(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-31
(45)【発行日】2023-11-09
(54)【発明の名称】合わせガラス用中間膜、及び合わせガラス
(51)【国際特許分類】
C03C 27/12 20060101AFI20231101BHJP
B32B 7/12 20060101ALI20231101BHJP
B32B 17/10 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
C03C27/12 Q
B32B7/12
B32B17/10
(21)【出願番号】P 2020526629
(86)(22)【出願日】2019-12-20
(86)【国際出願番号】 JP2019049985
(87)【国際公開番号】W WO2020130116
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-09-13
(31)【優先権主張番号】P 2018240379
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】東恩納 惟
(72)【発明者】
【氏名】松木 信緒
(72)【発明者】
【氏名】河田 晋治
【審査官】有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/079720(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/079732(WO,A1)
【文献】特開昭60-008059(JP,A)
【文献】特開2015-151326(JP,A)
【文献】特表2004-503406(JP,A)
【文献】特許第6653831(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 27/00-29/00
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機ガラスと有機ガラスの間に配置され、これらを接着させるための合わせガラス用中間膜であって、
少なくとも第1の樹脂部分と、第2の樹脂部分とを備え、
合わせガラス用中間膜の総厚さが50μm以上2.0mm以下であり、
周波数1Hz、せん断モードで80℃にて測定した前記第1の樹脂部分の貯蔵弾性率(G1’)と、以下の式(1)で算出される係数(k)の積(kG1’)が1.1×10
7Pa未満であり、
周波数1Hz、せん断モードで80℃にて測定した前記第2の樹脂部分の貯蔵弾性率(G2’)が2.5×10
4Paより大きくなる合わせガラス用中間膜。
k=(Cb×Tb)/(Ca×Ta) (1)
(ただし、Caが前記無機ガラスの線膨張係数、Cbが前記有機ガラスの線膨張係数、Taが前記無機ガラスの厚さ、Tbが有機ガラスの厚さである。)
【請求項2】
前記第1の樹脂部分の前記貯蔵弾性率(G1’)が、8.0×10
5Pa以下である請求項1に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項3】
可塑剤の含有量が、合わせガラス用中間膜全体に含まれる樹脂100質量部に対して、0質量部以上10質量部未満である請求項1又は2に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項4】
前記第1及び第2の樹脂部分がそれぞれ、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリウレタン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、アイオノマー樹脂、ポリアミド樹脂、及びイソブチレン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項5】
第1の樹脂層と、前記第1の樹脂層の一方の面に設けられる第2の樹脂層とを備え、
前記第1の樹脂層が前記第1の樹脂部分からなり、前記第2の樹脂層が前記第2の樹脂部分からなる請求項1~4のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項6】
前記第1の樹脂層の他方の面に設けられる第3の樹脂層を備え、前記第3の樹脂層が前記第2の樹脂部分からなる請求項5に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項7】
前記合わせガラス用中間膜が単層構造を有し、かつ第1の相と第2の相により構成される相分離構造を有し、
前記第1の相が第1の樹脂部分からなり、前記第2の相が第2の樹脂部分からなる請求項1~4のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項8】
合わせガラス用中間膜と、前記合わせガラス用中間膜を介して積層される無機ガラスと有機ガラスとを備え、
前記合わせガラス用中間膜が少なくとも第1の樹脂部分と、第2の樹脂部分とを備え、
前記合わせガラス用中間膜の総厚さが50μm以上2.0mm以下であり、
周波数1Hz、せん断モードで80℃にて測定した前記第1の樹脂部分の貯蔵弾性率(G1’)と、以下の式(1)で算出される係数(k)の積(kG1’)が1.1×10
7Pa未満であり、
周波数1Hz、せん断モードで80℃にて測定した前記第2の樹脂部分の貯蔵弾性率(G2’)が2.5×10
4Paより大きくなる合わせガラス。
k=(Cb×Tb)/(Ca×Ta) (1)
(ただし、Caが前記無機ガラスの線膨張係数、Cbが前記有機ガラスの線膨張係数、Taが前記無機ガラスの厚さ、Tbが有機ガラスの厚さである。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、合わせガラスに使用される合わせガラス用中間膜、及び合わせガラス用中間膜を備える合わせガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2枚のガラス板の間に、合わせガラス用中間膜を介在させ一体化させた合わせガラスが広く知られている。合わせガラス用中間膜は、ポリビニルアセタール樹脂に可塑剤が配合された可塑化ポリビニルアセタールより形成されることが多い。合わせガラスは、外部衝撃を受けて破損してもガラスの破片が飛散することが少なく安全であるため、自動車等の車両、航空機、建築物等の窓ガラスとして広く使用されている。
【0003】
合わせガラスにおけるガラス板としては、一般的には無機ガラスが広く使用されるが、無機ガラスは、重量が重い、衝撃を受けた際に割れが発生するなどの問題がある。そのため、合わせガラス板の一方にポリカーボネート板、ポリメチルメタクリレート板などの有機ガラスが使用されることがある。
合わせガラスは、一般的に2枚のガラス板の間に合わせガラス用中間膜を配置して、オートクレープなどにより、高温、高圧下で加熱圧着することで製造することが一般的である。しかし、合わせガラスは、2枚のガラス板の一方が有機ガラスであると、無機ガラスと、有機ガラスの線膨張係数の違いにより、加熱圧着後に室温に戻した際に反りが発生することがある。
【0004】
また、合わせガラスは、例えば、加熱と冷却を繰り返すと、各層の膨張率又は収縮率の差により、層間に気泡が発生することがあるが、合わせガラスに有機ガラスを使用すると、膨張率差又は収縮率差が生じやすく、層間に気泡が発生しやすくなる。また、有機ガラスは、無機ガラスに比べてアウトガスを発生しやすいので、その点からも気泡が発生しやすくなる。
従来、例えば特許文献1に開示されるように、合わせガラス用中間膜に発生する気泡、反りを低減させるために、2層以上の感圧接着層が設けられた中間膜用粘着シートにおいて、それぞれの感圧接着層に特定の粘弾性特性を持たせることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように、合わせガラス用中間膜を構成する各層に特定の粘弾性特性を持たせただけでは、使用する有機ガラス、無機ガラスによっては反り及び気泡の発生を十分に抑制できないことがある。したがって、合わせガラスのガラス板に無機ガラスと有機ガラスを使用する場合には、反り、気泡の発生をさらに抑制することが求められている。
【0007】
そこで、本発明は、無機ガラスと有機ガラスを接着させて合わせガラスを得る場合において、反り及び気泡の発生を十分に抑制することが可能な合わせガラス用中間膜を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討の結果、反り、気泡の発生を十分に抑制するためには、無機ガラス及び有機ガラスの線膨張係数を考慮した上で、合わせガラス用中間膜が有する第1及び第2の樹脂部分の貯蔵弾性率を調整する必要があることを見出し、以下の本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[8]を提供する。
[1]無機ガラスと有機ガラスの間に配置され、これらを接着させるための合わせガラス用中間膜であって、
少なくとも第1の樹脂部分と、第2の樹脂部分とを備え、
合わせガラス用中間膜の総厚さが50μm以上2.0mm以下であり、
周波数1Hz、せん断モードで80℃にて測定した前記第1の樹脂部分の貯蔵弾性率(G1’)と、以下の式(1)で算出される係数(k)の積(kG1’)が1.1×107Pa未満であり、
周波数1Hz、せん断モードで80℃にて測定した前記第2の樹脂部分の貯蔵弾性率(G2’)が2.5×104Paより大きくなる合わせガラス用中間膜。
k=(Cb×Tb)/(Ca×Ta) (1)
(ただし、Caが前記無機ガラスの線膨張係数、Cbが前記有機ガラスの線膨張係数、Taが前記無機ガラスの厚さ、Tbが有機ガラスの厚さである。)
[2]前記第1の樹脂部分の前記貯蔵弾性率(G1’)が、8.0×105Pa以下である上記[1]に記載の合わせガラス用中間膜。
[3]可塑剤の含有量が、合わせガラス用中間膜全体に含まれる樹脂100質量部に対して、0質量部以上10質量部未満である上記[1]又は[2]に記載の合わせガラス用中間膜。
[4]前記第1及び第2の樹脂部分がそれぞれ、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリウレタン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、アイオノマー樹脂、ポリアミド樹脂、及びイソブチレン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含む、上記[1]~[3]のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
[5]第1の樹脂層と、前記第1の樹脂層の一方の面に設けられる第2の樹脂層とを備え、
前記第1の樹脂層が前記第1の樹脂部分からなり、前記第2の樹脂層が前記第2の樹脂部分からなる上記[1]~[4]のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
[6]前記第1の樹脂層の他方の面に設けられる第3の樹脂層を備え、前記第3の樹脂層が前記第2の樹脂部分からなる上記[5]に記載の合わせガラス用中間膜。
[7]前記合わせガラス用中間膜が単層構造を有し、かつ第1の相と第2の相により構成される相分離構造を有し、
前記第1の相が第1の樹脂部分からなり、前記第2の相が第2の樹脂部分からなる上記[1]~[4]のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
[8]合わせガラス用中間膜と、前記合わせガラス用中間膜を介して積層される無機ガラスと有機ガラスとを備え、
前記合わせガラス用中間膜が少なくとも第1の樹脂部分と、第2の樹脂部分とを備え、
前記合わせガラス用中間膜の総厚さが50μm以上2.0mm以下であり、
周波数1Hz、せん断モードで80℃にて測定した前記第1の樹脂部分の貯蔵弾性率(G1’)と、以下の式(1)で算出される係数(k)の積(kG1’)が1.1×107Pa未満であり、
周波数1Hz、せん断モードで80℃にて測定した前記第2の樹脂部分の貯蔵弾性率(G2’)が2.5×104Paより大きくなる合わせガラス。
k=(Cb×Tb)/(Ca×Ta) (1)
(ただし、Caが前記無機ガラスの線膨張係数、Cbが前記有機ガラスの線膨張係数、Taが前記無機ガラスの厚さ、Tbが有機ガラスの厚さである。)
【発明の効果】
【0009】
本発明の合わせガラス用中間膜によれば、無機ガラスと有機ガラスを接着させて合わせガラスを得る場合において、反り及び気泡の発生を十分に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】合わせガラス用中間膜が単層構造を有する場合の合わせガラスの一実施形態を示す。
【
図2】合わせガラス用中間膜が多層構造を有する場合の合わせガラスの一実施形態を示す。
【
図3】合わせガラス用中間膜が多層構造を有する場合の合わせガラスの別の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の合わせガラス用中間膜について詳細に説明する。
[合わせガラス用中間膜]
本発明の合わせガラス用中間膜(以下、単に「中間膜」ということがある)は、有機ガラスと無機ガラスの間に配置され、これらを接着させるための中間膜であり、少なくとも第1の樹脂部分と、第2の樹脂部分とを備える。第1と第2の樹脂部分とは、中間膜において互いに混合されておらず、組成が互いに異なる部分として区別される部分であり、例えば、多層構造においては、第1の樹脂部分と、第2の樹脂部分は互いに異なる層を構成する。一方で、中間膜が単層構造の場合には、その単層からなる中間膜が相分離構造を有し、第1の樹脂部分と第2の樹脂部分が互いに異なる相を構成する。
【0012】
本発明の中間膜は、以下の要件(I)、及び(II)を充足する。
(I)周波数1Hz、せん断モードで80℃にて測定した第1の樹脂部分の貯蔵弾性率(G1’)と、以下の式で算出される係数(k)の積(kG1’)が1.1×107Pa未満である。
k=(Cb×Tb)/(Ca×Ta) (1)
(ただし、Caが無機ガラスの線膨張係数、Cbが有機ガラスの線膨張係数、Taが無機ガラスの厚さ、Tbが有機ガラスの厚さである。)
(II)周波数1Hz、せん断モードで80℃にて測定した第2の樹脂部分の貯蔵弾性率(G2’)が2.5×104Paより大きくなる。
【0013】
上記式(1)で表される係数(k)は、有機ガラスと無機ガラスを中間膜で接着した得た合わせガラスにおいて、例えば冷却されるときに各ガラスの収縮量の比を表す指標であり、値が大きいほど収縮量の差が大きくなるものであり、大きければ大きいほど合わせガラスは反りやすくなる。本発明では、係数(k)と第1の樹脂部分の貯蔵弾性率(G1’)の積(kG1’)を1.1×107Pa未満とすることで、その収縮量に応じて作用される応力が、第1の樹脂部分によって吸収されると推定され、それにより、ガラスと中間膜の加熱圧着後の冷却時などにおいて反りが発生することが防止される。
さらに、本発明では、要件(II)のように、貯蔵弾性率(G2’)が2.5×104Paより大きくなる第2の樹脂部分を設けることで、加熱と冷却を繰り返し、中間膜やガラスが膨張と収縮を繰り返しても層間に気泡が発生しにくくなる。
一方で、中間膜は、積(kG1’)を1.1×107Pa以上としたり、貯蔵弾性率(G2’)を2.5×104Pa以下としたりすると、ガラスと中間膜の加熱圧着後の冷却時などにおいて合わせガラスに反りが発生したり、合わせガラスに対して加熱と冷却を繰り返すと気泡が発生したりする。
【0014】
要件(I)における積(kG1’)は、合わせガラスにおける反りをさらに抑制する観点から、好ましくは6.2×106Pa以下、より好ましくは2.9×106Pa以下であり、さらに好ましくは5.0×105Pa以下である。
積(kG1’)は、特に限定されないが、好ましくは1.0×103Pa以上、より好ましくは1.0×104Pa以上、さらに好ましくは2.5×104Pa以上、特に好ましくは1.0×105Pa以上である。これら下限値以上とすることで、第1の樹脂部分の貯蔵弾性率(G1’)が低くなりすぎて中間膜の機械強度などが低下することを防止する。
【0015】
要件(II)で示す第2の樹脂部分の貯蔵弾性率(G2’)は、気泡の発生を抑制する観点から,好ましくは5.0×104Pa以上である。
また、第2の樹脂部分の貯蔵弾性率(G2’)は、特に限定されないが、好ましくは5.0×106Pa以下、より好ましくは5.0×105Pa以下である。これら上限値以下とすることで、貯蔵弾性率(G2’)が高くなりすぎて接着力などが低下することを防止する。
第2の樹脂部分は、後述するように、使用する樹脂の種類、配合量、樹脂の重合度などを適宜調整することで、貯蔵弾性率(G2’)を上記範囲内に調整できる。
【0016】
第1の樹脂部分の80℃における貯蔵弾性率(G1’)は、反りを抑制する観点などから、8.0×105Pa以下であることが好ましく、6.8×105Pa以下であることが好ましく、1.0×105Pa以下であることがより好ましい。
第1の樹脂部分の貯蔵弾性率(G1’)は、特に限定されないが、例えば1.0×103Pa以上、好ましくは1.0×104Pa以上である。これら下限値以上とすることで、第1の樹脂部分の貯蔵弾性率(G1’)が低くなりすぎて機械強度などが低下することを防止する。
【0017】
また、第1の樹脂部分の貯蔵弾性率(G1’)は、第2の樹脂部分の貯蔵弾性率(G2’)より高くてもよいし、低くてもよいが、有機ガラスと無機ガラスの収縮量の差から生じる応力を緩和するという観点から貯蔵弾性率(G2’)よりも低いことが好ましい。なお、第1の樹脂部分は、後述するように、多層構造においてはコア層(第1の樹脂層)を構成するので、後述する多層構造において、コア層(第1の樹脂層)の貯蔵弾性率(G1’)は、スキン層(第2及び第3の樹脂層)の貯蔵弾性率(G2’)よりも低くなることが好ましい。また、単層構造においては、第1の樹脂部分は、好ましくは海島構造の島部となるので、島部の貯蔵弾性率(G1’)が、海部の貯蔵弾性率(G2’)よりも低くなることが好ましい。勿論、第1の樹脂部分は海部となってもよく、したがって、海部の貯蔵弾性率が、島部の貯蔵弾性率よりも低くなってもよい。
第1の樹脂部分は、後述するように、使用する樹脂の種類、配合量、樹脂の重合度などを適宜調整することで、貯蔵弾性率(G1’)を上記範囲内に調整できる。
【0018】
なお、貯蔵弾性率(G1’)、(G2’)は、後述するように、各樹脂部分からなるフィルム状のサンプルを用意して、周波数1Hz、せん断モードで粘弾性測定を行い、80℃における貯蔵弾性率を測定して求めることができる。
【0019】
本発明において係数(k)は、小さければ小さいほど反りが抑えられる。そのため、係数(k)は、反りを抑制する観点からは低いほうがよく、好ましくは40以下、さらに好ましくは15以下である。また、係数(k)は、大きければ大きいほど曲げ剛性が向上する。したがって、係数(k)は、曲げ剛性を高めて合わせガラスの機械強度を向上させる観点からは、好ましくは1.0以上、より好ましくは2.0以上であり、さらに好ましくは5.0以上である。また、係数(k)が高くなると合わせガラスが反りやすくなるが、本発明では、上記したように、要件(I)を満たすように貯蔵弾性率(G1’)を調整することで効果的に反りを抑制できる。
【0020】
本発明の中間膜は、その総厚さが50μm以上2.0mm以下となるものである。層厚さが50μm未満となったり、2.0mmより大きくなったりすると、中間膜の貯蔵断弾性率を要件(I),(II)を充足するように調整しても、反り、発泡を十分に抑制できないことがある。また、中間膜の厚さを50μm未満とすると、中間膜の接着性が良好とならないことがある。さらに、2.0mmより大きくなると、中間膜の透明性が損なわれることがある。
中間膜の厚さは、これら観点から、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.25mm以上であり、更に好ましくは0.4mm以上である。また、より好ましくは1.6mm以下、さらに好ましくは1.2mm以下である。
【0021】
本発明の中間膜は、上記したように第1及び第2の樹脂部分を含む。第1及び第2の樹脂部分それぞれを構成する樹脂(以下、第1及び第2の樹脂部分を構成する樹脂を、それぞれ「第1及び第2の樹脂」という)は、熱可塑性樹脂であることが好ましい。第1及び第2の樹脂として、熱可塑性樹脂を使用することで、オートクレーブなどの加熱圧着により、一対のガラスを中間膜を介して容易に接着できるようになる。
中間膜に使用される第1及び第2の樹脂は、それぞれ、例えばアクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂(PVA)、ポリウレタン樹脂(PU)、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)、アイオノマー樹脂、ポリアミド樹脂(PA)、イソブチレン樹脂から選択されるとよい。これら樹脂は、上記のとおり熱可塑性樹脂であることが好ましい。第1の樹脂は、1種の樹脂から構成されてもよいが、2種以上の混合物から構成されていてもよい。同様に、第2の樹脂は、1種の樹脂から構成されてもよいが、2種以上の混合物から構成されていてもよい。
【0022】
[中間膜の層構成]
本発明の中間膜は、
図1に示すように単層構造の中間膜10であってもよいし、樹脂層が複数層設けられて多層構造であってもよい。単層構造の中間膜10は、
図1に示すように、単層からなる中間膜10によって、有機ガラス11及び無機ガラス12が接着されて合わせガラスが形成される。
【0023】
多層構造を有する中間膜は、
図2に示すように、第1の樹脂層21と、第1の樹脂層21の一方の面に設けられる第2の樹脂層22とを備える中間膜20であるとよい。また、
図3に示すように、第1の樹脂層21と、第1の樹脂層21の一方の面に設けられる第2の樹脂層22と、第1の樹脂層21の他方の面に設けられる第3の樹脂層23とを備える中間膜30であってもよい。このように、
図3に示す中間膜30では、第1の樹脂層21が、中間膜の内部の層(コア層)を構成し、第2及び第3の樹脂層22、23が中間膜の表面側の層(スキン層)を構成する。
多層構造を有する中間膜は、
図3に示すように、第1の樹脂層21の両面それぞれに、第2及び第3の樹脂層22、23が設けられた中間膜30が好ましい。第1の樹脂層21の両面に樹脂層が設けられることで、反り及び発泡の発生を効果的に抑制できる。
【0024】
第1及び第2の樹脂層21、22を有する中間膜20は、
図2に示すように、例えば第1の樹脂層21が無機ガラス11に、第2の樹脂層22が有機ガラス12に接着するように配置されることが好ましい。このように配置されることで、反りが防止されるとともに、有機ガラス12と中間膜20の界面において気泡が発生することが効果的に防止される。
ただし、第1の樹脂層21が有機ガラス12に第2の樹脂層22が有機ガラス11に接着されるように配置されてもよい。なお、後述するように、第1の樹脂層21は第1の樹脂部分からなり、第2の樹脂層22は第2の樹脂部分からなるものである。
また、第1~第3の樹脂層21、22、23を有する中間膜30は、
図3に示すように、第1及び第3の樹脂層21、23がそれぞれ、有機ガラス11、無機ガラス12に接着するように配置されるが、第1及び第3の樹脂層21、23がそれぞれ、無機ガラス12、有機ガラス11に接着されるように配置されてもよい。
【0025】
(単層構造)
以下、単層構造の中間膜についてより詳細に説明する。
本発明において、単層構造の中間膜は、第1の相と第2の相により構成される相分離構造を有し、第1の相が第1の樹脂部分からなり、第2の相が第2の樹脂部分からなる。単層構造を有する中間膜は、第1の樹脂部分と第2の樹脂部分を要件(I)、(II)を充足させることで、反り、及び気泡の発生を効果的に抑制することができる。相分離構造は、海島構造が好ましく、例えば第1の樹脂部分が島部、第2の樹脂部分が海部となればよい。
【0026】
第1相を構成する第1の樹脂は、上記した樹脂から適宜選択して使用されればよいが、アクリル樹脂が好ましい。アクリル樹脂を使用することで、第1の樹脂部分の貯蔵弾性率(G1’)を上記した所望の範囲内に調整しやすくなり、積(kG1’)も低くすることが可能である。
【0027】
一方で、第2相を構成する第2の樹脂は、上記した樹脂のうちアクリル樹脂以外の樹脂を使用することが好ましく、より好ましくはポリビニルアセタール樹脂を使用する。すなわち、単層構造では、第1の樹脂としてアクリル樹脂を使用し、第2の樹脂としてポリビニルアセタール樹脂を使用することがより好ましい。第2の樹脂としてポリビニルアセタール樹脂を使用すると、貯蔵弾性率(G2’)を高くしやすくなり、発泡が発生しにくくなる。また、ポリビニルアセタール樹脂としては後述するようにPVBが特に好ましい。
【0028】
単層構造の中間膜においては、中間膜に含まれる樹脂全量基準で、第1の樹脂の含有量が50質量%以上97質量%以下で、第2の樹脂の含有量が3質量%以上50質量%以下であることが好ましい。第1及び第2の樹脂の含有量が、これら範囲内となることで、反り及び発泡を効果的に抑制できる。また、第1の樹脂の含有量が65質量%以上93質量%以下で、第2の樹脂の含有量が7質量%以上35質量%以下がより好ましく、第1の樹脂の含有量が75質量%以上90質量%以下で、第2の樹脂の含有量が10質量%以上25質量%以下がさらに好ましい。
【0029】
単層構造の中間膜において、第1及び第2の樹脂は主成分を構成するものであり、中間膜における第1及び第2の樹脂の合計含有量は、中間膜全量基準で、通常75質量%以上、好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。また、第1及び第2の樹脂の合計含有量の上限は、特に限定されず、100質量%である。
【0030】
また、単層構造の中間膜に含まれる第1の樹脂は、活性エネルギー線によって硬化された樹脂であることが好ましい。第1の樹脂が、活性エネルギー線によって硬化(例えば、重合)される樹脂であると、第1の樹脂の硬化時に加熱しなくてもよいので、熱履歴による性能低下などが防止できる。
【0031】
また、中間膜が単層構造である場合には、後述するように、第2の樹脂の存在下に、第1の樹脂の前駆体をエネルギー線によって硬化させるとよい。このように、第2の樹脂の存在下に第1の樹脂の前駆体をエネルギー線によって硬化させると、加熱により第2の樹脂が劣化することなどが防止される。また、第2の樹脂部分を海部、第1の樹脂部分を島部とする海島構造が形成されやすくなる。
なお、第1の樹脂の前駆体とは、活性エネルギー線が照射して重合することで第1の樹脂となるものであり、第1の樹脂よりも重合度が低いポリマーやオリゴマーであってもよいが、一般的にはモノマーが使用される。
【0032】
単層構造において、第1及び第2の樹脂部分の貯蔵弾性率(G1’)、(G2’)は、第1及び第2の樹脂部分それぞれと同様の組成のものを用意して膜状(フィルム状)にして、そのフィルム状にしたサンプルを用いて、それぞれの貯蔵弾性率を測定するとよい。なお、中間膜の作製において膜状にした後に硬化する場合には、サンプルの作成においても、同様の方法で膜状にした後に同様の条件で硬化させるとよい。
【0033】
より具体的に説明すると、第1の樹脂の前駆体をエネルギー線によって硬化させて中間膜を作製する場合には、後述するように、硬化樹脂材料は、第1の樹脂の前駆体に加えて、第2の樹脂を含み、さらに可塑剤、光重合開始剤、その他の添加剤などを含む場合がある。このような態様においては、後述する可塑剤、光重合開始剤、その他の添加剤などは、一般的に第1の樹脂と混合されて第1の樹脂部分(第1の相)を構成する。したがって、第1の樹脂に加えて、必要に応じて配合される可塑剤、光重合開始剤、その他の添加剤などを混合して得た樹脂材料を膜状にし、中間膜を作製する際と同様の条件で活性エネルギー線を照射させて、第1の樹脂部分と同様の組成を有するフィルムを作製するよい。
一方で、第2の樹脂部分は、第2の樹脂単体のフィルムを作製して貯蔵弾性率を測定するとよい。或いは、第2の樹脂に予め添加剤などが添加されることで、第2の樹脂部分に添加剤などが含有される場合には、その第2の樹脂と添加剤などにより構成されるフィルムを作成して、貯蔵弾性率を測定するとよい。また、フィルム状のサンプルの厚さは、中間膜と同じにすればよい。
上記樹脂の前駆体をエネルギー線によって硬化させて中間膜を作製する場合以外、例えば、熱や湿気によって硬化させて中間膜を作製する場合にも同様にサンプルを作成するとよい。
【0034】
(多層構造)
多層構造の中間膜は、複数の樹脂層のうち1以上の層が、第1の樹脂部分からなる層となり、別の1以上の層が第2の樹脂部分からなる層となるとよい。より具体的には、中間膜が
図2に示すように、第1及び第2の樹脂層21、22を有する中間膜20である場合には、第1の樹脂層21が第1の樹脂部分からなり、第2の樹脂層22が第2の樹脂部分からなるとよい。
また、中間膜が
図3に示すように、第1、第2、及び第3の樹脂層21、22、23を有する中間膜30である場合には、第1の樹脂層21が第1の樹脂部分からなり、第2及び第3の樹脂層22、23それぞれが第2の樹脂部分からなるとよい。第2及び第3の樹脂層22、23それぞれを構成する第2の樹脂部分の組成は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0035】
中間膜が多層構造である場合において、第1の樹脂部分(例えば、第1の樹脂層)を構成する第1の樹脂は、上記で列挙した樹脂から選択して使用すればよい。第1の樹脂部分に使用される第1の樹脂は、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂から選択される少なくとも1種が好ましく、アクリル樹脂、及びポリビニルアセタール樹脂から選択される少なくとも1種がより好ましく、アクリル樹脂、及びポリビニルアセタール樹脂を併用することが特に好ましい。アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂を使用することで、第1の樹脂部分の貯蔵弾性率(G1’)を所望の範囲内に調整しやすくなり、反り及び気泡を抑制しやすくなる。また、ポリビニルアセタール樹脂としてはPVBを使用することが好ましい。
第1の樹脂部分により構成される各層(例えば、第1の樹脂層)において、2種以上の樹脂を使用すると、その層は、海島構造などの相分離構造を有することが好ましい。例えば、アクリル樹脂とポリビニルアセタール樹脂を併用する場合には、好ましくは、アクリル樹脂が島部、ポリビニルアセタール樹脂が海部となる。
【0036】
第1の樹脂部分により構成される各層において、アクリル樹脂とポリビニルアセタール樹脂を併用する場合、その各層に含まれる樹脂全量基準で、アクリル樹脂の含有量が50質量%以上97質量%以下で、ポリビニルアセタール樹脂の含有量が3質量%以上50質量%以下であることが好ましい。アクリル樹脂及びポリビニルアセタール樹脂の含有量が、これら範囲内となることで、第1の樹脂部分の貯蔵弾性率(G1’)を所望の範囲内に調整しやすくなり、また、反り及び発泡の発生を効果的に抑制できる。これら観点から、アクリル樹脂の含有量が65質量%以上93質量%以下で、ポリビニルアセタール樹脂の含有量が7質量%以上35質量%以下がより好ましく、アクリル樹脂の含有量が75質量%以上90質量%以下で、ポリビニルアセタール樹脂の含有量が10質量%以上25質量%以下がさらに好ましい。
【0037】
また、第2の樹脂部分により構成される各層(例えば、第2の樹脂層、又は第2及び第3の樹脂層それぞれ)を構成する樹脂も、上記で列挙した樹脂から選択して使用すればよい。第2の樹脂部分により構成される各層において使用される第2の樹脂は、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂から選択される少なくとも1種が好ましく、各層において、アクリル樹脂及びポリビニルアセタール樹脂を併用することが特に好ましい。アクリル樹脂又はポリビニルアセタール樹脂を使用することで、第2の樹脂部分の貯蔵弾性率(G2’)を所望の範囲内に調整しやすくなり、反り及び気泡の発生も抑制しやすくなる。多層構造の中間膜の第2の樹脂部分において、ポリビニルアセタール樹脂としてはPVBを使用することが好ましい。
第2の樹脂部分により構成される各層(例えば、第2の樹脂層、又は第2及び第3の樹脂層それぞれ)において、2種以上の樹脂を併用すると、各樹脂層において中間膜は、海島構造などの相分離構造を有することが好ましい。例えば、アクリル樹脂とポリビニルアセタール樹脂を併用する場合には、好ましくは、アクリル樹脂が島部、ポリビニルアセタール樹脂が海部となる。
【0038】
第2の樹脂部分により構成される各層において、アクリル樹脂とポリビニルアセタール樹脂を併用する場合、各層の樹脂全量基準で、アクリル樹脂の含有量が50質量%以上97質量%以下で、ポリビニルアセタール樹脂の含有量が3質量%以上50質量%以下であることが好ましい。アクリル樹脂及びポリビニルアセタール樹脂の含有量が、これら範囲内となることで、第2の樹脂部分の貯蔵弾性率(G2’)を所望の範囲内に調整しやすくなり、また、反り及び発泡を効果的に抑制しやすくなる。これら観点から、アクリル樹脂の含有量が65質量%以上93質量%以下で、ポリビニルアセタール樹脂の含有量が7質量%以上35質量%以下がより好ましく、アクリル樹脂の含有量が75質量%以上90質量%以下で、ポリビニルアセタール樹脂の含有量が10質量%以上25質量%以下がさらに好ましい。
【0039】
以上説明したように、多層構造において、第1の樹脂部分を構成する第1の樹脂と、第2の樹脂部分を構成する第2の樹脂は、いずれもが、アクリル樹脂とポリビニルアセタール樹脂の混合物からなることが好適である。そのような場合、第1の樹脂と、第2の樹脂は、上記した要件(I),(II)を充足するように樹脂の構成、量などを適宜調整するとよい。より具体的には、第1の樹脂と、第2の樹脂は、アクリル樹脂(アクリル重合体)を構成するアクリルモノマーの種類及び量、ポリビニルアセタール樹脂の重合度、ポリビニルアセタール樹脂とアクリルモノマーの質量比などの少なくともいずれか1つを互いに異ならせて、上記した要件(I),(II)を充足させるようにすればよい。
【0040】
多層構造の中間膜において、第1の樹脂部分により構成される各層は、第1の樹脂が主成分を構成するものであり、その各層における第1の樹脂の含有量は、中間膜全量基準で、通常75質量%以上、好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。また、第1の樹脂の合計含有量の上限は、特に限定されず、100質量%である。
同様に、第2の樹脂部分により構成される各層は、第2の樹脂が主成分を構成するものであり、その各層における第2の樹脂の含有量は、中間膜全量基準で、通常75質量%以上、好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。また、第2の樹脂の合計含有量の上限は、特に限定されず、100質量%である。
【0041】
多層構造を有する中間膜においては、第1の樹脂部分を構成する層の厚さ合計(A)に対する、第2の樹脂部分を構成する層の厚さ合計(B)の比(A/B)は、1/9以上9/1以下が好ましく、3/7以上7/3以下が好ましく、4/6以上6/4以下が好ましい。
具体的には、第1の樹脂部分を構成する層の厚さ合計は、例えば、15μm以上1.6mm以下であり、好ましくは50μm以上1.2mm以下、さらに好ましくは0.2mm以上1.0mm以下である。
また、第2の樹脂部分を構成する層の厚さ合計は、例えば、15μm以上1.6mm以下であり、好ましくは50μm以上1.2mm以下、さらに好ましくは0.2mm以上1.0mm以下である。
【0042】
多層構造においては、中間膜を各樹脂層に分離して、その分離した各樹脂層からなるフィルム状のサンプルの貯蔵弾性率を測定することで、第1及び第2の樹脂部分の貯蔵弾性率(G1’),(G2’)を測定できる。
また、各層と同様の組成のものを用意して膜状(フィルム状)にして、そのフィルム状にしたサンプルを用いて、それぞれの貯蔵弾性率を測定してもよい。なお、中間膜の作製において膜状にした後に硬化する場合には、サンプルの作成においても、同様の方法で膜状にした後に同様の条件で硬化させるとよい。
【0043】
次に、本発明の中間膜に使用される樹脂の具体例について、より詳細に説明する。なお、以下の説明では、特に断りがない限り、第1及び第2の樹脂部分を構成する第1及び第2の樹脂に使用できる樹脂を纏めて説明する。
(アクリル樹脂)
本発明で使用するアクリル樹脂は、アクリル重合体である。アクリル重合体は、(メタ)アクリロイル基を分子内に有するアクリルモノマーの単独重合体、又は、アクリルモノマーをモノマー単位として含む共重合体である。第1の樹脂部分、及び第2の樹脂部分それぞれにおいて、アクリル重合体は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の中間膜がアクリル樹脂を含有する場合、アクリルモノマーの種類を適宜選択することで、第1の樹脂部分、第2の樹脂部分の貯蔵弾性率(G1’)、(G2’)を調整することができる。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基又はメタクリロイル基を意味し、「(メタ)アクリレート」はアクリレート又はメタクリレートを意味し、他の類似する用語も同様である。
【0044】
アクリル重合体を構成するアクリルモノマーは、通常、(メタ)アクリロイルオキシ基を1つ有する単官能モノマーである。そのようなアクリルモノマーとしては、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、脂環構造含有(メタ)アクリレート、芳香環含有(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
また、単官能のアクリルモノマーは、環状エーテル基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、ポリオキシエチレン基、アルコキシ基などの官能基を有するモノマー(以下、「官能基含有モノマー」ともいう)であってもよい。官能基モノマーとしては、具体的には、環状エーテル基含有(メタ)アクリレート、水酸基含有(メタ)アクリレート、カルボキシル基含有アクリルモノマー、アミノ基含有アクリルモノマー、アミド基含有アクリルモノマー、ポリオキシエチレン基含有アクリルモノマー、アルコキシ含有モノマーなどが挙げられる。
アクリルモノマーは、1種単独で使用してもよいが、2種以上を併用することが好ましい。2種以上併用することで、貯蔵弾性率を所望の範囲内に調整しつつ、接着力を向上させることができる。
【0045】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば炭素数が1~18であるアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中では、アルキル基の炭素数が1~8のアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、貯蔵弾性率(G1’)、(G2’)を所望の範囲内に調整しやすくする観点からは、アルキル基の炭素数が1~8のアルキルアクリレートが好ましい。
【0046】
脂環構造含有(メタ)アクリレートとしては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。芳香環含有(メタ)アクリレートとしては、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。なお、これら脂環構造含有(メタ)アクリレート、芳香環含有(メタ)アクリレートは、上記した官能基を有さない(メタ)アクリレートである。
【0047】
環状エーテル基含有(メタ)アクリレートとしては、エポキシ環、オキセタン環、テトラヒドロフラン環、ジオキソラン環、ジオキサン環を有するものが挙げられる。これらの中では、接着力などの観点から、エポキシ環又はジオキソラン環を含有する(メタ)アクリレートが好ましく、特にジオキソラン環含有(メタ)アクリレートが好ましい。
エポキシ環含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、5-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレートグリシジルエーテルなどが挙げられる。テトラヒドロフラン環含有(メタ)アクリレートとしては、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルアルコールアクリル酸多量体エステルなどが挙げられる。
ジオキソラン環含有(メタ)アクリレートとしては、(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、(2,2-シクロヘキシル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、(2-メチル-2-イソブチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
環状エーテル基含有(メタ)アクリレートの好適な具体例は、グリシジル(メタ)アクリレート、(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレートであるが、(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0048】
カルボキシル基含有アクリルモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸(例えば、CAS:30697-40-6)、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸(例えば、CAS: 57043-35-3)等が挙げられる。ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレートにおけるポリカプロラクトンの繰り返し単位数は、2~5程度であるが、好ましくは2~3である。カルボキシル基含有アクリルモノマーは、好ましくはω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレートである。
水酸基含有アクリルモノマーとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
アミノ基含有アクリルモノマーとしては、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)メタクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
アミド基含有モノマーとしては、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド及びN-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
ポリオキシエチレン含有(メタ)アクリレートとしてはジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレートが挙げられる。
アルコキシ含有モノマーとしては、3-メトキシブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0049】
アクリル重合体を構成するアクリルモノマーとしては、単官能アクリルモノマーに加えて、多官能アクリルモノマーを使用してもよい。多官能アクリルモノマーとしては、多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。
多官能(メタ)アクリレートとしては2,2-ビス[4-((メタ)アクリロキシエトキシ)フェニル]プロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリ(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)フォスフェート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0050】
アクリル重合体を構成するアクリルモノマーは、官能基含有モノマーを含有することが好ましく、官能基含有モノマーとして、環状エーテル基含有(メタ)アクリレートを含有することがより好ましい。本発明では、第1の樹脂を構成するアクリル重合体、第2の樹脂を構成するアクリル重合体又はその両方に、環状エーテル基含有(メタ)アクリレートを使用することで、貯蔵弾性率(G1’)、(G2’)を所望の範囲内に調整しつつ接着力を向上させやすくなる。また、環状エーテル基含有(メタ)アクリレートとしては、上記したようにジオキソラン環を含有することがより更に好ましい。
【0051】
アクリル重合体を構成するモノマーにおいて、環状エーテル基含有(メタ)アクリレートの含有量は、アクリル重合体を構成する全モノマー基準(以下、単に「全モノマー基準ともいう」)で、好ましくは8質量%以上55質量%以下、より好ましくは12質量%以上45質量%以下、さらに好ましくは15質量%以上35質量%以下である。
アクリル重合体を構成するモノマーは、官能基含有モノマーとして、環状エーテル基含有(メタ)アクリレートに加えて、接着力を確保する観点などから、他の官能基含有モノマーを含有してもよい。そのような官能基モノマーとしては、特に限定されないが、カルボキシル基含有アクリルモノマーが好ましい。
なお、カルボキシル基含有アクリルモノマーは、環状エーテル基含有(メタ)アクリレートがエポキシ環含有(メタ)アクリレートであるときに使用されることがより好ましい。カルボキシル基含有アクリルモノマーとエポキシ環含有(メタ)アクリレートを併用することで、接着力などを向上させやすくなる。
アクリル重合体において、カルボキシル基含有アクリルモノマーを使用する場合、アクリル重合体を構成するモノマーにおけるカルボキシル基含有アクリルモノマーの含有量は、全モノマー基準で、好ましくは25質量%以下、より好ましくは2質量%以上20質量%以下、さらに好ましくは5質量%以上15質量%以下である。
【0052】
また、アクリル重合体を構成するモノマーは、上記した官能基含有モノマーに加えて、アルキル(メタ)アクリレート、脂環構造含有(メタ)アクリレート、及び芳香環含有(メタ)アクリレートから選択される1種以上を含有することが好ましい。これらから選択されるモノマーの含有量合計は、モノマー全量基準で、好ましくは45質量%以上92質量%以下、より好ましくは50質量%以上88質量%以下、さらに好ましくは55質量%以上85質量%以下である。
これらモノマーは適宜選択することで、各樹脂部分の貯蔵弾性率を適宜調整できる。例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどの脂環構造含有(メタ)アクリレートを使用することで、貯蔵弾性率を比較的高くできる。一方で、アルキル(メタ)アクリレート、又はアルキル(メタ)アクリレート及び芳香環含有(メタ)アクリレートを使用することで、貯蔵弾性率を比較的低くできる。
したがって、第1の樹脂部分に使用するアクリル重合体は、アルキル(メタ)アクリレートを使用することが好ましい。すなわち、第1の樹脂部分に使用するアクリル重合体を構成するモノマーは、環状エーテル基含有(メタ)アクリレートと、アルキル(メタ)アクリレートとを含有することがさらに好ましい。第1の樹脂部分のアクリル樹脂にアルキル(メタ)アクリレートを使用することで、上記のように貯蔵弾性率(G1’)を所望の範囲内に調整しつつ、接着力を良好にしやすくなる。第1の樹脂部分に使用するアクリル重合体において、アルキル(メタ)アクリレートの含有量は、全モノマー基準で、好ましくは25質量%以上80質量%以下、より好ましくは30質量%以上70質量%以下、さらに好ましくは45質量%以上65質量%以下である。第1の樹脂部分に使用するアクリル重合体において、環状エーテル基含有(メタ)アクリレートの含有量は、上記したとおりである。
【0053】
また、第1の樹脂部分に使用するアクリル重合体を構成するモノマーは、アルキル(メタ)アクリレートに加えて、芳香環含有(メタ)アクリレートを含有することがさらに好ましい。芳香環含有(メタ)アクリレートの含有量は、全モノマー基準で、好ましくは8質量%以上40質量%以下、より好ましくは10質量%以上35質量%以下、さらに好ましくは15質量%以上30質量%以下である。
【0054】
第2の樹脂部分に使用するアクリル重合体を構成するモノマーは、上記のとおり、環状エーテル基含有(メタ)アクリレートなどの官能基含有モノマーを含むことが好ましい。その際、第2の樹脂部分に使用するアクリル重合体を構成するモノマーは、上記のとおり、アルキル(メタ)アクリレート、脂環構造含有(メタ)アクリレート、及び芳香環含有(メタ)アクリレートから選択される1種以上を含有することが好ましく、これらの含有量合計は上記のとおりである。また、環状エーテル基含有(メタ)アクリレートの含有量も上記したとおりである。
【0055】
アクリル重合体を構成するモノマーは、上記した(メタ)アクリロイル基を分子内に有するアクリルモノマーに加えて、アクリルモノマー以外のビニルモノマーを併用してもよい。アクリル重合体は、溶液重合法、懸濁重合法などで重合させてもよいが、後述するように、活性エネルギー線を照射することで重合させることが好ましい。
【0056】
(ポリビニルアセタール樹脂)
ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールをアルデヒドでアセタール化して得られる。また、ポリビニルアルコールは、例えば、ポリ酢酸ビニルなどのポリビニルエステルをけん化することにより得られる。ポリビニルアセタール樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ポリビニルアルコールとしては、鹸化度80~99.8モル%のポリビニルアルコールが一般的に用いられる。ポリビニルアルコールの平均重合度は、ポリビニルアセタール樹脂の平均重合度を所望の範囲内に調整するために、150以上1500以下が好ましい。ポリビニルアルコールの平均重合度は、JIS K6726「ポリビニルアルコール試験方法」に準拠した方法により求められる。
【0057】
ポリビニルアセタール樹脂に含まれているアセタール基の炭素数は特に限定されないが、1~10であることが好ましく、2~6がより好ましく、4がさらに好ましい。アセタール基としては、具体的にはブチラール基が特に好ましく、したがって、ポリビニルアセタール樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂が好ましい。ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度は、好ましくは40モル%以上であり、また、好ましくは85モル%以下である。また、アセタール化度は、60モル%以上がより好ましく、より好ましくは75モル%以下である。アセタール化度をこれら範囲内とすることで、水酸基量を後述する所望の範囲内に調整しやすくなる。なお、アセタール化度とは、ポリビニルアセタール樹脂のアセタール基がアセトアセタール基である場合には、アセトアセタール化度を意味し、アセタール基がブチラール基である場合には、ブチラール化度を意味する。
【0058】
ポリビニルアセタール樹脂の水酸基量は、好ましくは15モル%以上であり、また、好ましくは35モル%以下である。水酸基量を15モル%以上とすることで、中間膜のガラス板との接着性が良好になり、上記した接着力を向上させやすい。また、水酸基量を35モル%以下とすることで、中間膜が硬くなって貯蔵弾性率(G1’)、(G2’)が高くなりすぎることを防止する。
これら観点から、ポリビニルアセタール樹脂の水酸基量は、より好ましくは20モル%以上、さらに好ましくは25モル%以上であり、また、より好ましくは33モル%以下である。
【0059】
上記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度(アセチル基量)は、好ましくは0.1モル%以上であり、また、好ましくは20モル%以下である。アセチル化度が、上記下限値以上とすることで、アクリル樹脂などの他の樹脂との相溶性などが良好になりやすい。また、上記上限値以下とすることで、中間膜の耐湿性が高くなる。これら観点からアセチル化度は、より好ましくは0.3モル%以上、更に好ましくは0.5モル%以上であり、また、より好ましくは10モル%以下、更に好ましくは5モル%以下、より更に好ましくは3モル%以下である。
なお、水酸基量、アセタール化度(ブチラール化度)、及びアセチル化度は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により測定された結果から算出することができる。
【0060】
第1及び第2の樹脂部分それぞれにおいては、ポリビニルアセタール樹脂の平均重合度を調整することで、貯蔵弾性率(G1’)、貯蔵弾性率(G2’)を調整できる。例えば、平均重合度を低くすることで、貯蔵弾性率(G1’)、貯蔵弾性率(G2’)も低くしやすくなる。貯蔵弾性率(G1’)は、上記したとおり、好ましくは貯蔵弾性率(G2’)よりも低い。したがって、例えば多層構造において第1及び第2の樹脂部分のいずれにもポリビニルアセタール樹脂を使用する場合、貯蔵弾性率(G1’)を貯蔵弾性率(G2’)よりも低くするために、各樹脂部分の平均重合度を調整してもよい。具体的には、貯蔵弾性率(G1’)を貯蔵弾性率(G2’)よりも低くするために、第1の樹脂部分において使用されるポリビニルアセタール樹脂の平均重合度を、第2の樹脂部分において使用されるポリビニルアセタール樹脂の平均重合度より低くするとよい。
【0061】
第1の樹脂部分において使用するポリビニルアセタール樹脂の平均重合度は、好ましくは100以上1500以下であるが、貯蔵弾性率(G1’)を低くする観点から、900以下がより好ましく、更に好ましくは600以下、より好ましくは450以下であり、また、150以上がより好ましく、200以上がさらに好ましく、220以上がよりさらに好ましい。
また、第2の樹脂部分において使用するポリビニルアセタール樹脂の平均重合度は、好ましくは100以上1500以下であるが、貯蔵弾性率(G2’)を所望の範囲に調整しつつ、反り、発泡を防止しやすくする観点から、1300以下がより好ましく、1100以下がさらに好ましく、900以下がよりさらに好ましい。また、150以上がより好ましく、200以上がさらに好ましく、220以上がよりさらに好ましい。
なお、ポリビニルアセタール樹脂の平均重合度は、原料となるポリビニルアルコールの平均重合度と同じであり、ポリビニルアルコールの平均重合度によって求めることができる。
【0062】
ポリビニルアセタール樹脂を製造する際に用いるアルデヒドは特に限定されないが、一般には、炭素数が1~10のアルデヒドが好適に用いられる。上記炭素数が1~10のアルデヒドは特に限定されず、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n-バレルアルデヒド、2-エチルブチルアルデヒド、n-ヘキシルアルデヒド、n-オクチルアルデヒド、n-ノニルアルデヒド、n-デシルアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。なかでも、アセトアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、n-ヘキシルアルデヒド、n-バレルアルデヒドなどの炭素数2~6のアルデヒドが好ましく、n-ブチルアルデヒドがより好ましい。
これらのアルデヒドは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0063】
(ポリビニルアルコール樹脂)
ポリビニルアルコール樹脂(PVA)は、従来公知の方法に従って、酢酸ビニルなどのビニルエステルを重合してポリマーを得た後、ポリマーをケン化、すなわち加水分解することにより得られる。PVAとしては、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0064】
PVAは、未変性のPVAであってもよいし、変性PVAであってもよい。未変性PVAとしてはポリビニルエステルをケン化したものが挙げられる。変性PVAは、ビニルエステルと他の不飽和モノマーとの重合体をケン化したものが挙げられる。
他の不飽和モノマーとしては、ビニルエステル以外のモノマーであって、ビニル基などの炭素-炭素二重結合を有するモノマーが挙げられる。具体的には、オレフィン類、(メタ)アクリル酸及びその塩、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリル酸以外の不飽和酸類、その塩及びエステル、(メタ)アクリルアミド類、N-ビニルアミド類、ビニルエーテル類、ニトリル類、ハロゲン化ビニル類、アリル化合物、ビニルシリル化合物、酢酸イソプロペニル、スルホン酸基含有化合物、アミノ基含有化合物等が挙げられる。
【0065】
オレフィン類としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン及びイソブテン等が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル類としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸i-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、及び(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸以外の不飽和酸類、その塩及びエステルとしては、マレイン酸及びその塩、マレイン酸エステル、イタコン酸及びその塩、イタコン酸エステル、メチレンマロン酸及びその塩、メチレンマロン酸エステルなどが挙げられる。
(メタ)アクリルアミド類としては、アクリルアミド、n-メチルアクリルアミド、N-エチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド等が挙げられる。N-ビニルアミド類としては、N-ビニルピロリドン等が挙げられる。ビニルエーテル類としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、i-プロピルビニルエーテル及びn-ブチルビニルエーテル等が挙げられる。
【0066】
ニトリル類としては、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。ハロゲン化ビニル類としては、塩化ビニル及び塩化ビニリデン等が挙げられる。アリル化合物としては、酢酸アリル及び塩化アリル等が挙げられる。ビニルシリル化合物としては、ビニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
スルホン酸基含有化合物としては、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸などの(メタ)アクリルアミドアルカンスルホン酸及びその塩、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸あるいはその塩などが挙げられる。
アミノ基含有化合物としては、アリルアミン、ポリオキシエチレンアリルアミン、ポリオキシプロピレンアリルアミン、ポリオキシエチレンビニルアミン、ポリオキシプロピレンビニルアミン等が挙げられる。
また、変性PVAとしては、PVAに、グラフト重合等により、カルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基、ピロリドン基などを付加したものであってもよい。
【0067】
(ポリウレタン樹脂)
ポリウレタン樹脂としては、イソシアネート化合物と、ジオール化合物とを反応して得られるポリウレタン、イソシアネート化合物と、ジオール化合物、さらに、ポリアミンなどの鎖長延長剤を反応させることにより得られるポリウレタンなどが挙げられる。また、ポリウレタン樹脂は、硫黄原子を含有するものでもよい。その場合には、上記ジオールの一部又は全部を、ポリチオール及び含硫黄ポリオールから選択されるものとするとよい。ポリウレタン樹脂を使用することで、有機ガラスとの接着性を良好になりやすい。
【0068】
(エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂)
エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂としては、非架橋型のエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂であってもよいし、また、高温架橋型のエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂であってもよい。また、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂としては、エチレン-酢酸ビニル共重合体けん化物、エチレン-酢酸ビニルの加水分解物などのようなエチレン-酢酸ビニル変性体樹脂も用いることができる。
【0069】
エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂は、JIS K 6730「エチレン・酢酸ビニル樹脂試験方法」に準拠して測定される酢酸ビニル含量が好ましく10~50質量%、より好ましくは20~45質量%である。酢酸ビニル含量をこれら下限値以上とすることで、上記接着力が高くなり、また、合わせガラスの耐貫通性が良好になりやすくなる。また、酢酸ビニル含量をこれら上限値以下とすることで、合わせガラス用中間膜の破断強度が高くなり、合わせガラスの耐衝撃性が良好になる。
【0070】
(アイオノマー樹脂)
アイオノマー樹脂としては、特に限定はなく、様々なアイオノマー樹脂を用いることができる。具体的には、エチレン系アイオノマー、スチレン系アイオノマー、パーフルオロカーボン系アイオノマー、テレケリックアイオノマー、ポリウレタンアイオノマー等が挙げられる。これらの中では、合わせガラスの機械強度、耐久性、透明性などが良好になる点、ガラスへの接着性に優れる点から、エチレン系アイオノマーが好ましい。
【0071】
エチレン系アイオノマーとしては、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマーが透明性と強靭性に優れるため好適に用いられる。エチレン・不飽和カルボン酸共重合体は、少なくともエチレン由来の構成単位および不飽和カルボン酸由来の構成単位を有する共重合体であり、他のモノマー由来の構成単位を有していてもよい。
不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等が挙げられ、アクリル酸、メタクリル酸が好ましく、メタクリル酸が特に好ましい。また、他のモノマーとしては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、1-ブテン等が挙げられる。
エチレン・不飽和カルボン酸共重合体としては、該共重合体が有する全構成単位を100モル%とすると、エチレン由来の構成単位を75~99モル%有することが好ましく、不飽和カルボン酸由来の構成単位を1~25モル%有することが好ましい。
エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマーは、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体が有するカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和または架橋することにより得られるアイオノマー樹脂であるが、該カルボキシル基の中和度は、通常は1~90%であり、好ましくは5~85%である。
【0072】
アイオノマー樹脂におけるイオン源としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等のアルカリ金属、マグネシウム、カルシウム、亜鉛等の多価金属が挙げられ、ナトリウム、亜鉛が好ましい。
【0073】
アイオノマー樹脂の製造方法としては特に限定はなく、従来公知の製造方法によって、製造することが可能である。例えばアイオノマー樹脂として、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマーを用いる場合には、例えば、エチレンと不飽和カルボン酸とを、高温、高圧下でラジカル共重合を行い、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体を製造する。そして、そのエチレン・不飽和カルボン酸共重合体と、上記のイオン源を含む金属化合物とを反応させることにより、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマーを製造することができる。
【0074】
(可塑剤)
中間膜は、上記第1及び第2の樹脂に加えてさらに可塑剤を含有してもよい。中間膜は、可塑剤を含有することにより柔軟となり、ガラスなどに対する接着性を高くすることもできる。ただし、本発明の中間膜は、可塑剤を含有しないか、含有していても少量であることが好ましい。可塑剤を少量のみ含有し又は含有させないことで、中間膜から有機ガラスに可塑剤が移行して有機ガラスに曇りが生じるなどの不具合が防止できる。
また、本発明では、可塑剤が少量であっても、上記のように、例えば、アクリル樹脂と、ポリビニルアセタール樹脂などのアクリル樹脂以外の樹脂を併用することで、中間膜を柔軟にしつつ、接着力を優れたものにすることができる。
中間膜における可塑剤の含有量は、中間膜全体に含まれる樹脂100質量部に対して、例えば、0質量部以上10質量部未満であり、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下、さらに好ましくは1質量部以下、最も好ましくは0質量部である。すなわち、最も好ましくは中間膜が可塑剤を含有しない。
【0075】
また、中間膜が多層構造を有する場合(すなわち、樹脂層を複数有する場合)、一部の樹脂層が可塑剤を含有し、他の樹脂層が可塑剤を含有しなくてもよい。また、各樹脂層の可塑剤の含有量が互いに異なっていてもよい。
例えば、
図3に示すように、中間膜が第1、第2、及び第3の樹脂層21、22、23を含有する場合、第1の樹脂層21における樹脂100質量部に対する可塑剤の含有量を、第2及び第3の樹脂層22、23における樹脂100質量部に対する可塑剤の含有量より多くしてもよい。また、第1の樹脂層21のみに可塑剤を含有して、第2及び第3の樹脂層22、23に可塑剤を含有させなくしてもよい。これら構成によれば、第1の樹脂層21(コア層)に可塑剤を比較的多く含有しても、第1及び第3の樹脂層22、23(スキン層)が存在することで、可塑剤が中間膜表面に移行しにくくなるので、有機ガラスにおける曇りは発生しにくくなる。
また、同様の観点から、中間膜が多層構造を有する場合、有機ガラスに接する樹脂層に可塑剤を含有させず、他の樹脂層に可塑剤を含有させてもよいし、有機ガラスに接する樹脂層における樹脂100質量部に対する可塑剤の含有量を、他の樹脂層における樹脂100質量部に対する可塑剤の含有量より少なくしてもよい。
【0076】
可塑剤としては、例えば、有機エステル可塑剤、並びに有機リン酸可塑剤及び有機亜リン酸可塑剤などのリン酸可塑剤等が挙げられる。可塑剤は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、有機エステル可塑剤が好ましい。有機エステル可塑剤としては、一塩基性有機酸エステル及び多塩基性有機酸エステル等が挙げられる。
【0077】
一塩基性有機酸エステルとしては、グリコールと、一塩基性有機酸とのエステルが挙げられる。グリコールとしては、各アルキレン単位が炭素数2~4、好ましくは炭素数2又は3であり、アルキレン単位の繰り返し数が2~10、好ましくは2~4であるポリアルキレングリコールが挙げられる。また、グリコールとしては、炭素数2~4、好ましくは炭素数2又は3のモノアルキレングリコール(すなわち、繰り返し単位が1)でもよい。
グリコールとしては、具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ブチレングリコールなどが挙げられる。
一塩基性有機酸としては、炭素数3~10の有機酸が挙げられ、具体的には、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2-エチル酪酸、ヘプチル酸、n-オクチル酸、2-エチルヘキシル酸、n-ノニル酸及びデシル酸などが挙げられる。
【0078】
具体的な一塩基性有機酸としては、トリエチレングリコールジ-2-エチルブチレート、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールジカプリレート、トリエチレングリコールジ-n-オクタノエート、トリエチレングリコールジ-n-ヘプタノエート、テトラエチレングリコールジ-n-ヘプタノエート、テトラエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート、ジエチレングリコールジ-2-エチルブチレート、ジエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート、ジプロピレングリコールジ-2-エチルブチレート、トリエチレングリコールジ-2-エチルペンタノエート、テトラエチレングリコールジ-2-エチルブチレート、ジエチレングリコールジカプリエート、トリエチレングリコールジ-n-ヘプタノエート、テトラエチレングリコールジ-n-ヘプタノエート、トリエチレングリコールジ-2-エチルブチレート、エチレングリコールジ-2-エチルブチレート、1,2-プロピレングリコールジ-2-エチルブチレート、1,3-プロピレングリコールジ-2-エチルブチレート、1,4-ブチレングリコールジ-2-エチルブチレート、1,2-ブチレングリコールジ-2-エチルブチレートなどが挙げられる。
【0079】
また、多塩基性有機酸エステルとしては、例えば、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等の炭素数4~12の二塩基性有機酸と、炭素数4~10のアルコールとのエステル化合物が挙げられる。炭素数4~10のアルコールは、直鎖でもよいし、分岐構造を有していてもよいし、環状構造を有してもよい。
具体的には、セバシン酸ジブチル、アゼライン酸ジオクチル、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ヘキシルシクロヘキシル、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ヘプチルノニル、ジブチルカルビトールアジペート、混合型アジピン酸エステルなどが挙げられる。また、油変性セバシン酸アルキドなどでもよい。混合型アジピン酸エステルとしては、炭素数4~9のアルキルアルコール及び炭素数4~9の環状アルコールから選択される2種以上のアルコールから作製されたアジピン酸エステルが挙げられる。
上記有機リン酸可塑剤としては、トリブトキシエチルホスフェート、イソデシルフェニルホスフェート及びトリイソプロピルホスフェート等のリン酸エステルなどが挙げられる。
可塑剤としては、上記したなかでも、トリエチレングリコール-ジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)が特に好適に用いられる。
【0080】
(光重合開始剤)
本発明の中間膜は、活性エネルギー線によって硬化された樹脂を含む場合、光重合開始剤が配合されることが好ましい。光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、α-アミノアルキルフェノン、α-ヒドロキシアルキルフェノンなどのアセトフェノン系化合物、アシルフォスフィンオキサイド系化合物、チタノセン系化合物、オキシムエステル系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、チオキサントン等が挙げられる。これらの中では、アセトフェノン系化合物が好ましい。
上記光ラジカル重合開始剤のうち市販されているものとしては、例えば、IRGACURE184、IRGACURE369、IRGACURE379、IRGACURE379EG、IRGACURE651、IRGACURE784、IRGACURE819、IRGACURE907、IRGACURE2959、IRGACURE OXE01、ルシリンTPO(いずれもBASF社製)、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル(いずれも東京化成工業社製)等が挙げられる。
光重合開始剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0081】
中間膜が単層構造を有する場合、光重合開始剤は、その単層からなる中間膜に配合されていればよい。一方で、中間膜が多層構造を有する場合、光重合開始剤は、活性エネルギー線によって硬化された樹脂を含有する樹脂層に配合されていればよい。
中間膜における光重合開始剤の配合量は、各層それぞれにおいて、活性エネルギー線によって硬化された樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上10質量部以下、より好ましくは0.5質量部以上5質量部以下である。光重合開始剤の配合量をこれら下限値以上とすることで、第1成分の光硬化性が良好となる。また、上限値以下とすることで、配合量に見合った光硬化性を発現できる。
【0082】
(その他の添加剤)
中間膜は、樹脂として活性エネルギー線によって硬化された樹脂を含む場合、その樹脂を含む層に連鎖移動剤が配合されてもよい。連鎖移動剤としては、特に限定されないが、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)などのメルカプト化合物が挙げられる。連鎖移動剤を使用すると、活性エネルギー線によって硬化された樹脂が高分子量化することが抑制できるので、その層における貯蔵弾性率(G1’)又は貯蔵弾性率(G2’)を低くできる。
また、中間膜には、連鎖移動剤以外にも種々の添加剤が配合されてもよい。具体的には、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、接着力調整剤、顔料、染料、蛍光増白剤、結晶核剤等が挙げられる。中間膜が多層構造を有する場合、添加剤の種類、配合量は、層毎に異なっていてもよいし、全ての層において同じでもよい。
【0083】
<中間膜の製造方法>
(単層構造の中間膜の製造方法)
次に、中間膜の製造方法について説明する。中間膜の製造方法の説明においてはまず単層構造の中間膜の製造方法について説明するが、以下では、中間膜に含有される第1の樹脂が活性エネルギー線によって硬化された樹脂である場合の実施形態について詳しく説明する。
【0084】
本発明の一実施形態における中間膜の製造方法では、まず、中間膜を形成するための硬化性樹脂材料を調製するとよい。本発明の一実施形態では、硬化性樹脂材料は、第1の樹脂の前駆体を含有する。また、硬化性樹脂材料は、第1の樹脂の前駆体に加えて、第2の樹脂を含むことが好ましい。また、硬化性樹脂材料は、光重合開始剤を含有することが好ましく、さらに必要に応じてその他の添加剤を含有してもよい。硬化性樹脂材料は通常液状である。
【0085】
また、本発明では、上記のとおり、第1の樹脂がアクリル樹脂であることが好ましい。第1の樹脂がアクリル樹脂である場合、硬化性樹脂材料に配合される第1の樹脂の前駆体としては、アクリルモノマーなどのアクリル重合体を構成するモノマー成分を使用するとよい。第1の樹脂の前駆体がモノマー成分である場合には、後述する活性エネルギー線の照射により、モノマー成分が重合されて重合体となる。また、硬化性樹脂材料に配合される第2の樹脂としては、アクリル樹脂以外の樹脂を使用すればよいが、好ましくはポリビニルアセタール樹脂を使用する。ポリビニルアセタール樹脂などの第2の樹脂は、既に重合されたものを硬化性樹脂材料に配合すればよい。
本製造方法では、第1の樹脂の前駆体と、第2の樹脂を混合することで、中間膜には海島構造などの相分離構造を形成しやすくなる。
【0086】
硬化性樹脂材料の調製方法は、特に限定されないが、第1の樹脂の前駆体に加え、必要に応じて配合される第2の樹脂、光重合開始剤、可塑剤、その他の添加剤を混合機において混合させることで調製するとよい。また、硬化性樹脂材料には、必要に応じて溶剤が加えられて、溶剤により希釈されてもよい。溶剤により希釈する場合、後述するように活性エネルギー線を照射する前などに乾燥などして、溶剤を除去とするとよい。
混合機としては、特に限定されないが、自転・公転ミキサー、攪拌翼を備える攪拌機等の公知の攪拌機を使用することができる。
【0087】
上記のように調製された硬化性樹脂材料は、次に、膜状に形成すればよい。硬化性樹脂材料を膜状に形成する方法は、特に限定されないが、基材上、又は離型処理を施した離型フィルム上に硬化性樹脂材料を塗工して行えばよい。
また、基板上に配置した基材、又は離型処理を施した離型フィルム上に、硬化性樹脂材料を塗工などした後、基板の上にスペーサーなどを介して、別の基板を重ね合わせて、2枚の基板の間に膜状の硬化性樹脂材料を形成すればよい。これにより、硬化性樹脂材料の硬化物(すなわち、中間膜)は、スペーサーの高さに応じた厚さを有することになる。また、別の基板の硬化性樹脂材料に接触する面には、基材、又は離型処理を施した離型フィルムなどが配置されていればよい。2枚の基板は、少なくともいずれか一方が活性エネルギー線を透過すればよく、通常はガラス板が使用される。
【0088】
次に、膜状に形成された硬化性樹脂材料に、活性エネルギー線を照射する。活性エネルギー線としては、第1の樹脂を硬化できる限り限定されないが、紫外線、電子線、α線、β線、γ線等の電離放射線が挙げられる。これらのなかでも特に、硬化性および利便性の点から紫外線(UV)が好ましい。活性エネルギー線は、膜状に形成された硬化性樹脂材料の一方の面側(すなわち、基板の一方の面側)から照射してもよいし、硬化性樹脂材料の両面側(すなわち、基板の両面側)から照射してもよい。
【0089】
活性エネルギー線は、その照射量を適宜調整することで、硬化性樹脂材料に含有される第1の樹脂の硬化度(重合度)を調整し、それにより、第1の樹脂部分の貯蔵弾性率(G1’)も調整できる。具体的には、活性エネルギー線の照射量を大きくすれば、第1の樹脂の重合度が高くなり、貯蔵弾性率(G1’)が大きくなる。また、活性エネルギー線の照射量を小さくすれば、第1の樹脂の重合度が低くなり、貯蔵弾性率(G1’)が小さくなる。
活性エネルギー線の照射量は、特に限定されないが、貯蔵弾性率(G1’)及び積(kG1’)を所望の範囲内に調整しやすくする観点から、100mJ/cm2以上15000mJ/cm2以下が好ましく、500mJ/cm2以上3000mJ/cm2以下がより好ましい。
【0090】
活性エネルギー線が照射され、第1の樹脂が硬化されることで、第1の樹脂部分と、第2の樹脂部分が相分離された中間膜が得られる。得られた中間膜に、基材や離型フィルムが積層されている場合には、それらは適宜中間膜から剥離させるとよい。
【0091】
なお、単層構造の中間膜の製造方法は、上記方法に限定されず、他のいかなる方法でもよい。例えば、第1及び第2の樹脂、及びその他必要に応じて配合される添加剤を混練して樹脂組成物を得て、得られた樹脂組成物を押出成形、プレス成形などして中間膜を得てもよい。この場合、第1及び第2の樹脂は予め重合されたものを使用すればよい。したがって、第1の樹脂を活性エネルギー線によって硬化された樹脂とする場合でも、活性エネルギー線を照射などすることで、第1の樹脂の前駆体を予め硬化(重合)しておき、その硬化(重合)して得た第1の樹脂を、他の成分と混合させればよい。
【0092】
(多層構造の中間膜の製造方法)
多層構造の中間膜の製造方法は、予め作製した複数の樹脂層を積層することで得ることができる。各樹脂層の作製方法は、特に限定されないが、樹脂層を構成する樹脂が2成分、又はそれ以上を含有する場合には、上記した単層構造の中間膜と同様の方法で作製するとよい。
また、樹脂層を構成する樹脂が1成分からなる場合には、例えば、その樹脂、及びその他必要に応じて配合される添加剤などを混練して樹脂組成物を得て、得られた樹脂組成物を押出成形、プレス成形などして樹脂層を作製するとよい。
また、例えば、樹脂の前駆体、及びその他必要に応じて配合される添加剤などを混合して、硬化性樹脂材料を作製して、その硬化性樹脂材料を膜状にして硬化させればよい。
硬化性樹脂材料を膜状にする方法、及び硬化する方法は、上記した単層構造の中間膜を製造する方法で示した方法で行うとよい。
【0093】
[無機ガラス]
本発明において使用する無機ガラスは、無機ガラス板からなるものであり、特に限定されるものではないが、例えば、フロート板ガラス、強化ガラス、着色ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入り板ガラス、線入り板ガラス、紫外線吸収板ガラス、赤外線反射板ガラス、赤外線吸収板ガラス、グリーンガラス等が挙げられる。無機ガラスは表面処理などが行われてもよい。
【0094】
無機ガラスの厚さ(Ta)は、特に限定されないが、好ましくは0.1mm以上、さらに好ましくは1.0mm以上であり、また、好ましくは5.0mm以下、さらに好ましくは3.2mm以下である。
無機ガラスの線膨張係数(Ca)は、特に限定されないが、好ましくは6.0×10-6K-1以上、より好ましくは8.0×10-6K-1以上であり、好ましくは1.5×10-5K-1以下、より好ましくは9.5×10-6K-1以下である。無機ガラスの線膨張係数は、JISR 3102によって測定可能である。
無機ガラスは、厚さ及び線膨張係数をこれら所望の範囲内にすることで、上記した係数(k)の値を所望の範囲内に調整するとよい。
【0095】
[有機ガラス]
本発明において使用する有機ガラスは、有機ガラス板からなるものであり、特に限定されるものではないが、ポリカーボネート板、ポリメチルメタクリレート板、アクリロニトリルスチレン共重合体板、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体板、ポリエステル板、フッ素系樹脂板、ポリ塩化ビニル板、塩素化ポリ塩化ビニル板、ポリプロピレン板、ポリスチレン板、ポリサルホン板、エポキシ樹脂板、フェノール樹脂板、不飽和ポリエステル樹脂板、ポリイミド樹脂板等が挙げられる。有機ガラスは、適宜表面処理などが行われてもよい。
上記した中では、透明性、耐衝撃性、耐燃焼性に優れる点から、ポリカーボネート板が好ましく、透明性が高く、耐候性、機械強度に優れる点から、ポリメチルメタクリレート板が好ましく、これらの中ではポリカーボネート板が好ましい。
【0096】
具体的な有機ガラスの厚さ(Tb)は、特に限定されないが、好ましくは0.1mm以上、さらに好ましくは0.3mm以上であり、また、好ましくは5.0mm以下、さらに好ましくは3.0mm以下である。
有機ガラスの線膨張係数(Cb)は、一般的に無機ガラスの線膨張係数(Ca)よりも大きくなる。有機ガラスの具体的な線膨張係数(Cb)は、特に限定されないが、好ましくは1.5×10-5K-1以上、より好ましくは2.0×10-5K-1以上であり、好ましくは1.2×10-4K-1以下、より好ましくは8.0×10-5K-1以下である。有機ガラスの線膨張係数は、例えばJIS K 7197によって測定可能である。
【0097】
[合わせガラス]
本発明の合わせガラスは、中間膜と、中間膜を介して積層される無機ガラスと有機ガラスとを備える。本発明の合わせガラスに使用される中間膜、無機ガラス、及び有機ガラスは上記で説明したとおりであるので、その説明は省略する。
本発明の合わせガラスは、各種分野に使用可能である。具体的には、自動車、電車などの車両、船舶、飛行機などの各種乗り物、あるいは、ビル、マンション、一戸建て、ホール、体育館などの各種建築物等の窓ガラスに使用される。
【0098】
(合わせガラスの製造方法)
本発明の合わせガラスは、無機ガラスと有機ガラスの間に中間膜を配置させ、その後、これらを加熱圧着させることで製造するとよい。無機ガラスと有機ガラスの間に中間膜を配置させる方法は、特に限定されず、例えば、予め製造しておいた中間膜を無機ガラスと有機ガラスの間に挟みこむとよい。また、中間膜が多層構造である場合には、別々に用意した複数の樹脂層を無機ガラスと有機ガラスの間に重ね合わせ、その後加熱圧着させてもよい。
【0099】
無機ガラス、有機ガラスの間に、中間膜又は複数の樹脂層を配置させた後、加熱圧着する前に、必要に応じて、無機ガラスと有機ガラスの間に残留する空気を脱気してもよい。脱気の方法は、特に限定されないが、押圧ロールに通したり、又はゴムバックに入れて減圧吸引したりして行うとよい。
また、加熱圧着する前に、仮接着を行ってもよい。仮接着は、例えば、中間膜又は複数の樹脂層が間に配置された無機ガラスと有機ガラスとを、必要に応じて加熱しながら、比較的低い圧力により押圧することで行うとよい。仮接着は、例えば真空ラミネーターにて行うとよい。仮接着は、脱気を行う場合には、脱気後に行ってもよいし、脱気とともに行ってもよい。
【0100】
加熱圧着の方法は、特に限定されないが、無機ガラスと有機ガラスの間に中間膜又は複数の樹脂層を配置した状態で、これらを加熱しながら圧力を加えるとよい。加熱温度は、好ましくは60℃以上150℃以下、より好ましくは70℃以上120℃以下である。また、圧力は0.4MPa以上1.5MPa以下であることが好ましく、0.5MPa以上1.3MPa以下であることがより好ましい。また、加熱圧着は、オートクレーブを用いて行う方法、加熱プレスで行う方法などが挙げられるが、オートクレーブを用いて行うことが好ましい。オートクレーブなどを用いて加熱圧着することで、その加熱圧着後の冷却において、合わせガラスに反りが発生しやすいが、本発明では、上記した中間膜を使用することで、そのような反りが抑制される。
【実施例】
【0101】
本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0102】
物性の測定方法及び評価方法は以下のとおりである。
[貯蔵弾性率(G1’)、(G2’)]
各樹脂部分からなるフィルム状のサンプルを、長さ10mm、幅5mmで切り出し、動的粘弾性測定装置(アイティー計測制御株式会社製、商品名「DVA-200」)を用いて粘弾性測定を行い、80℃における貯蔵弾性率(G1’)、(G2’)を測定した。測定条件は、以下のとおりであった。
(測定条件)
変形様式:せん断モード、測定温度:-50℃~200℃、昇温速度:5℃/分、測定周波数:1Hz、歪0.1%、下限弾性率:10Pa,下限動値から0.01cN
【0103】
[評価方法]
(反り)
各実施例、比較例で得られた、オートクレーブ処理直後の合わせガラスサンプルのガラス面に25mm×305mm、厚さ2mmのSUS板を重ね、端から35mmをクランプで挟んで固定し、クランプから270mm離れた位置における合わせガラスサンプルとSUS板の端の隙間を反りとして測定し、その反り量により以下の評価基準で評価した。なお、反り量は、有効数字を小数点第1位までの値にして評価した。
A:0.3mm以下
B:0.3mmを超え、1.0mm以下
C:1.0mmを超える
【0104】
(発泡)
JIS R3211の温度依存性試験に倣って、各実施例、比較例で得られた合わせガラスサンプルを、-40℃の環境下に6時間保持し、その後、23℃の環境下でサンプルが23℃になるまで放置した。次に、72℃の環境下に3時間放置した後、さらに23℃の環境下に1時間放置して、発泡の有無を観察した。発泡が観察されなかったものを「A」、観察されたものを「B」とした。
【0105】
(曇り)
各実施例、比較例で得られた合わせガラスサンプルにおいて、有機ガラスに曇りが見られなかったものを「A」、有機ガラスに曇りが見られたものを「B」とした。
【0106】
[樹脂層1~4の調製]
樹脂層1~4は、それぞれ以下の方法で作製した。
各樹脂層の作製においては、表1に示す成分を表1に示す所定の比率で攪拌容器に配合した。配合物を自転・公転ミキサー(「あわとり練太郎 ARE-310」、株式会社シンキー社製)を用いて、2000rpmで9分間攪拌し、その後2200rpmで3分間脱泡処理を行なった。配合物が均一となるまでこの作業を繰り返し、液状の硬化性樹脂材料を得た。
【0107】
塗工ガラスの上面にPET離型フィルム(商品名「PET50D1-C」、ニッパ社製)の離型処理面が上になるように酢酸エチルで密着させた。PET離型フィルムの離型処理面上に上記で得た硬化性樹脂材料を塗工した後、PET離型フィルム上の端部2辺に硬化物が所定の厚みになるようにスペーサーを配置した。塗工ガラスと同じサイズの紫外線透過ガラスを用意し、紫外線透過ガラスの上にもPET離型フィルムの離型処理面が露出するように酢酸エチルで密着させた。塗工ガラスと紫外線透過ガラスの間に、硬化性樹脂材料、及びスペーサーを挟み込み、かつPET離型フィルムの離型処理面が内側に向くように、硬化性樹脂材料の上に紫外線透過ガラスを被せた。その後、紫外線透過ガラスの上から、紫外線照射機を用いて照度3mW/cm2で、照射量が900mJ/cm2となるように紫外線を照射させて、硬化性樹脂材料を硬化させ樹脂層(樹脂フィルム)を得た。樹脂層1~4は、コア層に使用するものを400μm、スキン層に使用するものを200μmとした。
樹脂層1~4においては、アクリル樹脂が島部を構成し、ポリビニルアセタールが海部を構成し、アクリル樹脂及びポリビニルアセタールにより海島構造が形成されていた。
【0108】
[樹脂層5~7の調製]
樹脂層5は、表1に示す配合に従ってポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを混合して、押出成形することで用意した。ポリウレタン樹脂(商品名「AG8451」、ルブリゾール社製)をシート状に成形し、樹脂層6を用意した。また、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂(商品名「EV40W」三井・デュポン・ケミカル社製、酢酸ビニル含有量41質量%)をシート状に成形し、樹脂層7を用意した。樹脂層5~7は、コア層に使用するものを400μm、スキン層に使用するものを200μmとした。
得られた樹脂層(樹脂フィルム)1~7は、上記した方法に従って貯蔵弾性率を測定して、第1及び第2の樹脂部分の貯蔵弾性率とした。
【0109】
【0110】
表1におけるポリビニルアセタール樹脂は以下のとおりである。なお、ポリビニルアセタール1、ポリビニルアセタール2及びポリビニルアセタール3は、いずれもポリビニルブチラール樹脂であった。
【表2】
【0111】
表1におけるポリビニルアセタール樹脂以外の各成分は、以下のとおりである。
MEDOL-10:(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルアクリレート、商品名「MEDOL-10」、大阪有機化学工業株式会社
BA:n-ブチルアクリレート
BzA:ベンジルアクリレート
CHA:シクロヘキシルアクリレート
可塑剤:トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)
光重合開始剤:商品名「Irgacure184」、チバスペシャリティケミカルズ社製
【0112】
[実施例1~6、比較例1~4]
(合わせガラスの作製)
無機ガラスとしてフロートガラスを、有機ガラスとしてポリカーボネート板(商品名「タキロンCIC1600」、ユカタパネル社製)を用意した。フロートガラス及びポリカーボネート板は、25mm×305mmの大きさであり、厚さは表3に示すとおりである。
上記で作製した各樹脂層を30mm×310mmに切り出し、表3に示すとおりの樹脂層をコア層(400μm)、スキン層(200μm)として使用して、ガラス板と、ポリカーボネート板の間に、スキン層/コア層/スキン層の順に樹脂層を重ね合わせた。これら樹脂層を間に配置したフロートガラスと、ポリカーボネート板を、テープで仮止めし、真空ラミネーター(商品名「MVLP500/600」、株式会社名機製作所製)において60℃、0.1MPaの条件で3分間仮接着した。その後、オートクレーブ(商品名「HP-5050MAH-H14」、株式会社協真エンジニアリング製)において80℃、0.5MPaの条件で1時間本圧着を行った。その後、ガラスからはみ出た部分を切り落として、各実施例、比較例の合わせガラスサンプルを得た。中間膜の厚さは800μmであった。
【0113】
[実施例7]
(中間膜1の作製)
厚さを800μmに変更したこと以外は、表1に示すとおりに樹脂層2と同様の方法により、樹脂フィルム(中間膜1)を作製した。中間膜1においては、アクリル樹脂が島部(第1の樹脂部分)を構成し、ポリビニルアセタール樹脂が海部(第2の樹脂部分)を構成し、アクリル樹脂及びポリビニルアセタール樹脂により海島構造が形成されていた。
【0114】
(合わせガラスの作製)
実施例1と同様のフロートガラス、ポリカーボネート板を用意した。上記で作製した中間膜1を30mm×310mmに切り出し、ガラス板と、ポリカーボネート板の間に、中間膜1を挟み込んだ。中間膜1を挟み込んだフロートガラスと、ポリカーボネート板を、テープで仮止めし、真空ラミネーター(商品名「MVLP500/600」、株式会社名機製作所製)において60℃、0.1MPaの条件で3分間仮接着した。その後、オートクレーブ(商品名「HP-5050MAH-H14」、株式会社協真エンジニアリング製)において80℃、0.5MPaの条件で1時間本圧着を行った。ガラスからはみ出た部分を切り落として、実施例7の合わせガラスサンプルを得た。中間膜の厚さは800μmであった。
【0115】
(貯蔵弾性率測定用サンプルの作製)
本実施例においては、アクリルモノマーと光重合開始剤のみを表1に示す配合部数で配合した硬化性樹脂材料を、中間膜1の作製と同様の方法により塗工及び硬化して、厚さ800μmのフィルムサンプルを得て、そのフィルムサンプルを用いて、第1の樹脂部分(島部)の貯蔵弾性率(G1’)を測定した。
同様に、ポリビニルアセタール樹脂1をシート状にして厚さ800μmのフィルムサンプルを得て、そのフィルムサンプルを用いて、第2の樹脂部分(海部)の貯蔵弾性率(G2’)を測定した。
【表3】
【0116】
以上の各実施例では、第1の樹脂部分の貯蔵弾性率(G1’)と、係数(k)の積(kG1’)を所定値未満とし、かつ第2の樹脂部分の貯蔵弾性率(G2’)を所定値より大きくすることで、合わせガラスをオートクレーブにて製造しても反りが発生しなかった。また、合わせガラスに対して、加熱及び冷却を行っても気泡が発生しなかった。
それに対して、各比較例では、係数(k)の積(kG1’)を所定値以上とし、または、第2の樹脂部分の貯蔵弾性率(G2’)を所定値以下とすることで、反り又は気泡のいずれか一方が発生した。
【符号の説明】
【0117】
10、20、30 中間膜
11 無機ガラス
12 有機ガラス
21 第1の樹脂層
22 第2の樹脂層
23 第3の樹脂層