(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-01
(45)【発行日】2023-11-10
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20231102BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
B41J2/165 209
B41J2/01 201
(21)【出願番号】P 2019155079
(22)【出願日】2019-08-27
【審査請求日】2022-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114971
【氏名又は名称】青木 修
(72)【発明者】
【氏名】結城 明
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-16937(JP,A)
【文献】特開2015-66899(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0056650(US,A1)
【文献】特開2020-116829(JP,A)
【文献】特開2019-142192(JP,A)
【文献】特開2017-189904(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク滴をノズルから吐出して、プリントすべき画像をプリントシート上にプリントするプリントエンジンと、
前記プリントエンジンを制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記プリントエンジンで紙面内予備吐出を実行する場合において、(a)前記紙面内予備吐出を行うノズルを特定し、(b)前記プリントシート内で、特定した前記ノズルによるインク滴の吐出位置候補をランダムに選択し、(c)選択した前記吐出位置候補が後工程用オブジェクトを含むマスク領域内に含まれているか否かを判定し、(d1)選択した前記吐出位置候補が前記マスク領域内に含まれていない場合、選択した前記吐出位置候補を、特定した前記ノズルによるインク滴の吐出位置とし、(d2)選択した前記吐出位置候補が前記マスク領域内に含まれている場合、選択した前記吐出位置候補を、特定した前記ノズルによるインク滴の吐出位置とせずに、特定した前記ノズルによるインク滴の吐出位置を前記マスク領域外に設定
し、
前記制御部は、選択した前記吐出位置候補が前記マスク領域内に含まれている場合、特定した前記ノズルによるインク滴の吐出を、当該プリントシートの後続のプリントシートで行うこと、
を特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記後工程用オブジェクトは、トンボマークまたはカラーパッチであることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
インク滴をノズルから吐出して、プリントすべき画像をプリントシート上にプリントするプリントエンジンと、
前記プリントエンジンを制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記プリントエンジンで紙面内予備吐出を実行する場合において、(a)前記紙面内予備吐出を行うノズルを特定し、(b)前記プリントシート内で、特定した前記ノズルによるインク滴の吐出位置候補をランダムに選択し、(c)選択した前記吐出位置候補が後工程用オブジェクトを含むマスク領域内に含まれているか否かを判定し、(d1)選択した前記吐出位置候補が前記マスク領域内に含まれていない場合、選択した前記吐出位置候補を、特定した前記ノズルによるインク滴の吐出位置とし、(d2)選択した前記吐出位置候補が前記マスク領域内に含まれている場合、選択した前記吐出位置候補を、特定した前記ノズルによるインク滴の吐出位置とせずに、特定した前記ノズルによるインク滴の吐出位置を前記マスク領域外に設定し、
前記制御部は、ユーザーによる設定に従って、所定の3つの制御種別のうちの1つを選択し、選択した前記吐出位置候補が前記マスク領域内に含まれている場合、選択した制御種別に従って、特定した前記ノズルの紙面内予備吐出を行い、
前記3つの制御種別のうちの第1の制御種別は、特定した前記ノズルによるインク滴の吐出タイミングを早めることで、特定した前記ノズルによるインク滴の吐出位置を前記マスク領域外に設定し、
前記3つの制御種別のうちの第2の制御種別は、特定した前記ノズルによるインク滴の吐出タイミングを遅延させることで、特定した前記ノズルによるインク滴の吐出位置を前記マスク領域外に設定し、
前記3つの制御種別のうちの第3の制御種別は、特定した前記ノズルによるインク滴の吐出を、当該プリントシートの後続のプリントシートで行うこと、
を特徴とす
る画像形成装置。
【請求項4】
インク滴をノズルから吐出して、プリントすべき画像をプリントシート上にプリントするプリントエンジンと、
前記プリントエンジンを制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記プリントエンジンで紙面内予備吐出を実行する場合において、(a)前記紙面内予備吐出を行うノズルを特定し、(b)前記プリントシート内で、特定した前記ノズルによるインク滴の吐出位置候補をランダムに選択し、(c)選択した前記吐出位置候補が後工程用オブジェクトを含むマスク領域内に含まれているか否かを判定し、(d1)選択した前記吐出位置候補が前記マスク領域内に含まれていない場合、選択した前記吐出位置候補を、特定した前記ノズルによるインク滴の吐出位置とし、(d2)選択した前記吐出位置候補が前記マスク領域内に含まれている場合、選択した前記吐出位置候補を、特定した前記ノズルによるインク滴の吐出位置とせずに、特定した前記ノズルによるインク滴の吐出位置を前記マスク領域外に設定し、
前記マスク領域は、前記後工程用オブジェクトおよび前記後工程用オブジェクトの外縁に所定幅で設けられたマージンを含み、
前記マージンの幅は、ユーザーにより設定可能とされていること、
を特徴とす
る画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
あるインクジェット方式の画像形成装置は、所定期間インクの吐出されなかったノズルからのインク滴の着滴位置の精度低下、濃度低下などといった不具合を抑制するために、紙面内予備吐出を行っている(例えば特許文献1参照)。紙面内予備吐出では、ユーザーにより指定された画像をプリントする際に、その画像をプリントする紙面内で、予備吐出を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
他方、例えば商業プリントの場合、ユーザー画像以外に、裁断工程における裁断位置を指定するトンボマーク、色再現性の評価のためのカラーパッチなどの後工程用オブジェクトがプリントされることがある。その際、上述のような紙面内予備吐出が行われる場合、インク滴が後工程用オブジェクト上に吐出されると、プリント生成物上の後工程オブジェクトが乱れ、後工程(トンボマークを使用した裁断、カラーパッチを使用した色再現性評価など)の精度が低下することがある。
【0005】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、紙面内予備吐出を行っても、後工程用オブジェクトを使用する後工程の精度低下を抑制する画像形成装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る画像形成装置は、インク滴をノズルから吐出して、プリントすべき画像をプリントシート上にプリントするプリントエンジンと、前記プリントエンジンを制御する制御部とを備える。そして、前記制御部は、前記プリントエンジンで紙面内予備吐出を実行する場合において、(a)前記紙面内予備吐出を行うノズルを特定し、(b)前記プリントシート内で、特定した前記ノズルによるインク滴の吐出位置候補をランダムに選択し、(c)選択した前記吐出位置候補が後工程用オブジェクトを含むマスク領域内に含まれているか否かを判定し、(d1)選択した前記吐出位置候補が前記マスク領域内に含まれていない場合、選択した前記吐出位置候補を、特定した前記ノズルによるインク滴の吐出位置とし、(d2)選択した前記吐出位置候補が前記マスク領域内に含まれている場合、選択した前記吐出位置候補を、特定した前記ノズルによるインク滴の吐出位置とせずに、特定した前記ノズルによるインク滴の吐出位置を前記マスク領域外に設定する。さらに、以下の(A)、(B)および(C)のうちのいずれかの構成を備える。(A)前記制御部は、選択した前記吐出位置候補が前記マスク領域内に含まれている場合、特定した前記ノズルによるインク滴の吐出を、当該プリントシートの後続のプリントシートで行う。(B)前記制御部は、ユーザーによる設定に従って、所定の3つの制御種別のうちの1つを選択し、選択した前記吐出位置候補が前記マスク領域内に含まれている場合、選択した制御種別に従って、特定した前記ノズルの紙面内予備吐出を行い、前記3つの制御種別のうちの第1の制御種別は、特定した前記ノズルによるインク滴の吐出タイミングを早めることで、特定した前記ノズルによるインク滴の吐出位置を前記マスク領域外に設定し、前記3つの制御種別のうちの第2の制御種別は、特定した前記ノズルによるインク滴の吐出タイミングを遅延させることで、特定した前記ノズルによるインク滴の吐出位置を前記マスク領域外に設定し、前記3つの制御種別のうちの第3の制御種別は、特定した前記ノズルによるインク滴の吐出を、当該プリントシートの後続のプリントシートで行う。(C)前記マスク領域は、前記後工程用オブジェクトおよび前記後工程用オブジェクトの外縁に所定幅で設けられたマージンを含み、前記マージンの幅は、ユーザーにより設定可能とされている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、紙面内予備吐出を行っても、後工程用オブジェクトを使用する後工程の精度低下を抑制する画像形成装置が得られる。
【0008】
本発明の上記又は他の目的、特徴および優位性は、添付の図面とともに以下の詳細な説明から更に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置の機械的な内部構成を説明する側面図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置10の電気的な構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、
図1に示す画像形成装置10において使用される後工程用オブジェクトおよびマスク画像の一例について説明する図である。
【
図5】
図5は、
図1に示す画像形成装置10における回避制御の一例を説明する図である。
【
図6】
図6は、
図1に示す画像形成装置10における回避制御の3つの制御種別を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置の機械的な内部構成を説明する側面図である。
図2は、
図1に示す画像形成装置の平面図である。
【0012】
この実施の形態に係る画像形成装置10は、プリンター、コピー機、ファクシミリ機、複合機などといった装置であり、この実施の形態ではラインヘッド型のインクジェット方式のカラープリント機構を備える。
【0013】
図1に示す画像形成装置10は、プリントエンジン10aと、シート搬送部10bとを備える。プリントエンジン10aは、インク滴をノズルから吐出して、プリントすべき画像をプリントシート(プリント用紙など)上に物理的にプリントする。シート搬送部10bは、プリントシートをプリントエンジン10aに搬送する。
【0014】
この実施の形態では、プリントエンジン10aは、シアン、マゼンタ、イエロー、およびブラックという4つのインク色に対応するラインヘッド型のインクジェット記録部1a~1dを備える。
【0015】
図2に示すように、この実施の形態では、各インクジェット記録部1a,1b,1c,1dは、複数(ここでは3個)のヘッド部11を有する。それらのヘッド部11は、主走査方向に沿って配列されており、装置本体に対して着脱可能になっている。なお、各インクジェット記録部1a,1b,1c,1dのヘッド部11は、1つでもよい。
【0016】
また、この実施の形態では、シート搬送部10bは、プリントエンジン10aに対向して配置されプリントシートを搬送する環状の搬送ベルト2と、搬送ベルト2を懸架される駆動ローラー3および従動ローラー4と、搬送ベルト2ととともにプリントシートをニップする吸着ローラー5と、排出ローラー対6とを備える。
【0017】
駆動ローラー3および従動ローラー4は、搬送ベルト2を周回させる。そして、後述の給紙カセット20-1,20-2から搬送されてきたプリントシートを吸着ローラー5がニップし、ニップされたプリントシートは、搬送ベルト2によってインクジェット記録部1a~1dのプリント位置へ順番に搬送されていき、インクジェット記録部1a~1dによりそれぞれの色の画像をプリントされる。そして、プリント完了後のプリントシートが排出ローラー対6によって、排出トレイ10cなどに排出される。
【0018】
さらに、シート搬送部10bは、複数の給紙カセット20-1,20-2を備えている。給紙カセット20-1,20-2は、プリントシート101,102を収容しており、リフト板21,24でプリントシート101,102を上方に押し上げてピックアップローラー22,25に当接させる。給紙カセット20-1,20-2に載置されたプリントシート101,102は上側から1枚ずつピックアップローラー22,25によって給紙ローラー23,26へピックアップされる。給紙ローラー23,26は、給紙カセット20-1,20-2からピックアップローラー22,25によって給紙されたプリントシート101,102を1枚ずつ搬送路上へ搬送するローラーである。
【0019】
搬送ローラー27は、給紙カセット20-1,20-2から搬送されてくるプリントシート101,102に共通な搬送路上の搬送ローラーである。レジストローラー28は、搬送されてくるプリントシート101,102を一時停止させ、2次給紙タイミングでそのプリントシート101,102をプリントエンジン10aへ搬送する。2次給紙タイミングは、そのプリントシート101,102上の指定された位置に画像が形成されるように後述の制御部81によって指定される。
【0020】
例えば、給紙カセット20-1,20-2において互いに異なる種別のプリントシートが収容される。
【0021】
図3は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置10の電気的な構成を示すブロック図である。
図3に示すように、画像形成装置10は、
図1および
図2に示すような機械的構成を有する画像出力部71の他、さらに、操作パネル72、記憶装置73、通信装置74、および演算処理装置75を備える。
【0022】
操作パネル72は、画像形成装置10の筐体表面に配置され、液晶ディスプレイなどの表示装置、およびハードキー、タッチパネルなどの入力装置を備え、その表示装置でユーザーに対して各種メッセージを表示し、その入力装置でユーザー操作を受け付ける。
【0023】
記憶装置73は、画像形成装置10の制御に必要なデータ、プログラムなどを記憶する不揮発性の記憶装置(フラッシュメモリー、ハードディスクドライブなど)である。記憶装置73には、予備吐出設定データ73aが記憶されている。予備吐出設定データ73aは、ユーザーにより設定された予備吐出の制御種別を示す。
【0024】
通信装置74は、ホスト装置41とデータ通信を行い、ホスト装置41からプリント要求などを受信する装置である。通信装置74は、例えば、周辺機器インターフェイス、ネットワークインターフェイスなどである。
【0025】
演算処理装置75は、プログラムに従って動作するコンピューター、所定動作を実行するASIC(Application Specific Integrated Circuit)などを備え、各種処理部として動作する。そのコンピューターは、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを備え、ROM、記憶装置73などに記憶されているプログラムをRAMにロードし、CPUで実行することで、(必要に応じてASICとともに)各種処理部として動作する。
【0026】
ここでは、演算処理装置75は、制御部81、画像処理部82として動作する。
【0027】
制御部81は、画像出力部71(プリントエンジン10a、シート搬送部10bなど)を制御し、上述のプリント要求などでユーザーにより要求されたプリントジョブを実行する。この実施の形態では、制御部81は、画像処理部82に所定の画像処理を実行させ、ヘッド部11を制御してインクを吐出させてプリントシート上にプリント画像を形成する。画像処理部82は、RIP(Raster Image Processing)、色変換、ハーフトーニングなどの所定の画像処理を、プリントシートにプリントすべき画像の画像データに対して実行する。
【0028】
特に、制御部81は、必要に応じて、プリントエンジン10aの予備吐出として紙面内予備吐出を行う。
【0029】
なお、「予備吐出」は、所定期間あるいは所定プリントページにおいて使用されなかったヘッド部11のノズルについて画像形成目的ではなくメンテナンス目的でインクを吐出する動作である。「紙面内予備吐出」は、ユーザー画像をプリントするプリントシート内で行う予備吐出である。
【0030】
具体的には、制御部81は、プリントエンジン10aで紙面内予備吐出を実行する場合において、(a)紙面内予備吐出を行うノズルを特定し、(b)プリントシート内で、特定したノズルによるインク滴の吐出位置候補をランダムに選択し、(c)選択した吐出位置候補が後工程用オブジェクトを含むマスク領域内に含まれているか否かを判定し、(d1)選択した吐出位置候補がマスク領域内に含まれていない場合、選択した吐出位置候補を、特定したノズルによるインク滴の吐出位置とし、(d2)選択した吐出位置候補がマスク領域内に含まれている場合、選択した吐出位置候補を、特定した前記ノズルによるインク滴の吐出位置とせずに、特定したノズルによるインク滴の吐出位置をマスク領域外に設定する。
【0031】
なお、特定したノズルによるインク滴の吐出位置候補は、プリントシート内で分散するように、別の吐出位置候補から所定距離(画素数)以上、離れた位置に設定される。
【0032】
ここでは、後工程用オブジェクトは、トンボマークおよび/またはカラーパッチである。また、マスク領域は、そのような後工程用オブジェクトおよび後工程用オブジェクトの外縁に所定幅(ここでは、インク滴の最大幅以上の幅)で設けられたマージンを含む。なお、このマージンの幅は、ユーザー(例えば、操作パネル72に対するユーザー操作)により設定可能としてもよい。
【0033】
なお、プリントシート上に後工程用オブジェクトがプリントされる位置は、固定されており、記憶装置73に記憶されているマスク画像(プリント画像と同一サイズの画像であって、例えばマスク領域内の画素値を1、マスク領域外の画素値を0とした画像)でマスク領域が示され、制御部81は、そのマスク画像を参照して、選択した吐出位置候補(つまり、その画素位置)が後工程用オブジェクトを含むマスク領域内に含まれているか否かを判定する。
【0034】
図4は、
図1に示す画像形成装置10において使用される後工程用オブジェクトおよびマスク画像の一例について説明する図である。例えば
図4に示すように、プリント画像101に含まれているトンボ111およびカラーパッチ112に対してマスク領域113が設定される。このマスク領域113は、マスク画像102内で、特定の画素値の領域121として表現されている。なお、このマスク領域113、つまりマスク画像102は、編集可能としてもよい。
【0035】
また、この実施の形態では、紙面内予備吐出時のインク滴の吐出位置を後工程用オブジェクトから回避させる回避制御として、制御部81は、予備吐出設定データ73aにおけるユーザーによる設定に従って、所定の3つの制御種別のうちの1つを選択し、選択した吐出位置候補がマスク領域内に含まれている場合、選択した制御種別に従って、特定したノズルの紙面内予備吐出を行う。
【0036】
図5は、
図1に示す画像形成装置10における回避制御の一例(後述の制御種別B)を説明する図である。
図6は、
図1に示す画像形成装置10における回避制御の3つの制御種別を説明する図である。ここでは、例えば
図6に示すように、その3つの制御種別のうちの第1の制御種別(制御種別A)は、特定したノズルによるインク滴の吐出タイミングを早めることで、特定したノズルによるインク滴の吐出位置をマスク領域外に設定する制御方法を指す。また、その3つの制御種別のうちの第2の制御種別(制御種別B)は、例えば
図5に示すように、特定したノズルによるインク滴の吐出タイミングを遅延させることで、特定したノズルによるインク滴の吐出位置をマスク領域外に設定する制御方法を指す。また、その3つの制御種別のうちの第3の制御種別(制御種別C)は、特定したノズルによるインク滴の吐出を、当該プリントシートの後続のプリントシートで行う制御方法を指す。
【0037】
つまり、制御種別A,Bでは、インク滴の吐出タイミングをずらすことで、インク滴の吐出位置が、マスク領域から外れるように搬送方向(副走査方向)に沿ってずれる。なお、制御種別Cでは、制御部81は、現在のプリントシートにおいて予備吐出を行わなかったノズル番号をRAMなどに記憶しておき、後続のプリントシートのプリント時に、ノズル番号を読み出し、そのノズル番号のノズルの紙面内予備吐出を行う。
【0038】
次に、上記画像形成装置10の動作について説明する。
【0039】
紙面内予備吐出を行う場合、通信装置74を使用してプリント要求を受け付けると、制御部81は、まず、不使用期間などに基づいて、予備吐出する1または複数のノズルを特定し、特定した各ノズルについて、プリントシート内で、特定したノズルによるインク滴の吐出位置候補をランダムに選択する。
【0040】
この実施の形態では、ヘッド部11が固定されており、ノズルが移動せず、プリントシートが搬送方向(副走査方向)に移動するため、搬送方向(副走査方向)における位置がランダムに吐出位置候補として選択される。ただし、1枚のプリントシート内で、複数のノズルの予備吐出が行われる場合、他のノズルの吐出位置(確定位置)から所定距離以上離れた位置が吐出位置候補として選択される。
【0041】
次に、制御部81は、後工程用オブジェクトに基づくマスク画像を参照して、特定した各ノズルの吐出位置候補がマスク領域内にあるか否かを判定する。
【0042】
そのノズルの吐出位置候補がマスク領域内にないと判定した場合、制御部81は、そのノズルの吐出位置候補を吐出位置とする。
【0043】
そのノズルの吐出位置候補がマスク領域内にあると判定した場合、制御部81は、そのノズルの吐出位置候補に対応する、マスク領域外の位置を吐出位置とする。
【0044】
ここで、例えば、制御種別Aの場合、副走査方向に沿って吐出位置候補より前方の、マスク領域外の位置(マスク領域外縁に隣接する位置)が吐出位置とされる。また、制御種別Bの場合、副走査方向に沿って吐出位置候補より後方の、マスク領域外の位置(マスク領域外縁に隣接する位置)が吐出位置とされる。また、制御種別Cの場合、例えば、次のページの同一位置が吐出位置とされる。
【0045】
このようにして予備吐出すべきノズルの吐出位置が特定される。
【0046】
他方、画像処理部82は、受け付けたプリント要求に対応するプリント画像を生成する。
【0047】
そして、制御部81は、画像出力部71を制御して、そのプリント画像をプリントシート上にプリントするとともに、上述のようにして特定した吐出位置(吐出タイミング)で、予備吐出すべきノズルの予備吐出を実行する。
【0048】
以上のように、上記実施の形態によれば、プリントエンジン10aは、インク滴をノズルから吐出して、プリントすべき画像をプリントシート上にプリントする。制御部81は、プリントエンジン10aで紙面内予備吐出を実行する場合において、(a)紙面内予備吐出を行うノズルを特定し、(b)プリントシート内で、特定したノズルによるインク滴の吐出位置候補をランダムに選択し、(c)選択した吐出位置候補が後工程用オブジェクトを含むマスク領域内に含まれているか否かを判定し、(d1)選択した吐出位置候補がマスク領域内に含まれていない場合、選択した吐出位置候補を、特定したノズルによるインク滴の吐出位置とし、(d2)選択した吐出位置候補がマスク領域内に含まれている場合、選択した吐出位置候補を、特定したノズルによるインク滴の吐出位置とせずに、特定したノズルによるインク滴の吐出位置をマスク領域外に設定する。
【0049】
これにより、紙面内予備吐出を行っても、後工程用オブジェクトが乱れずに済み、後工程用オブジェクトを使用する後工程の精度低下が抑制される。
【0050】
なお、上述の実施の形態に対する様々な変更および修正については、当業者には明らかである。そのような変更および修正は、その主題の趣旨および範囲から離れることなく、かつ、意図された利点を弱めることなく行われてもよい。つまり、そのような変更および修正が請求の範囲に含まれることを意図している。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、例えば、ラインヘッド型のインクジェット画像形成装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0052】
10 画像形成装置
10a プリントエンジン
81 制御部