(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-31
(45)【発行日】2023-11-09
(54)【発明の名称】チュービング装置
(51)【国際特許分類】
E02D 7/22 20060101AFI20231101BHJP
E02D 13/00 20060101ALI20231101BHJP
E02D 7/20 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
E02D7/22
E02D13/00 Z
E02D7/20
(21)【出願番号】P 2020035599
(22)【出願日】2020-03-03
【審査請求日】2023-02-06
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 販売日:令和2年2月4日 販売した場所:(株)ミヨシ(日本)
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】高橋 秀直
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-70007(JP,A)
【文献】特開平11-117285(JP,A)
【文献】特開2019-183589(JP,A)
【文献】特開2006-348565(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 7/22
E02D 13/00
E02D 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上に据え付けられるベースフレームと、該ベースフレームの上方に昇降シリンダを介して昇降可能に設けられたドライブフレームと、該ドライブフレームの上方にチャックシリンダを介して昇降可能に設けられたチャックフレームと、前記ドライブフレームに従って昇降するチャック機構と、該チャック機構によって把持したケーシングに対して回転を与える回転伝達機構とを備えたチュービング装置において、
前記ベースフレームには、前記チャック機構によって把持した前記ケーシングの外周面に洗浄流体を噴射する複数の流体噴射ノズルが設けられていることを特徴とするチュービング装置。
【請求項2】
前記流体噴射ノズルは、噴射した前記洗浄流体を水平をなす扇形に広げさせる噴射口を備えていることを特徴とする請求項1記載のチュービング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チュービング装置に関し、詳しくは、建築、土木の基礎工事で地中へのケーシングの圧入や引き抜きを行うチュービング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建築、土木等の基礎工事で行われる場所打ち杭工法は、例えば、土留め用のケーシングを回転させながら地盤に押し込み、内部の土砂を排出して形成した掘削孔に鉄筋を投入した後、この掘削孔にコンクリートを流し込むことによって杭が造成される。こうした場所打ち杭工法では、ケーシングの圧入及び引き抜きを行うため、高トルクの回転を発生させるチュービング装置が使用されている。
【0003】
この種のチュービング装置は、フレーム中心の貫通孔を通したケーシングがチャックによって把持され、地盤へ回転しながらの圧入や引き抜きが行われる。ケーシングを圧入する場合には、チャックシリンダの収縮作動によってチャックフレームが下降し、該チャックフレームに設けられたチャック部材を介してドライブフレームとの間でケーシングがチャックされ、昇降シリンダの収縮作動によってチャックフレームとドライブフレームとがケーシングと一緒に下降する。このとき、ドライブフレームに備わる油圧モータから高トルクの回転がケーシングに伝達されるため、ケーシングは回転しながら地盤に対して圧入される。一方、ケーシングを引き抜く場合には、昇降シリンダが逆に伸張作動し、地中からケーシングが引き抜かれる(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
地中から引き抜かれた後のケーシングは、クレーンの吊り操作によって地上に置かれるが、その内外周面にはコンクリートや泥が多く付着しており、これらを取り除く清掃作業に手間を要していた。特に、長さがあるケーシングの場合では、清掃する範囲が広くなるため、作業者にとって負担が大きいものであった。
【0006】
そこで本発明は、ケーシングの付着物の清掃を地中からの回収段階において実行可能な洗浄ノズルを備えたチュービング装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明のチュービング装置は、地上に据え付けられるベースフレームと、該ベースフレームの上方に昇降シリンダを介して昇降可能に設けられたドライブフレームと、該ドライブフレームの上方にチャックシリンダを介して昇降可能に設けられたチャックフレームと、前記ドライブフレームに従って昇降するチャック機構と、該チャック機構によって把持したケーシングに対して回転を与える回転伝達機構とを備えたチュービング装置において、前記ベースフレームには、前記チャック機構によって把持した前記ケーシングの外周面に洗浄流体を噴射する複数の流体噴射ノズルが設けられていることを特徴としている。
【0008】
また、前記流体噴射ノズルは、噴射した前記洗浄流体を水平をなす扇形に広げさせる噴射口を備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明のチュービング装置によれば、地上に据え付けられるベースフレームの上面に、チャック機構によって把持したケーシングの外周面に洗浄流体を噴射する複数の流体噴射ノズルを設けているので、地中からケーシングを引き抜く動作に連動させて、ケーシングの外周面に付着した泥を洗浄流体で除去することが可能となる。これにより、ケーシングを移動させた後に清掃する作業量を大幅に減らすことができ、もって、場所打ち杭工法の省力化に寄与するものとなる。
【0010】
また、流体噴射ノズルが、噴射した洗浄流体を水平をなす扇形に広げさせる噴射口を備えているので、ケーシングの外周面に対して広い範囲に適量の洗浄流体を噴射することが可能となり、洗浄力の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一形態例を示すチュービング装置の正面図である。
【
図3】チャック機構で把持したケーシングを引き上げた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1乃至
図5は、本発明のチュービング装置の一形態例を示している。本形態例に示すチュービング装置11は、
図1乃至
図3に示すように、地上に据え付けられるベースフレーム12と、該ベースフレーム12の上方に4本のガイド筒13とその内部に収容された昇降シリンダ(図示せず)とからなる伸縮機構を介して昇降可能に設けられたドライブフレーム14と、該ドライブフレーム14の上方に4本のチャックシリンダ15を介して昇降可能に設けられたチャックフレーム16とを備えており、前記ベースフレーム12、ドライブフレーム14及びチャックフレーム16の中央部には、鉛直方向に貫通して同軸上に配置されたケーシング挿通孔17が設けられている。
【0013】
ドライブフレーム14には、回転伝達機構である油圧モータ18及び減速機19と、前記ケーシング挿通孔17を囲むコーンベアリング20とが設けられている。コーンベアリング20は、ケーシング21を把持する複数のメインチャック22と対になってチャック機構を形成するもので、ドライブフレーム14に対して回転自在に組み付けられ、油圧モータ18の回転が減速機19を介して伝えられる。また、コーンベアリング20の内周部には、メインチャック22の楔形に当接可能なテーパ面が形成されている。
【0014】
メインチャック22は、チャックフレーム16において、ケーシング挿通孔17の周方向に等間隔で設けられている。具体的には、チャックフレーム16に対してリンク23やチャックベアリング24を介して吊り下げられており、チャックシリンダ15を伸縮させることよってメインチャック22が相対的に上下動する。これにより、ケーシング21とコーンベアリング20との間にメインチャック22が差し込まれ、あるいは、引き抜かれてケーシング21の把持と解放とが行われる。
【0015】
チャックフレーム16の上面には、ケーシング挿通孔17の内径に対応した内径を有する開口部25を備えた作業デッキ26が設けられ、チャックフレーム16の側面には、作業デッキ26に昇降するための梯子27が設けられている。また、開口部25の周縁と作業デッキ26の外縁とが接近している部分には、作業デッキ26の外方に張り出す拡幅デッキ28が着脱可能に設けられ、作業デッキ26及び拡幅デッキ28の外縁部に複数の手摺29を設置することで、デッキ上からの転落防止が図られている。
【0016】
チュービング装置11を操作して、ケーシング21を圧入する場合には、まず、チャックシリンダ15の収縮作動によってチャックフレーム16を下降させ、チャック機構を介してドライブフレーム14との間でケーシング21をチャックする。続いて、昇降シリンダを収縮作動させてチャックフレーム16とドライブフレーム14とをケーシング21と一緒に下降させる。このとき、回転伝達機構から高トルクの回転がケーシング21に伝達されるため、ケーシング21は回転しながら地盤に対して圧入された状態となる(
図1)。こうして、複数のケーシング21をボルトで連結しながら順次押し込むことにより、ケーシング21の下端が所定の深さに到達する。その後、ケーシング21内の土砂を排出して形成した掘削孔に鉄筋を投入し、この掘削孔にコンクリートを注入しながらケーシング21を引き抜くことによって杭が造成される。
【0017】
ケーシング21を引き抜く場合には、チャック機構によってケーシング21を把持し、昇降シリンダを伸張作動させることでケーシング21の上部が地上に引き上げられた状態となる(
図3)。このとき、メインチャック22の解放時にはケーシング21が自重で沈下してしまう。そのため、ベースフレーム12には、ケーシング21の沈下を防止するサブチャック機構が設けられている。サブチャック機構は、
図4に示すように、ケーシング挿通孔17の内周壁に沿って設けられたサブチャック30を有している。サブチャック30は、3枚の弓形に曲げられた帯板状の第1サブチャック部材30a,第2サブチャック部材30b,第3サブチャック部材30cをサブチャック連結ピン31によって連結してC形状に形成したもので、第1サブチャック部材30a及び第3サブチャック部材30cの端部がサブチャックシリンダ32に連結されている。サブチャックシリンダ32が伸縮すると、サブチャック30による円が拡径あるいは縮径し、ケーシング21の解放と把持とが行われる。これにより、ケーシング21をメインチャック22とサブチャック30とで掴み換えながら地中から引き抜くことでケーシング21の沈下が防止される。
【0018】
ところで、地中から引き抜かれた後のケーシング21は、クレーンの吊り操作によって地上に置かれるが、その内外周面にはコンクリートや泥が多く付着しており、これらを取り除く清掃作業に手間を要する。特に、長さが6m程度あるケーシング21の場合では、清掃する範囲が広くなるため、作業者にとって負担が大きいものとなる。そこで、ケーシング21の付着物の清掃を地中からの回収段階において実行すべく、ベースフレーム12の上面には、チャック機構によって把持したケーシング21の外周面に洗浄流体として洗浄水を噴射する複数の流体噴射ノズル33を設けている。
【0019】
前記複数の流体噴射ノズル33は、四隅のガイド筒13を避けた位置であって、ケーシング21の外周面を周方向に4等分割した各分割周面21a,21b,21c,21dにそれぞれ対応して配置された4つの流体噴射ノズル33である。これらの流体噴射ノズル33は、2つでセットになって洗浄水をケーシング21の外周半面に噴射するもので、カプラー34が取り付けられた分流管(T型継手管)35との間でホース36を介して接続されている。これにより、高圧洗浄機(図示せず)で水量や水圧が調節された洗浄水をケーシング21の外周面に噴射して、付着した泥を洗い流すことが可能である。
【0020】
また、流体噴射ノズル33は、
図5に示すように、ブラケット37を介してベースフレーム12の上面よりも上方位置に支持され、先端部に洗浄水の噴射口33aを備えている。この噴射口33aは、噴射した洗浄水を水平をなす扇形に広げさせる周知のフラットスプレーノズルを採用したものである。これにより、噴流が形成する扇面は、例えば、略80度の角度で広がる(
図4)。
【0021】
ここで、流体噴射ノズル33を使用してケーシング21の清掃を行う手順を説明する。まず、高圧洗浄機からのホース(図示せず)をカプラー34に接続してスタンバイ状態とし、チュービング装置11を操作してチャック機構でケーシング21を把持する。次に、正回転と逆回転とを交互に行ってケーシング21を揺動させながらドライブフレーム14を上昇させる。この回収段階で、高圧洗浄機の操作手段をON操作することにより、4つの流体噴射ノズル33の各噴射口33aから洗浄水を噴射させる。これにより、流体噴射ノズル33から噴射した扇形の噴流が、ケーシング21の外周面に沿うように当たって泥が洗い流されてゆく。
【0022】
このように、本発明のチュービング装置11によれば、地上に据え付けられるベースフレーム12の上面に、チャック機構によって把持したケーシング21の外周面に洗浄流体を噴射する複数の流体噴射ノズル33を設けているので、地中からケーシング21を引き抜く動作に連動させて、ケーシング21の外周面に付着した泥を洗浄流体で除去することが可能となる。これにより、ケーシング21を移動させた後に清掃する作業量を大幅に減らすことができ、もって、場所打ち杭工法の省力化に寄与するものとなる。
【0023】
また、流体噴射ノズル33が、噴射した洗浄流体を水平をなす扇形に広げさせる噴射口33aを備えているので、ケーシング21の外周面に対して広い範囲に適量の洗浄流体を噴射することが可能となり、洗浄力の向上を図ることができる。
【0024】
さらに、4つの流体噴射ノズル33が、ケーシング21の外周面を周方向に4等分割した各分割周面21a,21b,21c,21dにそれぞれ対応して配置されるので、洗浄流体をケーシング21の外周面にむらなく噴射することが可能となる。これにより、ケーシング21を揺動させながら引き抜いても、つまり充填したコンクリートが回転しないように引き抜いても、ケーシング21の全周に亘って洗浄流体を噴射できることから、より実用的なものである。
【0025】
これに加えて、より大径のケーシング21が用いられる大型のチュービング装置では、流体噴射ノズル33からの噴流が部分的に届かない面が生じるおそれがあるが、そのような場合であっても、ケーシング21を揺動させながら引き抜く動作を行えば、噴流が届かなかった面に十分に届くようになり、流体噴射ノズル33の設置数を増やすことなく、その洗浄範囲を拡大することが可能になる。これにより、チュービング装置が使用される多様な環境に広く対応することができる。
【0026】
なお、本発明のチュービング装置は、前記形態例に限定されるものではなく、流体噴射ノズルは、ベースフレームに設けてあればよく、その数や配置は任意である。また、引抜時に昇降シリンダの伸張作動やサブチャックの拡径作動を検知して洗浄流体を送出する制御回路を備えることができる。さらに、高圧の洗浄水の代わりにエアー又は洗浄水とエアーとの混合水を洗浄流体として使用することができる。
【符号の説明】
【0027】
11…チュービング装置、12…ベースフレーム、13…ガイド筒、14…ドライブフレーム、15…チャックシリンダ、16…チャックフレーム、17…ケーシング挿通孔、18…油圧モータ、19…減速機、20…コーンベアリング、21…ケーシング、21a,21b,21c,21d…分割周面、22…メインチャック、23…リンク、24…チャックベアリング、25…開口部、26…作業デッキ、27…梯子、28…拡幅デッキ、29…手摺、30…サブチャック、30a…第1サブチャック部材、30b…第2サブチャック部材、30c…第3サブチャック部材、31…サブチャック連結ピン、32…サブチャックシリンダ、33…流体噴射ノズル、33a…噴射口、34…カプラー、35…分流管、36…ホース、37…ブラケット