点である100℃である。なお、温度範囲の上限は、例えば90℃等、水の沸点よりも低い温度に設定されてもよい。
【0085】
本例でも、乾燥モードの例と同様に、不要成分除去工程では、制御部16は、不要成分除去工程において、上バーナ26による加熱及び加熱停止を繰り返すことにより、検知温度を所定の温度範囲内に維持するが、制御方法は限定されない。
【0086】
本例では、不要成分除去工程において、検知温度を所定の温度範囲内に維持するために、80℃を閾値として、検知温度が80℃未満の温度から80℃以上に上昇した時点か、検知温度が80℃超の温度から80℃以下に下降した時点で、下バーナ25及び上バーナ26による加熱と加熱停止とを切り換える。
【0087】
工程T21(初期加熱工程)において80℃未満の検知温度が上昇して、80℃に到達すると、工程T22に移行して下バーナ25及び上バーナ26による加熱を停止する。工程T22の開始により不要成分除去工程が開始する。
【0088】
下バーナ25及び上バーナ26による加熱を停止した後(すなわち工程T22に移行した後)、しばらくは検知温度が上昇するが、その後、検知温度は下降に転じる。80℃超の検知温度が下降して、80℃に到達すると、工程T23に移行して下バーナ25及び上バーナ26による加熱を再開する。
【0089】
下バーナ25及び上バーナ26による加熱を再開した後(すなわち工程T23に移行した後)、しばらくは検知温度が下降するが、その後、検知温度は上昇に転じる。80℃未満の検知温度が上昇して、80℃に到達すると、工程T24に移行して下バーナ25及び上バーナ26による加熱を停止する。以降はこれを繰り返す。
【0090】
物体の熱容量の変化が所定値を超えると、不要成分除去工程は終了する。脂落としモードの場合、加熱対象物における不要成分は油脂であり、不要成分除去工程において加熱対象物に含まれる油脂が減少する。しかしながら、加熱対象物から溶出した油脂は、伝熱皿5上に載置(貯留)される。このため、脂落としモードにおける伝熱皿5及び伝熱皿5に載置される物体の熱容量は、伝熱皿5と伝熱皿5上に載置される油脂を合わせた熱容量として検知される。更に説明すると、脂落としモードにおける伝熱皿5及び伝熱皿5に載置される物体の熱容量には、伝熱皿5の上面に載置される加熱対象物である鶏のもも肉の塊の熱容量は含まれないとすることができる。その理由は、上述したように、鶏のもも肉は数か所において点接触に近い状態で伝熱皿5の上面と接触しており、熱伝導の観点からは伝熱皿5とその上に載置されている鶏のもも肉の塊とほぼ独立していると考えられるからである。
【0091】
加熱対象物における油脂の減少量(減少割合)、言い換えると、伝熱皿5上に載置されている油脂の増加量(増加割合)が所定値を超えると、目的を達成したものとして、不要成分除去工程を終了する。脂落としモードにおける不要成分除去工程を終了するための熱容量の変化の所定値は、適宜決められる。
【0092】
本例では、工程T22と工程T23とに要する時間の合計と、工程T22と同様の工程(工程T24)とこれに連続する工程T23と同様の工程(工程T25)を合わせた時間とを比較して、所定の条件(適宜決められる)を満たしたため、工程T25終了後に、不要成分除去工程を終了する。
【0093】
脂落としモードにおいても、伝熱皿5及び伝熱皿5に載置される物体の熱容量の変化を基に不要成分除去工程を終了するため、的確に不要成分除去工程を終了することができる。
【0094】
(3)変形例
不要成分除去工程において、上バーナ26と下バーナ25の一方のみによる加熱及び加熱停止を繰り返すことにより、検知温度を所定の温度範囲内に維持するようにしてもよい。特に、不要成分除去工程において、上バーナ26と下バーナ25のうちの火力の小さい方による加熱及び加熱停止を繰り返すことにより、検知温度を所定の温度範囲内に維持するようにしてもよい。この場合、細かな制御がしやすくなる。
【0095】
不要成分除去工程では、下バーナ25による加熱をせず加熱停止を継続してもよい。
【0096】
不要成分除去工程では、下バーナ25と上バーナ26の両方による加熱及び加熱停止を繰り返すのではなく、下バーナ25と上バーナ26の一方又は両方により継続して加熱を行ってもよい。この場合の加熱するバーナの火力にあっては、強火と弱火とが適宜切換えられる。
【0097】
初期加熱工程では、下バーナ25及び上バーナ26は強火でなくてもよい。下バーナ25と上バーナ26の火力は、それぞれ強火、弱火又は切の任意の組み合わせ(但し両方とも切は除く)が可能である。また、下バーナ25と上バーナ26の一方又は両方は、継続的に加熱してもよいし、加熱と加熱停止を繰り返してもよく、この場合、火力は上述したように任意の組み合わせが可能である。
【0098】
初期加熱工程は、予め決められた所定の時間、実行されるようにしてもよい。
【0099】
温度範囲の上限及び下限は、温度範囲に含まれてもよいし、含まれなくてもよい。上記実施形態についていえば、温度範囲は、150℃以下であってもよいし、150℃未満であってもよい。また、温度範囲は、100℃以上であってもよいし、100℃超であってもよい。
【0100】
脂落としモードのサブメニューは、上述した「鶏肉」等に限定されない。乾燥モードのサブメニューは、上述した「バナナ」等に限定されない。
【0101】
調理メニューのサブメニューは、任意であり、設けられなくてもよい。
【0102】
不要成分除去工程の後、上バーナ26による加熱を行うと共に下バーナ25による加熱を停止して、検知温度が所定の温度範囲を超えるように加熱部24を制御する所定の加熱調理工程を実行してもよい。これにより、不要成分除去工程により加熱対象物から不要成分を除去した後、引き続いて加熱対象物を焼き上げ等の加熱調理することができる。加熱調理工程を有する調理メニューとしては、上述した「トースト」、「鶏もも焼き」、「ホイル焼き」、「魚の切り身」、「魚の姿焼き」等が好適に挙げられるが、特に限定されない。
【0103】
(4)まとめ
以上、述べた実施形態から明らかなように、第1の態様の加熱調理器1は、加熱庫20と、伝熱皿5と、加熱部24と、温度検知部46と、制御部16と、を備える。伝熱皿5は、加熱庫20に収容され、加熱対象物が載置されて加熱対象物に熱を伝導させる。加熱部24は、加熱対象物及び伝熱皿5を加熱する。温度検知部46は、伝熱皿5の温度を検知する。制御部16は、温度検知部46により検知される検知温度を所定の温度範囲内に維持するように加熱部24を制御して、加熱対象物から不要成分を除去する所定の不要成分除去工程を実行する。
【0104】
第1の態様によれば、加熱対象物から主に不要成分を除去することができる。
【0105】
第2の態様では、第1の態様との組み合わせにより実現され得る。第2の態様では、所定の温度範囲は、所定の不要成分除去工程において加熱対象とする加熱対象物がメイラード反応を起こす温度を上限とし、かつ、水の沸点を下限とする。
【0106】
第2の態様によれば、不要成分除去工程によって加熱対象物より不要成分としての水分を除去し、加熱対象物を乾燥させやすくなる。
【0107】
第3の態様では、第1の態様との組み合わせにより実現され得る。第3の態様では、所定の温度範囲は、所定の不要成分除去工程において加熱対象とする加熱対象物がメイラード反応を起こす温度を上限とし、かつ、水の沸点を下限とする。
【0108】
第3の態様によれば、不要成分除去工程によって加熱対象物より不要成分としての油脂を除去しやすくなる。
【0109】
第4の態様では、第1~第3のいずれかの態様との組み合わせにより実現され得る。第4の態様では、加熱部24は、上バーナ26と、下バーナ25と、を有する。上バーナ26は、伝熱皿5より上側に配置されて加熱対象物を加熱する。下バーナ25は、伝熱皿5より下側に配置されて伝熱皿5を加熱する。制御部16は、所定の不要成分除去工程において、上バーナ26と下バーナ25の少なくとも一方による加熱及び加熱停止を繰り返すことにより、検知温度を所定の温度範囲内に維持する。
【0110】
第4の態様によれば、加熱と加熱停止を繰り返すだけで、容易に検知温度を所定の温度範囲内に維持することができる。
【0111】
第5の態様では、第4の態様との組み合わせにより実現され得る。第5の態様では、制御部16は、所定の不要成分除去工程において、上バーナ26と下バーナ25のうちの火力の小さい方による加熱及び加熱停止を繰り返すことにより、検知温度を所定の温度範囲内に維持する。
【0112】
第5の態様によれば、より細かな制御がしやすくなる。
【0113】
第6の態様では、第4又は第5の態様との組み合わせにより実現され得る。第6の態様では、制御部16は、所定の不要成分除去工程の後、上バーナ26による加熱を行うと共に下バーナ25による加熱を停止して、検知温度が所定の温度範囲を超えるように加熱部24を制御する所定の加熱調理工程を実行する。
【0114】
第6の態様によれば、温度維持工程により加熱対象物から不要成分を除去した後、引き続いて加熱対象物を焼き上げ等の加熱調理することができる。
【0115】
第7の態様では、第1~第6のいずれかの態様との組み合わせにより実現され得る。第7の態様では、制御部16は、所定の不要成分除去工程において、所定の実行時間を経過した時に、所定の不要成分除去工程を終了する。所定の実行時間は、所定の不要成分除去工程において加熱対象とする加熱対象物に応じて決まる。
【0116】
第7の態様によれば、加熱対象物の種類に応じた最適な不要成分除去工程の実行時間を決めることができる。
【符号の説明】
【0117】
1 加熱調理器
16 制御部
20 加熱庫
24 加熱部
25 下バーナ
26 上バーナ
46 温度検知部
5 伝熱皿
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7