(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-31
(45)【発行日】2023-11-09
(54)【発明の名称】調湿装置および調湿方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/26 20060101AFI20231101BHJP
B01D 53/28 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
B01D53/26 230
B01D53/28
(21)【出願番号】P 2022515425
(86)(22)【出願日】2021-04-15
(86)【国際出願番号】 JP2021015534
(87)【国際公開番号】W WO2021210627
(87)【国際公開日】2021-10-21
【審査請求日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】P 2020074197
(32)【優先日】2020-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153591
【氏名又は名称】株式会社巴川製紙所
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【氏名又は名称】右田 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100160864
【氏名又は名称】高橋 政治
(72)【発明者】
【氏名】津田 統
(72)【発明者】
【氏名】小柳津 昭康
(72)【発明者】
【氏名】土田 実
【審査官】壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-060521(JP,U)
【文献】国際公開第2018/131591(WO,A1)
【文献】特開2017-023995(JP,A)
【文献】特開平05-200235(JP,A)
【文献】特開平06-023229(JP,A)
【文献】特開2001-054717(JP,A)
【文献】特開2011-220567(JP,A)
【文献】特開2004-223366(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/26-53/28
F24F 1/0035-1/0057,1/0083,1/01,1/02,1/027,1/03-1/0317,1/0358,1/04
F24F 3/00-3/167
B01J 20/00-20/28,20/30-20/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
除湿剤からなる除湿剤層を含む調湿部と、
気体が前記除湿剤層を通過するように送風することができる送風用ファンと、
除湿する空間を内部に含む構造物と、
前記調湿部とつながり、前記除湿剤層を通過した気体を前記構造物の内部の空間へ排出する給気口と、
前記送風用ファンとつながり、前記構造物の内部の空間の気体を吸い込む排気口と、
を有し、
前記構造物の鉛直方向の断面において、鉛直方向の両端から内側へ、前記構造物の鉛直方向の長さの20%の範囲内である両端部に、各々、前記給気口と前記排気口とが存在する、
または、
前記構造物の鉛直方向の断面において、水平方向の両端から内側へ、前記構造物の水平方向の長さの20%の範囲内である両端部に、各々、前記給気口と前記排気口と
が存在
し、
前記調湿部が、さらに
金属繊維によって構成され、前記金属繊維同士は接点において融着していて、通電することで発熱可能な金属繊維層と、
前記除湿剤層と前記金属繊維層とに挟まれ、前記金属繊維層の一方主面に接する第1絶縁層と、
前記金属繊維層の他方主面に接する第2絶縁層と、
を含み、
前記送風用ファンが、
前記第2絶縁層、前記金属繊維層、前記第1絶縁層および前記除湿剤層の順に、これらの層を気体が通過するように送風することができる、
調湿装置。
【請求項2】
前記金属繊維層がSUS繊維シートからなり、
前記金属繊維層は、通電した場合に電気の入側から出側まで帯状の電気流路内を通電するようにパターニングされている、請求項1に記載の調湿装置。
【請求項3】
前記第1絶縁層および前記第2絶縁層がガラス不織布、および/または、アルミナ不織布である、請求項1または2に記載の調湿装置。
【請求項4】
前記除湿剤層とは別の除湿剤層を前記送風用ファンと前記第2絶縁層との間に有することがない、請求項1~3のいずれかに記載の調湿装置。
【請求項5】
前記金属繊維層と前記第1絶縁層とが、耐熱性繊維および/または粘土によって固定されている、請求項
1~4のいずれかに記載の調湿装置。
【請求項6】
前記金属繊維層と前記第2絶縁層とが、耐熱性繊維および/または粘土によって固定されている、請求項
1~5のいずれかに記載の調湿装置。
【請求項7】
前記耐熱性繊維が、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維、パラ系アラミド繊維、メタ系アラミド繊維、ポリイミド繊維、フッ素繊維、およびポリアリレート繊維からなる群から選ばれる少なくとも1つである、請求項5または6に記載の調湿装置。
【請求項8】
前記除湿剤が、粒子状または繊維状であって、低結晶性粘土と非晶質アルミニウム珪酸塩とからなる複合体、活性炭、活性白土、珪藻土、活性アルミナ、シリカゲルおよびゼオライトからなる群から選ばれる少なくとも1つである、請求項1~7のいずれかに記載の調湿装置。
【請求項9】
さらに、前記除湿剤を収容する収容体を有する、請求項1~8のいずれかに記載の調湿装置。
【請求項10】
請求項
1~9のいずれかに記載の調湿装置を用い、前記金属繊維層を通電させて発熱させ、発熱温度が100~400℃となるように、かつ、前記除湿剤層から排出された直後の気体温度が40~350℃となるように前記送風用ファンを駆動して送風することによって、前記除湿剤を再生する再生工程と、
その後、前記送風用ファンを駆動することで前記構造物の内部の空間を調湿する調湿工程と、
を備える調湿方法。
【請求項11】
前記再生工程において、
前記除湿剤が、低結晶性粘土と非晶質アルミニウム珪酸塩とからなる粒子状の複合体であり、
前記金属繊維層を通電させて発熱させ、発熱温度が100~200℃となるように、かつ、前記除湿剤層から排出された直後の気体温度が40~150℃となるように前記送風用ファンを駆動して送風することによって、前記除湿剤を再生する、
請求項
10に記載の調湿方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は調湿装置および調湿方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、いくつかの除湿装置か提案されている。
特許文献1には、吸湿剤、ヒータおよびファンを内蔵し、除湿および乾燥・再生のための各々一対の給気口および排気口をそれぞれ同一円周上に有する円筒形のケーシングを備えた除湿装置において、給気口および排気口に対応する開口部を有する円筒形のカバーケースを回動自在に配設してなることを特徴とする除湿装置が記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、配電盤内を湿度管理するための除湿器であって、吸着剤をハウジング内に収容するとともに、該ハウジングに排気口及び吸気口を取り付け、該吸着剤を加熱するためのヒータ、該排気口及び該吸気口を開閉するための駆動系、および該ヒータの加熱と該駆動系を制御するための制御系を収容したことを特徴とする除湿器が記載されている。
【0004】
さらに、特許文献3には、少なくとも自己発熱層と吸着層とをその積層に含み、前記自己発熱層と前記吸着層が熱伝導可能な態様で接続されている吸放湿用自己発熱性シート状物を備え、電極に通電するための通電回路を備える吸放湿装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平5-200235号公報
【文献】特開2001-347129号公報
【文献】国際公開第2018/131591号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
調湿装置が備える除湿剤は速やかに再生し得ることが好ましい。また、調湿装置は、より速やかに構造物の内部空間(室内等)を調湿できることが好ましい。
【0007】
本発明は上記のような課題を解決することを目的とする。すなわち、構造物の内部空間(室内等)を速やかに調湿することが可能な調湿装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記課題を解決するため鋭意検討し、本発明を完成させた。
本発明は以下の(1)~(9)である。
(1)除湿剤からなる除湿剤層を含む調湿部と、
気体が前記除湿剤層を通過するように送風することができる送風用ファンと、
除湿する空間を内部に含む構造物と、
前記調湿部とつながり、前記除湿剤層を通過した気体を前記構造物の内部の空間へ排出する給気口と、
前記送風用ファンとつながり、前記構造物の内部の空間の気体を吸い込む排気口と、
を有し、
前記構造物の鉛直方向の断面において、鉛直方向の両端から内側へ、前記構造物の鉛直方向の長さの20%の範囲内である両端部に、各々、前記給気口と前記排気口とが存在する、
または、
前記構造物の鉛直方向の断面において、水平方向の両端から内側へ、前記構造物の水平方向の長さの20%の範囲内である両端部に、各々、前記給気口と前記排気口と存在する、
調湿装置。
(2)前記調湿部が、さらに
通電することで発熱可能な金属繊維層と、
前記除湿剤層と前記金属繊維層とに挟まれ、前記金属繊維層の一方主面に接する第1絶縁層と、
を含み、
前記送風用ファンが、
前記金属繊維層、前記第1絶縁層および前記除湿剤層の順に、これらの層を気体が通過するように送風することができる、
上記(1)に記載の調湿装置。
(3)前記除湿剤が、粒子状または繊維状であって、低結晶性粘土と非晶質アルミニウム珪酸塩とからなる複合体、活性炭、活性白土、珪藻土、活性アルミナ、シリカゲルおよびゼオライトからなる群から選ばれる少なくとも1つである、上記(1)または(2)に記載の調湿装置。
(4)さらに、前記除湿剤を収容する収容体を有する、上記(1)~(3)のいずれかに記載の調湿装置。
(5)前記調湿部が、さらに、前記金属繊維層の他方主面に接する第2絶縁層を含む、上記(2)~(4)のいずれかに記載の調湿装置。
(6)前記金属繊維層と前記第1絶縁層とが、耐熱性繊維および/または粘土によって固定されている、上記(2)~(5)のいずれかに記載の調湿装置。
(7)前記金属繊維層と前記第2絶縁層とが、耐熱性繊維および/または粘土によって固定されている、上記(5)または(6)に記載の調湿装置。
(8)上記(2)~(7)のいずれかに記載の調湿装置を用い、前記金属繊維層を通電させて発熱させ、発熱温度が100~400℃となるように、かつ、前記除湿剤層から排出された直後の気体温度が40~350℃となるように前記送風用ファンを駆動して送風することによって、前記除湿剤を再生する再生工程と、
その後、前記送風用ファンを駆動することで前記構造物の内部の空間を調湿する調湿工程と、
を備える調湿方法。
(9)前記再生工程において、
前記除湿剤が、低結晶性粘土と非晶質アルミニウム珪酸塩とからなる粒子状の複合体であり、
前記金属繊維層を通電させて発熱させ、発熱温度が100~200℃となるように、かつ、前記除湿剤層から排出された直後の気体温度が40~150℃となるように前記送風用ファンを駆動して送風することによって、前記除湿剤を再生する、
上記(8)に記載の調湿方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、構造物の内部空間(室内等)を速やかに調湿することが可能な調湿装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の調湿装置の好適態様を示す鉛直方向の概略断面図である。
【
図2】本発明の調湿装置における調湿部および送風用ファンの好適態様を示す概略断面図である。
【
図3】金属繊維層の好適態様における概略表面図である。
【
図4】本発明の調湿装置における別の調湿部を示す概略断面図である。
【
図5】本発明の調湿装置における別の調湿部を組み付ける前の状態の例を表す概略斜視図である。
【
図6】本発明の調湿装置の別の好適態様を示す鉛直方向の概略断面図である。
【
図7】本発明の調湿装置のさらに別の好適態様を示す鉛直方向の概略断面図である。
【
図8】本発明の調湿装置のさらに別の好適態様を示す鉛直方向の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明について説明する。
本発明は、除湿剤からなる除湿剤層を含む調湿部と、気体が前記除湿剤層を通過するように送風することができる送風用ファンと、除湿する空間を内部に含む構造物と、前記調湿部とつながり、前記除湿剤層を通過した気体を前記構造物の内部の空間へ排出する給気口と、前記送風用ファンとつながり、前記構造物の内部の気体を吸い込む排気口と、を有し、前記構造物の鉛直方向の断面において、鉛直方向の両端から内側へ、前記構造物の鉛直方向の長さの20%の範囲内である両端部に、各々、前記給気口と前記排気口とが存在する、または、前記構造物の鉛直方向の断面において、水平方向の両端から内側へ、前記構造物の水平方向の長さの20%の範囲内である両端部に、各々、前記給気口と前記排気口と存在する、調湿装置である。
このような調湿装置を、以下では「本発明の調湿装置」ともいう。
【0012】
また、本発明の調湿装置は、前記調湿部が、さらに通電することで発熱可能な金属繊維層と、前記除湿剤層と前記金属繊維層とに挟まれ、前記金属繊維層の一方主面に接する第1絶縁層と、を含み、前記送風用ファンが、前記金属繊維層、前記第1絶縁層および前記除湿剤層の順に、これらの層を気体が通過するように送風することができることが好ましい。
つまり、本発明の調湿装置は、
除湿剤からなる除湿剤層、
通電することで発熱可能な金属繊維層、および
前記除湿剤層と前記金属繊維層とに挟まれ、前記金属繊維層の一方主面に接する第1絶縁層、
を含む調湿部と、
前記金属繊維層、前記第1絶縁層および前記除湿剤層の順に、これらの層を気体が通過するように送風することができる送風用ファンと、
除湿する空間を内部に含む構造物と、
前記調湿部とつながり、前記除湿剤層を通過した気体を前記構造物の内部の空間へ排出する給気口と、
前記送風用ファンとつながり、前記構造物の内部の空間の気体を吸い込む排気口と、
を有し、
前記構造物の鉛直方向の断面において、鉛直方向の両端から内側へ、前記構造物の鉛直方向の長さの20%の範囲内である両端部に、各々、前記給気口と前記排気口とが存在する、
または、
前記構造物の鉛直方向の断面において、水平方向の両端から内側へ、前記構造物の水平方向の長さの20%の範囲内である両端部に、各々、前記給気口と前記排気口と存在する、調質装置であることが好ましい。
【0013】
また、本発明は、上記のような本発明の調湿装置の好適態様を用い、前記金属繊維層を通電させて発熱させ、発熱温度が100~400℃となるように、かつ、前記除湿剤層から排出された直後の気体温度が40~350℃となるように前記送風用ファンを駆動して送風することによって、前記除湿剤を再生する再生工程と、その後、前記送風用ファンを駆動することで前記構造物の内部の空間を調湿する調湿工程と、を備える調湿方法である。
このような調湿方法を、以下では「本発明の調湿方法」ともいう。
【0014】
<本発明の調湿装置>
本発明の調湿装置について、図を用いて説明する。
図1は、本発明の調湿装置を例示する概略断面図である。
図1において本発明の調湿装置1は、調湿部3と、送風用ファン5と、構造物8と、給気口91と、排気口92とを有する。
【0015】
調湿部3は
図1に示すように除湿剤層10を含む。
調湿部3は
図2に示すように除湿剤層10と、第1絶縁層12と、金属繊維層14と、第2絶縁層16とを、この順に重ねて固定したものであってよい。本発明の調湿装置において第1絶縁層12、金属繊維層14および第2絶縁層16は必須ではないが、本発明の調湿装置は第1絶縁層12および金属繊維層14を有してよく、さらに第2絶縁層16を有してよい。
【0016】
<除湿剤層>
本発明の調湿装置1における除湿剤層10について説明する。
除湿剤層10は、除湿剤からなる。ただし、除湿剤層は除湿剤以外のものを10質量%以下であれば含んでもよい。
除湿剤は従来公知のものを用いることができる。
除湿剤は、低結晶性粘土と非晶質アルミニウム珪酸塩とからなる複合体、活性炭、活性白土、珪藻土、活性アルミナ、シリカゲルおよびゼオライトからなる群から選ばれる少なくとも1つであることが好ましく、低結晶性粘土と非晶質アルミニウム珪酸塩とからなる複合体であることがより好ましい。
【0017】
また、除湿剤は、粒子状または繊維状であることが好ましく、粒子状であることがより好ましく、平均粒子径が0.05~10mm(好ましくは2~3mm)の粒子状であることがさらに好ましい。
【0018】
除湿剤は、低結晶性粘土と非晶質アルミニウム珪酸塩とからなる複合体であって、かつ、粒子状であることが好ましい。
【0019】
除湿剤層10は除湿剤からなる層であり、例えば、除湿剤を層状に成形して得ることができる。また、除湿剤を箱状の収容体の内部に装入または充填することで、層状の除湿剤層10とすることもできる。除湿剤を収容体に装入する態様については後述する。
【0020】
除湿剤層10の厚さは特に限定されないが1~50mmであることが好ましく、10~40mmであることがより好ましく、25mm程度であることがさらに好ましい。
【0021】
ここで除湿剤層の厚さは、次のように求めるものとする。
調湿部の主面に垂直な方向における断面(
図1、
図2等)の写真を得た後、その写真において気体が流れる方向(
図1の場合であれば鉛直方向)における除湿剤層の厚さを無作為に選択した100か所にて測定し、それらの単純平均値を求める。そして、得られた平均値をその除湿剤層の厚さとする。
除湿剤を箱状の収容体の内部に最密装入または充填した場合は、収容体の主面に垂直な方向の断面における、気体が流れる方向の収容体の高さを除湿剤層の厚さとしてもよい。
【0022】
<金属繊維層>
本発明の調湿装置1における金属繊維層14について説明する。
本発明の調湿装置1は金属繊維層14を備えなくてもよいが、
図2に示す態様のように、金属繊維層14を備えることが好ましい。
金属繊維層14は通電することで発熱する。
【0023】
金属繊維層14を構成する金属繊維は、断面の等面積円相当径が1~100μm(好ましくは5~20μm)、長さが1~60mmの金属製の繊維であることが好ましい。
そして、金属繊維層14は、このような金属製の繊維が無数に複雑に絡み合ってシート状に構成されたもの(金属繊維シート)であることが好ましい。
【0024】
ここで、金属繊維層14は通電するので、通電する程度に金属繊維同士は接している。また、金属繊維同士は接点においてつながっていることが好ましい。例えば高温にて焼結することで金属繊維の一部が溶けた後、凝固した履歴を有することで、金属繊維同士が接点において融着していることが好ましい。
【0025】
金属繊維シートは耐熱性や耐薬品性が高いことからSUS繊維シートであることが好ましい。SUS繊維シートとして、ステンレス繊維シート(例えばトミーファイレックSS、巴川製紙所社製)が挙げられる。
【0026】
金属繊維シートは坪量が25g/m2以上であることが好ましく、40g/m2以上であることが好ましい。また、1000g/m2以下であることが好ましく、200g/m2以下であることがより好ましく、70g/m2以下であることがさらに好ましい。
【0027】
金属繊維シートの厚さは10~600μmであることが好ましく、20~150μmであることがより好ましく、可撓性や強度の観点から50μm程度であることが好ましい。
【0028】
なお、金属繊維層の厚さは、次のように求めるものとする。
調湿部の主面に垂直な方向における断面(
図1、
図2等)の拡大写真(200倍)を得た後、その写真において気体が流れる方向(
図1の場合であれば鉛直方向)における金属繊維層の厚さを無作為に選択した100か所にて測定し、それらの単純平均値を求める。そして、得られた平均値をその金属繊維層の厚さとする。また、JIS P 8118に準拠した方法でも求めることができる。
【0029】
金属繊維シートの密度は0.8~5.0g/cm3であることが好ましく、0.9~2.0g/cm3であることがより好ましく、1.2g/cm3程度であることが好ましい。
金属繊維シートの密度は、JIS P 8118に従い、密度(g/cm3)=坪量(g/m2)/厚さ(mm)×1000により求めることができる。(坪量は、JIS P 8124に準拠)
【0030】
金属繊維シートの占積率は5~50%であることが好ましく、10~30%であることがより好ましく、20%程度であることがさらに好ましい。
金属繊維シートの占積率は、無作為に選択した10か所の金属繊維シートの断面の断面積を測定し、以下の式により各々の占積率を算出し、それらの単純平均値を金属繊維シートの占積率とした。
W=Sm/Sp×100
W:占積率
Sp:金属繊維シートの断面積
Sm:金属繊維シートの断面積中、金属繊維が占める面積
【0031】
金属繊維シートのシート抵抗は40~500mΩ/□であることが好ましく、150~350mΩ/□であることがより好ましく、285mΩ/□程度であることがさらに好ましい。
金属繊維シートのシート抵抗は、二重リング電極法(JIS K 6911)に準拠して測定した。
【0032】
金属繊維シートは、乾式不織布の製造方法によっても、湿式抄造法によっても製造することができる。湿式抄造法によって製造する場合には、断面の等面積円相当径が1~100μm、長さが1~60mmの無数の金属性の繊維を分散媒(水や有機溶媒等)内で撹拌した後、有機系の凝集剤等を加え、角形手漉き装置(例えば東洋精機社製)等を用いてシート化し、フェロタイプの乾燥装置を用いて坪量が50~1100g/m2の乾燥シートを得る。その後、400~1300℃で焼成すると金属繊維シートが得られる。なお、原則として、金属繊維シート内に有機系の凝集剤は残存しない。
【0033】
金属繊維の材質は、通電することで発熱するものであれば特に限定されず、ステンレスであることが好ましいが、Cu(銅)、Al(アルミニウム)、Ni(ニッケル)、W(タングステン)、ニクロムであってもよい。
【0034】
金属繊維層14の好適態様について、
図3を用いて説明する。
図3は金属繊維層14の主面の好適態様を示す図(概略図)である。
金属繊維層14は、
図3に示すように、通電した場合に、電気の入側(141)から出側(143)まで、概ね一定の幅の帯状の電気流路内を通電するようにパターニングされていることが好ましい。帯状の電気流路の幅は5~50mmであることが好ましい。帯状の電気流路内を通電させると、幅方向の電流密度が適切な範囲内となり、その結果、適切な程度に均等に発熱できるからである。
ここで金属繊維層のパターニングは、ファイバーレーザー、CO
2レーザー、トムソン刃のような物理的切断により行うことができる。
【0035】
<第1絶縁層>
本発明の調湿装置1における第1絶縁層12について説明する。
本発明の調湿装置1は第1絶縁層12を備えなくてもよいが、
図2に示す態様のように、第1絶縁層12を備えることが好ましい。
第1絶縁層12は、除湿剤層10と金属繊維層14とに挟まれている。そして、第1絶縁層12の主面は金属繊維層14の一方主面に接している。第1絶縁層12と除湿剤層10とは主面同士が接していてもよいし、それらの間に別の層を有していてもよい。
【0036】
第1絶縁層12は、金属繊維層14と他の層(除湿剤層10等)を絶縁する役割を果たす。
このような役割を果たすものであれば第1絶縁層12は特に限定されない。
第1絶縁層12として、例えばガラス不織布、アルミナ不織布、有機繊維の不織布等を用いることができる。
【0037】
第1絶縁層12の厚さは特に限定されないが、15~500μmであることが好ましく、30~200μmであることがより好ましい。
なお、第1絶縁層12の厚さは、前述の金属繊維層と同じ方法によって求めるものとする。
【0038】
第1絶縁層12は、金属繊維層14と、耐熱性繊維および/または粘土によって固定されていることが好ましい。金属繊維層は通電することで温度が最大400℃程度まで発熱する。通常の接着剤では、400℃の高温に耐えられずに固定ができなくなる。また、直接金属繊維に接触するために絶縁体でなければならない。耐熱性があり、絶縁体である材料として、耐熱性繊維、粘土材料が好適である。加えて、繊維形状であることにより、金属繊維層の金属繊維と物理的な絡みが生じ、固定の際の強度を確保することができるのでより好ましい。また、粘土は溶媒に分散させた粘土溶液として利用することで、部分的な接着の際には有用である。第1絶縁層および金属繊維層は通常、多孔質であるために、粘土溶液を塗布して乾燥させる際に溶媒が容易に除去されて第1絶縁層と金属繊維層を固定できるので好適に用いることができる。更に、耐熱性繊維と粘土溶液の複合剤であると、局所的な接合に適しており、かつ接合強度を確保できるのでより好ましい。
ここで耐熱性繊維として、例えば、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維、パラ系アラミド繊維、メタ系アラミド繊維、ポリイミド繊維、フッ素繊維、ポリアリレート繊維等が挙げられる。
また、粘土としては、例えば、雲母、バーミキュライト、モンモリロナイト、鉄モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト及びノントロナイトが挙げられる。
【0039】
<第2絶縁層>
本発明の調湿装置において調湿部が金属繊維層および第1絶縁層を含む場合、調湿部は、さらに、金属繊維層の他方主面に接する第2絶縁層を含むことが好ましい。
図2に示す態様の調湿部3は、金属繊維層14の一方主面に第1絶縁層12を有し、さらに他方主面に第2絶縁層16を有する態様である。
【0040】
第2絶縁層16の種類や厚さ等は、第1絶縁層12と同様であってよい。
【0041】
第2絶縁層16は、第1絶縁層12の場合と同様に、金属繊維層14と耐熱性繊維および/または粘土によって固定されていることが好ましい。
【0042】
<送風用ファン>
本発明の調湿装置1は上記のような調湿部3と、送風用ファン5とを有する。
送風用ファン5は、
図1に示すように、配管等によって排気口92につながっている。そして、排気口92から吸い込んだ構造物8の内部の空間の気体が除湿剤層10を通過するように送風することができる。
【0043】
図2に示すような好適態様の場合、送風用ファン5は、調湿部3における第2絶縁層16が存在する側に配置され、金属繊維層14、第1絶縁層12および除湿剤層10の順に気体を通過させることができるものであれば特に限定されない。
【0044】
送風用ファン5から送風された気体が除湿剤層10の内部(好ましくは金属繊維層14、第1絶縁層12および除湿剤層10の内部)を均一に流れるように、送風用ファン5が
図1、
図2に示すようにフード51を備えることが好ましい。
【0045】
送風用ファンとしては、除湿剤層10を通過した直後の風速が0.05m/s以上、好ましくは、0.3m/s以上の風速を出せるものが、速やかな調湿を実施する上で好ましい。このようなファンは特に限定されず一般的なファンを用いる事が出来る。
【0046】
<別の調湿部>
次に、本発明の調湿装置における別の調湿部について、
図4および
図5を用いて説明する。
図4は、本発明の調湿装置における別の調湿部および送風用ファンを示す概略断面図である。
また、
図5は
図4に示した調湿部52の作製方法の例を説明するための図(概略斜視図)であり、各層の組付け前の状態を示している。
【0047】
図4および
図5に示すように、調湿部52は、除湿剤を収容する収容体65としての役割を果たす型枠651およびそれを両面から挟む2つの耐熱性メッシュ653、655を有する。また、金属繊維層として役割を果たす金属繊維シート69を有し、金属繊維シート69と耐熱性メッシュ655とが、第1絶縁層67を挟んでいる。さらに、金属繊維シート69を第1絶縁層67と共に挟み込むように第2絶縁層71を有する。さらに別の絶縁層(第3絶縁層63)が耐熱性メッシュ653の主面上に付いている。ここで金属繊維シート69は、
図3において示した態様のものの縁に枠を付けたものであってもよく、また、
図5に示すように縁に複数の孔を有し、この孔にネジ等の連結手段を貫通させて他層と連結することが可能に構成されていてもよい。
なお、第3絶縁層63は、第1絶縁層または第2絶縁層と同様のものであってよい。
そして、これら全層を、上枠61と下枠73とで挟み込んでいる。
【0048】
ここで収容体65を構成する型枠651は樹脂製、セラミック製、金属製を用いることができる。より好ましくは、加工性やコスト、耐熱性の面で金属製であることが好ましく、アルミニウム製、ステンレス製であることが更に好ましい。
型枠651の厚さは、除湿剤層の厚さと同様であってよい。
【0049】
また、耐熱性メッシュ653、655は、耐熱性を備え、送風用ファン54から発生した送風を通過させることができる態様のものであれば特に限定されないが、ステンレス等の金属からなる網状のものであることが好ましい。
耐熱性メッシュ653、655の厚さは特に限定されないが、0.05~0.4mmであることが好ましい。なお、耐熱性メッシュ653、655の厚さは除湿剤層の厚さと同様の方法によって測定する。
【0050】
除湿剤層56は、除湿剤を収容体65の内部へ装入することで形成することができる。
例えば、型枠651の両主面に2つの耐熱性メッシュ653、655を貼り付ける際に、型枠651の内部へ除湿剤を装入すれば除湿剤層56を形成することができる。
また、例えば、
図5に示す態様の型枠651のように、側面等に孔657を形成しておき、型枠651の両主面に2つの耐熱性メッシュ653、655を貼り付けて収容体65を形成した後に、孔657から収容体65の内部へ除湿剤を装入し、その後、孔657に蓋をすることで除湿剤層56を形成することができる。
図5に示した態様の各層を密着させて固定した後に、孔657から収容体65の内部へ除湿剤を装入してもよい。
ここで型枠651は、内部に装入した除湿剤が偏析し難くなるように桟659を有することが好ましい。桟659は
図5に示すように格子状に配置されていることが好ましい。
【0051】
上枠61および下枠73は、各々の層を固定するために用いるため、一定以上の剛性を備え、送風用ファン54から発生した送風を通過させることができる態様のものであれば特に限定されない。上枠61および下枠73はステンレス等の金属からなるものであることが好ましい。
【0052】
図4に示すように、送風用ファン54からの送風が調湿部52の主面全体に送られるように、送風用ファン54はフード541を備えることが好ましい。
【0053】
<構造物>
本発明の調湿装置1における構造物8について説明する。
構造物8は、除湿する空間を内部に含む。この空間を以下では内部空間ともいう。
【0054】
構造物8は部屋(建築物)であってよい。この場合、部屋内(室内)が除湿する内部空間に相当する。
また、構造物8は容器であってよい。この場合、容器内が除湿する内部空間に相当する。
また、構造物8は台車の上に保護すべき物(例えば精密機器)を載置し、それを覆うように保護カバーを被せた態様のものであってもよい。この場合、台車と保護カバーと囲まれる空間、すなわち、保護すべき物が存在している空間が、除湿する内部空間に相当する。
【0055】
構造物8の内部空間には、上記のように他の物(例えば精密機械)が存在していてもよい。
【0056】
構造物8が含む内部空間は、給気口および排気口以外に外部とつながる経路がないことが好ましい。すなわち、構造物8が含む内部空間は密閉されていることが好ましい。
【0057】
<給気口、排気口>
本発明の調湿装置1における給気口91について説明する。
給気口91は、除湿剤層10を通過した後の気体を構造物8の内部空間へ排出するための孔である。通常、給気口91は、
図1に示すように、調湿部3の出側とつながる配管等の出口である。
また、給気口91は、
図1に示すように配管等によって調湿部3の出側とつながっている。ただし、配管等が存在せず、例えば調湿部3の出側が構造物8を構成する壁等に直結し、その壁等に給気口91が形成されていて、その給気口91から除湿剤層10を通過した気体を構造物8の内部の空間へ排出してもよい。
また、後に
図6を用いて説明する態様のように、給気口91は構造物8を構成する壁等に形成されていなくてもよい。
【0058】
調湿部3の出側と給気口91とをつなぐ配管等には、調湿部3から排出された気体(除湿剤層10を通過した気体)の構造物8の内部空間への供給量を調整するために、流量調整弁が設置されていてもよい。
【0059】
本発明の調湿装置1における排気口92について説明する。
排気口92は、構造物8の内部空間の気体を吸い込むための孔である。排気口92から吸い込まれた気体は送風用ファン5へ供給される。
通常、排気口92は、
図1に示すように、送風用ファン5の入側とつながる配管等の入口である。
また、排気口92は、
図1に示すように、配管等によって送風用ファン5の入側とつながっている。ただし、配管等が存在せず、送風用ファン5の入側が構造物8を構成する壁等に直結し、その壁等に排気口92が形成されていて、その排気口92から構造物8の内部空間の気体を吸い込んでもよい。
また、後に
図6を用いて説明する態様のように、排気口92は構造物8を構成する壁等に形成されていなくてもよい。
【0060】
送風用ファン5の入側と排気口92とをつなぐ配管等には、構造物8の内部空間から吸い込む気体の流量を調整するために、流量調整弁が設置されていてもよい。
【0061】
また、
図1に示した態様の本発明の調湿装置1では、調湿部3および送風用ファン5は構造物8の外に存在し、給気口91および排気口92が構造物8の側面の壁に形成されていて、各々、配管によって調湿部3の出側および送風用ファン5の入側につながれているが、
図6に示す態様のように、調湿部3および送風用ファン5が構造物8の内部の空間に存在して、給気口91および排気口92が構造物8の壁等に形成されていなくてよい。
図6に示す態様では、送風用ファン5の入側が排気口92を構成しており、調湿部3(除湿剤層10)を通過した気体は、配管95内を通過して構造物8の上部へ移動し、配管95の出口である給気口91から構造物8の内部の空間へ排出される。
【0062】
本発明の調湿装置1において給気口91と排気口92とは離れて存在していて、構造物8の鉛直方向の断面において、鉛直方向の両端から内側へ、構造物8の鉛直方向の長さの20%(好ましくは15%、より好ましくは10%)の範囲内である両端部に、各々、給気口91と排気口92とが存在するか、または、構造物8の鉛直方向の断面において、水平方向の両端から内側へ、構造物8の水平方向の長さの20%(好ましくは15%、より好ましくは10%)の範囲内である両端部に、各々、給気口91と排気口92と存在する。
これについて
図1および
図6~
図8を用いて説明する。
【0063】
図1に示す本発明の調湿装置1の場合、構造物8の鉛直方向の断面において、鉛直方向の両端から鉛直方向へ内側に、構造物8の鉛直方向の長さ(
図1においてはL
1)の20%(
図1においては0.2L
1)の範囲内である両端部(
図1においては点線で囲まれている上端部α、下端部β)に、各々、給気口91と排気口92とが存在している。
ここで
図1の給気口91のように、給気口91の少なくとも一部が両端部(
図1の場合は上端部α)の範囲内に存在していればよい。
また、
図1においては上端部αに給気口91が存在し、下端部βに排気口92が存在しているが、逆に上端部αに排気口92が存在し、下端部βに給気口91が存在していてもよい。
【0064】
図6に示す本発明の調湿装置1の場合、構造物8の鉛直方向の断面において、鉛直方向の両端から鉛直方向へ内側に、構造物8の鉛直方向の長さ(
図6においてはL
2)の20%(
図6においては0.2L
2)の範囲内である両端部(
図6においては点線で囲まれている上端部α、下端部β)に、各々、給気口91と排気口92とが存在している。
また、
図6においては上端部αに給気口91が存在し、下端部βに排気口92が存在しているが、逆に上端部αに排気口92が存在し、下端部βに給気口91が存在していてもよい。
【0065】
図7に示す本発明の調湿装置1の場合、構造物8の鉛直方向の断面において、水平方向の両端から水平方向へ内側に、構造物8の水平方向の長さ(
図7においてはL
3)の20%(
図7においては0.2L
3)の範囲内である両端部(
図7においては点線で囲まれている左端部γ、右端部δ)に、各々、給気口91と排気口92とが存在している。
また、
図7においては左端部γに給気口91が存在し、右端部δに排気口92が存在しているが、逆に左端部γに排気口92が存在し、右端部δに給気口91が存在していてもよい。
【0066】
上記の
図1および
図6に示した本発明の調湿装置1は上端部α、下端部βに給気口91、排気口92が存在している場合であり、
図7に示した本発明の調湿装置1は左端部γ、右端部δに給気口91、排気口92が存在している場合であるが、本発明の調湿装置はいずれかに該当していればよく、次に
図8に示す態様のように、これらの両方に該当していてもよい。
【0067】
図8に示す本発明の調湿装置1の場合、構造物8の鉛直方向の断面において、鉛直方向の両端から鉛直方向へ内側に、構造物8の鉛直方向の長さ(
図8においてはL
4)の20%(
図8においては0.2L
4)の範囲内である両端部(
図8においては点線で囲まれている上端部ε、下端部ζ)に、各々、給気口91と排気口92とが存在している。
また、
図8に示す本発明の調湿装置1の場合、構造物8の鉛直方向の断面において、水平方向の両端から水平方向へ内側に、構造物8の水平方向の長さ(
図8においてはL
5)の長さの20%(
図8においては0.2L
5)の範囲内である両端部(
図8においては点線で囲まれている左端部η、右端部θ)に、各々、給気口91と排気口92とが存在している。
このような
図8のような場合であっても、本発明の調湿装置に該当する。
【0068】
<本発明の調湿方法>
次に、本発明の調湿方法について説明する。
本発明の調湿方法は、再生工程と、調湿工程とを備える。
【0069】
<再生工程>
再生工程では、上記
図2に示したような本発明の好適態様の調湿装置を用い、金属繊維層を通電させて発熱させ、発熱温度が100~400℃となるように、かつ、除湿剤層から排出された直後の気体温度が40~350℃となるように送風用ファンを駆動して送風することによって、除湿剤を再生する工程である。
【0070】
金属繊維層に通電すると、金属繊維層は発熱する。発熱温度は、金属繊維層の表面に熱電対を配置しておき、その温度を常時または断続的に測定することで把握することができる。
このようにして把握される発熱温度が100~400℃となるように調整する。
【0071】
また、除湿剤層から排出された直後の気体温度が40~350℃となるようにする。この温度を排出温度ともいう。
排出温度は、除湿剤層における第1絶縁層が存在しない側の表面(例えば
図4、
図5に示した態様であれば、第3絶縁層63と耐熱性メッシュ653との間)に熱電対を配置しておき、その温度を常時または断続的に測定することで把握することができる。
【0072】
上記の発熱温度および排出温度は、金属繊維層に通電させる通電量と、送風用ファンの出力との組み合わせを最適化することで、調整することができる。
例えば、送風用ファンの出力が高すぎると発熱温度が低くなる傾向がある。逆に、送風用ファンの出力が低すぎると、排出温度が高くなる傾向がある。
【0073】
再生工程では、除湿剤として、低結晶性粘土と非晶質アルミニウム珪酸塩とからなる粒子状の複合体を用い、また、発熱温度を100~200℃とし、さらに、排出温度を40~150℃となるようにして除湿剤を再生することが好ましい。この場合、より効率的に構造物の内部空間(室内等)を除湿し、所望の湿度に調整することができるからである。
【0074】
このような再生工程によって、本発明の調湿装置における除湿剤を再生することができる。
【0075】
<調湿工程>
上記のような再生工程によって除湿剤を再生した後の本発明の調湿装置を用いて、構造物の内部空間(室内等)を除湿する。
例えば
図1または
図6~
図8に示した本発明の調湿装置における構造物の内部空間(室内等)に精密機械などを配置し、送風用ファンを駆動することによって、精密機械などが存在する内部空間の湿度を所望の値に調整することができる。
【実施例】
【0076】
図4および
図5に示した好適態様の除湿剤層および送風用ファンを用いた実験(実施例1~3)を行った。
ここで、調湿部52における各層を密着させて固定する際に、第3絶縁層63と耐熱性メッシュ653との間、および、金属繊維シート69と第2絶縁層71との間の2箇所に熱電対を埋め込み、当該箇所の温度を常時測定可能とした。
【0077】
なお、除湿剤として、低結晶性粘土と非晶質アルミニウム珪酸塩とからなる粒子状の複合体を1.68kg用いた。また、この複合体の平均粒子径は2~3mmであった。
ここで、非晶質アルミニウムケイ酸塩と低結晶性層状粘土鉱物の複合体は、次のように合成したものを用いてもよい。
0.4Mオルトケイ酸ナトリウム水溶液100mlと、0.5M塩化アルミニウム水溶液100mlを混合し、1N水酸化ナトリウムをpHが6.5になるまで滴下した。次いで、その溶液を遠心分離し、脱塩処理を行い、純水を添加して全体を1Lとなるようにし調整した。調整した溶液を180℃、24時間反応後、濾別して60℃、24時間乾燥し、目的の非晶質アルミニウムケイ酸塩と低結晶性層状粘土鉱物の複合体を得た。
【0078】
また、型枠651として厚さが25mmのアルミニウム製のものを用いた。よって除湿剤層の厚さも25mmとなる。型枠651は、
図5に示すように内部に格子状に桟659が配置されたものを用いた。格子の大きさは80mm×80mmであり、格子の数は6個とした。また、型枠651は
図5に示すように、側面に孔657を有しており、型枠651の両主面に2つの耐熱性メッシュ653、655を貼り付けて収容体65を形成した後に、孔657から収容体65の内部へ除湿剤を装入して、除湿剤層56を形成した。
【0079】
また、耐熱性メッシュ653、655として、ステンレス製メッシュ(60メッシュ)を用いた。
【0080】
また、金属繊維シートとして、厚さ50μm、坪量50g/m2、占積率13%、シート抵抗285mΩ/□であるものを用いた。
【0081】
また、第1絶縁層67、第2絶縁層71および第3絶縁層63として、ガラス不織布を用いた。このガラス不織布は厚さ130μm、坪量20g/m2のものである。
【0082】
さらに、上枠61および下枠73はステンレス製のものを用いた。
【0083】
<実施例1>
このような除湿剤層および送風用ファンを含む本発明の調湿装置を用いて室内を除湿した。金属繊維層を通電して発熱させ、送風用ファンを駆動し、出口風速0.3m/sとしたところ、発熱温度が150℃、排出温度が100℃となり、75分程度で除湿剤の再生が可能であることが確認できた。
【0084】
<実施例2>
上記の実施例1の場合と同様に、金属繊維層を通電して発熱させ、送風用ファンを駆動し、出口風速0.3m/sとすることで発熱温度を150℃、排出温度を100℃とした。そして、その状態で約2時間、放置して、除湿剤を再生した。
その後、本発明の調湿装置における送風用ファンを止め、金属繊維層も通電しない状態で25℃、湿度47%に調製した室内に1時間放置して、除湿剤に吸湿させた。そして、除湿剤の質量を測定したところ、除湿剤質量比で約20%質量が増加した。これより再生後の除湿剤は約20%の吸湿性能を備えることが確認できた。
【0085】
その後、実施例1と同様の方法によって、再度、除湿剤の再生を行った。そして、除湿剤の質量を測定したところ、除湿剤の質量は、吸湿前とほぼ同一であった。すなわち、実施例1に示す再生方法によって、ほぼ全量の水分を除湿剤から分離できることが確認できた。
【0086】
<実施例3>
上記の実施例1の場合と同様に、金属繊維層を通電して発熱させ、送風用ファンを駆動し、出口風速0.3m/sとすることで発熱温度を150℃、排出温度を100℃とした。そして、その状態で約2時間、放置して、除湿剤を再生した。
その後、本発明の調湿装置を24.4℃、湿度58%に調製した室内に置き、1時間駆動させて室内を除湿した。
その結果、13分後には、室内の湿度は15%にまで低下した。なお、室内温度は29.7℃であった。
【0087】
上記のような実施例1~3から、本発明の調湿装置は、室内を短時間で調湿することができ、また、除湿剤の再生も短時間でほぼ完全に行うことができることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0088】
従来、人工衛星を発射する前、人工衛星を衛星保護カバーで覆い、内部湿度を約20%とするために、その内部へ大量の窒素を長時間かけて導入していた。しかし、本発明の調湿装置によって衛星保護カバー内を調湿すれば、容易に調湿することができるので、用いる窒素の量を大幅に削減することができ、また、調湿時間も短時間とすることができる。その結果、人工衛星発射までの時間を短縮することができる。また、衛星保護カバー内の調湿に留まらず、精密機器の運搬時、嫌湿部材(金型等)の保管、嫌湿材料の保管等、調湿を必要とする分野へ本発明の調湿装置を用いることができる。
【0089】
この出願は、2020年4月17日に出願された日本出願特願2020-74197を基礎とする優先権を主張し、その開示のすべてをここに取り込む。
【符号の説明】
【0090】
1 本発明の調湿装置
3 調湿部
5 送風用ファン
51 フード
10 除湿剤層
12 第1絶縁層
14 金属繊維層
141 電気の入側
143 電気の出側
16 第2絶縁層
52 調湿部
54 送風用ファン
541 フード
56 除湿剤層
61 上枠
63 第3絶縁層
653 耐熱性メッシュ
651 型枠
655 耐熱性メッシュ
67 第1絶縁層
69 金属繊維シート
71 第2絶縁層
73 下枠
8 構造物
91 給気口
92 排気口
95 配管