(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-31
(45)【発行日】2023-11-09
(54)【発明の名称】ポリプロピレン系樹脂組成物及びそれを用いた成形体
(51)【国際特許分類】
B60R 13/04 20060101AFI20231101BHJP
C08L 53/00 20060101ALI20231101BHJP
C08L 23/08 20060101ALI20231101BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20231101BHJP
C08K 5/20 20060101ALI20231101BHJP
C08K 5/3435 20060101ALI20231101BHJP
C08K 3/34 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
B60R13/04 Z
C08L53/00
C08L23/08
C08K3/013
C08K5/20
C08K5/3435
C08K3/34
(21)【出願番号】P 2020027498
(22)【出願日】2020-02-20
【審査請求日】2023-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】596133485
【氏名又は名称】日本ポリプロ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100203035
【氏名又は名称】五味渕 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【氏名又は名称】今藤 敏和
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】大場 信毅
(72)【発明者】
【氏名】岡田 泰史
(72)【発明者】
【氏名】一原 洋平
【審査官】池田 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-75209(JP,A)
【文献】特開2015-193697(JP,A)
【文献】特開2016-156008(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101659767(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 13/04
C08L 1/00 -101/14
C08K 3/00 - 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の条件(A-1)~(A-4)を満足する成分(A)と、下記の条件(B-1)~(B-3)を満足する成分(B)と、下記の条件(C-1)を満足する成分(C)と、下記の条件(D-1)を満足する成分(D)と、下記の条件(E-1)を満足する成分(E)と、下記の条件(F-1)を満足する成分(F)とを含有し、かつ下記の条件(ア)及び条件(イ)を満足することを特徴とする自動車外装部品用ポリプロピレン系樹脂組成物。
条件(A-1)
成分(A)は、プロピレン単独重合体部分(A1)とエチレン-プロピレン共重合体部分(A2)からなるプロピレン-エチレンブロック共重合体である。
条件(A-2)
成分(A)全体のメルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg荷重)は55~70g/10分である。
条件(A-3)
エチレン-プロピレン共重合体部分(A2)の含有量が10~20重量%である(但し、プロピレン単独重合体部分(A1)とエチレン-プロピレン共重合体部分(A2)との合計が100重量%である)。
条件(A-4)
エチレン-プロピレン共重合体部分(A2)のエチレン重合単位含有量が40~50重量%である(但し、エチレン-プロピレン共重合体部分(A2)中のエチレン重合単位とプロピレン重合単位との合計が100重量%である)。
条件(B-1)
成分(B)はエチレン-α-オレフィンエラストマーであって、α-オレフィンは炭素数4~8のα-オレフィンである。
条件(B-2)
成分(B)のメルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg荷重)は1~10g/10分である。
条件(B-3)
成分(B)の密度は、0.860~0.870g/cm
3である。
条件(C-1)
成分(C)は、無機充填剤である。
条件(D-1)
成分(D)はエチレン-エチルアクリレート共重合体であって、エチルアクリレート重合単位の比率が15~20重量%である(但し、エチレン重合単位とエチルアクリレート重合単位との合計が100重量%である)。
条件(E-1)
成分(E)は、脂肪族アミド及びその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物である。
条件(F-1)
成分(F)はヒンダードアミン系化合物であって、融点が120℃~140℃の化合物である。
条件(ア)
自動車外装部品用ポリプロピレン系樹脂組成物の各成分の含有量が、成分(A)55~65重量%、成分(B)14~17重量%、成分(C)21~28重量%(但し、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計は100重量%である)、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計100重量部に対して成分(D)が2~3重量部、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計100重量部に対して成分(E)が0.5~0.7重量部、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計100重量部に対して成分(F)が0.2~0.5重量部である。
条件(イ)
自動車外装部品用ポリプロピレン系樹脂組成物全体のメルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg荷重)は35~45g/10分である。
【請求項2】
成分(C)が、下記条件(C-2)を更に満足する請求項1に記載の自動車外装部品用ポリプロピレン系樹脂組成物。
条件(C-2)
成分(C)がタルクである。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のポリプロピレン系樹脂組成物を成形してなる自動車外装部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車外装部品用ポリプロピレン系樹脂組成物、およびそのポリプロピレン系樹脂組成物を成形してなる自動車外装部品に関する。さらに詳しくは、良好な射出成型加工性、高い曲げ弾性率、衝撃強度、耐候性、耐傷付き性を有し、高温環境におけるブリードが抑制される自動車外装部品用ポリプロピレン系樹脂組成物、およびそのポリプロピレン系樹脂組成物を成形してなる自動車外装部品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン系樹脂組成物は、物性、成形性及び経済性などに優れた材料として、バンパー、オーバーフェンダーなどの自動車外装部品用途に利用されている。自動車外装部品に用いられるポリプロピレン系樹脂組成物には、従来、意匠性、耐傷つき性向上などのために表面に塗装が施されている。しかしながら、近年は、コスト合理化の観点から、また溶剤規制などの環境問題の観点から、樹脂に直接顔料を入れ着色することにより塗装を施さない、いわゆる原着材料としての使用が広がってきている。
【0003】
例えば、特許文献1では、自動車内外装部品用途に好適なポリプロピレン系樹脂組成物およびそのポリプロピレン系樹脂組成物からなる成形体として、特定のプロピレン系樹脂30~80重量部、特定のエチレン・α-オレフィン共重合体20~50重量部、無機充填材0~40重量部からなる基材成分100重量部に対して、脂肪酸アミド0.2~1重量部、界面活性剤0.2~1重量部を含むポリプロピレン系樹脂組成物およびそのポリプロピレン系樹脂組成物からなる成形体が提案されている。
【0004】
特許文献1には、このポリプロピレン系樹脂組成物およびそのポリプロピレン系樹脂組成物からなる成形体は、射出成型性、剛性、耐衝撃性、耐傷付き性が良好であり、脂肪酸アミドおよび界面活性剤の含有が耐傷つき性改良に効果的であることが記載されているが、自動車外装部品用途の直射日光の当たる高温環境において脂肪酸アミドがブリード白化し外観を損なう場合があること、およびその解決方法については記載されていない。
【0005】
特許文献2では、ポリプロピレン樹脂40~99.9重量%、特定のエチレン・エチルアクリレート共重合体0.5~15重量%、脂肪酸アミドまたはその誘導体0.05~2.5重量%、熱可塑性エラストマー0~35重量%、無機充填材0~35重量%を含有することを特徴とするポリプロピレン樹脂組成物が提案されている。
【0006】
特許文献2には、このポリプロピレン樹脂組成物は、成形性、物性バランス、耐汚れ性に優れており、脂肪酸アミドと特定のエチレン・エチルアクリレート共重合体の組み合わせが耐汚れ性に効果的であることが記載されているが、脂肪酸アミドのブリード白化の課題およびその解決方法については触れられていない。
【0007】
また、特許文献3では、特定のグラフト共重合体50~99重量%と、特定の脂肪酸アミド1~50重量%とからなるグラフト共重合体組成物、およびそのグラフト共重合体組成物1~50重量%と、オレフィン系熱可塑性樹脂50~99重量%とからなる熱可塑性樹脂組成物が提案されている。
【0008】
特許文献3には、このグラフト共重合体組成物、およびそのグラフト共重合体組成物1~50重量%と、オレフィン系熱可塑性樹脂50~99重量%とからなる熱可塑性樹脂組成物は、成形性、耐屈曲性、耐傷付き性、耐摩耗性が良好であり、さらにブリードを抑制して外観を維持することができることが記載されている。しかしながら、直射日光の当たる自動車外装部品用途に耐候性を付与するために配合されるヒンダードアミン系化合物が、高温環境においてブリードし、表面の摩擦係数を上げ、耐傷付き性を悪化させる場合があるが、この文献では、その解決方法について示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】WO2014/046086
【文献】特開2006-321907号公報
【文献】特開2002-338778報公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑み、良好な射出成型加工性、高い曲げ弾性率、衝撃強度、耐候性、耐傷付き性を有し、高温環境におけるブリードが抑制される自動車外装部品用ポリプロピレン系樹脂組成物、およびそのポリプロピレン系樹脂組成物を成形してなる自動車外装部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意研究を重ねた結果、特定のプロピレン-エチレンブロック共重合体に特定のエチレン-α-オレフィンエラストマー、エチレン-エチルアクリレート共重合体、脂肪族アミド又はその誘導体を組み合わせることにより、良好な射出成型加工性、高い曲げ弾性率、衝撃強度、耐候性、耐傷付き性を有し、高温環境におけるブリードが抑制される自動車外装部品用ポリプロピレン系樹脂組成物を提供することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明は、
[1]下記の条件(A-1)~(A-4)を満足する成分(A)と、下記の条件(B-1)~(B-3)を満足する成分(B)と、下記の条件(C-1)を満足する成分(C)と、下記の条件(D-1)を満足する成分(D)と、下記の条件(E-1)を満足する成分(E)と、下記の条件(F-1)を満足する成分(F)とを含有し、かつ下記の条件(ア)及び条件(イ)を満足することを特徴とする自動車外装部品用ポリプロピレン系樹脂組成物。
条件(A-1)
成分(A)は、プロピレン単独重合体部分(A1)とエチレン-プロピレン共重合体部分(A2)からなるプロピレン-エチレンブロック共重合体である。
条件(A-2)
成分(A)全体のメルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg荷重)は55~70g/10分である。
条件(A-3)
エチレン-プロピレン共重合体部分(A2)の含有量が10~20重量%である(但し、プロピレン単独重合体部分(A1)とエチレン-プロピレン共重合体部分(A2)との合計が100重量%である)。
条件(A-4)
エチレン-プロピレン共重合体部分(A2)のエチレン重合単位含有量が40~50重量%である(但し、エチレン-プロピレン共重合体部分(A2)中のエチレン重合単位とプロピレン重合単位との合計が100重量%である)。
条件(B-1)
成分(B)はエチレン-α-オレフィンエラストマーであって、α-オレフィンは炭素数4~8のα-オレフィンである。
条件(B-2)
成分(B)のメルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg荷重)は1~10g/10分である。
条件(B-3)
成分(B)の密度は、0.860~0.870g/cm3である。
条件(C-1)
成分(C)は、無機充填剤である。
条件(D-1)
成分(D)はエチレン-エチルアクリレート共重合体であって、エチルアクリレート重合単位の比率が15~20重量%である(但し、エチレン重合単位とエチルアクリレート重合単位との合計が100重量%である)。
条件(E-1)
成分(E)は、脂肪族アミド及びその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物である。
条件(F-1)
成分(F)はヒンダードアミン系化合物であって、融点が120℃~140℃の化合物である。
条件(ア)
自動車外装部品用ポリプロピレン系樹脂組成物の各成分の含有量が、成分(A)55~65重量%、成分(B)14~17重量%、成分(C)21~28重量%(但し、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計は100重量%である)、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計100重量部に対して成分(D)が2~3重量部、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計100重量部に対して成分(E)が0.5~0.7重量部、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計100重量部に対して成分(F)が0.2~0.5重量部である。
条件(イ)
自動車外装部品用ポリプロピレン系樹脂組成物全体のメルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg荷重)は35~45g/10分である。
[2]成分(C)が、下記条件(C-2)を更に満足する[1]に記載の自動車外装部品用ポリプロピレン系樹脂組成物。
条件(C-2)
成分(C)がタルクである。
[3][1]又は[2]に記載のポリプロピレン系樹脂組成物を成形してなる自動車外装部品。
【発明の効果】
【0013】
本発明の自動車外装部品用ポリプロピレン系樹脂組成物及びそれを成形してなる自動車外装部品は、良好な射出成型加工性、高い曲げ弾性率、衝撃強度、耐候性、耐傷付き性を有し、高温環境におけるブリードが抑制されて耐候性にも優れ、自動車外装部品用材料として実用に十分な性能を有し、工業的に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施の形態の一例であり、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の記載内容に限定されるものではない。
【0015】
I.プロピレン系樹脂組成物
本発明の自動車外装部品用ポリプロピレン系樹脂組成物(以下、「本発明の樹脂組成物」と記載することもある。)は、条件(A-1)~(A-4)を満足する成分(A)と、条件(B-1)~(B-3)を満足する成分(B)と、条件(C-1)を満足する成分(C)と、条件(D-1)を満足する成分(D)と、条件(E-1)を満足する成分(E)と、条件(F-1)を満足する成分(F)とを含有し、かつ条件(ア)及び条件(イ)を満足することを特徴とする。
以下で、成分(A)、(B)、(C)、(D)、(E)及び(F)等が満たすべき特性などについて、項目毎に、詳細に述べる。
【0016】
1.成分(A)
以下に、本発明に用いられる成分(A)の詳細について説明する。本発明に用いられる成分(A)は、条件(A-1)を満足するものである。
【0017】
1-1.条件(A-1)
本発明に用いられる成分(A)は、プロピレン単独重合体部分(A1)とエチレン-プロピレン共重合体部分(A2)からなるプロピレン-エチレンブロック共重合体である。
成分(A)として、このようなプロピレン-エチレンブロック共重合体を用いると、曲げ弾性率、耐衝撃性のバランスが良好であるため好ましい。
【0018】
1-2.条件(A-2)
成分(A)全体のメルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg荷重)は55~70g/10分であり、好ましくは60~70g/10分、更に好ましくは63~69g/10分である。成分(A)全体のMFRをこのような範囲とすることにより、得られる自動車外装部品用ポリプロピレン系樹脂組成物の成形性や衝撃強度、引張伸びを良好なものとすることができる。即ち、MFRが55g/10分未満であると成形性が悪化する傾向となり、70g/10分を超えると衝撃強度、引張り伸びが低下する場合がある。
ここで、MFRは、JISK7210に準拠し、230℃、2.16kg荷重で測定する値である。
【0019】
1-3.条件(A-3)
エチレン-プロピレン共重合体部分(A2)の含有量が10~20重量%であり、好ましくは12~18重量%、更に好ましくは15~16重量%である(但し、プロピレン単独重合体部分(A1)とエチレン-プロピレン共重合体部分(A2)との合計が100重量%である)。
エチレン-プロピレン共重合体部分(A2)の含有量をこの範囲とすることにより耐衝撃性と曲げ弾性率をバランスよく、共に良好にすることができる。すなわち、10重量%未満であると、耐衝撃性が悪化する傾向となり、20重量%を超えると曲げ弾性率が低下する場合がある。
【0020】
1-4.条件(A-4)
エチレン-プロピレン共重合体部分(A2)のエチレン重合単位含有量が40~50重量%であり、好ましくは42~48重量%、更に好ましくは44~46重量%である(但し、エチレン-プロピレン共重合体部分(A2)中のエチレン重合単位とプロピレン重合単位との合計が100重量%である)。
エチレン重合単位含有量をこのような範囲とすることにより、曲げ弾性率と耐衝撃性をバランスよく、共に良好なものとすることができる。即ち、40重量%未満では曲げ弾性率が悪化する場合があり、50重量%を超えると、耐衝撃性が低下する傾向となる。
【0021】
なお、エチレン-プロピレン共重合体部分(A2)の含有量や、エチレン-プロピレン共重合体部分(A2)のエチレン重合単位含有量は、クロス分別装置やFT-IR等を用いて測定される値であり、その測定条件等は、例えば、特開2008-189893号公報に記載されている。
【0022】
成分(A)のプロピレン-エチレンブロック共重合体は、高立体規則性触媒を用いてスラリー重合、バルク重合、気相重合により製造することが好ましい。高立体規則性触媒としては、塩化マグネシウムに四塩化チタン、有機ハイドライド、及び有機シラン化合物を接触させて形成した固体成分に有機アルミニウム化合物を組み合わせた触媒が挙げられる。重合方式としては、バッチ重合、連続重合のどちらの方式でも採用される。
【0023】
2.成分(B)
本発明に用いられる成分(B)は、条件(B-1)~(B-3)を満足するものである。
【0024】
2-1.条件(B-1)
本発明に用いられる成分(B)は、エチレン-α-オレフィンエラストマーであって、α-オレフィンは炭素数4~8のα-オレフィンである。
成分(B)のエチレン・α-オレフィンエラストマーは、低結晶性ないし非晶性の共重合体エラストマーであり、エチレンと共重合モノマーのα-オレフィンとの共重合体である。エチレン・α-オレフィンエラストマーは、主にプロピレン系樹脂組成物からなる成形品の耐衝撃性を向上させる成分となる。
【0025】
成分(B)のエチレン-α-オレフィンエラストマーの具体的なα-オレフィンとして、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン等が例示される。炭素数4未満では曲げ弾性率と耐衝撃性のバランスが低下する。また、炭素数8を超過する場合、コモノマー部分の影響から、成分(A)のプロピレン系樹脂、成分(D)のエチレン-エチルアクリレート共重合体との相溶性が低下する。そこで、成分(B)のエチレン・α-オレフィンエラストマーは(B-1)の条件となる。
【0026】
2-2.条件(B-2)
成分(B)のメルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg荷重)は1~10g/10分であり、好ましくは3~9g/10分、更に好ましくは6~8g/10分である。
成分(B)のメルトフローレート(MFR)をこのような範囲とすることにより、得られる自動車外装部品用ポリプロピレン系樹脂組成物の成形性と耐衝撃性がバランスよく両立することができる。MFRが1g/10分未満の場合、樹脂の成形性が低下する傾向となる。となる。逆に、メルトフローレート(MFR)が10g/10分を超える場合、高分子量成分が少なくなり、耐衝撃性が低下する場合がある。即ち、プロピレン系樹脂組成物の成形性の良否と耐衝撃性のバランスが加味され、成分(B)の好ましいメルトフローレート(MFR)は条件(B-2)の範囲となる。
【0027】
2-3.条件(B-3)
成分(B)の密度は、0.860~0.870g/cm3である。
成分(B)の密度が0.860g/cm3未満であると、樹脂組成物からなる成形品の曲げ弾性率が低下する傾向となる。また、同密度が0.870g/cm3を超えると、プロピレン系樹脂組成物からなる成形品の耐衝撃性が低下する場合がある。そこで、双方の均衡を図る点が重視され、成分(B)のエチレン・α-オレフィン共重合体の密度は条件(B-3)の範囲に規定され、得られる自動車外装部品用ポリプロピレン系樹脂組成物の曲げ弾性率と耐衝撃性を共に良好なものとすることができる。
【0028】
3.成分(C)
本発明に用いられる成分(C)は、条件(C-1)を満足するものである。
【0029】
3-1.条件(C-1)
成分(C)は、無機充填剤である。
【0030】
本発明の自動車外装部品用ポリプロピレン系樹脂組成物に用いられる、無機充填剤は、本発明の自動車外装部品用ポリプロピレン系樹脂組成物及びこれを成形してなる自動車外装部品の曲げ弾性率、耐衝撃性、寸法安定性(線膨張係数の低減など)、耐傷付性の維持向上などに寄与する特徴を有する。
【0031】
成分(C)の具体例として、例えば、シリカ、ケイ藻土、バリウムフェライト、酸化ベリリウム、軽石、軽石バルンなどの酸化物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウムなどの水酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト、ドーソナイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸アンモニウム、亜硫酸カルシウムなどの硫酸塩または亜硫酸塩、タルク、クレー、マイカ、ガラス繊維、ガラスバルーン、ガラスビーズ、ケイ酸カルシウム、ワラストナイト、モンモリロナイト、ベントナイトなどのケイ酸塩、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素中空球などの炭素類や、硫化モリブデン、ボロン繊維、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウム、マグネシウムオキシサルフェイト、塩基性硫酸マグネシウム繊維、チタン酸カリウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、ケイ酸カルシウム繊維、炭酸カルシウム繊維、各種金属繊維などを挙げることができる。
なお、成分(C)は、2種以上併用してもよい。
【0032】
成分(C)の形状については、特に制限はなく、粒状、板状、繊維状、棒状、ウィスカー状など、いずれの形状のものも、使用することができる。
中でも板状、繊維状、ウィスカー状のものは、曲げ弾性率、耐衝撃性や寸法安定性などに優れた本発明のポリプロピレン系樹脂組成物及びこれを成形してなる成形体が得られやすい点で、好ましい。また、ポリマー用フィラーとして市販されているものは、いずれも使用することができる。
これらは、一般的な粉末状の外に、取り扱いの利便性などを高めた、圧縮魂状、ペレット(造粒)状、顆粒状、チョップドストランド状などの形態で製造されることが多いが、いずれも使用することができる。中でも粉末状、圧縮魂状、顆粒状が好ましい。
【0033】
前記した成分(C)の内、タルク、ウィスカー及びガラス繊維から選ばれた少なくとも一種のものは、耐傷付性、曲げ弾性率、耐衝撃性及び経済性などに優れた本発明の樹脂組成物及び成形体が得られ易い点で好ましい。
また、ここでいうウィスカーとは、塩基性硫酸マグネシウム繊維、チタン酸カリウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、ケイ酸カルシウム繊維、炭酸カルシウム繊維、極細炭素繊維などの極細(概ね2μmφ以下、とりわけ1μmφ以下)繊維状のものである。
【0034】
3-2.条件(C-2)
成分(C)は、好ましくは、下記条件(C-2)を更に満足する。
条件(C-2):成分(C)がタルクである。
【0035】
即ち、上記の充填剤の中でも、成分(C)としては、タルクが好ましく、特に平均粒径が15μm以下、好ましくは0.5~10μm、とりわけ好ましくは2~8μmのタルクは、耐傷付性、曲げ弾性率、耐衝撃性、及び経済性が特に優れた本発明のプロピレン系樹脂組成物及び成形体が得られ易いなどの点で、好ましい。
この平均粒径は、レーザー回折散乱方式粒度分布計などを用いて測定した値であり、測定装置としては、例えば、堀場製作所製LA‐920型が挙げられる。また、タルクは、平均アスペクト比が4以上、特に5以上のものがより好ましい。タルクのアスペクト比の測定は、顕微鏡などにより測定された値より求められる。
【0036】
これらの成分(C)は、有機チタネート系カップリング剤、有機シランカップリング剤、不飽和カルボン酸、またはその無水物をグラフトした変性ポリオレフィン、脂肪酸、脂肪酸金属塩、脂肪酸エステルなどによって表面などを処理したものを用いてもよく、また、二種以上併用して表面などを処理してもよい。
【0037】
3-3.成分(C)の製造方法
成分(C)の製造方法は、特に限定されたものではなく、公知の各種製造方法などにて製造される。例えば、タルクの場合、天然に産出されたものを機械的に微粉砕化することにより得られたものを、さらに精密に1回又は複数回分級することによって得られる。
粉砕機としては、例えば、ジョークラシャー、ハンマークラシャー、ロールクラシャー、スクリーンミル、ジェット粉砕機、コロイドミル、ローラーミル、振動ミルなどを用いることができる。
これらの粉砕されたタルクは、本発明で示される平均粒径に調節するために、例えば、サイクロン、サイクロンエアセパレーター、ミクロセパレーター、サイクロンエアセパレーター、シャープカットセパレター、などの装置で1回または繰り返し湿式または乾式分級する。特定の粒径に粉砕した後、シャープカットセパレターにて、分級操作を行うことが好ましい。
【0038】
4.成分(D)
本発明に用いられる成分(D)は、条件(D-1)を満足するものである。
【0039】
4-1.条件(D-1)
成分(D)は、エチレン-エチルアクリレート共重合体であって、エチルアクリレート重合単位の比率が15~20重量%であり、好ましくは18~20重量%である(但し、エチレン重合単位とエチルアクリレート重合単位との合計が100重量%である)。
成分(D)は、本発明の自動車外装部品用ポリプロピレン系樹脂組成物及びこれを成形してなる自動車外装部品の耐熱ブリード性に寄与する特徴を有し、成分(D)のエチルアクリレート重合単位の比率を上記のような範囲とすることによって、得られる自動車外装部品用ポリプロピレン系樹脂組成物の耐熱ブリード性を良好にすることができると共に、成形品の外観不良を防ぐ事が出来る。
【0040】
即ち、エチルアクリレート重合単位の比率が15重量%未満であると耐熱ブリード性が悪化する傾向となり、20重量%を超えると層状剥離等の成形品の外観不良が発生する場合がある。
【0041】
また、成分(D)のエチレン・エチルアクリレート共重合体は、メルトフローレート(MFR:190℃、2.16kg荷重で測定)の値が1~120g/10分が好ましく、10~100g/10分がより好ましく、20~80g/10分がさらに好ましい。メルトフローレートがこの範囲にあると、成形性が向上するので好ましい。
ここで、メルトインデックスは、JIS-K7210に準拠し、190℃、2.16kg荷重で測定する値である。
【0042】
5.成分(E)
本発明に用いられる成分(E)は、条件(E-1)を満足するものである。
【0043】
5-1.条件(E-1)
成分(E)は、脂肪族アミド及びその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物である。成分(E)は、本発明の自動車外装部品用ポリプロピレン系樹脂組成物及びこれを成形してなる自動車外装部品の耐傷付き性に寄与する特徴を有する。
【0044】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物に用いる成分(E)の脂肪酸アミドとしては、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、ベヘニン酸アミド、エルカ酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ラウリン酸アミド等が挙げられる。また、脂肪酸アミド誘導体としては、12-ヒドロキシステアリル酸アミド等が挙げられる。
これらの中から選ばれる一種又は二種以上を併用して使用することができ、なかでも、オレイン酸アミドが好ましい。
【0045】
6.成分(F)
本発明に用いられる成分(F)は、条件(F-1)を満足するものである。
【0046】
条件(F-1)
成分(F)はヒンダードアミン系化合物であって、融点が120℃~140℃以上の化合物である。成分(F)は、本発明の自動車外装部品用ポリプロピレン系樹脂組成物及びこれを成形してなる自動車外装部品の耐候性に寄与する特徴を有する。
【0047】
本発明の自動車外装部品用ポリプロピレン樹脂組成物に用いる成分(F)のヒンダードアミン系化合物は、融点が120℃以上のものである。融点が120℃~140℃であると、高温環境においてヒンダードアミン化合物が成形品中からブリードし難く、高温環境下における耐傷付き性が良好である。好ましくは、融点が125℃~135℃の範囲のものが良い。
ヒンダードアミン系化合物として、具体的には、テトラキス(2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、マロン酸(4-メトキシフェニル)メチレン-ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)エステル、ポリ[[6-[(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ]-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル][(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)イミノ]-1,6-ヘキサンジイル[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)イミノ]])、N,N‘,4,7-テトラキス{4,6-ビス[N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ]-1,3,5-トリアジン-2-イル}-4,7-ジアザデカン-1,10-ジアミン、N,N-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)-1,6-ヘキサンジアミンポリマーと2,4,6-トリクロロ-1,3,5-トリアジンとN-ブチル-1-ブタンアミンとN-ブチル-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジンアミンの反応物を挙げることができる。市販のヒンダードアミン系化合物では、商品名 “アデカスタブLA-57”(株式会社ADEKA製、融点125-135℃)が有効である。
【0048】
7.その他の配合成分(任意成分)(G)
本発明のポリプロピレン樹脂組成物においては、本発明の効果を損なわない範囲で、或いは、更に性能の向上をはかるために、上記成分以外に、以下に示す任意成分を配合することができる。具体的には、酸化防止剤、帯電防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、核剤、難燃剤、分散剤、顔料、発泡剤などをあげることができる。
【0049】
8.各成分の配合量
条件(ア):
本発明の自動車外装部品用ポリプロピレン系樹脂組成物において、各成分の含有量は、成分(A)55~65重量%、成分(B)14~17重量%、成分(C)21~28重量%(但し、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計は100重量%である)であり、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計100重量部に対して成分(D)が2~3重量部、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計100重量部に対して成分(E)が0.5~0.7重量部、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計100重量部に対して成分(F)が0.2~0.5重量部であることを必須とする。各成分の配合量をこの様な範囲とすることにより、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物およびそれを成形してなる成形体において、良好な射出成型加工性、高い曲げ弾性率、衝撃強度、耐光性、耐傷付き性を有し、高温環境におけるブリードを抑制させることが可能となる。
【0050】
成分(A)のプロピレン系樹脂の含有量は、好ましくは58~64.5重量%、より好ましくは60~64重量%である。
【0051】
成分(B)のエチレン-α-オレフィンエラストマーの含有量は、好ましくは14.5~16重量%、より好ましくは15~16重量%である。
【0052】
成分(C)の充填剤の含有量は、好ましくは23~27重量%、より好ましくは24~26重量%である。
成分(C)の含有量を上記の範囲とすることにより、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物及び成形体の物性バランス(剛性、耐熱性など)を低下させずに、耐傷付性、フローマーク(成形外観)及び流動性(成形性)を維持することが可能となる。
【0053】
成分(D)のエチレン-エチルアクリレート共重合体は、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計100重量部に対して2~3重量部含有され、好ましくは2.1~2.8重量%、より好ましくは2.2~2.5重量%である。
成分(D)の含有量を上記の範囲とすることにより、耐熱ブリード性、及び曲げ弾性率が良好になる。
【0054】
成分(E)の脂肪族アミド及びその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物は、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計100重量部に対して0.5~0.7重量部含有され、好ましくは0.55~0.65重量%、より好ましくは0.58~0.63重量%である。
成分(E)の含有量を上記の範囲とすることにより、耐傷付き性、及び耐熱ブリード性が良好になる。
【0055】
成分(F)のヒンダードアミン系化合物は、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計100重量部に対して0.2~0.5重量部含有され、好ましくは0.25~0.4重量%、より好ましくは0.3~0.35重量%である。
成分(F)の含有量を上記の範囲とすることにより、充分な耐候性能が得られ、高温環境におけるブリード、及び高温環境における耐傷付き性の悪化を防止することができる。
【0056】
9.自動車外装部品用ポリプロピレン系樹脂組成物のメルトフローレート
条件(イ)
本発明の自動車外装部品用ポリプロピレン系樹脂組成物全体のメルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg荷重)は35~45g/10分であり、好ましくは38~44g/10分、更に好ましくは40~43g/10分である。
ここでいうメルトフローレート(MFR)は、JIS K7210に準拠して、230℃、2.16kg荷重で測定した値である。
自動車外装部品用ポリプロピレン系樹脂組成物全体のメルトフローレート(MFR)を上記範囲内とすることにより、成形性および各種の機械物性バランスを良好にすることが可能となる。すなわち、MFRが35g/10分未満であると、流動性が低いため、成形性が悪化する傾向となる。一方、MFRが45g/10分を超えると、耐衝撃性が低下する場合がある。
【0057】
II.自動車外装部品用ポリプロピレン系樹脂組成物の製造と成形
本発明の自動車外装部品用ポリプロピレン樹脂組成物は、上記成分(A)~(F)を、従来公知の方法で、各配合成分を上記配合割合で配合・混合し、溶融混練することにより製造することができる。
溶融混練は、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ロールミキサー、ブラベンダープラストグラフ、ニーダー等の通常の混練機を用いて混練・造粒することによって、本発明のプロピレン系樹脂組成物が得られる。
この場合、各成分の分散を良好にすることができる混練・造粒方法を選択することが好ましく、通常は二軸押出機を用いて行われる。この混練・造粒の際には、上記各成分の配合物を同時に混練してもよく、また性能向上をはかるべく各成分を分割して混練する、すなわち、例えば先ずプロピレン系重合体の一部又は全部とエラストマーとを混練し、その後に残りの成分を混練・造粒するといった方法を採用することもできる。
【0058】
また、本発明の自動車外装部品用ポリプロピレン系樹脂組成物は、公知の各種方法による成形に用いることができる。例えば、射出成形(ガス射出成形も含む)、射出圧縮成形(プレスインジェクション)、押出成形、中空成形、カレンダー成形、インフレーション成形、一軸延伸フィルム成形、二軸延伸フィルム成形等にて成形することによって各種成形品を得ることができる。このうち、射出成形、射出圧縮成形がより好ましい。
【0059】
III.自動車外装部品用ポリプロピレン系樹脂組成物の用途
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、耐汚れ性、物性バランスに優れ、かつ成形加工性に優れるため、バンパー、ロッカーモール、サイドモール、オーバーフェンダー、バックドア、ガーニッシュなどの自動車外装部品用成形材料として、実用に十分な性能を有している。
【0060】
即ち、本発明のもう1つの実施態様は、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物を成形してなる自動車外装部品である。
【実施例】
【0061】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
なお、実施例で用いた評価法、分析の各法および材料は以下の通りである。
【0062】
1.評価方法
(1)MFR:JIS-K7210に準拠して行った。ただし、2種類以上のプロピレン-エチレンブロック共重合体の混合物については、それらのプロピレン-エチレンブロック共重合体と、それらのプロピレン-エチレンブロック共重合体の合計100重量部に対してペンタエリスリトール=テトラキス[3-(3‘.5’-ジ-tert-ブチル-4‘-ヒドロキシフェニル)プロピオナート](BASF社製、Irganox1010)を0.1重量部、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト(BASF社製、Irgafos168)を0.05重量部、ステアリン酸カルシウム(東京化成工業製、Calcium Stearete)を0.2重量部をスーパーミキサーSFC-50(株式会社カワタ製)にてドライブレンドした後、押し出し温度210℃、吐出量80kg/hの条件で二軸押出し機(株式会社神戸製鋼所製、KCM65)を用いて溶融混練したもののMFRを、当該混合物のMFRとした。
(2)プロピレン-エチレンブロック共重合体の、エチレン-プロピレン共重合体部分の含有量(単位:重量%):クロス分別装置CFC T-100(ダイヤインスツルメンツ社製)およびFT-IR 1760X(パーキンエルマー社製)を用い、特開2008-189893号公報に記載される方法にて求めた。ただし、2種類以上のプロピレン-エチレンブロック共重合体の混合物については、下記式(I)に従って求めた数値を、当該混合物のエチレン-プロピレン共重合体部分の含有量とした。
含有量=(C1×X1+C2×X2+・・・+Cn×Xn)/100 (I)
式(I)において、C1、C2、・・・、Cnは、1種類目、2種類目、・・・、n種類目のプロピレン-エチレンブロック共重合体のエチレン-プロピレン共重合体部分の含有量である。X1、X2、・・・、Xnは、混合物の合計100重量部に対しての1種類目、2種類目、・・・、n種類目のプロピレン-エチレンブロック共重合体の含有量(単位:重量%)である。
(3)プロピレン-エチレンブロック共重合体の、エチレン-プロピレン共重合体部分のエチレン重合単位含有量(単位:重量%):クロス分別装置CFC T-100(ダイヤインスツルメンツ社製)およびFT-IR 1760X(パーキンエルマー社製)を用い、特開2008-189893号公報に記載される方法にて求めた。ただし、2種類以上のプロピレン-エチレンブロック共重合体の混合物については、下記式(II)に従って求めた数値を、当該混合物のエチレン-プロピレン共重合体部分のエチレン重合単位含有量とした。
エチレン重合単位含有量=(G1×X1+G2×X2+・・・+Gn×Xn)/100 (II)
式(II)において、G1、G2、・・・、Gnは、1種類目、2種類目、・・・、n種類目のプロピレン-エチレンブロック共重合体のエチレン-プロピレン共重合体部分のエチレン重合単位含有量である。X1、X2、・・・、Xnは、混合物の合計100重量部に対しての1種類目、2種類目、・・・、n種類目のプロピレン-エチレンブロック共重合体の含有量(単位:重量%)である。
(4)曲げ弾性率(単位:MPa):JIS-K7203に準拠して23℃で測定した。
(5)シャルピー衝撃強度(単位:MJ/m2):JIS-K7111に準拠して23℃で測定した。
(6)耐熱ブリード性:射出成型機(日精樹脂工業製NEX220)にて成形した100×350×2mmの試験片を70℃に調整したギアオーブンA45(東洋精機株式会社製)中に72時間暴露した後、ブリード物の有無を目視にて観察し、下記の基準で評価した。
○:ブリード物が確認できない
×:ブリード物が確認できる
(7)耐傷付き性:射出成型機(日精樹脂工業製NEX220)にて成形した100×350×2mmの成形品から縦80mm横80mmに平板を切り出し、試験片とした。安田精機社製の全自動クロスカット剥離試験機を用いて、300gの荷重を載せた引掻き針(先端R0.3mm)にて、引掻き速度1000mm/分、2mmピッチ、50mmストロークで試験片を13回引掻き、更に試験片を90°回転させて同様の条件で13回引掻き、碁盤目状に傷をつけた。測色計(日本電色工業社製SE-200)による引掻き前の試験片と引掻き後の試験片とのE値の変化(ΔE)を測定した。
(8)耐熱傷つき性:射出成型機(日精樹脂工業製NEX220)にて成形した100×350×2mmの成形品を70℃に調整したギアオーブンA45(東洋精機株式会社製)中に72時間暴露した後、縦80mm横80mmに平板を切り出し、試験片とした。この試験片を用い、(7)耐傷つき性と同条件にてΔEを測定した。
(9)耐候性:射出成型機(日精樹脂工業製NEX220)にて成形した100×350×2mmの成形品から縦30mm横70mmに試験片を切り出し、スガ試験機株式会社製スーパーキセノンウェザーメーターSX-75にてブラックパネル温度63℃、湿度50%、放射照度180W/m2の条件で積算照射量が500MJとなるようキセノンアークランプ光を照射した。その後、試験片の照射表面を50倍の顕微鏡により観察し、また測色計(日本電色工業社製SE-200)により照射前の試験片と照射後の試験片とのE値の変化(ΔE)の測定し、下記の基準で評価した。
○:顕微鏡観察にてクラックが観察されず、かつΔE≦3である
×:顕微鏡観察にてクラックが観察されるか、またはΔE>3である
(10)外観:射出成型機(日精樹脂工業製NEX220)にて成形した100×350×2mmの試験片を目視にて観察し、外観不良の有無を評価した。
【0063】
2.原材料
(A):プロピレン-エチレンブロック共重合体
市販のプロピレン・エチレンブロック共重合体を混合して表1に示すA-1~A-2のプロピレン・エチレンブロック共重合体を調製し、用いた。
(B):エチレン・α―オレフィンエラストマー
B-1:エチレン・1-ブテン共重合体(三井化学株式会社製、タフマーA-4050S、密度0.863g/cm3、MFR7g/10分)
B-2:エチレン・1-オクテン共重合体(DuPont Dow Elastomers L.L.C製、エンゲージ8100、密度0.870g/cm3、MFR2g/10分)
(C):無機充填剤
C-1:タルク(富士タルク工業株式会社製、KFJM20)
(D):エチレン・エチルアクリレート共重合体
D-1:レクスパール A6200(日本ポリエチレン株式会社製、エチルアクリレート比率20wt%、MFR20g/10分)
D-2:レクスパール A3100(日本ポリエチレン株式会社製、エチルアクリレート比率10wt%、MFR3g/10分)
D-3:レクスパール A4250(日本ポリエチレン株式会社製、エチルアクリレート比率25wt%、MFR5g/10分)
(E):脂肪酸アミドまたはその誘導物
E-1:オレイン酸アミド(日本精化株式会社製、ニュートロン-P)
(F):ヒンダードアミン系光安定剤
F-1:テトラキス(2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート(株式会社ADEKA製、アデカスタブLA-57、融点125-135℃)
F-2:ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート(BASFジャパン株式会社製、Tinuvin770DF、融点81-85℃)
(G):その他の任意成分
G-1:ペンタエリスリトール=テトラキス[3-(3‘.5’-ジ-tert-ブチル-4‘-ヒドロキシフェニル)プロピオナート](BASF社製、Irganox1010、酸化防止剤)
G-2:トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト(BASF社製、Irgafos168、酸化防止剤)
G-3:ステアリン酸カルシウム(東京化成工業製、Calcium Stearete、分散剤)
【0064】
【0065】
(実施例1~2、比較例1~9)
表2に示す成分を、表2に示す割合にて、スーパーミキサーSFC-50(株式会社カワタ製)にてドライブレンドした後、押し出し温度210℃、吐出量80kg/hの条件で二軸押出し機(株式会社神戸製鋼所製、KCM65)を用いて溶融混練した。溶融混練後、前記の方法にて試験片を作成し、評価を行った。その結果を表2に示す。
【0066】
【0067】
実施例及び比較例の評価結果の考察
(1)実施例1~2
表1から明らかなように、実施例1~2は請求項1の各成分の要件を満たしており、曲げ弾性率、シャルピー衝撃強度、耐傷付き性、耐熱ブリード、耐熱傷つき性、耐候性、外観が良好な成形品が得られた。
(2)比較例1
一方、比較例1はヒンダードアミン系光安定剤の融点が低く耐熱試験時の運動性が高いため、耐熱試験時に試験片の表面に移動し、目視では確認できないものの表面の摩擦係数が上がり、実施例1、実施例2と比較して傷つき性が低下した。
(3)比較例2
比較例2はヒンダードアミン系光安定剤が添加されていないため、実施例1、実施例2と比較して耐候性が低下した。
(4)比較例3
比較例3は脂肪酸アミドが添加されていないため、実施例1と比較して耐傷つき性が低下した。
(5)比較例4
比較例4はエチレン・エチルアクリレートの添加量が少ないため耐熱試験時に脂肪酸アミドがブリード白化した。
(6)比較例5
比較例5は脂肪酸アミドの添加量が少ないため実施例1、実施例2と比較して耐傷付き性が低下した。
(7)比較例6
比較例6はエチレン・エチルアクリレート共重合体のエチルアクリレート比率が低いため、耐熱試験時に脂肪酸アミドがブリード白化した。
(8)比較例7
比較例7はエチレン・エチルアクリレート共重合体のエチルアクリレート比率が高く、成形時に層状剥離が発生し外観が悪化したためその他の評価を実施しなかった。
(9)比較例8
比較例8はエラストマーの添加量が少ないため実施例1、2と比較してシャルピー衝撃強度が低下した。
(10)比較例9
比較例9は無機充填剤の添加量が少ないため実施例1、2と比較して曲げ弾性率が低下した。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、剛性、耐衝撃性、耐傷付き性、耐熱ブリード性、耐熱傷つき性、耐候性に優れるポリプロピレン樹脂組成物であり、自動車外装部品用材料として実用に十分な性能を有し、工業的に用いることができる。