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特許7377369ウェストゲートバルブ装置、タービン及びターボチャージャ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-31
(45)【発行日】2023-11-09
(54)【発明の名称】ウェストゲートバルブ装置、タービン及びターボチャージャ
(51)【国際特許分類】
   F02B 37/18 20060101AFI20231101BHJP
   F02B 39/00 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
F02B37/18 D
F02B37/18 E
F02B39/00 F
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022543820
(86)(22)【出願日】2020-08-17
(86)【国際出願番号】 JP2020030969
(87)【国際公開番号】W WO2022038653
(87)【国際公開日】2022-02-24
【審査請求日】2023-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】316015888
【氏名又は名称】三菱重工エンジン&ターボチャージャ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】冨川 邦弘
(72)【発明者】
【氏名】星 徹
(72)【発明者】
【氏名】八十島 健
(72)【発明者】
【氏名】田代 直人
【審査官】小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-144762(JP,A)
【文献】特開2019-011746(JP,A)
【文献】特開2019-049211(JP,A)
【文献】特開2019-138216(JP,A)
【文献】特開2019-214944(JP,A)
【文献】特開2020-051395(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0152793(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 37/18
F02B 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排ガス通路上に配置されたターボチャージャのタービンホイールをバイパスするように、前記タービンホイールを収容するタービンハウジングの内部に形成されたスクロール流路と排出通路とを接続するバイパス通路に設けられたウェストゲートバルブ装置であって、
前記バイパス通路の出口に形成された弁座面と、
軸線周りに回転可能に支持された支持アーム、及び前記支持アームに支持された弁体であって、前記支持アームの回転に伴って前記弁座面から接離するように構成された弁体、を含むウェストゲートバルブ本体と、備え、
前記軸線方向から見たときに、前記弁座面が前記バイパス通路の軸方向と直交する方向に対して傾斜しており、
前記弁体の回転中心は、前記軸線方向から見たときに、前記バイパス通路の中心線よりも前記タービンホイールの径方向外側、且つ、前記スクロール流路を形成するスクロール部の最外周端よりも前記径方向外側に位置している、
ウェストゲートバルブ装置。
【請求項2】
前記弁座面は、前記軸線方向から見たときに、前記弁座面の内、前記バイパス通路の前記中心線を挟んだ一方側に位置する領域の方が他方側に位置する領域よりも前記バイパス通路の上流側に位置し、
前記弁体の回転中心は、前記軸線方向から見たときに、前記中心線を挟んで前記一方側に位置する
請求項1に記載のウェストゲートバルブ装置。
【請求項3】
前記回転中心は、前記軸線方向から見たときに、前記弁体における端部であって前記弁座面側且つ前記中心線を挟んで前記一方側に位置する端部を通る前記弁座面の法線よりも前記中心線から遠い領域に存在する
請求項2に記載のウェストゲートバルブ装置。
【請求項4】
エンジンの排ガス通路上に配置されたターボチャージャのタービンホイールをバイパスするように、前記タービンホイールを収容するタービンハウジングの内部に形成されたスクロール流路と排出通路とを接続するバイパス通路に設けられたウェストゲートバルブ装置であって、
前記バイパス通路の出口に形成された弁座面と、
軸線周りに回転可能に支持された支持アーム、及び前記支持アームに支持された弁体であって、前記支持アームの回転に伴って前記弁座面から接離するように構成された弁体、を含むウェストゲートバルブ本体と、備え、
前記軸線方向から見たときに、前記弁座面が前記バイパス通路の軸方向と直交する方向に対して傾斜しており、
前記弁座面は、前記軸線方向から見たときに、前記弁座面の内、前記バイパス通路の中心線を挟んだ他方側に位置する領域の方が一方側に位置する領域よりも前記バイパス通路の上流側に位置し、
前記弁体の回転中心は、前記軸線方向から見たときに、前記中心線を挟んで前記タービンホイールの径方向外側である前記一方側に位置す
ェストゲートバルブ装置。
【請求項5】
請求項1に記載のウェストゲートバルブ装置、
を備えるタービン。
【請求項6】
請求項2又は3に記載のウェストゲートバルブ装置と、
タービンホイールと、
前記タービンホイールの下流側に形成される排出通路を形成する排出通路形成部と、
を備え、
前記排出通路は、
前記軸線方向から見たときに、前記バイパス通路の中心線を挟んだ前記他方側において前記バイパス通路の隣に配置されている排出通路主流領域と、
前記バイパス通路の前記出口から排出された排ガスと、前記排出通路主流領域を流れる排ガスとが合流する合流領域と、を含む、
タービン。
【請求項7】
前記軸線方向から見たときに、前記排出通路主流領域の下流側に向かう延在方向と、前記弁座面において前記バイパス通路の中心線を挟んだ前記一方側から前記他方側に向かう前記弁座面の延在方向との角度差は、90度未満である
請求項6に記載のタービン。
【請求項8】
請求項5に記載のタービン、
を備えるターボチャージャ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ウェストゲートバルブ装置、タービン及びターボチャージャに関する。
【背景技術】
【0002】
ターボチャージャには、過給圧の過度な上昇を抑制するためにウェストゲートバルブが設けられる場合がある。ウェストゲートバルブは、ターボチャージャのタービンをバイパスするバイパス通路であるウェストゲート流路を開閉することにより、タービンへの排ガスの流入量を調節するものである(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-127989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば自動車等の車両に用いられるターボチャージャでは、従来、ウェストゲートバルブの開度の制御は、コンプレッサの出口圧等、ターボチャージャの過回転と関連のあるパラメータが予め設定した閾値を超えるか否かによってウェストゲートバルブを全開とするか全閉とするかを決めるような制御が主であった。
しかし、近年、過給圧の緻密な制御が要求される場合が増えてきている。そのため、タービンをバイパスする排ガス流量の制御精度に対する要求も高まりつつある。
【0005】
本開示の少なくとも一実施形態は、上述の事情に鑑みて、タービンをバイパスする排ガス流量の制御精度を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係るウェストゲートバルブ装置は、
エンジンの排ガス通路上に配置されたターボチャージャのタービンをバイパスするバイパス通路に設けられたウェストゲートバルブ装置であって、
前記バイパス通路の出口に形成された弁座面と、
軸線周りに回転可能に支持された支持アーム、及び前記支持アームに支持された弁体であって、前記支持アームの回転に伴って前記弁座面から接離するように構成された弁体、を含むウェストゲートバルブ本体と、備え、
前記軸線方向から見たときに、前記弁座面が前記バイパス通路の軸方向と直交する方向に対して傾斜している。
【0007】
(2)本開示の少なくとも一実施形態に係るタービンは、上記(1)の構成のウェストゲートバルブ装置を備える。
【0008】
(3)本開示の少なくとも一実施形態に係るターボチャージャは、上記(2)の構成のタービンを備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、タービンをバイパスする排ガス流量の制御精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】幾つかの実施形態に係るターボチャージャの一例を示す断面図である。
図2】幾つかの実施形態に係るタービンホイールの外観の斜視図である。
図3】一実施形態に係るタービンの一部の断面を模式的に示した図である。
図4図3の一部を拡大した図である。
図5】他の実施形態に係るタービンの一部の断面を模式的に示した図である。
図6】幾つかの実施形態に係るウェストゲートバルブ装置における流量特性の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0012】
(ターボチャージャ1の全体構成)
図1は、幾つかの実施形態に係るターボチャージャ1の一例を示す断面図である。
幾つかの実施形態に係るターボチャージャ1は、例えば自動車などの車両に搭載されるエンジンの吸気を過給するための排気ターボ過給機であり、不図示のエンジンの排ガス通路上に配置されている。
ターボチャージャ1は、ロータシャフト2を回転軸として連結されたタービンホイール3及びコンプレッサホイール4と、タービンホイール3を回転自在に収容するケーシング(タービンハウジング)5と、コンプレッサホイール4を回転自在に収容するケーシング(コンプレッサハウジング)6とを有する。
タービンハウジング5は、内部にスクロール流路7aを有するスクロール部(スクロール流路生成部)7と、タービンホイール3を収容するタービンホイール収容部53と、タービンホイール3の下流側に形成される排出通路171を形成する排出通路形成部55とを含む。
コンプレッサハウジング6は、内部にスクロール流路8aを有するスクロール部8を含む。
【0013】
幾つかの実施形態に係るタービン30は、タービンホイール3と、ケーシング5とを備える。幾つかの実施形態に係るコンプレッサ40は、コンプレッサホイール4と、ケーシング6とを備える。
【0014】
(タービンホイール3)
図2は、幾つかの実施形態に係るタービンホイール3の外観の斜視図である。
図3は、一実施形態に係るタービン30の一部の断面を模式的に示した図である。
図4は、図3の一部を拡大した図である。
図5は、他の実施形態に係るタービン30の一部の断面を模式的に示した図である。
なお、図3及び図4は、後述するウェストゲートバルブ装置100において、バルブ開度が比較的小さい領域のある場合について示している。また、図5は、ウェストゲートバルブ装置100が全閉の場合について示している。
【0015】
幾つかの実施形態に係るタービンホイール3は、ロータシャフト(回転軸)2に連結されて回転軸線AXwの周りに回転される羽根車である。幾つかの実施形態に係るタービンホイール3は、回転軸線AXwに沿った断面において、回転軸線AXwに対して傾斜するハブ面32を有するハブ31と、ハブ面32に設けられた複数の翼(動翼)33とを有する。なお、図1乃至図3及び図5に示したタービンホイール3はラジアルタービンであるが、斜流タービンであってもよい。図2において、矢印Rはタービンホイール3の回転方向を示す。翼33は、タービンホイール3の周方向に間隔をあけて複数設けられる。
【0016】
なお、斜視図による図示は省略するが、幾つかの実施形態に係るコンプレッサホイール4も、幾つかの実施形態に係るタービンホイール3と同様の構成を有している。すなわち、幾つかの実施形態に係るコンプレッサホイール4は、ロータシャフト(回転軸)2に連結されて回転軸線AXwの周りに回転される羽根車である。幾つかの実施形態に係るコンプレッサホイール4は、回転軸線AXwに沿った断面において、回転軸線AXwに対して傾斜するハブ面42を有するハブ41と、ハブ面42に設けられた複数の翼(動翼)43とを有する。翼43は、コンプレッサホイール4の周方向に間隔をあけて複数設けられる。
以下の説明では、回転軸線AXwの延在方向を単に軸方向とも称し、回転軸線AXwを中心とする径方向を単に径方向とも称し、回転軸線AXwを中心とする周方向を単に周方向とも称する。
【0017】
このように構成されるターボチャージャ1では、タービン30の作動流体である排ガスは、タービンホイール3の前縁36から後縁37に向かって流れる。これにより、タービンホイール3は、回転させられるとともに、ロータシャフト2を介して連結されたコンプレッサ40のコンプレッサホイール4が回転させられる。これにより、コンプレッサ40の入口部40aから流入した吸気は、コンプレッサホイール4の前縁46から後縁47に向かって流れる過程でコンプレッサホイール4によって圧縮される。
【0018】
(ウェストゲートバルブ装置100)
図3乃至図5に示すように、幾つかの実施形態に係るタービン30は、タービン30をバイパスするバイパス通路110に設けられたウェストゲートバルブ装置100を備えている。
図3乃至図5に示すように、幾つかの実施形態に係るウェストゲートバルブ装置100は、バイパス通路110の出口111に形成された弁座面113と、ウェストゲートバルブ本体150と、備える。
幾つかの実施形態に係るウェストゲートバルブ本体150は、支持アーム120と、弁体130とを含む。
幾つかの実施形態に係るウェストゲートバルブ本体150では、支持アーム120は、軸線AX周りに回転可能に支持されている。なお、支持アーム120は、軸線AX周りに回転可能に構成された回転軸121に取り付けられていてもよい。
幾つかの実施形態に係るウェストゲートバルブ本体150では、弁体130は、支持アーム120に支持されていて、支持アーム120の回転に伴って弁座面113から接離するように構成されている。幾つかの実施形態では、弁体130は、支持アーム120の回転に伴って揺動可能に構成されたスイングバルブである。
【0019】
図3乃至図5に示すように、幾つかの実施形態に係るウェストゲートバルブ装置100では、上記軸線AX方向から見たときに、弁座面113がバイパス通路110の軸方向BPaxと直交する方向に対して傾斜している。なお、バイパス通路110の軸方向BPaxは、バイパス通路110の中心線Cbpの延在方向である。以下の説明では、バイパス通路110の軸方向BPaxと直交する方向を単に直交方向BPorthとも称する。
【0020】
なお、図3乃至図5に示すように、幾つかの実施形態に係るウェストゲートバルブ装置100は、タービンホイール3の前縁36よりもタービンホイール3の径方向の外側の領域に配置されている。
また、図3乃至図5に示すように、幾つかの実施形態に係るウェストゲートバルブ装置100では、回転軸線AXwとバイパス通路110の中心線Cbpとが平行である。
図3乃至図5に示すように、幾つかの実施形態に係るウェストゲートバルブ装置100では、回転軸121及び支持アーム120の回転中心となる軸線AXは、バイパス通路110の中心線Cbpよりもタービンホイール3の径方向の外側に位置している。
【0021】
幾つかの実施形態に係るウェストゲートバルブ装置100では、支持アーム120の回転中心である上記軸線AXを中心とした弁体130の揺動角度θv(図5参照)が大きくなるほど、弁体130と弁座面113との間の隙間の大きさ、すなわち弁体130と弁座面113との間の距離は大きくなる。なお、ここで、弁体130の揺動角度θvは、弁体130と弁座面113とが当接している状態、すなわち、ウェストゲートバルブ装置100が全閉の時の弁体130の角度を基準(0度)とし、弁体130と弁座面113とが離れるにつれて大きくなるものとする。また、以下の説明では、弁体130の揺動角度θvをバルブ開度θvとも称する。
【0022】
図6は、幾つかの実施形態に係るウェストゲートバルブ装置100における流量特性の一例を示すグラフである。図6のグラフでは、バルブ開度θvを横軸にとり、バイパス通路110を通過する排ガス量とウェストゲートバルブ装置100が全開時にバイパス通路110を通過する排ガス量との比(通過流量/全開時の通過流量)を縦軸にとっている。
図6のグラフにおいて、太い実線で示した流量特性Aは、幾つかの実施形態に係るウェストゲートバルブ装置100における流量特性の一例である。図6のグラフにおいて、細い実線で示した流量特性Bは、理想的な流量特性の一例である。図6のグラフにおいて、破線で示した流量特性Cは、従来のウェストゲートバルブ装置における流量特性の一例である。
【0023】
従来のウェストゲートバルブ装置では、バルブ開度θvが比較的小さい領域では、バルブ開度θvが比較的大きい領域と比べて、単位バルブ開度あたりのウェストゲートバルブ装置を通過する排ガス量の変化量は大きい。そのため、バルブ開度θvが比較的小さい領域における排ガス量の制御精度がバルブ開度θvが比較的大きい領域における排ガス量の制御精度よりも低下する傾向にある。そのため、バルブ開度θvが比較的小さい領域において、単位バルブ開度あたりのウェストゲートバルブ装置100を通過する排ガス量の変化量を従来のウェストゲートバルブ装置よりも小さくすることが望まれる。
【0024】
図3乃至図5に示す、幾つかの実施形態に係るウェストゲートバルブ装置100によれば、バルブ開度θvが比較的小さい領域において、同じバルブ開度θvであっても、弁座面113が直交方向BPorthに対して傾斜していない場合と比べて、弁体130と弁座面113との間の距離が小さくなる。これにより、バルブ開度θvが比較的小さい領域において、同じバルブ開度θvであっても、弁体130と弁座面113との間のスロート面積Ssが小さくなる。
【0025】
なお、弁体130と弁座面113との間のスロート面積Ssとは、弁体130と弁座面113との間で排ガスが流出する開口の面積である。より具体的には、次のとおりである。
全閉時に弁体130においてバイパス通路110の出口111を塞いでいた面を閉止面131と称する。上記スロート面積Ssは、バイパス通路110の出口111におけるバイパス通路110の内周縁115から、閉止面131までの距離Lvを内周縁115に沿って積分した値である。
【0026】
よって、図3乃至図5に示す、幾つかの実施形態に係るウェストゲートバルブ装置100によれば、バルブ開度θvが比較的小さい領域において、弁座面113が直交方向BPorthに対して傾斜していない場合と比べて、単位バルブ開度あたりのスロート面積Ssの変化量を小さくすることができる。
そのため、図3乃至図5に示す、幾つかの実施形態に係るウェストゲートバルブ装置100によれば、バルブ開度θvが比較的小さい領域において、弁座面113が直交方向BPorthに対して傾斜していない場合と比べて、単位バルブ開度あたりのウェストゲートバルブ装置100(バイパス通路110)を通過する排ガス量の変化量を小さくすることができる。これにより、バルブ開度θvが比較的小さい領域における排ガス量の制御精度を向上できる。
【0027】
(弁座面113の傾斜方向について)
例えば図3及び図4に示すウェストゲートバルブ装置100では、弁座面113は、タービンホイール3の径方向内側(図3及び図4において回転軸線AXwに近づく方向)に向かうにつれて、バイパス通路110の下流側(図3及び図4における図示右方)に向かうように傾斜している。
【0028】
すなわち、幾つかの実施形態に係るウェストゲートバルブ装置100では、例えば図3及び図4に示すように、弁座面113は、軸線AX方向から見たときに、弁座面113の内、バイパス通路110の中心線Cbpを挟んだ一方側に位置する領域113aの方が他方側に位置する領域113bよりもバイパス通路110の上流側に位置するとよい。弁体130の回転中心である軸線AXは、軸線AX方向から見たときに、中心線Cbpを挟んで上記一方側に位置するとよい。
なお、上記一方側は、中心線Cbpよりもタービンホイール3の径方向外側である。上記他方側は、中心線Cbpよりもタービンホイール3の径方向内側である。
【0029】
例えば図3及び図4に示すウェストゲートバルブ装置100では、バイパス通路110の中心線Cbpを挟んだ上記一方側に位置する領域113aの方が上記他方側に位置する領域113bよりもバイパス通路110の上流側に位置するように弁座面113が直交方向BPorthに対して傾斜している。そのため、弁体130と弁座面113とが当接している状態(ウェストゲートバルブ装置100が全閉の時)、及び、少なくともバルブ開度θvが比較的小さい領域では、閉止面131は、弁座面113と同様に、バイパス通路110の中心線Cbpを挟んだ上記一方側に位置する領域の方が上記他方側に位置する領域よりもバイパス通路110の上流側に位置するように直交方向BPorthに対して傾斜していることになる。
そのため、少なくともバルブ開度θvが比較的小さい領域では、バイパス通路110を流通してバイパス通路110の出口111から排出される排ガスは、図3における矢印aで示すように、上記閉止面131に沿ってバイパス通路110の中心線Cbpを挟んだ上記一方側から上記他方側へ案内されることとなる。
【0030】
バイパス通路110の外部の領域のうち、バイパス通路110の中心線Cbpを挟んだ上記一方側の領域には、支持アーム120や回転軸121等が存在することになる。そのため、バイパス通路110の外部の領域のうち、バイパス通路110の中心線Cbpを挟んだ上記他方側の領域の方が上記一方側の領域に比べて、バイパス通路110の出口111から排出される排ガスの流れを阻害するおそれがある部材等が少なくなる可能性が高い。
したがって、例えば図3及び図4に示すウェストゲートバルブ装置100によれば、バイパス通路110を流通してバイパス通路110の出口111から排出される排ガスがバイパス通路110の中心線Cbpを挟んだ上記一方側から上記他方側へ案内されるので、バイパス通路110の出口111から排出された後の排ガスの流れがスムーズになり、圧力損失を抑制できる。
【0031】
(軸線AXの位置について)
例えば図3及び図4に示すウェストゲートバルブ装置100では、図4に示すように、弁体130の回転中心である軸線AXは、軸線AX方向から見たときに、弁体130における端部であって弁座面113側且つ上記中心線Cbpを挟んで上記一方側に位置する端部135を通る弁座面113の法線Nよりも上記中心線Cbpから遠い領域に存在するとよい。
これにより、弁体130と弁座面113とが当接している状態、すなわち、ウェストゲートバルブ装置100が全閉の状態からバルブ開度θvが大きくなるにつれて、上記端部135は、弁座面113から離れるように移動する。これにより、弁体130の揺動時に上記端部135と弁座面113とが干渉することを回避できる。
なお、図4において軸線AXを中心として1点鎖線で描いた円弧は、弁体130の揺動時の上記端部135の軌跡Loである。
【0032】
(弁座面113の傾斜方向の他の実施形態について)
例えば図5に示すウェストゲートバルブ装置100では、弁座面113は、タービンホイール3の径方向内側(図5において回転軸線AXwに近づく方向)に向かうにつれて、バイパス通路110の上流側(図5における図示左方)に向かうように傾斜している。
すなわち、他の実施形態に係るウェストゲートバルブ装置100では、例えば図5に示すように、弁座面113は、軸線AX方向から見たときに、弁座面113の内、バイパス通路110の中心線Cbpを挟んだ他方側に位置する領域113bの方が一方側に位置する領域113aよりもバイパス通路110の上流側に位置していてもよい。弁体130の回転中心である軸線AXは、軸線AX方向から見たときに、中心線Cbpを挟んで上記一方側に位置していてもよい。
【0033】
例えば図5に示すウェストゲートバルブ装置100では、バイパス通路110の中心線Cbpを挟んだ上記他方側に位置する領域113bの方が一方側に位置する領域113aよりもバイパス通路の上流側に位置するように弁座面がバイパス通路の軸方向と直交する方向に対して傾斜している。そのため、弁体130と弁座面113とが当接している状態(ウェストゲートバルブ装置100が全閉の時)、及び、少なくともバルブ開度θvが比較的小さい領域では、閉止面131は、弁座面113と同様に、バイパス通路110の中心線Cbpを挟んだ上記他方側に位置する領域の方が上記一方側に位置する領域よりもバイパス通路の上流側に位置するように直交方向BPorthに対して傾斜していることになる。
そのため、少なくともバルブ開度θvが比較的小さい領域では、バイパス通路110を流通してバイパス通路110の出口111から排出される排ガスは、図5における矢印bで示すように、上記閉止面131に沿ってバイパス通路110の中心線Cbpを挟んだ上記他方側から上記一方側へ案内されることとなる。
【0034】
バイパス通路110の外部の領域のうち、バイパス通路110の中心線Cbpを挟んだ一方側の領域には、支持アーム120や回転軸121等、バイパス通路110の出口111から排出される排ガスの流れを阻害するおそれがある部材等が存在することになる。しかし、設計上の制約等の理由で、バイパス通路110の中心線Cbpを挟んだ上記他方側の領域よりも上記一方側の領域の方へバイパス通路110の出口111から排出される排ガスをより多く流した方がよい場合があることも考えられる。
このような場合であっても、例えば図5に示すウェストゲートバルブ装置100によれば、バイパス通路110を流通してバイパス通路110の出口111から排出される排ガスがバイパス通路110の中心線Cbpを挟んだ他方側から一方側へ案内されるので、バイパス通路110の出口111から排出された後の排ガスの流れの阻害が抑制されて、圧力損失を抑制できる。
【0035】
上述したように、幾つかの実施形態に係るタービン30は、上述した何れかの構成のウェストゲートバルブ装置100を備えるので、バルブ開度が比較的小さい領域における排ガス量の制御精度を向上できる。
【0036】
(排出通路171について)
幾つかの実施形態に係るタービン30では、例えば図3に示すように、排出通路171は、排出通路主流領域173と、合流領域175と、を含む。
排出通路主流領域173は、軸線AX方向から見たときに、バイパス通路110の中心線Cbpを挟んだ上記他方側(中心線Cbpよりもタービンホイール3の径方向内側)においてバイパス通路110の隣に配置されている。
合流領域175は、図3における矢印cで示すようにバイパス通路110の出口111から排出された排ガスと、矢印dで示すように排出通路主流領域173を流れる排ガスとが合流する領域である。
【0037】
図3に示すタービン30では、図3及び図4に示すウェストゲートバルブ装置100を備えるので、上述したように、バイパス通路110を流通してバイパス通路110の出口111から排出される排ガスが図3における矢印aで示すように弁体130の閉止面131に沿ってバイパス通路110の中心線Cbpを挟んだ上記一方側から上記他方側へ案内される。そのため、バイパス通路110を流通してバイパス通路110の出口111から排出される排ガスが排出通路主流領域173を流れる排ガスと合流領域175において合流し易くなり、排出通路171を流れる排ガスの流れが乱れることが抑制され、排出通路171における排ガスの圧損を抑制できる。
【0038】
幾つかの実施形態に係るタービン30では、例えば図3に示すように、軸線AX方向から見たときに、排出通路主流領域173の下流側に向かう延在方向(矢印cの延在方向)と、弁座面113においてバイパス通路110の中心線Cbpを挟んだ上記一方側から上記他方側に向かう弁座面113の延在方向との角度差Δθは、90度未満であるとよい。
上記角度差Δθが90度未満であると、バイパス通路110を流通してバイパス通路110の出口111から排出される排ガスが排出通路主流領域173を流れる排ガスと合流領域175においてさらに合流し易くなり、排出通路171を流れる排ガスの流れが乱れることがさらに抑制され、排出通路171における排ガスの圧損をさらに抑制できる。
【0039】
なお、軸線AX方向から見たときにバイパス通路110の中心線Cbpを挟んだ上記一方側から上記他方側に向かう弁座面113の延在方向が、排ガスの処理のための不図示の触媒の方を向いているとよい。これにより、バイパス通路110を流通してバイパス通路110の出口111から排出される排ガスが触媒に向かって流れ易くなる。よって、バイパス通路110を流通してバイパス通路110の出口111から排出される排ガスによって触媒を加熱し易くなるので、触媒の温度を排ガスの処理に適した温度まで昇温するのに要する時間を短縮できる。
【0040】
幾つかの実施形態に係るターボチャージャ1は、上述したタービン30を備えるので、過給圧の制御の精度を向上できる。
【0041】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0042】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係るウェストゲートバルブ装置100は、エンジンの排ガス通路上に配置されたターボチャージャ1のタービン30をバイパスするバイパス通路110に設けられたウェストゲートバルブ装置である。本開示の少なくとも一実施形態に係るウェストゲートバルブ装置100は、バイパス通路110の出口111に形成された弁座面113と、軸線AX周りに回転可能に支持された支持アーム120、及び支持アーム120に支持された弁体130であって、支持アーム120の回転に伴って弁座面113から接離するように構成された弁体130、を含むウェストゲートバルブ本体150と、備える。本開示の少なくとも一実施形態に係るウェストゲートバルブ装置100は、上記軸線AX方向から見たときに、弁座面113がバイパス通路110の軸方向BPaxと直交する方向(直交方向BPorth)に対して傾斜している。
【0043】
上記(1)の構成によれば、バルブ開度θvが比較的小さい領域において、同じバルブ開度θvであっても、弁座面113が直交方向BPorthに対して傾斜していない場合と比べて、弁体130と弁座面113との間の距離が小さくなる。そのため、上記(1)の構成によれば、バルブ開度θvが比較的小さい領域において、弁座面113が直交方向BPorthに対して傾斜していない場合と比べて、単位バルブ開度あたりのウェストゲートバルブ装置100(バイパス通路110)を通過する排ガス量の変化量を小さくすることができる。これにより、バルブ開度θvが比較的小さい領域における排ガス量の制御精度を向上できる。
【0044】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、弁座面113は、上記軸線AX方向から見たときに、弁座面113の内、バイパス通路110の中心線Cbpを挟んだ一方側に位置する領域113aの方が他方側に位置する領域113bよりもバイパス通路110の上流側に位置するとよい。弁体130の回転中心である軸線AXは、上記軸線AX方向から見たときに、上記中心線Cbpを挟んで上記一方側に位置するとよい。
【0045】
上記(2)の構成によれば、バイパス通路110を流通してバイパス通路110の出口111から排出される排ガスがバイパス通路110の中心線Cbpを挟んだ上記一方側から上記他方側へ案内されるので、バイパス通路110の出口111から排出された後の排ガスの流れがスムーズになり、圧力損失を抑制できる。
【0046】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)の構成において、上記回転中心(軸線AX)は、上記軸線AX方向から見たときに、弁体130における端部であって弁座面113側且つ上記中心線Cbpを挟んで上記一方側に位置する端部135を通る弁座面113の法線Nよりも上記中心線Cbpから遠い領域に存在するとよい。
【0047】
上記(3)の構成によれば、弁体130と弁座面113とが当接している状態(ウェストゲートバルブ装置100が全閉の時)からバルブ開度θvが大きくなるにつれて、上記端部35は、弁座面113から離れるように移動する。これにより、弁体130の揺動時に上記端部135と弁座面113とが干渉することを回避できる。
【0048】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、弁座面113は、上記軸線AX方向から見たときに、弁座面113の内、バイパス通路110の中心線Cbpを挟んだ上記他方側に位置する領域113bの方が上記一方側に位置する領域113aよりもバイパス通路110の上流側に位置していてもよい。弁体130の回転中心である軸線AXは、上記軸線AX方向から見たときに、上記中心線Cbpを挟んで上記一方側に位置していてもよい。
【0049】
バイパス通路110の外部の領域のうち、バイパス通路110の中心線Cbpを挟んだ上記一方側の領域には、支持アーム120や、弁体130の回転中心(軸線AX)に位置する軸等、バイパス通路110の出口111から排出される排ガスの流れを阻害するおそれがある部材等が存在することになる。しかし、設計上の制約等の理由で、バイパス通路110の中心線Cbpを挟んだ上記他方側の領域よりも上記一方側の領域の方へバイパス通路110の出口111から排出される排ガスをより多く流した方がよい場合があることも考えられる。
このような場合であっても、上記(4)の構成によれば、バイパス通路110を流通してバイパス通路110の出口111から排出される排ガスがバイパス通路110の中心線Cbpを挟んだ上記他方側から上記一方側へ案内されるので、バイパス通路110の出口111から排出された後の排ガスの流れの阻害が抑制されて、圧力損失を抑制できる。
【0050】
(5)本開示の少なくとも一実施形態に係るタービン30は、上記(1)乃至(4)の何れかの構成のウェストゲートバルブ装置100を備える。
【0051】
上記(5)の構成では、上記(1)乃至(4)の何れかの構成のウェストゲートバルブ装置100を備えるので、バルブ開度θvが比較的小さい領域における排ガス量の制御精度を向上できる。
【0052】
(6)本開示の少なくとも一実施形態に係るタービンは、上記(2)又は(3)の構成のウェストゲートバルブ装置100と、タービンホイール3と、タービンホイール3の下流側に形成される排出通路171を形成する排出通路形成部55と、を備える。排出通路171は、上記軸線AX方向から見たときに、バイパス通路110の中心線Cbpを挟んだ上記他方側においてバイパス通路110の隣に配置されている排出通路主流領域173と、バイパス通路110の出口111から排出された排ガスと、排出通路主流領域173を流れる排ガスとが合流する合流領域175と、を含む。
【0053】
上記(6)の構成によれば、排出通路171の排出通路主流領域173が上記軸線AX方向から見たときに、バイパス通路110の中心線Cbpを挟んだ上記他方側においてバイパス通路110の隣に配置されている。
上記(6)の構成によれば、上記(2)又は(3)の構成のウェストゲートバルブ装置100を備えるので、上述したように、バイパス通路110を流通してバイパス通路110の出口111から排出される排ガスが弁体の閉止面131に沿ってバイパス通路110の中心線Cbpを挟んだ上記一方側から上記他方側へ案内される。そのため、バイパス通路110を流通してバイパス通路110の出口111から排出される排ガスが排出通路主流領域173を流れる排ガスと合流領域175において合流し易くなり、排出通路171を流れる排ガスの流れが乱れることが抑制され、排出通路171における排ガスの圧損を抑制できる。
【0054】
(7)幾つかの実施形態では、上記(6)の構成において、上記軸線AX方向から見たときに、排出通路主流領域173の下流側に向かう延在方向と、弁座面113においてバイパス通路110の中心線Cbpを挟んだ上記一方側から上記他方側に向かう弁座面113の延在方向との角度差Δθは、90度未満であるとよい。
【0055】
上記(7)の構成によれば、上記角度差Δθが90度未満であると、バイパス通路110を流通してバイパス通路110の出口111から排出される排ガスが排出通路主流領域173を流れる排ガスと合流領域175においてさらに合流し易くなり、排出通路171を流れる排ガスの流れが乱れることがさらに抑制され、排出通路171における排ガスの圧損をさらに抑制できる。
【0056】
(8)本開示の少なくとも一実施形態に係るターボチャージャ1は、上記(5)乃至(7)の何れかの構成のタービン30を備える。
【0057】
上記(8)の構成によれば、ターボチャージャ1において過給圧の制御の精度を向上できる。
【符号の説明】
【0058】
1 ターボチャージャ
3 タービンホイール
5 ケーシング(タービンハウジング)
7 スクロール部(スクロール流路生成部)
30 タービン
55 排出通路形成部
100 ウェストゲートバルブ装置
110 バイパス通路
111 出口
113 弁座面
120 支持アーム
121 回転軸
130 弁体
131 閉止面
135 端部
150 ウェストゲートバルブ本体
171 排出通路
173 排出通路主流領域
175 合流領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6