(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-31
(45)【発行日】2023-11-09
(54)【発明の名称】電解銅箔及び電極とそれを用いたリチウムイオン電池
(51)【国際特許分類】
C25D 1/04 20060101AFI20231101BHJP
C25D 1/00 20060101ALI20231101BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20231101BHJP
H01M 4/64 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
C25D1/04 311
C25D1/00 311
H01M4/66 A
H01M4/64 A
(21)【出願番号】P 2022152573
(22)【出願日】2022-09-26
【審査請求日】2023-05-11
(32)【優先日】2022-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(31)【優先権主張番号】202210740028.3
(32)【優先日】2022-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591057290
【氏名又は名称】長春石油化學股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】莊庭牧
(72)【発明者】
【氏名】林頌軒
(72)【発明者】
【氏名】頼耀生
(72)【発明者】
【氏名】周瑞昌
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特許第7153148(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2022/0102730(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0083539(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第104583461(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 1/04
C25D 1/00
H01M 4/66
H01M 4/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面と、前記第1の面の反対側の第2の面とを備える電解銅箔であって、斜入射X線回折(GIXRD)によって分析した前記第1の面の(111)面の特性ピークの半値全幅(FWHM)と、前記第2の面の(111)面の特性ピークの半値全幅(FWHM)との絶対差は、0.14
°未満であり、前記第1の面及び前記第2の面はそれぞれ、0.3GPa以上、3.0GPa以下のナノインデンテーション硬度を有し、前記電解銅箔の降伏強度は、230MPaを超えることを特徴とする、電解銅箔。
【請求項2】
前記第1の面の(111)面の特性ピークのFWHM及び前記第2の面の(111)面の特性ピークのFWHMはそれぞれ独立に、0.10
°から0.38
°であることを特徴とする、請求項1に記載の電解銅箔。
【請求項3】
前記第1の面の(111)面の特性ピークのFWHM及び前記第2の面の(111)面の特性ピークのFWHMはそれぞれ独立に、0.13
°から0.38
°であることを特徴とする、請求項1に記載の電解銅箔。
【請求項4】
前記電解銅箔の前記第1の面のナノインデンテーション硬度と前記第2の面のナノインデンテーション硬度との絶対差は、1.0GPa以下であることを特徴とする、請求項1に記載の電解銅箔。
【請求項5】
前記第1の面の(111)面の特性ピークのFWHMと前記第2の面の(111)面の特性ピークのFWHMとの絶対差は、0.135
°以下であることを特徴とする、請求項1に記載の電解銅箔。
【請求項6】
前記第1の面の(111)面の特性ピークのFWHMと前記第2の面の(111)面の特性ピークのFWHMとの絶対差は、0.010
°以上、0.135
°以下であることを特徴とする、請求項5に記載の電解銅箔。
【請求項7】
前記電解銅箔の降伏強度は、240MPa以上であることを特徴とする、請求項1に記載の電解銅箔。
【請求項8】
前記電解銅箔の降伏強度は、240MPa以上、500MPa以下であることを特徴とする、請求項7に記載の電解銅箔。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の電解銅箔を備えるリチウムイオン電池の電極。
【請求項10】
請求項9に記載の電極を備えるリチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解銅箔に関し、特に、リチウムイオン電池のための電解銅箔、電解銅箔を備える電極、及びリチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0002】
銅箔は、良好な導電率を有し、銀等の貴金属と比較して価格が低い。銅箔は、基幹産業で広く利用されており、先端技術産業で重要な出発材料となっている。例えば、銅箔は、リチウムイオン電池の電極の材料として使用でき、リチウムイオン電池は、可搬電子デバイス(PED)、電気自動車(EV)、及びエネルギー貯蔵システム(ESS)の分野で広く利用される。
【0003】
リチウムイオン電池の電極材料の場合、銅箔は、活性材料で被覆される。しかし、活性材料は、充放電サイクルを繰り返す間、膨張、収縮し、銅箔の変形をもたらす。機械的強度が不十分な銅箔は、充放電サイクルを繰り返す間に損傷、破損し、リチウムイオン電池さえ損傷させる。
【0004】
更に、活性材料は、リチウムイオン電池の調製中に銅箔上に被覆される。銅箔が平坦ではなく、隅が歪んでいる場合、活性材料は、銅箔上に十分に被覆できないため、電極及びリチウムイオン電池の収率が後続の調製で低減する。
【0005】
したがって、依然として、充放電サイクルの繰返しに対する耐性、歪みレベルの軽減、並びに電極及びリチウムイオン電池の収率の増大に関して改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらの欠点に鑑みて、本開示の目的の1つは、銅箔がリチウムイオン電池の電極内で使用される際に充放電の繰返しに良好な耐性を呈する、改善された銅箔を提供することである。
【0008】
本開示の別の目的は、平坦な表面を有する、改善された銅箔を提供することであり、したがって、銅箔の歪みレベルを効果的に軽減できる。
【0009】
本開示の更に別の目的は、改善された銅箔を提供し、後続の適用において、電流収集器、電極及びリチウムイオン電池の収率及び値を増大させることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成するため、本開示は、第1の面と、第1の面の反対側の第2の面とを備える電解銅箔を提供する。斜入射X線回折(GIXRD)によって分析した第1の面の(111)面の特性ピークの半値全幅(FWHM)と第2の面の(111)面の特性ピークの半値全幅(FWHM)との絶対差は、0.14°未満である。第1の面及び第2の面はそれぞれ、0.3ギガパスカル(GPa)以上、3.0GPa以下のナノインデンテーション硬度を有する。また、銅箔の降伏強度は、230メガパスカル(MPa)を超える。
【0011】
第1の面及び第2の面の(111)面の特性ピークのFWHMの絶対差、第1の面及び第2の面のナノインデンテーション硬度、並びに電解銅箔の降伏強度を制御することによって、電解銅箔は、充放電の繰返しに対して改善された耐性を有し、歪みレベルを低減し得る。したがって、電解銅箔を、良好な耐性を有する電流収集器の材料として使用でき、リチウムイオン電池の収率及び値を改善する。
【0012】
好ましくは、第1の面及び第2の面の(111)面の特性ピークのFWHMはそれぞれ独立に、0.10°から0.38°とし得る。より好ましくは、第1の面及び第2の面の(111)面の特性ピークのFWHMはそれぞれ独立に、0.13°から0.38°とし得る。一実施形態では、第1の面及び第2の面の(111)面の特性ピークのFWHMはそれぞれ独立に、0.13°から0.27°とし得る。別の実施形態では、第1の面の(111)面の特性ピークのFWHMは、0.13°から0.38°であり、第2の面の(111)面の特性ピークのFWHMは、0.20°から0.30°とし得る。
【0013】
好ましくは、第1の面の(111)面の特性ピークのFWHMと第2の面の(111)面の特性ピークのFWHMとの間の絶対差は、0.135°以下とし得る。より好ましくは、第1の面の(111)面の特性ピークのFWHMと第2の面の(111)面の特性ピークのFWHMとの間の絶対差は、0.010°から0.135°とし得る。本発明者は、第1の面及び第2の面の(111)面の特性ピークのFWHMの絶対差が0.14°以上である際、電解銅箔が、深刻な歪みの問題及び充放電の繰返しに対する粗悪な耐性に遭遇することを発見した。
【0014】
好ましくは、電解銅箔の第1の面のナノインデンテーション硬度及び第2の面のナノインデンテーション硬度はそれぞれ独立に、0.4GPaから2.5GPaとし得る。より好ましくは、第1の面のナノインデンテーション硬度及び第2の面のナノインデンテーション硬度はそれぞれ独立に、0.4GPaから2.3GPaとし得る。一実施形態では、電解銅箔の第1の面のナノインデンテーション硬度は、0.3GPaから3.0GPaであり、電解銅箔の第2の面のナノインデンテーション硬度は、1.0GPaから2.0GPaとし得る。別の実施形態では、電解銅箔の第1の面のナノインデンテーション硬度は、0.4GPaから2.5GPaであり、電解銅箔の第2の面のナノインデンテーション硬度は、1.0GPaから2.0GPaとし得る。本発明者は、電解銅箔のあらゆる面上で3.0GPaを超えるナノインデンテーション硬度を有する電解銅箔は、リチウムイオン電池の電流収集器として使用する際に硬すぎ、脆弱であるため、充放電中に亀裂及び破断が容易に生じ、被覆した活性材料が表面から分離することを発見した。したがって、充放電の繰返しに対する耐性が低減する。一方で、電解銅箔のあらゆる面上で0.3GPa未満のナノインデンテーション硬度を有する電解銅箔は、過度に低い表面強度を有するため、亀裂及び破断が容易に生じる。充放電の繰返しに対する耐性が同様に低減する。
【0015】
好ましくは、電解銅箔の第1の面のナノインデンテーション硬度と第2の面のナノインデンテーション硬度との絶対差は、1.0GPa以下とし得る。より好ましくは、電解銅箔の第1の面のナノインデンテーション硬度と第2の面のナノインデンテーション硬度との絶対差は、0.1GPaから1.0GPaとし得る。
【0016】
好ましくは、電解銅箔の降伏強度は、240MPa以上とし得る。より好ましくは、電解銅箔の降伏強度は、240MPa以上、500MPa以下とし得る。
【0017】
一実施形態では、電解銅箔の厚さは、4マイクロメートル(μm)から20μmとし得る。別の実施形態では、電解銅箔の厚さは、6μmから20μmとし得る。
【0018】
本開示は、上述の電解銅箔を備えるリチウムイオン電池の電極も提供する。
【0019】
更に、本開示は、上述の電極を備えるリチウムイオン電池を提供する。
【0020】
本開示によれば、電解銅箔は、リチウムイオン電池の陰極及びリチウムイオン電池の陽極として適用可能である。上述の電解銅箔は、電流収集器に適用可能である。電解銅箔の表面の一面又は両面は、リチウムイオン電池の電極を調製するため、活性材料の少なくとも1つの層で被覆できる。
【0021】
本開示によれば、活性材料は、陽極活性材料及び陰極活性材料に分割できる。陰極活性材料内に含有される陰極活性物質は、炭素含有物質、ケイ素含有物質、炭化ケイ素複合物、金属、酸化金属、金属合金、又はポリマーとすることができ、炭素含有物質又はケイ素含有物質が好ましいが、これらに限定されない。具体的には、炭素含有物質は、限定はしないが、中間相グラファイト粉体(MGP)、非黒鉛化炭素、コークス、グラファイト、ガラス状カーボン、炭素繊維、活性炭、カーボン・ブラック、又は高分子か焼物質とし得る。コークスは、ピッチ・コークス、ニードル・コークス又は石油コークス等を含み得る。高分子か焼物質は、炭酸化のための適切な温度でフェノール-ホルムアルデヒド樹脂又はフラン樹脂をか焼することによって得ることができる。ケイ素含有物質は、リチウムイオンとの合金を生成する優れた能力、及びリチウムイオンをリチウム合金から抽出する優れた能力を有し得る。ケイ素含有物質をリチウムイオン二次電池に利用する場合、高エネルギー密度の二次電池を達成できる。ケイ素含有物質は、コバルト(Co)、鉄(Fe)、スズ(Sn)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、銀(Ag)、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、クロム(Cr)、ルテニウム(Ru)、モリブデン(Mo)、又は合金を生成するそれらの組合せと組み合わせ得る。金属又は金属合金の元素は、Co、Fe、Sn、Ni、Cu、Mn、Zn、In、Ag、Ti、Ge、Bi、Sb、Cr、Ru、及びMoからなる群から選択できるが、これらに限定されない。上述の酸化金属の例は、限定はしないが、酸化第二鉄、四三酸化鉄、二酸化ルテニウム、二酸化モリブデン及び三酸化モリブデンとし得る。上述のポリマーの例は、限定はしないが、ポリアセチレン及びポリピロールを含み得る。
【0022】
一実施形態では、様々なニーズに応じて、補助添加剤を活性材料に添加し得る。上述の補助添加剤は、限定はしないが、接着剤及び/又は弱酸性試薬とし得る。好ましくは、接着剤は、限定はしないが、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリ(アクリル酸)(PAA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、又はポリアクリレートであり、弱酸性試薬は、限定はしないが、しゅう酸、クエン酸、乳酸、酢酸又はギ酸とし得る。
【0023】
本開示によれば、陽極活性物質に応じて、リチウムイオン電池は、LiCoO2電池、LiNiO2電池、LiMn2O4電池、LiCoXNi1-XO2電池、又はLiFePO4電池等に分類できるが、これらに限定されない。
【0024】
本開示によれば、電解液は、溶媒、電解質、又は適当な場合に常に添加される添加剤を含み得る。電解液の溶媒は、非水溶性溶媒、例えば、炭酸エチレン(EC)又は炭酸プロピレン(PC)等の環状炭酸エステル、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸ジエチル(DEC)若しくは炭酸エチルメチル等の線状炭酸エステル、又はスルトンを含み得るが、これらに限定されない。上述の溶媒は、単独で使用しても、2つ以上の溶媒の組合せで使用してもよい。電解質は、ヘキサフルオロリン酸リチウム、過塩素酸リチウム、テトラフルオロほう酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、ビス(しゅう酸)ほう酸リチウム、又はビス(トリフルオロメタンスルホンイミド)リチウムを含み得るが、これらに限定されない。
【0025】
いくつかの実施形態では、電解液は、限定はしないが、リチウムイオン電池において、結晶電解質、ガラス状電解質、ガラス-セラミック電解質、ポリマー電解質等の固体電解質によって置換し得る。具体的には、結晶電解質は、リチウム超イオン伝導体(LISICON)若しくは硫銀ゲルマニウム鉱等の硫化固体電解質、又はガーネット型電解質、ペロブスカイト型電解質、NASICON型電解質等の酸化固体電解質とし得るが、これらに限定されない。ガラス状電解質は、酸化物ガラス電解質又は硫化物ガラス電解質とし得るが、これらに限定されない。ガラス-セラミック電解質は、酸化物ガラス-セラミック電解質又は硫化物ガラス-セラミック電解質とし得るが、これらに限定されない。ポリマー電解質は、酸化ポリエチレンベース(PEO-ベース)の電解質及び酸化ポリプロピレンベース(PPO-ベース)の電解質等の純固体ポリマー、又はポリアクリロニトリルベース(PAN-ベース)の電解質、ポリ(メタクリル酸メチル)ベース(PMMA-ベース)の電解質、ポリ(塩化ビニル)ベース(PVC-ベース)の電解質、若しくはポリ(フッ化ビニリデン)ベース(PVDF-ベース)の電解質等のゲルポリマー電解質とし得るが、これらに限定されない。
【0026】
本開示によれば、上述のリチウムイオン電池は、隔離体を通じて積層した陰極と陽極とを備える積層リチウムイオン電池とし得るか、又はらせん状に巻かれ、一緒に積層した連続的な電極と隔離体とを備えるらせん巻きリチウムイオン電池とし得るが、これらに限定されない。様々な製品に応じて、本開示のリチウムイオン電池は、パーソナル・ノートブック・コンピュータ、携帯電話、電気自動車及びエネルギー貯蔵システムのための円筒形二次電池、正方形二次電池、パウチ型二次電池、又はコイン型二次電池として利用できるが、これらに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】実施例1から10及び比較例1から6の電解銅箔を調製する概略図である。
【
図2】実施例1から10及び比較例1から6の電解銅箔の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本開示の電解銅箔、電極及びリチウムイオン電池の実施形態を例示するため、いくつかの実施形態を説明し、いくつかの比較例を比較のために提供する。当業者は、以下の例及び比較例から、本発明の利点及び効果を容易に了解できる。本明細書で提案する記述は、例示のためだけの好ましい例にすぎず、本開示の範囲を限定する意図ではないことを理解されたい。当業者は、通常の知識に従って本開示を実践又は適用するため、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な修正形態及び変形形態を行い得る。
【0029】
図1に示すように、電解銅箔を生成する製造装置は、電着機器10と、変色防止処理機器20と、一連の案内ローラとを備える。電着機器10は、陰極ドラム11と、不溶性陽極12と、銅電解質溶液13と、供給管14とを備える。陰極ドラム11は、回転可能チタン陰極ドラムである。不溶性陽極12は、陰極ドラム11の下に設定されたIrO
2被覆チタン板であり、陰極ドラム11の下半分を実質的に取り囲む。不溶性陽極12は、陰極ドラム11に面する陽極面121を有する。陰極ドラム11及び不溶性陽極12は、供給管14を通して導入される銅電解質溶液13を収容するように互いに離間する。変色防止処理機器20は、変色防止処理槽21と、変色防止処理槽21内に配設された2セットの陽極板211a及び211bとを備える。一連の案内ローラは、第1の案内ローラ31と、第2の案内ローラ32と、第3の案内ローラ33と、第4の案内ローラ34と、第5の案内ローラ35と、第6の案内ローラ36とを備える。上述の案内ローラは、電着によって調製された生銅箔を、変色防止処理のために変色防止処理機器20に搬送でき、次に、エアナイフ40によって、変色防止処理された生銅箔の表面から余分な変色防止物質を除去し、最後に、電解銅箔50を第6の案内ローラ36上で巻き取る。
【0030】
本開示の電解銅箔の調製に関し、電着のパラメータは、様々なニーズに応じて修正できる。一実施形態では、電着で使用される銅電解質溶液は、硫酸銅、硫酸、塩化物イオン、3-メルカプト-1-プロパンスルホン酸ナトリウム(MPS)、コラーゲン及びナトリウムイオンを含み得るが、これらに限定されない。前記実施形態では、硫酸銅の濃度は、1リットル当たり200グラム(g/L)から400g/L、硫酸の濃度は、80g/Lから150g/L、塩化物イオンの濃度は、20ppmから60ppm、MPSの濃度は、20ppmから30ppm、コラーゲンの濃度は、10ppmから40ppm、コラーゲンの分子量は、1000ダルトン(Da)から10000Da、ナトリウムイオンの濃度は、10ppmから30ppmとし得る。電着ステップでは、銅電解液の温度は、40℃から50℃、電流密度は、1平方デシメートル当たり40アンペア(A/dm2)から50A/dm2、陽極面の粗さ(Rz)は、15μm以下とし得る。
【0031】
本開示の電解銅箔の調製に関し、変色防止処理は、様々なニーズに応じて採用できる。採用される変色防止溶液は、アゾールを含有する有機変色防止溶液、又はクロム変色防止溶液、ニッケル変色防止溶液、亜鉛変色防止溶液、スズ変色防止溶液等の無機変色防止溶液等とし得る。一実施形態では、変色防止溶液は、クロム酸の濃度を1.5g/Lから5.0g/Lとし得るクロム変色防止溶液とし得る。変色防止処理の電流密度は、0.5A/dm2から6.0A/dm2に設定でき、クロム変色防止溶液の温度は、20℃から40℃、変色防止処理の期間は、2秒(sec)から4secとし得るが、これらに限定されない。
【0032】
本開示によれば、電解銅箔の物理特性は、銅電解液の組成物、及び電着ステップ内の関連パラメータによって修正できる。例えば、ナノインデンテーション硬度、(111)面の特性ピークのFWHM、及び降伏強度は、限定はしないが、コラーゲン量、ナトリウムイオン量、不溶性陽極の陽極面の粗さによって修正できる。
【0033】
電解銅箔
実施例1から10:電解銅箔
実施例1から10の電解銅箔は、
図1の製造装置により、同様の電着ステップ、変色防止処理ステップによって生成した。実施例1から10の電解銅箔の生成方法は、以下に記載のとおりであった。
【0034】
最初に、電着ステップ内で使用される銅電解液を調製した。電着ステップの間、陰極ドラム11を固定軸上で一定速度で回転させ、陰極ドラム11と不溶性陽極12との間に電流を印加し、銅電解液13の銅イオンが、陰極ドラム11の表面上に電着し、生銅箔を形成するようにした。次に、生銅箔を陰極ドラム11から剥離させ、第1の案内ローラ31に案内した。
【0035】
ここで、銅電解液13の組成及び電着ステップのパラメータは、以下に記載のとおりであった:
I.銅電解液13の組成:
硫酸銅(CuSO4・5H2O):約280g/L、
硫酸:約90g/L、
塩化物イオン(Cl-):約20ppm、
3-メルカプト-1-プロパンスルホン酸ナトリウム(MPS、HOPAXから購入):約20ppm、
コラーゲン(分子量約2500Da):表1に示す濃度、及び
ナトリウムイオン(Na+):表1に示す濃度。
II.電着ステップのパラメータ:
銅電解液13の温度:約50℃、
陽極面のRz:表1に示すとおり、及び
電流密度:約50A/dm2。
【0036】
陽極面の前記Rzは、JIS B0601-1994によって規定される最大高さを対象とする。陽極面のRzを測定する機器及びパラメータは、以下に記載のとおりである:
I.測定機器:
小型表面粗さ測定機(接触モード)SJ-410、株式会社ミツトヨから購入。
II.測定パラメータ:
針先端半径:2μm、
針先端角度:60°、
カットオフ長さ(λc):0.8ミリメートル(mm)、及び
評価長さ:4mm。
【0037】
この後、生銅箔を第1の案内ローラ31及び第2の案内ローラ32によって変色防止処理機器20に搬送し、クロム変色防止処理溶液を充填した変色防止処理処理槽21に生銅箔を浸漬した。次に、生銅箔の2つの反対面は、第3の案内ローラ33の搬送を通じて2セットの陽極板211a及び211bによって変色防止処理を受け、生銅箔の2つの反対面上に第1の変色防止層及び第2の変色防止層が電着されるようにした。
【0038】
本明細書では、クロム変色防止溶液の組成及び変色防止処理のパラメータは、以下に記載のとおりである:
I.クロム変色防止溶液の組成:
クロム酸(CrO3):約1.5g/L、
II.変色防止処理のパラメータ:
溶液の温度:25℃、
電流密度:約0.5A/dm2、及び
処理時間:約2秒。
【0039】
変色防止処理が終了した後、変色防止処理された銅箔を第4の案内ローラ34に案内した。エアナイフ40によって、余分な変色防止物質を表面から除去し、変色防止処理された銅箔を乾燥させた。次に、上述の変色防止処理された銅箔を第5の案内ローラ35によって、第6の案内ローラ36の方に搬送し、最後に、電解銅箔50が得られ、第6の案内ローラ36上で巻き取った。
【0040】
上述の方法により、実施例1から8の約8μmの厚さの電解銅箔、実施例9の約6μmの厚さの電解銅箔、及び実施例10の約20μmの厚さの電解銅箔が得られた。実施例1から10の間の差は、電解銅箔の厚さ、銅電解液中のコラーゲン及びナトリウムイオンの濃度、並びに電着ステップにおける陽極面の粗さであった。
図2に示すように、各実施例の電解銅箔50は、銅層51(変色防止処理で処理されていない生銅箔に対応する)と、第1の変色防止層52と、第2の変色防止層53とを備える。銅層51は、電着側511と、電着側511の反対側のドラム側512とを備える。電着の間、電着側511は、不溶性陽極に面する生銅箔の表面であり、ドラム側512は、陰極ドラムと接触する生銅箔の表面であった。第1の変色防止層52は、銅層51の電着側511上に形成され、第1の変色防止層52は、最も外側に第1の面521を有する。第2の変色防止層53は、銅層51のドラム側512上に形成され、第2の変色防止層53は、最も外側に第2の面531を有する。第1の面521及び第2の面531は、電解銅箔50の2つの最も外側の面であり、互いに相対する。
【0041】
比較例1から6:電解銅箔
比較例1から6の電解銅箔は、実施例1から10を比較するために提供した。比較例1から6の電解銅箔を生成する方法は、銅電解液中のコラーゲン及びナトリウムイオンの濃度、及び陽極面のRzを除き、実施例1から10の方法と同様であった。パラメータは、表1に列挙した。更に、電解銅箔も
図2に示すものと同様の構造を有し、電解銅箔の全ては、8μmの厚さを有する。
【0042】
表1:実施例1から10(E1からE10)及び比較例1から6(C1からC6)の電解銅箔の厚さ、並びに調製における銅電解液中のコラーゲン及びナトリウムイオンの濃度、並びに陽極面のRz
【0043】
【0044】
試験例1:斜入射X線回折(GIXRD)
試験サンプルとして実施例1から10及び比較例1から6の電解銅箔は、斜入射X線回析実験を実施するため、X線回折計の使用によって測定した。第1の面の(111)面の特性ピークの半値全幅(FWHM)及び各試験サンプルの第2の面の(111)面の特性ピークのFWHMは、第1の面及び第2の面の表面構造を決定するTOPASソフトウェアを用いて得た。結果を以下の表2に列挙する。
【0045】
ここで、斜入射X線回折の機器及びパラメータは、以下に記載のとおりである:
I.測定機器:
X線回折計:Bruker D8 ADVANCE Eco.
II.測定パラメータ:
入射角:0.8°。
【0046】
試験例2:ナノインデンテーション硬度
ナノインデンテーション・システムを用いて、試験サンプルとして実施例1から10及び比較例1から6の電解銅箔を分析し、第1の面及び第2の面のナノインデンテーション硬度を得た。結果を表2に列挙する。
【0047】
ここで、ナノインデンテーション硬度を測定する機器及びパラメータは、以下に記載のとおりである:
I.測定機器:
ナノインデンテーション・システム:MTSナノインデンタXPWシステム、モデル:XPW291、及び
プローブ先端:50nm以下の曲率半径を有するBerkovichインデンタ
II.測定パラメータ:
通過速度:0.04mm/sec、及び
インデンテーション深さ:300nm。
【0048】
試験例3:降伏強度
試験サンプルとして、実施例1から10及び比較例1から6の電解銅箔をIPC-TM-650 2.4.4.18によって分析し、応力-ひずみ曲線を得た。X軸はひずみ(ε)であり、Y軸は応力(σ)である。Y軸に対する平行線は、0.5%のひずみで描かれ、降伏強度は、応力-ひずみ曲線と線との交差点に対応する応力によって決定された。結果を表2に列挙する。
【0049】
ここで、電解銅箔の降伏強度を測定する機器及びパラメータは、以下に記載のとおりである:
I.測定機器:
AG-I万能試験機、株式会社島津製作所から購入
II.測定パラメータ:
サンプルのサイズ:100mm(長さ)×12.7mm(幅)、
チャック距離:50mm、及び
クロスヘッド速度:50mm/分。
【0050】
試験例4:電解銅箔の歪み
案内ローラ上で巻き取り、収集した実施例1から10及び比較例1から6の上述の電解銅箔をそれぞれ、50センチメートル(cm)の長さで引っ張り、サンプル・ベンチ上に置いた。辺の一辺として引っ張り端部を含む試験片は、50cm×50cmのサイズで取った。各試験片は、歪み面を上向きにしてサンプル・ベンチ上に置いた。サンプル・ベンチの表面と、引っ張り端部の2つの隅との間の高さの差を定規を用いて測定し、2つの歪み値を得た。2つの歪み値のより大きい値を最大歪み値と表現した。結果を表2に列挙する。
【0051】
電極
実施例1Aから10A及び比較例1Aから6A:陰極
実施例1から10及び比較例1から6の第1の面及び第2の面はそれぞれ、リチウムイオン電池の陰極になる陰極活性物質を含む陰極スラリーで被覆した。詳細には、陰極は、以下のステップによって製造できた。
【0052】
最初に、陰極スラリーを調製した。陰極スラリーの組成は、以下に記載のとおりである:
中間相グラファイト粉体(MGP):93.9重量部、陰極活性物質として働く、
導電性カーボン・ブラック(Super P):1重量部、導電性添加剤として働く、
ポリフッ化ビニリデン(PVDF6020):5重量部、溶媒結合剤として働く、
シュウ酸:0.1重量部、及び
N-メチルピロリドン(NMP):60重量部。
【0053】
次に、各面に対して200μmの被覆厚さで陰極スラリーを電解銅箔のそれぞれの第1の面及び第2の面上に被覆し、次に、100℃のオーブンで15分間乾燥させ、水を事前に除去した。この後、陰極スラリーを被覆した電解銅箔をプレス加工機によってプレス加工し、プレス加工した電解銅箔を得た。プレス加工した電解銅箔の密度は、1立方センチメートル当たり1.5グラム(g/cm3)になった。プレス加工した電解銅箔を120℃で10時間加熱し、水を完全に除去し、最後に、実施例1Aから10A及び比較例1Aから6Aの陰極を得た。
【0054】
ここで、陰極のための被覆条件及びプレス加工条件は、以下に記載のとおりである:
I.被覆条件:
被覆速度:5メートル/min(m/min)、及び
被覆厚さ:各面で約200μm。
II.プレス加工条件:
プレス加工速度:1m/min、
プレス加工圧力:3000ポンド/平方インチ(psi)、
プレス加工機のローラのサイズ:250mm(外径、φ)×250mm(幅)、
ローラの硬度:62から65HRC、及び
ローラの材料:高炭素クロム軸受鋼(SUJ2)。
【0055】
リチウムイオン電池
実施例1Bから10B及び比較例1Bから6B:リチウムイオン電池
実施例1Bから10B及び比較例1Bから6Bのリチウムイオン電池はそれぞれ、実施例1Aから10A及び比較例1Aから6Aの陰極と同じ陽極とを組み合わせることによって調製した。説明の参考までに、上述の陰極の使用によりリチウムイオン電池を調製する工程は、以下で説明するとおりであった。
【0056】
最初に、陽極スラリーを調製した。陽極スラリーの組成は、以下に記載のとおりである:
LiCoO2:89重量部、陽極活性物質として働く、
フレーク状グラファイト(KS6):5重量部、導電性添加剤として働く、
導電性カーボン・ブラック(Super P):1重量部、導電性添加剤として働く、
ポリフッ化ビニリデン(PVDF1300):5重量部、溶媒結合剤として働く、
N-メチルピロリドン(NMP):195重量部。
【0057】
次に、陽極スラリーをアルミニウム箔の2つの表面上に被覆した。溶媒を蒸発させた後、陽極、及び実施例及び比較例から得た陰極のそれぞれを特定のサイズに切断し、次に、微孔性隔離体(モデル:Celgard 2400、Celgard Co.,Ltd.製造)を間に挟んで陽極及び陰極を交互に積層させ、次に、電解液を充填したプレス加工鋳型(モデル:LBC322-01H、Shenzhen Capchem Technology Co.,Ltd.から購入)内に置き、封止して積層リチウムイオン電池を生成した。積層リチウムイオン電池は、250mm×154mm×12mmのサイズであった。
【0058】
試験例5:耐性
耐性を評価するため、以下の条件下、実施例1Bから10B及び比較例1Bから6Bのリチウムイオン電池を400回の充放電サイクルで実施した。この後、リチウムイオン電池のそれぞれを分解し、中の陰極の電解銅箔を取り出した。陰極スラリーを除去した後の電解銅箔を更に洗浄し、150mm×12.7mmのサイズに切断した。洗浄した特定サイズの電解銅箔をMIT折曲げ試験のために試験片として使用した。試験例において、破断までに試験片が折曲げの繰返しに耐えた数によって耐性を評価した。400回の充放電サイクルの後の折曲げに対する耐久数の結果を表2に列挙する。
【0059】
ここで、充放電サイクル試験の条件は、以下に記載のとおりである:
充電モード:一定の電流定数電圧(CCCV)、
放電モード:一定電流(CC)、
充電電圧:4.2ボルト(V)、
充電電流:5C、
放電電圧:2.8V、
放電電流:5C、及び
試験温度:約55℃。
【0060】
ここで、MIT折曲げ試験の条件は、以下に記載のとおりである:
MIT耐折度試験機:HT-8636A、HUNGTAから購入。
折曲げ角度:135°、
折曲げ速度:1分当たり175回(CPM)、
曲率半径:0.38mm、
負荷:0.5キログラム、及び
チャック距離:92mm。
【0061】
表2:実施例1から10(E1からE10)及び比較例1から6(C1からC6)の第1の面及び第2の面の(111)面の特性ピークのFWHM、並びにこれらの間の絶対差(AD)、第1の面及び第2の面のナノインデンテーション硬度、並びにこれらの間の絶対差(AD)、降伏強度(σy)、最大歪み値(W最大)、及び電解銅箔に対する400回の充放電サイクル後の耐折数
【0062】
【0063】
上記表2で列挙したように、実施例1から10の電解銅箔は全て、(1)第1の面及び第2の面の(111)面の特性ピークのFWHMの適切な絶対差(0.14°未満)、(2)第1の面及び第2の面上での適切なナノインデンテーション硬度(0.3GPaから3.0GPa)、並びに(3)230MPa超の降伏強度という特徴を有するため、電解銅箔の歪みレベルは、効果的に抑制され、後続の工程における活性材料の被覆の質を改善できた。具体的には、実施例1から10の電解銅箔の最大歪み値を5mm未満に制御できた。そのような電解銅箔の使用によって作製したリチウムイオン電池は、400回の充放電サイクルの後、良好な耐性を呈することができた。即ち、400回の充放電を実施したリチウムイオン電池から得られた、実施例1から10の電解銅箔は、少なくとも50回の折曲げに耐えることができた。
【0064】
比較例1から6に関し、電解銅箔は、(1)第1の面及び第2の面の(111)面の特性ピークのFWHMの適切な絶対差、(2)第1の面及び第2の面上の適切なナノインデンテーション硬度、並びに(3)230MPa超の降伏強度という特徴の全てを有さなかったため、400回の充放電サイクルを実施したリチウムイオン電池から得た電解銅箔は、良好な機械的強度を有せず、したがって、40回の折曲げ工程に耐えることができなかった。比較例1から3の電解銅箔が5mm未満の最大歪み値を有した場合でさえ、400回の充放電サイクルを実施したリチウムイオン電池から得た電解銅箔は、40回の折曲げ工程の前に破断した。このことは、比較例1から3の電解銅箔が、充放電の繰返しに対して耐性が不十分であり、リチウムイオン電池に適さなかったことを示す。
【0065】
比較例1から6の試験結果を更に調査して以下の知見を得た。比較例1の電解銅箔は、230MPa未満の降伏強度を有した。したがって、400回の充放電サイクルを実施したリチウムイオン電池から得た電解銅箔は、破断前、23回の折曲げ工程に耐えたにすぎなかった。このことは、比較例1の電解銅箔が、充放電の繰返しに対して耐性が不十分であったことを示す。比較例2及び3に関し、電解銅箔はそれぞれ、第1の面に0.3GPaから3.0GPaの間の範囲外のナノインデンテーション硬度を有した。したがって、400回の充放電サイクルを実施したリチウムイオン電池から得た電解銅箔は共に、破断前、それぞれ36回及び38回の折曲げ工程に耐えた。このことも、これらの電解銅箔が、充放電の繰返しに対して不十分な耐性を呈したことを示す。比較例4及び6に関し、第1の面及び第2の面の(111)面の特性ピークのFWHMの絶対差は、0.14°を超えたため、電解銅箔の最大歪み値は5mmを超え、活性材料の被覆の質は低下した。更に、それぞれ400回の充放電サイクルを実施したリチウムイオン電池から得た比較例4及び6の電解銅箔は共に、破断前、19回及び8回の折曲げ工程に耐えたにすぎず、このことは、これらの電解銅箔が充放電工程の繰返しに対して不十分な耐性を呈したことを示す。比較例5に関し、第1の面及び第2の面の(111)面の特性ピークのFWHMの絶対差は、0.14°を超え、第1の面のナノインデンテーション硬度が0.3GPaから3.0GPaの間の範囲外であったため、電解銅箔の最大歪み値は5mmを超え、活性材料の被覆の質は低下した。更に、400回の充放電サイクルを実施したリチウムイオン電池から得た比較例5の電解銅箔は、破断前、12回の折曲げ工程に耐えたにすぎなかった。電解銅箔が、充放電工程の繰返しに対して不十分な耐性を呈したことは、明らかである。
【0066】
結論として、第1の面及び第2の面の(111)面の特性ピークのFWHMの絶対差、第1の面及び第2の面のナノインデンテーション硬度、並びに電解銅箔の降伏強度を制御することによって、充放電の繰返しに対して電解銅箔の耐性を改善し、歪みレベルを低減し、したがって、リチウムイオン電池の収率及び値を増大させることが有益である。
【0067】
本開示の多数の特性及び利点を、本開示の構造及び特徴の詳細と共に上記の説明で示してきたが、本開示は例示にすぎない。本開示の原理の範囲において、添付の特許請求の範囲が表現される用語の広範な一般的な意味によって示される全範囲まで、細部、特に、部品の材料、形状、サイズ、構成の点で変更を行い得る。
【要約】
【課題】電解銅箔及び電極とそれを用いたリチウムイオン電池を提供すること。
【解決手段】電解銅箔は、第1の面と、第1の面の反対側の第2の面とを有する。斜入射X線回折(GIXRD)によって分析した第1の面及び第2の面の(111)面の特性ピークの半値全幅(FWHM)の絶対差は、0.14
°未満であり、第1の面及び第2の面はそれぞれ、0.3GPa以上、3.0GPa以下のナノインデンテーション硬度を有し、電解銅箔の降伏強度は、230MPaを超える。これら2つの面の(111)面の特性ピークのFWHMの絶対差、これら2つの面のナノインデンテーション硬度、及び電解銅箔の降伏強度を制御することによって、電解銅箔は、充放電の繰返しに対して改善された耐性を有し、歪みを低減し、これにより、リチウムイオン電池の収率及び値を改善できる。
【選択図】
図1