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特許7377197吸入器用の液体タンク、特に電子たばこ製品用の液体タンク
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-31
(45)【発行日】2023-11-09
(54)【発明の名称】吸入器用の液体タンク、特に電子たばこ製品用の液体タンク
(51)【国際特許分類】
   A24F 40/42 20200101AFI20231101BHJP
   A24F 40/46 20200101ALI20231101BHJP
   A24F 40/44 20200101ALI20231101BHJP
   A24F 40/10 20200101ALI20231101BHJP
   A24F 47/00 20200101ALI20231101BHJP
【FI】
A24F40/42
A24F40/46
A24F40/44
A24F40/10
A24F47/00
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020520585
(86)(22)【出願日】2018-10-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-17
(86)【国際出願番号】 EP2018077744
(87)【国際公開番号】W WO2019072971
(87)【国際公開日】2019-04-18
【審査請求日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】102017123869.7
(32)【優先日】2017-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】595112018
【氏名又は名称】ケルバー・テクノロジーズ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(72)【発明者】
【氏名】チエウ・ホック・キエム
(72)【発明者】
【氏名】カライジエン・カレン
【審査官】河内 誠
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102014114133(DE,A1)
【文献】特表2016-525367(JP,A)
【文献】国際公開第2016/096780(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0071254(US,A1)
【文献】国際公開第2016/064684(WO,A1)
【文献】特表2017-523785(JP,A)
【文献】特開2007-232669(JP,A)
【文献】特開2000-41654(JP,A)
【文献】特表2010-526553(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F40/00-47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入器(10)用の流出端部(53)を有する液体タンク又は電子たばこ製品としての吸入器(10)用の流出端部(53)を有する液体タンクであって、前記液体タンク(18)からヒーター(60)に供給された液体(50)を気化するため、前記流出端部(53)は、前記ヒーター(60)に液体透過性の芯組織(19)を介して接続可能である当該液体タンクにおいて、
前記液体タンク(18)が、少なくとも1つの空気流入端部(52)と少なくとも1つの通路(51)とを有し、当該通路(51)は、前記空気流入端部(52)から前記液体タンク(18)を通じて前記流出端部(53)まで延在し、
前記液体タンク(18)は、前記少なくとも1つの通路(51)に沿って配置された少なくとも1つの測定電極(55,56)を有する、静電容量式及び/又は抵抗式の液面レベルセンサ(54)を備え、
前記液体タンク(18)内に貯蔵された前記液体(50)が、重力及び喫煙者の吸引力の各々の力よりも大きい毛細管力によって前記通路(51)を通じて前記流出端部(53)まで送られ、前記液体タンク(18)が、前記液体(50)をこの液体タンク(18)から蒸発することによって空になり、当該蒸発した液体(50)の体積に相当する空気(73)の体積が、前記空気流入端部(52)を通じて半透過性の密封部材及び/又はフィルター層(57)を透過して前記通路(51)内に吸入されるように、前記通路(51)は適合されていることを特徴とする液体タンク。
【請求項2】
前記測定電極(55,56)は、前記液体タンク(18)の導電性の部品から形成されていることを特徴とする請求項1に記載の液体タンク。
【請求項3】
半透過性の密封部材及び/又はフィルター層(57)が、前記少なくとも1つの空気流入端部(52)に配置されていて、
前記半透過性の密封部材及び/又はフィルター層(57)は、空気透過性であり且つ液体非透過性であることを特徴とする請求項1~2のいずれか1項に記載の液体タンク。
【請求項4】
前記液体タンク(18)は、複数の通路(51)を有することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の液体タンク。
【請求項5】
前記少なくとも1つの通路(51)は、前記液体タンク(18)の、それぞれ少なくとも1つの通路壁(70,75)を有する少なくとも2つのハウジング部(58,59)間に形成されていて、
複数の前記通路壁(70,75)は、当該複数のハウジング部(58,59)が組み立てられている状態で櫛状に互いに係入することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の液体タンク。
【請求項6】
前記複数のハウジング部(58,59)は、導電性の材料から成るか又は導電性の材料で被覆されていることを特徴とする請求項5に記載の液体タンク。
【請求項7】
前記少なくとも1つの通路(51)は、異なる親水性及び/又は疎水性の複数の領域を有することを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の液体タンク。
【請求項8】
前記少なくとも1つの通路(51)は、前記空気流入端部(52)で前記流出端部(53)での親水性よりも低い親水性を有することを特徴とする請求項7に記載の液体タンク。
【請求項9】
前記少なくとも1つの通路(51)は、前記空気流入端部(52)で疎水性であることを特徴とする請求項7又は8に記載の液体タンク。
【請求項10】
前記少なくとも1つの通路(51)は、前記流出端部(53)で親水性であることを特徴とする請求項7~9のいずれか1項に記載の液体タンク。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の液体タンク(18)と、電気式に動作可能なヒーター(60)を有する気化器ユニット(20)とを備える消耗ユニット(17)において、
前記ヒーター(60)が、加熱電圧を印加することによって前記液体タンク(18)から前記ヒーター(60)に供給された液体(50)を気化するように適合されている当該消耗ユニット。
【請求項12】
芯組織(19)が、前記ヒーター(60)と前記液体タンク(18)との間に配置されていて、
前記芯組織(19)は、前記液体タンク(18)の少なくとも1つの流出端部(53)から液体(50)を吸収し、毛細管力によって前記ヒーター(60)に送るように適合されていることを特徴とする請求項11に記載の消耗ユニット。
【請求項13】
前記芯組織(19)は、当該少なくとも1つの流出端部(53)覆うことを特徴とする請求項12に記載の消耗ユニット。
【請求項14】
少なくとも1つの静電容量式及び/又は抵抗式のセンサ(65)が、液体を検出するために前記ヒーター(60)に配置されていることを特徴とする請求項11~13のいずれか1項に記載の消耗ユニット。
【請求項15】
少なくとも1つの抵抗式の温度センサ(66)が、前記ヒーター(60)及び/又は前記ヒーター(60)を通り過ぎて流れる空気(34)の温度を測定するために前記ヒーター(60)に配置されていることを特徴とする請求項11~14のいずれか1項に記載の消耗ユニット。
【請求項16】
前記温度センサ(66)は、蛇行していることを特徴とする請求項15に記載の消耗ユニット。
【請求項17】
前記温度センサ(66)は、前記ヒーター(60)から形成されていることを特徴とする請求項15に記載の消耗ユニット。
【請求項18】
液体を検出するための前記静電容量式及び/又は抵抗式のセンサ(65)並びに前記温度センサ(66)のうちの少なくとも1つのセンサが、ストリップ導体として前記ヒーター(60)用のキャリア(23)上に形成されていることを特徴とする、請求項14に従属する、請求項15~17のいずれか1項に記載の消耗ユニット。
【請求項19】
静電容量式及び/又は抵抗式のセンサ(65)並びに前記温度センサ(66)のうちの少なくとも1つのセンサは、前記キャリア(23)の前記ヒーター(60)と同じ側(33)に配置されていることを特徴とする請求項18に記載の消耗ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体タンクからヒーターに供給された液体を気化するために液体透過性に接続可能である流出端部を有する吸入器用の液体タンク、特に電子たばこ製品用の液体タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術では、様々な電子たばこ製品が公知である。当該電子たばこ製品の場合、液体タンクが、貯蔵部又はタンクとして構成されているか、又は、液体が、例えばアセテートから成る海綿部材中に貯蔵されている。双方の場合、当該貯蔵部は、少なくとも芯及び外部に向かって開いている空気通路内に配置されているヒーターを介して外部に通じていて、当該外部と圧力平衡にある。
【0003】
上記の両バリエーションには、漏洩の欠点がある。一方では、大気圧の激しい変化時に、例えば飛行機内で、液体が漏れ出すおそれがある。他方では、気化器が機能しない場合に、例えば、電子たばこ製品の電源が空充電のときに、喫煙者が、吸引とこれによって発生する負圧とによって液体タンクから液体を直接に吸入するおそれがある。このことは、不快であり、口の領域内の炎症を引き起こす。
【0004】
さらに、従来の技術では、気化器ユニットの乾燥が、部分的に又は完全に進行し、気化器の表面の湿潤が不十分になる。双方の場合、冷却が、気化すべき液体によって不十分であるので、温度が、250℃よりも高くなる。その結果、有害物質が、液体成分、特にグリセリン及びプロピレングリコールの分解及びラジカル反応によって発生する。発生するエアロゾルの品質が、液体の制御されない又は放置された供給及び気化によって不本意に且つ制御されずに劣化される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、喫煙中の液体タンクの方向に左右されずに、漏洩しないで且つより確実な貯蔵と、液体の確実な移送と、重力に依存しない液面レベルの測定とを可能にする液体タンクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、独立請求項に記載の特徴によって解決される。
【0007】
本発明の基本概念によれば、当該液体タンクが、少なくとも1つの空気流入端部と少なくとも1つの通路とを有し、当該通路は、当該空気流入端部から当該液体タンクを通じて当該流出端部まで延在し、この場合、当該通路は、当該液体タンク内に貯蔵された当該液体を毛細管作用によって当該通路を通じて当該流出端部まで送るように適合されていることが提唱される。したがって特に微少流体用の液体タンクが提唱される。液体が、当該液体タンクから当該貯蔵部の全容積を通過して均一に、且つ重力に依存しない速度で、特に方向に依存しない速度で、能動的に又は受動的にヒーターに制御可能に供給可能である。通路が、当該液体タンクにわたって延在し、液体を貯蔵し移送するために使用される。当該液体が、毛細管作用に基づいて及び/又はラプラス圧を適切に利用して、当該貯蔵部又は通路を通じて移送される。液体を当該ヒーターに供給するため、当該液体が、当該流出端部で蒸発するときに、毛細管力が発生し、残りの液体が、圧力低下に追従し、圧力平衡のための空気が、当該空気流入端部に流入する。
【0008】
こうして、本発明は、液体タンクの重力に依存しない液面レベルの監視を可能にする。一般に、重力は、本発明の液体タンク内の液体に作用する毛細管力よりも遥かに小さい。したがって、当該液体タンク内に存在する液体は、重力に依存しないで、特に方向に依存しないで保持されている。このことは、確実な液面レベルの監視を可能にする。
【0009】
さらに、一般に、喫煙者が吸入器での一回の吸引によって発生し得る吸引力は、液体を移送するために使用される毛細管力よりも遥かに小さく、したがって、流動性の液体が気化されることなしに、喫煙者が、当該流動性の液体を気化器ユニットから吸引することが阻止され得る。
【0010】
好ましくは、当該液体タンクは、当該少なくとも1つの通路に沿って配置された少なくとも1つの測定電極を有する、特に静電容量式及び/又は抵抗式の液面レベルセンサを備える。当該少なくとも1つの通路に沿った静電容量式の液面レベルセンサが、当該液体タンク及び/又は当該少なくとも1つの通路内の液体の液面レベルの正確で且つ確実な測定を可能にする。この場合、当該液体タンク内に存在する液体は、当該液面レベルの静電容量式の測定の誘電物質として使用される。静電容量が、当該誘電物質によって規定されていて、したがって当該液体タンク内の液体の液面レベルに依存しないで一義的に規定されている。
【0011】
好適な実施の形態では、当該測定電極は、当該液体タンクの導電性の部品から形成されている。非常に低コストで且つスペースを節約する実施の形態が、当該電極を当該液体タンク内に組み込む。少なくとも1つの通路が、複数の通路壁によって仕切られていて、これらの通路壁は、当該電極を有し及び/又は形成する。当該少なくとも1つの測定電極は、例えばストリップ状でもよく、又は少なくとも1つの測定点によって付与されてもよい。例えば、これらの通路壁が、導電性の材料から成るか又は導電性に被覆されていることによって、好ましくは、これらの通路壁は導電性であり、当該測定電極を形成する。これらの通路壁は、部分的に、少なくとも流出側の1つ又は複数の測定点及び/又は測定ストリップで液面レベルの静電容量式の測定を可能にする。
【0012】
好ましくは、半透過性の密封部材及び/又はフィルター層が、当該少なくとも1つの空気流入端部に配置されている。この場合、当該半透過性の密封部材及び/又はフィルター層は、空気透過性であり且つ液体非透過性である。当該空気流入端部を通じた液体の透過が阻止されているか又は妨げられていることによって、当該半透過性の密封部材及び/又はフィルター層は、液体タンクの漏洩を阻止する。液体の連続する移送を保証し、負圧の発生を防止するため、当該半透過性の密封部材及び/又はフィルター層の空気透過性は、流出端部での液体の流出時に必要である圧力平衡を可能にする。
【0013】
十分に大きい容積を、液体を貯蔵するために提供するため、及び、液体の毛細管現象による移送を促進するため、当該液体タンクが、複数の通路を有することが有益である。当該液体タンクの容積は、1つの通路の容積又は複数の通路の容積によって付与されている。毛細管力は、この通路の横断面又はこれらの通路の横断面から発生し得る。それ故に、当該液体タンク内の複数の通路は、同時に液体の確実な移送と共に十分に大きい総容積を有する液体タンクを提供するために使用され得る。これらの通路は、複数の孔又は複数の細孔としてアレイ状に配置されてもよく、及び/又は円筒同軸に互いに係入して又は部分的に互いに係入して形成されてもよい。
【0014】
可能な限り低コストで、簡単で且つ効率的な組み立てを保証するため、及び、当該組み立て時に設定可能な毛細管力を呈する液体タンクの所定の容積を達成するため、好ましくは、当該少なくとも1つの通路は、当該液体タンクの、それぞれ少なくとも1つの通路壁を有する少なくとも2つのハウジング部間に形成されている。この場合、複数の当該通路壁は、複数のハウジング部が組み立てられている状態で櫛状に互いに係入する。液体用の容積、すなわち少なくとも1つの通路が、複数の通路壁間に形成されるように、櫛状に互いに係入するこれらの通路壁は互いに係入する。これらのハウジング部の幾何構造と、組み立てられた状態にあるこれらのハウジング部の間隔とが、当該少なくとも1つの通路の容積及び横断面と、したがって当該通路内で作用する毛細管力とを決定する。この実施の形態では、当該液体タンクの液面レベルの簡単で、確実で且つ包括的な静電容量式及び/又は抵抗式の測定を可能にするため、それぞれ1つのハウジング部が、1つの電極を有し及び/又は形成する。
【0015】
好適な実施の形態では、液体の状態を監視する複数の電極を可能な限り効率的に且つ簡単に組み込むため、当該複数のハウジング部は、導電性の材料から成るか又は導電性の材料で被覆されている。導電性であり得るようにするため、これらのハウジング部は、例えば、合成樹脂から製造され、次いで少なくとも部分的に被覆され及び/又は蒸着されてもよい。
【0016】
好適な実施の形態では、通路を通じた液体の移送を制御するため、当該少なくとも1つの通路は、異なる親水性及び/又は疎水性の複数の領域を有する。すなわち、当該1つの通路を形成する複数の通路壁が、異なる親水性及び/又は疎水性の複数の領域を有する。当該液体は、水性の成分を含み、異なる親水性及び/又は疎水性の複数の領域によって適切に制御され得る。
【0017】
空気流入端部での液体の流出を阻止するため、流入端部での液体の流出を支援するため、特に、当該少なくとも1つの通路は、当該空気流入端部で当該流出端部での親水性よりも低い親水性を有する。すなわち、流出開口部の方向への水分を含む液体の移送を促進するため、貯蔵部又は少なくとも1つの通路の壁は、当該ヒーター側の流出開口部よりも疎水性である。
【0018】
空気流入端部での水分を含む液体の望まない流出を阻止及び/又は防止するため、好ましくは、当該少なくとも1つの通路は、当該空気流入端部で疎水性である。当該疎水性の空気流入端部は、液体タンクの密封作用及び非漏洩性を促進する。
【0019】
水分を含む液体の流出端部での流出及び/又は流入端部への移送を促進するため、当該少なくとも1つの通路は、当該流出端部で親水性であることが有益である。当該液体は、毛細管力によって、すなわち受動的に、及び/又は例えばポンプ及び/又はバルブによって、すなわち能動的に当該流出端部で流出され得る。
【0020】
本発明の観点は、液体タンクと、電気式に動作可能なヒーターを有する気化器ユニットとを備える消耗ユニットに関する。この場合、当該ヒーターが、加熱電圧を印加することによって当該液体タンクから当該ヒーターに供給された液体を気化するように適合されている。
【0021】
好ましくは、芯組織が、当該ヒーターと当該液体タンクとの間に配置されている。この場合、当該芯組織は、当該液体タンクの少なくとも1つの流出端部から液体を吸収し、毛細管作用によって当該ヒーターに送るように適合されている。当該芯は、当該少なくとも1つの流入端部で液体を受動的に流出させ、液体の移送を引き起こす負のラプラス圧を発生させるために使用される。
【0022】
液体タンクから芯を通じたヒーターへの液体の均一な移送を促進するため、特に、当該芯組織は、当該1つの流出端部又は当該複数の流出端部の全部を覆う。
【0023】
ヒーターの動作状態を特徴づけるため、及び/又は、気化すべき液体の存在及び/又は量を確認するため、特に、少なくとも1つの特に静電容量式及び/又は抵抗式のセンサが、液体を検出するために当該ヒーターに配置されている。当該ヒーターのすぐ近くにある、好ましくは扁平に形成されたヒーターの真下の、さらに好ましくは当該ヒーターに供給され、好ましくは当該液体を当該ヒーターに供給する毛細管状の芯組織内の当該液体に直接に接触する、例えば金属センサによって、当該液体が、当該ヒーターで検出され得る。
【0024】
ヒーターのすく近くの周辺の動作状態を特徴づけるため、及び/又は、ヒーター又は気化すべき液体の過熱及び/又は過冷却を検出するため、好ましくは、少なくとも1つの特に抵抗式の温度センサが、当該ヒーター及び/又は当該ヒーターを通り過ぎて流れる空気の温度を測定するために当該ヒーターに配置されている。当該追加の温度素子は、当該ヒーターを通り過ぎて流れる大気の冷却機能を検査し、したがって空気の温度を直接に測定するために使用される。当該空気の温度は、エアロゾルの凝縮挙動に影響する。したがって、当該空気の温度の知識は、気化器ユニットで設定されたパラメータを考慮した起こり得る滴サイズの予測を可能にするか、又は滴サイズに影響する当該パラメータの適合を可能にする。
【0025】
当該温度センサのコンパクトな構成を可能にするため、当該温度センサは、蛇行状に形成されている。当該温度センサは、当該ヒーターから形成されていることも可能である。
【0026】
効率的な構造と、目的に適合した測定とを可能にするため、好ましくは、複数の当該センサのうちの少なくとも1つのセンサが、ストリップ導体としてキャリア上に形成されていて、さらに好ましくは当該キャリアの当該ヒーターと同じ側に配置されている。
【0027】
以下に、本発明を好適な実施の形態に基づいて添付図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】電子たばこ製品の概略図である。
図2】本発明の液体タンクを有する気化器ユニットの概略投影横断面図である。
図3】液体タンクの実施の形態の概略図である。
図4】液体タンクの実施の形態の概略図である。
図5】液体タンクの別の実施の形態の概略図である。
図6】液体タンクの別の実施の形態の概略図である。
図7】液体を検出するためのセンサと温度センサとを有するキャリア上のヒーターを示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
吸入器10、ここでは電子たばこ製品は、空気通路30が少なくとも1つの空気流入口31とたばこ製品10のマウスエンド32にある空気流出口24との間に設けられているハウジング11を有する。この場合、たばこ製品10のマウスエンド32は、喫煙者が喫煙の目的で吸引し、これによりたばこ製品10が負圧にされ、気流34が空気通路30内で発生する端部を意味する。
【0030】
たばこ製品10は、好ましくは基幹部16と消耗ユニット17とから成る。この消耗ユニット17は、気化器ユニット20と液体タンク18とを有し、特に交換可能なカートリッジとして構成されている。流入口31を通じて吸引された空気が、空気通路30内で少なくとも1つの気化器ユニット20に向けて又は当該気化器ユニット20に沿って送られる。気化器ユニット20は、少なくとも1つの液体50が貯蔵されている少なくとも1つの液体タンク18に接続されているか又は接続可能である。気化器ユニット20は、この気化器ユニット20の液体タンク18から供給される液体50を気化させ、当該気化した液体をエアロゾル/蒸気として流出面64で気流34中に混入する。液体タンク18の有益な容積は、0.1ml~5ml、特に0.5ml~3ml、さらに特に0.7ml~2mlの範囲内にあるか又は1.5mlである。
【0031】
さらに、電子たばこ10は、蓄電部14と電子制御機構部15とを有する。一般に、蓄電部14は、基幹部16内に配置されていて、特に、使い捨ての電気化学電池又は再使用可能な電気化学電池、例えばリチウムイオン電池でもよい。電子制御機構部15は、デジタルデータ処理装置、特にマイクロプロセッサ及び/又はマイクロコントローラを(図1に示されたような)基幹部16及び/又は消耗ユニット17内に有する。
【0032】
好ましくはセンサ、例えば圧力スイッチ又は流れスイッチが、ハウジング11内に配置されている。この場合、制御機構部15は、当該センサから出力されるセンサ信号に基づいて、喫煙者が喫煙するためにたばこ製品10のマウスエンド32で吸引することを確認できる。この場合、液体タンク18からの液体50をエアロゾル/蒸気として気流34中に混入するため、制御機構部15は、気化器ユニット20を制御する。
【0033】
液体タンク18内に貯蔵された配量すべき液体50は、例えば、1,2-プロピレングリコール、グリセリン、水、少なくとも1つのアロマ(フレーバー)及び/又は少なくとも1つの作用物質、特にニコチンから成る混合物である。
【0034】
消耗ユニット又はカートリッジ17は、当該消耗ユニット又はカートリッジ17に関する情報又はパラメータを記憶するために、好ましくは不揮発性のデータメモリを有する。当該データメモリは、電子制御機構部15の一部でもよい。当該データメモリ内には、好ましくは、液体タンク18内に貯蔵された液体の組成に関する情報、プロセスプロファイル、特に出力制御/温度制御に関する情報、状態監視又はシステム検査、例えば漏れ試験に関するデータ、コピープロテクション及び改竄保護に関するデータ、消耗ユニット又はカートリッジ17を一義的に識別するためのID(識別情報)、シリアルナンバー、製造年月日及び/又は使用期限、及び/又は、吸引回数(喫煙者による喫煙の回数)若しくは使用期間が記憶されている。当該データメモリは、好ましくは、接触子及び/又は導線を介して制御機構部15に接続されているか又は接続可能である。
【0035】
本発明の好適な実施の形態が、図2に示されている。気化器ユニット20は、ブロック状の、好ましくは一体構造の、導電材料、好ましくはシリコン、ドープされたセラミック、金属セラミック、フィルタセラミック、半導体、特にゲルマニウム、グラファイト、半金属及び/又は金属から成るヒーター60を有する。ヒーター60の全体が、導電材料から成る必要はない。例えば、ヒーター60の表面が、導電性に、例えば金属で被覆されていることで十分である。この場合、全ての表面が被覆される必要はなく、例えば、導電路が、非導電性の基体上に設けられてもよい。
【0036】
ヒーター60は、液体を導くようにこのヒーター60の流入面61を流出面64に接続する複数の微細流路62を有する。流入面61は、液体を導くように芯組織19を介して液体タンク18に接続されている。芯組織19は、毛細管力によって液体を液体タンク18からヒーター60に受動的に送る役割をする。ヒーター60から芯組織19及び/又は液体タンク18内への気泡を含む液体の望ましくない逆流を回避するため、ヒーター60に対する接触領域61内の芯組織19は、液体を均一に分散させ、断熱効果を奏させ、この芯組織19の比較的小さい複数の孔及び/又は薄い毛細管によって或る種の逆止弁を構成する役割をする。
【0037】
微細流路62の平均直径は、特に5μm~200μmの範囲内にあり、さらに好ましくは30μm~150μmの範囲内にあり、いっそうさらに好ましくは50μm~100μmの範囲内にある。これらの寸法に起因して、毛細管作用が有益に発生する。その結果、微細流路62が、液体で充填されるまで、流入面61から微細流路62内に浸入する液体が、微細流路62を通じて上に向かって上昇する。ヒーター60の多孔率と呼ばれ得るヒーター60に対する微細流路62の体積比は、例えば、10%~50%の範囲内にあり、好ましくは15%~40%の範囲内にあり、さらに好ましくは20%~30%の範囲内にあり、例えば25%である。
【0038】
微細流路62を有するヒーター60の面の流路長さは、例えば0.5mm~3mmの範囲内にある。微細流路62を有するヒーター60の面の寸法は、例えば、0.95mm×1.75mm、又は1.9mm×1.75mm又は1.9mm×0.75mmであり得る。ヒーター60の辺の長さは、例えば0.5mm~5mmの範囲内にあり、好ましくは0.75mm~4mmの範囲内にあり、さらに好ましくは1mm~3mmの範囲内にあり得る。ヒーター60の面積(チップサイズ)は、例えば1mm×3mm又は2mm×3mmであり得る。
【0039】
ヒーター60の幅b(図2参照)は、好ましくは1mm~5mmの範囲内にあり、さらに好ましくは2mm~4mmの範囲内にあり、例えば3mmである。ヒーター60の高さh(図2参照)は、好ましくは0.05mm~1mmの範囲内にあり、さらに好ましくは0.1mm~0.75mmの範囲内にあり、いっそうさらに好ましくは0.2mm~0.5mmの範囲内にあり、例えば0.3mmである。
【0040】
微細流路62の数は、好ましくは4~1000の範囲内にある。こうして、微細流路62内への熱入力が最適化され得て、保証された高い気化出力と十分に大きい蒸気流出面とが実現され得る。
【0041】
複数の微細流路62が、正方形、長方形、多角形、円形、楕円形又はその他の別の形のアレイを成して配置されている。当該アレイは、s個の列とz個の行とを有するマトリクスとして構成され得る。この場合、sは、好ましくは2~50の範囲内にあり、さらに好ましくは3~30の範囲内にあり、及び/又は、zは、好ましくは2~50の範囲内にあり、さらに好ましくは3~30の範囲内にある。こうして、保証された高い気化出力を有する効率的に且つ簡単に製造可能な複数の微細流路62の配置が実現され得る。
【0042】
これらの微細流路62の横断面は、正方形、長方形、多角形、円形、楕円形又はその他の別の形でもよく、及び/又は長手方向に部分的に変化してもよく、特に大きくしてもよく、小さくしてもよく又は一定のままでもよい。
【0043】
1つ又はそれぞれの微細流路62の長さは、好ましくは100μm~1000μmの範囲内にあり、さらに好ましくは150μm~750μmの範囲内にあり、いっそうさらに好ましくは180μm~500μmの範囲内にあり、例えば300μmである。こうして、最適な液体吸収及び配分(Portionsbildung)が、ヒーター60から微細流路62内への十分に良好な熱入力で実現され得る。
【0044】
2つの微細流路62の間隔は、特に1つの微細流路62の細径の1.3倍である。この場合、当該間隔は、2つの微細流路62の中心軸線同士の間隔である。当該間隔は、1つの微細流路62の細径の好ましくは1.5~5倍でもよく、さらに好ましくは2~4倍でもよい。こうして、当該複数の微細流路内への最適な熱入力と、当該複数の微細流路の十分に安定な配置及び壁厚とが保証され得る。
【0045】
気化器ユニット20は、特に制御機構部15によって制御可能な加熱電圧源71を有する。当該加熱電圧源71は、ヒーター60の対向する両面の複数の電極72を介してこのヒーター60に接続されている。その結果、加熱電圧源71から発生した電圧Uhが、電流をヒーター60に通電させる。導電性のヒーター60のオーミック抵抗に起因して、当該通電は、ヒーター60を加熱し、それ故に複数の微細流路62内に含まれている液体を気化させる。したがって、ヒーター60は、気化器として作用する。こうして発生した蒸気/エアロゾルが、これらの微細流路62から流出面64に向かって放出し、気流34が混入される(図1参照)。喫煙者の吸引によって引き起こされた空気通路30を通じた気流34の確認時に、制御機構部15が、加熱電圧源71をより正確に制御する。この場合、自動的な加熱によって、これらの微細流路62内に存在する液体が、蒸気/エアロゾルとしてこれらの微細流路62から放出される。
【0046】
この場合、喫煙者が、ステップごとの気化を実行しないにもかかわらず、ほぼ均一で、心地よい風味で、繰り返し可能に正確なエアロゾルの生成が保証され得るように、複数の種類の液体の個々の成分の温度及び/又は気化が異なる場合に、当該個々の気化ステップの期間が、短く保持され得て、及び/又は制御周波数によって周期的に実行され得る。特に、好ましくは、最初に、当該液体の容易に沸騰する成分が、第1気化間隔内に第1温度Aで気化され、引き続き当該液体のより高い温度で沸騰する成分が、第2気化間隔内に温度Aを超える第2温度Bで気化される。
【0047】
特に、使用される液体混合物に適合された電圧曲線Uh(t)が、吸入器10のデータメモリ内に記憶されている。当該記憶は、電圧曲線Uh(t)を使用される液体に適合されるように予め設定することを可能にする。その結果、ヒーター60の加熱温度と、毛細管状の微細流路62の温度とが、それぞれの液体の既知の気化特性にしたがって気化工程にわたって時間制御され得る。これにより、最適な気化結果が入手可能である。気化温度は、特に100℃~400℃、さらに好ましくは150℃~350℃、いっそうさらに好ましくは190℃~290℃の範囲内にある。
【0048】
多孔性で及び/又は毛細管状で液体透過性の芯組織19が、ヒーター60の流入面61に配置されている。図2で分かるように、芯組織19は、ヒーター60の流入面61に平面状に接触し、流入面側で全ての微細流路62を覆う。当該芯組織は、ヒーター60に対向する面で液体タンク18に液体透過性に接合されている。図1及び2に示された芯組織19に対する液体タンク18の直接の接合は、一例に過ぎない。特に、1つの液体インターフェース及び/又は複数の液体管路が、液体タンク18と芯組織19との間に設けられてもよい。それ故に、液体タンク18は、芯組織19から離間して配置されてもよい。液体タンク18の寸法が、芯組織19よりも大きくできる。芯組織19は、例えば、液体タンク18のハウジングの開口部内に嵌入されてもよい。複数の気化器ユニット20が、1つの液体タンク18に割り当てられてもよい。
【0049】
微細流路62の無流通と、このことから発生する問題とを阻止するため、芯組織19は、多孔性及び/又は毛細管状の材料から成る。当該材料は、ヒーター60から気化する液体を、毛細管作用によって液体タンク18からヒーター60に十分な量で受動的に送ることができる。
【0050】
芯組織19に通流する液体の望ましくない加熱を回避するため、芯組織19は、好ましくは絶縁性材料から成る。芯組織19が、芯組織19が、伝導性材料から成る場合(このことは排除されない)、好ましくは、電気絶縁性材料及び/又は熱絶縁性材料から成る絶縁層を貫通して延在し、複数の微細流路62に対応する複数の貫通開口部を有する当該絶縁層、例えばガラス、セラミック又は合成樹脂が、芯組織19とヒーター60との間に設けられている。
【0051】
芯組織19は、好ましくは、材料である綿、セルロース、アセテート、ガラス繊維織物、ガラス繊維セラミック、焼結セラミック、セラミックペーパー、アルミノシリケートペーパー、発泡金属、海綿状金属、適切な移送速度を呈するその他の耐熱性の材料、多孔性の材料及び/又は毛細管状の材料のうちの1つ又は複数の材料、又は当該の材料のうちの2つ若しくは3つの材料から成る複合構造から構成される。実際の好適な実施の形態では、芯組織19は、少なくとも1つのセラミックペーパー及び/又は多孔性セラミックを含み得る。芯組織19の体積は、好ましくは1mm~10mmの範囲内にあり、さらに好ましくは2mm~8mmの範囲内にあり、さらにいっそう好ましくは3mm~7mmの範囲内にあり、例えば5mmである。
【0052】
芯組織19は、一般に1つの部材又は複数の部材から構成され得る。
【0053】
ヒーター60は、好ましくは、薄膜技術によってウェハの一部から製造され得る。当該ヒーター60は、好ましくは1000μm以下、さらに好ましくは750μm以下、さらにいっそう好ましくは500μm以下の層厚を有する。ヒーター60の表面は、好ましくは親水性でもよい。ヒーター60の流出面64は、好ましくは微細構造化されてもよく、又は細溝を有してもよい。
【0054】
液体量が、喫煙者の吸引ごとに好ましくは1μl~20μl、さらに好ましくは2μl~10μl、さらにいっそう好ましくは3μl~5μlの範囲内で、一般的に4μlで添加されるように、気化器ユニット20が設定されている。特に、気化器ユニット20は、吸引ごとの液体量/蒸気量に関して調整可能であってもよい。
【0055】
図3及び4は、長方形の横断面を有する液体タンク18の実施の形態を異なる平面によって概略的に示す断面図である。液体タンク18は、複数の流出端部53と、複数の空気流入端部52と、これらの流出端部53とこれらの空気流入端部52との間に延在する複数の通路51とを有する。これらの通路51は、複数の通路壁70,75によって互いに分離されていて、及び/又はこれらの通路壁70,75にわたって敷設又は形成される。これらの空気流入端部52は、半透過性の密封部材及び/又はフィルター層57を介して外部に通じている。半透過性の密封部材及び/又はフィルター層57は、空気が空気流入端部52を通じて通路51、すなわち液体タンク18内に流入することを可能にする。流出端部53の数及び幾何構造が、それぞれの芯19に適合されている。
【0056】
液体タンク18は、通路51内に液体50と、場合によっては、液体50の消耗に起因して当該液体タンク内に浸入されている空気73とを含む。特に、液体タンク18は、製造業者によって製造された状態では液体50だけを含み、空気73を含まない。
【0057】
図示されなかった実施の形態では、複数の通路51が、複数の孔又は複数の細孔としてアレイ状に配置され得る。これらの通路51は、円筒同軸に互いに係入して又は部分的に互いに係入して形成されてもよい。したがって、これらの通路壁70,75は、円形、正方形、四角形又は任意の別の横断面を成し得る。少なくとも1つの通路51が、好ましくは、直線状に又は任意の形で「コイル状に」(図6参照)又は螺旋状に配置され得る。
【0058】
図5及び6は、円形、特に環状の横断面を有する液体タンク18の別の実施の形態を異なる平面によって概略的に示す断面図である。この実施の形態では、1つの流出端部53が、液体タンク18の環状の横断面の中心に配置されている。この実施の形態では、液体タンク18は、当該環状の液体タンク18の円周を囲むように形成されている1つの空気流入端部52を有する。1つの通路51が、流出端部53と空気流入端部52との間に延在する。この通路51の幾何構造が、複数の通路壁70,75によって画定されている。この空気流入端部52は、リング状の半透過性の密封部材及び/又はフィルター層57を介して外部に通じている。当該半透過性の密封部材及び/又はフィルター層57は、空気73が空気流入端部52を通じて通路51、すなわち液体タンク18内に流入することを可能にするが、液体50が液体タンク18から流出することを阻止する。
【0059】
この実施の形態では、液体タンク18は、2つのハウジング部58,59から成る。図5で見て取れるように、これらのハウジング部58,59は、櫛状に互いに係入し、それぞれのハウジング部58,59が、この図では上又は下に配置された基礎部と、当該基礎部に対して垂直に延在し、複数の通路壁70,75から形成された複数の歯部とを有する。その結果、これらのハウジング部58,59のこれらの歯部は、互いに反対方向に配置されていて、2つの櫛のように互いに係入している。
【0060】
図6では、ハウジング部58,59が、櫛状に互いに係入する結果として、通路壁70,75が、これらのハウジング部58,59のうちの1つのハウジング部によって交互に形成されることが明らかである。通路壁70の部分が、特にハウジング部58から形成され、及び/又は、通路壁75の部分が、特にハウジング部59から形成される。したがって、通路51は、円筒同軸に互いに組み合わされているか又は部分的に互いに係入するハウジング部58,59によって形成される。当該通路51は、これらのハウジング部58,59間に形成される。液体50と、場合によっては空気73とが、当該通路51内に貯蔵及び/又は移送される。
【0061】
さらに、図5及び6に示された液体タンク18の実施の形態は、液面レベルセンサ54、特に静電容量式液面レベルセンサ54を有する。少なくとも1つの測定電極55,56を有する当該液面レベルセンサ54は、液体タンク18の液面レベルを測定するように適合されている。この実施の形態では、液面レベルセンサ54は、接触子55を介してハウジング部59に接続されていて、別の接触子56を介してハウジング部58に接続されている。それ故に、好ましくは、液面レベルセンサ54は、電極として作用するハウジング部58,59間に接続されている。液面レベルセンサ54の特に静電容量式及び/又は抵抗式の測定用の電極として使用するため、好ましくは、ハウジング部58,59は、導電性の材料から成る。ハウジング部58,59間の通路51内に存在する液体50、及び場合によっては当該通路51内に存在する空気73は、静電容量式の測定のために誘電物質を構成する。液体50及び空気73は、異なる誘電率を有する結果、液体タンク18の液面レベルに存在して静電容量を変化させる。
【0062】
液体50が、ヒーター側の開口部、すなわち少なくとも1つの流出端部53で能動的又は受動的に蒸発し得る。受動的な蒸発は、熱力学及び/又は流体力学的な過程だけに起因する、特に毛細管力及び/又はラプラス圧だけに起因する液体タンク18からの液体の蒸発を意味する。能動的な蒸発は、液体タンク18からの液体50の、能動的な構成要素、特に電気機械式の構成要素によって支援されている蒸発を意味する。
【0063】
当該蒸発は、気化器ユニット20によって能動的に制御され得て、及び/又は、バルブやポンプのようなその他の構成要素が、液体50を液体タンク18から能動的に蒸発させるために適合され得る。負のラプラス圧が、液体50を能動的及び/又は受動的に蒸発させることによって発生する。当該負のラプラス圧は、通路壁70,75の親水性の壁区間又は毛細管作用する芯19又は任意の多孔性物質によって流出側で、すなわち流出端部53の近くで発生し得る。
【0064】
ヒーター60に面しない端部、すなわち少なくとも1つの空気流入端部52は、特に空気73を液体タンク18内に浸入させるが、液体50を液体タンク18から漏洩させない半透過性の密封部材57を有する。当該半透過性の密封部材57は、例えば、疎水性の海綿状部材又は多孔性のセラミックでもよい。
【0065】
図7に示されているように、好ましくは、気化器ユニット20は、ヒーター60を保持するために特殊な板状キャリア23を有する。当該キャリア23は、適切な材料、例えばセラミック、ガラス及び/又は繊維強化プラスチック、例えばプリント基板材料を含む合成樹脂から成り得て、ヒーター60の下の、図7では見て取れない1つの貫通開口部を有する。芯組織19が、液体タンク18の方向に下に向かってこの貫通開口部を貫通して延在する。
【0066】
例えば長方形のキャリア23の寸法は、好ましくは6mm~20mmの範囲内にあり、さらに好ましくは8mm~17mmの範囲内にあり、さらにいっそう好ましくは10mm~14mmの範囲内にある。キャリア23の厚さDは、好ましくは0.5mm~4mmの範囲内にあり、さらに好ましくは1mm~3mmの範囲内にあり、さらにいっそう好ましくは1mm~2mmの範囲内にあり、例えば1.6mm又は2mmでもよい。
【0067】
ヒーター60は、少なくとも2つの挟持要素37によってキャリア23上で挟持される。これらの挟持要素37は、このヒーター60の対向する側面でこのヒーター60に接触する。それぞれの挟持要素37が、好ましくは1つの挟持クランプ38を有する。当該挟持クランプ38は、互いに離間した2つの固定点39でキャリア23に弾性固定されていて、プレストレスを発生させる。ヒーター60は、当該プレストレスによってキャリア23上に固定挟持され、したがって確実に保持される。
【0068】
特に好ましくは、挟持要素37は同時に、ヒーター60に接触し、このヒーター60に加熱電流を供給するための電極として使用される。このため、挟持要素37又は挟持クランプ38は、好ましくは導電性の材料から成り、例えば、金属線、例えば黄銅線でもよい。挟持クランプ38とヒーター60との間の線接触に起因して、挟持要素37とヒーター60とが、弾性的な面接触によって理想的に熱分離されると同時に、挟持要素37とヒーター60とが、非常に良好に電気接続する。それ故に、ヒーター60から挟持要素37への熱放散が小さく、電極38は、ヒーター60よりも著しく冷たい。
【0069】
電子制御機構部15とヒーター60の電力供給用のエネルギー源14とに電気接続するため、挟持要素37は、キャリア23内の孔にわたって下に向かって接触し得て、消耗ユニット17内に設けられているプリント基板(PCB)に接続され得る。別の実施の形態では、キャリア23が、プリント基板を形成してもよい。気化器ユニット20自体が、プリント基板を有するのではなくて、挟持クランプ38が、例えばフレキシブルな絶縁ケーブルを介して又は別の適切な方法で、例えば基幹部16内に配置されたプリント基板に接続されていることも可能である。
【0070】
図7は、液体を検出するためのセンサ65と、同様にキャリア23上に配置された温度センサ66とを有する。センサ65及びセンサ66は、キャリア23に配置されている。センサ65及び/又はセンサ66は、好ましくは、当該キャリアの、ヒーターの流出面64と同じ側33に配置されている。
【0071】
この実施の形態では、センサ65は、同一平面上の複数の電極を有する静電容量式の液体センサ65である。すなわち、これらの電極は、キャリア23の表面33上に同一平面状に配置されている。ここでは、特に抵抗性の温度センサ66が、蛇行状に形成されていて、キャリア23上に直接に実装されている、例えば蒸着されているストリップ導体として形成されている。電極65も、好ましくはストリップ導体としてキャリア23の表面33上に実装されている。当該キャリア23は、特に好ましくはプリント基板(PCB)である。
【0072】
さらに、安全装置が、過熱保護部74としてヒーター60、液体50及び/又は敏感な電子部品を保護するために設けられてもよい。過熱保護部74は、例えばバイメタルストリップを含み得る。過熱保護部74は、センサ及びアクチュエータを有し、ヒーター60上の液体50の存在を検出し、気化器ユニット20内の温度を測定し、例えば加熱電圧源71を含めたフィードバックループを有する適切な信頼性プロセスを制御する安全システムでもよい。
【0073】
ヒーター60に近い周辺を監視する安全機能が、説明されているセンサ65,66によって与えられている。例えば誤用又は誤操作による液体50及び/又はヒーター60の過熱の場合には、当該システムが停止され得るか、又は、冷却のための対抗手段が開始され得る。
【0074】
静電容量式及び/又は抵抗式のセンサ65が、ヒーター60にある十分でない量の液体50(これは、ヒーター60の温度の望まない上昇を引き起こし得る)を検知すると、当該システムは、例えば安全モードに切り替えでき、減少した電力で加熱できるか又はヒーター60を停止できる。
【0075】
例えばシリコンヒーターの場合に可能であるように、例えば、ヒーター60が、温度測定素子として適合されている場合、当該ヒーター60に近い周辺の正確な温度監視が、追加の安全機能として組み込まれる。
【0076】
さらに、エアロゾルの品質が、気化工程中にヒーター60に供給される液体50の量によって、すなわち液体質量流量によって制御され得る。当該エアロゾルの品質は、当該エアロゾルの再凝縮に影響する。したがって、当該液体質量流量とそれに基づく関係とに関する知識が、気化器ユニット20で設定されたパラメータを考慮した起こり得る滴サイズの予測を可能にするか、又は滴サイズに影響する当該パラメータの適合を可能にする。当該液体質量流量は、好ましくは静電容量式及び/又は抵抗式のセンサ65によって検出可能でもよい。
【0077】
加熱電圧源71によって生成されたヒーター60の制御周波数は、好ましくは1Hz~50Hzの範囲内にあり、好ましくは30Hz~30kHzの範囲内にあり、いっそうさらに好ましくは100Hz~25kHzの範囲内にある。
【0078】
以下に、気化工程のシーケンスを説明する。
【0079】
初期状態では、加熱工程用の電圧源71は停止されている。
【0080】
液体50を気化させるため、ヒーター60用の電圧源71が起動される。この場合、ヒーター60内と微細流路82内との気化温度が、使用される液体混合物の個々の気化挙動に適合されているように、電圧Uhが調整される。その結果、局所的な過熱の危険と、当該加熱による有害物質の発生とが阻止される。
【0081】
微細流路62の容積に相当するか又は当該容積に関連する液体量が気化した直後に、加熱電圧源71が停止される。好ましくは、液体特性及び液体量が、正確に既知であるので、この時点は、非常に正確に制御され得る。それ故に、気化器ユニット20のエネルギー消費が、公知の装置に比べて減少され得る。何故なら、必要な気化エネルギーが配量され得て、したがってより正確に生成され得るからである。
【0082】
当該加熱工程の終了後に、微細流路82が、ほぼ又は完全に空にされる。次いで、当該微細流路82が、芯組織19を通じた液体の供給によって再び充填されるまで、加熱電圧源71が、停止されたままである。
【0083】
液体50が、液体タンク18から流出端部53を通じて、特に芯19を通じてヒーター60に向かって供給される。液体タンク18が、液体50をこの液体タンク18から蒸発することによって空になり、当該蒸発した液体50の体積に相当する空気73の体積が、少なくとも1つの空気流入端部52を通じて半透過性の密封部材及び/又はフィルター層57を透過して通路51内に吸入される。
【0084】
当該微細流路62が再び充填されると、次の加熱サイクルが、加熱電圧源71を起動することによって開始され得る。
【0085】
気化器ユニット20は、特に微小電気機械システム技術に基づいて、特にシリコンから製造されていて、それ故に、好ましくは微小電気機械システムである。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下の構成も包含し得る:
1.
吸入器(10)、特に電子たばこ製品用の液体タンクであって、当該液体タンクは、前記液体タンク(18)からヒーター(60)に供給された液体(50)を気化するために液体透過性に接続可能である流出端部(53)を有する当該液体タンクにおいて、
前記液体タンク(18)が、少なくとも1つの空気流入端部(52)と少なくとも1つの通路(51)とを有し、当該通路(51)は、前記空気流入端部(52)から前記液体タンク(18)を通じて前記流出端部(53)まで延在し、
前記通路(51)は、前記液体タンク(18)内に貯蔵された前記液体(50)を毛細管作用によって前記通路(51)を通じて前記流出端部(53)まで送るように適合されている当該液体タンク。
2.
前記液体タンク(18)は、前記少なくとも1つの通路(51)に沿って配置された少なくとも1つの測定電極(55,56)を有する、特に静電容量式及び/又は抵抗式の液面レベルセンサ(54)を備える上記1に記載の液体タンク。
3.
前記測定電極(55,56)は、前記液体タンク(18)の導電性の部品から形成されている上記2に記載の液体タンク。
4.
半透過性の密封部材及び/又はフィルター層(57)が、前記少なくとも1つの空気流入端部(52)に配置されていて、
前記半透過性の密封部材及び/又はフィルター層(57)は、空気透過性であり且つ液体非透過性である上記1~3のいずれか1つに記載の液体タンク。
5.
前記液体タンク(18)は、複数の通路(51)を有する上記1~4のいずれか1つに記載の液体タンク。
6.
前記少なくとも1つの通路(51)は、前記液体タンク(18)の、それぞれ少なくとも1つの通路壁(70,75)を有する少なくとも2つのハウジング部(58,59)間に形成されていて、
複数の前記通路壁(70,75)は、当該複数のハウジング部(58,59)が組み立てられている状態で櫛状に互いに係入する上記1~5のいずれか1つに記載の液体タンク。
7.
前記複数のハウジング部(58,59)は、導電性の材料から成るか又は導電性の材料で被覆されている上記6に記載の液体タンク。
8.
前記少なくとも1つの通路(51)は、異なる親水性及び/又は疎水性の複数の領域を有する上記1~7のいずれか1つに記載の液体タンク。
9.
前記少なくとも1つの通路(51)は、前記空気流入端部(52)で前記流出端部(53)での親水性よりも低い親水性を有する上記8に記載の液体タンク。
10.
前記少なくとも1つの通路(51)は、前記空気流入端部(52)で疎水性である上記8又は9に記載の液体タンク。
11.
前記少なくとも1つの通路(51)は、前記流出端部(53)で親水性である上記8~10のいずれか1つに記載の液体タンク。
12.
請求項1~11のいずれか1つに記載の液体タンク(18)と、電気式に動作可能なヒーター(60)を有する気化器ユニット(20)とを備える消耗ユニット(17)において、
前記ヒーター(60)が、加熱電圧を印加することによって前記液体タンク(18)から前記ヒーター(60)に供給された液体(50)を気化するように適合されている当該消耗ユニット。
13.
芯組織(19)が、前記ヒーター(60)と前記液体タンク(18)との間に配置されていて、
前記芯組織(19)は、前記液体タンク(18)の少なくとも1つの流出端部(53)から液体(50)を吸収し、毛細管作用によって前記ヒーター(60)に送るように適合されている上記12に記載の消耗ユニット。
14.
前記芯組織(19)は、当該1つの流出端部(53)又は当該複数の流出端部(53)の全てを覆う上記13に記載の消耗ユニット。
15.
少なくとも1つの特に静電容量式及び/又は抵抗式のセンサ(65)が、液体を検出するために前記ヒーター(60)に配置されている上記1~14のいずれか1つに記載の消耗ユニット。
16.
少なくとも1つの特に抵抗式の温度センサ(66)が、前記ヒーター(60)及び/又は前記ヒーター(60)を通り過ぎて流れる空気(34)の温度を測定するために前記ヒーター(60)に配置されている上記1~15のいずれか1つに記載の消耗ユニット。
17.
前記温度センサ(66)は、蛇行している上記16に記載の消耗ユニット。
18.
前記温度センサ(66)は、前記ヒーター(60)から形成されている上記16に記載の消耗ユニット。
19.
複数の前記センサ(65,66)のうちの少なくとも1つのセンサが、ストリップ導体として前記ヒーター(60)用のキャリア(23)上に形成されている上記15~18のいずれか1つに記載の消耗ユニット。
20.
複数の前記センサ(65,66)のうちの少なくとも1つのセンサは、前記キャリア(23)の前記ヒーター(60)と同じ側(33)に配置されている上記19に記載の消耗ユニット。
【符号の説明】
【0086】
10 吸入器、たばこ製品、電子たばこ
11 ハウジング
14 蓄電部、エネルギー源
15 電子制御機構部
16 基幹部
17 消耗ユニット、カートリッジ
18 液体タンク
19 芯組織、芯
20 気化器ユニット
23 板状キャリア、キャリア
24 空気流出口
30 空気通路
31 空気流入口、流入口
32 マウスエンド
33 表面、ヒーターの流出面と同じ側
34 気流
37 挟持要素
38 挟持クランプ、電極
39 固定点
50 液体
51 通路
52 空気流入端部
53 流出端部
54 液面レベルセンサ、静電容量式液面レベルセンサ
55 測定電極、接触子
56 測定電極、接触子
57 半透過性の密封部材及び/又はフィルター層
58 ハウジング部
59 ハウジング部
60 ヒーター
61 流入面、接触領域
62 微細流路
64 流出面
65 液体を検出するためのセンサ、静電容量式の液体センサ、静電容量式及び/又は抵抗式のセンサ
66 温度センサ
70 通路壁
71 加熱電圧源
72 電極
73 空気
74 過熱保護部
75 通路壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7