(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-31
(45)【発行日】2023-11-09
(54)【発明の名称】車両盗難防止装置
(51)【国際特許分類】
B60R 25/022 20130101AFI20231101BHJP
B60R 25/08 20060101ALI20231101BHJP
E05B 83/00 20140101ALI20231101BHJP
【FI】
B60R25/022
B60R25/08
E05B83/00 C
(21)【出願番号】P 2020171727
(22)【出願日】2020-10-12
【審査請求日】2023-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】506241640
【氏名又は名称】中島特殊鋼株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】517028708
【氏名又は名称】青山 諭
(74)【代理人】
【識別番号】100119792
【氏名又は名称】熊崎 陽一
(72)【発明者】
【氏名】中島 利一
(72)【発明者】
【氏名】青山 諭
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-200473(JP,A)
【文献】実開平03-084258(JP,U)
【文献】英国特許出願公告第1181997(GB,A)
【文献】米国特許第3990280(US,A)
【文献】米国特許第5372023(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 25/022
B60R 25/08
E05B 83/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングホイールに係止するための第1係止部を一端に有する第1部材と、
操作ペダルに係止するための第2係止部を一端に有する第2部材と、
前記第1係止部が前記ステアリングホイールに係止された前記第1部材の他端と、前記第2係止部が前記操作ペダルに係止された前記第2部材の他端と、運転席に設けられたシートベルトのタングプレートとをロック固定するためのロック機構と、
を備えており、
前記ロック機構は、
ボルトと、
前記ボルトに螺合するためのロックナットと、
前記タングプレートに形成されており、座席に設けられたバックルに係合するための係合孔と、を備えており、
前記ボルトは、前記第1部材および前記第2部材の一方の他端において、部材の長手方向と直交する方向に突出させて固着されており、
前記第1部材および前記第2部材の他方の他端には、前記ボルトを挿通するためのボルト挿通孔が形成されており、
前記ボルトが、重ね合わせられた前記ボルト挿通孔および前記係合孔に挿通され、その挿通された前記ボルトに前記ロックナットが螺合される構造であることを特徴とする車両盗難防止装置。
【請求項2】
前記
ボルト挿通孔が前記部材の長手方向に沿って複数形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両盗難防止装置。
【請求項3】
前記ボルト挿通孔が前記部材の長手方向に沿っ
た長径を有する長孔であることを特徴とする
請求項1または請求項2に記載の車両盗難防止装置。
【請求項4】
ステアリングホイールに係止するための第1係止部を一端に有する第1部材と、
操作ペダルに係止するための第2係止部を一端に有する第2部材と、
前記第1係止部が前記ステアリングホイールに係止された前記第1部材の他端と、前記第2係止部が前記操作ペダルに係止された前記第2部材の他端と、運転席に設けられたシートベルトのタングプレートとをロック固定するためのロック機構と、
を備えており、
前記ロック機構は、
ボルトと、
前記ボルトに螺合するためのロックナットと、
前記第1部材および前記第2部材の一方の他端に形成されており、前記ボルトを挿通するための第1ボルト挿通孔と、
前記第1部材および前記第2部材の他方の他端に形成されており、前記ボルトを挿通するための第2ボルト挿通孔と、
前記タングプレートに形成されており、座席に設けられたバックルに係合するための係合孔と、を備えており、
前記第1部材、前記第2部材および前記タングプレートは、
前記第1係止部が前記ステアリングホイールに係止されており、かつ、前記第2係止部が前記操作ペダルに係止された状態において、前記第1ボルト挿通孔と、前記第2ボルト挿通孔と、前記係合孔とを所定の順序で重ね合わせられるように構成されており、
前記ボルトが、前記所定の順序で重ね合わせられた前記第1ボルト挿通孔、前記第2ボルト挿通孔および前記係合孔に挿通され、その挿通された前記ボルトに前記ロックナットが螺合されるように構成されていることを特徴とす
る車両盗難防止装置。
【請求項5】
前記
第1ボルト挿通孔および前記第2ボルト挿通孔の少なくとも一方が、部材の長手方向に沿って複数形成されていることを特徴とする請求項
4に記載の車両盗難防止装置。
【請求項6】
前記第1ボルト挿通孔および前記第2ボルト挿通孔の少なくとも一方が、部材の長手方向に沿っ
た長径を有する長孔であることを特徴とする請求項
4または請求項
5に記載の車両盗難防止装置。
【請求項7】
前記
ボルトは、
前記第1ボルト挿通孔または前記第2ボルト挿通孔に挿通されており、かつ、その挿通された部分に固着されていることを特徴とする請求項
4ないし請求項6のいずれか1項に記載の車両盗難防止装置。
【請求項8】
前記
ロックナットは、
底面と、
前記底面と反対側に形成されており、前記底面の径よりも小径の上面と、
前記底面の周縁と前記上面の周縁との間に連続形成されており、凹凸および角部が形成されていないテーパ面と、
前記上面から前記底面に向けて窪んでおり、当該ロックナットの螺合に用いる専用工具を装着するための装着部と、
前記底面から突出した基部と、
前記基部の底面と前記装着部の底面とを貫通して形成されており、前記ボルトを挿通するためのロックナット側ボルト挿通孔と、
前記基部の外周面に回転可能に装着されており、前記底面の径以上の外径を有する円環状部材と、を備えていることを特徴とする請求項
1ないし請求項7のいずれか1項に記載の車両盗難防止装置。
【請求項9】
前記
上面を平面視した場合に、前記装着部の内壁の形状が、ヘクサロビュラ穴の形状であり、
前記ロックナットを前記ボルトに螺合したときに、前記ボルトの先端が前記上面から突出することを特徴とする請求項
8に記載の車両盗難防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に設けられたステアリングホイールやブレーキペダルなどを操作不能にすることにより、車両の盗難を防止する車両盗難防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の車両盗難防止装置として、ステアリングホイールとブレーキペダルとを棒状の部材によって連結し、その連結部分に施錠装置を介在させたものが知られている。
また、イグニッションスイッチと連動するロック装置をステアリングホイールの裏側に取付け、そのロック装置にシートベルト端部の金具をロックし、エンジンキーによってイグニッションスイッチを操作することにより、ロック装置を解除するものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前述した前者の車両盗難防止装置は、施錠装置が破壊されると、連結部分が外れるため、盗難可能な状態になる。また、後者の車両盗難防止装置は、ロック装置が破壊されると盗難可能な状態になる。
つまり、前述した従来の車両盗難防止装置は、いずれも盗難防止効果が低いという問題がある。
【0005】
そこで、本願発明は、上述した諸課題を解決するために鋭意研究の結果創出されたものであり、盗難防止効果を高くすることができる車両盗難防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(請求項1に係る発明)
前述した目的を達成するため、本願の請求項1に係る発明では、
ステアリングホイール(3(
図1))に係止するための第1係止部(12)を一端に有する第1部材(10(
図2))と、
操作ペダル(4(
図1))に係止するための第2係止部(22)を一端に有する第2部材(20(
図2))と、
第1係止部(12)がステアリングホイール(3)に係止された第1部材(10)の他端と、第2係止部(22)が操作ペダル(4)に係止された第2部材(20)の他端と、運転席(5)に設けられたシートベルト(6)のタングプレート(7)とをロック固定するためのロック機構(13,14,23~26,30(
図2))と、
を備え
ており、
ロック機構(13,14,23~26,30(図2))は、
ボルト(14)と、
ボルト(14)に螺合するためのロックナット(30)と、
タングプレート(7)に形成されており、座席(5)に設けられたバックルに係合するための係合孔(7b)と、を備えており、
ボルト(14)は、第1部材(10)および第2部材(20)の一方の他端において、部材の長手方向と直交する方向に突出させて固着されており、
第1部材(10)および第2部材(20)の他方の他端には、ボルト(14)を挿通するためのボルト挿通孔(24~26)が形成されており、
ボルト(14)が、重ね合わせられたボルト挿通孔(24~26)および係合孔(7b)に挿通され、その挿通されたボルト(14)にロックナット(30)が螺合される構造であることを特徴とする。
なお、操作ペダルとは、ブレーキペダル、パーキングブレーキペダルおよびアクセルペダルなどを意味する。
【0007】
【0008】
(請求項2に係る発明)
請求項2に係る発明では、請求項1に記載の車両盗難防止装置(1)において、
ボルト挿通孔(24~26)が部材(10,20)の長手方向に沿って複数形成されていることを特徴とする。
【0009】
(請求項3に係る発明)
請求項3に係る発明では、請求項1または請求項2に記載の車両盗難防止装置(1)において、
ボルト挿通孔(26)が部材の長手方向に沿った長径を有する長孔であることを特徴とする。
【0010】
(請求項
4に係る発明)
請求項
4に係る発明では
、
ステアリングホイール(3(図1))に係止するための第1係止部(12)を一端に有する第1部材(10(図2))と、
操作ペダル(4(図1))に係止するための第2係止部(22)を一端に有する第2部材(20(図2))と、
第1係止部(12)がステアリングホイール(3)に係止された第1部材(10)の他端と、第2係止部(22)が操作ペダル(4)に係止された第2部材(20)の他端と、運転席(5)に設けられたシートベルト(6)のタングプレート(7)とをロック固定するためのロック機構(13,14,23~26,30(図2))と、
を備えており、
ロック機構(13,14,23~26,30(
図2))は、
ボルト(14)と、
ボルト(14)に螺合するためのロックナット(30)と、
第1部材(10)および第2部材(20)の一方の他端に形成されており、ボルト(14)を挿通するための第1ボルト挿通孔(15)と、
第1部材(10)および第2部材(20)の他方の他端に形成されており、ボルト(14)を挿通するための第2ボルト挿通孔(24~26)と、
タングプレート(7)に形成されており、座席(5)に設けられたバックルに係合するための係合孔(7b)と、を備えており、
第1部材(10)、第2部材(20)およびタングプレート(7)は、
第1係止部(12)がステアリングホイール(3)に係止されており、かつ、第2係止部(22)が操作ペダル(4)に係止された状態において、第1ボルト挿通孔(15)と、第2ボルト挿通孔(24~26)と、係合孔(7b)とを所定の順序で重ね合わせられるように構成されており、
ボルト(14)が、所定の順序で重ね合わせられた第1ボルト挿通孔(15)、第2ボルト挿通孔(24~26)および係合孔(7b)に挿通され、その挿通されたボルト(14)にロックナット(30)が螺合されるように構成されていることを特徴とする。
【0011】
(請求項5に係る発明)
請求項5に係る発明では、請求項4に記載の車両盗難防止装置(1)において、
第1ボルト挿通孔(15)および第2ボルト挿通孔(24~26)の少なくとも一方が、部材の長手方向に沿って複数形成されていることを特徴とする。
【0012】
(請求項6に係る発明)
請求項6に係る発明では、請求項4または請求項5に記載の車両盗難防止装置(1)において、
第1ボルト挿通孔(15)および第2ボルト挿通孔(24~26)の少なくとも一方が、部材の長手方向に沿った長径を有する長孔であることを特徴とする。
【0013】
(請求項7に係る発明)
請求項7に係る発明では、請求項4ないし請求項6のいずれか1項に記載の車両盗難防止装置(1)において、
ボルト(14)は、
第1ボルト挿通孔(15)または第2ボルト挿通孔(24~26)に挿通されており、かつ、その挿通された部分に固着されていることを特徴とする。
【0014】
(請求項
8に係る発明)
請求項
8に係る発明では、請求項1ないし請求項
7のいずれか1項に記載の車両盗難防止装置(1)において、
ロックナット(30)は、
底面(36(
図5(D))と、
底面(36)と反対側に形成されており、底面(36)の径よりも小径の上面(35)と、
底面(36)の周縁(36a)と上面(35)の周縁(35a)との間に連続形成されており、凹凸および角部が形成されていないテーパ面(33)と、
上面(35)から底面(36)に向けて窪んでおり、当該ロックナット(30)の螺合に用いる専用工具(40)を装着するための装着部(31(
図5(A))と、
底面(36)から突出した基部(37)と、
基部(37)の底面(37b)と装着部(31)の底面(31a)とを貫通して形成されており、ボルト(14)を挿通するためのロックナット側ボルト挿通孔(32)と、
基部(37)の外周面(37a)に回転可能に装着されており、底面(36)の径以上の外径を有する円環状部材(34)と、を備えていることを特徴とする。
【0015】
(請求項9に係る発明)
請求項9に係る発明では、請求項8に記載の車両盗難防止装置(1)において、
上面(35)を平面視した場合に、装着部(31)の内壁(31b)の形状が、ヘクサロビュラ穴の形状であり、
ロックナット(30)をボルト(14)に螺合したときに、ボルト(14)の先端が上面(35)から突出することを特徴とする。
の外径を有する円環状部材(34)と、を備えていることを特徴とする。
【0016】
なお、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0017】
(請求項1に係る発明)
請求項1に係る発明によれば、第1係止部がステアリングホイールに係止された第1部材の他端と、第2係止部が操作ペダルに係止された第2部材の他端と、運転席に設けられたシートベルトのタングプレートとをロック固定することができる。
従って、請求項1に係る発明によれば、盗難防止効果を高くすることができる。
【0018】
さらに、ロック機構は、ボルトと、ボルトに螺合するためのロックナットと、タングプレートに形成されており、座席に設けられたバックルに係合するための係合孔と、を備えており、ボルトは、第1部材および第2部材の一方の他端において、部材の長手方向と直交する方向に突出させて固着されている。また、第1部材および第2部材の他方の他端には、ボルトを挿通するためのボルト挿通孔が形成されており、ボルトが、重ね合わせられたボルト挿通孔および係合孔に挿通され、その挿通されたボルトにロックナットが螺合される構造である。
つまり、請求項1に係る発明は、ボルトが、重ね合わせられたボルト挿通孔および係合孔に挿通され、その挿通されたボルトにロックナットが螺合される構造である。
従って、請求項1に係る発明によれば、盗難防止効果をより一層高くすることができる。また、第1部材、第2部材およびタングプレートを1箇所でロック固定することができるため、ロック作業効率を高めることができる。
【0019】
(請求項2に係る発明)
請求項2に係る発明によれば、ボルト挿通孔が部材の長手方向に沿って複数形成されているため、操作ペダルとステアリングホイールとの距離に応じてボルト挿通孔を選択することができる。
従って、請求項2に係る発明によれば、操作ペダルおよびステアリングホイールの係止状態が解除されることがないボルト挿通孔を選択することができるため、車種に応じて盗難防止効果が低下するおそれがない。
【0020】
(請求項3に係る発明)
請求項3に係る発明によれば、ボルト挿通孔が部材の長手方向に沿った長径を有する長孔であるため、操作ペダルとステアリングホイールとの距離に応じて、ボルト挿通孔内においてボルトを挿通する位置を選択することができるため、車種に応じて盗難防止効果が低下するおそれがない。
【0021】
(請求項4に係る発明)
請求項4に係る発明は、第1部材、第2部材およびタングプレートは、第1係止部がステアリングホイールに係止されており、かつ、第2係止部が操作ペダルに係止された状態において、第1ボルト挿通孔と、第2ボルト挿通孔と、係合孔とを所定の順序で重ね合わせられるように構成されており、ボルトが、上記所定の順序で重ね合わせられた第1ボルト挿通孔、第2ボルト挿通孔および係合孔に挿通され、その挿通されたボルトにロックナットが螺合されるように構成されている。
従って、請求項4に係る発明によれば、盗難防止効果をより一層高くすることができる。また、第1部材、第2部材およびタングプレートを1箇所でロック固定することができるため、ロック作業効率を高めることができる。
【0022】
(請求項5に係る発明)
請求項5に係る発明によれば、第1ボルト挿通孔および第2ボルト挿通孔の少なくとも一方が、部材の長手方向に沿って複数形成されているため、操作ペダルとステアリングホイールとの距離に応じて第1ボルト挿通孔および第2ボルト挿通孔の少なくとも一方を選択することができる。
従って、請求項5に係る発明によれば、操作ペダルおよびステアリングホイールの係止状態が解除されることがないボルト挿通孔を選択することができるため、車種に応じて盗難防止効果が低下するおそれがない。
【0023】
(請求項6に係る発明)
請求項6に係る発明によれば、第1ボルト挿通孔および第2ボルト挿通孔の少なくとも一方が、部材の長手方向に沿った長径を有する長孔であるため、操作ペダルとステアリングホイールとの距離に応じて、第1ボルト挿通孔および第2ボルト挿通孔の少なくとも一方の内部においてボルトを挿通する位置を選択することができるため、車種に応じて盗難防止効果が低下するおそれがない。
【0024】
(請求項7に係る発明)
請求項7に係る発明によれば、ボルトは、第1ボルト挿通孔または第2ボルト挿通孔に挿通されており、かつ、その挿通された部分に固着されているため、ボルトを別部材とする構成と比較すると、ボルトを第1ボルト挿通孔または第2部材の第2ボルト挿通孔に挿通する工程を省略することができるので、ロック作業効率をより一層高めることができる。
【0025】
(請求項8に係る発明)
請求項8に係る発明によれば、工具でロックナットのテーパ面を挟んでも、工具とテーパ面との接触面積が小さいため、工具が滑り易いので、ロックナットを回転させることは困難である。
しかも、テーパ面には、凹凸および角部が形成されていないため、工具の先端を凹凸または角部に係止してナット部材を緩めるという手法を封じることができる。
さらに、基部の外周面には、底面の径以上の外径を有する円環状部材が回転可能に装着されているため、工具で底面の周縁を挟もうとしても、円環状部材が邪魔になるので、工具で周縁を挟むことができない。また、工具で円環状部材を挟んで回転させても、円環状部材が基部の周りを空回りするだけであり、基部は回転しない。
従って、請求項8に係る発明によれば、盗難防止効果をより一層高くすることができる。
【0026】
(請求項9に係る発明)
請求項9に係る発明によれば、ロックナットの上面を平面視した場合に、装着部の内壁の形状が、ヘクサロビュラ穴の形状であるため、タガネやポンチなどの先端によって装着部の内壁を叩くことによりロックナットを回転させようとしても、その先端が内壁で滑ってしまうので、ロックナットを回転させることが困難である。
つまり、一般的な工具によってはロックナットを緩めることは困難である。
さらに、ロックナットをボルトに螺合したときに、ボルトの先端が上面から突出するため、マイナスやプラスのドライバーなど、専用工具以外の工具を装着部に挿入しようとしても、上面から突出したボルトが邪魔になるので、ロックナットを緩めることが困難である。
従って、請求項9に係る発明によれば、盗難防止効果をより一層高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両盗難防止装置の使用状態を示す説明図である。
【
図2】(A)は
図1に示す車両盗難防止装置に備えられた第1部材の平面図、(B)は第2部材の平面図、(C)はロックナットの平面図、(D)は専用工具の側面図である。
【
図3】(A)は
図2(B)に示す第2部材の側面図、(B)は(A)の左側面図、(C)はボルトの拡大側面図である。
【
図4】(A)は第1部材の平面図、(B)は(A)の右側面図、(C)はタングプレートの平面図である。
【
図5】(A)はロックナットの平面図、(B)は(A)の左側面図、(C)は(B)に示す座金の左側面図、(D)は(B)に示す円環状部材の左側面図、(E)は(B)に示すロックナットに設けられたロックナット本体の左側面図である。
【
図6】(A)は専用工具の側面図、(B)は専用工具の底面図である。
【
図7】(A)は第1部材を第2部材に組付ける状態を示す説明図、(B)はタングプレートおよびロックナットを組付ける状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
〈実施形態〉
本発明に係る車両盗難防止装置の実施形態について図を参照しつつ説明する。
[主要構成]
図1に示すように、本実施形態の車両盗難防止装置1は、車両2に備えられたステアリングホイール3と、ブレーキペダル4と、運転席5のシートベルト6に設けられたタングプレート7とをロック固定する装置である。つまり、本実施形態の車両盗難防止装置1は、ステアリングホイール3とブレーキペダル4とをロック固定するだけではなく、運転席5のシートベルト6に設けられたタングプレート7をもロック固定することにより、盗難防止効果を高めることができる装置である。
車両盗難防止装置1は、ステアリングホイール3に係止する第1部材10と、ブレーキペダル4に係止する第2部材20と、第1部材10、第2部材20およびタングプレート7をロック固定するボルト14(
図3(C))と、ボルト14に螺合するロックナット30とを備えている。ブレーキペダル4は、本発明の操作ペダルの一例である。
【0029】
(第1部材の構造)
図4(A),(B)に示すように、第1部材10は、棒状に形成された第1棒状部11と、この第1棒状部11の一端に形成されており、ステアリングホイール3に係止するための第1係止部12と、第1棒状部11の他端に形成された第1固定部13とを備えている。第1係止部12は、ステアリングホイール3のリム(外周部分)に係止できるように、J字型に形成されており、縦断面形状が円形である。また、
図1に示すように、第1係止部12は、ステアリングホイール3のリムの下端に下方から係止するように構成されている。なお、第1係止部12は、リムの下端に上方から係止することもできる。
第1固定部13は、溶接(例えば、プラズマ溶接)により第1棒状部11の他端に固着されている。第1固定部13は、平面視円形の板状に形成されており、第1固定部13の中心には、第1ボルト挿通孔15が貫通形成されている。第1ボルト挿通孔15には、ボルト14が挿通固定されている。ボルト14は、第1ボルト挿通孔15に圧入されており、ボルト14の首下と第1ボルト挿通孔15の開口縁とは接着剤によって接着されている。
【0030】
また、ボルト14は、第1棒状部11の他端において、第1棒状部11の長手方向と直交する方向に突出させて固着されている。本実施形態では、第1部材10は、第1係止部12をステアリングホイール3のリムの下端に係止したときに、第1固定部13に挿通固定されたボルト14の先端14g(
図3(C))が、車両2の右側面を向くように構成されている。これにより、ボルト14を後述する第2部材20の第2固定部23の第2ボルト挿通孔24~26(
図7)に挿通する作業を、運転席5の右側から行い易い。
第1固定部13は、平面視円形の板状の他、平面視楕円形の板状、四角形の板状などでも良い。本実施形態では、第1部材10は、JIS規格でSUS304と称されるステンレス鋼により形成されている。また、第1部材10は、SUS430と称されるステンレス鋼により形成することもできる。
【0031】
(ボルトの構造)
図3(C)に示すように、ボルト14は、頭部14aと、雄ネジが形成されたネジ部14bと、頭部14aの首下に形成された圧接部14cと、圧接部14cとネジ部14bとの間に形成された回り止め部14dとを有する。回り止め部14dおよび圧接部14cは、ネジ部14bとの境界から頭部14aに向けて次第に径が大きくなるテーパ形状に形成されている。また、回り止め部14dおよび圧接部14cは、多角形に形成されており、回り止め部14dの各面14eには、先端が尖った山14fを有する平目ローレットが形成されている。
【0032】
ボルト14を第1ボルト挿通孔15に挿通し、頭部14aをハンマーなどで叩くと、複数の山14fが第1ボルト挿通孔15の内壁に食い込み、圧入された状態になる。これにより、ロックナット30を螺合するときにボルト14が共回りすることがない。本実施形態では、ボルト14を第1ボルト挿通孔15に圧入するときにボルト14の首下に周囲に接着剤を塗布しておき、ボルト14の首下と第1ボルト挿通孔15の開口縁とを接着するため、ボルト14の共回りを防止する効果を高めることができる。また、第1ボルト挿通孔15に挿通したボルト14を第1固定部13に溶着することもできる。本実施形態では、ボルト14は、S25C(機械構造用炭素鋼)により形成されている。
【0033】
(第2部材の構造)
図2(B)および
図3(A)に示すように、第2部材20は、棒状に形成された第2棒状部21と、この第2棒状部21の一端に形成されており、ブレーキペダル4のレバー部4b(
図1)に係止するための第2係止部22と、第2棒状部21の他端に形成された第2固定部23とを備えている。第2係止部22は、ブレーキペダル4のペダル部4aに取付けられたレバー部4bに係止できるようにJ字型に形成されており、縦断面形状が円形である。また、
図1に示すように、第2係止部22は、ブレーキペダル4のレバー部4bに側方から係止するように構成されている。
図1では、第2係止部22を車両2の左方(図面上の奥側)からレバー部4bに係止しているが、右方(図面上の手前側)からレバー部4bに係止することもできる。
【0034】
図7に示すように、第1部材10の第1係止部12の先端12aが向く方向と、第2部材20の第2係止部22の先端22aが向く方向とは、相互に90度異なる。これは、前述したように、第1部材10の第1係止部12は、ステアリングホイール3のリムの下端に係止され、第2部材20の第2係止部22は、ブレーキペダル4のレバー部4bに側方から係止されるからである。
また、第2棒状部21の全長は、第1部材10の第1棒状部11の全長よりも長い。これにより、
図1に示すように、第1部材10、第2部材20およびタングプレート7をロック固定する作業をステアリングホイール3に近い位置にて行うことができるため、ロック固定作業を楽な姿勢で行うことができる。
【0035】
第2固定部23は、溶接(例えば、プラズマ溶接)により第2棒状部21に他端に固着されている。第2固定部23は、平面視長孔の板状に形成されており、第2固定部23には、ボルト14を挿通するための第2ボルト挿通孔24~26がそれぞれ貫通形成されている。第2ボルト挿通孔24,25は、それぞれ平面視円形に形成されており、第2ボルト挿通孔26は、平面視長孔に形成されている。
図2(B)では第2固定部23の表面が表れているとすると、第2固定部23の裏面も表面と同じ構造であり、ボルト14を表面および裏面のどちらからも挿通できるように構成されている。
また、第2部材20は、第2係止部22をブレーキペダル4のレバー部4bに係止したときに、第2固定部23の第2ボルト挿通孔24~26のいずれかに挿通されたボルト14の先端14g(
図3(C))が、車両2の右側面を向くように構成されている。これにより、ボルト14に後述するロックナット30を螺合する作業を、運転席5の右側から行い易い。
【0036】
車両2の車種により、ステアリングホイール3とブレーキペダル4との距離が異なる場合があるが、第2ボルト挿通孔24~26のいずれかを選択することにより、車両盗難防止装置1の全長を調節することができるため、車両盗難防止装置1を装着することができる。例えば、ステアリングホイール3とブレーキペダル4との距離が相対的に短い軽自動車に装着するときは、第2ボルト挿通孔24を選択し、普通自動車に装着するときは、第2ボルト挿通孔25を選択し、ステアリングホイール3とブレーキペダル4との距離が相対的に長い大型乗用車、大型トラック、ブルドーザ、クレーン、ショベルカー、特殊建設機械などに装着するときは、第2ボルト挿通孔26を選択することにより、車両盗難防止装置1を装着可能となる。第2ボルト挿通孔26の長径の長さは、ボルト14を挿通し、そのボルト14にロックナット30を螺合したときに、仮に、ボルト14が第2ボルト挿通孔26の一端26aに挿通され、その位置でボルト14にロックナット30が螺合されているときに、ロックナット30が緩み、ボルト14が第2ボルト挿通孔26の他端26bに移動してしまった場合であっても、第1部材10の第1係止部12がステアリングホイールに係止された状態が解除されたり、第2部材20の第2係止部22がブレーキペダル4のレバー部4bに係止された状態が解除されたりしない長さに設定されている。
【0037】
第2ボルト挿通孔24~26の数は、2個でも良いし、4個以上でも良い。また、第2ボルト挿通孔26を他の第2ボルト挿通孔24,25と同様に平面視円形に形成することもできる。本実施形態では、第2部材20は、JIS規格でSUS304と称されるステンレス鋼により形成されている。また、第2部材20は、SUS430と称されるステンレス鋼により形成することもできる。
【0038】
(ロックナットの構造)
図5に示すように、ロックナット30は、ロックナット本体30aと、円環状部材(回転カラーともいう)34と、座金(固定板ともいう)38とを備えている。
図5(E)に示すように、ロックナット本体30aは、底面36と、上面35と、テーパ面33と、装着部31(
図5(A))と、基部37と、ロックナット側ボルト挿通孔32と、を備えている。底面36は円形に形成されており、その反対側には、円形の周縁35aを有する上面35が形成されている。上面35の外径は底面36の外径よりも小さい。底面36の円形の周縁36aと上面35の円形の周縁35aとの間にはテーパ面33が連続形成されている。換言すると、底面36と、上面35と、テーパ面33とにより、円錐台形状を形成している。また、テーパ面33には、工具の先端を係止可能な凹凸および角部が一切形成されていない。
従って、レンチのような工具によってテーパ面33を挾持してロックナット30を回転させようとしても、工具とテーパ面33との接触面積が小さく工具が滑るため、ロックナット30を回転させて緩めることが困難である。
さらに、テーパ面33には、工具の先端を係止可能な凹凸および角部が一切形成されていないため、工具の先端を凹凸または角部に係止してロックナット30を緩めるという手法を封じることができる。
【0039】
底面36からは基部37が突出形成されている。基部37は、略円筒形状に形成されている。基部37の底面37bは円形に形成されており、底面37bの中央から、ロックナット本体30aの上面35との間には、ボルト14を挿入するためのロックナット側ボルト挿通孔32が貫通形成されている(
図5(B))。
装着部31は、後述する専用工具40の凸部42(
図6)を装着するための部分であり、上面35から底面36に向けて窪んで形成されている。装着部31の底部には、上面35と相対向する底面31aが形成されている。底面31aには、ロックナット側ボルト挿通孔32が開口形成されている。
【0040】
ロックナット側ボルト挿通孔32は、第1部材10の第1固定部13に挿通固定されたボルト14を第2部材20の第2固定部23およびタングプレート7の係合孔7bに挿通し、そのボルト14にロックナット30を螺合したときに、ボルト14の先端14g(
図3(C))がロックナット本体30aの上面35を超える高さに突出するように形成されている。
従って、マイナスやプラスのドライバーなど、専用工具以外の工具を装着部31に挿入しようとしても、上面35から突出したボルト14が邪魔になるため、ロックナット30を緩めることは困難である。
【0041】
上面35を平面視した場合に、装着部31の内壁31bの形状は、いわゆるヘクサロビュラ穴の形状に形成されている。
従って、タガネやポンチなどの先端を装着部31に挿入してロックナット30を回転させようとしても、その先端が内壁31bで滑ってしまうので、ロックナット30を回転させることが困難である。
つまり、装着部31の内壁31bの形状に合致した凸部42を有する専用工具40(
図6)を用いなければロックナット30を緩めることができない。
【0042】
円環状部材34は、ロックナット本体30aの基部37の周面に回転可能に装着されている。円環状部材34の外径は、ロックナット本体30aの底面36の外径よりも僅かに大きい。このため、
図5(B)に示すように、円環状部材34をロックナット本体30aの基部37に装着すると、円環状部材34の外周面34aがロックナット本体30aの底面36の周縁36aから僅かに突出した状態になる。これにより、工具により底面36の周縁36aを挟もうとしても、円環状部材34が邪魔になるため、挟むことができない。
【0043】
座金38は、平ワッシャ(平座金)である。
図5(E)に示すように、ロックナット本体30aの基部37の外周面37aと底面37bとの間には、段部37cが形成されている。段部37cは、基部37と同軸上に形成されており、略円筒形状に形成されている。座金38の内径は、段部37cの底面37bの外径よりも僅かに小さく、段部37cに圧入され、段部37cに固定されている。このように、座金38は、ロックナット本体30aの基部37の一部を形成する段部37cに装着固定され、円環状部材34の基部37からの抜け止めを図るものである。円環状部材34とロックナット本体30aの底面36との間、さらに、円環状部材34と座金38との間には、それぞれ隙間が形成されており、円環状部材34が基部37の周囲で空回りするようになっている。また、座金38の外径は、円環状部材34の外径よりも小さい。これにより、工具により、円環状部材34を越えて座金38を挾持し、座金38を利用してロックナット30を回すことができないようになっている。
ロックナット30の材質は、使用箇所に応じて、鉄、ステンレス、アルミニウム、チタン、真鍮、銅などから選択することができる。さらに、ロックナット30の表面は、使用箇所に応じて、三価クロメートめっき、亜鉛ニッケル合金めっき、ジオメット、カチオン電着塗装などから選択して処理することができる。
第1固定部13、ボルト14、第2固定部23、第2ボルト挿通孔24~26およびロックナット30は、本発明のロック機構の一例である。
【0044】
(タングプレートの構造)
タングプレートは、シートベルトを座席の横に設けられたバックルに係止するための金具である。
図4(C)に示すように、タングプレート7は、金属製の本体7aと、この本体7aに貫通形成された長方形の係合孔7bとを有する。係合孔7bは、ボルト14を挿通可能な大きさに形成されている。本体7aは、運転者がシートベルト6(
図1)を装着するときに把持するための把持部7cに固定されており、把持部7cには、シートベルト6(
図1)が挿通される挿通孔7dが貫通形成されている。
図4(C)ではシートベルト6の図示を省略している。
【0045】
(専用工具の構造)
図6に示すように、専用工具40は、胴部41と、凸部42と、六角部43と、一対の翼45a,45aとを備えている。胴部41は円柱形状に形成されている。凸部42は、胴部41の一端41aから突出形成されており、ロックナット30の装着部31(
図5(A))に合致した形状に形成されている。つまり、
図6(B)に示すように、凸部42は、ヘクサロビュラの穴形状の装着部31に嵌合する形状に形成されている。六角部43は、胴部41の他端41bから突出形成されており、六角ナットの形状に形成されている。胴部41には、ボルト14の先端14g(
図3(C))が挿入される挿入口44が形成されている。
【0046】
また、蝶ボルト45が六角部43の端部から胴部41の挿入口44に挿入されており、蝶ボルト45の一対の翼45a,45aが六角部43の端部から突出した状態になっている。蝶ボルト45は、六角部43の端部から胴部41の挿入口44に圧入されており、さらに、座面45bが、六角部43の端部に接着剤によって接着されている。これにより、作業者は指で蝶型の各翼45a,45aを摘まんで専用工具40を回すことができる。つまり、専用工具40をロックナット30に装着し、ロックナット30を手締めすることができる。また、胴部41の周面には、キーホルダ(図示せず)に装着された数珠型チェーン46の数珠46aを没入されるための取付孔41cが形成されている。取付孔41cに数珠型チェーン46を取付けることにより、専用工具40をキーホルダに装着することができるため、専用工具40を紛失し難いようにすることができる。また、数珠型でなくても良く、紐状体の先端に球状体を有するものを用い、その球状体を取付孔41cに没入させても良い。
なお、ボックスレンチ、ソケットレンチおよびスパナなどの工具によって六角部43を挾持することにより、専用工具40を回すこともできるが、各翼45a,45aを指で回すだけでも、十分は締付トルクを発生するため、手締めでも十分なロック固定効果を出すことができる。
【0047】
[車両盗難防止装置の取付方法]
次に、車両盗難防止装置1の取付方法について図を参照しつつ説明する。
先ず、第1部材10および第2部材20が分離された状態の車両盗難防止装置1と、専用工具40とを用意する。そして、
図1に示すように、第1部材10の第1係止部12をステアリングホイール3の下端に係止する。続いて、第2部材20の第2係止部22をブレーキペダル4のレバー部4bに係止する。続いて、
図7(A)に示すように、第1部材10に固定されたボルト14を第2部材20の第2ボルト挿通孔24~26のうち、ボルト14を挿通可能なものを選択し、その選択した第2ボルト挿通孔にボルト14を挿通する。第2ボルト挿通孔の選択は、第1係止部12がステアリングホイール3に係止されており、かつ、第2係止部22がブレーキペダル4のレバー部4bに係止された状態で行う。
【0048】
続いて、
図7(B)に示すように、シートベルト6に取付けられたタングプレート7の係合孔7bにボルト14を挿通する。続いて、係合孔7bから突出したボルト14にロックナット30を指で螺合し、指で螺合できなくなったときに専用工具40によってロックナット30を締付け、ロック固定する。
これにより、ステアリングホイール3と、ブレーキペダル4と、シートベルト6とが車両盗難防止装置1によってロック固定され、ステアリングホイール3およびブレーキペダル4が操作不能な状態になる。つまり、車両2を盗難困難な状態になる。
【0049】
[実施形態の効果]
(1)上述した実施形態に係る車両盗難防止装置1によれば、第1係止部12がステアリングホイール3に係止された第1部材10の他端と、第2係止部22がブレーキペダル4のレバー部4bに係止された第2部材20の他端と、運転席5に設けられたシートベルト6のタングプレート7とをロック固定することができる。
従って、上述した実施形態に係る車両盗難防止装置1によれば、盗難防止効果を高くすることができる。
【0050】
(2)しかも、前述した実施形態に係る車両盗難防止装置1によれば、ボルト14が、重ね合わせられた第2ボルト挿通孔24~26および係合孔7bに挿通され、その挿通されたボルト14にロックナット30が螺合される構造である。
従って、前述した実施形態に係る車両盗難防止装置1によれば、盗難防止効果をより一層高くすることができる。また、第1部材10、第2部材20およびタングプレート7を1箇所でロック固定することができるため、ロック作業効率を高めることができる。
【0051】
(3)さらに、前述した実施形態に係る車両盗難防止装置1によれば、第2ボルト挿通孔24~26が第2部材20の長手方向に沿って複数形成されているため、ブレーキペダル4とステアリングホイール3との距離に応じて第2ボルト挿通孔24~26を選択することができる。
従って、前述した実施形態に係る車両盗難防止装置1によれば、ブレーキペダル4およびステアリングホイール3の係止状態が解除されることがない第2ボルト挿通孔24~26を選択することができるため、車種に応じて盗難防止効果が低下するおそれがない。
【0052】
(4)さらに、前述した実施形態に係る車両盗難防止装置1によれば、第2ボルト挿通孔26が第2部材の長手方向に沿った長径を有する長孔であるため、ブレーキペダル4とステアリングホイール3との距離に応じて、第2ボルト挿通孔26内においてボルト14を挿通する位置を選択することができるため、車種に応じて盗難防止効果が低下するおそれがない。
【0053】
(5)さらに、前述した実施形態に係る車両盗難防止装置1によれば、ボルト14は、第1部材10の第1ボルト挿通孔15に挿通されており、かつ、固着されているため、ボルト14を別部材とする構成と比較すると、ボルト14を第1ボルト挿通孔15に挿通する工程を省略することができるので、ロック作業効率をより一層高めることができる。
。
【0054】
(6)さらに、前述した実施形態に係る車両盗難防止装置1によれば、工具でロックナット30のテーパ面33を挟んでも、工具とテーパ面33との接触面積が小さいため、工具が滑り易いので、ロックナット30を回転させることは困難である。
しかも、テーパ面33には、凹凸および角部が一切形成されていないため、工具の先端を凹凸または角部に係止してロックナット30を緩めるという手法を封じることができる。
【0055】
(7)さらに、前述した実施形態に係る車両盗難防止装置1によれば、ロックナット本体30aの基部37の外周面には、基部37の底面36の外径以上の外径を有する円環状部材34が回転可能に装着されているため、工具で底面36の周縁36aを挟もうとしても、円環状部材34が邪魔になるので、工具で周縁36aを挟むことができない。また、工具で円環状部材34を挟んで回転させても、円環状部材34が基部37の周りを空回りするだけであり、基部37は回転しない。
従って、前述した実施形態に係る車両盗難防止装置1によれば、盗難防止効果をより一層高くすることができる。
【0056】
(8)さらに、前述した実施形態に係る車両盗難防止装置1によれば、ロックナット30の上面35を平面視した場合に、装着部31の内壁31bの形状が、ヘクサロビュラ穴の形状であるため、タガネやポンチなどの先端によって装着部31の内壁31bを叩くことによりロックナット30を回転させようとしても、その先端が内壁31bで滑ってしまうので、ロックナット30を回転させることが困難である。
つまり、一般的な工具によってはロックナット30を緩めることは困難である。
【0057】
(9)さらに、前述した実施形態に係る車両盗難防止装置1によれば、ロックナット30をボルト14に螺合したときに、ボルト14の先端14gが上面35から突出するため、マイナスやプラスのドライバーなど、専用工具40以外の工具を装着部31に挿入しようとしても、上面35から突出したボルト14が邪魔になるので、ロックナット30を緩めることが困難である。
従って、前述した実施形態に係る車両盗難防止装置1によれば、盗難防止効果をより一層高くすることができる。
【0058】
(10)さらに、前述した実施形態に係る車両盗難防止装置1によれば、ロックナット30の装着部31の内壁31bの形状は、いわゆるヘクサロビュラ穴の形状に形成されているため、ロックナット30をボルト14に螺合するときに、ロックナット30を回す力が小さくてもロックナット30に大きな締付トルクを発生させることができる。
従って、翼45aを指で摘まんで専用工具40を回す手締めでもロックナット30を大きな締付トルクでボルト14に螺合することができるため、大型の工具が不要であるので、便利であり、かつ、専用工具40の収納スペースを小さくすることができる。
【0059】
〈他の実施形態〉
(1)ボルト14を第1固定部13の第1ボルト挿通孔15に挿通固定しないで別部材とする構成でも良い。この構成を採用した場合でも、第1係止部12がステアリングホイール3に係止されており、かつ、第2係止部22がブレーキペダル4のレバー部4bに係止された状態において、所定の順序で重ね合わせられた第1ボルト挿通孔15と、第2ボルト挿通孔24~26のいずれかと、係合孔7bとにボルト14を挿通し、その挿通したボルト14にロックナット30を螺合することができる。
従って、上記構成の車両盗難防止装置によれば、盗難防止効果をより一層高くすることができる。また、第1部材10、第2部材20およびタングプレート7を1箇所でロック固定することができるため、ロック作業効率を高めることができる。
【0060】
(2)上述した他の実施形態(1)の構成において、第1ボルト挿通孔15および第2ボルト挿通孔24~26の少なくとも一方を、部材の長手方向に沿って複数形成することもできる。この構成を採用すれば、ブレーキペダル4とステアリングホイール3との距離に応じて第1ボルト挿通孔15および第2ボルト挿通孔24~26の少なくとも一方を選択することができる。
従って、上記構成の車両盗難防止装置によれば、ブレーキペダル4およびステアリングホイール3の係止状態が解除されることがないように、第1ボルト挿通孔15および第2ボルト挿通孔24~26の少なくとも一方を選択することができるため、車種に応じて盗難防止効果が低下するおそれがない。
【0061】
(3)前述した他の実施形態(1)または(2)の構成において、第1ボルト挿通孔15および第2ボルト挿通孔24~26の少なくとも一方を、部材の長手方向に沿った長径を有する長孔に形成することもできる。この構成を採用すれば、ブレーキペダル4とステアリングホイール3との距離に応じて、第1ボルト挿通孔15および第2ボルト挿通孔24~26の少なくとも一方の内部においてボルト14を挿通する位置を選択することができるため、車種に応じて盗難防止効果が低下するおそれがない。
【0062】
(4)前述した他の実施形態(1)ないし(3)のいずれかの構成において、ボルト14が、第1ボルト挿通孔15または第2ボルト挿通孔24~26に挿通されており、かつ、その挿通された部分に固着されている構造にすることもできる。この構造を採用すれば、ボルト14を別部材とする構成と比較すると、ボルト14を第1ボルト挿通孔15または第2ボルト挿通孔24~26に挿通する工程を省略することができるので、ロック作業効率をより一層高めることができる
【0063】
(5)ボルト14を第1固定部13に固着しないで別部材とする場合は、第1固定部13、第2固定部23およびタングプレート7を重ねる順序は任意に決めることができる。
(6)第1部材の10の第1棒状部11の他端をL字状に屈曲形成し、その屈曲した部分の周面に雄ねじを形成し、その屈曲した部分をボルト14として用いることもできる。
(7)第1棒状部11および第2棒状部21の少なくとも一方を板状に形成することもできる。
(8)第2係止部22をパーキングペダルまたはアクセルペダルに係止しても良い。
(9)第1固定部13に固定されたボルト14をタングプレート7の係合孔7bに挿通してから、ボルト14を第2固定部23の第2ボルト挿通孔24~26に挿通しても良い。
【0064】
(10)ロックナット30に代えて、南京錠を用い、南京錠に設けられたフックを第1ボルト挿通孔15、第2ボルト挿通孔24~26およびタングプレート7の係合孔7bに挿通して南京錠本体にロックすることもできる。また、南京錠は、鍵によってフックを開閉するタイプのものでも良いし、それぞれ複数の番号が表示された複数のダイヤルを回し、各ダイヤルの番号が所定位置にて暗唱番号と一致したときに解錠するタイプのものでも良い。
(11)両端が円環状に形成されたワイヤーを第1ボルト挿通孔15、第2ボルト挿通孔24~26およびタングプレート7の係合孔7bに挿通し、両端の円環状部分に南京錠のフックを挿通して南京錠本体にロックすることもできる。また、ワイヤーに代えて金属製のチェーンを用いることもできる。南京錠として、前述した他の実施形態(10)に記載の各タイプのものを用いることができる。
【0065】
(12)第1部材10の全長および第2棒状部21の全長は、任意の長さに設定することができる。例えば、第1部材10の全長および第2部材20の全長を略同じにすることもできる。この構成を採用すれば、第1部材10および第2部材20を分離したときの全長を最短にすることができるため、車両盗難防止装置1の収納スペースを小さくすることができる。例えば、車両盗難防止装置1を運転席、助手席、後部座席などの下、あるいは、トランクの工具入れスペースなどに収納しておくことができる。
【0066】
(13)第1棒状部11および第2棒状部21の一方または両方に代えて、金属製のチェーンを用い、一方のチェーンの一端に第1係止部12を取付け、他端に第1固定部13を取付け、さらに、他方のチェーンの一端に第2係止部22を取付け、他端に第2固定部23を取付けることもできる。
(14)ボルト14に代えて、先端に南京錠のフックを係止する係止孔が形成された金属製のピン形状の部材を用いることもできる。
(15)ロックナット30の装着部31に蓋を着脱可能に嵌合することもできる。この構成を採用すれば、装着部31を視認できないため、盗難防止効果をより一層高めることができる。
【0067】
(16)専用工具40は、金属用接着剤などの接着剤によって蝶ボルト45の座面45bを接着するだけでも、十分な接着力を得ることができる場合は、蝶ボルト45を挿入口44に圧入しないで挿入するだけでも良い。
(17)専用工具40の作成に使用する蝶ボルト45のボルト部分の先端と、ロックナット30をボルト14に螺合するときに、挿入口44に挿入したボルト14の先端14gとが干渉する場合は、蝶ボルト45のボルト部分を切断して短くしてから胴部41の挿入口44に挿入することもできる。
(18)蝶ボルト45に代えて蝶ナットを使用し、その蝶ナットの座面を六角部43の端部に接着剤によって接着することもできる。
(19)指で蝶ボルト45の翼45aを回したときに発生する締付トルクと同程度またはそれ以上の締付トルクを発生させることができれば、他の部材を用いることもできる。例えば、頭部が円環状になったアイボルト、頭部が羽子板状になった羽子板ボルトなどでも良い。
(20)第1棒状部11の他端を円環状に屈曲形成し、その円環状の部分にボルト14を挿通するように構成することもできる。この構成を採用すれば、第1棒状部11の他端に第1固定部13を溶接して取付ける必要が無いため、車両盗難防止装置1の製造コストを低減することができる。
【符号の説明】
【0068】
1・・車両盗難防止装置
2・・車両
3・・ステアリングホイール
4・・ブレーキペダル
5・・運転席
6・・シートベルト
7・・タングプレート
10・・第1部材
11・・第1棒状部
12・・第1係止部
13・・第1固定部
14・・ボルト
20・・第2部材
21・・第2棒状部
22・・第2係止部
23・・第2固定部
24~26・・第2ボルト挿通孔
30・・ロックナット
40・・専用工具