(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-31
(45)【発行日】2023-11-09
(54)【発明の名称】リンカーとして非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物を含むタンパク質結合体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 65/333 20060101AFI20231101BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20231101BHJP
C07K 14/435 20060101ALI20231101BHJP
C07K 1/113 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
C08G65/333
C07K16/00
C07K14/435
C07K1/113
(21)【出願番号】P 2020517342
(86)(22)【出願日】2018-10-01
(86)【国際出願番号】 KR2018011626
(87)【国際公開番号】W WO2019066609
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】10-2017-0127790
(32)【優先日】2017-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515022445
【氏名又は名称】ハンミ ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100154988
【氏名又は名称】小林 真知
(72)【発明者】
【氏名】パク ス ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ソン ジ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム ウン ジョン
(72)【発明者】
【氏名】リー ジョン ミン
(72)【発明者】
【氏名】リー ジョン ス
(72)【発明者】
【氏名】キム デ ジン
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-501144(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G65
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式(1)で表される非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物、その立体異性体又はその薬学的に許容される塩。
【化1】
(前記化学式(1)において、
L
1~L
3はそれぞれ独立して直鎖又は分枝鎖C
1-6アルキレンであり、
R
1及びR
2はそれぞれアルデヒドであり、
m1~m3はそれぞれ独立して1~2400の自然数であり、
nは1~40の自然数である。)
【請求項2】
生理活性ポリペプチド及び生体適合性物質が、リンカーである、下記化学式(2)で表される非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物に共有結合により連結され
、
前記生体適合性物質が、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol, PEG)、コレステロール、アルブミン及びそのフラグメント、アルブミン結合物質、特定アミノ酸配列の繰り返し単位の重合体、抗体、抗体フラグメント、FcRn結合物質、生体内結合組織又はその誘導体、ヌクレオチド、フィブロネクチン、トランスフェリン(Transferrin)、サッカライド(saccharide)、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される、タンパク質結合体。
【化2】
(前記化学式(2)において、
L
1~L
3はそれぞれ独立して直鎖又は分枝鎖C
1-6アルキレンであり、
Non-Pepは非ペプチド性重合体であり、前記非ペプチド性重合体は、重合単位1~2400個のポリエチレングリコールであり、
m1及びm2はそれぞれ独立して1~2400の自然数であり、
nは1~40の自然数である。)
【請求項3】
前記非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物は、脂肪酸骨格に直接又はリンカーを介して連結された少なくとも2つの反応基を有し、前記反応基を介して生理活性ポリペプチド及び生体適合性物質にそれぞれ連結されたものである、請求項2に記載のタンパク質結合体。
【請求項4】
前記リンカーは、C
1-3アルキルアミノ鎖又は(C
1-3アルコキシ)
n(C
1-3アルキルアミノ)鎖(ここで、nは1~3の整数)を含む、請求項3に記載のタンパク質結合体。
【請求項5】
前記生体適合性物質を基準に生理活性ポリペプチドと非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物の連結体が少なくとも1つ連結されている、請求項2~4のいずれか一項に記載のタンパク質結合体。
【請求項6】
前記生理活性ポリペプチドは、ホルモン、サイトカイン、インターロイキン、インターロイキン結合タンパク質、酵素、抗体、成長因子、転写調節因子、血液因子、ワクチン、構造タンパク質、リガンドタンパク質、受容体、細胞表面抗原又は受容体拮抗物質である、請求項2~5のいずれか一項に記載のタンパク質結合体。
【請求項7】
前記生理活性ポリペプチドは、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)、グルカゴン様ペプチド-2(GLP-2)、グルカゴン、GIP(Gastric inhibitory polypeptide)、オキシントモジュリン、キセニン(Xenin)、インスリン、CCK(Cholecystokinin)、アミリン(amylin)、ガストリン(gastrin)、グレリン(ghrelin)、PYY(peptide YY)などのように胃や腸で血糖と体重を調節するインクレチン類(incretins)、レプチン(Leptin)、アディポネクチン(adiponectin)、アディポリン(adipolin)、アペリン(apelin)、カルトネクチン(cartonectin)のように脂肪質(adipose)から分泌されるアディポカイン類(adipokines)、キスペプチン(Kisspeptin)、ネスファチン-1(Nesfatin-1)のように脳から分泌されるニューロペプチド類(neuropeptides)、イリシン(Irisin)、マイオネクチン(myonectin)、デコリン(decorin)、フォリスタチン(follistatin)、マスクリン(musclin)のように筋肉(muscle)から分泌されるペプチド又はタンパク質類、血管作動性腸管ペプチド(Vasoactive intestinal peptide)、ナトリウム利尿ペプチド類(natriuretic peptides)、好中球増加因子(G-CSF)、ヒト成長ホルモン(hGH)、エリスロポエチン(EPO)、成長ホルモン放出ホルモン、成長ホルモン放出ペプチド、インターフェロン、インターフェロン受容体、Gタンパク質共役受容体(G protein-coupled receptor)、インターロイキン類、インターロイキン受容体、酵素類、インターロイキン結合タンパク質、サイトカイン結合タンパク質、マクロファージ活性化因子、マクロファージペプチド、B細胞因子、T細胞因子、タンパク質A、アレルギー抑制因子、細胞壊死糖タンパク質、免疫毒素、リンホトキシン、腫瘍壊死因子、腫瘍抑制因子、転移成長因子、α1-アンチトリプシン、アルブミン、α-ラクトアルブミン、アポリポタンパク質E、高グリコシル化エリスロポエチン、アンジオポエチン類、ヘモグロビン、トロンビン、トロンビン受容体活性化ペプチド、トロンボモジュリン、血液因子VII、VIIa、VIII、IX及びXIII、プラスミノーゲン活性化因子、フィブリン結合ペプチド、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、ヒルジン、タンパク質C、C反応性タンパク質、レニンインヒビター、コラゲナーゼインヒビター、スーパーオキシドディスムターゼ、血小板由来成長因子、上皮細胞成長因子、表皮細胞成長因子、アンジオスタチン、アンジオテンシン、骨形成成長因子、骨形成促進タンパク質、カルシトニン、アトリオペプチン、軟骨誘導因子、エルカトニン、結合組織活性化因子、組織因子経路インヒビター、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、黄体形成ホルモン放出ホルモン、神経成長因子、副甲状腺ホルモン、リラキシン、セクレチン、ソマトメジン、インスリン様成長因子、副腎皮質ホルモン、コレシストキニン、膵臓ポリペプチド、ガストリン放出ペプチド、コルチコトロピン放出因子、甲状腺刺激ホルモン、オートタキシン、ラクトフェリン、ミオスタチン、細胞表面抗原、ウイルス由来ワクチン抗原、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体並びに抗体フラグメントからなる群から選択される、請求項2~6のいずれか一項に記載のタンパク質結合体。
【請求項8】
前記生理活性ポリペプチドは、少なくとも2つの受容体を同時に活性化することを特徴とする、請求項2~7のいずれか一項に記載のタンパク質結合体。
【請求項9】
前記FcRn結合物質は、免疫グロブリンFc領域を含むポリペプチドである、請求項
2~8のいずれか一項に記載のタンパク質結合体。
【請求項10】
前記免疫グロブリンFc領域は、非グリコシル化されている、請求項
9に記載のタンパク質結合体。
【請求項11】
前記免疫グロブリンFc領域は、ヒンジ(hinge)領域をさらに含む、請求項
9又は
10に記載のタンパク質結合体。
【請求項12】
前記免疫グロブリンFc領域は、IgG、IgA、IgD、IgE、IgM、それらの組み合わせ(combination)及びそれらのハイブリッド(hybrid)からなる群から選択される、請求項
9~
11のいずれか一項に記載のタンパク質結合体。
【請求項13】
前記免疫グロブリンFc領域は、IgG4 Fcフラグメントである、請求項
9~
12のいずれか一項に記載のタンパク質結合体。
【請求項14】
(a)少なくとも2つの反応基を有する、下記化学式(3)で表される非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物を介して生理活性ペプチドと生体適合性物質を連結するステップと、
(b)前記(a)ステップの反応生成物であるタンパク質結合体を分離するステップとを含
み、
前記生体適合性物質が、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol, PEG)、コレステロール、アルブミン及びそのフラグメント、アルブミン結合物質、特定アミノ酸配列の繰り返し単位の重合体、抗体、抗体フラグメント、FcRn結合物質、生体内結合組織又はその誘導体、ヌクレオチド、フィブロネクチン、トランスフェリン(Transferrin)、サッカライド(saccharide)、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される、タンパク質結合体を製造する方法。
【化3】
(前記化学式(3)において、
L
1~L
3はそれぞれ独立して直鎖又は分枝鎖C
1-6アルキレンであり、
R
1及びR
2はそれぞれアルデヒドであり、
Non-Pepは非ペプチド性重合体であり、前記非ペプチド性重合体は、重合単位1~2400個のポリエチレングリコールであり、
m1
及びm2はそれぞれ独立して1~2400の自然数であり、
nは1~40の自然数である。)
【請求項15】
前記(a)ステップは、
(a1)非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物の1つの反応基に生体適合性物質と生理活性ポリペプチドのいずれか一方を連結するステップと、
(a2)前記(a1)ステップの反応混合物から非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物に生体適合性物質と生理活性ポリペプチドのいずれか一方が連結された連結体を分離するステップと、
(a3)前記(a2)ステップで分離した連結体の非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物の他の反応基に生体適合性物質と生理活性ポリペプチドの他方を連結し、非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物の少なくとも2つの反応基がそれぞれ生理活性ポリペプチド及び生体適合性物質に連結されたタンパク質結合体を生成するステップとを含む、請求項
14に記載のタンパク質結合体を製造する方法。
【請求項16】
前記(a1)ステップ及び前記(a3)ステップは、還元剤の存在下で行われるものである、請求項
15に記載のタンパク質結合体を製造する方法。
【請求項17】
前記還元剤は、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaCNBH
3)、水素化ホウ素ナトリウム、ジメチルアミンホウ酸塩、ピコリンボランコンプレックス又はピリジンホウ酸塩(borane pyridine)である、請求項
16に記載のタンパク質結合体を製造する方法。
【請求項18】
前記(a1)ステップにおいて、生理活性ポリペプチドと非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物の反応モル比は1:1~1:20であり、生体適合性物質と非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物の反応モル比は1:1~1:20である、請求項
15~
17のいずれか一項に記載のタンパク質結合体を製造する方法。
【請求項19】
前記(a3)ステップにおいて、(a2)ステップで分離した連結体と生体適合性物質又は生理活性ポリペプチドの反応モル比は1:0.5~1:20である、請求項
15~
18のいずれか一項に記載のタンパク質結合体を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理活性ポリペプチドと生体適合性物質が非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物を介して連結されて生理活性持続期間が天然のものに比べて延長されたタンパク質結合体及びそれを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、生理活性ポリペプチドは、安定性が低いため変性しやすく、血液内のプロテアーゼにより分解されて腎臓や肝臓で容易に除去される。よって、薬理成分として生理活性ポリペプチドを含むタンパク質医薬品の血中濃度及び力価を維持するためには、タンパク質薬物を患者に頻繁に投与する必要がある。しかし、主に注射剤の形態で患者に投与されるタンパク質医薬品において、活性ポリペプチドの血中濃度を維持するために頻繁に注射することは患者に多大な苦痛をもたらす。このような問題を解決するために、タンパク質薬物の血中安定性を向上させ、血中薬物濃度を高い濃度に長期間持続して薬効を最大化するための多くの努力がなされてきた。このようなタンパク質薬物の持続性製剤は、タンパク質薬物の安定性を向上させるものであると共に、患者に免疫反応を誘発しないものでなければならない。
【0003】
タンパク質を安定化させてプロテアーゼとの接触及び腎臓での除去を抑制する方法として、従来はポリエチレングリコール(polyethylene glycol,以下「PEG」)のように溶解度が高い高分子をタンパク質薬物の表面に化学的に付加させるタンパク質のペグ化(Pegylation)が用いられてきた。PEGは、標的タンパク質の特定部位又は各種部位に非特異的に結合して溶解度を向上させることによりタンパク質を安定化させ、タンパク質の加水分解を防止する効果があり、特に副作用もないことが知られている(非特許文献1)。
【0004】
遊離脂肪酸は、ヒト血清アルブミン(human serum albumin; HAS)に結合力のあることが知られている(非特許文献2)。これらの特徴により、脂肪酸を治療的薬物(例えば、タンパク質、ペプチド、siRNA)に結合させて人体に投与すると、脂肪酸との親和力を有する血中のアルブミンに非共有結合により結合する。このように形成されたアルブミン・薬物結合体は、タンパク質の加水分解や細胞膜吸収率を低下させ、血中半減期を延長させることが知られている。既にFDAとEMAにより承認されている、脂肪酸誘導体に結合された治療的薬物としては、Levemir(insulin detemir, Novo Nordisk)とVictoza(liraglutide[rDNA origin]injection, Novo Nordisk)が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第97/034631号
【文献】国際公開第96/032478号
【文献】米国特許第8129343号明細書
【文献】国際公開第2015/067715号
【文献】国際公開第2015/055801号
【文献】国際公開第2013/041678号
【文献】国際公開第2014/133324号
【文献】国際公開第2014/009316号
【文献】国際公開第2015/052088号
【非特許文献】
【0006】
【文献】Sada et al., J. Fermentation Bioengineering, 71: pp 137-139, 1991
【文献】Curry S. et al., Biochim, Biophys. Acta, 1441: 131-140, 1999
【文献】H.Neurath, R.L.Hill, The Proteins, Academic Press, New York, 1979
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物、その立体異性体又はその薬学的に許容される塩を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、生理活性ポリペプチド及び生体適合性物質がリンカーである非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物に共有結合により連結されたタンパク質結合体を提供することを目的とする。
【0009】
さらに、本発明は、前記タンパク質結合体を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、化学式(1)で表される非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物、その立体異性体又はその薬学的に許容される塩である。
【0011】
【0012】
化学式(1)において、L1~L3はそれぞれ独立して直鎖又は分枝鎖C1-6アルキレンであり、R1及びR2はそれぞれ独立して2,5-ジオキソピロリジニル、2,5-ジオキソピロリル、アルデヒド、マレイミド、C6-20アリールジスルフィド、C5-20ヘテロアリールジスルフィド、ビニルスルホン、チオール、ハロアセトアミド、スクシンイミド、p-ニトロフェニルカーボネート、C7-10アルキニル、オルトピリジルジスルフィド(orthopyridyl disulfide; OPSS)、ハロゲン及びそれらの誘導体からなる群から選択され、m1~m3はそれぞれ独立して1~2400の自然数であり、nは1~40の自然数である。
【0013】
一具体例として、本発明によるタンパク質結合体に含まれる非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物の反応基に相当するR1及びR2は、それぞれ独立してマレイミド、N-ヒドロスクシンイミド、スクシンイミド、C1-4アルキレンアルデヒド、オルトピリジルジスルフィド(Orthopyridyl disulfide; OPSS)、ヨードアセトアミド(iodoacetamide; IA)、前記ヨードに代えて臭素、フッ素、塩素又はアスタチンを含むハロアセトアミド、ジフルオロシクロオクチン(difluorocyclooctyne; DIFO)、ジベンゾシクロオクチン(dibenzocyclooctyne; DIBO)、ジベンゾ-アザ-シクロオクチン(Dsibenzo-aza-cyclooctyne; DIBAC又はDBCO)、ビアリールアザシクロオクチノン(biarylazacyclooctynones; BARAC)、テトラメチルチアシクロヘプチン(tetramethylthiacycloheptyne; TMTH)、ビシクロノニン(bicyclononyne; BCN)ソンドハイマージイン(Sondheimer diyne)、シクロオクチン(cyclooctyne; OCT)、モノフッ素化シクロオクチン(monofluorinated cyclooctyne; MOFO)、ジメトキシアザシクロオクチン(dimethoxyazacyclooctyne; DIMAC)、2,3,6,7-テトラメトキシ-ジベンゾシクロオクチン(2, 3, 6, 7-tetramethoxy-DIBO, TMDIBO)、スルホン化ジベンゾシクロオクチン(sulfonylated DIBO; S-DIBO)、カルボキシメチルモノベンゾシクロオクチン(carboxymethylmonobenzocyclooctyne; COMBO)、ピロロシクロオクチン(pyrrolocyclooctyne; PYRROC)又はアルキン(alkyne)であることを特徴とする。
【0014】
本発明の他の態様は、生理活性ポリペプチド及び生体適合性物質が、リンカーである、化学式(2)で表される非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物に共有結合により連結されたタンパク質結合体である。
【0015】
【0016】
化学式(2)において、L1~L3はそれぞれ独立して直鎖又は分枝鎖C1-6アルキレンであり、Non-Pepは非ペプチド性重合体であり、m1及びm2はそれぞれ独立して1~2400の自然数であり、nは1~40の自然数である。
【0017】
一具体例として、本発明によるタンパク質結合体における前記非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物は、脂肪酸骨格に直接又はリンカーを介して連結された2つの反応基を有し、前記反応基を介して生理活性ポリペプチド及び生体適合性物質にそれぞれ連結されたことを特徴とする。具体的には、前記非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物は、生理活性ポリペプチドと生体適合性物質を連結するリンカーとして作用する。
【0018】
他の具体例として、本発明によるタンパク質結合体に含まれる非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物は、脂肪酸骨格に直接又はリンカーを介して連結された少なくとも2つの反応基を有し、前記反応基を介して生理活性ポリペプチド及び生体適合性物質にそれぞれ連結されたことを特徴とする。
【0019】
さらに他の具体例として、本発明によるタンパク質結合体に含まれる非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物のリンカーは、C1-3アルキルアミノ、(C1-3アルコキシ)n(C1-3アルキルアミノ)鎖を含むことを特徴とする。
【0020】
さらに他の具体例として、本発明によるタンパク質結合体に含まれる非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物の非ペプチド性重合体は、ポリエチレングリコール単独重合体、ポリプロピレングリコール単独重合体、エチレングリコール-プロピレングリコール共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、ポリサッカライド、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、生分解性高分子、脂質重合体、脂肪酸、キチン、ヒアルロン酸及びそれらの組み合わせであることを特徴とする。
【0021】
さらに他の具体例として、本発明によるタンパク質結合体に含まれる非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物の非ペプチド性重合体は、重合単位1~2400個のポリエチレングリコールであることを特徴とする。
【0022】
さらに他の具体例として、本発明によるタンパク質結合体に含まれる生体適合性物質には、単位生体適合性物質を基準に生理活性ポリペプチドと非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物の連結体が少なくとも1つ連結されていることを特徴とする。
【0023】
さらに他の具体例として、本発明によるタンパク質結合体に含まれる生理活性ポリペプチドは、ホルモン、サイトカイン、インターロイキン、インターロイキン結合タンパク質、酵素、抗体、成長因子、転写調節因子、血液因子、ワクチン、構造タンパク質、リガンドタンパク質もしくは受容体、細胞表面抗原又は受容体拮抗物質であることを特徴とする。
【0024】
さらに他の具体例として、本発明によるタンパク質結合体に含まれる生理活性ポリペプチドは、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)、グルカゴン様ペプチド-2(GLP-2)、グルカゴン、GIP(Gastric inhibitory polypeptide)、オキシントモジュリン、キセニン(Xenin)、インスリン、CCK(Cholecystokinin)、アミリン(amylin)、ガストリン(gastrin)、グレリン(ghrelin)、PYY(peptide YY)などのように胃や腸で血糖と体重を調節するインクレチン類(incretins)、レプチン(Leptin)、アディポネクチン(adiponectin)、アディポリン(adipolin)、アペリン(apelin)、カルトネクチン(cartonectin)のように脂肪質(adipose)から分泌されるアディポカイン類(adipokines)、キスペプチン(Kisspeptin)、ネスファチン-1(Nesfatin-1)のように脳から分泌されるニューロペプチド類(neuropeptides)、イリシン(Irisin)、マイオネクチン(myonectin)、デコリン(decorin)、フォリスタチン(follistatin)、マスクリン(musclin)のように筋肉(muscle)から分泌されるペプチド又はタンパク質類、血管作動性腸管ペプチド(Vasoactive intestinal peptide)、ナトリウム利尿ペプチド類(natriuretic peptides)、好中球増加因子(G-CSF)、ヒト成長ホルモン(hGH)、エリスロポエチン(EPO)、成長ホルモン放出ホルモン、成長ホルモン放出ペプチド、インターフェロン、インターフェロン受容体、Gタンパク質共役受容体(G protein-coupled receptor)、インターロイキン類、インターロイキン受容体、酵素類、インターロイキン結合タンパク質、サイトカイン結合タンパク質、マクロファージ活性化因子、マクロファージペプチド、B細胞因子、T細胞因子、タンパク質A、アレルギー抑制因子、細胞壊死糖タンパク質、免疫毒素、リンホトキシン、腫瘍壊死因子、腫瘍抑制因子、転移成長因子、α1-アンチトリプシン、アルブミン、α-ラクトアルブミン、アポリポタンパク質E、高グリコシル化エリスロポエチン、アンジオポエチン類、ヘモグロビン、トロンビン、トロンビン受容体活性化ペプチド、トロンボモジュリン、血液因子VII、VIIa、VIII、IX及びXIII、プラスミノーゲン活性化因子、フィブリン結合ペプチド、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、ヒルジン、タンパク質C、C反応性タンパク質、レニンインヒビター、コラゲナーゼインヒビター、スーパーオキシドディスムターゼ、血小板由来成長因子、上皮細胞成長因子、表皮細胞成長因子、アンジオスタチン、アンジオテンシン、骨形成成長因子、骨形成促進タンパク質、カルシトニン、アトリオペプチン、軟骨誘導因子、エルカトニン、結合組織活性化因子、組織因子経路インヒビター、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、黄体形成ホルモン放出ホルモン、神経成長因子、副甲状腺ホルモン、リラキシン、セクレチン、ソマトメジン、インスリン様成長因子、副腎皮質ホルモン、コレシストキニン、膵臓ポリペプチド、ガストリン放出ペプチド、コルチコトロピン放出因子、甲状腺刺激ホルモン、オートタキシン、ラクトフェリン、ミオスタチン、細胞表面抗原、ウイルス由来ワクチン抗原、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体並びに抗体フラグメントからなる群から選択されることを特徴とする。
【0025】
さらに他の具体例として、本発明による生理活性ポリペプチドは、少なくとも2つの受容体を同時に活性化することを特徴とする。
【0026】
さらに他の具体例として、本発明による生理活性ポリペプチドは、天然に存在するものでない、天然生理活性ポリペプチドの誘導体から選択されることを特徴とする。生理活性ポリペプチドの誘導体とは、アミノ酸の置換、挿入、欠失、糖鎖付加、糖鎖欠失、非天然アミノ酸挿入、リング挿入、メチル残基のような化学的修飾などにより固有の受容体に対する結合力が変化したものや、物理化学的な性質、すなわち水溶性向上、免疫原性低下のように性質が変異したものを意味し、互いに異なる2つ以上の受容体に結合力を有するように操作された人工のペプチド類も含まれる。
【0027】
さらに他の具体例として、本発明によるタンパク質結合体に含まれる生体適合性物質は、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol, PEG)、コレステロール、アルブミン及びそのフラグメント、アルブミン結合物質、特定アミノ酸配列の繰り返し単位の重合体、抗体、抗体フラグメント、FcRn結合物質、生体内結合組織又はその誘導体、ヌクレオチド、フィブロネクチン、トランスフェリン(Transferrin)、サッカライド(saccharide)、高分子重合体並びにそれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする。
【0028】
さらに他の具体例として、本発明によるタンパク質結合体に含まれる前記FcRn結合物質は、免疫グロブリンFc領域を含むポリペプチドであることを特徴とする。
【0029】
さらに他の具体例として、本発明によるタンパク質結合体に含まれる免疫グロブリンFc領域は、非グリコシル化されていることを特徴とする。
【0030】
さらに他の具体例として、本発明によるタンパク質結合体に含まれる免疫グロブリンFc領域は、ヒンジ(hinge)領域をさらに含むことを特徴とする。
【0031】
さらに他の具体例として、本発明によるタンパク質結合体に含まれる免疫グロブリンFc領域は、IgG、IgA、IgD、IgE、IgM、それらの組み合わせ(combination)及びそれらのハイブリッド(hybrid)からなる群から選択されることを特徴とする。
【0032】
さらに他の具体例として、本発明によるタンパク質結合体に含まれる免疫グロブリンFc領域は、IgG4 Fcフラグメントであることを特徴とする。
【0033】
本発明のさらに他の態様は、(a)少なくとも2つの反応基を有する、化学式(3)で表される非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物を介して生理活性ペプチドと生体適合性物質を連結するステップと、(b)前記(a)ステップの反応生成物であるタンパク質結合体を分離するステップとを含む、タンパク質結合体を製造する方法である。
【0034】
【0035】
化学式(3)において、L1、L2、L3、R1、R2、Non-Pep、m1~m3及びnは前記定義の通りである。
【0036】
一具体例として、本発明による製造方法において、前記(a)ステップは、(a1)非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物の1つの反応基に生体適合性物質と生理活性ポリペプチドのいずれか一方を連結するステップと、(a2)前記(a1)ステップの反応混合物から非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物に生体適合性物質と生理活性ポリペプチドのいずれか一方が連結された連結体を分離するステップと、(a3)前記(a2)ステップで分離した連結体の非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物の他の反応基に生体適合性物質と生理活性ポリペプチドの他方を連結し、非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物の少なくとも2つの反応基がそれぞれ生理活性ポリペプチド及び生体適合性物質に連結されたタンパク質結合体を生成するステップとを含むことを特徴とする。
【0037】
他の具体例として、本発明による製造方法において、前記(a1)ステップ及び前記(a3)ステップは、還元剤の存在下で行われることを特徴とする。
【0038】
さらに他の具体例として、本発明による製造方法における前記還元剤は、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaCNBH3)、水素化ホウ素ナトリウム、ジメチルアミンホウ酸塩、ピコリンボランコンプレックス又はピリジンホウ酸塩(borane pyridine)であることを特徴とする。
【0039】
さらに他の具体例として、本発明による製造方法の前記(a1)ステップにおいて、生理活性ポリペプチドと脂肪酸誘導体の反応モル比は1:1~1:20であり、生体適合性物質と脂肪酸誘導体の反応モル比は1:1~1:20であることを特徴とする。
【0040】
さらに他の具体例として、本発明による製造方法の前記(a3)ステップにおいて、(a2)ステップで分離した連結体と生体適合性物質又は生理活性ポリペプチドの反応モル比は1:0.5~1:20であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0041】
本発明の非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物は、これをリンカーとして含み、一末端に生理活性ポリペプチド、リンカーとしての非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物、及び生体適合性物質が順に共有結合により連結されたタンパク質結合体の形態で投与すると、生理活性ポリペプチドの血中半減期を延長させることが確認されたので、タンパク質薬物分野において広く用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】本発明による免疫グロブリンFc-脂肪酸誘導体-インスリン結合体の合成を確認するためのSDS-PAGE分析結果を示す図である。
【
図2】本発明の一実施例で作製された免疫グロブリンFc-脂肪酸誘導体-インスリン結合体の化学的構造式を示す図である。
【
図3】本発明による免疫グロブリンFc-脂肪酸誘導体-インスリン結合体の薬物動態分析結果を示す図である。比較のために、免疫グロブリンFc-脂肪酸誘導体-インスリン結合体投与群において測定した投与後各時間における血中濃度を、ヒトインスリン投与群及び免疫グロブリンFc-PEG-インスリン結合体投与群の結果と共に示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明の一態様は、化学式(1)で表される非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物、その立体異性体又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0044】
【0045】
化学式(1)において、L1~L3はそれぞれ独立して直鎖又は分枝鎖C1-6アルキレンであり、R1及びR2はそれぞれ独立して2,5-ジオキソピロリジニル、2,5-ジオキソピロリル、アルデヒド、マレイミド、C6-20アリールジスルフィド、C5-20ヘテロアリールジスルフィド、ビニルスルホン、チオール、ハロアセトアミド、スクシンイミド、p-ニトロフェニルカーボネート、C7-10アルキニル、オルトピリジルジスルフィド(orthopyridyl disulfide; OPSS)、ハロゲン及びそれらの誘導体からなる群から選択され、m1~m3はそれぞれ独立して1~2400の自然数であり、nは1~40の自然数である。
【0046】
例えば、R1及びR2は、それぞれ独立して2,5-ジオキソピロリジニル、2,5-ジオキソピロリル、アルデヒド、マレイミド、アリールジスルフィド、ヘテロアリールジスルフィド、ハロアセトアミド又はC7-10アルキニルであってもよい。具体的には、前記反応基は、マレイミド、N-ヒドロスクシンイミド、スクシンイミド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、オルトピリジルジスルフィド(Orthopyridyl disulfide; OPSS)、ヨードアセトアミド、前記ヨードに代えて臭素、フッ素、塩素又はアスタチンを含むハロアセトアミド、ジフルオロシクロオクチン(difluorocyclooctyne; DIFO)、ジベンゾシクロオクチン(dibenzocyclooctyne; DIBO)、ジベンゾ-アザ-シクロオクチン(Dsibenzo-aza-cyclooctyne; DIBAC又はDBCO)、ビアリールアザシクロオクチノン(biarylazacyclooctynones; BARAC)、テトラメチルチアシクロヘプチン(tetramethylthiacycloheptyne; TMTH)、ビシクロノニン(bicyclononyne; BCN)ソンドハイマージイン(Sondheimer diyne)、シクロオクチン(cyclooctyne; OCT)、モノフッ素化シクロオクチン(monofluorinated cyclooctyne; MOFO)、ジメトキシアザシクロオクチン(dimethoxyazacyclooctyne; DIMAC)、2,3,6,7-テトラメトキシ-ジベンゾシクロオクチン(2, 3, 6, 7-tetramethoxy-DIBO, TMDIBO)、スルホン化ジベンゾシクロオクチン(sulfonylated DIBO; S-DIBO)、カルボキシメチルモノベンゾシクロオクチン(carboxymethylmonobenzocyclooctyne; COMBO)、ピロロシクロオクチン(pyrrolocyclooctyne; PYRROC)又はアルキン(alkyne)であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0047】
例えば、前記m1~m3は、それぞれ独立して1~2400の自然数であってもよく、具体的にはm1及びm2は、それぞれ独立して1~20の自然数、1~10の自然数、又は1~5の自然数であってもよいが、これらに限定されるものではなく、m3は、20~500の自然数であってもよく、10~500の自然数、10~100の自然数、又は100~500の自然数であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0048】
例えば、前記nは、1~40の自然数であってもよく、具体的には4~30の自然数であってもよく、より具体的には10~25の自然数であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0049】
本発明の他の態様は、一末端に生理活性ポリペプチド、リンカーとしての、化学式(2)で表される非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物、及び生体適合性物質が順に共有結合により連結されたタンパク質結合体を提供する。
【0050】
【0051】
化学式(2)において、L1~L3はそれぞれ独立して直鎖又は分枝鎖C1-6アルキレンであり、Non-Pepは非ペプチド性重合体であり、m1及びm2はそれぞれ独立して1~2400の自然数であり、nは1~40の自然数である。
【0052】
特に、本発明のタンパク質結合体は、前記生理活性ポリペプチド及び生体適合性物質がリンカーである非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物の両末端に位置する少なくとも2つの反応基を介してそれぞれ共有結合により連結されたものであってもよい。
【0053】
本発明における「生理活性ポリペプチド」とは、前記結合体の一部(moiety)をなす一構成であり、生体内で何らかの生理作用を有するポリペプチドを総称する概念であり、ポリペプチド構造を有するという共通点を有し、様々な生理活性を有する。前記生理活性ポリペプチドには、遺伝表現と生理機能を調整することにより、生体内における機能調節に関与する物質の欠乏や過度な分泌により正常でない病態を示す場合にそれを正常にする役割を果たすものが含まれ、一般的なタンパク質治療剤も含まれる。また、前記生理活性ポリペプチドは、天然ポリペプチドだけでなく、その誘導体も全て含む概念である。
【0054】
本発明の結合体において、生理活性ポリペプチドは、本発明の結合体構造により血中半減期延長を示す生理活性ポリペプチドであれば、特にその種類やサイズが限定されるものではない。
【0055】
本発明の生理活性ポリペプチドは、ホルモン、サイトカイン、インターロイキン、インターロイキン結合タンパク質、酵素、抗体、成長因子、転写調節因子、血液因子、ワクチン、構造タンパク質、リガンドタンパク質又は受容体、細胞表面抗原、受容体拮抗物質であることを特徴とする。
【0056】
他の具体例として、本発明によるタンパク質結合体に含まれる生理活性ポリペプチドは、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)、グルカゴン様ペプチド-2(GLP-2)、グルカゴン、GIP、オキシントモジュリン、キセニン、インスリン、CCK、アミリン、ガストリン、グレリン、PYYなどのように胃や腸で血糖と体重を調節するインクレチン類、レプチン、アディポネクチン、アディポリン、アペリン、カルトネクチンのように脂肪質から分泌されるアディポカイン類、キスペプチン、ネスファチン-1のように脳から分泌されるニューロペプチド類、イリシン、マイオネクチン、デコリン、フォリスタチン, マスクリンのように筋肉から分泌されるペプチド又はタンパク質類、血管作動性腸管ペプチド、ナトリウム利尿ペプチド類、好中球増加因子(G-CSF)、ヒト成長ホルモン(hGH)、エリスロポエチン(EPO)、成長ホルモン放出ホルモン、成長ホルモン放出ペプチド、インターフェロン、インターフェロン受容体、Gタンパク質共役受容体、インターロイキン類、インターロイキン受容体、酵素類、インターロイキン結合タンパク質、サイトカイン結合タンパク質、マクロファージ活性化因子、マクロファージペプチド、B細胞因子、T細胞因子、タンパク質A、アレルギー抑制因子、細胞壊死糖タンパク質、免疫毒素、リンホトキシン、腫瘍壊死因子、腫瘍抑制因子、転移成長因子、α1-アンチトリプシン、アルブミン、α-ラクトアルブミン、アポリポタンパク質E、高グリコシル化エリスロポエチン、アンジオポエチン類、ヘモグロビン、トロンビン、トロンビン受容体活性化ペプチド、トロンボモジュリン、血液因子VII、VIIa、VIII、IX及びXIII、プラスミノーゲン活性化因子、フィブリン結合ペプチド、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、ヒルジン、タンパク質C、C反応性タンパク質、レニンインヒビター、コラゲナーゼインヒビター、スーパーオキシドディスムターゼ、血小板由来成長因子、上皮細胞成長因子、表皮細胞成長因子、アンジオスタチン、アンジオテンシン、骨形成成長因子、骨形成促進タンパク質、カルシトニン、アトリオペプチン、軟骨誘導因子、エルカトニン、結合組織活性化因子、組織因子経路インヒビター、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、黄体形成ホルモン放出ホルモン、神経成長因子、副甲状腺ホルモン、リラキシン、セクレチン、ソマトメジン、インスリン様成長因子、副腎皮質ホルモン、コレシストキニン、膵臓ポリペプチド、ガストリン放出ペプチド、コルチコトロピン放出因子、甲状腺刺激ホルモン、オートタキシン、ラクトフェリン、ミオスタチン、細胞表面抗原、ウイルス由来ワクチン抗原、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体並びに抗体フラグメントからなる群から選択されることを特徴とする。
【0057】
さらに他の具体例として、本発明による生理活性ポリペプチドは、天然に存在するものでない、天然生理活性ポリペプチドの誘導体から選択されることを特徴とする。生理活性ポリペプチドの誘導体とは、アミノ酸の置換、挿入、欠失、糖鎖付加、糖鎖欠失、非天然アミノ酸挿入、リング挿入、メチル残基のような化学的修飾などにより固有の受容体に対する結合力が変化したものや、物理化学的な性質、すなわち水溶性向上、免疫原性低下のように性質が変異したものを意味し、互いに異なる2つ以上の受容体に結合力を有するように操作された人工のペプチド類も含まれる。
【0058】
本発明における「生理活性ポリペプチド」、「生理活性タンパク質」、「活性タンパク質」又は「タンパク質薬物」とは、生体内で生理的現象に拮抗作用を示すポリペプチド又はタンパク質を意味するものであり、相互交換的に用いられてもよい。
【0059】
本発明における「生体適合性物質」とは、前記結合体の一部(moiety)をなす一構成であり、生理活性ポリペプチドに結合されて生体内半減期を延長させる物質を意味する。本発明における「生体適合性物質」は、生体内半減期を延長させる物質であるので「キャリア」ともいい、相互交換的に用いられてもよい。前記生体適合性物質又はキャリアは、生理活性ポリペプチドに結合されてその半減期を延長させることができる物質が全て含まれるものであり、例えばポリエチレングリコール(polyethylene glycol, PEG)、コレステロール、アルブミン及びそのフラグメント、アルブミン結合物質、特定アミノ酸配列の繰り返し単位の重合体、抗体、抗体フラグメント、FcRn結合物質、生体内結合組織又はその誘導体、ヌクレオチド、フィブロネクチン、トランスフェリン(Transferrin)、サッカライド(saccharide)、高分子重合体並びにそれらの組み合わせからなる群から選択されるものであってもよいが、これらに限定されるものではない。前記FcRn結合物質は、免疫グロブリンFc領域を含むポリペプチドであってもよく、例えばIgG Fcであってもよい。前記生体適合性物質又はキャリアは、脂肪酸誘導体を介して生理活性ポリペプチドに結合されてもよい。
【0060】
ポリエチレングリコールをキャリアとして用いる場合、位置特異的にポリエチレングリコールを付着することができるAmbrx社のRecode技術が用いられてもよく、糖鎖部位に特異的に付着することができるNeose社のグリコペグ化(glycopegylation)技術が用いられてもよい。また、生体内でポリエチレングリコールが徐々に除去されるreleasable PEG技術が用いられてもよいが、これに限定されるものではなく、PEGを用いて生体内利用率を向上させる技術が用いられてもよい。さらに、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール-プロピレングリコール共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、ポリサッカライド、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、生分解性高分子、脂質重合体、キチン類、ヒアルロン酸などの高分子重合体が前記技術により本発明の結合体に結合されてもよい。
【0061】
本発明において、アルブミンをキャリアとして用いる場合、本発明のタンパク質結合体は、アルブミン又はアルブミンフラグメントが非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物に直接共有結合された結合体であってもよく、アルブミンを直接結合しなくてもアルブミンに結合する物質、例えばアルブミン特異的結合抗体又は抗体フラグメントを非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物に結合させてアルブミンに結合した結合体であってもよい。また、アルブミンに結合力を有する特定ペプチド/タンパク質/化合物などを非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物に結合することにより形成されるタンパク質結合体であってもよく、アルブミンに結合力を有する脂肪酸自体が結合されたタンパク質結合体であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0062】
本発明において、抗体又は抗体フラグメントをキャリアとして用いることができ、それはFcRn結合部位を有する抗体又は抗体フラグメントであってもよく、FabなどのFcRn結合部位を含まない抗体フラグメントであってもよいが、これらに限定されるものではない。具体的には、本発明において、免疫グロブリンFc領域をキャリアとして用いることができる。
【0063】
免疫グロブリンFc領域は、生体内で代謝される生分解性のポリペプチドであるので、薬物のキャリアとして安全に使用できる。また、免疫グロブリンFc領域は、免疫グロブリン分子全体に比べて相対的に分子量が小さいので、結合体の作製、精製及び収率の面で有利であるだけでなく、アミノ酸配列が抗体毎に異なるため、高い非均質性を示すFab部分を除去することにより、物質の同質性が非常に高くなり、血中抗原性を誘発する可能性が低くなるという効果も期待することができる。
【0064】
本発明における「免疫グロブリンFc領域」とは、免疫グロブリンの重鎖と軽鎖の可変領域、重鎖定常領域1(CH1)及び軽鎖定常領域(CL1)を除いた重鎖定常領域を意味する。ただし、前記Fcフラグメントは、重鎖定常領域にヒンジ(hinge)部分を含むこともある。
【0065】
また、本発明の免疫グロブリンFc領域は、免疫グロブリンの重鎖と軽鎖の可変領域を除き、一部又は全部の重鎖定常領域1(CH1)及び/又は軽鎖定常領域1(CL1)を含む拡張されたFcフラグメントであってもよい。
【0066】
このような免疫グロブリンFc領域は、生体内で代謝される生分解性のポリペプチドであるので、薬物のキャリアとして安全に使用できる。また、免疫グロブリンFc領域は、免疫グロブリン分子全体に比べて相対的に分子量が小さいので、結合体の作製、精製及び収率の面で有利であるだけでなく、アミノ酸配列が抗体毎に異なるため、高い非均質性を示すFab部分を除去することにより、物質の同質性が非常に高くなり、血中抗原性を誘発する可能性が低くなるという効果も期待することができる。
【0067】
本発明において、免疫グロブリンFc領域には、天然アミノ酸配列だけでなく、その配列変異体(mutant)も含まれる。アミノ酸配列変異体とは、天然アミノ酸配列中の少なくとも1つのアミノ酸残基が欠失、挿入、非保存的もしくは保存的置換、又はそれらの組み合わせにより異なる配列を有するものを意味する。例えば、IgG Fcの場合、結合に重要であることが知られている214~238、297~299、318~322又は327~331番目のアミノ酸残基が修飾に適した部位として用いられてもよい。
【0068】
また、ジスルフィド結合を形成する部位が除去された変異体、天然FcからN末端のいくつかのアミノ酸が除去された変異体、天然FcのN末端にメチオニン残基が付加された変異体など、様々な変異体が用いられる。さらに、エフェクター機能をなくすために、補体結合部位、例えばC1q結合部位が除去されてもよく、ADCC(antibody dependent cell mediated cytotoxicity)部位が除去されてもよい。このような免疫グロブリンFcフラグメントの配列誘導体を作製する技術は、特許文献1、2などに開示されている。
【0069】
分子の活性を全体的に変化させないタンパク質及びペプチドにおけるアミノ酸交換は当該分野において公知である(非特許文献3)。最も一般的な交換は、アミノ酸残基Ala/Ser、Val/Ile、Asp/Glu、Thr/Ser、Ala/Gly、Ala/Thr、Ser/Asn、Ala/Val、Ser/Gly、Thy/Phe、Ala/Pro、Lys/Arg、Asp/Asn、Leu/Ile、Leu/Val、Ala/Glu、Asp/Gly間の交換である。
【0070】
場合によっては、リン酸化(phosphorylation)、硫酸化(sulfation)、アクリル化(acrylation)、グリコシル化(glycosylation)、メチル化(methylation)、ファルネシル化(farnesylation)、アセチル化(acetylation)、アミド化(amidation)などにより修飾(modification)されてもよい。
【0071】
前述したFc変異体は、本発明のFcフラグメントと同じ生物学的活性を示すが、Fcフラグメントの熱、pHなどに対する構造的安定性を向上させた変異体である。
【0072】
また、このようなFc領域は、ヒト、及びウシ、ヤギ、ブタ、マウス、ウサギ、ハムスター、ラット、モルモットなどの動物の生体内から分離した天然のものから得てもよく、形質転換された動物細胞もしくは微生物から得られた組換えたもの又はその誘導体であってもよい。ここで、天然のものから得る方法においては、全免疫グロブリンをヒト又は動物の生体から分離し、その後タンパク質分解酵素で処理することにより得ることができる。パパインで処理するとFab及びFcに切断され、ペブシンで処理するとpF’c及びF(ab)2に切断される。これらは、サイズ排除クロマトグラフィー(size-exclusion chromatography)などを用いてFc又はpF’cを分離することができる。
【0073】
ヒト由来のFc領域は、微生物から得られた組換え免疫グロブリンFc領域であることが好ましい。
【0074】
また、免疫グロブリンFc領域は、天然糖鎖、天然のものに比べて増加した糖鎖、天然のものに比べて減少した糖鎖、又は糖鎖が除去された形態であってもよい。このような免疫グロブリンFc糖鎖の増減又は除去には、化学的方法、酵素学的方法、微生物を用いた遺伝工学的手法などの通常の方法が用いられる。ここで、Fcから糖鎖が除去された免疫グロブリンFc領域は、補体(c1q)の結合力が著しく低下し、抗体依存性細胞傷害又は補体依存性細胞傷害が低減又は除去されるので、生体内で不要な免疫反応を誘発しない。このようなことから、糖鎖が除去されるか、非グリコシル化された免疫グロブリンFc領域は、薬物のキャリアとしての本来の目的に適する。
【0075】
本発明における「糖鎖が除去(Deglycosylation)」されたFc領域とは、酵素で糖を除去したFc領域を意味し、「非グリコシル化(Aglycosylation)」されたFc領域とは、原核生物、好ましくは大腸菌で産生されてグリコシル化されていないFcフラグメントを意味する。
【0076】
一方、免疫グロブリンFc領域は、ヒト起源、又はウシ、ヤギ、ブタ、マウス、ウサギ、ハムスター、ラット、モルモットなどの動物起源であってもよく、ヒト起源であることが好ましい。また、免疫グロブリンFc領域は、IgG、IgA、IgD、IgE、IgM由来であるか、又はそれらの組み合わせ(combination)もしくはそれらのハイブリッド(hybrid)によるFc領域であってもよい。ヒト血液に最も豊富なIgG又はIgM由来であることが好ましく、リガンド結合タンパク質の半減期を延長させることが知られているIgG由来であることが最も好ましい。
【0077】
一方、本発明における「組み合わせ(combination)」とは、二量体又は多量体を形成する際に、同一起源の単鎖免疫グロブリンFcフラグメントをコードするポリペプチドが異なる起源の単鎖ポリペプチドに結合することを意味する。すなわち、IgG Fc、IgA Fc、IgM Fc、IgD Fc及びIgE Fcフラグメントからなる群から選択される少なくとも2つのフラグメントから二量体又は多量体を作製することができる。
【0078】
本発明における「ハイブリッド(hybrid)」とは、単鎖の免疫グロブリンFcフラグメント内に、少なくとも2つの異なる起源の免疫グロブリンFcフラグメントに相当する配列が存在することを意味する。本発明においては、様々な形態のハイブリッドが可能である。すなわち、IgG Fc、IgM Fc、IgA Fc、IgE Fc及びIgD FcのCH1、CH2、CH3及びCH4からなる群から選択される1つ~4つのドメインのハイブリッドが可能であり、ヒンジを含んでもよい。
【0079】
一方、IgGもIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4のサブクラスに分けられ、本発明においては、それらの組み合わせ又はそれらのハイブリダイゼーションも可能である。IgG2及びIgG4サブクラスであることが好ましく、補体依存的傷害(CDC, complementdependent cytotoxicity)などのエフェクター機能(effector function)がほとんどないIgG4のFc領域であることが最も好ましい。特に、本発明のタンパク質結合体に含まれるキャリア用免疫グロブリンFc領域は、ヒトIgG4由来の非グリコシル化されたFcフラグメントであってもよい。ヒト由来のFcフラグメントは、ヒト生体において抗原として作用し、それに対する新規な抗体を生成するなどの好ましくない免疫反応を起こす非ヒト由来のFcフラグメントに比べて優れた効果を発揮する。
【0080】
本発明においては、生体内半減期を延長させるために、ペプチド又はタンパク質フラグメントをキャリアとして用いることができる。用いられるペプチド又はタンパク質フラグメントは、特定アミノ酸の組み合わせの繰り返し単位で構成されるElastin like polypeptide(ELP)であってもよく、生体内安定性が高いことが知られているトランスフェリン(transferrin)、結合組織の構成成分であるフィブロネクチン(fibronectin)などとその誘導体などであってもよいが、これらに限定されるものではなく、生体内半減期を延長させるあらゆるペプチド又はタンパク質が本発明に含まれる。
【0081】
本発明の「非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物」における脂肪酸(fatty acid)とは、前記結合体の一部(moiety)をなす一構成であり、通常は1つのカルボキシ基(-COOH)を有する炭化水素鎖を意味するが、本発明においては2つのカルボキシ基を有する脂肪二酸(fatty diacid)まで総称して脂肪酸という。本発明の脂肪酸は、炭化水素鎖を形成する炭素骨格の結合が全て単結合だけで構成された飽和脂肪酸であってもよい。
【0082】
また、本発明の非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物における脂肪酸は、直鎖構造を有する脂肪酸であってもよく、アルキル基に分枝鎖を有する脂肪酸であってもよい。脂肪酸は、炭化水素鎖を形成する炭素数によって短鎖/中鎖/長鎖脂肪酸に分類され、一般に炭素数1~6のものは短鎖脂肪酸、炭素数6~12のものは中鎖脂肪酸、炭素数14以上のものは長鎖脂肪酸に分類される。
【0083】
さらに、本発明の「非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物」は、前述した脂肪酸の骨格に少なくとも2つの反応基が直接又はリンカーを介して結合された物質であってもよい。例えば、前記反応基は、C1-3アルキルアミノ、(C1-3アルコキシ)n(C1-3アルキルアミノ)鎖(ここで、nは1~3の整数)を含むリンカーを介して脂肪酸骨格に結合されてもよいが、リンカーの種類はこれらに限定されるものではない。
【0084】
本発明の非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物における脂肪酸は、R-COOH又はR-(COOH)2の化学式を有するカルボン酸であって当該R基が直鎖状又は分枝状飽和炭化水素基を含むものであってもよく、具体的には炭化水素鎖を形成する炭素数1~40のものであってもよく、より具体的には炭素数4~30のものであってもよく、さらに具体的には炭素数10~25のものであってもよいが、これらに限定されるものではない。例えば、本発明の脂肪酸は、マロン酸(CH2(COOH)2)、コハク酸(C2H4(COOH)2)、グルタル酸(C3H6(COOH)2)、アジピン酸(C4H8(COOH)2)、ピメリン酸(C5H10(COOH)2)、スベリン酸(C6H12(COOH)2)、アゼライン酸(C7H14(COOH)2)、セバシン酸(C8H16(COOH)2)、ウンデカン二酸(C9H18(COOH)2)、ドデカン二酸(C10H20(COOH)2)、ブラシル酸(C11H22(COOH)2)、テトラデカン二酸(C12H24(COOH)2)、ペンタデカン二酸(C13H26(COOH)2)、ヘキサデカン二酸(C14H28(COOH)2)、ヘプタデカン二酸(C15H30(COOH)2)、オクタデカン二酸(C16H32(COOH)2)、ノナデカン二酸(C17H34(COOH)2)、エイコサン二酸(C18H36(COOH)2)、ヘンエイコサン二酸(henicosanedioic acid; C19H38(COOH)2)及びドコサン二酸(C20H40(COOH)2)からなる群から選択される脂肪二酸であってもよく、より具体的にはテトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸、ノナデカン二酸、エイコサン二酸、ヘンエイコサン二酸又はドコサン二酸であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0085】
また、本発明の非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物における脂肪酸は、前述した脂肪酸の誘導体、アナログなどであってもよく、特に脂肪酸を形成する炭化水素が直鎖状、分枝状ではなく、環基を含む変異体であってもよい。前記炭化水素に含まれる環基は、飽和単環又は複素環、芳香族縮合又は非縮合単環又は複素環であってもよく、エーテル結合、不飽和結合及び置換基を有してもよい。
【0086】
また、本発明の非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物における脂肪酸として特許文献3、4、5、6、7、8及び9に記載されている脂肪酸誘導体が用いられてもよいが、これらに限定されるものではない。例えば、少なくとも2つのカルボキシ基を含む多価脂肪酸、脂肪酸のカルボキシ基に代えてカルボン酸同配体(carboxylic acid (bio)isostere)、リン酸基又はスルホン酸基を含む物質、脂肪酸エステルなどが制限なく用いられてもよい。
【0087】
それ以外にも、本発明の非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物における脂肪酸には、当該分野で公知の前記脂肪酸の誘導体、アナログ、及び当該分野の技術水準で容易に作製できる誘導体、アナログも含まれる。本発明の非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物における脂肪酸は、分子量が0.1~100kDaの範囲、具体的には0.1~30kDaの範囲のものであってもよく、1種類の重合体だけでなく、異なる種類の重合体の組み合わせが用いられてもよいが、これらに限定されるものではない。
【0088】
本発明のタンパク質結合体に含まれる非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物の少なくとも2つの反応基は、同じものであってもよく、異なるものであってもよい。例えば、一方の反応基にはマレイミド基、他方の反応基にはアルデヒド基、プロピオンアルデヒド基、ブチルアルデヒドなどのアルキルアルデヒド基を有してもよい。少なくとも2つの反応基にヒドロキシ反応基を有する脂肪酸又は非ペプチド性重合体を用いる場合、公知の化学反応により前記ヒドロキシ基を前述した様々な反応基として活性化するか、商業的に入手可能な修飾された反応基を有する脂肪酸又は非ペプチド性重合体を用いることにより、本発明の結合体を製造することができる。
【0089】
本発明のタンパク質結合体に含まれる非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物における「非ペプチド性重合体」とは、少なくとも2つの繰り返し単位が結合されたものであり、ペプチドを除く生体適合性重合体の総称である。前記繰り返し単位は、ペプチド結合を除く任意の共有結合により互いに連結される。本発明における非ペプチド性重合体は、非ペプチド性リンカーと混用されてもよい。
【0090】
本発明に使用可能な非ペプチド性重合体は、ポリエチレングリコール単独重合体、ポリプロピレングリコール単独重合体、エチレングリコール-プロピレングリコール共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、ポリサッカライド、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、生分解性高分子、脂質重合体、脂肪酸、キチン、ヒアルロン酸及びそれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。具体的にはポリエチレングリコール単独重合体であってもよく、より具体的には1~2400個の重合単位が連結された重合体であってもよいが、これらに限定されるものではない。それだけでなく、当該分野で公知のそれらの誘導体や当該分野の技術水準で容易に作製できる誘導体なども全て本発明に含まれる。
【0091】
従来のインフレームフュージョン(inframe fusion)方法で作製された融合タンパク質に用いられていたペプチド性リンカーの欠点は、生体内でタンパク質分解酵素により容易に切断され、キャリアによる活性薬物の血中半減期の延長効果を期待したほど得られないということである。しかし、本発明においては、タンパク質分解酵素に抵抗性のある重合体を用いるので、キャリアと同様にペプチドの血中半減期を維持することができる。よって、本発明に用いられる非ペプチド性重合体は、このような機能を有する重合体であれば、すなわち生体内のタンパク質分解酵素に抵抗性のある重合体であれば、制限なく用いられる。非ペプチド性重合体の分子量は、0超~100kDa以下、1~100kDaの範囲、具体的には0超、例えば1kDa以上20kDa以下の範囲、又は0.5kDa~20kDa、0.5kDa~5kDa、もしくは5kDa~20kDaの範囲であってもよいが、これらに限定されるものではない。また、本発明の非ペプチド性重合体は、1種類の重合体だけでなく、異なる種類の重合体の組み合わせが用いられてもよい。
【0092】
さらに、前記非ペプチド性重合体は、2つ以上の末端を有するものであってもよく、例えば2つの末端を有する非ペプチド性重合体や、3つの末端を有する非ペプチド性重合体であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0093】
1つの非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物分子に含まれる非ペプチド性重合体は、1種類であってもよく、それ以上の種類であってもよい。
【0094】
本発明のタンパク質結合体は、前記生理活性ポリペプチドのN末端領域又はC末端領域や、ポリペプチドの末端でない中間アミノ酸残基に非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物の脂肪酸又は非ペプチド性重合体部分が連結され、生理活性ポリペプチドに連結された非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物の脂肪酸又は非ペプチド性重合体部分に生体適合性物質が連結されたものであってもよい。
【0095】
本発明における「N末端領域」とは、ペプチド又はタンパク質のアミノ末端領域を意味する。例えば、前記「N末端領域」には、N末端領域の最末端のアミノ酸残基だけでなく、N末端アミノ酸残基周辺のアミノ酸残基が全て含まれ、具体的には最末端から1~20番目のアミノ酸残基が含まれてもよい。しかし、特にこれらに限定されるものではない。
【0096】
本発明における「C末端領域」とは、ペプチド又はタンパク質のカルボキシ末端領域を意味する。例えば、前記「C末端領域」には、C末端領域の最末端のアミノ酸残基だけでなく、C末端アミノ酸残基周辺のアミノ酸残基が全て含まれ、具体的には最末端から1~20番目のアミノ酸残基が含まれる。しかし、特にこれらに限定されるものではない。
【0097】
本発明のタンパク質結合体は[生理活性ポリペプチド-脂肪酸誘導体-非ペプチド性重合体-生体適合性物質]又は[生理活性ポリペプチド-非ペプチド性重合体-脂肪酸誘導体-生体適合性物質]の構造を1つ以上含んでもよく、それらを構成する要素は共有結合により直鎖状又は分枝状に連結されてもよく、本発明のタンパク質結合体は各構成要素を1つ以上含んでもよい。本発明の非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物は、少なくとも2つの反応基を含んでいるので、それを介して生理活性ポリペプチド及び生体適合性物質とそれぞれ共有結合により連結されてもよい。また、1つの生体適合性物質に、生理活性ポリペプチドと非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物が結合された連結体を共有結合により少なくとも1つ連結することにより、生体適合性物質を媒体として生理活性ポリペプチド単量体、二量体又は多量体を形成することができ、それにより生理活性ポリペプチドの生体内活性及び安定性の向上をより効果的に達成することができる。
【0098】
本発明のタンパク質結合体において、生理活性ポリペプチドと生体適合性物質は様々なモル比で結合されてもよい。
【0099】
本発明のさらに他の態様は、(a)非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物を介して生理活性ペプチドと生体適合性物質を連結するステップと、(b)前記(a)ステップの反応生成物であるタンパク質結合体を分離するステップとを含む、タンパク質結合体を製造する方法を提供する。
【0100】
前記生理活性ペプチド、生体適合性物質及び非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物については前述した通りである。
【0101】
前記(a)ステップにおいて、三構成要素の連結は共有結合であってもよく、当該共有結合は順次又は同時に行われてもよい。例えば、少なくとも2つの反応基を有する非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物の反応基にそれぞれ生理活性ポリペプチド及び生体適合性物質を結合させる場合、生理活性ポリペプチドと生体適合性物質のいずれか一方を先に非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物の1つの反応基に結合させ、その後残りの成分を脂肪酸誘導体の他の反応基に結合させる方式で反応を順次行うことが、目的とするタンパク質結合体以外の副産物の生成を最小限に抑えるのに有利である。
【0102】
よって、前記(a)ステップは、(a1)非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物の1つの反応基に生体適合性物質と生理活性ポリペプチドのいずれか一方を連結するステップと、(a2)前記(a1)ステップの反応混合物から非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物に生体適合性物質と生理活性ポリペプチドのいずれか一方が連結された連結体を分離するステップと、(a3)前記(a2)ステップで分離した連結体の非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物の他の反応基に生体適合性物質と生理活性ポリペプチドの他方を連結し、非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物の2つの反応基がそれぞれ生理活性ポリペプチド及び生体適合性物質に連結されたタンパク質結合体を生成するステップとを含んでもよいが、これに限定されるものではない。
【0103】
前記(a1)ステップ及び前記(a3)ステップの反応は、反応に関与する非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物の反応基の種類を考慮して、必要に応じて還元剤の存在下で行ってもよい。具体的な還元剤としては、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaCNBH3)、水素化ホウ素ナトリウム、ジメチルアミンホウ酸塩、ピコリンボランコンプレックス、ピリジンホウ酸塩(borane pyridine)などが用いられてもよい。
【0104】
前記(a2)ステップ及び前記(b)ステップは、要求される純度及び生成される産物の分子量、電荷量などの特性を考慮して、タンパク質の分離に用いられる通常の方法を必要に応じて適宜選択して行ってもよい。例えば、サイズ排除クロマトグラフィーやイオン交換クロマトグラフィーをはじめとする様々な公知の方法を用いることができ、必要に応じて、より高い純度に精製するために複数の各種方法を組み合わせて用いることができる。
【0105】
前記(a1)ステップにおいて、生理活性ポリペプチドと非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物の反応モル比、及び生体適合性物質と非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物の反応モル比は、それぞれ独立して1:1~1:20の範囲から選択される比率であってもよい。具体的には、生理活性ポリペプチドと非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物の反応モル比は1:2~1:10であってもよく、生体適合性物質と非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物の反応モル比は1:4~1:20であってもよい。一方、前記(a3)ステップにおいて、(a2)ステップで分離した連結体と生体適合性物質又は生理活性ポリペプチドの反応モル比は1:0.5~1:20の範囲であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0106】
本発明のさらに他の態様は、本発明のタンパク質結合体を製造する方法により製造したタンパク質結合体と、前記製造したタンパク質結合体を含む薬剤学的組成物を提供する。本発明の薬剤学的組成物は、生体内持続性及び安定性が天然生理活性ポリペプチドより向上した持続性製剤であってもよい。
【0107】
本発明の結合体を含む薬剤学的組成物は、薬剤学的に許容される担体を含んでもよい。薬剤学的に許容される担体は、経口投与の場合は、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、賦形剤、可溶化剤、分散剤、安定化剤、懸濁化剤、色素、香料などを用いることができ、注射剤の場合は、緩衝剤、保存剤、鎮痛剤、可溶化剤、等張化剤、安定化剤などを混合して用いることができ、局所投与用の場合は、基剤、賦形剤、滑沢剤、保存剤などを用いることができる。本発明の薬剤学的組成物の剤形は、前述したような薬剤学的に許容される担体と混合して様々な形態に製造することができる。例えば、経口投与の場合は、錠剤、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、ウエハー剤などの形態に製造することができ、注射剤の場合は、使い捨てアンプル又は複数回投薬形態に製造することができる。その他、溶液、懸濁液、錠剤、丸薬、カプセル剤、徐放性製剤などに剤形化することができる。
【0108】
なお、製剤化に適した担体、賦形剤及び希釈剤の例としては、ラクトース、グルコース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリトリトール、マルチトール、デンプン、アカシア、アルギン酸塩、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、鉱物油などが挙げられる。
【0109】
また、本発明の薬剤学的組成物は、充填剤、抗凝集剤、滑沢剤、湿潤剤、香料、防腐剤などをさらに含んでもよい。
【実施例】
【0110】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。しかし、下記例は本発明を例示するものにすぎず、本発明がこれらに限定されるものではない。
【0111】
作製例1:2-(2-(2-アミノエトキシ)エトキシ)-N-(2-(2-(2,2-ジメトキシエトキシ)エトキシ)エチル)アセトアミド(中間体1)の合成
【0112】
【0113】
工程1.ベンジル2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチルカルバメートの作製
テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran; THF,5L)に溶解した2-(2-アミノエトキシ)エタノール(150mL,1.459mol)にトリエチルアミン(229mL,1.645mol)、クロロギ酸ベンジル(211mL,1.495mol)を加え、その後12時間攪拌した。固体を濾過して酢酸エチルで洗浄し、その後濾液を濃縮した。カラムクロマトグラフィーで精製して表題化合物(202g)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 7.37-7.29(m, 5H), 5.25(br, 1H), 5.10(s, 2H), 4.13-4.11(m, 2H), 3.57-3.54(m, 4H), 3.43-3.38(m, 2H), 2.24(br, 1H).
【0114】
工程2.t-ブチル3-オキソ-1-フェニル-2,7,10-トリオキサ-4-アザドデカン-12-オエートの作製
前記工程1で得たベンジル2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチルカルバメート(129g,0.539mol)をTHF(2L)に溶解し、その後カリウムt-ブトキシド(60.5g,0.593mol)を0℃で滴下した。30分後にt-ブチルブロモアセテートを加えて0℃で3時間攪拌し、常温で15時間さらに攪拌した。この反応溶液に水を入れて反応を終結させ、その後濃縮して酢酸エチルを入れて抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、次いで濾過して濾液を濃縮し、その後カラムクロマトグラフィーで精製して表題化合物(87.5g)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 7.36-7.30(m, 5H), 5.38(br, 1H), 5.10(s, 2H), 4.00(s, 2H), 3.70-3.64(m, 4H), 3.60-3.56(m, 2H), 3.43-3.40(m, 2H), 1.46(s, 9H).
【0115】
工程3.3-オキソ-1-フェニル-2,7,10-トリオキサ-4-アザドデカン-12-オイック酸の作製
前記工程2で得たt-ブチル3-オキソ-1-フェニル-2,7,10-トリオキサ-4-アザドデカン-12-オエート(9.5g,26.880mmol)をジクロロメタン(32mL)に溶解し、その後トリフルオロ酢酸(32mL)を加えて常温で5時間攪拌した。この反応溶液を濾過し、濾液を濃縮して表題化合物(7.1g)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 7.36-7.31(m, 5H), 5.24(s, 1H), 5.11(s, 2H), 4.15(s, 2H), 3.75-3.59(m, 6H), 3.43-3.41(m, 2H).
【0116】
工程4.エチル3-オキソ-1-フェニル-2,7,10-トリオキサ-4-アザドデカン-12-オエートの作製
前記工程1で得たベンジル2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチルカルバメート(20.0g,83.588mmol)をTHF(320mL)に溶解し、その後カリウムt-ブトキシド(9.4g,83.588mmol)を0℃で滴下した。30分後にエチルブロモアセテート(11.5mL,100.305mmol)を加えて0℃で3時間攪拌し、常温で15時間さらに攪拌した。この反応溶液に水を入れて反応を終結させ、その後濃縮して酢酸エチルを入れて抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、次いで濾過して濾液を濃縮し、その後カラムクロマトグラフィーで精製して表題化合物(9.5g)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 7.36-7.30(m, 5H), 5.32(br, 1H), 5.10(s, 2H), 4.19(q, 2H), 4.12(s, 2H), 3.72-3.65(m, 4H), 3.59-3.56(m, 2H), 3.41-3.38(m, 2H), 1.26(t, 3H).
【0117】
工程5.2-(2-(2,2-ジメトキシエトキシ)エトキシ)エタン-1-アミンの作製
前記工程4で得たエチル3-オキソ-1-フェニル-2,7,10-トリオキサ-4-アザドデカン-12-オエート(9.5g,29.198mmol)を無水THF(60mL)に溶解し、アルゴン雰囲気下、-78℃で水素化ジイソブチルアルミニウム(diisobutylaluminium hydride; DIBAL-H,43.8mL,23.051mmol)を徐々に滴下し、その後0℃で1時間攪拌した。この反応溶液に10%塩酸を加えて0℃で30分間攪拌し、その後酢酸エチルを入れて抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、次いで濾過して濾液を濃縮した。生成物をアルゴン雰囲気下でメタノール(36mL)に溶解し、オルトギ酸トリメチル(25.6mL,233.587mmol)、p-トルエンスルホン酸(278mg,1.460mmol)を入れて常温で2時間攪拌した。酢酸エチルを入れて抽出し、次いで有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、その後濾過して濾液を濃縮し、カラムクロマトグラフィーで精製した。生成物を再びメタノール(40mL)に溶解し、10%Pd/C(780mg,0.4wt%)を入れて水素雰囲気下、常温で3時間攪拌した。反応溶液を濾過して濾液を濃縮し、その後減圧乾燥して表題化合物(1.2g)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 4.66(br, 2H), 4.54(t, 1H), 3.74-3.64(m, 6H), 3.65(d, 2H), 3.41(s, 6H), 3.01(t, 2H).
【0118】
工程6.2-(2-(2-アミノエトキシ)エトキシ)-N-(2-(2-(2,2-ジメトキシエトキシ)エトキシ)エチル)アセトアミドの作製
前記工程3で得た3-オキソ-1-フェニル-2,7,10-トリオキサ-4-アザドデカン-12-オイック酸(1.2g,5.951mmol)をアセトニトリル(70mL)に溶解し、BOP((benzotriazol-1-yloxy)tris(dimethylamino)phosphonium hexafluorophosphate,2.8g,6.235mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(N,N-diisopropylethylamine; DIPEA,3.0mL,17.003mmol)を入れ、その後常温で30分間攪拌した。この反応溶液に工程5で得た2-(2-(2,2-ジメトキシエトキシ)エトキシ)エタン-1-アミン(1.7g,5.668mmol)を入れて常温で3時間攪拌した。反応終了後、酢酸エチルを添加して重曹(炭酸水素ナトリウム)で洗浄した。その後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過して濾液を濃縮し、カラムクロマトグラフィーで精製した。生成物を再びメタノール(30mL)に溶解し、10%Pd/C(640mg,0.4wt%)を入れて水素雰囲気下、常温で3時間攪拌した。反応溶液を濾過して濾液を濃縮し、その後減圧乾燥して表題化合物(中間体1,1.0g)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 4.51(t, 1H), 4.02(s, 2H), 3.71-3.49(m, 16H), 3.41(s, 6H), 2.94(t, 2H).
【0119】
作製例2:2,5-ジオキソピロリジン-1-イル(S)-24-(t-ブトキシカルボニル)-3-メトキシ-12,21,26-トリオキソ-2,5,8,14,17-ペンタオキサ-11,20,25-トリアザトリテトラコンタン-43-オエート(中間体2)の合成
【0120】
【0121】
工程1.18-(ベンジルオキシ)-18-オキソオクタデカン酸の作製
トルエン(3.7L)にオクタデカン二酸(octadecandioic acid,100g,318mmol)、p-トルエンスルホン酸(756mg,3.975mmol)、ベンジルアルコール(26.4mL,254.4mol)を加えて蒸留した。この反応溶液にセルライトを入れ、40℃に冷却して1時間攪拌し、その後シリカゲルで濾過した。濾液を減圧濃縮し、50℃でヘプタンを加えた。固体を濾過してヘプタンで洗浄し、その後乾燥して表題化合物(67.9g)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 7.36-7.34(m, 5H), 5.11(s, 2H), 2.35(t, 4H), 1.64(t, 4H), 1.25(s, 24H).
【0122】
工程2.1-ベンジル18-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)オクタデカンジオエートの作製
前記工程1で得た18-(ベンジルオキシ)-18-オキソオクタデカン酸(20.0g,49.433mmol)をN-ヒドロキシスクシンイミド(6.8g,59.319mmol)、DIC(N,N’-diisopropylcarbodiimide,12.24g,59.312mmol)をNMP(N-methyl-2-pyrrolidone,200mL)に溶解し、その後60℃で2.5時間攪拌した。反応終了後、反応溶液を常温に冷却して固体を濾過した。濾液に水を加え、生成された固体を濾過して水で洗浄した。固体をイソプロピルアルコールで再結晶して表題化合物(21.6g)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 7.37-7.31(m, 5H), 5.11(s, 2H), 2.83(s, 2H), 2.60(t, 2H), 2.35(t, 2H), 1.77-1.53(m, 6H), 1.25(s, 24H).
【0123】
工程3.(S)-1-t-ブチル5-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)2-(18-(ベンジルオキシ)-18-オキソオクタデカンアミド)ペンタンジオエートの作製
前記工程2で得た1-ベンジル18-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)オクタデカンジオエート(9.0g,17.940mmol)、L-グルタミン酸5-t-ブチルエステル(3.8g,18.837mmol)をNMP(80mL)に入れ、50℃で4時間攪拌した。反応終了後、反応溶液を常温に冷却し、水(230mL)、0.5M硫酸水素カリウム(34mL)、酢酸エチルを添加して抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過して濾液を濃縮した。生成物をNMP(68mL)に溶解し、次いでN-ヒドロキシスクシンイミド(3.3g,28.705mmol)、DCC(N,N’-dicyclohexylcarbodiimide,4.8g,23.323mmol)を加え、その後常温で16時間攪拌した。固体を濾過して濾液を水で洗浄し、その後有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過して濾液を濃縮した。カラムクロマトグラフィーで精製して表題化合物(4.9g)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 7.36-7.32(m, 5H), 6.24(d, 1H), 5.12(s, 2H), 4.62-4.60(m, 1H), 3.39(t, 2H), 2.85(s, 4H), 2.80-2.73(m, 2H), 2.33(t, 2H), 2.25-2.00(m, 2H), 1.67-1.63(m, 4H), 1.48(s, 9H), 1.25(s, 24H).
【0124】
工程4.(S)-24-(t-ブトキシカルボニル)-3-メトキシ-12,21,26-トリオキソ-2,5,8,14,17-ペンタオキサ-11,20,25-トリアザトリテトラコンタン-43-オイック酸の作製
前記工程3で得た(S)-1-t-ブチル5-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)2-(18-(ベンジルオキシ)-18-オキソオクタデカンアミド)ペンタンジオエート(1.9g,2.814mmol)、作製例1で準備した中間体1(1.0g,2.955mmol)、トリエチルアミン(1.2mL,8.443mmol)をアセトニトリル(40mL)に入れて常温で16時間攪拌した。反応終了後、反応溶液を濃縮してカラムクロマトグラフィーで精製した。生成物をメタノール(80mL)に溶解し、10%Pd/C(600mg,0.4wt%)を入れて水素雰囲気下、常温で3時間攪拌した。反応溶液を濾過し、その後濾液を濃縮し、減圧乾燥して表題化合物(1.1g)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 7.21(br, 1H), 6.87(br, 1H), 6.66(d, 1H), 4.52(t, 1H), 4.41-4.37(m, 1H), 4.03(s, 2H), 3.70-3.47(m, 18H), 3.40(s, 6H), 2.36-2.20(m, 7H), 1.93-1.86(m, 1H), 1.63-1.61(m, 4H), 1.46(s, 9H), 1.25(s, 24H).
【0125】
工程5.(S)-2,5-ジオキソピロリジン-1-イル24-(t-ブトキシカルボニル)-3-メトキシ-12,21,26-トリオキソ-2,5,8,14,17-ペンタオキサ-11,20,25-トリアザテトラコンタン-43-オエートの作製
前記工程4で得た(S)-24-(t-ブトキシカルボニル)-3-メトキシ-12,21,26-トリオキソ-2,5,8,14,17-ペンタオキサ-11,20,25-トリアザトリテトラコンタン-43-オイック酸(1.1g,1.293mmol)をジクロロメタン(35mL)に溶解し、N-ヒドロキシスクシンイミド(164mg,1.422mmol)、EDC(1-ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)carbodiimide,297mg,1.551mmol)を入れ、その後常温で16時間攪拌した。反応終了後、重曹で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過して濾液を濃縮し、カラムクロマトグラフィーで精製して表題化合物(中間体2,778mg)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 7.20(br, 1H), 6.75(br, 1H), 6.54(d, 1H), 4.51(t, 1H), 4.43-4.40(m, 1H), 4.01(s, 2H), 3.70-3.47(m, 18H), 3.39(s, 6H), 2.84(s, 4H), 2.60(t, 2H), 2.29-2.19(m, 5H), 1.99-1.98 (m, 1H), 1.75(t, 2H), 1.63-1.59(m,2H), 1.25(s, 24H);
MS(ESI+): [M+H]+ m/z 917.6.
【実施例1】
【0126】
両末端にアルデヒド基を有する非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物(Ald-PEG-FA)の作製
【0127】
【0128】
工程1.両末端にアセタール基が導入された非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物(Acetal-PEG-FA)の作製
アセタール-PEG-アミン(3.4kDa,n=平均77,370mg,0.11mmol)をジクロロメタン(22mL)に溶解し、トリエチルアミン(23μL,0.164mmol)、作製例2で準備した中間体2(50mg,0.055mmol)を入れ、その後常温で16時間攪拌した。反応終了後、反応液を濃縮し、MPLCで精製して表題化合物(60mg)を得た。
MS: MW 4100-4400.
【0129】
工程2.両末端にアルデヒド基を有する非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物(Ald-PEG-FA)の作製
前記工程1で得たアセタール-PEG-FA(30mg,0.007mmol)をジクロロメタン(1mL)に溶解し、トリフルオロ酢酸(53μL,0.714mmol)を入れ、その後常温で24時間攪拌した。反応終了後、反応液を濃縮し、ジエチルエーテルで再結晶して表題化合物(18mg)を得た。
MS: MW 3900-4300.
【実施例2】
【0130】
生理活性ポリペプチドと非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体との結合
実施例1で作製した、反応基として両末端にアルデヒド基を含む非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物をリンカーとして用いて、生理活性ポリペプチドの一種であるインスリンのベータチェーンのN末端に結合させるために、インスリン粉末(Biocon, India)を10mM HClに溶解して準備し、インスリンと前記リンカーを1:2のモル比で混合し、インスリン濃度が5mg/mLとなるようにして常温で2時間反応させた。ここで、反応は、50mMクエン酸ナトリウム緩衝液(sodium citrate,pH5.0)とイソプロパノール(isopropanol)の混合溶媒において、シアノ水素化ホウ素酸ナトリウム(sodium cyanoborohydride; SCB; NaCNBH3)還元剤を添加して行った。反応液は、クエン酸ナトリウム(pH3.0)、エタノールを含む緩衝液と塩化カリウムの濃度勾配を用いたSP-HP(GE,米国)カラムで精製した。
【実施例3】
【0131】
免疫グロブリンFcが非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物に結合されたタンパク質結合体の作製
次に、実施例2で作製した、非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物とインスリンが結合された連結体を生体適合性物質の一種である免疫グロブリンFcフラグメントのN末端に結合させるために、実施例2の連結体と免疫グロブリンFcフラグメントを1:10のモル比となるように混合し、総タンパク質濃度を20mg/mLに調節して25℃で12~18時間反応させた。ここで、反応液は、塩化ナトリウムを含有する100mM HEPES緩衝液(pH8.2)を用い、還元剤として20mMシアノ水素化ホウ素ナトリウムを添加した。反応終了後、この反応液をトリス(pH7.5)緩衝液と塩化カルシウムの濃度勾配を用いたQ-HPカラム(GE,米国)で精製し、その後サイズ排除クロマトグラフィー(size exclusion chromatography)カラム(Superdex 200, GE, 米国)で未反応のタンパク質を分離した。さらに、塩化ナトリウムとトリス(pH6.0)の濃度勾配を用いたSourse 15 Qカラム(GE,米国)に適用し、インスリンと免疫グロブリンFcフラグメントが非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物リンカーを介して共有結合により連結された結合体のみ精製した。作製されたタンパク質結合体をSDS-PAGEで確認した(
図1)。
【実施例4】
【0132】
タンパク質結合体のin vivo薬物動態(pharmacokinetics)の確認
実施例3で作製したタンパク質結合体のインビボ(in vivo)薬物動態を確認し、従来のインスリンに比べて生体内持続性が向上したかを分析した。具体的には、正常動物モデルとして広く用いられるSDラットを薬物動態の確認に用いた。非絶食の8週齢正常ラットを、ヒトインスリン投与群(172nmol/kg)、免疫グロブリンFc-PEG-インスリン結合体投与群(3.88nmol/kg)、及び実施例3のタンパク質結合体、すなわち免疫グロブリンFc-非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体-インスリン複合体(便宜上、以下の実施例及び図面においては単に「免疫グロブリンFc-脂肪酸誘導体-インスリン」という)投与群(3.88nmol/kg)に分けた。正常ラットに前記試験物質を1群当たり3匹ずつ単回皮下注射投与し、ヒトインスリン投与群は0.25、0.75、1、1.5、2、3及び5時間後に、免疫グロブリンFc-PEG-インスリン結合体投与群及び実施例3のタンパク質結合体である免疫グロブリンFc-脂肪酸誘導体-インスリン結合体投与群は1、4、8、24、48、72、96、120及び144時間後に尾静脈採血により全血を収集した。全血を1.5mL容量のマイクロチューブに入れ、5,000rpmにて常温で10分間遠心分離して血清を分離し、その後-20℃で保管した。保管した各群の血清は、ELISA分析法により血清中のインスリン結合体の濃度を定量化した。ELISA分析は、インスリンモノクローナル抗体がコーティングされたプレート(ALPCO, #80-INSHU-E10.1)に各時間に収集した血清と抗ヒトIgG4-HPR(Alpha Diagonosis, #10124)を同時に入れ、常温で1時間反応させ、その後TMB試薬で発色反応させ、450nmの波長で吸光度を測定する方式で行った。薬物動態のパラメータは、各時間の血清濃度に基づいてPhoenix
TM WinNonin 7.0により算出した。それを
図3に示す。
【0133】
図3に示すように、免疫グロブリンFc-PEG-インスリン結合体及び免疫グロブリンFc-脂肪酸誘導体-インスリン結合体は、どちらもヒトインスリンに比べて持続性が大幅に向上した。特に、免疫グロブリンFc-脂肪酸誘導体-インスリン結合体と、同量で投与した免疫グロブリンFc-PEG-インスリン結合体のそれぞれの半減期の測定結果は、35.8時間と14.8時間であった。これは、本発明の免疫グロブリンFc-脂肪酸誘導体-インスリン結合体において体内持続性が向上したことを示すものである。特に、新たにリンカーとして提案した非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体の優れた効果を示すものである。
【0134】
これらの結果は、本発明において新たに提案した、生理活性ポリペプチドと生体適合性物質を連結する非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体リンカーが、結合された生理活性ポリペプチドの持続性を画期的に延長するので、投与用量及び回数を減らすことのできる新たな薬物プラットフォームとして有用であることを示すものである。
【0135】
以上の説明から、本発明の属する技術分野の当業者であれば、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施できることを理解するであろう。なお、前記実施例はあくまで例示的なものであり、限定的なものでないことを理解すべきである。本発明には、明細書ではなく請求の範囲の意味及び範囲とその等価概念から導かれるあらゆる変更や変形された形態が含まれるものと解釈すべきである。
次に、本発明のまた別の好ましい態様を示す。
1. 下記化学式(1)で表される非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物、その立体異性体又はその薬学的に許容される塩。
【化1】
(前記化学式(1)において、
L
1
~L
3
はそれぞれ独立して直鎖又は分枝鎖C
1-6
アルキレンであり、
R
1
及びR
2
はそれぞれ独立して2,5-ジオキソピロリジニル、2,5-ジオキソピロリル、アルデヒド、マレイミド、C
6-20
アリールジスルフィド、C
5-20
ヘテロアリールジスルフィド、ビニルスルホン、チオール、ハロアセトアミド、スクシンイミド、p-ニトロフェニルカーボネート、C
7-10
アルキニル、オルトピリジルジスルフィド(orthopyridyl disulfide; OPSS)、ハロゲン及びそれらの誘導体からなる群から選択され、
m1~m3はそれぞれ独立して1~2400の自然数であり、
nは1~40の自然数である。)
2. R
1
及びR
2
はそれぞれ独立してマレイミド、N-ヒドロスクシンイミド、スクシンイミド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、オルトピリジルジスルフィド(Orthopyridyl disulfide; OPSS)、ヨードアセトアミド、前記ヨードに代えて臭素、フッ素、塩素、アスタチン又はテネシンを含むハロアセトアミド、ジフルオロシクロオクチン(difluorocyclooctyne; DIFO)、ジベンゾシクロオクチン(dibenzocyclooctyne; DIBO)、ジベンゾ-アザ-シクロオクチン(Dsibenzo-aza-cyclooctyne; DIBAC又はDBCO)、ビアリールアザシクロオクチノン(biarylazacyclooctynones; BARAC)、テトラメチルチアシクロヘプチン(tetramethylthiacycloheptyne; TMTH)、ビシクロノニン(bicyclononyne; BCN)ソンドハイマージイン(Sondheimer diyne)、シクロオクチン(cyclooctyne; OCT)、モノフッ素化シクロオクチン(monofluorinated cyclooctyne; MOFO)、ジメトキシアザシクロオクチン(dimethoxyazacyclooctyne; DIMAC)、2,3,6,7-テトラメトキシ-ジベンゾシクロオクチン(2, 3, 6, 7-tetramethoxy-DIBO, TMDIBO)、スルホン化ジベンゾシクロオクチン(sulfonylated DIBO; S-DIBO)、カルボキシメチルモノベンゾシクロオクチン(carboxymethylmonobenzocyclooctyne; COMBO)、ピロロシクロオクチン(pyrrolocyclooctyne; PYRROC)又はC
7-10
アルキニルである、上記1に記載の非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物、その立体異性体又はその薬学的に許容される塩。
3. 生理活性ポリペプチド及び生体適合性物質が、リンカーである、下記化学式(2)で表される非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物に共有結合により連結されたタンパク質結合体。
【化2】
(前記化学式(2)において、
L
1
~L
3
はそれぞれ独立して直鎖又は分枝鎖C
1-6
アルキレンであり、
Non-Pepは非ペプチド性重合体であり、
m1及びm2はそれぞれ独立して1~2400の自然数であり、
nは1~40の自然数である。)
4. 前記非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物は、脂肪酸骨格に直接又はリンカーを介して連結された少なくとも2つの反応基を有し、前記反応基を介して生理活性ポリペプチド及び生体適合性物質にそれぞれ連結されたものである、上記3に記載のタンパク質結合体。
5. 前記リンカーは、C
1-3
アルキルアミノ、(C
1-3
アルコキシ)
n
(C
1-3
アルキルアミノ)鎖(ここで、nは1~3の整数)を含む、上記4に記載のタンパク質結合体。
6. 前記非ペプチド性重合体は、ポリエチレングリコール単独重合体、ポリプロピレングリコール単独重合体、エチレングリコール-プロピレングリコール共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、ポリサッカライド、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、生分解性高分子、脂質重合体、脂肪酸、キチン、ヒアルロン酸及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種である、上記3~5のいずれか一項に記載のタンパク質結合体。
7. 前記非ペプチド性重合体は、重合単位1~2400個のポリエチレングリコールである、上記3~6のいずれか一項に記載のタンパク質結合体。
8. 前記生体適合性物質を基準に生理活性ポリペプチドと非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物の連結体が少なくとも1つ連結されている、上記3~7のいずれか一項に記載のタンパク質結合体。
9. 前記生理活性ポリペプチドは、ホルモン、サイトカイン、インターロイキン、インターロイキン結合タンパク質、酵素、抗体、成長因子、転写調節因子、血液因子、ワクチン、構造タンパク質、リガンドタンパク質もしくは受容体、細胞表面抗原又は受容体拮抗物質である、上記3~8のいずれか一項に記載のタンパク質結合体。
10. 前記生理活性ポリペプチドは、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)、グルカゴン様ペプチド-2(GLP-2)、グルカゴン、GIP(Gastric inhibitory polypeptide)、オキシントモジュリン、キセニン(Xenin)、インスリン、CCK(Cholecystokinin)、アミリン(amylin)、ガストリン(gastrin)、グレリン(ghrelin)、PYY(peptide YY)などのように胃や腸で血糖と体重を調節するインクレチン類(incretins)、レプチン(Leptin)、アディポネクチン(adiponectin)、アディポリン(adipolin)、アペリン(apelin)、カルトネクチン(cartonectin)のように脂肪質(adipose)から分泌されるアディポカイン類(adipokines)、キスペプチン(Kisspeptin)、ネスファチン-1(Nesfatin-1)のように脳から分泌されるニューロペプチド類(neuropeptides)、イリシン(Irisin)、マイオネクチン(myonectin)、デコリン(decorin)、フォリスタチン(follistatin)、マスクリン(musclin)のように筋肉(muscle)から分泌されるペプチド又はタンパク質類、血管作動性腸管ペプチド(Vasoactive intestinal peptide)、ナトリウム利尿ペプチド類(natriuretic peptides)、好中球増加因子(G-CSF)、ヒト成長ホルモン(hGH)、エリスロポエチン(EPO)、成長ホルモン放出ホルモン、成長ホルモン放出ペプチド、インターフェロン、インターフェロン受容体、Gタンパク質共役受容体(G protein-coupled receptor)、インターロイキン類、インターロイキン受容体、酵素類、インターロイキン結合タンパク質、サイトカイン結合タンパク質、マクロファージ活性化因子、マクロファージペプチド、B細胞因子、T細胞因子、タンパク質A、アレルギー抑制因子、細胞壊死糖タンパク質、免疫毒素、リンホトキシン、腫瘍壊死因子、腫瘍抑制因子、転移成長因子、α1-アンチトリプシン、アルブミン、α-ラクトアルブミン、アポリポタンパク質E、高グリコシル化エリスロポエチン、アンジオポエチン類、ヘモグロビン、トロンビン、トロンビン受容体活性化ペプチド、トロンボモジュリン、血液因子VII、VIIa、VIII、IX及びXIII、プラスミノーゲン活性化因子、フィブリン結合ペプチド、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、ヒルジン、タンパク質C、C反応性タンパク質、レニンインヒビター、コラゲナーゼインヒビター、スーパーオキシドディスムターゼ、血小板由来成長因子、上皮細胞成長因子、表皮細胞成長因子、アンジオスタチン、アンジオテンシン、骨形成成長因子、骨形成促進タンパク質、カルシトニン、アトリオペプチン、軟骨誘導因子、エルカトニン、結合組織活性化因子、組織因子経路インヒビター、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、黄体形成ホルモン放出ホルモン、神経成長因子、副甲状腺ホルモン、リラキシン、セクレチン、ソマトメジン、インスリン様成長因子、副腎皮質ホルモン、コレシストキニン、膵臓ポリペプチド、ガストリン放出ペプチド、コルチコトロピン放出因子、甲状腺刺激ホルモン、オートタキシン、ラクトフェリン、ミオスタチン、細胞表面抗原、ウイルス由来ワクチン抗原、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体並びに抗体フラグメントからなる群から選択される、上記3~9のいずれか一項に記載のタンパク質結合体。
11. 前記生理活性ポリペプチドは、少なくとも2つの受容体を同時に活性化することを特徴とする、上記3~10のいずれか一項に記載のタンパク質結合体。
12. 前記生体適合性物質は、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol, PEG)、コレステロール、アルブミン及びそのフラグメント、アルブミン結合物質、特定アミノ酸配列の繰り返し単位の重合体、抗体、抗体フラグメント、FcRn結合物質、生体内結合組織又はその誘導体、ヌクレオチド、フィブロネクチン、トランスフェリン(Transferrin)、サッカライド(saccharide)、高分子重合体並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される、上記3~11のいずれか一項に記載のタンパク質結合体。
13. 前記FcRn結合物質は、免疫グロブリンFc領域を含むポリペプチドである、上記12に記載のタンパク質結合体。
14. 前記免疫グロブリンFc領域は、非グリコシル化されている、上記13に記載のタンパク質結合体。
15. 前記免疫グロブリンFc領域は、ヒンジ(hinge)領域をさらに含む、上記13又は14に記載のタンパク質結合体。
16. 前記免疫グロブリンFc領域は、IgG、IgA、IgD、IgE、IgM、それらの組み合わせ(combination)及びそれらのハイブリッド(hybrid)からなる群から選択される、上記13~15のいずれか一項に記載のタンパク質結合体。
17. 前記免疫グロブリンFc領域は、IgG4 Fcフラグメントである、上記13~16のいずれか一項に記載のタンパク質結合体。
18. (a)少なくとも2つの反応基を有する、下記化学式(3)で表される非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物を介して生理活性ペプチドと生体適合性物質を連結するステップと、
(b)前記(a)ステップの反応生成物であるタンパク質結合体を分離するステップとを含む、タンパク質結合体を製造する方法。
【化3】
(前記化学式(3)において、
L
1
~L
3
はそれぞれ独立して直鎖又は分枝鎖C
1-6
アルキレンであり、
R
1
及びR
2
はそれぞれ独立して2,5-ジオキソピロリジニル、2,5-ジオキソピロリル、アルデヒド、マレイミド、C
6-20
アリールジスルフィド、C
5-20
ヘテロアリールジスルフィド、ビニルスルホン、チオール、ハロアセトアミド、スクシンイミド、p-ニトロフェニルカーボネート、C
7-10
アルキニル、オルトピリジルジスルフィド(orthopyridyl disulfide; OPSS)、ハロゲン及びそれらの誘導体からなる群から選択され、
Non-Pepは非ペプチド性重合体であり、
m1~m3はそれぞれ独立して1~2400の自然数であり、
nは1~40の自然数である。)
19. 前記(a)ステップは、
(a1)非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物の1つの反応基に生体適合性物質と生理活性ポリペプチドのいずれか一方を連結するステップと、
(a2)前記(a1)ステップの反応混合物から非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物に生体適合性物質と生理活性ポリペプチドのいずれか一方が連結された連結体を分離するステップと、
(a3)前記(a2)ステップで分離した連結体の非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物の他の反応基に生体適合性物質と生理活性ポリペプチドの他方を連結し、非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物の少なくとも2つの反応基がそれぞれ生理活性ポリペプチド及び生体適合性物質に連結されたタンパク質結合体を生成するステップとを含む、上記18に記載のタンパク質結合体を製造する方法。
20. 前記(a1)ステップ及び前記(a3)ステップは、還元剤の存在下で行われるものである、上記19に記載のタンパク質結合体を製造する方法。
21. 前記還元剤は、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaCNBH
3
)、水素化ホウ素ナトリウム、ジメチルアミンホウ酸塩、ピコリンボランコンプレックス又はピリジンホウ酸塩(borane pyridine)である、上記20に記載のタンパク質結合体を製造する方法。
22. 前記(a1)ステップにおいて、生理活性ポリペプチドと非ペプチド性重合体結合脂肪酸誘導体化合物の反応モル比は1:1~1:20であり、生体適合性物質と脂肪酸の反応モル比は1:1~1:20である、上記19~21のいずれか一項に記載のタンパク質結合体を製造する方法。
23. 前記(a3)ステップにおいて、(a2)ステップで分離した連結体と生体適合性物質又は生理活性ポリペプチドの反応モル比は1:0.5~1:20である、上記19~22のいずれか一項に記載のタンパク質結合体を製造する方法。