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特許7377149エアロゾル吸引器用の電源ユニット、エアロゾル吸引器の電源診断方法、及びエアロゾル吸引器の電源診断プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-31
(45)【発行日】2023-11-09
(54)【発明の名称】エアロゾル吸引器用の電源ユニット、エアロゾル吸引器の電源診断方法、及びエアロゾル吸引器の電源診断プログラム
(51)【国際特許分類】
   A24F 40/53 20200101AFI20231101BHJP
   A61M 15/06 20060101ALI20231101BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
A24F40/53
A61M15/06 A
H02J7/00 H
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020056342
(22)【出願日】2020-03-26
(62)【分割の表示】P 2019131693の分割
【原出願日】2019-07-17
(65)【公開番号】P2021019498
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2022-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】水口 一真
(72)【発明者】
【氏名】山田 学
(72)【発明者】
【氏名】藤田 亮治
(72)【発明者】
【氏名】藤田 創
【審査官】高橋 武大
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/020402(WO,A1)
【文献】特開2019-022494(JP,A)
【文献】特表2016-517270(JP,A)
【文献】特開2015-035840(JP,A)
【文献】特開2010-175484(JP,A)
【文献】特開2013-048542(JP,A)
【文献】特開平10-012284(JP,A)
【文献】国際公開第2018/142734(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/077707(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/00-47/00
H02J 7/00
A61M 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル生成源からエアロゾルを発生させるための負荷に放電可能な電源と、
前記電源の充放電を制御可能に構成される制御部と、を備え、
前記制御部は、前記電源の充電を制御する充電モードと、前記充電モードとは異なる第1モードと、前記充電モード及び前記第1モードと異なる第2モードと、にて動作可能であり、前記第1モードと前記第2モードの各々にて前記電源の診断処理を実行可能であり、
前記第1モードにて実行可能な前記診断処理と、前記第2モードにて実行可能な前記診断処理には、異なる診断処理が含まれ、
前記診断処理は、前記電源が劣化状態にあるかどうかを判断するための処理と、前記電源が故障状態にあるかどうかを判断するための処理の少なくとも1つを含むエアロゾル吸引器用の電源ユニット。
【請求項2】
請求項1記載のエアロゾル吸引器用の電源ユニットであって、
前記第1モードにて実行される前記診断処理には、実行にあたり前記電源の放電が不要な診断処理が含まれ、
前記第2モードにて実行される前記診断処理には、実行にあたり前記電源の放電が必要な診断処理が含まれるエアロゾル吸引器用の電源ユニット。
【請求項3】
請求項2記載のエアロゾル吸引器用の電源ユニットであって、
前記電源の放電が必要な前記診断処理は、前記電源の内部抵抗に基づいて前記電源の劣化状態を診断する処理であるエアロゾル吸引器用の電源ユニット。
【請求項4】
請求項1からのいずれか1項記載のエアロゾル吸引器用の電源ユニットであって、
前記制御部は、更に、前記第1モード及び前記第2モードよりも消費電力の低いスリープモードにて動作可能であり、前記スリープモードにて前記電源の診断処理を実行可能であるエアロゾル吸引器用の電源ユニット。
【請求項5】
請求項記載のエアロゾル吸引器用の電源ユニットであって、
前記電源を収容する筐体を備え、
前記スリープモードにおいて実行される前記診断処理は、前記筐体の内部における液体の漏出と、前記筐体の内部への液体の侵入の少なくとも一方を検知するものであるエアロゾル吸引器用の電源ユニット。
【請求項6】
請求項1からのいずれか1項記載のエアロゾル吸引器用の電源ユニットであって、
前記制御部は、更に、前記第1モード及び前記第2モードよりも消費電力の低いスリープモードにて動作可能であり、前記スリープモードにおいては前記電源の診断処理を実行不能であるエアロゾル吸引器用の電源ユニット。
【請求項7】
エアロゾル生成源からエアロゾルを発生させるための負荷に放電可能な電源と前記電源の充放電を制御可能に構成される制御部とを有するエアロゾル吸引器の電源診断方法であって、
前記制御部は、前記電源の充電を制御する充電モードと、前記充電モードとは異なる第1モードと、前記充電モード及び前記第1モードと異なる第2モードと、にて動作可能であり、
前記第1モードと前記第2モードの各々にて前記電源の診断処理を実行するステップを有し、
前記第1モードにて実行可能な前記診断処理と、前記第2モードにて実行可能な前記診断処理には、異なる診断処理が含まれ、
前記診断処理は、前記電源が劣化状態にあるかどうかを判断するための処理と、前記電源が故障状態にあるかどうかを判断するための処理の少なくとも1つを含むエアロゾル吸引器の電源診断方法。
【請求項8】
エアロゾル生成源からエアロゾルを発生させるための負荷に放電可能な電源と前記電源の充放電を制御可能に構成される制御部とを有するエアロゾル吸引器の電源診断プログラムであって、
前記制御部は、前記電源の充電を制御する充電モードと、前記充電モードとは異なる第1モードと、前記充電モード及び前記第1モードと異なる第2モードと、にて動作可能であり、
前記第1モードと前記第2モードの各々にて前記電源の診断処理を実行するステップをコンピュータに実行させるためのものであり、
前記第1モードにて実行可能な前記診断処理と、前記第2モードにて実行可能な前記診断処理には、異なる診断処理が含まれ、
前記診断処理は、前記電源が劣化状態にあるかどうかを判断するための処理と、前記電源が故障状態にあるかどうかを判断するための処理の少なくとも1つを含むエアロゾル吸引器の電源診断プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアロゾル吸引器用の電源ユニット、エアロゾル吸引器の電源診断方法、及びエアロゾル吸引器の電源診断プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
エアロゾル生成源と、このエアロゾル生成源からエアロゾルを発生させるための負荷と、この負荷に放電可能な電源と、この電源を制御する制御部と、を備えるエアロゾル吸引器が知られている(例えば、特許文献1-4参照)。
【0003】
特許文献1に記載の装置は、霧化器領域へ電池から漏洩する物質を侵入させないためのバルクヘッドを備える。特許文献4に記載の装置は、電池の状態を診断する機能を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2016-536023号公報
【文献】中国特許公告第103099319号明細書
【文献】中国特許公開第107432498号明細書
【文献】特表2017-514463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エアロゾル吸引器は、ユーザが口に咥えて利用するものであるため、電源の安全性は強く求められる。したがって、電源の劣化の進行の程度や電源の異常を診断できることが好ましい。特許文献1-3には、電池の電解液が漏れた際に、他の部品への影響を及ぼさないようにする手段は開示されているが、電池の劣化や異常を検知することは行われていない。特許文献4には、電池の状態を診断する方法が記載されているが、この方法だけでは安全性は不十分である。
【0006】
本発明の目的は、電源の診断を高精度に行って安全性を向上させることのできるエアロゾル吸引器用の電源ユニット、エアロゾル吸引器の電源診断方法、及びエアロゾル吸引器の電源診断プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のエアロゾル吸引器用の電源ユニットは、エアロゾル生成源からエアロゾルを発生させるための負荷に放電可能な電源と、前記電源の充放電を制御可能に構成される制御部と、を備え、前記制御部は、前記電源の充電を制御する充電モードと、前記充電モードとは異なる第1モードと、前記充電モード及び前記第1モードと異なる第2モードと、にて動作可能であり、前記第1モードと前記第2モードの各々にて前記電源の診断処理を実行可能であり、前記第1モードにて実行可能な前記診断処理と、前記第2モードにて実行可能な前記診断処理には、異なる診断処理が含まれ、前記診断処理は、前記電源が劣化状態にあるかどうかを判断するための処理と、前記電源が故障状態にあるかどうかを判断するための処理の少なくとも1つを含むものである
【0008】
本発明のエアロゾル吸引器の電源診断方法は、エアロゾル生成源からエアロゾルを発生させるための負荷に放電可能な電源と前記電源の充放電を制御可能に構成される制御部とを有するエアロゾル吸引器の電源診断方法であって、前記制御部は、前記電源の充電を制御する充電モードと、前記充電モードとは異なる第1モードと、前記充電モード及び前記第1モードと異なる第2モードと、にて動作可能であり、前記第1モードと前記第2モードの各々にて前記電源の診断処理を実行するステップを有し、前記第1モードにて実行可能な前記診断処理と、前記第2モードにて実行可能な前記診断処理には、異なる診断処理が含まれ、前記診断処理は、前記電源が劣化状態にあるかどうかを判断するための処理と、前記電源が故障状態にあるかどうかを判断するための処理の少なくとも1つを含むものである
【0009】
本発明のエアロゾル吸引器の電源診断プログラムは、エアロゾル生成源からエアロゾルを発生させるための負荷に放電可能な電源と前記電源の充放電を制御可能に構成される制御部とを有するエアロゾル吸引器の電源診断プログラムであって、前記制御部は、前記電源の充電を制御する充電モードと、前記充電モードとは異なる第1モードと、前記充電モード及び前記第1モードと異なる第2モードと、にて動作可能であり、前記第1モードと前記第2モードの各々にて前記電源の診断処理を実行するステップをコンピュータに実行させるためのものであり、前記第1モードにて実行可能な前記診断処理と、前記第2モードにて実行可能な前記診断処理には、異なる診断処理が含まれ、前記診断処理は、前記電源が劣化状態にあるかどうかを判断するための処理と、前記電源が故障状態にあるかどうかを判断するための処理の少なくとも1つを含むものである
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電源の診断を高精度に行って機器の安全性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態の電源ユニットが装着されたエアロゾル吸引器の斜視図である。
図2図1のエアロゾル吸引器の他の斜視図である。
図3図1のエアロゾル吸引器の断面図である。
図4図1のエアロゾル吸引器における電源ユニットの斜視図である。
図5図1のエアロゾル吸引器における電源ユニットの要部構成を示すブロック図である。
図6図1のエアロゾル吸引器における電源ユニットの回路構成を示す模式図である。
図7】MCU50の動作モードを説明するための模式図である。
図8】第二診断処理から第五診断処理を説明するための模式図である。
図9】エアロゾル吸引器1がパフ動作に応じてエアロゾル生成を行う際のタイミングチャートである。
図10】新品の電源12と劣化した電源12の放電特性の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態のエアロゾル吸引器用の電源ユニットについて説明するが、先ず、電源ユニットが装着されたエアロゾル吸引器について、図1及び図2を参照しながら説明する。
【0013】
(エアロゾル吸引器)
エアロゾル吸引器1は、燃焼を伴わずに香味が付加されたエアロゾルを吸引するための器具であり、所定方向(以下、長手方向Aと呼ぶ)に沿って延びる棒形状を有する。エアロゾル吸引器1は、長手方向Aに沿って電源ユニット10と、第1カートリッジ20と、第2カートリッジ30と、がこの順に設けられている。第1カートリッジ20は、電源ユニット10に対して着脱可能である。第2カートリッジ30は、第1カートリッジ20に対して着脱可能である。言い換えると、第1カートリッジ20及び第2カートリッジ30は、それぞれ交換可能である。
【0014】
(電源ユニット)
本実施形態の電源ユニット10は、図3図4図5、及び図6に示すように、円筒状の電源ユニットケース11の内部に、電源12、充電IC55、MCU(Micro Controller Unit)50、スイッチ19、静電容量センサ13、電圧センサ16、及び各種センサ等を収容する。電源12は、充電可能な二次電池、電気二重層キャパシタ等であり、好ましくは、リチウムイオン電池である。電源12の電解質は少なくてもその一部が電解液で構成されている。以下では、電源12がリチウムイオン電池であるものとして説明する。静電容量センサ13は、電源ユニットケース11に収容された電源12からの電解液の漏出と、電源ユニットケース11への外部からの水等の液体の侵入とを検出するために設けられている。
【0015】
電源ユニットケース11の長手方向Aの一端側(第1カートリッジ20側)に位置するトップ部11aには、放電端子41が設けられる。放電端子41は、トップ部11aの上面から第1カートリッジ20に向かって突出するように設けられ、第1カートリッジ20の負荷21と電気的に接続可能に構成される。
【0016】
また、トップ部11aの上面には、放電端子41の近傍に、第1カートリッジ20の負荷21に空気を供給する空気供給部42が設けられている。
【0017】
電源ユニットケース11の長手方向Aの他端側(第1カートリッジ20と反対側)に位置するボトム部11bには、電源12を充電可能な外部電源60(図6参照)と電気的に接続可能な充電端子43が設けられる。充電端子43は、ボトム部11bの側面に設けられ、例えば、USB端子、microUSB端子、及びLightning(登録商標)端子の少なくとも1つが接続可能である。
【0018】
なお、充電端子43は、外部電源60から送電される電力を非接触で受電可能な受電部であってもよい。このような場合、充電端子43(受電部)は、受電コイルから構成されていてもよい。非接触による電力伝送(Wireless Power Transfer)の方式は、電磁誘導型でもよいし、磁気共鳴型でもよい。また、充電端子43は、外部電源60から送電される電力を無接点で受電可能な受電部であってもよい。別の一例として、充電端子43は、USB端子、microUSB端子、Lightning端子の少なくとも1つが接続可能であり、且つ上述した受電部を有していてもよい。
【0019】
電源ユニットケース11には、ユーザが操作可能な操作部14が、トップ部11aの側面に充電端子43とは反対側を向くように設けられる。より詳述すると、操作部14と充電端子43は、操作部14と充電端子43を結ぶ直線と長手方向Aにおける電源ユニット10の中心線の交点について点対称の関係にある。操作部14は、ボタン式のスイッチ、タッチパネル等から構成される。操作部14の近傍には、パフ動作を検出する吸気センサ15が設けられている。
【0020】
充電IC55は、充電端子43に近接して配置され、MCU50の制御によって、充電端子43から入力される電力の電源12への充電制御を行う。充電IC55は、充電端子43に接続される充電ケーブルに搭載された交流を直流に変換するインバータ61等(図6参照)からの直流を大きさの異なる直流に変換するコンバータ、電圧計、電流計、プロセッサ等を含む。
【0021】
MCU50は、図5に示すように、静電容量センサ13、パフ(吸気)動作を検出する吸気センサ15、電源12の電源電圧を測定する電圧センサ16等の各種センサ装置、操作部14、後述の報知部45、及びパフ動作の回数又は負荷21への通電時間等を記憶するメモリー18に接続され、エアロゾル吸引器1の各種の制御を行う。MCU50は、具体的にはプロセッサを主体に構成されており、プロセッサの動作に必要なRAM(Random Access Memory)と各種情報を記憶するROM(Read Only Memory)等の記憶媒体を更に含む。本明細書におけるプロセッサとは、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0022】
また、電源ユニットケース11には、内部に外気を取り込む不図示の空気の取込口が設けられている。なお、空気取込口は、操作部14の周囲に設けられていてもよく、充電端子43の周囲に設けられていてもよい。
【0023】
(第1カートリッジ)
図3に示すように、第1カートリッジ20は、円筒状のカートリッジケース27の内部に、エアロゾル源22を貯留するリザーバ23と、エアロゾル源22を霧化する電気的な負荷21と、リザーバ23から負荷21へエアロゾル源を引き込むウィック24と、エアロゾル源22が霧化されることで発生したエアロゾルが第2カートリッジ30に向かって流れるエアロゾル流路25と、第2カートリッジ30の一部を収容するエンドキャップ26と、を備える。
【0024】
リザーバ23は、エアロゾル流路25の周囲を囲むように区画形成され、エアロゾル源22を貯留する。リザーバ23には、樹脂ウェブ又は綿等の多孔体が収容され、且つ、エアロゾル源22が多孔体に含浸されていてもよい。リザーバ23には、樹脂ウェブ又は綿上の多孔質体が収容されず、エアロゾル源22のみが貯留されていてもよい。エアロゾル源22は、グリセリン、プロピレングリコール、又は水などの液体を含む。
【0025】
ウィック24は、リザーバ23から毛管現象を利用してエアロゾル源22を負荷21へ引き込む液保持部材であって、例えば、ガラス繊維や多孔質セラミックなどによって構成される。
【0026】
負荷21は、電源12から放電端子41を介して供給される電力によって燃焼を伴わずにエアロゾル源22を霧化する。負荷21は、所定ピッチで巻き回される電熱線(コイル)によって構成されている。なお、負荷21は、エアロゾル源22を霧化してエアロゾルを発生可能な素子であればよく、例えば、発熱素子、又は超音波発生器である。発熱素子としては、発熱抵抗体、セラミックヒータ、及び誘導加熱式のヒータ等が挙げられる。
【0027】
エアロゾル流路25は、負荷21の下流側であって、電源ユニット10の中心線L上に設けられる。
【0028】
エンドキャップ26は、第2カートリッジ30の一部を収容するカートリッジ収容部26aと、エアロゾル流路25とカートリッジ収容部26aとを連通させる連通路26bと、を備える。
【0029】
(第2カートリッジ)
第2カートリッジ30は、香味源31を貯留する。第2カートリッジ30は、第1カートリッジ20のエンドキャップ26に設けられたカートリッジ収容部26aに着脱可能に収容される。第2カートリッジ30は、第1カートリッジ20側とは反対側の端部が、ユーザの吸口32となっている。なお、吸口32は、第2カートリッジ30と一体不可分に構成される場合に限らず、第2カートリッジ30と着脱可能に構成されてもよい。このように吸口32を電源ユニット10と第1カートリッジ20とは別体に構成することで、吸口32を衛生的に保つことができる。
【0030】
第2カートリッジ30は、負荷21によってエアロゾル源22が霧化されることで発生したエアロゾルを香味源31に通すことによってエアロゾルに香味を付与する。香味源31を構成する原料片としては、刻みたばこ、又は、たばこ原料を粒状に成形した成形体を用いることができる。香味源31は、たばこ以外の植物(例えば、ミント、漢方、ハーブ等)によって構成されてもよい。香味源31には、メントールなどの香料が付与されていてもよい。
【0031】
本実施形態のエアロゾル吸引器1では、エアロゾル源22と香味源31と負荷21とによって、香味が付加されたエアロゾルを発生させることができる。つまり、エアロゾル源22と香味源31は、エアロゾルを発生させるエアロゾル生成源を構成している。
【0032】
エアロゾル吸引器1におけるエアロゾル生成源は、ユーザが交換して使用する部分である。この部分は、例えば、1つの第1カートリッジ20と、1つ又は複数(例えば5つ)の第2カートリッジ30とが1セットとしてユーザに提供される。
【0033】
エアロゾル吸引器1に用いられるエアロゾル生成源の構成は、エアロゾル源22と香味源31とが別体になっている構成の他、エアロゾル源22と香味源31とが一体的に形成されている構成、香味源31が省略されて香味源31に含まれ得る物質がエアロゾル源22に付加された構成、香味源31の代わりに薬剤等がエアロゾル源22に付加された構成等であってもよい。
【0034】
エアロゾル源22と香味源31とが一体的に形成されたエアロゾル生成源を含むエアロゾル吸引器1であれば、例えば1つ又は複数(例えば20個)のエアロゾル生成源が1セットとしてユーザに提供される。
【0035】
エアロゾル源22のみをエアロゾル生成源として含むエアロゾル吸引器1であれば、例えば1又は複数(例えば20個)のエアロゾル生成源が1セットとしてユーザに提供される。
【0036】
このように構成されたエアロゾル吸引器1では、図3中の矢印Bで示すように、電源ユニットケース11に設けられた不図示の取込口から流入した空気が、空気供給部42から第1カートリッジ20の負荷21付近を通過する。負荷21は、ウィック24によってリザーバ23から引き込まれたエアロゾル源22を霧化する。霧化されて発生したエアロゾルは、取込口から流入した空気と共にエアロゾル流路25を流れ、連通路26bを介して第2カートリッジ30に供給される。第2カートリッジ30に供給されたエアロゾルは、香味源31を通過することで香味が付与され、吸口32に供給される。
【0037】
また、エアロゾル吸引器1には、各種情報を報知する報知部45が設けられている(図5参照)。報知部45は、発光素子によって構成されていてもよく、振動素子によって構成されていてもよく、音出力素子によって構成されていてもよい。報知部45は、発光素子、振動素子、及び音出力素子のうち、2以上の素子の組合せであってもよい。報知部45は、電源ユニット10、第1カートリッジ20、及び第2カートリッジ30のいずれに設けられてもよいが、電源ユニット10に設けられることが好ましい。例えば、操作部14の周囲が透光性を有し、LED等の発光素子によって発光するように構成される。
【0038】
(電気回路)
電源ユニット10の電気回路の詳細について図6を参照しながら説明する。
電源ユニット10は、電源12と、静電容量センサ13と、電源12の電圧である電源電圧VBattを測定する電圧センサ16と、放電端子41を構成する正極側放電端子41a及び負極側放電端子41bと、充電端子43を構成する正極側充電端子43a及び負極側充電端子43bと、電源12の正極側と正極側放電端子41aとの間及び電源12の負極側と負極側放電端子41bとの間に接続されるMCU50と、充電端子43と電源12との電力伝達経路上に配置される充電IC55と、電源12と放電端子41との電力伝達経路上に配置されるスイッチ19と、を備える。
【0039】
スイッチ19は、例えばMOSFET等の半導体素子により構成され、MCU50によって開閉制御される。
【0040】
充電IC55がインバータ61に非接続の状態において電圧センサ16によって測定される電源電圧VBattには、放電端子41に負荷21が接続され且つスイッチ19が閉じられた状態における電源12の電圧である閉回路電圧CCV(Closed Circuit Voltage)と、スイッチ19が開かれた状態における電源12の電圧である開回路電圧OCV(Open Circuit Voltage)と、が含まれる。電圧センサ16によって測定された電源電圧VBattはMCU50に伝達される。
【0041】
図6に示した電源ユニット10の電気回路では、スイッチ19は電源12の正極側と正極側放電端子41aの間に設けられている。このような所謂プラスコントロールに代えて、スイッチ19は負極側放電端子41bと電源12の負極側に設けられるマイナスコントロールであってもよい。
【0042】
静電容量センサ13は、具体的にはコンデンサによって構成されている。静電容量センサ13は、MCU50によって充放電される。静電容量センサ13のMCU50と接続された電極とその電極の対向電極との間に、電源12の電解液や外部から侵入した液体が存在していると、静電容量センサ13の静電容量が変化する。MCU50は、この静電容量の変化による充電時間または放電時間の変化に基づいて、電源ユニットケース11内における電源12の電解液の漏出の有無と、電源ユニットケース11への外部からの液体の侵入の有無の少なくとも一方を判定する。
【0043】
静電容量センサ13は、例えば、電源ユニットケース11内のうち、外部から水分が侵入しやすい箇所(例えば充電端子43の近傍)に配置される。また、静電容量センサ13は、例えば、電源ユニットケース11内のうち、電源12から漏れ出た電解液が到達しやすい箇所(例えば、電源12の正極タブ又は負極タブの近傍や、電源12のカバーと電源ユニットケース11との間等)に配置される。静電容量センサ13は、上述した複数の箇所にそれぞれ配置されていてもよい。このような箇所に静電容量センサ13があることで、電源12から漏出した電解液や、外部から侵入した水分を検知することが可能になる。
【0044】
(MCU)
次にMCU50の構成について、より具体的に説明する。
MCU50は、図5に示すように、ROMに記憶されたプログラムをプロセッサが実行することにより実現される機能ブロックとして、エアロゾル生成要求検出部51と、電源状態診断部52と、電力制御部53と、報知制御部54と、を備える。
【0045】
エアロゾル生成要求検出部51は、吸気センサ15の出力結果に基づいてエアロゾル生成の要求を検出する。吸気センサ15は、吸口32を通じたユーザの吸引により生じた電源ユニット10内の圧力(内圧)変化の値を出力するよう構成されている。吸気センサ15は、例えば、不図示の取込口から吸口32に向けて吸引される空気の流量(すなわち、ユーザのパフ動作)に応じて変化する内圧に応じた出力値(例えば、電圧値又は電流値)を出力する圧力センサである。吸気センサ15は、コンデンサマイクロフォン等から構成されていてもよい。
【0046】
電源状態診断部52は、電源12の状態を診断する。電源状態診断部52は、具体的には、電圧センサ16により測定される電源電圧(VBatt)等の情報を用いて、電源12が既定状態まで劣化が進行した劣化状態にあるか否かを診断したり、電源12が故障状態にあるか否かを診断したりする。本明細書における電源12が既定状態まで劣化が進行した状態とは、例えば電源12の健全状態を示す数値指標であるSOH(State Of Health)が50%以下となる状態を一例として挙げることができる。SOHは、現時点における電源12の満充電容量を新品時における電源12の満充電容量で割った値から導出してもよい。電源状態診断部52は、複数種類の診断処理をそれぞれ実行することで、電源12の状態を多面的に診断する。この診断処理の詳細については後述する。
なお、電源状態診断部52は、劣化状態や故障状態以外の電源12の状態を診断してもよい。
【0047】
報知制御部54は、各種情報を報知するように報知部45を制御する。例えば、報知制御部54は、第2カートリッジ30の交換タイミングの検出に応じて、第2カートリッジ30の交換タイミングを報知するように報知部45を制御する。報知制御部54は、メモリー18に記憶されたパフ動作の累積回数又は負荷21への累積通電時間に基づいて、第2カートリッジ30の交換タイミングを検出し、報知する。報知制御部54は、第2カートリッジ30の交換タイミングの報知に限らず、第1カートリッジ20の交換タイミング、電源12の交換タイミング、電源12の充電タイミング等を報知してもよい。報知制御部54は、電源状態診断部52によって診断された電源12の状態を報知してもよい。
【0048】
報知制御部54は、未使用の1つの第2カートリッジ30がセットされた状態にて、パフ動作が所定回数行われた場合、又は、パフ動作による負荷21への累積通電時間が所定値(例えば120秒)に達した場合に、この第2カートリッジ30を使用済み(即ち、残量がゼロ又は空である)と判定して、第2カートリッジ30の交換タイミングを報知するようにしている。
【0049】
また、報知制御部54は、上記の1セットに含まれる全ての第2カートリッジ30が使用済みとなったと判定した場合に、この1セットに含まれる1つの第1カートリッジ20を使用済み(即ち、残量がゼロ又は空である)と判定して、第1カートリッジ20の交換タイミングを報知するようにしてもよい。
【0050】
電力制御部53は、エアロゾル生成要求検出部51がエアロゾル生成の要求を検出した際に、放電端子41を介した電源12の放電を、スイッチ19のON/OFFによって制御する。
【0051】
電力制御部53は、負荷21によってエアロゾル源が霧化されることで生成されるエアロゾルの量が所望範囲に収まるように、言い換えると、電源12から負荷21に供給される電力又は電力量が一定範囲となるように制御する。具体的に説明すると、電力制御部53は、例えば、PWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)制御によってスイッチ19のON/OFFを制御する。これに代えて、電力制御部53は、PFM(Pulse Frequency Modulation:パルス周波数変調)制御によってスイッチ19のオン/オフを制御してもよい。
【0052】
電力制御部53は、エアロゾルを生成するために負荷21への電力供給を開始してから所定期間が経過した場合に、電源12から負荷21に対する電力供給を停止する。言い換えると、電力制御部53は、ユーザが実際にパフ動作を行っているパフ期間内であっても、パフ期間が所定期間を超えた場合に、電源12から負荷21に対する電力供給を停止する。所定期間は、ユーザのパフ期間のばらつきを抑制するために定められる。
【0053】
電力制御部53の制御により、1回のパフ動作において負荷21に流れる電流は、PWM制御によって負荷21に供給される略一定の実効電圧と、放電端子41と負荷21の抵抗値と、によって決まる略一定の値となる。本実施形態のエアロゾル吸引器1では、未使用の1つの第2カートリッジ30をユーザが使用してエアロゾルを吸引する際に、負荷21への累積通電時間が最大で例えば120秒となるよう制御される。
【0054】
(MCUの動作モード)
図7は、MCU50の動作モードを説明するための模式図である。図7に示すように、MCU50は、充電モード、スリープモード、フリーモード、パワーモード、及び放電モードの5つのモードにて動作可能となっている。
【0055】
スリープモードは、操作部14の操作を検知するための機能と必要に応じて電源12の診断処理の一部のみが有効となるモードであり、5つのモードの中で最も消費電力が低いモードである。MCU50は、スリープモードにおいて、操作部14の操作(例えばボタンの押下)を検知すると、フリーモードへと移行する。
【0056】
フリーモードは、電源12の充電、電源12から負荷21への放電、及び吸気センサ15によるパフ動作の検出以外の機能が有効となるモードであり、スリープモードよりも消費電力が大きいモードである。MCU50は、フリーモードにおいて、操作部14の操作が既定時間(例えば2秒)なされない状態が続いた場合には、スリープモードへと移行する。MCU50は、フリーモードにおいて、パワーモードに移行するための操作(例えば操作部14のボタンの長押し)がなされると、パワーモードへと移行する。
【0057】
パワーモードは、フリーモードにて有効となる機能に加えて、吸気センサ15によるパフ動作の検出機能が有効となるモードであり、フリーモードよりも消費電力が大きいモードである。MCU50は、パワーモードにおいて、操作部14の操作がなされない状態が既定時間(例えば6分)継続すると、フリーモードへと移行する。MCU50は、パワーモードにおいて、ユーザのパフ動作を検出すると、放電モードへと移行する。
【0058】
放電モードは、パワーモードにて有効となる機能に加えて、スイッチ19を制御して負荷21への放電を行ってエアロゾルを発生させる機能が有効となるモードであり、パワーモードよりも消費電力の大きいモードである。MCU50は、放電モードにおいて、吸気センサ15によってパフ動作の完了が検知されるか又はパフ動作が検知されてから上記の所定期間が経過すると、パワーモードへと移行する。
【0059】
充電モードは、電源12の充電機能が有効となるモードである。MCU50は、上述したいずれのモードで動作している場合でも、充電端子43が外部電源60に接続されると、充電モードへと移行する。MCU50は、充電端子43と外部電源60とが切断されると、フリーモードへと移行する。
【0060】
(電源の診断処理)
電源状態診断部52は、図7に示した5つのモードのうち、フリーモード、パワーモード、放電モード、及び充電モードの各々にて、電源12の診断処理を実行可能となっている。電源状態診断部52は、第一診断処理、第二診断処理、第三診断処理、第四診断処理、第五診断処理、第六診断処理、第七診断処理、及び第八診断処理の8種類の診断処理を実行可能である。第一診断処理は、実行にあたり電源12の放電が不要な処理である。第六診断処理、第七診断処理、及び第八診断処理は、実行にあたり電源12の放電が必要な処理である。
【0061】
電源状態診断部52は、フリーモードにおいては第一診断処理を実行する。電源状態診断部52は、パワーモードにおいては第一診断処理を実行する。電源状態診断部52は、充電モードにおいては、第一診断処理に加えて、第二診断処理、第三診断処理、第四診断処理、及び第五診断処理を実行する。電源状態診断部52は、放電モードにおいては第一診断処理に加えて、第六診断処理、第七診断処理、及び第八診断処理を実行する。
【0062】
以下、それぞれの診断処理について説明する。
【0063】
(第一診断処理)
第一診断処理は、静電容量センサ13の静電容量の変化に基づいて、電源12が故障状態であるか否かを診断する処理である。電源状態診断部52は、静電容量センサ13の静電容量の変化に基づいて、電源ユニットケース11内における電解液などの液体の漏出と、電源ユニットケース11への外部からの液体の侵入のいずれか一方または両方が発生しているか否かを判定する。そして、液体の漏出や侵入が発生していると判定した場合に、電源12が故障状態であると診断する。
【0064】
具体的には、電源状態診断部52は、静電容量センサ13を完全に放電させてから充電を開始し、満充電までに要した時間を計測し、その時間が閾値よりも大きい場合には、静電容量センサ13の静電容量が大きくなっているため、液体の漏出と侵入のいずれかが発生していると判定する。電源状態診断部52は、上記の時間が閾値以下の場合には、液体の漏出と侵入のどちらも発生していないと判定する。電源状態診断部52は、静電容量センサ13が満充電の状態から完全に放電するまでに要する時間を計測し、その時間が閾値よりも大きい場合に、液体の漏出と侵入のいずれかが発生していると判定してもよい。
【0065】
図8は、第二診断処理から第五診断処理を説明するための模式図である。図8の例では、電源12の電源電圧は、4.2Vが満充電電圧であり、3.2Vが放電終止電圧となっている。また、MCU50の動作保証電圧は2.2Vとなっている。
【0066】
(第二診断処理)
第二診断処理は、電源12の充電中における電源電圧の変化に基づいて、電源12が故障状態であるか否かを診断する処理である。具体的には、電源状態診断部52は、電源12の充電中において、閾値TH1以上の電源電圧の低下が発生した場合に、電源12の内部短絡が発生したと判断し、電源12が故障状態であると診断する。充電中における電源12の電源電圧は、満充電電圧に至るまで増加し続ける。しかし、電源12の内部短絡が生じると正極と負極間の電位差が減少又は喪失するため、充電中においても電源12の電源電圧が低下する。第二診断処理は、この原理を利用して内部短絡によって電源12が故障状態であるか否かを診断する。また、閾値TH1は、0.1~1.0Vの範囲で選択されることが好ましい。
【0067】
(第三診断処理)
第三診断処理は、電源12の充電速度に基づいて、電源12の充電容量を推定し、その充電容量に基づいて電源12が劣化状態であるか否かを診断する処理である。電源状態診断部52は、電源12の電源電圧が放電終止電圧以上となっている状態において、第三診断処理を実行する。具体的には、電源状態診断部52は、電源電圧が基準電圧(例えば4.05V)に達するまでに要する充電時間t2を計測し、充電時間t2が予め定めた閾値TH2未満であれば、充電容量が少なくなっていると判定し、電源12が劣化状態であると診断する。この閾値TH2は、充電開始時の電源電圧と基準電圧との差に応じて設定される。電源12の充電容量は、劣化の進行に応じて徐々に減少する。第三診断処理は、この原理を利用して電源12が劣化状態であるか否かを診断する処理である。なお、電源12がある電圧から基準電圧にまで充電されるために必要な時間に代えて、基準時間内に電源12の電源電圧がどれだけ変化するかに基づいて、電源12が劣化状態であるか否かを診断してもよい。
【0068】
(第四診断処理)
第四診断処理は、累計充電時間に基づいて、電源12が劣化状態であるか否かを診断する処理である。具体的には、電源状態診断部52は、電源12の充電時間の積算値が閾値TH3を超えた場合には、電源12が寿命に達したと判断し、電源12が劣化状態であると診断する。電源12は、充放電を繰り返すと不可逆的にその劣化が進行する。電源12の劣化は、特に充電時に進行しやすい。第四診断処理は、この原理を利用して電源12が劣化状態であるか否かを診断する処理である。
【0069】
(第五診断処理)
第五診断処理は、充電時における電源電圧の上昇度合に基づいて、電源12が劣化状態であるか否かを診断する処理である。電源状態診断部52は、電源電圧がMCU50の動作保証電圧近傍となっている状態において、第五診断処理を実行する。第五診断処理では、電源状態診断部52は、予め定めた時間t1の充電を行い、この時間t1の間に、電源電圧が3.15Vに達しなかった場合には、過放電又は深放電による影響を電源12が受けている状態にあると判断し、電源12が劣化状態又は故障状態であると診断する。
【0070】
(第六診断処理)
第六診断処理は、電源12の内部抵抗に基づいて、電源12が劣化状態であるか否かを診断する処理である。電源12の劣化が進むと、電源12の内部抵抗は増大する。第六診断処理では、この内部抵抗の変化をモニタすることで、電源12が劣化状態であるか否かを診断する。
【0071】
電源状態診断部52は、例えば、パフ動作が検出されてから、このパフ動作に応じたエアロゾルの生成を開始するまでの期間に、電源12の開回路電圧OCVと、電源12の閉回路電圧CCVとを電圧センサ16から順次取得し、取得した開回路電圧OCVと閉回路電圧CCVに基づいて、電源12の内部抵抗を算出する。そして、電源状態診断部52は、算出した内部抵抗が予め決められた抵抗閾値を超えている場合には、電源12は劣化状態であると診断し、内部抵抗が抵抗閾値以下である場合には、電源12は劣化状態ではないと診断する。なお、抵抗閾値は、新品の電源12の内部抵抗に基づき設定されてもよい。
【0072】
図9は、エアロゾル吸引器1がパフ動作に応じてエアロゾル生成を行う際のタイミングチャートである。まず、時刻t1において、エアロゾル生成要求検出部51が、吸気センサ15の出力結果に基づいてエアロゾル生成の要求を検出する。時刻t1の後の時刻t2において、電源状態診断部52は、電圧センサ16によって測定された電源12の開回路電圧OCV1を取得する。
【0073】
時刻t2にて開回路電圧OCV1を取得した後、電源状態診断部52は、電源12の診断用にスイッチ19を閉じる制御を行う。ここでのスイッチ19を閉じる時間は、エアロゾルの生成が行われない程度に短い時間である。つまり、このスイッチ19を閉じる期間においては、エアロゾルを発生させるために負荷21へ供給される電力量よりも小さい電力量が負荷21へ供給される。なお、本実施形態に代えて、電源状態診断部52は、開回路電圧OCV1を取得する前に閉回路電圧CCV1を取得してもよい。
【0074】
図9に示したように、電源12の電源電圧は、スイッチ19が閉じられた直後においては、電源12の電極間内部抵抗(リチウムイオンが電極間を移動する際に受ける電極間における抵抗)によって瞬時に電圧が低下する。その後、電源12の電源電圧は、電源12の反応抵抗(リチウムイオンが電極と電解液との界面を移動する際の抵抗)によって徐々に低下して安定する。
【0075】
この反応抵抗による電源電圧の降下が終了した時刻t3において、電源状態診断部52は、電圧センサ16によって測定された電源12の閉回路電圧CCV1を取得する。閉回路電圧CCV1が取得されると、電源状態診断部52は、スイッチ19を開く制御を行う。その後、電力制御部53によってスイッチ19のPWM制御が開始されて、エアロゾルの生成が行われる。
【0076】
電源状態診断部52は、時刻t2にて取得した開回路電圧OCV1から、時刻t3にて取得した閉回路電圧CCV1を減算した値を、時刻t2の後の電源12の診断用にスイッチ19を閉じている間に負荷21に流れた電流値で除算することで、電源12の内部抵抗(電極間内部抵抗と反応抵抗の和)を算出する。なお、電源12の診断用にスイッチ19を閉じている間に負荷21を流れる電流値が既知である場合は、この既知の値で開回路電圧OCV1から閉回路電圧CCV1を減算した値を除算することで、電源12の内部抵抗を算出してもよい。
【0077】
そして、電源状態診断部52は、算出した内部抵抗が上記の抵抗閾値を超えている場合には電源12が劣化していると診断し、内部抵抗が上記の抵抗閾値以下である場合には電源12が劣化状態ではないと診断する。
【0078】
(第七診断処理)
第七診断処理は、エアロゾル生成の前後における電源12の電源電圧の変化に基づいて、電源12が故障状態であるか否かを診断する処理である。ここで言う電源12の故障には、電源内部において正極と負極が接触することによる内部短絡と、電源外部において正極と負極が低抵抗の導電体を介して接触する外部短絡の少なくとも一方が含まれる。
【0079】
内部短絡又は外部短絡が発生すると、エアロゾル生成前の電源12の電源電圧からエアロゾル生成後の電源12の電源電圧を減算した値である電圧降下量は、エアロゾル生成に用いられた放電量に相当する値よりも大きくなる。これは、内部短絡と外部短絡が発生すると、正極と負極間の電位差が減少又は喪失するため、電源12の電源電圧が大幅に低下するためである。第七診断処理では、この電圧降下量をモニタすることで、電源12が故障状態にあるか否かを診断する。
【0080】
具体的には、電源状態診断部52は、図9に示すタイミングチャートにおけるエアロゾル生成前のタイミングである時刻t2において、電圧センサ16により測定された電源12の開回路電圧OCV1を取得する。時刻t2の後に電力制御部53によってPWM制御が開始され、このPWM制御が終了してエアロゾルの生成が終了される。その後の時刻t6において、吸気センサ15の出力結果に基づいてエアロゾル生成の要求が再度検出されると、時刻t6の後の時刻t7において、電源状態診断部52は、電圧センサ16によって測定された電源12の開回路電圧OCV2を取得する。なお、電源状態診断部52は、時刻t6におけるエアロゾル生成の要求の再度の検出よりも前に、電源12の開回路電圧OCV2を取得してもよい。
【0081】
そして、電源状態診断部52は、開回路電圧OCV1から開回路電圧OCV2を減算して得たエアロゾル生成に伴う電圧降下量が降下閾値を超えている場合には、電源12が故障していると診断し、電圧降下量が降下閾値以下である場合には、電源12が故障していないと診断する。この降下閾値は、例えば、1つの第2カートリッジ30を空(使用済み)にするために必要な最大の電力量に相当する値よりも大きな値が設定される。
【0082】
なお、電源状態診断部52は、図9に示すタイミングチャートにおけるエアロゾル生成前のタイミングである時刻t3において、電圧センサ16により測定された電源12の閉回路電圧CCV1を取得し、時刻t6の後にスイッチ19が一時的に閉じられる期間における時刻t8において、電圧センサ16によって測定された電源12の閉回路電圧CCV2を取得し、閉回路電圧CCV1から閉回路電圧CCV2を減算して得た値が降下閾値を超えているか否かによって、電源12が故障状態にあるか否かを診断してもよい。
【0083】
電源12に内部短絡が発生している場合には、電源12に外部短絡が発生している場合よりも、エアロゾル生成に伴う電圧降下量は大きくなる。そこで、上記の降下閾値を、第一の降下閾値と、第一の降下閾値よりも大きい第二の降下閾値との2段階に設定することで、内部短絡と外部短絡のどちらが発生しているのかを判別することが可能である。
【0084】
例えば、電源状態診断部52は、開回路電圧OCV2から開回路電圧OCV1を減算して得た電圧降下量が第二の降下閾値を超えている場合には、電源12が内部短絡による故障状態にあると診断し、電圧降下量が第一の降下閾値を超えており且つ第二の降下閾値以下である場合には、電源12が外部短絡による故障状態であると診断し、電圧降下量が第一の降下閾値以下である場合には、電源12が故障状態ではないと診断する。開回路電圧に代えて閉回路電圧を用いる場合でも、電源状態診断部52は、同様に複数の降下閾値を設けることで、内部短絡と外部短絡のどちらかが発生しているのかを判別してもよい。
【0085】
(第八診断処理)
第八診断処理は、電源12の放電特性の変化に基づいて、電源12が劣化状態であるか否かを診断する処理である。
【0086】
図10は、新品の電源12と劣化した電源12の放電特性の一例を示す図である。図10の縦軸は電源12の電源電圧VBatt(開回路電圧OCV又は閉回路電圧CCV)を示している。図10の横軸は電源12の放電量の積算値を示している。図10に示す破線の波形が新品の電源12の放電特性を示している。図10に示す実線の波形が劣化した電源12の放電特性を示している。
【0087】
図10に示すように、電源12の劣化が進むと、同じ電源電圧VBattであっても積算放電量は減少する。積算放電量に大きな差が生じるのは、単位放電量当たりの電源電圧の降下量が緩やかとなる所謂プラトー領域より少し手前の領域である。第八診断処理において、電源状態診断部52は、新品の電源12のプラトー領域よりも少し手前の領域において、電源12の積算放電量と電源電圧の関係をモニタする。
【0088】
具体的には、電源状態診断部52は、新品時の電源12の放電特性におけるプラトー領域に達するより少し前の積算放電量のときの電圧を閾値電圧Vdとして設定し、更に、閾値電圧Vdより大きく且つ満充電電圧よりも低い閾値電圧Vaを設定する。
【0089】
電源状態診断部52は、電圧センサ16によって測定された電源電圧VBattが閾値電圧Vaとなってから、電圧センサ16によって測定された電源電圧VBattの値が閾値電圧Vbに達するまでの期間における電源12の積算放電量が、予め決められた閾値X1を超えているか否かを判定する。電源状態診断部52は、この積算放電量が閾値X1を超えていれば、電源12は交換が不要な程度に性能を維持している状態(言い換えると既定状態まで劣化が進行している劣化状態ではない)と診断し、この積算放電量が閾値X1以下であれば、電源12は交換が必要な程度に劣化の進んでいる状態(言い換えると既定状態まで劣化が進行している劣化状態である)と診断する。
【0090】
なお、電源電圧VBattが閾値電圧Vaから閾値電圧Vbに達するまでの期間を図10に示すように区間A、区間B、区間Cの3つに分割し、区間Aに閾値X2を設定し、区間Bに閾値X3を設定し、区間Cに閾値X4を設定して、区間毎に、積算放電量等を閾値と比較して、劣化状態か否かの判定を行ってもよい。この場合、閾値X2と閾値X3と閾値X4の合計値は、閾値X1よりも大きいことが好ましい。
【0091】
また、電源状態診断部52は、電源電圧VBattが閾値電圧Vaから閾値電圧Vbに達するまでの期間における電源12の積算放電量の代わりに、この期間に検出されたパフ動作の積算回数、この期間に検出されたパフ動作の積算時間、この期間に負荷21に通電された積算通電時間等を用いてもよい。前述したPWM制御やPFM制御によって、負荷21に供給される電力又は電力量が一定の範囲に収まるように制御されていれば、このような検出容易なパラメータのみで電源12の状態を診断することができる。
【0092】
エアロゾル吸引器1では、以上の8種類の診断処理のいずれかの結果が“劣化状態”又は“故障状態”となった場合に、報知制御部54が、電源12が劣化していること、電源12が故障していること、又は電源12の交換を行う必要があること等を報知部45から報知させる。また、MCU50は、以上の8種類の診断処理のいずれかの結果が“劣化状態”又は“故障状態”となった場合には、それ以降のエアロゾルの生成を行わないよう制御する。これにより、電源12が劣化又は故障した状態にてエアロゾル吸引器1が使用されるのを防いで、製品の安全性を高めることができる。
【0093】
(実施形態のエアロゾル吸引器の効果)
エアロゾル吸引器1によれば、8種類の診断処理によって電源12の状態を多面的に診断することができる。このため、1つの診断処理では見落としてしまう電源12の劣化又は故障などの事象を見落としにくくなる。したがって、電源12の状態の診断精度を高めることができ、製品の安全性を向上させることができる。
【0094】
電源状態診断部52は、充電モードではないフリーモードにおいては第一診断処理を実行する。電源状態診断部52は、充電モードではないパワーモードにおいては第一診断処理を実行する。電源状態診断部52は、充電モードではない放電モードにおいては第一診断処理に加えて、第六診断処理、第七診断処理、及び第八診断処理を実行する。このように、エアロゾル吸引器1によれば、充電モードではないフリーモード、パワーモード、及び放電モードの各々にて電源の診断処理を実行できるため、充電時以外の複数のモードに亘って電源の安全性を向上させることができる。また、機器使用中の安全性を高めることができる。
【0095】
また、エアロゾル吸引器1によれば、充電モード、フリーモード、パワーモード、及び放電モードの各々において第一診断処理を実行可能である。このように、同じ診断処理を複数のモードに亘って実行できるため、電源12の異常等を検知できる可能性を向上させることができる。特に、第一診断処理は、電源12の放電を必要としない処理であるため、複数のモードに亘って実行される場合でも、電源12の残容量の減りを少なくすることができ、機器の使用可能時間を延ばすことができる。
【0096】
また、第一診断処理では、電源ユニットケース11内における電解液などの液体の漏出と、電源ユニットケース11への外部からの液体の侵入のいずれか一方または両方が発生しているか否かが判定される。電解液などの液体の漏出は、落下などの衝撃によって生じる虞がある。液体の侵入は、水没によって生じる虞がある。つまり、これらによる電源12の故障は、エアロゾル吸引器1のモードに拠らず、エアロゾル吸引器1の取り扱いによって生じる虞がある。従って、複数のモードで実行されることが好ましい。
【0097】
また、電解液などの液体の漏出又は液体の侵入による電源12の故障は、電源12の充放電とは関係なく生じる虞がある。また、第一診断処理は、低消費電力で実行可能である。そこで、電源状態診断部52は、フリーモードにおいても第一診断処理を実行することで、フリーモードにおける電源12の消費電力を低減しつつ、フリーモードにおける電源12の安全性を向上することができる。
【0098】
また、エアロゾル吸引器1によれば、充電モード及び放電モードと、フリーモード及びパワーモードとで、異なる診断処理を実行可能である。このように、複数のモードにて異なる診断処理を実行できるため、各モードに適した診断処理を実行することができ、電源12の診断を効率的且つ精度よく行うことができる。また、放電モードにおいて行われる診断処理は、放電が必要な処理であり、充電モードにおいて行われる診断処理は、放電が不要な診断処理である。このように、放電の要否が異なる且つ各モードの目的に応じた複数の診断処理が実行可能なため、様々な観点から電源12の安全性を評価することができる。
【0099】
また、エアロゾル吸引器1によれば、放電モードにおいては、フリーモード及びパワーモードよりも多くの診断処理が実行される。このため、電源12のフリーモード及びパワーモードと比べて劣化が進行しやすい放電モードにて、電源12の状態を管理しやすくなる。
【0100】
また、エアロゾル吸引器1によれば、充電モードにおいて実行される診断処理の数は、フリーモード及びパワーモードにおいて実行される診断処理の数よりも多い。このため、電源12の充放電状態が安定し且つMCU50の負荷が低い状態において多くの診断処理を実行することができる。
【0101】
また、エアロゾル吸引器1によれば、スリープモードにおいては診断処理が実行されない。このため、スリープモードにおける消費電力を低減することができる。
【0102】
(エアロゾル吸引器の第一変形例)
電源状態診断部52は、スリープモードにおいて第一診断処理を実行するようにしてもよい。このようにすることで、長い時間実行され得るスリープモードにおいて診断処理が行われるため、機器の未使用中における電源12の安全性を向上させることができる。前述した通り、第一診断処理で診断される電解液などの液体の漏出又は液体の侵入による電源12の故障は、電源12の充放電とは関係なく生じる虞がある。また、第一診断処理は、低消費電力で実行可能である。そこで、電源状態診断部52は、スリープモードにおいても第一診断処理を実行することで、スリープモードにおける電源12の消費電力を低減しつつ、スリープモードにおける電源12の安全性を向上することができる。
【0103】
(エアロゾル吸引器の第二変形例)
電源状態診断部52は、上述した8種類の診断処理に加えて、次の第九診断処理や第十診断処理を行ってもよい。
【0104】
(第九診断処理)
電源12に圧力センサ又は歪みゲージ(変位センサ)を付けておく。電源状態診断部52は、この圧力センサ又は歪みゲージ(変位センサ)の出力信号に基づく電源12の膨らみ量に基づいて、電源12が劣化状態であるか否かを診断する。電源12の劣化が進むと、電源12内部の電解液や活物質の不可逆的な分解により発生するガスによって、新品時に比べて膨張する。このため、この膨張量によって電源12が劣化しているかどうかを診断可能である。
【0105】
(第十診断処理)
電源12の温度を検出する温度センサを設けておく。電源状態診断部52は、この温度センサによって測定される電源12の温度に基づいて、電源12が劣化状態にあるか否かを診断する。電源12の劣化が進むと、不可逆的に増大した内部抵抗によるジュール熱により、充放電を行っている間の電源12の発熱量は増大する。したがって、この発熱量に対応する電源12の温度をモニタすることで、電源12が劣化状態にあるか否かを診断することができる。
【0106】
電源状態診断部52は、例えば、スリープモード以外の各モードにおいて第九診断処理と第十診断処理の少なくとも一方を実行する。電源状態診断部52は、例えば、特に安全性が求められる放電モードにおいてのみ、第九診断処理と第十診断処理の少なくとも一方を実行してもよい。なお、別の一例として、電源状態診断部52は、充電モードにおいても。第九診断処理と第十診断処理の少なくとも一方を実行してもよい。
【0107】
以上のエアロゾル吸引器1において、電源状態診断部52は、第一診断処理から第八診断処理の8種類全てを実行するものでなくてもよい。例えば、電源状態診断部52は、放電モードにおいては、第一診断処理と、第六から第八診断処理の3つから選ばれる1つ又は2つの診断処理と、を実行し、充電モードにおいては、第一診断処理と、第二から第五診断処理の5つから選ばれる1~4つの診断処理と、を実行する構成であってもよい。
【0108】
以上のエアロゾル吸引器1において、フリーモードは必須ではなく省略されてもよい。この場合、スリープモードにて操作部14の操作がなされるとパワーモードに移行する構成とすればよい。この場合においても、電源状態診断部52はスリープモードで第一診断処理を実行することで、スリープモードにおける電源12の消費電力を低減しつつ、スリープモードにおける電源12の安全性を向上することができる。この場合はスリープモードがより長い間実行されるため、電源12の安全性を向上させることができる。
【0109】
本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。なお、括弧内には、上記した実施形態において対応する構成要素等を示しているが、これに限定されるものではない。
【0110】
(1)
エアロゾル生成源からエアロゾルを発生させるための負荷に放電可能な電源(電源12)と、
前記電源の充放電を制御可能に構成される制御部(MCU50)と、を備え、
前記制御部は、前記電源の充電を制御する充電モードと、前記充電モードとは異なる第1モード(フリーモード、パワーモード)と、前記充電モード及び前記第1モードと異なる第2モード(放電モード)と、にて動作可能であり、前記第1モードと前記第2モードの各々にて前記電源の診断処理を実行可能であるエアロゾル吸引器用の電源ユニット。
【0111】
(1)によれば、充電モードではない第1モード及び第2モードの各々にて電源の診断処理を実行できるため、充電時以外の複数のモードに亘って電源の安全性を向上できる。また、機器使用中の安全性を高めることができる。
【0112】
(2)
(1)記載のエアロゾル吸引器用の電源ユニットであって、
前記第1モードにて実行可能な前記診断処理と、前記第2モードにて実行可能な前記診断処理とには、同じ第一診断処理が含まれるエアロゾル吸引器用の電源ユニット。
【0113】
(2)によれば、同じ診断処理を複数のモードに亘って実行できるため、電源の異常等を検知できる可能性を向上させることができる。さらに診断処理を実行するにあたって必要な電気部品、メモリーの記憶領域や制御部の演算能力を節約することができる。
【0114】
(3)
(2)記載のエアロゾル吸引器用の電源ユニットであって、
前記第一診断処理は、実行にあたり前記電源の放電が不要であるエアロゾル吸引器用の電源ユニット。
【0115】
(3)によれば、第一診断処理が複数のモードに亘って実行される場合でも、電源の残容量の減りを少なくすることができ、機器の使用可能時間を延ばすことができる。さらに、放電に伴う電源の劣化が生じないため、電源の劣化を抑制することができる。
【0116】
(4)
(2)記載のエアロゾル吸引器用の電源ユニットであって、
前記電源を収容する筐体(電源ユニットケース11)を備え、
前記第一診断処理は、前記筐体の内部における液体の漏出と、前記筐体の内部への液体の侵入の少なくとも一方を検知するものであるエアロゾル吸引器用の電源ユニット。
【0117】
(4)によれば、モードによらずに発生し得る電源の故障となり得る事象を迅速に検知することができる。
【0118】
(5)
(1)記載のエアロゾル吸引器用の電源ユニットであって、
前記第1モードにて実行可能な前記診断処理と、前記第2モードにて実行可能な前記診断処理には、異なる診断処理が含まれるエアロゾル吸引器用の電源ユニット。
【0119】
(5)によれば、複数のモードにて異なる診断処理を実行できるため、各モードに適した診断処理を実行することができ、電源の診断を効率的且つ精度よく行うことができる。さらに、単一の診断処理を実行する場合に比べて、電源の診断を正確に行うことができる。
【0120】
(6)
(5)記載のエアロゾル吸引器用の電源ユニットであって、
前記第1モードにて実行される前記診断処理には、実行にあたり前記電源の放電が不要な診断処理(第一診断処理)が含まれ、
前記第2モードにて実行される前記診断処理には、実行にあたり前記電源の放電が必要な診断処理(第六診断処理、第七診断処理、第八診断処理)が含まれるエアロゾル吸引器用の電源ユニット。
【0121】
(6)によれば、放電が必要な診断処理と放電が不要な診断処理とが実行可能なため、様々な観点から電源の安全性を評価することができる。さらに、診断処理の中に放電が不要なものが含まれるため、放電に伴う電源の劣化が生じにくくなり、電源の劣化を抑制することができる。
【0122】
(7)
(6)記載のエアロゾル吸引器用の電源ユニットであって、
前記電源の放電が必要な前記診断処理は、前記電源の内部抵抗に基づいて前記電源の劣化状態を診断する処理であるエアロゾル吸引器用の電源ユニット。
【0123】
(7)によれば、内部抵抗に基づいて電源の劣化状態を診断するため、長時間の放電を必要とせず且つ電源の劣化状態と密接に関連したパラメータに基づいて診断を高精度に行うことができる。
【0124】
(8)
(1)記載のエアロゾル吸引器用の電源ユニットであって、
前記制御部は、前記第2モードにおいてのみ前記負荷に放電がなされるように前記電源を制御し、
前記第2モードにおいて実行される前記診断処理の数は、前記第1モードにおいて実行される前記診断処理の数よりも多いエアロゾル吸引器用の電源ユニット。
【0125】
(8)によれば、負荷への放電が行われるモードにおいて多くの診断処理が実行されるため、電源の劣化などが進行しやすいモードにて電源の状態を管理しやすくなる。さらに、劣化が進行した場合でも、その発生を迅速に検知することができる。
【0126】
(9)
(1)又は(8)記載のエアロゾル吸引器用の電源ユニットであって、
前記制御部は、前記第2モードにおいてのみ前記負荷に放電がなされるように前記電源を制御し、
前記充電モードにおいて実行される前記診断処理の数は、前記第2モードにおいて実行される前記診断処理の数よりも多いエアロゾル吸引器用の電源ユニット。
【0127】
(9)によれば、充電モードにおいて多くの診断処理が実行されるため、電源の充放電状態が安定し且つ制御部の負荷が低い状態において多くの診断処理を実行することができる。さらに、電源の劣化などが特に進行しやすい充電モードにて電源の状態を管理しやすくなる。さらに、劣化が進行した場合でも、その発生を迅速に検知することができる。
【0128】
(10)
(1)から(9)のいずれか1つに記載のエアロゾル吸引器用の電源ユニットであって、
前記制御部は、更に、前記第1モード及び前記第2モードよりも消費電力の低いスリープモードにて動作可能であり、前記スリープモードにて前記電源の診断処理を実行可能であるエアロゾル吸引器用の電源ユニット。
【0129】
(10)によれば、長い時間実行され得るスリープモードにおいて診断処理が行われるため、機器の未使用中における電源の安全性を向上させることができる。
【0130】
(11)
(10)記載のエアロゾル吸引器用の電源ユニットであって、
前記電源を収容する筐体を備え、
前記スリープモードにおいて実行される前記診断処理は、前記筐体の内部における液体の漏出と、前記筐体の内部への液体の侵入の少なくとも一方を検知するものであるエアロゾル吸引器用の電源ユニット。
【0131】
(11)によれば、スリープモードにおいて他の劣化や故障よりも生じやすい液体の漏出や侵入の検知を行うことで、スリープモードにおける電源の安全性を評価することができる。さらに、スリープモードにおいて適切な診断処理が行われることで、スリープモードにおける消費電力の低減と電源の安全性の評価を共に実現することができる。
【0132】
(12)
(1)から(9)のいずれか1つに記載のエアロゾル吸引器用の電源ユニットであって、
前記制御部は、更に、前記第1モード及び前記第2モードよりも消費電力の低いスリープモードにて動作可能であり、前記スリープモードにおいては前記電源の診断処理を実行不能であるエアロゾル吸引器用の電源ユニット。
【0133】
(12)によれば、スリープモードにおける消費電力を低減することができる。さらに、スリープモードにおける電源の劣化の進行を抑制することができる。
【0134】
(13)
エアロゾル生成源からエアロゾルを発生させるための負荷に放電可能な電源と前記電源の充放電を制御可能に構成される制御部とを有するエアロゾル吸引器の電源診断方法であって、
前記制御部は、前記電源の充電を制御する充電モードと、前記充電モードとは異なる第1モードと、前記充電モード及び前記第1モードと異なる第2モードと、にて動作可能であり、
前記第1モードと前記第2モードの各々にて前記電源の診断処理を実行するエアロゾル吸引器の電源診断方法。
【0135】
(14)
エアロゾル生成源からエアロゾルを発生させるための負荷に放電可能な電源と前記電源の充放電を制御可能に構成される制御部とを有するエアロゾル吸引器の電源診断プログラムであって、
前記制御部は、前記電源の充電を制御する充電モードと、前記充電モードとは異なる第1モードと、前記充電モード及び前記第1モードと異なる第2モードと、にて動作可能であり、
前記第1モードと前記第2モードの各々にて前記電源の診断処理を実行するステップをコンピュータに実行させるためのエアロゾル吸引器の電源診断プログラム。
【符号の説明】
【0136】
1 エアロゾル吸引器
10 電源ユニット
12 電源
20 第1カートリッジ
21 負荷
22 エアロゾル源
31 香味源
30 第2カートリッジ
50 MCU
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10