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7377115熱可塑性ポリイミド樹脂とポリイミド樹脂の積層体のエッチング方法
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  • -熱可塑性ポリイミド樹脂とポリイミド樹脂の積層体のエッチング方法 図1
  • -熱可塑性ポリイミド樹脂とポリイミド樹脂の積層体のエッチング方法 図2
  • -熱可塑性ポリイミド樹脂とポリイミド樹脂の積層体のエッチング方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-31
(45)【発行日】2023-11-09
(54)【発明の名称】熱可塑性ポリイミド樹脂とポリイミド樹脂の積層体のエッチング方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/308 20060101AFI20231101BHJP
   C09K 13/02 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
H01L21/308 E
C09K13/02
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020014264
(22)【出願日】2020-01-31
(65)【公開番号】P2021121002
(43)【公開日】2021-08-19
【審査請求日】2022-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
(72)【発明者】
【氏名】後閑 寛彦
(72)【発明者】
【氏名】田邉 昌大
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 隆
(72)【発明者】
【氏名】豊田 裕二
【審査官】小▲高▼ 孔頌
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-039057(JP,A)
【文献】国際公開第2018/230377(WO,A1)
【文献】特開2008-160073(JP,A)
【文献】国際公開第2007/060824(WO,A1)
【文献】特開2013-247348(JP,A)
【文献】特開2009-277753(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/308
C09K 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリイミド樹脂とポリイミド樹脂の積層体をエッチングするエッチング方法において、エッチング液によるエッチング工程及び水洗工程をこの順で2回以上繰り返すことを含み、熱可塑性ポリイミド樹脂とポリイミド樹脂の積層体が熱可塑性ポリイミド樹脂層/ポリイミド樹脂層/熱可塑性ポリイミド樹脂層からなる積層体であり、該エッチング液が第1成分としての25~45質量%のアルカリ金属水酸化物及び第2成分としての10~40質量%のエタノールアミン化合物を含有し、水洗工程における水洗液の温度が70℃以上であることを特徴とするエッチング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性ポリイミド樹脂とポリイミド樹脂の積層体をエッチングするためのエッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミド樹脂は、耐熱性・耐薬品性・電気特性・機械特性・寸法安定性等に優れることから、フレキシブルプリント配線板や、TAB(Tape Automated Bonding)、COF(Chip on film)実装用に使用されるフィルムキャリアの用途に用いられている。これらの用途において、ポリイミド樹脂は金属層と積層された状態で利用されている。ポリイミド樹脂と金属層の積層方法としては(1)ポリイミド樹脂上にスパッタやめっき等により金属層を形成する、(2)金属層上に液状のポリイミド樹脂やポリイミド樹脂の前駆体をコーティングもしくはキャスティングする、(3)ポリイミド樹脂と金属層を接着層で張り合わせる、等の方法が挙げられる。ポリイミド樹脂と金属層の接着に優れ、適用可能な接着層が多い等の理由から(3)の方法が広く利用されている。
【0003】
(3)の方法において使用される接着層には、従来、エポキシ系、アクリル系の接着剤が多用されている。しかし、接着層を原因とした特性の低下を回避するために、接着層として熱可塑性ポリイミド樹脂を使用する場合が増えてきている。
【0004】
熱可塑性ポリイミド樹脂とポリイミド樹脂の積層体としては、関係各社から数多く市販されており、例えば、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製の商品名「エスパネックス(登録商標)」、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社の商品名「ネオフレックス(登録商標)」、宇部興産株式会社の商品名「ユーピレックス(登録商標)VT」等が挙げられる。
【0005】
また、ポリイミド樹脂と金属層との積層体において、ポリイミド樹脂の穴開け等の加工としては、レーザー加工、プラズマ加工、ウェットエッチング加工等の方法が挙げられ、レーザーやプラズマのように特別な装置を必要とせず、生産性が良い等の理由からウェットエッチング加工による方法が広く利用されている。例えば、特開2007-008969号公報(特許文献1)には、ウェットエッチング加工においてアルカリ金属水酸化物、エタノールアミン等を成分とする各種エッチング液によるエッチング方法が開示されている。また、特開2013-082099号公報(特許文献2)には、耐アルカリ基材上にパターン状に形成され、ポリイミド樹脂を含有する絶縁層を有する積層体が開示されていて、絶縁層が熱可塑性層(熱可塑性ポリイミド樹脂層)/非熱可塑性層(ポリイミド樹脂層)/熱可塑性層の3層構造である例が開示されている。また、パターン上に形成され、ポリイミド樹脂を含有する絶縁層として、ポリイミドフィルム上にレジストを形成した後、エッチングによりパターニングしたものが開示されている。
【0006】
しかしながら、熱可塑性ポリイミド樹脂層/ポリイミド樹脂層/熱可塑性ポリイミド樹脂層からなる積層体を、特許文献1及び2記載のエッチング方法で処理した場合、ポリイミド樹脂のエッチング速度と比較して、熱可塑性ポリイミド樹脂のエッチング速度が非常に遅い。図2は、金属層4上の熱可塑性ポリイミド樹脂層2/ポリイミド樹脂層1/熱可塑性ポリイミド樹脂層2からなる積層体を、特許文献1記載のエッチング方法でエッチングした後の断面概略図であるが、金属層4側の熱可塑性ポリイミド樹脂層2の端部とポリイミド樹脂層1の端部に大きなずれが発生してしまい、良好なエッチング形状が得られない場合があった。また、熱可塑性ポリイミド樹脂層2のエッチングが完了しない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2007-008969号公報
【文献】特開2013-082099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
熱可塑性ポリイミド樹脂層/ポリイミド樹脂層/熱可塑性ポリイミド樹脂層からなる積層体をエッチングするエッチング方法において、熱可塑性ポリイミド樹脂とポリイミド樹脂の両方をエッチングすることができ、エッチング後の熱可塑性ポリイミド樹脂層の端部とポリイミド樹脂層の端部に大きなずれが無く、良好なエッチング形状が得られ、熱可塑性ポリイミド樹脂のエッチングも完了することができるエッチング方法を提供することが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、下記手段によって、上記課題を解決できることを見出した。
【0010】
熱可塑性ポリイミド樹脂とポリイミド樹脂の積層体をエッチングするエッチング方法において、エッチング液によるエッチング工程及び水洗工程をこの順で2回以上繰り返すことを含み、熱可塑性ポリイミド樹脂とポリイミド樹脂の積層体が熱可塑性ポリイミド樹脂層/ポリイミド樹脂層/熱可塑性ポリイミド樹脂層からなる積層体であり、該エッチング液が第1成分としての25~45質量%のアルカリ金属水酸化物及び第2成分としての10~40質量%のエタノールアミン化合物を含有し、水洗工程における水洗液の温度が70℃以上であることを特徴とするエッチング方法。

【発明の効果】
【0011】
本発明のエッチング方法により、熱可塑性ポリイミド樹脂層/ポリイミド樹脂層/熱可塑性ポリイミド樹脂層からなる積層体をエッチングするエッチング方法において、熱可塑性ポリイミド樹脂とポリイミド樹脂の両方をエッチングすることができ、エッチング後の熱可塑性ポリイミド樹脂の端部とポリイミド樹脂の端部に大きなずれが無く、良好なエッチング形状が得られ、熱可塑性ポリイミド樹脂のエッチングも完了することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明のエッチング方法の一例を示す断面工程図である。
図2】金属層4上の熱可塑性ポリイミド樹脂層2/ポリイミド樹脂層1/熱可塑性ポリイミド樹脂層2からなる積層体をエッチングした後の断面概略図である(比較例)。
図3】金属層4上の熱可塑性ポリイミド樹脂層2/ポリイミド樹脂層1/熱可塑性ポリイミド樹脂層2からなる積層体をエッチングした後の断面概略図である(本発明)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明を実施するための形態について説明する。
【0014】
以下に、本発明を実施するための形態について説明する。なお、本明細書において、「熱可塑性ポリイミド樹脂とポリイミド樹脂の積層体のエッチング方法」を「エッチング方法」と略記する場合がある。また、「熱可塑性ポリイミド樹脂とポリイミド樹脂の積層体」を「積層体」と略記する場合がある。
【0015】
<ポリイミド樹脂>
本発明に係るポリイミド樹脂は、加熱しても軟化、接着性を示さない非熱可塑性ポリイミドであり、ピロメリット酸無水物と芳香族ジアミンとの反応から製造される、ポリピロメリット酸イミド系ポリイミドやビフェニルテトラカルボン酸二無水物とジアミンから製造されるポリビフェニルテトラカルボン酸系イミドが好ましく用いられる。この非熱可塑性ポリイミドとしては、市販品を用いることができ、例えば米国デュポン社の商品名「カプトン(登録商標)」、株式会社カネカの商品名「アピカル(登録商標)」や宇部興産株式会社の商品名「ユーピレックス(登録商標)」等が挙げられる。
【0016】
<熱可塑性ポリイミド樹脂>
本発明に係る熱可塑性ポリイミド樹脂は、加熱により軟化して接着性を発揮するポリイミドをいう。この熱可塑性ポリイミドとしては、市販品を用いることができ、例えば三井化学株式会社の商品名「オーラム(登録商標)」、株式会社カネカ製の商品名「ピクシオ(登録商標)」等が挙げられる。
【0017】
<熱可塑性ポリイミド樹脂とポリイミド樹脂の積層体>
本発明において、エッチング加工の対象となる熱可塑性ポリイミド樹脂とポリイミド樹脂の積層体は、熱可塑性ポリイミド樹脂層とポリイミド樹脂層を有する積層体である。熱可塑性ポリイミド樹脂層とポリイミド樹脂層を加熱圧着することによって得ることができる。加熱圧着の方法としては、ホットプレス法、ロールプレス法、ラミネート法等が挙げられる。熱可塑性ポリイミド樹脂層とポリイミド樹脂層と一緒に金属層を積層しても良い。金属層としては銅層が一般的である。なお、本発明において、熱可塑性ポリイミド樹脂とポリイミド樹脂の積層体は、熱可塑性ポリイミド樹脂層/ポリイミド樹脂層/熱可塑性ポリイミド樹脂層からなる積層体である。熱可塑性ポリイミド樹脂層/ポリイミド樹脂層/熱可塑性ポリイミド樹脂層からなる積層体は市販品として入手可能である。また、熱可塑性ポリイミド樹脂層とポリイミド樹脂層と熱可塑性ポリイミド樹脂層とを熱圧着することによって、又は、熱可塑性ポリイミド樹脂層/ポリイミド樹脂層からなる積層体と熱可塑性ポリイミド樹脂層とを加熱圧着することによって、得ることもできる。
【0018】
熱可塑性ポリイミド樹脂とポリイミド樹脂の積層体としては、市販品を用いることができ、例えば、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製の商品名「エスパネックス(登録商標)」、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社の商品名「ネオフレックス(登録商標)」、宇部興産株式会社の商品名「ユーピレックス(登録商標)VT」等が挙げられる。
【0019】
<エッチング液>
本発明に係るエッチング液は、熱可塑性ポリイミド樹脂とポリイミド樹脂の積層体用のエッチング液である。
【0020】
本発明に係るエッチング液は、第1成分としての25~45質量%のアルカリ金属水酸化物を含有する。アルカリ金属水酸化物の含有量が25質量%以上である場合、熱可塑性ポリイミド樹脂の溶解性に優れ、アルカリ金属水酸化物の含有量が45質量%以下である場合、アルカリ金属水酸化物の析出が起こり難いことから、液の経時安定性に優れる。アルカリ金属水酸化物の含有量は、より好ましくは30~45質量%である。
【0021】
上記アルカリ金属水酸化物としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム及び水酸化リチウムの群から選ばれる少なくとも1種の化合物が好適に用いられる。アルカリ金属水酸化物として、これらの中の1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0022】
本発明に係るエッチング液は、第2成分としての10~40質量%のエタノールアミン化合物を含有する。エタノールアミン化合物の含有量が10質量%以上である場合、ポリイミド樹脂の溶解性に優れ、40質量%を超える場合、ポリイミド樹脂の溶解性が高くなり過ぎるため、エッチング後の熱可塑性ポリイミド樹脂の端部とポリイミド樹脂の端部のずれが大きくなる。エタノールアミン化合物の含有量は、より好ましくは15~35質量%である。
【0023】
上記エタノールアミン化合物としては、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン等どのような種類でもよく、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。代表的なアミン化合物の一例としては、第一級アミンである2-アミノエタノール;第一級アミンと第二級アミンの混合体(すなわち、一分子内に第一級アミノ基と第二級アミノ基とを有する化合物)である2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール;第二級アミンである2-(メチルアミノ)エタノールや2-(エチルアミノ)エタノール;第三級アミンである2,2′-メチルイミノジエタノール(別名:N-メチル-2,2′-イミノジエタノール)や2-(ジメチルアミノ)エタノール等が挙げられる。中でも、2-アミノエタノール及び2-(2-アミノエチルアミノ)エタノールがより好ましい。
【0024】
本発明に係るエッチング液には、必要に応じてカップリング剤、レベリング剤、着色剤、界面活性剤、消泡剤、有機溶媒等を適宜添加することもできる。有機溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類;セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド系溶媒等が挙げられる。
【0025】
本発明に係るエッチング液は、アルカリ水溶液であることが好ましい。本発明に係るエッチング液に使用される水としては、水道水、工業用水、純水等を用いることができる。このうち純水を使用することが好ましい。本発明では、一般的に工業用に用いられる純水を使用することができる。
【0026】
本発明のエッチング方法において、エッチング液の温度は、好ましくは60~95℃である。熱可塑性ポリイミド樹脂とポリイミド樹脂の種類や厚み、エッチング加工のパターンの形状等により最適温度が異なるが、エッチング液の温度は、より好ましくは70~90℃である。
【0027】
<エッチング方法>
以下に、本発明のエッチング方法について説明する。図1は、本発明のエッチング方法の一例を示す断面工程図である。図1に示したエッチング方法では、金属層4上の熱可塑性ポリイミド樹脂層2/ポリイミド樹脂層1/熱可塑性ポリイミド樹脂層2からなる積層体の一部を除去することによって、熱可塑性ポリイミド樹脂層2/ポリイミド樹脂層1/熱可塑性ポリイミド樹脂層2からなる積層体パターンを形成することができる。
【0028】
工程(I)では、金属層4上の熱可塑性ポリイミド樹脂層2/ポリイミド樹脂層1からなる積層体を準備する。
【0029】
工程(II)では、ポリイミド樹脂層1上に、別の熱可塑性ポリイミド樹脂層2を介してマスク材5を形成する。工程(II)によって、金属層4上に熱可塑性ポリイミド樹脂層2/ポリイミド樹脂層1/熱可塑性ポリイミド樹脂層2からなる積層体3及びマスク材5が形成される。
【0030】
工程(III)では、マスク材5をパターニングし、積層体エッチング用のパターンマスク6を形成する。
【0031】
工程(IV)では、パターンマスク6を介し、本発明のエッチング方法によって、エッチング工程及び水洗工程をこの順で2回以上繰り返し、金属層4が露出するまで、積層体3をエッチングする。
【0032】
工程(V)では、パターンマスク6を除去し、熱可塑性ポリイミド樹脂層2/ポリイミド樹脂層1/熱可塑性ポリイミド樹脂層2からなる積層体3パターンを形成する。形成された積層体3パターンでは、金属層4の一部が積層体3から露出している。
【0033】
本発明のエッチング方法において、エッチング工程には、浸漬処理、パドル処理、スプレー処理、ブラッシング、スクレーピング等の方法を用いることができる。この中でも、浸漬処理が好ましい。
【0034】
マスク材5としては、金属マスクやドライフィルムレジストを使用することができ、これらのマスク材5にパターン形成してパターンマスク6とする。
【0035】
図3は、金属層4上の熱可塑性ポリイミド樹脂層2/ポリイミド樹脂層1/熱可塑性ポリイミド樹脂層2からなる積層体をエッチングした後の断面概略図である。熱可塑性ポリイミド樹脂層2/ポリイミド樹脂層1/熱可塑性ポリイミド樹脂層2からなる積層体3をエッチングするエッチング方法において、上記エッチング液を用いたエッチング工程及び水洗工程をこの順に2回以上繰り返し、水洗工程における水洗液の温度が70℃以上であることによって、図3に示すように、熱可塑性ポリイミド樹脂層2を完全にエッチングすることができ、熱可塑性ポリイミド樹脂層2の端部とポリイミド樹脂層1の端部に大きなずれが無く、良好なエッチング形状の積層体3を形成することができる。水洗水の温度は、より好ましくは、75℃以上である。また、得られる効果が頭打ちとなり、温度を維持するためのエネルギーが増えて不経済であるとの理由から、水洗水の温度は90℃以下であることが好ましい。エッチング工程及び水洗工程が1回の場合、熱可塑性ポリイミド樹脂層2が完全にエッチングできないか、又は、熱可塑性ポリイミド樹脂層2の端部とポリイミド樹脂層1の端部のずれが大きくなる。エッチング工程及び水洗工程の繰り返し回数は、2回以上であれば良く、何回繰り返しても良いが、経済面や装置面を考慮すると、5回以下が好ましく、4回以下がより好ましく、3回以下がさらに好ましく、2回であることが最も好ましい。
【0036】
水洗水としては、水道水、工業用水、純水等を用いることができる。このうち純水を使用することが好ましい。純水は、一般的に工業用に用いられるものを使用することができる。
【0037】
本発明のエッチング方法において、水洗工程には、浸漬処理、パドル処理、スプレー処理、ブラッシング、スクレーピング等の方法を用いることができる。この中でも、浸漬処理が好ましい。
【実施例
【0038】
以下、実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0039】
厚み18μmの銅箔(金属層4)上に、厚さ1.5μmの熱可塑性ポリイミド樹脂層2及び厚さ13μmのポリイミド樹脂層1をこの順で積層し、ホットプレス法によって加熱圧着して接着させて、金属層4上に熱可塑性ポリイミド樹脂層2及びポリイミド樹脂層1からなる積層体を得た。その後、ポリイミド樹脂層1上に、厚さ1.5μmの熱可塑性ポリイミド樹脂層2、厚さ3μmの銅箔(マスク材5)、剥離層及びキャリア箔とがこの順に積層された金属箔を、ポリイミド樹脂層1と熱可塑性ポリイミド樹脂層2が接するように積層し、ホットプレス法によって加熱圧着して接着させて、次に、剥離層とキャリア箔を剥離した。これにより、金属層4上に、熱可塑性ポリイミド樹脂層2/ポリイミド樹脂層1/熱可塑性ポリイミド樹脂層2からなる積層体3及びマスク材5が形成された。マスク材5上にエッチングレジストを形成した後、銅用エッチング液(塩化第二鉄液)を用いてマスク材をエッチングして、パターンマスク6を形成し、パターンマスク6付きの積層体3を準備した。
【0040】
表1に記載した条件(温度:エッチング液又は水洗水の温度、時間:浸漬時間)にて、パターンマスク6付きの積層体3に対し、浸漬方式によるエッチング工程及び浸漬方式による水洗工程を含むエッチングを行った。
【0041】
【表1】
【0042】
エッチング後のポリイミド樹脂層1の端部と熱可塑性ポリイミド樹脂層2の端部のずれから「積層体の形状」を評価した。結果を表1に示した。
【0043】
(積層体の形状)
○:ずれが5μm未満
△:ずれが5~15μmの範囲
×:ずれが15μmを超える
評価不能:熱可塑性ポリイミド樹脂層2が完全にエッチングできず、ずれを測定することができない(熱可塑性ポリイミド樹脂エッチング不良)。
【0044】
表1の結果から判るように、本発明は、比較例と比べて、エッチング後の熱可塑性ポリイミド樹脂層2の端部とポリイミド樹脂層1の端部に大きなずれが無く、良好なエッチング形状の熱可塑性ポリイミド樹脂とポリイミド樹脂の積層体パターンを形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明のエッチング方法では、熱可塑性ポリイミド樹脂とポリイミド樹脂の積層体を含有する、耐熱性、機械強度、耐化学薬品性等に優れた樹脂をエッチング加工することもできる。例えば、多層ビルドアップ配線板、部品内蔵モジュール基板、フリップチップパッケージ基板、パッケージ基板搭載用マザーボード等における樹脂の微細加工に適用できる。
【符号の説明】
【0046】
1 ポリイミド樹脂層
2 熱可塑性ポリイミド樹脂層
3 積層体
4 金属層
5 マスク材
6 パターンマスク
図1
図2
図3