(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-31
(45)【発行日】2023-11-09
(54)【発明の名称】クロファジミンの組成物、それを含む組合せ、それを調製するためのプロセス、それを含む使用及び方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/498 20060101AFI20231101BHJP
A61K 9/72 20060101ALI20231101BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20231101BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20231101BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20231101BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20231101BHJP
A61P 31/06 20060101ALI20231101BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20231101BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20231101BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20231101BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20231101BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
A61K31/498
A61K9/72
A61K9/10
A61K9/12
A61P11/00
A61P31/04
A61P31/06
A61P31/10
A61K47/26
A61K47/04
A61K45/00
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2021510120
(86)(22)【出願日】2019-04-03
(86)【国際出願番号】 US2019025538
(87)【国際公開番号】W WO2020040818
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2022-02-02
(32)【優先日】2018-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503208552
【氏名又は名称】マンカインド コーポレイション
【住所又は居所原語表記】30930 Russell Ranch Road, Suite 301, Westlake Village, California 91362, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【氏名又は名称】川分 康博
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ホフマン
(72)【発明者】
【氏名】ステファン ユーファ
(72)【発明者】
【氏名】ケヴィン ステイプルトン
【審査官】参鍋 祐子
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-510662(JP,A)
【文献】K.Peters et al.,Journal of Antimicrobial Chemotherapy,vol 45, issue 1,2000年,pp 77-83
【文献】P. Bannigan et.al,Crystal Growth and Design,vol 16, issue 12,2016年,pp 7240-7250
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00
A61K 9/00
A61K 47/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入により投与するための医薬組成物であって:
(a)治療有効用量のクロファジミン又はその医薬的に許容され
る塩と;
(b)親水性-親油性バランス値が10を超える非イオン性界面活性剤と;
(c)水、等張生理食塩水、緩衝生理食塩水、及び電解質水溶液から選択される水性液体担体と;
を含み、
前記クロファジミン又はその医薬的に許容され
る塩は、懸濁物中の粒子の形態で提供され、
且つ
クロファジミン又はその医薬的に許容され
る塩の前記粒子は、中央径が5μm未満であり、且つD90が6μm未満である、医薬組成物。
【請求項2】
クロファジミン又はその医薬的に許容され
る塩の前記粒子は、平均径が2μm未満であり、且つD90が3μm未満である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
吸入により投与するための医薬組成物であって:
(a)治療有効用量のクロファジミンと;
(b)親水性-親油性バランス値が10を超える非イオン性界面活性剤と;
(c)水、等張生理食塩水、緩衝生理食塩水、及び電解質水溶液から選択される水性液体担体と;
を含み、
前記クロファジミンは、懸濁物中の粒子の形態で提供され、
且つ
クロファジミンの前記粒子は、中央径が5μm未満であり、且つD90が6μm未満である、医薬組成物。
【請求項4】
前記粒子は、中央径が2μm未満であり、且つD90が3μm未満である、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記クロファジミンは、三斜晶系FI型、単斜晶系FII型、及び斜方晶系FIII型、並びにこの種の型の混合物から選択される1種又は複数種の多形で提供される、請求項3又は4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記クロファジミンは、実質的に斜方晶系FIII型で提供される、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記非イオン性界面活性剤は、ポリソルベート20、ポリソルベート60、ポリソルベート80、ステアリルアルコール、親水性-親油性バランス値が14~16である水添ヒマシ油のポリエチレングリコール誘導体、親水性-親油性バランス値が15~17である水添ヒマシ油のポリエチレングリコール誘導体、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン(20)オレイルエーテル、ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(10)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(10)オレイルエーテル、ポリオキシエチレン(100)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(10)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(2)セチルエーテル、カプリロカプロイルポリオキシル-8グリセリド、ポリエチレングリコール(20)モノステアレート、ポリエチレングリコール(40)ステアレート、ポリエチレングリコール(100)ステアレート、ポリエチレングリコール(8)ステアレート、及びポリオキシル40ステアレート、並びにこれらの混合物から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記非イオン性界面活性剤は、ポリソルベート80であり、且つ
前記水性液体担体は、蒸留水、高張生理食塩水、又は等張生理食塩水である、請求項1~7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記高張生理食塩水は、1%~7%(w/v)塩化ナトリウムである、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記非イオン性界面活性剤は、超高純度ポリソルベート80であり、前記水性液体担体は、等張生理食塩水である、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記組成物の重量オスモル濃度は、200~700mOsm/kgの範囲にある、請求項1~10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記組成物の重量オスモル濃度は、300~400mOsm/kgの範囲にある、請求項1~10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記非イオン性界面活性剤は、組成物全体の0.001%~5%(v/v)の範囲にあり、且つ
クロファジミンの量は、組成物全体の0.1%~20%(w/v)の範囲にある、請求項1~10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物を、超音波ネブライザー、帯電噴霧式ネブライザー、振動膜ネブライザー、ジェット式ネブライザー、及び機械式ソフトミスト定量吸入器から選択される噴霧器具によってエアロゾル化することにより調製される、吸入用エアロゾルの形態にある医薬組成物であって、
前記噴霧器具により生成する前記エアロゾルの粒子の空気動力学的質量中央径は1~5μmである、医薬組成物。
【請求項15】
吸入用前記エアロゾルは、下部呼吸器系に沈着させるためのものである、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
噴霧化された4~7%高張生理食塩水、メタ過ヨウ素酸塩、ドデシル硫酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、トロメタミン、銀ナノ粒子、ビスマス-チオール、エチレンジアミン四酢酸、ゲンタマイシン担持ホスファチジルコリン修飾金ナノ粒子、キレート剤、シス-2-デセン酸、D-アミノ酸、D-アミノ酸残基を含むペプチド、ガリウムメソポルフィリンIX、ガリウムプロトポルフィリンIX、クルクミン、パツリン、ペニシリン酸、バイカレイン、ナリンゲニン、ウルソール酸、アシアチン酸、コロソリン酸、脂肪酸、宿主防御ペプチド、及び抗微生物ペプチドから選択される、バイオフィルムを分散及び/若しくは破壊するための剤、粘液溶解剤及び/若しくは粘液活性剤、並びに/又はバイオフィルム形成を低減する剤と組み合わせて使用するための、請求項1~13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
噴霧化された4~7%高張生理食塩水、メタ過ヨウ素酸塩、ドデシル硫酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、トロメタミン、銀ナノ粒子、ビスマス-チオール、エチレンジアミン四酢酸、ゲンタマイシン担持ホスファチジルコリン修飾金ナノ粒子、キレート剤、シス-2-デセン酸、D-アミノ酸、D-アミノ酸残基を含むペプチド、ガリウムメソポルフィリンIX、ガリウムプロトポルフィリンIX、クルクミン、パツリン、ペニシリン酸、バイカレイン、ナリンゲニン、ウルソール酸、アシアチン酸、コロソリン酸、脂肪酸、宿主防御ペプチド、及び抗微生物ペプチドから選択される、バイオフィルムを分散及び/若しくは破壊するための剤、粘液溶解剤及び/若しくは粘液活性剤、並びに/又はバイオフィルム形成を低減する剤と組み合わせて使用するための、請求項14又は15に記載の医薬組成物。
【請求項18】
マイコバクテリア又は他のグラム陽性細菌により引き起こされる肺感染症の治療及び/又は予防に使用するための、請求項1~13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
マイコバクテリア又は他のグラム陽性細菌により引き起こされる肺感染症の治療及び/又は予防に使用するための、請求項14又は15に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記感染症は、非結核性抗酸菌及び結核菌(マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis))群並びにこれらの組合せから選択される、マイコバクテリウム属(genus mycobacterium)に属する菌種により引き起こされる、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記感染症は、非結核性抗酸菌及び結核菌(マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis))群並びにこれらの組合せから選択される、マイコバクテリウム属(genus mycobacterium)に属する菌種により引き起こされる、請求項19に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項22】
前記非結核性抗酸菌は、マイコバクテリウム・アビウム(Mycobacterium avium)、マイコバクテリウム・イントラセルラーレ(Mycobacterium intracellulare)、マイコバクテリウム・アブセッサス(Mycobacterium abscessus)、及びライ菌(マイコバクテリウム・レプラエ(Mycobacterium leprae))、並びにこれらの組合せから選択される、請求項20に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項23】
前記非結核性抗酸菌は、マイコバクテリウム・アビウム(Mycobacterium avium)、マイコバクテリウム・イントラセルラーレ(Mycobacterium intracellulare)、マイコバクテリウム・アブセッサス(Mycobacterium abscessus)、及びライ菌(マイコバクテリウム・レプラエ(Mycobacterium leprae))、並びにこれらの組合せから選択される、請求項21に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項24】
前記感染症は、嚢胞性線維症、慢性閉塞性肺、又は後天性免疫不全症候群の患者における肺MAC症及び非結核性抗酸菌症から選択される日和見感染症である、請求項20に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項25】
前記感染症は、嚢胞性線維症、慢性閉塞性肺、又は後天性免疫不全症候群の患者における肺MAC症及び非結核性抗酸菌症から選択される日和見感染症である、請求項21に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項26】
前記感染症は、嚢胞性線維症の患者における非結核性抗酸菌の日和見感染症である、請求項24に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項27】
前記感染症は、嚢胞性線維症の患者における非結核性抗酸菌の日和見感染症である、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項28】
マイコバクテリア又は他のグラム陽性細菌により引き起こされる肺感染症を治療又は予防する際の抗菌活性の付与に使用するための系であって、前記系は:
1)
(a)治療有効用量のクロファジミンと;
(b)親水性-親油性バランス値が10を超える非イオン性界面活性剤と;
(c)水、等張生理食塩水、緩衝生理食塩水、及び電解質水溶液から選択される水性液体担体と、
を含む、吸入により投与するための医薬組成物と、
2)前記医薬組成物を吸入により投与するために噴霧化する噴霧器と、
を含み、
前記クロファジミンは懸濁物の形態で存在し、
且つ
前記系により生成するエアロゾル粒子は空気動力学的質量中央径が1~5μmである、系。
【請求項29】
前記噴霧器具は、噴出速度が0.1~1.0ml/minである、請求項
14に記載の医薬組成物。
【請求項30】
総吸入体積は1ml~5mlの間にある、請求項16~27、又は29のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項31】
前記組成物は、ベダキリン又はその医薬的に許容される
塩、セフォキシチン(cefoxitine)、アミカシン、クラリスロマイシン、ピラジンアミド、リファムピン、モキシフロキサシン、レボフロキサシン、及びパラ-アミノサリチレート、並びにこれらの混合物から選択される剤を投与する前、同時、又は後に投与される、請求項16、18、20、22、24、又は26のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項32】
前記組成物は、ベダキリン又はその医薬的に許容される
塩、セフォキシチン(cefoxitine)、アミカシン、クラリスロマイシン、ピラジンアミド、リファムピン、モキシフロキサシン、レボフロキサシン、及びパラ-アミノサリチレート、並びにこれらの混合物から選択される剤を投与する前、同時、又は後に投与される、請求項17、19、21、23、25、又は27のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項33】
肺真菌感染症若しくはクロストリジウム・ディフィシル又はこれらの組合せの治療及び/又は予防に使用するための、請求項1~13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項34】
肺真菌感染症若しくはクロストリジウム・ディフィシル又はこれらの組合せの治療及び/又は予防に使用するための、請求項14、15、17、19、21、23、25、又は27のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項35】
肺真菌感染症の治療及び/又は予防に使用するための、請求項33に記載の医薬組成物。
【請求項36】
肺真菌感染症の治療及び/又は予防に使用するための請求項34に記載の医薬組成物。
【請求項37】
前記肺真菌感染症は、カンジダ・アルビカンス(candida albicans)若しくはアスペルギルス・フミガツス(aspergilus fumigatus)又はこれらの組合せである、請求項33又は35に記載の医薬組成物。
【請求項38】
前記肺真菌感染症は、カンジダ・アルビカンス(candida albicans)若しくはアスペルギルス・フミガツス(aspergilus fumigatus)又はこれらの組合せである、請求項34又は36に記載の医薬組成物。
【請求項39】
前記組成物は、ベダキリン又はその医薬的に許容される
塩及びアミカシン並びにこれらの混合物から選択される剤を投与する前、同時、又は後に投与される、請求項31に記載の医薬組成物。
【請求項40】
前記組成物は、ベダキリン又はその医薬的に許容される
塩を投与する前、同時、又は後に投与される、請求項31に記載の医薬組成物。
【請求項41】
次に示すステップ:
(1)クロファジミン、前記非イオン性界面活性剤、及び水の懸濁物を、適切な粒径のクロファジミンを含む懸濁物を得るために均質化するステップと、
(2)(1)から得られた前記懸濁物のpHを、pH5.5~pH7.5の間のpHに調整するステップと、
(3)塩化ナトリウム濃度を適切な濃度に調整するステップと、
(4)重量オスモル濃度を適切な水準に調整するステップと、
を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の医薬組成物を調製するためのプロセス。
【請求項42】
次に示すステップ:
(1)クロファジミン及び非水性液体の懸濁物を、適切な粒径のクロファジミンを含む懸濁物を得るために均質化するステップと、
(2)前記クロファジミンを単離するステップと、
(3)前記クロファジミンを前記非イオン性界面活性剤及び水に添加するステップと、
(4)(3)から得られた懸濁物のpHをpH5.5~pH7.5の間のpHに調整するステップと、
(5)塩化ナトリウム濃度を適切な濃度に調整するステップと、
を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の医薬組成物を調製するためのプロセス。
【請求項43】
次に示すステップ:
(1)クロファジミンを、適切な粒径のクロファジミンを得るために微粉化するステップと、
(2)前記クロファジミンを、前記非イオン性界面活性剤及び水に添加するステップと、
(3)(2)から得られた懸濁物のpHを、pH5.5~pH7.5の間のpHに調整するステップと、
(4)塩化ナトリウム濃度を適切な濃度に調整するステップと、
を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の医薬組成物を調製するためのプロセス。
【請求項44】
前記非イオン性界面活性剤、適切な濃度の塩化ナトリウムを含み、pHがpH5.5~pH7.5の間のpHに調整された水中にクロファジミンを懸濁させた懸濁物を、適切な粒径のクロファジミンを得るために均質化することを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の医薬組成物を調製するためのプロセス。
【請求項45】
前記pHは7.4に調整され、前記塩化ナトリウム濃度は154mM塩化ナトリウムに調整される、請求項41、42、又は43のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項46】
前記pHは7.4であり、塩化ナトリウムの前記適切な濃度は154mM塩化ナトリウムである、請求項44に記載のプロセス。
【請求項47】
前記クロファジミンの前記微粉化は、ジェットミル粉砕、噴霧乾燥、ボールミル粉砕、又は超臨界流体処理により行われる、請求項43に記載のプロセス。
【請求項48】
ステップ(1)の前記均質化は、高圧均質化、湿式粉砕、超音波均質化、又はこの種の処理の組合せにより行われる、請求項41、42、44、又は46のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項49】
クロファジミンの前記均質化は、多段階の均質化により行われる、請求項41、42、44、45、46、又は48のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項50】
クロファジミンの前記微粉化は、多段階の微粉化により行われる、請求項43に記載のプロセス。
【請求項51】
前記適切な粒径のクロファジミンは、平均径が5μm未満であり、且つD90が6μm未満の粒子である、請求項41~50のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項52】
前記適切な粒径のクロファジミンは、平均径が2μm未満であり、且つD90が3μm未満の粒子である、請求項41~50のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項53】
次に示すステップ:(a)クロファジミン、前記非イオン性界面活性剤、及び水の懸濁物を、適切な粒径のクロファジミンを含む懸濁物を得るために均質化するステップと;(b)得られた懸濁物のpHを、pH5.5~pH7.5の間のpHに調整するステップと;(c)塩化ナトリウム濃度を適切な濃度に調整するステップと、(d)重量オスモル濃度を適切な水準に調整するステップと;を含み、ステップ(b)、(c)、及び(d)は、(b)、(c)、(d);(b)、(d)、(c);(c)、(b)、(d);(c)、(d)、(b);(d)、(b)、(c);又は(d)、(c)、(b)の順序で行うことができる、請求項1~13のいずれか一項に記載の医薬組成物を調製するためのプロセス。
【請求項54】
次に示すステップ:(a)クロファジミン及び非水性液体の懸濁物を、適切な粒径のクロファジミンを含む懸濁物を得るために均質化するステップと;(b)前記クロファジミンを単離するステップと;(c)前記クロファジミンを前記非イオン性界面活性剤及び水に添加するステップと;(d)得られた懸濁物のpHをpH5.5~pH7.5の間のpHに調整するステップと;(e)塩化ナトリウム濃度を適切な濃度に調整するステップと;を含み、ステップ(d)及び(e)は、(d)、(e);又は(e)、(d)の順序で行うことができる、請求項1~13のいずれか一項に記載の医薬組成物を調製するためのプロセス。
【請求項55】
次に示すステップ:(a)クロファジミンを、適切な粒径のクロファジミンを得るために微粉化するステップと、(b)前記クロファジミンを、前記非イオン性界面活性剤、適切な濃度の塩化ナトリウムを含み、pHがpH5.5~7.5の間に調整されている水に添加するステップと、を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の医薬組成物を調製するためのプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年8月23日に出願された米国仮出願第62/722,048号明細書の優先権を主張するものであり、本出願はまた、2019年1月25日に出願された米国仮出願第62/796,322号明細書の優先権も主張するものであり、両明細書の内容を本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する。
【0002】
本発明は、治療有効用量(therapeutically effective dose)のクロファジミンを含む吸入用医薬組成物であって、クロファジミンは懸濁物の形態で提供される組成物;それを調製するためのプロセス;並びにそれを含む使用及び治療方法に関する。更に本発明は、経肺吸入用エアロゾルの形態にある、クロファジミンを含む組合せ医薬を提供する。
【0003】
本発明により提供される組合せ及び組成物は、マイコバクテリア及び他のグラム陽性細菌により引き起こされる肺感染症並びに肺真菌感染症の治療及び/又は予防に使用することができる。
【背景技術】
【0004】
クロファジミンは、抗マイコバクテリア活性及び抗炎症活性を有する、極めて疎水性が高い(LogP=7.66)抗生物質であるリミノフェナジンであり、最初に記載されたのが1957年である。構造式を次に示す。
【化1】
【0005】
クロファジミンがその抗菌作用を発揮する正確な機序は分かっていない。しかしながら、マイコバクテリアのDNAに優先的に結合することにより、DNAの複製及び細胞増殖を阻害することは知られている。他の提案されている作用機序としては、膜の損傷/不安定化、膜を不安定化させるリゾリン脂質の生成、カリウム輸送及び/又は細胞内酸化還元サイクルの妨害が挙げられる。クロファジミンは、生体外では、多剤耐性株を含む結核菌(マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis))(MTB)に優れた活性を示す一方で、最近までは、肺結核の治療には有効ではないという考えが一般的であった(例えば、Cholo M et al.,J Antimicrob Chemother,2012 Feb,67(2):290-8参照)。
【0006】
クロファジミンは、ライ菌(マイコバクテリウム・レプラエ(Mycobacterium leprae))により引き起こされるハンセン病の治療用として、世界保健機関(World Health Organization)により推奨されている3種の主要薬のうちの1種であり、近年は、非結核性抗酸菌(NTM)により引き起こされる薬剤耐性結核等の他のマイコバクテリア感染症の治療に使用されることが増えてきている。
【0007】
クロファジミンは水にほとんど溶解せず、高い膜透過性を示すことから、生物薬剤学分類システム(Biopharmaceutics Classification System)(BCS)のクラスII薬物に分類されている。
【0008】
薬物の経口吸収が低く、且つバイオアベイラビリティが低いことに付随する問題を克服することを目的として、経口剤形の最適化に当たり、微粉化、ナノ粒子化(nanonization)、超臨界流体を用いた再結晶(supercritical fluid re-crystallization)、液中での噴霧凍結乾燥(spray freeze drying into liquid)、固体分散体、及び固溶体等の様々な戦略が用いられてきた。
【0009】
クロファジミンは、BCSクラスII薬物に分類されていることから、通常は、経口バイオアベイラビリティを向上するべく固体分散体に配合することが理想的な選択肢であると見なされている(例えば、Bhusnure et al.IJRPC 2014,4(4),906-918参照)。
【0010】
これに従い、親油性を有するクロファジミンは、経口吸収を向上することを目的として、油-ロウ基剤(oil-wax base)中の微結晶懸濁物として投与されるのが通常である。経口投与後の人体による吸収率にはかなり差がある(45~62%)。クロファジミンの有害作用は用量関連性であり、主として、皮膚、眼、胃腸管に影響を及ぼし、QT延長副作用には皮膚及び結膜の赤褐色の変色の発生が伴い、休薬により緩徐に回復する可逆性を示す。これは、長期間に亘り全身に貯留することに起因する。
【0011】
マイコバクテリウム属(Mycobacterium)は放線細菌門(Actinobacteria)の一属であり、マイコバクテリウム科(Mycobacteriaceae)という独立した科である。マイコバクテリアは棹状形状を有し、ロウ質の外膜を有する。
【0012】
そのようなものとして、マイコバクテリアは3つの群に分けることができる:
・結核菌(マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis))群-結核の起因病原体
・ライ菌(マイコバクテリウム・レプラエ(Mycobacterium leprae))-ハンセン病の起因病原体
・非結核性抗酸菌(Nontuberculous mycobacteria)(NTM)-結核菌(M・ツベルクローシス(M.tuberculosis))及びライ菌(M・レプラエ(M.leprae))以外の全てのマイコバクテリアを含む。マイコバクテリウム・アブセッサス・コンプレックス(Mycobacterium abscessus complex)(MABSC)、マイコバクテリウム・アビウム・コンプレックス(Mycobacterium avium complex)(MAC)等。
【0013】
結核症(TB)は結核菌群菌(Mycobacterium tuberculosis complex bacteria)により引き起こされる感染症である。TBは、文書に残されている最も古いヒトの感染性病原体の1種であり、今も尚、世界中の死亡率及び罹患率を上昇させる重大な原因となっている。2015年の新規TB感染者数は1040万人と推定されており、140万人が活動性TBによって死亡している(例えば、世界保健機関(WHO)世界結核報告書(Global Tuberculosis Report)2016参照)。このような有病率及び死亡率の高さに加えて、多剤耐性結核(MDR-TB)の出現に対する懸念が高まっており、2015年には580,000人の患者が薬剤耐性TBに感染していたことが示されている。ヒト免疫不全ウイルス(HIV)等の同時罹患は治療を複雑化し、2015年においては120万のTB症例に関与していた。
【0014】
多剤耐性菌(MDR)感染を治療するために、WHOは、抗TB薬の第2選択薬を用いた9~12ヶ月間の治療レジメンを実施することを推奨してきた。9~12ヶ月間のバングラディシュレジメン(Bangladesh regimen)等のこのようなレジメンでは、MDR-TBに対しガチフロキサン、エタンブトール、ピラジンアミド、及びクロファジミンの併用治療が行われ、患者の87.9%が無再発治癒を達成した(例えば、Sotgiu,G,et al.,“Applicability of the shorter‘Bangladesh regimen’in high multidrug-resistant tuberculosis settings”,International Journal of Infectious Diseases (2017)56 190-193参照)。
【0015】
TB治療期間の短縮について調査を行った他の研究から、クロファジミンは2週間経口投与した後も臨床的有用性がないことが示された(例えば、Diacon,A.H.,et al.,“Bactericidal Activity of Pyrazinamide and Clofazimine Alone and in Combinations with Pretomanid and Bedaquiline”,American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine(2015),191(8),943-953参照)。この薬物は循環血液中の血清タンパク質と高い親和性で結合するという理論が立てられていることから、こうした有効性の欠如は薬物のバイオアベイラビリティの低さに起因すると考えられた。クロファジミンは、MDR-TB及び超薬剤耐性TB(XDR-TB)の治療に有効であると経験的に実証されているにも関わらず、短期治療では、全身投与後のバイオアベイラビリティの低さにより、生物活性が限られるようである(例えば、Swanson,R.V.,et al.,“Pharmacokinetics and Pharmacodynamics of Clofazimine in a Mouse Model of Tuberculosis”,Antimicrobial Agents and Chemotherapy(2015),59(6),3042-3051参照)。
【0016】
抗生物質を吸入することによる肺感染の治療は、肺中の薬物濃度がより高くなると共に、全身送達と比較して副作用が低減され(例えば、Touw,D.J.,et al.,“Inhalation of antibiotics in cystic fibrosis”,European Respiratory Journal(1995),8,1594-1604参照)、その結果として生物活性及び有効性が高くなることが知られている(例えば、Hickey,A.J.,“Inhaled drug treatment for tuberculosis:Past progress and future prospects”,Journal of Controlled Release,(2016),240,127-134参照)。TB感染モデルにクロファジミンをエアロゾル化して投与すると、クロファジミンを経口投与した場合と比較して、バシラス属細菌(bacilli)の除去率が治療開始からわずか28日後に有意に改善されることがin vivoマウスモデルで実証された(例えば、Verma,R.K.,et al.,“Inhaled microparticles containing clofazimine are efficacious in treatment of experimental Tuberculosis in Mice”,Antimicrobial Agents and Chemotherapy(2013),57(2),1050-1052参照)。この短期間における有効性の改善は、クロファジミンが肺の感染部位に直接送達された結果、結核性肉芽腫の肺内マクロファージのクロファジミン濃度がより高くなることに起因していると思われる。
【0017】
したがって、MDR TB、又はXDR-TB感染患者にクロファジミンをエアロゾル化して投与すれば患者の治療成果が更に向上するはずであり、また、現行の治療レジメンの期間が短縮される可能性もある。
【0018】
かつては非定型又は遍在性(ubiquitous)マイコバクテリアと呼ばれていた非結核性抗酸菌(NTM)群には、150を超える菌種が含まれる。NTMは自然環境中に広く見られ、多様性に富んでいる。これらは土壌、地面、及び飲用水のみならず、低温殺菌乳やチーズ等の食品中でも検出されることがある。通常、NTMは、病原性が低いと考えられている。しかしながら、これらは、ヒト、特に免疫力が低下したヒトや既に肺疾患に罹患しているヒトには重大な疾患の原因となる可能性がある。現在、NTMは、その発育速度に応じて分類されており、遅発育(SGM)及び迅速発育(RGM)マイコバクテリアに分けられる。
【0019】
遅発育マイコバクテリウム・アビウム・コンプレックス(Mycobacterium avium complex)(MAC)には、マイコバクテリウム・アビウム(Mycobacterium avium)、マイコバクテリウム・キマイラ(Mycobacterium chimaera)、及びマイコバクテリウム・イントラセルラーレ(Mycobacterium intracellulare)の菌種が含まれ、これらが最も重要且つ最もよく見られる病原性NTMである。マイコバクテリウム・カンサシ(Mycobacterium kansasii)、マイコバセテリウム・マルモエンセ(Mycobaceterium malmoense)、マイコバクテリウム・ゼノピ(Mycobacterium xenopi)、マイコバクテリウム・シミエ(Mycobacterium.simiae)、マイコバクテリウム・アブセッサス(Mycobacterium abscessus)、マイコバクテリウム・ゴルドネ(Mycobacterium gordonae)、マイコバクテリウム・フォーチュイタム(Mycobacterium fortuitum)、及びマイコバクテリウム・ケロネー(Mycobacterium chelonae)と同じように、これらの大部分も肺感染症を引き起こす。マイコバクテリウム・マリナム(Mycobacterium marinum)は、水槽肉芽腫(aquarium granuloma)のような皮膚及び軟部組織の感染症に関与している。
【0020】
特にRGMは、生命に関わる深刻な慢性肺疾患を引き起こし、播種性の、多くの場合は致死性の感染症に関与する。感染は、通常、カテーテルが関与する汚染された物質(contaminated material)及び侵襲的手技、非滅菌的外科処置又は注射、並びに異物移植が原因となる。シャワーヘッドやジャグジーとの接触も感染のリスクがあると報告されている。NTMは、通常、慢性閉塞性肺疾患(COPD)や嚢胞性線維症(CF)等の慢性肺疾患の患者及び他の免疫機能が低下した患者に日和見感染を起こす。
【0021】
近年、迅速発育型(RGM)マイコバクテリウム・アブセッサス(Mycobacterium abscessus)群菌(亜種であるマイコバクテリウム・アブセッサス亜種アブセッサス(Mycobacterium abscessus subsp. abscessus)(M.a.abscessus(M・a・アブセッサス))、マイコバクテリウム・アブセッサス・ボレチ(Mycobacterium abcessus bolletii.)、及びマイコバクテリウム・アブセッサス・マシリエンセ(Mycobacterium abscessus massiliense)を含むマイコバクテリウム・アブセッサス・コンプレックス(Mycobacterium abscessus complex、MABSC))のヒト病原体としての重要性が明らかになってきており、他のどのRGMよりも非常に高い致死率が伴う。
【0022】
CF患者がマイコバクテリウム・アブセッサス(Mycobacterium abscessus)に感染すると、肺破壊が拡大し、多くの場合は治療不能であり、治療不成功率が60~66%と高いことから、特に問題である。(例えば、Obregon-Henao A et al,Antimicrobial Agents and Chemotherapy, November 2015,Vol 59,No 11,p.6904-6912;Qvist,T.,Pressler,T.,Hoiby,N.and Katzenstein,TL.,“Shifting paradigms of nontuberculous mycobacteria in cystic fibrosis”,Respiratory Research(2014),15(1):pp.41-47参照)。
【0023】
NTMのヒト感染と、ヒト後天性免役不全症候群の大流行との関連性が一層高まっている。マイコバクテリウム・アビウム・コンプレックス(Mycobacterium avium complex)(MAC)に属するマイコバクテリアが、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染した患者の日和見感染症の主要な起因菌であると同定されている。
【0024】
NTMの幾つかの菌種はバイオフィルムを形成することが知られている。バイオフィルムは細胞外基質に内包された細菌の小集落(microcolony)であり、ヒトの免疫機構に対し安定性及び抵抗性を付与する。近年、NTMの幾つかの菌種が消毒剤及び抗菌剤に対する抵抗性を高めるバイオフィルムを形成することが示された。バイオフィルムの集合は、可逆的付着、不可逆的付着、細菌凝集によるバイオフィルム形成、組織化、及びシグナル伝達、及び最終的な分散を含む、幾つかの段階を経て進展する。この過程が進行する間、細菌は、多糖、脂質、及び核酸等の細胞外高分子物質(EPS)を含むマトリックスを構築し、複雑な3次元構造を形成する(例えば、Sousa S.et al.,International Journal of Mycobacteriology 4(2015),36-43参照)。具体的には、マイコバクテリアは菌体外多糖を産生しないので、マイコバクテリアのEPSは他のバイオフィルムとは性質が異なる(例えば、Zambrano MM,Kolter R.Mycobacterial biofilms:a greasy way to hold it together.Cell.200参照)。マイコバクテリアのバイオフィルムは菌種間で異なるが、ミコール酸、糖ペプチド脂質、ミコリル-ジアシルグリセロール、リポオリゴ糖、リポペプチド、及び細胞外DNAを含み得る(Rose SJ,Babrak LM,Bermudez LE(2015)Mycobacterium avium Possesses Extracellular DNA that Contributes to Biofilm Formation,Structural Integrity,and Tolerance to Antibiotics.PLoS ONEからの概説及び独創研究)。バイオフィルム内の集合体は抗菌剤に対する抵抗性を高めることが知られている(例えば、Faria S.et al.,Journal of Pathogens,Vol 2015,Article ID 809014参照)。
【0025】
NTM肺感染治療の新たなアプローチとして、エアロゾル化されたリポソームアミカシンの送達/ジェット式ネブライザーにより噴霧されるアミカシン溶液の吸入(Rose S.et al,2014,PLoS ONE,Volume 9,Issue 9,e108703及びOlivier K.et al,Ann Am Thorac Soc Vol 11,No 1,pp.30-35)に加えて、抗TB薬の経肺送達用乾燥粉末微粒子の吸入(Cholo M et al.,J Antimicrob Chemother.2012 Feb;67(2):290-8 and Fourie B. and Nettey O.,2015 Inhalation Magazine, Verma 2013 Antimicrob Agents Chemother)が提案されている。
【0026】
NTM肺疾患の治療において、非経口アミノグリコシド、チゲサイクリン、並びにリネゾリド、デラマニド、及びベダキリン等の他の有望な経口用抗菌薬、並びに選択された症例においては外科的介入による初期治療に続いて、アミカシンを吸入することによる多剤併用療法レジメンにより、成果が期待されることが示されている(Lu Ryu et al.,Tuberc Respir Dis 2016;79:74-84)。しかしながら、NTM感染症、特にNTM肺疾患の発生率及び有病率が増加していることと、治療の選択肢が限られていることとから、クロファジミン等の現在使用されている抗菌薬のバイオアベイラビリティを向上させる新規な剤形/医薬製剤を発展させることが必要とされている。吸入は、経口及び非経口治療と比較して、有効性を高めると共に副作用を低減する可能性がある。
【0027】
クロファジミン及びアミカシンを併用すると、マイコバクテリウム・アブセッサス(Mycobacterium abscessus)及びマイコバクテリウム・アビウム(Mycobacterium avium)の両方に対し相乗的に作用することがin vitroで示されている(例えば、van Ingen,J.,et al.,“In Vitro Synergy between Clofazimine and Amikacin in Treatment of Nontuberculous Mycobacterial Disease”,Antimicrobial Agents and Chemotherapy 56(12),6324-6327(2012)参照)。更に、結核菌(マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis))に対しクロファジミン及びベダキリンを併用することによる相乗作用も示されている(例えば、Cokol,M.et al.,“Efficient Measurement and factorization of high-order drug interactions in Mycobacterium tuberculosis”,Sciences Advances 2017:3:e170881,11 October 2017参照)。また、非結核性抗酸菌であるマイコバクテリウム・アブセッサスに対しても、クロファジミン/ベダキリンの併用による相乗作用が示されている(Ruth,M.M.et al.,“A Bedaquiline/Clofazimine Combination Regimen Might Add Activity to the Treatment of Clinically Relevant Non-Tuberculous Mycobacteria”,Journal of Antimicrobial Chemotherapy(2019),doi.org/10.1093/jac/dky526)。
【0028】
ヒトの死亡率の主要原因として病原性真菌が目立つようになってきている。現在の推定では、深在性真菌症に起因する死亡が、それよりもよく知られている結核等の感染症に匹敵することが示唆されている。カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococus neoformans)、及びアスペルギルス・フミガツス(Aspergillis fumigatus)は、ヒトの病原性真菌で最も感染頻度が高いものである。これらの菌種は、それぞれが毎年何十万人もの感染に関与しているが、診断法が充分でなく、治療の選択肢が限られていることから、死亡率は受け容れられないほど高い。クロファジミンは配合剤として複数種の真菌に有効であることが示されている(例えば、Robbins,N.,et al., “An Antifungal Combination Matrix Identifies a Rich Pool of Adjuvant Molecules that Enhance Drug Activity against Diverse Fungal Pathogens”,Cell Reports 13,1481-1492,November 17,2015参照)。真菌は、嚢胞性線維症においては、片利共生菌、生着菌、及び/又は病原菌としても作用する(例えば、Chotirmall,S.H.and McElvaney,N.G.,“Fungi in the cystic fibrosis lung:Bystanders or pathogens?”,The International Journal of Biochemistry & Cell Biology 52(2014),161-173参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
クロファジミンは、水溶性が低いため、経口バイオアベイラビリティが低く、薬剤耐性(microbial resistance)が高い。下部呼吸器系(lower lung)にエアロゾル粒子を沈着させることを目的として噴霧器(nebulizer)によるエアロゾル化等が行えるよう液体水性担体中で製剤化するために、薬物を可溶化及び安定化させる特殊な技法も必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明の一実施形態によれば:
(a)治療有効用量のクロファジミン又はその医薬的に許容される誘導体若しくは塩と;
(b)親水性-親油性バランス値が10を超える非イオン性界面活性剤と;
(c)水、等張生理食塩水、緩衝生理食塩水、及び電解質水溶液から選択される水性液体担体と;
を含む医薬組成物であって、
クロファジミン又はその医薬的に許容される誘導体若しくは塩は、懸濁物中の粒子の形態で提供され、
且つ
クロファジミン又はその医薬的に許容される誘導体若しくは塩の粒子の中央径は5μm未満であり、且つD90は6μm未満である、医薬組成物が提供される。
【0031】
本発明の他の実施形態によれば、クロファジミン又はその医薬的に許容される誘導体若しくは塩の粒子は、平均径が2μm未満であり、且つD90が3μm未満である。
【0032】
本発明の他の実施形態において:
(a)治療有効用量のクロファジミンと;
(b)親水性-親油性バランス値が10を超える非イオン性界面活性剤と;
(c)水、等張生理食塩水、緩衝生理食塩水、及び電解質水溶液から選択される水性液体担体と;
を含む医薬組成物であって、
クロファジミンは、懸濁物中の粒子の形態で提供され、
且つ
クロファジミンの粒子は、中央径が5μm未満であり、且つD90が6μm未満である、医薬組成物が提供される。
【0033】
本発明の他の実施形態において、クロファジミンの粒子の中央径は2μm未満であり、且つD90は3μm未満である。
【0034】
本発明の組成物を適切な噴霧器でエアロゾル化することにより、エアロゾル化されたクロファジミンの下部呼吸器系(即ち、気管支、細気管支、並びに中及び末梢肺(central and lower peripheral lung)の肺胞へ)への送達が大幅に向上し、それにより治療効果が実質的に向上する。
【0035】
更に好ましくは、吸入器具を、下部呼吸器系に均一に沈着させることを目的として、最適な粒径分布を有するエアロゾルを肺に局所的に送達させるように更に適合させるべきである。
【0036】
したがって本発明は、肺胞及び細気管支への送達を促進する粒径を有するエアロゾルを提供する。肺胞及び細気管支を標的とする好適な空気動力学的粒子径は1~5μmの間にある。それよりも大きな粒子は、上部呼吸器系(upper lung)、即ち、気管支及び気管並びに口及び咽頭、即ち、口腔咽頭領域に選択的に沈着する。したがって、吸入器具は、空気動力学的質量中央径(MMAD)が約1~約5μmの範囲にあり、好ましくは約1~約3μmの範囲にあるエアロゾルを生成するように適合される。更なる実施形態においては、粒径分布は狭く、幾何標準偏差(GSD)は約2.5未満である。
【0037】
本発明は、クロファジミンを懸濁物の形態で肺にエアロゾル投与することにより、下部(即ち、深部)呼吸器系に活性作用物質を沈着させることができ、それにより、非常に疎水性の高いBCSクラスIIの作用物質のバイオアベイラビリティが向上し、その結果として、治療効果が大幅に向上すると共に全身性副作用が低減されるという予期せぬ発見に基づいている。
【0038】
他の態様において、この発見により、マイコバクテリア及びグラム陽性細菌により引き起こされる感染症、特に、NTMによる肺感染症、例えば、CF、COPD、及び免疫機能が低下した患者(HIV患者等)の日和見感染等の抗菌薬治療が改善される。
【0039】
更に本発明は、グラム陽性細菌による肺感染、特に肺のTB及びNTM感染に関し確立された経口治療レジメンの全身性副作用を解消するのみならず、クロファジミンの用量及び治療期間を低減することを目的とする。
【0040】
本出願は、本明細書に開示する個々の特徴のあらゆる組合せも開示することが当業者により理解される。
【発明を実施するための形態】
【0041】
定義
「医薬的に許容される塩」という語は、本発明化合物の生物学的な有効性及び性質を保持し、生物学的に又はそれ以外の形で望ましくないものではない塩を指す。多くの場合、本発明化合物は、アミノ基及び/若しくはカルボキシル基又はそれらに類する基が存在することによって、酸及び/又は塩基の塩を形成することができる。医薬的に許容される酸付加塩は無機酸及び有機酸を用いて形成することができる。塩を誘導することができる無機酸としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等が挙げられる。塩を誘導することができる有機酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、ナフトエ酸、オレイン酸、パルミチン酸、パモ(エンボン)酸、ステアリン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、グルコヘプトン酸、グルクロン酸、乳酸、ラクトビオン酸、酒石酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸等が挙げられる。
【0042】
医薬的に許容される塩基付加塩は、無機及び有機塩基を用いて形成することができる。塩を誘導することができる無機塩基としては、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウム等が挙げられ;アンモニウム、カリウム、ナトリウム、カルシウム、及びマグネシウムの各塩が特に好ましい。塩を誘導することができる有機塩基としては、例えば、1級、2級、及び3級アミン、天然置換アミン等の置換アミン、環状アミン、塩基性イオン交換樹脂等が挙げられ、具体的には、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、ヒスチジン、アルギニン、リジン、ベネタミン、N-メチル-グルカミン、及びエタノールアミン等である。他の酸としては、ドデシル硫酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、及びサッカリンが挙げられる。
【0043】
本発明によれば、この遊離塩基以外に、メタンスルホン酸、マレイン酸、イソニコチン酸、ニコチン酸、マロン酸、及びサリチレート、特にクロファジミンメタンスルホン酸塩を使用することが好ましい。
【0044】
本明細書において使用される「医薬的に許容される誘導体」という語は、例えば、米国特許第9,540,336号明細書に開示されている化合物を意味し、米国特許第9,540,336号明細書の開示全体を本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する。これに加えて、誘導体の意味は、Lu,Y.,Zhen,M.,Wang,B.,Fu,L.,Zhao,W.,Li,P.,Xu,J.,Zhu,H.,Jin,H.,Yin,D.,Huang,H.,Upton,AM.and Ma,Z.,“Clofazimine Analogs with Efficacy against experimental Tuberculosis and reduced Potential for Accumulation”Antimicrobial Agents and Chemotherapy(2011),55(11):pp.5185-5193に記載されている通りである。更に、化合物の「医薬的に許容される誘導体」とは、例えば、上記化合物のプロドラッグである。一般に、プロドラッグは、投与後に化合物の活性形態を提供することが可能な、該化合物の誘導体である。この種の誘導体は、例えば、カルボキシル基のエステル若しくはアミド、ヒドロキシル基のカルボキシルエステル、又はヒドロキシル基のリン酸エステルとすることができる。
【0045】
「治療有効量(therapeutically effective amount)」、「治療有効用量(therapeutically effective dose)」、又は「医薬有効量(pharmaceutically effective amount)」は、本発明に関し開示したクロファジミン又はその医薬的に許容される塩若しくは誘導体が治療効果を示す量を意味する。治療に有効なクロファジミンの用量は、治療有効量である。したがって、本明細書において使用する治療有効量は、臨床試験結果及び/又は動物モデルを用いた感染実験(infection study)から判定される、所望の治療効果をもたらすクロファジミンの量を意味する。
【0046】
クロファジミンの量及び1日用量は当業者が機械的に決定することができ、幾つかの因子、例えば、関与する具体的な微生物菌株に応じて変化するであろう。更にこの量は、患者の身長、体重、性別、年齢、及び病歴にも依存し得る。予防的治療の場合の治療有効量は、微生物感染を防ぐのに有効となる量である。
【0047】
「治療効果」は、感染の1又は複数の症状をある程度まで軽減(relieve)することであり、感染の治癒(curing)も含む。「治癒」とは、活動性感染の症状が消失(eliminated)することを意味し、感染に関与している生菌の過剰な分が完全に又は実質的に消失して、従来の測定による検出閾値以下になることを含む。但し、感染症の特定の長期的又は永続的な影響は、治癒が達成された後でさえも存在する可能性がある(広範囲な組織損傷等)。本明細書において使用する「治療効果」は、宿主の細菌量の統計学的に有意な低下、抵抗性の発現、又はヒトの臨床成績若しくは動物実験により判定される感染症状の改善として定義される。
【0048】
本明細書において使用する「治療する(treat)」、「治療(treatment)」、又は「治療する(こと)(treating)」は、医薬組成物/組合せを予防及び/又は治療目的で投与することを指す。
【0049】
「予防的治療(prophylactic treatment)」という語は、未だ感染していないが、特定の感染症に罹りやすい、又はそれ以外の形でリスクがある患者を治療することを指す。「治療目的の治療(therapeutic treatment)」という語は、既に感染症に罹患している患者に治療を施すことを指す。したがって、好ましい実施形態において、治療は、哺乳動物に(治療又は予防目的のいずれかで)治療有効量のクロファジミンを投与することである。
【0050】
本明細書において特に明記しない限り、「吸入(inhalation)」という語は経肺吸入を意味する。
【0051】
本明細書において特に明記しない限り、本明細書において使用する「感染(症)」という語は、肺感染(症)を指すことを意味する。
【0052】
特に明記しない限り、化合物の純度を指すために使用される「実質的に」という語は、化合物の純度が純度95%を超えることを表す。
【0053】
特に明記しない限り、「適切な(appropriate)粒径」という語は、患者に投与した場合に、所望の治療効果を提供する組成物中のクロファジミン又は組成物の粒径を指す。
【0054】
特に明記しない限り、「適切な濃度」という語は、医薬的に許容される組成物又は組合せを提供する組成物又は組合せ中の成分の濃度を指す。
【0055】
医薬組成物及び組合せ医薬
次に示す水の品質等級(grade)が特に本発明に適切である:滅菌精製水、滅菌注射用水、滅菌洗浄用水(sterile water for irrigation)、滅菌吸入用水(sterile water for inhalation)(USP)及び、例えば、欧州薬局方(European Pharmacopoeia)又は国民医薬品集(National Formulary)に準拠する水の品質等級に相当するもの。
【0056】
本発明に従い水性液体担体として使用される電解質水溶液は、更に、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、又はこれらの混合物を含むことができる。
【0057】
水性液体担体は、好ましくは、等張生理食塩水(約150mM NaCl、好ましくは154mM NaClに相当する0.9%NaCl)である。
【0058】
クロファジミンには少なくとも4種の多形が存在することが示されている(例えば、Bannigan,et al.,“Investigation into the Solid and Solution Properties of Known and Novel Polymorphs of the Antimicrobial Molecule Clofazimine”,Cryst.Growth Des.2016,16(12),pp.7240-7250参照)。クロファジミンは、三斜晶系FI型、単斜晶系FII型、及び斜方晶系FIII型で存在することができる。他の型であるFIVも高温においてのみ認められている。
【0059】
したがって、本発明の更なる実施形態においては:
(a)治療有効用量のクロファジミンと;
(b)親水性-親油性バランス値が10を超える非イオン性界面活性剤と;
(c)水、等張生理食塩水、緩衝生理食塩水、及び電解質水溶液から選択される水性液体担体と;
を含む医薬組成物であって、
クロファジミンは、懸濁物中の粒子の形態で提供され、
且つ
クロファジミンの粒子の中央径は5μm未満であり、且つD90は6μm未満であり、好ましくは、中央径は2μm未満であり、且つD90は3μm未満であり、クロファジミンは、三斜晶系FI型、単斜晶系FII型、及び斜方晶系FIII型、並びにこの種の型の混合物から選択される1又は複数種の多形で提供される、医薬組成物が提供される。他の実施形態において、クロファジミンは、実質的に斜方晶系FIII型で提供される。
【0060】
本発明の更なる実施形態においては、本明細書に記載する組成物実施形態のいずれかによる医薬組成物が提供され、非イオン性界面活性剤は、ポリソルベート20(例えば、Tween(登録商標)20、ポリソルベート60(例えば、Tween(登録商標)60)、ポリソルベート80(例えば、Tween(登録商標)80)、ステアリルアルコール、親水性-親油性バランス値が14~16である水添ヒマシ油のポリエチレングリコール誘導体(例えば、Cremophor(登録商標)RH40)、親水性-親油性バランス値が15~17である水添ヒマシ油のポリエチレングリコール誘導体(例えば、Cremophor(登録商標)RH60)、ソルビタンモノラウレート(例えば、Span(登録商標)20)、ソルビタンモノパルミテート(例えば、Span(登録商標)40)、ソルビタンモノステアレート(例えば、Span(登録商標)60)、ポリオキシエチレン(20)オレイルエーテル(例えば、Brij(登録商標)020)、ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル(例えば、Brij(登録商標)58)、ポリオキシエチレン(10)セチルエーテル(例えば、Brij(登録商標)C10)、ポリオキシエチレン(10)オレイルエーテル(例えば、Brij(登録商標)O10)、ポリオキシエチレン(100)ステアリルエーテル(例えば、Brij(登録商標)S100)、ポリオキシエチレン(10)ステアリルエーテル(例えば、Brij(登録商標)S10)、ポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル(例えば、Brij(登録商標)S20)、ポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテル(例えば、Brij(登録商標)L4)、ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル(例えば、Brij(登録商標)93)、ポリオキシエチレン(2)セチルエーテル(例えば、Brij(登録商標)S2)、カプリロカプロイルポリオキシル-8グリセリド(例えば、Labrasol(登録商標))、ポリエチレングリコール(20)ステアレート(例えば、Myrj(商標)49)、ポリエチレングリコール(40)ステアレート(例えば、Myrj(商標)S40)、ポリエチレングリコール(100)ステアレート(例えば、Myrj(商標)S100)、ポリエチレングリコール(8)ステアレート(例えば、Myrj(商標)S8)、及びポリオキシル40ステアレート(例えば、Myrj(商標)52)、並びにこれらの混合物から選択される。
【0061】
本発明の他の実施形態において、本明細書に記載する組成物実施形態のいずれかによる医薬組成物が提供され、非イオン性界面活性剤はポリソルベート80であり、水性液体担体は、蒸留水、高張生理食塩水、又は等張生理食塩水である。本発明の他の実施形態においては、医薬組成物が提供され、高張生理食塩水は、1%~7%(w/v)塩化ナトリウムである。本発明の更なる実施形態において、医薬組成物が提供され、非イオン性界面活性剤は、超高純度ポリソルベート80(例えば、NOF Corporation Polysorbate80(Hx2))であり、水性液体担体は、等張生理食塩水である。
【0062】
本発明の他の実施形態において、本明細書に記載する組成物実施形態のいずれか1つによる医薬組成物が提供され、組成物の重量オスモル濃度は200~700mOsm/kgの範囲にある。更なる実施形態において、組成物の重量オスモル濃度は300~400mOsm/kgの範囲にある。
【0063】
本発明の更なる実施形態において、本明細書に記載する組成物実施形態のいずれか1つによる医薬組成物が提供され、非イオン性界面活性剤は、組成物全体の0.001%~5%(v/v)の範囲にあり、クロファジミンの量は、組成物全体の0.1%~20%(w/v)の範囲にある。
【0064】
本発明の他の実施形態においては、本明細書に記載する組成物実施形態のいずれか1つによる医薬組成物が提供され、医薬組成物は、次に示すステップ:
(1)クロファジミン、非イオン性界面活性剤、及び水の懸濁物を、適切な粒径のクロファジミンを含む懸濁物を得るために均質化するステップと、
(2)(1)から得られた懸濁物のpHを、pH5.5~pH7.5の間のpHに調整するステップと、
(3)塩化ナトリウム濃度を適切な濃度に調整するステップと、
(4)重量オスモル濃度を適切な水準に調整するステップと、
を含むプロセスにより調製される。
【0065】
更なる実施形態において、pHは7.4に調整され、塩化ナトリウム濃度は154mM塩化ナトリウムに調整される。他の実施形態において、ステップ(1)の均質化は、高圧均質化、高剪断均質化、湿式粉砕、超音波均質化、又はこの種の処理の組合せにより実施される。他の態様において、クロファジミンの均質化は、多段階の均質化により実施される。他の実施形態において、適切な粒径のクロファジミンは、平均径が5μm未満であり、且つD90が6μm未満の粒子である。更なる実施形態において、適切な粒径のクロファジミンは、平均径が2μm未満であり、且つD90が3μm未満の粒子である。
【0066】
本発明の更なる実施形態において、本明細書に記載する組成物実施形態のいずれか1つによる医薬組成物が提供され、医薬組成物は、次に示すステップ:
(1)クロファジミン及び非水性液体の懸濁物を、適切な粒径のクロファジミンを含む懸濁物を得るために均質化するステップと、
(2)クロファジミンを単離するステップと、
(3)クロファジミンを非イオン性界面活性剤及び水に添加するステップと、
(4)(3)から得られた懸濁物のpHをpH5.5~pH7.5の間のpHに調整するステップと、
(5)塩化ナトリウム濃度を適切な濃度に調整するステップと、
を含むプロセスにより調製される。
【0067】
更なる実施形態において、pHは、7.4に調整され、塩化ナトリウム濃度は、塩化ナトリウム154mMに調整される。更なる実施形態において、ステップ(1)における均質化は、高圧均質化、高剪断均質化、湿式粉砕、超音波均質化、又はこの種の処理の組合せにより実施される。他の実施形態において、クロファジミンの均質化は、多段階の均質化により実施される。他の実施形態において、適切な粒径を有するクロファジミンは、平均径が5μm未満であり、且つD90が6μm未満の粒子である。更なる実施形態において、適切な粒径を有するクロファジミンは、平均径が2μm未満であり、且つD90が3μm未満の粒子である。
【0068】
更なる実施形態においては、本明細書に記載する組成物実施形態のいずれか1つによる医薬組成物が提供され、この組成物は、次に示すステップ:
(1)クロファジミンを、適切な粒径のクロファジミンを得るために微粉化するステップと、
(2)クロファジミンを、非イオン性界面活性剤及び水に添加するステップと、
(3)(2)から得られた懸濁物のpHを、pH5.5~pH7.5の間のpHに調整するステップと、
(4)塩化ナトリウム濃度を適切な濃度に調整するステップと、
を含むプロセスにより調製される。
【0069】
更なる実施形態において、pHは7.4に調整され、塩化ナトリウム濃度は154mM塩化ナトリウムに調整される。
【0070】
他の実施形態において、クロファジミンの微粉化は、ジェットミル粉砕、噴霧乾燥、ボールミル粉砕、又は超臨界流体処理により実施される。他の実施形態において、クロファジミンの微粉化は、多段階の微粉化により実施される。他の実施形態において、適切な粒径のクロファジミンは、平均径が5μm未満であり、且つD90が6μm未満の粒子である。更なる実施形態において、適切な粒径のクロファジミンは、平均径が2μm未満であり、且つD90が3μm未満の粒子である。
【0071】
更なる実施形態においては、本明細書に記載する組成物実施形態のいずれか1つによる医薬組成物が提供され、この組成物は、クロファジミンを、非イオン性界面活性剤、適切な濃度の塩化ナトリウムを含み、pHがpH5.5~pH7.5の間に調整された水中に懸濁させた懸濁物を、適切な粒径のクロファジミンを得るために均質化することを含むプロセスにより調製される。更なる実施形態において、pHは7.4に調整され、塩化ナトリウム濃度は154mM塩化ナトリウムに調整される。更なる実施形態において、均質化は、高圧均質化、高剪断均質化、湿式粉砕、超音波均質化、又はこの種の処理の組合せにより実施される。他の実施形態において、クロファジミンの均質化は、多段階の均質化により実施される。他の実施形態において、適切な粒径のクロファジミンは、粒子の平均径が5μm未満であり、且つD90が6μm未満である。更なる実施形態において、適切な粒径のクロファジミンは、平均径が2μm未満であり、且つD90が3μm未満の粒子である。
【0072】
他の実施形態においては、本明細書に記載する組成物実施形態のいずれかによる医薬組成物を調製するためのプロセスであって、次に示すステップ:
(1)クロファジミン、非イオン性界面活性剤、及び水の懸濁物を、適切な粒径のクロファジミンを含む懸濁物を得るために均質化するステップと、
(2)(1)から得られた懸濁物のpHを、pH5.5~dpH7.5の間のpHに調整するステップと、
(3)塩化ナトリウム濃度を適切な濃度に調整するステップと、
(4)重量オスモル濃度を適切な水準に調整するステップと、
を含むプロセスが提供される。
【0073】
他の実施形態において、pHは7.4に調整され、塩化ナトリウム濃度は154mM塩化ナトリウムに調整される。更なる実施形態において、均質化は、高圧均質化、湿式粉砕、超音波均質化、又はこの種の処理の組合せにより実施される。更なる実施形態において、クロファジミンの均質化は、多段階の均質化により実施される。更なる実施形態において、適切な粒径のクロファジミンは、平均径が5μm未満であり、且つD90が6μm未満の粒子である。他の実施形態において、適切な粒径のクロファジミンは、平均径が2μmであり、且つD90は3μm未満の粒子である。
【0074】
他の実施形態においては、本明細書に記載する医薬組成物の実施形態を調製するためのプロセスであって、
(1)クロファジミン及び非水性液体の懸濁物を、適切な粒径のクロファジミンを含む懸濁物を得るために均質化するステップと、
(2)クロファジミンを単離するステップと、
(3)クロファジミンを非イオン性界面活性剤及び水に添加するステップと、
(4)(3)から得られた懸濁物のpHを、pH5.5~pH7.5の間のpHになるように調整するステップと、
(5)塩化ナトリウム濃度を適切な濃度に調整するステップと、
を含むプロセスが提供される。
【0075】
他の実施形態において、pHは7.4に調整され、塩化ナトリウム濃度は154mM塩化ナトリウムに調整される。更なる実施形態において、均質化は、高圧均質化、湿式粉砕、超音波均質化、又はこの種の処理の組合せにより実施される。更なる実施形態において、クロファジミンの均質化は、多段階の均質化により実施される。更なる実施形態において、適切な粒径のクロファジミンは、平均径が5μm未満であり、且つD90が6μm未満の粒子である。他の実施形態において、適切な粒径のクロファジミンは、平均径が2μmであり、且つD90が3μm未満の粒子である。
【0076】
更なる実施形態においては、本明細書に記載する医薬組成物実施形態のいずれか1つによる医薬組成物を調製するためのプロセスであって、次に示すステップ:
(1)クロファジミンを、適切な粒径のクロファジミンを得るために微粉化するステップと、
(2)クロファジミンを、非イオン性界面活性剤及び水に添加するステップと、
(3)(2)から得られた懸濁物のpHを、pH5.5~pH7.5の間のpHに調整するステップと、
(4)塩化ナトリウム濃度を適切な濃度に調整するステップと、
を含むプロセスが提供される。
【0077】
他の実施形態においては、pHは7.4に調整され、塩化ナトリウム濃度は154mM塩化ナトリウムに調整される。更なる実施形態において、クロファジミンの微粉化は、ジェットミル粉砕、噴霧乾燥、ボールミル粉砕、又は超臨界流体処理により実施される。更なる実施形態において、クロファジミンの微粉化は、多段階の微粉化により実施される。更なる実施形態において、適切な粒径のクロファジミンは、平均径が5μm未満であり、且つD90が6μm未満の粒子である。他の実施形態において、適切な粒径のクロファジミンは、平均径が2μmであり、且つD90が3μm未満の粒子である。
【0078】
他の実施形態においては、本明細書に記載する医薬組成物実施形態のいずれか1つによる医薬組成物を調製するためのプロセスであって、クロファジミンを、非イオン性界面活性剤、適切な濃度の塩化ナトリウムを含み、pHがpH5.5~pH7.5の間に調整された水中に懸濁させた懸濁物を、適切な粒径のクロファジミンを得るために均質化することを含むプロセスが提供される。他の実施形態において、pHは7.4であり、塩化ナトリウムの適切な濃度は154mM塩化ナトリウムである。更なる実施形態において、均質化は、高圧均質化、湿式粉砕、超音波均質化、又はこの種の処理の組合せにより実施される。更なる実施形態において、クロファジミンの均質化は、多段階の均質化により実施される。更なる実施形態において、適切な粒径のクロファジミンは、平均径が5μm未満であり、且つD90が6μm未満の粒子である。他の実施形態において、適切な粒径のクロファジミンは、平均径が2μmであり、且つD90が3μm未満の粒子である。
【0079】
更なる実施形態において、本明細書に記載する組成物実施形態のいずれか1つによる医薬組成物を調製するためのプロセスであって、次に示すステップ:(a)クロファジミン、非イオン性界面活性剤、及び水の懸濁物を、適切な粒径のクロファジミンを含む懸濁物を得るために均質化するステップと;(b)得られた懸濁物のpHを、pH5.5~pH7.5の間のpHに調整するステップと;(c)塩化ナトリウム濃度を適切な濃度に調整するステップと、(d)重量オスモル濃度を適切な水準に調整するステップと、を含み;ステップ(b)、(c)及び(d)は、(b)、(c)、(d);(b)、(d)、(c);(c)、(b)、(d);(c)、(d)、(b);(d)、(b)、(c);又は(d)、(c)、(b)の順序で行うことができる、プロセスが提供される。
【0080】
他の実施形態において、本明細書に記載する組成物実施形態のいずれか1つによる医薬組成物を調製するためのプロセスであって、次に示すステップ:(a)クロファジミン及び非水性液体の懸濁物を、適切な粒径のクロファジミンを含む懸濁物を得るために均質化するステップと;(b)クロファジミンを単離するステップと;(c)クロファジミンを非イオン性界面活性剤及び水に添加するステップと;(d)得られた懸濁物のpHを、pH5.5~pH7.5の間のpHになるように調整するステップと;(e)塩化ナトリウム濃度を適切な濃度に調整するステップと;を含み、ステップ(d)及び(e)は、(d)、(e);又は(e)、(d)の順序で行うことができる、プロセスが提供される。
【0081】
他の実施形態においては、本明細書に記載する組成物実施形態のいずれか1つによる医薬組成物を調製するためのプロセスであって、次に示すステップ:(a)クロファジミンを、適切な粒径のクロファジミンを得るために微粉化するステップと、(b)クロファジミンを、非イオン性界面活性剤、適切な濃度の塩化ナトリウムを含み、pHがpH5.5~7.5の間に調整された水に添加するステップと、を含むプロセスが提供される。
【0082】
本発明の他の実施形態においては、吸入用エアロゾルの形態にある組合せ医薬であって、本明細書に記載する組成物実施形態のいずれか1つによる組成物を、超音波ネブライザー、帯電噴霧式(electron spray)ネブライザー、振動膜ネブライザー、ジェット式ネブライザー、及び機械式ソフトミスト定量吸入器から選択される噴霧器具(nebulizing device)によってエアロゾル化することにより調製される組合せ医薬が提供され、噴霧器具により生成するエアロゾル粒子は、空気動力学的質量中央径が1~5μmである。更なる実施形態において、吸入用エアロゾルは、下部呼吸器系に沈着させるためのものである。他の実施形態において、噴霧器具の噴出速度は0.1~1.0ml/minである。他の実施形態において、総吸入量は1ml~5mlの間にある。
【0083】
他の実施形態においては、本明細書に記載する組成物実施形態のいずれか1つによる医薬組成物であって、噴霧化された4~7%高張生理食塩水、メタ過ヨウ素酸塩、ドデシル硫酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、トロメタミン、銀ナノ粒子、ビスマス-チオール、エチレンジアミン四酢酸、ゲンタマイシン担持ホスファチジルコリン修飾金ナノ粒子(gentamicin loaded phosphatidylcholine-decorated gold nanoparticles)、キレート剤、シス-2-デセン酸、D-アミノ酸、D-アミノ酸残基を含むペプチド(D-enantiomeric peptide)、ガリウムメソポルフィリンIX、ガリウムプロトポルフィリンIX、クルクミン、パツリン、ペニシリン酸、バイカレイン、ナリンゲニン、ウルソール酸、アシアチン酸、コロソリン酸、脂肪酸、宿主防御ペプチド、及び抗微生物ペプチドから選択される、バイオフィルムを分散及び/若しくは破壊するための剤、粘液溶解剤及び/若しくは粘液活性剤、並びに/又はバイオフィルムの形成を低減する剤と組み合わせて使用するための、医薬組成物が提供される。他の実施形態において、この使用のための組成物は、ベダキリン又はその医薬的に許容される塩若しくは誘導体、セフォキシチン(cefoxitine)、アミカシン、クラリスロマイシン、ピラジンアミド、リファムピン、モキシフロキサシン、レボフロキサシン、及びパラ-アミノサリチレート、並びにこれらの混合物から選択される剤を投与する前、同時、又は後に投与される。
【0084】
他の実施形態において、本明細書に記載する組合せ実施形態のいずれかによる組合せ医薬であって、噴霧化された4~7%高張生理食塩水、メタ過ヨウ素酸塩、ドデシル硫酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、トロメタミン、銀ナノ粒子、ビスマス-チオール、エチレンジアミン四酢酸、ゲンタマイシン担持ホスファチジルコリン修飾金ナノ粒子、キレート剤、シス-2-デセン酸、D-アミノ酸、D-アミノ酸残基を含むペプチド、ガリウムメソポルフィリンIX、ガリウムプロトポルフィリンIX、クルクミン、パツリン、ペニシリン酸、バイカレイン、ナリンゲニン、ウルソール酸、アシアチン酸、コロソリン酸、脂肪酸、宿主防御ペプチド、及び抗微生物ペプチドから選択される、バイオフィルムを分散及び/若しくは破壊するための剤、粘液溶解剤及び/若しくは粘液活性剤、並びに/又はバイオフィルム形成を低減する剤と組み合わせて使用するための組合せ医薬が提供される。他の実施形態において、この使用のための組合せは、ベダキリン又はその医薬的に許容される塩若しくは誘導体、セフォキシチン(cefoxitine)、アミカシン、クラリスロマイシン、ピラジンアミド、リファムピン、モキシフロキサシン、レボフロキサシン、及びパラ-アミノサリチレート、及びこれらの混合物から選択される剤を投与する前、同時、又は後に、本発明の組成物を投与するために使用される。他の実施形態において、この組成物は、ベダキリン又はその医薬的に許容される塩若しくは誘導体、及びアミカシン、並びにこれらの混合物から選択される剤を投与する前、同時、又は後に投与される。更なる実施形態において、この組成物は、ベダキリン又はその医薬的に許容される塩若しくは誘導体を投与する前、同時、又は後に投与される。
【0085】
他の実施形態においては、本明細書に記載する組成物実施形態のいずれか1つによる医薬組成物が、マイコバクテリア又は他のグラム陽性細菌により引き起こされる肺感染症の治療及び/又は予防に使用するために提供される。更なる実施形態において、この感染症は、非結核性抗酸菌及び結核菌(マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis))群並びにこれらの組合せから選択されるマイコバクテリウム属(genus mycobacterium)に属する菌種によって引き起こされる。更なる実施形態において、この非結核性抗酸菌は、マイコバクテリウム・アビウム(Mycobacterium avium)、マイコバクテリウム・イントラセルラーレ(Mycobacterium intracellulare)、マイコバクテリウム・アブセッサス(Mycobacterium abscessus)、及びライ菌(マイコバクテリウム・レプラエ(Mycobacterium leprae))、並びにこれらの組合せから選択される。他の実施形態において、この感染症は、嚢胞性線維症、慢性閉塞性肺、又は後天性免疫不全症候群の患者の肺MAC症及び非結核性抗酸菌症(nontuberculous infection)から選択される日和見感染症である。他の実施形態において、この感染症は、嚢胞性線維症患者における非結核性抗酸菌による日和見感染症である。他の実施形態において、この使用のための組成物は、ベダキリン又はその医薬的に許容される塩若しくは誘導体、セフォキシチン(cefoxitine)、アミカシン、クラリスロマイシン、ピラジンアミド、リファムピン、モキシフロキサシン、レボフロキサシン、及びパラ-アミノサリチレート、並びにこれらの混合物から選択される剤を投与する前、同時、又は後に投与される。他の実施形態において、この組成物は、ベダキリン又はその医薬的に許容される塩若しくは誘導体、及びアミカシン、並びにこれらの混合物から選択される剤を投与する前、同時、又は後に投与される。更なる実施形態において、この組成物は、ベダキリン又はその医薬的に許容される塩若しくは誘導体を投与する前、同時、又は後に投与される。
【0086】
他の実施形態においては、本明細書に記載する組合せ実施形態のいずれかによる組合せ医薬が、マイコバクテリア又は他のグラム陽性細菌により引き起こされる肺感染症の治療及び/又は予防に使用するために提供される。更なる実施形態において、この感染症は、非結核性抗酸菌及び結核菌(マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis))並びにこれらの組合せから選択される、マイコバクテリウム属(genus mycobacterium)に属する菌種により引き起こされる。更なる実施形態において、非結核性抗酸菌は、マイコバクテリウム・アビウム(Mycobacterium avium)、マイコバクテリウム・イントラセルラーレ(Mycobacterium intracellulare)、マイコバクテリウム・アブセッサス(Mycobacterium abscessus)、及びライ菌(マイコバクテリウム・レプラエ(Mycobacterium leprae))、並びにこれらの組合せから選択される。他の実施形態において、この感染症は、嚢胞性線維症、慢性閉塞性肺、又は後天性免疫不全症候群の患者における肺MAC症及び非結核性抗酸菌症から選択される日和見感染症である。他の実施形態において、この感染症は、嚢胞性線維症患者における非結核性抗酸菌による日和見感染症である。他の実施形態において、この使用のための組合せは、ベダキリン又はその医薬的に許容される塩若しくは誘導体、セフォキシチン(cefoxitine)、アミカシン、クラリスロマイシン、ピラジンアミド、リファムピン、モキシフロキサシン、レボフロキサシン、及びパラ-アミノサリチレート、並びにこれらの混合物から選択される剤を投与する前、同時、又は後に本発明の組成物を投与するために使用される。他の実施形態において、この使用のための組合せは、ベダキリン又はその医薬的に許容される塩若しくは誘導体、及びアミカシン、並びにこれらの混合物から選択される剤を投与する前、同時、又は後に本発明の組成物を投与するために使用される。他の実施形態において、この使用のための組合せは、ベダキリン又はその医薬的に許容される塩若しくは誘導体を投与する前、同時、又は後に本発明の組成物を投与するために使用される。
【0087】
他の実施形態においては、マイコバクテリア又は他のグラム陽性細菌により引き起こされる肺感染症を治療又は予防する際の抗菌活性の付与に使用するための系が提供され、この系は:
1)
(a)治療有効用量のクロファジミンと;
(b)親水性-親油性バランス値が10を超える非イオン性界面活性剤と;
(c)水、等張生理食塩水、緩衝生理食塩水、及び電解質水溶液から選択される水性液体担体と;
を含む、噴霧化された組合せ医薬と、
2)噴霧器と、
を含み、
クロファジミンは懸濁物の形態で存在し、
この系により生成したエアロゾル粒子は空気動力学的質量中央径が1~5μmである。
【0088】
更なる実施形態においては、肺真菌感染症若しくはクロストリジウム・ディフィシル(clostridium difficile)又はこれらの組合せの治療及び/又は予防に使用するための、本明細書に記載する組成物実施形態のいずれか1つによる医薬組成物が提供される。他の実施形態においては、肺真菌感染症の治療及び/又は予防に使用するための、本明細書に記載する組成物実施形態のいずれか1つによる医薬組成物が提供される。更なる実施形態において、肺真菌感染症は、カンジダ・アルビカンス(candida albicans)若しくはアスペルギルス・フミガツス(aspergilus fumigatus)又はこれらの組合せである。
【0089】
更なる実施形態においては、肺真菌感染症若しくはクロストリジウム・ディフィシル又はこれらの組合せの治療及び/又は予防に使用するための、本明細書に記載する組合せ実施形態のいずれか1つによる組合せ医薬が提供される。肺真菌感染症の治療及び/又は予防に使用するための、本明細書に記載する組合せ実施形態のいずれか1つによる組合せ医薬が提供される。更なる実施形態において、肺真菌感染症は、カンジダ・アルビカンス(candida albicans)若しくはアスペルギルス・フミガツス(aspergilus fumigatus)、又はこれらの組合せである。
【0090】
他の実施形態において、それを必要とする患者における肺感染症を治療又は予防する方法であって、本明細書に記載する組成物実施形態のいずれか1つによる組成物を吸入することにより投与することを含む、方法が提供される。他の実施形態において、この感染症は、非結核性抗酸菌及び結核菌(マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis))群並びにこれらの組合せから選択される、マイコバクテリウム属(genus mycobacterium)に属する菌種により引き起こされる。更なる実施形態において、非結核性抗酸菌は、マイコバクテリウム・アビウム(Mycobacterium avium)、マイコバクテリウム・イントラセルラーレ(Mycobacterium intracellulare)、マイコバクテリウム・アブセッサス(Mycobacterium abscessus)、及びライ菌(マイコバクテリウム・レプラエ(Mycobacterium leprae))、並びにこれらの組合せから選択される。更なる実施形態において、この感染症は、嚢胞性線維症、慢性閉塞性肺疾患、又は後天性免疫不全症候群の患者における肺MAC症及び非結核性抗酸菌症から選択される日和見感染症である。他の実施形態において、この感染症は、嚢胞性線維症患者における非結核性抗酸菌による日和見感染症である。
【0091】
更なる実施形態においては、それを必要とする患者におけるマイコバクテリア又は他のグラム陽性細菌により引き起こされる肺感染症を治療又は予防する方法であって、ベダキリン又はその医薬的に許容される誘導体の塩、セフォキシチン(cefoxitine)、アミカシン、クラリスロマイシン、ピラジンアミド、リファムピン、モキシフロキサシン、レボフロキサシン、及びパラ-アミノサリチレート、並びにこれらの混合物から選択される剤を投与する前、同時、又は後に、本明細書に記載する組成物実施形態のいずれか1つによる組成物を吸入することにより投与することを含む、方法が提供される。他の実施形態において、この剤は、ベダキリン又はアミカシンである。更なる実施形態において、この剤はベダキリンである。
【0092】
粒径及び分布
エアロゾル療法の治療効果は沈着量(dose deposited)及びその分布に依存する。エアロゾルの粒径は、薬物のエアロゾルの肺内における沈着量及び分布を定める重要な変量の1つである。
【0093】
一般に、吸入されたエアロゾル粒子は2種類の機構:衝突(普通はより大きなエアロゾル粒子を支配する)及び沈降(より小さなエアロゾル粒子で優勢となる)のうちの1種により沈着する傾向がある。衝突は、吸入されたエアロゾル粒子の運動量が、粒子が気流に従わないほど十分に大きい場合に起こり、生理学的表面(physiological surface)に行き着く。それとは対照的に、沈降は、吸気の流れに乗って運ばれた非常に小さいエアロゾル粒子が、主として下部呼吸器系で重力の作用により沈降した結果として生理学的表面に行き着いた場合に起こる。
【0094】
肺への薬物送達は、口腔咽頭を介してエアロゾルを吸入することにより行うことができる。空気動力学的直径が約5μmを超えるエアロゾル粒子は一般に肺に到達しない。そうならずに、これらは喉の奥に衝突する傾向にあり、嚥下され、経口吸収される可能性もある。直径が約3~約5μmのエアロゾル粒子は、上~中部気道領域(upper-to mid-pulmonary region)(誘導気道)に到達するのに十分に小さいが、肺胞に到達するには大き過ぎる。それよりも小さい、即ち、約0.5~約3μmのエアロゾル粒子は肺胞領域に到達することができる。直径が約0.5μmよりも小さいエアロゾル粒子は、安静呼吸時に呼吸と共に排出される傾向にあるが、息止めにより肺胞領域に沈着させることも可能である。
【0095】
肺薬物送達に使用されるエアロゾルは、幅広い範囲のエアロゾル粒径から構成されているため、統計学的記述子が使用される。肺薬物送達に使用されるエアロゾルは、通常、その質量中央径(MMD)で表される。即ち、エアロゾル粒子に含まれる質量の半分がMMDよりも大きく、エアロゾル粒子に含まれる質量の半分がMMDよりも小さい。粒子の密度が均一である場合は、体積中央径(VMD)をMMDと交換可能に使用することができる。VMD及びMMDの決定はレーザー回折を用いて行われる。分布の幅は幾何標準偏差(GSD)で表される。一方、気道内のエアロゾル粒子の沈着は、粒子の空気動力学的直径を用いる方が正確に表せるので、通常は空気動力学的質量中央径が用いられる。MMAD測定は、慣性衝突又は飛行時間の測定により行われる。水粒子の場合、VMD、MMD、及びMMADは等しいはずである。しかし、エアロゾルがインパクターを通過する間の湿度が制御されていない場合は、脱水が起こるため、MMADの測定値はMMD及びVMDよりも小さくなるであろう。この記述法を用いるためには、VMD、MMD、及びMMADの測定は、VMD、MMD、及びMMADの記述が比較可能(comparable)となるように、管理された条件下で行われるものと見なされる。
【0096】
しかしながら、説明を目的とする場合、エアロゾル粒子のエアロゾル粒径は、米国薬局方協会(US Pharmacopeial Convention)に準拠し、次世代インパクター(Next Generation Impactor)(NGI)を用いて室温で測定することにより決定されるMMADとして与えられるであろう(In Process Revision <601> Aerosols,Nasal Sprays, Metered-Dose Inhalers,and Dry Powder Inhalers,Pharmacopeial Forum(2003),Volume Number 29,pages 1176-1210、Jolyon Mitchell, Mark Nagel“Particle Size Analysis of Aerosols from Medicinal Inhalers”,KONA Powder and Particle Journal(2004),Volume 22,pages32-65にも開示)。
【0097】
本発明によれば、エアロゾルの粒径は、クロファジミンを感染部位に最大限に沈着させると共に忍容性が最大になるように最適化される。エアロゾル粒径は、空気動力学的質量中央径(MMAD)に換算して表すことができる。大きな粒子(例えば、MMAD>5μm)は、気道の屈曲に沿って進むには大き過ぎるため、胸腔外及び上気道に沈着する傾向にある。大きな粒子が上気道に沈着すると不耐症状(例えば、咳及び気管支痙攣)が現れる可能性がある。
【0098】
したがって、好ましい実施形態によれば、エアロゾルのMMADは約5μm未満とすべきであり、好ましくは約1~5μmの間にあり、より好ましくは3μm未満(<3μm)である。
【0099】
しかしながら、呼吸法を指導(guided breathing maneuver)することによって、より大きな粒子を胸腔外及び上気道を通過させ、安静呼吸時よりも肺の深部に侵入させることが可能になり、それによってエアロゾルの中及び下部呼吸器系への沈着が増加するであろう。指導により呼吸法を100ml/minと遅くすることもできる。したがって、指導された呼吸法を用いる場合、エアロゾルの好ましいMMADは約10μm未満となるはずである。
【0100】
同様に重要な他の因子(エアロゾル粒径以外に)は、固体粒子の粒径及び粒径分布であり、この場合はクロファジミンの粒径及び分布である。所与のエアロゾル粒子の固体粒子の粒径は、それを含むエアロゾル粒子よりも小さくなければならない。より大きなエアロゾル粒子は、1個又は複数個の固体粒子を含む可能性がある。更に、希薄な懸濁物を扱う際は、エアロゾル粒子の大部分は固体粒子を含まない可能性がある。
【0101】
そのため、エアロゾル粒子のMMADよりも大幅に小さい固体薬物粒子を用いることが望ましい。例えば、エアロゾル粒子のMMADが3μmである場合、固体粒子は1μm以下とすることが望ましいであろう。
【0102】
他の考慮すべき事項は、例えば、振動メッシュ式(vibrating mesh)ネブライザーを用いる場合であり、製剤はプレートの孔を介して送り出され、このプレートは懸濁物を小滴に分解する。その場合、こうした理由から、固体粒子が孔を通過するように、孔よりも小さくすることも必要である。
【0103】
懸濁物中の固体の粒径は粒子の平均径で与えることができ、粒子の分布によって与えることもできる。D90値は、懸濁物中の粒子の90%がその平均径以下にあることを表す。
【0104】
噴霧器
水性及び他の非加圧式液体系用として、各種噴霧器(スモールボリュームネブライザー(small volume nebulizer)を含む)が、製剤をエアロゾル化するために利用可能である。コンプレッサー駆動式噴霧器には、ジェット噴霧技術が組み込まれており、圧縮空気を使用して液体のエアロゾルを生成する。この種の器具は、例えば、Healthdyne Technologies,Inc.;Invacare,Inc.;Mountain Medical Equipment,Inc.;Pari Respiratory,Inc.;Mada Medical,Inc.;Puritan-Bennet;Schuco,Inc.,DeVilbiss Health Care,Inc.;及びHospitak,Incから市販されている。超音波ネブライザーは、吸入可能な液滴を生成するために、圧電結晶を振動させる形で機械的エネルギーを利用しており、例えば、Omron Heathcare,Inc.及びDeVilbiss Health Care,Incから市販されている。振動メッシュ式ネブライザーは、吸入可能な液滴を生成するために圧電パルス又は機械的パルスのいずれかを利用している。本明細書に記載するクロファジミンと一緒に使用される噴霧器の他の例は、米国特許第4,268,460号明細書;米国特許第4,253,468号明細書;米国特許第4,046,146号明細書;米国特許第3,826,255号明細書;米国特許第4,649,911号明細書;米国特許第4,510,929号明細書;米国特許第4,624,251号明細書;米国特許第5,164,740号明細書;米国特許第5,586,550号明細書;米国特許第5,758,637号明細書;米国特許第6,644,304号明細書;米国特許第6,338,443号明細書;米国特許第5,906,202号明細書;米国特許第5,934,272号明細書;米国特許第5,960,792号明細書;米国特許第5,971,951号明細書;米国特許第6,070,575号明細書;米国特許第6,192,876号明細書;米国特許第6,230,706号明細書;米国特許第6,349,719号明細書;米国特許第6,367,470号明細書;米国特許第6,543,442号明細書;米国特許第6,584,971号明細書;米国特許第6,601,581号明細書;米国特許第4,263,907号明細書;米国特許第5,709,202号明細書;米国特許第5,823,179号明細書;米国特許第6,192,876号明細書;米国特許第6,644,304号明細書;米国特許第5,549,102号明細書;米国特許第6,083,922号明細書;米国特許第6,161,536号明細書;米国特許第6,264,922号明細書;米国特許第6,557,549号明細書;及び米国特許第6,612,303号明細書に記載されており、これら全ての全内容を本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する。本明細書に記載するクロファジミン組成物と一緒に使用することができる市販の噴霧器の例としては、Aerogen製Respirgard II(登録商標)、Aeroneb(登録商標)、Aeroneb(登録商標)Pro、及びAeroneb(登録商標)Go;Aradigm製AERx(登録商標)及びAERx Essence(商標);I-neb Respironics,Inc.製Porta-Neb(登録商標)、Freeway Freedom(商標)、Sidestream、Ventstream;並びにPARI,GmbH製PARI LCPlus(登録商標)、PARI LC-Star(登録商標)、及びe-Flow7mが挙げられる。他の非限定的な例は米国特許第6,196,219号明細書に開示されている。
【0105】
本発明によれば、医薬組成物は、好ましくは、超音波ネブライザー、帯電噴霧式ネブライザー、振動膜ネブライザー、ジェット式ネブライザー、又は機械式ソフトミスト定量吸入器から選択される噴霧器具を用いてエアロゾル化することができる。
【0106】
器具が患者の吸入速度を電気的方式又は機械的方式のいずれかにより制御することが好ましい。
【0107】
更なる好ましい実施形態において、器具によるエアロゾルの生成は、AKITAデバイス(AKITA device)のように、患者の吸入動作により作動する。
【0108】
本発明に従い使用される上述の噴霧器/器具の好ましい(市販品の)例は、Vectura fox、Pari eFlow、Pari Trek S、Philips Innospire mini、Philips InnoSpire Go、Medspray device、Aeroneb Go、Aerogen Ultra、Respironics Aeroneb、Akita、Medspray Ecomyst、及びRespimatである。
【0109】
治療及び/又は予防における使用
本発明による医薬組成物及び組合せ医薬(エアロゾル、エアロゾル化された製剤)及び系は、マイコバクテリア又は黄色ブドウ球菌(スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)(メチシリン耐性及びバンコマイシン中間耐性株を含む)、肺炎連鎖球菌(ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae))、及び腸球菌(エンテロコッカス属菌(Enterococcus spp.))等の他のクロファジミン感受性細菌により引き起こされる肺感染症の治療及び/又は予防に使用することが意図されている。本発明の医薬組成物及び組合せ医薬は、肺真菌感染症の治療及び/又は予防にも使用することができる。
【0110】
クロファジミンの投薬
本発明によれば、医薬組成物は、本発明の医薬組成物を約1~5ml、好ましくは1~2ml噴霧化することにより送達される。
【0111】
したがって、医薬組成物中のクロファジミン濃度が約20mg/mlであることに基づけば、目標充填量(fill dose)は、クロファジミン20~100mgに相当する約1~5mlである。
【0112】
本発明に従い投与されるクロファジミンの1日経肺用量(daily lung dose)(即ち、肺に沈着する薬量)は、M・アブセッサス(M.abscessus)感染症の場合は約5~10mgであり、これは名目投与量15~30mg(器具が投与した薬量)に相当する。
【0113】
当業者であれば、投与すべきクロファジミンの経肺用量(したがって、充填量/名目投与量/噴霧体積)を、当該技術分野において十分に確立されているクロファジミンの各細菌株に対する最小発育阻止濃度(MIC)に基づき、機械的に調整するであろうことが理解されよう。
【0114】
したがって、1日経肺用量は1日1回又は2回の投与頻度に応じて分割されることになる。
【0115】
本発明によれば、クロファジミンは、1日の総経肺用量が結果として約5~10mgとなるように、1日1回又は2回投与される。
【0116】
上に述べた量はクロファジミンの遊離塩基に関するものであり、誘導体及び塩の用量は、各化合物及び菌株のMICに基づき調整しなければならないことは当業者に明らかであろう。
【0117】
粘液溶解剤/バイオフィルム変性剤(biofilm modifying agent)
エアロゾル治療時に痰の粘度を低下させること、及び存在するバイオフィルムを破壊することを目的として、本発明による治療及び/又は予防は、粘液溶解剤及び/又はバイオフィルム破壊剤の追加投与を含むことができる。
【0118】
これらの剤は、配合剤(fixed combination)として製剤化するか、又は本発明によるクロファジミンを含む医薬組成物/エアロゾルの組合せと同時に又はそれに続いて投与することができる。
【0119】
本発明に従い使用されるバイオフィルムを分散/破壊するための剤、粘液溶解剤及び/若しくは粘液活性剤、並びに/又はバイオフィルム形成を低減する剤は、噴霧化された4~7%高張生理食塩水、メタ過ヨウ素酸塩、ドデシル硫酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、トロメタミン、銀ナノ粒子、ビスマス-チオール、エチレンジアミン四酢酸、ゲンタマイシン担持ホスファチジルコリン修飾金ナノ粒子、キレート剤、シス-2-デセン酸、D-アミノ酸、D-アミノ酸残基を含むペプチド、ガリウムメソポルフィリンIX、ガリウムプロトポルフィリンIX、クルクミン、パツリン、ペニシリン酸、バイカレイン、ナリンゲニン、ウルソール酸、アシアチン酸、コロソリン酸、脂肪酸、宿主防御ペプチド、及び抗微生物ペプチドから選択される。
【0120】
更に、他の医薬活性剤を、本発明による医薬組成物/エアロゾルの組合せと併用することができる。この種の活性剤は、ベダキリン又はその医薬的に許容される塩若しくは誘導体、セフォキシチン(cefoxitine)、アミカシン、クラリスロマイシン、ピラジンアミド、リファムピン、モキシフロキサシン、レボフロキサシン、及びパラ-アミノサリチレート、並びにこれらの混合物から選択することができる。
【0121】
これらの剤は、配合剤として製剤化することもできるし、或いは、本発明によるクロファジミンを含む医薬組成物/エアロゾルの組合せの前、同時、又は後に投与することもできる。
【0122】
以下に示す実施例は、上に述べた発明を用いる様式をより充分に説明すると共に、本発明の様々な態様を実施するために考えられる最良の形態を説明する役割を果たすものである。本発明による実施例は、ここに記載する特許請求の範囲に包含される。
【実施例】
【0123】
試験
以下に示す例示的な組成物及び組合せを本明細書に記載するプロセスに従い調製した。
【0124】
実施例1
クロファジミン(三斜晶系I型として)200mg、塩化ナトリウム90mg、及び水9.5mlを、Ultra-Turraxホモジナイザーにて10,000rpmで5分間の混合を2回行った。ポリソルベート80(NOF Hx2)0.5mlを加えた。この混合物を超音波振動子(ultrasonic probe)(Bandelin Sonoplus Probe MS73を取り付けたBranson Digital Sonifier(商標)250D)にて振幅70%で7回(各3分間)処理した。体積を水で10mlに調整した。この懸濁物をVWR折り畳み定性濾紙(303、粒子保持能5~13μm、サイズ:150mm)で濾過することにより、実施例1の組成物を得た。実施例1の組成物のクロファジミンの中央粒径は3.9μmであり、D90は6.7μmであった。クロファジミンの濃度は、紫外/可視分光法により280nmで測定し、移動相で希釈したクロファジミンの1mg/mlの原液で較正することにより、7.16mg/mlであると求められた。
【0125】
実施例1の組成物を表1に示す。
【0126】
【0127】
斜方晶系III型のクロファジミンの調製
クロファジミン(10g)のトルエン(20ml)中スラリーを40℃の油浴中でマグネチックスターラーを使用し800rpmで72時間撹拌した。スラリーの固体部分をるつぼ型濾過器(crucible)で濾過して回収し、オーブン内で最高温度を40℃として真空乾燥させた。これにより実質的に純粋な(≧98%)斜方晶系III型のクロファジミンを収量8.64gで得た。
【0128】
実施例2
ポリソルベート80(NOF Hx2)0.5%及び塩化ナトリウム0.6%を含む水100ml中に斜方晶系III型のクロファジミン6gを含む懸濁物を、Ultra-Turrax(登録商標)を用いて10,000rpmで約40秒間予備的に微粒子化した。0.6%塩化ナトリウムを含む水を加えて体積を300mlとすることにより予備調製物を調製した。この懸濁物300mlをホモジナイザーであるM-110EH-30 microfluidizer(Microfluidics、Westwood、MA、USA)の入口に投入し、懸濁物をH30Zチャンバに5,000psiで15分間循環させることにより予備均質化ステップを実施した。次いで、2番目のH10Zチャンバを第1のチャンバに対し直列に取り付け、懸濁物を更に23分間25,000psiで均質化した。HORIBA LA 950を用いて粒径解析を実施したところ、中央粒径が0.83μmであり、D90値が1.17μmであることが示された。紫外/可視分光法により280nmで測定し、移動相で希釈したクロファジミンの1mg/mlの原液で較正することにより、クロファジミンの濃度は16.05mg/mlと求められた。
【0129】
実施例2の組成を表2に示す。
【0130】
【0131】
実施例3
クロファジミン(結晶変態:斜方晶系III型)を、水、塩化ナトリウム、及びポリソルベート80の溶液に懸濁させた懸濁物を、M-110EH-30 Microfluidizer(登録商標)Processor(チャンバ:H30Z及びG10Z)を使用し、H30Z-G10Z配置とし、圧力28,250psiで30分間運転することにより実施例3の組成物を生成した。得られたクロファジミンの粒子の中央粒径は1.28μmであり、D90は2μm未満であった。
【0132】
実施例3の組成を表3に示す。
【0133】
【0134】
粘度測定
実施例3の組成物の粘度をSTRESSTECH Rheometerを用いて応力制御モードで測定した。中空円筒治具(double gap geometry)を利用し、スピンドルを連続回転させて、各温度点(during temperature points)で微粒子が確実に懸濁したままになるようにした。粘度測定は、応力を0.01、0.05、及び0.1Paとし、それぞれ20℃、25℃、及び30℃で測定した。2回の別々の試料充填(loading)で実施することにより得られた粘度の平均値を次の表4に示す。
【0135】
【0136】
動物モデル及び効力試験
クロファジミンを全身投与するのではなく、直接呼吸器に送達した後の肺組織における濃度水準を確立するための予備データを得ることを目的として、臨床分離(clinical)NTM菌種のin vivo急性肺感染マウスモデルにおいて本発明の組成物が増殖を阻害する能力を試験した。対象とする菌種毎のNTM肺感染を調査するために2種の別々のマウスモデルを使用した。試験を行うために、マイコバクテリウム・アビウム(Mycobacterium avium、)2285菌株及びマイコバクテリウム・アブセッサス(Mycobacterium abscessus)103菌株を使用した(菌株の詳細は、EMBL/GenBank/DDBJデータベースに登録(2014年9月)されている“Phylogenetic analysis of Mycobacterial species using whole genome sequences”.Hazbon M.H.,Riojas M.A.,Damon A.M.,Alalade R.,Cantwell B.J.,Monaco A.,King S.,Sohrabi A.に記載されている)。これらの2種の菌種は、既に文献においてNTM感染のモデルとして使用されている(Obregon-Henao et al.2015 Antimicrob Agents Chemother;and Chan et al.Animal Models of Non-Tuberculous Mycobacterial Infections,Mycobact Dis 2016)。
【0137】
Balb/Cマウスにおける生体内安全性試験:
生体内安全性及び忍容性を評価するために、6~8週齢のBalb/C雌性マウスをCharles Riverより入手した。投薬前にマウスを1週間休息させた。クロファジミンの各用量に3匹の健康なマウスを提供し、1日置きに計3回投与した。クロファジミン10.0、5.01、及び2.51mg/kgを実施例1の組成物中でマウスに投与した。3匹の健康なマウスにこの化合物のエアロゾルをMicrosprayer(登録商標)を用いて気管内に1日置きに計3回投与した。
【0138】
クロファジミンは20mg/kg(強制経口投与、200μl)の安全性が確認されている。実施例1の組成物は試験を行った最大用量でも毒性を示さなかった(10.0mg/kg;0.2506mg/回、35μl中、気管内)。したがって、式Iの組成物は10.0mg/kgで安全であり、充分な忍容性を示すと見なされる。
【0139】
最小発育阻止濃度の決定
最小発育阻害濃度(MIC)試験をミューラー・ヒントン(MH)ブロス(陽イオン調整)(CLSI規格M7-A7で推奨されているカルシウム及びマグネシウムイオン濃度)(Becton Dickinson)を使用し、微量液体希釈法(microbroth dilution method)により実施した。MIC試験は、7H9ブロス(Sigma-Aldrich)を用いる微量液体希釈法によっても実施した。化合物のスクリーニングにMH及び7H9の両方のブロスを使用することの根拠は、抗マイコバクテリア化合物が、MIC試験に使用するブロスに応じて異なるMIC活性を示すことが分かっているためである。
【0140】
M・アブセッサス(M.abscessus)は7H11寒天平板(Sigma-Aldrich)上で35~37℃の空気中(in ambient air)(細菌株に応じて異なる)で3日間増殖させ、M・アビウム(M.avium)は7H11寒天平板(Sigma-Aldrich)上で37℃の空気中で21~30日間増殖させた。
【0141】
コロニー形成単位(CFU)を寒天平板から採取し、tween-80を0.05%添加したMHブロス又は7H9ブロスのいずれかに添加し、3日目(M・アブセッサス(M.abscessus))又は12日目(M.アビウム(M.avium))以降に光学密度(OD)を吸光度で測定し、(OD)0.08~0.1(マクファーランド濁度標準液0.5番)になるまで35~37℃の空気中で増殖させた。次いで生理食塩水中で菌体懸濁液を(OD)0.08~0.1(マクファーランド濁度標準液0.5番)に一致するように調製することにより確認した。DMSO中で化合物を濃度1.28mg/mlで懸濁させることにより化合物の原液を調製し、試験範囲を64~0.062μg/mlとして即座に使用した。続いてブロス180μl(MH又は7H9のいずれか)を96ウェルプレートの1列目に加え、96ウェルプレートの残りの列にブロス100μlを加えた。化合物の原液20μlを1列目のウェルに加え、段階希釈した。最後に、NTM菌体懸濁液100μlを、培地のみの対照ウェルを除く全てのウェルに加えた。各微生物に特異的なQC試薬:1)細菌のみの陰性対照2)培地のみの陰性対照3)クラリスロマイシン陽性薬物対照。
【0142】
M・アブセッサス(M.abscessus)のODを3日後に測定し、M・アビウム(M.avium)については12日後に測定した。これらの測定に続いて、Resazurin Microtiter Assay Plate法を用いてプレートを測定した。簡潔には、この方法は、レサズリン(7-ヒドロキシ-3H-フェノキサジン-3-オン10-オキシド)を96ウェルプレートに添加するものである。レサズリンは青色色素であり、それ自体は弱い蛍光を発するが、不可逆的に還元されるとピンク色の強い赤色蛍光を発するレゾルフィンになる。これは、MIC測定における細菌細胞生存率を決定するための酸化還元指示薬として使用されている。
【0143】
試験は3連で実施した。試験#1は実施例1の組成物を4℃で2ヵ月間保管した後に実施し、試験#2は4ヵ月後に実施し、試験#3は5ヵ月後に実施した。
【0144】
CF痰の存在下及び非存在下における最小発育阻止濃度
最小発育阻止濃度測定を上に述べたように実施した。
【0145】
嚢胞性線維症(CF)患者の痰がクロファジミン(CFZ)及び実施例1の組成物の抗菌活性に与える影響を調査するために、抗菌薬を48時間以内に投与されていない患者から痰を回収し、その痰をUV光に曝露することにより滅菌して内在する細菌を除去した。滅菌後、M・アブセッサス(M.abscessus)、M・アビウム(M.avium)、M・イントラセルラーレ(M.intracellulare)、及びM・キマイラ(M.Chimaera)を10%CF痰中でインキュベートした後、MIC試験を行った。上に述べたものと同じCLSIプロトコルに従い、嚢胞性線維症患者の痰の存在下及び非存在下に、実施例1の組成物のMICを測定した。試験は全て2連で実施した。
【0146】
痰の存在下及び非存在下におけるクロファジミン及び実施例1の組成物のMIC値を表5に示す。
【0147】
【0148】
表5に示した結果から、クロファジミン及び実施例1の組成物は両方共、幅広い非結核性抗酸菌種に対し安定したMICを示すことが分かる。
【0149】
これらのデータは、実施例1の組成物が、M・アブセッサス(M.abscessus)及びM・アビウム(M.avium)の両方に対し強力なin vitro活性を示し、少なくともこの期間は安定であることを示唆している。
【0150】
SCIDマウスにおけるM・アブセッサス(M.abscessus)のマウスモデル
6~8週齢のSCID雌性マウスをCharles Riverから購入した。マウスは感染前に1週間休息させた。
【0151】
M・アブセッサス(M.abscessus)103株の試験用原液(working stock)を1ml分取し、使用時まで-80℃で保管した。感染させるために分取液を解凍し、26gのニードルを取り付けた1mlのルアーロックシリンジを用いて20回崩壊させ、滅菌1×PBSで希釈した。
【0152】
急性感染SCIDマウスモデルに1×106CFU/匹(M・アブセッサス(M.abscessus)103株)を非侵襲的に気管内注入することにより肺感染させた。
【0153】
マウス3匹を感染後1日目に屠殺し、細菌の取り込み量(bacterial uptake)を求めた。全肺、脾臓、及び肝臓を摘出し、1×PBS4.5ml中にホモジナイズした。ホモジナイゼートを1:10の希釈倍率で段階希釈し、希釈液(0-1-2-3-4-5-6-7)を7H11寒天平板上に塗沫した。平板を32℃のドライエアインキュベーター(菌株に応じて異なる)に7日間静置した。
【0154】
実施例1の組成物10.0mg/kgをMicrosprayer(登録商標)を用いて経肺経路で投与し(35μl)、クロファジミン(強制経口投与)、アミカシン(皮下)を、マウス1匹当たり200μlの量で投与した。これらを感染後2日目に開始し、1日置きに8日間継続した。
【0155】
化合物の最後の用量を投与してから2日後にマウスを屠殺した。全ての群の6匹のマウス(無治療対照、クロファジミン(強制経口投与)、実施例1の組成物、及びアミカシン治療マウス)を屠殺し、菌量を測定した。肺ホモジネートを0-1-2-3-4-5-6-7、脾臓を0-1-2-3-4-5-6-7、及び肝臓を0-1-2-3-4-5-6-7でプレートに塗抹した。
【0156】
Log10で表される防御値(protection value)が少なくとも0.60であれば、活性が統計的に有意であることを示唆している。統計学的解析は、まずCFUを対数に変換し、次いでこれをone-way ANOVAで評価した後、one-way Tukey testで多重比較による分散分析を行うことにより実施した(GraphPad Prism解析ソフト)。差は95%の信頼水準で有意であると見なす。
【0157】
表6に、SCIDマウスにM・アブセッサス(M.abscessus)を感染させた後のLog10CFUデータの平均値及び平均値の標準誤差(SEM)を示す。「n」は屠殺時の1群当たりの動物の総数である。
【0158】
【0159】
表6のデータは、実施例1の組成物を用いた治療により、M・アブセッサス(M.abscessus)に感染した動物の肺及び脾臓から回収された菌量が大幅に低下したことを示している。この菌量の低下は、アミカシン又は経口クロファジミンを用いた治療と比較しても統計的に改善されていた。
【0160】
BeigeマウスにM・アビウム(M.avium)を感染させたマウスモデル
6~8週齢の雌性BeigeマウスをCharles Riverから購入した。感染前にマウスを1週間休息させた。
【0161】
急性感染Beigeマウスモデルに1×108コロニー形成単位(CFU)/ml(M・アビウム(M.avium)2285株rough型)をエアロゾルに曝露させることにより非侵襲的に肺感染させた。M・アビウム(M.avium)2285株rough型の試験用原液を1ml分取して凍結させ、使用時まで-80℃で保管した。感染させるために分取液を解凍し、26gのニードルを取り付けた1mlのルアーロックシリンジを用いて20回崩壊させ、滅菌1×リン酸緩衝生理食塩水で希釈した。
【0162】
感染後1日目及び7日目に3匹のマウスを屠殺し、細菌の取り込みを測定した。全肺、脾臓、及び肝臓を摘出し、1×PBS4.5ml中でホモジナイズし、1:10で希釈した。希釈液(0-1-2-3-4-5-6-7)を7H11/OADC、TSA、及びチャコール寒天平板上に塗抹し、32℃(菌株に応じて異なる)のドライエアインキュベーターで30日間インキュベートした。
【0163】
実施例1の組成物10.0mg/kgをMicrosprayer(登録商標)を用いて経肺経路で投与し(35μl)、クロファジミン(強制経口投与)をマウス1匹当たり200μlの量で投与した。これらを感染後7日目に開始し、1日置きに10日間継続した。
【0164】
化合物の最終用量を投与してから5日後にマウスを屠殺した。全ての群の6匹のマウス(無治療対照、クロファジミン(強制経口投与)、及び実施例1の組成物)を屠殺し、菌量を測定した。肺ホモジネートの0-1-2-3-4-5-6-7、脾臓の0-1-2-3-4-5-6-7、及び肝臓の0-1-2-3-4-5-6-7を平板に塗抹した。
【0165】
Log10で表される防御値が少なくとも0.60であれば、活性が統計的に有意であることを示唆している。統計学的解析は、まずCFUを対数に変換し、次いでこれをone-way ANOVAで評価した後、one-way Tukey testで多重比較による分散分析を行うことにより実施した(SigmaStatソフトウェアプログラム)。差は95%の信頼水準で有意であると見なす。
【0166】
表7に、BeigeマウスにM・アビウム(M.avium)を感染させた後のLog10CFUデータの平均値を示す。
【0167】
【0168】
表7のデータは、実施例1の組成物を用いた治療により、M・アビウム(M.avium)に感染した動物の肺及び脾臓から回収された菌量が大幅に低下したことを示している。
【0169】
慢性感染Beigeマウスモデル
6~8週齢のBeigeマウスを感染前に1週間休息させた。0日目にM・アビウム(M.avium)2285rough型を1×108CFUをマウスに肺感染させた。1日目に3匹、27日目に6匹のマウスを屠殺し、菌の取り込み及び治療前の菌量を測定した。全肺、脾臓、及び肝臓を摘出し、1×PBS4.5ml中にホモジナイズし、希釈液(0-1-2-3-4-5-6-7)を7H11寒天平板及びチャコール寒天平板上に塗沫した。平板を37℃のドライエアインキュベーターに25~30日間静置した。
【0170】
残りの感染Beigeマウスは、28日目から開始して1日置きに治療を行い、計14回治療した。動物には次に示す治療のうちの1種を行った:生理食塩水(Microsprayer(登録商標)、35μl);クロファジミン(強制経口投与、20mg/kg、200μl);実施例1の組成物(IT、Microsprayer(登録商標)、10mg/kg、35μl)。
【0171】
マウスを最後の治療から2日後の57日目に屠殺した。平板を37℃のドライエアインキュベーターに30日間静置した。
【0172】
統計学的解析は、まずCFUを対数に変換し、次いでこれをone-way ANOVAで評価した後、one-way Tukey testで多重比較による分散分析を行うことにより実施した。差は95%の信頼水準で有意であると見なす。
【0173】
表8に、BeigeマウスにM・アビウム(M.avium)を慢性感染させた後のLog10CFUデータの平均値を示す。
【0174】
【0175】
これらのデータは、定着(establish)した「慢性」NTM感染動物モデルにより形成された肉芽腫様構造にクロファジミンがなかなか浸透しないことを示唆している。本発明の組成物にはこの問題がなく、抗マイコバクテリア活性を、感染が充分に定着した後でさえも維持することができるようである。
【0176】
肺上皮細胞に実施例3の組成物をin vitroで曝露した後のバリア機能の健全性及び炎症に対する効果
細胞生存率
肺上皮細胞の細胞生存率を評価するために3種の異なる種類の細胞:Calu-3;A549;及びhAELVi細胞を2種のin vitro条件下に使用した。細胞を「浸漬条件」(即ち、Transwell(商標)プレート上の細胞培養液中)又は細胞頂端側から細胞培養液を除去した「空気-液体界面」模擬条件(ALI)のいずれかで処理した。「浸漬条件」では、Calu-3細胞を実施例3の組成物に3種の用量(10%、50%、又は100%)で4時間曝露した。細胞生存率を評価するために、細胞をアクリジンオレンジ/ヨウ化プロピジウム(AO/PI)染色を用いて染色し、生細胞/死細胞を区別した。赤色の蛍光は死細胞であることを表す。
【0177】
マクロファージによる取り込み
THP-1細胞をホルボール12-ミリスタート13アセタート(PMA)124ng/mlと一緒に3日間インキュベートし、マクロファージ様細胞に分化させた。細胞が成熟したら実施例3の組成物(ハンクス平衡塩溶液(HBSS)で1:200に希釈)に4時間曝露した。細胞を上に述べたようにAO/PIで染色することにより、曝露後の細胞生存率を決定した。
【0178】
経上皮電気抵抗(TEER)測定
Calu-3細胞を1×105cells/ウェルとなるようTranswell(商標)3460に播種し、コンフルエントに達するまで12日間増殖させた。EVOM2(World Precision Instruments、Friedberg、Germany)を使用し、製造業者の指示に従いTEER測定を行った。播種後のCalu-3細胞を生理食塩水(陰性対照)又は実施例3の組成物(濃度:20mg/ml、10mg/ml、又は2mg/ml)のいずれかに曝露した。細胞を2~4時間曝露した後、TEERを測定した。
【0179】
炎症性サイトカイン産生
分化させたTHP-1細胞(dTHP-1)を実施例3の組成物に4時間又は24時間曝露した(HBSSで1:200に希釈)。HBSSのみの曝露を陰性対照として使用し、陽性対照としてリポ多糖(LPS)(100ng/ml)を投与した。
【0180】
t=4時間又は24時間インキュベーションを行った後、上清を細胞から取り除いてプールした。プールした上清サンプルに酵素結合免疫吸着法(ELISA)を実施した。製造業者の指示に従い、TNF-α、IL-6、IL-8、及びIL-10に対し別々のELISAキットを使用した。
【0181】
一元配置分散分析(ANOVA)を実施した後、Tukey post-hoc testを用いて統計解析を行った。確率値<0.05であれば統計的に有意であると判定した。
【0182】
結果
「浸漬」条件下において4時間インキュベートした後も、実施例3の組成物は、投与したどの濃度においても、目視では細胞生存率を低下させなかった。
【0183】
「ALI」条件下においては、3種の異なる細胞(Calu-3、A549、及びHAELVi細胞)を異なる時点で3回(5時間後、2日後、及び7日後)調査した。4時間後はどの細胞においても、Calu-3細胞の場合は2日後も、細胞毒性はほとんど又は全く認められなかった。A549細胞においては2日後及び7日後に、Calu-3細胞においては7日後にある程度の毒性が認められた。技術的限界により死細胞の定量はできなかった。
【0184】
マクロファージによる取り込みに関しては、分化後のTHP-1細胞を1:200HBSSで4時間インキュベートし、曝露後のマクロファージの細胞生存率を決定した。実施例3の組成物は細胞死を誘導しなかったが、クロファジミンがマクロファージに取り込まれたことは確実に示された。
【0185】
TEER測定に関しては、Calu-3細胞をHBSS又は3種の濃度の実施例3の組成物に4時間曝露し、TEER測定値を曝露時の様々な時点で抽出した。任意の所与の時点で、対照と比較してTEERが≧50%低下したら、バリア機能の健全性が有意に低下したと見なした。
【0186】
Calu-3細胞を実施例3の組成物に曝露した場合、曝露から1時間後もバリア機能の健全性に影響は見られなかった。20mg/mlで曝露を行うと、2時間後に有意に(即ち≧50%)低下した。10mg/mlの濃度では2時間後のどの時点においても僅かな低下(即ち25~35%)が見られた。2mg/mlで曝露した場合は試験期間を通してバリア機能の低下は見られなかった。
【0187】
炎症性サイトカイン産生
陽性対照であるLPSは本モデルにおいて予想通りの挙動を示した。実施例3の組成物は調査を行ったどの時点においてもサイトカインの有意な変化は認められなかった。
【0188】
結果を表9に示す。
【0189】
【0190】
生体内安全性及び忍容性
6~8週齢の Balb/C雌性マウスに1日置きに計3回投与を行った。マウスには実施例1の組成物を10.0、5.01、及び2.51mg/kgを投与した。組成物はMicrosprayer(登録商標)を用いてエアロゾルを35μl/匹の量で気管内(IT)投与した。注入後、マウスを投与から10分、1、2、及び4時間後に観察し、その後毎日観察を行った。
【0191】
表10に投与後の総括的観察を示す。「BAR」は、動物が利口であり(bright)、活発であり(active)、且つ応答性(responsive)を示したことを表す。
【0192】
【0193】
これらのデータは、3日間の治療で体重は統計的に有意な変化を示さなかったことを表している。
【0194】
これらの結果は、本発明の組成物が試験に用いた用量では十分な忍容性を示すことを表している。