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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-31
(45)【発行日】2023-11-09
(54)【発明の名称】低波面誤差圧電駆動式光学素子
(51)【国際特許分類】
   G02B 26/00 20060101AFI20231101BHJP
   G02B 3/14 20060101ALN20231101BHJP
【FI】
G02B26/00
G02B3/14
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2019567398
(86)(22)【出願日】2018-02-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-02
(86)【国際出願番号】 EP2018054804
(87)【国際公開番号】W WO2018154139
(87)【国際公開日】2018-08-30
【審査請求日】2021-02-09
(31)【優先権主張番号】17158060.8
(32)【優先日】2017-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519309005
【氏名又は名称】ポライト エーエスエー
【氏名又は名称原語表記】POLIGHT ASA
【住所又は居所原語表記】Kongeveien 77 3188 Horten Norway
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】カルタショフ, ウラジーミル
(72)【発明者】
【氏名】クレイン, ピエール
【審査官】鈴木 俊光
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-504779(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0310243(US,A1)
【文献】特開2008-191313(JP,A)
【文献】特開2011-259344(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/00 - 26/08
G02B 3/00 - 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学素子(100、500、600、700)であって、
側壁(112、512)を有する支持構造(101、501)と、
前記側壁(112、512)に取り付けられた屈曲可能なカバー部材(102、502、702)と、
前記屈曲可能なカバー部材(102、502、702)を所望の形状に成形するように配置された圧電アクチュエータ(103、104、105)と、
を含み、
前記圧電アクチュエータ(103、104、105)は、
下部電極(103)と、
圧電活性層(104)形態の圧電材と、
上部電極(105)と、
を含み、
前記下部電極(103)は、前記圧電活性層(104)を越えて延びており、
光軸(110、510)に平行な方向から観察したときの前記圧電アクチュエータの位置は、前記下部電極(103)、前記圧電活性層(104)及び前記上部電極(105)の全てが重なる位置によって与えられ、
前記光学素子(100、500、600、700)は、光軸(110、510)を有する光学活性領域(111、511)を含み、
前記圧電アクチュエータは、前記光軸を完全に囲む閉じた線を形成し、前記光軸(110、510)に平行な方向から観察したときの前記圧電アクチュエータ(103、104、105)の外縁(215A~E)は、第1線を定義し、前記外縁は、前記光軸とは反対側に面する前記圧電アクチュエータの縁に対応する閉じた線であり、
前記光軸(110、510)に平行な方向から観察したときの前記支持構造(101、501)と前記屈曲可能なカバー部材(102、502、702)との間の界面における前記支持構造(101、501)の内縁(109)は、第2線を定義し、
前記光軸(110、510)に平行な方向から観察したときの前記第1線及び前記第2線は、2以上の位置で互いに交差し、及び/又は1以上の位置で平行でありかつ一致する、光学素子。
【請求項2】
上方及び下方は前記光軸に平行な方向を表し、上方は前記支持構造から前記カバー部材への正方向であり、下方は前記支持構造から前記カバー部材への負方向である、請求項1に記載の光学素子(100、500、600)。
【請求項3】
前記圧電アクチュエータに含まれる、前記上部電極及び/又は前記下部電極の部分は、前記光軸に平行な線と交差する前記部分であり、該線も前記圧電材と交差する、請求項1に記載の光学素子(100、500、600)。
【請求項4】
前記第2線は、丸い角を有する長方形を定義する、請求項1に記載の光学素子(100、500、600)。
【請求項5】
前記第2線は、丸い角を有する正方形を定義する、請求項1に記載の光学素子(100、500、600)。
【請求項6】
前記光学素子は、前記支持構造の前記側壁(101、501)によって囲まれた少なくとも1の変形可能な透明レンズ本体(107、507)を含む屈折レンズであり、
前記屈曲可能なカバー部材(102、502)は、前記少なくとも1の変形可能な透明レンズ本体(107、507)の表面に取り付けられた屈曲可能な透明カバー部材である、請求項1に記載の光学素子(100、500、600)。
【請求項7】
前記光学素子は反射素子であり、前記屈曲可能なカバー部材(702)は、前記支持構造とは反対側に面する側及び/又は前記支持構造に面する側が反射性である、請求項1に記載の光学素子(700)。
【請求項8】
前記圧電アクチュエータ(103、104、105)に印加される40ボルトの範囲全体にわたる全波面誤差(WFERMS)は60nm以下であり、
前記全波面誤差(WFERMS)は、630nmの波長及び0°の入射角において測定される、請求項1に記載の光学素子(100、500、600、700)。
【請求項9】
5ジオプトリの範囲全体にわたって、全波面誤差(WFERMS)は60nm以下であり、
前記全波面誤差(WFERMS)は、630nmの波長及び0°の入射角において測定される、請求項1に記載の光学素子(100、500、600、700)。
【請求項10】
前記第1及び第2線が交差しない、対応する光学素子のための前記圧電アクチュエータ(103、104、105)に印加される40ボルトの範囲全体にわたる第1最大全波面誤差(WFERMS)は、前記光軸(110、510)に平行な方向から観察したときの前記第1線及び前記第2線が2以上の位置で互いに交差し、及び/又は1以上の位置で平行でありかつ一致する、前記光学素子のための前記圧電アクチュエータ(103、104、105)に印加される40ボルトの範囲全体にわたる第2最大全波面誤差(WFERMS)より、少なくとも10%だけ大きく、
前記第1最大全波面誤差(WFERMS)は、630nmの波長及び0°の入射角において測定され、
前記第2最大全波面誤差(WFERMS)は、630nmの波長及び0°の入射角において測定される、請求項1に記載の光学素子(100、500、600、700)。
【請求項11】
光学活性領域は、光学アパーチャに対応する、請求項1に記載の光学素子(100、500、600、700)。
【請求項12】
前記屈曲可能なカバー部材(102、502、702)は、ガラスである、請求項1に記載の光学素子(100、500、600、700)。
【請求項13】
1以上の圧電アクチュエータは、前記光軸を囲む1の圧電アクチュエータを含み、前記圧電アクチュエータの前記光軸に面する内縁は、前記光軸を中心とする円を形成する、請求項1に記載の光学素子(100、500、600、700)。
【請求項14】
前記第1線は、丸い角を有する正方形である、請求項1に記載の光学素子(100、500、600、700)。
【請求項15】
前記第1線は、円形状である、請求項1に記載の光学素子(100、500、600、700)。
【請求項16】
前記光学素子は、95%以上の、10nm~1mmの波長範囲及び0~65°の入射角範囲内の平均透過率を有し、
可視範囲にわたる最小透過率は、任意の可視波長において、94%以上であり、及び/又は、
可視範囲にわたる波長範囲が任意の可視波長に限定される平均反射率は2.5%以下である、請求項1に記載の光学素子(100、500、600、700)。
【請求項17】
請求項1に記載の光学素子(100、500、600、700)を製造するための方法であって、前記方法は、堆積によって前記屈曲可能なカバー部材(102、502、702)の上に前記圧電アクチュエータ(103、104、105)を提供することを含む方法。
【請求項18】
請求項1に記載の光学素子(100、500、600、700)を含むカメラ。
【請求項19】
1以上の画像を取得するための、請求項1に記載の光学素子(100、500、600、700)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子に関し、より具体的には、圧電駆動式光学素子並びにそれに対応する用途、光学デバイス及び圧電駆動式光学素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
調節可能な焦点距離及び可能な最高画質を有する、レンズアセンブリのような光学素子のための、低コストで大量の解決策への需要が高まり続けている。最近の携帯電話などは、現在小型のデジタルカメラモジュールを備えており、レンズやレンズアセンブリのような光学素子に対する品質及びコストへの需要が高まっている。携帯電話及びラップトップコンピュータに使用される、ますます小型化されるカメラは、オートフォーカス機能を有する。例えば、そのような用途のためのレンズシステムの設計は、レンズをカメラモジュールの上に取り付ける際の製造基準から操作の容易性さまで、多くの要件を満たすことが要求される。これらの課題は、例えばレンズから撮影対象までの距離を合わせるために焦点距離を調節しなければならないような、オートフォーカスレンズにおける調整パラメータがレンズ配置に含まれる場合、さらに重大になる。そのような光学素子は、通常、簡単に光学素子を組み立てることを妨げ得る可動性部品を含む複雑な設計である。そのような設計におけるさらなる課題は、そのような使用のために、レンズアセンブリのような適切な光学素子を提供することに対する要求がますます高まっていることである。
【0003】
そこで、コンパクトなオートフォーカス光学素子を製造するための、様々な解決策が存在している。現在の解決策の1の課題は、良好な光学特性を如何にして提供するかである。
【0004】
したがって、改善された光学特性を有する光学素子が有利であり、特に改善された光学特性を有する調整可能な光学マイクロレンズが有利である。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、上述の従来技術における課題を解決する、改善された光学特性を有する(調整可能な光学素子のような)光学素子を提供するなど、調整可能な光学素子のような光学素子を提供することを目的とすることであると分かる。本発明は、従来技術に対する代替案を提供することをさらなる目的とすることであると分かる。
【0006】
したがって、以下を含む光学素子を提供することによって本発明の第1態様において上述の目的及び他のいくつかの目的が達成されることを意図している:
- 側壁を有する支持構造、
- 以下に取り付けられた屈曲可能なカバー部材、
〇 前記側壁、
- 前記屈曲可能なカバー部材を所望の形状に成形するように配置された1以上の圧電アクチュエータ、
ここで、前記光学素子は、光軸を有する光学活性領域を含み、ここで、
- 前記光軸に平行な方向から観察したときの前記1以上の圧電アクチュエータの外縁は、第1線を定義し、
- 前記光軸に平行な方向から観察したときの、前記支持構造の前記側壁などの前記支持構造と前記屈曲可能なカバー部材との間の界面における前記支持構造の内縁は、第2線を定義し、
ここで、前記光軸に平行な方向から観察したときの前記第1線及び前記第2線は、
- 例えば、2、3、4、8、16、32又はそれ以上の位置で互いに交差し、及び/又は
- 例えば、残りの第1線(例えば、第2線と平行でなく一致しない第1線の部分)が第2線で囲まれた領域の内側又は外側にある場合、1以上の位置、例えば、1、2、3、4、8、16、32又はそれ以上の位置で平行でありかつ一致する。
【0007】
本発明は、限定されるものではないが、特に、低全波面誤差(WFERMS)などの改善された光学特性を有し得る、光学(屈折)レンズなどの光学素子、又は調節可能なマイクロレンズや調節可能なマイクロミラーなどの屈折素子を取得することに有利である。本発明者らは、低全WFERMS(例えば、60nm未満)を有する光学素子、たとえ小さい光学活性領域(例えば、アパーチャなどの幅10mm未満の光学活性領域)及び小さい厚さ(例えば、厚さ1mm未満)を有する光学素子であっても取得することが可能となり得るという洞察を得た。
【0008】
「光学素子」とは、素子(例えば、素子は、光学屈折レンズなどの光学レンズ)を通過する光に作用(例えば、操作)する素子であるか、光学素子(例えば、素子は、反射素子又はミラー)から反射される光に作用する素子であると理解することができる。
【0009】
光学素子は、一般的に調整可能な光学素子であり得る。「調整可能」とは、例えば、前記屈曲可能なカバー部材を所望の形状に成形するように配置された1以上の圧電アクチュエータに印加される電圧を変えることによって、光学素子の焦点距離を調整できることであると理解することができる。
【0010】
「光学活性領域」とは、その上に光が入射し、かつ操作し得る領域であると理解することができる。光学レンズに対して、光学活性領域は、光学アパーチャに対応しても(例えば、同一であっても)よい。ミラーなどの反射素子の場合、光学活性領域は、(例えば、光学レンズのためのアパーチャと同様に)その上に光が入射し、かつ操作された光がそこから反射され得る反射領域であり得る。
【0011】
「光軸」は、当技術分野において一般的に理解されており、また、例えば、レンズ本体及びカバー部材を通過するなど、カバー部材と交差すると理解されている(また、光学素子が光学レンズである場合、光軸はレンズ本体と交差するとも理解される)。本明細書では、1以上の圧電アクチュエータは、例えば、光学アパーチャなどの光学活性領域を、完全に取り囲むか又は囲むなど、取り囲むか又は囲むように1以上の圧電アクチュエータが配置されるなどして、例えば、(光学素子が光学レンズである場合)屈曲可能な(透明)カバー部材上の少なくとも1の変形可能なレンズ本体の光学アパーチャなどの光学活性領域を定義し得る。
【0012】
「圧電アクチュエータ」は、当技術分野で知られており、本明細書では、例えば、圧電材(例えば、圧電活性層などの圧電活性材)の両側(例えば、上方及び下方)に電極(例えば、白金)層が存在するか、又は圧電材のいずれかの側のみ(例えば、上方又は下方)に、その全体内容が参照により本明細書に取り込まれるWO2014/048818A1に記載のくし型電極などのくし型電極を含む電極層が存在するような様々な構成の電極層を含むと理解される。圧電材は、公知の技術(例えば、スパッタ法、ゾルゲル法、又は任意の他の方法)により、任意の標準タイプの圧電材で作製することができる。上部電極及び下部電極は、圧電フィルム堆積の技術と適合する任意の金属、例えばPt又はAuで作製することができる。他の任意の実施形態と組み合わせることができる実施形態において、1以上の圧電アクチュエータは、例えば、光軸を完全に囲む1の圧電アクチュエータ、光軸を完全に囲む1及ぶ1のみのコヒーレント圧電アクチュエータ、光軸を完全に囲む1のみの圧電アクチュエータなどの、少なくとも1の圧電アクチュエータである。「コヒーレント」とは、例えば、互いに分離されていない部分のみを含む1の素子などの1の連続素子のような、1の素子と理解される。さらに、コヒーレント素子は、中央の貫通孔の周りに閉じた線を形成し、例えば、前記中央の孔は、光軸と交差し、例えば、光軸に平行である線を、圧電アクチュエータと交差させることなく光軸の位置から圧電アクチュエータの外側に移動させることができない。
【0013】
一実施形態において光学素子が開示され、ここで、1以上の圧電アクチュエータが、光軸を囲む1の圧電アクチュエータ含み、例えば、光学アパーチャを定義し、例えば、圧電アクチュエータの光軸に面する(1の圧電アクチュエータの光軸に面する縁に対応する)内縁は、例えば、光軸を中心とする円を形成する。一実施形態において、1以上の圧電アクチュエータが、光軸を囲む1の圧電アクチュエータ含み、圧電アクチュエータの光軸に面する(1の圧電アクチュエータの光軸に面する縁に対応する)内縁は、光軸を中心とする円を形成する。一実施形態において、光軸と交差する貫通孔を有する光学素子が開示され、例えば、前記貫通孔は光軸を中心とする円形などの円形である。
【0014】
「前記屈曲可能なカバー部材を所望の形状に成形するように配置されている」とは、カバー部材に関連するアクチュエータの形状、サイズ及び位置が、電極間の印加電圧などの駆動時にそれらを変形させ、それによって前記屈曲可能なカバー部材を所望の形状に成形することを可能にすることであると理解することができる。カバー部材の少なくとも一部分が、光学アパーチャなどの光学活性領域内にあり、例えば、光軸と交差するカバー部材の一部分が所望の形状に成形されていると理解することができる。
【0015】
「所望の形状」とは、ある形状から所望の形状へ(例えば、1の所望の形状から他の所望の形状へ)進む場合、その後光学素子の焦点距離が変化し得ることであると理解することができる。
【0016】
1以上の圧電アクチュエータは、支持構造に対してカバー部材の反対側に位置する。
【0017】
側壁の内縁を通って光軸に平行に引かれた仮想直線が、側壁の内縁に沿った1以上の点で、1以上の圧電アクチュエータと交差するか又は接するように配置された1以上の圧電アクチュエータを有することによって、1以上の圧電アクチュエータが片持ち梁の原理を利用し、それによってアクチュエータが存在しない、例えば光学アパーチャなどの光学活性領域においても(カバー部材の)最大曲率半径を増幅させることができる。
【0018】
「光軸に平行な方向から観察したときの1以上の圧電アクチュエータの外縁」とは、上方から観察したときの1以上の圧電アクチュエータに対する外縁に沿った線と理解することができる。1以上の圧電アクチュエータが、光軸を完全に囲む閉じた線又は閉構造(「閉じた線」を「閉構造」に置き換えることができることを理解することができる。ここで、閉構造は有限の幅を有することが理解される)を形成する場合、外縁は、光軸とは反対側に面する1以上の圧電アクチュエータの縁(外縁は、光軸を囲む1の圧電アクチュエータなどの1以上の圧電アクチュエータの外縁であり、その縁は光軸とは反対側に面すると理解される)に対応する閉じた線であり得る。1以上の圧電アクチュエータが、光学活性領域を完全には囲まない1以上の圧電アクチュエータを含む場合、外縁は、光学活性領域を完全には囲まない1以上の圧電アクチュエータの縁として見なすことができる。2以上の圧電アクチュエータが存在する場合、少なくとも1の外縁が外縁として選択され得る(例えば、(圧電アクチュエータのうちの1に対応する)少なくとも1の外縁が、特許請求の範囲に記載の特徴を満たす)ことを理解することができる。具体的な実施形態において、アクチュエータは、1のみの圧電アクチュエータである。
【0019】
閉じた線を形成する1以上の圧電アクチュエータを有することで得られる利点は、それが簡単な解決策をもたらすにも関わらず、低全波面誤差を可能にすることである。
【0020】
「光軸と平行な方向から観察したときの支持構造と屈曲可能なカバー部材との間の界面における支持構造の内縁」とは、上方から観察したときの支持構造の内縁(光軸に面する縁など)に沿った線であると理解することができる。この線は、支持構造と屈曲可能なカバー部材との間の界面に存在すると定義される。
【0021】
「光軸と平行な方向から観察したときに第1線及び第2線が、
2以上の位置で互いに交差し、及び/又は
1以上の位置で平行でありかつ一致する」ように第1線及び第2線を配置することで、
光学レンズの全波面誤差WFERMSを減少させることができることが有利であると考えられる。1以上の圧電アクチュエータに印加される電圧の範囲にわたって、最低平均全波面誤差WFERMSなどの最低全波面誤差WFERMSを達成することが可能になり得るので、第1及び第2線が互いに交差することが特に有利である。「平行でありかつ一致する」とは、平行でありかつ一致するなど、実質的に平行でありかつ実質的に一致することであると理解することができる。「一致する」とは、第1線と第2線との間の距離が実質的にゼロ又は実質的にゼロマイクロメートルであるなど、第2線が第1線から例えば10マイクロメートル以内、5マイクロメートル以内、2マイクロメートル以内、1マイクロメートル以内、0.1マイクロメートル以内など、20マイクロメートル以内に存在することを意味し得る。「位置」とは、一組の座標(例えば、第1及び第2線が平行でありかつ一致する線)、又は座標、又は点(例えば、第1及び第2線が平行でありかつ一致する点、又は第1及び第2線が互いに交差する点)であると理解することができる。一般に、「位置」は、例えば、0次接触、1次接触、2次接触、3次接触、4次接触のうちのいずれか1などの、第1曲線と第2曲線との間の接点又は接線であり得ると理解することができる。ここで、点pで交差する平面内の2の曲線は、単純な交差(正接ではない)の場合は0次接触、2の曲線が正接である場合は1次接触、曲線の曲率が等しい場合は2次接触を有していると言われる。このような曲線は、接触していると言われ、曲率の導関数が等しい場合は3次接触、曲率の2次導関数が等しい場合は4次接触と言われる。具体的な実施形態において、「一致しておりかつ平行である」は、「正接」を意味すると理解される。
【0022】
一般に、この出願内で光学特性を参照する場合、光学特性(透過率、不透明度、透明度、反射率など)は、(光学レンズのための)光学アパーチャを通過するなど、光軸に対して入射角(AOI)内で進行する光、又は(反射素子のための)光学活性領域で反射される光に適用されると理解することができ、ここで、入射角は、光軸に対して0~65°、例えば0~40°など(0°など)の範囲内にある。光学特性は、可視領域内の任意の波長、例えば630nmなどの特定の波長での光学特性であり、及び/又は例えば、0°などの特定の入射角での光学特徴であり、例えば、630nmの波長及び0°の入射角における光学特性であると理解することができる。
【0023】
光学特性の「平均」を参照する場合、波長範囲と光軸に対する入射角(AOI)内の前記特性の二重平均として理解される。ここで、波長範囲は10nm~1mmの範囲内であり、例えば、波長範囲は、以下の1以上あるいは全てに対応する:
-10~380nmなどの紫外(UV)領域
- 380~760nmなどの可視(VIS)領域(人間が「光」として認識するか又は見える)
- 760~2,500nmなどの近赤外(nIR)領域
-2.50~10マイクロメートルなどの中赤外(mIR)領域
- 10マイクロメートル~1mmなどの遠赤外(fIR)領域
ここで、AOIは0~65°であり、例えば、0~40°である。
【0024】
「光学」は「光」に関連すると理解されるべきであり、「光」は、可視領域内など、UV、可視、nIR、mIR及びfIRに対応する1以上又はすべての領域内の電磁放射であると理解される。
【0025】
「不透明」とは、不透明材料を通過する光に対する(波長範囲内及び入射角範囲内の)平均透過率が10%以下であり、例えば、1%以下、0.1%以下であると理解することができる。
【0026】
「透明」に関する言及は、一般に光に関する言及と理解される。すなわち、材料を通過するときに、例えば、平均10%以下、平均5%以下の損失など、強度の損失がほぼないか又はまったくなく、光は透明なオブジェクトを通過することができる(それぞれ平均透過率90%及び95%に対応)。
【0027】
鏡面透過率又は通常の透過率などの「透過率」は、光学レンズなどの光学素子に関する透過率の本文脈においては、
- 光学レンズに入射する光、及び
- 光学レンズを透過し、他側で鏡面反射された(通常)透過光として放出される、光学レンズに入射する光の一部の
間の(波長範囲内及び入射角範囲内の)平均比であると理解される。
【0028】
「側壁」とは、光学アパーチャなどの光学活性領域のすぐ外側又は近くの領域で、屈曲可能なカバー部材を支持するなど、屈曲可能なカバー部材を少なくとも部分的に支持する支持素子であると理解することができる。
【0029】
屈曲可能なカバー部材は、光軸に沿った方向において支持構造(及び/又は存在する場合はレンズ本体)に対して薄いなど、比較的薄くてもよく、例えば、0.75mm未満、0.5mm未満、[10;40]マイクロメートル(すなわち、10~40マイクロメートル以内)などのように、1mm未満である。それは、任意の標準的な種類のガラスなどの任意の種類のガラス、又は例えば、いわゆるカバーガラス、又はカバーガラスと同様の、セラミックガラス、ポリマー、無機ポリマーハイブリッドなどの他の材料で作製されてもよい。これらの材料は、特に屈曲可能なカバー部材が透明であるべきである実施形態において関連する。「屈曲可能」とは、屈曲可能なカバー部材などの素子が、1以上の圧電アクチュエータによって曲げられ得る、すなわち、1以上の圧電アクチュエータの駆動が素子を曲げ得ることであると理解することができる。「屈曲可能なカバー部材」は、「カバー部材」と同義的に呼ばれることがある。
【0030】
一実施形態において、光学素子が開示され、ここで、前記光学素子は、以下を含む:
- 側壁を有する支持構造、
- 以下に取り付けられた屈曲可能なカバー部材、
〇 前記側壁、
- 前記屈曲可能なカバー部材を所望の形状に成形するように配置された1以上の圧電アクチュエータ、ここで、前記1以上の圧電アクチュエータは、圧電材と、前記圧電材の上方及び/又は下方の電極層と、を含む、
ここで、前記光学素子は、光軸を有する光学活性領域を含み、ここで、
- 前記1以上の圧電アクチュエータは、前記光軸を完全に囲む閉じた線を形成し、前記光軸に平行な方向から観察したときの前記1以上の圧電アクチュエータの外縁は、第1線を定義し、前記外縁は、前記光軸とは反対側に面する前記1以上の圧電アクチュエータの前記縁に対応する閉じた線であり、
- 前記支持構造と前記屈曲可能なカバー部材との間の界面における、前記光軸に平行な方向から観察したときの、前記支持構造の前記側壁などの前記支持構造の内縁は、第2線を定義し、
ここで、前記光軸に平行な方向から観察したときの前記第1線及び前記第2線は、
- 例えば、2、3、4、8、16、32又はそれ以上の位置で互いに交差し、及び/又は
- 例えば、残りの第1線(例えば、第2線と平行でなく一致しない第1線の部分)が第2線で囲まれた領域の内側又は外側にある場合、1以上の位置、例えば、1、2、3、4、8、16、32又はそれ以上の位置で平行でありかつ一致する。
【0031】
「上方」及び「下方」は、光軸に平行な方向を表し、上方は支持構造からカバー部材への正方向であり、下方は支持構造からカバー部材への負方向である。1以上の圧電アクチュエータは、他の場所、例えば、光軸と平行な線が圧電材料と交差しない位置に配置された電極材料を含まないことであると理解することができる。
【0032】
一実施形態において光学素子が開示され、ここで、上方及び下方は前記光軸に平行な方向を表し、上方は前記支持構造から前記カバー部材への正方向であり、下方は前記支持構造から前記カバー部材への負方向である。
【0033】
一実施形態において光学素子が開示され、ここで、前記1以上の圧電アクチュエータに含まれる、前記圧電材の上方及び/又は下方の前記電極層の1以上の部分は、前記光軸に平行な線と交差する1以上の部分であり、該線も圧電材と交差する。
【0034】
一実施形態において光学素子が開示され、ここで、1以上の圧電アクチュエータの、光軸と平行な方向から観察したときの1以上の領域は、光軸と平行な線で交差する1以上の領域であり、該線は、圧電材、及び圧電材の上方及び/又は下方の電極層と交差する。
【0035】
一実施形態において、光学素子が開示され、ここで、前記光学素子は、以下を含む:
a.圧電活性層の下方の電極層などの下部電極(103)、
b.圧電活性層(104)形態の圧電材、及び
c.圧電活性層の上方の電極層などの上部電極(105)を含み、
ここで、前記光軸(110、510)に平行な方向から観察したときの前記1以上の圧電アクチュエータの位置は、前記下部電極(103)、前記圧電活性層(104)、及び前記上部電極(105)の全てが重なる位置によって与えられる。なお、これらの位置でのみ前記圧電活性層を駆動させることができる。
【0036】
一実施形態において光学素子が開示され、ここで、前記第2線は丸い角を有しない正方形又は丸い角を有しない長方形を定義する。一実施形態において光学素子が開示され、前記第2線は丸い角を有する長方形又はスーパー楕円を定義する。
【0037】
一実施形態において光学素子が開示され、ここで、前記第2線は丸い角を有する正方形を定義する。一実施形態において光学素子が開示され、前記第2線は丸い角を有する長方形を定義する。一実施形態において光学素子が開示され、前記第2線はスーパー楕円を定義する。
【0038】
一実施形態において光学素子が開示され、ここで、第2線は非円形である。
【0039】
一実施形態において光学素子が開示され、ここで、第1線は円形状に丸い角を有する正方形などのような、丸い角を有する正方形である。
【0040】
一実施形態において光学素子が開示され、ここで、第1線は円形などのような、実質的に円形である。
【0041】
一実施形態において、光学素子が開示され、ここで、前記光学素子は、以下含む屈折レンズである:
- 前記支持構造の前記側壁によって囲まれた少なくとも1の変形可能な透明レンズ本体、
ここで、前記屈曲可能なカバー部材は、以下に取り付けられた屈曲可能な透明カバー部材である。
〇 前記少なくとも1の変形可能な透明レンズ本体の表面
【0042】
一実施形態において、液体を含まない光学素子が開示される。一実施形態において、固体又は気体素子からなるような、固体又は気体である光学素子が開示される。一実施形態において、固体素子からなるような固体である光学素子が開示される。
【0043】
「屈折レンズ」は当技術分野において公知であり、それに基づいて理解される。屈折レンズの利点は、それらがメンテナンスをあまり必要とせず、一般に反射素子と同程度のコリメーション又はリコートを必要としないことである。
【0044】
光学レンズは、一般にマイクロレンズであり得る。「マイクロレンズ」とは、一般に、厚さなどの少なくとも1の構造部品の寸法が1マイクロメートルから1ミリメートルの範囲内であるレンズであると理解することができる。本出願において、厚さに関する言及は、(光学的厚さとは対照的に)幾何学的厚さに関する言及である。一実施形態では、厚さは、支持構造(例えば、シリコン)の合計とすることができ、それは200~800マイクロメートルとすることができ、カバー部材及び1以上の圧電アクチュエータは、約22マイクロメートルであり得る電気接点を含む。光学レンズは、ノルウェーのpoLight社から入手可能なTLens(登録商標)として知られる調整可能なマイクロレンズであり得る。光学レンズは、特に、発明の名称が「焦点距離が可変の可撓性レンズ組立体」であるWO2008100154(A1)に開示された調節可能なマイクロレンズに対応する調節可能なマイクロレンズであってもよく、その出願は参照により全体が本明細書に取り込まれる。さらに、引用文献WO2008100154(A1)に関して、特定の寸法はマイクロメートルからミリメートルに変換でき、特に、図面1/5頁のd1PZT、d2PZT及びwpol.(例えば、図1c、サブ図Iを参照)で示される寸法は、μm(マイクロメートル)の代わりにmm(ミリメートル)の単位で与えられても、実際には数値的に同じ値を有することに留意されたい。より具体的には、
d1PZT=4mm、d2PZT=1.5mm、及びwpol.=4.5mmである。
【0045】
例えば、光学特性(例えば、反射防止コーティングを形成する層)を改善する目的、及び/又は水分(例えば、湿度バリアを形成する層)などに対する耐性を改善する目的のために、追加的な層を追加(例えば、上部に追加)してもよい。選択的にそのような追加的な層を有する光学素子は、発明の名称が「圧電駆動式光学レンズ」であるWO2016009079(A1)に記載されたものであってもよく、その出願は参照により全体が本明細書に取り込まれる。
【0046】
応力及び熱補償を提供し、光学要素の機械的強度と曲率を調整する目的などのために、構造要素を追加してもよい。選択的にそのような構造要素を有する光学素子は、「可変構造エレメントを有する調整可能なマイクロレンズ」であるWO2016009078(A1)に記載されたものであってもよく、その出願は参照により全体が本明細書に取り込まれる。
【0047】
「アパーチャ」は、「光学アパーチャ」と交換可能に使用され、当技術分野で一般的に知られており、特に可視光に対して光学的に透明なアパーチャとして理解されるべきである。さらに、アパーチャは一般に光学機器に入ることができる光の量を制限する開口部であると理解されるため、光学的に透明な「アパーチャ」は、不透明な材料(不透明な圧電アクチュエータなど)によって境界を定められていると理解される。
【0048】
一実施形態において光学レンズが開示され、ここで、前記記光学レンズは、95%以上、例えば98%以上、99%以上の(波長範囲内及び入射角範囲内の)平均透過率を有する。これの利点は、光学デバイス素子を通過する際に失われる光が少なくなるように促進することである。一般的な実施形態において、前記光学レンズは、例えば、92%以上、93%以上、94%以上など、90%以上の平均透過率を有する。
【0049】
一実施形態において、光学レンズが提供され、ここで、
- 前記光学レンズは、95%以上、例えば98%以上の(波長範囲内及び入射角範囲内の)平均透過率を有し、
- 可視範囲にわたる最小透過率は、(例えば、任意の可視波長において)94%以上であり、及び/又は
- 可視範囲にわたる(波長範囲が任意の可視波長に限定されるような)平均反射率は2.5%以下、例えば1%以下である。
【0050】
一実施形態において光学素子が開示され、ここで、前記光学素子は反射素子であり、前記屈曲可能なカバー部材は、前記支持構造とは反対側に面する側及び/又は前記支持構造に面する側が反射性である。
【0051】
「反射素子」とは、鏡などの入射電磁放射を反射する素子であると理解することができる。「反射」とは、(波長範囲内及び入射角範囲内の)平均反射率が少なくとも90%、例えば少なくとも95%、少なくとも99%、少なくとも99.9%などであると理解することができる。反射素子の利点は、それらが屈折光学素子と比較して収差をあまり受けないことである。反射素子の他の利点は、それらが屈折光学部品よりも比較的軽量であることができることである。
【0052】
一実施形態において光学素子が開示され、ここで、前記1以上の圧電アクチュエータに印加される40ボルトの範囲全体(例えば、0~40ボルト)、例えば、100ボルトの範囲(例えば、0~100ボルト)にわたる全波面誤差(WFERMS)は60nm以下であり、例えば、50nm、40nm、30nm、25nm、20nmなどである。他のパラメータの範囲全体で閾値よりも低い全WFERMSを有することにより、全WFERMSは、所与の範囲内の他のパラメータの任意の値の閾値よりも低いことを理解することができる。この実施形態から得られる利点は、焦点距離の範囲全体にわたって改善された画質が達成され得ることである。
【0053】
「全波面誤差(WFERMS)」とは、全二乗平均平方根(RMS)波面誤差(WFERMS)と理解され、これは当技術分野で一般に知られており、それに基づいて理解される。
【0054】
全波面誤差(WFE)は、所与の共役(物点及び像点)に対して定義される。
【0055】
波面誤差は、光線の各点に対して定義される。これは、実際の(収差のある)波面と完全な球面波面との間の光路差である。これは、通常、ナノメートル(nm)又はマイクロメートル(μm)で表される距離である。
【0056】
全WFERMSは、所与の共役(物点及び像点)に対して定義される。これは、計算される表面上の光線の断面にわたる全WFEの二乗平均であり、以下の式のように説明される。
【数1】
積分は、システムの出力瞳の断面の領域Aにわたって行われる。全WFERMSは、単一の値である。これは、通常、ナノメートル(nm)又はマイクロメートル(μm)で表される距離である。
【0057】
全WFERMSの測定は、Imagine Optic社(フランスオルセーに本社)のHASOTMなどのシャックハルトマンセンサを有する波面測定システムを用いて実行することができる。
【0058】
一実施形態において光学素子が開示され、ここで、5ジオプトリの範囲全体、例えば、10ジオプトリの範囲全体、13ジオプトリの範囲全体(例えば、[-3;+10]ジオプトリ)、28ジオプトリの範囲全体、30ジオプトリの範囲全体(例えば、[-4;+26]ジオプトリ)、54ジオプトリの範囲全体(例えば、[-4;+50]ジオプトリ)などにわたって、全波面誤差(WFERMS)は60nm以下であり、例えば、50nm、40nm、30nm、25nm、20nmなどである。この実施形態から得られる利点は、焦点距離の範囲全体にわたって改善された画質が達成され得ることである。
【0059】
一実施形態において光学素子が開示され、ここで、[1/x;1/(x+5メートル)]の焦点距離の範囲全体、例えば、[1/x;1/(x+10メートル)]の焦点距離の範囲全体、[1/x;1/(x+13メートル)]の焦点距離の範囲全体、[-1/3メートル-1;+1/10メートル-1]の焦点距離の範囲全体、[-1/4メートル-1;+1/26メートル-1]の焦点距離の範囲全体、[-1/4メートル-1;+1/50メートル-1]の焦点距離の範囲全体などにわたって、全波面誤差(WFERMS)は60nm以下であり、例えば、50nm、40nm、30nm、25nm、20nmなどであり、ここで、xは任意に選択された長さである。実施形態において、xは-3m又は0mであり得る。
【0060】
一実施形態において光学素子が開示され、ここで、光学活性領域は、光学アパーチャに対応し(例えば同一)、ここで、例えば、光学素子は光学レンズであり、屈曲可能なカバー部材上の少なくとも1の変形可能なレンズ本体の光学アパーチャが1以上の圧電アクチュエータに囲まれているなど、1以上の圧電アクチュエータが光学活性領域を定義する。
【0061】
一実施形態において光学素子が開示され、ここで、前記屈曲可能なカバー部材(102、502、702)は、例えば、任意の種類のガラス、ヤング率が20~60GPaのガラスなどのガラスである。
【0062】
一実施形態において光学素子が開示され、ここで、全波面誤差(WFERMS)は、630nmの波長及び0°の入射角などのような、630nmで測定される。
【0063】
一実施形態において、光学素子が開示され、ここで、
- 例えば、第1線が、第2線の完全に内側にあるか、又は第2線の外側にあるなど、第1及び第2線が交差しないか、又は1以上の位置で平行でありかつ一致する、対応する光学素子のための1以上の圧電アクチュエータに印加される40ボルトの範囲全体(例えば、0~40ボルト)、例えば、100ボルトの範囲(例えば、0~100ボルト)にわたる最大全波面誤差(WFERMS)は、
- 前記光軸に平行な方向から観察したときの前記第1線及び前記第2線が、
〇 2以上の位置で互いに交差し、及び/又は
〇 1以上の位置で平行でありかつ一致する前記光学素子のための前記1以上の圧電アクチュエータに印加される40ボルトの範囲全体(例えば、0~40ボルト)、例えば、100ボルトの範囲(例えば、0~100ボルト)にわたる最大全波面誤差(WFERMS)より、
少なくとも10%、例えば、20%、30%、40%、50%、100%、250%だけ大きい。
この実施形態によれば、光学レンズ(光軸と平行な方向から観察したときの第1線及び第2線は、互いに交差し、及び/又は少なくとも1の位置で平行でありかつ一致する)が提供され、該光学レンズは、第1及び第2の線が少なくとも1の位置で交差しないか、又は平行でありかつ一致することを除いて同様の類似する光学レンズ(対応する光学レンズと呼ばれる)よりも低い総WFERMSを有する。したがって、この実施形態によれば、光学レンズは、1以上の圧電アクチュエータの配置が全WFERMSに対して相違を生じるように配置される。また、1以上の圧電アクチュエータは、光軸と平行な方向から観察したときの第1線及び第2線が互いに交差し、及び/又は少なくとも1の位置で平行でありかつ一致するように配置され、それによってWFERMSが減少する。
【0064】
一実施形態において光学素子が開示され、ここで、支持構造の内縁は、外接する長方形又は正方形の最小辺長が、2.5mm以上、例えば、2.8mm以上、3.0mm以上、3.5mm以上、3.8mm以上、4.0mm以上、4.5mm以上、5mm、10mmなどになるように開口部を定義する。「支持構造の内縁」とは、支持構造と屈曲可能なカバー部材との間の界面での支持構造の内縁であると理解することができる。支持構造の内縁と外接する長方形の両方が、光軸に直交する平面で観察されることであると理解することができる。
【0065】
一実施形態において光学素子が開示され、ここで、前記光学素子の厚さは、1mm以下、例えば、700マイクロメートル以下、500マイクロメートル以下、450マイクロメートル以下、425マイクロメートル以下、400マイクロメートルなどである。薄い厚さを有することで得られる利点は、垂直フットプリントが非常に小さい光学レンズが可能になるということである。この小さい垂直フットプリントにより、選択的に、現在実現可能なものよりも小さな垂直フットプリントを有する、カメラなどのより薄い光学デバイスを携帯電話などのより薄い装置に統合し得る。「光学レンズの厚さ」とは、光軸に平行な方向の光学長の寸法(光軸に対して直交し、光学レンズの両側に配置される2の平面間の距離など)と理解することができる。一実施形態において、光学レンズである光学素子が開示され、ここで、前記厚みは、以下の距離に対応する。
光軸に直交し、以下を含む平面から
- 以下のいずれかの、カバー部材から最も離れている点(前記点は、圧電アクチュエータに対してカバー部材の反対側にある)
〇 支持構造上の、カバー部材から最も離れている点、又は
〇 レンズ本体(又はレンズ本体の後窓)の、カバー部材から最も離れている点
光軸に直交し、以下を含む平面までの距離
- 1以上の圧電アクチュエータ(選択的に電気接点素子を含む)上の、カバー部材から最も離れている点
【0066】
一実施形態において光学素子が開示され、ここで、支持構造の内縁は、外接する正方形又は外接する長方形が提供され得る開口部を定義し、光軸に平行な方向から観察したときの第1線及び第2線は、以下の位置において交差し、又は平行でありかつ一致する。
a.外接する正方形又は外接する長方形の最も近い辺の中心
から
b.外接する正方形又は外接する長方形の最も近い辺への前記位置への投影
までの距離が、
外接する正方形又は外接する長方形の辺長の半分の[10;90]%の範囲内、例えば、外接する正方形又は外接する長方形の辺長の半分の[15;85]%の範囲内、[20;80]%の範囲内、[25;75]%の範囲内、[30;70]%の範囲内、[40;60]%の範囲内、[45;60]%の範囲内、[50;55]%の範囲内などである位置。この実施形態により得られる利点は、光学レンズのジオプトリの範囲全体にわたって、例えば、特定の平均全WFERMS、比較的小さい(又は最も小さい)特定の平均全WFERMS(前記距離が前記範囲外にある対応する光学要素の場合、「比較的」は全WFERMSに関する場合など)などの、特定の平均全WFERMSを達成することである。
【0067】
一実施形態において光学素子が開示され、ここで、1以上の圧電アクチュエータは、例えば光学活性領域を取り囲むか又は囲むように配置されるなど、光学活性領域を定義する。一実施形態において、光学レンズである光学素子が開示され、光軸は変形可能な透明レンズ本体及びカバー部材と交差する。一実施形態において、光学レンズである光学素子が開示され、前記少なくとも1の変形可能な透明レンズ本体は、例えば、固体ポリマーからなる変形可能な透明レンズ本体など、固体ポリマーなどのポリマーを含む。前記少なくとも1の変形可能な透明レンズ本体が、固体ポリマーなどのポリマーを含むことは、前記少なくとも1の変形可能な透明レンズ本体が少なくとも10wt%(重量パーセント)、例えば、少なくとも25wt%、少なくとも50wt%、少なくとも75wt%の固体ポリマーを含むことであると理解することができる。一実施形態において、光学レンズである光学素子が開示され、前記少なくとも1の変形可能な透明レンズ本体は、架橋又は部分架橋ポリマーのポリマーネットワークと混和性オイル又はオイルの組み合わせとを含む。一実施形態において、光学レンズである光学素子が開示され、前記少なくとも1の変形可能な透明レンズ本体は、300Paより大きい弾性率、1.35を超える屈折率、及び厚さ1ミリメートル当たり10%より小さい可視範囲における吸光度を有していてもよい。
【0068】
一実施形態において光学素子が提供され、ここで、光学アパーチャなどの光学活性領域の直径は、10mm以下、例えば、7.5mm以下、5mm以下([0.5;4.0]mmなど)、2.5mm以下([2.0~2.4]mmなど)、1.9mm以下、1.55mm以下、1mm以下などである。直径が小さいことにより得られる利点は、最終アプリケーションデバイス(カメラなど)の非常に小さな領域を使用し、及び/又は小さいサイズが、追加機能(3Dイメージングなど)のために複数の位置に設置できるようにする光学レンズを提供することができることである。
【0069】
一実施形態において光学素子が開示され、ここで、前記光学活性領域の直径は、1mm以上、例えば、1.55mm以上、1.9mm以上、2mm以上、2.5mm以上などである。大きい直径を有することで得られる利点は、それによって大量の光を提供することを可能にすることである。
【0070】
一実施形態において光学素子が開示され、ここで、前記1以上の圧電アクチュエータ及び前記屈曲可能なカバー部材は、例えば、5ジオプトリの範囲全体、10ジオプトリの範囲全体、13ジオプトリの範囲全体(例えば、[-3;+10]ジオプトリの範囲全体)、28ジオプトリの範囲全体、30ジオプトリの範囲全体(例えば、[-4;+26]ジオプトリ)、54ジオプトリの範囲全体(例えば、[-4;+50]ジオプトリ)などにわたって、前記1以上の圧電アクチュエータが駆動時に前記屈曲可能なカバー部材を直接変形させるように配置される。「直接」とは、例えば、1以上のアクチュエータが屈曲可能なカバー部材に対して配置されているため、屈曲可能なカバー部材の変形が非圧縮要素(流体など)などの第3の要素に依存しないことであると理解することができ、例えば、US2010/182703A1を引用することができ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0071】
一実施形態において光学素子が開示され、ここで、屈曲可能なカバー部材が側壁の内縁を越えて延びる。光学素子が光学レンズである場合、側壁の内縁は、変形可能なレンズ本体に面する側壁の表面などの側壁の表面に対応することを理解されたい。言い換えれば、屈曲可能なカバー部材は、光軸(及び選択的に、変形可能なレンズ本体)に面する側壁の表面など、側壁の表面よりも光軸からさらに離れて延びる。これによって得られる利点は、1以上の圧電アクチュエータが片持ち梁の原理を利用し、それによってアクチュエータが存在しない、例えばアパーチャなどの光学活性領域においても最大曲率半径を増幅させることができるように、1以上の圧電アクチュエータを配置することが可能になることである。
【0072】
一実施形態において光学素子が開示され、ここで、屈曲可能なカバー部材は、少なくとも10GPa、例えば10~100GPa、20~60GPaのヤング率を有する材料からなるなど、それを含む。これの利点は、1以上の圧電アクチュエータがアパーチャなどの光学活性領域を定義することを可能にするか、又は促進する一方で、1以上の圧電アクチュエータを有するアパーチャ(圧電アクチュエータは存在しないが)などの光学活性領域でカバー部材を成形することが可能なことである。
【0073】
屈曲可能なカバー部材は、(光学要素が光学レンズである場合)屈曲可能な透明カバー部材であってもよく、より具体的には、以下の通りであってもよい。
- 光の透過率が98%以上であり、及び/又は
- 応力が20Mpa以下である。
これは、例えば、屈曲可能な透明カバー部材がガラスで作製されている場合に実現され得る。
【0074】
一実施形態において光学素子が開示され、ここで、1以上の圧電アクチュエータが以下の材料を含む
- 横方向のピエゾ係数(│d31│)が、数値的に20pC/N以上であり、例えば好ましくは数値的に50pC/N以上であり、例えば好ましくは数値的に100pC/N以上であり、例えば負でありかつ数値的に100pC/N以上であり、例えば好ましくは200pC/N以上であり、
及び/又は
- 縦方向のピエゾ係数(│d33│)が、数値的に20pC/N以上であり、例えば好ましくは数値的に50pC/N以上であり、例えば数値的に100pC/N以上であり、例えば正でありかつ数値的に100pC/N以上であり、例えば<200pC/N以上である。
「数値的に」とは、絶対値、例えば、-250が範囲]-250;+250[内のどの数値よりも数値的に大きいことであると理解される。一実施形態において、材料は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)などの強誘電性材料であるように選択される。これの利点は、この材料の大きな圧電駆動効果である。
【0075】
一実施形態において光学レンズが開示され、ここで、1以上の圧電アクチュエータを駆動させることにより、倍率を、例えば、3ジオプトリ以上、4ジオプトリ以上、5ジオプトリ以上、6ジオプトリ以上、7.5ジオプトリ以上、10ジオプトリ以上、12.5ジオプトリ以上、14ジオプトリ以上、16ジオプトリ以上、20ジオプトリ以上など、2ジオプトリを超える全範囲、例えば、[-10;+20]ジオプトリの範囲全体、28ジオプトリの範囲全体、30ジオプトリ([-4;+26]ジオプトリなど)の範囲全体、54ジオプトリ([-4;+50]ジオプトリ)の範囲全体にわたって、調整可能である。一般に、及ぶ範囲は、0ジオプトリの倍率、例えば、0~5ジオプトリ、0~6ジオプトリ以上、0~7.5ジオプトリ以上、0~10ジオプトリ以上、0~12.5ジオプトリ以上、0~14ジオプトリ、0~16ジオプトリ、0~20ジオプトリ、例えば、28ジオプトリの範囲全体、30ジオプトリ([-4;+26]ジオプトリなど)の範囲全体、54ジオプトリ([-4;+50]ジオプトリなど)の範囲全体にわたる倍率を含み得る。及ぶ範囲は、0ジオプトリの倍率及びゼロの両側の範囲、例えば、±2.5の範囲(すなわち、-2.5ジオプトリから+2.5ジオプトリまで)、±6ジオプトリ以上、±7.5ジオプトリ以上、±10ジオプトリ以上、±12.5ジオプトリ以上、±14ジオプトリ以上、±16ジオプトリ以上、±20ジオプトリ以上、[-4;+26]ジオプトリ、[-4;+50]ジオプトリなどの範囲を含み得る。
【0076】
本発明の第2態様によれば、先行する請求項のいずれかに記載の光学素子を製造するための方法が開示され、前記方法は、以下を含む:
- 堆積によって前記屈曲可能なカバー部材の上に前記1以上の圧電アクチュエータを提供する。
この実施形態により得られる利点は、本発明の光学レンズが第1及び第2線の関係を採用し、この関係は、第2線の特定の形状を実施することで満たすことができ、この形状は、製造中に適切な蒸着マスク及び/又は適切なエッチングマスクを実施するだけで実現することができることである。
【0077】
本発明の第3態様によれば、以下を含むカメラが提供される
a.第1態様による光学素子、又は
b.第2態様によって製造された光学素子。
より一般的な実施形態においては、以下を含む光学デバイスが提供される
a.第1態様による光学素子、又は
b.第2態様によって製造された光学素子、
ここで、前記光学デバイスは、スキャナー、カメラ、可変光学チューナー又は減衰器、虹彩、光学像安定化(OIS)ユニット、ズームレンズ、広角レンズ、バーコードリーダー、内視鏡、プロジェクター、又は所望の効果(イメージングなど)を作るために光が編成されているデバイスからなる群から選択されるいずれかの光学デバイスであってもよい。
【0078】
本発明の第4態様によると、以下の使用が提供される
a.第1態様による光学素子、又は
b.第2態様によって製造された光学素子、
1以上の画像を取得するためのもの。
代替的な実施形態において、光学要素は、バーコード及び/又は網膜などの識別マークをスキャンするため、又は特定の波長の光を減衰させるために使用されてもよい。
【0079】
本発明の第1、第2、第3及び第4の態様のそれぞれは、他のいずれかの態様と組み合わせることができる。本発明のこれら及び他の態様は、以下に記載される実施形態を参照して明白になりかつ説明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0080】
本発明による光学素子、方法、光学デバイス及び使用を添付の図面に関してさらに詳細に説明する。図面は、本発明を実施する一方法を示しており、添付の特許請求の範囲内に含まれる他の可能な実施形態に限定されるものとして解釈されるべきではない。
【0081】
図1】一実施形態による光学レンズの斜視図である。
図2】複数の実施形態の概略上面図である。
図3】複数の実施形態に関する全WFERMSを示すグラフである。
図4】複数の実施形態に関するテトラフォイルWFEを示すグラフである。
図5】光学レンズを有する実施形態の側面図である。
図6】光学レンズを有する実施形態の側面図である。
図7】反射素子を有する実施形態の側面図である。
図8】実施例Aの概略上面図である。
図9】寸法が付された実施例Aの概略上面図である。
図10】実施形態Bの概略上面図である。
図11】寸法が付された実施形態Bの概略上面図である。
図12】実施形態Cの概略上面図である。
図13】寸法が付された実施形態Cの概略上面図である。
図14】実施形態Dの概略上面図である。
図15】寸法が付された実施形態Dの概略上面図である。
図16】実施例Eの概略上面図である。
図17】寸法が付された実施例Eの概略上面図である。
図18】実施形態Cの変形例の概略上面図である。
図19】実施形態Dの変形例の概略上面図である。
図20】実施形態Eの変形例の概略上面図である。
図21】複数の実施例及び実施形態(実施例A及びD並びに実施形態B-C-D)に関する全WFERMSを示すグラフである。
図22】複数の実施例及び実施形態(実施例A及びD並びに実施形態B-C-D)に関するテトラフォイルWFEを示すグラフである。
図23】複数の実施例及び実施形態(実施例A及びD並びに実施形態B-C-D)に関する屈折力を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0082】
一般に、「上方」、又は「下方」、又は「上部」、又は「下部」という用語を使用する場合のように、方向が暗示される場合、正方向は、支持構造からカバー部材へ光軸に平行な方向に定義されるものと一般に理解される。例えば、カバー部材は、支持構造の上部など、支持構造の上方にある。
【0083】
図1は、光学素子、より具体的には一実施形態による光学レンズの斜視図であり、より具体的には、200~800マイクロメートルの範囲の厚さ122及び100~500マイクロメートルの範囲の幅124を有する(光軸110に面する側壁112を有する)支持構造101、(本実施形態ではガラスである)屈曲可能な透明カバー部材102、(1以上の圧電アクチュエータのための)下部電極103、圧電活性材料104、(1以上の圧電アクチュエータのための)上部電極105である。上方(光軸に平行な方向)から観察したときの1以上の圧電アクチュエータの位置は、下部電極103、圧電活性層104、及び上部電極105の全てが重なる位置によって定義される位置であると理解することができる(なお、これらの位置でのみ圧電活性層を駆動させることができる)。この図はさらに、(本実施形態においてはポリマーである)変形可能な透明レンズ本体107、(レンズ本体107上に配置された)透明後窓106、支持構造101の内側のキャビティ108(このキャビティ108は、光軸110を含み、側壁112によって光軸110から離れる方向に向かっている)、及び下部電極103の表面又は上部電極105の表面に突出している、支持構造101の内縁109(支持構造101と屈曲可能な透明カバー部材102との間の界面)を示している。現在示されている実施形態では、光軸と平行な方向で観察したときの1以上の圧電アクチュエータ103、104、105の外縁(本実施形態では、単一の圧電アクチュエータであり、これは、切り取られた部分のために見えないが、光軸110及び光学アパーチャ111を完全に囲む閉リングを形成する)が第1線を定義し、光軸と平行な方向で観察したときの支持構造101と屈曲可能な透明カバー部材102との間の界面における支持構造の内縁109が第2線を定義し、ここで、第1線及び第2線は、光軸と平行な方向から観察したときに8位置(そのうちの6位置のみを示しているが、残りの2位置は切り取られた部分に存在する)で互いに交差していることが分かる。
【0084】
図2は、一実施例(実施例E)の上面概略図であり、さらに、複数の実施形態(実施形態B、C及びD)及び他の実施例(実施例A)を示す。図(図8図20と同様)は、1/4の光学素子及び1/4の光学アパーチャ(半径114は1.05mmである)を示しており、全幅(半幅116の2倍に相当)は3.7mmである(光軸は紙面に直交する方向で左下角と交差し、残りの3/4は光軸を中心に90°、180°及び270°回転しているが同一)。例えば、下部電極103(図18図20では見えない)、支持構造の内縁109、レンズ本体107の位置の輪郭、透明後窓106の位置の輪郭などの図2のいくつかの特徴(図8図20と同様)は、図1の斜視図の上面図に対応する。図2図18図20と同様)はさらに、(外縁215Eを示す実線及び外縁215A~Dを示す破線で示されるように)可能な複数の異なる第1線を示す。半幅116は、スケールバーと見なすことができ、さらに、抜粋されたものの高さはその幅と同じなので、図は正確な寸法を示していることに留意されたい。
【0085】
図示された実施例Eにおいて、上部電極105は圧電活性層と一致し、上部電極105の外縁215Eも第1線と一致する。図は、外縁215Eがいかなる位置においても第2線109と交差せず、かつ平行でもなく一致もしない(第2線で囲まれた領域の外側であるなど、完全に外側である)ことを示す。
【0086】
図は、上部電極105(及び圧電活性層)及び第1線に対する他の可能なシナリオを(破線215A~Dを通じて)示している。
【0087】
(破線Aを通じて)図示された実施例Aにおいて、上部電極は圧電活性層と一致し、上部電極の外縁215Aも第1線と一致する。図は、外縁215Aがいかなる位置においても第2線109と交差せず、かつ平行でもなく一致もしない(完全に内側にある)ことを示す。
【0088】
(破線B及びCを通じて)図示された実施形態B及びCにおいて、上部電極は圧電活性層と一致し、上部電極の外縁215B及び215Cも第1線と一致する。図は、外縁215B及び215Cがそれぞれ、1/4において2位置(内側及び外側の両方)、すなわち合計8位置で第2線109と交差することを示している。
【0089】
(破線Dを通じて)図示された実施形態Dにおいて、上部電極は圧電活性層と一致し、上部電極の外縁215Dも第1線と一致する。図は、外縁215Dが、1/4において(すなわち、角)1位置(そこ以外は完全に外側)、すなわち合計4位置で第2線109と平行でありかつ一致することを示している。残りの第1線(第2線と平行でなく一致しない第1線など)は、第2線で囲まれた領域の外側にある。
【0090】
また、支持構造の内縁109は、外接する正方形又は外接する長方形が提供され得る開口部を定義し、光軸に平行な方向から観察したときの第1線及び第2線は、以下の位置において交差し、又は平行でありかつ一致することが分かる。
a.外接する正方形の最も近い辺の中心
から
b.外接する正方形の最も近い辺への前記位置への投影
までの距離が、
3つの実施形態に対する外接する正方形の辺長の半分の43%(実施形態B)、54%(実施形態C)及び85%(実施形態D)である位置。
【0091】
図3は、図2に示す実施例A及びE並びに実施形態B~Dに対して、1以上のピエゾ抵抗アクチュエータに印加される電圧(0~40ボルトの範囲)の関数としての全WFERMS(0~80nmの範囲)を示すシミュレーションデータを有するグラフである。
【0092】
より具体的には、実施例A(黒丸を目印にした実線曲線)、実施形態B(黒塗りの三角形を目印にした破線)、実施形態C(白抜きの菱形を目印にした一点鎖線)、実施形態D(十字線を目印にした点線)及び実施例E(黒塗りの正方形を目印にした実線)である。図は、全ての曲線がいくつかの点で低い値のWFERMSを示すが、実施形態B~Dのみが図示の範囲にわたって60nm未満となっていることを示す。
【0093】
図4は、図2に示す実施例A及びE並びに実施形態B~Dに対して、1以上のピエゾ抵抗アクチュエータに印加される電圧(0~40ボルトの範囲)の関数としてのテトラフォイルWFE(-80nm~+60nmの範囲)を示すシミュレーションデータを有するグラフである。より具体的には、実施例A(黒丸を目印にした実線曲線)、実施形態B(黒塗りの三角形を目印にした実線曲線)、実施形態C(白抜きの菱形を目印にした実線曲線)、実施形態D(十字線を目印にした実線曲線)及び実施例E(黒塗りの正方形を目印にした実線)である。図は、すべての実施形態B~Dが10~40ボルトの範囲にわたって実施例A及びEより(絶対的に)下になっていることを示す。テトラフォイルWFEへの寄与が低いことは、本発明の実施形態がなぜ低全WFERMSをもたらすのかを少なくとも部分的に説明することができる。
【0094】
図5及び図6は、(光軸510に面する側壁512を有する)支持構造501、屈曲可能な透明カバー部材502、圧電アクチュエータ504、変形可能な透明レンズ本体507、透明後窓506、支持構造体501の内側のキャビティ508、光軸510、及び光学アパーチャ511を含む光学レンズを有する実施形態500、600の側面図である。
【0095】
図5において、厚さ518は、
支持構造上の、カバー部材から最も離れている点
から
1以上の圧電アクチュエータ(選択的に電気接点素子を含む)上の、カバー部材から最も離れている点
までの距離に対応する。
【0096】
図6において、厚さ618は、
レンズ本体(又はレンズ本体の後窓)の、カバー部材から最も離れている点
から
1以上の圧電アクチュエータ(選択的に電気接点要素を含む)上の、カバー部材から最も離れている点
までの距離に対応する。
【0097】
図7は、反射素子700を有する実施形態の側面図である。反射性実施形態700は、レンズ本体も後窓も存在しないこと、及びカバー部材702が(上側及び/又は下側などの)両側で反射性であって光720は片側又は両側から反射され得ることを除いて、図5図6に示す実施形態500、600と同様である。
【0098】
図8図20のそれぞれにおいて、与えられた寸法(なお、単位なしで与えられている図中の寸法の数字はミリメートルで与えられている)はいずれもスケールバーと見なすことができ、さらに各図の抜粋されたものの高さはその幅と同じなので、図は正確な寸法を示していることにさらに留意されたい。
【0099】
図8は、実施例Aの概略上面図であり、実施例Aのみを示すことを除いて、図2と同様である。
【0100】
図9は、寸法が付された実施例Aの概略上面図である。図は、実施例Aの第1線が直径1.6mmの円形であることを示している。
【0101】
図10は、実施形態Bの概略上面図であり、実施形態Bのみを示すことを除いて、図2と同様である。
【0102】
図11は、寸法が付された実施形態Bの概略上面図である。図は、実施形態Bの第1線が直径1.895mmの円形であることを示している。
【0103】
図12は、実施形態Cの概略上面図であり、実施形態Cのみを示すことを除いて、図2と同様である。
【0104】
図13は、寸法が付された実施形態Cの概略上面図である。図は、実施形態Cの第1線が円形状の丸い角を有する正方形であることを示している。
【0105】
図14は、実施形態Dの概略上面図であり、実施形態Dのみを示すことを除いて、図2と同様である。
【0106】
図15は、寸法が付された実施形態Dの概略上面図である。図は、実施形態Dの第1線が円形状の丸い角を有する正方形であることを示している。
【0107】
図16は、実施例Eの概略上面図であり、実施例Eのみを示すことを除いて、図2と同様である。
【0108】
図17は、寸法が付された実施例Eの概略上面図である。
【0109】
図18は、実施形態Cの変形例の概略上面図である。
【0110】
図19は、実施形態Dの変形例の概略上面図である。
【0111】
図20は、実施形態Eの変形例の概略上面図である。
【0112】
図18図20は、それぞれ実施形態C´、D´及びE´と呼ぶことができる実施形態の上面概略図をそれぞれ示している。これらはそれぞれ、(例えば、図2に下部電極103と図示される)下部電極が圧電活性層を越えて延びていない実施形態C、D及びEのそれぞれの変形に対応するからである。これは、全WFERMSを最小化する効果を変えない。
【0113】
図21は、複数の実施例及び実施形態(実施例A及びD並びに実施形態B-C-D)に関する全WFERMSを示すグラフである。図21は、より広い範囲の電圧(0~50ボルト)にわたることを除いて、図3と同様である。
【0114】
図22は、複数の実施例及び実施形態(実施例A及びD並びに実施形態B-C-D)に関するテトラフォイルWFEを示すグラフである。図22は、より広い範囲の電圧(0~50ボルト)にわたることを除いて、図3と同様である。
【0115】
図23は、複数の実施例及び実施形態(実施例A及びD並びに実施形態B-C-D)に関する屈折力(ジオプトリ[dpt])を示すグラフである。
【0116】
実施形態又は代替的な実施形態E1~E15は、以下の通り開示される。
【0117】
E1.以下を含む光学素子(100、500、600、700):
- 側壁(112、512)を有する支持構造(101、501)、
- 以下に取り付けられた屈曲可能なカバー部材(102、502、702)、
〇 前記側壁(112、512)
- 前記屈曲可能なカバー部材(102、502、702)を所望の形状に成形するように配置された1以上の圧電アクチュエータ(103、104、105)、
ここで、前記光学素子(100、500、600、700)は、光軸(110、510)を有する光学活性領域(111、511)を含み、ここで、
- 前記光軸(110、510)に平行な方向から観察したときの前記1以上の圧電アクチュエータ(103、104、105)の外縁(215A~E)は、第1線を定義し、
- 前記支持構造(101、501)と前記屈曲可能なカバー部材(102、502、702)との間の界面における、前記光軸(110、510)に平行な方向から観察したときの前記支持構造(101、501)の内縁(109)は、第2線を定義し、
ここで、前記光軸(110、510)に平行な方向から観察したときの前記第1線及び前記第2線は、
- 2以上の位置で互いに交差し、及び/又は
- 1以上の位置で平行でありかつ一致する。
【0118】
E2.先行する実施形態のいずれかに記載の光学素子(100、500、600)、ここで、前記光学素子は、以下を含む屈折レンズである:
- 前記支持構造の前記側壁(101、501)によって囲まれた少なくとも1の変形可能な透明レンズ本体(107、507)、
ここで、前記屈曲可能なカバー部材(102、502)は、以下に取り付けられた屈曲可能な透明カバー部材である。
〇 前記少なくとも1の変形可能な透明レンズ本体(107、507)の表面
【0119】
E3.先行する実施形態のいずれかに記載の光学素子(700)、ここで、前記光学素子は反射素子であり、前記屈曲可能なカバー部材(702)は、前記支持構造とは反対側に面する側及び/又は前記支持構造に面する側が反射性である。
【0120】
E4.先行する実施形態のいずれかに記載の光学素子(100、500、600、700)、ここで、前記1以上の圧電アクチュエータ(103、104、105)に印加される40ボルトの範囲全体(例えば、0~40ボルト)、例えば、100ボルトの範囲(例えば、0~100ボルト)にわたる全波面誤差(WFERMS)は60nm以下であり、例えば、50nm、40nm、30nm、25nm、20nmなどである。
【0121】
E5.先行する実施形態のいずれかに記載の光学素子(100、500、600、700)、ここで、5ジオプトリの範囲全体、例えば、10ジオプトリの範囲全体、13ジオプトリの範囲全体などにわたって、全波面誤差(WFERMS)は60nm以下であり、例えば、50nm、40nm、30nm、25nm、20nmなどである。
【0122】
E6.先行する実施形態のいずれかに記載の光学素子(100、500、600、700)、ここで、
- 前記第1及び第2線が交差しないか、又は1以上の位置で平行でありかつ一致する、対応する光学素子のための1以上の圧電アクチュエータ(103、104、105)に印加される40ボルトの範囲全体、例えば、100ボルトの範囲にわたる最大全波面誤差(WFERMS)は、
- 前記光軸(110、510)に平行な方向から観察したときの前記第1線及び前記第2線が
〇 2以上の位置で互いに交差し、及び/又は
1以上の位置で平行でありかつ一致する前記光学素子のための前記1以上の圧電アクチュエータ(103、104、105)に印加される40ボルトの範囲全体、例えば、100ボルトの範囲にわたる最大全波面誤差(WFERMS)より、
少なくとも10%、例えば、20%、30%、40%、50%、100%、250%だけ大きい。
【0123】
E7.先行する実施形態のいずれかに記載の光学素子(100、500、600、700)、ここで、前記支持構造(101、501)の前記内縁(109)は、外接する長方形又は正方形の最小辺長が、2.5mm以上、例えば、2.8mm以上、3.0mm以上、3.5mm以上、3.8mm以上、4.0mm以上、4.5mm以上、5mm、10mmなどになるように開口部を定義する。
【0124】
E8.先行する実施形態のいずれかに記載の光学素子(100、500、600、700)、ここで、前記光学素子の厚さ(518、618)は、1mm以下、例えば、700マイクロメートル以下、500マイクロメートル以下、450マイクロメートル以下、425マイクロメートル以下、400マイクロメートルなどである。
【0125】
E9.先行する実施形態のいずれかに記載の光学素子(100、500、600、700)、ここで、前記支持構造(101、501)の内縁(109)は、外接する正方形が提供され得る開口部を定義し、前記光軸に平行な方向から観察したときの前記第1線及び前記第2線は、以下の位置において交差し、又は平行でありかつ一致する。
a.外接する正方形の最も近い辺の中心
から
b.外接する正方形の最も近い辺への前記位置への投影
までの距離が、
外接する正方形の辺長の半分の[10;90]%の範囲内、例えば、外接する正方形の辺長の半分の[15;85]%の範囲内、[20;80]%の範囲内、[25;75]%の範囲内、[30;70]%の範囲内、[40;60]%の範囲内、[45;60]%の範囲内、[50;55]%の範囲内などである位置。
【0126】
E10.実施形態E2に記載の光学レンズ(100、500、600)、ここで、前記少なくとも1の変形可能な透明レンズ本体は、固体ポリマーなどのポリマーを含む。
【0127】
E11.実施形態E2又はE10に記載の光学レンズ(100、500、600)、ここで、前記少なくとも1の変形可能な透明レンズ本体は、300Paより大きい弾性率、1.35を超える屈折率、及び厚さ1ミリメートル当たり10%より小さい可視範囲における吸光度を有していてもよい。
【0128】
E12.先行する実施形態のいずれかに記載の光学素子(100、500、600、700)、ここで、前記光学活性領域の直径は、10mm以下、例えば、7.5mm以下、5mm以下、2.5mm以下、1.55mm以下、1mm以下などである。
【0129】
E13.先行する実施形態のいずれかに記載の光学素子(100、500、600、700)を製造するための方法、前記方法は、以下を含む:
- 堆積によって前記屈曲可能なカバー部材(102、502、702)の上に前記1以上の圧電アクチュエータ(103、104、105)を提供すること。
【0130】
E14.以下を含むカメラ
a.実施形態E1~E12のいずれかに記載の光学素子(100、500、600、700)、又は
b.E12に従って製造された光学素子(100、500、600、700)。
【0131】
E15.以下の使用であって
a.実施形態E1~E12のいずれかに記載の光学素子(100、500、600、700)、又は
b.E13に従って製造された光学素子(100、500、600、700)、
1以上の画像を取得するためのもの。
【0132】
上記の実施形態、又は代替的な実施形態E1~E15に対して、先述の「実施形態」への言及は、実施形態E1~E15における先述の実施形態を指すことがあることを理解することができる。
【0133】
本発明は特定の実施形態に関連して説明したが、開示された実施例に限定されると解釈されるべきではない。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲に述べられている。特許請求の範囲の文脈において、用語「comprising」又は「comprises」は、他の可能な要素又はステップを除外するものではない。また、「a」又は「an」などのような参照の言及は、複数を除外するものであると解釈されるべきではない。図面に示された要素に関する請求項における参照符号の使用もまた、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。さらに、異なる請求項に記載の個々の特徴は、おそらく有利に組み合わせることができ、異なる請求項におけるこれらの特徴の言及は、特徴の組み合わせができないこと及び有利でないことを除外するものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
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図18
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図20
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