(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-31
(45)【発行日】2023-11-09
(54)【発明の名称】食品包装用紙
(51)【国際特許分類】
D21H 19/82 20060101AFI20231101BHJP
D21H 19/20 20060101ALI20231101BHJP
D21H 19/72 20060101ALI20231101BHJP
B32B 29/06 20060101ALI20231101BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
D21H19/82
D21H19/20 C
D21H19/20 A
D21H19/72
B32B29/06
B65D65/40 D
(21)【出願番号】P 2020129230
(22)【出願日】2020-07-30
【審査請求日】2022-01-31
(31)【優先権主張番号】P 2019205342
(32)【優先日】2019-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松本 真一郎
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-249978(JP,A)
【文献】特開2000-248493(JP,A)
【文献】特開2018-127523(JP,A)
【文献】特開平03-033147(JP,A)
【文献】登録実用新案第3133128(JP,U)
【文献】特開平09-031889(JP,A)
【文献】特開昭54-021474(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B1/00-1/38
D21C1/00-11/14
D21D1/00-99/00
D21F1/00-13/12
D21G1/00-9/00
D21H11/00-27/42
D21J1/00-7/00
B32B1/00-43/00
B65D65/00-65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙支持体と、前記紙支持体の片面に第一塗工層と、紙支持体を基準として前記第一塗工層の外側に第二塗工層とを有し、前記第一塗工層が、樹脂の構成単位として塩化ビニリデン単量体を主成分として有するポリ塩化ビニリデン系重合体を含有し、前記第二塗工層がアクリル系樹脂(ただし、共重合可能な他の単量体として塩化ビニルを含まない。)を含有し、さらに前記紙支持体と前記第一塗工層との間に下塗り層を有し、前記下塗り層が、樹脂の構成単位として塩化ビニリデン単量体を主成分に有するポリ塩化ビニリデン系重合体とカオリンとを含有し、前記第一塗工層及び前記下塗り層が含有する各ポリ塩化ビニリデン系重合体中の塩化ビニリデン単量体が85質量%以上95質量%以下であり、並びに前記第一塗工層及び前記下塗り層が含有する各ポリ塩化ビニリデン系重合体が塩化ビニリデン単量体、(メタ)アクリロニトリル系単量体及びアルキル基が炭素数1以上4以下のアルキル(メタ)アクリレート単量体を含む共重合体であ
り、ISO5636-5:2013に準じて測定される前記紙支持体のガーレー透気度が30秒以上200秒以下である食品包装用紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品の包装、食品を入れる袋又は食品を入れる容器等の食品包装材料であって、支持体が紙である食品包装用紙に関する。
【背景技術】
【0002】
食品の包装、食品を入れる袋又は食品を入れる容器等の食品包装材料は、プラスチックフィルムの積層構造又は金属蒸着膜を有するフィルムがほとんどであった。一方、プラスチック製品の環境問題から、食品の劣化を抑制するために外部からの水蒸気及び酸素に対するガスバリア性を有する、紙支持体から成る食品包装材料が存在する。例えば、水系塗料の塗工によって設けられた水蒸気バリア層及びガスバリア層を有する、優れたガスバリア性と水蒸気バリア性を併せ持つ紙製バリア包装材料として、紙基材上に顔料及び水蒸気バリア性樹脂を含有する水蒸気バリア層、水溶性高分子を含有するガスバリア層をこの順に設け、水蒸気バリア性樹脂がアクリル系合成樹脂である紙製バリア包装材料が公知である(例えば、特許文献1参照)。また、食品類等の包装に使用できる、各種プラスチック材料、各種蒸着フィルム及び紙等の基材に接着剤層及び被接着剤層を設け、前記接着剤層が、エチレン不飽和カルボン酸共重合体及びアクリル重合体を含む複合粒子の分散体を乾燥して成り、前記被接着剤層がポリ塩化ビニル及び/又はポリ塩化ビニリデンから成る積層体が公知である(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-176950号公報
【文献】国際公開第2016/076130号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
食品の包装、食品を入れる袋又は食品を入れる容器等の食品包装用紙には、食品に由来する水分及び油分に対する耐水性及び耐油性が必要である。また食品包装用紙には、水蒸気、湿気又は酸素の透過を防ぎ食品を劣化から守るガスバリア性が必要である。また包装の形態によっては食品を入れてから封をする必要があり、食品包装用紙には、ヒートシール適性が必要である。また近年、香りに関する害を主張する世間の動向から、封をする食品包装用紙には、食品から発生する香りが漏れることを軽減するフレーバーバリア性が必要である。
【0005】
さらに、紙支持体である食品包装用紙では、吸収性等の紙の特性によって紙支持体に設けた塗工層にピンホールが発生する。耐水耐油剤又はガスバリア剤を含有する塗工層を紙支持体に設けた場合、ピンホールの存在によって、耐水性、耐油性、ガスバリア性が十分に得られない。製造された食品包装用紙はピンホールが存在しない部分を使用しなければならず、結果、歩留りは低下する。
【0006】
本発明の第一の目的は、ガスバリア性を有し、及びピンホールの発生を軽減できる食品包装用紙を提供することである。本発明の第二の目的は、耐水性、耐油性、ガスバリア性を有し、フレーバーバリア性を有し、及びピンホールの発生を軽減でき、さらにヒートシール適性を有する食品包装用紙を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は鋭意検討を行った結果、本発明の目的は以下によって達成される。
【0008】
[1]紙支持体と、前記紙支持体の片面に少なくとも1層の塗工層とを有し、前記塗工層の少なくとも1層が、樹脂の構成単位として塩化ビニリデン単量体を主成分として有するポリ塩化ビニリデン系重合体を含有する食品包装用紙。
【0009】
[2]前記塗工層が1層である前記[1]に記載の食品包装用紙。
【0010】
[3]前記塗工層が、第一塗工層と、紙支持体を基準として前記第一塗工層の外側に第二塗工層とを含み、前記第一塗工層が、樹脂の構成単位として塩化ビニリデン単量体を主成分として有するポリ塩化ビニリデン系重合体を含有し、前記第二塗工層がアクリル系樹脂を含有する前記[1]に記載の食品包装用紙。
【0011】
[4]紙支持体と、前記紙支持体の片面に第一塗工層と、紙支持体を基準として前記第一塗工層の外側に第二塗工層とを有し、前記第一塗工層が、樹脂の構成単位として塩化ビニリデン単量体を主成分として有するポリ塩化ビニリデン系重合体を含有し、前記第二塗工層がアクリル系樹脂を含有する食品包装用紙。
【0012】
[5]前記ポリ塩化ビニリデン系重合体において、重合体中の塩化ビニリデン単量体が85質量%以上95質量%以下である前記[4]に記載の食品包装用紙。
【0013】
[6]前記紙支持体と前記第一塗工層との間に、下塗り層を有し、前記下塗り層が、樹脂の構成単位として塩化ビニリデン単量体を主成分に有するポリ塩化ビニリデン系重合体と、カオリンとを含有する前記[4]又は前記[5]に記載の食品包装用紙。
【0014】
[7]ISO5636-5:2013に準じて測定される、前記紙支持体のガーレー透気度が30秒以上200秒以下である前記[4]~[6]のいずれかに記載の食品包装用紙。
【0015】
[8]前記ポリ塩化ビニリデン系重合体が、塩化ビニリデン単量体、(メタ)アクリロニトリル系単量体及びアルキル基が炭素数1以上4以下のアルキル(メタ)アクリレート単量体を含む共重合体である前記[4]~[7]のいずれかに記載の食品包装用紙。
【0016】
[9]前記ポリ塩化ビニリデン系重合体において、重合体中の塩化ビニリデン単量体が85質量%以上95質量%以下である前記[1]~[3]のいずれかに記載の食品包装用紙。
【0017】
[10]前記紙支持体と前記塗工層との間に、下塗り層を有し、前記下塗り層が、樹脂の構成単位として塩化ビニリデン単量体を主成分に有するポリ塩化ビニリデン系重合体と、カオリンとを含有する前記[1]~[3]及び前記[9]のいずれかに記載の食品包装用紙。
【0018】
[11]ISO5636-5:2013に準じて測定される、前記紙支持体のガーレー透気度が30秒以上200秒以下である前記[1]~[3]、前記[9]及び前記[10]のいずれかに記載の食品包装用紙。
【0019】
[12]前記ポリ塩化ビニリデン系重合体が、塩化ビニリデン単量体、(メタ)アクリロニトリル系単量体及びアルキル基が炭素数1以上4以下のアルキル(メタ)アクリレート単量体を含む共重合体である前記[1]~[3]及び前記[9]~[11]のいずれかに記載の食品包装用紙。
【発明の効果】
【0020】
上記[1]及び[2]並びにこれらに従属(但し、上記[3]を除く)する本発明により、ガスバリア性を有し、及びピンホールの発生を軽減できる食品包装用紙を提供することができる。これにより第一の目的を達成できる。
上記[3]及び[4]並びにこれらに従属する本発明により、耐水性、耐油性、ガスバリア性を有し、フレーバーバリア性を有し、及びピンホールの発生を軽減でき、さらにヒートシール適性を有する食品包装用紙を提供することである。これにより第二の目的を達成できる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
食品包装用紙は、紙支持体と、前記紙支持体の片面に少なくとも1層の塗工層とを有し、前記塗工層の少なくとも1層が、樹脂の構成単位として塩化ビニリデン単量体を主成分として有するポリ塩化ビニリデン系重合体を含有する。いくつかの実施態様において、食品包装用紙は、前記塗工層が1層又は2層である。いくつかの実施態様において、食品包装用紙は、前記紙支持体と前記塗工層との間に、後述する下塗り層を有することができる。この理由は、バリア性の向上、塗工層の接着性の向上、及びピンホールの発生をより軽減できるからである。
【0022】
食品包装用紙の実施形態として、食品と対向する食品包装用紙の面は、食品包装用紙の上記塗工層を有する側の面である。また、食品包装用紙は、上記塗工層を有する側に対する紙支持体の反対側に、オフセット印刷機及び/又はデジタル印刷機への印刷適性を向上させる目的のために又は用紙の寸法安定性を向上させる目的のために、印刷用塗工層又はバックコート層を設けることができる。さらに、印刷用塗工層と紙支持体との間に上記塗工層、後述する下塗り層、又は後述する第一塗工層及び/又は第二塗工層を設けることができる。印刷用塗工層又はバックコート層は、印刷用塗工紙分野で従来公知のものである。
【0023】
紙支持体は、木材パルプ及び/又は非木材パルプから成るスラリーに対して、填料、サイズ剤、バインダー、定着剤、歩留り剤及び紙力剤等の各種添加剤を必要に応じて添加した紙料を、酸性、中性又はアルカリ性の条件で、従来公知の抄紙方法によって抄造した原紙、前記原紙をサイズプレス液でサイズプレス処理した上質紙、前記原紙を表面処理液で表面処理した上質紙、又は前記原紙若しくは前記上質紙に対してカレンダー処理を施した上質紙である。
さらに、前記紙料には、その他の添加剤として、顔料分散剤、嵩高剤、増粘剤、流動性改良剤、ピッチコントロール剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、保湿剤、防腐剤、防バイ剤、耐水化剤、湿潤紙力増強剤及び乾燥紙力増強剤等から選ばれる一種又は二種以上を、本発明の所望の効果を損なわない範囲で、適宜添加することができる。
【0024】
カレンダー処理とは、ロール間に紙を通すことによって平滑性や厚みを平均化する処理である。カレンダー処理の装置は、例えば、マシンカレンダー、ソフトニップカレンダー、スーパーカレンダー、多段カレンダー、マルチニップカレンダー等を挙げることができる。
【0025】
木材パルプは、製紙分野で従来公知のものである。木材パルプは、例えば、LBKP(Leaf Bleached Kraft Pulp)及びNBKP(Needle Bleached Kraft Pulp)等の化学パルプ、GP(Groundwood Pulp)、PGW(Pressure GroundWood pulp)、RMP(Refiner Mechanical Pulp)、TMP(ThermoMechanical Pulp)、CTMP(ChemiThermoMechanical Pulp)、CMP(ChemiMechanical Pulp)及びCGP(ChemiGroundwood Pulp)等の機械パルプ、並びにDIP(DeInked Pulp)等の古紙パルプを挙げることができる。
非木材パルプは、製紙分野で従来公知の非木材繊維からなるパルプである。非木材繊維の原料は、例えば、コウゾ、ミツマタ及びガンピ等の木本靭皮、亜麻、大麻及びケナフ等の草本靭皮、マニラ麻、アバカ及びサイザル麻等の葉繊維、イネわら、ムギわら、サトウキビバカス、タケ及びエスパルト等の禾本科植物、並びにワタ及びリンター等の種毛を挙げることができる。
木材パルプ及び/又は非木材パルプは、前記木材パルプ及び前記非木材パルプから成る群から選ばれる一種又は二種以上である。
【0026】
填料は、製紙分野で従来公知の顔料である。顔料は、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、各種カオリン、タルク、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、シリカ、珪酸アルミニウム、珪藻土、活性白土、アルミナ、アルミナ水和物、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム等の無機顔料を挙げることができる。さらにスチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン系プラスチックピグメント、尿素樹脂、メラミン樹脂及びマイクロカプセル等の有機顔料を挙げることができる。填料は、前記無機顔料及び前記有機顔料から成る群から選ばれる一種又は二種以上である。
【0027】
いくつかの実施態様において、紙支持体の灰分は10質量%以下である。少なくとも1つの実施態様において、紙支持体の灰分は4質量%以上10質量%以下である。灰分が前記範囲では、ピンホールの発生を良好に軽減できる。用紙の灰分は、用紙が含有する填料の量によって調整することができる。用紙の灰分は、ISO1762:2001「Paper, board and pulps - Determination of residue(ash) on ignition at 525 degree C」に準拠して求められる値である。
【0028】
サイズ剤は、製紙分野で従来公知の内添サイズ剤である。内添サイズ剤は、例えば、酸性紙であればロジン系サイズ剤、中性紙であればアルケニル無水コハク酸、アルキルケテンダイマー、中性ロジン系サイズ剤及びカチオン性スチレン-アクリル系サイズ剤等を挙げることができる。
また、サイズプレス液に用いる表面サイズ剤は、製紙分野で従来公知のものである。表面サイズ剤は、例えば、澱粉系サイズ剤、セルロース系サイズ剤、ポリビニルアルコール系サイズ剤、スチレン-アクリル系サイズ剤、オレフィン系サイズ剤、スチレン-マレイン酸系サイズ剤、及びアクリルアミド系サイズ剤等を挙げることができる。
【0029】
サイズプレスは、製紙分野で従来公知のサイズプレス装置である。サイズプレス装置は、例えば、インクラインドサイズプレス、ホリゾンタルサイズプレス、フィルムトランスファー方式としてロッドメタリングサイズプレス、ロールメタリングサイズプレス、ブレードメタリングサイズプレスを、ロッドメタリングサイズプレスとしてシムサイザー、オプティサイザー、スピードサイザーを、ロールメタリングサイズプレスとしてゲートロールコーター、ビルブレードコーター、ツインブレードコーター、ベルバパコーター、タブサイズプレス、及びカレンダーサイズプレス等を挙げることができる。
【0030】
いくつかの実施態様において、ISO5636-5:2013「Paper and board - Determination of air permeance(medium range) - Part5:Gurley method」に準じて測定される、紙支持体のガーレー透気度は30秒以上200秒以下である。紙支持体のガーレー透気度が前記範囲では、紙支持体と塗工層との相乗効果によって、又は下塗り層を有する場合、紙支持体と下塗り層と塗工層との相乗効果によってピンホールの発生をより軽減できる。
【0031】
ガーレー透気度は、用紙片を、一定体積の空気が透過する時間によって求められる。用紙片で蓋した内筒を用意する。油等の液体を入れた外筒に前記内筒を浮かべる。垂直方向の内筒重さによって空気を圧縮し、この空気が用紙片を透過して内筒が外筒内で徐々に下降する。一定体積の空気が透過するのに要した時間(秒)を測定する。数値が小さい方が用紙の透気性が大きいことを意味する。ガーレー透気度は、例えば、東洋精機製作所社製B型ガーレーデンソメーターを用いて測定した値である。
紙支持体のガーレー透気度は、例えば、上記のように紙支持体を得たところで、当該紙支持体から測定できる。
紙支持体のガーレー透気度は、例えば、用紙の断面を観察しながら塗工層及び下塗り層をスライスして除去し、露出した紙支持体として測定できる。
【0032】
普通では、ガスバリア性の観点から透気性が小さい紙支持体がより有効であると考えられる。しかしながら、本発明者が検討した結果から、透気性が小さ過ぎる紙支持体はピンホールに関して有効ではない。この理由は以下と推測する。
ポリ塩化ビニリデン系重合体は結晶化の傾向が高いために、塗工液を塗工する際に紙支持体から抜ける空気によって塗工層にピンホールを形成し易い。ポリ塩化ビニリデン系重合体を含有する塗工層を設ける際に、適度な透気性を有する紙支持体は、塗工液成分の紙支持体への落下が抑制できかつ紙支持体の空気が塗工層側から抜けることを抑制でき、結果、塗工層のピンホールの発生を軽減できる。
【0033】
紙支持体のガーレー透気度は、製紙分野で従来公知の方法によって調整できる。用紙のガーレー透気度は、例えば、パルプの叩解によるフリーネスを制御、抄紙機のプレスの線圧を制御、カレンダー処理の実施とその条件制御、紙料への填料の添加とその量、紙料へ嵩高剤の添加とその量、紙料へのバインダーの添加とその量、及びこれらの組み合わせによって調整できる。例えば、パルプの叩解度を下げる(濾水度の値が大きい)、抄紙機のプレスの線圧を下げる、カレンダー処理をしない又は線圧を下げる、並びにバインダーの添加量を下げる等の手段が、ガーレー透気度の値を小さくする。
【0034】
上記[1]及び[2]並びにこれらに従属(但し、上記[3]を除く)する本発明に関する食品包装用紙の塗工層及び下塗り層について説明する。
【0035】
食品包装用紙は、紙支持体と、前記紙支持体の片面に少なくとも1層の塗工層とを有する。いくつかの実施態様において、前記塗工層は1層である。この理由は、製造コストの点で有利であるからである。
【0036】
いくつかの実施態様において、食品包装用紙は、紙支持体と、前記紙支持体の片面に少なくとも1層の塗工層とを有し、前記紙支持体と前記塗工層との間に下塗り層を有する。少なくとも1つの実施態様において、食品包装用紙は、紙支持体と、前記紙支持体の片面に1層の塗工層とを有し、前記紙支持体と前記塗工層との間に下塗り層を有する。下塗り層は、バリア性の向上、層間の接着性の向上、及びピンホールの発生の軽減に寄与する。
【0037】
上記下塗り層は、樹脂の構成単位として塩化ビニリデン単量体を主成分に有するポリ塩化ビニリデン系重合体とカオリンとを含有する。ポリ塩化ビニリデン系重合体とカオリンとを含有することによって下塗り層は、ピンホールの発生を軽減できるだけでなく、ガスバリア性をより向上する。さらに、ポリ塩化ビニリデン系重合体とカオリンとを含有する下塗り層は、ポリ塩化ビニリデン系重合体を有する塗工層との接着性に優れる。
【0038】
下塗り層のカオリンは、カオリナイト、ナクライト、ディッカイト、ハロイサイト、加水ハロイサイト等の天然に産出されたカオリン原鉱を、工業的に精製及び加工したものであって、例えば、粉砕、洗浄、除鉄及び分級等の工程を経て製造されるものである。またカオリンには、アスペクト比を向上させるためにせん断力をかけて薄板状としたデラミネーティッドカオリン、粒度分布がシャープになるよう調整したエンジニアードカオリン、凝集性を高めた焼成カオリンのような加工性の高いものも含まれる。
【0039】
下塗り層のポリ塩化ビニリデン系重合体の説明については、塗工層が有するポリ塩化ビニリデン系重合体と同じであって後述する。
【0040】
いくつかの実施態様において、下塗り層中の上記ポリ塩化ビニリデン系重合体の含有量は、片面あたり、下塗り層中のカオリン100質量部に対して40質量部以上150質量部以下である。カオリンに対してポリ塩化ビニリデン系重合体の含有量がこの範囲であると、食品包装用紙は、ピンホールの発生をより軽減、及びガスバリア性を良化できる。
【0041】
下塗り層は、カオリン及びポリ塩化ビニリデン系重合体以外に、必要に応じて従来公知の各種添加剤を含むことができる。添加剤は、例えば、カオリン以外の白色無機顔料、白色有機顔料、アクリル系樹脂以外の各種樹脂、澱粉類及びセルロース類等の多糖類、界面活性剤、分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤及び耐水化剤等を挙げることができる。
【0042】
いくつかの実施態様において、下塗り層は、澱粉類及びセルロース類等の多糖類を含有する。少なくとも1つの実施態様において、下塗り層中の多糖類の含有量は、片面あたり、下塗り層中のカオリン100質量部に対して3質量部以上7質量部以下である。多糖類の含有量がこの範囲であると、食品包装用紙は、ピンホールの発生をより軽減できる。さらに、少なくとも1つの実施態様において、多糖類は、澱粉類とセルロース類との併用である。澱粉類とセルロース類との併用であると、食品包装用紙は、ピンホールの発生をより軽減できる。
【0043】
澱粉類は、α-グルコースがグリコシド結合によって重合した澱粉であって、各種変性澱粉及び金属塩をも含む。澱粉類は、例えば、澱粉、酸化澱粉、酵素変性澱粉、エーテル化澱粉、カチオン性澱粉、両性澱粉、ジアルデヒド澱粉、燐酸エステル化澱粉等のエステル化澱粉、ヒドロキシエチル化澱粉、並びにヒドロキシブチル化澱粉等を挙げることができる。澱粉類は、これらから成る群から選ばれる一種又は二種以上である。
【0044】
セルロース類は、グルコースがβ-1,4-グリコシド結合によって重合したセルロースであって、各種セルロース誘導体及び金属塩をも含む。セルロース類は、例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ベンジルセルロース、トリチルセルロース、シアノエチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、アミノエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロースエーテル、ニトロセルロース、酢酸セルロース、硝酸セルロース、アセチルセルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、硫酸セルロース、リン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸酪酸セルロース等のセルロースエステル、並びにこれらのナトリウム塩、カリウム塩及びリチウム塩、並びにヘミセルロース等を挙げることができる。セルロース類は、これらから成る群から選ばれる一種又は二種以上である。
【0045】
食品包装用紙は、塗工層の少なくとも1層が、樹脂の構成単位として塩化ビニリデン単量体を主成分として有するポリ塩化ビニリデン系共重合体を含有する。食品包装用紙は、塗工層が1層の場合、当該塗工層が樹脂の構成単位として塩化ビニリデン単量体を主成分として有するポリ塩化ビニリデン系共重合体を含有する。
少なくとも1つの実施態様において、ポリ塩化ビニリデン系共重合体を含有する塗工層について前記塗工層中のポリ塩化ビニリデン系重合体の含有量は、紙支持体の片面あたり前記塗工層の乾燥固形分量に対して85質量%以上である。ポリ塩化ビニリデン系重合体の含有量が前記範囲であると、ポリ塩化ビニリデン系重合体はガスバリア剤となって、塗工層がガスバリア層として機能する。食品包装用紙は、ポリ塩化ビニリデン系重合体の含有量が前記範囲であると、ガスバリア性が良化することができる。
【0046】
塗工層は、ポリ塩化ビニリデン系重合体以外に、必要に応じて従来公知の各種添加剤を含有することができる。添加剤は、例えば、白色無機顔料、白色有機顔料、ポリビニルアルコール以外の各種樹脂、澱粉類及びセルロース類等の多糖類、界面活性剤、分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤等を挙げることができる。
【0047】
樹脂の構成単位として塩化ビニリデン単量体を主成分として有するポリ塩化ビニリデン系重合体は、重合体中、塩化ビニリデン単量体が50質量%を超える樹脂である。
いくつかの実施態様において、塗工層及び下塗り層が含有するポリ塩化ビニリデン系重合体は、塩化ビニリデン単量体と、その他単量体の一種又は二種以上とが重合した共重合体である。下塗り層が有するポリ塩化ビニリデン系重合体と塗工層が有するポリ塩化ビニリデン系重合体とは、同一の重合体及び異なる重合体のいずれでもよい。少なくとも1つの実施態様において、下塗り層が有するポリ塩化ビニリデン系重合体と塗工層が有するポリ塩化ビニリデン系重合体とは同一である。
【0048】
いくつかの実施態様において、ポリ塩化ビニリデン系重合体は、重合体中、塩化ビニリデン単量体が80質量%を超える樹脂である。少なくとも1つの実施態様において、ポリ塩化ビニリデン系重合体は、重合体中、塩化ビニリデン単量体が85質量%以上である。
ポリ塩化ビニリデン系重合体は、重合体中、塩化ビニリデン単量体が50質量%を超えるとガスバリア性が発現する。いくつかの実施態様において、ポリ塩化ビニリデン系重合体は、重合体中、塩化ビニリデン単量体が95質量%以下の樹脂である。塩化ビニリデン単量体が95質量%以下であると、下塗り層及び塗工層の造膜時にポリ塩化ビニリデンの速い結晶化を抑制できる。その結果、下塗り層及び塗工層はピンホールの発生を軽減できる。いくつかの実施態様において、樹脂の構成単位として塩化ビニリデン単量体を主成分に有するポリ塩化ビニリデン系重合体は、重合体中、塩化ビニリデン単量体が50質量%を超え95質量%以下の樹脂である。少なくとも1つの実施態様において、樹脂の構成単位として塩化ビニリデン単量体を主成分に有するポリ塩化ビニリデン系重合体は、重合体中、塩化ビニリデン単量体が85質量%以上95質量%以下の樹脂である。
【0049】
上記その他単量体は、塩化ビニリデン単量体と共重合できる単量体であれば特に限定されない。その他単量体は、例えば、アクリロニトリル系単量体、アルキル(メタ)アクリレート単量体、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ビニルピロリドン、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、塩化ビニル、酢酸ビニル及びスチレン等を挙げることができる。
【0050】
アクリロニトリル系単量体は、例えば、(メタ)アクリロニトリル、フマロニトリル、マレオニトリル、2-クロロアクリロニトリル、3-エトキシアクリロニトリル、α-(2-シアノエチル)アクリロニトリル等を挙げることができる。いくつかの実施態様において、アクリロニトリル系単量体は(メタ)アクリロニトリルである。
【0051】
アルキル(メタ)アクリレート単量体は、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート及びウンデシル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。いくつかの実施態様において、アルキル(メタ)アクリレート単量体は、アルキル基が炭素数1以上4以下のアルキル(メタ)アクリレート単量体である。
【0052】
いくつかの実施態様において、ポリ塩化ビニリデン系重合体は、上記その他単量体として(メタ)アクリロニトリル系単量体、アルキル(メタ)アクリレート単量体及び2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートから成る群から選ばれる一種又は二種以上と塩化ビニリデン単量体との共重合体である。
いくつかの実施態様において、ポリ塩化ビニリデン系重合体は、上記その他単量体として(メタ)アクリロニトリル系単量体及びアルキル基が炭素数1以上4以下のアルキル(メタ)アクリレート単量体から成る群から選ばれる一種又は二種以上と塩化ビニリデン単量体との共重合体である。
【0053】
いくつかの実施態様において、ポリ塩化ビニリデン系重合体は、塩化ビニリデン単量体、アクリロニトリル系単量体、及びアルキル(メタ)アクリレート単量体を含む共重合体である。少なくとも1つの実施態様において、ポリ塩化ビニリデン系重合体は、塩化ビニリデン単量体と、アクリロニトリル系単量体から成る群から選ばれる一種又は二種以上と、アルキル(メタ)アクリレート単量体から成る群から選ばれる一種又は二種以上とから成る共重合体である。
また、いくつかの実施態様において、ポリ塩化ビニリデン系重合体は、塩化ビニリデン単量体、(メタ)アクリロニトリル及びアルキル基が炭素数1以上4以下のアルキル(メタ)アクリレート単量体を含む共重合体である。少なくとも1つの実施態様において、すなわち、ポリ塩化ビニリデン系重合体は、塩化ビニリデン単量体と、(メタ)アクリロニトリルから成る群から選ばれる一種又は二種と、アルキル基が炭素数1以上4以下のアルキル(メタ)アクリレート単量体から成る群から選ばれる一種又は二種以上とから成る共重合体である。
これらの理由は、ガスバリア性を有しながら造膜時のピンホールの発生を軽減できるからである。
【0054】
少なくとも1つの実施態様として、ポリ塩化ビニリデン系重合体は、塩化ビニリデンが85質量%以上95質量%以下、(メタ)アクリロニトリルから成る群から選ばれる一種又は二種が1質量%以上10質量%以下、及びアルキル基が炭素数1以上4以下のアルキル(メタ)アクリレート単量体から成る群から選ばれる一種又は二種以上が0.5質量%以上5質量%以下である。
【0055】
ポリ塩化ビニリデン系重合体の分子量は、特に限定しない。いくつかの実施例において、ポリ塩化ビニリデン系重合体の分子量は、分子量既知のポリスチレンを標準物質としてゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定された重量平均分子量で8万以上である。前記分子量の範囲であると、ポリ塩化ビニリデン系重合体は、熱及び光に対する安定性が良くなる。
【0056】
ポリ塩化ビニリデン系重合体は、公知の乳化重合法によって合成できる。合成は、例えば、所定の反応容器に各種単量体、乳化剤及び水を配合し、ラジカル重合開始剤を加えて攪拌下及び加温する方法である。また、ポリ塩化ビニリデン系重合体は、例えば、旭化成社等から市販される。
【0057】
いくつかの実施態様において、食品包装用紙は、紙支持体と、前記紙支持体の片面に少なくとも1層の塗工層とを有し、前記塗工層の少なくとも1層が、樹脂の構成単位として塩化ビニリデン単量体を主成分として有するポリ塩化ビニリデン系重合体を含有し、前記ポリ塩化ビニリデン系重合体が塩化ビニリデン単量体、(メタ)アクリロニトリル及びアルキル基が炭素数1以上4以下のアルキル(メタ)アクリレート単量体を含む共重合体である。
少なくとも1つの実施態様において、前記食品包装用紙は、前記塗工層が1層である。
少なくとも1つの実施態様において、前記食品包装用紙は、上記塗工層が1層であり、及び前記紙支持体がISO5636-5:2013に準じて測定されるガーレー透気度30秒以上200秒以下である。
【0058】
いくつかの実施態様において、食品包装用紙は、紙支持体と、前記紙支持体の片面に少なくとも1層の塗工層と、前記紙支持体と前記塗工層との間に下塗り層とを有し、前記塗工層の少なくとも1層が、樹脂の構成単位として塩化ビニリデン単量体を主成分として有するポリ塩化ビニリデン系重合体を含有し、前記下塗り層が、樹脂の構成単位として塩化ビニリデン単量体を主成分に有するポリ塩化ビニリデン系重合体とカオリンとを含有し、前記塗工層及び前記下塗り層が含有するポリ塩化ビニリデン系重合体が塩化ビニリデン単量体、(メタ)アクリロニトリル及びアルキル基が炭素数1以上4以下のアルキル(メタ)アクリレート単量体を含む共重合体である。
少なくとも1つの実施態様において、前記食品包装用紙は、前記塗工層が1層である。
少なくとも1つの実施態様において、前記食品包装用紙は、上記塗工層が1層であり、及び前記紙支持体がISO5636-5:2013に準じて測定されるガーレー透気度30秒以上200秒以下である。
【0059】
いくつかの実施態様において、下塗り層の塗工量は、紙支持体の片面あたり乾燥固形分量で0g/m2以上15g/m2以下である。いくつかの実施態様において、塗工層の塗工量は、紙支持体の片面あたり乾燥固形分量で2g/m2以上20g/m2以下である。少なくとも1つの実施態様において、食品包装用紙は、紙支持体の片面あたり、下塗り層の塗工量が乾燥固形分量で0g/m2以上15g/m2以下、及び塗工層の塗工量が乾燥固形分量で2g/m2以上20g/m2以下である。塗工層の塗工量は、塗工層が1層の場合は当該1層の塗工量を指し、塗工層が2層以上の場合はそれらを合計した塗工量を指す。
【0060】
次に、上記[3]及び[4]並びにこれらに従属する本発明に関する食品包装用紙の塗工層及び下塗り層について説明する。
【0061】
食品包装用紙は、紙支持体と、前記紙支持体の片面に少なくとも1層の塗工層とを有し、前記塗工層は、第一塗工層と、紙支持体を基準として前記第一塗工層の外側に第二塗工層を含む。例えば、食品包装用紙は、紙支持体と、前記紙支持体の片面に第一塗工層と、紙支持体を基準として前記第一塗工層の外側に第二塗工層とを有する。
食品包装用紙は、第一塗工層及び第二塗工層の間に、バリア性の向上及び塗工層間の接着性の向上等を目的として中間塗工層を有することができる。いくつかの実施態様において、前記塗工層は第一塗工層及び第二塗工層の2層である。この理由は、製造コストの点で3層以上よりも有利であるからである。
【0062】
いくつかの実施態様において、食品包装用紙は、上記紙支持体と上記第一塗工層との間に下塗り層を有する。下塗り層は、バリア性の向上、層間の接着性の向上、及びピンホールの発生の軽減に寄与する。
【0063】
ここでの下塗り層は、上記[1]及び[2]並びにこれらに従属(但し、上記[3]を除く)する本発明に関する食品包装用紙において説明した下塗り層と同様であって、重複する説明を割愛する。
【0064】
前記第一塗工層は、樹脂の構成単位として塩化ビニリデン単量体を主成分として有するポリ塩化ビニリデン系重合体を含有する。少なくとも1つの実施態様において、第一塗工層中のポリ塩化ビニリデン系重合体の含有量は、紙支持体の片面あたり前記第一塗工層の乾燥固形分量に対して85質量%以上である。第一塗工層中のポリ塩化ビニリデン系重合体の含有量が前記範囲であると、ポリ塩化ビニリデン系重合体はガスバリア剤となって、第一塗工層がガスバリア層として機能する。食品包装用紙は、ポリ塩化ビニリデン系重合体の含有量が前記範囲であると、ガスバリア性が良化し、またフレーバーバリア性を得ることができる。
【0065】
第一塗工層は、ポリ塩化ビニリデン系重合体以外に、必要に応じて従来公知の各種添加剤を含有することができる。添加剤は、例えば、白色無機顔料、白色有機顔料、ポリビニルアルコール以外の各種樹脂、澱粉類及びセルロース類等の多糖類、界面活性剤、分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤等を挙げることができる。
【0066】
第一塗工層が含有するポリ塩化ビニリデン系重合体は、上記[1]及び[2]並びにこれらに従属(但し、上記[3]を除く)する本発明に関する食品包装用紙の塗工層において説明したポリ塩化ビニリデン系重合体と同様であって、重複する説明を割愛する。
【0067】
第二塗工層は、アクリル系樹脂を含有する。少なくとも1つの実施態様において、第二塗工層中のアクリル系樹脂の含有量は、紙支持体の片面あたり前記第二塗工層の乾燥固形分量に対して85質量%以上である。第二塗工層中のアクリル系樹脂の含有量が前記範囲であると、アクリル系樹脂は耐水耐油剤及びヒートシール剤となって、第二塗工層が耐水耐油層及びヒートシール層として機能する。すなわち、食品包装用紙は、アクリル系樹脂の含有量が前記範囲であると、耐水性、耐油性及びヒートシール性を得ることができる。
【0068】
アクリル系樹脂は、エチレン性不飽和カルボン酸含有の単量体(単量体a)から成る群から選ばれる一種又は二種以上の単量体及び/又はアルキル(メタ)アクリレート単量体(単量体b)から成る群から選ばれる一種又は二種以上の単量体から得られる重合体、あるいは、前記単量体aから成る群から選ばれる一種又は二種以上の単量体、及び/又は前記単量体bから成る群から選ばれる一種又は二種以上の単量体と、前記単量体a又は前記単量体bと共重合可能な他の単量体(単量体c)から成る群から選ばれる一種又は二種以上の単量体とから得られる共重合体である。
【0069】
エチレン性不飽和カルボン酸含有の単量体(単量体a)は、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、モノアルキルマレイン酸、モノアルキルフマル酸、及びモノアルキルイタコン酸等を挙げることができる。さらに、前記単量体aには、例えば、カルボン酸がナトリウム塩等の塩を形成した単量体が含まれる。
【0070】
アルキル(メタ)アクリレート単量体(単量体b)は、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート及びウンデシル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0071】
前記単量体a又は前記単量体bと共重合可能な他の単量体(単量体c)は、例えば、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、(メタ)アクリロニトリル、エチレン、プロピレン、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリルレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,2-プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N′-メチレンビス(メタ)アクリルアミド、ビニルスルホン酸ナトリウム、p-スチレンスルホン酸ナトリウム、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、アシッドホスホキシエチル(メタ)アクリレートエタノールアミンハーフ塩、3-アリロキシ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンスチレン化フェニル硫酸ナトリウム、グリセリンモノアリルエーテルモノスルホコハク酸ナトリウム、2-スルホエチル(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリルアミドステアリン酸ナトリウム、ベンジル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート、アクロレイン、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、ホルミルスチロール、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、(メタ)アクリロイルオキシアルキルプロペナール、ジアセトン(メタ)アクリレート、アセトニル(メタ)アクリレート、2-アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、及びトリアリルシアヌレート等を挙げることができる。
【0072】
アクリル系樹脂は、公知の乳化重合法によって合成できる。合成は、例えば、所定の反応容器に各種単量体、乳化剤及び水を配合し、ラジカル重合開始剤を加えて攪拌及び加温する方法である。
【0073】
いくつかの実施態様において、第二塗工層のアクリル系樹脂は、上記単量体bから成る群から選ばれる一種又は二種以上の単量体から得られる重合体、すなわち、ポリアルキル(メタ)アクリレートである。ポリアルキル(メタ)アクリレートであると、第二塗工層は、ポリ塩化ビニリデン系重合体を含有する第一塗工層に対して密着性と造膜性が良い。結果、食品包装用紙は、耐水性、耐油性及びヒートシール性を良化できる。
少なくとも1つの実施態様において、第二塗工層のアクリル系樹脂は、メチル(メタ)アクリレートから成る群から選ばれる一種又は二種と2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートから成る群から選ばれる一種又は二種との共重合体である。前記共重合体であると、水蒸気に対するガスバリア性が得られるからである。
【0074】
第二塗工層は、アクリル系樹脂以外に、必要に応じて従来公知の各種添加剤を含有することができる。添加剤としては、例えば、白色無機顔料、白色有機顔料、アクリル系樹脂以外の各種樹脂、澱粉類及びセルロース類等の多糖類、界面活性剤、分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤、着色剤、紫外線吸収剤及び蛍光剤等を挙げることができる。
【0075】
いくつかの実施態様において、食品包装用紙は、紙支持体と、前記紙支持体の片面に少なくとも1層の塗工層とを有し、前記塗工層が第一塗工層と、紙支持体を基準として前記第一塗工層の外側に第二塗工層とを含み、前記第一塗工層が、樹脂の構成単位として塩化ビニリデン単量体を主成分として有するポリ塩化ビニリデン系重合体を含有し、前記第二塗工層がアクリル系樹脂を含有し、前記ポリ塩化ビニリデン系重合体が塩化ビニリデン単量体、(メタ)アクリロニトリル及びアルキル基が炭素数1以上4以下のアルキル(メタ)アクリレート単量体を含む共重合体であり、前記アクリル系樹脂がメチル(メタ)アクリレートから成る群から選ばれる一種又は二種と2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートから成る群から選ばれる一種又は二種との共重合体である。
少なくとも1つの実施態様において、前記食品包装用紙は、前記塗工層が第一塗工層と第二塗工層との2層である。
少なくとも1つの実施態様において、前記食品包装用紙は、前記塗工層が第一塗工層と第二塗工層との2層であり、及び前記紙支持体がISO5636-5:2013に準じて測定されるガーレー透気度30秒以上200秒以下である。
【0076】
いくつかの実施態様において、食品包装用紙は、紙支持体と、前記紙支持体の片面に少なくとも1層の塗工層とを有し、前記塗工層が第一塗工層と、紙支持体を基準として前記第一塗工層の外側に第二塗工層とを含み、前記紙支持体と前記第一塗工層との間に下塗り層とを有し、前記第一塗工層が、樹脂の構成単位として塩化ビニリデン単量体を主成分として有するポリ塩化ビニリデン系重合体を含有し、前記第二塗工層がアクリル系樹脂を含有し、前記下塗り層が樹脂の構成単位として塩化ビニリデン単量体を主成分として有するポリ塩化ビニリデン系重合体とカオリンとを含有し、前記ポリ塩化ビニリデン系重合体が塩化ビニリデン単量体、(メタ)アクリロニトリル及びアルキル基が炭素数1以上4以下のアルキル(メタ)アクリレート単量体を含む共重合体であり、前記アクリル系樹脂がメチル(メタ)アクリレートから成る群から選ばれる一種又は二種と2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートから成る群から選ばれる一種又は二種との共重合体である。
少なくとも1つの実施態様において、前記食品包装用紙は、前記塗工層が第一塗工層と第二塗工層との2層である。
少なくとも1つの実施態様において、前記食品包装用紙は、前記塗工層が第一塗工層と第二塗工層との2層であり、及び前記紙支持体がISO5636-5:2013に準じて測定されるガーレー透気度30秒以上200秒以下である。
【0077】
いくつかの実施態様において、下塗り層の塗工量は、紙支持体の片面あたり乾燥固形分量で0g/m2以上15g/m2以下である。いくつかの実施態様において、第一塗工層の塗工量は、紙支持体の片面あたり乾燥固形分量で2g/m2以上8g/m2以下である。いくつかの実施態様において、第二塗工層の塗工量は、紙支持体の片面あたり乾燥固形分量で3g/m2以上12g/m2以下である。少なくとも1つの実施態様において、食品包装用紙は、紙支持体の片面あたり、下塗り層の塗工量が乾燥固形分量で0g/m2以上15g/m2以下、第一塗工層の塗工量が乾燥固形分量で2g/m2以上8g/m2以下、及び第二塗工層の塗工量が乾燥固形分量で3g/m2以上12g/m2以下である。
【0078】
紙支持体対して下塗り層及び/又は塗工層を設ける方法は、特に限定されない。例えば、製紙分野で従来公知の塗工装置及び乾燥装置を用いて、下塗り層又は塗工層を形成するための塗工液を塗工及び乾燥する方法を挙げることができる。塗工装置の例としては、フィルムプレスコーター、ロッドコーター、エアーナイフコーター、ロッドブレードコーター、バーコーター、ブレードコーター、グラビアコーター、カーテンコーター、Eバーコーター、フィルムトランスファーコーター等を挙げることができる。乾燥装置の例としては、直線トンネル乾燥機、アーチドライヤー、エアループドライヤー、サインカーブエアフロートドライヤー等の熱風乾燥機、赤外線加熱ドライヤー、マイクロ波等を利用した乾燥機等の各種乾燥装置を挙げることができる。
【0079】
下塗り層の塗工液がポリ塩化ビニリデン系重合体及びカオリンを含有すること、塗工層の塗工液又は第一塗工層の塗工液がポリ塩化ビニリデン系重合体を含有すること、並びに第二塗工層の塗工液がアクリル系樹脂を含有することによって、得られる各々の層は、ポリ塩化ビニリデン系重合体及びカオリンを、ポリ塩化ビニリデン系重合体を、並びにアクリル系樹脂を含有することができる。
【実施例】
【0080】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されない。ここで「質量部」及び「質量%」は、乾燥固形分量あるいは実質成分量の各々「質量部」及び「質量%」を表す。塗工層の塗工量は乾燥固形分量を表す。
【0081】
上記[1]及び[2]並びにこれらに従属(但し、上記[3]を除く)する本発明を実施例によって説明する。
【0082】
<紙支持体>
以下の紙料を調成した。
LBKP(濾水度350~480mlcsf) 50質量部
NBKP(濾水度350~480mlcsf) 50質量部
硫酸バンド 2質量部
カオリン(アンシレックス(登録商標)、BASF社) 8質量部
ロジン系サイズ剤(CC1404、星光PMC社) 0.3質量部
紙力剤 0.6質量部
【0083】
上記配合の紙料を長網抄紙機で抄造し、坪量65g/m2の原紙を得た。これに、マシンカレンダーを用いて温度60℃・処理速度500m/分の条件でカレンダー処理して紙支持体を得た。紙支持体の灰分量は5.5質量%であった。紙支持体のガーレー透気度は、パルプの濾水度を調整し、並びに抄紙機のプレス線圧及びカレンダーの線圧を調整して所望のガーレー透気度の値を得た。
【0084】
得られた食品包装用紙について、下記の評価を行った。紙支持体のガーレー透気度は、ISO5636-5:2013に準じて、東洋精機製作所社製B型ガーレーデンソメーターを用いて測定した。ガーレー透気度の値は表1に記載する。
【0085】
<下塗り層の塗工液>
水を媒体として以下の塗工液を調製した。
顔料 種類及び質量部は表1に記載
樹脂 種類及び質量部は表1に記載
【0086】
<塗工層の塗工液>
水を媒体として以下の塗工液を調製した。
樹脂 種類は表1に記載/100質量部
【0087】
【0088】
表1に登場する各材料は以下である。
PVDC1 :ポリ塩化ビニリデン系重合体
(単量体の配合質量%比)
塩化ビニリデン :80
メタクリロニトリル :15
エチルアクリレート: :5
PVDC2 :ポリ塩化ビニリデン系重合体
(単量体の配合質量%比)
塩化ビニリデン :85
メタクリロニトリル :10
エチルアクリレート: :5
PVDC3 :ポリ塩化ビニリデン系重合体
(単量体の配合質量%比)
塩化ビニリデン :90
アクリロニトリル :9
エチルアクリレート: :1
PVDC4 :ポリ塩化ビニリデン系重合体
(単量体の配合質量%比)
塩化ビニリデン :95
アクリロニトリル :3
エチルアクリレート :2
PVDC5 :ポリ塩化ビニリデン系重合体
(単量体の配合質量%比)
塩化ビニリデン :98
メタクリロニトリル :1.5
エチルアクリレート :0.5
PVDC6 :ポリ塩化ビニリデン系重合体
(単量体の配合質量%比)
塩化ビニリデン :85
メタクリロニトリル :10
メチルアクリレート: :5
PVDC7 :ポリ塩化ビニリデン系重合体
(単量体の配合質量%比)
塩化ビニリデン :95
メタクリロニトリル :3
メチルアクリレート: :2
PVDC8 :ポリ塩化ビニリデン系重合体
(単量体の配合質量%比)
塩化ビニリデン :85
メタクリロニトリル :10
2-ヒドロキシエチルメタクリレート :5
PVA :ポリビニルアルコール
(無変性、完全ケン化、平均重合度1700)
エチレン-酢酸ビニル系:エチレン-酢酸ビニル共重合体
澱粉 :酸化澱粉
CMC :カルボキシメチルセルロースナトリウム塩
カオリン :2μm以下の累積頻度88体積%のカオリン
【0089】
<塗工(下塗り層無し)>
紙支持体の片面に対して、塗工層の塗工液をエアーナイフコーターで塗工及び熱風乾燥機で乾燥した。塗工層の塗工量は、8g/m2になるようにコーター条件を調整した。
【0090】
<塗工(下塗り層有り)>
紙支持体の片面に対して、下塗り層の塗工液をロッドコーターで塗工及び熱風乾燥機で乾燥した。下塗り層の塗工量は、10g/m2になるようコーター条件を調整した。次に、下塗り層に対して、塗工層の塗工液をエアーナイフコーターで塗工及び熱風乾燥機で乾燥した。塗工層の塗工量は、8g/m2になるようにコーター条件を調整した。
【0091】
<ピンホール>
得られた食品包装用紙から任意に大きさ50cm×50cmに裁断した。裁断した食品包装用紙4枚に着色トルエン液を食品包装用紙の表面(上記塗工層を有する側)に塗工して、ピンホールが存在した場合にピンホールを通過して反対側に現われる斑点を目視で観察した。観察結果から、ピンホールの発生について下記の基準で評価した。本発明において、食品包装用紙は、評価A、B、C又はDであればピンホールの発生を軽減できるものとする。
A:4枚のいずれにも斑点が認められない。
B:4枚から視認されたピンホールが1個である。
C:4枚から視認されたピンホールが2個である。
D:4枚から視認されたピンホールが3個である。
E:4枚から視認されたピンホールが4個以上である。
【0092】
<ガスバリア性>
ガスバリア性の評価は、ISO15105-2:2003「Plastics-Film and sheeting - Determination of gas-transmission rate - Part2 : Equal-pressure method」(JIS K7126-2:2006「プラスチック -フィルム及びシート- ガス透過度試験方法-第2部:等圧法」)に準じて実施した測定結果から行った。測定は、上記塗工層を有しない側をガスの供給面として行った。ガス透過度試験のガスには酸素ガスを用いて酸素透過度とし、温湿度の条件は、23±0.5℃及び相対湿度85±2%とした。
本発明において、食品包装用紙は、A、B、C又はDの評価であればガスバリア性を有するものとする。
A:酸素透過度50cc/m2・24h・atm以下で、良好。
B:上記Aより劣るものの、
酸素透過度100cc/m2・24h・atm以下で、概ね良好。
C:上記Bより劣るものの、
酸素透過度125cc/m2・24h・atm以下で、実用可能。
D:上記Cより劣るものの、
酸素透過度150cc/m2・24h・atm以下で、実用可能。
E:上記Dより劣り、
酸素透過度150cc/m2・24h・atm超で、実用不可能。
【0093】
評価結果を表2に示す。
【0094】
【0095】
表2から、上記[1]及び[2]並びにこれらに従属(但し、上記[3]を除く)する本発明に該当する実施例1-1~実施例1-34は、ピンホールの発生を軽減できる、ガスバリア性を有する、及びフレーバーバリア性を有する食品包装用紙であると分かる。一方、本発明の構成を満足しない比較例1-1及び比較例1-2は、ピンホールの発生を軽減、ガスバリア性、及びフレーバーバリア性の少なくとも1つを得ることができない食品包装用紙であると分かる。
主に、実施例1-3及び実施例1-6~実施例1-11の間の対比、並びに実施例1-15及び実施例1-19~実施例1-24の間の対比から、食品包装用紙はポリ塩化ビニリデン系重合体において重合体中の塩化ビニリデン単量体が85質量%以上95質量%以下が好ましいと分かる。
主に、実施例1-3、実施例1-15、実施例1-29及び実施例1-34の間の対比から、食品包装用紙は、紙支持体と塗工層との間に下塗り層を有し、下塗り層がポリ塩化ビニリデン系重合体とカオリンとを含有することが好ましいと分かる。
主に、実施例1-1~実施例1-5の間の対比、並びに実施例1-15及び実施例1-26~実施例1-29の間の対比から、食品包装用紙はピンホールの発生を軽減の点で、紙支持体のガーレー透気度が30秒以上200秒以下であることが好ましいと分かる。
主に、実施例1-3、実施例1-7、実施例1-8、実施例1-10、実施例1-11及び実施例1-12の間の対比、並びに実施例1-15、実施例1-20、実施例1-21、実施例1-23、実施例1-24及び実施例1-25の間の対比から、食品包装用紙はガスバリア性の点で、ポリ塩化ビニリデン系重合体が塩化ビニリデン単量体、(メタ)アクリロニトリル系単量体及びアルキル基が炭素数1以上4以下のアルキル(メタ)アクリレート単量体を含む共重合体であることが好ましいと分かる。
【0096】
次に、上記[3]及び[4]並びにこれらに従属する本発明を実施例によって説明する。
【0097】
<紙支持体>
上記の紙支持体と同様に実施し、作製した。
【0098】
得られた食品包装用紙について、下記の評価を行った。紙支持体のガーレー透気度は、ISO5636-5:2013に準じて、東洋精機製作所社製B型ガーレーデンソメーターを用いて測定した。ガーレー透気度の値は表3に記載する。
【0099】
<下塗り層の塗工液>
水を媒体として以下の塗工液を調製した。
顔料 種類及び質量部は表3に記載
樹脂 種類及び質量部は表3に記載
【0100】
<第一塗工層の塗工液>
水を媒体として以下の塗工液を調製した。
樹脂 種類は表3に記載/100質量部
【0101】
<第二塗工層の塗工液>
水を媒体として以下の塗工液を調製した。
樹脂 種類は表3に記載/100質量部
【0102】
【0103】
表3に登場する各材料は以下である。
PVDC1 :ポリ塩化ビニリデン系重合体
(単量体の配合質量%比)
塩化ビニリデン :80
メタクリロニトリル :15
エチルアクリレート: :5
PVDC2 :ポリ塩化ビニリデン系重合体
(単量体の配合質量%比)
塩化ビニリデン :85
メタクリロニトリル :10
エチルアクリレート: :5
PVDC3 :ポリ塩化ビニリデン系重合体
(単量体の配合質量%比)
塩化ビニリデン :90
アクリロニトリル :9
エチルアクリレート: :1
PVDC4 :ポリ塩化ビニリデン系重合体
(単量体の配合質量%比)
塩化ビニリデン :95
アクリロニトリル :3
エチルアクリレート :2
PVDC5 :ポリ塩化ビニリデン系重合体
(単量体の配合質量%比)
塩化ビニリデン :98
メタクリロニトリル :1.5
エチルアクリレート :0.5
PVDC6 :ポリ塩化ビニリデン系重合体
(単量体の配合質量%比)
塩化ビニリデン :85
メタクリロニトリル :10
メチルアクリレート: :5
PVDC7 :ポリ塩化ビニリデン系重合体
(単量体の配合質量%比)
塩化ビニリデン :95
メタクリロニトリル :3
メチルアクリレート: :2
PVDC8 :ポリ塩化ビニリデン系重合体
(単量体の配合質量%比)
塩化ビニリデン :85
メタクリロニトリル :10
2-ヒドロキシエチルメタクリレート :5
アクリレート系A :エチルアクリレート-n-ブチルメタクリレート共重合体
アクリレート系B :メチルメタクリレート-2-エチルヘキシル(メタ)アク
リレート共重合体
スチレン-アクリル系 :スチレン-アクリル系共重合体
スチレン-ブタジエン系:スチレン-ブタジエン系共重合体
PVA :ポリビニルアルコール
(無変性、完全ケン化、平均重合度1700)
エチレン-酢酸ビニル系:エチレン-酢酸ビニル共重合体
澱粉 :酸化澱粉
CMC :カルボキシメチルセルロースナトリウム塩
カオリン :2μm以下の累積頻度88体積%のカオリン
【0104】
<塗工(下塗り層無し)>
紙支持体の片面に対して、第一塗工層の塗工液をエアーナイフコーターで塗工及び熱風乾燥機で乾燥した。第一塗工層の塗工量は、5g/m2になるようにコーター条件を調整した。続いて、第一塗工層に対して、第二塗工層の塗工液をロッドコーターで塗工及び熱風乾燥機で乾燥した。第二塗工層の塗工量は、6g/m2になるようにコーター条件を調整した。
【0105】
<塗工(下塗り層有り)>
紙支持体の片面に対して、下塗り層の塗工液をロッドコーターで塗工及び熱風乾燥機で乾燥した。下塗り層の塗工量は、10g/m2になるようコーター条件を調整した。次に、下塗り層に対して、第一塗工層の塗工液をエアーナイフコーターで塗工及び熱風乾燥機で乾燥した。第一塗工層の塗工量は、5g/m2になるようにコーター条件を調整した。続いて、第一塗工層に対して、第二塗工層の塗工液をロッドコーターで塗工及び熱風乾燥機で乾燥した。第二塗工層の塗工量は、6g/m2になるようにコーター条件を調整した。
【0106】
<ピンホール>
得られた食品包装用紙から任意に大きさ50cm×50cmに裁断した。裁断した食品包装用紙4枚に着色トルエン液を食品包装用紙の表面(第一塗工層及び第二塗工層を有する側)に塗工して、ピンホールが存在した場合にピンホールを通過して反対側に現われる斑点を目視で観察した。観察結果から、ピンホールの発生について下記の基準で評価した。本発明において、食品包装用紙は、評価A、B、C又はDであればピンホールの発生を軽減できるものとする。
A:4枚のいずれにも斑点が認められない。
B:4枚から視認されたピンホールが1個である。
C:4枚から視認されたピンホールが2個である。
D:4枚から視認されたピンホールが3個である。
E:4枚から視認されたピンホールが4個以上である。
【0107】
<耐水性>
耐水性の評価は、食品包装用紙の表面(第一塗工層及び第二塗工層を有する側)に約2mlの水滴を滴下し、滴下した水が、食品包装用紙の表面(第一塗工層及び第二塗工層を有する側)で染み込む程度及び食品包装用紙の裏面(第一塗工層及び第二塗工層を有しない側)に滲み出す程度を目視で観察して行った。観察結果から、耐水性を下記の基準で評価した。本発明において、食品包装用紙は、評価A又はBであれば耐水性を有するものとする。
A:染み込みが無く、及び滲み出しが認められない。
B:染み込みが僅かに認められる。しかし、滲み出しが認められない。
C:染み込みが認められる。また、滲み出しが認められる。
【0108】
<耐油性>
耐油性の評価は、食品包装用紙の表面(第一塗工層及び第二塗工層を有する側)に約1mlのサラダ油の油滴を滴下し、滴下した油が、食品包装用紙の表面(第一塗工層、第二塗工層を有する側)で染み込み程度及び食品包装用紙の裏面(第一塗工層及び第二塗工層を有しない側)に滲み出す程度を目視で観察して行った。観察結果から、耐油性を下記の基準で評価した。本発明において、食品包装用紙は、評価A又はBであれば耐油性を有するものとする。
A:染み込みが無く、及び滲み出しが認められない。
B:染み込みが僅かに認められる。しかし、滲み出しが認められない。
C:染み込みが認められる。また、滲み出しが認められる。
【0109】
<ガスバリア性>
ガスバリア性の評価は、ISO15105-2:2003「Plastics-Film and sheeting - Determination of gas-transmission rate - Part2 : Equal-pressure method」(JIS K7126-2:2006「プラスチック -フィルム及びシート- ガス透過度試験方法-第2部:等圧法」)に準じて実施した測定結果から行った。測定は、第一塗工層及び第二塗工層を有しない側をガスの供給面として行った。ガス透過度試験のガスには酸素ガスを用いて酸素透過度とし、温湿度の条件は、23±0.5℃及び相対湿度85±2%とした。
本発明において、食品包装用紙は、A、B、C又はDの評価であればガスバリア性を有するものとする。
A:酸素透過度50cc/m2・24h・atm以下で、良好。
B:上記Aより劣るものの、
酸素透過度100cc/m2・24h・atm以下で、概ね良好。
C:上記Bより劣るものの、
酸素透過度125cc/m2・24h・atm以下で、実用可能。
D:上記Cより劣るものの、
酸素透過度150cc/m2・24h・atm以下で、実用可能。
E:上記Dより劣り、
酸素透過度150cc/m2・24h・atm超で、実用不可能。
【0110】
<フレーバーバリア性>
香り発生物質として市販のレギュラーコーヒー粉末を使用した。ガラスコップにレギュラーコーヒー粉末を入れ、コップの開口部を食品包装用紙で覆い、開口部の周囲をテープによって厳重に封をした。5人の被験者に、食品包装用紙で封をしたコップの開口部について匂いを嗅ぎ、下記の基準で官能評価した。
3点:匂いを感じない。
2点:匂いを感じるような気がする。
1点:匂いを感じる。
5人の官能評価の結果を基にして下記の基準でフレーバーバリア性を評価した。本発明において、食品包装用紙は、評価A又はBであればフレーバーバリア性を有するものとする。
A:評価3が3人以上かつ評価1が0人である。
B:評価2が3人以上かつ評価1が0人である。
C:評価1が1人以上である。
【0111】
<ヒートシール適性>
2枚の食品包装用紙を用いて、食品包装用紙の第一塗工層及び第二塗工層を有する側の面どうしを対向させてヒートシーラーにより圧力0.5MPa、130℃、1秒間の条件によってヒートシールを施した。
ヒートシールした食品包装用紙を15mm幅で切り出し、温度23℃、相対湿度50%で24時間静置後、引張り試験機を用い、引張り速度300mm/分、引張り角度180度でヒートシール箇所の剥離強度を測定することによってヒートシール適性を評価した。測定は、サンプル数5部で行い、5部の平均値とした。測定値から、ヒートシール適性を下記の基準で評価した。本発明において、食品包装用紙は、評価A、B又はCであればヒートシール適性を有するものとする。
A:値が、10N/15mm以上。
B:値が、6N/15mm以上10N/15mm未満。
C:値が、3N/15mm以上6N/15mm未満。
D:値が、3N/15mm未満。
【0112】
評価結果を表4に示す。
【0113】
【0114】
表4から、上記[3]及び[4]並びにこれらに従属する本発明に該当する実施例2-1~実施例2-38は、耐水性、耐油性、ガスバリア性を有し、フレーバーバリア性を有し、及びピンホールの発生を軽減でき、さらにヒートシール適性を有する食品包装用紙であると分かる。一方、本発明の構成を満足しない比較例2-1~比較例2-3は、これら効果のいずれかを満足できない食品包装用紙であると分かる。
主に、実施例2-3及び実施例2-6~実施例2-11の間の対比、並びに実施例2-17及び実施例2-21~実施例2-26の間の対比から、食品包装用紙はガスバリア性の点で、ポリ塩化ビニリデン系重合体において重合体中の塩化ビニリデン単量体が85質量%以上95質量%以下が好ましいと分かる。
主に、実施例2-3、実施例2-17、実施例2-33及び実施例2-38の間の対比から、食品包装用紙は、紙支持体と塗工層との間に下塗り層を有し、下塗り層がポリ塩化ビニリデン系重合体とカオリンとを含有することが好ましいと分かる。
主に、実施例2-1~実施例2-5の間の対比、並びに実施例2-17及び実施例2-30~実施例2-33の間の対比から、食品包装用紙はピンホールの発生を軽減の点で、紙支持体のガーレー透気度が30秒以上200秒以下であることが好ましいと分かる。
主に、実施例2-3、実施例2-7、実施例2-8、実施例2-10、実施例2-11及び実施例2-12の間の対比から、食品包装用紙はガスバリア性の点で、ポリ塩化ビニリデン系重合体が塩化ビニリデン単量体、(メタ)アクリロニトリル系単量体及びアルキル基が炭素数1以上4以下のアルキル(メタ)アクリレート単量体を含む共重合体であることが好ましいと分かる。