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特許7377343感光性エレメント、およびレジストパターンの形成方法
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  • 特許-感光性エレメント、およびレジストパターンの形成方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-31
(45)【発行日】2023-11-09
(54)【発明の名称】感光性エレメント、およびレジストパターンの形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20231101BHJP
   H05K 3/00 20060101ALI20231101BHJP
   H05K 3/06 20060101ALI20231101BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
G03F7/004 512
H05K3/00 F
H05K3/06 J
G03F7/20 521
G03F7/20 501
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022511165
(86)(22)【出願日】2021-04-02
(86)【国際出願番号】 JP2021014369
(87)【国際公開番号】W WO2021201288
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-05-10
(31)【優先権主張番号】P 2020067927
(32)【優先日】2020-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【弁理士】
【氏名又は名称】三間 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100190137
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 仁郎
(72)【発明者】
【氏名】加持 義貴
【審査官】川口 真隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-188612(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004
H05K 3/00
H05K 3/06
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持フィルム(A)、感光性樹脂組成物層(B)及び保護フィルム(C)をこの順で有する感光性エレメントであって、
JIS B0601-2001で規定される、前記支持フィルム(A)の前記感光性樹脂組成物層(B)と接する側の面の最大高さRzA1(nm)、反対側の面の最大高さRzA2(nm)、前記保護フィルム(C)の前記感光性樹脂組成物層(B)と接する側の面の最大高さRzC1(nm)、および反対側の面の表面粗さRzC2(nm)が、以下の(1)~(3):
(1)1<RzA173
(2)300<RzC1<600
(3)43.5<RzC2/RzA2
を満たすことを特徴とする、感光性エレメント。
【請求項2】
1<RzA2<200である、請求項1に記載の感光性エレメント。
【請求項3】
1.1<RzA2/RzA1<7である、請求項1または2に記載の感光性エレメント。
【請求項4】
1.1<RzC2/RzC1<10である、請求項1~3のいずれか一項に記載の感光性エレメント。
【請求項5】
50<RzC2/RzA2<100である、請求項1~4のいずれか一項に記載の感光性エレメント。
【請求項6】
前記支持フィルム(A)に含まれる、直径2μm以上5μm以下の粒子の個数が30個/30mm以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の感光性エレメント。
【請求項7】
前記支持フィルム(A)に含まれる、直径2μm以上5μm以下の粒子の個数が15個/30mm以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載の感光性エレメント。
【請求項8】
前記支持フィルム(A)に含まれる、直径2μm以上5μm以下の粒子の個数が10個/30mm以下である、請求項1~7のいずれか一項に記載の感光性エレメント。
【請求項9】
前記支持フィルム(A)に含まれるチタン元素含有量が1ppm以上20ppm以下である、請求項1~8のいずれか一項に記載の感光性エレメント。
【請求項10】
前記支持フィルム(A)の少なくとも片面に平滑化処理が施されている、請求項1~9のいずれか一項に記載の感光性エレメント。
【請求項11】
前記支持フィルム(A)の膜厚が5μm以上12μm以下である、請求項1~10のいずれか一項に記載の感光性エレメント。
【請求項12】
前記保護フィルム(C)の表面がポリプロピレン樹脂からなる、請求項1~11のいずれか一項に記載の感光性エレメント。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の感光性エレメントを巻回して成る、感光性エレメントの巻回体。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか一項に記載の感光性エレメントを基板に積層する積層工程、
該感光性エレメントの感光性樹脂組成物層を露光する露光工程、及び
該感光性樹脂組成物層の未露光部を現像除去する現像工程、を含む、レジストパターンの形成方法。
【請求項15】
前記露光工程を、投影露光方法により行う、請求項14に記載のレジストパターンの形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性エレメント、およびレジストパターンの形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パソコン又は携帯電話等の電子機器には、部品又は半導体などの実装用としてプリント配線板等が用いられる。プリント配線板等の製造用のレジストとしては、従来、支持フィルム上に感光性樹脂組成物層を積層し、さらに該感光性樹脂組成物層上に必要に応じて保護フィルムを積層して成る感光性エレメント(感光性樹脂積層体)、いわゆるドライフィルムレジストが用いられている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
このような感光性エレメントにおいて、解像性を向上するために、支持フィルムとして、露光する光を遮断する内部異物が少ない高品位フィルムが、好ましく用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-191648号公報
【文献】特開2019-188612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、高品位フィルムは表面粗さが小さいため、感光性樹脂組成物層と保護フィルムとを積層してロール状に巻き取る際、保護フィルムと接触する界面で摩擦力が高くなりすぎてシワを生じてしまう。
【0006】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、本発明の目的は、解像性の向上と、巻き取り時のシワの防止とを両立させた感光性エレメント、およびレジストパターンの形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、以下の技術的手段により上記課題を解決できることを見出した。
[1]
支持フィルム(A)、感光性樹脂組成物層(B)及び保護フィルム(C)をこの順で有する感光性エレメントであって、
JIS B0601-2001で規定される、前記支持フィルム(A)の前記感光性樹脂組成物層(B)と接する側の面の表面粗さRzA1(nm)、反対側の面の表面粗さRzA2(nm)、前記保護フィルム(C)の前記感光性樹脂組成物層(B)と接する側の面の表面粗さRzC1(nm)、および反対側の面の表面粗さRzC2(nm)が、以下の(1)~(3):
(1)1<RzA1<100
(2)300<RzC1<600
(3)40<RzC2/RzA2
を満たすことを特徴とする、感光性エレメント。
[2]
1<RzA2<200である、[1]に記載の感光性エレメント。
[3]
1.1<RzA2/RzA1<7である、[1]または[2]に記載の感光性エレメント。

[4]
1.1<RzC2/RzC1<10である、[1]~[3]のいずれかに記載の感光性エレメント。
[5]
50<RzC2/RzA2<100である、[1]~[4]のいずれかに記載の感光性エレメント。
[6]
前記支持フィルム(A)に含まれる、直径2μm以上5μm以下の粒子の個数が30個/30mm以下である、[1]~[5]のいずれかに記載の感光性エレメント。
[7]
前記支持フィルム(A)に含まれる、直径2μm以上5μm以下の粒子の個数が15個/30mm以下である、[1]~[6]のいずれかに記載の感光性エレメント。
[8]
前記支持フィルム(A)に含まれる、直径2μm以上5μm以下の粒子の個数が10個/30mm以下である、[1]~[7]のいずれかに記載の感光性エレメント。
[9]
前記支持フィルム(A)に含まれるチタン元素含有量が1ppm以上20ppm以下である、[1]~[8]のいずれかに記載の感光性エレメント。
[10]
前記支持フィルム(A)の少なくとも片面に平滑化処理が施されている、[1]~[9]のいずれかに記載の感光性エレメント。
[11]
前記支持フィルム(A)の膜厚が5μm以上12μm以下である、[1]~[10]のいずれかに記載の感光性エレメント。
[12]
前記保護フィルム(C)の表面がポリプロピレン樹脂からなる、[1]~[11]のいずれかに記載の感光性エレメント。
[13]
[1]~[12]のいずれかに記載の感光性エレメントを巻回して成る、感光性エレメントの巻回体。
[14]
[1]~[12]のいずれかに記載の感光性エレメントを基板に積層する積層工程、
該感光性エレメントの感光性樹脂組成物層を露光する露光工程、及び
該感光性樹脂組成物層の未露光部を現像除去する現像工程、を含む、レジストパターンの形成方法。
[15]
前記露光工程を、投影露光方法により行う、[14]に記載のレジストパターンの形成方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、解像性の向上と、巻き取り時のシワの防止とを両立させた感光性エレメント、およびレジストパターンの形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の感光性エレメントの一構成例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための実施の形態について詳細に説明する。
[感光性エレメント]
図1は、本発明の感光性エレメントの一構成例を模式的に示す断面図である。
本発明の感光性エレメントは、支持フィルム(A)、感光性樹脂組成物層(B)及び保護フィルム(C)をこの順で有する感光性エレメントであって、
JIS B0601で規定される、支持フィルム(A)の感光性樹脂組成物層と接する側の面の表面粗さRzA1(nm)、反対側の面の表面粗さRzA2(nm)、保護フィルム(C)の感光性樹脂組成物層と接する側の面の表面粗さRzC1(nm)、および反対側の面の表面粗さRzC2(nm)が、以下の(1)~(3):
(1)1<RzA1<100
(2)300<RzC1<600
(3)40<RzC2/RzA2
を満たすことを特徴とする。
【0011】
感光性エレメントの解像性を向上するためには、支持フィルム(A)として、露光する光を遮断する内部異物が少ない、高品位フィルムを用いることが好ましい。
高品位フィルムの特徴は、表面粗さが小さいこと、特に感光性樹脂組成物層(B)と接触する側の面の表面粗さが小さいことである。しかし、これらのフィルムを用いて感光性エレメントロール(ドライフィルムロール)を製造すると、保護フィルム(C)との摩擦力が高すぎて、ロール巻き取り時にシワを生じてしまう。したがって、ロール巻き取り時のシワの発生を防止するためには、保護フィルム(C)の、支持フィルム(A)と接触する側の面の表面粗さを大きくすることが挙げられる。
【0012】
上記2つの課題(解像性の向上、巻き取り時のシワの防止)の両立のためには、支持フィルム(A)については、表面粗さが小さく、感光性樹脂組成物層(B)と接触する側の面がさらに平滑であること、および、保護フィルム(C)については、感光性樹脂組成物層(B)と接触する側の面が平滑であり、もう一方の表面は粗化されていること、が重要である。すなわち、本発明者らは、支持フィルム(A)も保護フィルム(C)もある程度平滑でありながら、どちらも片面が粗化面である層構成が理想的であることに想到した。
【0013】
したがって、本発明者らは、支持フィルム(A)と保護フィルム(C)の表面がある程度平滑であり、かつ、支持フィルム(A)と保護フィルム(C)の表面粗さに差を設けることで、解像性の向上と、ロール状に巻き取る際のシワの発生の防止とを両立させた感光性エレメントを実現した。
【0014】
本発明では、式(1)~式(3)を用いて、上述の構成を規定した。式(1)~式(3)をすべて満たすことで、本発明の感光性エレメントは、良好な解像性を有するとともに、ロール状に巻き取る際のシワが好適に防止されたものとなる。
【0015】
なお、本明細書において、表面粗さは、JIS B0601-2001に規定される方法に基づいて測定した最大高さRzである。また、表面粗さの値は、レーザー式、触針式、光切断式、光干渉式等の通常の表面粗度測定器を使用して測定することができる。
【0016】
<支持フィルム(A)>
本実施形態に係る支持フィルム(A)は、感光性樹脂組成物層(B)を支持するための層又はフィルムであり、活性光線を透過させる透明な基材フィルムであることが好ましい。
【0017】
透明な基材フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂からなるフィルムが挙げられる。通常は適度な可とう性及び強度を有するポリエチレンテレフタレート(PET)が好ましく用いられる。
これらの中でも、内部異物が少ない高品位フィルムを用いることが好ましい。具体的には、高品位フィルムとして、Ti系触媒を用いて合成されたPETフィルム、滑剤の直径が小さく含有量の少ないPETフィルム、フィルムの片面のみ滑剤を含有するPETフィルム、薄膜PETフィルム、少なくとも片面に平滑化処理が施されたPETフィルム、少なくとも片面にプラズマ処理等の粗化処理が施されたPETフィルム等を用いることがより好ましい。
これにより、露光する光を、内部異物によって遮断されずに感光性樹脂組成物層(B)に照射することができ、感光性エレメントの解像性を向上することができる。
【0018】
内部異物として支持フィルム(A)に含まれる、直径2μm以上5μm以下の粒子の個数は、30個/30mm以下であることが好ましく、15個/30mm以下であることがより好ましく、10個/30mm以下であることがさらに好ましい。
【0019】
支持フィルム(A)に含まれる、チタン元素(Ti)含有量は1ppm以上20ppm以下であることが好ましく、2ppm以上12ppm以下であることがより好ましい。チタン元素の含有量が20ppm以下であれば、チタン元素含有凝集体に由来する内部異物の個数を低減することができ、解像性の低下を防止できる。
【0020】
支持フィルム(A)の膜厚は、5μm以上16μm以下であることが好ましく、6μm以上12μm以下であることがより好ましい。支持フィルムの膜厚は薄いほど内部異物の個数が少なくなり解像性の低下を防止できるが、膜厚が5μm未満になると、塗工・巻き取りの製造工程における、張力による巻き取り方向への伸び変形や微小な傷による破れを生じたり、フィルムの強度が不足しラミネート時にシワを生じたりする。
【0021】
支持フィルム(A)の少なくとも片面に、カレンダー装置等を用いた平滑化処理が施されていることが好ましい。これにより、支持フィルム(A)の片面、特に感光性樹脂組成物層(B)と接触する側の面の表面粗さを小さくして、本発明の効果をより優れたものとすることができる。
【0022】
支持フィルム(A)のヘーズは、感光性樹脂組成物層(B)へ照射される光線の平行度が向上し、感光性エレメントの露光現像後により高い解像性を得るという観点から、好ましくは0.01%~1.5%であり、より好ましくは0.01%~1.2%であり、更に好ましくは0.01~0.95%である。
【0023】
そして、本実施形態の感光性エレメントにおいて、支持フィルム(A)は、両面の表面粗さについて、以下の式(1)を満たす。
(1)1<RzA1<100、
ここで、RzA1は、支持フィルム(A)の感光性樹脂組成物層(B)と接する側の面の表面粗さ(nm)を示し、RzA2は、反対側の面の表面粗さ(nm)を示す。
式(1)は、支持フィルム(A)がどちらも平滑であるが、片面が粗化面であることを規定している。これにより感光性エレメントは解像性に優れたものとなる。
【0024】
RzA1およびRzA2は、上記式(1)を満たせば特に限定されないが、具体的に、RzA1は、10nm~70nmであることがより好ましい。RzA2は、RzA1に対する大小に関わらず、小さい値であればよい。具体的に、RzA2は、1nm<RzA2<200nmであることが好ましく、40nm~100nmであることが好ましく、50nm~90nmであることがより好ましい。また、RzA2/RzA1は、1.1<RzA2/RzA1<7であることが好ましく、1.2~5であることがより好ましい。
【0025】
<感光性樹脂組成物層(B)>
感光性樹脂組成物層(B)は、支持フィルム(A)上に積層される。本実施形態に係る感光性樹脂組成物層(B)としては、公知の感光性樹脂組成物層を使用してよい。通常、感光性樹脂組成物層は、次の成分:(i)アルカリ可溶性高分子、(ii)エチレン性不飽和二重結合含有成分(例えば、エチレン性不飽和付加重合性モノマー)、及び(iii)光重合開始剤を含む、感光性樹脂組成物から形成される。
【0026】
(i)成分であるアルカリ可溶性高分子は、アルカリ可溶性の観点から、カルボキシル基を有することが好ましい。また、硬化膜の強度及び感光性樹脂組成物の塗工性の観点から、アルカリ可溶性高分子は、その側鎖に芳香族基を有することも好ましい。
【0027】
アルカリ可溶性高分子の酸当量は、感光性樹脂組成物層の耐現像性、並びにレジストパターンの現像耐性、解像性及び密着性の観点から、100以上であることが好ましく、感光性樹脂組成物層の現像性及び剥離性の観点から、600以下であることが好ましい。より好ましくは250~550であり、更に好ましくは300~500である。
【0028】
アルカリ可溶性高分子の重量平均分子量は、ドライフィルムレジストの厚みを均一に維持し、現像液に対する耐性を得るという観点から、5,000~500,000の範囲内であることが好ましく、より好ましくは10,000~200,000であり、更に好ましくは18,000~100,000である。
本明細書では、重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレンの検量線を用いて測定した重量平均分子量のことである。アルカリ可溶性高分子の分散度は、1.0~6.0であることが好ましい。
【0029】
アルカリ可溶性高分子としては、例えば、カルボン酸含有ビニル共重合体、カルボン酸含有セルロース等が挙げられる。
【0030】
カルボン酸含有ビニル共重合体は、α、β-不飽和カルボン酸の中から選ばれる少なくとも1種の第1単量体と、アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミドとその窒素上の水素をアルキル基又はアルコキシ基に置換した化合物、スチレン及びスチレン誘導体、(メタ)アクリロニトリル、及び(メタ)アクリル酸グリシジルの中から選ばれる少なくとも1種の第2単量体とをビニル共重合して得られる化合物である。
【0031】
カルボン酸含有ビニル共重合体に用いられる第1単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、ケイ皮酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸半エステル等が挙げられる。これらの第1単量体は、それぞれ単独で用いてもよいし2種以上を組み合わせてもよい。
【0032】
カルボン酸含有ビニル共重合体における第1単量体の構成単位の含有割合は、共重合体の質量を基準として、15質量%以上40質量%以下、好ましくは20質量%以上35質量%以下である。その割合が15質量%未満であると、アルカリ水溶液による現像が困難になる。その割合が40質量%を超えると、重合中に第1単量体が溶媒に不溶となるため、共重合体の合成が困難になる。
【0033】
カルボン酸含有ビニル共重合体に用いられる第2単量体の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-ブトキシメチルアクリルアミド、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-クロロスチレン、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸グリシジル等が挙げられる。これらの第2単量体は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
カルボン酸含有ビニル共重合体における、第2単量体の構成単位の含有割合は、共重合体の質量を基準として、60質量%以上85質量%以下、好ましくは65質量%以上80質量%以下である。
【0035】
側鎖に芳香族基を導入するという観点から、第2単量体として、スチレン又は、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-クロロスチレン等のスチレン誘導体の構成単位をカルボン酸含有ビニル共重合体に含有させることがより好ましい。この場合、カルボン酸含有ビニル共重合体における、スチレン又はスチレン誘導体の構成単位の含有割合は、共重合体の質量を基準として、好ましくは5質量%以上35質量%以下、より好ましくは15質量%以上30質量%以下である。
【0036】
カルボン酸含有ビニル共重合体の重量平均分子量は、10,000~200,000の範囲内であり、好ましくは18,000~100,000の範囲内である。この重量平均分子量が10,000未満であると、硬化膜の強度が小さくなる。この重量平均分子量が200,000を超えると、感光性樹脂組成物の粘度が高くなりすぎて、その塗工性が低下する。
【0037】
カルボン酸含有ビニル共重合体は、各種の単量体の混合物を、アセトン、メチルエチルケトン、イソプロパノール等の溶剤で希釈した溶液に、過酸化ベンゾイル、アゾイソブチロニトリル等のラジカル重合開始剤を適量添加し、過熱攪拌することにより合成することが好ましい。混合物の一部を反応液に滴下しながら合成する場合もある。反応終了後、さらに溶剤を加えて、所望の濃度に調整する場合もある。その合成手段としては、溶液重合以外にも、塊状重合、懸濁重合及び乳化重合も用いられる。
【0038】
カルボン酸含有セルロースとしては、例えば、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシエチル・カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。アルカリ可溶性高分子(A)の含有量は、感光性樹脂組成物の全質量基準で、好ましくは30質量%以上80質量%以下、より好ましくは40質量%以上65質量%以下の範囲内である。この含有量が30質量%未満であると、アルカリ現像液に対する分散性が低下し、現像時間が著しく長くなる。この含有量が80質量%を超えると、感光性樹脂組成物層の光硬化が不十分となり、レジストとしての耐性が低下する。アルカリ可溶性高分子は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
(ii)成分であるエチレン性不飽和付加重合性モノマーとしては、公知の種類の化合物を使用できる。エチレン性不飽和付加重合性モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、フェノキシテトラエチレングリコールアクリレート、β-ヒドロキシプロピル-β’-(アクリロイルオキシ)プロピルフタレート、1,4-テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘプタプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、2-ジ(p-ヒドロキシフェニル)プロパンジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートの分子中にエチレンオキシド鎖、プロピレンオキシド鎖、テトラメチレンオキシド鎖の少なくとも一種を含む化合物、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートの分子中にエチレンオキシド鎖、プロピレンオキシド鎖、テトラメチレンオキシド鎖の少なくとも一種を含む化合物、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートの分子中にエチレンオキシド鎖、プロピレンオキシド鎖、テトラメチレンオキシド鎖の少なくとも一種を含む化合物、frトリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、4-ノルマルオクチルフェノキシペンタプロピレングリコールアクリレート、ビス(トリエチレングリコールメタクリレート)ノナプロピレングリコール、ビス(テトラエチレングリコールメタクリレート)ポリプロピレングリコール、ビス(トリエチレングリコールメタクリレート)ポリプロピレングリコール、ビス(ジエチレングリコールアクリレート)ポリプロピレングリコール、4-ノルマルノニルフェノキシヘプタエチレングリコールジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラプロピレングリコールテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、ビスフェノールA系(メタ)アクリル酸エステルモノマーの分子中にエチレンオキシド鎖、プロピレンオキシド鎖、テトラメチレンオキシド鎖の少なくとも一種を含む化合物などが挙げられる。エチレン性不飽和付加重合性モノマーは、エチレンオキシド鎖、プロピレンオキシド鎖、テトラメチレンオキシド鎖の少なくとも一種を含んでよい旨例示した上記化合物以外の化合物であっても、エチレンオキシド鎖、プロピレンオキシド鎖、テトラメチレンオキシド鎖の少なくとも一種のアルキレンオキシド鎖を含んでよい。
【0040】
また、エチレン性不飽和付加重合性モノマーとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルイレンジイソシアネートなどの多価イソシアネート化合物と、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、オリゴエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オリゴプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアクリレート化合物とのウレタン化化合物なども用いることができる。これらのエチレン性不飽和付加重合性モノマーはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
エチレン性不飽和付加重合性モノマーの含有量は、感光性樹脂組成物の全質量基準で、好ましくは20質量%以上70質量%以下、より好ましくは30質量%以上60質量%以下である。この含有量が20質量%未満であると、感光性樹脂の硬化が充分でなく、レジストとしての強度が不足する。一方、この含有量が70質量%を超えると、感光性エレメントがロール状で保存された場合に、ロール端面から感光性樹脂組成物層又は感光性樹脂組成物が徐々にはみだす現象、即ちエッジフュージョンが発生し易くなる。
【0042】
(iii)成分である光重合開始剤としては、例えば、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、ベンジルジプロピルケタール、ベンジルジフェニルケタール、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、チオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、2-フルオロチオキサントン、4-フルオロチオキサントン、2-クロロチオキサントン、4-クロロチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン[ミヒラーズケトン]、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノンなどの芳香族ケトン類;2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾリル二量体等のビイミダゾール化合物;9-フェニルアクリジン等のアクリジン類;α、α-ジメトキシ-α-モルホリノ-メチルチオフェニルアセトフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド等の芳香族系開始剤;フェニルグリシン、N-フェニルグリシン等のN-アリールアミノ酸類;1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-o-ベンゾイルオキシム、2,3-ジオキソ-3-フェニルプロピオン酸エチル-2-(o-ベンゾイルカルボニル)-オキシム等のオキシムエステル類;p-ジメチルアミノ安息香酸、p-ジエチルアミノ安息香酸及びp-ジイソプロピルアミノ安息香酸及びこれらのアルコールとのエステル化物、p-ヒドロキシ安息香酸エステルなどが挙げられる。その中でも、2-(o-クロロフェニル)-4、5-ジフェニルイミダゾリル二量体とミヒラーズケトン又は4,4’-(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンの組み合わせが好ましい。
【0043】
光重合開始剤の含有量は、感光性樹脂組成物の全質量基準で、好ましくは0.01質量%以上20質量%以下、より好ましくは1質量%以上10質量%以下である。この含有量が0.01質量%より少ないと、感度が十分でない。この含有量が20質量%を超えると、紫外線吸収率が高くなり、感光性樹脂組成物層の底の部分の硬化が不十分になる。
【0044】
本実施形態に係る感光性樹脂組成物層(B)の熱安定性及び/又は保存安定性を向上させる為に、感光性樹脂組成物又は感光性樹脂組成物層にラジカル重合禁止剤を含有させることは好ましい。ラジカル重合禁止剤としては、例えば、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシルベンゾアート フリーラジカル、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン 1-オキシル、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル等のTEMPO誘導体類、フェノチアジン、N,N-ジエチルヒドロキシルアミン、ナフチルアミン、N-(1-メチルヘプチル)-N‘-フェニル-p-フェニレンジアミン、4、4’-ジクミル-ジフェニルアミン等のアミン類、4-t-ブチルピロカテコール等のカテコール類、p-ベンゾキノン、ヒドロキノン、2-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノン、t-ブチルヒドロキノン、メチルヒドロキノン、2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノン等のキノン類、ジ-t-ブチル-7-フェニルキノンメチド等のキノンメチド類、クペロン、ジブチルジチオカルバミン酸銅(II)、N-ニトロソ-N-フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム等のキレート化合物類、2-tert-ブチル-4,6-ジメチルフェノール、ビス[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオン酸][エチレンビス(オキシエチレン)]、2,2’-メチレンビス[6-(1-メチルシクロヘキシル)-p-クレゾール、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、オクチル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロ肉桂酸、2,2-ビス[[[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル]オキシ]メチル]プロパン-1,3-ジオール1,3-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、p-メトキシフェノール、4,4’-ブチリデンビス(6-t-ブチル-3-メチルフェノール)等のフェノール誘導体類、ピロガロール、塩化第一銅等が挙げられる。
【0045】
本実施形態では、感光性樹脂組成物層(B)に染料、顔料等の着色物質が含有されていてもよい。着色物質としては、例えば、フクシン、フタロシアニングリーン、オーラミン塩基、カルコキシドグリーンS、パラマジェンタ、クリスタルバイオレット、メチルオレンジ、ナイルブルー2B、ビクトリアブルー、マラカイトグリーン、ベイシックブルー20、ダイヤモンドグリーン等が挙げられる。
【0046】
本実施形態では、光照射により発色する発色系染料を、感光性樹脂組成物層(B)に含有させてもよい。発色系染料としては、例えば、ロイコ染料とハロゲン化合物の組み合わせが知られている。ロイコ染料としては、例えば、トリス(4-ジメチルアミノ-2-メチルフェニル)メタン[ロイコクリスタルバイオレット]、トリス(4-ジメチルアミノ-2-メチルフェニル)メタン[ロイコマラカイトグリーン]等が挙げられる。ハロゲン化合物としては、例えば、臭化アミル、臭化イソアミル、臭化イソブチレン、臭化エチレン、臭化ジフェニルメチル、臭化ベンザル、臭化メチレン、トリブロモメチルフェニルスルホン、四臭化炭素、トリス(2,3-ジブロモプロピル)ホスフェート、トリクロロアセトアミド、ヨウ化アミル、ヨウ化イソブチル、1,1,1-トリクロロ-2,2-ビス(p-クロロフェニル)エタン、ヘキサクロロエタン等が挙げられる。
【0047】
本実施形態では、必要に応じて、可塑剤等の添加剤を感光性樹脂組成物層(B)に含有させてもよい。添加剤としては、例えば、ジエチルフタレート等のフタル酸エステル類、o-トルエンスルホン酸アミド、p-トルエンスルホン酸アミド、クエン酸トリブチル、クエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリ-n-プロピル、アセチルクエン酸トリ-n-ブチル、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールアルキルエーテル等が挙げられる。
【0048】
感光性樹脂組成物層(B)の厚みは、好ましくは、3~100μmであり、より好ましい上限は50μmである。感光性樹脂層の厚みが3μmに近づくほど、解像性は向上し、100μmに近づくほど、膜強度が向上するので、用途に応じて適宜選択することができる。
【0049】
<保護フィルム(C)>
保護フィルム(C)は、支持フィルム(A)と感光性樹脂組成物層(B)の積層体の感光性樹脂組成物層(B)側に積層され、カバーとして機能する。
【0050】
感光性樹脂組成物層(B)と支持フィルム(A)との密着力よりも、感光性樹脂組成物層(B)と保護フィルム(C)との密着力の方が充分小さいため、保護フィルム(C)は、感光性樹脂組成物層(B)から容易に剥離できる。例えば、ポリエチレンフィルム、及びポリプロピレンフィルム、延伸ポリプロピレンフィルム等が保護フィルム(C)として好ましく使用できる。保護フィルム(C)の少なくとも表面がポリプロピレン樹脂からなることがより好ましい。
保護フィルム(C)の膜厚は10~100μmが好ましく、10~50μmがより好ましい。保護フィルム(C)としては、例えば、王子エフテックス(株)製EM―501、E―200、E―201F、FG―201、MA―411、東レ(株)製KW37、2578、2548、2500、YM17S、タマポリ(株)製GF-18、GF-818、GF-858などを挙げる事が出来る。
【0051】
そして、本実施形態の感光性エレメントにおいて、保護フィルム(C)は、両面の表面粗さについて、以下の式(2)を満たす。
(2)300<RzC1<600
ここで、RzC1は、保護フィルム(C)の感光性樹脂組成物層(B)と接する側の面の表面粗さ(nm)を示す。
式(2)は、保護フィルム(C)の感光性樹脂組成物層(B)に接する側の表面粗さが小さいことを規定している。これにより感光性エレメントは解像性に優れたものとなる。
さらに、1.1<RzC2/RzC1<10であることが好ましい。
ここで、RzC2は、保護フィルム(C)の感光性樹脂組成物層(B)と接する側とは反対側の面の表面粗さ(nm)を示す。
【0052】
RzC1およびRzC2は、上記式(2)を満たせば特に限定されないが、具体的に、RzC1は、350nm~550nmであることが好ましい。RzC2は、400nm~5500nmであることが好ましく、450nm~4500nmであることがより好ましい。また、RzC2/RzC1は、1.5~9.0であることがより好ましい。
【0053】
さらに、本実施形態の感光性エレメントにおいて、支持フィルム(A)と保護フィルム(C)は、両面の表面粗さについて、以下の式(3)を満たす。
(3)40<RzC2/RzA2
ここで、RzA2は、支持フィルム(A)の感光性樹脂組成物層(B)と接する側とは反対側の面の表面粗さ(nm)を示し、RzC2は、保護フィルム(C)の感光性樹脂組成物層(B)と接する側とは反対側の面の表面粗さ(nm)を示す。
式(3)は、感光性樹脂組成物層(B)と接する側とは反対側の面において、支持フィルム(A)の表面粗さと、保護フィルム(C)の表面粗さとに一定以上の差があることを規定している。これにより、感光性エレメントをロール状に巻き取る際のシワの発生が好適に防止される。
【0054】
RzC2/RzA2の上限値は、好ましくは100未満であり、50<RzC2/RzA2<100であることがより好ましい。RzC2/RzA2は、40~80であることがさらに好ましい。
【0055】
上述した式(1)~式(3)をすべて満たすことで、本発明の感光性エレメントは、良好な解像性を有するとともに、ロール状に巻き取る際のシワの発生が好適に防止されたものとなる。
【0056】
[感光性エレメントロール]
上記で説明された感光性エレメントが巻回されている感光性エレメントロールも本発明の一態様である。
【0057】
感光性エレメントは長尺状で巻芯に巻き取られてロール状となり使用される。巻き長は、特に限定されないが、ロールの重量と取扱いやすさの観点から320m以下が好ましい。1本の感光性エレメントロールでラミネートできる基材が多いと効率が良いので、生産性の観点から巻き長は100m以上が好ましい。
【0058】
(巻芯)
巻芯は、コアとも呼ばれることがある。その形状は特に限定されないが、円筒状であっても、円柱状であってもよい。感光性エレメントはエッチングまたはめっきレジスト、さらには永久パターンとして電子材料に使用されるため、発塵しない処理が施されたものが好ましく、プラスチック樹脂製が好ましい。プラスチック樹脂の素材は、軽く、強度に優れ、発塵しないものが好ましい。このようなプラスチック樹脂としては、例えば、ポリプロピレン(PP)樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂、ナイロン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などが使用可能であり、ABS樹脂が好ましい。巻芯の直径は、特に限定されないが、感光性エレメントロールがラミネーターに装着される場合に、装置に取り付けられるよう、好ましくは2~5インチ、より好ましくは3インチの直径である。巻芯の長さ(円筒状、又は円柱状の巻芯を用いる場合にはその軸方向長さ)は、感光性エレメントの幅と対比して同じ、或いは短くてもよい。ただし、感光性エレメントを巻き取った際に両側に適度な張り出し部が確保できるように、巻芯の長さは、感光性エレメントの幅よりも大きな長さであることが好ましい。この張り出し部に挿通するようにリング状シートが取り付けられるため好ましい。またこの張り出し部にコアホルダーと呼ばれる軸受を嵌合することで、感光性エレメントロールが移動しないよう、宙吊り状態で保管することもできる。
【0059】
感光性エレメントロールは、ロール端面保護部材が、巻き取られた感光性エレメントの端面(前記帯状の感光性エレメントの幅方向端部側)に接触するように配されていてもよい。
【0060】
特に、本実施形態の感光性エレメントロールでは、支持フィルム(A)と保護フィルム(C)の両面の表面粗さが、上述したように規定されているので、巻き取り時のシワが好適に防止される。また、支持フィルム(A)と保護フィルム(C)の間の摩擦力を適切な範囲に保つことにより、ロールを地面に対して垂直に保管した際に巻きずれが生じ難くなる。更に、使用する際も過度な摩擦によるロール表面の帯電が発生し難いため、ホコリやゴミの付着を防止し易くなる。
【0061】
本実施形態に係る感光性エレメント又はそのロールを用いるレジストパターンの形成方法は、以下の工程:
感光性エレメントを基板に積層する積層工程;
感光性エレメントの感光性樹脂組成物層を露光する露光工程;及び
感光性樹脂組成物層の未露光部を現像除去する現像工程;
を、好ましくはこの順に、含む。
【0062】
ラミネート工程では、具体的には、感光性エレメントから保護フィルム(C)を剥離した後、ラミネーターで感光性樹脂組成物層を支持体(例えば、基板)表面に加熱圧着し、1回又は複数回ラミネートする。基板の材料としては、例えば、銅、ステンレス鋼(SUS)、ガラス、酸化インジウムスズ(ITO)等が挙げられる。ラミネート時の加熱温度は一般に40℃~160℃である。加熱圧着は、二連のロールを備えた二段式ラミネーターを使用するか、又は基板と感光性樹脂組成物層との積層物を数回繰り返してロールに通すことにより行なわれることができる。
【0063】
露光工程では、露光機を用いて感光性樹脂組層を活性光に露光する。露光は、所望により、支持体を剥離した後に行うことができる。フォトマスクを通して露光する場合には、露光量は、光源照度及び露光時間により決定され、光量計を用いて測定してもよい。露光工程では、ダイレクトイメージング露光を行なってもよい。ダイレクトイメージング露光においては、フォトマスクを使用せず基板上に直接描画装置によって露光する。光源としては、波長350nm~410nmの半導体レーザー又は超高圧水銀灯が用いられる。描画パターンがコンピューターによって制御される場合、露光量は、露光光源の照度及び基板の移動速度によって決定される。
【0064】
露光工程で使用する光照射方法は、投影露光法、プロキシミティー露光法、コンタクト露光法、ダイレクトイメージング露光法、電子線直描法から選択される少なくとも1種類の方法であることが好ましく、投影露光方法により行うことがより好ましい。
【0065】
現像工程では、露光後の感光性樹脂組成物層における未露光部又は露光部を、現像装置を用いて現像液により除去する。露光後、感光性樹脂組成物層上に支持フィルムがある場合には、これを除く。続いてアルカリ水溶液から成る現像液を用いて、未露光部又は露光部を現像除去し、レジスト画像を得る。
【0066】
アルカリ水溶液としては、NaCO、KCO等の水溶液が好ましい。アルカリ水溶液は、感光性樹脂組成物層の特性に合わせて選択されるが、0.2質量%~2質量%の濃度のNaCO水溶液が一般的に使用される。アルカリ水溶液中には、表面活性剤、消泡剤、現像を促進させるための少量の有機溶剤等を混ぜてもよい。現像工程における現像液の温度は、20℃~40℃の範囲内で一定に保たれることが好ましい。
【0067】
上記の工程によってレジストパターンが得られるが、所望により、さらに60℃~300℃で加熱工程を行うこともできる。この加熱工程を実施することにより、レジストパターンの耐薬品性を向上させることができる。加熱工程には、熱風、赤外線、又は遠赤外線を用いる方式の加熱炉を用いることができる。
【0068】
導体パターンを得るために、現像工程又は加熱工程後、レジストパターンが形成された基板をエッチング又はめっきする導体パターン形成工程を行なってもよい。
【0069】
導体パターンの製造方法は、例えば、基板として金属板又は金属皮膜絶縁板を用い、上述のレジストパターン形成方法によってレジストパターンを形成した後に、導体パターン形成工程を経ることにより行われる。導体パターン形成工程においては、現像により露出した基板表面(例えば、銅面)に既知のエッチング法又はめっき法を用いて導体パターンを形成する。
【0070】
さらに、上述した導体パターンの製造方法により導体パターンを製造した後に、現像液よりも強いアルカリ性を有する水溶液を用いて、レジストパターンを基板から剥離する剥離工程を行うことにより、所望の配線パターンを有する配線板(例えば、プリント配線板)を得ることができる。
【0071】
剥離用のアルカリ水溶液(以下、「剥離液」ともいう)については、特に制限されるものではないが、2質量%~5質量%の濃度のNaOH又はKOHの水溶液、もしくは有機アミン系剥離液が一般に用いられる。剥離液には少量の水溶性溶媒を加えてよい。水溶性溶媒としては、例えば、アルコール等が挙げられる。剥離工程における剥離液の温度は、40℃~70℃の範囲内であることが好ましい。
【0072】
本実施形態では、感光性エレメント又はそのロールは、プリント配線板の製造;ICチップ搭載用リードフレーム製造;メタルマスク製造等の金属箔精密加工;ボール・グリッド・アレイ(BGA)、チップ・サイズ・パッケージ(CSP)等のパッケージの製造;チップ・オン・フィルム(COF)、テープオートメイテッドボンディング(TAB)等のテープ基板の製造;半導体バンプの製造;及びITO電極、アドレス電極、電磁波シールド等のフラットパネルディスプレイの隔壁の製造に利用されることができる。
なお、上述した各パラメータの値については特に断りのない限り、後述する実施例での測定方法に準じて測定される。
【実施例
【0073】
次に、実施例及び比較例を挙げて本実施の形態をより具体的に説明する。しかしながら、本実施の形態は、その要旨から逸脱しない限り、以下の実施例に限定されるものではない。実施例中の物性は以下の方法により測定した。
【0074】
[表面粗さの測定]
支持フィルムおよび保護フィルムについて、表面粗さを測定した。ガラス板に水を一滴垂らした上に、各フィルムの測定面を上にして貼り付けたものを測定サンプルとした。
表面粗さの測定は、JIS B0601-2001に規定される方法に基づいて、レーザー式の顕微鏡であるオリンパス(株)社製の商品名「LEXT OLS4100」を用いて、任意の10か所における、測定長258μmで測定したRzの値の平均値を、最大高さRz(nm)とした。なお、測定時の温度は23~25℃とした。
支持フィルムの感光性樹脂組成物層と接する側の面の表面粗さをRzA1、反対側の面の表面粗さをRzA2、保護フィルムの感光性樹脂組成物層と接する側の面の表面粗さをRzC1、反対側の面の表面粗さをRzC2とした。
【0075】
[直径2μm以上5μm以下の粒子の個数の測定]
レーザー式の顕微鏡であるオリンパス(株)社製の商品名「LEXT OLS4100」の対物レンズの上部に偏光フィルター(OLS4000-QWP)を挿入した。次にレーザー顕微鏡のステージ上に(株)ユニバーサル技研社製の多孔質吸着板「65F-HG」及び真空ポンプを用いて、30mm×30mmに切断した支持フィルムサンプルを水平に吸引固定した。吸引固定した支持フィルムを、対物レンズ50倍のレーザー光量60(レーザー波長は405nm)にて観察した。この際、支持フィルムの表裏表面の反射光によるハレーションを起こさないよう、支持フィルム厚み方向の中心2μmの領域を測定区間に定めた。そして、測定領域260μm×260μm、測定箇所数49点で計測を行った。計測は任意の異なる箇所で9回繰り返して行った。
計測した画像を2値化=閾値以上、閾値1=10%、小粒子除去=15、穴埋め=20の条件で処理することにより、ヒストグラムを作成した。ヒストグラムの最大径(μm)が2以上5以下の粒子の個数を合算することにより、直径2μm以上5μm以下の粒子の個数を算出した。
【0076】
[チタン元素含有量の測定]
支持フィルム中のチタン元素含有量の測定は、蛍光X線分析装置である(株)島津製作所社製の商品名「XRF-1800」を用いて、定量分子TiO、X線管ターゲットRh(4.0kW)、電圧40kV、電流95kA、分光結晶LiF、検出器SC、2θ=86.14deg、測定時間40秒の条件で行った。
【0077】
[評価用サンプルの作製方法]
評価用サンプルは以下のように作製した。
<感光性エレメントの作製>
(実施例1~7、比較例1~8)
後掲する表1に示す成分(但し、各成分の数字は固形分としての配合量(質量部)を示す。)及び、固形分濃度55%になるように計量したメチルエチルケトンを十分に攪拌、混合して、感光性樹脂組成物調合液を得た。表1中に示した成分の詳細を表2に示している。次いで、幅500mmの支持フィルムの表面に、感光性樹脂組成物調合液の溶液を塗布し、90℃の熱風で1分間に亘って乾燥させることにより、感光性樹脂組成物層を形成した。その際、加熱後の感光性樹脂組成物層の厚さが5μmとなるようにした。さらに、感光性樹脂組成物層の、支持フィルムを積層していない側の表面上に、保護フィルムを貼り合わせて感光性エレメントを得た。さらに、感光性エレメントを外径3.5インチの円筒状プラスチック管に巻き付け、巻き軸幅方向に対して平行に配置された加圧ロールを用いて、プラスチック管に対し線状に圧力を掛け、7kgの張力で500m巻き取って、感光性エレメントのロールを得た。
実施例および比較例でそれぞれ用いた支持フィルムの種類と物性を表3に、保護フィルムの種類と物性を表4に示す。
【0078】
<基板整面>
画像性の評価基板として、35μm圧延銅箔を積層した0.4mm厚の銅張積層板を、メックエッチボンドCZ-8101(メック(株)製)に浸漬し、エッチング量が1μmになるまで粗化処理を行った。
【0079】
<ラミネート>
感光性エレメントの保護フィルムを剥がしながら、50℃に予熱した画像性の評価基板に、ホットロールラミネーター(旭化成(株)製、AL-700)により、感光性エレメントをロール温度105℃でラミネートすることで、感光性エレメント積層体を得た。エアー圧は0.35MPaとし、ラミネート速度は1.5m/minとした。
【0080】
<露光>
ラミネート後2時間経過した感光性エレメント積層体の支持フィルム表面側に、分割投影露光装置(ウシオ電機(株)製、UX7―Square70)により、露光部と未露光部の幅が1:1の比率のラインパターンを有する露光マスクを用いて、露光した。露光は、前記露光部と未露光部の幅が1:1の比率のラインパターンを露光、現像したとき、露光マスクの露光部=未露光部=5μmである箇所における現像後の感光性樹脂組成物パターンの露光部と未露光部の実測幅が5μmとなる露光量で行った。
【0081】
<現像>
感光性エレメント積層体の支持フィルムを剥離した後、アルカリ現像機((株)フジ機工製、ドライフィルム用現像機)を用い、30℃の1質量%NaCO水溶液を所定時間に亘ってスプレーして現像を行った。現像スプレーの時間は、最短現像時間の2倍の時間とし、現像後の水洗スプレーの時間は、最短現像時間の2倍の時間とした。この際、未露光部分の感光性樹脂組成物層が完全に溶解するのに要する最も短い時間を最短現像時間とした。
【0082】
[評価]
得られた感光性エレメントに対し、巻き取り時のシワ、および解像性について、以下のようにして評価を行った。
【0083】
<巻き取り時のシワ>
得られた感光性エレメントのロールを目視で観察し、次の基準に沿って評価を行った。
優:ロールにシワが無い
良:ロールにシワがあるが、3日間保管後に消失した
可:ロールにシワがあるが、7日間保管後に消失した
不可:ロールにシワがあり、7日間保管後も消失しなかった
【0084】
<解像性>
上述の露光工程において、露光部と未露光部の幅が1:1の比率のラインパターンを有する露光マスクを使用して露光した。上述の現像条件に従って現像し、硬化レジストラインがかぶっていたり、倒れていたりすることなく正常に形成されている最小ライン幅を光学顕微鏡により評価し、次の基準に沿って評価を行った。可以上であれば合格とした。
優:3μm以下
良:3μm超4μm以下
可:4μm超5μm以下
不可:5μm超
【0085】
各実施例の感光性エレメントについての評価結果を表5に、各比較例の感光性エレメントについての評価結果を表6に示す。
【0086】
【表1】
【0087】
【表2】
【0088】
【表3】
【0089】
【表4】
【0090】
【表5】
【0091】
【表6】
【0092】
表5から明らかなように、上述した式(1)~(3)のすべてを満たす実施例では、優れた解像性を有するともに、ロール状に巻き取る際のシワの発生が好適に防止できていることがわかった。
【0093】
これに対し、表6に示すように、式(1)を満たさない場合、すなわち、RzA1が100より大きい場合、解像性が低下した。
また、式(2)を満たさない場合、すなわち、RzC1が300以下または600以上である場合、解像性が十分ではないか、または巻き取り時にシワの発生がみられた。
また、式(3)を満たさない場合、すなわち、RzC2/RzA2が40以下である場合、解像性が十分ではなく、また巻き取り時にシワの発生もみられた。
【0094】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明による感光性エレメントを用いることで、解像性の向上と、巻き取り時のシワの防止とが両立されたものとなり、レジストパターンの形成におけるドライフィルムレジストとして広く利用することができる。
図1