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特許7377344共役ジエン系重合体、共役ジエン系重合体の製造方法、共役ジエン系重合体組成物、及びゴム組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-31
(45)【発行日】2023-11-09
(54)【発明の名称】共役ジエン系重合体、共役ジエン系重合体の製造方法、共役ジエン系重合体組成物、及びゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   C08C 19/00 20060101AFI20231101BHJP
   C08C 19/22 20060101ALI20231101BHJP
   C08C 19/25 20060101ALI20231101BHJP
   C08F 236/10 20060101ALI20231101BHJP
   C08F 236/14 20060101ALI20231101BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20231101BHJP
   C08L 15/00 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
C08C19/00
C08C19/22
C08C19/25
C08F236/10
C08F236/14
C08K3/013
C08L15/00
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022511166
(86)(22)【出願日】2021-04-02
(86)【国際出願番号】 JP2021014381
(87)【国際公開番号】W WO2021201289
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-09-12
(31)【優先権主張番号】P 2020067842
(32)【優先日】2020-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020068843
(32)【優先日】2020-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】牛尾 孝顕
(72)【発明者】
【氏名】当房 崇吏
(72)【発明者】
【氏名】久村 謙太
(72)【発明者】
【氏名】角谷 省吾
(72)【発明者】
【氏名】関川 新一
(72)【発明者】
【氏名】荒木 祥文
【審査官】堀内 建吾
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/044921(WO,A1)
【文献】特開2020-037676(JP,A)
【文献】特表2015-500374(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08C 19/00
C08F 236/10
C08F 236/14
C08K 3/013
C08L 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘度検出器付きGPC-光散乱法測定法による分岐度が7以上であり、
結合芳香族ビニル量が1質量%以上30質量%以下であり、
結合共役ジエン中のビニル結合量が11mol%以上35mol%以下である、
共役ジエン系重合体。
【請求項2】
記結合共役ジエン中のビニル結合量が11mol%以上30mol%以下である、請求項1に記載の共役ジエン系重合体。
【請求項3】
窒素原子を有する、請求項1又は2に記載の共役ジエン系重合体。
【請求項4】
珪素原子を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の共役ジエン系重合体。
【請求項5】
変性基を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の共役ジエン系重合体。
【請求項6】
前記変性基が窒素原子を有し、
前記共役ジエン系重合体の変性率が70質量%以上である、請求項5に記載の共役ジエン系重合体。
【請求項7】
3分岐以上の星形高分子構造を有し、
前記星形高分子構造の少なくとも1つの分岐鎖は、アルコキシシリル基又はハロシリル基を含むビニル系単量体に由来する部分を少なくとも1つ有し、かつ、該部分において、更に分岐している、請求項1~のいずれか一項に記載の共役ジエン系重合体。
【請求項8】
アルコキシシリル基又はハロシリル基を含むビニル系単量体に由来する前記部分の少なくとも1つは、下記式(1)又は(2)で表される化合物に由来する部分である、請求項に記載の共役ジエン系重合体。
【化1】
【化2】
(式(1)中、R1は、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基を示し、その一部分に分岐構造を有していてもよく、
2、及びR3は、各々独立して、炭素数1~20のアルキル基又は炭素数6~20のアリール基を示し、その一部分に分岐構造を有していてもよく、
1は、各々独立してハロゲン原子を示し、
mは、0~2の整数を示し、nは、0~3の整数を示し、lは、0~3の整数を示し、
m、n、及びlの和は、3である。)
(式(2)中、R2、R3、R4、及びR5は、各々独立して、炭素数1~20のアルキル基又は炭素数6~20のアリール基を示し、その一部分に分岐構造を有していてもよく、
2、及びX3は、各々独立してハロゲン原子を示し、
mは、0~2の整数を示し、nは、0~3の整数を示し、lは、0~3の整数を示し、
m、n、及びlの和は、3であり、
aは、0~3の整数を示し、bは、0~2の整数を示し、cは、0~3の整数を示し、
a、b、及びcの和は、3である。)
【請求項9】
アルコキシシリル基又はハロシリル基を含むビニル系単量体に由来する前記部分の少なくとも1つは、前記式(1)中、R1が水素原子であり、mが0である化合物に由来する部分である、請求項に記載の共役ジエン系重合体。
【請求項10】
アルコキシシリル基又はハロシリル基を含むビニル系単量体に由来する前記部分の少なくとも1つは、前記式(2)中、mが0であり、bが0である化合物に由来する部分である、請求項に記載の共役ジエン系重合体。
【請求項11】
アルコキシシリル基又はハロシリル基を含むビニル系単量体に由来する前記部分の少なくとも1つは、前記式(1)中、R1が水素原子であり、mが0であり、lが0であり、nが3である化合物に由来する部分である、請求項に記載の共役ジエン系重合体。
【請求項12】
アルコキシシリル基又はハロシリル基を含むビニル系単量体に由来する前記部分の少なくとも1つは、前記式(2)中、mが0であり、lが0であり、nが3であり、aが0であり、bが0であり、cが3である化合物に由来する部分である、請求項に記載の共役ジエン系重合体。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の共役ジエン系重合体の製造方法であって、
有機リチウム化合物を重合開始剤として用いて、少なくとも共役ジエン化合物及び芳香族ビニル化合物を重合しながら、分岐化剤を添加することにより、分岐構造を有する共役ジエン系重合体を得る工程を有する、製造方法。
【請求項14】
分岐構造を有する前記共役ジエン系重合体にカップリング変性剤を反応させることにより、変性共役ジエン系重合体を得る工程を更に有する、請求項13に記載の共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項15】
請求項1~12のいずれか一項に記載の共役ジエン系重合体100質量部と、ゴム用軟化剤1.0質量部以上60質量部以下と、を含有する、共役ジエン系重合体組成物。
【請求項16】
ゴム成分と、該ゴム成分100質量部に対して5.0質量部以上150質量部以下の充填剤と、を含み、
前記ゴム成分は、該ゴム成分の総量100質量部に対して、請求項1~12のいずれか一項に記載の共役ジエン系重合体、又は請求項15に記載の共役ジエン系重合体組成物を10質量部以上含む、
ゴム組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共役ジエン系重合体、共役ジエン系重合体の製造方法、共役ジエン系重合体組成物、及びゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車に対する低燃費化要求が高まり、自動車用タイヤ、特に路面と接するタイヤトレッドに用いられるゴム材料の改良が求められている。
【0003】
また、自動車に対する燃費規制要求の高まりから、自動車の軽量化を目的として、自動車部材の樹脂化、及びタイヤの薄肉化の要求が高まっている。
【0004】
タイヤの薄肉化を図る際、特にタイヤ全体に占める割合の高い、路面と接するトレッド部の厚みを減らす必要があり、従来にも増して耐摩耗性に優れたゴム材料が求められている。
【0005】
また、走行時におけるタイヤによるエネルギーロスを低減するために、トレッドに用いられるゴム材料は、転がり抵抗が小さい、すなわち低ヒステリシスロス性を有する材料が好ましい。
【0006】
また、タイヤ材料は、安全性の観点から実用上十分な破壊強度を有していることが要求される。
【0007】
上述したような要求に応えるゴム材料としては、例えば、ゴム状重合体と、カーボンブラック及びシリカ等のような補強性充填剤とを含むゴム組成物が挙げられる。
【0008】
そのようなゴム組成物では、運動性の高いゴム状重合体の分子末端部に、シリカとの親和性又は反応性を有する官能基を導入することによって、ゴム組成物中におけるシリカの分散性を改良し、かつ、ゴム状重合体の分子末端部の運動性を低減して、ヒステリシスロスを低減化しつつ、耐摩耗性、及び破壊強度を向上させる試みがなされている。
【0009】
例えば、特許文献1~3には、アミノ基を含有するアルコキシシラン類を共役ジエン系重合体活性末端に反応させて得られる変性共役ジエン系重合体とシリカとの組成物が開示されている。また特許文献4には、低ビニルの変性共役ジエン系重合体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2005-290355号公報
【文献】特開平11-189616号公報
【文献】特開2003-171418号公報
【文献】特許第6512240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、本発明者らが、特許文献1~4に記載のものを始めとする従来のゴム組成物を詳細に検討したところ、従来のゴム組成物は、その物性が不十分であることがわかった。例えば、従来の共役ジエン系重合体は、混練後にシート状に成形する際に肌荒れ又はシート切れが生じやすく、加工性が不十分である。また、このような材料は、加硫した場合、特にシリカ等の無機充填剤を含む加硫物とした場合、シリカの分散性が低下し、耐摩耗性及び低ヒステリシスロス性も十分ではない。
【0012】
また、従来の共役ジエン系重合体を製造するには、重合系内に極性化合物を添加しないか、その添加量をごく少量にする必要がある。このような条件で重合した場合、重合体の重合活性末端が失活しやすいために、重合体の末端(重合終了末端)を変性剤と反応させにくい。すなわち、変性率を高くすることが困難であり、ヒステリシスロス性を十分に低くするのが難しいという問題がある。
【0013】
そこで、本発明は、加硫する際の加工性に優れ、その加硫物が耐摩耗性及び低ヒステリシスロス性に優れる共役ジエン系重合体、共役ジエン系重合体の製造方法、共役ジエン系重合体組成物、及びゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究検討した結果、芳香族ビニル化合物に由来する部分を所定の割合で含有し、分岐度(Bn)及び特定のビニル結合量が所定の範囲である共役ジエン系重合体が、加硫する際の加工性に優れ、その加硫物が耐摩耗性及び低ヒステリシスロス性に優れることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0015】
すなわち本発明は以下の通りである。
[1]
粘度検出器付きGPC-光散乱法測定法による分岐度が7以上であり、
結合芳香族ビニル量が1質量%以上32質量%以下であり、
結合共役ジエン中のビニル結合量が11mol%以上35mol%以下である、
共役ジエン系重合体。
[2]
前記結合芳香族ビニル量が1質量%以上30質量%以下であり、
前記結合共役ジエン中のビニル結合量が11mol%以上30mol%以下である、[1]に記載の共役ジエン系重合体。
[3]
窒素原子を有する、[1]又は[2]に記載の共役ジエン系重合体。
[4]
珪素原子を有する、[1]~[3]のいずれか1つに記載の共役ジエン系重合体。
[5]
変性基を有する、[1]~[4]のいずれか1つに記載の共役ジエン系重合体。
[6]
前記変性基が窒素原子を有し、
前記共役ジエン系重合体の変性率が70質量%以上である、[5]に記載の共役ジエン系重合体。
[7]
前記結合芳香族ビニル量(質量%)の値が、前記結合共役ジエン中のビニル結合量(mоl%)の値よりも大きい、[1]~[6]のいずれか1つに記載の共役ジエン系重合体。
[8]
3分岐以上の星形高分子構造を有し、
前記星形高分子構造の少なくとも1つの分岐鎖は、アルコキシシリル基又はハロシリル基を含むビニル系単量体に由来する部分を少なくとも1つ有し、かつ、該部分において、更に分岐している、[1]~[7]のいずれか1つに記載の共役ジエン系重合体。
[9]
アルコキシシリル基又はハロシリル基を含むビニル系単量体に由来する前記部分の少なくとも1つは、下記式(1)又は(2)で表される化合物に由来する部分である、[8]に記載の共役ジエン系重合体。
【化1】
【化2】
(式(1)中、R1は、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基を示し、その一部分に分岐構造を有していてもよく、
2、及びR3は、各々独立して、炭素数1~20のアルキル基又は炭素数6~20のアリール基を示し、その一部分に分岐構造を有していてもよく、
1は、各々独立してハロゲン原子を示し、
mは、0~2の整数を示し、nは、0~3の整数を示し、lは、0~3の整数を示し、
m、n、及びlの和は、3である。)
(式(2)中、R2、R3、R4、及びR5は、各々独立して、炭素数1~20のアルキル基又は炭素数6~20のアリール基を示し、その一部分に分岐構造を有していてもよく、
2、及びX3は、各々独立してハロゲン原子を示し、
mは、0~2の整数を示し、nは、0~3の整数を示し、lは、0~3の整数を示し、
m、n、及びlの和は、3であり、
aは、0~3の整数を示し、bは、0~2の整数を示し、cは、0~3の整数を示し、
a、b、及びcの和は、3である。)
[10]
アルコキシシリル基又はハロシリル基を含むビニル系単量体に由来する前記部分の少なくとも1つは、前記式(1)中、R1が水素原子であり、mが0である化合物に由来する部分である、[9]に記載の共役ジエン系重合体。
[11]
アルコキシシリル基又はハロシリル基を含むビニル系単量体に由来する前記部分の少なくとも1つは、前記式(2)中、mが0であり、bが0である化合物に由来する部分である、[9]に記載の共役ジエン系重合体。
[12]
アルコキシシリル基又はハロシリル基を含むビニル系単量体に由来する前記部分の少なくとも1つは、前記式(1)中、R1が水素原子であり、mが0であり、lが0であり、nが3である化合物に由来する部分である、[9]に記載の共役ジエン系重合体。
[13]
アルコキシシリル基又はハロシリル基を含むビニル系単量体に由来する前記部分の少なくとも1つは、前記式(2)中、mが0であり、lが0であり、nが3であり、aが0であり、bが0であり、cが3である化合物に由来する部分である、[9]に記載の共役ジエン系重合体。
[14]
[1]~[13]のいずれか1つに記載の共役ジエン系重合体の製造方法であって、
有機リチウム化合物を重合開始剤として用いて、少なくとも共役ジエン化合物及び芳香族ビニル化合物を重合しながら、分岐化剤を添加することにより、分岐構造を有する共役ジエン系重合体を得る工程を有する、製造方法。
[15]
分岐構造を有する前記共役ジエン系重合体にカップリング変性剤を反応させることにより、変性共役ジエン系重合体を得る工程を更に有する、[14]に記載の共役ジエン系重合体の製造方法。
[16]
[1]~[13]のいずれか1つに記載の共役ジエン系重合体100質量部と、ゴム用軟化剤1.0質量部以上60質量部以下と、を含有する、共役ジエン系重合体組成物。
[17]
ゴム成分と、該ゴム成分100質量部に対して5.0質量部以上150質量部以下の充填剤と、を含み、
前記ゴム成分は、該ゴム成分の総量100質量部に対して、[1]~[13]のいずれか1つに記載の共役ジエン系重合体、又は[16]に記載の共役ジエン系重合体組成物を10質量部以上含む、
ゴム組成物。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、加硫する際の加工性に優れ、その加硫物が耐摩耗性及び低ヒステリシスロス性に優れる共役ジエン系重合体、共役ジエン系重合体の製造方法、共役ジエン系重合体組成物、及びゴム組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。
なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施することができる。
【0018】
〔共役ジエン系重合体〕
本実施形態の共役ジエン系重合体は、粘度検出器付きGPC-光散乱法測定法による分岐度(Bn)が7以上であり、結合芳香族ビニル量が1質量%以上32質量%以下であり、結合共役ジエン中のビニル結合量が11mol%以上35mol%以下である。
【0019】
(結合芳香族ビニル量及び結合共役ジエン中のビニル結合量)
本実施形態の共役ジエン系重合体は、少なくとも1つの共役ジエン化合物と少なくとも1つの芳香族ビニル化合物との共重合体である。共役ジエン系重合体のミクロ構造中、結合芳香族ビニル量の下限値は、共役ジエン系重合体全体に対して、1質量%であり、好ましくは2質量%であり、より好ましくは3質量%であり、更に好ましくは5質量%である。上記下限値は7質量%であってもよい。結合芳香族ビニル量の上限値は32質量%であり、好ましくは31質量%であり、より好ましくは30質量%である。結合芳香族ビニル量の上限値は、29質量%、28質量%、27質量%、又は26質量%であってもよい。結合芳香族ビニル量が上記の範囲内にあると、共役ジエン系重合体の加硫物は耐摩耗性及び低ヒステリシスロス性に一層優れるようになる。結合芳香族ビニル量は、上記の上限値及び下限値を任意に組み合わせた範囲内としてもよく、例えば1質量%以上30質量%以下であってもよい。なお、本明細書において、「結合芳香族ビニル量」とは、共役ジエン系重合体全体に対する芳香族ビニル化合物に由来する部分の含有量を意味する。
【0020】
共役ジエン系重合体のミクロ構造中、結合共役ジエン量は、共役ジエン系重合体全体に対して、好ましくは50質量%以上99質量%以下であり、より好ましく55質量%以上98質量%以下であり、更に好ましくは60質量%以上95質量%以下である。結合共役ジエン量が上記の範囲内にあると、共役ジエン系重合体の加硫物は耐摩耗性及び低ヒステリシスロス性に一層優れるようになる。結合共役ジエン量は、上記の範囲内において、99質量%以下、98質量%以下、97質量%以下、95質量%以下、又は93質量%以下であってもよい。結合共役ジエン量は、上記の範囲内において、65質量%以上、68質量%以上、69質量%以上、70質量%以上、71質量%以上、72質量%以上、73質量%以上、又は74質量%以上であってもよい。結合共役ジエン量は、上記の上限値及び下限値を任意に組み合わせた範囲内としてもよい。なお、本明細書において、「結合共役ジエン量」とは、共役ジエン系重合体全体に対する共役ジエン化合物に由来する部分の含有量を意味する。
【0021】
共役ジエン系重合体のミクロ構造中、結合共役ジエン中のビニル結合量(以下、単に、「ビニル結合量」ともいう。)は、結合共役ジエン全体に対して、11mol%以上35mol%以下であり、好ましくは12mol%以上34mol%以下であり、より好ましくは13mol%以上33mol%以下であり、更に好ましくは15mol%以上30mol%以下である。ビニル結合量が上記の範囲内であると、共役ジエン系重合体は、共役ジエン部分の構造の直線性が高まり、高分子鎖同士の絡み合いが強まるため、耐摩耗性に一層優れる。また、ビニル結合量が上記範囲であると、その加硫物が低ヒステリシスロス性に一層優れるものとなる。ビニル結合量は、上記の上限値及び下限値を任意に組み合わせた範囲内としてもよく、例えば11mol%以上30mol%以下であってもよい。なお、本明細書において、「結合共役ジエン中のビニル結合量」とは、共役ジエン化合物に由来する部分(以下、「結合共役ジエン」という。)のうちビニル結合を有する部分の割合を意味する。
結合共役ジエン中のビニル結合量は、共役ジエン系重合体を得る重合反応において、反応温度、及び後述する極性化合物の添加量等を適宜調整することにより制御することができる。具体的には、共役ジエン系重合体を得る重合反応における反応温度を高くすると、ビニル結合量を小さくすることができる傾向にある。また、後述する極性化合物の添加量を小さくすると、ビニル結合量を小さくすることができる傾向にある。より詳細には、後述する製造方法を用いることにより、上記範囲のビニル結合量を有する共役ジエン系重合体を容易に得ることができる。
【0022】
質量%で表される上記の結合芳香族ビニル量の値と、mol%で表される上記のビニル結合量の値との関係は特に限定されず、結合芳香族ビニル量の方が大きくてもよく、ビニル結合量の方が大きくてもよく、同程度であってもよい。共役ジエン系重合体又はその加硫物の引張強度及び耐摩耗性を一層高める観点からは、質量%で表される上記の結合芳香族ビニル量の値が、mol%で表される上記のビニル結合量の値よりも大きいことが好ましい。上記の結合芳香族ビニル量の値は、上記のビニル結合量の値より、1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、又は7以上大きくてもよい。
【0023】
ここで、結合芳香族ビニル量は、共役ジエン系重合体の芳香族ビニル化合物に由来する部分(以下、「結合芳香族ビニル」という。)が有するフェニル基の紫外吸収を測定することによって算出できる。また、共役ジエン系重合体が結合芳香族ビニル及び結合共役ジエンからなる場合、上記のようにして得られる結合芳香族ビニル量から結合共役ジエン量も求めることができる。具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定すればよい。
【0024】
また、共役ジエン系重合体が、ブタジエンとスチレンとの共重合体である場合には、ハンプトンの方法(R.R.Hampton,Analytical Chemistry,21,923(1949))により、結合ブタジエン中のビニル結合量(1,2-結合量)を求めればよい。具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定すればよい。
【0025】
本実施形態の共役ジエン系重合体は、結合芳香族ビニル単位が30以上連鎖しているブロックの数が、少ないか又はないものであることが好ましい。そのような共役ジエン系重合体における結合芳香族ビニル単位が30以上連鎖しているブロックの含有量は、共重合体がブタジエン-スチレン共重合体の場合、Kolthoffの方法(I.M.KOLTHOFF,et al.,J.Polym.Sci.1,429(1946)に記載の方法)により共重合体を分解し、メタノールに不溶なポリスチレン量を分析する公知の方法により測定することができる。このような方法により測定される結合芳香族ビニル単位が30以上連鎖しているブロックの含有量は、共役ジエン系重合体の総量に対して、好ましくは5.0質量%以下であり、より好ましくは3.0質量%以下である。
【0026】
本実施形態の共役ジエン系重合体は、省燃費性能が一層向上する観点から、結合芳香族ビニル単位が単独で存在する割合が多い方が好ましい。具体的には、共重合体がブタジエン-スチレン共重合体の場合、オゾン分解を用いる田中らの方法(Polymer,22,1721(1981))により、共重合体を分解し、ゲル浸透クロマトグラフィー(以下、「GPC」ともいう。)によりスチレン連鎖分布を分析した場合、結合スチレン量の総量に対し、好ましくは単離スチレン量が40質量%以上であり、好ましくはスチレンの連鎖が8個以上の連鎖スチレン構造が5.0質量%以下である。そのような共役ジエン系重合体は、その加硫物が低ヒステリシスロス性に一層優れる。
【0027】
また、結合芳香族ビニル量、結合共役ジエン量、及びビニル結合量は、共役ジエン系重合体のガラス転移温度(以下、「Tg」ともいう。)にも影響する。したがって、結合芳香族ビニル量、結合共役ジエン量、及びビニル結合量を上記の範囲にすることは、その加硫物が低ヒステリシスロス性に一層優れる観点からも好ましい。なお、結合芳香族ビニル量を大きくすると、共役ジエン系重合体のTgは高くなる傾向にある。また、ビニル結合量を小さくするとガラス転移温度が低くなる傾向にある。
【0028】
(ガラス転移温度)
本実施形態の共役ジエン系重合体のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは-85℃以上であり、より好ましくは-80℃以上であり、更に好ましくは-75℃以上である。ガラス転移温度が上記の範囲内にあると、加硫する際の加工性に一層優れる。また、上記ガラス転移温度は好ましくは-35℃以下であり、より好ましくは-38℃以下である。ガラス転移温度は、-40℃以下、又は-45℃以下であってもよい。ガラス転移温度が上記の範囲内にあると、共役ジエン系重合体の加硫物の耐摩耗性及び低ヒステリシスロス性が一層優れるものとなる。ガラス転移温度は、上記の上限値及び下限値を任意に組み合わせた範囲内としてもよい。共役ジエン系重合体及び共役ジエン系重合体のガラス転移温度は、ISO 22768:2017に従って測定される。より詳細には、所定の温度範囲で昇温しながら示差走査熱量(DSC)測定をすることでDSC曲線を記録し、DSC微分曲線のピークトップ(Inflection point)をガラス転移温度とする。具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定すればよい。
【0029】
(分岐度(Bn))
本実施形態の共役ジエン系重合体は、加工性、耐摩耗性、及び破壊強度を向上させる観点から、粘度検出器付きGPC-光散乱法測定法による分岐度(Bn)(以下、単に「分岐度(Bn)」、「分岐度」又は「Bn」ともいう。)が7以上である。
【0030】
分岐度(Bn)が7以上であるとは、本実施形態の共役ジエン系重合体が、実質的に最長の高分子主鎖に対して側鎖の高分子鎖が7本以上であることを意味する。
【0031】
一般に、分岐度(Bn)は、高分子の分岐構造を表現する指標となる。例えば、一般的な4分岐星形高分子(中央部に4本の高分子鎖(ただし、更なる側鎖を有しないもの)が接続されている高分子)の場合、最長の高分子主鎖に対して高分子鎖の腕(側鎖)が2本結合しており、分岐度(Bn)は2と評価される。
【0032】
一般的な8分岐星形高分子(中央部に8本の高分子鎖(ただし、更なる側鎖を有しないもの)が接続されている高分子)の場合、最長の高分子主鎖に対して高分子鎖の腕(側鎖)が6本結合しており、分岐度(Bn)は6と評価される。
【0033】
本実施形態の共役ジエン系重合体は、分岐度(Bn)が7以上であるが、これは、共役ジエン系重合体が星形高分子構造である場合に、その分岐の数が9以上であることを意味する。
【0034】
ここで、「分岐」とは、1つの高分子鎖に対して、別の高分子鎖が結合することにより形成されているものを意味する。また、「分岐度(Bn)」は、最長の高分子主鎖に対して、直接的又は間接的に互いに結合している高分子鎖の数である。すなわち、最長の高分子鎖に結合している側鎖のみでなく、当該側鎖が更に分岐している場合は、当該側鎖の分岐の数も考慮するものである。したがって、最長の高分子鎖に1つの高分子鎖が側鎖として結合し、更にその側鎖に別の高分子鎖が結合している場合、その分岐度は2である。
【0035】
本明細書中、分岐度(Bn)は、収縮因子(g’)を用いて、g’=6Bn/{(Bn+1)(Bn+2)}の式から算出される。ここで、収縮因子(g’)とは以下のような値である。
【0036】
一般的に、分岐を有する重合体は、同一の絶対分子量を有する直鎖状の重合体と比較した場合に、分子の大きさが小さくなる傾向にある。ここで、「分子の大きさ」とは、当該分子が実質的に占める体積のことである。収縮因子(g’)は、対象とする重合体の分子の大きさを相対的に表したものであり、対象とする重合体と同一の絶対分子量を有する直鎖状の重合体の分子の大きさに対する、当該対象とする重合体の分子の大きさの比率の指標である。すなわち、重合体の分岐度が大きいと、その大きさは相対的に小さくなるため、収縮因子(g’)は小さくなる傾向にある。
【0037】
ここで、重合体の分子の大きさと、固有粘度の比は相関関係があることが知られているため、本実施形態において、収縮因子(g’)は、固有粘度の比として算出される。すなわち、収縮因子(g’)は、対象とする重合体と同一の絶対分子量を有する直鎖状重合体の固有粘度[η0]に対する、当該対象とする重合体の固有粘度[η]の比([η]/[η0])として算出される。
【0038】
なお、直鎖状の重合体の固有粘度[η0]は[η0]=-3.626M0.730の関係式に従うことが知られている。式中、Mは絶対分子量である。したがって、対象とする重合体の絶対分子量M及び固有粘度[η]を、粘度検出器付きGPC-光散乱法測定法により測定することで、収縮因子(g’)及び分岐度(Bn)を求めることができる。算出された分岐度(Bn)は、最長の高分子主鎖に対して、直接的又は間接的に互いに結合している高分子鎖の数を正確に表現するものである。
【0039】
ここで、「絶対分子量」とは、光散乱法により測定される分子量を意味する。上述のように、一般的に、分岐を有する重合体は、同一の絶対分子量を有する直鎖状の重合体と比較した場合に、分子の大きさが小さくなる傾向にある。したがって、重合体の分子の大きさでふるい分け、標準ポリスチレン試料との相対比較をすることにより分子量を求める方法であるGPC測定法では、分岐構造を有する重合体の分子量が過少に評価される傾向にある。一方、光散乱法では、分子を直接観測することで、分子量を測定する。したがって、光散乱法は、高分子構造の影響やカラム充填剤との相互作用の影響を受けず、分子量を正確に測定することができる。なお、絶対分子量は、実施例に記載の方法により測定すればよい。
【0040】
また、「固有粘度」とは、理想的には以下の式(I)により求められる粘度[η]を意味する。なお、式(I)中、η1は対象とする重合体を濃度cで溶媒に溶解した時の粘度を示し、η2は当該溶媒の粘度を示す。
本明細書中では、固有粘度として、実施例に記載の方法により測定した値を用いた。
【0041】
【数1】
【0042】
本実施形態の共役ジエン系重合体は、分岐度(Bn)が7以上であることにより、加硫する際の加工性に極めて優れ、その加硫物は耐摩耗性、及び破壊強度に優れる。その要因は、以下のようであると考えられるが、以下記載の理由に限定されない。
【0043】
一般に、分岐度の低い重合体の絶対分子量を上昇させた場合、加硫する際の粘度が大幅に上昇し、加硫する際の加工性が大幅に悪化するという問題がある。そのため、分岐度の低い重合体では、充填剤として配合されるシリカとの親和性及び/又は反応性の向上を目的として、重合体中に多数の官能基を導入しても、混練工程でシリカを十分に重合体中に分散させることができない。その結果、導入された官能基の機能が発揮されず、官能基導入による低ヒステリシスロス性の向上という効果が発揮されない。
【0044】
一方、本実施形態の共役ジエン系重合体は、分岐度(Bn)が7以上であるため、絶対分子量の上昇に伴う加硫時における粘度の上昇が大幅に抑制される。したがって、例えば、混練工程においてシリカ等の充填剤と十分に混合することができ、シリカを十分に重合体中に分散させることが可能となる。すなわち、本実施形態の共役ジエン系重合体は、加工性が良好である。その結果、例えば、共役ジエン系重合体の平均分子量を更に大きくすることができ、耐摩耗性及び破壊強度を向上させることができる。更に、十分な混練によってシリカを重合体中に良好に分散させることができるため、実用上十分な低ヒステリシスロス性を有するものとなる。
【0045】
本実施形態の共役ジエン系重合体の分岐度(Bn)は7以上であり、好ましくは8以上であり、より好ましくは9以上である。分岐度(Bn)が上記の範囲内にあることにより、共役ジエン系重合体は、加硫する際の加工性に一層優れる。分岐度(Bn)は10以上、11以上、12以上、又は13以上であってもよい。
【0046】
分岐度(Bn)の上限値は特に限定されず、検出限界値以上であってもよい。分岐度(Bn)は、好ましくは84以下であり、より好ましくは80以下であり、更に好ましくは64以下であり、更により好ましくは57以下である。分岐度(Bn)が上記の範囲内にあることにより、共役ジエン系重合体は、加硫物が耐摩耗性に一層優れる傾向にある。なお、分岐度(Bn)の上限値は、50であってもよく、40であってもよく、30であってもよく、25であってもよく、20であってもよく、18であってもよい。
【0047】
共役ジエン系重合体の分岐度は、後述する分岐化剤の添加量を適宜調整することにより制御してもよく、分岐化剤の添加量と後述するカップリング変性剤の添加量との配合量を調整することにより、制御してもよい。具体的には、分岐度は、分岐化剤及びカップリング変性剤の官能基数、分岐化剤及びカップリング変性剤の添加量、並びに、分岐化剤及びカップリング変性剤の添加のタイミングにより制御することができる。より具体的には、後述に記載の共役ジエン系重合体の製造方法を用いることにより、一層容易に分岐度を上記の範囲内とすることができる。
【0048】
(共役ジエン化合物及び芳香族ビニル化合物)
本実施形態の共役ジエン系重合体は、少なくとも1つの共役ジエン化合物と少なくとも1つの芳香族ビニル化合物との共重合体である。したがって、共役ジエン系重合体は、1又は複数の共役ジエン化合物と、1又は複数の芳香族ビニル化合物との共重合体であってもよい。
【0049】
共役ジエン化合物としては、特に限定されないが、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、及び1,3-ヘプタジエンが挙げられる。これらの中でも、本実施形態の効果を有効かつ確実に奏する観点から、1,3-ブタジエン、及びイソプレンが好ましい。これらの共役ジエン化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0050】
芳香族ビニル化合物としては、特に限定されないが、例えば、スチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、ビニルエチルベンゼン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン、及びジフェニルエチレンが挙げられる。これらの中でも、本実施形態の効果を有効かつ確実に奏する観点から、スチレンが好ましい。これらの芳香族ビニル化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
(変性率)
本実施形態の共役ジエン系重合体は、好ましくは変性基を有する。「変性基」とは、充填剤に親和性又は結合反応性を有する特定官能基を意味する。共役ジエン系重合体は、このような変性基を有することにより、充填剤との相互作用が一層向上するため、共役ジエン系重合体と充填剤とを含む共役ジエン系重合体組成物としたときに、該組成物の機械強度が一層向上する。同様の観点から、本実施形態の共役ジエン系重合体は、より好ましくは、炭素原子及び水素原子以外の原子を有する変性基を有し、更に好ましくは珪素原子又は窒素原子を有する変性基を有し、更により好ましくは窒素原子を有する変性基を有する。
【0052】
本実施形態の共役ジエン系重合体は、共役ジエン化合物及び芳香族ビニル化合物の共重合体と、変性剤とを反応させることにより、変性させることができる。共役ジエン系重合体は、後述するカップリング変性剤により変性されていると好ましい。そのような変性共役ジエン系重合体は、充填剤に親和性又は結合反応性を有する特定官能基を有するだけでなく、一層分岐度(Bn)が高い傾向にある。また、充填剤に対する親和性又は結合反応性を一層高める観点からは、共役ジエン系重合体は、共役ジエン系重合体の少なくとも一端が、窒素原子含有基で変性されていることが好ましい。
【0053】
本明細書中、「変性率」とは、共役ジエン系重合体を変性剤により変性させることにより、変性共役ジエン系重合体と変性されていない共役ジエン系重合体との混合物が得られる場合において、充填剤に親和性又は結合反応性を有する特定官能基を重合体分子中に有する変性共役ジエン系重合体成分の、共役ジエン系重合体の混合物の総量に対する含有率を質量%で表したものである。したがって、上記の特定官能基が窒素原子を含有する場合、共役ジエン系重合体の混合物の総量に対する、窒素原子を含有する共役ジエン系重合体の質量比率を表す。
本明細書中、特に断りがある場合、又は「共役ジエン系重合体又は変性共役ジエン系重合体」というように並列に記載されているなどの明確に区別されている場合を除き、「共役ジエン系重合体」は、変性されていない共役ジエン系重合体及び変性共役ジエン系重合体を包含するものである。なお、「共役ジエン系重合体又は変性共役ジエン系重合体」というように並列に記載されている場合において、「共役ジエン系重合体」とは、変性されていない共役ジエン系重合体を意味する。
【0054】
例えば、窒素原子を含有する変性剤を共役ジエン系重合体の終末端に反応させることにより変性された変性共役ジエン系重合体を含む共役ジエン系重合体において、当該窒素原子を含有する変性剤に起因する窒素原子含有官能基を有する変性共役ジエン系重合体の、共役ジエン系重合体の総量に対する質量比率が、変性率となる。
【0055】
本実施形態の共役ジエン系重合体は、少なくとも一部が、窒素原子を含有する官能基で変性されていることが好ましい。そのような変性共役ジエン系重合体は、充填剤等を配合し組成物とするときの加工性に一層優れ、該組成物を加硫物としたときの耐摩耗性、破壊強度、及び低ヒステリシスロス性にも一層優れる。
【0056】
加硫する際の加工性を一層向上させ、かつ、その加硫物の耐摩耗性、破壊強度、及び低ヒステリシスロス性を一層向上させる観点から、本実施形態の共役ジエン系重合体の変性率は、共役ジエン系重合体の総量に対して、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上であり、更に好ましくは70質量%以上であり、更により好ましくは75質量%以上であり、特に好ましくは80質量%以上である。上記変性率の上限は、特に限定されないが、例えば、100質量%であってもよく、98質量%であってもよく、95質量%であってもよく、90質量%であってもよい。また、ガラス転移点が同一の共役ジエン系重合体を比較した際に、変性率が高い方が低ヒステリシスロス性に優れる傾向にある。
【0057】
本実施形態において、変性率は、官能基含有の変性成分と非変性成分とを分離できるクロマトグラフィーによって測定することができる。このクロマトグラフィーを用いた方法としては、特定官能基を吸着するシリカ等の極性物質を充填剤としたゲル浸透クロマトグラフィー用のカラムを用い、非吸着成分の内部標準を比較に用いて定量する方法(カラム吸着GPC法)が挙げられる。
【0058】
より具体的には、変性率は、試料及び低分子量内部標準ポリスチレンを含む試料溶液をポリスチレン系ゲルカラムで測定したクロマトグラムと、当該試料溶液をシリカ系カラムで測定したクロマトグラムとの差分から、シリカ系カラムへの吸着量を算出することにより得ることができる。更に具体的には、変性率は、実施例に記載の方法により測定すればよい。
【0059】
本実施形態の共役ジエン系重合体において、変性率は、変性剤の添加量、及び共役ジエン化合物と変性剤との反応方法を調整するによって制御することができる。
【0060】
例えば、重合開始剤として後述するような分子内に少なくとも1つの窒素原子を有する有機リチウム化合物を用いて重合する方法、分子内に少なくとも1つの窒素原子を有する単量体を共重合する方法、及び後述する構造式の変性剤を用いる方法を組み合わせればよい。
【0061】
(分岐構造)
本実施形態の共役ジエン系重合体は、好ましくは3分岐以上の星形高分子構造を有している。そのような共役ジエン系重合体は、分岐度が高い傾向にある。同様の観点から、共役ジエン系重合体は、より好ましくは4分岐以上、更に好ましくは6分岐以上、特に好ましくは7分岐以上の星形高分子構造を有する。
【0062】
なお、本明細書中、「星形高分子構造」とは、1つの中心分岐点に高分子鎖(腕)が3つ以上結合している構造をいう。「中心分岐点」とは、変性剤由来の部分(原子又は原子団)に3以上の高分子鎖が結合している場合の、当該変性剤由来の部分をいう。したがって、後述するカップリング変性剤により変性された変性共役ジエン系重合体は、該カップリング変性剤に由来する部分(原子又は原子団)を中心分岐点として、3以上の共役ジエン系重合体が結合している星形高分子構造を有する。
【0063】
また、「n分岐の星形高分子構造」(nは自然数)とは、中心分岐点にn本の高分子鎖が結合している構造をいい、ここで、当該結合している高分子鎖が更に分岐しているか否かを問わない。したがって、分岐していないn本の高分子鎖が中心分岐点に結合しているn分岐の星形高分子構造の分岐度(Bn)は、n-2である。
【0064】
上記の星形高分子構造は、共役ジエン系重合体を、変性剤、より好ましくは後述するカップリング変性剤により変性させることで得ることができる。すなわち、共役ジエン系重合体と、カップリング変性剤とを反応させると、カップリング変性剤を中心分岐点として、共役ジエン系重合体である高分子鎖が複数結合することで、星形高分子構造を有する変性共役ジエン系重合体を得ることができる。星形高分子構造の分岐の数は、カップリング変性剤の官能基数、重合開始剤及びカップリング変性剤の添加量を調整することによって制御することができる。
【0065】
本実施形態の共役ジエン系重合体は、好ましくは、星形高分子構造の少なくとも1つの分岐鎖が、更に分岐しているものである。そのような共役ジエン系重合体は、一層分岐度(Bn)が高い傾向にある。同様の観点から、本実施形態の共役ジエン系重合体は、好ましくは、星形高分子構造の分岐鎖のうち半数以上が、更に分岐しているものであり、より好ましくは、星形高分子構造の分岐鎖の全てが、更に分岐しているものである。
【0066】
同様の観点から、共役ジエン系重合体は、星形高分子構造の少なくとも1つの分岐鎖が、より好ましくは2以上の分岐点を有し、更に好ましくは3以上の分岐点を有する。同様の観点から、共役ジエン系重合体は、星形高分子構造の分岐鎖における分岐点において、4以上の高分子鎖を有する分岐点であることが好ましく、5以上の高分子鎖を有する分岐点であることがより好ましく、6以上の高分子鎖を有する分岐点であることが更に好ましい。
【0067】
本実施形態の共役ジエン系重合体において、例えば、共役ジエン系重合体の重合時に、後述する分岐化剤を添加することにより、分岐した共役ジエン系重合体、又は星形高分子構造の分岐鎖が更に分岐した共役ジエン系重合体を得ることができる。当該分岐化剤を添加することにより生じる分岐点の分岐数、及びその分岐点の数は、分岐化剤の官能基数、重合開始剤及び分岐化剤の添加量、分岐化剤の添加のタイミングを調整することによって制御することができる。
分岐化剤を添加することにより生じる分岐点は、窒素原子又は珪素原子を含むことが好ましい。すなわち、本実施形態の共役ジエン系重合体は、好ましくは窒素原子又は珪素原子を有し、窒素原子又は珪素原子を有する部分において分岐が生じている。
【0068】
本実施形態の効果を有効かつ確実に奏する観点から、本実施形態の共役ジエン系重合体は、好ましくは、アルコキシシリル基又はハロシリル基を含むビニル系単量体に由来する部分を少なくとも1つ有し、かつ、該部分において、更に分岐している。本実施形態の共役ジエン系重合体は、アルコキシシリル基又はハロシリル基を含むビニル系単量体に由来する部分において、好ましくは3分岐以上を有し、より好ましくは4分岐以上を有し、更に好ましくは5分岐以上を有する。
【0069】
本実施形態の効果を有効かつ確実に奏する観点から、星形高分子構造の少なくとも1つの分岐鎖は、アルコキシシリル基又はハロシリル基を含むビニル系単量体に由来する部分を少なくとも1つ有し、かつ、該部分において、更に分岐していることが好ましい。すなわち、星形高分子構造の分岐鎖における分岐点の少なくとも1つは、好ましくはアルコキシシリル基又はハロシリル基を含むビニル系単量体に由来する部分である。同様の観点から、上記のような星形高分子構造の分岐鎖における分岐点のうち、より好ましくは半数以上、更に好ましくは全てが、アルコキシシリル基又はハロシリル基を含むビニル系単量体に由来する部分である。本実施形態の共役ジエン系重合体は、アルコキシシリル基又はハロシリル基を含むビニル系単量体に由来する部分において、好ましくは3分岐以上を有し、より好ましくは4分岐以上を有し、更に好ましくは5分岐以上を有する。
【0070】
本実施形態の共役ジエン系重合体が、アルコキシシリル基又はハロシリル基を含むビニル系単量体に由来する部分に分岐点を有することは、29Si-NMR測定により確かめることができる。共役ジエン系重合体が、アルコキシシリル基又はハロシリル基を含むビニル系単量体に由来する部分を少なくとも1つ有し、かつ、該部分において高分子鎖が分岐している場合、29Si-NMRにてシグナル検出を行うと、-45ppm~-65ppmの範囲、さらに限定的には、-50ppm~-60ppmの範囲に当該部分に由来するピークが検出される。
【0071】
本実施形態の効果を有効かつ確実に奏する観点から、アルコキシシリル基又はハロシリル基を含むビニル系単量体に由来する上記の部分の少なくとも1つは、下記式(1)又は(2)で表される化合物に由来することが好ましい。すなわち、上記のような星形高分子構造の分岐鎖における分岐点の少なくとも1つは、好ましくは下記式(1)又は(2)で表される化合物に由来する部分である。同様の観点から、上記のような星形高分子構造の分岐鎖における分岐点のうち、より好ましくは半数以上、更に好ましくは全てが、下記式(1)又は(2)で表される化合物に由来する部分である。
【0072】
【化3】
【化4】
【0073】
ただし、式(1)中、R1は、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基を示し、その一部分に分岐構造を有していてもよく、R2、及びR3は、各々独立して、炭素数1~20のアルキル基又は炭素数6~20のアリール基を示し、その一部分に分岐構造を有していてもよく、X1は、各々独立してハロゲン原子を示し、mは、0~2の整数を示し、nは、0~3の整数を示し、lは、0~3の整数を示し、m、n、及びlの和は、3である。
また、式(2)中、R2、R3、R4、及びR5は、各々独立して、炭素数1~20のアルキル基又は炭素数6~20のアリール基を示し、その一部分に分岐構造を有していてもよく、X2、及びX3は、各々独立してハロゲン原子を示し、mは、0~2の整数を示し、nは、0~3の整数を示し、lは、0~3の整数を示し、m、n、及びlの和は、3であり、aは、0~3の整数を示し、bは、0~2の整数を示し、cは、0~3の整数を示し、a、b、及びcの和は、3である。
式(1)又は(2)で表される化合物の例示は後述する。
【0074】
本実施形態の共役ジエン系重合体において、星形高分子構造の分岐鎖における分岐点の少なくとも1つは、好ましくは上述した式(1)中、R1が水素原子であり、mが0である化合物に由来する部分である。そのような共役ジエン系重合体は、分岐数が一層高くなる傾向にあり、耐摩耗性と加工性とが一層向上する。
【0075】
また、本実施形態の共役ジエン系重合体において、星形高分子構造の分岐鎖における分岐点の少なくとも1つは、好ましくは上述した式(1)中、R1が水素原子であり、mが0であり、lが0であり、nが3である化合物に由来する部分である。そのような共役ジエン系重合体は、変性率と分岐度とが一層向上する傾向にあり、省燃費性能、耐摩耗性及び加工性が一層向上する。
【0076】
また、本実施形態の共役ジエン系重合体において、星形高分子構造の分岐鎖における分岐点の少なくとも1つは、好ましくは上述した式(2)中、mが0であり、bが0である化合物に由来する部分である。そのような共役ジエン系重合体は、分岐数が一層高くなる傾向にあり、耐摩耗性と加工性とが一層向上する。
【0077】
また、本実施形態の共役ジエン系重合体において、星形高分子構造の分岐鎖における分岐点の少なくとも1つは、好ましくは上述した式(2)中、mが0であり、lが0であり、nが3であり、aが0であり、bが0であり、cが3である化合物に由来する部分である。そのような共役ジエン系重合体は、分岐数が一層高くなる傾向にあり、耐摩耗性と加工性とが一層向上する。
【0078】
本実施形態の共役ジエン系重合体は、特に好ましくは、3分岐以上の星形高分子構造を有し、該星形高分子構造の少なくとも1つの分岐鎖は、アルコキシシリル基又はハロシリル基を含むビニル系単量体に由来する部分を少なくとも1つ有し、かつ、該部分において、更に分岐している共役ジエン系重合体である。そのような共役ジエン系重合体は、加工性及び耐摩耗性に一層優れる傾向にある。
【0079】
3分岐以上の星形高分子構造を有し、該星形高分子構造の少なくとも1つの分岐鎖が、アルコキシシリル基又はハロシリル基を含むビニル系単量体に由来する部分を少なくとも1つ有し、かつ、該部分において、更に分岐している共役ジエン系重合体を確実に得るためには、例えば、以下のような方法を用いればよい。すなわち、有機リチウム系化合物を重合開始剤として用い、共役ジエン化合物及び芳香族ビニル化合物を重合し、重合中及び/又は重合後に、当該共役ジエン系重合体を後述する分岐化剤と更に反応させるにより、分岐構造を有する共役ジエン系重合体を得る。その後、得られた分岐構造を有する共役ジエン系重合体を後述する変性剤と更に反応させることにより、変性共役ジエン系重合体を得ればよい。具体的な、重合条件としては、後述する実施例中の製造方法に記載の条件を用いればよい。
【0080】
なお、分岐構造を有する共役ジエン系重合体を変性剤と反応させる際に、後述するカップリング変性剤を用いることで、星形高分子構造を有する変性共役ジエン系重合体を確実に得ることができる。カップリング変性剤による変性、及び分岐化剤の導入のいずれも、共役ジエン系重合体の分岐度(Bn)を大きくすることができるが、カップリング変性剤による変性の方が、分岐度(Bn)が一層大きくなる傾向にある。
【0081】
重合体の設計において、分岐度(Bn)は、カップリング変性剤及び分岐化剤の種類の選択や量の設定によって制御可能であるが、分岐度(Bn)の増加に対する寄与率も考慮することで分岐度(Bn)の制御が容易になる。
【0082】
(平均分子量)
本実施形態の共役ジエン系重合体のGPC測定法により測定される重量平均分子量は、好ましくは30×104以上であり、より好ましくは40×104以上であり、更に好ましくは45×104以上であり、特に好ましくは60×104以上である。GPC測定法により測定される重量平均分子量が上記の範囲内にあると、加硫する際の加工性に一層優れ、その加硫物が低ヒステリシスロス性に一層優れる。また、上記重量平均分子量は、好ましくは300×104以下であり、より好ましくは250×104以下であり、更に好ましくは180×104以下であり、更により好ましくは150×104以下である。上記重量平均分子量が上記の範囲内にあると、その加硫物において充填剤の分散性に一層優れ、実用上十分な破壊特性が得られる傾向にある。上記の重量平均分子量は、上記の上限値及び下限値を任意に組み合わせた範囲内としてもよい。変性共役ジエン系重合体及び後述する共役ジエン系重合体のGPC測定法により測定される重量平均分子量は、詳細には、後述する実施例に記載の方法により測定される。
【0083】
本実施形態の共役ジエン系重合体のGPC測定法により測定される数平均分子量は、好ましくは20×104以上であり、より好ましくは25×104以上であり、更に好ましくは30×104以上である。上記数平均分子量は、35×104以上であってもよい。GPC測定法により測定される数平均分子量が上記の範囲内にあると、加硫する際の加工性に一層優れ、その加硫物が低ヒステリシスロス性に一層優れる。また、上記数平均分子量は、好ましくは100×104以下であり、より好ましくは90×104以下であり、更に好ましくは80×104以下であり、更により好ましくは70×104以下である。上記数平均分子量が上記の範囲内にあると、その加硫物において充填剤の分散性に一層優れ、実用上十分な破壊特性が得られる傾向にある。上記数平均分子量は、上記の上限値及び下限値を任意に組み合わせた範囲内としてもよい。変性共役ジエン系重合体及び後述する共役ジエン系重合体のGPC測定法により測定される数平均分子量は、詳細には、後述する実施例に記載の方法により測定される。
【0084】
本実施形態の共役ジエン系重合体において、GPC測定法により測定される数平均分子量(Mn)に対する、GPC測定法により測定される重量平均分子量(Mw)の比(Mw/Mn)は、本実施形態の効果を有効かつ確実に奏する観点から、好ましくは1.5以上3.0以下であり、より好ましくは1.6以上2.8以下であり、更に好ましくは1.7以上2.4以下である。
【0085】
(ムーニー粘度)
本実施形態の共役ジエン系重合体の、100℃で測定されるムーニー粘度は、好ましくは50以上180以下であり、より好ましくは70以上160以下である。上記のムーニー粘度が上記の範囲内にあることにより、加硫する際の加工性と、その加硫物の耐摩耗性が一層向上する傾向にある。変性共役ジエン系重合体及び後述する共役ジエン系重合体のムーニー粘度は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0086】
(共役ジエン系重合体の好ましい構造)
本実施形態の効果を有効かつ確実に奏する観点から、本実施形態の共役ジエン系重合体は、好ましくは窒素原子又は珪素原子を有する。その中でも、下記式(i)又は下記式(A)~(D)のいずれかで表される化合物に由来する構造を含むことがより好ましい。共役ジエン系重合体は、更に好ましくは、下記式(i)又は下記式(A)~(D)のいずれかで表される化合物をカップリング変性剤として用いて変性されたものである。下記式(i)又は下記式(A)~(D)のいずれかで表される化合物の例示は後述する。
【化5】
【0087】
ただし、式(i)中、R7は、2価の炭化水素基、又は、エーテル、エポキシ、及びケトン等のような酸素原子を有する極性基、チオエーテル、及びチオケトン等のような硫黄原子を有する極性基、並びに、3級アミノ基、及びイミノ基等のような窒素原子を有する極性基から選ばれる少なくとも1種の極性基を有する2価の有機基である。
【0088】
2価の炭化水素基としては、飽和又は不飽和の、直鎖状、分岐状、又は環状であってもよい炭化水素基であり、アルキレン基、アルケニレン基、及びフェニレン基等を含む。2価の炭化水素基は、好ましくは炭素数1~20の2価の炭化水素基である。炭素数1~20の2価の炭化水素基としては、特に限定されないが、例えば、メチレン、エチレン、ブチレン、シクロヘキシレン、1,3-ビス(メチレン)-シクロヘキサン、1,3-ビス(エチレン)-シクロヘキサン、o-フェニレン、m-フェニレン、p-フェニレン、m-キシレン、p-キシレン、及びビス(フェニレン)-メタン等が挙げられる。
【0089】
式(i)中、R8は、水素原子、炭素数1~10の1価のアルキル基、又は炭素数6~10のアリール基を示す。
【0090】
式(i)中、R6は、水素原子、炭素数1~10の1価以上のアルキル基、又は炭素数6~10のアリール基を示す。R6の価数は、1以上であり、式(i)中のoと同一である。
【0091】
式(i)中、R9は炭素数1~10の1価の炭化水素基、又は下記式(ii)の構造である。
【0092】
6、及びR8は、互いに結合した環状構造であってもよい。
また、R9が1価の炭化水素基の場合、R8と互いに結合した環状構造であってもよい。ただし、R9に結合しているNとR8とが直接結合している場合にのみ、R9は水素原子であってもよい。
【0093】
式(i)中、oは1以上の整数である。
【0094】
【化6】
【0095】
式(ii)中、R1、及びR2は、それぞれ式(i)のR7、及びR8と同義である。
【0096】
【化7】
【0097】
ただし、式(A)中、R12、R13、R14、及びR15は、各々独立して、炭素数1~20のアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基を示し、R16は、炭素数1~10のアルキレン基を示し、R17は、炭素数1~20のアルキレン基を示し、qは、1又は2の整数を示し、rは、2又は3の整数を示し、q及びrの和は、4以上の整数である。
【0098】
【化8】
【0099】
ただし、式(B)中、R18、R19、R20、R21、R22、及びR23は、各々独立して、炭素数1~20のアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基を示し、R24、R25、及びR26は、各々独立して、炭素数1~20のアルキレン基を示し、s、t、及びuは、各々独立して、1~3の整数を示し、s、t、及びuの和は、4以上の整数である。
【0100】
【化9】
【0101】
ただし、式(C)中、Aは、炭素数1~20の炭化水素基、又は、酸素原子、窒素原子、珪素原子、硫黄原子、及びリン原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を有し、かつ、活性水素を有しない有機基を示し、R27、R28、及びR29は、各々独立に、単結合又は炭素数1~20のアルキレン基を示し、R30、R31、R32、R33、及びR35は、各々独立に、炭素数1~20のアルキル基を示し、R34、及びR37は、各々独立に、炭素数1~20のアルキレン基を示し、R36は、各々独立して炭素数1~20のアルキル基、又はトリアルキルシリル基を示し、wは、各々独立して1~3の整数を示し、xは、各々独立して1又は2を示し、iは、0~6の整数を示し、jは、0~6の整数を示し、kは、0~6の整数を示し、i、j、及びkの和は、4~10の整数である。
【0102】
【化10】
【0103】
ただし、式(D)中、R36は、炭素数1~20のアルキレン基を示し、R37、R39、及びR40は、各々独立に、炭素数1~20のアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基を示し、R38は、水素原子又は炭素数1~20の炭化水素基を示し、zは、1~3の整数を示す。
【0104】
本実施形態の共役ジエン系重合体は、より詳細には、後述するカップリング変性剤に由来する構造を含むことが好ましい。
【0105】
(共役ジエン系重合体の製造方法)
上述した共役ジエン系重合体は、上述した構成を有する重合体が得られる方法であれば、いかなる方法によっても製造することができるが、以下に詳述する、本実施形態の共役ジエン系重合体の製造方法を用いることにより、確実かつ簡便に上述した共役ジエン系重合体を得ることができる。
【0106】
本実施形態の共役ジエン系重合体の製造方法は、有機リチウム化合物を重合開始剤として用いて、少なくとも共役ジエン化合物及び芳香族ビニル化合物を重合しながら、分岐化剤を添加することにより、分岐構造を有する共役ジエン系重合体を得る重合分岐工程を有する。そのような方法によれば、結合芳香族ビニル量、結合共役ジエン中のビニル結合量及び分岐度(Bn)が上述した範囲にある共役ジエン系重合体が確実かつ簡便に得られる。
【0107】
本実施形態の共役ジエン系重合体の製造方法は、好ましくは、上記の重合分岐工程によって得られた分岐構造を有する共役ジエン系重合体に、カップリング変性剤を反応させることにより、変性共役ジエン系重合体を得るカップリング工程を有する。そのような方法によれば、重量平均分子量、ガラス転移温度及び分岐度(Bn)が上述した範囲にある共役ジエン系重合体が確実かつ簡便に得られる。
【0108】
(重合分岐工程)
上記重合分岐工程は、後述する有機リチウム化合物を重合開始剤とし、少なくとも共役ジエン化合物及び芳香族ビニル化合物を重合しながら、分岐化剤を添加することにより、分岐構造を有する共役ジエン系重合体を得る工程である。したがって、重合分岐工程において、分岐化剤を添加する前は、少なくとも共役ジエン化合物及び芳香族ビニル化合物の重合反応が主反応であり、分岐化剤を添加した後に、分岐反応が開始する。
【0109】
少なくとも共役ジエン化合物及び芳香族ビニル化合物の重合反応は、リビングアニオン重合反応による成長反応による重合であることが好ましく、これにより、活性末端を有する共役ジエン系重合体を得ることができる。その結果、分岐化剤を添加した際に、効率よく共役ジエン系重合体と分岐化剤とが反応する。また、本実施形態の製造方法が、後述するカップリング工程を有する場合にも、効率の高い反応が生じる傾向にある。
【0110】
重合反応様式としては、以下のものに限定されないが、例えば、回分式(以下、「バッチ式」ともいう。)、及び連続式の重合反応様式が挙げられる。
【0111】
連続式においては、1個又は2個以上の連結された反応器を用いることができる。連続式の反応器としては、例えば、撹拌機付きの槽型、管型のものが用いられる。連続式においては、好ましくは、連続的に単量体、後述する不活性溶媒、及び後述する重合開始剤が反応器にフィードされ、該反応器内で重合体を含む重合体溶液が得られ、連続的に重合体溶液が排出される。
【0112】
回分式の反応器としては、例えば、攪拌機付の槽型の反応器が用いられる。回分式においては、好ましくは、単量体、後述する不活性溶媒、及び後述する重合開始剤がフィードされ、必要により単量体が重合中に連続的又は断続的に追加され、当該反応器内で重合体を含む重合体溶液が得られ、重合終了後に重合体溶液が排出される。
【0113】
本実施形態の製造方法において、高い割合で活性末端を有する共役ジエン系重合体を得ることができる観点から、重合体を連続的に排出し、短時間で次の反応に供することが可能な連続式の重合反応様式により重合反応を進行させることが好ましい。
【0114】
重合分岐工程で用いられる単量体である、共役ジエン化合物及び芳香族ビニル化合物としては、少なくとも1つの上述した共役ジエン化合物及び少なくとも1つの上述した芳香族ビニル化合物を用いればよい。また、共役ジエン系重合体へ窒素原子を導入することができる観点から、上述した共役ジエン化合物又は上述した芳香族ビニル化合物を、分子内に少なくとも1つの窒素原子を有するように置換した誘導体を用いてもよい。
【0115】
重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、有機モノリチウム化合物のような有機リチウム化合物を用いることができる。
【0116】
有機モノリチウム化合物としては、その有機基とそのリチウムの結合様式において、例えば、炭素-リチウム結合を有する化合物、窒素-リチウム結合を有する化合物、及び錫-リチウム結合を有する化合物が挙げられる。
【0117】
その中でも、有機モノリチウム化合物としては、共役ジエン系重合体へ窒素原子を導入することができる観点から、好ましくは、分子内に少なくとも1つの窒素原子を有する有機リチウム化合物であり、より好ましくは、置換アミノ基を有するアルキルリチウム化合物、又はジアルキルアミノリチウムである。
【0118】
なお、置換アミノ基とは、アミノ基において活性水素を有しない、又は、アミノ基における活性水素を保護したアミノ基である。
【0119】
そのような活性水素を有しないアミノ基を有するアルキルリチウム化合物としては、特に限定されないが、例えば、ピペリジノリチウム、3-ジメチルアミノプロピルリチウム、3-ジエチルアミノプロピルリチウム、4-(メチルプロピルアミノ)ブチルリチウム、及び4-ヘキサメチレンイミノブチルリチウムが挙げられる。
【0120】
活性水素を保護したアミノ基を有するアルキルリチウム化合物としては、特に限定されないが、例えば、3-ビストリメチルシリルアミノプロピルリチウム、及び4-トリメチルシリルメチルアミノブチルリチウムが挙げられる。
【0121】
ジアルキルアミノリチウムとしては、特に限定されないが、例えば、リチウムジメチルアミド、リチウムジエチルアミド、リチウムジプロピルアミド、リチウムジブチルアミド、リチウムジ-n-ヘキシルアミド、リチウムジへプチルアミド、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムジオクチルアミド、リチウム-ジ-2-エチルへキシルアミド、リチウムジデシルアミド、リチウムエチルプロピルアミド、リチウムエチルブチルアミド、リチウムエチルベンジルアミド、リチウムメチルフェネチルアミド、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピペリジド、リチウムヘプタメチレンイミド、リチウムモルホリド、1-リチオアザシクロオクタン、6-リチオ-1,3,3-トリメチル-6-アザビシクロ[3.2.1]オクタン、及び1-リチオ-1,2,3,6-テトラヒドロピリジンが挙げられる。
【0122】
これらの置換アミノ基を有する有機モノリチウム化合物は、重合可能な単量体、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン、又はスチレン等の単量体を少量反応させることにより、可溶化したオリゴマーの有機モノリチウム化合物として用いることもできる。
【0123】
重合開始剤がアミノ基を構成する窒素原子を有する場合は、アニオン重合が進行した際に連鎖移動反応が起こりやすく、重合終了後の活性末端に対するカップリング剤又は変性剤の反応量が低くなる傾向にある。その結果、アミノ基を構成する窒素原子を有する重合開始剤を用いると、重量平均分子量が小さくなる傾向にある。
そのため、重量平均分子量40×104以上、45×104以上、又は60×104以上の比較的高分子量の重合体において、変性率を高く設定したい場合、重合開始末端側ではなく、重量終了末端側に窒素原子を反応させることが好ましい。すなわち、比較的高分子量であって、かつ、両末端に窒素原子を含む重合体は製造しにくい傾向にある。重量平均分子量やカップリング剤及び変性剤の構造にもよるが、終了末端側のみに窒素原子を有する場合、重合体の窒素含有量は3質量ppm~500質量ppmが一般的である。
【0124】
工業的入手の容易さ及び重合反応のコントロールの容易さの観点からは、有機モノリチウム化合物として、アルキルリチウム化合物を用いてもよい。このような有機モノリチウム化合物を用いる場合、重合開始末端にアルキル基を有する、共役ジエン系重合体を得ることができる。
【0125】
アルキルリチウム化合物としては、特に限定されないが、例えば、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、n-ヘキシルリチウム、ベンジルリチウム、フェニルリチウム、及びスチルベンリチウムが挙げられる。
【0126】
アルキルリチウム化合物としては、工業的入手の容易さ及び重合反応のコントロールの容易さの観点から、n-ブチルリチウム、及びsec-ブチルリチウムが好ましい。
【0127】
これらの有機モノリチウム化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、他の有機金属化合物と併用してもよい。
【0128】
他の有機金属化合物としては、特に限定されないが、例えば、アルカリ土類金属化合物、リチウム以外のアルカリ金属化合物、及びその他の有機金属化合物が挙げられる。
【0129】
アルカリ土類金属化合物としては、特に限定されないが、例えば、有機マグネシウム化合物、有機カルシウム化合物、及び有機ストロンチウム化合物が挙げられる。また、アルカリ土類金属のアルコキサイド、スルフォネート、カーボネート、及びアミドの化合物も挙げられる。
【0130】
有機マグネシウム化合物としては、例えば、ジブチルマグネシウム、及びエチルブチルマグネシウムが挙げられる。
【0131】
その他有機金属化合物としては、例えば、有機アルミニウム化合物が挙げられる。
【0132】
重合開始剤の添加量は、目標とする共役ジエン系重合体又は変性共役ジエン系重合体の分子量によって決めることが好ましい。重合開始剤の添加量に対する、単量体の添加量の比により、数平均分子量及び/又は重量平均分子量を制御することができる。具体的には、重合開始剤の添加量の割合を小さくすると、分子量が増大する傾向にあり、重合開始剤の添加量の割合を大きくすると、分子量が小さくなる傾向にある。
【0133】
本実施形態の共役ジエン系重合体を確実かつ簡便に得ることができる観点から、重合分岐工程は、不活性溶媒中で行うことが好ましい。そのような不活性溶媒としては、特に限定されないが、例えば、飽和炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素系溶媒が挙げられる。具体的な炭化水素系溶媒としては、特に限定されないが、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、及びヘプタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、及びメチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、及びキシレン等の芳香族炭化水素;並びにそれらの混合物からなる炭化水素が挙げられる。
【0134】
共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とが一層ランダムに重合した共役ジエン系重合体を得ることができる観点から、重合分岐工程における重合反応は、例えば、特開昭59-140211号公報に記載されているような以下の方法を用いてもよい。すなわち、まず、芳香族ビニル化合物の全量と共役ジエン化合物の一部とを用いて重合反応を開始させ、その後、重合反応の途中で残りの共役ジエン化合物を断続的に添加する方法を用いてもよい。
【0135】
重合分岐工程の重合反応における重合温度は、特に限定されないが、リビングアニオン重合が進行する温度であることが好ましい。また、生産性を向上させる観点から、0℃以上であることがより好ましく、0℃以上120℃以下であることが更に好ましい。重合反応における重合温度が上記の範囲内にあることで、後述するカップリング工程において、カップリング変性剤との反応性を十分に高めることができる傾向にある。同様の観点から、重合反応における重合温度は、更により好ましくは50℃以上100℃以下である。
【0136】
重合分岐工程においては、極性化合物を添加してもよい。極性化合物を添加する場合、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とが一層ランダムに共重合した共役ジエン系重合体を得ることができる傾向にある。このように、極性化合物は、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との共重合において有効なランダム化効果を有するため、芳香族ビニル化合物の分布の調整やスチレンブロック量の調整剤として用いることができる。また、極性化合物は、重合反応を促進させることができ、かつ、共役ジエン系重合体のミクロ構造を制御するためのビニル化剤としても用いることができる。
【0137】
このように、極性化合物は、ビニル化剤、ランダム化剤、及び重合促進剤として用いられるため、例えばビニル化率、ランダム化率の調整のために極性化合物を低減した場合、重合促進効果も減ってしまう傾向がある。したがって、重合終了末端にカップリング変性剤を反応させることにより重合体の分岐度を調整する方法では、極性化合物の添加量を低減した場合、重合時間が長くなり、失活する重合終了末端の割合が高くなる。その結果、そのような方法では、変性率が上がりにくい傾向がある。すなわち、極性化合物の添加量の調整と、カップリング変性剤により、変性共役ジエン系重合体の分岐度を調整しようとする場合、ビニル化率やランダム化率が制御しにくいという傾向がある。この点、本実施形態の製造方法は、後述の分岐化剤によって重合体の分岐度を高めることができるため、ビニル化率やランダム化率と独立に分岐度を制御でき、重合体の構造設計上有利である。
【0138】
極性化合物としては、特に限定されないが、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジメトキシベンゼン、及び2,2-ビス(2-オキソラニル)プロパン等のエーテル類;テトラメチルエチレンジアミン、ジピペリジノエタン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、及びキヌクリジン等の第3級アミン化合物;カリウム-tert-アミラート、カリウム-tert-ブチラート、ナトリウム-tert-ブチラート、及びナトリウムアミラート等のアルカリ金属アルコキシド化合物;並びにトリフェニルホスフィン等のホスフィン化合物を用いることができる。これらの極性化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0139】
極性化合物の添加量としては、特に限定されないが、重合活性末端の量、すなわち、重合開始剤の添加量に応じて調整することができる。極性化合物の添加量としては、例えば、重合開始剤1モルに対して、0.010モル以上1.0モル以下であることが好ましく、0.10モル以上0.70モル以下であることがより好ましい。極性化合物の添加量は、上記の範囲において、重合開始剤1モルに対して、0.60モル以下又は0.50モル以下であってもよい。あるいは、重合開始剤1モルに対して、0.15モル以上又は0.20モル以上であってもよい。極性化合物の添加量が上記の上限以下であると、Tgの低い共役ジエン化合物が得られる傾向にある。また極性化合物の添加量が上記の下限以上であると重合活性末端が失活することを抑制し、後述のカップリング工程におけるカップリング率が向上する傾向にある。極性化合物の添加量は、上記の上限値及び下限値を任意に組み合わせた範囲内としてもよい。
【0140】
本実施形態の製造方法は重合分岐工程の前に、不純物を取り除く工程を有していてもよい。特に、上述した単量体、重合開始剤、及び/又は不活性溶媒に不純物としてアレン類、及びアセチレン類が含まれる場合、本実施形態の製造方法は重合分岐工程の前に、不純物を取り除く工程を有することが好ましい。不純物を取り除く工程を有することにより、高濃度の活性末端を有する共役ジエン系重合体が得られる傾向にあり、後述するカップリング工程において高い変性率の変性共役ジエン系重合体が得られる傾向にある。そのような不純物を取り除く工程としては、特に限定されないが、例えば、有機金属化合物で処理する工程が挙げられる。そのような有機金属化合物としては、特に限定されないが、例えば、有機リチウム化合物が挙げられ、有機リチウム化合物としては、特に限定されないが、例えば、n-ブチルリチウムが挙げられる。
【0141】
重合分岐工程において、後述する分岐化剤を添加することにより、共役ジエン系重合体において分岐反応が開始する。分岐化剤を添加した後は、反応系中では、共役ジエン系重合体が成長する重合反応と、共役ジエン系重合体が分岐する分岐反応とが競争して生じる。したがって、分岐化剤の種類及び添加量、並びに分岐化剤を添加するタイミングにより、重合分岐工程において得られる共役ジエン系重合体の重量平均分子量、数平均分子量、これらの比(Mw/Mn)及び絶対分子量、並びに共役ジエン系重合体の分岐度、分岐点の数、分岐点における分岐の数を制御することが可能である。
【0142】
また、共役ジエン系重合体の重合中に分岐化剤を添加することで、反応系内における共役ジエン系重合体の活性末端の総量を重合開始剤の添加量に比べて減少させることができ、添加する極性化合物が少なくても重合初期の反応を促進させ、重合活性末端の活性を維持することができる。その結果、結合芳香族ビニル量及びビニル結合量が上記した所定の範囲にある本実施形態の共役ジエン系重合体について、重合終了末端のカップリング率、及び/又は、変性率を容易に向上させることができる。また、変性率を容易に向上させることができるため、変性剤として多分岐構造のカップリング変性剤を用いることにより、共役ジエン系重合体の分岐度(Bn)を容易に高くすることができる傾向にある。ただし、本実施形態の共役ジエン系重合体は必ずしもカップリング剤又は変性剤と反応させる必要はない。
【0143】
上記のとおり、共役ジエン系重合体の製造方法において、結合芳香族ビニル量及びビニル結合量のようなミクロ構造の制御を目的として、極性化合物の添加量を調整することができる。結合芳香族ビニル量及びビニル結合量を上記した所定の範囲にするために通常用いられる極性化合物の添加量は、分岐化剤を添加しない場合、反応系内における共役ジエン系重合体の活性末端を維持するという観点から不十分であり、重合活性末端の活性を十分に維持することが容易ではない。また、そのような極性化合物の添加量では、芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物に対するランダム化能が十分に高くはなく、結合芳香族ビニル量及びビニル結合量が上記した所定の範囲にある本実施形態の共役ジエン系重合体においては、重合末端が芳香族ビニル化合物となる傾向にある。そのような状態では、高いカップリング率又は変性率の共役ジエン系重合体を得ることが困難な傾向にあり、したがって、分岐度(Bn)を十分に高めることが困難な傾向にある。
【0144】
分岐工程における、分岐化剤を添加するタイミングは、特に限定されず、製造する共役ジエン系重合体の用途等に応じて適宜選択することができる。得られる共役ジエン系重合体の絶対分子量の向上とカップリング工程における変性率向上の観点から、分岐化剤を添加するタイミングは、重合開始剤添加後、原料転化率が20%以上であるタイミングが好ましく、40%以上であることがより好ましく、50%以上であることが更に好ましく、65%以上であることが更により好ましく、75%以上であることが特に好ましい。すなわち、分岐化剤を添加するタイミングは、重合反応が十分に安定したタイミングであると好ましい。分岐化剤を添加するタイミングを上記の範囲内にすることで、極性化合物の添加量が少なくても、又は添加しなくても、カップリング工程における変性率が一層高い共役ジエン系重合体を得ることができる。
【0145】
分岐化剤としては、特に限定されないが、例えば、下記式(1)又は式(2)で表される化合物を用いることができる。
【0146】
【化11】
【0147】
【化12】
【0148】
ただし、式(1)中、R1は、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基を示し、その一部分に分岐構造を有していてもよく、R2、及びR3は、各々独立して、炭素数1~20のアルキル基又は炭素数6~20のアリール基を示し、その一部分に分岐構造を有していてもよく、X1は、各々独立してハロゲン原子を示し、mは0~2の整数を示し、nは、0~3の整数を示し、lは、0~3の整数を示し、m、n、及びlの和は、3である。
また、式(2)中、R2、R3、R4、及びR5は、各々独立して、炭素数1~20のアルキル基又は炭素数6~20のアリール基を示し、その一部分に分岐構造を有していてもよく、X2、及びX3は、各々独立してハロゲン原子を示し、mは、0~2の整数を示し、nは、0~3の整数を示し、lは、0~3の整数を示し、m、n、及びlの和は、3であり、aは、0~3の整数を示し、bは、0~2の整数を示し、cは、0~3の整数を示し、a、b、及びcの和は、3である。
【0149】
その中でも、分岐化剤は、重合反応を阻害することを抑止する観点、及び分岐度向上の観点から、上述した式(1)中、R1が水素原子であり、mが0である化合物であることが好ましい。
【0150】
あるいは、分岐化剤は、分岐度向上の観点から、上述した式(2)中、mが0であり、bが0である化合物であることが好ましい。
【0151】
あるいは、分岐化剤は、重合の継続性と、変性率及び分岐度の向上との観点から、上述した式(1)中、R1が水素原子であり、mが0であり、lが0であり、nが3である化合物であることがより好ましい。
【0152】
あるいは、分岐化剤は、変性率及び分岐度の向上の観点から、上述した式(2)中、mが0であり、lが0であり、nが3であり、aが0であり、bが0であり、cが3である化合物であることが好ましい。
【0153】
式(1)で表される化合物としては、特に限定されないが、例えば、トリメトキシ(4-ビニルフェニル)シラン、トリエトキシ(4-ビニルフェニル)シラン、トリプロポキシ(4-ビニルフェニル)シラン、トリブトキシ(4-ビニルフェニル)シラン、トリイソプロポキシ(4-ビニルフェニル)シラン、トリメトキシ(3-ビニルフェニル)シラン、トリエトキシ(3-ビニルフェニル)シラン、トリプロポキシ(3-ビニルフェニル)シラン、トリブトキシ(3-ビニルフェニル)シラン、トリイソプロポキシ(3-ビニルフェニル)シラン、トリメトキシ(2-ビニルフェニル)シラン、トリエトキシ(2-ビニルフェニル)シラン、トリプロポキシ(2-ビニルフェニル)シラン、トリブトキシ(2-ビニルフェニル)シラン、トリイソプロポキシ(2-ビニルフェニル)シラン、ジメトキシメチル(4-ビニルフェニル)シラン、ジエトキシメチル(4-ビニルフェニル)シラン、ジプロポキシメチル(4-ビニルフェニル)シラン、ジブトキシメチル(4-ビニルフェニル)シラン、ジイソプロポキシメチル(4-ビニルフェニル)シラン、ジメトキシメチル(3-ビニルフェニル)シラン、ジエトキシメチル(3-ビニルフェニル)シラン、ジプロポキシメチル(3-ビニルフェニル)シラン、ジブトキシメチル(3-ビニルフェニル)シラン、ジイソプロポキシメチル(3-ビニルフェニル)シラン、ジメトキシメチル(2-ビニルフェニル)シラン、ジエトキシメチル(2-ビニルフェニル)シラン、ジプロポキシメチル(2-ビニルフェニル)シラン、ジブトキシメチル(2-ビニルフェニル)シラン、ジイソプロポキシメチル(2-ビニルフェニル)シラン、ジメチルメトキシ(4-ビニルフェニル)シラン、ジメチルエトキシ(4-ビニルフェニル)シラン、ジメチルプロポキシ(4-ビニルフェニル)シラン、ジメチルブトキシ(4-ビニルフェニル)シラン、ジメチルイソプロポキシ(4-ビニルフェニル)シラン、ジメチルメトキシ(3-ビニルフェニル)シラン、ジメチルエトキシ(3-ビニルフェニル)シラン、ジメチルプロポキシ(3-ビニルフェニル)シラン、ジメチルブトキシ(3-ビニルフェニル)シラン、ジメチルイソプロポキシ(3-ビニルフェニル)シラン、ジメチルメトキシ(2-ビニルフェニル)シラン、ジメチルエトキシ(2-ビニルフェニル)シラン、ジメチルプロポキシ(2-ビニルフェニル)シラン、ジメチルブトキシ(2-ビニルフェニル)シラン、ジメチルイソプロポキシ(2-ビニルフェニル)シラン、トリメトキシ(4-イソプロぺニルフェニル)シラン、トリエトキシ(4-イソプロぺニルフェニル)シラン、トリプロポキシ(4-イソプロぺニルフェニル)シラン、トリブトキシ(4-イソプロぺニルフェニル)シラン、トリイソプロポキシ(4-イソプロぺニルフェニル)シラン、トリメトキシ(3-イソプロぺニルフェニル)シラン、トリエトキシ(3-イソプロぺニルフェニル)シラン、トリプロポキシ(3-イソプロぺニルフェニル)シラン、トリブトキシ(3-イソプロぺニルフェニル)シラン、トリイソプロポキシ(3-イソプロぺニルフェニル)シラン、トリメトキシ(2-イソプロぺニルフェニル)シラン、トリエトキシ(2-イソプロぺニルフェニル)シラン、トリプロポキシ(2-イソプロぺニルフェニル)シラン、トリブトキシ(2-イソプロぺニルフェニル)シラン、トリイソプロポキシ(2-イソプロぺニルフェニル)シラン、ジメトキシメチル(4-イソプロぺニルフェニル)シラン、ジエトキシメチル(4-イソプロぺニルフェニル)シラン、ジプロポキシメチル(4-イソプロぺニルフェニル)シラン、ジブトキシメチル(4-イソプロぺニルフェニル)シラン、ジイソプロポキシメチル(4-イソプロぺニルフェニル)シラン、ジメトキシメチル(3-イソプロぺニルフェニル)シラン、ジエトキシメチル(3-イソプロぺニルフェニル)シラン、ジプロポキシメチル(3-イソプロぺニルフェニル)シラン、ジブトキシメチル(3-イソプロぺニルフェニル)シラン、ジイソプロポキシメチル(3-イソプロぺニルフェニル)シラン、ジメトキシメチル(2-イソプロぺニルフェニル)シラン、ジエトキシメチル(2-イソプロぺニルフェニル)シラン、ジプロポキシメチル(2-イソプロぺニルフェニル)シラン、ジブトキシメチル(2-イソプロぺニルフェニル)シラン、ジイソプロポキシメチル(2-イソプロぺニルフェニル)シラン、ジメチルメトキシ(4-イソプロぺニルフェニル)シラン、ジメチルエトキシ(4-イソプロぺニルフェニル)シラン、ジメチルプロポキシ(4-イソプロぺニルフェニル)シラン、ジメチルブトキシ(4-イソプロぺニルフェニル)シラン、ジメチルイソプロポキシ(4-イソプロぺニルフェニル)シラン、ジメチルメトキシ(3-イソプロぺニルフェニル)シラン、ジメチルエトキシ(3-イソプロぺニルフェニル)シラン、ジメチルプロポキシ(3-イソプロぺニルフェニル)シラン、ジメチルブトキシ(3-イソプロぺニルフェニル)シラン、ジメチルイソプロポキシ(3-イソプロぺニルフェニル)シラン、ジメチルメトキシ(2-イソプロぺニルフェニル)シラン、ジメチルエトキシ(2-イソプロぺニルフェニル)シラン、ジメチルプロポキシ(2-イソプロぺニルフェニル)シラン、ジメチルブトキシ(2-イソプロぺニルフェニル)シラン、ジメチルイソプロポキシ(2-イソプロぺニルフェニル)シラン、トリクロロ(4-ビニルフェニル)シラン、トリクロロ(3-ビニルフェニル)シラン、トリクロロ(2-ビニルフェニル)シラン、トリブロモ(4-ビニルフェニル)シラン、トリブロモ(3-ビニルフェニル)シラン、トリブロモ(2-ビニルフェニル)シラン、ジクロロメチル(4-ビニルフェニル)シラン、ジクロロメチル(3-ビニルフェニル)シラン、ジクロロメチル(2-ビニルフェニル)シラン、ジブロモメチル(4-ビニルフェニル)シラン、ジブロモメチル(3-ビニルフェニル)シラン、ジブロモメチル(2-ビニルフェニル)シラン、ジメチルクロロ(4-ビニルフェニル)シラン、ジメチルクロロ(3-ビニルフェニル)シラン、ジメチルクロロ(2-ビニルフェニル)シラン、ジメチルブロモ(4-ビニルフェニル)シラン、ジメチルブロモ(3-ビニルフェニル)シラン、及びジメチルブロモ(2-ビニルフェニル)シランが挙げられる。
【0154】
これらの中では、トリメトキシ(4-ビニルフェニル)シラン、トリエトキシ(4-ビニルフェニル)シラン、トリプロポキシ(4-ビニルフェニル)シラン、トリブトキシ(4-ビニルフェニル)シラントリイソプロポキシ(4-ビニルフェニル)シラン、トリメトキシ(3-ビニルフェニル)シラン、トリエトキシ(3-ビニルフェニル)シラン、トリプロポキシ(3-ビニルフェニル)シラン、トリブトキシ(3-ビニルフェニル)シラン、トリイソプロポキシ(3-ビニルフェニル)シラン、及びトリクロロ(4-ビニルフェニル)シランが好ましく、トリメトキシ(4-ビニルフェニル)シラン、トリエトキシ(4-ビニルフェニル)シラン、トリプロポキシ(4-ビニルフェニル)シラン、及びトリブトキシ(4-ビニルフェニル)シラントリイソプロポキシ(4-ビニルフェニル)シランがより好ましい。
【0155】
式(2)で表され化合物としては、以下のものに限定されないが、例えば、1,1-ビス(4-トリメトキシシリルフェニル)エチレン、1,1-ビス(4-トリエトキシシリルフェニル)エチレン、1,1-ビス(4-トリプロポキシシシリルフェニル)エチレン、1,1-ビス(4-トリペントキシシリルフェニル)エチレン、1,1-ビス(4-トリイソプロポキシシリルフェニル)エチレン、1,1-ビス(3-トリメトキシシリルフェニル)エチレン、1,1-ビス(3-トリエトキシシリルフェニル)エチレン、1,1-ビス(3-トリプロポキシシシリルフェニル)エチレン、1,1-ビス(3-トリペントキシシリルフェニル)エチレン、1,1-ビス(3-トリイソプロポキシシリルフェニル)エチレン、1,1-ビス(2-トリメトキシシリルフェニル)エチレン、1,1-ビス(2-トリエトキシシリルフェニル)エチレン、1,1-ビス(3-トリプロポキシシシリルフェニル)エチレン、1,1-ビス(2-トリペントキシシリルフェニル)エチレン、1,1-ビス(2-トリイソプロポキシシリルフェニル)エチレン、1,1-ビス(4-(ジメチルメトキシシリル)フェニル)エチレン、1,1-ビス(4-(ジエチルメトキシシリル)フェニル)エチレン、1,1-ビス(4-(ジプロピルメトキシシリル)フェニル)エチレン、1,1-ビス(4-(ジメチルエトキシシリル)フェニル)エチレン、1,1-ビス(4-(ジエチルエトキシシリル)フェニル)エチレン、及び1,1-ビス(4-(ジプロピルエトキシシリル)フェニル)エチレンが挙げられる。
【0156】
これらの中では、1,1-ビス(4-トリメトキシシリルフェニル)エチレン、1,1-ビス(4-トリエトキシシリルフェニル)エチレン、1,1-ビス(4-トリプロポキシシシリルフェニル)エチレン、1,1-ビス(4-トリペントキシシリルフェニル)エチレン、及び1,1-ビス(4-トリイソプロポキシシリルフェニル)エチレンが好ましく、1,1-ビス(4-トリメトキシシリルフェニル)エチレンがより好ましい。
【0157】
このような分岐化剤の添加量は、特に限定されず、製造する共役ジエン系重合体の用途等に応じて適宜選択することができるが、重合開始剤1モルに対して、0.020モル以上0.50モル以下であることが好ましく、0.030モル以上0.40モル以下であることがより好ましく、0.040モル以上0.25モル以下であることが更に好ましい。分岐化剤の添加量は、上記の範囲において、重合開始剤1モルに対して、0.050モル以上又は0.060モル以上であってもよい。あるいは、重合開始剤1モルに対して、0.20モル以下又は0.18モル以下であってもよい。分岐化剤の添加量は、上記の上限値及び下限値を任意に組み合わせた範囲内としてもよい。
【0158】
重合分岐工程において、分岐化剤を添加した後に反応温度を変えてもよく、変えなくてもよい。
【0159】
重合分岐工程において、分岐化剤を添加した後、さらに共役ジエン系重合体の単量体を追添加してもよく、更にその後分岐化剤を追添加してもよく、更に分岐化剤及び単量体の追添加を繰り返してもよい。
【0160】
追加する単量体は特に限定されないが、カップリング工程における変性率を向上させる観点から、重合分岐工程において最初に単量体として添加したものと同じ単量体を添加することが好ましい。追加する単量体の量は、共役ジエン系重合体の単量体として用いる総量の1.0%以上であってもよく、5.0%以上であってもよく、10%以上であってもよく、15%以上であってもよく、20%以上であってもよい。また、追加する単量体の量は、50%以下であってもよく、40%以下であってもよく、35%以下であってもよい。
【0161】
追加する単量体の量が上記の範囲内にあると、分岐化剤を添加することにより生じる分岐点とカップリング変性剤を添加することにより生じる分岐点間の分子量が長くなるため、直線性の高い分子構造を取りやすい傾向となる。得られる共役ジエン系重合体をそのような構造とすることにより、加硫物とした際に共役ジエン系重合体の分子鎖同士の絡み合いが増加し、耐摩耗性、操縦安定性及び破壊強度に優れた加硫物を得られやすい傾向にある。
【0162】
(カップリング工程)
本実施形態の製造方法は、好ましくは、上記の重合分岐工程により得られた分岐構造を有する共役ジエン系重合体を、カップリング変性剤と反応させることにより、変性共役ジエン系重合体を得るカップリング工程を有する。このようなカップリング工程を有すると、重合分岐工程により得られた分岐構造を有する共役ジエン系重合体を、充填剤に親和性又は結合反応性を有する特定官能基により変性させることができる。また、複数の共役ジエン系重合体をカップリングさせることができるため、分岐度(Bn)の高い共役ジエン系重合体を確実かつ簡便に得ることができる。したがって、このようなカップリング工程を有する製造方法は、一層確実かつ簡便に上述した本実施形態の共役ジエン系重合体を得ることができる。
【0163】
そのようなカップリング変性剤としては、充填剤に親和性又は結合反応性を有する特定官能基を有し、共役ジエン系重合体の活性末端に対して反応し得る官能基を2以上有する反応性化合物であれば特に限定されない。そのようなカップリング変性剤としては、例えば、窒素原子及び/又は珪素原子を含有する基を有するカップリング変性剤が挙げられる。本実施形態の効果を有効かつ確実に奏する観点から、カップリング変性剤は、共役ジエン系重合体の活性末端に対して反応し得る官能基を、好ましくは3以上、より好ましくは4以上有する。
【0164】
珪素原子を含有する基を有するカップリング変性剤としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン化シラン化合物、エポキシ化シラン化合物、ビニル化シラン化合物、アルコキシシラン化合物、及び窒素含有基を含むアルコキシシラン化合物が挙げられる。
【0165】
ハロゲン化シラン化合物としては、特に限定されないが、例えば、メチルトリクロロシラン、テトラクロロシラン、トリス(トリメチルシロキシ)クロロシラン、トリス(ジメチルアミノ)クロロシラン、ヘキサクロロジシラン、ビス(トリクロロシリル)メタン、1,2-ビス(トリクロロシリル)エタン、1,2-ビス(メチルジクロロシリル)エタン、1,4-ビス(トリクロロシリル)ブタン、及び1,4-ビス(メチルジクロロシリル)ブタンが挙げられる。
【0166】
エポキシ化シラン化合物としては、特に限定されないが、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、及びエポキシ変性シリコーンが挙げられる。
【0167】
アルコキシシラン化合物としては、特に限定されないが、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、トリフェノキシメチルシラン、1,2-ビス(トリエトキシシリル)エタン、及びメトキシ置換ポリオルガノシロキサンが挙げられる。
【0168】
窒素原子を含有する基を有するカップリング変性剤としては、特に限定されないが、例えば、イソシアナート化合物、イソチオシアナート化合物、イソシアヌル酸誘導体、窒素原子含有カルボニル化合物、窒素原子含有ビニル化合物、窒素原子含有エポキシ化合物、及び窒素原子含有アルコキシシラン化合物等が挙げられる。
【0169】
好ましい窒素原子を含有する基を有するカップリング変性剤としては、活性水素を有しないアミン化合物、活性水素を保護基で置換した保護化アミン化合物、一般式-N=Cで表されるイミン化合物、及びこれらの窒素原子含有化合物と結合したアルコキシシラン化合物が挙げられる。活性水素を有しないアミン化合物としては、例えば、3級アミン化合物が挙げられる。
【0170】
イソシアナート化合物としては、特に限定されないが、例えば、2,4-トリレンジイソシアナート、2,6-トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、ポリメリックタイプのジフェニルメタンジイソシアナート(C-MDI)、フェニルイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、ブチルイソシアナート、及び1,3,5-ベンゼントリイソシアナートが挙げられる。
【0171】
イソシアヌル酸誘導体としては、特に限定されないが、例えば、1,3,5-トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(3-トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-トリ(オキシラン-2-イル)-1,3,5-トリアジナン-2,4,6-トリオン、及び1,3,5-トリス(イソシアナトメチル)-1,3,5-トリアジナン-2,4,6-トリオン、1,3,5-トリビニル-1,3,5-トリアジナン-2,4,6-トリオンが挙げられる。
【0172】
窒素原子含有カルボニル化合物としては、特に限定されないが、例えば、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1-メチル-3-エチル-2-イミダゾリジノン、1-メチル-3-(2-メトキシエチル)-2-イミダゾリジノン、N-メチル-2-ピロリドン、N-メチル-2-ピペリドン、N-メチル-2-キノロン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、メチル-2-ピリジルケトン、メチル-4-ピリジルケトン、プロピル-2-ピリジルケトン、ジ-4-ピリジルケトン、2-ベンゾイルピリジン、N,N,N’,N’-テトラメチル尿素、N,N-ジメチル-N’,N’-ジフェニル尿素、N,N-ジエチルカルバミン酸メチル、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジメチル-N’,N’-ジメチルアミノアセトアミド、N,N-ジメチルピコリン酸アミド、及びN,N-ジメチルイソニコチン酸アミドが挙げられる。
【0173】
窒素原子含有ビニル化合物としては、特に限定されないが、例えば、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミド、N-メチルマレイミド、N-メチルフタルイミド、N,N-ビストリメチルシリルアクリルアミド、モルホリノアクリルアミド、3-(2-ジメチルアミノエチル)スチレン、(ジメチルアミノ)ジメチル-4-ビニルフェニルシラン、4,4’-ビニリデンビス(N,N-ジメチルアニリン)、4,4’-ビニリデンビス(N,N-ジエチルアニリン)、1,1-ビス(4-モルホリノフェニル)エチレン、及び1-フェニル-1-(4-N,N-ジメチルアミノフェニル)エチレンが挙げられる。
【0174】
窒素原子含有エポキシ化合物としては、特に限定されないが、例えば、アミノ基に結合したエポキシ基を含有する炭化水素化合物が挙げられる。また、該炭化水素化合物は更にエーテル基に結合したエポキシ基を有してもよい。このような窒素原子含有エポキシ化合物としては、特に限定されないが、例えば、式(i)で表わされる化合物が挙げられる。
【0175】
【化13】
【0176】
ただし、式(i)中、R7は、2価の炭化水素基、又は、エーテル、エポキシ、及びケトン等のような酸素原子を有する極性基、チオエーテル、及びチオケトン等のような硫黄原子を有する極性基、並びに、3級アミノ基、及びイミノ基等のような窒素原子を有する極性基から選ばれる少なくとも1種の極性基を有する2価の有機基である。
【0177】
2価の炭化水素基としては、飽和又は不飽和の、直鎖状、分岐状、又は環状であってもよい炭化水素基であり、アルキレン基、アルケニレン基、及びフェニレン基等を含む。2価の炭化水素基は、好ましくは炭素数1~20の2価の炭化水素基である。炭素数1~20の2価の炭化水素基としては、特に限定されないが、例えば、メチレン、エチレン、ブチレン、シクロヘキシレン、1,3-ビス(メチレン)-シクロヘキサン、1,3-ビス(エチレン)-シクロヘキサン、o-フェニレン、m-フェニレン、p-フェニレン、m-キシレン、p-キシレン、及びビス(フェニレン)-メタン等が挙げられる。
【0178】
式(i)中、R8は、水素原子、炭素数1~10の1価のアルキル基、又は炭素数6~10のアリール基を示す。
【0179】
式(i)中、R6は、水素原子、炭素数1~10の1価以上のアルキル基、又は炭素数6~10のアリール基を示す。R6の価数は、1以上であり、式(i)中のoと同一である。
【0180】
式(i)中、R9は炭素数1~10の1価の炭化水素基、又は下記式(ii)の構造である。
【0181】
6、及びR8は、互いに結合した環状構造であってもよい。
また、R9が1価の炭化水素基の場合、R8と互いに結合した環状構造であってもよい。ただし、R9に結合しているNとR8とが直接結合している場合のみ、R9は水素原子であってもよい。
【0182】
式(i)中、oは1以上の整数である。
【0183】
【化14】
【0184】
式(ii)中、R1、及びR2は、それぞれ式(i)のR7、及びR8と同義である。
【0185】
窒素原子含有エポキシ化合物としては、好ましくは分子中にジグリシジルアミノ基を1個以上有し、かつグリシドキシ基を1個以上有する窒素原子含有エポキシ化合物である。
【0186】
窒素原子含有エポキシ化合物としては、特に限定されないが、例えば、N,N-ジグリシジル-4-グリシドキシアニリン、1-N,N-ジグリシジルアミノメチル-4-グリシドキシ-シクロヘキサン、4-(4-グリシドキシフェニル)-(N,N-ジグリシジル)アニリン、4-(4-グリシドキシフェノキシ)-(N,N-ジグリシジル)アニリン、4-(4-グリシドキシベンジル)-(N,N-ジグリシジル)アニリン、4-(N,N’-ジグリシジル-2-ピペラジニル)-グリシドキシベンゼン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、4,4-メチレン-ビス(N,N-ジグリシジルアニリン)、1,4-ビス(N,N-ジグリシジルアミノ)シクロヘキサン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-p-フェニレンジアミン、4,4’-ビス(ジグリシジルアミノ)ベンゾフェノン、4-(4-グリシジルピペラジニル)-(N,N-ジグリシジル)アニリン、2-〔2-(N,N-ジグリシジルアミノ)エチル〕-1-グリシジルピロリジン、N,N-ジグリシジルアニリン、4,4’-ジグリシジル-ジベンジルメチルアミン、N,N-ジグリシジルアニリン、N,N-ジグリシジルオルソトルイジン、及びN,N-ジグリシジルアミノメチルシクロヘキサンが挙げられる。これらの中でも、好ましいものとしては、N,N-ジグリシジル-4-グリシドキシアニリン、及び1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンが挙げられる。
【0187】
窒素原子含有アルコキシシラン化合物としては、特に限定されないが、例えば、3-ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3-モルホリノプロピルトリメトキシシラン、3-ピペリジノプロピルトリエトキシシラン、3-ヘキサメチレンイミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-(4-メチル-1-ピペラジノ)プロピルトリエトキシシラン、1-[3-(トリエトキシシリル)-プロピル]-3-メチルヘキサヒドロピリミジン、3-(4-トリメチルシリル-1-ピペラジノ)プロピルトリエトキシシラン、3-(3-トリエチルシリル-1-イミダゾリジニル)プロピルメチルジエトキシシラン、3-(3-トリメチルシリル-1-ヘキサヒドロピリミジニル)プロピルトリメトキシシラン、3-ジメチルアミノ-2-(ジメチルアミノメチル)プロピルトリメトキシシラン、ビス(3-ジメトキシメチルシリルプロピル)-N-メチルアミン、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)-N-メチルアミン、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)メチルアミン、トリス(トリメトキシシリル)アミン、トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)アミン、N,N,N’,N’-テトラ(3-トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、3-イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、3-シアノプロピルトリメトキシシラン、2,2-ジメトキシ-1-(3-トリメトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジエトキシ-1-(3-トリエトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジメトキシ-1-(4-トリメトキシシリルブチル)-1-アザ-2-シラシクロヘキサン、2,2-ジメトキシ-1-(3-ジメトキシメチルシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジメトキシ-1-フェニル-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジエトキシ-1-ブチル-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジメトキシ-1-メチル-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジメトキシ-8-(4-メチルピペラジニル)メチル-1,6-ジオキサ-2-シラシクロオクタン、及び2,2-ジメトキシ-8-(N,N-ジエチルアミノ)メチル-1,6-ジオキサ-2-シラシクロオクタンが挙げられる。
【0188】
特に好ましい、窒素原子含有アルコキシシラン化合物としては、特に限定されないが、例えば、トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)アミン、トリス(3-トリエトキシシリルプロピル)アミン、トリス(3-トリプロポキシシリルプロピル)アミン、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)-[3-(2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]アミン、テトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-プロパンジアミン(「N,N,N’,N’-テトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-プロパンジアミン」ともいう。)、トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)-[3-(1-メトキシ-2-トリメチルシリル-1-シラ-2-アザシクロペンタン)プロピル]-1,3-プロパンジアミン、トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)-[3-(1-メトキシ-2-メチル-1-シラ-2-アザシクロペンタン)プロピル]-1,3-プロパンジアミン、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)-[3-(2,2-ジエトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]-[3-(1-エトキシ-2-トリメチルシリル-1-シラ-2-アザシクロペンタン)プロピル]-1,3-プロパンジアミン、テトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)-[3-(2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、テトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,6-ヘキサメチレンジアミン、ペンタキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-ジエチレントリアミン、トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)-メチル-1,3-プロパンジアミン、テトラキス[3-(2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]シラン、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)-ビス[3-(2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]シラン、トリス[3-(2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]-(3-トリメトキシシリルプロピル)シラン、トリス[3-(2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]-[3-(1-メトキシ-2-トリメチルシリル-1-シラ-2-アザシクロペンタン)プロピル]シラン、3-トリス[2-(2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)エトキシ]シリル-1-トリメトキシシリルプロパン、1-[3-(1-メトキシ-2-トリメチルシリル-1-シラ-2-アザシクロペンタン)プロピル]-3,4,5-トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)-シクロヘキサン、1-[3-(2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]-3,4,5-トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)-シクロヘキサン、3,4,5-トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)-シクロヘキシル-[3-(2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]エーテル、(3-トリメトキシシリルプロピル)ホスフェイト、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)-[3-(2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]ホスフェイト、ビス[3-(2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]-(3-トリメトキシシリルプロピル)ホスフェイト、トリス[3-(2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]ホスフェイト、N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-(トリメトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-ベンジリデン-3-(トリエトキシシリル)プロパン-1-アミン、N-ベンジリデン-3-(トリメトキシシリル)プロパン-1-アミン、1,1-(1,4-フェニレン)ビス(N-(3(トリエトキシシリル)プロピル)メタンアミン)、1,1-(1,4-フェニレン)ビス(N-(3(トリメトキシシリル)プロピル)メタンアミン)、2-メトキシ-2-メチル-1-(ベンジリデンアミノエチル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、及び2-メトキシ-2-メチル-1-(4-メトキシベンジリデンアミノエチル)-1-アザ-2-シラシクロペンタンが挙げられる。
【0189】
窒素原子を含有する基を有するカップリング変性剤のうち、活性水素を保護基で置換した保護化アミン化合物としては、不飽和結合及び保護化アミンを分子中に有する化合物が挙げられる。そのような化合物としては、特に限定されないが、例えば、4,4’-ビニリデンビス〔N,N-ビス(トリメチルシリル)アニリン〕、4,4’-ビニリデンビス〔N,N-ビス(トリエチルシリル)アニリン〕、4,4’-ビニリデンビス〔N,N-ビス(t-ブチルジメチルシリル)アニリン〕、4,4’-ビニリデンビス〔N-メチル-N-(トリメチルシリル)アニリン〕、4,4’-ビニリデンビス〔N-エチル-N-(トリメチルシリル)アニリン〕、4,4’-ビニリデンビス〔N-メチル-N-(トリエチルシリル)アニリン〕、4,4’-ビニリデンビス〔N-エチル-N-(トリエチルシリル)アニリン〕、4,4’-ビニリデンビス〔N-メチル-N-(t-ブチルジメチルシリル)アニリン〕、4,4’-ビニリデンビス〔N-エチル-N-(t-ブチルジメチルシリル)アニリン〕、1-〔4-N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノフェニル〕-1-〔4-N-メチル-N-(トリメチルシリル)アミノフェニル〕エチレン、及び1-〔4-N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノフェニル〕-1-〔4-N,N-ジメチルアミノフェニル〕エチレンが挙げられる。
【0190】
窒素原子を含有する基を有するカップリング変性剤のうち、活性水素を保護基で置換した保護化アミン化合物としては、アルコキシシラン及び保護化アミンを分子中に有する化合物が挙げられる。そのような化合物としては、特に限定されないが、例えば、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリメトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノエチルメチルジエトキシシラン、N,N-ビス(トリエチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-(4-トリメチルシリル-1-ピペラジノ)プロピルトリエトキシシラン、3-(3-トリエチルシリル-1-イミダゾリジニル)プロピルメチルジエトキシシラン、3-(3-トリメチルシリル-1-ヘキサヒドロピリミジニル)プロピルトリメトキシシラン、2,2-ジメトキシ-1-(3-トリメトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジエトキシ-1-(3-トリエトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジメトキシ-1-(4-トリメトキシシリルブチル)-1-アザ-2-シラシクロヘキサン、2,2-ジメトキシ-1-(3-ジメトキシメチルシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジメトキシ-1-フェニル-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジエトキシ-1-ブチル-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジメトキシ-1-メチル-1-アザ-2-シラシクロペンタン、N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-メチル(ジメトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-メチル(ジエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(1-メチルエチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(1-メチルエチリデン)-3-(トリメトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(1-メチルエチリデン)-3-メチル(ジメトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(1-メチルエチリデン)-3-メチル(ジエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-エチリデン-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-エチリデン-3-(トリメトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-エチリデン-3-メチル(ジメトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-エチリデン-3-メチル(ジエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(1-メチルプロピリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(1-メチルプロピリデン)-3-(トリメトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(1-メチルプロピリデン)-3-メチル(ジメトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(1-メチルプロピリデン)-3-メチル(ジエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-ベンジリデン-3-メチル(ジメトキシシリル)プロパン-1-アミン、N-ベンジリデン-3-メチル(ジエトキシシリル)プロパン-1-アミン、N-4-メチルベンジリデン-3-(トリエトキシシリル)プロパン-1-アミン、N-4-メチルベンジリデン-3-(トリメトキシシリル)プロパン-1-アミン、N-4-メチルベンジリデン-3-メチル(ジメトキシシリル)プロパン-1-アミン、N-4-メチルベンジリデン-3-メチル(ジエトキシシリル)プロパン-1-アミン、N-ナフチリデン-3-(トリエトキシシリル)プロパン-1-アミン、N-ナフチリデン-3-(トリメトキシシリル)プロパン-1-アミン、N-ナフチリデン-3-メチル(ジメトキシシリル)プロパン-1-アミン、1,1-(1,4-フェニレン)ビス(N-(3メチル(ジメトキシシリル)プロピル)メタンアミン)、1,1-(1,4-フェニレン)ビス(N-(3メチル(ジエトキシシリル)プロピル)メタンアミン)、2-エトキシ-2-メチル-1-(ベンジリデンアミノエチル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、及び2-メトキシ-2-メチル-1-(メチルイソブチリデンアミノエチル)-1-アザ-2-シラシクロペンタンが挙げられる。
【0191】
カップリング工程において、下記式(i)又は下記式(A)~(D)のいずれかで表されるカップリング変性剤を用いることが好ましい。
【0192】
【化15】
【0193】
ただし、式(A)中、R12、R13、R14、及びR15は、各々独立して、炭素数1~20のアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基を示し、R16は、炭素数1~10のアルキレン基を示し、R17は、炭素数1~20のアルキレン基を示し、qは、1又は2の整数を示し、rは、2又は3の整数を示し、q及びrの和は、4以上の整数である。
【0194】
【化16】
【0195】
ただし、式(B)中、R18、R19、R20、R21、R22、及びR23は、各々独立して、炭素数1~20のアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基を示し、R24、R25、及びR26は、各々独立して、炭素数1~20のアルキレン基を示し、s、t、及びuは、各々独立して、1~3の整数を示し、s、t、及びuの和は、4以上の整数である。
【0196】
【化17】
【0197】
ただし、式(C)中、Aは、炭素数1~20の炭化水素基、又は、酸素原子、窒素原子、珪素原子、硫黄原子、及びリン原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を有し、かつ、活性水素を有しない有機基を示し、R27、R28、及びR29は、各々独立に、単結合又は炭素数1~20のアルキレン基を示し、R30、R31、R32、R33、及びR35は、各々独立に、炭素数1~20のアルキル基を示し、R34、及びR37は、各々独立に、炭素数1~20のアルキレン基を示し、R36は、各々独立して炭素数1~20のアルキル基、又はトリアルキルシリル基を示し、wは、各々独立して1~3の整数を示し、xは、各々独立して1又は2を示し、iは、0~6の整数を示し、jは、0~6の整数を示し、kは、0~6の整数を示し、i、j、及びkの和は、4~10の整数である。
【0198】
【化18】
【0199】
ただし、式(D)中、R36は、炭素数1~20のアルキレン基を示し、R37、R39、及びR40は、各々独立に、炭素数1~20のアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基を示し、R38は、水素原子又は炭素数1~20の炭化水素基を示し、zは、1~3の整数を示す。
【0200】
式(A)で表されるカップリング変性剤としては、特に限定されないが、例えば、2,2-ジメトキシ-1-(3-トリメトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジエトキシ-1-(3-トリエトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジメトキシ-1-(4-トリメトキシシリルブチル)-1-アザ-2-シラシクロヘキサン、2,2-ジメトキシ-1-(5-トリメトキシシリルペンチル)-1-アザ-2-シラシクロヘプタン、2,2-ジメトキシ-1-(3-ジメトキシメチルシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジエトキシ-1-(3-ジエトキシエチルシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2-メトキシ,2-メチル-1-(3-トリメトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2-エトキシ,2-エチル-1-(3-トリエトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2-メトキシ,2-メチル-1-(3-ジメトキシメチルシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、及び2-エトキシ,2-エチル-1-(3-ジエトキシエチルシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタンが挙げられる。
【0201】
これらの中でも、共役ジエン系重合体とシリカ等の無機充填剤との反応性及び相互作用を高める観点、並びに加工性を高める観点から、式(A)中、qが2、rが3であるものが好ましい。具体的には、2,2-ジメトキシ-1-(3-トリメトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、及び2,2-ジエトキシ-1-(3-トリエトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタンが好ましい。
【0202】
式(A)で表されるカップリング変性剤を用いたカップリング工程における、反応温度、及び反応時間については、特に限定されないが、好ましくは0℃以上120℃以下で、好ましくは30秒以上反応させる。
【0203】
式(A)で表されるカップリング変性剤の添加量は、式(A)で表される化合物中のシリル基に結合したアルコキシ基の合計モル数が、重合開始剤の添加モル数の0.5倍以上3.0倍以下となる範囲であることが好ましく、0.6倍以上2.5倍以下となる範囲であることがより好ましく、0.8以上2.0倍以下となる範囲であることが更に好ましい。得られる変性共役ジエン系重合体の変性率、分子量、及び分岐構造を一層好ましい範囲とする観点から、0.5倍以上とすることが好ましい。また、分岐度が過度に高まることにより、加工性が低下することを抑制する観点から、3.0倍以下とすることが好ましい。
【0204】
より具体的には、重合開始剤のモル数が、式(A)で表されるカップリング変性剤のモル数に対して、好ましくは3.0倍以上、より好ましくは4.0倍以上となるように重合開始剤及び式(A)で表されるカップリング変性剤の添加量を調整すればよい。
【0205】
式(B)で表されるカップリング変性剤としては、特に限定されないが、例えば、トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)アミン、トリス(3-メチルジメトキシシリルプロピル)アミン、トリス(3-トリエトキシシリルプロピル)アミン、トリス(3-メチルジエトキシシリルプロピル)アミン、トリス(トリメトキシシリルメチル)アミン、トリス(2-トリメトキシシリルエチル)アミン、及びトリス(4-トリメトキシシリルブチル)アミンが挙げられる。
【0206】
これらの中でも、共役ジエン系重合体とシリカ等の無機充填剤との反応性及び相互作用を高める観点、並びに加工性を高める観点から、式(B)中、n、m、及びlが全て3であるものが好ましい。具体的には、トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)アミン、及びトリス(3-トリエトキシシリルプロピル)アミンが挙げられる。
【0207】
式(B)で表されるカップリング変性剤を用いたカップリング工程における、反応温度、及び反応時間については、特に限定されないが、好ましくは0℃以上120℃以下で、好ましくは30秒以上反応させる。
【0208】
式(B)で表されるカップリング変性剤の添加量は、式(B)で表される化合物中のシリル基に結合したアルコキシ基の合計モル数が、重合開始剤の添加モル数の0.5倍以上3.0倍以下となる範囲であることが好ましく、0.6倍以上2.5倍以下となる範囲であることがより好ましく、0.8以上2.0倍以下となる範囲であることが更に好ましい。得られる変性共役ジエン系重合体の変性率、分子量、及び分岐構造を一層好ましい範囲とする観点から、0.5倍以上とすることが好ましい。また、分岐度が過度に高まることにより、加工性が低下することを抑制する観点から、3.0倍以下とすることが好ましい。
【0209】
より具体的には、重合開始剤のモル数が、式(B)で表されるカップリング変性剤のモル数に対して、好ましくは4.0倍以上、より好ましくは5.0倍以上となるように重合開始剤及び式(B)で表されるカップリング変性剤の添加量を調整すればよい。
【0210】
式(C)中、Aは、好ましくは下記式(iii)~(vi)のいずれかで表される。
【0211】
【化19】
(式(iii)中、B1は、単結合又は炭素数1~20の2価の炭化水素基を示し、aは、1~10の整数を示す。複数存在する場合のB1は、各々独立している。)
【0212】
【化20】
(式(iv)中、B2は、単結合又は炭素数1~20の2価の炭化水素基を示し、B3は、炭素数1~20のアルキル基を示し、aは、1~10の整数を示す。それぞれ複数存在する場合のB2及びB3は、各々独立している。)
【0213】
【化21】
(式(v)中、B4は、単結合又は炭素数1~20の2価の炭化水素基を示し、aは、1~10の整数を示す。複数存在する場合のB4は、各々独立している。)
【0214】
【化22】
(式(vi)中、B5は、単結合又は炭素数1~20の2価の炭化水素基を示し、aは、1~10の整数を示す。複数存在する場合のB5は、各々独立している。)
【0215】
式(C)において、Aが式(iii)で表される場合のカップリング変性剤としては、特に限定されないが、例えば、トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)アミン、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)-[3-(2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]アミン、ビス[3-(2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]-(3-トリメトキシシリルプロピル)アミン、トリス[3-(2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]アミン、トリス(3-エトキシシリルプロピル)アミン、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)-[3-(2,2-ジエトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]アミン、ビス[3-(2,2-ジエトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]-(3-トリエトキシシリルプロピル)アミン、トリス[3-(2,2-ジエトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]アミン、テトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-プロパンジアミン、トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)-[3-(2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]-1,3-プロパンジアミン、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)-ビス[3-(2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]-1,3-プロパンジアミン、トリス[3-(2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]-(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-プロパンジアミン、テトラキス[3-(2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]-1,3-プロパンジアミン、トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)-[3-(1-メトキシ-2-トリメチルシリル-1-シラ-2-アザシクロペンタン)プロピル]-1,3-プロパンジアミン、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)-[3-(2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]-[3-(1-メトキシ-2-トリメチルシリル-1-シラ-2-アザシクロペンタン)プロピル]-1,3-プロパンジアミン、ビス[3-(2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]-(3-トリメトキシシリルプロピル)-[3-(1-メトキシ-2-トリメチルシリル-1-シラ-2-アザシクロペンタン)プロピル]-1,3-プロパンジアミン、トリス[3-(2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]-[3-(1-メトキシ-2-トリメチルシリル-1-シラ-2-アザシクロペンタン)プロピル]-1,3-プロパンジアミン、テトラキス(3-トリエトキシシリルプロピル)-1,3-プロパンジアミン、トリス(3-トリエトキシシリルプロピル)-[3-(2,2-ジエトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]-1,3-プロパンジアミン、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)-ビス[3-(2,2-ジエトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]-1,3-プロパンジアミン、トリス[3-(2,2-ジエトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]-(3-トリエトキシシリルプロピル)-1,3-プロパンジアミン、テトラキス[3-(2,2-ジエトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]-1,3-プロパンジアミン、トリス(3-トリエトキシシリルプロピル)-[3-(1-エトキシ-2-トリメチルシリル-1-シラ-2-アザシクロペンタン)プロピル]-1,3-プロパンジアミン、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)-[3-(2,2-ジエトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]-[3-(1-エトキシ-2-トリメチルシリル-1-シラ-2-アザシクロペンタン)プロピル]-1,3-プロパンジアミン、ビス[3-(2,2-ジエトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]-(3-トリエトキシシリルプロピル)-[3-(1-エトキシ-2-トリメチルシリル-1-シラ-2-アザシクロペンタン)プロピル]-1,3-プロパンジアミン、トリス[3-(2,2-ジエトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]-[3-(1-エトキシ-2-トリメチルシリル-1-シラ-2-アザシクロペンタン)プロピル]-1,3-プロパンジアミン、テトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)-[3-(2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)-ビス[3-(2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、トリス[3-(2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]-(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、テトラキス[3-(2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]-1,3-プロパンジアミン、トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)-[3-(1-メトキシ-2-トリメチルシリル-1-シラ-2-アザシクロペンタン)プロピル]-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)-[3-(2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]-[3-(1-メトキシ-2-トリメチルシリル-1-シラ-2-アザシクロペンタン)プロピル]-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビス[3-(2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]-(3-トリメトキシシリルプロピル)-[3-(1-メトキシ-2-トリメチルシリル-1-シラ-2-アザシクロペンタン)プロピル]-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、トリス[3-(2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]-[3-(1-メトキシ-2-トリメチルシリル-1-シラ-2-アザシクロペンタン)プロピル]-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、テトラキス(3-トリエトキシシリルプロピル)-1,3-プロパンジアミン、トリス(3-トリエトキシシリルプロピル)-[3-(2,2-ジエトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)-ビス[3-(2,2-ジエトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、トリス[3-(2,2-ジエトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]-(3-トリエトキシシリルプロピル)-1,3-プロパンジアミン、テトラキス[3-(2,2-ジエトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]-1,3-プロパンジアミン、トリス(3-トリエトキシシリルプロピル)-[3-(1-エトキシ-2-トリメチルシリル-1-シラ-2-アザシクロペンタン)プロピル]-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)-[3-(2,2-ジエトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]-[3-(1-エトキシ-2-トリメチルシリル-1-シラ-2-アザシクロペンタン)プロピル]-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビス[3-(2,2-ジエトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]-(3-トリエトキシシリルプロピル)-[3-(1-エトキシ-2-トリメチルシリル-1-シラ-2-アザシクロペンタン)プロピル]-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、トリス[3-(2,2-ジエトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]-[3-(1-エトキシ-2-トリメチルシリル-1-シラ-2-アザシクロペンタン)プロピル]-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、テトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,6-ヘキサメチレンジアミン、及びペンタキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-ジエチレントリアミンが挙げられる。
【0216】
式(C)において、Aが式(iv)で表される場合のカップリング変性剤としては、特に限定されないが、例えば、トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)-メチル-1,3-プロパンジアミン、ビス(2-トリメトキシシリルプロピル)-[3-(2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]-メチル-1,3-プロパンジアミン、ビス[3-(2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]-(3-トリメトキシシリルプロピル)-メチル-1,3-プロパンジアミン、トリス(3-トリエトキシシリルプロピル)-メチル-1,3-プロパンジアミン、ビス(2-トリエトキシシリルプロピル)-[3-(2,2-ジエトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]-メチル-1,3-プロパンジアミン、ビス[3-(2,2-ジエトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]-(3-トリエトキシシリルプロピル)-メチル-1,3-プロパンジアミン、N1,N1’-(プロパン-1,3-ジイル)ビス(N1-メチル-N3,N3-ビス(3-(トリメトキシシリル)プロピル)-1,3-プロパンジアミン)、及びN1-(3-(ビス(3-(トリメトキシシリル)プロピル)アミノ)プロピル)-N1-メチル-N3-(3-(メチル(3-(トリメトキシシリル)プロピル)アミノ)プロピル)-N3-(3-(トリメトキシシリル)プロピル)-1,3-プロパンジアミンが挙げられる。
【0217】
式(C)において、Aが式(v)で表される場合のカップリング変性剤としては、特に限定されないが、例えば、テトラキス[3-(2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]シラン、トリス[3-(2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]-(3-トリメトキシシリルプロピル)シラン、トリス[3-(2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]-[3-(1-メトキシ-2-トリメチルシリル-1-シラ-2-アザシクロペンタン)プロピル]シラン、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)-ビス[3-(2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]シラン、(3-トリメトキシシリル)-[3-(1-メトキシ-2-トリメチルシリル-1-シラ-2-アザシクロペンタン)-ビス[3-(2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]シラン、ビス[3-(1-メトキシ-2-トリメチルシリル-1-シラ-2-アザシクロペンタン)-ビス[3-(2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]シラン、トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)-[3-(2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]シラン、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)-[3-(1-メトキシ-2-トリメチルシリル-1-シラ-2-アザシクロペンタン)プロピル]-[3-(2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]シラン、ビス[3-(1-メトキシ-2-トリメチルシリル-1-シラ-2-アザシクロペンタン)プロピル]-ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)シラン、及びビス(3-トリメトキシシリルプロピル)-ビス[3-(1-メトキシ-2-メチル-1-シラ-2-アザシクロペンタン)プロピル]シランが挙げられる。
【0218】
式(C)において、Aが式(vi)で表される場合のカップリング変性剤としては、特に限定されないが、例えば、3-トリス[2-(2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)エトキシ]シリル-1-(2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロパン、及び3-トリス[2-(2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)エトキシ]シリル-1-トリメトキシシリルプロパンが挙げられる。
【0219】
式(C)において、Aは、より好ましくは式(iii)又は式(iv)で表され、kは、0である。そのようなカップリング変性剤を用いて得られる共役ジエン系重合体は、その加硫物としたときにおける耐摩耗性及び低ヒステリシスロス性に一層優れる傾向にある。そのようなカップリング変性剤としては、特に限定されないが、例えば、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)-[3-(2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]アミン、トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)アミン、トリス(3-トリエトキシシリルプロピル)アミン、トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)-[3-(2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]-1,3-プロパンジアミン、テトラキス[3-(2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]-1,3-プロパンジアミン、テトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-プロパンジアミン、テトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)-メチル-1,3-プロパンジアミン、及びビス[3-(2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]-(3-トリスメトキシシリルプロピル)-メチル-1,3-プロパンジアミンが挙げられる。
【0220】
式(C)において、Aが、更に好ましくは式(iii)又は式(iv)で表され、kが、0であり、式(iii)又は式(iv)において、aが、2~10の整数である。そのようなカップリング変性剤を用いて得られる共役ジエン系重合体は、その加硫物としたときにおける耐摩耗性及び低ヒステリシスロス性に一層優れる傾向にある。そのようなカップリング変性剤としては、特に限定されないが、例えば、テトラキス[3-(2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]-1,3-プロパンジアミン、テトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-プロパンジアミン、テトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、及びN1-(3-(ビス(3-(トリメトキシシリル)プロピル)アミノ)プロピル)-N1-メチル-N3-(3-(メチル(3-(トリメトキシシリル)プロピル)アミノ)プロピル)-N3-(3-(トリメトキシシリル)プロピル)-1,3-プロパンジアミンが挙げられる。
【0221】
式(C)で表されるカップリング変性剤の添加量は、重合開始剤の添加モル数と式(C)で表されるカップリング変性剤の添加モル数との比を基準として決めることが好ましい。そのようにすることで、共役ジエン系重合体と、変性剤とを、所望の化学量論比率で反応させるよう調整することができ、その結果、所望の星形高分子構造を有する共役ジエン系重合体を得ることができる傾向にある。
【0222】
より具体的には、重合開始剤のモル数が、式(C)で表されるカップリング変性剤のモル数に対して、好ましくは5.0倍以上、より好ましくは6.0倍以上となるように、重合開始剤及び式(C)で表されるカップリング変性剤の添加量を調整すればよい。この場合、式(C)において、変性剤の官能基数(例えば、i及びjが2以上であって、w及びxが複数存在する場合に、それらw及びxがそれぞれ等しいとき、w×i+(x+1)×j+kである)が、5~10の整数であることが好ましく、6~10の整数であることがより好ましい。
【0223】
式(D)で表されるカップリング変性剤としては、特に限定されないが、例えば、N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-(トリメトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-メチル(ジメトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-メチル(ジエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(1-メチルエチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(1-メチルエチリデン)-3-(トリメトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(1-メチルエチリデン)-3-メチル(ジメトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(1-メチルエチリデン)-3-メチル(ジエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-エチリデン-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-エチリデン-3-(トリメトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-エチリデン-3-メチル(ジメトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-エチリデン-3-メチル(ジエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(1-メチルプロピリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(1-メチルプロピリデン)-3-(トリメトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(1-メチルプロピリデン)-3-メチル(ジメトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(1-メチルプロピリデン)-3-メチル(ジエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-ベンジリデン-3-(トリエトキシシリル)プロパン-1-アミン、N-ベンジリデン-3-(トリメトキシシリル)プロパン-1-アミン、N-ベンジリデン-3-メチル(ジメトキシシリル)プロパン-1-アミン、N-ベンジリデン-3-メチル(ジエトキシシリル)プロパン-1-アミン、N-4-メチルベンジリデン-3-(トリエトキシシリル)プロパン-1-アミン、N-4-メチルベンジリデン-3-(トリメトキシシリル)プロパン-1-アミン、N-4-メチルベンジリデン-3-メチル(ジメトキシシリル)プロパン-1-アミン、N-4-メチルベンジリデン-3-メチル(ジエトキシシリル)プロパン-1-アミン、N-ナフチリデン-3-(トリエトキシシリル)プロパン-1-アミン、N-ナフチリデン-3-(トリメトキシシリル)プロパン-1-アミン、N-ナフチリデン-3-メチル(ジメトキシシリル)プロパン-1-アミン、1,1-(1,4-フェニレン)ビス(N-(3(トリエトキシシリル)プロピル)メタンアミン)、1,1-(1,4-フェニレン)ビス(N-(3(トリメトキシシリル)プロピル)メタンアミン)、1,1-(1,4-フェニレン)ビス(N-(3メチル(ジメトキシシリル)プロピル)メタンアミン)、1,1-(1,4-フェニレン)ビス(N-(3メチル(ジエトキシシリル)プロピル)メタンアミン)、2-メトキシ-2-メチル-1-(ベンジリデンアミノエチル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2-メトキシ-2-メチル-1-(p-メトキシベンジリデンアミノエチル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2-エトキシ-2-メチル-1-(ベンジリデンアミノエチル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、及び2-メトキシ-2-メチル-1-(メチルイソブチリデンアミノエチル)-1-アザ-2-シラシクロペンタンが挙げられる。
【0224】
式(D)で表されるカップリング変性剤を用いたカップリング工程における、反応温度、及び反応時間については、特に限定されないが、好ましくは0℃以上120℃以下で、好ましくは30秒以上反応させる。
【0225】
式(D)で表されるカップリング変性剤の添加量は、式(D)で表される化合物中のシリル基に結合したアルコキシ基(OR40)の合計モル数が、重合開始剤の添加モル数の0.2倍以上2.0倍以下となる範囲であることが好ましく、0.3倍以上1.5倍以下となる範囲であることがより好ましい。得られる共役ジエン系重合体の変性率、及び分子量を一層好ましい範囲とする観点から、0.2倍以上とすることが好ましい。また、分岐度が過度に高まることにより、加工性が低下することを抑制する観点から、2.0倍以下とすることが好ましい。
【0226】
より具体的には、重合開始剤のモル数が、式(D)で表されるカップリング変性剤のモル数に対して、好ましくは0.5倍以上、より好ましくは1.0倍以上である。となるように、重合開始剤及び式(D)で表されるカップリング変性剤の添加量を調整すればよい。
【0227】
本実施形態の製造方法は、カップリング工程後、及び/又はカップリング工程前に、縮合促進剤を添加することにより、縮合反応を生じさせる縮合反応工程を有していてもよい。
【0228】
本実施形態の製造方法は、カップリング工程に代えて、カップリング変性剤以外の変性剤を用いる変性工程を有してもよい。
【0229】
本実施形態の製造方法は、変性共役ジエン系重合体又は共役ジエン系重合体における共役ジエン部を水素化する水素化工程を有してもよい。変性共役ジエン系重合体又は共役ジエン系重合体の共役ジエン部を水素化する方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
【0230】
好ましい水素化工程として、触媒の存在下、重合体溶液に気体状水素を吹き込むことにより、変性共役ジエン系重合体又は共役ジエン系重合体の共役ジエン部を水素化する方法が挙げられる。用いる触媒としては、特に限定されないが、例えば、貴金属を多孔質無機物質に担持させた触媒等の不均一系触媒;並びに、ニッケル、コバルト等の塩を可溶化し有機アルミニウム等と反応させた触媒、及びチタノセン等のメタロセンを用いた触媒等の均一系触媒が挙げられる。これら中でも、よりマイルドな水素化条件を選択できる観点から、チタノセン触媒が好ましい。また、変性共役ジエン系重合体又は共役ジエン系重合体の芳香族基を水素化する方法としては、貴金属の担持触媒を用いる方法が挙げられる。
【0231】
また、気体状水素を用いない水素化工程としては、水素化触媒と、重合体溶液とを接触させる方法が挙げられる。そのような水素化触媒としては、特に限定されないが、例えば、(1)Ni,Pt,Pd,又はRu等の金属をカーボン、シリカ、アルミナ、又はケイソウ土等に担持させた担持型不均一系水添触媒、(2)Ni,Co,Fe,若しくはCr等の有機酸塩又はアセチルアセトン塩等の遷移金属塩と有機アルミニウム等の還元剤とを用いる、いわゆるチーグラー型水添触媒、(3)Ti,Ru,Rh,又はZr等の有機金属化合物等のいわゆる有機金属錯体等が挙げられる。また、その他の水素化触媒としては、特に限定されないが、例えば、特公昭42-8704号公報、特公昭43-6636号公報、特公昭63-4841号公報、特公平1-37970号公報、特公平1-53851号公報、特公平2-9041号公報、及び特開平8-109219号公報に記載された公知の水素化触媒が挙げられる。好ましい水素化触媒としては、チタノセン化合物と還元性有機金属化合物との反応混合物が挙げられる。
【0232】
本実施形態の製造方法において、カップリング工程の後、重合体溶液に、必要に応じて、失活剤、及び/又は中和剤等を添加してもよい。
【0233】
失活剤としては、特に限定されないが、例えば、水、並びにメタノール、エタノール、及びイソプロパノール等のアルコール等が挙げられる。
【0234】
中和剤としては、特に限定されないが、例えば、ステアリン酸、オレイン酸、及びバーサチック酸(炭素数が9~11個であり、かつ、炭素数が10個であるものを主成分とする、分岐の多いカルボン酸の混合物)等のカルボン酸、無機酸の水溶液、並びに炭酸ガスが挙げられる。
【0235】
本実施形態の製造方法は、得られた共役ジエン系重合体を、重合体溶液から取得する工程を有していてもよい。そのような方法としては、公知の方法を用いることができるが、例えば、以下のような方法を用いてもよい。スチームストリッピング等で溶媒を分離した後、重合体を濾別し、更にそれを脱水及び乾燥することにより重合体を得る方法、フラッシングタンクで濃縮し、更にベント押出し機等で脱揮することにより重合体を得る方法、及びドラムドライヤー等で直接脱揮することにより重合体を得る方法等が挙げられる。
【0236】
(共役ジエン系重合体組成物)
本実施形態の共役ジエン系重合体組成物は、共役ジエン系重合体100質量部と、ゴム用軟化剤1.0質量部以上60質量部以下とを、含有する。本実施形態の共役ジエン系重合体に、ゴム用軟化剤を添加することにより、充填剤等を配合した場合の加工性が一層向上した組成物を得ることができる。
【0237】
ゴム用軟化剤としては、特に限定されないが、例えば、伸展油、液状ゴム、及び樹脂等が挙げられる。
【0238】
伸展油としては、例えば、アロマ油、ナフテン油、及びパラフィン油等が挙げられる。これらの中でも、環境安全上の観点、並びにオイルブリード防止及びウェットグリップ性を向上させる観点から、IP346法による多環芳香族(PCA)成分が3質量%以下であるアロマ代替油が好ましい。アロマ代替油としては、特に限定されないが、例えば、Kautschuk Gummi Kunststoffe 52(12)799(1999)に示される、TDAE(Treated Distillate Aromatic Extracts)、MES(Mild Extraction Solvate)、及びRAE(Residual Aromatic Extracts)が挙げられる。
【0239】
液状ゴムとしては、特に限定されないが、例えば、液状ポリブタジエン、及び液状スチレン-ブタジンゴム等が挙げられる。
【0240】
ゴム用軟化剤として液状ゴムを用いる場合、上記した効果に加えて、更に、共役ジエン系重合体組成物のガラス転移温度を下げることができるため、その加硫物の耐摩耗性、低ヒステリシスロス性、及び低温特性が一層向上する傾向にある。
【0241】
樹脂としては、特に限定されないが、例えば、芳香族系石油樹脂、クマロン・インデン樹脂、テルペン系樹脂、ロジン誘導体(桐油樹脂を含む)、トール油、トール油の誘導体、ロジンエステル樹脂、天然及び合成のテルペン樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、芳香族炭化水素樹脂、混合脂肪族-芳香族炭化水素樹脂、クマリン-インデン樹脂、フェノール樹脂、p-tert-ブチルフェノール-アセチレン樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、キシレン-ホルムアルデヒド樹脂、モノオレフィンのオリゴマー、ジオレフィンのオリゴマー、芳香族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、水素化芳香族炭化水素樹脂、環式脂肪族炭化水素樹脂、水素化炭化水素樹脂、炭化水素樹脂、水素化桐油樹脂、水素化油樹脂、並びに水素化油樹脂と単官能又は多官能アルコールとのエステル等が挙げられる。これら樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、これらの樹脂を水素化する場合、不飽和基を全て水添してもよく、一部残してもよい。
【0242】
ゴム用軟化剤として樹脂を用いる場合、上記した効果に加えて、更に、共役ジエン系重合体組成物の加硫物の破壊強度が一層向上する傾向にある。
【0243】
ゴム用軟化剤の添加量は、本実施形態の共役ジエン系重合体100質量部に対して1.0質量部以上60質量部以下であれば特に限定されないが、好ましくは3.0質量部以上50質量部以下、より好ましくは5.0質量部以上40質量部以下、さらに好ましくは10質量部以上35質量部以下である。ゴム用軟化剤を上記の範囲内で添加すると、充填剤等を配合したときの加工性が一層良好となり、その加硫物の破壊強度及び耐摩耗性が一層良好となる傾向にある。
【0244】
ゴム用軟化剤を共役ジエン系重合体に添加する方法としては、特に限定されないが、例えば、ゴム用軟化剤を共役ジエン系重合体溶液に添加し、混合した後、当該重合体溶液を脱溶媒する方法が挙げられる。
【0245】
本実施形態の共役ジエン系重合体組成物は、ゲル生成を抑制する観点、及び加工時の安定性を向上させる観点から、更にゴム用安定剤を含んでもよい。
【0246】
ゴム用安定剤としては、特に限定されず、公知のものを用いることができるが、例えば、2,6-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシトルエン(以下、「BHT」ともいう。)、n-オクタデシル-3-(4’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェノール)プロピネート、及び2-メチル-4,6-ビス[(オクチルチオ)メチル]フェノール等の酸化防止剤が挙げられる。
【0247】
(ゴム組成物)
本実施形態のゴム組成物は、ゴム成分と、該ゴム成分100質量部に対して5.0質量部以上150質量部以下の充填剤とを含み、ゴム成分は、該ゴム成分の総量100質量部に対して、本実施形態の共役ジエン系重合体又は共役ジエン系重合体組成物を10質量部以上含む。本実施形態の共役ジエン系重合体を含むゴム成分に充填剤を分散させることにより、加硫する際の加工性に一層優れ、その加硫物の低ヒステリシスロス性、破壊特性、及び耐摩耗性が一層優れるゴム組成物を得ることができる。また、ゴム成分が本実施形態の共役ジエン系重合体又は共役ジエン系重合体組成物を所定の割合で含むことにより、省燃費性能、加工性、及び耐摩耗性が一層向上する。
【0248】
充填剤としては、特に限定されないが、例えば、シリカ系無機充填剤、カーボンブラック、金属酸化物、及び金属水酸化物が挙げられる。これらの中でも、シリカ系無機充填剤が好ましい。特に、本実施形態のゴム組成物が、タイヤ、防振ゴム等の自動車部品、靴等の加硫ゴム用途に用いられる場合には、シリカ系無機充填剤を含むことが特に好ましい。このような充填剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0249】
シリカ系無機充填剤としては、特に限定されず、公知のものを用いることができるが、SiO2又はSi3Alを構成単位として含む固体粒子が好ましく、SiO2又はSi3Alを構成単位の主成分として含む固体粒子がより好ましい。ここで、主成分とは、シリカ系無機充填剤中に50質量%超、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上含有される成分をいう。
【0250】
具体的なシリカ系無機充填剤としては、特に限定されないが、例えば、シリカ、クレイ、タルク、マイカ、珪藻土、ウォラストナイト、モンモリロナイト、ゼオライト、及びガラス繊維等の無機繊維状物質が挙げられる。また、表面を疎水化したシリカ系無機充填剤、及びシリカ系無機充填剤とシリカ系以外の無機充填剤との混合物を用いてもよい。これらの中でも、ゴム組成物の強度及び耐摩耗性が一層向上する観点から、シリカ又はガラス繊維が好ましく、シリカがより好ましい。シリカとしては、特に限定されないが、例えば、乾式シリカ、湿式シリカ、及び合成ケイ酸塩シリカが挙げられる。これらのシリカの中でも、ゴム組成物の破壊強度が一層向上する観点から、湿式シリカが好ましい。
【0251】
実用上良好な耐摩耗性及び破壊強度を有するゴム組成物を一層確実に得る観点から、シリカ系無機充填剤のBET吸着法で求められる窒素吸着比表面積は、100m2/g以上300m2/g以下であることが好ましく、170m2/g以上250m2/g以下であることがより好ましい。また必要に応じて、比較的比表面積が小さい(例えば、比表面積が200m2/g以下)シリカ系無機充填剤と、比較的比表面積の大きい(例えば、200m2/g以上)シリカ系無機充填剤とを組み合わせて用いてもよい。本実施形態において、特に比較的比表面積の大きい(例えば、200m2/g以上)シリカ系無機充填剤を用いる場合、共役ジエン系重合体又は共役ジエン系重合体組成物は、シリカの分散性を一層向上させる。その結果、得られるゴム組成物は、一層優れた耐摩耗性、破壊強度及び低ヒステリシスロス性を有する傾向にある。
【0252】
カーボンブラックとしては、特に限定されないが、例えば、SRF、FEF、HAF、ISAF、及びSAF等の各クラスのカーボンブラックが挙げられる。これらの中でも、BET吸着法で求められる窒素吸着比表面積が50m2/g以上、かつ、ジブチルフタレート(DBP)吸油量が80mL/100g以下のカーボンブラックが好ましい。
【0253】
金属酸化物としては、化学式Mxy(Mは、金属原子を示し、x及びyは、各々独立して、1~6の整数を示す。)を構成単位の主成分とする固体粒子であれば特に限られないが、例えば、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、及び酸化亜鉛が挙げられる。
【0254】
金属水酸化物としては、特に限定されないが、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、及び水酸化ジルコニウムが挙げられる。
【0255】
本実施形態のゴム組成物中の充填剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、5.0質量部以上150質量部であり、20質量部以上100質量部以下が好ましく、30質量部以上90質量部以下がより好ましい。充填剤が上記の範囲内にあることにより、ゴム組成物は、加硫する際の加工性に一層優れ、その加硫物の低ヒステリシスロス性、破壊特性、及び耐摩耗性が一層優れる傾向にある。
【0256】
本実施形態のゴム組成物は、ドライグリップ性能及び導性等のタイヤ等の用途に求められる性能を確実に付与する観点から、カーボンブラックを、共役ジエン系重合体を含むゴム成分100質量部に対して、0.5質量部以上100質量部以下で含むことが好ましい。同様の観点から、ゴム組成物は、カーボンブラックを、共役ジエン系重合体を含むゴム成分100質量部に対して、より好ましくは3.0質量部以上100質量部以下、更に好ましくは5.0質量部以上50質量部以下で含む。
【0257】
本実施形態のゴム組成物は、更にシランカップリング剤を含んでもよい。ゴム組成物がシランカップリング剤を含むことにより、ゴム成分と充填剤との相互作用を一層向上させることができる。シランカップリング剤としては、特に限定されないが、例えば、硫黄結合部分とアルコキシシリル基又はシラノール基部分とを一分子中に有する化合物が好ましい。このような化合物としては、特に限定されないが、例えば、ビス-[3-(トリエトキシシリル)-プロピル]-テトラスルフィド、ビス-[3-(トリエトキシシリル)-プロピル]-ジスルフィド、及びビス-[2-(トリエトキシシリル)-エチル]-テトラスルフィドが挙げられる。
【0258】
本実施形態のゴム組成物において、シランカップリング剤の含有量は、充填剤100質量部に対して、0.1質量部以上30質量部以下が好ましく、0.5質量部以上20質量部以下がより好ましく、1.0質量部以上15質量部以下がさらに好ましい。シランカップリング剤の含有量が上記範囲であると、ゴム成分と充填剤との相互作用を一層向上させることができる傾向にある。
【0259】
本実施形態のゴム組成物は、ゴム成分として、本実施形態の共役ジエン系重合体以外のゴム状重合体(以下、単に「ゴム状重合体」という。)を含んでいてもよい。
【0260】
ゴム状重合体としては、特に限定されないが、例えば、共役ジエン系重合体及びその水素添加物、共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物とのランダム共重合体及びその水素添加物、共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物とのブロック共重合体及びその水素添加物、非ジエン系重合体、並びに天然ゴムが挙げられる。
【0261】
具体的なゴム状重合体としては、特に限定されないが、例えば、ブタジエンゴム及びその水素添加物、イソプレンゴム及びその水素添加物、スチレン-ブタジエンゴム及びその水素添加物、スチレン-ブタジエンブロック共重合体及びその水素添加物、スチレン-イソプレンブロック共重合体及びその水素添加物等のスチレン系エラストマー、並びにアクリロニトリル-ブタジエンゴム及びその水素添加物が挙げられる。
【0262】
非ジエン系重合体としては、特に限定されないが、例えば、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、エチレン-ブテン-ジエンゴム、エチレン-ブテンゴム、エチレン-ヘキセンゴム、及びエチレン-オクテンゴム等のオレフィン系エラストマー、ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、α、β-不飽和ニトリル-アクリル酸エステル-共役ジエン共重合ゴム、ウレタンゴム、並びに多硫化ゴムが挙げられる。
【0263】
天然ゴムとしては、特に限定されないが、例えば、スモークドシートであるRSS3~5号、SMR、及びエポキシ化天然ゴムが挙げられる。
【0264】
ゴム状重合体は、水酸基、アミノ基等の極性を有する官能基を付与した変性ゴムであってもよい。本実施形態のゴム組成物をタイヤ用に用いる場合、ゴム状重合体は、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、天然ゴム、及びブチルゴムからなる群より選択される1種以上であることが好ましい。
【0265】
ゴム状重合体の重量平均分子量は、ゴム組成物の耐摩耗性、破壊強度、及び低ヒステリシスロス性と加工性とのバランスの観点から、2000以上2000000以下であることが好ましく、5000以上1500000以下であることがより好ましい。また、ゴム状重合体として、低分子量のゴム状重合体、いわゆる液状ゴムを用いることもできる。これらのゴム状重合体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0266】
本実施形態のゴム組成物が、共役ジエン系重合体及びゴム状重合体を含む場合、ゴム状重合体に対する共役ジエン系重合体の含有比率(質量比)は、(共役ジエン系重合体/ゴム状重合体)が、10/90以上100/0以下であることが好ましく、20/80以上90/10以下であることがより好ましく、30/70以上80/20以下であることが更に好ましい。すなわち、ゴム成分は、該ゴム成分の総量100質量部に対して、共役ジエン系重合体を、好ましくは10質量部以上100質量部以下含み、より好ましくは20質量部以上90質量部以下含み、さらに好ましくは30質量部以上80質量部以下含むものである。ゴム成分に含まれる共役ジエン系重合体の割合が上記範囲であると、ゴム組成物の加硫物は耐摩耗性及び低ヒステリシスロス性とに一層優れる傾向にある。
【0267】
本実施形態のゴム組成物は、その加工性を一層向上させる観点から、ゴム成分に加えて、ゴム用軟化剤を添加してもよい。
【0268】
ゴム用軟化剤としては、共役ジエン系重合体組成物が含むものとして例示したものと同じものを用いることができるが、鉱物油、又は液状若しくは低分子量の合成軟化剤が好適である。
【0269】
ゴムの軟化、増容、及び加工性の向上を図るために用いられているプロセスオイル又はエクステンダーオイルと呼ばれる鉱物油系ゴム用軟化剤は、芳香族環、ナフテン環、及びパラフィン鎖の混合物である。その中でも、パラフィン鎖に属する炭素数が全炭素数中50%以上であるものがパラフィン系と呼ばれ、ナフテン環に属する炭素数が全炭素数中30%以上45%以下であるものがナフテン系と呼ばれ、芳香族炭素数に属する炭素数が全炭素数中30%を超えるものが芳香族系と呼ばれる。本実施形態のゴム組成物は、ゴム用軟化剤として、適度な芳香族含量を有するものを含むことが好ましい。そのようなゴム用軟化剤を含むことにより、共役ジエン系重合体との馴染みが一層向上する。
【0270】
ゴム組成物におけるゴム用軟化剤の含有量は、予め共役ジエン系重合体組成物又はゴム状重合体に添加してあるゴム用軟化剤の量と、ゴム組成物とする際に添加するゴム用軟化剤の総量で表される。
【0271】
本実施形態のゴム組成物において、ゴム用軟化剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0質量部以上100質量部以下が好ましく、10質量部以上90質量部以下がより好ましく、30質量部以上90質量部以下がさらに好ましい。ゴム用軟化剤の含有量がゴム成分100質量部に対して100質量部以下であることで、ブリードアウトを抑制し、ゴム組成物表面のベタツキを一層抑制することができる。
【0272】
共役ジエン系重合体、共役ジエン系重合体組成物、ゴム状重合体、充填剤、シランカップリング剤、及びゴム用軟化剤等を混合する方法については、特に限定されないが、例えば、オープンロール、バンバリーミキサー、ニーダー、単軸スクリュー押出機、2軸スクリュー押出機、又は多軸スクリュー押出機等の一般的な混和機を用いた溶融混練方法、及び各成分を溶解混合後、溶剤を加熱除去する方法が挙げられる。これらのうち、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー、又は押出機による溶融混練方法が、生産性、及び良混練性の観点から好ましい。また、ゴム成分と、充填剤、シランカップリング剤、及び添加剤とを一度に混練してもよく、複数回に分けて混合してもよい。
【0273】
本実施形態のゴム組成物は、加硫剤により加硫処理を施した加硫物としてもよい。加硫剤としては特に限定されないが、例えば、有機過酸化物及びアゾ化合物等のラジカル発生剤、オキシム化合物、ニトロソ化合物、ポリアミン化合物、硫黄、並びに硫黄化合物が挙げられる。硫黄化合物には、一塩化硫黄、二塩化硫黄、ジスルフィド化合物、及び高分子多硫化合物等が含まれる。
【0274】
本実施形態のゴム組成物において、加硫剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.01質量部以上20質量部以下が好ましく、0.1質量部以上15質量部以下がより好ましい。加硫方法としては、従来公知の方法を用いることができる。また、加硫温度としては、120℃以上200℃以下が好ましく、より好ましくは140℃以上180℃以下である。
【0275】
ゴム組成物を加硫する際、必要に応じて加硫促進剤及び/又は加硫助剤を用いてもよい。加硫促進剤としては、従来公知の材料を用いることができ、特に限定されないが、例えば、スルフェンアミド系、グアニジン系、チウラム系、アルデヒド-アミン系、アルデヒド-アンモニア系、チアゾール系、チオ尿素系、及びジチオカルバメート系の加硫促進剤が挙げられる。また、加硫助剤としては、特に限定されないが、例えば、亜鉛華、及びステアリン酸が挙げられる。加硫促進剤及び加硫助剤の含有量は、それぞれ、ゴム成分100質量部に対して、0.01質量部以上20質量部以下が好ましく、0.1質量部以上15質量部以下がより好ましい。
【0276】
本実施形態のゴム組成物には、本実施形態の効果を阻害しない範囲内で、上述した以外の軟化剤及び充填剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、耐候安定剤、老化防止剤、着色剤、及び滑剤等の各種添加剤を用いてもよい。軟化剤としては、公知の軟化剤を用いることができる。充填剤としては、具体的には、特に限定されないが、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、及び硫酸バリウムが挙げられる。耐熱安定剤、帯電防止剤、耐候安定剤、老化防止剤、着色剤、及び潤滑剤としては、それぞれ公知の材料を用いることができる。
【0277】
本実施形態のゴム組成物は、タイヤ用ゴム組成物として好適に用いられる。本実施形態のゴム組成物は、特に限定されないが、例えば、省燃費タイヤ、オールシーズンタイヤ、高性能タイヤ、及びスタッドレスタイヤ等の各種タイヤ;トレッド、カーカス、サイドウォール、及びビード部等のタイヤ各部位に好適に用いることができる。
【0278】
なお、上記において好ましい範囲等として記載した数値範囲は、特に言及した場合以外でも、上限として記載された各値と下限として記載された各値とを任意に組み合わせた数値範囲に置き換えてもよい。
【実施例
【0279】
以下、具体的な実施例及び比較例を挙げて、本実施形態を更に詳しく説明するが、本実施形態は以下の実施例及び比較例により何ら限定されるものではない。
【0280】
実施例及び比較例における各種の物性は下記に示す方法により測定した。
【0281】
(物性1)GPC測定法により測定される平均分子量
共役ジエン系重合体又は変性共役ジエン系重合体を試料として、ポリスチレン系ゲルを充填剤としたカラムを3本連結したGPC測定装置(東ソー社製の商品名「HLC-8320GPC」)、及び屈折率(RI)検出器(東ソー社製の商品名「HLC8020」)を用いてGPC測定を行った。標準ポリスチレンを用いて得られる検量線に基づいて、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及び分子量分布(Mw/Mn)を求めた。
溶離液は5mmol/Lのトリエチルアミン-THF(テトラヒドロフラン)溶液を用いた。カラムは、東ソー社製の商品名「TSKgel SuperMultiporeHZ-H」を3本接続し、その前段にガードカラムとして東ソー社製の商品名「TSKguardcolumn SuperMP(HZ)-H」を接続して用いた。
測定用の試料10mgを10mLのTHFに溶解して測定溶液とし、測定溶液10μLをGPC測定装置に注入して、オーブン温度40℃、THF流量0.35mL/分の条件で測定した。
測定した結果を当該試料の各平均分子量とした。
【0282】
(物性2)重合体ムーニー粘度
共役ジエン系重合体又は変性共役ジエン系重合体を試料として、ムーニー粘度計(上島製作所社製の商品名「VR1132」)を用い、ISO 289に準拠して、L形ローターを用いてムーニー粘度を測定した。
測定温度は、共役ジエン系重合体を試料とする場合には110℃とし、変性共役ジエン系重合体を試料とする場合には100℃とした。
試料を1分間試験温度で予熱した後、ローターを2rpmで回転させ、4分後のトルクを測定することで、ムーニー粘度(ML(1+4))を測定した。
【0283】
(物性3)分岐度(Bn)
共役ジエン系重合体又は変性共役ジエン系重合体の分岐度(Bn)は、粘度検出器付きGPC-光散乱法測定法によって以下のとおり測定した。共役ジエン系重合体又は変性共役ジエン系重合体を試料として用い、ポリスチレン系ゲルを充填剤としたカラムを3本連結したGPC測定装置(Malvern社製の商品名「GPCmax VE-2001」)と、光散乱検出器、RI検出器、及び粘度検出器がこの順番に接続されている検出器(Malvern社製の商品名「TDA305」)とを用いた。標準ポリスチレンに基づいて、光散乱検出器及びRI検出器の結果から絶対分子量を求め、RI検出器及び粘度検出器の結果から固有粘度を求めた。
溶離液は5mmol/Lのトリエチルアミン-テトラヒドロフラン溶液を用いた。
カラムは、東ソー社製の商品名「TSKgel G4000HXL」、「TSKgel G5000HXL」、及び「TSKgel G6000HXL」をこの順に接続して用いた。
測定用の試料20mgを10mLのTHFに溶解して測定溶液とし、測定溶液100μLをGPC測定装置に注入して、オーブン温度40℃、THF流量1mL/分の条件で測定した。
各試料について、同一の絶対分子量Mを有する直鎖状の重合体の固有粘度[η0]を[η0]=-3.626M0.730の式から算出し、測定された固有粘度[η]と、算出した固有粘度[η0]の比([η]/[η0])を収縮因子(g’)とした。
その後、得られた収縮因子(g’)を用いてg’=6Bn/{(Bn+1)(Bn+2)}の式から分岐度(Bn)を算出した。
【0284】
(物性4)変性率
変性共役ジエン系重合体における変性率をカラム吸着GPC法で以下のとおり測定した。カラム吸着GPC法とは、シリカ系ゲルを充填剤としたGPCカラムに、変性共役ジエン系重合体中の変性した塩基性重合体成分が吸着しやすい特性を利用して、変性重合体の変性率を求める方法である。
変性共役ジエン系重合体を試料として、試料及び低分子量内部標準ポリスチレンを含む試料溶液をポリスチレン系カラムで測定した。また、同様の試料溶液をシリカ系カラムで測定した。ポリスチレン系カラムを用いた測定により得られるクロマトグラムと、シリカ系カラムを用いた測定により得られるクロマトグラムの差分を求めることにより、変性共役ジエン系重合体のシリカ系カラムへの吸着量を測定し、変性率を求めた。
【0285】
試料10mg及び標準ポリスチレン5mgを20mLのTHFに溶解させたものを試料溶液とした。下記の測定条件で変性共役ジエン系重合体における変性率を測定した。
(ポリスチレン系カラムを用いたGPC測定条件)
東ソー社製の商品名「HLC-8320GPC」、及びRI検出器(東ソー社製の商品名「HLC8020」)を用いてGPC測定を行った。
5mmol/Lのトリエチルアミン-THF溶液を溶離液として用い、試料溶液10μLをGPC装置に注入し、カラムオーブン温度40℃、THF流量0.35mL/分の条件でクロマトグラムを得た。
カラムは、東ソー社製の商品名「TSKgel SuperMultiporeHZ-H」を3本接続し、その前段にガードカラムとして東ソー社製の商品名「TSKguardcolumn SuperMP(HZ)-H」を接続して使用した。
(シリカ系カラムを用いたGPC測定条件)
東ソー社製の商品名「HLC-8320GPC」、及びRI検出器(東ソー社製の商品名「HLC8020」)を用いてGPC測定を行った。
THFを溶離液として用い、試料溶液50μLを装置に注入し、カラムオーブン温度40℃、THF流量0.5ml/分の条件でクロマトグラムを得た。
カラムは、アジレント社製の商品名「Zorbax PSM-1000S」、「PSM-300S」、「PSM-60S」をこの順に接続し、その前段にガードカラムとして商品名「DIOL 4.6×12.5mm 5micron」を接続して用いた。
【0286】
変性率の計算方法 : ポリスチレン系カラムを用いた測定により得られるクロマトグラムについて、ピーク面積の全体を100として、試料のピーク面積P1、及び標準ポリスチレンのピーク面積P2を求めた。また、シリカ系カラムを用いた測定により得られるクロマトグラムについて、ピーク面積の全体を100として、試料のピーク面積P3、及び標準ポリスチレンのピーク面積P4を求めた。下記式より変性率(質量%)を求めた。
変性率(質量%)=[1-(P2×P3)/(P1×P4)]×100
(ただし、P1+P2=P3+P4=100)
【0287】
(物性5)結合芳香族ビニル量(結合スチレン量)
共役ジエン系重合体又は変性共役ジエン系重合体を試料として、試料100mgをクロロホルム100mLに溶解して測定試料とした。各試料を分光光度計(島津製作所社製の商品名「UV-2450」)により測定し、吸光スペクトルを得た。スチレンのフェニル基に由来する紫外線(254nm付近)の吸光量から、共役ジエン系重合体又は変性共役ジエン系重合体100質量%に対しての結合スチレン量(質量%)を算出した。
【0288】
(物性6)結合共役ジエン中のビニル結合量(結合ブタジエン中の1,2-ビニル結合量)
共役ジエン系重合体又は変性共役ジエン系重合体を試料として、試料50mgを10mLの二硫化炭素に溶解して測定試料とした。各試料の赤外線スペクトルを600~1000cm-1の範囲で、フーリエ変換赤外分光光度計(日本分光社製の商品名「FT-IR230」)により測定した。ハンプトンの方法(R.R.Hampton,Analytical Chemistry 21,923(1949)に記載の方法)に従い、所定の波数における吸光度から結合ブタジエン中の1,2-ビニル結合量(mol%)を求めた。
【0289】
(物性7)GPC-光散乱法測定法による分子量(絶対分子量)
共役ジエン系重合体又は変性共役ジエン系重合体を試料として、ポリスチレン系ゲルを充填剤としたカラムを3本連結したGPC-光散乱測定装置(マルバーン社製の商品名「Viscotek TDAmax」)を用いてGPC測定を行い、検出器により測定される溶液粘度及び光散乱に基づいて重量平均分子量を求めた。以下、このようなGPC-光散乱法測定法により測定される重量平均分子量を「絶対分子量」ともいう。
溶離液として、トリエチルアミン5mLをテトラヒドロフラン1Lに混合させた溶液を用いた。
カラムは、ガードカラム:東ソー社製の商品名「TSKguardcolumn HHR-H」、カラム:東ソー社製の商品名「TSKgel G6000HHR」、「TSKgel G5000HHR」、及び「TSKgel G4000HHR」をこの順に接続して用いた。
測定用の試料10mgを20mLのTHFに溶解して測定溶液とし、測定溶液200μLをGPC測定装置に注入して、オーブン温度40℃、THF流量1.0mL/分の条件で測定した。
【0290】
(物性8)ガラス転移温度(Tg)
共役ジエン系重合体又は変性共役ジエン系重合体を試料として、ISO 22768:2006に準拠して、示差走査熱量計(マックサイエンス社製の商品名「DSC3200S」)を用いてDSC測定を行った。ヘリウム50mL/分の流通下、20℃/分で-100℃から昇温しながらDSC曲線を記録し、DSC微分曲線のピークトップ(Inflection point)をガラス転移温度(Tg)とした。
【0291】
(実施例1)変性共役ジエン系重合体(A1)
内容積が10Lで、内部の高さ(L)と直径(D)との比(L/D)が4.0であり、底部に入口、頂部に出口を有し、攪拌機及び温度制御用のジャケットを有する槽型圧力容器を重合分岐反応器として2基連結した。
予め水分除去した、1,3-ブタジエン、スチレン、及びn-ヘキサンをそれぞれ、16.6g/分、14.5g/分、及び113.2g/分の条件で混合しながら第1反応器の底部に連続的に供給した。なお、該供給の際、混合溶液が第1反応器に入る直前に、残存不純物を不活性化するためのn-ブチルリチウムを0.114mmol/分の条件で、スタティックミキサーにより混合しながら連続的に添加した。また、1,3-ブタジエン、スチレン、n-ヘキサン、及びn-ブチルリチウムの供給と同時に、極性化合物としての2,2-ビス(2-オキソラニル)プロパン、及び重合開始剤としてのn-ブチルリチウムを、それぞれ0.080mmol/分、及び0.172mmol/分の条件で、反応溶液を攪拌機で激しく撹拌しながら第1反応器の底部へ供給した。更に第1反応器の底部から高さ7/8Lの部位に配置された供給口より、追加の1,3-ブタジエンを5.5g/分の条件で添加した。なお、第1反応器内の温度は77℃に保持した。
【0292】
第1反応器において重合反応が生じることにより生成した共役ジエン系重合体溶液を、第1反応器の頂部より連続的に抜き出し、第2反応器の底部に連続的に供給した。なお、第1反応器の頂部より連続的に抜き出した溶液は、重合が十分に安定していた。また、第2反応器の底部より、共役ジエン系重合体溶液の供給と同時に、分岐化剤としてのトリメトキシ(4-ビニルフェニル)シラン(以下、「BS-1」ともいう。)を0.027mmol/分の条件で供給した。なお、第2反応器内の温度は82℃に保持した。第2反応器の出口から、共役ジエン系重合体溶液を少量抜出し、共役ジエン系重合体100gあたり酸化防止剤(BHT)が0.2gとなるように酸化防止剤(BHT)を添加した後に溶媒を除去した。得られた共役ジエン系重合体の各種の平均分子量(物性1)及びムーニー粘度(物性2)を測定した。測定結果を表1に示す。
【0293】
次に、第2反応器において分岐反応が生じることにより生成した分岐構造を有する共役ジエン系重合体溶液を、第2反応器の頂部より連続的に抜き出し、第2反応器の底部に連続的に供給した。スタティックミキサー中に連続的に流れる重合体溶液に、カップリング変性剤として、テトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-プロパンジアミン(表1中、「a」という。)を0.029mmol/分の条件で連続的に添加することにより分岐構造を有する共役ジエン系重合体をカップリングさせた。このとき、第2反応器の出口より流出した重合体溶液にカップリング変性剤が添加されるまでの時間は4.8分であり、カップリング変性剤を添加した時の重合体溶液の温度は68℃であった。また、第2反応器の出口における重合体溶液の温度と、カップリング変性剤を添加するときの重合体溶液の温度との差は2℃であった。カップリング後の変性共役ジエン系重合体溶液を少量抜出し、重合体100gあたり酸化防止剤(BHT)が0.2gとなるように酸化防止剤(BHT)を添加した後に溶媒を除去した。得られた変性共役ジエン系重合体の結合スチレン量(物性5)及び、結合ブタジエン中の1,2-ビニル結合量(物性6)を測定した。測定結果を表1に示す。
【0294】
次に、スタティックミキサーから流出した重合体溶液に、重合体100gあたり酸化防止剤(BHT)が0.2gとなるように、酸化防止剤(BHT)のn-ヘキサン溶液を0.055g/分の条件で連続的に添加し、カップリング反応を終了させた。酸化防止剤と同時に、ゴム用軟化剤としてS-RAEオイル(JX日鉱日石エネルギー社製 JOMOプロセスNC140)を、重合体100gに対してS-RAEオイルが25.0gとなるように連続的に添加し、スタティックミキサーで混合した。スチームストリッピングにより溶媒を除去することにより、変性共役ジエン系重合体(A1)を得た。変性共役ジエン系重合体(A1)は、一部の主鎖に下記式(1)で表される化合物である分岐化剤由来の4分岐構造を有し、カップリング変性剤由来の3分岐星形高分子構造を有するものである。変性共役ジエン系重合体(A1)の各物性を表1に示す。なお、変性共役ジエン系重合体の構造の同定は、分岐化剤添加前の重合体、分岐化剤添加後の重合体、及びカップリング変性剤添加後の重合体について、GPC測定により測定される平均分子量、及び粘度検出器付きGPC-光散乱法測定法により測定される分岐度を比較することにより行った。以下、同様に各試料の構造を同定した。
【0295】
【化23】
【0296】
ただし、式(1)中、R1は、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基を示し、その一部分に分岐構造を有していてもよく、R2、及びR3は、各々独立して、炭素数1~20のアルキル基又は炭素数6~20のアリール基を示し、その一部分に分岐構造を有していてもよく、X1は、各々独立してハロゲン原子を示し、mは、0~2の整数を示し、nは、0~3の整数を示し、lは、0~3の整数を示し、m、n、及びlの和は、3である。
【0297】
(実施例2)変性共役ジエン系重合体(A2)
1,3-ブタジエンを19.2g/分、スチレンを9.5g/分、n-ヘキサンを115.4g/分、残存不純物処理用のn-ブチルリチウムを0.094mmol/分、重合開始剤としてのn-ブチルリチウムを0.208mmol/分、追加の1,3-ブタジエンを6.4g/分、分岐化剤としてのBS-1を0.028mmol/分、及びカップリング変性剤としてのテトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-プロパンジアミンを0.028mmol/分の条件で供給したこと以外は、実施例1と同様にして、変性共役ジエン系重合体(A2)を得た。A2の物性を表1に示す。
【0298】
(実施例3)変性共役ジエン系重合体(A3)
1,3-ブタジエンを20.9g/分、スチレンを10.4g/分、n-ヘキサンを108.2g/分、残存不純物処理用のn-ブチルリチウムを0.062mmol/分、極性化合物としての2,2-ビス(2-オキソラニル)プロパンを0.067mmol/分、重合開始剤としてのn-ブチルリチウムを0.151mmol/分、追加の1,3-ブタジエンを6.9g/分、分岐化剤としてのBS-1を0.017mmol/分の条件で供給し、かつ、カップリング変性剤としてテトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-プロパンジアミンに代えて、N-ベンジリデン-3-(トリエトキシシリル)プロパン-1-アミン(表1中、「b」という。)を用い、カップリング変性剤の供給条件を0.086mmol/分としたこと以外は、実施例1と同様にして、変性共役ジエン系重合体(A3)を得た。A3の物性を表1に示す。
【0299】
(実施例4)変性共役ジエン系重合体(A4)
1,3-ブタジエンを20.3g/分、スチレンを5.9g/分、n-ヘキサンを115.4g/分、残存不純物処理用のn-ブチルリチウムを0.104mmol/分、極性化合物としての2,2-ビス(2-オキソラニル)プロパンを0.041mmol/分、重合開始剤としてのn-ブチルリチウムを0.208mmol/分、追加の1,3-ブタジエンを6.8g/分、分岐化剤としてのBS-1を0.010mmol/分、カップリング変性剤としてのテトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-プロパンジアミンを0.030mmol/分、ゴム用軟化剤としてのS-RAEオイルを重合体100gに対しS-RAEオイルが5.0gとなるような条件で供給したこと以外は、実施例1と同様にして、変性共役ジエン系重合体(A4)を得た。A4の物性を表1に示す。
【0300】
(実施例5)変性共役ジエン系重合体(A5)
カップリング変性剤としてテトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-プロパンジアミンに代えて、2,2-ジメトキシ-1-(3-トリメトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン(表1中、「c」という。)を用い、かつ、カップリング変性剤の供給条件を0.059mmol/分としたこと以外は、実施例4と同様にして、変性共役ジエン系重合体(A5)を得た。A5の物性を表1に示す。
【0301】
(実施例6)変性共役ジエン系重合体(A6)
スチレンを13.1g/分、極性化合物としての2,2-ビス(2-オキソラニル)プロパンを0.058mmol/分の条件で供給したこと以外は、実施例4と同様にして、変性共役ジエン系重合体(A6)を得た。A6の物性を表1に示す。
【0302】
(実施例7)変性共役ジエン系重合体(A7)
スチレンを13.1g/分、極性化合物としての2,2-ビス(2-オキソラニル)プロパンを0.035mmol/分、重合開始剤としてのn-ブチルリチウムを0.224mmol/分、分岐化剤としてのBS-1を0.011mmol/分、カップリング変性剤としてのテトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-プロパンジアミンを0.032mmol/分の条件で供給し、かつ、第1反応器内の温度を83℃とし、第2反応器内の温度を88℃としたこと以外は、実施例4と同様にして、変性共役ジエン系重合体(A7)を得た。A7の物性を表1に示す。
【0303】
(実施例8)変性共役ジエン系重合体(A8)
カップリング変性剤としてテトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-プロパンジアミンに代えて、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(表1中、「d」という。)を用い、かつ、カップリング変性剤の供給条件を0.059mmol/分としたこと以外は、実施例4と同様にして、変性共役ジエン系重合体(A8)を得た。A8の物性を表1に示す。
【0304】
(実施例9)変性共役ジエン系重合体(A9)
カップリング変性剤としてのテトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-プロパンジアミンを0.014mmol/分の条件で供給したこと以外は、実施例4と同様にして、変性共役ジエン系重合体(A9)を得た。A9の物性を表1に示す。
【0305】
(実施例10)共役ジエン系重合体(A10)
重合開始剤としてのn-ブチルリチウムを0.255mmol/分、極性化合物としての2,2-ビス(2-オキソラニル)プロパンを0.056mmol/分、分岐化剤としてのBS-1を0.045mmol/分とし、カップリング変性剤を添加しないこと以外は、実施例4と同様にして、共役ジエン系重合体(A10)を得た。A10の物性を表1に示す。
【0306】
(実施例11)変性共役ジエン系重合体(A11)
1,3-ブタジエンを15.9g/分、スチレンを17.4g/分、極性化合物としての2,2-ビス(2-オキソラニル)プロパンを0.063mmol/分、重合開始剤としてのn-ブチルリチウムを0.312mmol/分、追加の1,3-ブタジエンを5.3g/分、分岐化剤としてのBS-1を0.014mmol/分、カップリング変性剤としてのテトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-プロパンジアミンを0.040mmol/分の条件で供給し、第1反応器内の温度を83℃とし、第2反応器内の温度を88℃とし、かつゴム用軟化剤としてのS-RAEオイルを加えなかったこと以外は、実施例4と同様にして、変性共役ジエン系重合体(A11)を得た。A11の物性を表1に示す。
【0307】
(実施例12)変性共役ジエン系重合体(A12)
極性化合物としての2,2-ビス(2-オキソラニル)プロパンを0.052mmol/分、重合開始剤としてのn-ブチルリチウムを0.167mmol/分、分岐化剤としてのBS-1を0.008mmol/分、カップリング変性剤としてのテトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-プロパンジアミンを0.019mmol/分の条件で供給し、第1反応器内の温度を82℃とし、第2反応器内の温度を86℃とし、かつゴム用軟化剤としてのS-RAEオイルを重合体100gに対しS-RAEオイルが25.0gとなるような条件で供給したこと以外は、実施例11と同様にして、変性共役ジエン系重合体(A12)を得た。A12の物性を表1に示す。
【0308】
(実施例13)変性共役ジエン系重合体(A13)
スチレンを19.8g/分、極性化合物としての2,2-ビス(2-オキソラニル)プロパンを0.081mmol/分、重合開始剤としてのn-ブチルリチウムを0.172mmol/分、分岐化剤としてのBS-1を0.009mmol/分の条件で供給したこと以外は、実施例12と同様にして、変性共役ジエン系重合体(A13)を得た。A13の物性を表2に示す。
【0309】
(実施例14)変性共役ジエン系重合体(A14)
残存不純物処理用のn-ブチルリチウムを0.104mmol/分、重合開始剤としてのn-ブチルリチウムを0.177mmol/分、極性化合物としての2,2-ビス(2-オキソラニル)プロパンを0.086mmol/分、分岐化剤としてのBS-1を0.019mmol/分の条件で供給し、かつ、カップリング変性剤としてテトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-プロパンジアミンに代えて、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンを用い、カップリング変性剤の供給条件を0.118mmol/分としたこと以外は、実施例3と同様にして、変性共役ジエン系重合体(A14)を得た。A14の物性を表2に示す。
【0310】
(実施例15)変性共役ジエン系重合体(A15)
カップリング変性剤としてのテトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-プロパンジアミンを0.020mmol/分の条件で供給したこと以外は、実施例1と同様にして、変性共役ジエン系重合体(A15)を得た。A15の物性を表2に示す。
【0311】
(実施例16)変性共役ジエン系重合体(A16)
カップリング変性剤としてのテトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-プロパンジアミンを0.019mmol/分の条件で供給したこと以外は、実施例2と同様にして、変性共役ジエン系重合体(A16)を得た。A16の物性を表2に示す。
【0312】
(実施例17)変性共役ジエン系重合体(A17)
分岐化剤としてのBS-1を0.015mmol/分、カップリング変性剤としてのテトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-プロパンジアミンを0.013mmol/分の条件で供給したこと以外は、実施例13と同様にして、変性共役ジエン系重合体(A17)を得た。A17の物性を表2に示す。
【0313】
(実施例18)変性共役ジエン系重合体(A18)
重合開始剤としてn-ブチルリチウム及びピペリジノリチウムを用い、かつ、n-ブチルリチウムを0.062mmol/分、ピペリジノリチウムを0.187mmol/分、残存不純物処理用のn-ブチルリチウムを0.104mmol/分の条件で供給したこと以外は、実施例5と同様にして、変性共役ジエン系重合体(A18)を得た。A18の物性を表2に示す。
【0314】
(実施例19)変性共役ジエン系重合体(A19)
極性化合物としての2,2-ビス(2-オキソラニル)プロパンを0.136mmol/分の条件で供給したこと以外は、実施例2と同様にして、変性共役ジエン系重合体(A19)を得た。A19の物性を表2に示す。
【0315】
(比較例1)変性共役ジエン系重合体(B1)
内容積が10Lで、内部の高さ(L)と直径(D)との比(L/D)が4.0であり、底部に入口、頂部に出口を有し、攪拌機及び温度制御用のジャケットを有する槽型圧力容器を重合分岐反応器として2基連結した。
予め水分除去した、1,3-ブタジエン、スチレン、及びn-ヘキサンをそれぞれ、20.3g/分、5.9g/分、及び115.4g/分の条件で混合しながら第1反応器の底部に連続的に供給した。なお、該供給の際、混合溶液が第1反応器に入る直前に、残存不純物を不活性化するためのn-ブチルリチウムを0.104mmol/分の条件で、スタティックミキサーにより混合しながら連続的に添加した。また、1,3-ブタジエン、スチレン、n-ヘキサン、及びn-ブチルリチウムの供給と同時に、極性化合物としての2,2-ビス(2-オキソラニル)プロパン、及び重合開始剤としてn-ブチルリチウムを、それぞれ、0.041mmol/分、及び0.208mmol/分の条件で、反応溶液を攪拌機で激しく撹拌しながら第1反応器の底部へ供給した。更に第1反応器の底部から高さ7/8Lの部位に配置された供給口より、追加の1,3-ブタジエンを6.8g/分の条件で添加した。なお、第1反応器内の温度は77℃に保持した。
【0316】
第1反応器において重合反応が生じることにより生成した共役ジエン系重合体溶液を、第1反応器の頂部より連続的に抜き出し、第2反応器の底部に連続的に供給した。なお、第2反応器内の温度は82℃に保持した。第2反応器の出口から、共役ジエン系重合体溶液を少量抜出し、共役ジエン系重合体100gあたり酸化防止剤(BHT)が0.2gとなるように酸化防止剤(BHT)を添加した後に溶媒を除去した。得られた共役ジエン系重合体の各種の平均分子量(物性1)、及び110℃におけるムーニー粘度(物性2)を測定した。物性を表2に示す。
【0317】
次に、第2反応器において生成した共役ジエン系重合体溶液を、第2反応器の頂部より連続的に抜き出し、第2反応器の底部に連続的に供給した。スタティックミキサー中に連続的に流れる重合体溶液に、カップリング変性剤として、テトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3プロパンジアミンを0.030mmol/分の条件で連続的に添加することにより共役ジエン系重合体をカップリングさせた。このとき、第2反応器の出口より流出した重合体溶液にカップリング変性剤が添加されるまでの時間は4.8分であり、カップリング変性剤を添加した時の重合体溶液の温度は68℃であった。また、第2反応器の出口における重合体溶液の温度と、カップリング変性剤を添加するときの重合体溶液の温度との差は2℃であった。カップリング後の変性共役ジエン系重合体溶液を少量抜出し、重合体100gあたり酸化防止剤(BHT)が0.2gとなるように酸化防止剤(BHT)を添加した後に溶媒を除去した。得られた変性共役ジエン系重合体の結合スチレン量(物性5)及び、結合ブタジエン中の1,2-ビニル結合量(物性6)を測定した。測定結果を表2に示す。
【0318】
次に、スタティックミキサーから流出した重合体溶液に、重合体100gあたり酸化防止剤(BHT)が0.2gとなるように酸化防止剤(BHT)のn-ヘキサン溶液を0.055g/分の条件で連続的に添加し、カップリング反応を終了させた。酸化防止剤と同時に、ゴム用軟化剤としてS-RAEオイル(JX日鉱日石エネルギー社製 JOMOプロセスNC140)を、重合体100gに対してS-RAEオイルが5.0gとなるように連続的に添加し、スタティックミキサーで混合した。スチームストリッピングにより溶媒を除去することにより、変性共役ジエン系重合体(B1)を得た。変性共役ジエン系重合体(B1)の各物性を表2に示す。なお、変性共役ジエン系重合体の構造の同定は、カップリング変性剤添加前後の重合体について、GPC測定により測定される平均分子量、及び粘度検出器付きGPC-光散乱法測定法により測定される分岐度を比較することにより行った。以下、同様に各試料の構造を同定した。
【0319】
(比較例2)変性共役ジエン系重合体(B2)
カップリング変性剤としてテトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-プロパンジアミンに代えて、2,2-ジメトキシ-1-(3-トリメトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタンを用い、かつ、カップリング変性剤の供給条件を0.059mmol/分としたこと以外は、比較例1と同様にして、変性共役ジエン系重合体(B2)を得た。B2の物性を表2に示す。
【0320】
(比較例3)変性共役ジエン系重合体(B3)
1,3-ブタジエンを15.7g/分、スチレンを22.7g/分、n-ヘキサンを106g/分、極性化合物としての2,2-ビス(2-オキソラニル)プロパンを0.271mmol/分、重合開始剤としてのn-ブチルリチウムを0.177mmol/分、追加の1,3-ブタジエンを6.7g/分、分岐化剤としてのBS-1を0.019mmol/分、カップリング変性剤としての2,2-ジメトキシ-1-(3-トリメトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタンを0.054mmol/分の条件で供給し、さらにゴム用軟化剤としてのS-RAEオイルを重合体100gに対しS-RAEオイルが25.0gとなるような条件で供給したこと以外は、実施例5と同様にして、変性共役ジエン系重合体(B3)を得た。B3の物性を表2に示す。
【0321】
(比較例4)変性共役ジエン系重合体(B4)
1,3-ブタジエンを19.5g/分、スチレンを12.7g/分、極性化合物としての2,2-ビス(2-オキソラニル)プロパンを0.451mmol/分、重合開始剤としてのn-ブチルリチウムを0.364mmol/分、追加の1,3-ブタジエンを4.9g/分、分岐化剤としてのBS-1を7.3mmol/分の条件で供給し、かつ、カップリング変性剤として2,2-ジメトキシ-1-(3-トリメトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタンに代えて、ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン(表2中、「e」という。)を用い、カップリング変性剤の供給条件を0.18mmol/分とし、さらにゴム用軟化剤としてのS-RAEオイルを重合体100gに対しS-RAEオイルが10.0gとなるような条件で供給したこと以外は、比較例3と同様にして、変性共役ジエン系重合体(B4)を得た。B4の物性を表2に示す。
【0322】
(比較例5)変性共役ジエン系重合体(B5)
極性化合物としての2,2-ビス(2-オキソラニル)プロパンを0.206mmol/分の条件で供給したこと以外は、実施例19と同様にして、変性共役ジエン系重合体(B5)を得た。B5の物性を表2に示す。
【0323】
【表1】
【表2】
【0324】
(ゴム組成物の評価)
表1~2に示す変性共役ジエン系重合体又は共役ジエン系重合体A1~A19及びB1~B5を原料として、以下に示す配合で、それぞれゴム組成物を得た。
【0325】
変性共役ジエン系重合体又は共役ジエン系重合体(A1~A19、又はB1~B5のいずれか):100質量部(オイル抜き)
シリカ(エボニック デグサ社製の商品名「Ultrasil 7000GR」窒素吸着比表面積170m2/g):75.0質量部
カーボンブラック(東海カーボン社製の商品名「シーストKH(N339)」):5.0質量部
シランカップリング剤(エボニック デグサ社製の商品名「Si75」、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド):6.0質量部
S-RAEオイル(JX日鉱日石エネルギー社製の商品名「プロセスNC140」):32.0質量部
亜鉛華:2.5質量部
ステアリン酸:2.0質量部
老化防止剤(N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン):2.0質量部
硫黄:1.7質量部
加硫促進剤1(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフィンアミド):1.7質量部
加硫促進剤2(ジフェニルグアニジン):2.0質量部
【0326】
具体的には、上記した材料を次の方法により混練してゴム組成物を得た。温度制御装置を備える密閉混練機(内容量0.3L)を用いて、第1段の混練として、充填率65%、ローター回転数30~50rpmの条件で、変性共役ジエン系重合体又は共役ジエン系重合体(A1~A19、又はB1~B5のいずれか)、充填剤(シリカ、カーボンブラック)、シランカップリング剤、S-RAEオイル、亜鉛華、及びステアリン酸を混練した。このとき、密閉混錬機の温度を制御し、排出温度が155~160℃になるように各ゴム組成物(配合物)を得た。
【0327】
次に、第2段の混練として、上記で得た配合物を室温まで冷却後、老化防止剤を加え、第1段の混練と同様の条件でシリカの分散を向上させるため再度混練した。この場合も、混合機の温度制御により、配合物の排出温度が155~160℃になるように調整した。冷却後、第3段の混練として、70℃に設定したオープンロールにて、硫黄、及び加硫促進剤1及び2を加えて混練した。その後、成型し、160℃で20分間、加硫プレスにて加硫した。加硫前のゴム組成物、及び加硫後のゴム組成物を評価した。具体的には、下記の方法により評価した。その結果を表3~6に示す。
【0328】
(評価1)排出物まとまり性
実施例及び比較例に示す方法で製造した未加硫の変性共役ジエン系重合体又は共役ジエン系重合体に関し、加圧ニーダーから排出した直後(混練り1段目における加圧ニーダーによる混練りが終了し、排出された直後)のまとまり(形状)について目視で観察し、以下の基準に基づきパネラー一人当たり5点を満点とし評価した。まとまり性は加硫物の加工性の指標である。
V :シートの端部分が50%以下平滑であり、加工性が非常に悪い
IV :シートの端部分が50%超60%以下平滑であり、加工性が悪い。
III:シートの端部分が60%超80%以下平滑であり、加工性が良い。
II :シートの端部分が80%超90%以下平滑であり、加工性が優れる。
I :シートの端部分が90%超平滑であり、加工性が非常に優れる。
【0329】
(評価2)粘弾性パラメータ(省燃費性・ウェットグリップ性)
レオメトリックス・サイエンティフィック社製の粘弾性試験機「ARES」を使用し、ねじりモードで粘弾性パラメータを測定した。各々の測定値は、実施例9のゴム組成物に対する結果を100として指数化した。50℃において周波数10Hz、ひずみ3%で測定したtanδを、低ヒステリシスロス性、すなわち省燃費性の指標とした。指数が小さいほど省燃費性が良好であることを示す。また、0℃において周波数10Hz、ひずみ1%で測定したtanδを、ウェットグリップ性の指標とした。指数が大きいほどウェットグリップ性が良好であることを示す。
【0330】
(評価3)引張強度及び引張伸び
JIS K6251の引張試験法に準拠し、引張強度及び引張伸びを測定した。各々の測定値は、実施例9の結果を100として標準化した。数値が大きいほど引張強度、引張伸びが良好であることを示す。
【0331】
(評価4)耐摩耗性
アクロン摩耗試験機(安田精機製作所社製)を用い、JIS K6264-2に準拠して、荷重44.4N、1000回転後の摩耗量を測定した。各々の測定値は、実施例9の結果を100として標準化した。数値が大きいほど耐摩耗性が良好であることを示し、かかる数値が90を超えるものを耐摩耗性が優れるものとして評価した。
【0332】
(評価5)経時変化(1か月後のムーニー粘度上昇)
変性共役ジエン系重合体又は共役ジエン系重合体を、常温・常圧下で1か月間保管した後、保管後のムーニー粘度を測定し、重合直後に測定したムーニー粘度との差異を算出した。表中、「δムーニー粘度」と示す。数値が小さいものほど、経時変化が少なく、品質安定性が優れていることを示す。
【0333】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【0334】
表3~6に示す通り、実施例1~19の変性共役ジエン系重合体又は共役ジエン系重合体は、比較例1~5の変性共役ジエン系重合体と比較して、その加硫物が低ヒステリシスロス性に優れ、耐摩耗性にも優れることが確認された。また、加硫する際のまとまり性に優れ、良好な加工性を示すことも確認された。
【0335】
次に、上記の配合に代えて、表1~2に示す変性共役ジエン系重合体A1、A2、A5、A15、A18、B2、又はB4を原料として、以下に示す配合で、それぞれゴム組成物を得た。なお、第1段の混練において、変性共役ジエン系重合体と共にブタジエンゴムを添加したこと以外は、上記と同様の方法によりゴム組成物を得た。その後、上記と同様の方法により、加硫前のゴム組成物、及び加硫後のゴム組成物を評価した。その結果を表7に示す。
【0336】
変性共役ジエン系重合体(A1、A2、A5、A15、A18、B2、又はB4):70質量部(オイル抜き)
ブタジエンゴム(宇部興産製の商品名「BR150」):30質量部
シリカ(エボニック デグサ社製の商品名「Ultrasil 7000GR」窒素吸着比表面積170m2/g):75.0質量部
カーボンブラック(東海カーボン社製の商品名「シーストKH(N339)」):5.0質量部
シランカップリング剤(エボニック デグサ社製の商品名「Si75」、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド):6.0質量部
S-RAEオイル(JX日鉱日石エネルギー社製の商品名「プロセスNC140」):32.0質量部
亜鉛華:2.5質量部
ステアリン酸:2.0質量部
老化防止剤(N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン):2.0質量部
硫黄:1.7質量部
加硫促進剤1(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフィンアミド):1.7質量部
加硫促進剤2(ジフェニルグアニジン):2.0質量部
【0337】
【表7】
【0338】
表7に示す通り、実施例20~24の変性共役ジエン系重合体ゴム組成物は、比較例6~7の変性共役ジエン系重合体ゴム組成物と比較して、その加硫物が低ヒステリシスロス性に優れ、耐摩耗性にも優れることが確認された。また、加硫する際のまとまり性に優れ、良好な加工性を示すことも確認された。このことから、本実施形態の共役ジエン系重合体は、ゴム組成物中のゴム成分全体に対する割合が少ない場合でも、ゴム組成物の加工性と、その加硫物の低ヒステリシスロス性及び耐摩耗性を向上させることができることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0339】
本発明の共役ジエン系重合体、共役ジエン系重合体の製造方法、共役ジエン系重合体組成物、及びゴム組成物は、加硫する際の加工性に優れ、その加硫物が耐摩耗性及び低ヒステリシスロス性に優れるため、タイヤ、樹脂改質、自動車の内装及び外装品、防振ゴム、並びに履物などの用途に好適に用いられ、産業上の利用可能性を有する。