(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-31
(45)【発行日】2023-11-09
(54)【発明の名称】台座及び保護キャップ組立体
(51)【国際特許分類】
A61M 39/20 20060101AFI20231101BHJP
A61M 39/16 20060101ALI20231101BHJP
A61M 1/28 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
A61M39/20
A61M39/16
A61M1/28
(21)【出願番号】P 2020052003
(22)【出願日】2020-03-24
【審査請求日】2022-11-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】梅垣 彦希
【審査官】田中 玲子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-130323(JP,A)
【文献】特開2019-000439(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0243545(US,A1)
【文献】特開2019-005440(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 39/20
A61M 39/16
A61M 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用チューブの途中を分離可能に接続するコネクタにネジ構造を介して装着される保護キャップの台座であって、
前記保護キャップの内部よりも広い範囲に形成された支持部と、
前記支持部から突出し、前記保護キャップの内部に挿入されて前記保護キャップの内部を閉塞可能に形成された嵌合部と、を備え、前記嵌合部は、
前記保護キャップの内部に沿って形成され前記保護キャップと摺動可能に密着する側壁部と、
前記側壁部の上端を閉塞する上端部と、
前記上端部から突出し、前記保護キャップを前記支持部側に押し込むと弾性変形しつつ前記保護キャップに作用する押圧力を前記上端部に伝達する受圧部材と、を備え、
前記保護キャップを前記支持部に向けて押圧すると、前記受圧部材を介した押圧力により前記上端部が凹状に変形するとともに前記側壁部が縮径して前記保護キャップと前記嵌合部との密着が弱められ、
前記保護キャップの前記押圧を解除すると、前記受圧部材の弾発力により前記保護キャップが押し上げられて前記嵌合部から前記保護キャップが外れる、
台座。
【請求項2】
請求項1記載の台座であって、前記受圧部材は、前記上端部に接合されたコイル状の台座バネを有する、台座。
【請求項3】
請求項2記載の台座であって、前記台座バネは、複数の螺旋柱部と、複数の前記螺旋柱部の上端同士を周方向に繋ぐ環状部とを有し、前記環状部が前記保護キャップの内筒部に当接する、台座。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の台座であって、前記側壁部には、上端側に下端側よりも大きな直径に形成されて前記保護キャップの内周面に密着するシール部が形成されている、台座。
【請求項5】
請求項4記載の台座であって、前記嵌合部は、摺動性のよい樹脂材料によって一体的に形成されている、台座。
【請求項6】
医療用チューブの途中を分離可能に接続するコネクタにネジ構造を介して装着される保護キャップと、
前記保護キャップが嵌合された台座と、を備えた保護キャップ組立体であって、
前記台座は、
前記保護キャップの内部よりも広い範囲に形成された支持部と、
前記支持部から突出し、前記保護キャップの内部に挿入されて前記保護キャップの内部を閉塞可能に形成された嵌合部と、を備え、前記嵌合部は、
前記保護キャップの内部に沿って形成され前記保護キャップと摺動可能に密着する側壁部と、
前記側壁部の上端を閉塞する上端部と、
前記上端部から突出し、前記保護キャップを前記支持部側に押し込むと弾性変形しつつ前記保護キャップに作用する押圧力を前記上端部に伝達する受圧部材と、を備え、
前記保護キャップを前記支持部に向けて押圧すると、前記受圧部材を介した押圧力により前記上端部が凹状に変形するとともに前記側壁部が縮径して前記保護キャップと前記嵌合部との密着が弱められ、
前記保護キャップの前記押圧を解除すると、前記受圧部材の弾発力により前記保護キャップが押し上げられて前記嵌合部から前記保護キャップが外れる、
保護キャップ組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用チューブのコネクタに装着される保護キャップの台座及び保護キャップ組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、腹膜透析は、患者の負担が少ないことから注目されている。腹膜透析法のなかでも、持続携行式腹膜透析(CAPD;Continuous Ambulatory Peritoneal Dialysis)は、患者自身が自宅や職場で透析液のバッグの交換を行うことができるため、社会復帰がしやすいとされている。
【0003】
持続携行式腹膜透析では、患者側に接続されたチューブと、透析液のバッグに接続されたチューブとを、コネクタを介して接続する。透析液のバッグを接続しない間は、患者側に接続されたチューブのコネクタに一時的に保護キャップを装着する。細菌感染を防ぐために、保護キャップは1回のみ使用される使い捨てとなっている。
【0004】
このような保護キャップは、台座に装着された状態で製品提供され、使用直前に台座から取り外してコネクタに装着して使用される。保護キャップ及びその台座に関し、特許文献1は、保護キャップに対する落下菌の付着を防止するとともに、患者が容易に台座から保護キャップを取り出せるように、筒状の嵌合部を保護キャップの凹部に嵌装してキャップを保持する台座を開示する。また、特許文献2は、使用前の保護キャップをリング状の持ち手のついた栓で封止する構造の台座を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-176358号公報
【文献】特開2013-42952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
保護キャップをコネクタに接続するときには、片方の手にコネクタとそのチューブを把持し、もう片方の手で保護キャップを持って保護キャップを螺合する操作を行う。このように、保護キャップをコネクタに接続する際に、両手がふさがってしまう。ところが、従来の台座では、保護キャップの取り外しを両手で行う必要がある。そのため、保護キャップをコネクタに接続する際に、事前に台座から保護キャップを外し忘れると、台座から保護キャップを外すことが困難となり、保護キャップの接続操作が困難になるという問題がある。
【0007】
実施形態の一観点は、片手でも容易に保護キャップを外すことができる台座及び保護キャップ組立体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下の開示の一観点は、医療用チューブの途中を分離可能に接続するコネクタにネジ構造を介して装着される保護キャップの台座であって、前記保護キャップの内部よりも広い範囲に形成された支持部と、前記支持部から突出し、前記保護キャップの内部に挿入されて前記保護キャップの内部を閉塞可能に形成された嵌合部と、を備え、前記嵌合部は、前記保護キャップの内部に沿って形成され前記保護キャップと摺動可能に密着する側壁部と、前記側壁部の上端を閉塞する上端部と、前記上端部から突出し、前記保護キャップを前記支持部側に押し込むと弾性変形しつつ前記保護キャップに作用する押圧力を前記上端部に伝達する受圧部材と、を備え、前記保護キャップを前記支持部に向けて押圧すると、前記受圧部材を介した押圧力により前記上端部が凹状に変形するとともに前記側壁部が縮径して前記保護キャップと前記嵌合部との密着が弱められ、前記保護キャップの前記押圧を解除すると、前記受圧部材の弾発力により前記保護キャップが押し上げられて前記嵌合部から前記保護キャップが外れる、台座にある。
【0009】
別の一観点は、医療用チューブの途中を分離可能に接続するコネクタにネジ構造を介して装着される保護キャップと、前記保護キャップが嵌合された台座と、を備えた保護キャップ組立体であって、前記台座は、前記保護キャップの内部よりも広い範囲に形成された支持部と、前記支持部から突出し、前記保護キャップの内部に挿入されて前記保護キャップの内部を閉塞可能に形成された嵌合部と、を備え、前記嵌合部は、前記保護キャップの内部に沿って形成され前記保護キャップと摺動可能に密着する側壁部と、前記側壁部の上端を閉塞する上端部と、前記上端部から突出し、前記保護キャップを前記支持部側に押し込むと弾性変形しつつ前記保護キャップに作用する押圧力を前記上端部に伝達する受圧部材と、を備え、前記保護キャップを前記支持部に向けて押圧すると、前記受圧部材を介した押圧力により前記上端部が凹状に変形するとともに前記側壁部が縮径して前記保護キャップと前記嵌合部との密着が弱められ、前記保護キャップの前記押圧を解除すると、前記受圧部材の弾発力により前記保護キャップが押し上げられて前記嵌合部から前記保護キャップが外れる、保護キャップ組立体にある。
【発明の効果】
【0010】
上記観点の台座及び保護キャップ組立体によれば、保護キャップの押圧と、その押圧の解除といった片手で行える操作のみで台座からの保護キャップの取り外しが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1Aは腹膜内に透析液を貯留している状態を示し、
図1Bは腹膜内の透析液の排液の様子を示し、
図1Cは腹膜内に透析液を注液している様子を示し、
図1Dは新たな透析液の貯留中の状態を示す。
【
図2】透析液バッグ及び排液バッグを外した後のカテーテル及びコネクタの斜視図である。
【
図3】コネクタへの保護キャップの装着方法を示す説明図である。
【
図4】
図3の保護キャップとコネクタとを螺合した状態の断面図である。
【
図5】本実施形態に係る保護キャップ組立体の斜視図である。
【
図6】
図5の保護キャップ組立体の分解斜視図である。
【
図8】
図5の保護キャップ組立体の組立直後の断面図である。
【
図9】
図5の保護キャップを押圧した際の台座の変形を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、台座14及び保護キャップ組立体10について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
腹膜透析は、患者の腹膜内に透析液を注入して、所定時間ためておくと、老廃物や水分が腹膜を介して透析液側に移動する。透析液を体内に注入してから所定時間(例えば4~8時間)は、
図1Aに示すように、患者は自由に行動することができる。患者には、腹膜内の挿入されたカテーテル80が常時取り付けられており、このカテーテル80を介して透析液の交換が実施される。
【0014】
透析液の交換は、
図1B及び
図1Cに示すように行う。まず、患者の腹膜内に挿入されたカテーテル80の先端のコネクタ82に、排液バッグ90及び透析液バッグ84が接続された接続チューブ85を接続する。接続チューブ85は、途中で分岐して、一方のチューブ86が透析液バッグ84に接続され、他方のチューブ88が排液バッグ90に接続されている。
【0015】
図1Bに示すように、患者はチューブ86のクランプを閉じ、患者の腹膜内の老廃物を含んだ透析液を排液バッグ90に排出する。次に、患者はチューブ88を閉じるとともにチューブ86を開き、
図1Cに示すように、透析液バッグ84の透析液を、チューブ86及びカテーテル80を介して腹膜内に注入する。
【0016】
その後、
図1Dに示すように、患者が接続チューブ85をカテーテル80から取り外して、透析液の交換が完了する。患者は、体にカテーテル80が装着された状態で生活する。
【0017】
図2に示すように、カテーテル80の先端のコネクタ82は、筒状の接続部82cの外周にネジ山(第2ネジ構造82e)が形成された雄コネクタである。コネクタ82をそのまま露出させておくことは、細菌感染による合併症の原因となる。
【0018】
そこで、患者は、透析液の交換作業の完了後、
図3に示すように、カテーテル80の先端のコネクタ82を片方の手で持ち、他方の手で保護キャップ12を持って、コネクタ82に保護キャップ12を捻じ込んで装着してコネクタ82を保護する。感染症を防ぐ観点から、保護キャップ12は使い捨てで使用される。また、保護キャップ12の装着作業は、落下菌の付着を防ぐために、保護キャップ12の内側を上に向けないように行う。保護キャップ12には、患者が把持して捻じ込む動作を行いやすくするべく、一対の板状のフィン12gが円筒状の外筒部12aの外方に延び出て設けられている。
【0019】
図4に示すように、保護キャップ12は、患者の指がカテーテル80と連通する部分(内筒部12bの内部)に触れないようにするために、二重構造となっている。すなわち、有底円筒状に形成された外筒部12aの内側に、短い内筒部12bが形成された構造となっている。外筒部12aの内側部には第1ネジ構造12c(ネジ山)が形成されており、この第1ネジ構造12cが、コネクタ82の第2ネジ構造82eと螺合する。内筒部12bの奥側には、円形リング状のパッキン12dが嵌装されている。外筒部12aと内筒部12bとの間のリング状の溝部12eには、ポビドンヨード等の殺菌剤を含んだ多孔質部材が装着されていてもよい。
【0020】
コネクタ82は、カテーテル80が接続されるカテーテル固定部82aと、カテーテル固定部82aの先端側に形成されたフランジ部82bと、フランジ部82bの先端側に形成された接続部82cとを備える。フランジ部82bは、カテーテル固定部82a及び接続部82cより拡径して形成されている。接続部82cは、フランジ部82bから先端側に向けて筒状に延び出ている。接続部82cの外側部には第2ネジ構造82eが形成されている。第2ネジ構造82eは、外筒部12aの第1ネジ構造12cと螺合可能に形成されている。接続部82cの内側には、内筒部12bの内部に挿入される内側接続部82dが先端に向けて筒状に延びて形成されている。内側接続部82dの内部には、カテーテル80の内部に連通する連通孔82fが形成されている。
【0021】
保護キャップ12は、外筒部12aが接続部82cの外方を覆うようにして装着され、接続部82cの基部に設けられたリング状のパッキン83aと外筒部12aの内周面12hが当接して密着する。外筒部12aの端部12fの開口部12iの近くの内周面12hには、第1ネジ構造12cが形成されておらず、平滑な円周面として形成されている。内周面12hの平滑な円周面の部分が、パッキン83aに密着することにより、接続部82cが保護キャップ12の内側に気密に封止される。また、内筒部12bのパッキン12dに内側接続部82dが密着することにより、連通孔82fが気密に封止される。このようにして保護キャップ12は、二重の封止構造により、コネクタ82を保護する。また、内筒部12bは患者の指が入らないように、外筒部12aの奥側に配置されているため、手で触ることによる汚染を防止できる。
【0022】
ところで、本実施形態において、保護キャップ12は、
図5に示す本実施形態に係る保護キャップ組立体10として製品提供される。保護キャップ組立体10は、保護キャップ12と、保護キャップ12の開口部12iを覆うように組付けられた台座14とを備えている。台座14は、使用直前まで、保護キャップ12の内部を塞ぐことで、保護キャップ12の内部を無菌状態に保つように構成されている。
【0023】
図6に示すように、台座14は、板状に形成された支持部18と、支持部18から突出して保護キャップ12の内部を閉塞する嵌合部20とを備える。支持部18は、嵌合部20の基端部の外方からフランジ状に延び出ている部分であり、円板状に形成されている。支持部18の外周は、保護キャップ12の外筒部12aの端部12fの外周よりも小さい直径に形成されている。これにより、保管中や取り扱いの際に支持部18が障害物等に当たって、保護キャップ12が意図せぬ角度に傾く事象を防止できる。
【0024】
嵌合部20は、支持部18から円柱状に突出した部分であり、支持部18に対して垂直な方向に延びるとともに、円周状に形成された側壁部22と、側壁部22の内側を閉塞する上端部24と、上端部24から突出した受圧部材26とを備える。嵌合部20の側壁部22及び上端部24は、
図7に示すように、支持部18と一体的に繋がった断面がコの字状の板状部材によって形成されており、側壁部22及び上端部24の内側(図の下側)には、下端側に開口した凹部25が形成されている。
【0025】
側壁部22は、支持部18寄りの下側部分に形成された小径部22aと、小径部22aの上側に形成されたシール部22bとを有している。小径部22aは、保護キャップ12の内周面12hの内径よりも僅かに小さな直径に形成されており、保護キャップ12の内周面12hとは密着しない部分となっている。そのため、小径部22aは、後述するように保護キャップ12が支持部18に向けて押し込まれた場合であっても、内周面12hと接触せず、摺動抵抗を増加させないように構成されている。
【0026】
側壁部22のシール部22bは、保護キャップ12の内周面12hと密着するべく、内周面12hの内径よりも僅かに大きな直径に形成されている。シール部22bの外周側には、保護キャップ12の内周面12hに面接触可能なシール面22cが形成されている。このシール面22cが内周面12hに面接触することで、嵌合部20による保護キャップ12の内部の密封機能が発揮される。
【0027】
上端部24は、支持部18と平行な薄板状に形成されており、厚さ方向の荷重の入力に対して、厚さ方向に撓むようにして弾性変形可能となっている。上端部24の中心部には、上方に凸状に屈曲して形成された凸状部24aが形成されている。凸状部24aは比較的高い剛性を発揮し、上端部24の弾性変形の偏りを防ぐことができる。上端部24は、凸状部24aを中心に厚さ方向の弾性変形を行う。凸状部24aの周囲の上端部24からは、受圧部材26が上方に向けて延び出ている。
【0028】
本実施形態の受圧部材26は、台座バネ28を含む。台座バネ28は、圧縮コイルバネを構成するべく螺旋状に形成された螺旋柱部28aと、螺旋柱部28aの上端に設けられた環状部28bを備える。台座バネ28は、4条の螺旋柱部28aを備えており、各々の螺旋柱部28aは、周方向に90°の角度を開けて均等な間隔で配置されている。螺旋柱部28aの下端は上端部24と一体的に形成されている。螺旋柱部28aの上端は環状部28bに接合されている。4条の螺旋柱部28aは、環状部28bを介して周方向に繋がっている。環状部28bは、上端部24に平行な円形リング状に形成されている。環状部28bの直径(外径)は、螺旋柱部28aの外径と同じであり、上端部24の直径よりも小さく形成されている。環状部28bの上端には、周方向に沿って延在するリング状の溝よりなる当接溝28cが形成されている。
【0029】
当接溝28cは、
図8に示すように、保護キャップ12を台座14に装着した際に、保護キャップ12の内筒部12bの先端部12b1と当接する部分である。当接溝28cは、荷重が入力した際に、台座バネ28が傾くことなく内筒部12bの周方向の全域と当接可能とするべく、当接溝28cの内部に内筒部12bの先端部12b1を収容する。保護キャップ12を台座14に押圧した際の荷重を、環状部28bが周方向に偏らずに受け止める。
【0030】
台座14において、支持部18、嵌合部20、及び台座バネ28は、樹脂材料によって一体的に形成すると好適である。また、支持部18及び嵌合部20を一体的に形成し、別体として形成された台座バネ28が、上端部24に接合されてもよい。台座14を構成する材料としては、保護キャップ12との密着性及び摺動性に優れた樹脂材料を用いることが好ましい。このような樹脂材料としては、例えば、POM(ポリアセタール)樹脂が挙げられる。本実施形態の台座14は、以上のように構成される。
【0031】
図8に示すように、本実施形態の保護キャップ組立体10は、上記の台座14の嵌合部20に保護キャップ12を嵌合して構成される。保護キャップ12は、外筒部12aの内周面12hが、台座14の嵌合部20のシール部22b(シール面22c)に密着しており、保護キャップ12の内部が嵌合部20によって液密及び気密に密封されている。初期状態において、保護キャップ12の端部12fの位置が嵌合部20のシール部22bの下端と同じ位置となった状態で嵌合されている。また、初期状態において、台座バネ28の環状部28bが保護キャップ12と当接している。但し、輸送中に保護キャップ12が外れる事象を防ぐべく、保護キャップ12は、台座バネ28を強く押圧しない状態で組付けられていることが好ましい。
【0032】
保護キャップ組立体10において、保護キャップ12を嵌合部20の適切な位置に嵌合させるべく、保護キャップ12は、位置決め治具30を用いて嵌合部20に装着される。位置決め治具30は、板体30aと、嵌合部20を挿通可能な切欠部30bとを有している。位置決め治具30は、切欠部30bに嵌合部20を配置し、その周囲の板体30aを支持部18の上に載置して使用される。板体30aは、支持部18の上面からシール部22bの下端までの距離と同じ厚さに形成されている。そのため、端部12fが板体30aに当接するように保護キャップ12の外筒部12aを嵌合部20に押し込むと、保護キャップ12の内部がシール部22bによって密封され、且つ台座バネ28を強く押圧しない状態で組付けられる。その後、位置決め治具30を取り外すことで、保護キャップ12が嵌合部20に適切な深さで嵌合された保護キャップ組立体10が得られる。
【0033】
本実施形態の台座14及び保護キャップ組立体10は以上のように構成され、以下その作用について説明する。
【0034】
保護キャップ組立体10は、
図5に示すように、台座14に保護キャップ12を嵌合させた状態で使用者に提供される。この状態では、
図8に示すように嵌合部20のシール面22cと、保護キャップ12の内周面12hとが密着することにより、保護キャップ12の内部が密封されている。保護キャップ12の溝部12eの多孔質部材(図示せず)から放出されるポビドンヨード等の殺菌剤の流出が阻止され、保護キャップ12の内部が無菌状態に保たれる。
【0035】
保護キャップ組立体10は、使用者によって、台座14から保護キャップ12が取り外される。台座14からの保護キャップ12の取り外しは、使用者が指先等で保護キャップ12を台座14の支持部18へ押圧する操作と、保護キャップ12の押圧を解除する操作のみで行える。
【0036】
ここで、保護キャップ12を台座14の支持部18に向けて押圧すると、台座14が
図9に示すように変形する。その際に、保護キャップ12は、内周面12hがシール部22bのシール面22cと摺動しながら、支持部18に向けて押し込まれる。台座バネ28(受圧部材26)の環状部28bが保護キャップ12の内筒部12bと当接して、保護キャップ12への押圧力の一部を受圧し、台座バネ28が弾性変形しながら押圧力を嵌合部20の上端部24に伝える。上端部24は、台座バネ28の押圧力によって、下側に向けて凸になるように湾曲し、この湾曲に伴って側壁部22の上端が内周側に引き込まれるように変形する。その結果、シール部22bが縮径するように変形して、保護キャップ12の内周面12hとシール面22cとの密着が弱められる。
【0037】
図9の状態から、使用者が素早く保護キャップ12の押圧を解除すると、台座バネ28の弾発力によって、保護キャップ12が使用者の指先の動きに追従するように浮き上がり、保護キャップ12が嵌合部20から離間する向きに変位する。台座バネ28によって生じた勢いによって、保護キャップ12が嵌合部20から外れる。以上のようにして、使用者は片手の指先で保護キャップ12を押圧する操作のみで、保護キャップ12の取り外しを行える。
【0038】
本実施形態の台座14及び保護キャップ組立体10は、以下の効果を奏する。
【0039】
本実施形態の台座14は、カテーテル80(医療用チューブ)の途中を分離可能に接続するコネクタ82にネジ構造を介して装着される保護キャップ12の台座14に関する。台座14は、保護キャップ12の内部よりも広い範囲に形成された支持部18と、支持部18から突出し、保護キャップ12の内部に挿入されて保護キャップ12の内部を閉塞可能に形成された嵌合部20と、を備え、嵌合部20は、保護キャップ12の内部に沿って形成され保護キャップ12と摺動可能に密着する側壁部22と、側壁部22の上端を閉塞する上端部24と、上端部24から突出し、保護キャップ12を支持部18側に押し込むと弾性変形しつつ保護キャップ12に作用する押圧力を上端部24に伝達する受圧部材26と、を備え、保護キャップ12を支持部18に向けて押圧すると、受圧部材26を介した押圧力により上端部24が凹状に変形するとともに側壁部22が縮径して保護キャップ12と嵌合部20との密着が弱められ、保護キャップ12の押圧を解除すると、受圧部材26の弾発力により保護キャップ12が押し上げられて嵌合部20から保護キャップ12が外れる。
【0040】
上記の構成によれば、保護キャップ12を台座14の支持部18に向けて押圧する操作と、その押圧を解除する操作といった、片手で行える操作で保護キャップ12を取り外せる台座14が実現できる。これにより、保護キャップ12のコネクタ82への接続操作の前に、使用者が台座14から保護キャップ12を外し忘れても接続操作を行える。
【0041】
上記の台座14において、受圧部材26は、上端部24に接合されたコイル状の台座バネ28を有してもよい。この構成により、台座バネ28による素早い弾発力が得られる。また、嵌合部20(側壁部22)と保護キャップ12との密着性が回復する前に素早く保護キャップ12を離脱させ、嵌合の解除を確実に行える。
【0042】
上記の台座14において、台座バネ28は、複数の螺旋柱部28aと、複数の螺旋柱部28aの上端同士を周方向に繋ぐ環状部28bとを有し、環状部28bが保護キャップ12の内筒部12bに当接するように構成してもよい。このように構成することで、複数のバネとすることで、小さいストロークで大きな弾発力が得られ、解除動作が容易になる。また、環状部28bを設けることにより、上端部24の周方向に偏りなく荷重を伝達することができる。さらに、台座バネ28の変形にともなって回転変位が生じるが、環状部28bが保護キャップ12の内筒部12bとスムーズに摺動することで、動作が円滑になる。
【0043】
上記の台座14において、側壁部22には、上端側に下端側よりも大きな直径に形成されて保護キャップ12の内周面12hに密着するシール部22bが形成されていてもよい。側壁部22の上端側は、上端部24の凹状の変形に伴ってより大きく縮径する。この部分にシール部22bを設けておくことで、保護キャップ12を押圧する操作により、保護キャップ12と嵌合部20との密着を弱める効果が確実に発揮され、保護キャップ12の取り外しが容易になる。
【0044】
上記の台座14において、嵌合部20は、摺動性のよい樹脂材料によって一体的に形成されていてもよい。この構成により、保護キャップ12の変位が容易になり、保護キャップ12の取り外しが容易になる。
【0045】
本実施形態の保護キャップ組立体10は、カテーテル80(医療用チューブ)の途中を分離可能に接続するコネクタ82にネジ構造を介して装着される保護キャップ12と、保護キャップ12が嵌合された台座14と、を備えた保護キャップ組立体10に関する。台座14は、保護キャップ12の内部よりも広い範囲に形成された支持部18と、支持部18から突出し、保護キャップ12の内部に挿入されて保護キャップ12の内部を閉塞可能に形成された嵌合部20と、を備え、嵌合部20は、保護キャップ12の内部に沿って形成され保護キャップ12と摺動可能に密着する側壁部22と、側壁部22の上端を閉塞する上端部24と、上端部24から突出し、保護キャップ12を支持部18側に押し込むと弾性変形しつつ保護キャップ12に作用する押圧力を上端部24に伝達する受圧部材26と、を備え、保護キャップ12を支持部18に向けて押圧すると、受圧部材26を介した押圧力により上端部24が凹状に変形するとともに側壁部22が縮径して保護キャップ12と嵌合部20との密着が弱められ、保護キャップ12の押圧を解除すると、受圧部材26の弾発力により保護キャップ12が押し上げられて嵌合部20から保護キャップ12が外れる。
【0046】
上記の保護キャップ組立体10によれば、保護キャップ12を台座14の支持部18に向けて押圧する操作と、その押圧を解除する操作といった、片手で行える操作で保護キャップ12の取り外しが可能となる。これにより、保護キャップ12のコネクタ82への接続操作の前に、使用者が台座14から保護キャップ12を外し忘れても、接続操作を行える。
【0047】
上記において、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0048】
10…保護キャップ組立体 12…保護キャップ
12b…内筒部 12h…内周面
14…台座 18…支持部
20…嵌合部 22…側壁部
22b…シール部 24…上端部
26…受圧部材 28…台座バネ
28a…螺旋柱部 28b…環状部