(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-31
(45)【発行日】2023-11-09
(54)【発明の名称】ポリマー反応器制御のための遠隔圧力検知
(51)【国際特許分類】
C08F 2/00 20060101AFI20231101BHJP
C08F 2/34 20060101ALI20231101BHJP
C08F 10/06 20060101ALN20231101BHJP
【FI】
C08F2/00 Z
C08F2/34
C08F10/06
(21)【出願番号】P 2020538071
(86)(22)【出願日】2018-12-14
(86)【国際出願番号】 US2018065714
(87)【国際公開番号】W WO2019152105
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2021-09-14
(32)【優先日】2018-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590001706
【氏名又は名称】ダブリュー・アール・グレース・アンド・カンパニー-コーン
【氏名又は名称原語表記】W R GRACE & CO-CONN
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】ドラビッシュ、ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンエドモンド、ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ゲルツァー、トーマス
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-532287(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2001/0034422(US,A1)
【文献】特表2011-514251(JP,A)
【文献】特開昭61-179207(JP,A)
【文献】特表2007-500279(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00- 2/60
C08F 6/00-246/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動床反応器を制御するための方法であって、
反応器内に、モノマー及び触媒を含む流動床を形成して、ポリマー生成物を生成することと、
前記ポリマー生成物を前記反応器から生成物排出タンクに排出することと、
前記ポリマー生成物を前記生成物排出タンクからブロータンクに排出することと、
前記ポリマー生成物が
ブロータンク内でフラッシュされるときにブロータンク圧力を測定することと、
前記測定されたブロータンク圧力に基づいて、1つ以上の反応器動作入力を変更することと、を含む、流動床反応器を制御するための方法。
【請求項2】
ブロータンクピーク圧力を決定することと、前記ブロータンクピーク圧力を使用して、前記1つ以上の反応器動作入力を変更することと、を更に含む、請求項1に記載の流動床反応器を制御するための方法。
【請求項3】
前記ポリマー生成物を前記生成物排出タンクから前記ブロータンクに2回以上排出することと、
前記ポリマー生成物が前記生成物排出タンクから前記ブロータンクに排出される度にブロータンク圧力を測定して、各々が、前記ブロータンクへの生成物の排出に対応する、複数のブロータンク圧力を決定することと、
前記複数のブロータンク圧力に基づいて、前記1つ以上の反応器動作入力を変更することと、を更に含む、請求項1に記載の流動床反応器を制御するための方法。
【請求項4】
前記ブロータンク内への生成物の各排出について
ブロータンクピーク圧力を測定
して複数のブロータンクピーク圧力を決定することと、
前記複数のブロータンクピーク圧力に基づいて、前記1つ以上の反応器動作入力を変更することと、を更に含む、請求項3に記載の流動床反応器を制御するための方法。
【請求項5】
前記複数のブロータンクピークのうちの2つ以上を平均化して、平均ブロータンクピーク圧力を得ることと、
前記平均ブロータンクピーク圧力に基づいて、前記1つ以上の反応器動作入力を変更することと、を更に含む、請求項4に記載の流動床反応器を制御するための方法。
【請求項6】
前記平均ブロータンクピーク圧力が、より最近の測定値を強調する加重平均である、請求項5に記載の流動床反応器を制御するための方法。
【請求項7】
生成物が前記ブロータンク内に排出される度に、ブロータンク圧力プロファイルを作成することと、
前記ブロータンク圧力プロファイルを使用して、前記1つ以上の反応器動作入力を変更することと、を更に含む、請求項1に記載の流動床反応器を制御するための方法。
【請求項8】
複数のブロータンク圧力プロファイルが、前記1つ以上の反応器動作入力を変更するために使用される、請求項7に記載の流動床反応器を制御するための方法。
【請求項9】
前記1つ以上の反応器動作入力が、前記反応器内の湿潤ゾーン又は流動床浸透を制御するように変更される、請求項1に記載の流動床反応器を制御するための方法。
【請求項10】
反応器動作入力が、リサイクルガス流量、リサイクルガス冷却、床温度設定点、モノマー原料の追加、流動媒体の追加、流動媒体の除去、前記生成物排出タンクへの生成物の排出、触媒/共触媒/プロ触媒の添加、触媒/共触媒/プロ触媒の除去、モノマー分圧、前記反応器に入る材料の相、及び前記反応器に入るガス/液体比率(又は重量パーセント凝縮)のうちの1つ以上を含む、請求項1に記載の流動床反応器を制御するための方法。
【請求項11】
前記生成物を前記ブロータンクに排出する前に、前記生成物排出タンクから圧力を解放することを更に含む、請求項1に記載の流動床反応器を制御するための方法。
【請求項12】
前記生成物排出タンクからの前記圧力が、前記反応器の低圧側(又は前記反応器の頂部)に解放される、請求項11に記載の流動床反応器を制御するための方法。
【請求項13】
前記ポリマー生成物を前記生成物排出タンクから前記ブロータンクに排出する前に、前記生成物排出タンクを第1の基準圧力に変更することを更に含む、請求項1に記載の流動床反応器を制御するための方法。
【請求項14】
前記ポリマー生成物を前記生成物排出タンクから前記ブロータンクに排出する前に、前記ブロータンクを第2の基準圧力に変更することを更に含む、請求項1に記載の流動床反応器を制御するための方法。
【請求項15】
変化率及び/又は変化率の加速度が、前記複数のブロータンク圧力測定値から決定され、前記1つ以上の反応器動作入力を制御するために使用される、請求項3に記載の流動床反応器を制御するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2018年1月31日の出願日を有する米国仮出願第62/624,321号に基づき、その優先権を主張するものであり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本開示は、反応器システム制御のための方法に関する。より具体的には、本開示は、ポリマーの生成における流動床反応器の制御に関する。
【背景技術】
【0003】
流動床反応器は、ポリマー生成の技術分野において既知である。流動床は、流体様特性を呈する固体微粒子混合物である。ポリマー反応器では、流動床は、典型的には、加圧モノマー及び他の流体を触媒及びポリマー粒子の床に導入することによって作成される。流動床は、流体全体にわたって触媒及びポリマー粒子を分散及び懸濁する。流動床を伴わないと、触媒微粒子は懸濁から外れて、反応器の底部に凝集物する傾向を有する。
【0004】
触媒粒子が放置されて凝集し、反応器の底部に固体塊を形成すると、触媒微粒子が流体を移動させるため、流体/触媒相互作用は低減される。流動床は、触媒の有効表面積を増加させることによって触媒の有効性を最大化することに役立ち、系内のモノマー及びポリマーを触媒の全表面積の周りに流れさせ、それと界面作用させることを可能にする。流動床はまた、ポリマー/モノマー組成物を十分に混合したまま維持し、流動床内に均質な環境を作成し、均一かつ一貫したポリマー生成物の生産を支持するのに役立つ。加えて、混合は、分配プレートの塊状化、ファウリング、及び反応器内の温度帯域の形成などの望ましくない発生を回避するのを支援することができる。
【0005】
流動床は、一般に、反応器の底部に維持される。流動床を制御し、反応器を最適に運転することは、困難な課題であり得、エンジニア及びオペレータは、この目標をより効果的に達成するために新しい方式で絶えず努力している。更に、この課題の難しさは、後付け機器又は既存の機器を使用して新たな生産プロセスを採用する際に、拡大する可能性がある。流動床内の条件を監視するための1つの方法は、反応器内表面で温度測定を行うことであった。しかしながら、各反応器は固有の内部幾何学形状を有し、表面温度測定値は、反応器内の環境を制御及び理解するために理想的ではないことが証明されている。したがって、当該技術分野は、ポリマー反応器の効率を制御及び最大化するための新たな方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、ポリマー反応器を制御するための方法に関する。開示される方法は、流動床を用いるUNIPOL(登録商標)気相ポリマー反応器にとって特に有利であり得る。特定の実施例では、方法は、UNIPOL(登録商標)ポリプロピレン反応器内の湿潤ゾーン及び流動床浸透を制御するように適合され得る。
【0007】
実施形態では、反応器制御方法は、反応器内に、モノマー及び触媒を含む流動床を形成して、ポリマー生成物を生成することを含み得る。十分な量の生成物が反応器内に蓄積されると、ポリマー生成物を反応器から生成物排出タンクに排出することができる。生成物排出タンク内に沈降した後、ポリマーをブロータンクに放出し、ブロータンク内の圧力を測定する。次いで、測定されたブロータンク圧力を分析して、測定されたブロータンク圧力に基づいて1つ以上の反応器動作入力を変更する。
【0008】
ブロータンクのピーク圧力を決定し(例えば、反応器生成物がブロータンク内でフラッシュされるとき)、1つ以上の反応器動作入力を変更するために、ブロータンクピーク圧力を使用することが特に有利であり得る。ポリマー生成物は、反応器が動作している間、生成物排出タンクからブロータンクに2回以上排出することができる。ブロータンクの圧力を監視し、生成物排出タンクからの各排出について分析することができる。次いで、反応器は、各排出に対応する複数のブロータンク圧力記録に基づいて制御することができる。同様に、ブロータンク内への生成物の各排出について複数のピーク圧力を決定することができ、この情報に基づいて反応器を制御することができる。
【0009】
各々がブロータンク内への生成物の排出に対応する複数のブロータンク圧力が記録される場合、ブロータンクの圧力は、反応器の制御に使用するために平均化することができる。より最近の反応器条件を強調する加重平均を使用することができる。更に、ブロータンク圧力測定値において傾向を検出することができ、ブロータンクの圧力傾向を使用して反応器を制御することができる。
【0010】
本開示で明らかにされた方法は、反応器の制御の増加、及び反応器内の条件のより良好な評価を提供することができる。プロセス及び優れた制御技術は、ポリマー生成物の生産及び品質を増加させることができる。反応器の効率は、停滞領域、塊状形成、ゲル形成、及びシート化を低減又は排除することができる。
【0011】
反応器制御の増加はまた、反応器の動作時間を増加させ、反応器の洗浄と維持との間の間隔を増加させることができる。フィルタの頻繁な閉塞及び凝集除去を低減又は回避することができる。ポンプ及び圧縮機の摩耗を最小限に抑えることができる。更に、本開示で提示される方法及びプロセスは、追加の機器を必要とせずに、また反応器を使用不能にさせることなく実装することができる。本開示の他の特性及び態様は、以下でより詳細に考察される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
開示の完全かつ有効な開示は、添付の図面を参照することを含めて、本明細書の残りの部分に、より具体的に記載される。
【
図2】クロスタイ及び圧力平衡線を示す、
図1のポリマー反応器システムの概略図である。
【
図3】生成物排出タンクからの生成物排出に対応するブロータンク圧力を示すグラフである。
【0013】
本明細書及び図面における参照文字の使用を繰り返すことは、本発明の同じ又は類似の特性又は要素を表すことが意図される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示は、例示的な実施形態のみの説明を含有し、本開示のより広範な態様を限定することを意図するものではないことを当業者は理解されたい。
【0015】
流動床は、一般に気相ポリマー反応器の底部に維持される。ポリマー反応器において、「湿潤ゾーン」を用いて、沈降嵩密度(settled bulk density、SBD)を増加させることができる。更に、湿潤ゾーンを利用することにより、シート化、塊状化、過熱、床崩壊、及び/又は反応器の遮断のリスクを低減するか、又は更に排除することができる。要約すると、流動床ポリマー反応器内の湿潤ゾーンを用いることにより、全体的なポリマー生産及び品質を増加させることができる。
【0016】
気相流動床重合反応器の湿潤ゾーンは、凝縮した液体が持続する領域として定義することができる。湿潤ゾーンは、一般に、反応器の底部に、又は分配プレートのすぐ上に維持され、数メートルから数十メートルの上方に反応器内に延びる。湿潤ゾーンは、例えば、反応器の領域内で露点温度(dew point-temperature、DPT)+2℃以下の温度を維持することによって形成することができる。湿潤ゾーンは、60℃、又は62℃、又は64℃、又は66℃、68℃、又は70℃、又は72℃~74℃、又は75℃未満のDPTを有し得る。
【0017】
湿潤ゾーンの高さはまた、流動床の高さの特定の割合、又は反応器全体の高さの特定の割合であるように制御することもできる。湿潤ゾーンの凝縮された液体流動媒体は、反応性物質(例えば、モノマー)及び非反応性剤を含むことができる。非反応性剤は、窒素又は水素などのキャリアガスを含むことができる。湿潤ゾーン及び流動床を維持するのを助けるために、他の液体又はガス状炭化水素を流動媒体として含むことができる。このような炭化水素の例としては、エタン、プロパン、及びイソペンタンが挙げられる。
【0018】
流動床反応器、特に湿潤ゾーンを利用する流動床反応器を最適に制御することは、困難な課題であり得る。反応器条件及び反応器入力の小さな変化は、湿潤ゾーンの損失をもたらし得る。反応器入力が正確に制御されない場合、シート、チャンク、ファウリング、床崩壊、貧弱な製品品質、及び反応器のシャットダウンが起こり得る。流動床反応器及び湿潤ゾーンを最適化する際の困難さは、後付け機器又は既存の機器を使用して、新たな生産プロセスを採用する際に上昇させることができる。流動床内の条件を監視するための1つの方法は、反応器内表面で温度測定を行うことであった。反応器内の異なる点での圧力測定もまた、反応器の制御に使用されてきた。しかしながら、各反応器は固有の内部形状及び表面温度測定値を有し、反応器圧力は、湿潤ゾーンを維持し、流動床を維持し、そうでなければ反応器内の環境を制御するために理想的ではないことが証明されている。
【0019】
基本レベルでは、本開示の方法は、試料反応器試料組成物又は生成物排出組成物を反応器から取り出すことと、組成物(又は生成物排出物)をフラッシュすることと、関連する圧力を測定することと、を含むことができる。明らかにされた方法は、反応器及び湿潤ゾーン条件、並びに優れた反応器制御のより良好な評価を提供することができる。具体的には、本開示の方法は、生産速度、モノマーガス分圧、リサイクルガス重量パーセント凝縮、及び液体浸透レベルなどの臨界パラメータにおける変動を安定化及び低減することができる。評価方法及び優れた制御技術はまた、ポリマー生成物の生産速度及び品質を増加させることができる。反応器の効率は、停滞領域、塊状形成、ゲル形成、及びシート化を低減又は排除することができる。
【0020】
図1は、ポリマー反応器システム100の図である。反応器システム100は、分配プレート19を有する反応器1を含む。流動床は、分配プレート19の上方に形成されることができ、触媒、モノマー、ポリマー、共触媒、流動媒体、及び他の材料を含むことができる。触媒系13によって触媒タンク8から追加の触媒、共触媒、又はプロ触媒を導入することができる。流動床を通過した後、反応器1の底部からのガスは、リサイクル圧縮機10によって圧縮されるリサイクルライン52内へと上方に移動することができる。リサイクル圧縮機10は、リサイクルガスを反応器1の底部に戻すように運ぶ圧力源として作用する。
【0021】
リサイクルライン52は、リサイクルガスを冷却し、反応器1の動作温度を制御するために一般的に使用される熱交換器6につながる。冷却水又は別の温度調整媒体を入口11に供給することができ、媒体がプロセス側と熱交換した後、出口12から流出することができる。流量及び/又は温度調節媒体(典型的には水)の温度を調節することによって、反応器底部入口51の温度及び相特性を制御することができる。
【0022】
リサイクルライン52はまた、反応器1内に追加の材料を導入するための場所としても機能することができる。例えば、リサイクルライン52は、モノマー入力14、流動媒体入力15、キャリアガス入力15、及び別の触媒剤入力17を含むことができる。リサイクル圧縮機10は、様々な入力(例えば、14~17)から来る材料を反応器1の底部に運ぶことができる。
【0023】
反応器1内に十分な量の製品が形成されると、生成物は、生成物排出タンクA2内に排出され得る。反応器1から生成物を除去するとき、多くの場合、反応器1内の生成物の量、その沈降した嵩密度、又は床重量及び床レベルによって決定される。例えば、反応器内のオレフィン系ポリマーの粒子は、23.5lb/ft3を超える沈降嵩密度(「SBD」)を有することができる。実施形態では、プロセスは、23.5lb/ft3、又は24.0lb/ft3、又は25.0lb/ft3、又は26.0lb/ft3~27.0lb/ft3、又は28.0lb/ft3、又は29.0lb/ft3、又は30.0lb/ft3を超えるSBDを有するオレフィン系ポリマーの粒子を形成することを含む。生成物が生成物排出タンクA2内に回収された後、生成物をブロータンクA4に放出することができる。最後に、生成物は、ブロータンク生成物弁28を通って流れ、キャリアガス圧縮機18から来るキャリアガスを使用して搬送され得る。キャリアガスは、一般に、保管又は更なる処理のために生成物を離れるように送る。
【0024】
生成物排出タンクA2及びブロータンクA4を含む反応器1から生成物を除去するためのプロセスは、生成物排出タンクB3及びブロータンクB5と正確に同じ方法で行うことができる。しかしながら、平行な生成物排出タンク構造は必要ではなく、反応器システムは、単一の生成物排出タンク及び単一のブロータンクからなる単一の排出トレーンを使用して動作することができることに留意されたい。更に、3つ、4つ、又は更にはより多くの生成物排出トレーン(各々、生成物排出タンク及びブロータンクからなる)を反応器1に接続することができる。複数の生成物排出タンクを有することは、生成物排出タンク及びブロータンクにおける沈降及びオフガス発生時間の増加を可能にするため、特に有利であり得る。それにもかかわらず、「A」側に向けられる本開示の任意の説明は、「B」側(又はC、D、E、又はF側、それらが存在すれば)に容易に適用され得ることを理解されたい。
【0025】
図2は、反応器1と、生成物排出タンク(2、3)と、ブロータンク(4、5)との間のクロスタイ及び圧力平衡線を示す
図1の反応器システム100の概略図である。
図2の反応器システム200は、
図1の反応器システム100に関して記載したものと全く同じ方法を有することができる。クロスタイ及び圧力平衡線の更なる詳細について、ここで考察する。
【0026】
図2は、生成物を反応器1から除去し、それを生成物排出タンクA2に搬送するための、生成物排出タンク入力弁A21を示す。対応する生成物排出タンク入力弁B22は、生成物排出タンクB3に関連して同じ課題を達成する。生成物排出タンククロスタイ弁23は、生成物排出タンクAとB(2、3)との間に載置され、生成物排出タンクAとB(2、3)との間の圧力を平衡化させる。生成物排出タンクのオーバーヘッド弁A61は、生成物排出タンクA2内のガスが反応器1内に戻されることを可能にする。対応する生成物排出タンクオーバーヘッド弁B62は、生成物排出タンクB3と同じ課題を達成するために含まれる。
【0027】
ブロータンク入力弁A及びB(24、25)は、生成物排出タンクから対応するブロータンクA及びB(4、5)に生成物を放出するために含まれる。生成物排出タンククロスタイ弁23と同様に、ブロータンククロスタイ弁26が設けられて、ブロータンクA及びB(4、5)の圧力を平衡化することを可能にする。更に、各ブロータンクは、ブロータンクから余剰ガスを除去し、ガスを反応器1にリサイクルするためのブロータンクオーバーヘッド弁(27)を含むことができる。反応器システム(反応器システム100及び200を含む)は、本開示の方法及びプロセスを説明するために導入されてきた。しかしながら、提示されたシステムは本質的に例示的なものに過ぎず、本明細書で教示される方法及び概念は、他の反応器システムに容易に適用され得ることを理解されたい。
【0028】
システム100及び200に関連してポリマーを製造するための例示的なプロセスについて考察する。反応器1は、分配プレート1の上方に形成される流動床を使用して動作することができる。流動床は、反応器1内に上方に延びる湿潤ゾーンを含むことができる。湿潤ゾーンの好ましい高さは、特定の反応器システム及び製品の要件に応じて、2メートル又は3メートルほどであってもよい。湿潤ゾーン及び流動床を作成及び最適化する方法のより詳細な説明のために、米国特許第9,556,291号は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0029】
十分な量のポリマー生成物が反応器1内に蓄積されると、生成物は、弁21又は22を通って、対応する生成物排出タンク(2、3)のうちの1つに排出される。生成物が生成物排出タンクA2内に排出される間、典型的には弁23、24及び27は閉鎖され、弁61は開放したままであってもよい。生成物排出タンクは、一般に、圧力が比較的高い反応器1の底部付近から引き込まれる。弁61は、圧力が比較的低い反応器1の頂部に戻るように、生成物排出タンクA2から圧力を逃がすことを可能にするために開放されたままであってもよい。更に、弁21が閉鎖された後、弁61を開放(又は左開放)して、生成物排出タンクA2から過剰なガスを除去することができる。生成物の過剰ガスオフガス発生は、生成物の収率を最大化するために、反応器1内に最適に留まるであろうモノマー(及び他のガス)を含むことができる。
【0030】
生成物排出タンククロスタイ弁23を開放して、生成物排出タンク(2、3)間の圧力を平衡化することができる。これは、生成物排出タンクA2への生成物の排出前、排出後、又は排出中に発生し得る。時間が到来すると、生成物は、弁24を開放することによって、生成物排出タンクA2からブロータンクA4へと排出され得る。弁24の開放のタイミングは、生成物排出タンクが基準圧力(例えば、第1の基準圧力)に達するときに、設定することができる。あるいは、弁24は、生成物が特定の時間(例えば、1、3、5、又は10秒)にわたって生成物排出タンク内に存在した後に開放することができる。他の代替が、ブロータンクに排出する時期を決定するために利用可能であるが、しかしながら、ブロータンクに排出する際の標準化は、本明細書に開示される方法を実装するのに有利であり得る。
【0031】
一実施形態では、弁26、27及び28は閉鎖されたままであり、一方、弁24は開放している。しかしながら、弁27はまた、生成物が弁24を通って放出されると、ガスが生成物排出タンクA2内に逆流することを可能にするために、開放されたまま(又は部分的に開放している)であり得る。弁21、23、及び61はまた、生成物がブロータンクA4内に排出される際に閉鎖されてもよい。生成物がブロータンクA4内に排出されると、生成物は、フラッシュ、オフガス化、及びブロータンクA4の圧力を上昇させる傾向がある。本開示で教示される方法の主要な態様は、生成物がブロータンク内でフラッシュされるときにブロータンク(4、5)の圧力を測定することである。
【0032】
本明細書に記載される方法は、ピーク圧力を含むフラッシング容器圧力(例えば、ブロータンク圧力)を測定することによって反応器条件を最適化することができる。特定の実施例では、この方法は、フラッシング容器圧力を監視することによって、反応器湿潤ゾーン及び反応器流動床浸透の優れた制御を提供することができる。フラッシュ容器圧力は、反応器の有効な動作温度及び圧力と組み合わせて、全体的な反応器組成物、具体的には湿潤ゾーン又は流動床組成物の間接的測定を提供するため、フラッシュ容器圧力は、反応器条件のより良好な理解を提供することができると考えられる。
【0033】
基本形態では、反応器を制御する方法は、反応器から生成物を吸い上げることと、生成物を単離することと、別個の容器内の生成物をフラッシングすることと、を含むことができる。生成物が単離され、フラッシング前に、生成物は、第1の容器内の生成物の環境の圧力を低下させることによって脱気することができる。生成物は、第1の容器内で単離されている間、第1の基準圧力にすることができる。次いで、生成物は、第2の基準圧力で開始する第2の容器内の更なるより低い圧力環境に生成物を導入することによってフラッシングすることができる。基準圧力を確立する代わりに、本発明の方法は、第1又は第2の容器のいずれかにおいて圧力又は絶対圧力測定値の変化を利用することができる。
【0034】
実施形態では、流動床反応器を制御するための方法は、反応器1内に流動床を形成することを含み得る。流動床は、分配プレート19の上方に位置させることができ、モノマー、ポリマー生成物、流動媒体、及び触媒剤(例えば、触媒、共触媒、及びプロ触媒を含む)の混合組成物を有することができる。ポリマー生成物は、十分な量の生成物が蓄積されたときに、反応器1から引き出すことができる。生成物除去タイミング、持続時間、及び容積は、例えば、反応器内の沈降嵩密度、反応器のサイズ、及び生成物排出タンク(2、3)のサイズ及び数に基づいて決定することができる。
【0035】
生成物が生成物排出タンク(2、3)内にあると、生成物排出タンク(2、3)を第1の基準圧力にすることができる。第1の基準圧力は、反応器1の頂部付近の点のものであり得、これは、生成物排出タンクオーバーヘッド弁(61、62)を開放することによって達成することができる。生成物をブロータンク(4、5)に放出する前に、ブロータンクを第2の基準圧力にすることができる。第2の基準圧力は、例えば、弁24、26及び27を閉鎖することによって、及び弁28を開放することによって、ブロータンクA4で達成することができる。したがって、弁28が開放しているとき、第2の基準圧力は、大気圧又は生成物排出ライン53内の圧力であり得る。次いで、弁28を閉鎖することができ、弁24を開放し、生成物を生成物排出タンクA2から落下させ、ブロータンクA4にフラッシュすることが可能になる。次いで、ブロータンクA4内のフラッシング生成物の圧力を測定することができ、この圧力を使用して反応器1を制御することができる。特定の非認可例では、ブロータンク4に記録された圧力が高い場合、反応器の冷却及び/又は触媒を反応器から除去することによって反応器を減速させることができる。別の例示的実施形態では、コントローラは、凝縮された入口ガス重量パーセント及びプロピレン分圧を調節することができ、次いで、反応器のプロピレンの流れを操作する。
【0036】
図3は、生成物排出のフラッシングに対応するブロータンク圧力を示すグラフの一実施形態である。ブロータンク入力弁(24、25)が開放すると、圧力が上昇し、第1の圧力プロファイル36が作成される。反応器1の動作条件を決定し、反応器の入力を調節するために、圧力プロファイル36を使用することができる。第1のピーク圧力31が示されており、これは、ブロータンク(4、5)内の生成物フラッシングの第1のサイクルに対応する。ブロータンク(又は生成物がフラッシングしている他の容器)内のピーク圧力を決定し、反応器入力を制御するために使用することができる。
図3はまた、第2のピーク圧力32と共にブロータンク内でフラッシングする生成物の第2のサイクル33を示す。更に、クロスタイ弁(例えば、弁26)の開放は、圧力読み取り値34で見ることができる。圧力読み取り値35において、生成物は、ブロータンクから生成物コレクタ30又は生成物排出ライン53へと放出される。
【0037】
いくつかの実施形態では、反応器1は、複数のブロータンク圧力を分析することによって制御することができる。複数のブロータンク圧力は、ブロータンク入力弁の開放の特定の時間(例えば、ブロータンク入力弁が開放された後10秒)にとられるピーク圧力、圧力プロファイル、及び圧力の形態であり得る。複数の圧力読み取り値、プロファイル、及び/又はピーク圧力は、反応器システムへの入力をどのように調節するかを決定する際に平均化することができる。具体的には、圧力測定値の直近のシーケンス(例えば、最後の5回又は10回の圧力読み取りサイクル)を平均する移動平均化を使用することができる。多くの圧力読み取り値に基づく単純な移動平均の代わりに、より最近の圧力読み取り値を強調する加重移動平均を実施することができる。移動平均及び加重移動平均の両方はまた、周波数ベースの代わりに時間に基づいてもよい(例えば、ピーク圧力は、最後の10サイクルの代わりに、最後の10分にわたって平均化することができる)。付加的に、ブロータンク内の圧力の傾向又は変化率を分析することができ、反応器システムの入力は、傾向又は変化率に基づいて調節することができる。おそらく最も有利なことに、ブロータンク圧力は、反応器温度プロファイル、生成物組成物、反応器の圧力、反応器の密度、触媒濃度などの測定を含む複数の要因を考慮して、反応器システムモデルに組み込むことができる。
【0038】
本開示は、生成物がブロータンクにフラッシュされるときに作成される圧力及び圧力プロファイルに基づいて、反応器システム入力を変更又は調整することを考察してきた。生成物の入力を変更することの目標は、適切な高さ又は密度で反応器内の湿潤ゾーンを維持し、流動床の反応器への浸透を調節し、それ以外の場合は、別の方法で反応器の性能を最大化することであり得る。反応器入力は、任意の組成物の付加又は除去(例えば、反応器システム内の弁を開閉することによって)、エネルギーの除去又は添加(例えば、反応器システム内での加熱、冷却、又は混合)を含む。更に、反応器の入力は、反応器内の特定の温度又は生成物プロファイル組成物を確立するなど、間接的に達成される反応器設定点であり得る。反応器システム入力の非限定的な例には、リサイクルガス流量、リサイクルガス冷却、床温度設定点、モノマー原料の追加、流動媒体の追加、流動媒体の除去、生成物排出タンクへの生成物の排出、触媒/共触媒/プロ触媒の添加、触媒/共触媒/プロ触媒の除去、モノマー分圧の変更、反応器に入る材料の相を変化させ、反応器に入るガス/液体比率(又は重量パーセント凝縮)の変化させることが含まれる。
【0039】
本明細書に開示される方法は、オレフィン系ポリマーを含む広範囲のポリマー生産に適用することができる。しかしながら、この方法は、UNIPOL(登録商標)反応器システムにおいてポリプロピレンを生成するのに特に有利であり得る。より具体的には、本明細書に開示される方法は、湿潤ゾーンの最適化及び/又はUNIPOL(登録商標)ポリプロピレン反応器内の流動床の浸透を最適化するのに十分に好適であることが見出されている。
【0040】
本発明の方法は、任意のポリマー生成物の生成に適用することができる。例えば、方法は、エチレン及びプロピレンなどのα-オレフィンの重合に適用することができる。ポリオレフィンは、1つ以上のオレフィンの任意のホモポリマー又はコポリマーであってもよい。例えば、ポリオレフィンは、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、及び4-メチル-1-ペンテンなどの1つ以上のα-オレフィンとのエチレン又はコポリマーのホモポリマーであってもよい。ポリオレフィンはまた、プロピレンのホモポリマー、又はエチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、及び4-メチル-1-ペンテンなどの1つ以上のα-オレフィンとのプロピレンのホモポリマーであってもよい。ポリオレフィンはまた、ブテン-1、ペンテン-1、4-メチルペンテン-1、ヘキセン-1、オクテン-1及びスチレンのオレフィンモノマーを含むことができる。他のモノマーとしては、極性ビニル、共役及び非共役ジエン、アセチレン及びアルデヒドモノマーを挙げることができる。本方法はまた、少なくとも2つの異なる種類のモノマーの重合を含むインターポリマーの生成に適用することもできる。
【0041】
本方法は、触媒、プロ触媒、及び共触媒を含む触媒剤の使用を含むことができる。触媒剤は、チーグラー・ナッタ触媒剤を含むことができる。反応器システムで使用される触媒としては、例えば、配位アニオン性触媒、カチオン性触媒、フリーラジカル触媒、及びアニオン性触媒を挙げることができる。触媒は、部分的及び/又は完全に活性化された前駆体組成物、並びにプレ重合又は封入によって改質された触媒として導入されることができる。
【0042】
触媒剤は、プロ触媒形成とは独立して添加される化合物であり、1対の電子を金属原子に供与する1つ以上の官能基を含む、外部電子供与体を含むことができる。2つ以上の外部電子供与体に寄与する、混合外部電子供与体を使用することができる。触媒剤中の外部電子供与体は、分子量、粘着性、分子量分布、融点、及びオリゴマーレベルのレベルに影響を及ぼし得る。外部電子供与体は、アミン、ケイ素化合物、二座化合物、エーテル、カルボキシレート、ケトン、アミド、カルバメート、ホスフィン、ホスフェート、ホスファイト、スルホネート、スルホン、スルホキシド、及びこれらの組み合わせのうちの1つ以上から選択されてもよい。適用可能な特定の触媒の例は、トリエチルアルミニウム(triethyl aluminum、TEAL)である。
【0043】
本明細書に開示される方法は、流動媒体を使用して、湿潤ゾーンを含む流動床を維持することができる。流動媒体は、モノマー及び非反応性剤を含むことができる。非反応性剤は、窒素又は水素などのキャリアガスを含むことができる。湿潤ゾーン及び流動床を維持するのを助けるために、他の液体又はガス状炭化水素を流動媒体として含むことができる。このような炭化水素の例としては、エタン、プロパン、及びイソペンタンが挙げられる。
【0044】
反応器システムを操作する際、全リサイクル流の重量パーセント凝縮は、ブロータンク内でとられた圧力測定に全体的に又は部分的に基づいて調節することができる。反応器に入る典型的な重量パーセントの凝縮は、2%、3%、5%、8%、10%、12%、15%、18%、20%、23%、25%、28%、30%、35%の範囲であってもよく、又は更にはより高い凝縮レベルを適用することができるが、依然として効率的かつ安定したポリマー生成を維持することができる。したがって、リサイクル流の総重量に基づく凝縮(又は液体)の重量パーセントは、1~50重量%、10~40重量%、又は15~35重量%の範囲であり得る。しかしながら、重量パーセントの凝縮は、効率的かつ高品質のポリマー生成の最終目的で制御される反応器入力のみであることに留意されたい。したがって、0%~100%の凝集重量パーセントを、これらの最終目標を達成する手段として適用することができる。
【0045】
反応器組成物及び触媒剤の概要を提供する。実施形態では、流動媒体は、75重量%~95重量%のプロピレンモノマーと、5重量%~25重量%の凝縮液体プロパンとを含む。HAC触媒組成物は、置換フェニレン芳香族ジエステル(ZN SPAD触媒)からなる内部電子供与体を有するチーグラー・ナッタ型触媒組成物である。プロセスは、ZN SPAD触媒をプロピレンと接触させ、25.0lb/ft3より大きい沈降嵩密度を有するプロピレンホモポリマーの粒子を形成することを含む。実施形態では、プロセスは、25.0lb/ft3~28lb/ft3より大きい沈降嵩密度を有するプロピレンホモポリマーの粒子を形成することを含む。
【0046】
ZN SPAD触媒組成物は、HAC触媒組成物であり、置換フェニレン芳香族ジエステルを含む内部電子供与体を含む。チーグラー・ナッタ型触媒組成物は、プロ触媒組成物を含み、任意選択的に、共触媒、外部電子供与体、及び活性制限剤を含んでもよい。プロ触媒組成物は、マグネシウム部分、チタン部分、及び内部電子供与体の組み合わせを含む。内部電子供与体は、置換フェニレン芳香族ジエステル(又は「substituted phenylene aromatic diester、SPAD」)であり得る。
【0047】
プロ触媒組成物は、内部電子供与体の存在下でプロ触媒前駆体をハロゲン化/チタン化することによって生成される。本明細書で使用される場合、「内部電子供与体」は、少なくとも1つの電子対を結果として生じるプロ触媒組成物中に存在する1つ以上の金属に供与する、プロ触媒組成物の形成中に添加されるか、又はさもなければ形成される化合物である。内部電子供与体は、置換フェニレン芳香族ジエステルである。いかなる特定の理論にも束縛されるものではないが、ハロゲン化及びチタン化中に、内部電子供与体が、(1)活性部位の形成を調整し、(2)マグネシウム系担体上のチタンの位置を調整し、(3)マグネシウム部分及びチタン部分のそれぞれのハロゲン化物への変換を促進し、(4)変換中にハロゲン化マグネシウム担体の結晶サイズを調整すると考えられている。したがって、内部電子供与体の提供は、立体選択性が向上したプロ触媒組成物をもたらす。
【0048】
プロ触媒前駆体は、マグネシウム部分化合物(magnesium moiety compound、MagMo)、混合マグネシウムチタン化合物(magnesium titanium compound、MagTi)、又はベンゾエート含有塩化マグネシウム化合物(benzoate-containing magnesium chloride compound、BenMag)であってもよい。実施形態では、プロ触媒前駆体は、マグネシウム部分(「MagMo」)前駆体である。「MagMo前駆体」は、唯一の金属成分としてマグネシウムを含有する。MagMo前駆体は、マグネシウム部分を含む。好適なマグネシウム部分の非限定的な例には、無水塩化マグネシウム及び/又はそのアルコール付加物、マグネシウムアルコキシド又はアリールオキシド、混合マグネシウムアルコキシハライド、及び/又は炭酸マグネシウムジアルコキシド又はアリールオキシドが含まれる。実施形態では、MagMo前駆体は、ジ(C1~4)アルコキシドである。更なる実施形態では、MagMo前駆体は、ジエトキシマグネシウムである。
【0049】
実施形態では、プロ触媒前駆体は、混合マグネシウム/チタン化合物(「MagTi」)である。「MagTi前駆体」は、式MgdTi(ORe)fXgを有し、式中、Reは、1~14個の炭素原子を有する脂肪族又は芳香族炭化水素ラジカル又はCOR’であり、式中、R’は、1~14個の炭素原子を有する脂肪族又は芳香族炭化水素ラジカルであり、各ORe基は、同一であるか又は異なり、Xは独立して、塩素、臭素、又はヨウ素、好ましくは塩素であり、dは、0.5~56、又は2~4であり、fは、2~116又は5~15であり、gは、0.5~116、又は1~3である。
【0050】
実施形態では、プロ触媒前駆体は、ベンゾート含有塩化マグネシウム材料である。本明細書で使用するとき、ベンゾアート含有塩化マグネシウム「(「BenMag」)は、ベンゾアート内部電子供与体を含有する塩化マグネシウムプロ触媒(すなわち、ハロゲン化プロ触媒前駆体)である。BenMag材料はまた、チタンハロゲン化物などのチタン部分を含んでもよい。ベンゾアート内部供与体は不安定であり、プロ触媒合成中に他の電子供与体によって置き換えられ得る。好適なベンゾエート基の非限定的な例としては、安息香酸エチル、安息香酸メチル、p-メトキシ安息香酸エチル、p-エトキシベンゾエート、エチルp-エトキシベンゾエート、エチルp-クロロ安息香酸エチルが挙げられる。一実施形態では、安息香酸塩基は安息香酸エチルである。好適なBenMagプロ触媒前駆体の非限定的な例としては、Dow Chemical Company(Midland、Mich)から入手可能なSHAC(商標)103及びSHAC(商標)310の触媒が挙げられる。
【0051】
実施形態では、BenMagプロ触媒前駆体は、構造(I)を有するベンゾアート化合物の存在下での、任意のプロ触媒前駆体(すなわち、MagMo前駆体又はMagTi前駆体)のハロゲン化の生成物である。
【0052】
【化1】
式中、R
1~R
5はH、C
1~C
20ヒドロカルビルであり、F、Cl、Br、I、O、S、N、P、及びSiを含むヘテロ原子を含む場合があり、R’は、C
1~C
20のヒドロカルビル基で、F、Cl、Br、I、O、S、N、P、Siなどのヘテロ原子(複数化)を任意選択的に含むことができる。好ましくは、R
1~R
5は、H及びC
1~C
20アルキルから選択され、R’はC
1~C
20アルキル及びアルコキシアルキルから選択される。
【0053】
内部電子供与体の存在下でのプロ触媒前駆体のハロゲン化/チタン化は、マグネシウム部分、チタン部分、及び内部電子供与体(置換フェニレン芳香族ジエステル)の組み合わせを含むプロ触媒組成物を生成する。実施形態では、マグネシウム部分及びチタン部分は、塩化マグネシウム及び塩化チタンなどのそれぞれのハロゲン化物である。特定の理論に束縛されるものではないが、ハロゲン化マグネシウムは、チタンハロゲン化物が堆積され、内部電子供与体が組み込まれる担体であると考えられる。
【0054】
得られたプロ触媒組成物は、プロ触媒組成物の総重量に基づいて、約1.0重量パーセント~約6.0重量パーセント、又は約1.0重量パーセント~約5.5重量パーセント、又は約2.0重量パーセント~約5.0重量パーセントのチタン含量を有する。固体プロ触媒組成物中のチタンとマグネシウムとの重量比は、好適には、約1:3~約1:160、又は約1:4~約1:50、又は約1:6~130である。内部電子供与体は、約0.1重量%~約20.0重量%、又は約1.0重量%~約15重量%の量で存在する。置換フェニレン芳香族ジエステルは、内部電子供与体とマグネシウムとのモル比が約0.005:1~約1:1、又は約0.01:1~約0.4:1で存在する。重量パーセントは、プロ触媒の全重量に基づく。
【0055】
プロ触媒組成物中のエトキシド含量は、金属ハロゲン化物への前駆体金属エトキシドの変換の完全性を示す。置換フェニレン芳香族ジエステルは、ハロゲン化中にエトキシドをハロゲン化物に変換するのを助ける。実施形態では、プロ触媒組成物は、約0.01重量%~約1.0重量%、又は約0.05重量%~約0.5重量%のエトキシドを含む。重量パーセントは、プロ触媒の全重量に基づく。
【0056】
実施形態では、内部電子供与体は、混合内部電子供与体である。本明細書で使用するとき、「混合内部電子供与体」は、(i)置換フェニレン芳香族ジエステル、(ii)1対の電子を、得られるプロ触媒組成物中に存在する1つ以上の金属に供与する電子供与体成分、及び(iii)任意選択的に他の成分である。実施形態では、電子供与体成分は、安息香酸エチル及び/又はメトキシプロパン-2-イルベンゾエートなどのベンゾエートである。混合内部電子供与体を有するプロ触媒組成物は、先に開示したプロ触媒生成手順によって生成することができる。
【0057】
内部電子供与体は、置換フェニレン芳香族ジエステル及び任意選択的に電子供与体成分を含む。置換フェニレン芳香族ジエステルは、置換1,2-フェニレン芳香族ジエステル、置換1,3-フェニレン芳香族ジエステル、又は置換1,4-フェニレン芳香族ジエステルであり得る。実施形態では、内部電子供与体は、1,2-フェニレン芳香族ジエステルであり、以下の構造(II)である:
【0058】
【化2】
式中、R
1~R
14は、同一であるか又は異なる。R
1~R
14は各々、水素、1~20個の炭素原子を有する置換ヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有する非置換ヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有するアルコキシ基、ヘテロ原子、及びそれらの組み合わせから選択される。R
1~R
14のうちの少なくとも1つは、水素ではない。
【0059】
本明細書で使用される場合、「ヒドロカルビル」及び「炭化水素」という用語は、分岐状又は非分岐状、飽和又は不飽和、環状、多環状、縮合、又は非環状種、及びそれらの組み合わせを含む、水素原子及び炭素原子のみを含有する置換基を指す。ヒドロカルビル基の非限定的な例としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルカジエニル基、シクロアルケニル基、シクロアルカジエニル基、アリール基、アラルキル基、アルキルアリール基、及びアルキニル基が挙げられる。
【0060】
本明細書で使用される場合、「置換ヒドロカルビル」及び「置換炭化水素」という用語は、1個以上の非ヒドロカルビル置換基で置換されているヒドロカルビル基を指す。非ヒドロカルビル置換基の非限定的な例は、ヘテロ原子である。本明細書で使用される場合、「ヘテロ原子」とは、炭素又は水素以外の原子を指す。ヘテロ原子は、周期表のIV、V、VI、及びVII族に属する非炭素原子であり得る。ヘテロ原子の非限定的な例としては、ハロゲン(F Cl、Br、I)、N、O、P、B、S、及びSiが挙げられる。置換ヒドロカルビル基は、ハロヒドロカルビル基及びケイ素含有ヒドロカルビル基も含む。本明細書で使用される場合、「ハロヒドロカルビル」基という用語は、1個以上のハロゲン原子で置換されているヒドロカルビル基を指す。本明細書で使用される場合、「ケイ素含有ヒドロカルビル基」という用語は、1個以上のケイ素原子で置換されているヒドロカルビル基である。ケイ素原子(複数可)は、炭素鎖中にある場合もない場合もある。
【0061】
実施形態では、R1~R4のうちの少なくとも1つ(又は2つ、又は3つ、又は4つ)のR基(複数化)は、1~20個の炭素原子を有する置換ヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有する非置換ヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有するアルコキシ基、ヘテロ原子、及びこれらの組み合わせから選択される。R5~R14の各々は、水素である。
【0062】
実施形態では、R5~R14のうちの少なくとも1つ(又はいくつか又は全て)のR基(複数化)は、1~20個の炭素原子を有する置換ヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有する非置換ヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有するアルコキシ基、ヘテロ原子、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。別の実施形態では、R5~R9のうちの少なくとも1つ及びR10~R14のうちの少なくとも1つは、1~20個の炭素原子を有する置換ヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有する非置換ヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有するアルコキシ基、ヘテロ原子及びこれらの組み合わせから選択される。
【0063】
実施形態では、R1~R4のうちの少なくとも1つ及びR5~R14の少なくとも1つは、1~20個の炭素原子を有する置換ヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有する非置換ヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有するアルコキシ基、ヘテロ原子及びこれらの組み合わせから選択される。別の実施形態では、R1~R4のうちの少なくとも1つ、R5~R9のうちの少なくとも1つ及びR10~R14うちの少なくとも1つは、1~20個の炭素原子を有する置換ヒドロカルビル基、1~20個炭素原子を有する非置換ヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有するアルコキシ基、ヘテロ原子及びこれらの組み合わせから選択される。
【0064】
実施形態では、R1~R4の任意の連続するR基、及び/又はR5~R9の任意の連続するR基、及び/又はR10~R14の任意の連続するR基は、連結されて、環状又は環状内構造体を形成してもよい。環状/環状内構造体は、芳香族であっても、又は芳香族でなくてもよい。実施形態では、環状/環状内構造体は、C5又はC6員環である。
【0065】
実施形態では、R1~R4のうちの少なくとも1つは、1~20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有するアルコキシ基、及びそれらの組み合わせである。任意選択的に、R5~R14のうちの少なくとも1つは、ハロゲン原子又は1~20個の炭素原子を有するアルコキシ基であってもよい。任意選択的に、R1~R4、及び/又はR5~R9、及び/又はR10~R14は、連結されて、環状構造体又は環状内構造体を形成してもよい。環状構造体及び/又は環状内構造体は、芳香族であっても、又は芳香族でなくてもよい。
【0066】
実施形態では、R1~R4、及び/又はR5~R9、及び/又はR10~R14の任意の連続するR基は、C5~C6員環のメンバーであってもよい。
【0067】
実施形態では、構造(II)は、水素としてR1、R3及びR4,を含む。R2は、1~20個の炭素原子を有する置換ヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有する非置換ヒドロカルビル基、及びこれらの組み合わせから選択される。R5~R14は、同一であるか又は異なり、R5~R14の各々は、水素1~20個の炭素原子を有する置換ヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有する非置換ヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有するアルコキシ基、ハロゲン及びこれらの組み合わせから選択される。
【0068】
実施形態では、構造(II)は、メチルであるR2を含み、R5~R14の各々は、水素である。実施形態では、構造(II)は、エチルであるR2を含み、R5~R14の各々は、水素である。実施形態では、構造(II)は、t-ブチルであるR2を含み、R5~R14の各々は、水素である。実施形態では、構造(II)は、エトキシカルボニルであるR2を含み、R5~R14の各々は、水素である。
【0069】
実施形態では、構造(II)は、それぞれ水素としてR2、R3及びR4を含み、R1は、1~20個の炭素原子を有する置換ヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有する非置換ヒドロカルビル基、及びこれらの組み合わせから選択される。R5~R14は、同一であるか又は異なり、各々は、水素、1~20個の炭素原子を有する置換ヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有する非置換ヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有するアルコキシ基、ハロゲン及びこれらの組み合わせから選択される。
【0070】
実施形態では、構造(II)は、メチルであるR1を含み、R5~R14の各々は、水素である。実施形態では、構造(II)は、水素であるR2及びR4を含み、R1及びR3は同じであるか又は異なる。R1及びR3の各々は、1~20個の炭素原子を有する置換ヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有する非置換ヒドロカルビル基、及びこれらの組み合わせから選択される。R5~R14は、同一であるか又は異なり、R5~R14の各々は、1~20個の炭素原子を有する置換ヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有する非置換ヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有するアルコキシ基、ハロゲン及びこれらの組み合わせから選択される。
【0071】
実施形態では、構造体(II)は、同じであるか又は異なるR1及びR3を含む。R1及びR3の各々は、C1~C8アルキル基、C3~C6シクロアルキル基、又は置換C3~C6シクロアルキル基から選択される。R5~R14は同じであるか又は異なっており、R5~R14の各々は、水素、C1~C8アルキル基、及びハロゲンから選択される。好適なC1~C8アルキル基の非限定的な例には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、i-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、i-ペンチル、ネオペンチル、t-ペンチル、n-ヘキシル、及び2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル基が含まれる。好適なC3~C6シクロアルキル基の非限定的な例としては、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基が挙げられる。更なる実施形態では、R5~R14のうちの少なくとも1つは、C1~C6アルキル基又はハロゲンである。
【0072】
実施形態では、構造(II)は、メチル基であるR1、及びt-ブチル基であるR3を含む。R2、R4及びR5~R14の各々は、水素である。実施形態では、構造(II)は、イソプロピル基であるR1及びR3を含む。R2、R4及びR5~R14の各々は、水素である。実施形態では、構造(II)は、メチル基としてR1、R5、及びR10の各々を含み、R3は、t-ブチル基である。R2、R4、R6~R9及びR11~R14の各々は、水素である。実施形態では、構造(II)は、メチル基としてR1、R7、及びR12の各々を含み、R3は、t-ブチル基である。R2、R4、R5、R6、R8、R9、R10、R11、R13、及びR14の各々は、水素である。実施形態では、構造(II)は、メチル基としてR1を含み、R3は、t-ブチル基である。R7及びR12の各々は、エチル基である。R2、R4、R5、R6、R8、R9、R10、R11、R13、及びR14の各々は、水素である。実施形態では、構造(II)は、メチル基としてR1、R5、R7、R9、R10、R12、及びR14の各々を含み、R3は、t-ブチル基である。R2、R4、R6、R8、R11及びR13の各々は、水素である。実施形態では、構造(II)は、メチル基としてR1を含み、R3は、t-ブチル基である。R5、R7、R9、R10、R12及びR14の各々は、i-プロピル基である。R2、R4、R6、R8、R11及びR13の各々は、水素である。
【0073】
実施形態では、置換フェニレン芳香族ジエステルは、メチル基であるR1を含む構造(III)を有し、R3は、t-ブチル基である。R2及びR4の各々は、水素である。R8及びR9は、1-ナフトイル部分を形成するためのC6員環の員である。R13及びR14は、C6員環の員であり、別の1-ナフトイル部分を形成する。構造(III)は以下に提供される。
【0074】
【0075】
実施形態では、置換フェニレン芳香族ジエステルは、メチル基であるR1を含む構造(IV)を有し、R3は、t-ブチル基である。R2及びR4の各々は、水素である。R6及びR7は、2-ナフトイル部分を形成するためのC6員環の員である。R12及びR13は、2-ナフトイル部分を形成するためのC6員環の員である。構造(IV)は、以下に提供される。
【0076】
【0077】
実施形態では、構造(II)は、メチル基であるR1、及びt-ブチル基であるR3を含む。R7及びR12の各々は、エトキシ基である。R2、R4、R5、R6、R8、R9、R10、R11、R13、及びR14の各々は、水素である。実施形態では、構造(II)は、メチル基であるR1、及びt-ブチル基であるR3を含む。R7及びR12の各々は、塩素原子である。R2、R4、R5、R6、R8、R9、R10、R11、R13、及びR14の各々は、水素である。実施形態では、構造(II)は、メチル基であるR1、及びt-ブチル基であるR3を含む。R7及びR12の各々は、塩素原子である。R2、R4、R5、R6、R8、R9、R10、R11、R13、及びR14の各々は、水素である。
【0078】
実施形態では、構造(II)は、メチル基であるR1、及びt-ブチル基であるR3を含む。R7及びR12の各々は、臭素原子である。R2、R4、R5、R6、R8、R9、R10、R11、R13、及びR14の各々は、水素である。実施形態では、構造(II)は、メチル基であるR1、及びt-ブチル基であるR3を含む。R7及びR12の各々は、ヨウ素原子である。R2、R4、R5、R6、R8、R9、R10、R11、R13、及びR14の各々は、水素である。実施形態では、構造(II)は、メチル基であるR1、及びt-ブチル基であるR3を含む。R6、R7、R11及びR12の各々は、塩素原子である。R2、R4、R5、R8、R9、R10、R13、及びR14の各々は、水素である。実施形態では、構造(II)は、メチル基であるR1、及びt-ブチル基であるR3を含む。R6、R8、R11及びR13の各々は、塩素原子である。R2、R4、R5、R7、R9、R10、R12、及びR14の各々は、水素である。
【0079】
実施形態では、構造(II)は、メチル基であるR1を含み、R3は、t-ブチル基である。R2、R4及びR5~R14の各々は、塩素原子である。実施形態では、構造(II)は、メチル基であるR1、及びt-ブチル基であるR3を含む。R7及びR12の各々は、トリフルオロメチル基である。R2、R4、R5、R6、R8、R9、R10、R11、R13、及びR14の各々は、水素である。実施形態では、構造(II)は、メチル基であるR1、及びt-ブチル基であるR3を含む。R7及びR12の各々は、エトキシカルボニル基である。R2、R4、R5、R6、R8、R9、R10、R11、R13、及びR14の各々は、水素である。
【0080】
実施形態では、R1は、メチル基であり、R3は、t-ブチル基である。R7及びR12の各々は、エトキシ基である。R2、R4、R5、R6、R8、R9、R10、R11、R13、及びR14の各々は、水素である。実施形態では、構造(II)は、メチル基であるR1、及びt-ブチル基であるR3を含む。R7及びR12の各々は、ジエチルアミノ基である。R2、R4、R5、R6、R8、R9、R10、R11、R13、及びR14の各々は、水素である。実施形態では、構造(II)は、メチル基であるR1を含み、R3は、2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル基である。R2,R4及びR5~R14の各々は、水素である。実施形態では、構造体(II)は、各々がsec-ブチル基であるR1及びR3を含む。R2、R4及びR5~R14の各々は、水素である。
【0081】
実施形態では、置換フェニレン芳香族ジエステルは、R1及びR2がC6員環の員であり、1,2-ナフタレン部分を形成する構造(V)を有する。R5~R14の各々は、水素であり、構造(V)は、下記に提供される。
【0082】
【0083】
実施形態では、置換フェニレン芳香族ジエステルは構造(VI)を有し、式中、R2及びR3は、C6員環の員であり、2,3-ナフタレン部分を形成する。R5~R14の各々は、水素である。構造(VI)を以下に提供する。
【0084】
【0085】
実施形態では、構造(II)は、各々メチル基であるR1及びR4を含む。R2、R3、R5~R9及びR10~R14の各々は、水素である。実施形態では、構造(IIは、メチル基であるR1を含む。R4は、i-プロピル基である。R2、R3、R5~R9及びR10~R14の各々は、水素である。実施形態では、構造(II)は、R1、R3、及びR4を含み、これらは各々、i-プロピル基である。R2、R5~R9及びR10~R14の各々は、水素である。
【0086】
内部電子供与体に好適なSPADの非限定的な例は、以下の表1に述べられている。
【0087】
【0088】
【0089】
実施形態では、置換フェニレン芳香族ジエステルは、5-t-ブチル-3-メチル-1,2-フェニレンジベンゾエートである。
【0090】
実施形態では、触媒組成物は、共触媒を含む。本明細書で使用するとき、「共触媒」は、プロ触媒を活性重合触媒に変換することができる物質である。共触媒は、アルミニウム、リチウム、亜鉛、スズ、カドミウム、ベリリウム、マグネシウム、及びこれらの組み合わせの水素化物、アルキル、又はアリールを含んでもよい。実施形態では、共触媒は、式RnAlX3-nで表されるヒドロカルビルアルミニウム化合物であり、式中、n=12又は3であり、Rは、アルキルであり、Xは、ハロゲン化物又はアルコキシドである。好適な共触媒の非限定的な例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、及びトリ-n-ヘキシルアルミニウムが挙げられる。
【0091】
実施形態では、共触媒は、トリエチルアルミニウムである。アルミニウムのチタンに対するモル比は、約5:1~約500:1、又は約10:1~約200:1、又は約15:1~約150:1、又は約20:1~約100:1、又は約30:1~約60:1である。別の実施形態では、アルミニウムとチタンとのモル比は、約35:1である。
【0092】
実施形態では、本触媒組成物は、外部電子供与体を含む。本明細書で使用される「外部電子供与体」(又は「external electron donor、EED」)は、前駆触媒形成とは無関係に添加される化合物であり、金属原子に一対の電子を供与することができる少なくとも1つの官能基を含む。「混合外部電子供与体」(又は「mixed external electron donor、MEED」)は、2つ以上の外部電子供与体の混合物である。特定の理論に束縛されるものではないが、触媒組成物における1つ以上の外部電子供与体の提供は、ホルマントポリマーの以下の特性に影響を与えると考えられている:立体規則性のレベル(すなわち、キシレン可溶性物質)、分子量(すなわち、メルトフロー)、分子量分配器(molecular weight distributor、MWD)、融点、及び/又はオリゴマーレベル。
【0093】
実施形態では、外部電子供与体は、ケイ素化合物、二座化合物、アミン、エーテル、カルボキシレート、ケトン、アミド、カルバメート、ホスフィン、ホスフェート、ホスファイト、スルホン酸塩、スルホン、スルホキシド及び先述の任意の組み合わせのうちの1つ以上から選択されてもよい。
【0094】
実施形態では、EEDは、一般式(VII)を有するシリコン化合物である:SiRm(OR’)4-m、式中、Rは独立して、各出現が水素又はヒドロカルビル又はアミノ基であり、14個、15個、16個、又は17個のグループのヘテロ原子を含有する1つ以上の置換基で任意選択的に置換される。Rには、水素とハロゲンを数に入れずに最大20個の原子が含まれる。R’は、C1~20アルキル基であり、mは、0、1又は2である。実施形態では、Rは、C6~12アリール、アルキルアリール又はアラルキル、C3~12シクロアリル、C1~20直鎖アルキル又はアルケニル、C3~12分岐アルキル又はC3~12環状アミノ基であり、R’はC1~4アルキルであり、mは、1又は2である。
【0095】
EEDに好適なシリコン化合物の非限定的な例には、ジアルコキシシラン、トリアルコキシシラン、及びジシクロペンチルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ビス(ペルヒドロイソキノリノ)ジメトキシシラン、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、ジエチルアミノトリエトキシシラン、ビス(トリメチルシリルメチル)ジメトキシなどのテトラアルコキシシラン及びこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0096】
実施形態では、触媒組成物は、活性制限剤(activity limiting agent、ALA)を含む。本明細書で使用される場合、「活性制限剤」(「ALA」)は、高温(すなわち、約85℃を超える温度)で触媒活性を低下させる材料である。ALAは、重合反応器の不調を抑制又はさもなければ阻止し、重合プロセスの継続を確実にする。典型的には、チーグラー・ナッタ触媒の活性は、反応器の温度が上昇するにつれて増大する。チーグラー・ナッタ触媒はまた、典型的には、生成されたポリマーの軟化点に近い温度で高い活性を維持する。発熱重合反応によって生じた熱は、ポリマー粒子凝集体を形成させる場合があり、最終的にはポリマー生成プロセスを中断させ得る。ALAは、高温で触媒活性を低下させ、それにより反応器の不調を阻止し、粒子の凝集を低減(又は阻止)し、重合プロセスの継続を確実にする。
【0097】
ALAは、EED及び/又はMEEDの成分であっても、そうでなくてもよい。活性制限剤は、カルボン酸エステル、ジエーテル、ポリ(アルケングリコール)、コハク酸塩、ジオールエステル及びこれらの組み合わせであり得る。カルボン酸エステルは、脂肪族又は芳香族のモノ又はポリカルボン酸エステルであり得る。好適なカルボン酸エステルの非限定的な例には、安息香酸塩、脂肪族C2~40モノ/ジカルボン酸のC1~40アルキルエステル、C2~100(ポリ)グリコールのC2~40モノ-/ポリカルボキシレート誘導体、C2~100(ポリ)グリコールエーテル、及びそれらの任意の組み合わせが含まれる。カルボン酸エステルの更なる非限定的な例には、ラウリン酸塩、ミリスチン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、オレイン酸塩、セバシン酸塩、及び(ポリ)(アルキレン)グリコール、及びそれらの混合物が含まれる。更なる実施形態では、ALAはミリスチン酸イソプロピル又はセバシン酸ジ-n-ブチルである。
【0098】
触媒組成物は、前述の活性制限剤のいずれかと組み合わせた前述の外部電子供与体のいずれかを含むことができる。外部電子供与体及び/又は活性制限剤を、反応器に別々に加えてもよい。あるいは、外部電子供与体及び活性制限剤を予め混合し、次いで混合物として触媒組成物及び/又は反応器に添加してもよい。
【0099】
実施形態では、プロ触媒組成物は、固体、微粒子形態であり、置換フェニレン芳香族ジエステルを含む内部電子供与体を有するチーグラー・ナッタ型プロ触媒組成物である。チーグラー・ナッタ型プロ触媒組成物は、固体、微粒子形態である。チーグラー・ナッタ型プロ触媒粒子は、10ミクロン~15ミクロンのD50を有する。本明細書で使用される場合、「D50」という用語は、試料重量の50%が定められた粒径を超えるような中央粒径である。更なる実施形態では、置換フェニレン芳香族ジエステルは、5-t-ブチル-3-メチル-1,2-フェニレンジベンゾエートである。
【0100】
実施形態では、プロ触媒組成物は、固体、微粒子形態であり、置換フェニレン芳香族ジエステルを含む内部電子供与体を有するチーグラー・ナッタ型プロ触媒組成物である。チーグラー・ナッタ型プロ触媒組成物は、固体、微粒子形態である。チーグラー・ナッタ型プロ触媒粒子は、25ミクロン~30ミクロンのD50を有する。更なる実施形態では、置換フェニレン芳香族ジエステルは、5-t-ブチル-3-メチル-1,2-フェニレンジベンゾエートである。
【0101】
実施形態では、プロセスは、5-t-ブチル-3-メチル-1,2-フェニレンジベンゾエートを含む内部電子供与体を有するチーグラー・ナッタ型触媒組成物を湿潤ゾーンに注入することを含む。
【0102】
実施形態では、このプロセスは、置換フェニレン芳香族ジエステルを含む内部電子供与体を用いて、チーグラー・ナッタ型プロ触媒組成物の湿潤ゾーン粒子に注入することを含む。プロ触媒粒子は、10ミクロン~15ミクロンのD50を有する。更なる実施形態では、チーグラー・ナッタ型プロ触媒粒子は、12ミクロンのD50を有する。実施形態では、置換フェニレン芳香族ジエステルは、5-t-ブチル-3-メチル-1,2-フェニレンジベンゾエートである。
【0103】
実施形態では、このプロセスは、置換フェニレン芳香族ジエステルを含む内部電子供与体を用いて、チーグラー・ナッタ型プロ触媒組成物の湿潤ゾーン粒子に注入することを含む。チーグラー・ナッタ型プロ触媒粒子は、25ミクロン~30ミクロンのD50を有する。更なる実施形態では、チーグラー・ナッタ型プロ触媒粒子は、27ミクロンのD50を有する。実施形態では、置換フェニレン芳香族ジエステルは、5-t-ブチル-3-メチル-1,2-フェニレンジベンゾエートである。
【0104】
実施形態では、このプロセスは、(i)置換フェニレン芳香族ジエステルを含むプロ触媒組成物を含む触媒組成物、(ii)共触媒、及び(iii)外部電子供与体を、注入点で注入することを含む。
【0105】
本開示は、様々な実施形態の有利な性能態様の背後にあると考えられる理論の説明を含む。しかしながら、これらの理論は、本質的に説明することを意図するものであり、実施形態の範囲を限定することを意図するものではない。実施形態は、動作中に様々な他の理論又は現象を確実に組み込み、かつ利用することができる。更に、考察される理論は、全ての実施形態に適用することができない場合がある。
【0106】
また、様々な実施形態の態様は、全体的に又は部分的のいずれかで交換され得ることを理解されたい。更に、当業者は、前述の説明が例としてのみであり、本開示のより広い概念及び教示を限定することを意図しないことを理解するであろう。
本発明は以下の態様を含む。
[1]
流動床反応器を制御するための方法であって、
反応器内に、モノマー及び触媒を含む流動床を形成して、ポリマー生成物を生成することと、
前記ポリマー生成物を前記反応器から生成物排出タンクに排出することと、
前記ポリマー生成物を前記生成物排出タンクからブロータンクに排出することと、
ブロータンク圧力を測定することと、
前記測定されたブロータンク圧力に基づいて、1つ以上の反応器動作入力を変更することと、を含む、流動床反応器を制御するための方法。
[2]
ブロータンクピーク圧力を決定することと、前記ブロータンクピーク圧力を使用して、前記1つ以上の反応器動作入力を変更することと、を更に含む、[1]に記載の流動床反応器を制御するための方法。
[3]
前記ポリマー生成物を前記生成物排出タンクから前記ブロータンクに2回以上排出することと、
前記ポリマー生成物が前記生成物排出タンクから前記ブロータンクに排出される度にブロータンク圧力を測定して、各々が、前記ブロータンクへの生成物の排出に対応する、複数のブロータンク圧力を決定することと、
前記複数のブロータンク圧力に基づいて、前記1つ以上の反応器動作入力を変更することと、を更に含む、[1]に記載の流動床反応器を制御するための方法。
[4]
前記ブロータンク内への生成物の各排出について前記ピーク圧力を測定することと、
前記複数のブロータンクピーク圧力に基づいて、前記1つ以上の反応器動作入力を変更することと、を更に含む、[3]に記載の流動床反応器を制御するための方法。
[5]
前記複数のブロータンクピークのうちの2つ以上を平均化して、平均ブロータンクピーク圧力を得ることと、
前記平均ブロータンクピーク圧力に基づいて、前記1つ以上の反応器動作入力を変更することと、を更に含む、[4]に記載の流動床反応器を制御するための方法。
[6]
前記平均ブロータンクピーク圧力が、より最近の測定値を強調する加重平均である、[5]に記載の流動床反応器を制御するための方法。
[7]
生成物が前記ブロータンク内に排出される度に、ブロータンク圧力プロファイルを作成することと、
前記ブロータンク圧力プロファイルを使用して、前記1つ以上の反応器動作入力を変更することと、を更に含む、[1]に記載の流動床反応器を制御するための方法。
[8]
複数のブロータンク圧力プロファイルが、前記1つ以上の反応器動作入力を変更するために使用される、[7]に記載の流動床反応器を制御するための方法。
[9]
前記1つ以上の反応器動作入力が、前記反応器内の湿潤ゾーン又は流動床浸透を制御するように変更される、[1]に記載の流動床反応器を制御するための方法。
[10]
反応器動作入力が、リサイクルガス流量、リサイクルガス冷却、床温度設定点、モノマー原料の追加、流動媒体の追加、流動媒体の除去、前記生成物排出タンクへの生成物の排出、触媒/共触媒/プロ触媒の添加、触媒/共触媒/プロ触媒の除去、モノマー分圧、前記反応器に入る材料の相、及び前記反応器に入るガス/液体比率(又は重量パーセント凝縮)のうちの1つ以上を含む、[1]に記載の流動床反応器を制御するための方法。
[11]
前記生成物を前記ブロータンクに排出する前に、前記生成物排出タンクから圧力を解放することを更に含む、[1]に記載の流動床反応器を制御するための方法。
[12]
前記生成物排出タンクからの前記圧力が、前記反応器の低圧側(又は前記反応器の頂部)に解放される、[11]に記載の流動床反応器を制御するための方法。
[13]
前記ポリマー生成物を前記生成物排出タンクから前記ブロータンクに排出する前に、前記生成物排出タンクを第1の基準圧力に変更することを更に含む、[1]に記載の流動床反応器を制御するための方法。
[14]
前記ポリマー生成物を前記生成物排出タンクから前記ブロータンクに排出する前に、前記ブロータンクを第2の基準圧力に変更することを更に含む、[1]に記載の流動床反応器を制御するための方法。
[15]
傾向(変化率及び/又は変化率の加速度など)が、前記複数のブロータンク圧力測定値から決定され、前記1つ以上の反応器動作入力を制御するために使用される、[3]に記載の流動床反応器を制御するための方法。