(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-31
(45)【発行日】2023-11-09
(54)【発明の名称】車両用ハーネス接合構造、及び車両用シート
(51)【国際特許分類】
B60R 16/02 20060101AFI20231101BHJP
B60N 2/90 20180101ALI20231101BHJP
【FI】
B60R16/02 620Z
B60N2/90
(21)【出願番号】P 2020050072
(22)【出願日】2020-03-19
【審査請求日】2022-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】勝部 健一
(72)【発明者】
【氏名】寺田 悠馬
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-140104(JP,A)
【文献】特開2019-212510(JP,A)
【文献】実開平05-053042(JP,U)
【文献】特開2016-126992(JP,A)
【文献】特開2006-199288(JP,A)
【文献】特開2002-120669(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
B60N 2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1芯線を有
し、かつ可撓性を有する帯状のハーネス部材
であって、
前記帯状のハーネス部材は、幹線と、前記幹線と対向する面が前記幹線とは対向しないように折り返されることにより前記幹線から分岐される支線とを含み、
断面円形の第2芯線を有するハーネス部材であって、前記第2芯線の一端に平坦部が設けられ、かつ、前記帯状のハーネス部材の第1芯線の厚み方向を法線方向とする面に前記平坦部が面接触した状態で固着される丸線ハーネス部材と、
を備える車両用ハーネス接合構造。
【請求項2】
前記第1芯線と前記第2芯線とは溶接されることで固着される、請求項1に記載の車両用ハーネス接合構造。
【請求項3】
前記丸線ハーネス部材は、前記平坦部が形成された前記一端側とは反対側の他端にコネクタ部を有する請求項1又は2に記載の車両用ハーネス接合構造。
【請求項4】
前記平坦部は、前記断面円形の前記第2芯線に対してスウェージング加工を施した上で成形される、請求項1~3のいずれか1項に記載の車両用ハーネス接合構造。
【請求項5】
前記帯状のハーネス部材の総延長が、前記丸線ハーネス部材の総延長よりも長い、請求項1~4のいずれか1項に記載の車両用ハーネス接合構造。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか1項に記載の車両用ハーネス接合構造が適用されたワイヤハーネスを備える車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ハーネス接合構造、及び車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
車両における電動機構、制御装置、又は表示機器等の電力の供給を必要とする電装品に対して電力を供給するため、車両内にワイヤハーネスを配索することが求められる。例えば、下記特許文献1に記載の技術では、複数の帯状のワイヤハーネスを分岐箇所ごとに接合することで、ワイヤハーネスの分岐構造を実現している。また、下記特許文献2に記載の技術では、分岐用の回路が形成された複数のシートを重ね合わせることで、ワイヤハーネスの分岐を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-199288号公報
【文献】特開2002-120669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1及び2に記載の技術では、帯状のワイヤハーネスに対応した専用のコネクタを介して、電装品や電源側と接続しており、コネクタが専用品化しているので、コストの増大を招来する。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、帯状のワイヤハーネスのコネクタの専用品化によるコスト増を抑制することが可能な車両用ハーネス接合構造、及び車両用シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、第1芯線を有する帯状のハーネス部材と、断面円形の第2芯線を有するハーネス部材であって、上記第2芯線の一端に平坦部が設けられ、かつ、上記帯状のハーネス部材の第1芯線の厚み方向を法線方向とする面に上記平坦部が面接触した状態で固着される丸線ハーネス部材と、を備える車両用ハーネス接合構造が提供される。
【0007】
上記第1芯線と上記第2芯線とは溶接されることで固着されてもよい。
【0008】
上記丸線ハーネス部材は、上記平坦部が形成された上記一端側とは反対側の他端にコネクタ部を有してもよい。
【0009】
上記平坦部は、上記断面円形の上記第2芯線に対してスウェージング加工を施した上で成形されてもよい。
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、上記車両用ハーネス接合構造が適用されたワイヤハーネスを備える車両用シートが提供される。
【発明の効果】
【0011】
以上、説明したように本発明によれば、コネクタの専用品化によるコスト増を抑制することが可能なハーネス接合構造、及び車両用シートが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る車両用シートの構成例を示す外観斜視図である。
【
図2】同実施形態に係るシートフレームの構成例を示す外観斜視図である。
【
図3】同実施形態に係るシートフレームの構成例を示す外観底面図である
【
図4】同実施形態に係るシートフレームの構成例を示す外観側面図である
【
図5】同実施形態に係るシートフレームの構成例を示す外観背面図である。
【
図6】同実施形態に係るシートフレームの構成例を示す外観斜視図である
【
図8】同実施形態に係るFFCハーネスの平面図の一例である。
【
図9】同実施形態に係るFFCハーネスの断面図の一例である。
【
図10】同実施形態に係るFFCハーネスの余長部の近傍拡大図の一例である。
【
図11】同実施形態に係るFFCハーネスの余長部の近傍拡大図の一例である。
【
図12】同実施形態に係るFFCハーネスの余長部の一の変形例を示す図である。
【
図13】同実施形態に係るFFCハーネスの車両用シートへの取り付け前の状態を示す展開図の一例である。
【
図14】同実施形態に係るFFCハーネスの幹線から支線が分岐される様子を示す外観斜視図の一例である。
【
図15】同実施形態に係るFFCハーネスの幹線から複数の支線が分岐される様子を示す外観斜視図の一例である。
【
図16】同実施形態に係るFFCハーネスと丸線ハーネスとの固着の様子を示す平面図の一例である。
【
図17】同実施形態に係るFFCハーネスと丸線ハーネスとの固着の様子を示す側面図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<1.車両用シートの構成>
以下に添付図面を参照しながら、本発明の一の実施形態に係る車両用シート1について説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0014】
本実施形態に係る車両用シート1について
図1及び
図2を用いて説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRはシート前方側を示しており、矢印UPはシート上方側を示しており、矢印RHは右方向、矢印LHは左方向をそれぞれ示すものとする。また、左右の方向は、シート幅方向と一致している。
【0015】
図1を参照しながら、本実施形態に係る車両用シート1の概略構成について説明する。
図1には、本実施形態に係る車両用シート1が斜視図で示されている。本実施形態に係る車両用シート1は、車両(例えば、自動車等)の車室内に設置される。
図1に示すように、車両用シート1は、シートクッション2と、シートバック4と、を備えている。シートクッション2は、乗員の大腿部及び臀部を支持する。シートバック4は、乗員の背部を支持する。また、車両用シート1は、車両用シート1を車両前後方向に移動させるシートスライド機構6を有している。車両用シート1は、車両用シート1を上下方向に移動させるシートリフタ機構8を有している。すなわち、シートスライド機構6及びシートリフタ機構8は、車両用シート1の一部を成している。
【0016】
図2は、シートフレーム10の外観斜視図である。シートフレーム10は、車両用シート1の骨格を成すフレーム部材であり、一例として金属製である。
図2に示すように、シートフレーム10は、シートクッションフレーム12と、シートバックフレーム14とを備えている。シートクッションフレーム12は、シートクッション2の内部に設けられて、車両用シート1の一部を成している。また、シートバックフレーム14は、シートバック4の内部に設けられて、車両用シート1の一部を成している。
【0017】
ここで、車両用シート1及びその周辺には、各種電装品が設けられることがある。電装品には、図示しない電源から電力が供給され、電装品が所定の動作又は機能を発揮する。電装品の一例としては、車両用シート1の一部を移動させる電動機構のためのモータ等の駆動源があげられる。また、電装品の他の例としては、車載用ECU(ECU;Electronic Control Unit、以下単に「ECU」と称する)等の制御装置、又はディスプレイ、若しくはボタン等のUI(UI;User Interface)装置が挙げられる。電装品のその他の例としては、車両用シート1に取り付けられる乗員検出センサ等の検出装置が挙げられる。また、電装品のその他の例としては、車両用シート1に設けられるヒータ、又は送風機構等の温度調整機構が挙げられる。さらに、電装品のその他の例としては、外部機器に電源を供給するためのUSBコネクタ(USB;Universal Serial Bus)が挙げられる。
【0018】
車両用シート1に設けられる各種電装品へ電力を供給するため、または各種電装品間を電気的に接続するために、ワイヤハーネス(以下単にハーネスと称する)が設けられることがある。かかるハーネスは、外部が樹脂で被覆されて、内部に金属製の芯線が配置される。ハーネスを介して、車両用シート1における電装品に求められる電気的接続が確保される。
【0019】
ところで、近年の自動車に対する燃費向上及び排気ガスに含まれる二酸化炭素削減等の観点から、車両用シート1についても軽量化が求められているところである。一方で、昨今のIT技術の高度化又は普及、及び自動運転技術の搭載を見据えて、車両用シート1においても電装化が進み、車両用シート1に用いられるハーネスの使用量(距離)は増大している。
【0020】
そこで、本発明者らが鋭意検討したところ、車両用シート1におけるハーネスとして、FFC(FFC;Flexible Flat Cable)を用いたワイヤハーネス(以下単にFFCハーネスと称する)を採用することを想到した。かかるFFCハーネスは、帯状のハーネスであり、外部が樹脂で被覆され、内部に金属製の芯線が複数本配置される。かかるFFCハーネスは、従来の丸線のハーネス部材と比較して軽量であり、車両用シート1の軽量化に寄与する。一方で、FFCハーネスにおいても、従来の丸線ハーネスと同様なハーネスの配置を採ることが求められる場合がある。そこで、本発明者らが、さらに鋭意検討したところ、本発明者らは、以下に説明するようなFFCハーネスの配索構造等を想到した。
【0021】
<2.ハーネスの配索構造の概要>
以下に
図3~
図6を参照しながら、本実施形態に係るFFCハーネス20の配索構造等について説明する。
図3は、シートフレーム10の外観底面図である。
図3に示すように、FFCハーネス20は、シートクッションフレーム12に取り付けられる。具体的な一例として、シートクッションフレーム12の備えるS字スプリング12Aに取り付けられる。
図3に示すように、一例として、FFCハーネス20は、シート幅方向及び前後方向に亘って略十字状に配索される。また、FFCハーネス20は、途中で分岐されて、各種電装品や、シートクッションフレーム12以外の別の部位に延設されている。かかる略十字状の配索や、分岐構造の詳細については後述する。
【0022】
図4は、シートフレーム10の外観側面図である。
図4に示すように、FFCハーネス20は、シートクッションフレーム12のサイドフレーム12Bのシート幅方向外側に取り付けられる。FFCハーネス20は、その短手方向(幅方向)が車両用シート1の幅方向と一致するように配索される。クッションサイドフレーム12Bに沿って配索されたFFCハーネス20は、その端部が、クッションサイドフレーム12Bの後端部に設けられたシートリフタ機構8を駆動するモータ8Aに取り付けられる。
【0023】
図5は、シートフレーム10の外観背面図である。
図6は、シートフレーム10の底面側からの外観斜視図である。
図5及び
図6に示すように、FFCハーネス20は、シートクッションフレーム12からシートバックフレーム14の間に架け渡されて配索される。具体的な一例として、シートクッションフレーム12の後端側の略中央から、シートバックフレーム14に向かって上方に延設されたFFCハーネス20は、シートバックフレーム14の下端部に設けられたパイプフレーム14Bに沿って、左右一対のシートバックフレーム14の一方のサイドフレーム14Aの側へ向かうように屈曲される。さらに、
図5に示すように、FFCハーネス20は、シートバックフレーム14の一方のサイドフレーム14Aに沿って上方に延設される。FFCハーネス20は、その端部においてシートバックフレーム14に設けられたリクライニング機構の駆動源であるモータ(図示省略)に電気的に接続される。
【0024】
また、
図7は、
図6の部分拡大図である。
図6及び
図7に示すように、FFCハーネス20は、シートクッションフレーム12の前端側において、余長部21を有している。FFCハーネス20は、余長部21を介して、シートスライド機構6のモータ6Aに延設される。FFCハーネス20の余長部21は、車両用シート1が移動したときにFFCハーネス20がそれに伴って移動する際の変位を吸収可能としている。余長部21の詳細については後述する。
【0025】
図8は、FFCハーネス20の平面図の一例である。
図9は、FFCハーネス20の断面図の一例である。
図8及び
図9に示すように、FFCハーネス20は、帯状のハーネス部材である。FFCハーネス20は、幅方向並んだ複数の金属製の芯線26を樹脂から成る被覆部27で被覆することで形成されている。FFCハーネス20の寸法は、一例として幅W(短手方向長さ)は、20mm程度であり、長さ(長手方向長さ)Lは、数十cm~数m程度である。厚みtは、0.1~0.3mm程度である。なお、芯線26の本数及び断面積、並びにFFCハーネス20の外形寸法は、要求される電流値、配索条件等に応じて適宜設定されればよく、特に限定さない。
【0026】
<3.FFCハーネスの余長構造>
続いて、
図10及び
図11を参照しながら、本実施形態に係るハーネス配索構造について説明する。
図10及び
図11は、余長部21の近傍を拡大した図である。FFCハーネス20は、上記したようにシートフレーム10の一部に取り付けられることがある。シートフレーム10は、駆動機構によって各部同士が相対的に変位することがある。この場合、シートフレーム10に取り付けられたFFCハーネス20も、変位する。このとき、FFCハーネス20における変位によって張力などの負荷が生じにくくなるように、FFCハーネス20において、余長部21を設けておく場合がある。以下にFFCハーネス20の余長部21の構成について説明する。なお、説明の便宜上シートリフタ機構8によって車両用シート1が上方に変位する場合を挙げて説明する。
【0027】
先ず、
図10に示すように、FFCハーネス20は、シートクッションフレーム12とシートスライド機構6との間に架け渡されている。FFCハーネス20は、シートクッションフレーム12に取り付けられた舌片状部材12Cに対して第1係合部23によって係合されている。すなわち、車両用シート1の一部を構成する第1部位としてのシートクッションフレーム12に、FFCハーネス20が第1係合部23を介して係合されている。
【0028】
また、FFCハーネス20は、シートスライド機構6において、一対のブラケット6B間を連結する板状部材6Cに対して、第2係合部25によって係合されている。すなわち、第2部位としてのシートスライド機構6に、FFCハーネス20が第2係合部25を介して係合されている。
【0029】
ここで、FFCハーネス20が係合されるとは、車両用シート1における変位に追従可能な程度にFFCハーネス20が取り付けられていることを含み、FFCハーネス20が取り外し可能に固定されていることを含む趣旨である。なお、係合方法は特に限定されないが、一例として公知のスナップ付きハーネスクリップを用いて、スナップ部分をシートフレーム10に設けられた穴に嵌合させる方法が挙げられる。
【0030】
また、第1係合部23は、
図10に示すように、FFCハーネス20がシートクッションフレーム12側の舌片状部材12Cと面接触した状態で係合されている。さらに、第2係合部25も
図10に示すように、シートスライド機構6側の板状部材6Cと面接触した状態で係合されている。ここで、面接触とは、帯状のFFCハーネス20において、厚み方向を法線方向とする面がフレーム側の部材と対向した状態で取り付けられることを指し、直接または間接的にフレーム側の部材と接触することを含む趣旨である。
【0031】
このように、FFCハーネス20が、シートクッションフレーム12とシートスライド機構6との間に架け渡されている。ここで、シートスライド機構6は、シートリフタ機構8による上下方向の移動の際、車両用シート1に対して上下方向には非可動となる。すなわち、シートリフタ機構8による上下動によって、FFCハーネス20におけるシートクッションフレーム12とシートスライド機構6との間の距離には、変化が生じる。
【0032】
さらに、FFCハーネス20において、第1係合部23と第2係合部25との間に余長部21が設けられている。余長部21は、
図10に示すように、FFCハーネス20の幅方向視(短手方向視)で、円弧形状となる部分を有している。換言すれば、FFCハーネス20の第1係合部23と第2係合部25との間が、FFCハーネス20の短手方向視で湾曲形状となっている。
【0033】
図11に示すように、シートクッションフレーム12が、シートスライド機構6に対して相対的に変位する。具体的には、シートクッションフレーム12がシートスライド機構6に対して上方に変位する。このとき、FFCハーネス20の第1係合部23と第2係合部25との間の距離が変化する。そして、FFCハーネス20の余長部21が距離の変化を吸収する。すなわち、
図11に示すように、余長部21として円弧形状部分の半径が縮小され、直線部分の割合が多くなる。
【0034】
次に、本実施形態に係るハーネス配索構造の作用及び効果について説明する。
【0035】
本実施形態によれば、FFCハーネス20を用いた配索構造において、FFCハーネス20の第1係合部23と第2係合部25との間が、部材間の相対変位前の状態でFFCハーネス20の短手方向視で湾曲形状を有している。このため、車両用シート1における相対移動が生じた場合でも、湾曲形状によって変位に伴う距離の変化を吸収できる。
【0036】
また、本実施形態によれば、FFCハーネス20の余長部21が短手方向視で湾曲形状となる様に構成されている。このため、車両用シート1の部材間の相対変位に伴って、湾曲形状が変化するときもFFCハーネス20の変位する方向が所定の方向となる。換言すれば、丸線ハーネス(後述する丸線ハーネス40に相当)を用いた場合には、丸線ハーネスは、断面円形のため径方向の内いずれにも変位することが想定され、変位方向を規制するのが困難である。一方、FFCハーネスが、帯状であり、本実施形態では、余長部21が短手方向視で湾曲形状とされているので、幅方向には変位しにくく、円弧が縮径するように変位する方向に規制することができる。この結果、FFCハーネス20が他の部材と干渉することが抑制され、FFCハーネス20の配索が実現される。
【0037】
また、本実施形態によれば、第1係合部23及び第2係合部25は、面接触状態でそれぞれシートクッションフレーム12及びシートスライド機構6に係合される。そのため、余長部21の湾曲形状が維持されやすくなるので、FFCハーネス20の配索において変位の方向を規制しやすくなる。
【0038】
また、本実施形態によれば、シートクッションフレーム12及びシートスライド機構の相対変位は少なくとも上下方向成分を含んだ、上下動である。このため、FFCハーネス20の湾曲形状の変位が上記部材間の変位を吸収しやすくなる。
【0039】
なお、上記実施形態において、FFCハーネス20における余長部が湾曲形状である形態例を挙げて説明したが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、
図12に示すように、FFCハーネス20の余長部21が幅方向視でV字形状であってもよい。かかるV字形状は、FFCハーネス20を一旦折り返し、折り目をつけることで形成され得る。
【0040】
FFCハーネス20の余長部21が幅方向視でV字形状を有することで、余長部21が湾曲形状である場合と同様な作用効果が得られる。
【0041】
また、上記実施形態において、第1係合部23が、シートクッションフレーム12の舌片状部材12Cに係合され、第2係合部25が、シートスライド機構6の板状部材6Cに係合される形態例を挙げて説明したが、本発明はかかる例に限定されない。第1係合部23、第2係合部25の取り付け位置は、FFCハーネス20の配索条件に応じて適宜設定され得る。
【0042】
また、上記実施形態において、第1部位としてシートクッションフレーム12、第2部位としてシートスライド機構6である形態例を挙げて説明したが、本発明はかかる例に限定されない。第1部位及び第2部位としては、相対的に変位し得る車両用シート1及び/又はその周辺の部品、機構等が適宜選択され得る。具体的には、第1部位又は第2部位として、シートバックフレーム14、リクライニング機構、シートリフタ機構8、ランバーサポート機構、サイサポート機構、シートバックサイドサポート機構、及びヘッドレスト内部機構、並びにこれらの構成部品が含まれる。
【0043】
また、上記実施形態において、第1部位と第2部位とが上下方向に変位する際のFFCハーネス20における変位の吸収の様子を挙げて説明したが、本発明はかかる例に限定されず、水平方向、前後方向の変位を吸収する場合にも適用され得る。
【0044】
<4.FFCハーネスの分岐構造>
次に、
図13~
図16を参照しながら、本実施形態に係るFFCハーネス20の溶接構造及びそれを利用した分岐構造について説明する。
図13は、FFCハーネス20の車両用シート1への取り付け前の状態を示す展開図の一例である。
図13に示すように、FFCハーネス20は、各電装品間を電気的に接続するために、複数個所で屈曲され、又は分岐されている。これにより、他の部品との干渉を避けながら複雑な経路の配索を実現している。
【0045】
FFCハーネス20の配索構造において、最も電源側には、第1ハーネス部材として幹線20Aが設けられている。かかる幹線20Aを介して電源から電力が供給されている。さらに、幹線20Aからは、第2ハーネス部材として第1支線20Bが分岐されている。
【0046】
図14は、FFCハーネス20の幹線20Aから第1支線20Bが分岐される様子を示す外観斜視図の一例である。具体的には、
図14に示すように、第1支線20Bの端部は、幹線20Aの厚み方向(長手方向及び短手方向に直交する方向)を法線方向とする面20A1側から溶接される。かかる溶接個所において、第1支線20Bと幹線20Aとは導通可能とされている。換言すれば、第1支線20B及び幹線20Aの芯線26の間の導通が確保されて第1溶接部31が形成されている。第1溶接部31は、幹線20Aの幅方向に沿って線状に形成されている。ここで、分岐後、導通が確認できれば溶接方法は特に限定されず、アーク溶接、レーザ溶接、電子ビーム溶接、MIG溶接、又はTIG溶接等の公知の溶接技術が適宜採用され得る。
【0047】
第1支線20Bは、幹線20Aの長手方向に沿って所定距離だけ配索される。すなわち、幹線20Aと第1支線20Bとは、部分的に積層された状態で配索される。第1支線20Bを幹線20Aから分岐させる位置において、第1支線20Bの幹線20Aと対向する面20B1が、幹線20Aとは対向しないように折り返されることにより、幹線20Aから分岐される。つまり、第1支線20Bを裏返して折り返すことで、第1支線20Bは、幹線20Aから分岐される。
【0048】
また、同じ分岐箇所から複数の支線を分岐させることが必要な場合がある。
図15は、FFCハーネスの幹線から複数の支線が分岐される様子を示す外観斜視図の一例である。このとき、
図15に示すように、第1支線20Bに加えて、第3ハーネス部材としての第2支線20Cが幹線20Aから分岐されるように構成してもよい。第2支線20Cは、幹線20Aに対して幹線20Aの厚み方向(長手方向及び短手方向に直交する方向)を法線方向とする面20A1側から溶接される。換言すれば、第2支線20C及び幹線20Aの芯線26の間の導通が確保されて第2溶接部32が形成されている。
【0049】
第2溶接部32は、幹線20Aの幅方向に沿って線状に形成されている。ここで、分岐後、導通が確認できれば溶接方法は特に限定されず、アーク溶接、レーザ溶接、電子ビーム溶接、MIG溶接、又はTIG溶接等の公知の溶接技術が適宜採用され得る。また、第2溶接部32は、幹線20Aの長手方向において、第1溶接部31とは異なる位置で溶接される。すなわち、第1溶接部31と第2溶接部32との間には所定距離の隙間が確保されている。また、第2支線20Cは、幹線20A及び第1支線20Bに沿って所定距離だけ配索される。すなわち、幹線20A、第1支線20B及び第2支線20Cは、部分的に積層された状態で配索される。
【0050】
第1支線20Bを幹線20Aから分岐させる位置において、幹線20Aと対向する面20B1が幹線20Aとは対向しないように折り返されることにより、第1支線20Bは、幹線20Aから分岐される。また、同じく第2支線20Cを幹線20Aから分岐させる位置において、第2支線20Cは、幹線20Aと対向する面20C1が幹線20Aとは対向しないように折り返されることにより、第2支線20Cが幹線20Aから分岐される。つまり、第1支線20B及び第2支線20Cを裏返して折り返すことで、第1支線20B及び第2支線20Cは、幹線20Aから分岐される。
【0051】
次に、本実施形態に係るハーネス溶接構造及び分岐構造の作用及び効果について説明する。
【0052】
本実施形態によれば、FFCハーネス20としての幹線20Aの厚み方向を法線方向とする面20A1側から、FFCハーネス20としての第1支線20Bが導通可能に溶接される。このため、複数のハーネスが一体化され、分岐、又は屈曲されて配索される場合でも溶接範囲が確保されているので、溶接部の強度が確保されて、FFCハーネス20の配索構造が実現される。
【0053】
また、本実施形態によれば、幹線20Aの厚み方向を法線方向とする面20A1側に第1支線20Bが溶接され、さらに当該面20A1側に第2支線20Cが溶接される。また、第2支線20Cは、第1支線20Bの第1溶接部31とは異なる位置で溶接される第2溶接部32を有している。このため、FFCハーネス20同士の溶接構造において、溶接箇所がFFCハーネス20の長手方向において異なる位置に分けられていることから、配索によってFFCハーネス20に生じ得る力が溶接箇所に集中することを抑制し、溶接箇所周辺のFFCハーネス20の配索が実現される。また、溶接個所が分散されていることで、溶接個所の厚みの増加が抑制される。
【0054】
また、本実施形態によれば、第1支線20Bと第2支線20Cとが積層された状態で配索されるので、FFCハーネス20の配索構造が省スペース化できる。
【0055】
また、本実施形態によれば、第1支線20B又は第2支線20Cが、裏返しになる様に折り返されることで幹線20Aから分岐される。このため、FFCハーネス20の分岐構造が容易に実現される。さらに、本実施形態によれば、同一箇所において、2本以上の支線を幹線から分岐させることができる。
【0056】
なお、上記実施形態において、第1支線20Bと第2支線20Cとが同じ位置から分岐される例を挙げて説明したが、本発明はかかる例に限定されない。第1支線20Bが幹線20Aから分岐される位置と、第2支線20Cが幹線20Aから分岐される位置は、異なっていてもよい。
【0057】
また、上記実施形態において、幹線20Aから分岐される角度が略直角である例を挙げて説明したが、本発明はかかる例に限定されず、直角以外の角度で幹線20Aから分岐さてもよい。
【0058】
<5.FFCハーネスと従来の丸線ハーネスとの接合>
次に、
図16及び
図17を参照しながら、本実施形態に係るFFCハーネス20の接合構造について説明する。
図16は、本実施形態に係るFFCハーネス20の接合構造を示す平面図の一例である。
図17は、本実施形態に係るFFCハーネス20の接合構造を示す側面図の一例である。
【0059】
先ず、FFCハーネス20の端部において電装品と電気的な接続を確保するために、コネクタが取り付けられることがある。かかるコネクタは、FFCハーネス20の形状、構造に合わせた専用のコネクタであり、既存の丸線ハーネスに用いられるコネクタとは異なっている。一方、車両用シート1に用いられる電装品は、FFCハーネス20のコネクタに対応していないことも多い。しかしながら、FFCハーネス20用のコネクタを新たに開発製造することはFFCハーネス20の配索構造のコスト増を招来する。
【0060】
そこで、本発明者らが鋭意検討したところ、既存のコネクタを流用したFFCハーネス20の接合構造を想到した。具体的には、
図16に示すように、FFCハーネス20の端部において、芯線26を剥き出しの状態とする。一方、丸線ハーネス40の端部には、丸線ハーネス40内の金属撚線40Aを加工した平坦部41を設ける。FFCハーネス20の芯線26と、丸線ハーネス40の平坦部41とは、固着されて導通が確保される。
【0061】
丸線ハーネス40の金属撚線40Aを平坦部41とする加工は、一例としてスウェージング加工(絞り加工)を行った上で、潰し加工をして平坦形状に成形する加工が挙げられる。なお、平坦形状に成形する方法は、潰し加工に限定されず、公知の金属加工技術が用いられ得る。
【0062】
平坦部41は、FFCハーネス20の芯線26と面接触した状態で固着される。一例として、芯線26と平坦部41は、面接触した状態でスポット溶接されることで固着される。
図16及び
図17に示すように、芯線26と平坦部41との間で溶接点Pが形成されて、互いに溶け込むことにより、FFCハーネス20と平坦部41とが固着される。なお、固着方法は、FFCハーネス20及び丸線ハーネス40間の導通が確保されれば特に限定されない。例えば、ピアッシングによる締結や、締結部材を用いた締結などの機械的な締結であってもよい。また、溶接方法も特に限定されず、アーク溶接、レーザ溶接、電子ビーム溶接、MIG溶接、又はTIG溶接等の公知の溶接技術が適宜採用され得る。
【0063】
図16に示すように、丸線ハーネス40において、平坦部41と反対側の端部には、電装品等と電気的に接続可能なコネクタ部43が設けられている。かかるコネクタ部43は、丸線ハーネス40に採用される既存のコネクタを有している。
【0064】
また、固着後のFFCハーネス20及び丸線ハーネス40の間は、外部との絶縁を確保するために絶縁性の樹脂材料で被覆される。
【0065】
本実施形態によれば、FFCハーネス20の芯線26と丸線ハーネス40の平坦部41とが面接触した状態で固着されるので、FFCハーネス20を配索に用いても、部分的に丸線ハーネス40とすることができ、FFCハーネス20の専用コネクタを用いる等、FFCハーネス20に合わせて周辺部品を設計する必要がないので、設計自由度が向上する。
【0066】
また、本実施形態によれば、FFCハーネス20の芯線26と丸線ハーネス40とは溶接によって固着されるので、FFCハーネス20及び丸線ハーネス40との間の導通が確保されるとともに、固着のための部品点数を減らすことができる。
【0067】
また、本実施形態によれば、丸線ハーネス40は、平坦部41が設けられた側とは反対側の端部にコネクタ部43を有している。これにより、丸線ハーネス40のコネクタ部43を介して電装品等と電気的に接続できるので、FFCハーネス20の専用品を用いる必要がなくなり、製造コストが低減できるとともに、設計自由度が向上する。
【0068】
また、本実施形態によれば、丸線ハーネス40の金属撚線40Aに対してスウェージング加工を施すので、金属撚線40Aが、平坦化の前にある程度一体化した状態となる。このため、平坦部41が形成しやすくなる。
【0069】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は係る例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は応用例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0070】
1 車両用シート
2 シートクッション
4 シートバック
6 シートスライド機構
8 シートリフタ機構
10 シートフレーム
12 シートクッションフレーム
14 シートバックフレーム
20 FFCハーネス
20A 幹線
20B 第1支線
20C 第2支線
21 余長部
23 第1係合部
25 第2係合部
26 芯線
31 第1溶接部
32 第2溶接部
40 丸線ハーネス
40A 金属撚線
41 平坦部
43 コネクタ部