(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-31
(45)【発行日】2023-11-09
(54)【発明の名称】制御装置、診療システムおよび制御方法
(51)【国際特許分類】
A61C 19/00 20060101AFI20231101BHJP
A61G 15/02 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
A61C19/00 B
A61C19/00 Z
A61G15/02
(21)【出願番号】P 2021022807
(22)【出願日】2021-02-16
【審査請求日】2022-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000138185
【氏名又は名称】株式会社モリタ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100156395
【氏名又は名称】荒井 寿王
(74)【代理人】
【識別番号】100180851
【氏名又は名称】▲高▼口 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100176245
【氏名又は名称】安田 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 和基
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 勇貴
(72)【発明者】
【氏名】馬野 峻哉
(72)【発明者】
【氏名】小沢 啓吾
(72)【発明者】
【氏名】木下 和也
(72)【発明者】
【氏名】野村 毅
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2003/0236669(US,A1)
【文献】特開2002-209958(JP,A)
【文献】実開昭60-81521(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 19/00
A61G 15/00-18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
診療装置に含まれ、ユーザによって操作される被制御部を制御する制御装置であって、
前記被制御部を前記ユーザが触ることによって操作する操作部と、
前記ユーザが発する音声に関連する音声関連データを入力する入力部と、
前記入力部に入力された前記音声関連データが前記被制御部の制御要素に関する定量的な定量指示であると判断した場合に当該定量指示に基づいて前記被制御部を制御して前記制御要素を変化させる制御部と、を備え
、
前記制御部は、前記定量指示に基づいて前記制御要素を所定量変化させた後に前記制御要素を更に変化させる旨の調整指示が前記操作部に入力された場合に、当該調整指示に基づいて前記被制御部を制御して前記制御要素を更に変化させ、当該調整指示に基づく前記制御要素の変化速度を、前記定量指示に基づく前記制御要素の変化速度よりも小さくする、制御装置。
【請求項2】
診療装置に含まれ、ユーザによって操作される被制御部を制御する制御装置であって、
前記ユーザが発する音声に関連する音声関連データを入力する入力部と、
前記入力部に入力された前記音声関連データが前記被制御部の制御要素に関する定量的な定量指示であると判断した場合に当該定量指示に基づいて前記被制御部を制御して前記制御要素を変化させる制御部と、を備え
、
前記制御部は、前記定量指示に基づいて前記制御要素を所定量変化させた後に前記制御要素を更に変化させる旨の調整指示が前記入力部に入力された場合に、当該調整指示に基づいて前記被制御部を制御して前記制御要素を更に変化させ、当該調整指示に基づく前記制御要素の変化速度を、前記定量指示に基づく前記制御要素の変化速度よりも小さくする、制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記制御要素が変化している間に当該変化を停止させる旨の停止指示、又は、減少させる旨の減少指示が前記入力部に入力された場合に、前記被制御部を制御して前記制御要素の変化を停止、又は、減少させる、請求項1
又は2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記定量指示に基づく前記制御要素の変化状況を表示する表示部を更に備える、請求項1~
3の何れか一項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記診療装置は医科歯科の診療装置であり、
前記被制御部は、患者を座らせる座面シートの動作部、背もたれの動作部、歯科用インスツルメントの動作部、オペライトの動作部、及び、うがい鉢の動作部の少なくとも何れか1つを含み、
前記制御要素は、前記座面シートの高さ、前記背もたれの傾斜角度、前記歯科用インスツルメントの出力、前記オペライトの光量、及び、前記うがい鉢の出水量の少なくとも何れか1つを含む、請求項1~
4のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項6】
診療装置に含まれ、ユーザによって操作される被制御部を制御する制御方法であって、
(a)前記ユーザが発する音声に関連する音声関連データを入力する入力工程と、
(b)前記入力工程で入力された前記音声関連データが前記被制御部の制御要素に関する定量的な定量指示であると判断した場合に当該定量指示に基づいて前記被制御部を制御して前記制御要素を変化させる制御工程と、
(c)前記制御工程において前記制御要素を所定量変化させた後、前記ユーザが操作部を触ることによって、前記制御要素を更に変化させる旨の調整指示が入力された場合に、当該調整指示に基づいて前記被制御部を制御して前記制御要素を更に変化させる調整工程と、を含み、当該調整工程における前記制御要素の変化速度を、前記定量指示に基づく前記制御要素の変化速度よりも小さくする、制御方法。
【請求項7】
診療装置に含まれ、ユーザによって操作される被制御部を制御する制御方法であって、
(a)前記ユーザが発する音声に関連する音声関連データを入力する入力工程と、
(b)前記入力工程で入力された前記音声関連データが前記被制御部の制御要素に関する定量的な定量指示であると判断した場合に当該定量指示に基づいて前記被制御部を制御して前記制御要素を変化させる制御工程と、
(c)前記制御工程において前記制御要素を所定量変化させた後、前記ユーザが発する音声に対応する音声関連データとして、前記制御要素を更に変化させる旨の調整指示が入力された場合に、当該調整指示に基づいて前記被制御部を制御して前記制御要素を更に変化させる調整工程と、を含み、当該調整工程における前記制御要素の変化速度を、前記定量指示に基づく前記制御要素の変化速度よりも小さくする、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、診療装置に係る制御装置、診療システムおよび制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されるように、施術者の音声指令及びフットスイッチの操作によって、医療用チェアユニットの作動操作が実行される装置が知られている。この装置では、施術者等が襟元に装着したワイヤレスマイクロフォンによって音声指令を検出し、音声が受信機によって受信される。制御用コンピュータによって、音声指令がデジタル信号に変換され、音声認識がなされる。表示装置には文字・図柄等が表示される。施術者は、フットスイッチによりON操作を行い、チェアユニットのバックシート等を動かす。バックシートが所定位置に来た時、施術者は、フットスイッチによりOFF操作を行い、バックシートを停止させる。さらにその位置を微調整したい場合も、上記と同様の手順で微調整が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来の装置では、フットスイッチ等を用いての操作を逐一行わねばならず、操作が煩わしい。また施術者にとって、所望の位置にバックシート等を調整することは困難である。よって、効率の良い診療を行うことができないという問題がある。
【0005】
本開示は、診療装置の被制御部を容易かつ所望に制御でき、診療を効率良く行うことができる制御装置、診療システムおよび制御方法を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、診療装置に含まれ、ユーザによって操作される被制御部を制御する制御装置であって、ユーザが発する音声に関連する音声関連データを入力する入力部と、入力部に入力された音声関連データが被制御部の制御要素に関する定量的な定量指示であると判断した場合に当該定量指示に基づいて被制御部を制御して制御要素を変化させる制御部と、を備える。
【0007】
この制御装置によれば、入力部が、ユーザの音声に基づく音声関連データを入力する。音声関連データは、被制御部の制御要素に関する定量的な定量指示である場合と、そうでない場合があり得る。制御部は音声関連データが定量指示であるか否かを判断し、定量指示である場合には、定量指示に基づいて、被制御部の制御要素を変化させる。これにより、被制御部の制御要素を定量的に変化させる操作が可能となる。ユーザは定量指示を出すだけでこの操作を行うことができるので、診療装置の被制御部を容易かつ所望に制御できる。その結果として、診療装置を用いた診療を効率良く行うことができる。
【0008】
制御部は、制御要素が変化している間に当該変化を停止させる旨の停止指示、又は、減少させる旨の減少指示が入力部に入力された場合に、被制御部を制御して制御要素の変化を停止、又は、減少させてもよい。上記した定量的な変化が、ユーザにとって実際には過大である場合もある。その場合に、定量的な変化が完了する前に、被制御部の制御要素を任意の変化量に到達した状態で停止させたり、変化を減少させたりすることができる。これにより、さらにフレキシブルな調整が可能となる。
【0009】
制御装置が、被制御部をユーザが触ることによって操作する操作部を更に備え、制御部は、定量指示に基づいて制御要素を所定量変化させた後に制御要素を更に変化させる旨の調整指示が操作部に入力された場合に、当該調整指示に基づいて被制御部を制御して制御要素を更に変化させてもよい。上記した定量的な変化が、ユーザにとって実際には過小である(足りない)場合もある。その場合に、定量的な変化が完了した後に、操作部を用いて、被制御部の制御要素を更に変化させることができる。なお、調整指示は、定量指示における変化の方向に対して順方向であるか又は逆方向であるかの情報を含むものとする。これにより、さらにフレキシブルな調整が可能となる。
【0010】
制御部は、定量指示に基づいて制御要素を所定量変化させた後に制御要素を更に変化させる旨の調整指示が入力部に入力された場合に、当該調整指示に基づいて被制御部を制御して制御要素を更に変化させてもよい。上記した定量的な変化が、ユーザにとって実際には過小である(足りない)場合もある。その場合に、定量的な変化が完了した後に、音声入力によって被制御部の制御要素を更に変化させることができる。なお、調整指示は、定量指示における変化の方向に対して順方向であるか又は逆方向であるかの情報を含むものとする。これにより、さらにフレキシブルな調整が可能となる。
【0011】
制御部は、調整指示に基づく制御要素の変化速度を、定量指示に基づく制御要素の変化速度よりも小さくてもよい。この構成によれば、ユーザが微小な変化量を見極めながらの操作を行う際に変化量が過大になってしまうことを防止しやすい。よって、微調整を好適に行うことができる。
【0012】
制御装置が、定量指示に基づく制御要素の変化状況を表示する表示部を更に備えてもよい。この構成によれば、ユーザは表示部に表示された変化状況を視認しながら診療を行うことができる。被制御部の制御がより確実に行えるとともに、診療装置の使い勝手が高められる。
【0013】
診療装置は医科歯科の診療装置であり、被制御部は、患者を座らせる座面シートの動作部、背もたれの動作部、歯科用インスツルメントの動作部、オペライトの動作部、及び、うがい鉢の動作部の少なくとも何れか1つを含み、制御要素は、座面シートの高さ、背もたれの傾斜角度、歯科用インスツルメントの出力、オペライトの光量、及び、うがい鉢の出水量の少なくとも何れか1つを含んでもよい。この構成によれば、上記の各動作部を容易かつ所望に制御できる。医科歯科の診療装置を用いた診療を効率良く行うことができる。
【0014】
本開示の別の態様は、診療装置と、制御装置とを備える診療システムであって、診療装置は、ユーザによって操作される被制御部を含み、制御装置は、ユーザが発する音声に関連する音声関連データを入力する入力部と、入力部に入力された音声関連データが被制御部の制御要素に関する定量的な定量指示であると判断した場合に当該定量指示に基づいて被制御部を制御して制御要素を変化させる制御部と、を有する。
【0015】
本開示のさらに別の態様は、診療装置に含まれ、ユーザによって操作される被制御部を制御する制御方法であって、(a)ユーザが発する音声に関連する音声関連データを入力する入力工程と、(b)入力工程で入力された音声関連データが被制御部の制御要素に関する定量的な定量指示であると判断した場合に当該定量指示に基づいて被制御部を制御して制御要素を変化させる制御工程と、を含む。
【0016】
これらの診療システムおよび制御方法によれば、上記の制御装置における作用効果と同様、診療装置の被制御部を容易かつ所望に制御でき、その結果として、診療装置を用いた診療を効率良く行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、診療装置の被制御部を容易かつ所望に制御でき、その結果として、診療装置を用いた診療を効率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本開示の一実施形態に係る診療装置の全体構成を示す概略図である。
【
図2】本開示の一実施形態に係る診療装置の全体構成を示すブロック図である。
【
図3】
図2中の制御装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図4】診療装置の制御装置によって行われる処理を示すフロー図である。
【
図5】定量指示および停止指示に基づくチェアの上昇操作の例を示す図である。
【
図6】定量指示および調整指示に基づくチェアの上昇操作の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0020】
まず
図1および
図2を参照して、本実施形態に係る診療装置1および医科歯科診療システムSについて説明する。
図1および
図2に示されるように、医科歯科診療システムSは、ユーザである医師または歯科医師が、患者を診療するために用いられるシステムである。患者が座るチェア6を備えた医科歯科診療システムSは、チェアユニットとも呼ばれる。医科歯科診療システムSを用いて行われる医科診療または歯科診療は、医科または歯科に関するあらゆる種類の診察および治療を包含する概念である。なお、ユーザは、診療装置1を操作し得る者であればよく、看護師等を含む医科助手であってもよく、歯科衛生士等を含む歯科助手であってもよい。1つの診療装置1に対して複数のユーザが存在してもよい。以下の説明では、医科歯科診療システムSおよび診療装置1が歯科診療に用いられる場合について説明する。
【0021】
医科歯科診療システムSは、診療装置1と、診療装置1を管理するための管理装置30とを備える。診療装置1は、診療器具2と、表示装置(表示部)3と、フットコントローラ4と、トレーテーブル5と、チェア6と、ベースンユニット7と、照明装置8と、操作部11とを備える。診療装置1は、さらに、診療器具2を制御する診療器具制御装置9と、ユーザが発する音声を入力する音声入力部12と、表示制御装置10とを備える。管理装置30は、制御部31を備える。管理装置30には、表示装置32が情報通信可能に接続されており、制御部31には、入力装置33が情報通信可能に接続されている。
【0022】
診療器具2は、たとえば1つ又は複数の歯科用インスツルメントを含む。歯科用インスツルメントは、たとえば、歯科医師が患者の歯牙の治療(例としてう蝕の治療や根管治療等)を行う際に使用される。歯科用インスツルメントは、たとえば先端に設けられた切削工具を含んでおり、内部の回転力伝達機構を介して切削工具を回転駆動させるエンドモータを含む。歯科用インスツルメントは、診療器具制御装置9によって制御されて、その出力を変えることができる。
【0023】
表示装置3は、たとえば液晶ディスプレイ等であり、診療器具2の作動状態および/または患者の診療状態等に関する情報を表示する。フットコントローラ4は、診療器具2またはチェア6等をユーザが足で操作するための操作部である。フットコントローラ4は、フットペダルと称されてもよい。
【0024】
チェア6は、患者を支持する診療台である。チェア6は、患者の臀部を含む下半身を支持する座面シート17と、患者の上半身を支持する背もたれ16と、患者の頭部を支持するヘッドレスト14と、患者の脚部を支持する足置き台18とを有する。座面シート17、背もたれ16、ヘッドレスト14および足置き台18は、それぞれ、内部に駆動モータ等の駆動機構(動作部)を備えており、所定の動作で動くことが可能である。たとえば、座面シート17は、上昇または下降することで、高さを変えることができる。背もたれ16は、背もたれ16と座面シート17の間の水平な回動軸を中心に傾動することで、背もたれ面の傾斜角度を変えることができる。ヘッドレスト14は、上昇または下降することで、高さを変えることができ、さらにヘッドレスト14と背もたれ16の間の水平な回動軸を中心に傾動することで、傾斜角度を変えることができる。足置き台18は、足置き台18と座面シート17の間の水平な回動軸を中心に傾動することで、傾斜角度を変えることができる。座面シート17、背もたれ16、ヘッドレスト14および足置き台18の各駆動機構は、チェア制御部13によって制御される。なお、チェアのその他の形態としては、座面シート、背もたれ、ヘッドレストおよび足置き台が一体に成型された仕様や、ヘッドレスト以外が一体に成形された仕様が考えられる。
【0025】
ベースンユニット7は、患者が口をゆすぐためのうがい鉢またはスピットンである。ベースンユニット7は、チェア6の側方に設けられている。ベースンユニット7は、給水ラインにおける出水量を制御する制御弁20と、制御弁20を開閉制御するベースン制御部19とを有する。ベースンユニット7は、たとえば患者によって操作される操作ボタン等を含んでもよい。ベースンユニット7は、さらに、照明装置8を制御する照明制御部21を有する。照明装置8はたとえばオペライト(無影灯)であり、チェア6の上方に配置されて患者の口腔を照らす。照明装置8は、光量の調整機構を備えており、照明制御部21によって制御されて、光量を調整することができる。
【0026】
操作部11は、ユーザが手や指などで触ることによって、チェア6、ベースンユニット7、および照明装置8を操作する部分である。本実施形態では、ユーザの操作(操作部11を用いた操作および後述の音声入力部12への入力を含む)に基づいて、診療器具2、チェア6の各部、ベースンユニット7および照明装置8が制御される。診療器具2、チェア6の各部、ベースンユニット7および照明装置8は、それぞれ、被制御部である。
【0027】
被制御部は、それぞれ、制御要素を有する。診療装置1において、被制御部は、たとえば、歯科用インスツルメントのエンドモータ(動作部)、チェア6におけるヘッドレスト14、背もたれ16、座面シート17および足置き台18の各駆動機構(動作部)、ベースンユニット7の制御弁(動作部)20、ならびに照明装置8の光量の調整機構(動作部)を含む。制御要素は、たとえば、歯科用インスツルメントの出力、チェア6におけるヘッドレスト14の傾斜角度と高さ、背もたれ16の傾斜角度、座面シート17の高さ、および足置き台18の傾斜角度、ベースンユニット7の出水量、ならびに照明装置8の光量を含む。
【0028】
フットコントローラ4および操作部11は、ユーザによって操作されて、上記した各制御要素を変化させることができる。なお、医科歯科診療システムSでは、ユーザが入力装置33に所定の入力を行うことにより、管理装置30の制御部31を介して、上記した各制御要素を変化させることもできる。
【0029】
本実施形態の医科歯科診療システムSは、入出力ポート101に入力された音声関連データに基づいて、上記した各制御要素を変化させることができるように構成されている。診療装置1は、上記した各被制御部を制御する制御装置Mを備える。制御装置Mは、CPU等のプロセッサと、RAMおよびROM等を含む記憶装置とを備えたコンピュータである。制御装置Mは、表示制御装置10と、診療器具制御装置9と、チェア6のチェア制御部13と、ベースンユニット7のベースン制御部19と、照明制御部21とを含む。制御装置Mは、これらの各制御部が一体化された構成を有してもよい。
【0030】
音声入力部12は、たとえばトレーテーブル5から立ち上がるマイクロフォンを含む。音声入力部12は、マイクロフォンによって検出したユーザの音声を認識することができる。音声入力部12は、音声を認識および入力するための公知の構成を備える。
【0031】
図3は、
図2中の制御装置のハードウェア構成の一例を示す図である。制御装置Mは、入出力ポート101と、制御部102と、主記憶部103と、補助記憶部104とを有する。入出力ポート101は、例えば、無線又は有線の通信モジュール等を含む。制御部102は、例えば、CPU等のプロセッサを含むマイコンである。主記憶部103は、例えば、ROMおよびRAM等を含む。補助記憶部104は、例えば、ハードディスクまたはフラッシュメモリ等を含み、主記憶部103よりも大量のデータを記憶する。補助記憶部104は、少なくとも1台のコンピュータを制御装置Mとして機能させるためのプログラムを記憶する。制御装置Mにおける処理は、例えば主記憶部103にプログラム110を読み込ませてそのプログラムを実行させることで実現される。制御部102は、プログラムに従って、入出力ポート101を動作させ、主記憶部103又は補助記憶部104におけるデータの読み出しおよび書き込みを行う。処理に必要なデータまたはデータベースが主記憶部103又は補助記憶部104内に格納されてもよい。
【0032】
なお、医科歯科診療システムSにおいて、管理装置30(
図2参照)が、
図3に示される制御装置Mと同様の構成と機能を備えてもよい。その場合には、診療装置1の各部を制御する制御装置としての管理装置30が、診療装置1の外部に設けられる。
【0033】
入出力ポート101は、音声関連データを入力する。入出力ポート101は、音声入力部12から出力された音声関連データを入力する。音声関連データとは、ユーザが発する音声に基づいて生成される音声データであってもよく、ユーザが発する音声に基づいて、予め規定されたコードに変換されたデータであってもよい。すなわち、音声関連データは、音声データと、コードに変換されたデータとを含む。
【0034】
制御装置Mは、診療装置1の被制御部の制御要素に関し、定量的な指示(定量指示)を記憶している。定量指示は、各制御要素につき、変化の向きと、所定の変化量とを含む。変化の向きとは、高さに関しては、たとえば上昇方向が正であり、下降方向が負である。傾斜角度に関しては、角度の増加方向が正であり、角度の減少方向が負である。光量に関しては、たとえば明るくなる方向(光量が増大する方向)が正であり、暗くなる方向(光量が減少する方向)が負である。なお、チェア6のヘッドレスト14、背もたれ16および足置き台18に関し、鉛直面が傾斜角度の基準面として設定されてもよいし(その場合、各部が水平に近づく方向の変化が正である)、水平面が傾斜角度の基準面として設定されてもよい(その場合、各部が鉛直に近づく方向の変化が正である)し、他の任意の平面が基準面として設定されてもよい。
【0035】
制御部102(診療器具制御装置9、チェア制御部13、ベースン制御部19および照明制御部21等)は、入出力ポート101に入力された音声関連データが、被制御部の制御要素に関する定量指示であるか否かを判断することができる。制御部102は、入出力ポート101に入力された音声関連データが被制御部の制御要素に関する定量指示であると判断した場合に、当該定量指示に基づいて被制御部を制御して、制御要素を変化させる。
【0036】
また、制御部102は、入出力ポート101に入力された音声関連データが、制御要素の変化を停止させる旨の停止指示、制御要素の変化を減少させる旨の減少指示、および制御要素を更に変化させる旨の調整指示のいずれかであるか否かを判断することができる。制御部102は、停止指示が入出力ポート101に入力された場合に、被制御部を制御して制御要素の変化を停止させる。制御部102は、減少指示が入出力ポート101に入力された場合に、被制御部を制御して制御要素の変化を減少させる。本明細書において、「変化を減少させる」とは、変化速度を低下させることを意味する。さらに、制御部102は、定量指示に基づいて制御要素を所定量変化させた後に調整指示が入力部に入力された場合に、当該調整指示に基づいて被制御部を制御して制御要素を更に変化させる。
【0037】
制御装置Mの表示制御装置10は、上記の定量指示、停止指示、減少指示、および調整指示に基づく制御要素の変化状況を、表示装置3に表示させる。なお、表示の様式としては、文字、数字、記号などの表記や、アイコンなどの図柄を、少なくとも一つ用いた仕様が可能である。
【0038】
続いて、
図4~
図6を参照して、制御装置Mによって行われる処理(制御方法)について説明する。まず、入出力ポート101は、音声関連データを入力する((a)入力工程)。制御部102は、ユーザによって定量指示が入力されたか否かを判断する(ステップS01)。制御部102は、定量指示が入力されていないと判断すると(ステップS01;NO)、ステップS01の判断処理を繰り返す。制御部102は、定量指示が入力されたと判断すると(ステップS01;YES)、定量指示に示される被制御部を動作させる。制御部102は、定量的な音声入力がなされた際に、それらを解析して数値(制御量)に置き換える。すなわち、制御部102は、定量指示に基づいて、被制御部を制御して制御要素を変化させる((b)制御工程)。
【0039】
この制御工程では、たとえば、
図5に示されるように、「チェア、Hミリ、上昇」との音声に対応する音声関連データが生成されると、制御装置Mのチェア制御部13は、当該音声関連データを定量指示であると認識する。そして、チェア制御部13は、座面シート17を上昇させる。
【0040】
続いて、制御部102は、停止指示が入力されたか否かを判断する(ステップS03)。制御部102は、停止指示が入力されたと判断すると(ステップS03;YES)、被制御部を制御して制御要素の変化を停止させる(ステップS06)。たとえば、
図5に示されるように、座面シート17が上昇している間に、「チェア、停止」との音声に対応する音声関連データが生成されると、制御装置Mのチェア制御部13は、当該音声関連データを停止指示であると認識する。そして、チェア制御部13は、座面シート17を停止させる。
【0041】
なお、このステップS03において、制御部102は、制御要素の変化を減少させる旨の減少指示が入力されたか否かを判断してもよい。制御部102は、減少指示が入力されたと判断すると、被制御部を制御して制御要素の変化速度を低下させる。
【0042】
ステップS03において停止指示が入力されていないと判断すると(ステップS03;NO)、制御部102は、被制御部を制御して制御要素を所定量変化させた後に、制御要素を停止させる(ステップS04)。たとえば、停止指示が入力されなかった場合には、
図5で破線の矢印で示されるように、チェア制御部13は、座面シート17がHミリ上昇した時点で、座面シート17を停止させる。
【0043】
続いて、制御部102は、調整指示が入力されたか否かを判断する(ステップS05)。制御部102は、調整指示が入力されたと判断すると(ステップS05;YES)、被制御部を制御して、その調整指示に応じた所定の調整制御を行う(ステップS07)。たとえば、
図6に示されるように、制御部102は、座面シート17をHミリ上昇させた後に、「あとhミリ、上昇」との音声に対応する音声関連データが更に生成されると、制御装置Mのチェア制御部13は、当該音声関連データを調整指示であると認識する。そして、チェア制御部13は、座面シート17を更にhミリ上昇させる。この際、「チェア」等の制御対象を示す音声は省略され得る。調整指示は、定量指示における変化の方向に対して順方向であるか又は逆方向であるかの情報を含んでもよい。なお、ステップS05において調整指示が入力されなかったと判断すると(ステップS05;NO)。制御部102は、一連の制御を終了する。
【0044】
このステップS07において、制御部102は、調整指示に基づく制御要素の変化速度を、定量指示に基づく制御要素の変化速度よりも小さくしてもよい。この場合、座面シート17は1回目の定量的な上昇時よりもゆっくりと上昇する。よって、ユーザが微小な変化量を見極めながらの操作を行う際に変化量が過大になってしまうことを防止しやすい。微調整を好適に行うことができる。たとえば、マイクロスコープを用いる際のピント合わせを好適に行うことができる。
【0045】
また、
図6に示されるように、たとえば、チェア制御部13が座面シート17を上昇させる調整制御を行って座面シート17が上昇している間に、フットコントローラ4または操作部11によって座面シート17を停止させる操作が行われた場合には、チェア制御部13は、座面シート17を停止させる。
【0046】
本実施形態の制御装置M、医科歯科診療システムSおよび制御方法によれば、入出力ポート101が、ユーザの音声に基づく音声関連データを入力する。音声関連データは、被制御部の制御要素に関する定量的な定量指示である場合と、そうでない場合があり得る。制御部102は音声関連データが定量指示であるか否かを判断し、定量指示である場合には、定量指示に基づいて、被制御部の制御要素を変化させる。これにより、被制御部の制御要素を定量的に変化させる操作が可能となる。ユーザは定量指示を出すだけでこの操作を行うことができるので、診療装置1の被制御部を容易かつ所望に制御できる。看部又は術野から視線を外すことなく、各種機器の調整(微調整を含む)作業が可能となる。その結果として、診療装置1を用いた診療を効率良く行うことができる。しかも、ユーザが手や指で操作部を触らずに(非接触にて)操作ができるため、衛生面での問題を排除して、的確な診療を行うことができる。施術中の接触感染予防(インフェクションコントロール)の向上が実現される。
【0047】
制御部102は、制御要素が変化している間に当該変化を停止させる旨の停止指示、又は、減少させる旨の減少指示が入力部に入力された場合に、被制御部を制御して制御要素の変化を停止、又は、減少させる。上記した定量的な変化が、ユーザにとって実際には過大である場合もある。その場合に、定量的な変化が完了する前に、被制御部の制御要素を任意の変化量に到達した状態で停止させたり(
図5参照)、変化を減少させたりすることができる。これにより、さらにフレキシブルな調整が可能となる。
【0048】
制御部102は、定量指示に基づいて制御要素を所定量変化させた後に制御要素を更に変化させる旨の調整指示が入力部に入力された場合に、当該調整指示に基づいて被制御部を制御して制御要素を更に変化させる。上記した定量的な変化が、ユーザにとって実際には過小である(足りない)場合もある。その場合に、定量的な変化が完了した後に、音声入力によって被制御部の制御要素を更に変化させることができる(
図6参照)。これにより、さらにフレキシブルな調整が可能となる。
【0049】
表示装置3を備える構成によれば、ユーザは表示装置3に表示された変化状況を視認しながら診療を行うことができる。被制御部の制御がより確実に行えるとともに、診療装置1の使い勝手が高められる。
【0050】
診療装置1によれば、患者を座らせる座面シートの動作部、背もたれの動作部、歯科用インスツルメントの動作部、オペライトの動作部、及び、うがい鉢の動作部の各動作部を容易かつ所望に制御できる。医科歯科の診療装置を用いた診療を効率良く行うことができる。
【0051】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られない。たとえば、制御装置が、定量指示に基づいて制御要素を所定量変化させた後に制御要素を更に変化させる旨の調整指示が操作部に入力された場合に、当該調整指示に基づいて被制御部を制御して制御要素を更に変化させてもよい。上記した定量的な変化が、ユーザにとって実際には実現したい量より過小である(足りない)場合や過大である(行き過ぎる)場合もある。その場合に、定量的な変化が完了した後に、操作部を用いて、被制御部の制御要素を更に変化させることができる。このような所定量変化後の調整指示は、定量指示における変化の方向に対して順方向であっても、逆方向であっても、いずれの情報にも対応できる構成が好ましい。これにより、さらにフレキシブルな調整が可能となる。
【0052】
制御装置Mが、ユーザに対してメッセージを報知する報知部を更に備えてもよい。制御装置Mは、調整指示に、定量指示における変化の方向に対して順方向であるか又は逆方向であるかの情報が含まれない場合に、報知部を制御して、調整指示が定量指示における変化の方向に対して順方向であるか又は逆方向であるかの方向指示を求める旨のメッセージを表示してもよい。
【0053】
定量指示は、変化量を示す数値に限られず、所定の変化量に対応する1つ又は複数のレベル(度合い)を含んでもよい。その場合、制御装置Mは、所定の変化量に対応する1つ又は複数のレベルを予め記憶する。
【0054】
また、歯科医院などに複数チェアユニットが設置されている場合に、一斉に音声で全てのチェアユニットへ指令(音声一斉指令)することができる。例えば、一日の診療を始めるときに、全てのチェアユニットの背もたれ16を所望の角度に揃えておきたい場合に、その角度の数値が全てのチェアユニットへ音声一斉指令される。また、一日の診療を終了するときにも同様に音声一斉指令することができる。なお、この場合、背もたれ16に限定されず、その他の被制御部に対して同様に音声一斉指令することができる。
【0055】
また、複数あるチェアユニットのうち、特定のチェアユニットのみに対し音声指令させたい場合は、特定のチェアユニットに予め割り当てられた認識可能な名称やコードなどを音声指令と共に発生してもよい。これにより、特定のチェアユニットのみが、当該音声指令を自らに対する指令であると認識して、音声指令に対応する制御を実行してもよい。
【0056】
医科歯科診療システムSおよび診療装置1が、耳鼻咽喉科、産婦人科、又は泌尿器科診療に用いられてもよい。診療システムが、医科歯科診療システムS以外のシステムであってもよい。ベッドタイプの診療台を備えた診療システムに、本開示の制御装置および制御方法が適用されてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1…診療装置、2…診療器具(歯科用インスツルメント)、3…表示装置(表示部)、4…フットコントローラ(操作部)、6…チェア、7…ベースンユニット、8…照明装置、10…表示制御装置、11…操作部、12…音声入力部(入力部)、13…チェア制御部、19…ベースン制御部、21…照明制御部、101…入出力ポート(入力部)、102…制御部、M…制御装置、S…医科歯科診療システム(診療システム)。