(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-31
(45)【発行日】2023-11-09
(54)【発明の名称】風呂給湯装置
(51)【国際特許分類】
F24H 15/196 20220101AFI20231101BHJP
F24H 15/246 20220101ALI20231101BHJP
F24H 15/265 20220101ALI20231101BHJP
F24H 15/281 20220101ALI20231101BHJP
F24H 15/395 20220101ALI20231101BHJP
【FI】
F24H15/196 301X
F24H15/196 301P
F24H15/196 301W
F24H15/246
F24H15/265
F24H15/281
F24H15/395
(21)【出願番号】P 2020218106
(22)【出願日】2020-12-28
【審査請求日】2023-05-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000000538
【氏名又は名称】株式会社コロナ
(72)【発明者】
【氏名】諸橋 徳子
(72)【発明者】
【氏名】阿部 基
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-135222(JP,A)
【文献】特開2018-071859(JP,A)
【文献】特開2013-170784(JP,A)
【文献】特開平08-047066(JP,A)
【文献】特開2013-238964(JP,A)
【文献】特開2001-133040(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 15/196
F24H 15/246
F24H 15/265
F24H 15/281
F24H 15/395
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽の水位を検出する水位センサと、
浴室内における人の動きを検出する人感センサと、
浴室外に浴室内の情報を報知することができる浴室外リモコンと、
浴室内に情報を報知する浴室内リモコンと、
前記浴室内リモコンと前記浴室外リモコンに通信可能に接続された制御装置とを備え、
前記浴室内リモコンと前記浴室外リモコンのいずれか一方または両方には、
ユーザの指示に基づいて前記浴槽に湯はり運転し、湯はり運転完了後温度を維持するよう所定の保温時間が経過するまで自動で保温運転する風呂自動運転スイッチと、
特定の操作を行えないようにする制限スイッチと、が備えられ、
前記制御装置には、前記人感センサの検出結果に基づいて、人が浴室に入室したか否かを判定する入室判定手段とを設けた風呂給湯装置において、
前記風呂自動運転スイッチがOFFで、かつ、前記制限スイッチがON、かつ、前記水位センサで検出した水位が所定水位以上である場合、前記入室判定手段で人の入室を判定したとき、前記浴室外リモコンから報知するようにしたことを特徴とする風呂給湯装置。
【請求項2】
前記風呂給湯装置には、前記浴槽の排水栓を開閉可能な自動排水栓を設け、
前記制御装置は、前記報知開始からの経過時間をカウントし、
前記経過時間が所定時間に達すると、前記自動排水栓を開にして、浴槽水を排水するようにしたことを特徴とする請求項1記載の風呂給湯装置。
【請求項3】
前記リモコンには、前記制御装置のカウントを終了させることができる確認スイッチを設けたことを特徴とする請求項2記載の風呂給湯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室への人の入室を検出する人感センサを備えた風呂給湯装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、浴槽転落事故防止装置において、風呂の水位を検出する水位センサと、水位を監視し、予め定めた基準の水量に相当する水位上昇があったとき幼児の浴槽転落事故が発生したと判定する判定手段とを設けて、水位により幼児の転落事故を防止するものが知られていた(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のような、浴槽転落事故防止装置では予め定めた水位の上昇を監視しているため、浴槽に転落した後でないと判定ができないものであり、浴槽転落事故を防止する方法としてはまだ課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題を解決するため、浴槽の水位を検出する水位センサと、浴室内における人の動きを検出する人感センサと、浴室外に浴室内の情報を報知することができる浴室外リモコンと、浴室内に情報を報知する浴室内リモコンと、前記浴室内リモコンと前記浴室外リモコンに通信可能に接続された制御装置とを備え、前記浴室内リモコンと前記浴室外リモコンのいずれか一方または両方には、ユーザの指示に基づいて前記浴槽に湯はり運転し、湯はり運転完了後温度を維持するよう所定の保温時間が経過するまで自動で保温運転する風呂自動運転スイッチと、特定の操作を行えないようにする制限スイッチと、が備えられ、前記制御装置には、前記人感センサの検出結果に基づいて、人が浴室に入室したか否かを判定する入室判定手段とを設けた風呂給湯装置において、前記風呂自動運転スイッチがOFFで、かつ、前記制限スイッチがON、かつ、前記水位センサで検出した水位が所定水位以上である場合、前記入室判定手段で人の入室を判定したとき、前記浴室外リモコンから報知するようにした。
【0006】
また、前記風呂給湯装置には、前記浴槽の排水栓を開閉可能な自動排水栓を設け、前記制御装置は、前記報知開始からの経過時間をカウントし、前記経過時間が所定時間に達すると、前記自動排水栓を開にして、浴槽水を排水するようにした。
【0007】
前記リモコンには、前記制御装置のカウントを終了させることができる確認スイッチを設けた。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、制限スイッチON、かつ、風呂自動運転スイッチOFF、水位センサの検出水位が所定水位以上である場合、人感センサの検出で浴室に人が入室したとき、意図しない幼児の侵入の可能性が高く、確実に浴室内リモコン及び浴室外リモコンで報知することで、危険を回避することができると共に、幼児の侵入の可能性が低く、保護者が入浴等で浴室に入ってきたと判断する場合には報知を行わないので、無意味な報知を減らすことで、煩わしい報知で不快と感じさせるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
1は温水を貯湯する貯湯タンク、2は温水を加熱する加熱手段としてのヒートポンプユニット、3は浴槽である。
【0011】
4は貯湯タンク1とヒートポンプユニット2を循環可能に接続する加熱循環回路で、加熱循環ポンプ5を有し貯湯タンク1の下部に接続されたヒーポン往き管及び貯湯タンク1上部に接続されたヒーポン戻り管より構成され、貯湯タンク1下部の冷水を、ヒーポン往き管を介してヒートポンプユニット2で加熱し、加熱された高温の温水をヒーポン戻り管で貯湯タンク1上部に戻して貯湯タンク1内に温水を加熱貯湯するものである。なお、貯湯タンク1の外周面には貯湯温度センサ6を有しており、この貯湯温度センサ6が所定温度以上を検出することで貯湯量を検知するものである。
【0012】
7は貯湯タンク1に水を供給する給水管、8は貯湯タンク1内の温水を出湯する出湯管、9は給水管7から分岐し、貯湯タンク1を迂回する給水バイパス管、10は給水バイパス管9からの冷水と出湯管8からの温水を設定温度になるように混合する給湯混合弁、11は混合された設定温度の温水を給湯する給湯管、12は給湯管11の端部に設けられる給湯栓である。13は給湯混合弁10の下流に設けた給湯温度センサ、14は給湯量をカウントする給湯流量センサである。なお、15は水道圧を所定の圧力に減圧する減圧弁、16は加熱されることによる過圧を逃がす圧力逃し弁である。
【0013】
17は風呂循環回路で、貯湯タンク1内の湯水と循環する風呂の湯水とを熱交換させる風呂熱交換器18と浴槽3とを、浴槽3から風呂熱交換器18に向かう風呂往き管17a及び風呂熱交換器18から浴槽3に向かう風呂戻り管17bとで循環可能に接続するものである。そして、19は浴槽3と風呂循環回路17を接続する循環口である。
【0014】
20は風呂循環回路17に設けられた風呂循環ポンプ、21は流水の有無を検出する流水センサ、22は風呂循環回路17を流れる風呂の温度を検出する風呂温度センサ、23は湯水の水圧から浴槽3内の水位を検出する水位センサであり、風呂循環回路17途中の風呂循環ポンプ20よりも上流側に設けられている。この水位センサ23は、湯水の水圧から浴槽3内の水位を検出しているので、循環口19が露出してしまうと水位検出が行えないため、水位を検出するためには循環口19よりも水位が上である必要がある。
【0015】
24は給湯管11途中から分岐されて風呂循環回路17に接続され浴槽3への湯張りを行うための湯張り管、25はこの湯張り管24に設けられ浴槽3への湯張りの開始、停止を行う湯張り弁、26は浴槽3への湯張り量をカウントする風呂流量センサである。
【0016】
27はヒートポンプユニット2の加熱制御を行う加熱制御部、28は給湯および風呂の制御を行う制御装置で、貯湯温度センサ6、給湯温度センサ13、給湯流量センサ14、流水センサ21、風呂温度センサ22、水位センサ23、風呂流量センサ26、の検出値が入力され、加熱循環ポンプ5、給湯混合弁10、風呂循環ポンプ20、湯張り弁25を駆動するものである。
【0017】
29は制御装置28と通信可能で、浴室内に設けられた浴室内リモコンであり、設定内容を表示する表示部30と、スピーカー等の音を発生させる音発生部31と、浴室内における人の体動の有無を検出すると共に、浴室への入室と浴室からの退室を検出する人感センサ32とが設けられている。
【0018】
人感センサ32は、検出エリア内の熱源の温度変化量を検出する焦電センサであり、浴室に人がいて、動きがあることを検出する。具体的には、人感センサ32は、人が移動したときや手足などを動かすことによる検出エリアの温度変化を検出することにより、浴室内に人がおり、人の体動の有無を検出するものであり、人感センサ32の検出結果に基づいて、制御装置28に設けられた入室判定手段33で浴室内への入室と浴室外への退室との判定を行う。
【0019】
また、人感センサ32の検出エリアを詳しく説明すると、少なくとも人の入退出及び人が浴室内にいるか否かが検出できるような範囲を検出できる人感センサ32であることが望ましい。
【0020】
34は制御装置28と通信可能で、浴室外に設けられた浴室外リモコンであり、浴室内リモコン29と同様に表示部30、音発生部31を有していて、浴室内の情報を浴室外に報知することができる。
【0021】
さらに、制御装置28には、風呂自動運転時の動作を制御する自動運転制御手段35と、浴室内で入浴者に異常が発生した時に表示部30および音発生部31を用いて浴室内で異常が発生した旨の報知を開始させる報知開始手段36が備えられている。
【0022】
また、浴室内リモコン29及び浴室外リモコン34には、ユーザの指示に基づいて浴槽に湯はり運転し、湯はり運転完了後温度を維持するよう所定の保温時間が経過するまで自動で保温運転する風呂自動運転スイッチ37と、チャイルドロック機能により一部のボタン操作を制限する制限スイッチ38と(ここでは、具体的に制限するボタン操作は、給湯設定温度や風呂設定温度や湯張り設定量の変更、湯張り運転や自動保温運転や沸き上げ運転の実行など)、報知開始手段36で開始された報知動作を停止させる確認スイッチ39を有している。また、確認スイッチ39を個別に設けずとも浴室外リモコン34のその他のスイッチと兼用しても良い。
【0023】
浴槽3には、制御装置28の指示で開閉可能な自動排水栓40を備え、報知開始手段36で報知が開始されたあとの経過時間が所定時間(ここでは3分)に達しても確認スイッチ39が押されない場合、自動排水栓を開にして、浴槽の水を強制的に排水する。
【0024】
次に、沸き上げ運転について説明する。
沸き上げ要求があると、制御装置28は、貯湯タンク1とヒートポンプユニット2を繋ぐ配管の途中にある加熱循環ポンプ5を駆動して、貯湯タンク1内下部から水をくみ上げ、ヒートポンプユニット2で温めて貯湯タンク1上部に戻す動作を続ける事により徐々に貯湯タンク1内の水が高温水へと沸き上げる。
【0025】
次に、給湯動作ついて説明する。
給湯栓12が開かれると給水管7から給水され、貯湯タンク1下部に流入すると共に給水バイパス管9を通り、貯湯タンク1上部から押し出された高温水と給水バイパス管9の給水が給湯混合弁10で混ぜ合わされ、給湯設定温度と給湯温度センサ13で検出された温度が同じなるように調整された湯水が給湯栓12から給湯される。
【0026】
また、湯張り動作について説明する。
浴室内リモコン29および浴室外リモコン34の湯張りスイッチが押されると制御装置28は湯張り弁25を開弁し、給水管7から給水を供給し、貯湯タンク1下部に流入すると共に給水バイパス管9を通り、貯湯タンク1上部から押し出された高温水と給水バイパス管9の給水が給湯混合弁10で混ぜ合わされ、風呂設定温度と風呂温度センサ22で検出された温度が同じになるように調整された湯水が浴槽3に流入されることで湯張りが開始される。そして、風呂流量センサ26で流れた流量を検出して、流れた流量の合計積算値が湯張り設定量分流れたら制御装置28が湯張り弁25を閉状態にすることで湯張りを完了する。また、風呂循環回路17には往き管と戻り管の2本の経路があるが、2本の配管から同時に給湯して湯張り運転を行う高速湯張り運転を行うこともできる。
【0027】
そして、自動運転制御手段35は、湯張り運転完了後から浴室内リモコン29および浴室外リモコン34で予め設定された浴槽の湯を一定温度に沸き上げる自動保温運転の設定時間(ここでは約3時間)の間、繰り返し行う。
【0028】
次に、幼児の安全みまもりと報知について
図2のフローチャートに基づいて詳しく説明する。
幼児の安全みまもりは、制限スイッチ38がONされているかを確認し(S1)、制限スイッチ38がONされている場合はチャイルドロックをしていると判断する(S1がYes)。
【0029】
次に、風呂自動運転スイッチ37がOFFであるかを確認し(S2)、風呂自動運転スイッチ37がOFFである場合は入浴のための入室ではないと判断する(S2がYes)。
【0030】
次に、制御装置28は水位センサ23の検出水位が所定水位以上(ここでは10cm以上)であるかを確認し(S3)、検出水位が所定水位以上の場合は幼児が浴槽に転落したとき注意が必要な水位であると判断する(S3がYes)。
【0031】
そして、制限スイッチ38がONであり(S1がYes)、風呂自動運転スイッチ37がOFFであり(S2がYes)、水位センサ23の検出水位が所定水位以上である場合(S3がYes)、人感センサ32で浴室への人の入室を監視し(S4)、入室判定手段33で浴室への入室が判定されると(S4がYes)、報知開始手段36は、浴室内リモコン29及び浴室外リモコン34の表示部30および音発生部31を用いて、浴室内で異常が発生した旨を報知させる(S5)
【0032】
このように、幼児のみまもり機能の条件に制限スイッチ38がONを含むことで、家庭に幼児がおり、ユーザがチャイルドロック機能により一部のボタン操作を制限して、幼児が安全に過ごせる意図があると判断することができる。
【0033】
また、幼児のみまもり機能の条件に風呂自動運転スイッチがOFFを含むことで、浴室内への人の入室が入浴のための入室なのか、意図しない入室なのかを判断する材料となり、保護者が入浴のために入室したとしても報知してしまうのを煩わしいと思うことを防止できると共に、入浴が終わっているにも関わらず、意図しない幼児の浴室への侵入を判断することができる。
【0034】
また、幼児のみまもり機能の条件に水位センサの検出水位が所定水位以上であることを含むことで、浴槽の水が所定水位以上あり、幼児が過って転落したとき、溺れてしまうという危険な状態に至る可能性があることを判断することができる。
【0035】
したがって、制限スイッチ38ON、かつ、風呂自動運転スイッチ37OFF、水位センサ23の検出水位が所定水位以上である場合、人感センサ32の検出で浴室に人が入室したとき、意図しない幼児の侵入の可能性が高く、確実に浴室内リモコン29及び浴室外リモコン34で報知することで、危険を回避することができると共に、幼児の侵入の可能性が低く、保護者が入浴等で浴室に入ってきた場合には報知を行わないので、煩わしい報知を行わないので、無意味な報知を減らすことで不快と感じさせるのを防止することができる。
【0036】
次に、報知動作開始後について
図2のフローチャートに基づいて説明する。
報知動作が開始されると(S5)、タイマーカウントを開始し(S6)、浴室内リモコン29及び浴室外リモコン34の確認スイッチ39が押されるかを確認する(S7)。
【0037】
確認スイッチ39が押されないまま(S7がYes)、タイマーカウントが所定時間に達したら(S8がYes)制御装置28は浴槽3の自動排水栓40を開き(S9)、浴槽水の強制排水を実行する。
【0038】
また、確認スイッチ39が押された場合(S7がNo)、タイマーカウントを停止する(S10)。
【0039】
このように、報知動作開始後にタイマーカウントを開始し、所定時間経過しても浴室内リモコン29及び浴室外リモコン34の確認スイッチ39を押されていない場合は、一刻を争う可能性があるため、自動排水栓40を開にすることで浴槽水を全て排水し、幼児が溺れてしまうのを確実に防止することができる。
【0040】
なお、本発明は本実施形態に限定されるものではなく、要旨を変更しない範囲で改変する事を妨げるものではなく、例えば、今回はヒートポンプ式貯湯給湯機を用いて説明したが、貯湯タンク1内にヒーターを設けたものやバーナなどの熱源で湯水を加熱する給湯機でもよいものである。
【0041】
また、実施形態では、自動排水栓40で浴槽3の水を全て強制排水しているが、すべてではなく幼児が溺れない程度の水位である所定水位までの水位になるように排水しても良い。
【0042】
また、実施形態では、制限スイッチ38や確認スイッチ39のようにスイッチを押すことで操作しているが、単一のスイッチ操作に限られず、長押しや複数のスイッチの同時押しなどによる特殊な操作により設定を変更することができるものでも良い。
【0043】
また、実施形態では、浴室内リモコン29と浴室外リモコン34の両方で報知しているが少なくとも浴室外リモコン34から行ってもいいものである。
【符号の説明】
【0044】
1 貯湯タンク
3 浴槽
17 風呂循環回路
18 風呂熱交換器
19 循環口
20 風呂循環ポンプ
28 制御装置
29 浴室内リモコン
32 人感センサ
33 入室判定手段
34 浴室外リモコン
36 報知開始手段
37 風呂自動運転スイッチ
38 制限スイッチ
39 確認スイッチ
40 自動排水栓