(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-01
(45)【発行日】2023-11-10
(54)【発明の名称】調光装置、調光窓、および、調光装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
G02F 1/13 20060101AFI20231102BHJP
G02F 1/1333 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
G02F1/13 505
G02F1/1333
(21)【出願番号】P 2023000675
(22)【出願日】2023-01-05
(62)【分割の表示】P 2019004682の分割
【原出願日】2019-01-15
【審査請求日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】P 2018004136
(32)【優先日】2018-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】白石 隆司
【審査官】植田 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-211453(JP,A)
【文献】特開平11-134100(JP,A)
【文献】特開2017-222965(JP,A)
【文献】特開2015-193243(JP,A)
【文献】特開2014-021452(JP,A)
【文献】特開2004-131335(JP,A)
【文献】実開平03-042121(JP,U)
【文献】特表2012-529661(JP,A)
【文献】特開2017-181888(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0240029(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/13
G02F 1/1333
G02F 1/15
E06B 9/24
B60J 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
調光層および前記調光層を挟む一対の電極シートを備える調光シートと、
前記調光シートの上面を覆う部分を有するバリア部と、
前記調光シートの下面が貼り付けられた支持基材と、を備える調光装置であって、
前記バリア部は、前記調光シートに向けて供給されたガラス塗料の硬化物であり、
前記支持基材における前記調光シートの前記下面が貼り付けられている面は、曲面であ
り、
前記バリア部における前記調光シートの前記上面側の面とは反対側の面は、平面である
調光装置。
【請求項2】
調光層および前記調光層を挟む一対の電極シートを備える調光シートと、
前記調光シートの上面を覆う部分を有するバリア部と、
前記調光シートの下面が貼り付けられた支持基材と、を備える調光装置であって、
前記バリア部は、前記調光シートに向けて供給されたガラス塗料の硬化物であり、
前記支持基材における前記調光シートの前記下面が貼り付けられている面は、曲面であ
り、
前記バリア部が、前記調光シートの前記上面が区画する空間を埋めている
調光装置。
【請求項3】
前記電極シートは、透明樹脂層、および、前記透明樹脂層と前記調光層との間に位置する透明電極層を備え、
前記調光装置は、前記調光シートの前記上面を構成する前記透明樹脂層と前記バリア部との間に、プライマー層を備える
請求項
1または2に記載の調光装置。
【請求項4】
前記バリア部は、前記支持基材上において前記調光シートの側面を覆う部分を有する
請求項
1~3のいずれか一項に記載の調光装置。
【請求項5】
前記一対の電極シートである第1電極シートおよび第2電極シートのうち、前記調光層に対して前記支持基材と同一の側に位置する電極シートが第2電極シートであり、
前記調光シートは、前記第2電極シートの有する透明電極層が前記調光層および前記第1電極シートから露出している第2領域を有し、
前記調光装置は、前記第2電極シートの前記透明電極層と電源とを接続するための第2端子部を備え、前記第2端子部は前記第2領域で前記透明電極層に固定され、
前記バリア部は、前記第2端子部および当該第2端子部の周囲に露出する前記透明電極層を覆う部分を有する
請求項1~
4のいずれか一項に記載の調光装置。
【請求項6】
前記一対の電極シートである第1電極シートおよび第2電極シートのうち、前記調光層に対して前記支持基材と反対側に位置する電極シートが第1電極シートであり、
前記調光シートは、前記第1電極シートの有する透明電極層が前記調光層および前記第2電極シートから露出している第1領域を有し、
前記調光装置は、前記第1電極シートの前記透明電極層と電源とを接続するための第1端子部を備え、前記第1端子部は前記第1領域で前記透明電極層に固定され、
前記バリア部は、前記第1領域および前記第1端子部と前記支持基材との間を埋める部分である埋入部を有する
請求項1~
5のいずれか一項に記載の調光装置。
【請求項7】
前記バリア部は、前記調光シートの上面と対向する位置から見て、前記支持基材上において前記調光シートの外側に位置する部分を有し、
前記埋入部と前記外側に位置する部分とが界面を有して接する
請求項
6に記載の調光装置。
【請求項8】
前記一対の電極シートである第1電極シートおよび第2電極シートのうち、前記調光層に対して前記支持基材と反対側に位置する電極シートが第1電極シートであり、
前記調光シートは、前記第1電極シートの有する透明電極層が前記調光層および前記第2電極シートから露出している第1領域を有し、
前記調光装置は、
前記第1電極シートの前記透明電極層と電源とを接続するための第1端子部であって、前記第1領域で前記透明電極層に固定される前記第1端子部と、
前記第1領域および前記第1端子部と前記支持基材との間に位置する接着部と、をさらに備える
請求項1~
5のいずれか一項に記載の調光装置。
【請求項9】
前記調光シートの上面は、曲
面である
請求項1~
8のいずれか一項に記載の調光装置。
【請求項10】
前記バリア部の厚さは、前記調光シートの厚さよりも大きい
請求項1~
9のいずれか一項に記載の調光装置。
【請求項11】
請求項1~
10のいずれか一項に記載の調光装置を備える調光窓。
【請求項12】
調光層および前記調光層を挟む一対の電極シートを備える調光シートに向けてガラス塗料を供給し、当該ガラス塗料を硬化させることを含む調光装置の製造方法であって、
前記調光装置は、
前記調光シートと、
前記調光シートの上面を覆う部分を有するバリア部であって、前記ガラス塗料の硬化によって形成された前記バリア部と、
前記調光シートの下面が貼り付けられた支持基材であって、前記下面が貼り付けられた面が曲面である前記支持基材と、を備え
、
前記バリア部における前記調光シートの前記上面側の面とは反対側の面は、平面である
調光装置の製造方法。
【請求項13】
調光層および前記調光層を挟む一対の電極シートを備える調光シートに向けてガラス塗料を供給し、当該ガラス塗料を硬化させることを含む調光装置の製造方法であって、
前記調光装置は、
前記調光シートと、
前記調光シートの上面を覆う部分を有するバリア部であって、前記ガラス塗料の硬化によって形成された前記バリア部と、
前記調光シートの下面が貼り付けられた支持基材であって、前記下面が貼り付けられた面が曲面である前記支持基材と、を備え
、
前記バリア部が、前記調光シートの前記上面が区画する空間を埋めている
調光装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調光装置、調光装置を用いた調光窓、および、調光装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
調光機能付きの窓である調光窓は、電圧制御により透明状態と不透明状態とを切り替えることができるように構成されている。調光窓は、その優れた意匠性および隠蔽性が評価されており、建築物や交通機関への普及が進んでいる。
【0003】
従来、調光窓に用いられる調光装置は、調光機能を有する構造部分である調光層と調光層を挟む一対の透明電極層とを備える調光シートが、合わせガラスの間に挟まれた構造を有していた(特許文献1参照)。こうした調光装置は、調光シートを2枚の板ガラスで挟んで真空圧着や熱圧着によって固定することにより形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、2つの板状部材で調光シートを挟んでこれらを一体化するためには、上述のように圧力等の負荷をかけることが必要であるため、調光装置の製造に大掛かりな装置を要する。一方で、調光シートの表面が外気に露出されていると、当該表面が物理的あるいは化学的な刺激による影響を受けやすい。
【0006】
本発明は、簡易に製造可能な構造によって調光シートを保護することのできる調光装置、調光窓、および、調光装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する調光装置は、調光層および前記調光層を挟む一対の電極シートを備える調光シートと、前記調光シートの上面を覆う部分を有するバリア部と、を備える。前記バリア部は、前記調光シートに向けて供給されたガラス塗料の硬化物である。
【0008】
上記構成によれば、調光シートの上面がバリア部によって保護されるとともに、水分やアルコール等の化学物質が上面から調光シートの内部に入り込むことが抑えられる。そして、バリア部はガラス塗料の硬化によって形成される。したがって、合わせガラスのように、板状に成形されている部材の間に調光シートを挟んで固定する製法と比較して、調光シートが保護された調光装置を容易に製造することができる。
【0009】
上記構成において、支持基材をさらに備え、前記調光シートの下面は、前記支持基材に貼り付けられていてもよい。
上記構成によれば、調光シートの下面が支持基材によって保護され、調光シートの上面がバリア部によって保護される。そして、支持基材は調光シートに貼り合わせられ、バリア部はガラス塗料の硬化によって形成される。したがって、板状に成形されている部材の間に調光シートを挟んで固定する製法と比較して、調光シートが2つの部材に挟まれて保護される調光装置を容易に製造することができる。
【0010】
上記構成において、前記電極シートは、透明樹脂層、および、前記透明樹脂層と前記調光層との間に位置する透明電極層を備え、前記調光装置は、前記調光シートの前記上面を構成する前記透明樹脂層と前記バリア部との間に、プライマー層を備えてもよい。
【0011】
上記構成によれば、調光シートとバリア部との密着性が高められる。
上記構成において、前記バリア部は、前記支持基材上において前記調光シートの側面を覆う部分を有してもよい。
【0012】
上記構成によれば、調光シートの側面から水分やアルコール等の化学物質が調光シートの内部に入り込むことが抑えられる。
上記構成において、前記一対の電極シートである第1電極シートおよび第2電極シートのうち、前記調光層に対して前記支持基材と同一の側に位置する電極シートが第2電極シートであり、前記調光シートは、前記第2電極シートの有する透明電極層が前記調光層および前記第1電極シートから露出している第2領域を有し、前記調光装置は、前記第2電極シートの前記透明電極層と電源とを接続するための第2端子部を備え、前記第2端子部は前記第2領域で前記透明電極層に固定され、前記バリア部は、前記第2端子部および当該第2端子部の周囲に露出する前記透明電極層を覆う部分を有してもよい。
【0013】
上記構成によれば、第2端子部の付近がバリア部によって衝撃等から保護される。また、第2端子部の付近から水分等が調光シートの内部に入り込むことも抑えられる。
上記構成において、前記一対の電極シートである第1電極シートおよび第2電極シートのうち、前記調光層に対して前記支持基材と反対側に位置する電極シートが第1電極シートであり、前記調光シートは、前記第1電極シートの有する透明電極層が前記調光層および前記第2電極シートから露出している第1領域を有し、前記調光装置は、前記第1電極シートの前記透明電極層と電源とを接続するための第1端子部を備え、前記第1端子部は前記第1領域で前記透明電極層に固定され、前記バリア部は、前記第1領域および前記第1端子部と前記支持基材との間を埋める部分である埋入部を有してもよい。
【0014】
上記構成によれば、第1端子部の付近がバリア部によって衝撃等から保護される。また、第1端子部の付近から水分等が調光シートの内部に入り込むことも抑えられる。
上記構成において、前記バリア部は、前記調光シートの上面と対向する位置から見て、前記支持基材上において前記調光シートの外側に位置する部分を有し、前記埋入部と前記外側に位置する部分とが界面を有して接してもよい。
【0015】
上記構成によれば、埋入部と上記側面を覆う部分とが別々に形成されるため、調光シートを支持基材に貼り付ける前に埋入部を形成し、調光シートを支持基材に貼り付けた後に、上記側面を覆う部分を形成することができる。したがって、調光シートを支持基材に貼り付けた後に調光シートと支持基材との隙間を埋めて埋入部を形成する場合と比較して、埋入部の製造が容易である。
【0016】
上記構成において、前記一対の電極シートである第1電極シートおよび第2電極シートのうち、前記調光層に対して前記支持基材と反対側に位置する電極シートが第1電極シートであり、前記調光シートは、前記第1電極シートの有する透明電極層が前記調光層および前記第2電極シートから露出している第1領域を有し、前記調光装置は、前記第1電極シートの前記透明電極層と電源とを接続するための第1端子部であって、前記第1領域で前記透明電極層に固定される前記第1端子部と、前記第1領域および前記第1端子部と前記支持基材との間に位置する接着部と、をさらに備えてもよい。
【0017】
上記構成によれば、第1領域および第1端子部が接着部を介して支持基材に貼り付けられる。したがって、調光シートが支持基材により強固に固定される。
上記構成において、前記調光シートの上面は、曲面、または、凹凸を有する面であってもよい。
【0018】
上記構成によれば、調光シートの上面が平面ではない場合にも、バリア部がガラス塗料の硬化によって形成されることから、調光シートの形状に沿った形状を有するバリア部を容易に形成できる。
【0019】
上記課題を解決する調光窓は、上記調光装置を備える。
上記構成によれば、容易に形成可能な調光シートの保護構造を有する調光装置を用いた調光窓が実現される。特に、大型の調光装置が用いられる調光窓においては、調光装置の製造に要する負担が大きく軽減される。
【0020】
上記課題を解決する調光装置の製造方法は、調光層および前記調光層を挟む一対の電極シートを備える前記調光シートに向けてガラス塗料を供給し、当該ガラス塗料を硬化させることを含む。
【0021】
上記製法によれば、ガラス塗料の供給および硬化によって、調光シートの表面を保護するバリア部が形成される。したがって、合わせガラスのように、板状に成形されている部材の間に調光シートを挟んで固定する製法と比較して、調光シートが保護された調光装置を容易に製造することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、簡易に製造可能な構造によって調光シートを保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】第1実施形態の調光装置の断面構造を示す図。
【
図2】第2実施形態の調光装置の断面構造を示す図。
【
図3】第3実施形態の調光装置の断面構造を示す図。
【
図4】第4実施形態の調光装置における第2端子部付近の断面構造を示す図。
【
図5】第4実施形態の調光装置における第1端子部付近の断面構造の第1形態を示す図。
【
図6】第4実施形態の調光装置における第1端子部付近の断面構造の第2形態を示す図。
【
図7】第4実施形態の調光装置における第1端子部付近の断面構造の第2形態の製造工程を示す図。
【
図8】第4実施形態の調光装置における第1端子部付近の断面構造の第2形態の製造工程を示す図。
【
図9】第4実施形態の調光装置における第1端子部付近の断面構造の第3形態を示す図。
【
図10】第4実施形態の調光装置における第1端子部付近の断面構造の第3形態の製造工程を示す図。
【
図11】第4実施形態の調光装置における第1端子部付近の断面構造の第3形態の製造工程を示す図。
【
図12】第1変形例の調光装置の断面構造を示す図。
【
図13】第2変形例の調光装置の断面構造を示す図。
【
図14】第3変形例の調光装置の断面構造を示す図。
【
図15】第4変形例の調光装置の断面構造を示す図。
【
図16】第5変形例の調光装置の断面構造を示す図。
【
図17】第6変形例の調光装置の断面構造を示す図。
【
図18】第7変形例の調光装置の断面構造を示す図。
【
図19】第8変形例の調光装置の断面構造を示す図。
【
図20】第9変形例の調光装置の断面構造を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第1実施形態)
図1を参照して、調光装置、調光窓、および、調光装置の製造方法の第1実施形態を説明する。
【0025】
図1が示すように、第1実施形態の調光装置10は、支持基材6に接着層5を介して調光シート7を貼り合せた構造を有する。調光シート7は、片面に透明電極層3A,3Bが形成された2枚の透明樹脂層2A,2Bを、透明電極層3A,3B同士が向い合わせになるように配置して、その間に調光層4を挟み込んだ積層体である。
【0026】
詳細には、調光シート7は、調光層4と、一対の透明電極層である第1透明電極層3Aおよび第2透明電極層3Bと、一対の透明樹脂層である第1透明樹脂層2Aおよび第2透明樹脂層2Bとを備えている。第1透明電極層3Aと第2透明電極層3Bとは、調光層4を挟み、第1透明樹脂層2Aと第2透明樹脂層2Bとは、調光層4および透明電極層3A,3Bを挟んでいる。第1透明樹脂層2Aは、第1透明電極層3Aを支持し、第1透明樹脂層2Aと第1透明電極層3Aとから第1電極シートが構成される。第2透明樹脂層2Bは、第2透明電極層3Bを支持し、第2透明樹脂層2Bと第2透明電極層3Bとから第2電極シートが構成される。
【0027】
そして、第2透明樹脂層2Bにおける第2透明電極層3Bに接する面とは反対側の面が、接着層5を介して、支持基材6に貼り付けられている。すなわち、第2電極シートは、調光層4に対して支持基材6と同一の側に位置して支持基材6に貼り付けられており、第1電極シートは、調光層4に対して支持基材6と反対側に位置する。調光シート7が有する面のうち、支持基材6に貼り付けられている面が調光シート7の下面であり、当該下面と反対側の面が調光シート7の上面である。上記下面は、第2透明樹脂層2Bが構成する面であり、上記上面は、第1透明樹脂層2Aが構成する面である。調光シート7の上面と対向する位置から見て、支持基材6は、調光シート7と同一の形状を有していてもよいし、調光シート7よりも大きくてもよい。
【0028】
調光シート7の上面は、ガラス塗料の硬化物であるバリア部1で覆われている。バリア部1は、調光シート7上に広がる平板状を有して調光シート7の上面に接し、調光シート7の側面は、バリア部1から露出している。
【0029】
以上のように、調光装置10は、支持基材6、接着層5、調光シート7、および、バリア部1を備えている。
[透明樹脂層]
透明樹脂層2A,2Bの材料は特に限定されない。透明樹脂層2A,2Bとしては、可視光線の領域で透明な樹脂基材を好適に使用することができる。透明樹脂層2A,2Bを構成する樹脂材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、アクリル系樹脂、ポリプロピレン等が挙げられるが、樹脂材料はこれらに限定されない。
【0030】
[透明電極層]
透明電極層3A,3Bとしては、ITO(Indium Tin Oxide)、酸化亜鉛、酸化スズ等の薄膜を好適に使用できる。これらの薄膜の形成には、透明樹脂層2A,2Bへの密着力が高く得られる点から各種のスパッタリング方式の成膜装置を使用した方法が多用されているが、各種の真空蒸着法やイオンプレーティング法も使用することができる。また、透明電極層3A,3Bは、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)を含むポリマーや、Ag合金薄膜を含む多層膜から構成されてもよい。
【0031】
[調光層]
調光層4は、液晶組成物を含む。調光層4は、例えば、高分子ネットワーク型液晶(PNLC:Polymer Network Liquid Crystal)、高分子分散型液晶(PDLC:Polymer Dispersed Liquid Crystal)、カプセル型ネマティック液晶(NCAP:Nematic Curvilinear Aligned Phase)等から構成される。なお、調光層4は、所定の色を有する色素であって、液晶分子の運動を妨げない色素を含んでもよい。こうした構成によれば、所定の色を有する調光シート7が実現される。
【0032】
透明電極層3A,3Bに駆動電圧が印加されていないとき、調光層4が含む液晶分子の長軸方向の向きは不規則になる。そのため、調光層4に入射した光は散乱し、調光層4は不透明になる。一方、透明電極層3A,3Bに駆動電圧が印加されると、透明電極層3A,3B間の電位差に応じて液晶分子が配向され、長軸方向が透明電極層3A,3B間の電界方向に沿った向きとなる。その結果、調光層4を光が透過しやすくなり、調光層4は透明になる。
【0033】
[支持基材]
支持基材6としては、板ガラスが好適に用いられる。板ガラスの種類は、透明なガラス板であれば特に限定されず、ソーダライムガラス等の各種のガラスを使用した板ガラスを好適に使用できる。また、板ガラスに限らず、支持基材6としては、板ガラスと樹脂基材との積層体や、単独の樹脂基材が用いられてもよい。
【0034】
[バリア部]
バリア部1は、調光シート7に対するガラス塗料の供給および硬化によって形成される。ガラス塗料は、液状のガラスであって、常温ガラスあるいは液体ガラスとも称される。
【0035】
ガラス塗料は1液もしくは2液タイプのシリカ溶液であり、各種基材に対して、常温での塗布により、硬質で密着性に優れた非晶質のセラミックス膜を形成することができる。ガラス塗料は、成分として、液状で無溶剤のオルガノポリシロキサン、官能性側鎖アルコキシシラン、イオン化された金属化合物(有機あるいは無機)、触媒、バインダ樹脂を含む。
【0036】
一般的に、固体状のガラスが溶融法によって製造されることに対し、液状のガラス塗料は、ゾル-ゲル法によって製造される。ガラス塗料の硬化物は、非晶質であり、方向による特性の差異が小さい。したがって、ガラス塗料の硬化物は、特定の方向にのみ割れやすいということがないため、仮に、バリア部1に強い衝撃が加えられたとしても、特定の方向に沿って広範囲に広がるように亀裂が生じることが抑えられる。
【0037】
[調光装置の製造方法]
調光装置10の製造方法を説明する。まず、調光シート7が作製される。調光シート7は、第1透明樹脂層2Aの一方の面に第1透明電極層3Aを形成するとともに、第2透明樹脂層2Bの一方の面に第2透明電極層3Bを形成した後、これらを第1透明電極層3Aと第2透明電極層3Bとを向かい合わせて配置し、その間に調光層4を形成して挟み込むことによって形成される。
【0038】
次に、作製した調光シート7の第1透明樹脂層2A上に、ガラス塗料を塗布により供給し、ガラス塗料を空気中の水分による加水分解および脱水縮合反応によって硬化させることによって、バリア部1が形成される。
【0039】
次に、調光シート7における第2透明樹脂層2Bに対して接着層5を塗布により形成し、接着層5を介して調光シート7を支持基材6に貼り付けることによって、調光装置10が形成される。
【0040】
なお、第1透明樹脂層2Aに対するガラス塗料の塗布および硬化によってバリア部1を形成すること以外は、調光装置10の製造方法は上述の製造方法に限定されない。
[調光窓]
調光窓は、調光装置10を窓枠内に備える。調光窓の製造は、まず調光装置10を作製し、その調光装置10を窓枠にはめ込むことにより行われる。あるいは、既存の窓の窓ガラスを支持基材6として用い、接着層5を介して支持基材6に調光シート7を貼り付けた後、ガラス塗料を塗布してバリア部1を形成することにより調光窓を形成してもよい。あるいは、支持基材6が樹脂基材の場合には、既存の窓の窓ガラスに、支持基材6が貼り付けられることによって調光装置10が貼り付けられ、これにより調光窓が形成されてもよい。
【0041】
なお、調光装置10は、窓に限らず、パーテーションやガラス壁に用いられてもよい。
[作用効果]
第1実施形態の調光装置10では、調光シート7が支持基材6とバリア部1とに挟まれているため、調光シート7の下面は支持基材6によって保護され、調光シート7の上面はバリア部1によって保護される。また、バリア部1が調光シート7の上面を覆うことで、当該上面から調光シート7の内部へ水分やアルコール等の化学物質が浸入することも抑えられる。これにより、調光シート7の表面が物理的あるいは化学的な刺激による影響を受けやすいといった不具合を効果的に抑えることができる。そして、支持基材6は接着層5によって調光シート7と貼り合わせられ、バリア部1はガラス塗料の塗布および硬化によって形成される。したがって、合わせガラスのように、板状に成形されている部材の間に調光シート7を挟んで固定する製法と比較して、調光シート7が2つの部材に挟まれて保護される調光装置10を容易に製造することができる。特に、窓に用いられる場合のように、調光装置10が大型である場合には、調光装置10の製造に要する負荷が大きく軽減される。
【0042】
なお、上述の物理的刺激による影響とは、例えば、調光シート7の表面が薄い透明樹脂層2A,2Bから構成される場合等に、調光シート7の表面に傷がつくことをいう。また、化学的刺激による影響とは、例えば、ITOからなる透明電極層3A,3Bを用いる場合に、水分等の浸入によって透明電極層3A,3Bが劣化すること、より具体的には加水分解や黒色化によって導電性が失われる現象をいう。
【0043】
支持基材6が板ガラスであれば、支持基材6樹脂基材である場合と比較して、調光シート7の保護効果が高められ、水分等の浸入もより抑えられる。一方、支持基材6が樹脂基材であれば、支持基材6が板ガラスである場合と比較して、調光装置10の重量を軽くできる。
【0044】
従来のように、2つの板状部材の間に調光シート7を挟んで圧着する場合、調光シート7内に局所的な応力が発生するため、調光シート7に調光層4の潰れ等の歪みが生じる結果、透明電極層3A,3Bの短絡や調光シート7の光学特性の変化が起きやすい。これに対し、第1実施形態の調光装置10では、調光シート7に圧力をかけずとも調光装置10の形成が可能であるため、透明電極層3A,3Bの短絡や調光シート7の光学特性の変化が生じることが抑えられる。
【0045】
また、一般に合わせガラスの内側に配置されて接着層として機能する中間膜は、調光層が含む液晶組成物の劣化の原因となる。そのため、合わせガラスで調光シート7を挟む場合には、中間膜の成分に対するバリア機能を有する層を調光シート7上に設ける必要がある。しかし、こうしたバリア層を設けることは、製造コストの増大に繋がるだけでなく、バリア層と板ガラスとの屈折率の違いから調光装置の見栄えを低下させ、意匠性の低下を招く要因となっていた。これに対し、第1実施形態の調光装置10では、中間膜およびそのバリア層が不要であるため、製造コストの増大および意匠性の低下を抑えることができる。
【0046】
(第2実施形態)
図2を参照して、調光装置、調光窓、および、調光装置の製造方法の第2実施形態を説明する。以下では、第2実施形態と第1実施形態との相違点を中心に説明し、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
【0047】
図2が示すように、第2実施形態の調光装置20は、プライマー層8を備えている点が、第1実施形態と異なる。プライマー層8は、第1透明樹脂層2Aとバリア部1とに挟まれている。言い換えれば、調光シート7の上面の上に、プライマー層8とバリア部1とがこの順に位置しており、バリア部1は、プライマー層8越しに調光シート7の上面を覆っている。
【0048】
[プライマー層]
プライマー層8は、バリア部1と第1透明樹脂層2Aとの密着性を高める機能を有する。市販されているガラス塗料をバリア部1の形成に用いる場合、ガラス塗料と樹脂基材との密着性が十分に高いとは限らない。樹脂基材との密着性が低いガラス塗料からバリア部1を形成する場合には、プライマー層8を設けることが好ましい。
【0049】
プライマー層8の材料は、ガラスや樹脂との密着性が高い材料であれば、特に限定されない。例えば、主剤としてウレタン系樹脂を用い、シランカップリング剤を混合したプライマーから、プライマー層8が構成される。プライマー層8の形成工程での調光シート7に対する影響を抑える観点では、常温常湿環境下で乾燥させることにより硬化が可能なプライマーからプライマー層8が形成されることが好ましい。
【0050】
[調光装置の製造方法]
第2実施形態の調光装置20の製造方法は、第1実施形態の調光装置10の製造方法に対して、バリア部1の形成前に、第1透明樹脂層2A上にプライマー層8を形成する点が異なる。
【0051】
プライマー層8となる塗布膜の形成方法としては、例えば、スプレー、バーコーター、スピンコーター、ディッピング、スクリーン印刷等の塗布方法を使用することができる。塗布膜の硬化には、紫外線の照射や熱処理等が利用されればよい。
【0052】
プライマー層8の形成後に、調光シート7に向けて、プライマー層8上に塗布によりガラス塗料を供給して硬化させる。これにより、バリア部1が形成される。
なお、第2実施形態の調光装置20は、第1実施形態の調光装置10と同様に調光窓に適用できる。
【0053】
[作用効果]
第2実施形態の調光装置20によれば、第1実施形態の調光装置10の効果に加えて、以下の効果が得られる。すなわち、第1透明樹脂層2Aとバリア部1との間にプライマー層8が設けられているため、調光シート7とバリア部1との密着性が高められる。
【0054】
(第3実施形態)
図3を参照して、調光装置、調光窓、および、調光装置の製造方法の第3実施形態を説明する。以下では、第3実施形態と第1実施形態との相違点を中心に説明し、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
【0055】
図3が示すように、第3実施形態の調光装置30は、調光シート7の上面に加えて側面も、ガラス塗料の硬化物であるバリア部31に覆われている点が、第1実施形態と異なる。詳細には、調光シート7の上面と対向する位置から見て、支持基材6は、調光シート7よりも大きく、支持基材6の内側に調光シート7が位置する。バリア部31は、調光シート7の上面と、調光シート7の側面と、接着層5の側面と、支持基材6の上面の一部とに接し、これらを被覆している。すなわち、バリア部31は、調光シート7の上面を覆うとともに、当該上面と対向する位置から見て、支持基材6上において調光シート7の外側を囲んでいる。
【0056】
[調光装置の製造方法]
第3実施形態の調光装置30の製造方法は、第1実施形態の調光装置10の製造方法に対して、調光シート7よりも大きい支持基材6に接着層5を介して調光シート7を貼り付けた後に、バリア部31を調光シート7および接着層5の側面を被覆する位置まで形成する点が異なる。
【0057】
まず、第1実施形態と同様に調光シート7を形成する。次に、調光シート7の下面に対して接着層5を塗布により形成し、接着層5を介して調光シート7を支持基材6に貼り付ける。
【0058】
次に、支持基材6に貼り付けた調光シート7の上面と、調光シート7および接着層5の側面とに、ガラス塗料を塗布して硬化させることによって、バリア部31が形成される。例えば、調光シート7の上面には、スクリーン印刷法等によってガラス塗料を塗布し、側面には、ディスペンサーを用いてガラス塗料を塗布すればよい。
【0059】
なお、第3実施形態の調光装置30は、第1実施形態の調光装置10と同様に調光窓に適用できる。また、第3実施形態の調光装置30は、第2実施形態と同様に、調光シート7の上面とバリア部31との間にプライマー層8を備えていてもよい。
【0060】
[作用効果]
第3実施形態の調光装置30によれば、第1実施形態の調光装置10の効果に加えて、以下の効果が得られる。すなわち、調光シート7の側面がバリア部31で覆われているため、調光シート7の側面から内部に水分等が浸入することが抑えられる。したがって、調光装置30における水分等の遮蔽性がより高められる。
【0061】
また、支持基材6が板ガラスである場合には、支持基材6とバリア部31との屈折率の差が小さいため、バリア部31のなかで支持基材6に接する部分と支持基材6との界面での反射が抑えられる。したがって、調光装置30の端部における意匠性の低下が抑えられる。
【0062】
(第4実施形態)
図4~
図11を参照して、調光装置、調光窓、および、調光装置の製造方法の第4実施形態を説明する。以下では、第4実施形態と第1実施形態との相違点を中心に説明し、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
【0063】
第4実施形態の調光装置40においては、端子部9A,9B付近の構造が、第1実施形態と異なる。端子部9A,9Bは、透明電極層3A,3Bと調光シート7を駆動するための電源とを電気的に接続するための部分であって、調光シート7の端部に配置される。
【0064】
まず、第2透明電極層3Bに接続される第2端子部9B付近の構造を説明する。
図4が示すように、調光シート7は、その端部に、第2透明電極層3Bの表面が、調光層4、および、第1透明電極層3Aと第1透明樹脂層2Aとからなる第1電極シートから露出した領域を有している。そして、この領域にて、第2端子部9Bが第2透明電極層3Bの表面に固定されている。言い換えれば、第2端子部9Bが接続される領域では、第2透明樹脂層2Bと第2透明電極層3Bとからなる第2電極シートが、他の部分から延びて、支持基材6に貼り付けられている。
【0065】
第2端子部9Bには、駆動電圧を生成する回路を通じて電源と電気的に接続された配線11Bが接続される。第2端子部9Bは、第2透明電極層3Bと配線11Bとに接続可能な構成を有していればよい。例えば、第2端子部9Bは、導電性接着テープや半田から構成されればよい。
【0066】
調光シート7の上面と対向する位置から見て、支持基材6は、調光シート7よりも大きく、支持基材6の内側に調光シート7が位置する。ガラス塗料の硬化物であるバリア部41は、調光シート7の上面と、調光シート7および接着層5の側面と、第2端子部9Bおよびその周囲で調光層4から露出している第2透明電極層3Bの表面と、支持基材6の上面の一部とを被覆している。
【0067】
次に、第1透明電極層3Aに接続される第1端子部9A付近の構造として、3つの形態を説明する。
図5が示すように、調光シート7は、その端部に、第1透明電極層3Aの表面が、調光層4、および、第2透明電極層3Bと第2透明樹脂層2Bとからなる第2電極シートから露出している領域を有している。そして、この領域にて、第1透明電極層3Aの表面に第1端子部9Aが固定されている。言い換えれば、第1端子部9Aが接続される領域では、第1透明樹脂層2Aと第1透明電極層3Aとからなる第1電極シートが、他の部分から延びて、支持基材6と対向している。
【0068】
第1端子部9Aには、駆動電圧を生成する回路を通じて電源と電気的に接続された配線11Aが接続される。第1端子部9Aは、第2端子部9Bと同様の材料から構成される。なお、調光シート7のなかで、第1端子部9Aが接続される領域と第2端子部9Bが接続される領域との配置は、電源との位置関係等に応じて、適宜設定されればよい。
【0069】
第1端子部9A付近の構造の第1形態では、上記第2端子部9B付近から連続して延びるバリア部41が、被覆部42および埋入部43から構成される。埋入部43は、第1端子部9Aおよびその周囲で調光層4から露出している第1透明電極層3Aの表面と、支持基材6との間を埋めている。被覆部42は、調光シート7の上面と、調光シート7および接着層5の側面とを覆うとともに、支持基材6上で第1端子部9Aおよび埋入部43の外側にも延びている。言い換えれば、バリア部41は、調光シート7の上面を覆うとともに、当該上面と対向する位置から見て、支持基材6上において調光シート7の外側に位置する。被覆部42と埋入部43とは、互いに連続する一体の構造物である。
【0070】
先の
図4に示した第2端子部9B付近の構造と、
図5に示した第1端子部9A付近の第1形態の構造とを有する調光装置40の製造方法を説明する。
調光シート7における第1端子部9Aが配置される領域は、調光層4、透明電極層3A,3B、および、透明樹脂層2A,2Bの積層体から、調光層4、第2透明電極層3B、および、第2透明樹脂層2Bが除去されることによって形成される。同様に、調光シート7における第2端子部9Bが配置される領域は、上記積層体から、調光層4、第1透明電極層3A、および、第1透明樹脂層2Aが除去されることによって形成される。なお、第1透明樹脂層2Aおよび第1透明電極層3Aからなる第1積層体と、第2透明樹脂層2Bおよび第2透明電極層3Bからなる第2積層体とを、形状が異なるように形成し、第1端子部9Aが配置される領域に第1積層体が延び、第2端子部9Bが配置される領域に第2積層体が延びるように、これらの積層体を配置して、その間に調光層4を形成してもよい。
【0071】
調光シート7を作製した後、調光シート7における第2透明樹脂層2Bに対して接着層5を塗布により形成し、接着層5を介して調光シート7を支持基材6に貼り付ける。そして、調光シート7に端子部9A,9Bを配置し、端子部9A,9Bに配線11A,11Bを接続する。配線11A,11Bの接続方法は特に限定されない。
【0072】
例えば、端子部9A,9Bが半田を含む場合、半田付けによって端子部9A,9Bに配線11A,11Bを接続することができる。半田付けは超音波半田付けであってもよい。また、端子部9A,9Bが導電性接着テープを含む場合、配線11A,11Bの端部にも導電性接着テープを強固に固定し、端子部9A,9Bの導電性接着テープと、配線11A,11Bに固定された導電性接着テープとを接着させることによって、端子部9A,9Bに配線11A,11Bを接続することができる。
【0073】
次に、調光シート7にガラス塗料を塗布する。このとき、調光シート7の上面、第2端子部9Bおよびその周囲に露出している第2透明電極層3Bの表面、および、調光シート7と接着層5との側面にガラス塗料を塗布する。さらに、第1端子部9Aおよびその周囲に露出している第1透明電極層3Aの表面と、支持基材6との間にも、ガラス塗料を充填する。すなわち、バリア部41が配置される予定の部分に一括してガラス塗料を供給して硬化させることにより、バリア部41が形成される。
【0074】
図6が示すように、第1端子部9A付近の構造の第2形態では、被覆部42と埋入部43とが別体となっている点が、第1形態と異なる。埋入部43は、被覆部42のなかで支持基材6に沿って埋入部43の外側に位置する部分と接し、埋入部43と被覆部42との界面が存在する。
【0075】
第1端子部9A付近の第2形態の構造を製造する際には、
図7が示すように、調光シート7を支持基材6に貼り付ける前に、接着層5を形成するとともに、埋入部43を形成する。埋入部43は、第1端子部9Aおよびその周囲に露出している第1透明電極層3Aの表面にガラス塗料を塗布して硬化させることにより形成される。その後、
図8が示すように、調光シート7が接着層5を介して支持基材6に貼り付けられる。埋入部43は、調光シート7とともに支持基材6上に配置されるが、支持基材6に固定されてはいない。
【0076】
次に、調光シート7の上面、調光シート7および接着層5の側面、第2端子部9Bおよびその周囲に加え、埋入部43の外側にもガラス塗料を塗布し、硬化させる。これにより、被覆部42が形成される。
【0077】
図9が示すように、第1端子部9A付近の構造の第3形態では、第1端子部9Aおよびその周囲で調光層4から露出している第1透明電極層3Aの表面と、支持基材6との間が接着部44で埋められている。接着部44は、例えば、アクリル系樹脂等の粘着剤から構成される。
【0078】
バリア部41は、埋入部43を有さず、調光シート7の上面と、調光シート7および接着層5の側面とを覆うとともに、支持基材6上で第1端子部9Aおよび接着部44の外側に延びている。接着部44は、バリア部41のなかで支持基材6に沿って接着部44の外側に位置する部分と接している。
【0079】
第1端子部9A付近の構造の第3形態を製造する際には、
図10が示すように、調光シート7を支持基材6に貼り付ける前に、接着層5を形成するとともに、接着部44を形成する。接着部44は、第1端子部9Aおよびその周囲に露出している第1透明電極層3Aの表面に粘着剤を塗布することによって形成される。なお、接着層5と接着部44とは一括して形成されてもよく、この場合、接着層5と接着部44とは互いに連続する一体の構造物となる。
【0080】
その後、
図11が示すように、調光シート7が接着層5および接着部44を介して支持基材6に貼り付けられる。接着部44は、支持基材6に接着している。次に、調光シート7の上面、調光シート7および接着層5の側面、第2端子部9Bおよびその周囲に加え、接着部44の外側にもガラス塗料を塗布し、硬化させる。これにより、バリア部41が形成される。
【0081】
なお、第4実施形態の調光装置40は、第1実施形態の調光装置10と同様に調光窓に適用できる。また、第4実施形態の調光装置40は、第2実施形態と同様に、調光シート7の上面とバリア部41との間にプライマー層8を備えていてもよい。
【0082】
[作用効果]
第4実施形態の調光装置40によれば、第1実施形態の調光装置10の効果に加えて、以下の効果が得られる。まず、第2端子部9Bとその周囲がバリア部41によって覆われているため、第2端子部9Bの付近を保護することができる。さらに、第2端子部9Bの付近から調光シート7の内部に水分等が浸入することも抑えられる。
【0083】
また、第1端子部9A付近の構造について、第1端子部9Aとその周囲がバリア部41、もしくは、バリア部41と接着部44によって覆われているため、第1端子部9Aの付近を保護することができる。さらに、第1端子部9Aの付近から調光シート7の内部に水分等が浸入することも抑えられる。
【0084】
そして、第1形態では、バリア部41のなかで、被覆部42と埋入部43とが一体に形成されている。すなわち、これらの部分は1つの工程でまとめて形成される。したがって、調光装置40の製造工程の工程数の増大を抑えることができる。
【0085】
また、第2形態では、被覆部42と埋入部43との界面が存在し、すなわち、これらが別々に形成される。具体的には、調光シート7を支持基材6に貼り付ける前に埋入部43を形成し、調光シート7を支持基材6に貼り付けた後に、被覆部42を形成することができる。したがって、調光シート7を支持基材6に貼り付けた後に調光シート7と支持基材6との隙間を埋めて埋入部43を形成する場合と比較して、埋入部43の製造が容易である。
【0086】
また、第3形態では、第1端子部9Aおよびその周囲と支持基材6との間に接着部44が位置する。こうした構成によれば、第1端子部9Aおよびその周囲が接着部44を介して支持基材6に貼り付けられるため、調光シート7が支持基材6に強固に固定される。
【0087】
[変形例]
上記各実施形態では、平板状の支持基材6における平坦な面に調光シート7が貼り付けられており、調光シート7の上面が平面である形態を例示したが、調光シート7の上面は、曲面や凹凸を有する面であってもよい。すなわち、調光シート7は、平面とは異なる面に貼り付けられていてもよい。
【0088】
従来のように、合わせガラスに調光シート7を挟む場合に、曲面や凹凸を有する面に沿った形状に調光装置を形成しようとすると、曲率の差等に起因した一方の板ガラスと他方の板ガラスとの寸法差の設計や、板ガラスの精密な成形に要する負荷が大きい。さらに、複雑な形状の板ガラスで調光シート7を挟んで圧力をかけると、局所的な応力がより強くかつ複雑に発生するため、透明電極層3A,3Bの短絡がより発生しやすくなる。したがって、平板状とは異なる形状に調光装置を形成することは困難であり、調光装置の意匠性の向上には限界があった。
【0089】
これに対し、上記各実施形態のように、調光シート7を支持基材6に貼り付けて、ガラス塗料の硬化によってバリア部を形成することにより製造される調光装置であれば、製造可能な調光装置の形状についての自由度が高い。したがって、意匠性の高い調光装置の製造も可能である。具体的には、調光シート7は柔軟性を有するため、支持基材6の曲面や凹凸を有する面に沿わせて調光シート7を貼り付けることは容易である。そして、バリア部は液状のガラス塗料の供給および硬化によって形成されるため、調光シート7の上面に沿ったバリア部を容易に形成することができる。また、調光シート7と支持基材6との貼り合わせやバリア部の形成工程において加熱を要しないため、各部材の熱による収縮が生じず、こうした収縮に起因した各部材の剥がれや位置のずれも避けられる。
【0090】
以下、
図12~
図20を参照して、平面以外の上面を有する調光シートを備えた調光装置として、第1変形例~第9変形例の9つの形態を説明する。各変形例の支持基材の材料は特に限定されず、上記各実施例の支持基材6と同様、ガラス製であってもよいし、樹脂製であってもよい。また、各変形例の調光シートは、上記各実施例の調光シート7と同様の層構成を有する。
【0091】
なお、理解を容易にするために、
図12~
図20では、接着層の図示を割愛し、調光シートを1つの層として図示している。また、
図12~
図20では、各変形例を、第1実施形態において調光シートの上面を平面以外の面とした形態として示しているが、第2実施形態、第3実施形態、および、第4実施形態の各実施形態にも、各変形例の構成は適用可能である。
【0092】
図12が示す第1変形例では、支持基材6aにおける調光シート7aが貼り付けられている面である貼付面6Saが、調光シート7aに対して凸となる曲面である。すなわち、貼付面6Saは、調光シート7aに向けて突き出るように曲がっている。貼付面6Saは、可展面であってもよいし、三次元曲面であってもよい。調光シート7aは、貼付面6Saに沿った形状を有し、調光シート7aの上面は、貼付面6Saに追従した曲面である。バリア部1aは、調光シート7aの上面に沿った、厚さが略均一の板状の形状を有する。
【0093】
図13が示す第2変形例では、上記支持基材6aおよび調光シート7aを覆うバリア部1bが、板状とは異なる形状を有し、その厚みは一定ではない。
図13が示す例では、バリア部1bにおける調光シート7aに接する面は、調光シート7aの上面に沿った曲面であり、バリア部1bにおける調光シート7aと反対側の面および側面は平面である。バリア部1bは、全体として直方体の一部が窪んだ形状を有し、この窪みに支持基材6aおよび調光シート7aが位置している。
【0094】
図14が示す第3変形例では、支持基材6cにて調光シート7cが貼り付けられている貼付面6Scは、調光シート7aに対して凹となる曲面である。すなわち、貼付面6Scは、調光シート7aとは反対側に向けて突き出るように曲がっている。貼付面6Scは、可展面であってもよいし、三次元曲面であってもよい。調光シート7cは、貼付面6Scに沿った形状を有し、調光シート7cの上面は、貼付面6Scに追従した曲面である。バリア部1cは、調光シート7cの上面に沿った、厚さが略均一の板状の形状を有する。
【0095】
図15が示す第4変形例では、上記支持基材6cおよび調光シート7cを覆うバリア部1dが、板状とは異なる形状を有し、その厚みは一定ではない。
図15が示す例では、バリア部1dにおける調光シート7cに接する面は、調光シート7cの上面に沿った曲面であり、バリア部1dにおける調光シート7cと反対側の面は平面である。バリア部1dは、支持基材6cおよび調光シート7cによって形成されている窪みを埋めている。
【0096】
図16が示す第5変形例では、支持基材6eにて調光シート7eが貼り付けられている貼付面6Seは、凹凸を有する面である。
図16では、断面が二等辺三角形状の複数の凸部から貼付面6Seの凹凸が構成される例を示しているが、凸部の形状および配置は特に限定されない。例えば、貼付面6Seは、フレネルレンズの表面のような凹凸を有していてもよい。また、貼付面6Seの凹凸は、複数の凹部から構成されていてもよいし、凸部と凹部の混合から形成されていてもよい。
【0097】
調光シート7eは、貼付面6Seに沿った形状を有し、調光シート7eの上面は、貼付面6Seに追従した凹凸を有する面である。バリア部1eにおける調光シート7eに接する面は、調光シート7aの上面に沿った凹凸を有する。バリア部1eは、調光シート7eの上面の凹凸を埋めている。なお、バリア部1eは、調光シート7cの上面に沿った、厚さが略均一の板状の形状を有していてもよい。
【0098】
図17が示す第6変形例では、支持基材6fが筒形状を有し、その内側面である貼付面6Sfに調光シート7fが貼り付けられている。
図17では、円筒形状の支持基材6fを例示している。調光シート7fは、貼付面6Sfに沿った筒形状を有し、調光シート7fの上面は、貼付面6Sfに追従した筒形状を有する。バリア部1fは、支持基材6fの内側で、調光シート7fの上面を覆っており、厚さが略均一の板状の筒形状を有している。
【0099】
図18が示す第7変形例では、上記支持基材6fの内側で調光シート7fの上面を覆うバリア部1gが、調光シート7fの内側の空間を埋めている。
図18に示す例では、バリア部1gは、調光シート7fの内側を埋める円柱形状を有する。
【0100】
図19が示す第8変形例では、支持基材6hが筒形状を有し、その外側面である貼付面6Shに調光シート7hが貼り付けられている。
図19では、円筒形状の支持基材6hを例示している。調光シート7hは、貼付面6Shに沿った筒形状を有し、調光シート7hの上面は、貼付面6Shに追従した筒形状を有する。バリア部1hは、支持基材6hの外側で、調光シート7hの上面を覆っており、厚さが略均一の板状の筒形状を有している。
【0101】
図20が示す第9変形例では、上記支持基材6hの外側で調光シート7hの上面を覆うバリア部1iは、板状とは異なる形状を有し、その厚みは一定ではない。
図18が示す例では、バリア部1iは、調光シート7hを囲む筒形状を有しており、その内側面は調光シート7hの上面に沿った筒形状を有し、その外側面は平面から構成される四角筒形状を有する。
【0102】
上記各変形例において、厚さが略一定である板状のバリア部を形成する場合には、各種の塗布方法によって、調光シートに向けてガラス塗料が供給されればよい。調光シートの上面が筒状である場合等には、例えば、調光シートを回転させつつガラス塗料を供給することで、ガラス塗料を均一に塗布することができる。また、筒形状の調光シートの外側面にガラス塗料を塗布する場合には、グラビア印刷法のように、ディッピングとドクターによる削ぎ落しによって、バリア部の膜厚を制御することもできる。
【0103】
また、厚さが一定ではないバリア部を形成する場合には、各種の塗布方法や充填方法の利用や、バリア部の外形に応じた型を調光シートの上面と対向する位置に配置して型と上面との間にガラス塗料を充填すること等によって、バリア部を形成することができる。例えば、第7変形例のように、筒形状の調光シート7fの内側を埋めるバリア部1gは、支持基材6fおよび調光シート7fの筒端の下端を塞ぎ、上端から調光シート7fの内側へガラス塗料を流し込むことで形成可能である。また、第9変形例のように、筒形状の調光シート7hの外側に位置するバリア部1iは、形成対象のバリア部1iの外形に応じた形状の内部空間を有する枠状の型を、支持基材6hおよび調光シート7hの外側に配置し、型と調光シート7hとの間にガラス塗料を流し込むことで形成可能である。
【0104】
なお、上記各変形例として例示した形状に限らず、調光シートの上面の形状や、バリア部における調光シートに接する面以外の面の形状は、任意に設計されればよい。要は、調光シートの上面に向けてガラス塗料を供給することにより、ガラス塗料の硬化物であるバリア部を形成する方法によって、調光装置が製造されればよい。
【0105】
[その他の変形例]
・調光シートは、調光層4と透明電極層3A,3Bとの間で調光層4を挟む一対の配向層を備えていてもよい。配向層は、例えば、垂直配向膜であり、駆動電圧が印加されていないときに、液晶分子を、その長軸方向を配向層の法線方向に沿わせるように配向する。一方、配向層は、駆動電圧の大きさに応じて、液晶分子の長軸方向を上記法線方向以外の方向に変える。配向層を構成する材料としては、例えば、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリシロキサン、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリメチルメタクリレート等のポリアクリレートが挙げられる。配向層を形成するための配向処理は、例えば、ラビング処理、偏光照射処理、微細加工処理である。
【0106】
配向層を備える構成では、透明電極層3A,3Bに駆動電圧が印加されていないとき、調光層4が透明となり、透明電極層3A,3Bに駆動電圧が印加されているとき、調光層4が不透明となる。
【0107】
・調光装置は有色であってもよい。例えば、上述のように調光層4に色素を含有させた構成の他、透明樹脂層2A,2Bとしてカラーフィルムを用いる構成、調光シートとバリア部との間にカラーフィルムを挟む構成、接着層5に色素を含有させる構成等によっても、有色の調光装置の実現が可能である。
【0108】
・上記各実施形態および変形例では、調光シートの下面は支持基材に貼り付けられているが、これに代えて、調光シートの下面もガラス塗料の硬化物に覆われていてもよい。こうした形態は、ガラス塗料が調光シートの上面と下面との各々に向けて供給されることにより形成される。少なくとも調光シートの上面が、ガラス塗料の硬化物であるバリア部に覆われる形態であれば、調光シートの上面の保護が可能であり、2つの板状部材で調光シートを挟んで圧着することを要さずに調光装置の製造が可能である。
【符号の説明】
【0109】
1,1a,1b,1c,1d,1e,1f,1i,31,41…バリア部、2A,2B…透明樹脂層、3A,3B…透明電極層、4…調光層、5…接着層、6,6a,6c,6e,6f,6h…支持基材、7,7a,7c,7e,7f,7h…調光シート、8…プライマー層、9A,9B…端子部、10,20,30,40…調光装置、11A,11B…配線、42…被覆部、43…埋入部、44…接着部。