(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-31
(45)【発行日】2023-11-09
(54)【発明の名称】液滴生成方法
(51)【国際特許分類】
B05B 17/06 20060101AFI20231101BHJP
B41J 2/015 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
B05B17/06
B41J2/015
(21)【出願番号】P 2020104874
(22)【出願日】2020-06-17
【審査請求日】2023-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】高麗 友輔
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 睦三
(72)【発明者】
【氏名】溝田 裕久
(72)【発明者】
【氏名】北岡 雅則
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 幸太
【審査官】伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-200447(JP,A)
【文献】特開2003-053217(JP,A)
【文献】特開2002-166541(JP,A)
【文献】特開2010-052316(JP,A)
【文献】特開平11-300974(JP,A)
【文献】特開2000-079682(JP,A)
【文献】特開2008-006644(JP,A)
【文献】飯尾政美、山根宏之,水の超音波霧化における給水量と粒度に関する実験的検討,平成元年度(第33回)日本大学理工学部学術講演会 講演論文集,日本,1989年,pp.467-468
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 17/00 -17/08
B41J 2/015- 2/16
B05D 1/00 - 7/26
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の振動子を用いて液層から液滴を生成する液滴生成方法であって、
前記複数の振動子からの複数の超音波を液層に照射して、前記液層から複数の一次液滴を飛散させ、
飛散中の前記複数の一次液滴が凝集して二次液滴に成長
しており、
前記複数の超音波が焦点で結ばれるように、前記複数の振動子のそれぞれに対する信号印加タイミングを異ならせており、
前記液層の厚さは、前記焦点の距離の1%以上且つ50%以下であることを特徴とする液滴生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の振動子を用いて液層から液滴を生成する液滴生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生化学分野では、容器内の液層(詳細には、血液や試薬液等)から液滴を抽出するため、例えばピペットを用いる。ピペットは、空気圧によって液滴の吸入・吐出を行う。
【0003】
インクジェットプリンタでは、容器内の液層(詳細には、インク)から液滴を吐出させるため、例えば複数の振動子を用いる(例えば特許文献1参照)。特許文献1では、複数の振動子からの複数の超音波を液層に照射する。このとき、音響レンズを用いることにより、各振動子からの超音波が集束される。更に、複数の振動子のそれぞれに対する信号印加タイミング(位相)を異ならせることにより、複数の超音波が1つの焦点で結ばれており、この焦点が液層の表面に位置する。これにより、液層から1つの液滴を吐出させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の液滴生成方法では、直径100μm未満の液滴を生成することができるものの、直径100μm以上の液滴を生成することが困難である。仮に、複数の振動子のそれぞれに対する信号印加時間を過剰に長くしても、液滴の生成を阻害するだけである。そのため、例えば生化学分野などで採用することができない。
【0006】
本発明の目的は、直径100μm以上の液滴を生成することができる液滴生成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を解決するために、本発明は、複数の振動子を用いて液層から液滴を生成する液滴生成方法であって、前記複数の振動子からの複数の超音波を液層に照射して、前記液層から複数の一次液滴を飛散させ、飛散中の前記複数の一次液滴が凝集して二次液滴に成長しており、前記複数の超音波が焦点で結ばれるように、前記複数の振動子のそれぞれに対する信号印加タイミングを異ならせており、前記液層の厚さは、前記焦点の距離の1%以上且つ50%以下である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、直径100μm以上の液滴を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態における液滴生成装置の構造を表す概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態における電気信号の具体例を表す図である。
【
図3】本発明の一実施形態における液滴生成装置の動作を表す概略図であり、液滴が縦方向に出射する場合の第1過程を示す。
【
図4】本発明の一実施形態における液滴生成装置の動作を表す概略図であり、液滴が縦方向に出射する場合の第2過程を示す。
【
図5】本発明の一実施形態における液滴生成装置の動作を表す概略図であり、液滴が斜め方向に出射する場合の第1過程を示す。
【
図6】本発明の一実施形態における液滴生成装置の動作を表す概略図であり、液滴が斜め方向に出射する場合の第2過程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0011】
図1は、本実施形態における液滴生成装置の構造を表す概略図である。
【0012】
液滴生成装置は、平板状の圧電素子11と、圧電素子11の上面側に設けられた接地電極12と、接地電極12の上面側に接着された保護膜13と、圧電素子11の下面側に設けられ、一方向に配列された複数の信号電極14と、複数の信号電極14の下面側に接着された樹脂15と、複数の信号線16を介し複数の信号電極14に接続された駆動回路17とを備える。
【0013】
保護膜13は、金属又は樹脂で形成された薄膜である。保護膜13の上面側には液層20が載置されている。
【0014】
圧電素子11は、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛やチタン酸鉛などのセラミックス、酸化亜鉛やニオブ酸リチウムなどの材料、又はコンポジット(複合材料)が用いられている。接地電極12及び信号電極14は、例えば、金、銀、銅、白金、チタン、又はアルミニウムなどの材料が用いられている。
【0015】
各信号電極14と、各信号電極14に対応する圧電素子11の一部分及び接地電極12の一部分は、各振動子18を構成する。すなわち、液滴生成装置は、複数の振動子18を備える。
【0016】
駆動回路17は、例えば
図2で示すように所定の周期T且つ所定の時間tで、信号線16を介し振動子18に電気信号を印加する。信号印加時間tは10ms以上である。振動子18は、電気信号によって発振し、超音波を出射する。
【0017】
駆動回路17は、2つ以上の振動子18を選択して電気信号を印加すると共に、信号印加タイミング(位相)を制御する。例えば複数の振動子18のそれぞれに対する信号印加タイミングを同じにすることにより、複数の超音波を縦方向に出射させる。これにより、液層20から液滴を生成して縦方向に出射させる(詳細は後述)。あるいは、例えば複数の振動子18のそれぞれに対する信号印加タイミングを異ならせることにより、複数の超音波を焦点で結ばせる。これにより、液層20から液滴を生成して斜め方向に出射させる(詳細は後述)。なお、液層20の厚さh(
図1参照)は、焦点の距離d(後述の
図5参照)の50%以下である。
【0018】
本実施形態の液滴生成装置の動作(すなわち、液滴生成方法)を説明する。
【0019】
まず、液滴を縦方向に出射させる場合について、
図3及び
図4を用いて説明する。駆動回路17は、例えば2つの振動子18に電気信号を印加し、それらの信号印加タイミングを同じにする。これにより、2つの振動子18からの2つの超音波を液層20に照射して、液層20から一次液滴21A,21Bを飛散させる。一次液滴21A,21Bは、互いにほぼ平行な方向に飛散する。しかし、隣り合う一次液滴21A,21Bの間隔は、隣り合う振動子18の間隔に対応しており、一次液滴の直径より若干大きい程度である。そのため、飛散中の一次液滴21A,21Bが凝集して、二次液滴22Aに成長する。
【0020】
次に、液滴を斜め方向に出射させる場合について、
図5及び
図6を用いて説明する。駆動回路17は、例えば9つの振動子18に電気信号を印加し、それらの信号印加タイミングを異ならせる。これにより、9つの振動子18からの9つの超音波を液層20に照射して、液層20から一次液滴21C,21D,21Eを飛散させる。一次液滴21C,21D,21Eは、上述した焦点に向かって飛散する。そのため、飛散中の一次液滴21C,21D,21Eが凝集して、二次液滴22Bに成長する。
【0021】
本実施形態では、上述した液滴生成方法により、直径100μm以上の液滴を生成することができる。
【0022】
なお、本実施形態の液滴生成装置は、1つの圧電素子と、1つの接地電極を備えた場合(すなわち、各振動子は、各信号電極と、各信号電極に対応する圧電素子の一部分及び接地電極の一部分とで構成された場合)を例にとって説明したが、これに限られない。液滴生成装置は、複数の圧電素子を備えてもよいし、複数の接地電極を備えてもよい。すなわち、各振動子は、各信号電極と、各圧電素子と、対応する接地電極の一部分とで構成されてもよい。また、各振動子は、各信号電極と、各接地電極と、対応する圧電素子の一部分とで構成されてもよい。また、各振動子は、各信号電極と、各圧電素子と、各接地電極とで構成されてもよい。
【符号の説明】
【0023】
18 振動子
20 液層
21A~21E 一次液滴
22A,22B 二次液滴