IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 山九株式会社の特許一覧 ▶ 新日鐵住金株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-31
(45)【発行日】2023-11-09
(54)【発明の名称】コークス炉用仮設上屋の建設方法
(51)【国際特許分類】
   C10B 29/02 20060101AFI20231101BHJP
   E04G 21/28 20060101ALI20231101BHJP
   E04B 1/24 20060101ALI20231101BHJP
   E04B 7/20 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
C10B29/02
E04G21/28 A
E04B1/24 B
E04B7/20 521Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020046993
(22)【出願日】2020-03-17
(65)【公開番号】P2021147451
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000178011
【氏名又は名称】山九株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本田 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】吉田 磨
(72)【発明者】
【氏名】辻本 裕之
(72)【発明者】
【氏名】谷口 雄大
(72)【発明者】
【氏名】奥谷 恭士
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-019885(JP,A)
【文献】特開2012-067518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10B 29/00
E04G 21/00
E04B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に間隔を空けて立設される複数の柱部材と、前記複数の柱部材の間に配置される複数のパネル部材とを用いて、コークス炉用仮設上屋の側壁を形成する第1工程と、
前記パネル部材を前記柱部材に固定する第2工程と、
前記複数の柱部材の間に立設された中間柱部材に対して、前記パネル部材を締結部材により固定する第3工程と、
を含み、
前記パネル部材は、壁板部と、前記壁板部の周囲に設けられたフレーム部とを備え、
前記柱部材の側面には、前記柱部材の長手方向に沿って溝部が設けられており、前記複数の柱部材の前記溝部が相互に対向するように、前記複数の柱部材が配置され、
前記第1工程では、一対の前記柱部材の一対の前記溝部に、前記パネル部材の前記フレーム部の水平方向の両端を、鉛直方向上方から差し込むようにして、前記一対の柱部材の間に前記複数のパネル部材を挿入して、前記複数のパネル部材を鉛直方向で上下に積み重ねることにより、前記側壁を形成し、
前記第2工程では、前記側壁の内側から、前記溝部内に差し込まれた前記フレーム部の水平方向の両端に向けて固定部材を押し込み、前記フレーム部を前記溝部の内壁に対して当接させることにより、前記パネル部材を前記柱部材に対して固定する、コークス炉用仮設上屋の建設方法。
【請求項2】
相互に間隔を空けて立設される複数の柱部材と、前記複数の柱部材の間に配置される複数のパネル部材とを用いて、コークス炉用仮設上屋の側壁を形成する第1工程と、
前記パネル部材を前記柱部材に固定する第2工程と、
を含み、
前記パネル部材は、壁板部と、前記壁板部の周囲に設けられたフレーム部とを備え、
前記柱部材の側面には、前記柱部材の長手方向に沿って溝部が設けられており、前記複数の柱部材の前記溝部が相互に対向するように、前記複数の柱部材が配置され、
前記第1工程では、一対の前記柱部材の一対の前記溝部に、前記パネル部材の前記フレーム部の水平方向の両端を、鉛直方向上方から差し込むようにして、前記一対の柱部材の間に前記複数のパネル部材を挿入して、前記複数のパネル部材を鉛直方向で上下に積み重ねることにより、前記側壁を形成し、
前記第2工程では、前記側壁の内側から、前記溝部内に差し込まれた前記フレーム部の水平方向の両端に向けて固定部材を押し込み、前記フレーム部を前記溝部の内壁に対して当接させることにより、前記パネル部材を前記柱部材に対して固定し、
前記柱部材は、H形鋼の一側のフランジに対してCT形鋼のウェブを接合した部材で構成され、
前記CT形鋼のフランジ及び前記ウェブと前記H形鋼の一側のフランジとにより、前記溝部が構成される、コークス炉用仮設上屋の建設方法。
【請求項3】
相互に間隔を空けて立設される複数の柱部材と、前記複数の柱部材の間に配置される複数のパネル部材とを用いて、コークス炉用仮設上屋の側壁を形成する第1工程と、
前記パネル部材を前記柱部材に固定する第2工程と、
前記複数の柱部材の間に立設された中間柱部材に対して、前記パネル部材を締結部材により固定する第3工程と、
を含み、
前記パネル部材は、壁板部と、前記壁板部の周囲に設けられたフレーム部とを備え、
前記柱部材の側面には、前記柱部材の長手方向に沿って溝部が設けられており、前記複数の柱部材の前記溝部が相互に対向するように、前記複数の柱部材が配置され、
前記第1工程では、一対の前記柱部材の一対の前記溝部に、前記パネル部材の前記フレーム部の水平方向の両端を、鉛直方向上方から差し込むようにして、前記一対の柱部材の間に前記複数のパネル部材を挿入して、前記複数のパネル部材を鉛直方向で上下に積み重ねることにより、前記側壁を形成し、
前記第2工程では、前記側壁の内側から、前記溝部内に差し込まれた前記フレーム部の水平方向の両端に向けて固定部材を押し込み、前記フレーム部を前記溝部の内壁に対して当接させることにより、前記パネル部材を前記柱部材に対して固定し、
前記柱部材は、H形鋼の一側のフランジに対してCT形鋼のウェブを接合した部材で構成され、
前記CT形鋼のフランジ及び前記ウェブと前記H形鋼の一側のフランジとにより、前記溝部が構成される、コークス炉用仮設上屋の建設方法。
【請求項4】
前記フレーム部は、矩形状のフレームからなり、
前記矩形状のフレームは、前記パネル部材の鉛直方向の上下縁において水平方向に延びる第一のフレームを有し、
前記複数のパネル部材が積み重ねられた際に、鉛直方向に隣接する前記パネル部材の内、鉛直方向の上側の前記パネル部材の下縁の前記第一のフレームと、鉛直方向の下側の前記パネル部材の上縁の前記第一のフレームとが、互いに当接する、請求項1~3のいずれか一項に記載のコークス炉用仮設上屋の建設方法。
【請求項5】
前記柱部材の所定の高さ位置にストッパーが突設されており、
前記一対の柱部材の間に積み重ねられた前記複数のパネル部材のうち鉛直方向最下部に位置する前記パネル部材が前記ストッパーに支持されることにより、当該パネル部材の鉛直方向下方に開口部が形成される、請求項1~4のいずれか一項に記載のコークス炉用仮設上屋の建設方法。
【請求項6】
前記開口部は、コークス炉の炉団長方向に沿って形成される、請求項に記載のコークス炉用仮設上屋の建設方法。
【請求項7】
前記パネル部材の前記フレーム部は、H形鋼で構成される、請求項1~のいずれか一項に記載のコークス炉用仮設上屋の建設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークス炉用仮設上屋の建設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コークス炉は、コークスを生成するための窯炉である。コークス炉は、コンクリート基礎の上に炉体を構築することによって建設されるが、耐火レンガを積んで炉体を構築するために、コークス炉の建設には長期間を要する。一方で、炉体の構築中や昇温中には耐火レンガを水濡れから守る必要があるため、コークス炉の建設中には、炉体を覆う仮設上屋が建設される。
【0003】
仮設上屋の建設に際しては、コークス炉の建設工程に影響が出ないよう、出来るだけ迅速な建設方法が求められる。さらに、コークス炉の建設作業の終了後は、仮設上屋を速やかに撤去できることも必要である。
【0004】
一般的な建設工期の短縮方法として、下記特許文献1には、建屋の骨組みを成す柱に外壁パネルをボルトとナットとの締結構造により取り付ける工法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開昭50-83019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1に記載の技術は、コークス炉用の仮設上屋への適用を想定していない。そのため、上記特許文献1に記載の技術では、コークス炉用仮設上屋において求められる工期短縮には十分でないという問題があった。また、コークス炉用仮設上屋については、短工期での解体も必要となるが、上記特許文献1に記載の技術では解体作業については考慮されていないという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、コークス炉用仮設上屋の建設および解体工期の短縮を実現することが可能な、新規かつ改良されたコークス炉用仮設上屋の建設方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、相互に間隔を空けて立設される複数の柱部材と、上記複数の柱部材の間に配置される複数のパネル部材とを用いて、コークス炉用仮設上屋の側壁を形成する第1工程と、上記パネル部材を上記柱部材に固定する第2工程と、を含み、上記パネル部材は、壁板部と、上記壁板部の周囲に設けられたフレーム部とを備え、上記柱部材の側面には、上記柱部材の長手方向に沿って溝部が設けられており、上記複数の柱部材の上記溝部が相互に対向するように、上記複数の柱部材が配置され、上記第1工程では、一対の上記柱部材の一対の上記溝部に、上記パネル部材の上記フレーム部の水平方向の両端を、鉛直方向上方から差し込むようにして、上記一対の柱部材の間に上記複数のパネル部材を挿入して、上記複数のパネル部材を鉛直方向で上下に積み重ねることにより、上記側壁を形成し、上記第2工程では、上記パネル部材の上記フレーム部の水平方向の左右両端に向けて上記側壁の内側から固定部材を押し込み、上記フレーム部を上記溝部の内壁に対して当接させることにより、上記パネル部材を上記柱部材に対して固定する、コークス炉用仮設上屋の建設方法が提供される。
【0009】
前記フレーム部は、矩形状のフレームからなり、前記矩形状のフレームは、前記パネル部材の鉛直方向の上下縁において水平方向に延びる第一のフレームを有し、前記複数のパネル部材が積み重ねられた際に、鉛直方向の上側の前記パネル部材の下縁の前記第一のフレームと、鉛直方向の下側の前記パネル部材の上縁の前記第一のフレームとが、互いに当接してもよい。
【0010】
上記柱部材の所定の高さ位置にストッパーが突設されており、上記一対の柱部材の間に積み重ねられた上記複数のパネル部材のうち鉛直方向最下部に位置する上記パネル部材が上記ストッパーに支持されることにより、当該パネル部材の鉛直方向下方に開口部が形成されてもよい。
【0011】
上記開口部は、上記コークス炉の炉団長方向に沿って形成されてもよい。
【0012】
上記複数の柱部材の間に立設された中間柱部材に対して、上記パネル部材を締結部材により固定する第3工程、をさらに含んでもよい。
【0013】
上記パネル部材の上記フレーム部は、H形鋼で構成されてもよい。
【0014】
上記柱部材は、H形鋼の一側のフランジに対してCT形鋼のウェブを接合した部材で構成され、上記CT形鋼のフランジ及び上記ウェブと上記H形鋼の一側のフランジとにより、上記溝部が構成されてもよい。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように本発明によれば、コークス炉仮設上屋の建設または解体工期を短縮することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の実施形態に係るコークス炉用仮設上屋の立面図である。
図2】同実施形態に係るコークス炉用仮設上屋のX-Z平面断面図である。
図3】同実施形態に係るコークス炉用仮設上屋をX方向視した図である。
図4】同実施形態に係るコークス炉用仮設上屋を図3とは反対方向視した図である。
図5A】同実施形態に係る柱部材の正面図である。
図5B】同実施形態に係る柱部材の側面図である。
図5C】同実施形態に係る柱部材の図5AにおけるI-I’端面図である。
図6】同実施形態に係るパネル部材の正面図である。
図7】同実施形態に係るパネル部材を積み重ねた状態を示す部分断面図である。
図8】同実施形態に係るパネル部材の水平方向端部が柱部材に固定される構造を示す部分断面図である。
図9】同実施形態に係るパネル部材の水平方向中間部が柱部材に固定される構造を示す部分断面図である。
図10A】同実施形態に係るコークス炉用仮設上屋の建設方法を示すフローチャートである。
図10B】同実施形態に係るコークス炉用仮設上屋の建設方法を示すフローチャートである。
図10C】同実施形態に係るコークス炉用仮設上屋の側壁の建設作業を示す図である。
図10D】同実施形態に係るコークス炉用仮設上屋のパネル部材の固定作業を示す図である。
図11】本発明の第2の実施形態に係る搬送用ラックの正面図である。
図12】同実施形態に係る搬送用ラックの図11におけるI-I’断面図である。
図13A】同実施形態に係る搬送用ラックの搬送用ラックの基体部を示す図である。
図13B】同実施形態に係る搬送用ラックの搬送用ラックの蓋フレーム部を示す平面図である。
図14A】同実施形態に係る図12におけるD部分を拡大した図である。
図14B】同実施形態に係る図12におけるE部分を拡大した図である。
図15A】同実施形態に係る搬送用ラックを用いてパネル部材が搬送される様子を示す図である。
図15B】同実施形態に係る搬送用ラックを用いてパネル部材が搬送される様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0018】
<1.第1の実施形態>
[コークス炉用上屋の概略構成]
まず、図1および図2を参照して、本発明の第1の実施形態に係るコークス炉用仮設上屋100(以下、単に「仮設上屋100」ということがある。)の概略構成について説明する。図1は、本実施形態に係る仮設上屋100の立面図である。また、図2は、本実施形態に係る仮設上屋100のX-Z平面断面図である。
【0019】
図1に示すように、本実施形態に係るコークス炉用仮設上屋100は、コークス炉1を外方から覆うようにして設けられた上屋である。図2に示すように、コークス炉1は、コンクリート基礎2の上に炉体3を有する。コークス炉用仮設上屋100は、コークス炉1の建設作業の際に短期間のみ設けられ、炉周辺設備の移送、設置や、築炉作業の間の炉体の雨濡れ防止等を目的としている。
【0020】
コークス炉用仮設上屋100においては、図示しない鋼鉄製骨格に、板状部材が取り付けられている。コークス炉用仮設上屋100は、コークス炉1の側方を覆う側壁101と、コークス炉1の上方を覆う屋根103とを有する。側壁101は、図1に示すY方向(コークス炉1の長手方向(炉団長方向))に延在する第一の側壁101aと、X方向(コークス炉1の短手方向(炉長方向))に延在する第二の側壁101bとを含む。側壁101の下方には、開口部105が設けられて、築炉用の設備や資材の搬出入が容易となっている。また、図2に示すように、コークス炉用仮設上屋100の屋根103にはホイストクレーン107が設けられ、築炉作業等に使用される。コークス炉用仮設上屋100の側方には、資材などを一時的に保管するための下屋200が設けられていてもよい。コークス炉用仮設上屋100の高さは、例えば30m程度である。
【0021】
[コークス炉用仮設上屋の側壁]
続いて、図3および図4を参照しながら、本実施形態に係るコークス炉用仮設上屋100の側壁について説明する。図3は、本実施形態に係るコークス炉用仮設上屋100をX方向視した図であり、図4は本実施形態に係るコークス炉用仮設上屋100を図3とは反対方向視した図である。
【0022】
図3に示すように、側壁101は、複数の柱部材110(第1の柱部材)と、当該複数の柱部材110の間に配置された複数のパネル部材120と、中間柱部材115(第2の柱部材)とから構成される。
【0023】
具体的には、複数のパネル部材120が、相隣接する一対の柱部材110、110の間に、柱部材110の長手方向(鉛直方向Z)に沿って積み重ねられることで、側壁101が構成されている。柱部材としては、複数の柱部材110のみが設けられてもよいが、本実施形態では、中間柱部材115が、相隣接する一対の柱部材110、110の間に設けられている。この中間柱部材115を設けることにより、パネル部材120の水平方向中間部を支持することができる。
【0024】
[柱部材]
続いて、図5A~5Cを参照しながら、柱部材110について説明する。図5Aは、本実施形態に係る柱部材110の正面図である。図5Bは、本実施形態に係る柱部材110の側面図である。図5Cは、本実施形態に係る柱部材110の図5AのI-I’端面図である。
【0025】
図5Aに示すように、柱部材110は、鉛直方向に延在された柱状の部材であり、パネル部材120とともに側壁101を構成する。本実施形態に係る柱部材110は、例えば、H形鋼111で構成されるが、他の断面形状を有する部材で構成されてもよい。柱部材110は、ストッパー113と、土台部114とを有する。
【0026】
図5Cに示すように、柱部材110における側壁101の外方側の側面(H形鋼111の外方側フランジ111b)には、柱部材110の延在方向に沿って、所定の長さに亘って、CT形鋼112が取り付けられてもよい。H形鋼111にCT形鋼112が取り付けられることにより、図5Bおよび図5Cに示すように、柱部材110に溝部130が形成される。すなわち、H形鋼111の外方側フランジ111bに、CT形鋼112のウェブ112cの端部が溶着されることで、CT形鋼112のフランジ112aと、H形鋼111の外方側フランジ111bとの間に、断面コの字型の溝部130が形成される。
【0027】
また、本実施形態に係る柱部材110として、H形鋼111とCT形鋼112が用いられる例を説明したが、本発明の柱部材はかかる例に限定されない。例えば、柱部材は、両側面に溝部が形成可能な部材であれば、H形鋼111とCT形鋼112の組合せ以外にも、例えば、その他の断面H字形状の部材と断面T字形状の部材との組合せ、或いは、その他の部材の組合せで構成されてよいし、1つの部材で構成されてもよい。
【0028】
図5Cに示すように、1つの柱部材110のY方向両側の側面に、一対の溝部130、130が形成される。このため、Y方向に複数の柱部材110を等間隔で立設すると(図3等参照。)、相隣接する一対の柱部材110、110において、一方の柱部材110の溝部130と、他方の柱部材110の溝部130とが互いにY方向に対向する。かかる溝部130には、パネル部材120の端部が上方から差し込まれて、パネル部材120の端部が溝部130内を鉛直方向に移動可能となっている。従って、一対の溝部130、130は、パネル部材120の鉛直方向の移動をガイドする機能を有する。
【0029】
図5A図5Bに示すように、柱部材110の所定の高さ位置には、ストッパー113が突設されている。ストッパー113は、一対の柱部材110、110の間に挿入されたパネル部材120を下方から支持する機能を有する。また、ストッパー113は、側壁101の下方に設けられる開口部105を形成する機能も有する。すなわち、一対の柱部材110、1110の間に積み重ねられた複数のパネル部材120のうち、鉛直方向最下部に位置するパネル部材120の下端とストッパー113とが当接する。これにより、当該鉛直方向最下部に位置するパネル部材120がストッパー113に支持される。この結果、図3及び図4に示すように、ストッパー113よりも下方には所定の開口高さを有する開口部105が形成される。従って、ストッパー113の位置を変更することで、開口部105の開口高さを自由に変更することができる。
【0030】
柱部材110の下端には土台部114が設けられている。土台部114が、地面に設けられたコンクリート製の基礎にアンカーボルトで固定されていることで、柱部材110が起立した状態で地面に固定されている。
【0031】
[パネル部材]
続いて、図6及び図7を参照しながら、本実施形態に係るパネル部材120について説明する。図6は、本実施形態に係るパネル部材120の正面図である。図7は、本実施形態に係るパネル部材120を積み重ねた状態を示す部分断面図である。
【0032】
図6に示すように、パネル部材120は、例えば、正面視で長方形状の板状の部材であって、複数の柱部材110とともに、側壁101を形成する。パネル部材120は、フレーム部121と、壁板部123とを備える。
【0033】
フレーム部121は、例えば、パネル部材120の少なくとも外縁に設けられる矩形状のフレームである。フレーム部121は、パネル部材120が矩形の平坦形状を維持するように、パネル部材120を補強する機能を有する。例えば、鋼鉄製の長尺部材を互いに溶着することによって、フレーム部121が構成される。フレーム部121は、パネル部材120の水平方向に延びる第一のフレーム121a、121aと、パネル部材120の水平方向両端部で、鉛直方向に延びる第二のフレーム121b、121bとから構成される。また、フレーム部121は、パネル部材120の水平方向中間部において、鉛直方向に延びる第三のフレーム121cを有してもよい。パネル部材120の水平方向両端部を構成する第二のフレーム121b、121bは、横断面視でH字形状の部材、例えば、H形鋼から構成されてもよい。しかし、第二のフレーム121bは、かかる例に限定されず、例えば、断面L字型、T字型またはロの字型など、任意の断面形状を有する部材で構成されてもよい。
【0034】
図7に示すように、複数のパネル部材120が積み重ねられた際に、鉛直方向に隣接するパネル部材120の内、上側のパネル部材120の下縁の第一のフレーム121aと、下側のパネル部材120の上縁の第一のフレーム121aとが互いに当接する。これにより、側壁101の上方側から下方側へ荷重が伝達される。さらに、各パネル部材120の第二のフレーム121bは、柱部材110の長手方向(鉛直方向Z)に沿って延在しており、積み重ねられた複数のパネル部材120の鉛直方向の荷重を支持する。
【0035】
図6に示すように、壁板部123は、パネル部材120の側面を構成する薄板状の部材であり、フレーム部121の一側面に取り付けられる。鉛直方向に積み重ねられた複数のパネル部材120の壁板部123により、側壁101の壁面が形成される。壁板部123は、図6に示すように、部分的に波状の凹凸が形成された波板で構成すれば、壁板部123の強度が高まり、変形を防止できるが、平板などで構成されてもよい。壁板部123は、フレーム部121に対して、リベットまたはタッピンねじ等の公知の締結部材126によって固定されている。
【0036】
図6及び図7に示すように、壁板部123のパネル部材120の鉛直方向一端側には、水切り板125が、パネル部材120の水平方向に沿って取り付けられてもよい。水切り板125は、例えば、薄板を折り曲げ加工した部材で構成されてもよい。水切り板125の一端側は、例えば、締結部材126によりパネル部材120に取り付けられる。水切り板125の他端側はパネル部材120から離間するように屈曲され、さらに下方へ屈曲されて、他端は下方へ延出されている。図7に示すように、水切り板125は、積み重ねられたパネル部材120、120の接合箇所を上方及び側方から覆うように配置されている。また、壁板部123のパネル部材120の水平方向両端部には、平板部127が取り付けられてもよい。また、壁板部123の一部を切開することで、壁板部123に開口(図示せず。)を設け、当該開口に換気設備が取り付けられてもよい。
【0037】
続いて、図8を参照しながら、本実施形態に係るパネル部材120の柱部材110に対する固定構造について説明する。図8は、本実施形態に係るパネル部材120の水平方向両端部が柱部材110に固定される構造を示す部分断面図である。図8に示すように、パネル部材120の水平方向両端部が、両側の柱部材110、110の溝部130、130に差し込まれた状態で、当該パネル部材120が固定部材140により柱部材110に対して固定される。
【0038】
具体的には、H形鋼111の側壁101の外方側の側面(外方側フランジ111b)において、柱部材110の長手方向に沿って複数の貫通孔が設けられる。当該複数の貫通孔には、それぞれナット142が溶着されており、当該ナット142に固定部材140としてのボルト141が螺合させられながら、押し込まれる。ボルト141がある程度押し込まれると、ボルト141の先端141aが、第二のフレーム121bに当接される。さらに、ボルト141が押し込まれると、ボルト141を介して第二のフレーム121bが押し込まれて、内壁131に当接され、パネル部材120は柱部材110に対して固定される。
【0039】
なお、本実施形態に係る固定部材140として、押し込みボルトでパネル部材120を柱部材110に固定する構成を挙げたが、本発明はこれに限定されない。固定部材140は、パネル部材120の第二のフレーム121bを溝部130の内壁131に当接させ、柱部材110に対して固定させることができればよい。
【0040】
続いて、図9を参照しながら、本実施形態に係るパネル部材120の柱部材110に対する固定構造について説明する。図9は、本実施形態に係るパネル部材120の水平方向中間部が中間柱部材115に固定される構造を示す部分断面図である。図9に示すように、パネル部材120は、複数の柱部材110の間に立設された中間柱部材115に対して、締結部材150により固定されてもよい。
【0041】
具体的には、パネル部材120を、一対の柱部材110、110の間に積み重ねると、パネル部材120の水平方向中間部を構成する第三のフレーム121cが、中間柱部材115の近傍に配置される。この時、中間柱部材115と第三のフレーム121cとが締結部材150によって固定されてもよい。締結部材150としては、ボルト151及びナット152からなる公知の締結部材が挙げられる。
【0042】
具体的には、中間柱部材115の側壁101の外方側フランジ115bに、中間柱部材115の長手方向に沿って複数の貫通孔が設けられる。また、パネル部材120の第三のフレーム121cにも、中間柱部材115の外方側フランジ115bに設けられた貫通孔に対応する位置に複数の貫通孔が設けられている。ボルト151は、外方側フランジ115bの複数の貫通孔を挿通され、当該貫通孔に対応する第三のフレーム121cの貫通孔にも挿通される。すなわち、ボルト151が、中間柱部材115と第三のフレーム121cとの間に架け渡された状態となる。この状態でナット152がボルト151と螺合され、ボルト151がそれぞれ、中間柱部材115と第三のフレーム121cと固定される。最終的に、中間柱部材115に対して、パネル部材120が固定される。
【0043】
なお、本実施形態に係る締結部材150として、ボルトとナットを用いて、パネル部材120を中間柱部材115に固定する例を挙げたが、本発明は、かかる例に限定されない。締結部材150は、パネル部材120の第三のフレーム121cを中間柱部材115に対して固定させることができれば、他の公知の締結部材を用いてもよい。
【0044】
以上、本実施形態に係るコークス炉用仮設上屋100ならびに側壁101および、それらを構成する部材の構造について説明した。以下、本実施形態に係るコークス炉用仮設上屋100の建設方法について説明する。
【0045】
[仮設上屋の建設方法]
図10A図10Dを参照しながら、本実施形態に係るコークス炉用仮設上屋100の建設方法について説明する。図10Aおよび図10Bは、本実施形態に係るコークス炉用仮設上屋100の建設方法を示すフローチャートである。また、図10Cは、本実施形態に係るコークス炉用仮設上屋100の側壁101の建設作業を示す図である。また、図10Dは、本実施形態に係るコークス炉用仮設上屋100のパネル部材120の固定作業を示す図である。
【0046】
図10Aおよび図10Bに示すように、本実施形態に係るコークス炉用仮設上屋100の建設方法では、まず、パネル部材120を含む建設用資材が、仮設上屋100の建設現場へと搬入される(S101)。続いて、仮設上屋100の側壁101の設置予定箇所に、柱部材110と中間柱部材115を含む柱部材が、所定間隔で立設される(S103)。その後、パネル部材120と柱部材を用いて側壁101が形成される(S105)。
【0047】
ここで、図10B図10Cを参照して、ステップS105における側壁101の形成工程について、詳細に説明する。側壁101の形成工程において、図10Cに示すように、搬入されたパネル部材120は、クレーンCなどの吊り上げ装置を利用して、一枚ずつ柱部材110の上方へ移動される。その後、パネル部材120の水平方向両端部が、鉛直方向上方から、一対の柱部材110,110に設けられた対向する一対の溝部130、130に差し込まれるように、パネル部材120は、一対の柱部材110、110の間に挿入され、徐々に下方(図10Cの矢印方向)へ移動される(S113)。
【0048】
このようにして、複数のパネル部材120は、一枚ずつ、一対の柱部材110、110の間に挿入されていく。パネル部材120が挿入されるとき、パネル部材120の水平方向両端部が溝部130にガイドされる。挿入されたパネル部材120は、溝部130の下端に設けられたストッパー113、または既に差し込まれたパネル部材120に接触するまで、下方へ移動される。この結果、一対の柱部材110、110の間に、複数のパネル部材120が、鉛直方向に上下に積み重ねられる(S115)。
【0049】
積み重ねられたパネル部材120が所定高さとなるまで、ステップS113およびステップS115の作業が繰り返される(S117)。パネル部材120が所定の高さまで積み重ねられた後で側壁の形成は終了する。
【0050】
次に、図10Aに戻り、上記の側壁形成工程(S105)の後工程について説明する。パネル部材120が、柱部材110に対して固定される(S107)。この固定工程S107では、まず足場Sが設置される。次に、例えば、図10Dに示すように、作業員Wが簡易的な足場Sに載った状態で、パネル部材120を柱部材110に固定する作業を行う。具体的には、作業員Wは、側壁101の屋内側から、溝部130内に差し込まれたフレーム部121の水平方向両端に向けて、工具Kを用いて固定部材140としてのボルト141をナット142に螺合させて押し込む。この結果、図8で示したように、ボルト141の先端141aが、第二のフレーム121bに当接される。さらに、ボルト141が押し込まれると、ボルト141を介して第二のフレーム121bが押し込まれて、内壁131に当接されて、パネル部材120は、柱部材110に対して固定される。この固定作業が、積み重ねられた複数のパネル部材120に対して行われる。
【0051】
固定作業は、パネル部材120がすべて積み重ねられた後に行われてもよいし、パネル部材120が一枚設置される度に行われてもよい。また、固定作業と同時に、中間柱部材115とパネル部材120の水平方向中間部との締結部材150との締結作業が、併せて行われてもよい。
【0052】
上記の側壁形成工程(S105)及びパネル固定工程(S107)により、側壁101が形成された後、側壁101の上部に、仮設上屋100の屋根103が形成される(S109)。次いで、側壁形成工程(S105)、パネル固定工程(S107)、および屋根形成工程(S109)が完了した後、作業用の足場が撤去され(S111)、仮設上屋100の建設は終了する。
【0053】
なお、仮設上屋100の第一の側壁101aと第二の側壁101b(図1図2参照。)のいずれも、上記の方法により建設され得る。また、仮設上屋100の側壁101だけでなく、下屋200についても同様な方法で建設され得る。
【0054】
(作用効果)
本実施形態に係るコークス炉用仮設上屋100の建設方法によれば、側壁101を構成するパネル部材120をユニット化し、積み重ねて側壁101を形成するようにしたので、通常の外壁材を上屋骨格に取り付けていく従来工法に比較して、工期を短縮でき、作業コストを大幅に削減できる。
【0055】
すなわち、従来は、上屋骨格の周囲に外部足場を設けてから、作業員が外壁材を骨格に直接取り付けていたため、足場の設置、解体に工数および作業コストが多くかかっていた。また、外壁材の取り付け、取り外し作業自体も、煩瑣かつ労力を要する作業であった。一方、本実施形態によれば、ユニット化したパネル部材120をクレーン等で吊り上げ、積み重ねることで側壁101を簡単かつ迅速に形成できるので、外部足場が不要で、工期短縮かつコスト削減ができ、作業員の数も減らすことができる。さらに、煩瑣な外壁材の取り付け作業も不要である。また、仮設上屋100の解体作業も、同様に工期短縮、コスト削減等が可能である。
【0056】
また、本実施形態によれば、パネル部材120は、パネル部材120をフレーム部121と壁板部123と含む構成によりユニット化し、剛性を維持しつつ軽量化、小型化されている。従って、パネル部材120を複数積み重ねても、荷重によりパネル部材120が変形、破壊されることを防止でき、本実施形態に係る建設方法を実現できる。また、本実施形態によれば、パネル部材120は、フレーム部121により剛性を有するから、パネル部材120を取り付けるための胴縁材を柱部材間に別途設ける必要がなくなる。すなわち、従来は、外壁材の中間部を支持し、外壁材が取り付けられるための胴縁材という梁が、骨格の柱間に設けられていた。本実施形態によれば、パネル部材120のフレーム部121が胴縁材として壁板部123を支持しているので、胴縁材を骨格に設ける必要がなくなる。
【0057】
さらに、本実施形態によれば、パネル部材120をユニット化していることから、パネル部材120を別の現場でも再利用することができる。
【0058】
また、本実施形態によれば、溝部130が柱部材110の両側面に鉛直方向に設けられているから、一対の柱部材110、110間に複数のパネル部材120を差し込む際に、パネル部材120の積み重ね作業を行いやすい。
【0059】
また、本実施形態によれば、パネル部材120の両端部を溝部130の内壁131に当接させて、柱部材110に対して固定する。これにより、柱部材110とパネル部材120とが一体化し、側壁101全体の剛性が向上する。さらに、本実施形態によれば、パネル部材120と、柱部材110等の他の部材との隙間が無いので、外部から仮設上屋100内への雨水などの侵入を防止できる。
【0060】
さらに、本実施形態によれば、パネル部材120を柱部材110に対して押し込んで固定するので、積み重ねられたパネル部材120、120が相互に位置合わせされる。この結果、積み重ねられたパネル部材120の荷重が、当該パネル部材120自体を通じて上方側から下方側へ伝達される。また、本実施形態によれば、パネル部材120を押し込みにより固定するので、パネル部材120の両端部において、例えば、締結用の穴同士の位置合わせ等が不要となり、パネル部材120に対し高い寸法精度が要求されない。さらに、本実施形態によれば、取り外し容易なボルト141を用いて、パネル部材120を固定するので、建設、解体作業が容易になる。
【0061】
また、本実施形によれば、柱部材110の所定の高さ位置にストッパー113を設けることにより、側壁101の下方部分に開口部105を容易に形成することができる。これにより、資材や設備の搬入が容易になり、仮設上屋100における築炉作業が容易になる。
【0062】
さらに、本実施形態によれば、柱部材110に設置されるストッパー113の高さ位置を調整することで、開口部105の開口高さを変更できる。これにより、仮設上屋100において要求される、コークス炉1の築炉作業のため開口範囲の設計変更に対応しやすい。
【0063】
また、本実施形態によれば、パネル部材120の水平方向中間部において、締結部材150によりパネル部材120が中間柱部材115に固定され得る。これにより、側壁101全体の剛性がさらに向上するとともに、胴縁材が不要になる。
【0064】
また、本実施形態によれば、パネル部材120の水平方向両端部は、H形鋼から構成され得る。これにより、パネル部材120の両端部が、パネル部材120の鉛直方向に十分な耐荷重を有する。従って、溝部130に両端部が差し込まれ、パネル部材120が複数積み重ねられても、パネル部材120の変形や破壊を防止できる。さらに、溝部130内で、鉛直方向にH形鋼を有するので、側壁101全体の剛性がさらに向上する。
【0065】
また、本実施形態によれば、CT形鋼112がH形鋼111に取り付けられることで、柱部材110の溝部130が形成される。これにより、比較的簡便な構造で溝部130を形成することができる。
【0066】
<2.第2の実施形態>
以上、本発明に係る第1の実施形態について説明した。ここからは、本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態に係るコークス炉用仮設上屋の建設方法は、パネル部材120を搬送するためのラックおよびそれを用いた搬送方法を含む点で、第1の実施形態と相違する。第2の実施形態では、効率的にパネル部材120を搬送することで、さらに仮設上屋の建設または解体に掛かる工期の短縮、コスト削減を実現できる。なお、その他の点については、第1の実施形態と共通するので説明は省略する。
【0067】
[搬送用ラックの構造]
以下に、図11~14を参照しながら、第2の実施形態に係る搬送方法に使用する搬送用ラックについて説明する。図11は、本実施形態に係る搬送用ラック300の正面図である。本実施形態に係る搬送用ラック300には、複数のパネル部材120が、縦置き状態(図11のC方向にパネル部材120の短手方向が沿うように配置された状態)で載置される。搬送用ラック300は、蓋フレーム部310と本体フレーム部320とを有する。蓋フレーム部310および本体フレーム部320は、主にH形鋼などの鋼材を溶着して構成される。
【0068】
図12は、搬送用ラック300の図11におけるI-I’断面図である。図12に示すように、後述する本体フレーム部320には、複数のパネル部材120が、後述する基体部321により下方側から支持されて、縦置き状態で並んで載置される。本体フレーム部320は、基体部321と、基体部321から立設された第一の立設部323aと、基体部321から立設された第二の立設部323bとを有する。
【0069】
図12に示すように、第一の立設部323aは、第一の基体部材321aから、C方向に立設された柱部材であり、B方向に複数並んで設けられている。第一の立設部323aが、パネル部材120の水平方向に沿うことで、パネル部材120を縦置き状態で搬送用ラック300に載置可能としている。第二の立設部323bは、第二の基体部材321bから立設された柱部材であり、A方向に複数並んで設けられている。第二の立設部323bは、第二の基体部材321bに取り付けられた側と反対側の端部において、A方向に延在された長尺部材323cに取り付けられ、一体化されている。また、第二の基体部材321bと第二の立設部323bとは、補強側端部材323dにより一体化されている。これにより、第二の立設部323bは、搬送用ラック300のB方向の両側端部を形成している。
【0070】
図13Aは、搬送用ラック300の基体部321を示す図であり、図11のII-II’断面図である。図13Aに示すように、基体部321は、B方向に延在する第一の基体部材321aと、A方向に延在する第二の基体部材321bと、補強基体部材321cとから成る矩形状のフレームである。第二の基体部材321bの長手方向の長さは、パネル部材120の長手方向の長さと同程度か、パネル部材120の長手方向の長さよりも短く設定されている。
【0071】
図13Bは、搬送用ラック300の蓋フレーム部310を示す平面図である。蓋フレーム部310は、本体フレーム部320の上方に取り付けられて、パネル部材120を上方から固定する機能を有する。図13Bに示すように、蓋フレーム部310は、B方向に延在する第一の蓋部材311aと、A方向に延在する第二の蓋部材311bとから構成された、矩形状のフレームである。蓋フレーム部310は、さらにパネル部材120を固定するための蓋側固定部313と、搬送用ラック300が上方から支持され、吊り上げ可能とされる被支持部315とを有する。
【0072】
図14Aは、図12におけるD部分を拡大した図である。図14Aに示すように、パネル部材120は、第一の立設部323aに沿って、縦置き状態で搬送用ラック300に載置される。さらに、パネル部材120の蓋フレーム部310側の短手方向の一端部は、蓋側固定部313によって第一の立設部323aに対して、固定されている。具体的には、パネル部材120の一端部は、蓋側固定板313cと第一の立設部323aとの間に保持されている。ボルト313aは、蓋側固定板313cに形成された貫通孔に溶着されたナット313bに螺合されて、パネル部材120の一端部に向かって押し込まれている。この結果、パネル部材120が、第一の立設部323aに当接させられている。これにより、パネル部材120が搬送用ラック300に対して固定されている。
【0073】
図14Bは、図12におけるE部分を拡大した図である。図14Bに示すように、パネル部材120の短手方向の他端部は、第一の基体部材321aに設けられた基体側固定部323によって、第一の立設部323aとの間で挟持され、固定されている。また、第一の基体部材321aは、水切り板用溝325を有してもよい。水切り板用溝325は、第一の基体部材321aの延在方向とは直交する方向に延在する凹部である。パネル部材120が、搬送用ラック300に載置された状態で、パネル部材120の短手方向端部に設けられた水切り板125の先端側が、水切り板用溝325内に収容される。
【0074】
以上、第2の実施形態に係るパネル部材120の搬送方法に用いる搬送用ラック300の構造について説明した。以下、第2の実施形態に係るパネル部材120の搬送方法およびコークス炉用仮設上屋100の建設方法について説明する。第2の実施形態に係るコークス炉用仮設上屋100の建設方法は、上述した第1の実施形態に係る図10Aの資材搬入工程S101において、資材搬入に搬送用ラック300を用いる点に特徴がある。なお、それ以外の工程については、第1の実施形態に係る図10Aのフローチャートと同様である。
【0075】
[建設方法およびパネル部材の搬送方法]
まず、第2の実施形態に係るパネル部材120が、仮設上屋100の建設現場から離れた場所において、所定の数だけ作成される。パネル部材120の作成方法の一例としては、予め作成されたフレーム部121を作業スペースに平置きして、壁板部123等を固定していく方法がある。
【0076】
作成されたパネル部材120は、一枚ごとにクレーンCなどで吊り上げられ、移動されて、上方から搬送用ラック300の本体フレーム部320に向かって降ろされる。パネル部材120は、本体フレーム部320の第一の立設部323aに沿って、縦置き状態で搬送用ラック300に載置され、基体側固定部323により固定される。さらに、搬送用ラック300に所定の枚数だけパネル部材120を載置した後、蓋フレーム部310が、本体フレーム部320の上方に取り付けられる。この時、パネル部材120は、蓋側固定部313によっても固定される。
【0077】
図15Aおよび図15Bは、搬送用ラック300に載置されてパネル部材120が搬送される様子を示す図である。図15Aに示すように、パネル部材120が載置された搬送用ラック300は、被支持部315を介してクレーンCなどにより吊り上げられ、移動されて、搬送手段Tの荷台に載せられる。複数のパネル部材120は、搬送用ラック300にまとめて載置された状態で、搬送手段Tによって建設現場へと搬送される。図15Bに示すように、建設現場において、搬送用ラック300ごと、複数のパネル部材120が荷下ろしされる。搬送用ラック300に載置されたパネル部材120は、その後、搬送用ラック300から、クレーンCなどにより直接吊り上げられ、仮設上屋100の建設に用いられる。
【0078】
以上のように、本実施形態における資材搬入工程は、パネル部材120の短手方向を鉛直方向とした縦置き状態に保持する搬送用ラック300に複数のパネル部材120を載置する工程と、複数のパネル部材120が載置された搬送用ラック300を搬送手段Tにより搬送する工程と、搬送された搬送用ラック300を複数のパネル部材120が載置された状態で、搬送手段Tから荷下ろしする工程とを含んでもよい。
【0079】
また、本実施形態における搬送用ラック300は、フレーム部121と壁板部123とを有するパネル部材120を搬送するためのラックであって、パネル部材120を下方から支持する基体部321と、基体部321から立設され、パネル部材120を側面から支持するとともに、パネル部材120を、パネル部材120の短手方向を鉛直方向とした縦置き状態に保持する複数の立設部と、フレーム部121の下端部を、立設部の下部との間で挟持し、固定する固定部とを有し、複数のパネル部材120が複数の立設部の間に載置されて搬送される、ラックであってもよい。
【0080】
また、上記基体部321は、パネル部材120の長手方向に沿って延在され、パネル部材120の長手方向長さと同程度または、パネル部材120の長手方向長さよりも短く設定されていてもよい。また、上記立設部は、少なくとも上記基体部321の長手方向端部に設けられた柱状部材であり、高さがパネル部材120の短手方向長さと同程度に設定されていてもよい。
【0081】
また、搬送用ラック300には、吊り下げ用の被支持部315が設けられてもよい。また、搬送用ラック300上方には蓋フレーム310が取り付け可能とされてもよい。また、基体部321にはパネル部材120の水切り部125を収容可能な溝が設けられてもよい。
【0082】
(作用効果)
第2の実施形態に係るコークス炉用仮設上屋の建設方法によれば、搬送用ラック300を用いて、パネル部材120を複数枚同時に搬送するので、パネル部材120の搬送効率が良く、コークス炉用仮設上屋100の工期がさらに短縮される。
【0083】
また、本実施形態によれば、搬送用ラック300により効率的にパネル部材120の搬送ができるので、建設現場から離れた場所でパネル部材120を作成できる。従って、パネル部材120をより簡便かつ迅速に作成できるので、コークス炉用仮設上屋100の工期がさらに短縮される。
【0084】
また、本実施形態によれば、パネル部材120をフレーム部121と壁板部123と含む構成によりユニット化し、剛性を維持しつつ軽量化、小型化しているので、搬送用ラック300によってまとめて搬送することができ、さらに、トラックやトレーラーなどの一般的な搬送手段Tにより搬送できる。
【0085】
また、本実施形態によれば、パネル部材120を縦置き状態としたまま搬送用ラック300で搬送し、荷下ろしすることができる。この結果、搬送用ラック300から直接パネル部材120を吊り上げ、側壁101の建設方法に用いることができる。従って、コークス炉用仮設上屋100の建設工期がさらに短縮できる。
【0086】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0087】
1 コークス炉
100 コークス炉用仮設上屋
101 側壁
105 開口部
110 第一の柱部材
111 H形鋼
112 CT形鋼
113 ストッパー
115 第二の柱部材(中間柱部材)
120 パネル部材
121 フレーム部
123 壁板部
130 溝部
131 内壁
140 固定部材
150 締結部材
300 搬送用ラック
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図11
図12
図13A
図13B
図14A
図14B
図15A
図15B