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  • 特許-両面粘着テープ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-31
(45)【発行日】2023-11-09
(54)【発明の名称】両面粘着テープ
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20231101BHJP
   C09J 7/26 20180101ALI20231101BHJP
   C09J 167/00 20060101ALI20231101BHJP
   C09J 153/00 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J7/26
C09J167/00
C09J153/00
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020548590
(86)(22)【出願日】2019-09-19
(86)【国際出願番号】 JP2019036726
(87)【国際公開番号】W WO2020059791
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2022-06-22
(31)【優先権主張番号】P 2018177427
(32)【優先日】2018-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】片岡 寛幸
(72)【発明者】
【氏名】川本 友也
(72)【発明者】
【氏名】石堂 泰志
(72)【発明者】
【氏名】土居 智
【審査官】高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-019951(JP,A)
【文献】特開昭56-115375(JP,A)
【文献】特開2016-008290(JP,A)
【文献】特開平07-011200(JP,A)
【文献】特表2018-511669(JP,A)
【文献】特開2005-001261(JP,A)
【文献】特開2009-262253(JP,A)
【文献】国際公開第2018/181336(WO,A1)
【文献】特表2017-506683(JP,A)
【文献】特開2014-037543(JP,A)
【文献】特開平01-202433(JP,A)
【文献】特公昭47-025847(JP,B1)
【文献】特開2004-323679(JP,A)
【文献】特開2002-338919(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
B32B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡体基材と、前記発泡体基材の両面にそれぞれ第1の粘着剤層及び第2の粘着剤層を有する両面粘着テープであって、
前記発泡体基材と前記第1の粘着剤層の間、及び、前記発泡体基材と前記第2の粘着剤層の間に、引張破断点応力が4MPa以上である第1の樹脂層及び第2の樹脂層をそれぞれ有し、
前記第1の樹脂層を構成する樹脂がポリエステル系樹脂からなり、
前記第2の樹脂層を構成する樹脂がスチレン-アクリル系ブロック共重合体からなり、
前記第1の樹脂層は、引張弾性率が50MPaを超え、
前記第2の樹脂層は、引張弾性率が50MPa以下である、両面粘着テープ。
【請求項2】
ポリエステル系樹脂がポリエチレンテレフタレートである、請求項1に記載の両面粘着テープ。
【請求項3】
引張弾性率が50MPa以下である第2の樹脂層は、引張破断点伸びが400%以上である、請求項1又は2に記載の両面粘着テープ。
【請求項4】
引張弾性率が50MPa以下である第2の樹脂層は、示差走査熱量測定(DSC)したときに、23℃を境に上下にそれぞれ1つ以上のピークが観察される、請求項1、2又は3に記載の両面粘着テープ。
【請求項5】
引張弾性率が50MPa以下である第2の樹脂層を構成するスチレン-アクリル系ブロック共重合体は、トリブロック共重合体を含有する、請求項1、2、3又は4記載の両面粘着テープ。
【請求項6】
引張弾性率が50MPa以下である第2の樹脂層におけるトリブロック共重合体の含有量が60重量%以上である、請求項に記載の両面粘着テープ。
【請求項7】
スチレン-アクリル系ブロック共重合体におけるハードセグメントの割合が10重量%以上、50重量%以下である、請求項1、2、3、4、5又は6記載の両面粘着テープ。
【請求項8】
スチレン-アクリル系ブロック共重合体におけるハードセグメントの分子量が5万以上である、請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の両面粘着テープ。
【請求項9】
スチレン-アクリル系ブロック共重合体におけるソフトセグメントの分子量が10万以上である、請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載の両面粘着テープ。
【請求項10】
引張弾性率が50MPa以下である第2の樹脂層の断面を原子間力顕微鏡(AFM)で観察したときに、スフィア状の相分離構造を観察できる、請求項1、2、3、4、5、6、7、8又は9記載の両面粘着テープ。
【請求項11】
スチレン-アクリル系ブロック共重合体は、スチレンの割合が5重量%以上である、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10記載の両面粘着テープ。
【請求項12】
スチレン-アクリル系ブロック共重合体は、ハードセグメントにおけるスチレンの割合が70重量%以上である、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又は11記載の両面粘着テープ。
【請求項13】
スチレン-アクリル系ブロック共重合体は、ハードセグメントを構成する成分としてカルボキシル基を有するモノマーを含む、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12記載の両面粘着テープ。
【請求項14】
スチレン-アクリル系ブロック共重合体は、ハードセグメントを構成する成分として水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルを含む、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12又は13記載の両面粘着テープ。
【請求項15】
スチレン-アクリル系ブロック共重合体は、ソフトセグメントを構成する成分として(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含む、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13又は14記載の両面粘着テープ。
【請求項16】
スチレン-アクリル系ブロック共重合体は、ソフトセグメントを構成する成分としてn-ブチル(メタ)アクリレート又は2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートを含む、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15記載の両面粘着テープ。
【請求項17】
発泡体基材は、ポリウレタン発泡体又はポリオレフィン発泡体からなることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15又は16記載の両面粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた応力緩和性及び耐衝撃性を有し、両粘着面におけるリワーク性に優れ、かつ、シワや折れの発生を抑制しつつ容易にロール状に巻き取り可能な両面粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、携帯情報端末(Personal Digital Assistants、PDA)等の携帯電子機器においては、組み立てのために両面粘着テープが用いられている(例えば、特許文献1、2)。また、車載用パネル等の車載用電子機器部品を車両本体に固定する用途にも両面粘着テープが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-242541号公報
【文献】特開2009-258274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
携帯電子機器部品、車載用電子機器部品等の固定に用いられる両面粘着テープには、高い粘着力が求められる。更に、近年、携帯電子機器、車載用電子機器等は、高機能化に伴って形状がより複雑化する傾向にあるため、段差、角、非平面部等に両面粘着テープを貼り付けて用いることがある。このような場合、両面粘着テープを変形させた状態で固定するため、元の形状に戻ろうとする力、即ち、復元力や反発力が働き、時間の経過とともに両面粘着テープが剥離することがあった。特に、部品を変形させた状態で固定する場合、部品自体が元の形状に戻ろうとすることで、両面粘着テープに復元力や反発力がかかり、固定が不充分であったり、両面粘着テープが剥離したりすることがあった。このような復元力や反発力による剥離を防止するためには、両面粘着テープに優れた応力緩和性が要求される。また、両面粘着テープには耐衝撃性が求められることもある。
【0005】
優れた応力緩和性を有し、耐衝撃性にも優れる両面粘着テープとして、発泡体基材を用いた両面粘着テープが知られている。しかしながら、従来の発泡体基材を用いた両面粘着テープでは、仮固定の用途に用いた場合や、何らかの事情で貼合せ後に剥離したい場合に、剥離時に発泡体基材が割れてしまい、被着体に残渣が残ってしまうことがあり、リワーク性に劣ることがある。特に両面粘着テープにおいては、両粘着面におけるリワーク性が求められている。
また、両面粘着テープは、通常はロール状に巻き取った状態で供され、該ロール状体から巻き出して使用される。この際、両面粘着テープが充分に柔軟でないと、ロール状に巻き取る際の取り扱い性が低下したり、巻き取ったときにシワや折れが発生したりすることがある。
【0006】
本発明は、優れた応力緩和性及び耐衝撃性を有し、両粘着面におけるリワーク性に優れ、かつ、シワや折れの発生を抑制しつつ容易にロール状に巻き取り可能な両面粘着テープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、発泡体基材と、前記発泡体基材の両面にそれぞれ第1の粘着剤層及び第2の粘着剤層を有する両面粘着テープであって、前記発泡体基材と前記第1の粘着剤層の間、及び、前記発泡体基材と前記第2の粘着剤層の間に、引張破断点応力が4MPa以上である第1の樹脂層及び第2の樹脂層をそれぞれ有し、前記第1の樹脂層及び第2樹脂層の少なくとも一方は、引張弾性率が50MPa以下である、両面粘着テープである。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明者らは、発泡体基材と該発泡体基材の両面にそれぞれ第1の粘着剤層及び第2の粘着剤層を有する両面粘着テープにおいて、発泡体基材と第1の粘着剤層の間、及び、発泡体基材と第2の粘着剤層の間に、引張破断点応力が一定以上の第1の樹脂層及び第2の樹脂層をそれぞれ配置した。本発明者らは、このような第1の樹脂層及び第2の樹脂層を配置することにより、優れた応力緩和性及び耐衝撃性を発揮できる発泡体基材を採用しながら、両粘着面に優れたリワーク性を発揮できることを見出した。本発明者らは、更に鋭意検討の結果、第1の樹脂層及び第2樹脂層の少なくとも一方の引張弾性率を一定以下とすることにより、両粘着面におけるリワーク性を確保しながら、シワや折れの発生を抑制しつつ容易にロール状に巻き取り可能とすることができることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
図1に、本発明の一実施態様に係る両面粘着テープの一例を示す模式図を示した。図1の本発明の一実施態様に係る両面粘着テープ1は、発泡体基材2の両面に第1の粘着剤層31と第2の粘着剤層32とを有する。そして、発泡体基材2と第1の粘着剤層31の間に第1の樹脂層41が配置されており、発泡体基材2と第2の粘着剤層32の間に第2の樹脂層42が配置されている。
【0010】
本発明の一実施態様に係る両面粘着テープは、発泡体基材と該発泡体基材の両面にそれぞれ第1の粘着剤層及び第2の粘着剤層を有する。
上記発泡体基材を用いることにより、本発明の一実施態様に係る両面粘着テープは優れた応力緩和性及び耐衝撃性を発揮することができる。上記発泡体基材は、連続気泡構造を有していても独立気泡構造を有していてもよいが、連続気泡構造を有することが好ましい。連続気泡構造を有する発泡体基材を用いることで、より優れた応力緩和性及び耐衝撃性を発揮することができる。上記発泡体基材は、単層構造であっても多層構造であってもよい。
【0011】
上記発泡体基材は特に限定されず、例えば、ポリウレタン発泡体、ポリオレフィン発泡体、ゴム系樹脂発泡体、アクリル発泡体等が挙げられる。なかでも、連続気泡構造を形成しやすく、優れた応力緩和性及び耐衝撃性を発揮できることから、ポリウレタン発泡体又はポリオレフィン発泡体が好ましい。
【0012】
上記発泡体基材の密度は特に限定されないが、好ましい下限は0.03g/cm、好ましい上限は0.8g/cmである。上記発泡体基材の密度をこの範囲内とすることにより、両面粘着テープの強度を維持しながら、優れた応力緩和性及び耐衝撃性を発揮することができる。両面粘着テープの強度、応力緩和性及び耐衝撃性の観点から、上記基材のより好ましい下限は0.04g/cm、より好ましい上限は0.7g/cmであり、更に好ましい下限は0.05g/cm、更に好ましい上限は0.6g/cmであり、特に好ましい下限は0.06g/cm、特に好ましい上限は0.5g/cmである。
なお、密度は、JIS K 6767に準拠して電子比重計(例えば、ミラージュ社製、「ED120T」)を使用して測定できる。
【0013】
上記発泡体基材の25%圧縮強度は特に限定されないが、好ましい下限は1kPa、好ましい上限は100kPaである。上記発泡体基材の25%圧縮強度をこの範囲内とすることにより、両面粘着テープの強度を維持しながら、優れた応力緩和性及び耐衝撃性を発揮することができる。両面粘着テープの強度、応力緩和性及び耐衝撃性を更に向上させる観点から、上記基材の25%圧縮強度のより好ましい下限は3kPa、より好ましい上限は80kPaであり、更に好ましい下限は5kPa、更に好ましい上限は70kPaである。
なお、25%圧縮強度は、JIS K 6254に準拠し測定することで求めることができる。
【0014】
上記発泡体基材のせん断貯蔵弾性率は特に限定されないが、動的粘弾性装置により測定し基準温度23℃で合成されたマスターカーブにおける周波数1.0×10-4~1.0×10-5Hz領域でのせん断貯蔵弾性率の最大値が1.0×10Pa以下であることが好ましい。上記周波数領域は、両面粘着テープに復元力や反発力がかかったときに発生する低速での剥離応力に対応した周波数である。上記周波数領域でのせん断貯蔵弾性率の最大値が1.0×10Pa以下であれば、両面粘着テープに復元力や反発力がかかったときの応力を上記発泡体基材により緩和し、粘着剤層に伝え難くするため、両面粘着テープの応力緩和性及び耐衝撃性を向上させることができる。
なお、せん断貯蔵弾性率は、動的粘弾性測定装置(例えば、アイティー計測社製のDVA-200等)を使用して昇温速度を5℃/minとして-60℃~250℃の範囲で測定できる。せん断貯蔵弾性率を測定する際は、測定中に試料のズレを押さえるため、上記基材の両側に粘着剤を塗布して測定を行う。このような粘着剤は特に限定されないが、上記基材の両側に塗布された粘着剤の厚みが上記基材の厚みの15%以下になるよう調整し測定を行う。粘着剤の厚みを上記基材の厚みの15%以下にすることで、粘着剤の影響を極力排除し上記基材のせん断貯蔵弾性率を測定することができる。
【0015】
上記発泡体基材の厚みは特に限定されないが、好ましい下限は100μm、好ましい上限は2900μmである。上記発泡体基材の厚みをこの範囲内とすることにより、本発明の一実施態様に係る両面粘着テープを携帯電子機器部品、車載用電子機器部品等の固定に好適に用いることができる。上記部品等の固定により好適に用いることができる観点から、上記発泡体基材の厚みのより好ましい下限は200μm、より好ましい上限は2500μm、さらに好ましい下限は250μm、さらに好ましい上限は2000μm、特に好ましい下限は300μm、特に好ましい上限は1500μmである。
【0016】
上記第1の粘着剤層と第2の粘着剤層(以下、両者をあわせて単に「粘着剤層」ともいう。)は同じ組成であってもよいし、それぞれ異なる組成であってもよい。上記粘着剤層は特に限定されず、例えば、アクリル粘着剤層、ゴム系粘着剤層、ウレタン粘着剤層、シリコーン系粘着剤層等が挙げられる。なかでも、光、熱、水分等に対し比較的安定で、種々の被着体に接着が可能である(被着体選択性が低い)ことから、アクリル共重合体を含有するアクリル粘着剤層が好ましい。
【0017】
上記アクリル粘着剤層を構成するアクリル共重合体は、初期のタックが向上するため低温時の貼り付け易さが良好となる観点から、ブチルアクリレート及び/又は2-エチルヘキシルアクリレートを含むモノマー混合物を共重合して得られることが好ましい。ブチルアクリレートと2-エチルヘキシルアクリレートとを含むモノマー混合物を共重合して得られることがより好ましい。
全モノマー混合物に占める上記ブチルアクリレートの含有量の好ましい下限は40重量%、好ましい上限は80重量%である。上記ブチルアクリレートの含有量をこの範囲内とすることにより、高い粘着力とタック性とを両立することができる。
全モノマー混合物に占める上記2-エチルヘキシルアクリレートの含有量の好ましい下限は10重量%、好ましい上限は100重量%、より好ましい下限は30重量%、より好ましい上限は80重量%、更に好ましい下限は50重量%、更に好ましい上限は60重量%である。上記2-エチルヘキシルアクリレートの含有量をこの範囲内とすることにより、高い粘着力を発揮することができる。
【0018】
上記モノマー混合物は、必要に応じてブチルアクリレート及び2-エチルヘキシルアクリレート以外の共重合可能な他の重合性モノマーを含んでいてもよい。上記共重合可能な他の重合性モノマーとして、例えば、アルキル基の炭素数が1~3の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、アルキル基の炭素数が13~18の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、官能性モノマー等が挙げられる。
上記アルキル基の炭素数が1~3の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル等が挙げられる。上記アルキル基の炭素数が13~18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、例えば、メタクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。上記官能性モノマーとして、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、グリセリンジメタクリレート、(メタ)アクリル酸グリシジル、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸等が挙げられる。
【0019】
上記モノマー混合物を共重合して上記アクリル共重合体を得るには、上記モノマー混合物を、重合開始剤の存在下にてラジカル反応させればよい。上記モノマー混合物をラジカル反応させる方法、即ち、重合方法としては、従来公知の方法が用いられ、例えば、溶液重合(沸点重合又は定温重合)、乳化重合、懸濁重合、塊状重合等が挙げられる。
【0020】
上記アクリル共重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましい下限が40万、好ましい上限が150万である。上記アクリル共重合体の重量平均分子量をこの範囲内とすることにより、高い粘着力を発揮することができる。粘着力の更なる向上の観点から、上記重量平均分子量のより好ましい下限は50万、より好ましい上限は140万である。
なお、重量平均分子量(Mw)とは、GPC(Gel Permeation Chromatography:ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)による標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0021】
上記アクリル共重合体の数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比(Mw/Mn)は、好ましい上限が10.0である。Mw/Mnが10.0以下であると、低分子成分の割合が抑えられ、上記粘着剤層が高温下で軟化し、バルク強度が下がり接着強度が低下することが抑制される。同様の観点から、Mw/Mnのより好ましい上限は5.0であり、更に好ましい上限は3.0である。
【0022】
上記粘着剤層は、粘着付与樹脂を含有してもよい。
上記粘着付与樹脂として、例えば、ロジンエステル系樹脂、水添ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、クマロンインデン系樹脂、脂環族飽和炭化水素系樹脂、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5-C9共重合系石油樹脂等が挙げられる。これらの粘着付与樹脂は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0023】
上記粘着付与樹脂の含有量は特に限定されないが、上記粘着剤層の主成分となる樹脂(例えば、アクリル共重合体)100重量部に対する好ましい下限は10重量部、好ましい上限は60重量部である。上記粘着付与樹脂の含有量が10重量部以上であると、上記粘着剤層の粘着力の低下を抑制することができる。上記粘着付与樹脂の含有量が60重量部以下であると、上記粘着剤層が硬くなることによる粘着力又はタック性の低下を抑制することができる。
【0024】
上記粘着剤層は、架橋剤が添加されることにより上記粘着剤層を構成する樹脂(例えば、上記アクリル共重合体、上記粘着付与樹脂等)の主鎖間に架橋構造が形成されていることが好ましい。上記架橋剤は特に限定されず、例えば、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート型架橋剤等が挙げられる。なかでも、イソシアネート系架橋剤が好ましい。上記粘着剤層にイソシアネート系架橋剤が添加されることで、イソシアネート系架橋剤のイソシアネート基と上記粘着剤層を構成する樹脂(例えば、上記アクリル共重合体、上記粘着付与樹脂等)中のアルコール性水酸基とが反応して、上記粘着剤層の架橋が緩くなる。従って、上記粘着剤層は、断続的に加わる剥離応力を分散させることができ、両面粘着テープの粘着力がより向上する。
上記架橋剤の添加量は、上記粘着剤層の主成分となる樹脂(例えば、上記アクリル共重合体)100重量部に対して0.01~10重量部が好ましく、0.1~7重量部がより好ましい。
【0025】
上記粘着剤層の架橋度は、大きなせん断方向の負荷が加わった場合における被着体からの剥離を抑制する観点から、5~70重量%が好ましく、10~60重量%がより好ましく、15~50重量%が特に好ましい。なお、粘着剤層の架橋度は、粘着剤層をW1(g)採取し、この粘着剤層を酢酸エチル中に23℃にて24時間浸漬して不溶解分を200メッシュの金網で濾過し、金網上の残渣を真空乾燥して乾燥残渣の重量W2(g)を測定し、下記式により算出する。
架橋度(重量%)=100×W2/W1
【0026】
上記粘着剤層は、粘着力を向上させる目的で、シランカップリング剤を含有してもよい。上記シランカップリング剤は特に限定されず、例えば、エポキシシラン類、アクリルシラン類、メタクリルシラン類、アミノシラン類、イソシアネートシラン類等が挙げられる。
【0027】
上記粘着剤層は、遮光性を付与する目的で、着色材を含有してもよい。上記着色材は特に限定されず、例えば、カーボンブラック、アニリンブラック、酸化チタン等が挙げられる。なかでも、比較的安価で化学的に安定であることから、カーボンブラックが好ましい。
上記粘着剤層は、必要に応じて、無機微粒子、導電微粒子、酸化防止剤、発泡剤、有機充填剤、無機充填剤等の従来公知の微粒子および添加剤を含有してもよい。
【0028】
上記粘着剤層の厚みは特に限定されないが、片面の粘着剤層の厚みの好ましい下限は0.01mm、好ましい上限は0.1mmである。上記粘着剤層の厚みをこの範囲内とすることにより、本発明の一実施態様に係る両面粘着テープを携帯電子機器部品、車載用電子機器部品等の固定に好適に用いることができる。上記部品等の固定により好適に用いることができる観点から、上記粘着剤層の厚みのより好ましい下限は0.015mm、より好ましい上限は0.09mmである。
【0029】
本発明の一実施態様に係る両面粘着テープは、上記発泡体基材と第1の粘着剤層の間、及び、上記発泡体基材と第2の粘着剤層の間に、第1の樹脂層及び第2の樹脂層をそれぞれ有する(以下、両者をあわせて単に「樹脂層」ともいう。)。即ち、本発明の一実施態様に係る両面粘着テープは、上記発泡体基材と第1の粘着剤層の間に第1の樹脂層を有し、かつ、上記発泡体基材と第2の粘着剤層の間に第2の樹脂層を有する。上記樹脂層を有することにより、本発明の一実施態様に係る両面粘着テープは、優れた応力緩和性及び耐衝撃性を発揮できる上記発泡体基材を採用しながら、剥離時には上記発泡体基材が割れたりせず、被着体に残渣を残すことなく剥離することができ、両粘着面に優れたリワーク性を発揮することができる。更に、第1の樹脂層及び第2樹脂層の少なくとも一方の引張弾性率を一定以下とすることにより、両粘着面におけるリワーク性を確保しながら、シワや折れの発生を抑制しつつ容易にロール状に巻き取り可能とすることができる。
【0030】
上記樹脂層は、引張破断点応力が4MPa以上である。即ち、本発明の一実施態様に係る両面粘着テープは、上記発泡体基材と第1の粘着剤層の間に引張破断点応力が4MPa以上である第1の樹脂層を有し、かつ、上記発泡体基材と第2の粘着剤層の間に引張破断点応力が4MPa以上である第2の樹脂層を有する。引張破断点応力が4MPa以上である樹脂層を用いることにより、優れたリワーク性を発揮することができる。リワーク性を更に高める観点から、上記樹脂層の引張破断点応力は5MPa以上であることが好ましく、11.5MPa以上であることがより好ましく、15MPa以上であることが更に好ましい。上記樹脂層の引張破断点応力の上限は特に限定されないが、実質的には200MPa程度が上限である。
【0031】
上記第1樹脂層及び第2樹脂層の少なくとも一方は、引張弾性率が50MPa以下である。上記第1樹脂層及び第2樹脂層の少なくとも一方を、引張弾性率が50MPa以下である柔軟な樹脂層とすることにより、両面粘着テープ全体の柔軟性を確保して、両面粘着テープをロール状に巻き取ることが容易となり、取り扱い性が格段に向上し、巻き取りの際にシワや折れが生じることがない。
なお、上記第1樹脂層及び第2樹脂層は、両方の引張弾性率が50MPa以下であってもよいし、一方のみの引張弾性率が50MPa以下であって、他方の引張弾性率が50MPaを超えてもよい。上記第1樹脂層及び第2樹脂層の両方の引張弾性率が50MPa以下である場合、両面粘着テープは特に柔軟性に優れたものとなる。
上記第1樹脂層及び第2樹脂層の一方のみの引張弾性率が50MPa以下であって、他方の引張弾性率が50MPaを超える場合、両面粘着テープは適度な硬さを有するため、取り扱いが容易となり、例えば刃物を用いて切断するのが容易となる。この場合、引張弾性率が50MPaを超える他方の樹脂層の引張弾性率は500MPa以上であることが好ましく、1000MPa以上であることがより好ましく、1500MPa以上であることが更に好ましい。
上記引張弾性率の下限は特に限定されないが、10MPa以上が好ましく、20MPa以上がより好ましい。
【0032】
上記引張弾性率が50MPa以下である第1樹脂層及び第2樹脂層の少なくとも一方(以下、「引張弾性率が50MPa以下である樹脂層」ともいう。)は、引張破断点伸びが400%以上であることが好ましい。上記引張弾性率が50MPa以下である樹脂層の引張破断点伸びが400%以上であることにより、より優れたリワーク性を発揮することができる。リワーク性をより高める観点から、上記引張弾性率が50MPa以下である樹脂層の引張破断点伸びは450%以上であることが好ましく、500%以上であることがより好ましい。
上記引張弾性率が50MPa以下である樹脂層の引張破断点伸びの上限は特に限定されないが、実質的には1500%程度が上限である。
【0033】
なお、本明細書において引張破断点応力、引張破断点伸び及び引張弾性率は、樹脂層の機械特性を意味し、JIS K 7161に準ずる方法により測定することができる。
具体的には例えば、高分子計器社製の打ち抜き刃「引張1号型ダンベル状」等を用いて、上記樹脂層をダンベル上に打ち抜いて試験片を作製する。得られた試験片を、例えば島津製作所社製「オートグラフAGS-X」等を用いて、引張速度100mm/minで測定し試験片を破断させる。試験片が破断した際の単位面積当たりの破断強度から引張破断応力を算出する。試験片が破断した際の伸びから、「(破断時掴み具間距離/初期掴み具間距離)×100」にて引張破断点伸びを算出する。1~3%の歪み間の引張強度の傾きから引張弾性率を算出する。
【0034】
上記樹脂層を構成する樹脂は特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート等が挙げられる。なかでも、粘着テープが柔軟性に優れることから、アクリル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂が好ましい。ポリエステル系樹脂のなかでは、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0035】
上記引張弾性率が50MPa以下である樹脂層は、応力緩和性、耐衝撃性及びリワーク性を更に高める観点から、熱可塑性エラストマーを含有することが好ましい。
上記熱可塑性エラストマーは、スチレン系(共)重合体、オレフィン系(共)重合体、塩化ビニル系(共)重合体、ポリエーテルエステル系トリブロック系(共)重合体、ポリエステル系(共)重合体、ウレタン系(共)重合体、アミド系(共)重合体又はアクリル系(共)重合体であってよい。なかでも、弾性体としての強度、伸び、柔軟性、自己粘着性を発揮することができ、優れたリワーク性を発揮しながら、樹脂層と発泡体基材との密着性をより向上させることができる観点から、上記熱可塑性エラストマーがアクリル系(共)重合体、スチレン系(共)重合体又はオレフィン系(共)重合体であることが好ましい。更に、アクリル系(共)重合体又はスチレン系(共)重合体であることがより好ましく、スチレン系(共)重合体であることが更に好ましい。
上記引張弾性率が50MPa以下である樹脂層における上記熱可塑性エラストマーの含有量は、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、更に好ましくは90重量%以上、特に好ましくは95重量%以上であり、100重量%であってもよく、通常100重量%以下である。
【0036】
本発明の好適な実施態様において、上記引張弾性率が50MPa以下である樹脂層は、応力緩和性、耐衝撃性及びリワーク性を更に高める観点から、ブロック共重合体を含有することが好ましい。特に、ハードセグメントとソフトセグメントとを有するブロック共重合体を含有することがより好ましい。
なお、上記引張弾性率が50MPa以下である樹脂層が上記ハードセグメントとソフトセグメントとを有するブロック共重合体からなることは、該樹脂層の示差走査熱量測定(DSC)を行ったときに、23℃を境に上下にそれぞれ1つ以上のピークが観察されることにより確認することができる。
【0037】
本発明の更に好適な実施態様において、上記引張弾性率が50MPa以下である樹脂層は、トリブロック共重合体を含有することがより好ましい。特に、ハードセグメントとソフトセグメントとを有するトリブロック共重合体を含有することが更に好ましい。このようなトリブロック共重合体を用いることにより、弾性体としての強度、伸び、柔軟性、自己粘着性を発揮することができ、優れたリワーク性を発揮しながら、樹脂層と発泡体基材との密着性をより向上させることができる。
【0038】
更に、上記引張弾性率が50MPa以下である樹脂層は、応力緩和性、耐衝撃性及びリワーク性を更に高める観点から、ジブロック共重合体とトリブロック共重合体とを含有する、即ち、ジブロック共重合体とトリブロック共重合体との混合物からなることも好ましい。
本発明の好適な実施態様においては、上記引張弾性率が50MPa以下である樹脂層におけるトリブロック共重合体の含有量は、応力緩和性、耐衝撃性及びリワーク性を更に高める観点から、60重量%以上であることが好ましい。より好ましくは70重量%以上、更に好ましくは80重量%以上、特に好ましくは90重量%以上であり、100重量%であってもよく、通常100重量%以下である。
【0039】
上記ブロック共重合体がハードセグメントとソフトセグメントとを有するブロック共重合体である場合、ハードセグメントの割合は、10重量%以上、50重量%以下であることが好ましい。上記ハードセグメントの割合は、12重量%以上、45重量%以下であることがより好ましく、14重量%以上、40重量%以下であることが更に好ましく、35重量%以下であることが特に好ましい。上記ハードセグメントの割合をこの範囲内とすることにより、上記樹脂層の上記発泡体基材、とりわけポリウレタン発泡体又はポリオレフィン発泡体からなる発泡体基材に対する密着性が向上する。
【0040】
上記ブロック共重合体がハードセグメントとソフトセグメントとを有するブロック共重合体である場合、ハードセグメントの分子量は5万以上であることが好ましく、5.3万以上であることがより好ましく、5.5万以上であることが更に好ましい。上記ブロック共重合体におけるハードセグメントの分子量は10万以下であることが好ましく、7.5万以下であることがより好ましく、7万以下であることが更に好ましい。上記ハードセグメントの分子量をこの範囲内とすると、特に優れたリワーク性を発揮することができる。
【0041】
上記ブロック共重合体がハードセグメントとソフトセグメントとを有するブロック共重合体である場合、ソフトセグメントの割合は、50重量%以上、90重量%以下であることが好ましい。55重量%以上、88重量%以下であることがより好ましく、60重量%以上、86重量%以下であることが更に好ましく、65重量%以下であることが特に好ましい。上記ソフトセグメントの割合をこの範囲内とすることにより、上記樹脂層の上記発泡体基材、とりわけポリウレタン発泡体又はポリオレフィン発泡体からなる発泡体基材に対する密着性が向上する。
【0042】
上記ブロック共重合体がハードセグメントとソフトセグメントとを有するブロック共重合体である場合、ソフトセグメントの分子量は10万以上であることが好ましく、13万以上であることがより好ましく、15万以上であることが更に好ましい。上記ブロック共重合体におけるソフトセグメントの分子量は50万以下であることが好ましく、40万以下であることがより好ましく、38万以下であることが更に好ましい。上記ソフトセグメントの分子量をこの範囲内とすると、上記引張弾性率が50MPa以下である樹脂層が高いタック性を発揮して、上記発泡体基材、とりわけポリウレタン発泡体又はポリオレフィン発泡体からなる発泡体基材に対する密着性が向上する。
【0043】
上記引張弾性率が50MPa以下である樹脂層が上記ブロック共重合体を含有する場合、上記ブロック共重合体の断面を原子間力顕微鏡(AFM)で観察したときに、スフィア状の相分離構造を観察できることが好ましい。このようなスフィア状の相分離構造を観察できることは、上記引張弾性率が50MPa以下である樹脂層がミクロ相分離構造を有することを意味し、樹脂層が柔軟性と強度を両立することができ、優れたリワーク性を発揮することができる。
【0044】
上記ブロック共重合体としては、例えば、スチレン系ブロック共重合体、アクリル系ブロック共重合体、ポリエーテルエステル系ブロック系共重合体、ウレタン系ブロック共重合体、塩化ビニル系ブロック共重合体、アミド系ブロック共重合体等が挙げられる。
なかでも、樹脂層の引張破断点応力、引張弾性率を容易に調整できるとともに、充分なタック性を発揮して上記発泡体基材への積層が容易であることから、スチレン-アクリル系ブロック共重合体が好適である。
上記スチレン-アクリル系ブロック共重合体は、スチレンと(メタ)アクリル酸アルキルエステルとのブロック共重合体である。スチレン-アクリル系ブロック共重合体は、スチレンに由来するブロックと、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来するブロックとを有する。なお通常は、上記スチレン-アクリル系ブロック共重合体において、スチレンに由来するブロックがハードセグメントを構成し、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来するブロックがソフトセグメントを構成する。すなわち、ハードセグメントを構成する成分としてスチレンに由来するブロックを含み、かつ、ソフトセグメントを構成する成分として(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来するブロックを含む、スチレン-アクリル系ブロック共重合体が好適である。
【0045】
上記スチレン-アクリル系ブロック共重合体は、ハードセグメントを構成する成分としてスチレンを含む。これにより、樹脂層の引張破断点応力を4MPa以上、かつ、引張弾性率を50MPa以下に容易に調整することができる。
上記スチレン-アクリル系ブロック共重合体全体におけるスチレンの割合は5重量%以上であることが好ましく、8重量%以上であることがより好ましく、12重量%以上であることが更に好ましい。上記スチレン-アクリル系ブロック共重合体全体におけるスチレンの割合は、30重量%以下であることが好ましく、20重量%以下であることがより好ましい。
上記スチレン-アクリル系ブロック共重合体のハードセグメントにおけるスチレンの割合は70重量%以上であることが好ましく、80重量%以上であることがより好ましい。
上記スチレン-アクリル系ブロック共重合体におけるスチレンの割合をこの範囲内とすることにより、樹脂層の引張破断点応力を4MPa以上、かつ、引張弾性率を50MPa以下により容易に調整することができる。
【0046】
上記スチレン-アクリル系ブロック共重合体は、ハードセグメントを構成する成分として、スチレン以外の成分を含有してもよい。
上記スチレン以外の成分としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
また、例えば、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルを用いることができる。例えば、(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基を有するモノマーを用いることができる。例えば、グリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基を有するモノマーを用いることができる。例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアミド基を有するモノマーを用いることができる。(メタ)アクリロニトリル等のニトリル基を有するモノマーを用いることができる。
更に、例えば、酢酸ビニル等のカルボン酸ビニルや、アクリロニトリル、スチレン等の一般の(メタ)アクリル共重合体に用いられている各種のモノマーも用いることができる。
【0047】
上記スチレン以外の成分としては、なかでも、カルボキシル基を有するモノマーを含有することが好ましい。カルボキシル基を有するモノマーを、ハードセグメントを構成する成分として含むことにより、上記スチレン-アクリル系ブロック共重合体は架橋剤により架橋可能となる。これにより、例えば、架橋前のスチレン-アクリル系ブロック共重合体を上記発泡体基材上に塗工した後、架橋させることにより所期の引張破断点応力、引張弾性率を満たす樹脂層を形成することが可能となることから、製造性が向上する。
上記スチレン以外の成分としてカルボキシル基を有するモノマーを含有する場合、ハードセグメントにおけるカルボキシル基を有するモノマーの割合は10重量%以上であることが好ましい。なお、上記架橋剤としては特に限定されず、イソシアネート系架橋剤等の一般的なものを用いることができる。
【0048】
上記スチレン以外の成分としては、水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルを含有してもよい。水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルを、ハードセグメントを構成する成分として含むことにより、樹脂層と発泡体基材との密着性を向上させることができる。
上記スチレン以外の成分として水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルを含有する場合、ハードセグメントにおける水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルの割合は0.1重量%以上であることが好ましい。
【0049】
上記スチレン-アクリル系ブロック共重合体は、ソフトセグメントを構成する成分として(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含む。これにより、樹脂層の引張破断点応力を4MPa以上、かつ、引張弾性率を50MPa以下に容易に調整することができる。
【0050】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、上記ハードセグメントを構成するスチレン以外の成分として記載した各種の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
なかでも、上記引張弾性率が50MPa以下である樹脂層に高いタック性を付与できることから、n-ブチル(メタ)アクリレート又は2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好適である。
上記スチレン-アクリル系ブロック共重合体のソフトセグメントにおけるn-ブチル(メタ)アクリレート又は2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートの割合は10重量%以上であることが好ましい。20重量%以上であることがより好ましく、30重量%以上であることが更に好ましく、40重量%以上であることが特に好ましく、100重量%であってもよい。
【0051】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、更に、樹脂層の引っ張り破断応力と破断伸び率を向上させることから、メチル(メタ)アクリレート又はエチル(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。
上記スチレン-アクリル系ブロック共重合体のソフトセグメントにおけるメチル(メタ)アクリレート又はエチル(メタ)アクリレートの割合は10重量%以上であることが好ましく、20重量%以上であることがより好ましく、30重量%以上であることが更に好ましく、40重量%以上であることが特に好ましい。また、80重量%以下であることが好ましく、70重量%以下であることがより好ましく、60重量%以下であることが更に好ましい。
【0052】
上記樹脂層は、着色されていてもよい。上記樹脂層を着色することにより、両面粘着テープに遮光性を付与することができる。
上記樹脂層を着色する方法は特に限定されず、例えば、上記樹脂層を構成する樹脂にカーボンブラック、酸化チタン等の粒子又は微細な気泡を練り込む方法、上記樹脂層の表面にインクを塗布する方法等が挙げられる。
【0053】
上記樹脂層は、必要に応じて、無機微粒子、導電微粒子、可塑剤、粘着付与剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、発泡剤、有機充填剤、無機充填剤等の従来公知の微粒子および添加剤を含有してもよい。また、上記第1樹脂層及び第2樹脂層の少なくとも一方を構成する樹脂が熱可塑性エラストマーからなる場合、樹脂として上記熱可塑性エラストマー以外の樹脂を含んでもよい。
【0054】
上記樹脂層の厚みは特に限定されないが、好ましい下限は5μm、好ましい上限は100μmである。上記樹脂層の厚みをこの範囲内とすることにより、本発明の一実施態様に係る両面粘着テープはより優れたリワーク性を発揮することができる。リワーク性をより高める観点から、上記樹脂層の厚みのより好ましい下限は10μm、より好ましい上限は70μmである。
【0055】
本発明の一実施態様に係る両面粘着テープは、必要に応じて、上記発泡体基材、上記粘着剤層及び上記樹脂層以外の他の層を有してもよい。
【0056】
本発明の一実施態様に係る両面粘着テープの厚みは特に限定されないが、好ましい下限は0.2mm、好ましい上限は3mmである。本発明の一実施態様に係る両面粘着テープの厚みをこの範囲内とすることにより、両面粘着テープが復元力や反発力に耐えられず剥がれるのを防止し、充分な接着や固定を実現しながら優れたリワーク性を発揮することができる。両面テープの剥離抑制及びリワーク性の更なる向上の観点から、本発明の一実施態様に係る両面粘着テープの厚みのより好ましい下限は0.3mm、より好ましい上限は2.8mmである。
【0057】
本発明の一実施態様に係る両面粘着テープの製造方法として、例えば、以下のような方法が挙げられる。まず、上記発泡体基材と第1の樹脂層の積層体を製造し、この積層体に第2の樹脂層を積層し、第1の樹脂層/発泡体基材/第2の樹脂層からなる積層体を形成する。
ここで、上記樹脂層を構成する樹脂として上記スチレン-アクリル系ブロック共重合体を用いた場合には、樹脂層にタック性があることから、容易に樹脂層と発泡体基材とを積層させることができる。また、加温させたラミネーターにより樹脂層と発泡体基材を圧着することで密着性を向上させることもできる。また、基材原料を発泡させて発泡体基材を得る工程時に樹脂層を差し込むことでより密着性を向上させることができる。また、樹脂層として用いる樹脂シートの表面、又は、発泡体基材に表面処理(例えば、プラズマ処理やコロナ処理等)を施すことでも、樹脂層と発泡体基材との密着性を向上させることができる。更に、樹脂層に自己粘着性がない場合には、接着剤層を発泡体基材と樹脂層の間に設けて積層させてもよい。樹脂層のポリマー鎖を反応点となる水酸基や酸基で修飾することで、樹脂層と発泡体基材との密着性を向上させることもできる。
【0058】
次いで、上記粘着剤層を形成する粘着剤溶液を調製して、該粘着剤溶液を離型フィルムの離型処理面に塗布し、溶液中の溶剤を完全に乾燥除去して第1の粘着剤層を形成する。この第1の粘着剤層を上記第1の樹脂層/発泡体基材/第2の樹脂層からなる積層体の第1の樹脂層側の表面に、第1の粘着剤層が第1の樹脂層側に対向した状態に重ね合わせる。一方、上記離型フィルムとは別の離型フィルムを用意し、この離型フィルムの離型処理面に粘着剤溶液を塗布し、溶液中の溶剤を完全に乾燥除去することにより、離型フィルムの表面に第2の粘着剤層が形成された積層フィルムを作製する。得られた積層フィルムを上記第1の樹脂層/発泡体基材/第2の樹脂層からなる積層体の第2の樹脂層側の表面に、第2の粘着剤層が第2の樹脂層側に対向した状態に重ね合わせて、第1の粘着剤層/第1の樹脂層/発泡体基材/第2の樹脂層/第2の粘着剤層からなる積層体を得る。そして、得られた積層体をゴムローラ等によって加圧することによって、第1の粘着剤層/第1の樹脂層/発泡体基材/第2の樹脂層/第2の粘着剤層を有し、かつ、両粘着剤層の表面が離型フィルムで覆われた両面粘着テープを得ることができる。また、ロールに巻き取る際は第2の粘着剤層に接する離型フィルムを剥ぎ取り、第2の粘着剤層を内側に巻き取れる。この際、第1の粘着剤層に接する離型フィルムは両面離型処理されていることが必要となる。
【0059】
本発明の一実施態様に係る両面粘着テープの用途は特に限定されず、例えば、携帯電子機器部品、車載用電子機器部品等の固定に用いられる。これらの用途における本発明の一実施態様に係る両面粘着テープの形状は特に限定されないが、長方形、額縁状、円形、楕円形、ドーナツ型等が挙げられる。
【0060】
本発明の一実施態様に係る両面粘着テープは、復元力や反発力のような低速での剥離応力がかかった状態での接着信頼性に優れることから、段差、角、非平面部等に貼り付けられたり、部品を変形させた状態で固定するために用いられたりすることが好ましい。一方、リワーク性に優れることから、仮固定の用途にも好適に用いることができる。更に、何らかの事情で貼合せ後に剥離したい場合にでも、剥離時に発泡体基材が割れて被着体に残渣が残ってしまうこともない。
本発明の一実施態様に係る両面粘着テープは、シワや折れの発生を抑制しつつ容易にロール状に巻き取り可能であることから、通常はロール状に巻き取った状態で保管し、該ロール状体から巻き出して使用することができる。
【0061】
本発明の一実施態様に係る両面粘着テープが用いられる物品として、例えば、TV、モニター、携帯電子機器等に使用されるフラットパネルディスプレイ、携帯電子機器のカメラモジュール、携帯電子機器の内部部材、車輌用内装、家電(例えば、TV、エアコン、冷蔵庫等)の内外装等が挙げられる。本発明の一実施態様に係る両面粘着テープの被着体として、例えば、携帯電子機器のサイドパネル、背面パネル、各種銘板、加飾フィルム、装飾フィルム等が挙げられる。
【発明の効果】
【0062】
本発明によれば、優れた応力緩和性及び耐衝撃性を有し、両粘着面におけるリワーク性に優れ、かつ、シワや折れの発生を抑制しつつ容易にロール状に巻き取り可能な両面粘着テープを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
図1】本発明の一実施態様に係る両面粘着テープの一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0065】
(連鎖移動剤(RAFT剤)の製造)
1,6-ヘキサンジチオール0.902gと、二硫化炭素1.83gと、ジメチルホルムアミド11mLとを2口フラスコに投入し、25℃で攪拌した。これに、トリエチルアミン2.49gを15分かけて滴下し、25℃で3時間攪拌した。次いで、メチル-α-ブロモフェニル酢酸2.75gを15分かけて滴下し、25℃で4時間攪拌した。その後、反応液に抽出溶媒(n-ヘキサン:酢酸エチル=50:50)100mLと水50mLとを加えて分液抽出した。1回目と2回目の分液抽出で得られた有機層を混合し、1M塩酸50mL、水50mL、飽和食塩水50mLで順に洗浄した。洗浄後の有機層に硫酸ナトリウムを加えて乾燥した後、硫酸ナトリウムをろ過し、ろ液をエバポレーターで濃縮して、有機溶媒を除去した。得られた濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィにて精製することでRAFT剤を得た。
【0066】
(スチレン-アクリル系ブロック共重合体Aの調製)
スチレン(St)84gと、アクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEA)3gと、アクリル酸(AAc)13gと、RAFT剤1.6gと、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(ABN-E)0.35gとを反応器に投入し、反応器内を窒素ガスで置換しながら85℃に昇温した。その後、85℃で6時間撹拌して重合反応を行った(第一段階反応)。
第一段階反応終了後、フラスコ内にn-ヘキサン4000gを投入し、撹拌して反応物を沈殿させた後、未反応のモノマー(St、HEA、AAc)及びRAFT剤をろ別し、反応物を70℃で減圧乾燥して共重合体(ハードセグメントA)を得た。
アクリル酸ブチル(BA)100g、ABN-E0.035g、及び酢酸エチル50gからなる混合物(ソフトセグメントB)と、先に得られた共重合体(ハードセグメントA)とを2口フラスコに投入し、フラスコ内を窒素ガスで置換しながら85℃に昇温した。その後、85℃で6時間撹拌して重合反応を行い、ハードセグメントAとソフトセグメントBからなるスチレン-アクリル系ブロック共重合体Aを含む反応液を得た。
なお、混合物(ソフトセグメントB)とハードセグメントAの配合量は、得られるブロック共重合体におけるハードセグメントとソフトセグメントとの質量比率が34/66となる量とした。得られたスチレン-アクリル系ブロック共重合体Aについて、全体設計、ハードセグメント設計、及びソフトセグメント設計を表1に示した。
【0067】
(スチレン-アクリル系ブロック共重合体B~Lの調製)
全体設計、ハードセグメント設計、及びソフトセグメント設計を表1に示したようにした以外は、スチレン-アクリル系ブロック共重合体Aと同様にして、スチレン-アクリル系ブロック共重合体B~Lを含む反応溶液を得た。
得られたスチレン-アクリル系ブロック共重合体B~Lについて、全体設計、ハードセグメント設計、及びソフトセグメント設計を表1に示した。
【0068】
(アクリル重合体の調製)
2口フラスコに酢酸エチル52重量部を入れて、反応器内を窒素置換した後、反応器を加熱して還流を開始した。酢酸エチルが沸騰してから、30分後に重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.08重量部を投入した。ここにブチルアクリレート97重量部、アクリル酸3重量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート0.1重量部からなるモノマー混合物を1時間30分かけて、均等かつ徐々に滴下し反応させた。滴下終了30分後にアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を添加し、更に1時間重合反応させ、反応器内に酢酸エチルを加えて希釈しながら冷却することにより、固形分40重量%のアクリル共重合体の溶液を得た。
得られたアクリル共重合体の固形分100重量部に対して、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン社製 商品名「コロネートL45」)3.0重量部を添加し、攪拌して、粘着剤溶液を得た。
【0069】
(アクリル系ブロック共重合体の調製)
ポリメタクリル酸メチル樹脂からなるハードセグメントの割合が40重量%、ポリアクリル酸ブチル樹脂からなるソフトセグメントの割合が60重量%、重量平均分子量が60000、クラレ社製、LA2270を45重量部に対し、酢酸エチル100重量部を添加、攪拌し、アクリル系ブロック共重合体の溶液を得た。
得られたアクリル系ブロック共重合体について、全体設計、ハードセグメント設計、及びソフトセグメント設計を表1に示した。
【0070】
【表1】
【0071】
(実施例1)
(1)第1の樹脂層の準備
第1の樹脂層として、厚み50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)シート(東レ社製、X30)を準備した。JIS K 7161に準ずる方法により測定したところ、該PETシートは、引張破断点応力が180MPa、引張破断点伸びが138%、引張弾性率が4360MPaであった。
【0072】
(2)ポリエチレン(PE)発泡体基材1の製造
ポリオレフィン樹脂として低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン社製「UBEポリエチレンF420」、密度0.920g/cm)100重量部を用いた。このポリエチレン樹脂100重量部、熱分解型発泡剤としてのアゾジカルボンアミド8重量部、分解温度調整剤としての酸化亜鉛1重量部及び酸化防止剤としての2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール0.5重量部を押出機に供給して130℃で溶融混練し、厚み約0.2mmの長尺シート状の発泡体原反を押出した。
次に、上記長尺シート状の発泡体原反を、その両面に加速電圧500kVの電子線を4.0Mrad照射して架橋した。架橋後の発泡体原反を熱風及び赤外線ヒーターにより250℃に保持された発泡炉内に連続的に送り込んで加熱して発泡させるとともに、発泡させながらMDの延伸倍率を2.5倍、TDの延伸倍率を2.5倍として延伸させた。これにより、厚み800μmのポリエチレン樹脂からなる発泡体を得た。
得られたPE発泡体基材1の密度を、JISK-6767に準拠して電子比重計(ミラージュ社製、「ED120T」)を使用して測定した結果、0.07g/cmであった。更に、得られたPE発泡体基材1の25%圧縮強度を、JIS K 6254に準拠し測定することで求めた結果、55kPaであった。
【0073】
(3)第2の樹脂層の準備
第2の樹脂層として、スチレン-アクリル系ブロック共重合体Aの酢酸エチル溶液に、スチレン-アクリル系ブロック共重合体A100重量部に対して5重量部の架橋剤を配合し、表面に離型処理を施した厚み50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)シート上に塗工し、乾燥させて、厚み50μmの未架橋樹脂膜を得た。架橋剤としては、日本ポリウレタン社製、商品名「コロネートL45」を用いた。
【0074】
スチレン-アクリル系ブロック共重合体Aの酢酸エチル溶液に、スチレン-アクリル系ブロック共重合体A100重量部に対して5重量部の架橋剤を配合し、表面に離型処理を施した厚み50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)シート上に塗工し、乾燥させた。その後、40℃、48時間加熱して熱架橋させることにより、厚み50μmの第2の樹脂膜測定用サンプルを得た。
架橋剤としては、日本ポリウレタン社製、商品名「コロネートL45」を用いた。
得られた第2の樹脂膜測定用サンプルについて、JIS K 7161に準ずる方法により測定したところ、引張破断点応力が9.9MPa、引張破断点伸びが388%、引張弾性率が7.6MPaであった。
また、得られた第2の樹脂膜測定用サンプルについて、架橋度を測定したところ、50重量%であった。
更に、得られた第2の樹脂膜測定用サンプルの表面を原子間力顕微鏡(AFM、島津製作所社製、SPM-9700HT)で観察したところ、シリンダー状の相分離構造が観察できた。
【0075】
(4)粘着剤溶液の調製
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応器に酢酸エチル52重量部を入れて、窒素置換した後、反応器を加熱して還流を開始した。酢酸エチルが沸騰してから、30分後に重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.08重量部を投入した。ここにブチルアクリレート70重量部、2-エチルヘキシルアクリレート27重量部、アクリル酸3重量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート0.2重量部からなるモノマー混合物を1時間30分かけて、均等かつ徐々に滴下し反応させた。滴下終了30分後にアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を添加し、更に5時間重合反応させ、反応器内に酢酸エチルを加えて希釈しながら冷却することにより、固形分40重量%のアクリル共重合体の溶液を得た。
得られたアクリル共重合体について、カラムとしてWater社製「2690 Separations Model」を用いてGPC法により重量平均分子量を測定したところ、71万であった。数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比(Mw/Mn)は5.5であった。
得られたアクリル共重合体の固形分100重量部に対して、軟化点150℃の重合ロジンエステル15重量部、軟化点145℃のテルペンフェノール10重量部、軟化点70℃のロジンエステル10重量部を添加した。更に、酢酸エチル(不二化学薬品社製)30重量部、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン社製 商品名「コロネートL45」)3.0重量部を添加し、攪拌して、粘着剤溶液を得た。
【0076】
(5)両面粘着テープの製造
第1の樹脂層の表面に、上記粘着剤溶液を塗布し、100℃で5分間乾燥させることにより、厚み20μmの粘着剤層を形成した。該粘着剤層上に、PE発泡体基材1を積層して、第1の樹脂層(粘着剤層)/発泡体基材からなる積層体を得た。
得られた第1の樹脂層(粘着剤層)/発泡体基材からなる積層体の発泡体基材側に未架橋樹脂膜を積層して、第1の樹脂層(粘着剤層)/発泡体基材/未架橋樹脂膜からなる積層体を形成した。次いで、40℃、48時間加熱して熱架橋させることにより、未架橋樹脂膜を第2の樹脂膜として、第1の樹脂層(粘着剤層)/発泡体基材/第2の樹脂膜からなる積層体を得た。
【0077】
上記粘着剤溶液を厚み100μmの離型処理を施したポリエチレン(PE)/上質紙/ポリエチレン(PE)からなる離型ライナーの離型処理面に塗布し、100℃で5分間乾燥させることにより、厚み50μmの第1の粘着剤層を形成した。
上記粘着剤溶液を厚み100μmの離型処理を施したポリエチレン(PE)/上質紙/ポリエチレン(PE)からなる離型ライナーの離型処理面に塗布し、100℃で5分間乾燥させることにより、厚み50μmの第2の粘着剤層を形成した。
【0078】
第2の粘着剤層が形成された離型ライナーを、上記第1の樹脂層(粘着剤層)/発泡体基材/第2の樹脂層からなる積層体の第2の樹脂層側の表面に、第2の粘着剤層が第2の樹脂層側に対向した状態に重ね合わせて、第1の粘着剤層(粘着剤層)/第1の樹脂層/発泡体基材/第2の樹脂層/第2の粘着剤層からなる積層体を得た。そして、得られた積層体をゴムローラによって加圧することによって、第1の粘着剤層/第1の樹脂層(粘着剤層)/発泡体基材/第2の樹脂層/第2の粘着剤層を有し、かつ、各粘着剤層の表面が離型ライナーで覆われた両面粘着テープを得た。
【0079】
(実施例2~8)
第2の樹脂膜として、スチレン-アクリル系ブロック共重合体B~Hを用い、第1および第2の粘着剤層の厚みを表2に示したようにした以外は、実施例1と同様にして両面粘着テープを得た。
【0080】
(実施例9)
(1)ポリウレタン(PU)発泡体基材の製造
ポリオールとして、ポリオール成分であるポリプロピレングリコール(PPG)(重量平均分子量800)90重量部及びネオペンチルグリコール(分子量800)10重量部と、酸成分であるε-カプロラクタムとからなるポリエステルポリオール(ポリオール成分/酸成分配合比率(重量比)=8:1を用いた。
ポリオールの合計100重量部にアミン触媒(ダブコLV33、三共エアープロダクト社製)を0.7重量部、整泡剤(SZ5740M、東レ・ダウコーニング社製)を1重量部添加し、攪拌した。そこへポリイソシアネート(ポリメリックMDI、東ソー社製)をイソシアネートインデックス60になるよう調整し投入した。その後、0.2g/cmになるように窒素ガスと混合攪拌し、微細な気泡が混入した溶液を得た。その溶液を厚み50μmのPETセパレーター(ニッパ社製、V-2)上にアプリケーターを使用して所定の厚みに塗布し、発泡体原料を反応させ、厚み800μmのポリウレタン樹脂からなる発泡体(PU発泡体基材)を得た。
得られたPU発泡体基材の密度を、JISK-6767に準拠して電子比重計(ミラージュ社製、「ED120T」)を使用して測定した結果、0.48g/cmであった。更に、得られたPU発泡体基材の25%圧縮強度を、JIS K 6254に準拠し測定することで求めた結果、33kPaであった。
【0081】
(2)両面粘着テープの製造
第2の樹脂層として、スチレン-アクリル系ブロック共重合体Iの酢酸エチル溶液に、スチレン-アクリル系ブロック共重合体I100重量部に対して5重量部の架橋剤を配合し、表面に離型処理を施した厚み50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)シート上に塗工し、乾燥させて、厚み50μmの未架橋樹脂膜を得た。架橋剤としては、日本ポリウレタン社製、商品名「コロネートL45」を用いた。
得られた第1の樹脂層/発泡体基材からなる積層体の発泡体基材側に未架橋樹脂膜を積層して、第1の樹脂層/発泡体基材/未架橋樹脂膜からなる積層体を形成した。次いで、40℃、48時間加熱して熱架橋させることにより、未架橋樹脂膜を第2の樹脂膜として、第1の樹脂層/発泡体基材/第2の樹脂膜からなる積層体を得た。
得られた第1の樹脂層/発泡体基材/第2の樹脂膜からなる積層体を用い、第1および第2の粘着剤層の厚みを表2に示したようにした以外は実施例1と同様にして、第1の粘着剤層/第1の樹脂層/発泡体基材/第2の樹脂層/第2の粘着剤層を有し、かつ、各粘着剤層の表面が離型ライナーで覆われた両面粘着テープを得た。
【0082】
(実施例10)
第1の樹脂層及び第2の樹脂層として、スチレン-アクリル系ブロック共重合体Jの酢酸エチル溶液に、スチレン-アクリル系ブロック共重合体J100重量部に対して5重量部の架橋剤を配合し、表面に離型処理を施した厚み50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)シート上に塗工し、乾燥させて、厚み50μmの未架橋樹脂膜を得た。架橋剤としては、日本ポリウレタン社製、商品名「コロネートL45」を用いた。
実施例9と同様の方法により得られた発泡体基の両側に未架橋樹脂膜を積層して、未架橋樹脂膜/発泡体基材/未架橋樹脂膜からなる積層体を形成した。次いで、40℃、48時間加熱して熱架橋させることにより、未架橋樹脂膜を第1の樹脂膜、第2の樹脂膜として、第1の樹脂層/発泡体基材/第2の樹脂膜からなる積層体を得た。
こうして得られた第1の樹脂層/発泡体基材/第2の樹脂膜からなる積層体を用いた以外は実施例1と同様にして、第1の粘着剤層/第1の樹脂層/発泡体基材/第2の樹脂層/第2の粘着剤層を有し、かつ、各粘着剤層の表面が離型ライナーで覆われた両面粘着テープを得た。
【0083】
(実施例11)
ポリオレフィン樹脂として直鎖状低密度ポリエチレン(エクソンケミカル社製「Exact3027」、密度0.900g/cm)70重量部、直鎖状低密度ポリエチレン(ダウケミカル社製「アフィニティーKC8852」、密度0.875g/cm、融点(DSC法)Tm:66℃)30重量部を用いた。なお、直鎖状低密度ポリエチレン(ダウケミカル社製「アフィニティーKC8852」)は、メタロセン化合物の重合触媒を用いて得られたエチレン-1-オクテン共重合体であった。また、発泡剤の重量部を7重量部に変更した。更に、MDの延伸倍率を2.0倍、TDの延伸倍率を2.0倍に変更した。
上記以外は実施例1と同様にして、厚み800μmのポリエチレン樹脂からなる発泡体を得た。
得られたPE発泡体基材2の密度を、JISK-6767に準拠して電子比重計(ミラージュ社製、「ED120T」)を使用して測定した結果、0.13g/cmであった。更に、得られたPE発泡体基材1の25%圧縮強度を、JIS K 6254に準拠し測定することで求めた結果、91kPaであった。
発泡体基材としてPE発泡体基材2を用い、第2の樹脂膜として、スチレン-アクリル系ブロック共重合体Kを用いた以外は、実施例1と同様にして両面粘着テープを得た。
【0084】
(比較例1)
発泡体基材としてPU発泡体基材を用い、第2の樹脂膜として、スチレン-アクリル系ブロック共重合体Lを用いた以外は、実施例1と同様にして両面粘着テープを得た。
【0085】
(比較例2)
発泡体基材としてPE発泡体基材1を用い、第2の樹脂膜として、アクリル共重合体を用いた以外は、実施例1と同様にして両面粘着テープを得た。
【0086】
(比較例3)
発泡体基材としてPE発泡体基材1を用い、第2の樹脂膜として、アクリル系ブロック共重合体を用いた以外は、実施例1と同様にして両面粘着テープを得た。
【0087】
(参考例1)
第2の樹脂層として、厚み50μmのスチレン系トリブロック共重合体Mからなるシート(日本ゼオン社製、♯3620)を用いた以外は実施例1と同様にして両面粘着テープを得た。
なお、スチレン系トリブロック共重合体Mは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むブロックを有していない。
【0088】
(評価)
実施例、比較例で得られた両面粘着テープについて以下の評価を行った。結果を表2に示した。
【0089】
(1)ロール巻き取り性の評価
得られた両面粘着テープ(離型ライナー/第1の粘着剤層/第1の樹脂層/発泡体基材/第2の樹脂層/第2の粘着剤層)を直径3インチの紙芯に、第2の粘着剤層側が内側になるように巻きつけてロール状体を得た。
得られたロール状体の側面と表層を目視にて観察した。更に、ロール状体から両面粘着テープを引き出した後、第2の粘着剤層側から目視にて観察して、以下の基準により評価した。
○:確認した全ての箇所にシワや折れが認められなかった。
△:確認した一部の箇所にシワや折れが認められた。
×:確認した全ての箇所にシワや折れが認められた。
【0090】
(2)リワーク性の評価
得られた両面粘着テープを幅5mm×長さ100mm、及び、幅10mm×長さ100mmの大きさにそれぞれ切り出して、5mm幅サンプル及び10mm幅サンプルを調製した。
得られた各サンプルの第1の粘着剤層側の離型ライナーを剥がし、厚み2mmのガラス板(幅50mm、長さ125mm)に第1の粘着剤層側を貼り合わせ、両面粘着テープ上に2kgのゴムローラを300mm/分の速度で一往復させた後、23℃、相対湿度50%の環境下に24時間放置した。次いで、発泡体基材の層間を裂きあげ、両面粘着テープから第2の粘着剤層と第2の樹脂層、及び、発泡体基材の一部を除去した後、両面粘着テープの残った部分を水平方向から30°の角度方向に300mm/分の速度にて引っ張り、ガラス板から両面粘着テープの残った部分を剥離した。第1の粘着剤層側のリワーク性について、以下の基準により評価した。第2の粘着剤層側についても、同様の評価を行った。
○:両面粘着テープの残った部分を除去できた。
△:剥離途中で両面粘着テープの一部が破断したものの、除去できた。
×:両面粘着テープの残った部分を除去できなかった。
【0091】
(3)取り扱い性の評価
得られた両面粘着テープを幅10mm×長さ220mmの大きさに切り出してサンプルを調製した。
得られたサンプルの上部10mmをつかみ具で固定し、下部10mmにクリップを付けた。つかみ具からクリップ間の距離が200mmになるようにそれぞれ固定した。次いで、クリップに200gの重りを吊り下げ、重りを吊り下げた状態で1分間静置した後、重りを外して、テープの伸び量を測定した。両面粘着テープの取り扱い性について、以下の基準により評価した。
◎:伸び量が、10mm未満。
〇:伸び量が、10mm以上。
【0092】
【表2】
【0093】
(4)アンカー性評価
実施例5、9及び参考例1で得られた両面粘着テープについて、以下のようにしてアンカー性を評価した。
まず、厚み25μmのポリエチレンテレフタレート(PET)シートを2枚用意し、30mm×300mmの大きさに裁断した。上記実施例(参考例)で得られた両面粘着テープを25mm×200mmの大きさに切り出し、用意した2枚のPETシートをそれぞれ両面テープの両面に貼り合わせ、測定用試料とした。なお、貼り合わせの際、両面テープの一方の短辺とPETシートの一方の短辺が一致するように配置することで、30mm×100mmの把持部を設けた。短辺方向においてはPETシートの中央に両面テープを配置した。
測定用試料の把持部を持ち、両面テープに対して1000mm/minの速度でT字方向(90°方向)に引き剥がした。
実施例5及び9の両面粘着テープを用いた場合は、発泡体の層間で破断した。参考例1の両面粘着テープを用いた場合は、破断する前に、発泡体と積層された樹脂シート層の間の界面で剥離した。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明によれば、優れた応力緩和性及び耐衝撃性を有し、両粘着面におけるリワーク性に優れ、かつ、シワや折れの発生を抑制しつつ容易にロール状に巻き取り可能な両面粘着テープを提供することができる。
【符号の説明】
【0095】
1 両面粘着テープ
2 発泡体基材
31 第1の粘着剤層
32 第2の粘着剤層
41 第1の樹脂層
42 第2の樹脂層
図1