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特許7377248神経端側吻合のためのコネクタおよびラップ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-31
(45)【発行日】2023-11-09
(54)【発明の名称】神経端側吻合のためのコネクタおよびラップ
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/11 20060101AFI20231101BHJP
【FI】
A61B17/11
【請求項の数】 46
(21)【出願番号】P 2021190769
(22)【出願日】2021-11-25
(62)【分割の表示】P 2018543074の分割
【原出願日】2016-11-07
(65)【公開番号】P2022016607
(43)【公開日】2022-01-21
【審査請求日】2021-12-24
(31)【優先権主張番号】62/251,901
(32)【優先日】2015-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518149682
【氏名又は名称】アクソジェン コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】マーセド-オニール オーランド
(72)【発明者】
【氏名】オリコ マイケル レイモンド
【審査官】菊地 康彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0195124(US,A1)
【文献】米国特許第04778467(US,A)
【文献】国際公開第2012/133019(WO,A1)
【文献】国際公開第92/010975(WO,A1)
【文献】特表2002-518082(JP,A)
【文献】特表2003-530916(JP,A)
【文献】特表2010-535072(JP,A)
【文献】特開2009-118927(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドナー神経の少なくとも端の部分を受け入れるように構成された挿入端と、隣接端と、それらの間の、ボディの中を通って延びている内腔とを有する、中空の該ボディ、ならびに、
該隣接端から該ボディに沿って延び、かつ該ボディと連続している、1つのオーバーフラップであって、レシピエント神経の側面の周囲に少なくとも部分的に延びるようにサイズ決めされており、かつ、該ドナー神経の少なくとも該端の部分を該レシピエント神経の該側面に隣接して配置するよう適合されている、該1つのオーバーフラップ
を含む、2つの神経を接続するための神経コネクタ装置。
【請求項2】
前記ボディが、透明、半透明、または半透明性である生体材料を含む、請求項1に記載の神経コネクタ装置。
【請求項3】
高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリエチレングリコール(PEG)ハイドロゲル、ヒト由来または動物供給源由来の精製タンパク質、細胞化組織構造体、および脱細胞化組織構造体からなる群より選択される生体材料を含む、請求項1に記載の神経コネクタ装置。
【請求項4】
フィブリン、脱ミネラル化骨、小腸粘膜下組織(SIS)、真皮、コラーゲン、筋肉、筋膜、および出生組織からなる群より選択される生体材料を含む、請求項3に記載の神経コネクタ装置。
【請求項5】
前記生体材料が羊膜である、請求項4に記載の神経コネクタ装置。
【請求項6】
非多孔質のHDPEまたはPEGの層によって包囲された多孔質のHDPEまたはPEGを含む、請求項1に記載の神経コネクタ装置。
【請求項7】
神経コネクタ装置が生体材料を含み、該生体材料が脱細胞化されており、脱ミネラル化骨、小腸粘膜下組織(SIS)、真皮、筋肉、筋膜、または羊膜である、請求項1に記載の神経コネクタ装置。
【請求項8】
前記ボディが連続的な管状構造体である、請求項1に記載の神経コネクタ装置。
【請求項9】
前記ボディが、丸められた材料の不連続な管状構造体である、請求項1に記載の神経コネクタ装置。
【請求項10】
前記内腔の直径が、前記隣接端から前記挿入端まで実質的に一定である、請求項1に記載の神経コネクタ装置。
【請求項11】
前記内腔の直径が、前記隣接端から前記挿入端に向かって増大する、請求項1に記載の神経コネクタ装置。
【請求項12】
前記1つのオーバーフラップが、前記隣接端から約0.1cm~約4.0cmの距離だけ外に延びている、請求項1に記載の神経コネクタ装置。
【請求項13】
入端と、隣接端と、それらの間の内腔とを有する、中空のボディ、ならびに、
該中空のボディの該隣接端から延びている、1つのオーバーフラップであって、該中空のボディの該隣接端の縁の周囲の半分以下から延び、かつ、レシピエント組織の側面を該中空のボディの該隣接端に隣接して配置するように構成されている、該1つのオーバーフラップ
を含む、組織の端側接続のための組織コネクタ装置。
【請求項14】
前記ボディが、透明、半透明、または半透明性である生体材料を含む、請求項13に記載の組織コネクタ装置。
【請求項15】
前記組織コネクタ装置が、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリエチレングリコール(PEG)ハイドロゲル、ヒトまたは動物または合成供給源由来の精製タンパク質、細胞化組織構造体、および脱細胞化組織構造体からなる群より選択される生体材料を含む、請求項13に記載の組織コネクタ装置。
【請求項16】
前記生体材料が、フィブリン、脱ミネラル化骨、小腸粘膜下組織(SIS)、真皮、コラーゲン、筋肉、筋膜、および出生組織からなる群より選択される、請求項15に記載の組織コネクタ装置。
【請求項17】
前記生体材料が羊膜である、請求項16に記載の組織コネクタ装置。
【請求項18】
前記組織コネクタ装置が生体材料を含み、該生体材料が脱細胞化されており、脱ミネラル化骨、小腸粘膜下組織(SIS)、真皮、筋肉、筋膜、または羊膜である、請求項13に記載の組織コネクタ装置。
【請求項19】
前記ボディが、非多孔質のHDPEまたはPEGの層によって包囲された多孔質のHDPEまたはPEGを含む生体材料を含む、請求項13に記載の組織コネクタ装置。
【請求項20】
前記ボディが、縫合糸が通るように構成された生体材料を含む、請求項13に記載の組織コネクタ装置。
【請求項21】
前記ボディが連続的な管状構造体である、請求項13に記載の組織コネクタ装置。
【請求項22】
前記ボディが、丸められた材料の不連続な管状構造体である、請求項13に記載の組織コネクタ装置。
【請求項23】
前記丸められた材料の層が、前記内腔内に配置される組織を受け入れるように拡張することができる、請求項22に記載の組織コネクタ装置。
【請求項24】
前記隣接端における前記内腔の直径が、前記挿入端における前記内腔の直径とほぼ同じである、請求項13に記載の組織コネクタ装置。
【請求項25】
前記挿入端における前記内腔の直径が、前記隣接端における前記内腔の直径よりも大きい、請求項13に記載の組織コネクタ装置。
【請求項26】
前記挿入端の周囲の前記ボディの材料が、可撓性であり、かつ、ナー組織端が前記挿入端内に受け入れられときに該ドナー組織の周囲に引き寄せられ、集められ、またはかしめられるように構成され、請求項25に記載の組織コネクタ装置。
【請求項27】
前記内腔の直径が、前記ボディの長さの一部分に沿って実質的に一貫し、その後前記挿入端に向かってフレア状になる、請求項13に記載の組織コネクタ装置。
【請求項28】
前記内腔の前記直径が、前記ボディの前記長さの少なくとも半分に沿って実質的に一貫する、請求項27に記載の組織コネクタ装置。
【請求項29】
前記内腔の直径が、約0.25cm~約0.5cmである、請求項13に記載の組織コネクタ装置。
【請求項30】
前記内腔の前記直径が、約0.3cmである、請求項29に記載の組織コネクタ装置。
【請求項31】
前記ボディの長さが、約0.5cm~約3.0cmである、請求項13に記載の組織コネクタ装置。
【請求項32】
前記ボディの前記長さが、約0.75cm~約2.0cmである、請求項31に記載の組織コネクタ装置。
【請求項33】
前記ボディの前記長さが、約1.0cmである、請求項32に記載の組織コネクタ装置。
【請求項34】
前記1つのオーバーフラップが、前記中空のボディの前記隣接端から約0.1cm~約4.0cmの距離だけ外に延びている、請求項13に記載の組織コネクタ装置。
【請求項35】
前記1つのオーバーフラップが、前記中空のボディの前記隣接端から約0.2cm~約2.0cmの距離だけ外に延びている、請求項34に記載の組織コネクタ装置。
【請求項36】
前記1つのオーバーフラップが、前記中空のボディの前記隣接端から約0.5cmの距離だけ外に延びている、請求項35に記載の組織コネクタ装置。
【請求項37】
入端と、隣接端と、それらの間のボディの縦方向の長さを通って延びている内腔とを有する、中空のボディ、ならびに、
該中空のボディの該隣接端から延びている、該中空のボディと一体に成形された1つのオーバーフラップであって、該隣接端から該ボディの該縦方向の長さに平行に延びており、かつ、レシピエント組織の側面を該中空のボディの該隣接端に隣接して配置するように構成されている、該1つのオーバーフラップ
からなる、組織の端側接続のための組織コネクタ装置。
【請求項38】
前記ボディが、透明、半透明、または半透明性である生体材料を含む、請求項37に記載の組織コネクタ装置。
【請求項39】
前記組織コネクタ装置が、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリエチレングリコール(PEG)ハイドロゲル、ヒトまたは動物または合成供給源由来の精製タンパク質、細胞化組織構造体、および脱細胞化組織構造体からなる群より選択される生体材料を含む、請求項37に記載の組織コネクタ装置。
【請求項40】
前記生体材料が、フィブリン、脱ミネラル化骨、小腸粘膜下組織(SIS)、真皮、コラーゲン、筋肉、筋膜、および出生組織からなる群より選択される、請求項39に記載の組織コネクタ装置。
【請求項41】
前記生体材料が羊膜である、請求項40に記載の組織コネクタ装置。
【請求項42】
前記組織コネクタ装置が生体材料を含み、該生体材料が脱細胞化されており、脱ミネラル化骨、小腸粘膜下組織(SIS)、真皮、筋肉、筋膜、または羊膜である、請求項37に記載の組織コネクタ装置。
【請求項43】
前記ボディが、非多孔質のHDPEまたはPEGの層によって包囲された多孔質のHDPEまたはPEGを含む生体材料を含む、請求項37に記載の組織コネクタ装置。
【請求項44】
前記ボディが、縫合糸が通るように構成された生体材料を含む、請求項37に記載の組織コネクタ装置。
【請求項45】
前記隣接端における前記内腔の直径が、前記挿入端における前記内腔の直径とほぼ同じである、請求項37に記載の組織コネクタ装置。
【請求項46】
前記1つのオーバーフラップが、前記中空のボディの前記隣接端から約0.1cm~約4.0cmの距離だけ外に延びている、請求項37に記載の組織コネクタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2015年11月6日に出願された米国特許仮出願第62/251,901号の恩典を主張する。同出願の開示全体が、すべての図面および表を含め、参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
神経修復のための現在のゴールドスタンダードは、特に神経組織の重大な損失の存在においては、自家神経移植である。しかし、使用可能な移植組織の量が限られる場合、近位神経断端が使用可能ではない場合、神経が標的器官から遠位すぎるところで離断される場合、またはドナー部位に過度な罹患率が存在する場合のように、この技術が実行可能ではない場合がある。合成造管術および生物学的造管術の使用、培養シュワン(Schwann)細胞の適用および神経端側縫合術の使用のように外科的代替法が提案されている(M. G. Lykissas, "Current concepts in end-to-side neurorrhaphy," World Journal of Orthopaedics, vol. 2, no. 11, pp. 102-106, 2011(非特許文献1))。
【0003】
神経端側縫合術は、外科医には100年以上にわたって知られている。この技術は、損傷した神経の遠位断端を健康な隣接神経の側面に移植することを伴う。この技術は、機能の喪失および萎縮を防ぐために遠位神経の完全性および生存性を維持するのに役立つことができる。この技術への関心が高まっており、この技術による神経再生の機序ならびに臨床応用およびプラスの患者結果を改善する方法をさらに理解するために、近年、数多くの研究が実施されてきた。神経端側縫合術は、損傷したドナー神経の近位断端が使用できない場合または損傷が標的器官から遠位すぎるところで発生した場合に、神経機能を回復するための実行可能な代替法として受け入れられている。この技術はまた、近位感覚神経断端を小さな分岐運動神経または感覚神経に移植することによって症候性(痛みを伴う)神経腫形成を回避するためにも使用されている。
【0004】
この技術は、遠位断端が局所レシピエント神経に端側的に縫合されるならば、健康な局所レシピエント神経からの側副軸索発芽がドナー離断神経の遠位断端で起こることができるという考えに基づく。また、研究が、側副軸索発芽を助長するために、レシピエント神経部位に神経上膜開窓、すなわち開口を作製する必要がないことを示している。しかし、未処理のまたは開放した遠位神経断端をレシピエント部位に接合させた場合、軸索成長はレシピエントおよびドナー神経に限定され得ず、神経の外側でランダムな軸索成長が起こり、軟部組織付着および疼痛性神経腫を含む多様な症候を引き起こす可能性がある。
【0005】
レシピエント神経とドナー神経断端との間の吻合(coaptation)部位を被覆し、隔離する能力は、周辺区域への望ましくない軸索成長を減らす、またはなくすことができる。また、軸索成長を、非標的区域ではなく、好ましい神経再生部位に方向付けることによって治癒時間を短縮することができる。吻合部位を被覆することはまた、その区域に補強を提供し、吻合された(coaptated)神経の分離を阻止することができる。端端処置で神経端部を被覆し、隔離するためのインプラント装置の使用が知られている。端側処置の場合にも同一または類似の恩典を提供することができるインプラントは、望ましくない副作用を低減または排除し、患者転帰を改善することにより、この技術をより受け入れ可能にすることができると考えられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】M. G. Lykissas, "Current concepts in end-to-side neurorrhaphy," World Journal of Orthopaedics, vol. 2, no. 11, pp. 102-106, 2011
【発明の概要】
【0007】
概要
本発明は、有利な新規神経コネクタを提供する。より具体的には、本発明は、端側神経修復を容易にするための神経コネクタを提供する。本発明の装置および方法は、そのような処置を必要とする患者において、改善された治癒をより少ない副作用とともに提供することができる。吻合部位を被覆することはまた、縫合された神経を留め置き、突然の引張りが発生するとしても修復部の裂離を防止するより、修復部に保護を提供することができる。
【0008】
本発明は、端側神経外科術に関連する上記副作用に首尾よく対処し、神経修復を改善し、プラスの患者転帰を高めることができる特定の属性および利点を提供する。特に、本発明の態様は、健康で十分に無傷の隣接レシピエント神経の側面へのドナー遠位神経断端の簡便かつ効果的な吻合のための新規かつ非常に効果的な方法および装置を提供する。
【0009】
本発明の1つの態様は、少なくとも2つの横方向の裂け目または横方向の切り抜きを一端に有する神経スリーブまたはチューブ装置である。これは、チューブの端部が、V字もしくU字形を暗示する何かまたは魚の口に似ているように、少なくとも2つのオーバーフラップを提供する。損傷したまたは健康なドナー神経の神経断端をチューブの端部に差し込むことができ、オーバーフラップが神経断端を越えて延びる。ドナー神経がレシピエント神経の側面に配置されるように、オーバーフラップは、生きているまたは死んでいるいずれかのレシピエント神経の外側または神経上膜の周囲に配置されることができる。いくつかの例においては、神経間の軸索成長を促進するために、ドナー神経断端が配置され、かつ縫合または他の手段、たとえばフィブリン由来生成物または等価物によって固定されるところの「神経上膜開窓」と呼ばれる切開部または開口をレシピエント神経の神経上膜中に作製することができる。ひとたび神経チューブが配置されたならば、縫合を使用して神経チューブおよびオーバーフラップをドナーおよびレシピエント神経上に固定することができる。
【0010】
別の態様は、拡張可能な直径の神経ラップ装置である。ラップ装置の一端は、少なくとも2つのオーバーフラップを作製するために、上記のように、2つまたはそれ以上の横方向の裂け目または横方向の切り抜きを有することができる。この態様で、チューブは、遠位神経断端の周囲に配置されるように開放または拡張されることができる巻かれた材料であり、この場合もまた、オーバーフラップはドナー神経断端の端部を越えて延びる。オーバーフラップは、遠位神経断端をレシピエントまたは隣接神経の外側または神経上膜に固定するために、上記のように用いることができる。
[本発明1001]
挿入端および隣接端と、それらの間の、ボディの中を通って延びている内腔とを有する、中空の該ボディ、
該隣接端から延びておりかつ該ボディと連続している、1つまたは複数のオーバーフラップ、ならびに
該1つまたは複数のオーバーフラップを分離させることを可能にする、該1つまたは複数のオーバーフラップの間の少なくとも1つの分離部
を含む、2つの神経を接続するための神経コネクタ装置。
[本発明1002]
前記ボディが、透明または半透明性である生体適合性材料を含む、本発明1001の神経コネクタ装置。
[本発明1003]
高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリエチレングリコール(PEG)ハイドロゲル、およびヒト由来または供給源由来の精製タンパク質からなる群より選択される生体材料を含む、本発明1002の神経コネクタ装置。
[本発明1004]
小腸粘膜下組織(SIS)、羊膜、真皮、コラーゲン、および脱細胞化筋膜からなる群より選択される生体材料を含む、本発明1002の神経コネクタ装置。
[本発明1005]
非多孔質のHDPEまたはPEGの層によって包囲された多孔質のHDPEまたはPEGを含む、本発明1002の神経コネクタ装置。
[本発明1006]
前記ボディが連続的な管状構造体である、本発明1002の神経コネクタ装置。
[本発明1007]
前記ボディが、丸められた材料の不連続な管状構造体である、本発明1002の神経コネクタ装置。
[本発明1008]
前記分離部が切れ目である、本発明1006の神経コネクタ装置。
[本発明1009]
前記分離部がスリットである、本発明1006の神経コネクタ装置。
[本発明1010]
そのような処置を必要とする患者においてドナー神経断端をレシピエント神経に接続するための方法であって、
挿入端および隣接端と、それらの間の、ボディの中を通って延びている内腔とを有する、中空の該ボディ、
該隣接端から延びておりかつ該ボディと連続している、1つまたは複数のオーバーフラップ、および
該1つまたは複数のオーバーフラップを分離させることを可能にする、該1つまたは複数のオーバーフラップの間の少なくとも1つの分離部
を有する、神経コネクタ装置を用いる工程;
該ドナー神経断端を該挿入端に通して該内腔中にある距離の分だけ導入する工程;
該ドナー神経断端が少なくとも、該レシピエント神経の周囲で神経上膜に方向付けられるように、該1つまたは複数のオーバーフラップを該レシピエント神経の周囲に巻き付ける工程;ならびに
1つまたは複数の縫合を使用して該1つまたは複数のオーバーフラップを該レシピエント神経に固定し、かつ、1つまたは複数の縫合を使用して該ボディをドナー神経に固定する工程
を含む、方法。
[本発明1011]
前記レシピエント神経において神経上膜開窓を作製する工程をさらに含む、本発明1010の方法。
[本発明1012]
前記ドナー神経断端の末端が前記少なくとも1つの分離部の挿入端にまたはその近くに至るまで、該ドナー神経断端を前記内腔中に導入する工程をさらに含む、本発明1010の方法。
[本発明1013]
前記オーバーフラップの隣接端を互いに縫合することができるように、該オーバーフラップを前記レシピエント神経の周囲に巻き付ける工程をさらに含む、本発明1010の方法。
【図面の簡単な説明】
【0011】
上記発明のより正確な理解を得ることができるよう、添付図面に示されるその特定の態様を参照することにより、上記で簡単に説明した本発明のより詳細な説明が与えられる。本明細書に提示される図面は、原寸に比例して描かれていない場合もあり、図面または以下の詳細な説明における寸法の任意の参照は、開示される態様に特有である。本発明がその所期の目的のために機能することを可能にするこれらの寸法の任意の変更は本発明の範囲であると考えられる。したがって、これらの図面は本発明の典型的な態様を示すだけであり、したがって、範囲における限定とみなされてはならないという理解の上、添付図面を使用しながら本発明をさらに具体的かつ詳細に説明する。
図1】その中にドナー神経を伴いかつレシピエント神経に接して配置されている、本発明の1つの態様を示す。
図2】その中にドナー神経を伴いかつレシピエント神経に接して配置され、オーバーフラップがレシピエント神経の周囲に固定されかつ縫合によって固定されている、本発明の1つの態様を示す。
図3】オーバーフラップを一端に有する神経ラップ装置の1つの態様を示す写真である。
図4図4A~4Fは、本発明の神経ラップ装置の態様とともに使用することができる様々な形状のスロットの非限定的な例を示す。
図5】隣接するレシピエント神経の側面にドナー神経断端を接合させるために用いられる、オーバーフラップを一端に有する神経ラップ装置の1つの態様を示す写真である。また、改善された精度のために容易な目視配置を可能にする、小腸粘膜下組織(SIS)材料で製造された神経ラップ装置の有利な透明性および可撓性が示されている。出生組織、たとえば羊膜に由来する生成物を使用することもできる。この例においては、オーバーフラップはレシピエント神経の周囲を完全には巻かないということに注目すること。
図6】ドナー神経がどのようにして遠位端で神経ラップ装置に入り、神経コネクタの近位端のスロット内に配置されたレシピエント神経に近接するのかを示す。また、ドナー神経とレシピエント神経とを互いに定位置に固定するために、神経ラップ装置上の戦略的位置で1つまたは複数の縫合を使用することができる方法が示されている。フィブリン糊を使用して、神経接合を実施すること、または縫合接合を補強することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
詳細な開示
本発明は、組織の吻合に有用なインプラントを提供する。より具体的には、本発明は、神経の吻合を必要とする患者においてそのような処置に使用するための神経コネクタまたは類似の装置を提供する。さらに具体的には、本発明の態様は、神経端側吻合(end-to-side nerve coaptation)、特に神経端側修復処置に有用な神経コネクタインプラントを提供する。
【0013】
以下の説明においては、医療装置および神経修復に関連するいくつかの用語が使用される。そのような語を与えられる範囲を含め、明細書および特許請求の範囲の明確かつ一貫した理解を提供するために、以下の定義を提供する。
【0014】
本明細書中で使用される用語「患者」は、本発明の装置および方法が適用される、哺乳動物を含む任意の動物をいう。開示されるシステムおよび方法から恩恵を受けることができる哺乳動物種は、ヒト、類人猿、チンパンジー、オランウータン、サル;イヌ、ネコ、モルモット、ハムスターのような家畜(たとえばペット);ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジのような大型動物のための獣医学的使用;および獣医学的または追跡目的のための任意の野生動物を含むが、これらに限定されない。ヒトまたは非ヒト動物患者は、年齢範囲が新生児から高齢までであることができる。
【0015】
本明細書中で使用される用語「外科医」は、単に文言的都合のためである。この語は、いかなるふうにも限定的と解釈されるべきではない。本発明の装置、器具、方法、技術および/または処置は、それを用いることを望み、または必要とし、かつ本発明の必要な技術および理解を有する任意の人物によって用いられることができる。
【0016】
本明細書中で使用される用語「神経」および「神経組織」は、単に文言的都合のためである。本発明の態様が適用され、有用であることができる任意の組織がこれらの語に包含されると考えられる。非限定的な例として、本発明の態様は、血管または泌尿器組織、腱または筋肉組織で用いることもできる。
【0017】
用語「縫合」もまた、本明細書中、単に文言的都合のために使用される。この語は、いかなるふうにも限定的と解釈されるべきではない。本発明の態様は、神経組織を含む組織を固定および/または接続するのに有用な多様な装置、物質、および技術のいずれとでも一緒に用いることができる。これは、縫合糸、ステープル、血管クリップ、ハイドロゲル、フィブリン、ウレタン系接着剤および他の医療用接着剤またはそれらの組み合わせを含むことができるが、これらに限定されない。
【0018】
本明細書における「1つの態様」、「ある態様」、「例示的態様」、「さらなる態様」、「代替態様」などの任意の参照は文言的都合のためである。意味するところは、そのような態様に関連して記載される任意の特定の特徴、構造または特性が本発明の少なくとも1つの態様に含まれるということである。本明細書の様々な箇所におけるこのような語句の出現は必ずしも同じ態様を指すわけではない。加えて、本明細書に開示される任意の発明またはその態様の任意の要素または限定は、本明細書に開示される任意の他の発明またはその態様の任意および/またはすべての他の要素または限定と組み合わされることができ(個々に、または任意の組み合わせで)、すべてのそのような組み合わせが、それに限定されることなく、本発明の範囲内であると考えられる。
【0019】
最後に、本出願を通して、本発明の態様の「隣接端」および「挿入端」が参照される。本明細書中で使用される、装置の隣接端とは、レシピエント組織または神経にもっとも近く配置される端部、またはそれに付着されることができる端部である。逆に、装置の「挿入端」とは、ドナー神経の断端が挿入される端部であり、かつ一般的には、ただし非排他的に、隣接端からもっとも遠く離れている。
【0020】
本発明は、単に例示的であることを意図したものである以下の実施例においてより具体的に記載されるが、その数多くの変更および変形が当業者には明らかである。本明細書および特許請求の範囲中で使用される「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」に対する単数形は、文脈がそうでないことを明らかに指示しない限り、複数の指示対象をも含む。
【0021】
本発明の装置を製造するために、天然および合成いずれの生体材料も使用することができる。特定の態様において、生体材料は均質な材料である。本発明の製造に使用するための生体材料の例は、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリエチレングリコール(PEG)ハイドロゲル、ヒト由来または動物供給源由来の精製タンパク質(たとえば精製コラーゲンまたはフィブリンの膜)、細胞化および脱細胞化組織構造体(たとえば脱ミネラル化骨、小腸粘膜下組織(SIS)、真皮、筋肉、筋膜、または出生組織、たとえば羊膜)を含むが、これらに限定されない。HDPEまたはPEG装置は、非多孔質のHDPEまたはPEGの層によって包囲された多孔質のHDPEまたはPEGの円柱を含むまたはそれからなることができる。流体材料を形成することができる生体材料、たとえば可溶性精製コラーゲンまたは粒状SISおよび真皮は、中間体としての膜なしで直接成形されて、装置を形成することができる。
【0022】
本発明の態様は、可撓性かつ透明または少なくとも半透明もしくは半透明性であることが有利であることができる。特定の態様においては、小腸粘膜下組織(SIS)材料が用いられる。SIS材料は、本発明の神経コネクタに十分な透明性、可撓性および強度を提供することができる。処置中、外科医は通常、SIS材料を通してドナー神経断端を見ることができ、それは、レシピエント神経から適切な距離に神経断端を配置し、用いる場合には神経上膜開窓、すなわち神経上膜中の開口と、神経断端を整合させるのに有利である。材料の可撓性はまた、神経を傷つけたり損傷させたりすることなく、材料を神経の周囲に曲げることまたは巻き付けることを可能にする。SIS材料はまた、ひとたびそれが神経上に配置されたならばそれを定位置に保持するための縫合とともに使用するのに適している。
【0023】
同一または類似の構成要素を示すためにすべてを通して同じ参照番号が使用されている添付図面を参照する。本発明の特定の態様を示す添付図面を参照すると、図1において、本発明の神経コネクタ20が挿入端100および隣接端200を有することが見てとれる。概して、神経コネクタは、ドナー神経断端を受け入れるための内腔35をその中に有するボディ30を含み、かつ隣接端および挿入端の両方に通じている。隣接端はさらに、少なくとも1つのオーバーフラップ40を有することができる。代替態様は、レシピエント神経を受け入れることができるスロット45によって分けられた2つまたはそれ以上のオーバーフラップ40を含むことができる。これらの一般的な構成要素それぞれが1つまたは複数のサブコンポーネントを有することができ、以下、それらを詳細に説明する。
【0024】
本発明の1つの態様は、概して管状である中空のボディ30を有し、ボディは連続的な管状の構造体である。さらに、ボディの縦方向長さを通過し、挿入端100および隣接端200の両方に開口36を有する内腔35が存在することができる。この態様では、ドナー神経断端5を挿入端100に挿入し、隣接端200に向けて押すまたは引くことができる。図1、2および6は、内腔内のドナー神経の例を示す。
【0025】
1つの態様において、内腔35の直径は、連続的なボディの長さに沿って概して一定であり、開口36は同じまたはほぼ同じ直径を有する。図4Dに示す代替態様において、内腔35の直径は挿入端100に向かって徐々に増大し、その端部における開口36が他端における開口よりも大きく、それが、ドナー神経断端の挿入をより容易にすることができ、異なる直径を有する神経の端側接続を可能にすることができる。材料の可撓性が、開口の周囲の材料をドナー神経の神経上膜7の周囲に引き寄せ、集め、またはかしめ、かつ、必要ならば縫合250によって閉じるまたは固定することを可能にする。
【0026】
別の態様において、内腔35の直径は、隣接端200におけるボディ30の一部分に沿って、たとえば、隣接端からボディの長さの少なくとも半分に沿って実質的に一貫し、その後、ボディおよび内腔は、たとえば図4Cに示すように、挿入端100に向かってフレア状になることができる。これは、挿入端におけるドナー神経断端の挿入をより容易にすることができ、より細い、フレア状ではない内腔の部分が、神経断端を内腔内に保持するのを支援することができる。フレア状の開口は、ドナー神経の神経上膜7の周囲に集められ、またはかしめられ、かつ、1つまたは複数の縫合によって固定されて、神経コネクタ20を定位置に保持するのに役立つことができる。
【0027】
1つの態様において、装置のボディは、生体材料のシートを丸めて管状構造体を形成させることによって作製され、その一例が図4Fに示され、図中、装置のボディは、非連続的な管状構造体であるように、生体材料の管状構造体を形成する層、重なり合う層、または部分的に重なり合う層の「ロール」である。ロールの層は、様々な直径の神経または他の組織を受け入れるように拡張することができる。特定の関連する態様において、より大きな直径の神経を受け入れるために装置の内径が拡張されるとき、丸められた生体材料の層は、管状構造体の壁を維持するのに十分な程度に重なり合う。
【0028】
ボディの長さは、ドナー神経の長さ、ドナー神経の直径、ドナー神経の完全性および/またはそれに対する損傷の量、縫合を使用することができる場所および使用することができる縫合の数およびレシピエント神経の体内位置ならびに他の要因を含むがこれらに限定されない、当業者によって理解される多様な要因に依存して異なることができる。1つの態様において、ボディ30の長さは約0.5cm~約3.0cmである。より具体的な態様において、ボディの長さは約0.75cm~約2.0cmである。特定の態様において、ボディは約1.0cmの長さを有する。
【0029】
同様に、内腔の直径は、上記要因をはじめとする、当業者によって理解される多様な要因に依存して異なることができる。1つの態様において、内腔の直径は約0.25cm~約0.5cmである。より具体的な態様において、内腔の直径は約0.3cmである。
【0030】
隣接端200には、ボディ30と連続しておりかつボディの隣接端200の開口から外に延びているまたはその周囲に延びている、1つまたは複数のオーバーフラップ40が存在することができる。1つの態様においては、たとえば図4Aに示すように、オーバーフラップ40は1つしかない。この態様は、レシピエント神経上膜15の一部分のみがアクセス可能である場合に有用であることができる。この態様では、たとえば、ドナー神経をその中に有する神経コネクタ20をレシピエント神経に近接させ、その1つのオーバーフラップをレシピエント神経上膜15のアクセス可能な部分にかけて、またはその周囲に配置し、定位置に縫合することができる。
【0031】
図3および4B~4Eは、ボディ30と連続しておりかつボディの隣接端200の開口から外に延びているまたはその周囲に延びている2つのオーバーフラップ40が存在する他の態様の例を示す。この態様では、たとえば図2および6に示すように、オーバーフラップがレシピエント神経の周囲を取り囲むまたは少なくとも部分的に取り囲むことができるように、オーバーフラップはレシピエント神経10の神経上膜15の各側に配置されることができる。オーバーフラップは、図5に示すように、魚の開いた口に似るように、180°もしくは約180°離して、または開口のほぼ反対側に配置されることができる。しかし、これは必要な構成ではなく、いくつかの状況において、オーバーフラップがオフセットされることまたは開口の周囲で互いに正反対には位置しないことが有益である可能性もある。さらに、オーバーフラップは、異なるサイズおよび/または長さであることができ、その例が図4Bに示されている。
【0032】
代替態様においては、2つよりも多いオーバーフラップ40が存在することができる。この態様は、レシピエント神経10またはおそらくはドナー神経が、ちょうど2つのオーバーフラップの使用を困難、非効率的または無効にする不規則な形状または位置を有する場合に有用であることができる。複数のオーバーフラップは、1および2オーバーフラップ態様の場合に上記したものと同じ特性および変形を有することができる。当業者は、本開示の恩恵を受けると、本発明にしたがって、2つよりも多いオーバーフラップを神経コネクタ20に組み込む方法を理解するであろう。したがって、その例は本明細書の図面には含まれていない。
【0033】
2つまたはそれ以上のオーバーフラップ40は、オーバーフラップの形状または構造を画定する分離部41をそれらの間に有することができる。分離部は、任意の形状またはサイズであることができ、かつオーバーフラップを分離または展開させることができる点または線を生じさせることができる。1つの態様において、分離部は、オーバーフラップ間の1つまたは複数の切れ目42であり、そのため、それらは、上記ように、レシピエント神経の周囲または各側に配置するために分離させることができる。一般的に、切れ目は、オーバーフラップ間の材料の損失がほとんどまたは全くない非常に細い分離部である。そのような切れ目は、隣接端200の開口から挿入端100に向かって延びていることができ、その例が図4Fに示されている。切れ目はさらに、ボディに対して斜めに作製されることもできる。たとえば、切れ目42は、図4Fに示すように、ボディ30と実質的に同一線上にあることもできるし、または図4Fの点線によって例示されるように、ボディに対して斜めである、もしくはそれと非同一線上であることもできる。
【0034】
1つの態様において、2つまたはそれ以上のオーバーフラップ40の間の分離部は、切れ目よりも大きく、より多くの空間およびより少ない材料をオーバーフラップ間に提供するスリット45のようなものであることができる。スリットはさらに、レシピエント神経10の上または周囲へのオーバーフラップの配置を容易にするための多様な構成のいずれかを有することができる。スリットは、レシピエント神経の周囲への接合または巻き付けを容易にするまっすぐな縁、カーブした縁またはそれらの何らかの組み合わせを有することができる。図4B~4Eは、本発明の態様とともに用いることができる様々な形状のスリットのいくつかの例を示す。好ましくは、スリットの長さおよび形状は、オーバーフラップを固定するために縫合を使用することができるほど十分にレシピエント神経に巻き付くことができるようなものである。スリットはまた、たとえば図2に示すように、少なくとも1つの縫合を使用してオーバーフラップの隣接端を固定することができるように、オーバーラップがレシピエント神経の周囲に完全に延びていることを可能にするのに十分な長さであることもできる。
【0035】
スリットの長さおよび逆にオーバーフラップの長さは、当業者によって理解される多様な要因のいずれかに依存して異なることができる。たとえば、坐骨神経組織に使用されるコネクタは、手または顔の神経組織に使用されるコネクタよりも大きいものであることができる。1つの態様において、オーバーフラップの長さは約0.1cm~約4.0cmである。別の態様において、オーバーフラップの長さは約0.2cm~2.0cmである。より具体的な態様において、オーバーフラップの長さは約0.3cm~約0.7cmである。特定の態様において、オーバーフラップの長さは約0.5cmである。
【0036】
組織コネクタ20の使用は、本発明にしたがって、ドナー神経断端5を、通常はボディ30の挿入端100から内腔に挿入することにより、またはそれを押し込むことにより、内腔中に導入することを含むことができる。ドナー神経断端の末端8を隣接端の開口36に近接させることができる。レシピエント神経の神経上膜とドナー神経の末端との間に少なくともいくらかの空間が存在することを保証することは有利であることができる。したがって、ドナー神経の終端8を切れ目42またはスロット45のすぐ後ろに配置することができる。次いで、ドナー神経断端5の末端8がレシピエント神経の側面に十分に近づいて端側接合を生じさせるように、組織コネクタの1つまたは複数のオーバーフラップ40はレシピエント神経10の側面の周囲に部分的または全体的に巻き付けられることができる。
【0037】
いくつかの状況においては、神経間の軸索成長を助長または促進するために、神経上膜開窓17と呼ばれることが多い切開部または開口をレシピエント神経の神経上膜15中に作製することができる。上述したように、組織コネクタの材料が透明または半透明または半透明性であり、外科医が内腔35内のドナー神経断端の位置を見ることを可能にし、レシピエント神経および/または神経上膜開窓に対するドナー神経断端の位置も見ることができるならば、それは役に立つことができる。これは、外科医が末端8を正確に配置するのに役立ち、縫合によって組織コネクタを神経に接合させる前に、神経が、近すぎる位置に配置されたり、または形をゆがめられたりすることがないことを保証することができる。
【0038】
ひとたびドナー神経断端5の末端がレシピエント神経10に対して正しく配置されたならば、1つまたは複数の縫合を、ドナー神経断端と組織コネクタとの間ならびにレシピエント神経と1つまたは複数のオーバーフラップとの間および/または、オーバーフラップがレシピエント神経を完全に包囲するならば、オーバーフラップとオーバーフラップとの間に使用することができる。
【0039】
または、オーバーフラップが接合したのち、隣接端200のオーバーフラップ40を、内腔35内に配置されたレシピエント神経およびドナー神経に接合させることもできる。これは、外科医が、隣接端200の開口36をレシピエント神経上の最適位置に配置することを可能にして、ドナー神経の末端8が、内腔中に据え付けられるとき、正しく配置されることも保証することができる。
【0040】
別の代替態様においては、オーバーフラップの1つまたはいくつかをレシピエント神経に接合させて、最適な配置を支援することもできる。その後、残る1つまたは複数のオーバーフラップが接合するときにドナー神経がレシピエント神経に対して正しく配置されるように、ドナー神経は、内腔に挿入され、かつ配置されることができる。残る1つまたは複数のオーバーフラップおよびドナー神経を固定するためには、さらなる縫合を使用することができる。
【0041】
損傷した末梢神経からのドナー神経断端を、隣接する、通常は無傷のレシピエント神経の側面に接合させる神経修復術はいくつかの場合に有用である。ドナー神経をレシピエント神経に接合させることは、ドナー神経を生存可能に維持し、損傷した末梢神経によって弱められた組織が萎縮しないことを保証することができる。ドナー神経断端がレシピエント神経の側面に接合される場合に、端端神経修復に使用される神経修復装置は端側神経修復に適用できないこともある。
【0042】
本発明の態様は、端側神経修復をより実施しやすくし、望ましくない軸索成長を阻害し、改善された患者転帰を提供することができる新たな生体適合性装置を提供する。本発明の組織コネクタ装置および技術は、レシピエント神経へのドナー神経の接合に役立つことができ、適切な材料から形成されている場合、外科医が、改善された精度のために、配置中に装置を通して神経を実際に見ることを可能にすることができる。
【0043】
本発明の範囲は、本明細書によって当業者に提供された情報からそのような範囲内で変更を加えることができるため、本明細書において関連する特定の例ならびに提案された処置および使用によって限定されない。
【0044】
本発明は、特許法を遵守し、新規な原理を適用するために必要な情報を当業者に提供し、必要とされるような専用の構成要素を構築し、使用するために、本明細書中でかなり詳細に説明されている。しかし、本発明は、詳細には異なる装備および装置によって実施されることもでき、本発明の範囲を逸脱することなく、装備の詳細および操作手順の両方に関する様々な変更を加えることができる。さらに、本発明は、その特定の態様の特定の詳細を参照して、また、本明細書に開示された実施例によって説明されたが、特許請求の範囲に含まれる程度を除き、そのような詳細を本発明の範囲に対する限定とみなす意図はない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6