(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-01
(45)【発行日】2023-11-10
(54)【発明の名称】プリント化粧金属板
(51)【国際特許分類】
B32B 15/08 20060101AFI20231102BHJP
【FI】
B32B15/08 H
(21)【出願番号】P 2022089191
(22)【出願日】2022-05-31
(62)【分割の表示】P 2018140220の分割
【原出願日】2018-07-26
【審査請求日】2022-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 幹之
(72)【発明者】
【氏名】山村 菜月
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-123373(JP,A)
【文献】特開2003-205589(JP,A)
【文献】特開2004-209974(JP,A)
【文献】特開2017-164942(JP,A)
【文献】特開2005-087954(JP,A)
【文献】特開2011-046204(JP,A)
【文献】特開2007-276346(JP,A)
【文献】特開2001-079990(JP,A)
【文献】特開2017-218647(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B05D 1/00- 7/26
B41M 1/00-3/18;7/00-9/04
B41N 1/00-99/0
B41C 1/00- 3/08
B41D 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板の一方の面上に、プライマー層と、ベースコート層と、絵柄層と、前記絵柄層の上に凹凸を形成するマット印刷層と、前記マット印刷層の凹凸の表面を被覆するクリアコート層と、がこの順に積層されてなるプリント化粧金属板であって、
前記クリアコート層は、骨材を含んでおり、
前記マット印刷層は、前記クリアコート層の厚さの100%より大きく200%未満の平均粒径を有するマット剤を含
み、
前記マット剤の平均粒径は、前記骨材の平均粒径よりも大きいことを特徴とするプリント化粧金属板。
【請求項2】
前記マット印刷層に複数のマット剤が含まれている場合には、前記複数のマット剤のうちの最も含有量が大きいマット剤の平均粒径が、前記クリアコート層の厚さの100%以上200%以下であることを特徴とする請求項1に記載のプリント化粧金属板。
【請求項3】
前記クリアコート層は、前記複数のマット剤のうちの最も含有量が大きいマット剤の平均粒径以下の平均粒径を有する骨材を含むことを特徴とする請求項2に記載のプリント化粧金属板。
【請求項4】
前記金属板は、クロメートフリー皮膜を有する溶融亜鉛メッキ鋼板であることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載のプリント化粧金属板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント化粧金属板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属板の一方の面上に、プライマー層と、ベースコート層と、絵柄層と、前記絵柄層の上に凹凸を形成するマット印刷層と、前記マット印刷層の凹凸を埋めるクリアコート層と、がこの順に積層されてなるプリント化粧金属板が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載のプリント化粧金属板では、マット印刷層に含まれるマット剤により、触感による立体感と、視覚的な立体感とを感じさせるようになっている。
しかし、特許文献1に記載のプリント化粧金属板では、クリアコート層にマット剤が埋まり、触感による立体感と視覚的な立体感とが低下し、意匠性が低下する問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたもので、触感による立体感と視覚的な立体感とを有し、意匠性に優れたプリント化粧金属板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、(a)金属板の一方の面上に、プライマー層と、ベースコート層と、絵柄層と、絵柄層の上に凹凸を形成するマット印刷層と、マット印刷層の凹凸の表面を被覆するクリアコート層と、がこの順に積層されてなるプリント化粧金属板であって、(b)マット印刷層は、クリアコート層の厚さの100%より大きく200%未満の平均粒径を有するマット剤を含むプリント化粧金属板であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、マット剤がクリアコート層の表面から突出するため、突出したマット材により、触感による立体感と視覚的に立体感とを感じさせることができる。それゆえ、触感による立体感と視覚的な立体感とを有し、意匠性に優れた化粧シートを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明に基づく実施形態に係るプリント化粧金属板を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態に係るプリント化粧金属板およびその製造方法について、図面を参照しつつ説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識を基に設計の変更等の変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた形態も、本発明の範囲に含まれる。また、各図面は、理解を容易にするため適宜誇張して表現している。
【0009】
(構成)
図1に示すように、本発明の実施形態に係るプリント化粧金属板10は、金属板1と、プライマー層2と、ベースコート層3と、絵柄層4と、マット印刷層5と、クリアコート層6と、裏面コート層7とを備えている。そして、金属板1の一方の面1a上に、プライマー層2と、ベースコート層3と、絵柄層4と、絵柄層4の上に凹凸を形成するマット印刷層5と、マット印刷層5の凹凸を埋めるクリアコート層6と、がこの順に積層されている。また、金属板1の他方の面1b上に、裏面コート層7が積層されている。
【0010】
(金属板)
金属板1は、プリント化粧金属板10のベースとなる板である。金属板1の材料としては、例えば、溶融亜鉛メッキ鋼板、アルミニウム板を用いることができる。溶融亜鉛メッキ鋼板は、塗料との密着性・耐食性の向上のために、鋼板表面に亜鉛メッキ(金属皮膜)が形成されてなる鋼板である。また、亜鉛メッキされた鋼板の表層には、耐白錆性の向上のために、化成皮膜8を設けてもよい。化成皮膜8としては、例えば、クロメート皮膜、クロメートフリー皮膜を採用できる。特に、環境負荷の面から、クロメートフリー皮膜が最も望ましい。クロメートフリー皮膜7は、クロメートフリー処理(ノンクロメート処理)により形成できる。クロメートフリー処理に使用する処理液としては、例えば、六価クロムを含有しない処理液、例えば、Zr若しくはTi又はこれらの両方の塩を含む処理液、又は、シランカップリング剤を含む処理液等を採用できる。このような処理液を用いたクロメートフリー処理により、亜鉛メッキの層上に、Ti、Zr、P、Ce、Si、Al、Li等を主成分として含有し、クロムを含有しないクロメートフリー皮膜を形成できる。つまり、クロメートフリー皮膜は、例えば、Ti、Zr、P、Ce、Si、Al若しくはLi又はこれらの任意の組み合わせを含む。金属板1の種類は、特に制限されるものではなく、例えば、単独の金属板でもよく複合鋼板の最表層を構成する金属板でもよい。
【0011】
(プライマー層)
プライマー層2は、ベースコート層3と金属板1との密着性・耐食性を向上させるための層である。プライマー層2の材料としては、例えば、公知のプライマー用の樹脂塗料を用いることができる。樹脂塗料としては、例えば、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂等を含む硬化性塗料を採用できる。また、プライマー層2には、耐食性を向上させる目的で、防錆顔料を添加してもよい。プライマー層2の厚さは、例えば、1μm以上10μm以下とする。
【0012】
(ベースコート層)
ベースコート層3は、プリント化粧金属板10に絵柄層4の下地色を付与するための層である。ベースコート層3の材料としては、例えば、公知のベースコート用のバインダ樹脂を含む樹脂塗料を用いることができる。バインダー樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂等の熱硬化型樹脂を採用できる。また、樹脂塗装には、下地色の顔料が添加されている。ベースコート層3の厚さは、例えば、10μm以上30μm以下とする。
【0013】
(絵柄層)
絵柄層4は、プリント化粧金属板10に絵柄による意匠性を付与するための層である。絵柄層4は、染料又は顔料等の着色剤を適当なバインダー樹脂とともに適当な希釈溶媒中に溶解又は分散してなる印刷インキ又は塗料等を用いて形成される。印刷インキ又は塗料等は、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法又はインクジェット印刷等の各種印刷法や、グラビアコート法又はロールコート法等の各種塗工法等で塗布される。また、バインダー樹脂としては、例えば、公知のバインダ樹脂を採用できる。例えば、上記のプライマー層2で使用されるような、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂得、アルキド樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂等の熱硬化型樹脂を採用できる。また、顔料としては、例えば、公知の顔料を用いることができる。例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、鉄・複合酸化物、酸化鉄、有機顔料、メタリック顔料、パール顔料等を採用できる。これらのうち、鉄・複合酸化物は遮熱顔料として使用される。
【0014】
また、絵柄は、特に制限されるものではないが、例えば、木目柄、石目柄、布目柄、抽象柄、幾何学模様、文字、記号、単色無地等或いはこれらの2種類以上の組み合わせ等を用いることできる。絵柄層4の厚さは、例えば、0.1μm以上0.2μm以下とする。なお、インクジェット印刷を用いた場合、絵柄層4の厚さは、この範囲よりも厚くなる。
【0015】
(マット印刷層)
マット印刷層5は、視覚による立体感と、触感による立体感とを感じさせるための層である。例えば、絵柄層4上に部分的に形成され、絵柄層4の一部(例えば、絵柄層4の絵柄が木目柄である場合には、木目柄の導管模様と対向する部分)を被覆する。マット印刷層5は、マット剤を適当なバインダー樹脂とともに適当な希釈溶媒中に溶解又は分散してなる印刷インキ等を用いて形成される。印刷インキ等は、例えば、グラビア印刷法又はオフセット印刷法等、印刷版を用いた各種印刷法等によって塗布される。また、バインダー樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂等の熱硬化型樹脂や、紫外線硬化型樹脂を用いることができる。また、熱硬化型樹脂は、2液硬化型樹脂であってもよい。
【0016】
また、マット剤としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、合成マイカ、酸化チタンガラス粒子等の無機微粒子、ポリエチレン微粒子、アクリル微粒子、ウレタン微粒子、尿素樹脂、ナイロン樹脂、バルーン等の有機微粒子を用いることができる。マット剤の平均粒径は、視覚による立体感と触感による立体感とを感じさせるために、クリアコート層6の厚さの100%以上200%以下が好ましい。すなわち、クリアコート層6の厚さは、物性の面から10μm程度は必要であるため、仮に10μmと考えると、マット剤の粒径は、10μm以上20μm未満が好ましい。100%未満である場合には、マット剤がクリアコート層6に埋まってしまい、マット感や手触り感が弱くなり、視覚による立体感や触感による立体感を感じ難くなる。一方、200%より大きい場合には、マット剤がプリント化粧金属板10から脱落する。
【0017】
なお、マット剤の平均粒径は、例えば、マット剤の固まりを粉砕して粒子化した後、ふるい分けにより所望の範囲内になるよう制御することができる。ここで、平均粒径は、顕微鏡観察による平均粒径である。顕微鏡観察による平均粒径は、例えば、顕微鏡観察を行い、画像処理ソフト等により任意の微粒子の粒径を100個測定して個数平均することにより得られる。なお、粒径とは、マット剤の粒子の長軸径と短軸径との平均値を指す。
なお、マット印刷層5に複数のマット剤が含まれている場合には、複数のマット剤のうちの最も含有量が大きいマット剤の平均粒径を、クリアコート層6の厚さの100%以上200%以下とする。これにより、マット感や手触り感をより確実に感じさせることができ、視覚による立体感と、触感による立体感とをより確実に感じさせることができる。
【0018】
また、マット剤の添加量は、バインダー樹脂100質量部に対して、5質量部以上20質量部以下であることが好ましい。また、マット印刷層5の模様は、特に制限されるものではないが、例えば、導管模様、石板表面凹凸模様(花崗岩劈開面等)、布テクスチャア模様、梨地模様、砂目模様、ヘアライン模様等を用いることができる。導管模様を形成する場合には、絵柄層4の絵柄と同調して配置されることが好ましい。同調とは、表面側からみて、絵柄と導管模様とが50%以上重なっている状態である。マット印刷層5を印刷する印刷版は、レーザーポーシェル版で製造された印刷版を使用する。ここで、マット印刷層5は、シリカ等のマット剤が添加することで白っぽくなる可能性がある。このため、インキ樹脂に対し墨や鉄・複合酸化物、酸化鉄、カーボンブラック等の着色顔料を混合することが好ましい。墨を添加することで濃い茶色っぽい色となり、よりリアルな木目を表現可能となる。
【0019】
(クリアコート層)
クリアコート層6は、プリント化粧金属板10に耐候性や曲げ加工性、耐傷付性、清掃性を付与するための透明な層である。クリアコート層6の主成分としては、例えば、硬化型樹脂を用いることができる。すなわち、樹脂成分が実質的に硬化型樹脂から構成されることが好ましい。実質的とは、例えば、樹脂全体を100質量部とした場合に80質量部以上を指す。硬化型樹脂としては、例えば、電離放射線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂を採用できる。また、クリアコート層6には、例えば、フッ素樹脂を含ませてもよい。さらに、クリアコート層6には、必要に応じて、耐侯剤、可塑剤、安定剤、充填剤、分散剤、染料、顔料、溶剤等を添加してもよい。但し、硬化型樹脂の含有割合は、樹脂全体の60質量部以上が好ましい。クリアコート層6の厚さは、10μm以上15μm以下が好ましい。
【0020】
また、クリアコート層6は、耐傷付性が向上するように、骨材を含んでいる。骨材としては、例えば、長石、硅砂、寒水石、ガラスビーズ、合成樹脂ビーズ等の透明骨材を用いることができる。骨材の平均粒径は、マット剤の平均粒径以下とする。マット剤の平均粒径よりも大きい場合には、骨材による凹凸がマット感や手触り感に影響を与え、意匠性が低減する。なお、マット印刷層5に複数のマット剤が含まれている場合には、骨材の平均粒径は、複数のマット剤のうちの、最も含有量が大きいマット剤の平均粒径以下とする。
【0021】
(裏面コート層)
裏面コート層7は、金属板1の他方の面1b、つまり、プリント化粧金属板10の裏面を被覆するための層である。裏面コート層7は、ポリエステル樹脂やエポキシ樹脂を主成分とした塗料等を金属板1に塗装した後、塗装した塗料を加熱焼き付けして形成される。
【0022】
以上説明したように、本発明の実施形態に係るプリント化粧金属板10は、金属板1の一方の面1a上に、プライマー層2と、ベースコート層3と、絵柄層4と、絵柄層4の上に設けられて凹凸を形成するマット印刷層5と、マット印刷層5の凹凸を埋めるクリアコート層6と、がこの順に積層されてなるものとした。そして、マット印刷層5が、クリアコート層6の厚さの100%以上200%以下の平均粒径を有するマット剤を含むようにした。それゆえ、クリアコート層6にマット剤が埋まることを防止でき、触感による立体感と視覚的な立体感とを有し、意匠性に優れたプリント化粧金属板10を提供できる。
【0023】
また、本発明の実施形態に係るプリント化粧金属板10は、金属板1の化成処理からクリアコート層6の硬化型樹脂塗布まで1工程で行えるため、製造コストを低減できる。
また、本発明の実施形態に係るプリント化粧金属板10では、マット印刷層5に複数のマット剤が含まれている場合には、複数のマット剤のうちの最も含有量が大きいマット剤の平均粒径をクリアコート層6の厚さの100%以上200%以下とするようにした。それゆえ、視覚による立体感と触感による立体感とをより確実に感じさせることができる。
また、本発明の実施形態に係るプリント化粧金属板10では、クリアコート層6は、マット印刷層5の複数のマット剤のうちの、最も含有量が大きいマット剤の平均粒径以下の平均粒径を有する骨材を含むようにした。それゆえ、骨材による凹凸がマット感や手触り感に影響を与えることを抑制でき、意匠性の低減を抑制することができる。
【0024】
また、本発明の実施形態に係るプリント化粧金属板10では、金属板1を、クロメートフリー皮膜を有する溶融亜鉛メッキ鋼板としたため、製造時の環境負荷を低減できる。
また、本発明の実施形態に係るプリント化粧金属板10の製造方法では、プリント化粧金属板10のマット印刷層5を、レーザーポーシェル製版で製造された印刷版を用いた印刷法で形成するようにした。ここで、レーザーポーシェル製版で製造された印刷版は、例えば、ヘリオ製版で製造された印刷版に比べ、印刷版のセルの容積が大きい。それゆえ、レーザーポーシェル製版で製造された印刷版を用いることで、マット印刷層5を構成するインキの網点を大きくすることができ、視覚による立体感と触感による立体感とをより確実に感じさせることができる。
【実施例】
【0025】
以下に、本発明の実施形態に係るプリント化粧金属板10の実施例及び比較例について説明する。
(実施例1~10、比較例1~4)
表1、表2に示すように、マット印刷層5に添加するマット剤の内訳や、マット印刷層5の版仕様を設定して、実施例1~10、比較例1~4のプリント化粧金属板10を作製した。その際、金属板1としては、JIS G 3302に準拠した厚さ0.4mmの鋼板に溶融亜鉛メッキで被覆をし、さらに、クロメートフリー皮膜を化成皮膜8として設けたものを用いた。
【0026】
【0027】
【0028】
(性能評価)
続いて、実施例1~10、比較例1~4のプリント化粧金属板10に対して、以下に示す性能評価を行なった。
(グロスマット効果評価)
グロスマット効果評価では、プリント化粧金属板10を見て、視覚による立体感を評価した。評価基準としては、視覚による立体感をしっかりと感じられた場合を「○」、視覚による立体感をわずかに感じられた場合を「△」、視覚による立体感を感じられなかった場合を「×」とした。
(手触り感評価)
手触り感評価では、プリント化粧金属板10に手指で触れて、触感による立体感を評価した。評価基準としては、触感による立体感をしっかりと感じられた場合を「○」、触感による立体感をわずかに感じられた場合を「△」、触感による立体感を感じられなかった場合を「×」とした。
【0029】
(評価結果)
表1、表2に示すように、実施例1~8のプリント化粧金属板10は、グロスマット効果評価及び手触り感評価が「○」となった。また、実施例9、10のプリント化粧金属板10は、グロスマット効果評価及び手触り感評価が「○」または「△」となった。ここで、実施例1~4のプリント化粧金属板10では、レーザーポーシェル製版で製造された印刷版(版深60μm)を用いてマット印刷層5が設けられており、実施例9、10のプリント化粧金属板10では、ヘリオ製版で製造された印刷版(版深100μm)を用いてマット印刷層5が設けられている。すなわち、実施例1~4、9、10では、版深60μmのレーザーポーシェル製版による印刷版と、版深100μmのヘリオ製版による印刷版とを試験したが、ヘリオ製版の印刷版(版深100μm)を用いた実施例9、10は、版深を浅くした、レーザーポーシェル製版による印刷版(版深60μm)を用いた実施例1~4よりも、グロスマット効果評価及び手触り感評価が悪くなった。これは、ヘリオ製版で製造された印刷版を用いてマット印刷層5を設けた場合、レーザーポーシェル製版で製造された印刷版を用いてマット印刷層5を設けた場合に比べ、セル容積が小さくなるためと考えられる。
【0030】
一方、比較例1、2のプリント化粧金属板10は、マット印刷層5の複数のマット剤のうちの、最も含有量が大きいマット剤がクリアコート層6に埋まってしまい、マット感や手触り感が弱くなり、グロスマット効果評価が「△」、手触り感評価が「×」となった。また、比較例3、4のプリント化粧金属板10は、クリアコート層6の骨材の平均粒径が、マット印刷層5の複数のマット剤のうちの、最も含有量が大きいマット剤の平均粒径(15μm)よりも大きい(20μm)ため、骨材による凹凸がマット感や手触り感に影響を与え、グロスマット効果評価「×」または「△」、手触り感評価が「×」となった。
したがって、実施例1~10のプリント化粧金属板10は、比較例1~4のプリント化粧金属板10よりもグロスマット効果評価及び手触り感評価に優れることが確認された。
【符号の説明】
【0031】
1…金属板、1a…金属板の一方の面、1b…金属板の他方の面、2…プライマー層、3…ベースコート層、4…絵柄層、5…マット印刷層、6…クリアコート層、7…裏面コート層、8…化成皮膜、10…プリント化粧金属板