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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-31
(45)【発行日】2023-11-09
(54)【発明の名称】電池制御装置および電池制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20231101BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20231101BHJP
   B60R 16/033 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
H02J7/00 B
H02J7/00 Y
H01M10/48 P
B60R16/033 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020026410
(22)【出願日】2020-02-19
(65)【公開番号】P2021132463
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2022-04-21
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 雄大
(72)【発明者】
【氏名】岡宮 稔
(72)【発明者】
【氏名】加藤 真也
(72)【発明者】
【氏名】宇都宮 大和
(72)【発明者】
【氏名】倉知 大祐
(72)【発明者】
【氏名】長井 友樹
【審査官】清水 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-157369(JP,A)
【文献】特開2010-283922(JP,A)
【文献】特開2012-090404(JP,A)
【文献】国際公開第2011/061811(WO,A1)
【文献】特開2000-30753(JP,A)
【文献】特開2000-125415(JP,A)
【文献】特開2013-106481(JP,A)
【文献】特開2013-119761(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
H01M 10/42 - 10/48
B60R 16/00 - 17/02
G01R 31/36 - 31/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池の劣化状態を検出する劣化検出部と、
前記劣化検出部によって検出された前記電池の劣化状態に基づいて、前記劣化状態が悪くなるほど、前記電池の充電率が前記電池の充放電制御の目標であり、前記充電率が下回ると充電が開始される目標充電率になるときの前記電池の残電荷量が一定になるように、前記目標充電率を大きな値に変更する目標充電率変更部と
を備えることを特徴とする電池制御装置。
【請求項2】
前記電池の電流および前記電池の開回路電圧を検出する検出部と、
前記検出部によって検出された前記電流に基づいて前記電池の充電率を電流積算方式により推定するとともに、前記検出部によって検出された前記開回路電圧が、前記開回路電圧と前記充電率との関係を示す充電特性に基づいて前記充電率を推定可能な領域である場合、電流積算方式により推定された前記充電率を、前記開回路電圧および前記充電特性に基づいて推定される充電率に更新する推定部と
を備え、
前記目標充電率変更部は、
所定のタイミングで、前記開回路電圧が前記充電特性により前記充電率を推定可能な領域になるように、前記目標充電率を変更すること
を特徴とする請求項1に記載の電池制御装置。
【請求項3】
前記電池の劣化状態を示す劣化率が増加するにつれて、推定可能な領域を規定する対応充電率を減少させるように変更する推定可能領域変更部
を備えることを特徴とする請求項2に記載の電池制御装置。
【請求項4】
前記目標充電率変更部によって前記開回路電圧が前記充電特性により前記充電率を推定可能な領域になるように前記目標充電率が変更され、かつ、変更後の前記目標充電率が前記電池において所定の電力を出力可能な充電率未満になる場合、前記電池からの電力を利用する所定制御の実行を禁止する禁止部
を備えることを特徴とする請求項2または3に記載の電池制御装置。
【請求項5】
前記電池は、車両用の電池であり、
前記所定制御は、前記車両に搭載されたエンジンを自動停止および自動再始動させるアイドリングストップ制御であること
を特徴とする請求項4に記載の電池制御装置。
【請求項6】
電池の劣化状態を検出する劣化検出工程と、
前記劣化検出工程によって検出された前記電池の劣化状態に基づいて、前記劣化状態が悪くなるほど、前記電池の充電率が前記電池の充放電制御の目標であり、前記充電率が下回ると充電が開始される目標充電率になるときの前記電池の残電荷量が一定になるように、前記目標充電率を大きな値に変更する目標充電率変更工程と
を含むことを特徴とする電池制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池制御装置および電池制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、HEV(Hybrid Electric Vehicle)やEV(Electric Vehicle)に搭載されるリチウムイオン二次電池(LIB:Lithium-Ion rechargeable Battery)等の充電状態(SOC:State Of Charge)を推定する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。なお、上記したSOCは、例えば電池の充電率である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-283922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来技術においては、電池の充放電制御の基準となる基準充電率が予め設定されている。従来技術では、例えば推定された電池の充電率が基準充電率より低くなった場合、電池に接続された発電機を発電動作させるなどして電池を充電し、充電率を基準充電率に一致させるような充放電制御が行われている。
【0005】
しかしながら、電池は劣化に伴って容量が減少する。そのため、電池の劣化の度合いによっては、充電率が基準充電率となっていても、電池が所期の電力を出力できないおそれがあり、改善の余地があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、電池が劣化した場合であっても所期の電力を出力することができる電池制御装置および電池制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、電池制御装置において、劣化検出部と、基準充電率変更部とを備える。劣化検出部は、電池の劣化状態を検出する。基準充電率変更部は、前記劣化検出部によって検出された前記電池の劣化状態に基づいて、前記電池の残電荷量が一定になるように、前記電池の充放電制御の基準となる基準充電率を変更する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電池が劣化した場合であっても所期の電力を出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A図1Aは、実施形態に係る電池制御装置を含む電池システムの構成例を示すブロック図である。
図1B図1Bは、実施形態に係る電池制御装置が実行する電池制御方法の概要を示す図である。
図1C図1Cは、実施形態に係る電池制御装置が実行する電池制御方法の概要を示す図である。
図2図2は、実施形態に係る電池制御装置を含む電池システムの構成を示すブロック図である。
図3図3は、OCV-SOC特性曲線の一例を示す図である。
図4図4は、変更情報の一例を示す図である。
図5A図5Aは、LIBの状態を示す図である。
図5B図5Bは、LIBの状態を示す図である。
図5C図5Cは、LIBの状態を示す図である。
図6図6は、電池制御装置が実行する処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する電池制御装置および電池制御方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
また、以下では、電池制御装置が、車両に搭載されるリチウムイオン二次電池(以下、LIBと記載する)の制御を行う場合を一例に挙げて説明する。なお、電池制御装置による制御の対象は、車両に搭載されるLIBに限定されず、任意の機器に搭載されるLIBであってもよい。
【0012】
先ず、図1A図1Cを用いて、実施形態に係る電池制御装置の電池制御方法の概要について説明する。図1Aは、実施形態に係る電池制御装置を含む電池システムの構成例を示すブロック図である。
【0013】
図1Aに示すように、電池システム1は、電池パック10と、発電機11と、スタータ12と、鉛バッテリ13と、上位ECU(Electronic Control Unit)100とを含む。電池パック10は、LIB14と、第1スイッチ16と、第2スイッチ17と、電池制御装置20とを備える。
【0014】
このように、電池システム1は、鉛バッテリ13およびLIB14の2つの電池を備える2電源システムである。なお、電池システム1は、電池を二重化した2電源システムに限定されるものではなく、少なくともリチウムイオン二次電池を備える電源システムであれば、電池の数は1つ、あるいは3つ以上であってもよい。
【0015】
発電機11は、エンジンEの回転を動力源として電力を生成する機器である。また、車両の減速時には回生ブレーキによる回生電力を生成する。なお、発電機11は、オルタネータやジェネレータとも呼ばれる。
【0016】
また、発電機11は、例えば上位ECU100や電池制御装置20からの指示に応じて電力を生成してもよい。そして、例えば発電した電力を鉛バッテリ13やLIB14へ供給することで、鉛バッテリ13やLIB14を充電する。
【0017】
スタータ12は、例えば電気モータを備え、エンジンEを始動する始動装置である。なお、図1Aに示す例では、電池システム1がスタータ12と発電機11とを備える構成としたが、例えば、スタータ12および発電機11の代わりに、ISG(Integrated Starter Generator)を備えてもよい。
【0018】
なお、上記したエンジンEは、アイドリングストップ機能を有していてもよい。スタータ12は、エンジンEのアイドリングストップ機能により、エンジンEが自動停止状態となった後、エンジンEを再始動させることができる。
【0019】
鉛バッテリ13は、電極に鉛を用いた二次電池である。なお、鉛バッテリ13は、例えば車両に搭載される電気機器の主要な電源となる。
【0020】
電池パック10のLIB14は、充電または放電を行う二次電池であって、例えば鉛バッテリ13の補助電源となる。なお、LIB14としては、鉄系のLIBを用いることができるが、これに限定されるものではない。また、LIB14は、車両用の電池の一例である。
【0021】
第1スイッチ16および第2スイッチ17は、回路の短絡と開放を制御する開閉器(リレー)である。第1スイッチ16は、鉛バッテリ13と発電機11(またはスタータ12)との間に接続される。第2スイッチ17は、LIB14と発電機11(またはスタータ12)との間に接続される。そして、第1スイッチ16および第2スイッチ17の開閉は、上記した上位ECU100によって制御される。
【0022】
上位ECU100は、電池パック10の上位ECUであり、車両状況等を随時取得し、かかる車両状況等に応じて電池パック10を制御する。例えば、上位ECU100は、車両状況、LIB14の状態に関する情報や鉛バッテリ13の状態に関する情報などを取得する。なお、LIB14の状態に関する情報は、例えば電池制御装置20によって推定されるLIB14の充電状態(SOC:State Of Charge)や後述する基準充電率の情報を含む。上記したSOCは、例えばLIB14の充電率(充電量)である。
【0023】
そして、上位ECU100は、車両状況、LIB14の状態(例えばSOC)や鉛バッテリ13の状態などに基づいて第1スイッチ16や第2スイッチ17を開閉動作させ、鉛バッテリ13およびLIB14の充電や放電を制御する。また、上位ECU100は、車両状況等に応じ、発電機11やスタータ12、図示しない補機など各種の電気機器の動作を制御する。
【0024】
電池制御装置20は、上記したように、LIB14のSOCを推定する処理を実行し、推定されたSOCの情報を上位ECU100へ通知する。
【0025】
また、電池制御装置20もLIB14の充放電制御を行うことができる。ここで、電池制御装置20による充放電制御を含む電池制御方法について図1Bおよび図1Cを参照して詳しく説明する。図1Bおよび図1Cは、実施形態に係る電池制御装置20が実行する電池制御方法の概要を示す図である。
【0026】
先ず図1Bに示すように、電池制御装置20は、基準充電率に基づいて充放電制御を行う。例えば、電池制御装置20は、LIB14のSOCを基準充電率に一致させるように、LIB14の充放電を制御することができる。
【0027】
基準充電率は、LIB14の充放電制御の基準となる充電率であり、予め設定される。基準充電率は、例えば、スタータ12によるエンジンEの再始動や、エンジンEの自動停止中にその他の補機が動作可能となるような所期の電力をLIB14が出力できる値に設定される。なお、基準充電率は、充放電制御における制御中心であり、SOCの目標充電率であるともいえる。
【0028】
従って、例えばSOCが低下し、基準充電率(以下「基準SOC」と記載する場合がある)より低くなると、所期の電力の出力を確保するため、電池制御装置20は、エンジンEを回転させて発電機11(図1A参照)を発電動作させる指示などを、エンジンEや発電機11へ出力する。かかる指示により、発電機11では発電が行われ、その電力がLIB14に充電され、よってSOCは増加して基準SOCに一致あるいは超える値となり、LIB14において所期の電力の出力を確保することが可能になる。
【0029】
なお、図1Bの例では、基準SOCが30%に設定される。また、LIB14のSOC100%時の容量が「10Ah」であるとした場合、SOCが基準SOCの30%のとき、LIB14の残電荷量は「3Ah」である。また、図1Bでは、LIB14の劣化率が0%、すなわち、LIB14が劣化していない状態のときの充電状態を示している。
【0030】
なお、理解の便宜のため、基準SOCやLIB14の容量、劣化率など具体的な数値を挙げて説明するが、これらの数値はあくまでも例示であって限定されるものではない。
【0031】
ところで、LIB14は、劣化に伴って容量が減少する。そのため、LIB14の劣化の度合いによっては、SOCが基準SOCとなっていても、LIB14が所期の電力を出力できないおそれがあった。
【0032】
図1Cを参照しつつ具体的に説明する。図1Cの例では、LIB14の劣化率が20%のときの充電状態を示している。劣化率が20%の場合、言い換えると、LIB14の性能が劣化により80%になった場合、LIB14は、SOC100%であっても、容量が「8Ah」になってしまう。
【0033】
そのため、SOCが基準SOCの30%を維持するように、LIB14の充放電制御が行われても、SOCが30%のときのLIB14の残電荷量は「3Ah」から「2.4Ah」に減少し、LIB14が所期の電力を出力できないおそれがあった。
【0034】
そこで、本実施形態に係る電池制御装置20にあっては、LIB14の劣化に応じて基準SOCを変更するようにした。これにより、電池制御装置20は、LIB14が劣化した場合であっても所期の電力を出力することができる。
【0035】
詳しくは、電池制御装置20は、LIB14の劣化状態を検出する。ここでは、LIB14の劣化状態としてLIB14の劣化率を検出する。かかるLIB14の劣化率の検出については、後述する。
【0036】
そして、電池制御装置20は、検出されたLIB14の劣化状態(LIB14の劣化率)に基づいて、LIB14の残電荷量が一定になるように、基準SOCを変更する。具体的には、基準SOCを「30%」から「37.5%」に変更するようにした。すなわち、LIB14の容量が80%に減少(劣化)したことから、変更前の基準SOC30%を0.8で除算し、基準SOCを37.5%に変更するようにした。
【0037】
これにより、電池制御装置20は、SOCが変更後の基準SOCである「37.5%」となるように充放電制御を行えば、LIB14の残電荷量を、劣化前と同じ「3Ah」にすることができ、LIB14は所期の電力を出力することが可能になる。
【0038】
このように、電池制御装置20は、LIB14の劣化率に基づいて、LIB14の残電荷量が劣化前の電荷量と一定になるように、基準SOCを変更する。これにより、本実施形態にあっては、LIB14が劣化した場合であっても所期の電力を出力することができる。
【0039】
次に、図2を参照して、実施形態に係る電池制御装置20を含む電池システム1の構成について詳しく説明する。図2は、実施形態に係る電池制御装置20を含む電池システム1の構成を示すブロック図である。なお、図2では、本実施形態の特徴を説明するために必要な構成要素のみを機能ブロックで表しており、一般的な構成要素についての記載を省略している。
【0040】
換言すれば、図2に図示される各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。例えば、各機能ブロックの分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することが可能である。
【0041】
図2に示すように、電池システム1は、上記したLIB14と、電池制御装置20と、上位ECU100と、電流センサ61と、電圧センサ62と、温度センサ63と、各種電気機器70と、第1、第2スイッチ16,17とを備える。
【0042】
なお、図2では、図示の簡略化のため、上記した発電機11やスタータ12、例えばナビゲーション装置やオーディオ、エアーコンディショナなど車両に搭載される補機(負荷)を各種電気機器70として1つのブロックで示した。また、図2では、第1スイッチ16および第2スイッチ17を1つのブロックで示している。
【0043】
電流センサ61は、LIB14の充放電電流を計測するセンサである。電圧センサ62は、LIB14の電池電圧を計測するセンサである。温度センサ63は、LIB14の電池温度を測定するセンサである。電流センサ61、電圧センサ62および温度センサ63は、それぞれ計測結果を示す信号を電池制御装置20へ出力する。
【0044】
電池制御装置20は、制御部30と、記憶部40とを備える。制御部30は、検出部31と、推定部32と、充放電制御部33と、劣化検出部34と、基準充電率変更部35と、推定可能領域変更部36と、禁止部37とを備える。
【0045】
制御部30は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、入出力ポートなどを有するコンピュータや各種の回路を含む。
【0046】
コンピュータのCPUは、例えば、ROMに記憶されたプログラムを読み出して実行することによって、制御部30の検出部31、推定部32、充放電制御部33、劣化検出部34、基準充電率変更部35、推定可能領域変更部36および禁止部37として機能する。
【0047】
また、制御部30の検出部31、推定部32、充放電制御部33、劣化検出部34、基準充電率変更部35、推定可能領域変更部36および禁止部37の少なくともいずれか一部または全部をASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアで構成することもできる。
【0048】
また、記憶部40は、例えば、データフラッシュや不揮発性メモリ、レジスタといった記憶デバイスである。記憶部40は、OCV-SOCマップ情報41と、変更情報42とを記憶する。
【0049】
OCV-SOCマップ情報41は、LIB14の開回路電圧(OCV:Open Circuit Voltage)とSOCとの関係を示す充電特性に関する情報を含み、具体的には、OCV-SOC特性曲線に関する情報を含む。なお、OCV-SOC特性曲線は、開回路電圧(OCV)とSOCとの関係を示す充電特性の一例である。また、後述の推定部32は、かかるOCV-SOC特性曲線により、LIB14のOCVからSOCを推定することも可能である。
【0050】
図3は、OCV-SOC特性曲線の一例を示す図である。図3に示すように、OCV-SOC特性曲線は、LIB14を充放電させたときのSOCとOCVの観測値に対して例えば、最小二乗法等によって導出された関数である。
【0051】
ここで、鉄系のLIB14のOCV-SOC特性曲線について詳説する。図3に示すように、OCV-SOC特性曲線においては、SOCが比較的低い領域E1(例えば0%と所定値Aaとの間)で変化するとき、OCVも領域D1(所定値Vaと所定値Vbとの間)で比較的大きく変化する特性を示す。同様に、SOCが比較的高い領域E3(所定値Abと100%との間)で変化するとき、OCVも領域D3(所定値Vcと所定値Vdとの間)で比較的大きく変化する特性を示す。そのため、例えば仮に、領域D1や領域D3にあるOCVに僅かな検出誤差があった場合でも、推定するSOCに対する影響は少なく、SOCを比較的精度良く推定することができる。
【0052】
他方、SOCが領域E1と領域E3の中間の領域E2(所定値Aaと所定値Abとの間)で変化するとき、OCVは領域D1と領域D3の中間の領域D2(所定値Vbと所定値Vcとの間)で比較的小さく変化する特性を示す。このように、OCV-SOC特性曲線には、SOCの変化に対するOCVの変化が緩やかでフラットな領域D2が存在する。そのため、例えば仮に、領域D2にあるOCVに僅かな検出誤差があった場合、SOCが大きく変化するため、SOCを精度良く推定することが難しい。
【0053】
すなわち、鉄系のLIB14のOCV-SOC特性曲線においては、OCVが領域D1や領域D3にある場合、SOCを推定することが可能であり、OCVが領域D2にある場合、精度の点でSOCを推定することが難しい。
【0054】
従って、後述する推定部32では、例えば起動時のLIB14のOCVが領域D1や領域D3などの所定領域にある場合に、LIB14の状態が、OCVを用いてSOCを推定可能な状態であると判定する。また、以下では、領域D1や領域D3などの所定領域を、OCV-SOC特性曲線によりSOCを推定可能な領域(推定可能領域)と記載する場合がある。
【0055】
また、LIB14の劣化状態により、OCV-SOC特性曲線も変化する場合がある。そこで、本実施形態にあっては、LIB14の劣化によるOCV-SOC特性曲線の変化に応じ、SOCを推定可能な領域を変更するようにした。なお、本実施形態にあっては、理解の便宜のため、推定可能領域D1のみをLIB14の劣化状態によって変更する場合を例に挙げるものとする。例えば、推定可能領域D1の上限(ここでは所定値Vb)が、LIB14の劣化に伴って減少していくものとする。そのため、本実施形態においても、劣化による推定可能領域D1の上限の減少に伴って、推定可能領域D1の上限に対応する充電率(SOC。ここでは所定値Aa)を減少させるように変更するようにした。
【0056】
また、以下では、理解を容易にするため、所定値Aaを40%とし、所定値Abを85%とするなど、具体的な数値を入れて説明する場合がある。
【0057】
図2の説明に戻ると、変更情報42は、LIB14の劣化状態に応じて変更する各種の数値に関する情報である。ここで、変更情報42について図4を参照して説明する。
【0058】
図4は、変更情報42の一例を示す図である。図4に示すように、変更情報42には、「基準SOC」、「推定可能領域D1の上限に対応するSOC」、「再始動可能SOC」に関する情報が含まれる。
【0059】
変更情報42の「基準SOC」は、上記したように、LIB14の劣化によって変更する基準SOCに関する情報である。例えば、変更情報42の「基準SOC」には、LIB14の劣化状態が進むにつれて基準SOCを増加させるように変更することを示す情報が含まれる。具体的には、「基準SOC」には、LIB14の劣化率が増加すると、基準SOCを増加させるように変更することを示す情報が含まれる。
【0060】
変更情報42の「推定可能領域D1の上限に対応するSOC」は、上記したように、LIB14の劣化によるOCV-SOC特性曲線の変化に応じて変更する、推定可能領域D1に関する情報である。例えば、変更情報42の「推定可能領域D1の上限に対応するSOC」には、LIB14の劣化状態が進むにつれて、すなわちLIB14の劣化率が増加するにつれて、推定可能領域D1の上限に対応するSOC(図3の所定値Aa参照。以下「推定可能領域対応SOC」と記載する場合がある)を減少させるように変更することを示す情報が含まれる。
【0061】
変更情報42の「再始動可能SOC」は、スタータ12によってエンジンEの再始動を行う際に必要な電力を供給可能なSOCの情報である。すなわち、LIB14のSOCが「再始動可能SOC」以上の場合、スタータ12はLIB14から電力が供給されてエンジンEを再始動することができる。逆に言えば、LIB14のSOCが「再始動可能SOC」未満の場合、スタータ12はLIB14からの電力が不足してエンジンEを再始動することができない。
【0062】
変更情報42の「再始動可能SOC」は、このような再始動可能SOCを変更させる情報である。例えば、変更情報42の「再始動可能SOC」には、LIB14の劣化状態が進むにつれて再始動可能SOCを増加させるように変更することを示す情報が含まれる。具体的には、「再始動可能SOC」には、LIB14の劣化率が増加すると、再始動可能SOCを増加させるように変更することを示す情報が含まれる。
【0063】
なお、再始動可能SOCは、所定の電力を出力可能な充電率の一例である。また、エンジンEの再始動が可能な電力は、所定の電力の一例である。
【0064】
ここで、上記した基準SOC、推定可能領域対応SOC、再始動可能SOCについて図5Aを参照してさらに詳しく説明する。図5Aは、劣化率が0%のときのLIB14の状態を示す図である。なお、図5Aおよび後述する図5B図5Cでは、理解の便宜のため、LIB14の状態を、OCV-SOC特性曲線に重ねて示している。
【0065】
図5Aおよび図4に示すように、劣化率が0%のとき、基準SOC(符号A1で示す)は「30%」、推定可能領域対応SOC(符号B1で示す)は「40%」、再始動可能SOC(符号C1で示す)は「20%」に設定される。
【0066】
なお、図5Aの例では、劣化率が0%のとき、LIB14のSOC100%時の容量が「10Ah」であるため、基準SOCの30%に相当するLIB14の残電荷量は「3Ah」、再始動可能SOCの20%に相当するLIB14の残電荷量は「2Ah」である。
【0067】
図2の説明に戻ると、制御部30の検出部31は、電流センサ61から入力される信号に基づいてLIB14の電流(電流値)を検出する。また、検出部31は、電圧センサ62から入力される信号に基づいてLIB14の電圧(電圧値)を検出する。なお、検出部31は、LIB14の電圧として、上記したOCVを検出することができる。検出部31は、温度センサ63から入力される信号に基づいてLIB14の電池温度を検出する。検出部31は、検出された電流や電圧、電池温度を示す信号を推定部32や充放電制御部33、劣化検出部34などへ出力する。
【0068】
推定部32は、電流積算方式によりSOCを推定する。例えば、推定部32は、起動時のLIB14のOCVと、OCV-SOCマップ情報41のOCV-SOC特性曲線(図3参照)とに基づいて、初期SOCを算出する。
【0069】
そして、推定部32は、算出された初期SOCを初期値として、SOCを推定する。なお、電流積算方式の演算式としては、例えば「SOC(k+1)=SOC(k)+電流積分/FCC」を用いることができる。ここで、kは、離散化した時間のインデックスであり、換言すれば、ステップ数である。また、FCCは、満充電容量と呼ばれる定数である。
【0070】
また、推定部32は、電流積算方式により推定されたSOCを、OCVおよびOCV-SOC特性曲線(図3参照)に基づいて推定されるSOCに更新(補正)することができる。
【0071】
すなわち、上記した電流積算方式によるSOCの推定においては、電流センサ61の測定誤差が蓄積され、かかる測定誤差の蓄積によってSOCの推定にも誤差が生じるなど、SOCの推定精度が低下していくおそれがある。そのため、推定部32は、電流積算方式により推定されたSOCを、OCV-SOC特性曲線により推定されるSOCに更新してもよい。
【0072】
例えば、推定部32は、起動時のLIB14のOCVが、OCV-SOC特性曲線を用いてSOCを推定可能な領域であるか否かを判定する。推定部32は、OCVがOCV-SOC特性曲線を用いてSOCを推定可能と判定された場合、電流積算方式により推定されたSOCを、OCV-SOC特性曲線により推定されるSOCに更新してもよい。推定部32は、推定あるいは更新されたSOCを示す信号を充放電制御部33などへ出力する。
【0073】
このように、推定部32は、電流積算方式により推定されたSOCを、OCVを用いて推定されるSOCに更新(補正)することで、SOCの推定精度が電流センサ61の測定誤差の蓄積などに起因して低下していくことを抑制することができる。
【0074】
充放電制御部33は、SOCおよび基準SOCに基づいて充放電制御を行う。例えば、充放電制御部33は、SOCを基準SOCに一致させるように、LIB14の充放電を制御することができる。
【0075】
例えば、充放電制御部33は、SOCが基準SOCより低くなると、エンジンEを回転させて発電機11で発電させたりして、LIB14の充電を行う。また、充放電制御部33は、SOCが基準SOCより高くなると、LIB14から各種電気機器70へ電力を供給させて、LIB14の放電を行う。このように、充放電制御部33は、LIB14のSOCを基準SOCに一致させるような充放電制御を行う。
【0076】
劣化検出部34は、LIB14の劣化状態を検出する。具体的には、劣化検出部34は、LIB14の劣化率を検出する。例えば、劣化検出部34は、LIB14の内部抵抗に基づいてLIB14の劣化率を検出することができる。すなわち、LIB14の内部抵抗は、LIBの劣化に伴って大きくなる。そのため、劣化検出部34は、検出されたLIB14の電流および電圧に基づいて内部抵抗値を算出し、算出された内部抵抗値が大きくなるにつれて増加する劣化率を検出する。劣化検出部34は、検出された劣化率を示す信号を基準充電率変更部35や推定可能領域変更部36へ出力する。
【0077】
なお、上記では、劣化検出部34は、内部抵抗に基づいて劣化率を検出するようにしたが、これに限定されるものではない。すなわち、例えば、劣化検出部34は、LIB14の各種の使用環境条件(例えば使用時間、平均電池温度など)に基づいて劣化率を検出するなど、その他の手法で検出してもよい。
【0078】
基準充電率変更部35は、LIB14の劣化率(LIB14の劣化状態)に基づいて、LIB14の残電荷量が一定になるように、基準SOCを変更する。例えば、基準充電率変更部35は、劣化検出部34で検出された劣化率と、記憶部40の変更情報42(図4参照)とに基づいて、基準SOCを変更する。
【0079】
ここで、図5Bおよび図5Cを参照して、基準充電率変更部35により基準SOCを変更する処理について説明する。図5Bは、劣化率が20%のときのLIB14の状態を示す図であり、図5Cは、劣化率が50%のときのLIB14の状態を示す図である。
【0080】
図5Bに示すように、劣化率が20%の場合、LIB14のSOC100%時の容量が「8Ah」に減少する。そこで、基準充電率変更部35は、LIB14の残電荷量が一定になるように、基準SOC(符号A2で示す)を「30%」から「37.5%」に変更するようにした。
【0081】
これにより、上記した充放電制御部33は、SOCが変更後の基準SOCである「37.5%」となるように充放電制御を行えば、LIB14の残電荷量を、劣化前と同じ「3Ah」にすることができ、LIB14は所期の電力を出力することが可能になる。
【0082】
また、図5Cに示すように、劣化率が50%の場合、LIB14のSOC100%時の容量が「5Ah」に減少する。そこで、基準充電率変更部35は、LIB14の残電荷量が一定になるように、基準SOC(符号A3で示す)を「30%」から「60%」に変更するようにした。
【0083】
これにより、上記した充放電制御部33は、SOCが変更後の基準SOCである「60%」となるように充放電制御を行えば、LIB14の残電荷量を、劣化前と同じ「3Ah」にすることができ、LIB14は所期の電力を出力することが可能になる。
【0084】
なお、基準充電率変更部35は、基準SOCの変更に加え、再始動可能SOCを劣化率に基づいて変更してもよい。例えば、基準充電率変更部35は、劣化率と変更情報42(図4参照)とに基づいて、再始動可能SOCを変更する。
【0085】
図5Bに示すように、劣化率が20%の場合、基準充電率変更部35は、再始動可能SOC(符号C2で示す)を「20%」から「25%」に変更するようにした。また、図5Cに示すように、劣化率が50%の場合、基準充電率変更部35は、再始動可能SOC(符号C3で示す)を「20%」から「40%」に変更するようにした。
【0086】
これにより、上記した充放電制御部33は、SOCが変更後の再始動可能SOCに相当するLIB14の残電荷量を、劣化前と同じ「2Ah」にすることができる。
【0087】
図2の説明に戻ると、推定可能領域変更部36は、LIB14の劣化状態に基づいて、SOCを推定可能な領域D1(図3参照)を変更する。これにより、本実施形態にあっては、推定可能な領域D1を、LIB14の劣化状態により変化するOCV-SOC特性曲線に即した領域に変更することができる。
【0088】
例えば、推定可能領域変更部36は、LIB14の劣化率と、記憶部40の変更情報42(図4参照)とに基づいて、推定可能領域D1を変更する、詳しくは、推定可能領域D1の上限(所定値Vb)に対応するSOC(推定可能領域対応SOC)を変更する。具体的には、推定可能領域変更部36は、LIB14の劣化率が増加するにつれて、推定可能領域対応SOCを減少させるように変更する。
【0089】
これについて図5Bおよび図5Cを参照して説明すると、先ず図5Bに示すように、劣化率が20%の場合、推定可能領域変更部36は、推定可能領域対応SOC(符号B2で示す)を「40%」から「32%」に変更するようにした。なお、ここでの推定可能領域D1の上限は、所定値Vbより低い所定値Vb2である。また、図5Cに示すように、劣化率が50%の場合、推定可能領域変更部36は、推定可能領域対応SOC(符号B3で示す)を「40%」から「20%」に変更するようにした。なお、ここでの推定可能領域D1の上限は、所定値Vb2より低い所定値Vb3である。
【0090】
これにより、本実施形態にあっては、推定可能領域D1の上限に対応するSOC(推定可能領域対応SOC)を、LIB14の劣化状態に即した値にすることができる。
【0091】
ここで、上記したように、鉄系のLIB14のOCV-SOC特性曲線においては、SOCの変化に対するOCVの変化が緩やかでフラットな領域D2が存在し、OCVが領域D2にある場合、精度の点でSOCを推定することが難しい。なお、図5Bなどでは、領域D2に対応するSOCの領域にドットを付している。
【0092】
また、図5Bおよび図5Cに示すように、LIB14の劣化により、基準SOCが変更されたとき、変更後の基準SOCが領域D2に対応するSOC領域に入る場合がある。かる場合、LIB14は、SOCを変更後の基準SOCに一致させるように充放電制御されるため、OCVが推定可能領域D1になりにくく、SOCが更新(補正)されないことがある。
【0093】
そこで、本実施形態に係る基準充電率変更部35は、所定のタイミングで、OCVがOCV-SOC特性曲線によりSOCを推定可能な領域D1になるように、基準SOCを変更するようにした。
【0094】
なお、上記した所定のタイミングは、例えば、電流積算方式によりSOCを推定した期間を示す推定期間が所定期間経過したときや、LIB14の起動時などであるが、これに限定されるものではない。また、所定期間は、例えば電流センサ61の測定誤差の蓄積などによってSOCの推定精度が低下する可能性のある値に設定されるが、これに限られない。
【0095】
例えば、図5Bにあっては、基準充電率変更部35は、基準SOC(符号A2aで示す)が推定可能領域対応SOC:B2以下になるように変更する。これにより、LIB14は、SOCを変更後の基準SOC:A2aに一致させるように充放電制御されるため、OCVが推定可能領域D1になる。そのとき、推定部32は、電流積算方式により推定されたSOCを、OCVを用いて推定されるSOCに更新(補正)する。これにより、本実施形態にあっては、SOCの推定精度が電流センサ61の測定誤差の蓄積などに起因して低下していくことを抑制することができる。
【0096】
また、基準充電率変更部35は、基準SOCを推定可能領域D1に変更する際、推定可能領域対応SOC:B2以下で、かつ、再始動可能SOC:C2以上にしてもよい。これにより、LIB14は、SOCを変更後の基準SOCに一致させるように充放電制御される場合であっても、SOCが「再始動可能SOC」未満になり難く、エンジンEの再始動を行うことができる。
【0097】
但し、図5Cに示すように、LIB14の劣化状態によっては、基準充電率変更部35が、基準SOC:A3aを、推定可能領域対応SOC:B3以下の、推定可能領域D1に変更すると、変更後の基準SOC:A3aが再始動可能SOC:C3未満になる場合がある。
【0098】
かかる場合、LIB14のSOCが再始動可能SOC未満になって、スタータ12はLIB14からの電力が不足してエンジンEを再始動することができないおそれがある。
【0099】
そこで、図2に示す禁止部37は、変更後の基準SOC:A3aが再始動可能SOC:C3未満になる場合、LIB14からの電力を利用する所定制御の実行を禁止するようにした。例えば、禁止部37は、車両に搭載されたエンジンEを自動停止および自動再始動させるアイドリングストップ制御の実行を禁止するようにした。
【0100】
詳しくは、禁止部37は、アイドリングストップ制御におけるエンジンEの自動停止を禁止する禁止信号を上位ECU100へ出力する。上位ECU100は、禁止信号が入力されると、エンジンEの自動停止を行わない。
【0101】
これにより、本実施形態にあっては、変更後の基準SOC:A3aが再始動可能SOC:C3未満になる場合であっても、エンジンEの自動停止が行われないため、エンジンEの再始動ができなくなることもない。
【0102】
なお、上記では、所定制御の例として、アイドリングストップ制御としたが、これに限られず、補機を含む各種電気機器70への通電制御など、その他の制御であってもよい。
【0103】
そして、基準充電率変更部35は、OCVが推定可能領域D1になるように基準SOC変更し、SOCの更新(補正)が行われた後は、変更した基準SOCを、変更前の位置に戻す。
【0104】
次に、図6を用いて実施形態に係る電池制御装置20が実行する処理手順について説明する。図6は、電池制御装置20が実行する処理手順を示すフローチャートである。
【0105】
図6に示すように、電池制御装置20の制御部30は先ず、LIB14の充電率を検出する(ステップS10)。次いで、制御部30は、劣化率に基づいて、基準SOC、推定可能領域D1(正確には、推定可能領域D1の上限に対応するSOC)および再始動可能SOCを変更する(ステップS11)。
【0106】
次いで、制御部30は、電流積算方式によりSOCを推定する(ステップS12)。次いで、制御部30は、SOCの更新タイミングか否かを判定する(ステップS13)。かかる更新タイミングは、LIB14の起動時や、電流積算方式によりSOCを推定した推定期間が所定期間経過した場合などであるが、これらに限定されるものではない。
【0107】
制御部30は、SOCの更新タイミングではないと判定された場合(ステップS13,No)、以降の処理をスキップする。一方、制御部30は、SOCの更新タイミングであると判定された場合(ステップS13,Yes)、OCVを用いてSOCを推定可能な状態であるか否かを判定する(ステップS14)、言い換えると、例えばOCVが領域D1や領域D3など推定可能領域であるか否かを判定する。
【0108】
制御部30は、OCVを用いてSOCを推定可能な状態ではないと判定された場合(ステップS14,No)、OCVが推定可能領域D1になるように、基準SOCを変更する(ステップS15)。
【0109】
次いで、制御部30は、変更後の基準SOCが再始動可能SOC未満か否かを判定する(ステップS16)。制御部30は、変更後の基準SOCが再始動可能SOC未満であると判定された場合(ステップS16,Yes)、アイドリングストップ制御の実行を禁止する(ステップS17)。制御部30は、変更後の基準SOCが再始動可能SOC未満ではないと判定された場合(ステップS16,No)、ステップS17の処理をスキップする。
【0110】
次いで、制御部30は、電流積算方式により推定されたSOCを更新する更新処理を実行する(ステップS18)。また、制御部30は、OCVを用いてSOCを推定可能な状態であると判定された場合も(ステップS14,Yes)、ステップS18に進み、SOCの更新処理を実行する。
【0111】
なお、ステップS18では、例えばステップS15でOCVが推定可能領域D1になるように、基準SOCを変更していた場合、SOCの更新後、基準SOCを変更前の位置に戻す処理も実行する。
【0112】
上述してきたように、実施形態に係る電池制御装置20は、劣化検出部34と、基準充電率変更部35とを備える。劣化検出部34は、LIB14(電池の一例)の劣化状態を検出する。基準充電率変更部35は、劣化検出部34によって検出されたLIB14の劣化状態に基づいて、LIB14の残電荷量が一定になるように、LIB14の充放電制御の基準となる基準充電率(基準SOC)を変更する。これにより、LIB14が劣化した場合であっても所期の電力を出力することができる。
【0113】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0114】
1 電池システム
14 LIB
20 電池制御装置
34 劣化検出部
35 基準充電率変更部
36 推定可能領域変更部
37 禁止部
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6