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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-01
(45)【発行日】2023-11-10
(54)【発明の名称】パウチ
(51)【国際特許分類】
   B65D 33/00 20060101AFI20231102BHJP
   B65D 33/36 20060101ALI20231102BHJP
   B65D 75/62 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
B65D33/00 Z
B65D33/00 C
B65D33/36
B65D75/62 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018233306
(22)【出願日】2018-12-13
(65)【公開番号】P2020093818
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】後藤 花奈子
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-096778(JP,A)
【文献】特開2011-121613(JP,A)
【文献】特開2004-256114(JP,A)
【文献】特開2007-021923(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 33/00
B65D 33/36
B65D 75/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層フィルムを重ね合わせ、周囲の上辺部、左辺部、右辺部、および底辺部をシール、あるいは折り曲げて閉鎖し、内部に収納部を形成したパウチであって、
前記左辺部あるいは前記右辺部のいずれか一方の側辺部と、前記上辺部と、の交差部に、
斜め上方へ突起状に伸びる注出端シール部と、前記注出端シール部に囲まれた非融着部の注出路と、から形成され、注出端先端のつまみ部切り取りによって開封可能な注出部を有し、
前記つまみ部表面に、樹脂系エラストマーを含む滑り止め層を有し、
該滑り止め層の樹脂系エラストマーがメタクリル酸メチルとアクリル酸ノーマルブチルとからなるアクリル系ブロックポリマーであることを特徴とするパウチ。
【請求項2】
積層フィルムを重ね合わせ、周囲の上辺部、左辺部、右辺部、および底辺部をシール、あるいは折り曲げて閉鎖し、内部に収納部を形成したパウチであって、
前記左辺部あるいは前記右辺部のいずれか一方の側辺部と、上辺部と、の交差部に、
斜め上方へ突起状に伸びる注出端シール部と、前記注出端シール部に囲まれた非融着部の注出路と、から形成され、注出端先端のつまみ部切り取りによって開封可能な注出部を有し、
前記つまみ部表面に、樹脂系エラストマーを含む滑り止め層を有し、
該滑り止め層の樹脂系エラストマーがメタクリル酸メチルとアクリル酸ノーマルブチルとからなるアクリル系ブロックポリマーであり、該滑り止め層表面の乾燥時の静摩擦係数が0.32以上0.91以下であり、かつ、該滑り止め層表面に水を塗布したときの静摩擦係数が0.35以上0.95以下であることを特徴とするパウチ。
【請求項3】
前記つまみ部根元の開封部に、易開封加工線を有することを特徴とする請求項1または2に記載のパウチ。
【請求項4】
前記易開封加工線が、炭酸ガスレーザーによる走査線からなることを特徴とする請求項に記載のパウチ。
【請求項5】
前記易開封加工線が、並行した複数の脆弱線からなることを特徴とする請求項3または4に記載のパウチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体洗剤、柔軟剤などのトイレタリー用品や、食用油、ソース、インスタントコーヒーなどの食品、を収納する包装袋で、特に詰替えなどにおいて、ハサミやカッターなどの道具を使用しないで容易に開封可能なパウチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体洗剤、柔軟剤などのトイレタリー用品や、食用油、インスタントコーヒーなどの食品を収納する容器は、それぞれ使い易い形状の専用容器、例えば、プラスチックボトルやガラス瓶などが使用されている。これらの専用容器は、構造もしっかりしており、従って高価であることから、内容物が無くなった段階で、繰り返し使用することができるようになっている。このような専用容器に内容物を補充する詰替え用パウチが別途販売されている。
【0003】
たとえば、液状などの流動性を有する内容物を収納する詰替え用パウチとしては、内容物の専用容器への詰替えを容易に、かつ安全に行えると同時に、安価で空袋が嵩張らず、使用後の廃棄処理も容易に行えることが望ましく、この点から、袋の上部の一部にヒートシールにより狭い幅の注出部を設けた注出部付きパウチが多く使用されるようになっている。
【0004】
このような詰め替え用パウチは、落下強度を上げる為、強靭な素材で出来ていたりするので、小さな注出部を開封するには、当初、ハサミなどを使用しないと、開封できないでいた。しかし、ハサミなどの道具を用意するのは、手間でもあり、ハサミに内容物が付着して錆びやすい、切れにくくなる、などの問題が発生しやすい。そこで、狭い注出部の両端に切り欠きや切り込み、あるいは左右両端に渡って易開封線を設けるパウチが開発された。
それでも、注出部の根元を引き裂くには、強い力が必要であり、強くつかむ必要があるが、どうしても滑ってしまい、力が出せない、などの問題があった。
【0005】
そこで、特許文献1では、
プラスチックフィルム材料により形成され、切取り部を切取り指示線に沿って切り取ることにより注出口が形成される可撓性包装袋であって、
少なくとも、前記可撓性包装袋の切取り部の摘み部分表面に滑り止め層を設けたことを特徴とする可撓性包装袋を提案している。
【0006】
この滑り止め層は、マット材とバインダーを主成分とした塗工液やインキを塗工して、滑りを防止し、強くつかんで引き裂くことができるようにしている。しかしながら、手が濡れた状態でつかもうとすると、滑りやすく、充分な対策とは言えなかった。
【0007】
特許文献2では、
少なくとも1層の樹脂フィルムを含み、内容物が充填された後に密封シールされる包装容器であって、
充填された内容物を外部に注出する注出部は、手指で開封可能な破断部を介して設けられ、少なくとも破断部の先端側に摘み部を有する包装容器において、
前記摘み部の少なくとも一方側の表面には、手指の滑り止めを形成したことを特徴とする包装容器を提案している。
【0008】
この摘み部は、凹凸と併用した滑り止め層であったり、紫外線硬化インキの塗工による
ものだったりしているが、凹凸の塗工の位置決めをするのは難しく、また、紫外線硬化装置をラインに組み込むのは、製造ラインの変更に費用が掛かり、コスト高となるなどの問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2005-96778号公報
【文献】実用新案第3139720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、手が濡れていても、強くつかんで引き裂き可能で、かつ、通常の生産ラインで製造可能な、引き裂いて開封する注出部を有するパウチを得ることが、本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のパウチは、積層フィルムを重ね合わせ、周囲の上辺部、左辺部、右辺部、および底辺部をシール、あるいは折り曲げて閉鎖し、内部に収納部を形成したパウチであって、
前記隣り合う辺部の交差部に、斜め上方へ突起状に伸びる注出端シール部と、前記注出端シール部に囲まれた非融着部の注出路と、から形成され、注出端先端のつまみ部切り取りによって開封可能な注出部を有し、
前記注出部表面に、樹脂系エラストマーを含む滑り止め層を有することを特徴とするパウチである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のパウチは、樹脂系エラストマーを主成分とする滑り止め層を有することによって、濡れた手で摘んでも、滑らずに、強く引き裂くことが可能である。
また、紫外線硬化装置などを必要とせず、精度の高い位置決めなどを必要としないので、通常の製造ラインで製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係るパウチの一例を示す全体図と、その注出口近傍の拡大図である。
図2】本発明に係るパウチの注出口を開封する工程を示す図である。
図3】本発明に係るパウチを構成するフィルムの模式図である。
図4】実施例・比較例で使用するパウチの形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のパウチの実施形態について、図で説明する。
図1は、本発明に係るパウチの一例を示す全体図と、その注出口近傍の拡大図である。
本発明のパウチ1は、積層フィルムからなる前フィルム101、後フィルム102を裏面同士で重ね合わせ、周囲に上辺部11、左辺部12、右辺部13、および底辺部14を有したパウチで、内部に内容物を収納する収納部10を備えている。
この図1で示すパウチの一例は、底辺部が底面フィルム141を融着したスタンディングパウチで、自立性を持たせたパウチになっている。
【0015】
このパウチは、左辺部12、あるいは右辺部13のいずれか一方の側辺部と、上辺部11と、の交差部に、斜め上方向に突起状に伸びる注出端シール部15からなる注出部2を有している。図1では、左辺部12と上辺部11との交差部に注出部2を持っている。
注出部2は、外形を先細り形状の注出端シール部15と、側辺切り欠き121と、上辺切
り欠き111と、それらに囲まれた非融着部の注出路20と、から形成され、かつ、容易に破断して開口可能な開封部21を有している。
【0016】
図1の拡大図に示したように、上記開封部21は、上辺切り欠き111の鋭い切り欠き部1110から、表裏のフィルムが融着していない注出路20を通って、側辺切り欠き121にかけて繋がる、注出口を形成可能な易開封加工線210によって形成されている。この為、易開封加工線210は、開封部21が破断して取り除かれた時に、注出路20を露出させ、内容物を注出させることが出来る。
【0017】
本発明のパウチに使用される前フィルム101や、後フィルム102は、図3-1のように、基材層103と、内側のシーラント層104から構成されている。
易開封加工線210は、図3-2に示したように、レーザー光を線状に走査して、線状に基材層を除去して薄肉に、あるいは、完全に基材層を線状に除去して、シーラント層によって支えられた構成になっている。この為、易開封加工線210の両側を無理に引っ張れば、強度の低いシーラント層だけの脆弱線になっているので、容易に引き裂くことが出来る。
易開封加工線210をビク刃で半抜き加工して作ることも出来るが、安定して加工できないので、レーザー光の走査で、部分的に破断可能な脆弱線を形成することが好ましい。
加工するレーザー光としては、炭酸ガスレーザーや窒素レーザーなどのガスレーザーや、ルビーレーザー、YAGレーザーなどの固体レーザーなどを用いることができるが、特に確実に基材層を除去するには、炭酸ガスレーザーが好ましい。
【0018】
易開封加工線210は、前記のように上辺切り欠き111の鋭い切り欠き部1110から、表裏のフィルムが融着していない注出路20を通って、側辺切り欠き121にかけて加工するが、その加工線は1本の加工線でも破断可能となるが、その注出先側と収納部側との間に、複数の並行した脆弱線によって易開封加工線を形成することが好ましい。
炭酸ガスレーザー光の場合、走査線は滑らかではないので、複数の並行した脆弱線によって易開封加工線を形成しておけば、もし、裂け目が左右にずれても、隣の易開封加工線で裂いて、確実に開封し、大きく裂け目がずれることを防止することができる。
【0019】
また、易開封加工線210は、前フィルム101と後フィルム102とが非融着部を切り欠く直線形状、あるいは曲線形状の脆弱線から形成され、鋭角に折れ曲がった部分は持たない加工線にすることが好ましい。
当然ながら、表裏同一の位置に脆弱線を加工することが好ましい。
【0020】
易開封加工線210の両端に設ける上辺切り欠き111や、側辺切り欠き121、あるいは全体の外形抜きは、トムソン刃による打抜き、また、金型によるプレス打抜き、あるいはビク刃によるプレス加工で可能である。外形の一部は、別工程で単に切り落としを入れてもかまわない。
【0021】
図2は、本発明に係るパウチを開封し、注出する工程を示す図である。
図2-1は、注出部2を開封する工程を示している。
開封部21は、外形を先細り形状の注出端シール部15と、側辺切り欠き121や上辺切り欠き111の一部に囲まれた融着部や注出路20先端側から形成され、パウチの収納部側との間に脆弱線からなる易開封加工線210で繋がっている。この開封部21は、開封時に手でつまんで、引き裂いて開封させるつまみ部22なっている。
【0022】
つまみ部22表面には、樹脂系エラストマーを主成分とする滑り止め層105を設ける。
この樹脂系エラストマーは、アクリル系エラストマー、スチレン系エラストマー、オレフ
ィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、エステル系エラストマー、アミド系エラストマー、塩ビ系エラストマーなどがあり、加熱すると軟化し、冷却するとゴム性を有する熱可塑性樹脂系エラストマーや、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴムなどの熱硬化性樹脂系エラストマーなどがあるが、特にアクリル系エラストマーであるアクリル系ブロックポリマーが好ましい。
アクリル系ブロックポリマーは、メタクリル酸メチルとアクリル酸ノーマルブチルとからなるアクリル系ブロックポリマーで、リビングアニオン重合によって製造でき、ポリマー自身に粘着性を有している。
この為、手が多少濡れた状態であっても、滑りにくく、つまみ部をしっかりつまんで、確実に引き裂くことが出来る。
前フィルム101と後フィルム102の外表面に塗工する滑り止め層105は、塗工する範囲として切り取られる範囲だけでも良いが、さらに収納部10側にまで入り込んで塗工してもかまわないし、場合によっては、パウチ全面に塗工しても良い。
【0023】
図2-1、図2-2では、上辺切り欠き111に角の立った鋭い切り欠き部1110があって、その鋭い切り欠き部1110と易開封線210によって、つまみ部22がパウチに対して前側、あるいは後ろ側に引いて、一旦引き裂きが開始されると、容易に側辺切り欠き121に向かって引き裂かれる。
そして、つまみ部22がパウチから離れると、開封部21で注出路20が開口する。
【0024】
注出端先端のつまみ部22切り取りによって注出部2を開封可能にするには、滑り止め層と共に、つまみ部表面が、凹凸形状が形成された粗い表面とすると、より確実につまみ部をつかんで開封部21を引き裂くことが出来る。凹凸は、プレスしてエンボス加工する方法もあるが、エラストマーを塗工する下地として、炭酸カルシウムなどの核材を添加したインキを印刷したり、盛り上げ印刷するなどの方法であっても良い。
【0025】
本発明のパウチは、使用形態や内容物の容量、デザインなどにより、図1のようなスタンディングタイプ(自立タイプ)のパウチの他に、三方シールタイプや四方シールタイプのパウチなどにも利用可能である。
【0026】
本発明のパウチを構成する積層フィルムの基本的な構成としては、外側に基材層、内側にシーラント層からなるフィルムでかまわないが、中間層として、内容物の保存性を向上させるバリア層や、落下等に破袋しにくいような柔軟性を付与する層を設けることが好ましい。
【0027】
基材層としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム、ナイロンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリルニトリルフィルム、ポリイミドフィルムなどが挙げられる。機械的強度や寸法安定性を有するものであれば、特に限定されない。特に結晶性樹脂を二軸延伸したフィルムが好ましい。また、これらのフィルムにアルミニウム蒸着層を設けたものでもよい。
【0028】
また、基材層には、必要に応じて適宜印刷層を設けることができる。印刷層は、ウレタン系、アクリル系、ニトロセルロース系、ゴム系などのバインダー樹脂に各種顔料、体質顔料および可塑剤、乾燥剤、安定剤などを添加されてなるインキにより印刷された層である。印刷方法としては、例えば、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷、インクジェット印刷などの公知の印刷方法を用いることができる。また基材層の表面を、予め前処理としてコロナ処理またはオゾン処理を施すことにより、印刷層の密着性を向上させることができる。
【0029】
シーラント層としては、ポリオレフィン系樹脂が一般的に使用され、具体的には、低密
度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン-アクリル酸エチル共重合体(EAA)、アイオノマー、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂が使用できる。これらの樹脂を押出し機により製膜して可能である。単層または複層でもよい。フィルムの厚みとしては、50~200μmの範囲であることが好ましい。
【0030】
接着層としては、ドライラミネート用接着剤が使用できる。例えば、二液硬化型ウレタン系接着剤、ポリエステルウレタン系接着剤、ポリエーテルウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、エポキシ系接着剤などを使用することができる。貼り合わせ方法としては、ドライラミネート法にて可能であるが、エクストルーダーラミネーションで、シーラント層側を製膜しながら貼り合せてもかまわないし、サンドポリエチレン加工してもかまわない。
【0031】
また、積層シートの諸物性を向上する必要があれば、例えば、積層シートの剛性や落下強度、突き刺し強度などを向上させる場合、水蒸気や酸素ガスなどのバリア性を向上させる場合、などには中間層を設けることも可能である。しかし、易開封加工線の加工で、容易に脆弱化できる材質か、容易に破断可能な材質であることが望ましい。
【0032】
中間層としては、例えば、アルミニウム箔、アルミニウム蒸着ポリエステルフィルム、無機酸化物蒸着ポリエステルフィルム、ポリアミド樹脂などを使用することができる。また、中間層を積層するには、接着層を介してドライラミネート法にて貼り合わせることができる。
【0033】
無機酸化物としては、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシュウム、酸化カリウム、酸化錫、酸化ナトリウム、酸化ホウ素、酸化チタン、酸化鉛、酸化ジルコニウム、酸化イットリウムなどの金属の酸化物が使用できる。中でも生産性、価格面から酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムなどが好ましい。
【実施例
【0034】
以下、本発明の具体的実施例と比較例について説明する。
実施例、比較例共、パウチを構成する前フィルム、後フィルム、底中間フィルムとして使用する積層フィルムの製造は、基材層として、2軸延伸の6―ナイロンフィルム15μmの内面に二液硬化型ウレタン系接着剤を介してドライラミネート法により、酸化珪素蒸着のポリエチレンテレフタレートフィルム12μmを貼り合せた2層構成とした。
さらに内面にシーラント層として、直鎖状低密度ポリエチレンフィルム120μmを、貼り合わせ、積層フィルムを作成した。
【0035】
パウチの前フィルム101、後フィルム102、底中間フィルム141は、縦384mm、幅160mmの積層フィルム一枚を、シーラント面同士を合わせるように縦方向で折り込んで、縦(H)160mm、横幅(W)160mmの大きさになるように折り、さらに、端部を底中間フィルムとして、前フィルムと後フィルムの間に、シーラント面を外側に折り込み深さhを16mmとしたフィルムを使用した。(参照:図4-1)
注出部やつまみ部の形状は、図4-2で、どの実施例、比較例も同じ形状とした。
易開封加工線210の加工は、波長10.6μmの炭酸ガスレーザーを21ワットの出力で、2500mm/秒の速度で図4-2の易開封の予定線形状に走査して、表面傷を加工した。
【0036】
つまみ部22は、前フィルム101、後フィルム102共に、図4-2に示す同じ位置にコート剤を塗工した。
塗工するコート剤は、アクリル系ブロックポリマーで、溶剤の酢酸エチルに溶かした塗工液を使用した。
塗工液に添加する添加量を変えて、評価した。
比較例1は、未塗工とし、
実施例1は、酢酸エチル99重量部に対し、1.0重量部、
実施例2は、酢酸エチル97重量部に対し、3.0重量部、
実施例3は、酢酸エチル85重量部に対し、15.0重量部、
実施例4は、酢酸エチル65重量部に対し、35.0重量部、
比較例2は、酢酸エチル50重量部に対し、50.0重量部、とし、
175線/inch、版深25μmのベタのグラビア版を使用し、グラビアコートし、縦200mm、幅80mmに切断して評価した。
【0037】
<評価方法>
<つまみ部の滑り性測定>
JIS K 7125のプラスチック-フィルム及びシート-摩擦係数試験方法に準拠して、静摩擦係数を測定し、それをもって滑り性とした。
測定器:株式会社エー・アンド・デー社製テンシロン(R)万能試験機(引張・圧縮試験機)RTF-2410使用。
摩擦テーブルに対する滑り片の相対速度:100mm/min
滑り片の質量:200g(フェルト面付き錘すべり片を使用)
試験片:縦200mm、幅80mmの積層フィルムを使用し、全面に前記各種コート剤を塗工した試験片を3組作成した。
滑り性は、塗工表面に水がない場合と、塗工表面に水1gを塗布して濡らした場合の二通りで評価し、それぞれ、3回の結果を平均した。
【0038】
<開封部のカット性評価>
手を水で濡らした状態で、130mLの水を充填したパウチとつまみ部を持って、開封部を引き裂いてみて、引き裂き性を評価した。
男女5人ずつ、10人で評価し、実用的観点で切れにくいと感じたか、まったく切れなかった人数を評価点とした。
【0039】
<製袋適正の評価>
製袋機に積層フィルムを掛けて、安定して製袋が可能か確認した。
【0040】
<評価結果>
<つまみ部の滑り性測定結果>
滑り片とつまみ部に水を付けずに静摩擦係数を測定した結果は、比較例1は0.21だったが、実施例1では0.32、実施例2では0.41、実施例3では0.53、実施例4では0.91、比較例2では1.42だった。
次に、滑り片とつまみ部に水1gを付けて静摩擦係数を測定した結果は、比較例1は0.13で、大きく低下したが、実施例1では0.35、実施例2では0.45、実施例3では0.54、実施例4では0.95、比較例2では1.45と、水無しと同等か、わずか上昇した静摩擦係数になった。
【0041】
<開封部のカット性評価結果>
比較例1では10人中7人が、滑って引き裂けなかった。しかし、アクリル系ブロックポリマーを塗工した実施例1、実施例2、実施例3、実施例4、比較例2では、確実につまみ部で滑らず、引き裂いて開封できた。
【0042】
<製袋適正の評価>
比較例1、実施例1、実施例2、実施例3、実施例4では、一般のフィルムと同じように製袋ができたが、比較例2では折り曲げ工程などの滑り不良でシワが入ったり、フィルムがずれたりして、製袋が困難であった。
【0043】
以上の結果から、アクリル系ブロックポリマーを塗工したものは、つまみ部で確実につかんで引き裂いて、開封可能となり、その塗工する添加量は、1.0%以上、40.0%以下が良いと確認した。
【0044】
【表1】
【0045】
本発明のパウチは、以上のようなもので、樹脂系エラストマーを主成分とする滑り止め層をつまみ部に加えることによって、水で濡れた手で摘んでも、滑らずに、強く引き裂くことが可能である。
また、単に印刷工程で、樹脂系エラストマーを塗工するだけなので、汎用の製造ラインで製造できる。特に、紫外線硬化装置などを必要とせず、精度の高い位置決めなどを必要としないで製造できるなど、大きなメリットが得られる。
【符号の説明】
【0046】
1・・・・・・・・パウチ
10・・・・・・・収納部
101・・・・・・前フィルム
102・・・・・・後フィルム
103・・・・・・基材層
104・・・・・・シーラント層
105・・・・・・滑り止め層
11・・・・・・・上辺部
111・・・・・・上辺切り欠き
1110・・・・・鋭い切り欠き部
12・・・・・・・左辺部
121・・・・・・側面切り欠き
13・・・・・・・右辺部
14・・・・・・・底辺部
141・・・・・・底面フィルム
15・・・・・・・注出端シール部
2・・・・・・・・注出部
20・・・・・・・注出路
21・・・・・・・開封部
210・・・・・・易開封加工線
22・・・・・・・つまみ部
H・・・・・・・・縦
W・・・・・・・・横幅
h・・・・・・・・折り込み高さ
図1
図2
図3
図4