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特許7377330スルホンアミド構造のキナーゼ阻害剤の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-31
(45)【発行日】2023-11-09
(54)【発明の名称】スルホンアミド構造のキナーゼ阻害剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 211/52 20060101AFI20231101BHJP
   C07C 311/14 20060101ALI20231101BHJP
   C07C 209/06 20060101ALI20231101BHJP
   C07D 231/12 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
C07C211/52
C07C311/14
C07C209/06
C07D231/12 C CSP
【請求項の数】 9
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022166520
(22)【出願日】2022-10-17
(62)【分割の表示】P 2019551696の分割
【原出願日】2018-03-22
(65)【公開番号】P2023011667
(43)【公開日】2023-01-24
【審査請求日】2022-10-17
(31)【優先権主張番号】20175272
(32)【優先日】2017-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】516207078
【氏名又は名称】アウリジーン オンコロジー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カルヤライネン、オスカリ
(72)【発明者】
【氏名】ピエチケイネン、ペッカ
【審査官】神谷 昌克
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-528469(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(V):
【化1】
式(IV):
【化2】
式(III):
【化3】
式(IIIb):
【化4】
または式(II):
【化5】
から選択される化合物。
【請求項2】
式(IV)の化合物
【化6】
の製造方法であって、
a)式(V)の2’,4’-ジフルオロ-[1,1’-ビフェニル]-3,5-ジアミン
【化7】
を4-ブロモ-2-フルオロニトロベンゼンと有機塩基およびオルガノシランの存在下で反応させて、式(IV)の化合物
【化8】
を得る工程、
b)工程a)で得られた生成物を有機酸で処理して形成された有機塩を単離する工程;
c)式(IV)の化合物をその塩の形態から放出する工程
を含む方法。
【請求項3】
工程a)において使用される有機塩基がN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)である請求項2記載の方法。
【請求項4】
工程a)において使用されるオルガノシランがエトキシトリメチルシランである請求項2または3記載の方法。
【請求項5】
工程b)において使用される有機酸がスルホン酸である請求項2~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
スルホン酸がメタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、o-トルエンスルホン酸、エタンスルホン酸またはベンゼンスルホン酸である請求項5記載の方法。
【請求項7】
スルホン酸がメタンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸である請求項6記載の方法。
【請求項8】
スルホン酸がメタンスルホン酸である請求項7記載の方法。
【請求項9】
工程c)が、有機塩基の存在下、有機溶媒中で塩を加熱することにより行われる請求項2~8のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スルホンアミド構造のキナーゼ阻害剤、すなわちN-(2’,4’-ジフルオロ-5-(5-(1-メチル-1H-ピラゾル-4-イル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾル-1-イル)-[1,1’-ビフェニル]-3-イル)シクロプロパンスルホンアミド(1A)およびその薬学的に許容され得る塩の改善された製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
式(1A)の化合物、N-(2’,4’-ジフルオロ-5-(5-(1-メチル-1H-ピラゾル-4-イル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾル-1-イル)-[1,1’-ビフェニル]-3-イル)シクロプロパンスルホンアミドおよびその誘導体は、特許文献1に開示されている。式(1A)の化合物およびその薬学的に許容され得る塩は、FGFR/VEGFRキナーゼファミリーの選択的な阻害剤であり、がんの治療に有用である。
【化1】
【0003】
特許文献1は、スキーム1にしたがい式(1A)の化合物の製造方法を開示している。
【化2】
【0004】
スキーム1の方法にはいくつかの欠点がある。4-ブロモ-1-フルオロ-2-ニトロベンゼンとの第1の反応工程は、厳しい条件、有害なフッ化水素の遊離、クロマトグラフィーによる生成物の精製の必要性および低い収率(45%)を伴う。NH4Cl/Znでのニトロ基の還元および続くHCOOHによる閉環による化合物(2’)の化合物(4’)へのその後の変換は、中間体化合物(3’)の単離を必要とする。化合物(5’)を得るための1-メチル-1H-ピラゾル-4-イル環の化合物(4’)への付加は、大量の高価なパラジウム触媒を必要とするが、その一方で収率はなお低くとどまる。また、化合物(6’)への加水分解反応とスルホンアミド結合を生み出す最後の工程は、低い収率に悩まされている。
【0005】
したがって、大規模に式(1A)の化合物を製造するのに好適なより経済的な方法が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2013/053983号
【発明の概要】
【0007】
今回、式(1A)の化合物が、実用的かつ経済的で大規模スケールでの使用に適した方法を用いて製造できることを見出した。特許文献1に記載された方法の欠点は、その大部分を回避することができる。
【0008】
したがって、本発明は、式(1A)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩
【化3】
の製造方法であって、
a)式(V)の2’,4’-ジフルオロ-[1,1’-ビフェニル]-3,5-ジアミン
【化4】
を4-ブロモ-2-フルオロニトロベンゼンと有機塩基およびオルガノシランの存在下で反応させて、式(IV)の化合物
【化5】
を得る工程、
b)工程(a)で得られた生成物を有機酸で処理して形成された有機塩を単離する工程;
c)式(IV)の化合物をその塩の形態から放出する工程;
d)(i)式(IV)の化合物をシクロプロパンスルホニルクロリドと反応させて式(III)の化合物
【化6】
を得、その後、式(III)の化合物を1-メチル-4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1H-ピラゾールと反応させるか、または
(ii)式(IV)の化合物を1-メチル-4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1H-ピラゾールと反応させて式(IIIb)
【化7】
を得、その後、式(IIIb)の化合物をシクロプロパンスルホニルクロリドと反応させるか
のいずれかにより、式(II)の化合物
【化8】
を得る工程;
e)式(II)の化合物をギ酸中、触媒の存在下で水素化し、式(1A)の化合物を得、任意にはその薬学的に許容され得る塩に変換する工程
を含む方法を提供する。
【0009】
別の実施態様において、本発明は、式(IV)の化合物
【化9】
の製造方法であって、
a)式(V)の2’,4’-ジフルオロ-[1,1’-ビフェニル]-3,5-ジアミン
【化10】
を4-ブロモ-2-フルオロニトロベンゼンと有機塩基およびオルガノシランの存在下で反応させて、式(IV)の化合物
【化11】
を得る工程、
b)工程(a)で得られた生成物を有機酸で処理して形成された有機塩を単離する工程;
c)式(IV)の化合物をその塩の形態から放出する工程
を含む方法を提供する。
【0010】
別の実施態様において、本発明は、式(1A)の化合物の製造における式(IV)の化合物の使用であって、式(IV)の化合物が上述の方法により製造される使用を提供する。
【0011】
別の実施態様において、本発明は、式(1A)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩
【化12】
の製造方法であって、
式(II)の化合物
【化13】
をギ酸中、触媒の存在下で水素化し、式(1A)の化合物を得、任意にはその薬学的に許容され得る塩に変換する工程
を含む方法を提供する。
【0012】
別の実施態様において、本発明は、式(V)、(IV)、(III)、(IIIb)および(II)の新しい中間体を提供する。
【0013】
別の実施態様において、本発明は、式(1A)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩の製造における、式(V)、(IV)、(III)、(IIIb)または(II)の中間体のいずれかの使用を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明によれば、式(V)の2’,4’-ジフルオロ-[1,1’-ビフェニル]-3,5-ジアミン
【化14】
は、まず、4-ブロモ-2-フルオロニトロベンゼンと有機塩基およびオルガノシランの存在下で反応させて、式(IV)の化合物
【化15】
を、抽出および蒸留工程なしで、かつクロマトグラフィーによる精製の必要もなく、高収率で得る。
【0015】
反応は、高温で、ジメチルスルホキシドなどの適切な溶媒中で実施される。有機塩基は、本技術分野において既知の任意の適切な有機塩基、例えばN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)とすることができる。反応は、反応中に発生する有害で腐食性の高いフッ化水素を排除するオルガノシラン化合物の存在下で好都合に実施されるということを見出した。任意の好適なオルガノシラン化合物を使用することができ、エトキシトリメチルシランが好ましい。反応は、80~110℃、例えば90~100℃などの高温で、反応が完了するまで、通常8時間未満、例えば5時間行われる。反応混合物は、その後冷却され、水およびメタノールが好適に添加され、生成物が例えば20℃で沈殿される。得られた式(IV)の化合物は、その後、例えばろ過、水およびメタノールでの洗浄、および減圧下、約60℃での乾燥により単離することができる。
【0016】
得られた式(IV)の化合物は、通常、式(V)の化合物が4-ブロモ-2-フルオロニトロベンゼンと2回反応する場合に生成される過剰反応生成物を含む。この過剰反応生成物は、式(IV)の化合物から単離することが難しく、方法の次の工程で問題となる。
【0017】
過剰反応生成物は、先に得られた式(IV)の化合物を有機酸で処理し、形成された有機塩を単離することにより好都合に除去することができることが見出された。適切な有機酸には、例えば、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、o-トルエンスルホン酸およびエタンスルホン酸またはベンゼンスルホン酸などのスルホン酸、安息香酸、酒石酸、フマル酸などが挙げられる。メタンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸が好ましく、メタンスルホン酸が最も好ましい。塩の形成は、化合物(IV)を好適な有機溶媒、例えばトルエンおよび2-ブタノンの混合物に溶解し、例えば約70~80℃に加熱することにより行われる。有機酸、例えばメタンスルホン酸は、その後、化合物(IV)に対して約1当量で加えることができ、その後、例えば約30~60分間撹拌することができる。混合物は、次いで、化合物(IV)の有機塩が沈殿し始める温度に冷却される。メタンスルホン酸が使用される場合、混合物は、約55~65℃に適切に冷却される。沈殿した塩は、その後、例えばろ過により回収することができる。
【0018】
化合物(IV)は、次いで、塩を適切な有機溶媒、例えばトルエンおよび2-ブタノンの混合物中で、例えば約70~80℃に加熱し、トリエチルアミンなどの有機塩基をその混合物に添加することにより、その塩の形態から放出することができる。化合物(IV)は、その後、混合物を、例えば約15~25℃に冷却することにより沈殿させることができる。いまや実質的に過剰反応生成物を含まない沈殿した化合物(IV)は、例えば、ろ過、2-プロパノールによる洗浄、および例えば約60℃の真空下での乾燥により単離することができる。
【0019】
化合物(IV)の化合物(II)への変換は、1-メチル-1H-ピラゾール基およびシクロプロパンスルホニル基の化合物(IV)の構造への付加を含む。これらの2つの工程は、任意の順序で連続的に実施することができる。よって、式(IV)の化合物の化合物(II)への変換は、(i)式(IV)の化合物をシクロプロパンスルホニルクロリドと反応させて式(III)の化合物
【化16】
を得、その後、式(III)の化合物を1-メチル-4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1H-ピラゾールと反応させるか;または
(ii)式(IV)の化合物を1-メチル-4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1H-ピラゾールと反応させて式(IIIb)
【化17】
を得、その後、式(IIIb)の化合物をシクロプロパンスルホニルクロリドと反応させるかのいずれかにより行うことができる。
【0020】
化合物(III)は、抽出および蒸留工程なしで、かつクロマトグラフィーによる精製の必要もなく得ることができる。化合物(IV)を、塩基、好都合にはピリジン(任意には、溶媒としても機能し得る)の存在下、任意には適切な溶媒、例えば酢酸エチルなどにおいて、シクロプロパンスルホニルクロリドと約10℃から約65℃の範囲の温度で処理することにより、化合物(III)を与える。化合物(III)は、酸、例えば酢酸、水およびエタノールまたは2-プロパノールの添加、混合物の、例えば約40~75℃への加熱、およびその後の例えば、約0~25℃への冷却により反応混合物から好適に沈殿させることができる。化合物(III)は、例えば、ろ過、水およびエタノールまたは2-プロパノールでの洗浄、および高温、例えば60℃で真空下での乾燥により単離することができる。
【0021】
化合物(II)は、抽出および蒸留工程なしで、かつクロマトグラフィーによる精製の必要もなく、化合物(III)を、好適な溶媒、例えば水およびDMSOの混合物などにおいて、塩基、触媒および活性炭の存在下、1-メチル-4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1H-ピラゾールと処理することにより得ることができる。好適な塩基には、炭酸カリウム、炭酸セシウムまたは炭酸ナトリウムなどの炭酸塩が挙げられ、炭酸カリウムが好ましい。好適な触媒には、トリフェニルホスフィンと錯化することのできる酢酸パラジウム(II)などのパラジウム触媒が挙げられる。典型的には、酢酸パラジウム(II)の0.0050~0.01当量が十分であることが見出された。反応混合物は、数時間、例えば4時間かけて約90~110℃に好ましく加熱され、その後、混合物を、例えば約75~85℃に冷却し、次いでエタノールを添加する。反応混合物はその後ろ過してもよい。ろ液を、例えば約55~65℃に冷却し、水を添加する。次いで、混合物を、例えば約0~10℃にさらに冷却し、沈殿した化合物(II)を、例えば、ろ過、水およびエタノールでの洗浄、および高温、例えば60℃で真空下での乾燥により単離することができる。
【0022】
化合物(IIIb)は、化合物(II)の製造について上述したのと同じ手順を用いて、化合物(IV)を1-メチル-4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1H-ピラゾールで処理することで得ることができる。
【0023】
化合物(II)は、化合物(III)の製造について上述したのと同じ手順を用いて、化合物(IIIb)をシクロプロパンスルホニルクロリドで処理することで化合物(IIIb)から得ることができる。
【0024】
最後に、化合物(II)は、化合物(II)をギ酸中、触媒の存在下で水素化することにより、アミノ基に還元されるニトロ基を有する中間体化合物を単離する必要なしに、式(1A)の化合物に直接変換することができる。好適な触媒には、5%パラジウム炭素などのパラジウム触媒が挙げられる。化合物(II)、ギ酸、および触媒を、窒素で不活化した反応器に入れ、次いで水素ガスを導入する。反応器を約30℃に加熱し、反応が完了するまで水素化を続ける。触媒をろ別し、ろ液を、例えば約100℃に加熱した。一部のギ酸は減圧下で留去することができる。その後、適切には、2-プロパノールおよび水を、約70℃よりも高い温度を維持しながら反応混合物に加える。化合物(1A)は、任意には結晶種を加え、混合物をゆっくりと、例えば約8~10時間のあいだ、約0℃に冷却することにより沈殿させることができる。化合物(1A)は、例えば、ろ過、2-プロパノールでの洗浄、および高温、例えば60℃で真空下での乾燥により単離することができる。
【0025】
得られた化合物(1A)は、典型的には、ギ酸との1:1溶媒和物の形態である。ギ酸は、溶媒和物を、例えば2-ブタノン、メタノール、酢酸エチル、トルエン、メチルtert-ブチルエーテルおよびジクロロメタンなどの好適な有機溶媒中で加熱することにより、式(1A)の化合物から除去することができる。例えば、溶媒和物を2-ブタノン中、約75℃で約2時間加熱し、混合物を冷却し、ろ過により沈殿を単離し、2-ブタノンで洗浄し、約60℃で真空下で乾燥し、ギ酸を含まない化合物(1A)を得た。
【0026】
必要な場合、化合物(1A)は、本技術分野において公知の方法でその薬学的に許容され得る塩に変換してもよい。
【0027】
出発化合物(V)
【化18】
は、例えば、
a)式(VII)の1-ブロモ-3,5-ジニトロベンゼン
【化19】
を2,4-ジフルオロフェニルボロン酸と、触媒、例えばパラジウム触媒、および塩基、例えばトリエチルアミンの存在下、好適な溶媒、例えばアセトニトリル-水溶媒中、高温で反応させることにより、式(VI)の2,4-ジフルオロ-3’,5’-ジニトロ-1,1’-ビフェニル
【化20】
を得;そして
b)式(VI)の化合物を、触媒、例えばパラジウム触媒の存在下、適切な溶媒、例えば酢酸エチル中で水素ガスにより水素化し、式(V)の化合物を得ること
により製造することができる。
【0028】
本発明は、さらに次の非限定的な実施例により説明される。
【実施例
【0029】
実施例1. 1-ブロモ-3,5-ジニトロベンゼン(VII)の製造
不活性化した(N2)フラスコに、濃硫酸(500mL)を加え、次いで1,3-ジニトロベンゼン(100g、1当量)を加えた。完全に溶解するまで塊(mass)を撹拌した。塊を15±5℃に冷却し、酢酸(200mL)を加えた。塊を0±5℃にさらに冷却した。1,3-ジブロモ-5,5-ジメチルヒダントイン(130.9g、0.77当量)を5等分して15分間隔で加えた。塊を1時間撹拌し、次いで25±5℃に数時間かけて温め、その後24時間撹拌した。
【0030】
別のフラスコに、5±5℃に冷却した水(1L)を加えた。反応塊を、<20℃の温度を維持しながら冷水に1~2時間かけて加えた。得られたスラリーを25±5℃で1時間撹拌した。生成物をろ過により回収し、水(500mL)で洗浄した。
【0031】
25±5℃でフラスコに水(1L)を入れ、次いで炭酸水素ナトリウム(100g)を入れ、完全に溶解するまで撹拌した。上記で得られた湿ったケーキを重炭酸塩溶液に入れた。塊を30~40分間撹拌した。生成物をろ過により回収し、水(500mL)で洗浄した。
【0032】
湿ったケーキを水(1L)と一緒にフラスコに戻した。塊を50±5℃に加熱し、1時間撹拌した。物質をろ過し、水(500mL)で洗浄し、そして真空オーブン中、45±5℃で乾燥し、135g(91.9%)の黄色の結晶性物質を99.4HPLCa-%の純度で得た。
【0033】
実施例2. 2,4-ジフルオロ-3’,5’-ジニトロ-1,1’-ビフェニル(VI)の製造
不活性化した(N2)フラスコにアセトニトリル(600mL)、水(10mL)およびトリエチルアミン(169.5mL、3当量)を入れた。1-ブロモ-3,5-ジニトロベンゼン(VII)(100g、1当量)を加え、塊を、窒素雰囲気下、70±5℃に加熱した。溶液を15±5℃に冷却する前に30分間撹拌した。2,4-ジフルオロフェニルボロン酸(76.7g、1.2当量)を加え、その後酢酸パラジウム(II)(1.28g、0.0047当量)を加えた。混合物を2時間加熱還流し(80~85℃)、5~6時間維持した。塊を25±5℃に冷却し、その後、ジエタノールアミン(68.1g、1.6当量)および水(550mL)を加えた。塊を1時間撹拌し、その後、固体をろ過により回収し、水(210mL)で洗浄した。粗生成物を真空オーブン中、45±5℃で6時間乾燥した。
【0034】
不活性化したフラスコに、アセトニトリル(210mL)および粗生成物を入れた。塊を加熱還流し(85±5℃)、30分間撹拌した。塊を3時間かけて25±5℃に冷却し、さらに1時間撹拌した。塊をろ過し、ヘキサン(100mL)で洗浄した。物質を45±5℃で真空オーブンにおいて乾燥し、86.0g(75.8%)の淡い黄色から茶色の結晶性物質を98.5HPLCa-%の純度で得た。
【0035】
実施例3. 2’,4’-ジフルオロ-[1,1’-ビフェニル]-3,5-ジアミン(V)の製造
酢酸エチル(1000mL)、2,4-ジフルオロ-3’,5’-ジニトロ-1,1’-ビフェニル(VI)(100g、1当量)およびPd/C(5g、10%Pd炭素、50%水ウェット)を不活性化した(N2)オートクレーブに入れた。系を窒素で数回フラッシュし、水素(5bar)を導入した。反応塊を40~45℃に加熱し、5~7時間撹拌した。反応完了後、系を窒素で完全にフラッシュし、系を25±5℃に冷却した。触媒をろ別し、酢酸エチル(250mL)で洗浄した。ろ液を水(2×700mL)で洗浄した。活性炭(5g、5重量%)を加え、混合物を1時間撹拌した。炭をろ別し、酢酸エチル(250mL)で洗浄した。酢酸エチルを真空下(T<45℃)で留去した。トルエン(200mL)を加え、真空下(T<45℃)で留去した。トルエン(200mL)を加え、混合物を40±5℃に加熱した。塊を10分間撹拌し、その後2時間かけて25℃±5℃に冷却した。生成物をろ過により回収し、トルエン(100mL)で洗浄した。生成物を45±5℃の真空オーブンで乾燥し、70.0g(89.0%)の黄色の結晶性物質を得た。
【0036】
実施例4. N3-(4-ブロモ-2-ニトロフェニル)-2’,4’-ジフルオロ-[1,1’-ビフェニル]-3,5-ジアミン(IV)の製造
【化21】
2で不活化したフラスコに、ジメチルスルホキシド(250mL)を加え、次いで2’,4’-ジフルオロ-[1,1’-ビフェニル]-3,5-ジアミン(V)(50g、1.0当量)を加えた。その後、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(9.79mL、0.3当量)、エトキシトリメチルシラン(38.7mL、1.1当量)および最後に4-ブロモ-2-フルオロニトロベンゼン(1.0当量)を順次加えた。浴温度を100℃(バッチ温度96~99℃)に調整し、暗赤色の溶液を5時間撹拌した。内容物を60±5℃に冷却し、その後、メタノール(250mL)を加えた。水(250mL)を40分かけてバッチ温度を60±5℃に保ちながら加えた。その後、塊を1時間かけて20±5℃に冷却し、次いでその温度で2~3時間さらに撹拌した。生成物をろ過により回収した。ケーキを水(200mL)で洗浄し、その後、メタノール(200mL)で洗浄した。生成物を60℃の真空オーブンで乾燥し、86.2g(92.5%)の赤れんが色の固体を93.9HPLCa-%の純度で得た。
【0037】
実施例5. N3-(4-ブロモ-2-ニトロフェニル)-2',4’-ジフルオロ-[1,1’-ビフェニル]-3,5-ジアミン(IV)のメシル酸塩中間体(IVb)の生成による精製
【化22】
2で不活化したフラスコに、トルエン(860mL)および2-ブタノン(430mL)を入れ、次いでN3-(4-ブロモ-2-ニトロフェニル)-2’,4’-ジフルオロ-[1,1’-ビフェニル]-3,5-ジアミン(IV)(87.4g、1.0当量)を加えた。混合物を75±5℃に加熱し、完全に溶解するまで撹拌した。メタンスルホン酸(14.86mL、1.1当量)を17分間かけて加えた。得られたオレンジ色のスラリーを40分間撹拌し、次いで60±5℃に冷却した。60分間撹拌した後、N3-(4-ブロモ-2-ニトロフェニル)-2’,4’-ジフルオロ-[1,1’-ビフェニル]-3,5-ジアミンメシル酸塩(IVb)をろ過により回収し、トルエン(160mL)で洗浄した。
【0038】
メシル酸塩(IVb)の湿ったケーキを不活化フラスコに2-プロパノール(570mL)およびトルエン(285mL)と一緒に入れた。粘性のスラリーを75±5℃に加熱した。その後、トリエチルアミン(31.9mL、1.1当量)を30分間かけて加えた。いまや鮮やかな赤色の塊を20±5℃に一晩冷却した。生成物をろ過により回収し、ケーキを氷冷2-プロパノール(85mL)で2回洗浄した。生成物を60℃で真空オーブンにおいて乾燥し、75.4g(86.3%)のN3-(4-ブロモ-2-ニトロフェニル)-2’,4’-ジフルオロ-[1,1’-ビフェニル]-3,5-ジアミン(IV)を99.95HPLCa-%の純度で得た。
【0039】
実施例6. N-(5-((4-ブロモ-2-ニトロフェニル)アミノ)-2’,4’-ジフルオロ-[1,1’-ビフェニル]-3-イル)シクロプロパンスルホンアミド(III)の製造
【化23】
2で不活化したフラスコに、乾燥ピリジン(110mL)を入れ、次いでN3-(4-ブロモ-2-ニトロフェニル)-2’,4’-ジフルオロ-[1,1’-ビフェニル]-3,5-ジアミン(IV)(36.4g)を入れた。赤色のスラリーを10±2度に冷却し、その後、シクロプロパンスルホニルクロリド(9.71mL、1.1当量)を10分かけて加えた。添加後、混合物を1時間撹拌し、その後さらに1時間20±5℃で撹拌した。いまや暗赤色の溶液に水(7.80mL、5当量)を加え、得られた混合物を30分間撹拌した。
【0040】
別のフラスコに、AcOH(127mL)、2-プロパノール(110mL)および水(145mL)を含む溶液を調製した。溶液を45±5℃に加熱し、N-(5-((4-ブロモ-2-ニトロフェニル)アミノ)-2’,4’-ジフルオロ-[1,1’-ビフェニル]-3-イル)シクロプロパンスルホンアミド(III)の種結晶を加えた。反応塊をこの混合物に45±5℃の温度を維持しながらゆっくりと加えた。その後、塊を70±5℃に加熱し、1時間撹拌し、次いで20±5℃に冷却した。生成物をろ過により回収し、2×100mLの水および45mLの氷冷2-プロパノールで洗浄した。生成物を60℃の真空オーブンで乾燥し、42.9g(94.5%)のオレンジの結晶性固体を98.4HPLCa-%の純度で得た。
【0041】
実施例7. N-(5-((4-ブロモ-2-ニトロフェニル)アミノ)-2’,4’-ジフルオロ-[1,1’-ビフェニル]-3-イル)シクロプロパンスルホンアミド(III)の製造(代替法)
窒素で不活化した1Lの反応容器に、酢酸エチル(210mL)、ピリジン(67.1mL、5当量)およびN3-(4-ブロモ-2-ニトロフェニル)-2’,4’-ジフルオロ-[1,1’-ビフェニル]-3,5-ジアミン(IV)(70g、1当量)を入れた。この粘度の高い塊にシクロプロパンスルホニルクロリド(20.37mL、1.2当量)を10分間かけて加えた。得られた混合物を60±2.5℃に加熱した。反応完了後(約4時間)、酢酸(氷酢酸、66.8mL、7当量)を加え、次いでエタノール(420mL)を加えた。水(175mL)を60±5℃の温度を保ちながらゆっくりと加えた。溶液に種を入れ、その後、2時間かけて40℃に冷却した。得られた塊を3時間かけて0℃に冷却し、ろ過の前に30分間撹拌した。ケーキを水(210mL)およびエタノール(210mL)で洗浄した。真空下(60℃)で乾燥した後、78.2gの鮮やかなオレンジ色の結晶性固体を99.8HPLCa-%の純度で得た。
【0042】
実施例8. 2’,4’-ジフルオロ-N3-(4-(1-メチル-1H-ピラゾル-4-イル)-2-ニトロフェニル)-[1,1’-ビフェニル]-3,5-ジアミン(IIIb)の製造
【化24】
2で不活化したフラスコに、ジメチルスルホキシド(140mL)および水(40mL)を入れた。この溶液に、N3-(4-ブロモ-2-ニトロフェニル)-2’,4’-ジフルオロ-[1,1’-ビフェニル]-3,5-ジアミン(IV)(20.0g、1当量)を加え、次いで炭酸カリウム(8.55g、1.3当量)、1-メチル-4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1H-ピラゾール(12.38g、1.25当量)および活性炭(2g、CN1)を加えた。得られた混合物を、圧力を100mbarに調節することにより数分間脱気し、窒素でフラスコを再度満たした。その手順を2回繰り返した。最終的に、酢酸パラジウム(II)(0.08g、0.0075当量)およびトリフェニルホスフィン(0.281g、0.0225当量)を加え、混合物を4時間かけて100±5℃に加熱した。100±5℃に達した後、混合物を80±5℃に冷却し、エタノール(60mL)を加えた。塊をろ過し、ケーキをエタノール(20mL)で洗浄した。
【0043】
ろ液の温度を80±5℃に調整し、水(80mL)を30分間かけて加えた。塊を30分間撹拌し、その後、20±5℃に冷却した。生成物をろ過により単離し、ケーキを水(40mL)およびエタノール(40mL)で洗浄した。生成物を60℃の真空オーブンにおいて乾燥し、20.55gの赤色固体を99.9HPLCa-%の純度で得た。
【0044】
実施例9. N-(2’,4’-ジフルオロ-5-((4-(1-メチル-1H-ピラゾル-4-イル)-2-ニトロフェニル)アミノ)-[1,1’-ビフェニル]-3-イル)シクロプロパンスルホンアミド(II)の化合物(III)からの製造
【化25】
2で不活化したフラスコに、ジメチルスルホキシド(600mL)および水(170mL)を入れた。この溶液に、N-(5-((4-ブロモ-2-ニトロフェニル)アミノ)-2’,4’-ジフルオロ-[1,1’-ビフェニル]-3-イル)シクロプロパンスルホンアミド(III)(85.0g、1当量)を加え、次いで炭酸カリウム(29.1g、1.3当量)、1-メチル-4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1H-ピラゾール(42.2g、1.25当量)および活性炭(8.5g、Norit CN1またはSX Ultra)を加えた。得られた混合物を、圧力を100mbarに調節することにより数分間脱気し、窒素でフラスコを再度満たした。その手順を2回繰り返した。最終的に、酢酸パラジウム(II)(0.27g、0.0075当量)およびトリフェニルホスフィン(0.96g、0.0225当量)を加え、混合物を4時間かけて100±5℃に加熱した。100±5℃に達した後、混合物を80±5℃に冷却し、エタノール(255mL)を加えた。塊をろ過し、ケーキをエタノール(85mL)で洗浄した。ろ液の温度を60±5℃に調整し、水(467mL)を1時間かけて加えた。塊を1時間撹拌し、その後、10℃/分で5±5℃に冷却した。生成物をろ過により単離し、ケーキを水(2×60mL)およびエタノール(2×85mL)で洗浄した。生成物を60℃の真空オーブンにおいて乾燥し、76.9g(90.2%)の赤色固体を98.3HPLCa-%の純度で得た。
【0045】
実施例10. N-(2’,4’-ジフルオロ-5-((4-(1-メチル-1H-ピラゾル-4-イル)-2-ニトロフェニル)アミノ)-[1,1’-ビフェニル]-3-イル)シクロプロパンスルホンアミド(II)の化合物(IIIb)からの製造
不活化したフラスコにピリジン(20mL)および2’,4’-ジフルオロ-N3-(4-(1-メチル-1H-ピラゾル-4-イル)-2-ニトロフェニル)-[1,1’-ビフェニル]-3,5-ジアミン(IIIb)(5g、1当量)を入れた。ゼリー状の塊を20mLのピリジンで希釈した。シクロプロパンスルホニルクロリド(1.33mL、1.1当量)を1分間かけて混合物に加えた。1時間後、さらに1.33mLのシクロプロパンスルホニルクロリドを加えた。さらに1時間撹拌した後、水(1.07mL、5当量)を加え、塊を15分間撹拌した。酢酸(20mL)を加え、混合物を45±5℃に加熱した。2-プロパノール(20mL)を加え、次いで水(20mL)を加えた。塊を20±5℃に冷却した。生成物をろ過により回収し、水(2×20mL)および2-プロパノール(20mL)で洗浄した。生成物を60℃の真空オーブンにおいて乾燥し、N-(2’,4’-ジフルオロ-5-((4-(1-メチル-1H-ピラゾル-4-イル)-2-ニトロフェニル)アミノ)-[1,1’-ビフェニル]-3-イル)シクロプロパンスルホンアミド(II)(5.65g、90.6%)を99.2a-%の純度で得た。
【0046】
実施例11. N-(2’,4’-ジフルオロ-5-(5-(1-メチル-1H-ピラゾル-4-イル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾル-1-イル)-[1,1’-ビフェニル]-3-イル)シクロプロパンスルホンアミド(1A)の製造
【化26】
反応容器を窒素で不活化し、ギ酸(280mL)、N-(2’,4’-ジフルオロ-5-((4-(1-メチル-1H-ピラゾル-4-イル)-2-ニトロフェニル)アミノ)-[1,1’-ビフェニル]-3-イル)シクロプロパンスルホンアミド(40g)および5%パラジウム炭素(4.86g、50%水-ウェット、0.015当量Pd)を入れた。窒素で完全に洗い流した後、水素を導入し(2bar)、反応容器の内容物を30±2℃に加熱した。暗赤色のスラリーは反応が進むにつれて完全に溶解した。液体が赤から無色に変わったら(4時間)、水素を窒素で置き換えることにより反応を止めた。触媒をろ別し、ろ液を100±5℃に1時間加熱した。
【0047】
120mLのギ酸を減圧下(100mbar、46℃)で留去した。2-プロパノール(106mL)を加え、溶液を80±5℃に加熱した。水(240mL)を、温度を>70℃に保ちながら加えた。溶液に種を入れ、混合物をまず、5℃/時で50℃まで、そしてその後10℃/時で20℃まで冷却した。塊を2時間かけて0±5℃にさらに冷却し、その後生成物をろ過により回収した。ケーキを2-プロパノール(50mL)で洗浄し、60℃で真空オーブンにおいて乾燥した。収量は37.4g(89.0%)であり、淡いベージュの着色された結晶性固体を99.51HPLCa-%の純度で得た。得られた化合物(1A)は、ギ酸との1:1の溶媒和物の形態であった。
【0048】
ギ酸を、2-ブタノン(98.4mL)と一緒にフラスコに入れることにより、1:1ギ酸溶媒和物(12.3g)から除去した。混合物を75℃に加熱し、2時間撹拌した。塊をRTに冷却し、その後、それをろ過し、2-ブタノン(12.3mL)で洗浄した。生成物を60℃の真空オーブンにおいて乾燥し、10.62g(94.2%)の化合物(1A)をオフホワイトの粉末として得た。化合物は1H-NMRによりギ酸を含まないものであった。