(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-31
(45)【発行日】2023-11-09
(54)【発明の名称】合成物生産システム
(51)【国際特許分類】
C25B 15/02 20210101AFI20231101BHJP
C25B 1/04 20210101ALI20231101BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20231101BHJP
C25B 15/08 20060101ALI20231101BHJP
C07C 9/04 20060101ALI20231101BHJP
C07C 31/04 20060101ALI20231101BHJP
C07C 43/04 20060101ALI20231101BHJP
C07C 1/12 20060101ALI20231101BHJP
C07C 29/152 20060101ALI20231101BHJP
C07C 41/01 20060101ALI20231101BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20231101BHJP
【FI】
C25B15/02
C25B1/04
C25B9/00 A
C25B15/08 302
C07C9/04
C07C31/04
C07C43/04 D
C07C1/12
C07C29/152
C07C41/01
C07B61/00 C
(21)【出願番号】P 2020026871
(22)【出願日】2020-02-20
【審査請求日】2022-10-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】入江 健一
(72)【発明者】
【氏名】圓島 信也
(72)【発明者】
【氏名】谷岡 忠輝
(72)【発明者】
【氏名】藤田 和徳
(72)【発明者】
【氏名】安藤 喜昌
(72)【発明者】
【氏名】加茂 崇寛
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 龍一
(72)【発明者】
【氏名】堤 淳史
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-109767(JP,A)
【文献】特開2018-008940(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0289227(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 1/00-15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
副生水素ガスを供給するための第1水素供給ラインと、
再生可能エネルギーを用いて生成された水素ガスを供給するための第2水素供給ラインと、
前記第1水素供給ライン及び前記第2水素供給ラインに接続される入口部を有し、前記副生水素ガスと前記水素ガスとのいずれか一方を圧縮して圧縮ガスを生成するように構成された圧縮機と、
前記圧縮ガスに含まれる水素を二酸化炭素と合成することによって合成物を生産するように構成された合成プラントと、
を備える合成物生産システム。
【請求項2】
前記第1水素供給ラインに位置し、前記圧縮機に供給する前記副生水素ガスの量を調整するための第1弁と、
前記第2水素供給ラインに位置し、前記圧縮機に供給する前記水素ガスの量を調整するための第2弁と、
前記第1弁及び前記第2弁を制御するように構成された制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記第1水素供給ラインから前記圧縮機に前記副生水素ガスを供給する第1供給モードと、前記第2水素供給ラインから前記圧縮機に前記水素ガスを供給する第2供給モードとのいずれか一方を選択するように前記第1弁及び前記第2弁の開閉を制御する
請求項1に記載の合成物生産システム。
【請求項3】
前記第2水素供給ラインにおいて前記第2弁より上流側に位置し、前記水素ガスを貯蔵するための貯蔵装置を備え、
前記制御装置は、前記貯蔵装置の前記水素ガスの貯蔵量に基づいて前記第1弁及び前記第2弁を制御するように構成された
請求項2に記載の合成物生産システム。
【請求項4】
前記圧縮ガスの水素成分を精製して、精製したガスを前記合成プラントに供給するように構成された精製装置を備える
請求項1乃至3の何れか一項に記載の合成物生産システム。
【請求項5】
前記圧縮機から前記精製装置を介して前記合成プラントに前記圧縮ガスを導くための第1排出ラインと、
前記圧縮機から前記精製装置をバイパスさせて前記合成プラントに前記圧縮ガスを導くための第2排出ラインと、
を備える請求項4に記載の合成物生産システム。
【請求項6】
前記第1水素供給ラインと前記第2水素供給ラインとが合流し、前記圧縮機に接続される合流部と、
前記圧縮機に接続され、前記第1排出ラインと前記第2排出ラインとに分岐する分岐部と、
を備える請求項5に記載の合成物生産システム。
【請求項7】
前記第1水素供給ラインに位置し、開閉可能な第1弁と、
前記第2水素供給ラインに位置し、開閉可能な第2弁と、
前記第1排出ラインに位置し、開閉可能な第3弁と、
前記第2排出ラインに位置し、開閉可能な第4弁と、
前記第1水素供給ラインから前記圧縮機に前記副生水素ガスを供給する第1供給モードと、前記第2水素供給ラインから前記圧縮機に前記水素ガスを供給する第2供給モードとのいずれか一方を選択するように前記第1弁及び前記第2弁の開閉を制御するように構成された制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記第1供給モードにおいて、前記第3弁が開放状態で前記第4弁が閉鎖状態となるように前記第3弁及び前記第4弁の開閉を制御し、前記第2供給モードにおいて、前記第3弁が閉鎖状態で前記第4弁が開放状態となるように前記第3弁及び前記第4弁の開閉を制御する
請求項5又は6に記載の合成物生産システム。
【請求項8】
二酸化炭素含有ガスから前記二酸化炭素を回収するための二酸化炭素回収装置と、
前記二酸化炭素回収装置が前記二酸化炭素含有ガスから前記二酸化炭素を回収した後のオフガスを利用して発電を行うように構成された発電設備と、
前記オフガスを前記発電設備に供給するための
オフガス供給ラインと、
を備え、
前記第1水素供給ラインは、前記
オフガス供給ラインに接続され
、前記オフガス供給ラインからの前記オフガスを前記副生水素ガスとして前記圧縮機に向けて導くように構成された
請求項1乃至7の何れか一項に記載の合成物生産システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、二酸化炭素と水素の合成物を生産するための合成物生産システムに関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化の防止策として、二酸化炭素を回収して、それを水素と化学反応させて合成物(燃料、化学素材等)の資源として活用することが提案されている。例えば、特許文献1には、水分解によって得られた水素と、発電設備の排ガスから分離した二酸化炭素とを合成し、燃料を生成するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように、水素を水分解によって生成する場合、そのためのエネルギーが必要である。ここで、水分解のエネルギーとして再生可能エネルギーを利用する場合、地球温暖化を防止する目的に適している。しかしながら、再生可能エネルギーは、外部環境によって変動する場合があるため、再生可能エネルギーを利用した水分解によって水素を安定供給することが困難である。また、経済性の観点から、設備の簡素化が求められる。
【0005】
上述の事情に鑑みて、本開示は、合成物生産システムにおいて、水素の安定供給と設備の簡素化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る合成物生産システムは、
副生水素ガスを供給するための第1水素供給ラインと、
再生可能エネルギーを用いて生成された水素ガスを供給するための第2水素供給ラインと、
前記第1水素供給ライン及び前記第2水素供給ラインに接続される入口部を有し、前記副生水素ガスと前記水素ガスとのいずれか一方を圧縮して圧縮ガスを生成するように構成された圧縮機と、
前記圧縮ガスに含まれる水素を二酸化炭素と合成することによって合成物を生産するように構成された合成プラントと、
を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、合成物生産システムにおいて、水素の安定供給と設備の簡素化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態に係る合成物生産システムの構成を概略的に示す図である。
【
図2】一実施形態に係る合成物生産システムの構成を概略的に示す図である。
【
図3】一実施形態に係る合成物生産システムの構成を概略的に示す図である。
【
図4】一実施形態に係る合成物生産システムの構成を概略的に示す図である。
【
図5】一実施形態に係る合成物生産システムの構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0010】
(合成物生産システムの構成)
以下、実施形態に係る合成物生産システム1の構成について説明する。
図1は、一実施形態に係る合成物生産システム1(1A)の構成を概略的に示す図である。
図2は、一実施形態に係る合成物生産システム1(1B)の構成を概略的に示す図である。
図3は、一実施形態に係る合成物生産システム1(1C)の構成を概略的に示す図である。
図4は、一実施形態に係る合成物生産システム1(1D)の構成を概略的に示す図である。
図5は、一実施形態に係る合成物生産システム1(1E)の構成を概略的に示す図である。なお、これらの図において、実線矢印は、流体の流れとその供給ラインを示し、破線矢印は、センサの信号又は制御信号を示している。
【0011】
図1~
図5に示すように、合成物生産システム1(1A、1B、1C、1D、1E)は、合成物を生産するように構成された合成プラント10と、再生可能エネルギーを利用して水素ガスを生成するように構成された水素生成装置20と、を備える。また、合成物生産システム1(1A、1B、1C、1D、1E)は、副生水素ガスを供給するための第1水素供給ライン11と、再生可能エネルギーを用いて生成された水素ガスを供給するための第2水素供給ライン12と、圧縮ガスを生成するように構成された圧縮機13と、を備える。
【0012】
合成プラント10は、圧縮機13からの圧縮ガスに含まれる水素を二酸化炭素と合成することによって合成物を生産する。合成プラント10は、合成物として、メタノール、メタン、及びジメチルエーテルのうち少なくとも1種を生産するように構成される。このような合成物は、燃料や化学素材として利用可能である。また、合成プラント10は、合成物の副産物である水を排水する。
【0013】
副生水素ガスは、例えば、製油所の排ガスやPSA(Pressure Swing Adsorption)装置のオフガス等の副産物として生成される水素を含むガスである。副生水素ガスは、第1水素供給ライン11の上流側に供給される。水素生成装置20が生成した水素ガスは、第2水素供給ライン12の上流側に供給される。水素生成装置20が生成する水素ガスは高純度の水素ガスであるのに対し、副生水素ガスは低純度の水素ガスであってもよい。
【0014】
水素生成装置20は、再生可能エネルギーを利用した発電設備からの電力供給を受けて、水電解によって水素ガスを生成する。なお、水素生成装置20は、水電解以外の方法によって水素ガスを生成するように構成されてもよい。例えば、水素生成装置20は、再生可能エネルギーを利用した発電設備からの電力供給を受けて、PSA法によって水素含有ガスから水素ガスを生成してもよいし、他の方法によって水素ガスを生成してもよい。
【0015】
圧縮機13は、第1水素供給ライン11及び第2水素供給ライン12の下流側に接続される入口部を有する。圧縮機13は、副生水素ガスと水素ガスとのいずれか一方を圧縮して圧縮ガスを生成する。なお、「副生水素ガスと水素ガスとのいずれか一方を圧縮」とは、両者を異なる時間帯に分けて圧縮することを意味する。すなわち、圧縮機13は、両者を圧縮可能となるように第1水素供給ライン11及び第2水素供給ライン12に接続される。
【0016】
幾つかの実施形態では、合成物生産システム1(1A、1B、1C、1D、1E)は、例えば、
図1~
図5に示すように、圧縮機13に供給する副生水素ガスの量を調整するための第1弁61と、圧縮機13に供給する水素ガスの量を調整するための第2弁62と、第1弁61及び第2弁62を制御するように構成された制御装置30(30A、30B30C、30D、30E)と、を備える。第1弁61は、第1水素供給ライン11に位置し、第2弁62は、第2水素供給ライン12に位置する。
【0017】
第1弁61及び第2弁62は、流量調整弁であってもよいし、開閉弁であってもよい。制御装置30(30A、30B、30C、30D、30E)は、第1弁61及び第2弁62の開閉制御を実行する構成であってもよい。制御装置30(30A、30B、30C、30D、30E)は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、CPU(Central Processing Unit)等から構成される。
【0018】
幾つかの実施形態では、合成物生産システム1(1C、1E)は、例えば、
図3及び
図5に示すように、第2水素供給ライン12において第2弁62より上流側に位置し、水素ガスを貯蔵するための貯蔵装置80を備える。貯蔵装置80は、例えば、吸蔵合金やタンクを含む。制御装置30(30C、30E)は、貯蔵装置80の水素ガスの貯蔵量に基づいて第1弁61及び第2弁62を制御するように構成される。
【0019】
この場合、合成物生産システム1(1C、1E)は、貯蔵装置80内部の圧力を計測するように構成された圧力センサ72を備えていてもよい。制御装置30(30C、30E)は、圧力センサ72の計測値を取得し、計測値に応じて第1弁61及び第2弁62を制御するように構成されてもよい。なお、制御装置30は、貯蔵装置80の貯蔵量に基づいて制御を実行する構成に限られず、ユーザの手動操作に応じて制御を実行する構成であってもよい。
【0020】
また、合成物生産システム1(1B)は、例えば、
図2に示すように、第2水素供給ライン12を流れる水素ガスの流量を計測するように構成された流量センサ71を備えていてもよい。制御装置30(30B)は、流量センサ71の計測値を取得し、計測値に応じて第1弁61及び第2弁62を制御するように構成されてもよい。
【0021】
幾つかの実施形態では、制御装置30は、第1水素供給ライン11から圧縮機13に副生水素ガスを供給する第1供給モードと、第2水素供給ライン12から圧縮機13に水素ガスを供給する第2供給モードとのいずれか一方を選択するように第1弁61及び第2弁62の開閉を制御してもよい。
【0022】
具体的には、制御装置30は、第1供給モードを選択した場合、第1弁61が開放状態で第2弁62が閉鎖状態となるように第1弁61及び第2弁62の開閉を制御する。また、制御装置30は、第2供給モードを選択した場合、第1弁61が閉鎖状態で第2弁62が開放状態となるように第1弁61及び第2弁62の開閉を制御する。なお、制御装置30の制御は、開閉弁の開閉制御に限られず、流量調整弁の開度を調整して実質的に開閉制御と同じ制御を行ってもよい。
【0023】
制御装置30(30B、30C、30E)は、例えば、
図2、
図3及び
図5に示すように、流量センサ71又は圧力センサ72の計測値が閾値以下である場合には第1供給モードを選択し、計測値が閾値を超えている場合には第2供給モードを選択し、第1弁61及び第2弁62を開閉制御してもよい。
【0024】
幾つかの実施形態では、合成物生産システム1(1A、1B、1C、1D、1E)は、例えば、
図1~
図5に示すように、圧縮機13からの圧縮ガスの水素成分を精製して、精製したガスを合成プラントに供給するように構成された精製装置16を備えていてもよい。
【0025】
幾つかの実施形態では、合成物生産システム1(1C、1E)は、例えば、
図3及び
図5に示すように、圧縮機13から精製装置16を介して合成プラント10に圧縮ガスを導くための第1排出ライン18と、圧縮機13から精製装置16をバイパスさせて合成プラント10に圧縮ガスを導くための第2排出ライン19と、を備える。また、合成物生産システム1(1C、1E)は、第1水素供給ライン11と第2水素供給ライン12とが合流し、圧縮機13に接続される合流部21と、圧縮機13に接続され、第1排出ライン18と第2排出ライン19とに分岐する分岐部22と、を備える。
【0026】
汎用的な圧縮機13は、入口部と出口部とを1つずつ備える構成である。この点、上記構成では、合流部21と入口部を接続して、分岐部22と出口部を接続すればよいため、汎用的な圧縮機13を適用できる。なお、合成物生産システム1は、合流部21及び分岐部22の少なくとも一方を備えていない構成であってもよい。例えば、
図1、
図2及び
図4に示すように、合成物生産システム1(1A、1B、1D)は、合流部21のみを備えている。なお、圧縮機13は、2つの入口部及び出口部を備える構成であってもよい。この場合、合流部21及び分岐部22を省略することも可能である。
【0027】
幾つかの実施形態において、合成物生産システム1(1C、1E)は、例えば、
図3及び
図5に示すように、第1水素供給ライン11に位置し、開閉可能な第1弁61と、第2水素供給ライン12に位置し、開閉可能な第2弁62と、第1排出ライン18に位置し、開閉可能な第3弁63と、第2排出ライン19に位置し、開閉可能な第4弁64と、を備えていてもよい。また、制御装置30(30C、30E)は、第1供給モードと、第2供給モードとのいずれか一方を選択するように第1弁61及び第2弁62の開閉を制御するように構成されてもよい。
【0028】
かかる構成において、制御装置30(30C、30E)は、第1供給モードにおいて、第3弁63が開放状態で第4弁64が閉鎖状態となるように第3弁63及び第4弁64の開閉を制御してもよい。また、制御装置30(30C、30E)は、第2供給モードにおいて、第3弁63が閉鎖状態で第4弁64が開放状態となるように第3弁63及び第4弁64の開閉を制御してもよい。
【0029】
なお、合成物生産システム1は、第1供給モードと第2供給モードに応じて第3弁63及び第4弁64の開閉を制御する構成に限られない。合成物生産システム1は、水素濃度に応じて第3弁63及び第4弁64の開閉を制御する構成であってもよい。例えば、合成物生産システム1は、水素濃度を計測するためのセンサ(不図示)を備え、その計測値に応じて第3弁63及び第4弁64の開閉を制御するように構成されてもよい。
【0030】
水素濃度を計測するためのセンサは、例えば、第1水素供給ライン11に設けられ、第1水素供給ライン11を流れる副生水素ガスの水素濃度を計測してもよい。また、水素濃度を計測するためのセンサは、合流部21と圧縮機13の間に設けられ、圧縮機13に流入する水素含有ガスの水素濃度を計測してもよい。水素濃度を計測するためのセンサは、圧縮機13と分岐部22の間に設けられ、圧縮機13から排出される圧縮ガスの水素濃度を計測してもよい。このような構成においても、合成プラント10に高純度の水素ガスを供給することができる。例えば、計測された水素濃度が閾値より低い場合に、圧縮ガスが精製装置16に供給されるように、第3弁63と第4弁64を制御することができる。
【0031】
幾つかの実施形態において、合成物生産システム1(1B、1C、1D、1E)は、例えば、
図2~
図5に示すように、二酸化炭素含有ガスから二酸化炭素を回収するための二酸化炭素回収装置50と、副生水素ガスを利用して発電を行うように構成された発電設備40と、二酸化炭素回収装置50が二酸化炭素含有ガスから二酸化炭素を回収した後の副生水素ガス(オフガス)を発電設備40に供給するための副生水素供給ライン91と、を備えていてもよい。第1水素供給ライン11の上流側は、副生水素供給ライン91に接続されてもよい。なお、二酸化炭素含有ガスは、二酸化炭素だけでなく水素も含むガスである。
【0032】
幾つかの実施形態において、合成物生産システム1(1A、1B、1C、1D、1E)は、例えば、
図1~
図5に示すように、二酸化炭素ガスを供給するための二酸化炭素供給ライン15と、二酸化炭素ガスを圧縮するための圧縮機14と、二酸化炭素ガスの流量を調整するための第5弁65とを備えていてもよい。圧縮機14と第5弁65は、二酸化炭素供給ライン15に設けられてもよい。二酸化炭素供給ライン15の上流側は二酸化炭素ガスの供給源(例えば、二酸化炭素回収装置50や二酸化炭素ガスを排出するプラント)に接続されてもよい。二酸化炭素供給ライン15の下流側は合成プラント10に接続されてもよい。
【0033】
このような構成において、制御装置30(30A、30B、30C、30D、30E)は、第5弁65を制御して、合成プラント10に導かれる水素の量に応じて、二酸化炭素ガスの供給量を調整してもよい。この場合、合成物の生産において無駄を低減することができる。
【0034】
合成物生産システム1(1A、1B、1C、1D、1E)は、第5弁65を備えていない構成であってもよい。この場合においても、例えば、制御装置30(30A、30B、30C、30D、30E)が二酸化炭素ガスの供給源(例えば、二酸化炭素回収装置50や二酸化炭素ガスを排出するプラント)を制御して、二酸化炭素ガスの供給量を調整することが可能である。
【0035】
幾つかの実施形態において、合成物生産システム1(1A、1B、1C、1D、1E)は、二酸化炭素ガスから二酸化炭素を精製するための精製装置17を備えていてもよい。この場合、合成プラント10に合成物の原料以外(水素と二酸化炭素以外)の不純物が供給されることを低減することができる。なお、二酸化炭素ガスの二酸化炭素の純度が十分に高い場合には、精製装置17が省略されてもよい。
【0036】
幾つかの実施形態において、合成物生産システム1(1D)は、例えば、
図4に示すように、精製装置16は、圧縮機13の下流側ではなく第1水素供給ライン11に設けられてもよい。この場合、副生水素ガスが精製されてから合流部21に供給されるため、第3弁63、第4弁64、第2排出ライン19等の構成を省略しても、高純度の水素ガスを合成プラント10に供給することが可能となる。
【0037】
幾つかの実施形態において、例えば、
図5に示すように、二酸化炭素供給ライン15は、圧入設備100の下流側に接続されてもよい。圧入設備100は、一つ以上の圧縮機(不図示)を備え、二酸化炭素回収装置50が回収した二酸化炭素を圧縮して地層に固定化するための設備である。この場合、圧入設備100によって圧縮済みの二酸化炭素ガスを利用できるため、圧縮機14を省略することができる。
【0038】
また、二酸化炭素供給ライン15は、例えば、
図5において一点鎖線で示すように、圧入設備100の圧縮過程の流路に接続されてもよい。この場合においても、圧入設備100によって圧縮済みの二酸化炭素ガスを利用できるため、圧縮機14を省略することができる。また、二酸化炭素供給ライン15は、例えば、
図5において一点鎖線で示すように、二酸化炭素回収装置50と圧入設備100の間の流路に接続されてもよい。この場合、二酸化炭素回収装置50が回収した二酸化炭素ガスの一部を合成プラント10に供給し、残りの二酸化炭素ガスを地層に固定化させることができる。
【0039】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0040】
(まとめ)
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0041】
(1)本開示の一実施形態に係る合成物生産システム(1)は、
副生水素ガスを供給するための第1水素供給ライン(11)と、
再生可能エネルギーを用いて生成された水素ガスを供給するための第2水素供給ライン(12)と、
前記第1水素供給ライン(11)及び前記第2水素供給ライン(12)に接続される入口部を有し、前記副生水素ガスと前記水素ガスとのいずれか一方を圧縮して圧縮ガスを生成するように構成された圧縮機(13)と、
前記圧縮ガスに含まれる水素を二酸化炭素と合成することによって合成物を生産するように構成された合成プラント(10)と、
を備える。
【0042】
上記(1)に記載の構成によれば、再生可能エネルギーの減少によって生成される水素ガスが減少した場合には、副生水素ガスによって合成物の生産に必要な水素を供給することが可能である。そのため、水素の安定供給が可能となる。また、水素ガスと副生水素ガスの圧縮において、圧縮機(13)を共用するため、設備の簡素化が可能となる。
【0043】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載の構成において、前記合成物生産システム(1)は、
前記第1水素供給ライン(11)に位置し、前記圧縮機(13)に供給する前記副生水素ガスの量を調整するための第1弁(61)と、
前記第2水素供給ライン(12)に位置し、前記圧縮機(13)に供給する前記水素ガスの量を調整するための第2弁(62)と、
前記第1弁(61)及び前記第2弁(62)を制御するように構成された制御装置(30)と、
を備え、
前記制御装置(30)は、前記第1水素供給ライン(11)から前記圧縮機(13)に前記副生水素ガスを供給する第1供給モード(11)と、前記第2水素供給ライン(12)から前記圧縮機(13)に前記水素ガスを供給する第2供給モードとのいずれか一方を選択するように前記第1弁(61)及び前記第2弁(62)の開閉を制御する。
【0044】
上記(2)に記載の構成によれば、副生水素ガスの量と水素ガスの量とを制御装置(30)によって制御することにより、副生水素ガスの圧縮と水素ガスの圧縮とを一つの圧縮機(13)で実現することができる。また、副生水素ガスと水素ガスが混合しにくいため、副生水素ガスと水素ガスの成分が異なる場合に有利である。例えば、水素濃度が低い副生水素ガスか水素濃度が高い水素ガスかによって異なる処理を適用することが可能となる。
【0045】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)に記載の構成において、前記合成物生産システム(1)は、
前記第2水素供給ライン(12)において前記第2弁(62)より上流側に位置し、前記水素ガスを貯蔵するための貯蔵装置(80)を備え、
前記制御装置(30)は、前記貯蔵装置(80)の前記水素ガスの貯蔵量に基づいて前記第1弁(61)及び前記第2弁(62)を制御するように構成される。
【0046】
上記(3)に記載の構成によれば、水素ガスの貯蔵量に応じて副生水素ガスの供給量を調整することにより、水素ガスの供給量が変動しても、水素の供給量の安定化を図ることが可能となる。
【0047】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れか一つに記載の構成において、前記合成物生産システム(1)は、
前記圧縮ガスの水素成分を精製して、精製したガスを前記合成プラント(10)に供給するように構成された精製装置(16)を備える。
【0048】
上記(4)に記載の構成によれば、圧縮機(13)に供給された水素含有ガスに水素以外の不純物が含まれている場合においても、精製装置(16)によって水素成分を精製したガスを合成プラント(10)に供給することができる。例えば、不純物が含まれる副生水素含有ガスが圧縮機に供給された場合にも高純度の水素ガスを合成プラント(10)に供給することができる。
【0049】
(5)幾つかの実施形態では、上記(4)に記載の構成において、前記合成物生産システム(1)は、
前記圧縮機(13)から前記精製装置(16)を介して前記合成プラントに前記圧縮ガスを導くための第1排出ライン(18)と、
前記圧縮機(13)から前記精製装置(16)をバイパスさせて前記合成プラント(10)に前記圧縮ガスを導くための第2排出ライン(19)と、
を備える。
【0050】
上記(5)に記載の構成によれば、圧縮機(13)に供給されたガスが高純度の水素ガスである場合に、第2排出ライン(19)によって精製装置(16)をバイパスして水素ガスを合成プラント(10)に供給することができる。この場合、精製装置(16)に必要なエネルギーを低減できる。
【0051】
(6)幾つかの実施形態では、上記(5)に記載の構成において、前記合成物生産システム(1)は、
前記第1水素供給ライン(11)と前記第2水素供給ライン(12)とが合流し、前記圧縮機(13)に接続される合流部(21)と、
前記圧縮機(13)に接続され、前記第1排出ライン(18)と前記第2排出ライン(19)とに分岐する分岐部(22)と、
を備える。
【0052】
汎用的な圧縮機は、入口部と出口部とを1つずつ備える構成である。この点、上記(6)に記載の構成によれば、圧縮機(13)の入口部と合流部(21)を接続し、圧縮機(13)の出口部と分岐部(22)を接続することが可能となる。この場合、圧縮機(13)は、2つの入口部(第1水素供給ライン(11)に接続される入口部と第2水素供給ライン(12)に接続される入口部)と、2つの出口部(第1排出ライン(18)に接続される出口部と第2排出ライン(19)に接続される出口部)を備える必要がない。そのため、汎用的な圧縮機(13)を用いて合成物生産システム(1)を構築することができる。
【0053】
(7)幾つかの実施形態では、上記(5)又は(6)に記載の構成において、前記合成物生産システム(1)は、
前記第1水素供給ライン(11)に位置し、開閉可能な第1弁(61)と、
前記第2水素供給ライン(12)に位置し、開閉可能な第2弁(62)と、
前記第1排出ライン(18)に位置し、開閉可能な第3弁(63)と、
前記第2排出ライン(19)に位置し、開閉可能な第4弁(64)と、
前記第1水素供給ライン(11)から前記圧縮機(13)に前記副生水素ガスを供給する第1供給モードと、前記第2水素供給ライン(12)から前記圧縮機(13)に前記水素ガスを供給する第2供給モードとのいずれか一方を選択するように前記第1弁(61)及び前記第2弁(62)の開閉を制御するように構成された制御装置(30)と、
を備え、
前記制御装置(30)は、前記第1供給モードにおいて、前記第3弁(63)が開放状態で前記第4弁(64)が閉鎖状態となるように前記第3弁(63)及び前記第4弁(64)の開閉を制御し、前記第2供給モードにおいて、前記第3弁(63)が閉鎖状態で前記第4弁(64)が開放状態となるように前記第3弁(63)及び前記第4弁(64)の開閉を制御する。
【0054】
上記(7)に記載の構成によれば、圧縮機(13)に副生水素ガスが供給される場合には、その圧縮ガスに対して精製装置(16)による精製処理がなされるため、合成プラント(10)に高純度の水素ガスを供給することができる。圧縮機(13)に水素ガスが供給される場合には、その圧縮ガスに対して精製装置(16)による精製処理がバイパスされるため、精製処理の負担を軽減することができる。
【0055】
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(7)の何れか一項に記載の構成において、前記合成物生産システム(1)は、
二酸化炭素含有ガスから二酸化炭素を回収するための二酸化炭素回収装置(50)と、
前記副生水素ガスを利用して発電を行うように構成された発電設備(40)と、
前記二酸化炭素回収装置(50)が前記二酸化炭素含有ガスから前記二酸化炭素を回収した後の前記副生水素ガスを前記発電設備(40)に供給するための副生水素供給ライン(91)と、
を備え、
前記第1水素供給ライン(11)は、前記副生水素供給ライン(91)に接続される。
【0056】
上記(8)に記載の構成によれば、発電設備(40)に供給される副生水素ガスの一部を第1水素供給ライン(11)に流入させることができる。そのため、合成物の生産に必要な分だけ副生水素ガスを第1水素供給ライン(11)に導き、合成物の生産に不要な副生水素ガスについては発電設備(40)に導くことができる。その結果、二酸化炭素回収装置(50)から排出される副生水素ガスを無駄なく利用することが可能となる。また、二酸化炭素回収装置(50)の稼働率を向上させることができる。
【符号の説明】
【0057】
1 合成物生産システム
10 合成プラント
11 第1水素供給ライン
12 第2水素供給ライン
13,14 圧縮機
15 二酸化炭素供給ライン
16,17 精製装置
18 第1排出ライン
19 第2排出ライン
20 水素生成装置
21 合流部
22 分岐部
30 制御装置
40 発電設備
50 二酸化炭素回収装置
61 第1弁
62 第2弁
63 第3弁
64 第4弁
65 第5弁
71 流量センサ
72 圧力センサ
80 貯蔵装置
91 副生水素供給ライン