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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-01
(45)【発行日】2023-11-10
(54)【発明の名称】動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 37/12 20060101AFI20231102BHJP
   F16H 25/20 20060101ALI20231102BHJP
   F16H 25/24 20060101ALI20231102BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
F16H37/12 Z
F16H25/20 E
F16H25/24 G
B60K35/00 A
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020553758
(86)(22)【出願日】2019-10-16
(86)【国際出願番号】 JP2019040607
(87)【国際公開番号】W WO2020090463
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-08-12
(31)【優先権主張番号】P 2018202669
(32)【優先日】2018-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 幸夫
(72)【発明者】
【氏名】桜沢 将史
【審査官】川口 真一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-73461(JP,A)
【文献】特開2017-222252(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 37/12
F16H 25/20
F16H 25/24
B60K 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動部材の駆動に伴い回転駆動されるリードスクリュー部と、
前記リードスクリュー部の回転により前記リードスクリュー部の軸方向に沿い移動し、被動力伝達部に動力を伝達する動力伝達部材とを備えた動力伝達装置において、
前記動力伝達部材は、前記被動力伝達部を挟んで対向する一対の壁部を有し、
前記一対の壁部のうち一方の壁部には前記被動力伝達部側に向けて突出する突起部が設けられ、
前記一対の壁部のうち他方の壁部には弾性部材が設けられ、
前記突起部と前記被動力伝達部とが当接する第1当接部分と、前記弾性部材と前記被動力伝達部とが当接する第2当接部分との双方が、前記軸方向と平行に延びる仮想ライン上に位置していないことを特徴とする動力伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばヘッドアップディスプレイ装置に用いられる動力伝達装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の動力伝達装置にあっては、例えば下記特許文献1に記載のごとく、車両用のヘッドアップディスプレイ装置に備えられる凹面鏡の角度位置を調整すべく、ステッピングモータ(駆動部材)を駆動させて凹面鏡の角度位置調整を行うものが知られている。
【0003】
ここで、上述のヘッドアップディスプレイ装置は、表示器から発せられる表示光を反射させる反射器と、表示器及び反射器を収納するハウジングとから主に構成され、反射器に備えられる凹面鏡によって反射された表示光を車両のフロントガラスに照射し、この照射によって得られた表示像を車両の利用者に視認させるものである。
【0004】
そして、この場合、反射器は、表示器からの表示光を反射させる凹面鏡(反射部材)と、この凹面鏡を保持する樹脂製のミラーホルダ(保持部材)と、このミラーホルダの外方に向けて部分的に突出形成される被動力伝達部である突出片に動力を伝達させることでミラーホルダを所定の回動軸線を中心として回動させ、ミラーホルダの角度位置を調整可能な動力伝達装置とを備える。
【0005】
動力伝達装置は、ステッピングモータ及び当該ステッピングモータから延出する回転軸を備えるとともに回転軸周面にネジ溝であるリードスクリュー部の形成された駆動手段と、主にステッピングモータを固定支持する機能を有する金属製の支持体と、リードスクリュー部に噛み合うように固定された金属製のナットと、リードスクリュー部と平行状態をなすように支持体に嵌合されたガイドシャフトと、基部(ベース部)にナットの両側面と各々当接する一対の当接面が形成されるとともに当該基部の前方に突出する一対の対向壁部にミラーホルダの前記突出片と点接触する半球形状からなる一対の突起部が各々形成された動力伝達部材とから構成される。
【0006】
このように構成された動力伝達装置は、ステッピングモータの駆動に伴いリードスクリュー部が回転駆動されると、このリードスクリュー部の回転によりリードスクリュー部に螺合されたナットがリードスクリュー部の軸方向に沿い往復移動し、このナットの往復移動に同期して例えばナットにおける前記両側面のうち一方の側面には、前記一対の当接面において、前記一方の側面と当接する側の一方の当接面箇所に推力が作用する。
【0007】
そして、この推力の作用によって、動力伝達部材が、ガイドシャフトに案内された状態でナットの往復移動に同期して前記軸方向に沿い移動(往復移動)する。すると、動力伝達部材の移動に伴い、動力伝達部材に備えられる前述した一対の突起部と点接触している前記突出片にはミラーホルダを前記回動軸線を中心として回動させるような動力が伝達される。
【0008】
つまり、このことは、前記突出片への動力伝達によりミラーホルダ並びにミラーホルダに保持された凹面鏡が、前記回動軸線を中心として所定角度だけ回動することを意味している。そして、このように凹面鏡を角度移動させることで、前記表示光のフロントガラスに対する投射方向が調整され、これに伴い車両の利用者が視認可能な表示像の位置をフロントガラスの上下方向に移動することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2009-73461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、特許文献1に記載のヘッドアップディスプレイ装置に用いられる動力伝達装置の場合、動力伝達部材に備えられる一対の突起部の間にミラーホルダの突出片を挟持する構造となっているが、一般的に動力伝達部材やミラーホルダにおける各部の寸法には寸法公差が存在するため、場合によっては前記寸法公差に起因して、動力伝達部材に設けられた突起部(例えば一対の突起部のうち片方の突起部)とミラーホルダに設けられた突出片との間に微少なクリアランスが生じることが考えられる。
【0011】
すると、この微少なクリアランスによって、ミラーホルダ(つまりミラーホルダに保持された凹面鏡)ががたつくように傾動することが考えられ、結果的にフロントガラス越しに車両の利用者が視認する表示像の像ぶれが発生する虞がある。
そこで本発明は、前述の課題に対して対処するため、表示像の像ぶれが発生する虞のない動力伝達装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、駆動部材の駆動に伴い回転駆動されるリードスクリュー部と、前記リードスクリュー部の回転により前記リードスクリュー部の軸方向に沿い移動し、被動力伝達部に動力を伝達する動力伝達部材とを備えた動力伝達装置において、前記動力伝達部材は、前記被動力伝達部を挟んで対向する一対の壁部を有し、前記一対の壁部のうち一方の壁部には前記被動力伝達部側に向けて突出する突起部が設けられ、前記一対の壁部のうち他方の壁部には弾性部材が設けられ、前記突起部と前記被動力伝達部とが当接する第1当接部分と、前記弾性部材と前記被動力伝達部とが当接する第2当接部分との双方が、前記軸方向と平行に延びる仮想ライン上に位置していないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、所期の目的を達成でき、表示像の像ぶれが発生する虞のない動力伝達装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態によるヘッドアップディスプレイ装置の概略図である。
図2】同実施形態によるヘッドアップディスプレイ装置の断面図である。
図3】同実施形態による第2反射器を示す斜視図である。
図4】同実施形態による第2反射器とハウジングの所要部とを示す断面図である(ハッチングは省略)。
図5】同実施形態による位置調整手段の各部と保持部材の一部を示す斜視図である。
図6】同実施形態による位置調整手段における駆動手段と移動部材と動力伝達部材との位置関係を示す断面図である。
図7】同実施形態による動力伝達部材の一部と保持部材の一部とを示す要部拡大断面図である(ハッチングは省略)。
図8】同実施形態の変形例による動力伝達部材の一部と保持部材の一部とを示す要部拡大断面図である(ハッチングは省略)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図1図7に基づいて、本発明の動力伝達装置を車両用のヘッドアップディスプレイ装置に備えられる第2反射器に適用した一実施形態を説明する。
【0016】
ヘッドアップディスプレイ装置は、図1に示すように車両10のインパネ11内部に配設された表示ユニットである表示装置12が投射する表示光Lを投影部材である車両10のフロントガラス13で車両10の運転者(利用者)14の方向に反射させ、虚像Vの表示を行うものである。換言すれば、ヘッドアップディスプレイ装置は、表示装置12の後述する液晶表示器から発せられる表示光Lをフロントガラス13(前記投影部材)に出射(投射)し、この出射によって得られた表示像(虚像)Vを利用者14に視認させるものである。これにより利用者14は、虚像Vを風景と重畳させて観察することができる。
【0017】
表示装置12は、図2に示すように液晶表示器20と、第1反射器30と、第2反射器40と、ハウジング50とから主に構成されている。
【0018】
液晶表示器20は、配線基板Rに実装された発光ダイオードからなる光源21と、この光源21からの照明光を透過して表示光Lを形成するように光源21の前方側(真上)に位置するTFT型の液晶表示素子(表示素子)22とから主に構成される。このことは、液晶表示素子22の背後(直下)に光源21が配設され、液晶表示素子22は、光源21から発せられる光により、所定情報(後述する表示すべき情報)を表示することを意味している。
【0019】
この場合、液晶表示器20は、表示光Lの出射側の面が第1反射器30の後述するコールドミラーに対向するようにしてハウジング50内に設けられ、表示光Lの光軸が前記コールドミラーに交わるような位置や向きにて固定保持される。
【0020】
また液晶表示素子22は、図示しない素子駆動回路によって表示すべき情報(例えば車両の速度やエンジン回転数)を数値等で発光表示する。液晶表示器20は、可視波長域の光からなる表示光Lを出力するもので、例えば赤色光(主に発光波長域610~640nm)を発する光源21を適用することができる。なお、前記表示すべき情報は、車両の速度やエンジン回転数に限らず、あらゆる表示形態を採用できることは言うまでもない。
【0021】
第1反射器30は、コールドミラー31と、このコールドミラー31を所定の取付手段を用いて取付固定するための取付部材32とを有している。
【0022】
コールドミラー31は、略矩形状のガラス基板31aと、このガラス基板31aの片面(第2反射器40の後述する凹面鏡と向かい合う面)に形成された第1の反射層31bとを備える。第1の反射層31bは、膜厚が異なる多層の干渉膜からなるものであり、蒸着等の方法で形成されている。また、コールドミラー31は、液晶表示器20が発した表示光Lを、第2反射器40(前記凹面鏡)側へ反射させるような位置に傾斜状態にて配設される。
【0023】
なお、コールドミラー31は、液晶表示器20の発光波長域を含む可視波長域(450~750nm)の光を高い反射率(例えば80%以上)で反射し、前記可視波長域以外の光を低い反射率で反射するものである。この場合、コールドミラー31は、前記可視波長域以外の特に赤外波長域の光(赤外線あるいは太陽光の熱線)を低い反射率(例えば15%以下)にて反射するものが適用される。なお、第1の反射層31bにて反射されない光は、コールドミラー31を透過するように構成される。
【0024】
また本実施形態の場合、コールドミラー31並びに液晶表示器20は、ハウジング50の後述する透光性カバーから直接、臨めない位置に配設され、前記太陽光等の外部からの光(外光)が直接、当たらない構造となっている。なお、取付部材32は、例えば黒色の合成樹脂材料からなり、適宜固定手段を用いてハウジング50に固定される。
【0025】
第2反射器40は、図2図4に示すようにコールドミラー31(つまり、表示素子22)からの表示光Lを反射させる凹面鏡(反射部材)41と、この凹面鏡41を保持するミラーホルダとしての保持部材42と、この保持部材42の角度位置(配設位置)を調整するための位置調整手段43とを備える。
【0026】
凹面鏡41は、凹面を有するポリカーボネートからなる樹脂基板に第2の反射層41aを蒸着形成したものである。この凹面鏡41は、その第2の反射層41aがコールドミラー31並びに前記透光性カバーに対向し、前記透光性カバーから臨める位置に傾斜状態にて配設される。
【0027】
また凹面鏡41は、コールドミラー31からの表示光Lを拡大しつつ、前記透光性カバー(車両10のフロントガラス13)側へ反射(投射)させるものである。このことは、凹面鏡41が、コールドミラー31によって反射された表示光Lを拡大し、この拡大された表示光Lを前記透光性カバーを通じてフロントガラス13に投射することを意味している。
【0028】
保持部材42は、金属材料(または合成樹脂材料)によって形成され、ハウジング50に設けられた軸受部(図示省略)に軸支される略円柱状の軸部42aを備える。また、保持部材42は、凹面鏡41を保持する(支える)ための壁部である保持部42bを備える。なお、この場合、凹面鏡41と保持部42bとの間には両面粘着テープ(図示省略)が介在した状態で、凹面鏡41が保持部42bに対し固定保持される。また、保持部材42並びにこれに保持される凹面鏡41は、軸部42aの中心軸である回動軸線(所定の回動軸線)RAを中心として角度移動可能(回動可能)な構成となっている。
【0029】
なお、42cは、凹面鏡41の下方において、凹面鏡41の背後から第2の反射層41a側に向けて略L字形状に突出形成された突出片(突出部)であり、この突出片42cは、第1の延長部42dと、被動力伝達部としての第2の延長部42eとを有し、保持部材42に一体形成されている。
【0030】
第1の延長部42dは、図4中、保持部材42における保持部42bの底壁を構成する底面部42fから第2の反射層41a側に向けて延在する(換言すれば、後述するリードスクリュー部の略軸方向に沿って延在する)薄板状壁部である。
【0031】
また、被動力伝達部である第2の延長部42eは、第1の延長部42dの先端部分から下方(前記リードスクリュー部側)に向けて垂下するように、第1の延長部42dに連続形成された薄板状立壁部である。この第2の延長部42eは、その両側面42g、42h(図4参照)が、後述する位置調整手段に備えられる突起部と板ばねに各々点接触するように、前記突起部と前記板バネとにより挟持される。以下の説明では、両側面42g、42hのうち側面42gを一方の側面とし、側面42hを他方の側面とも言う。
【0032】
位置調整手段43は、図3から図5に示すように駆動手段61と、支持体62と、ナット63と、ガイドシャフト64と、動力伝達部材65と、防振部材66とから主に構成され、保持部材42を回動軸線RAを中心として回動させ、保持部材42(凹面鏡41)の角度位置を調整する(換言すれば表示光Lの投射方向を調整する)ために用いられる。
【0033】
駆動手段61は、通電により回転駆動力を発生するステッピングモータ(駆動部材)61aと、このステッピングモータ61aから延出する回転軸61bとを有する。回転軸61bは、その周面において螺旋状に形成されたねじ溝であるリードスクリュー部61cを備える。リードスクリュー部61c(回転軸61b)は、ステッピングモータ61aからの前記回転駆動力を受けて回転駆動されるようになっている。
【0034】
支持体62は、ステッピングモータ61aを不動状態に固定支持する金属製のモータケースであり、断面略U字形状に形成され、リードスクリュー部61cの軸方向Xに沿うように配設される略板状の平板部62aと、この平板部62aの両端部分が略直角に折り曲げられた一対の第1、第2のフランジ部62b、62cとを有する。
【0035】
ステッピングモータ61a側に位置する第1のフランジ部62bには、リードスクリュー部61cの端部(末端部)61dが貫通する貫通孔62dと、ガイドシャフト64の一方の端部が嵌装される第1の嵌合孔62eとが形成される。なお、第1のフランジ部62bと、ステッピングモータ61aの所要部とは、適宜固定手段によって互いに固定され、これによりステッピングモータ61aが支持体62によって不動状態に固定支持される。
【0036】
一方、第1のフランジ部62bと対をなす第2のフランジ部62c側には、貫通孔62dに対応する孔(図示省略)と、第1の嵌合孔62eに対応し、ガイドシャフト64の他方の端部が嵌装される第2の嵌合孔62fとが形成される。なお、第2のフランジ部62cに設けられる前記孔には、軸受部材Gが装着される。そして、貫通孔62dを貫通して軸受部材G側に突出する突出部分の先端側に位置するリードスクリュー部61cの先端部61e部分が、軸受部材Gを通じて回転自在に軸支される。
【0037】
なお、62g、62hは、防振部材66の後述する第1、第2のネジ孔に対応した位置に設けられ、前記第1、第2のネジ孔を貫通するネジS1のネジ部を螺合させるための第1、第2の螺合部である。第1、第2の螺合部62g、62hは、平板部62aの両端側において、平板部62aの表面側に略円筒状に各々突出形成されており、具体的には第1の螺合部62gが第1のフランジ部62bの近傍に設けられ、第2の螺合部62hが第2のフランジ部62cの近傍に設けられる。
【0038】
ナット63は、回転軸61bにおけるリードスクリュー部61cの所定箇所に螺合(噛合)され、リードスクリュー部61cの回転により与えられた推力によって、リードスクリュー部61c上をリードスクリュー部61cの軸方向Xに沿い移動する。なお、この場合、ナット63は、リードスクリュー部61cが回転駆動されることにより、リードスクリュー部61cの先端部61eあるいは末端部61dに移動(往復移動)するようになっている。
【0039】
ガイドシャフト64は、例えば細長円柱形状の金属材からなり、リードスクリュー部61c(回転軸61b)と略平行状態をなすように、その一方の端部が支持体62の第1の嵌合孔62eに嵌合されるとともに他方の端部が支持体62の第2の嵌合孔62fに嵌合される。
【0040】
動力伝達部材65は、ポリアセタール等の合成樹脂材料によって形成され、ベース部65aと、このベース部65aの表面部65bから上方に向けて、互いに対向するように突出形成された一対の壁部65c、65dとを有している。また、この場合、動力伝達部材65は、リードスクリュー部61cの回転によりリードスクリュー部61cの軸方向Xに沿い移動し、第2の延長部42eに動力を伝達する機能を備えている。
【0041】
なお、以下の説明では、第2の延長部42eを挟んで対向する一対の壁部65c、65dのうちリードスクリュー部61cの末端部61d側に位置する対向壁を一方の壁部65cとし、一対の壁部65c、65dのうちリードスクリュー部61cの先端部61e側に位置する対向壁を他方の壁部65dとする。
【0042】
ベース部65aには、ガイドシャフト64を挿通させるための略円形の貫通孔形状からなる挿通部65eと、ナット63両側面である第1、第2側面63a、63bの所要部とそれぞれ当接(面接触)する一対の第1、第2の当接部65f、65gとが形成されている(図6参照)。この場合、第1、第2の当接部65f、65gは、ナット63の第1、第2側面63a、63bを部分的にサンドイッチするようにベース部65aに一体形成される。
【0043】
なお、ナット63において、第1のフランジ部62b側の面を第1側面63aとし、第2のフランジ部62c側の面を第2側面63bとする。また、第1の当接部65fと第1側面63aとが当接するとともに第2の当接部65gと第2側面63bとが当接して、第1、第2の当接部65f、65gによりナット63がサンドイッチされているものとする。
【0044】
そして、一方の壁部65cには一方の側面42g側(第2の延長部42e側)に向けて突出する略半球形状の突起部65hが設けられ、他方の壁部65dには他方の側面42h(第2の延長部42e)に後述する押圧力を作用させるための弾性部材としての金属製の板ばね65iが設けられる(図7参照)。
【0045】
なお、詳細は後述するが、突起部65hと板ばね65iとの間に第2の延長部42eが挿入されると、第2の延長部42eと突起部65hとは、突起部65hの頂点部分である第1当接部分T1にて常に点接触する構成となる。なお、突起部65hの形状は、一方の側面42gと点接触可能な形状であればあらゆる形状を採用することができる。
【0046】
板ばね65iは、例えば他方の壁部65dの他方の側面42h側の面に取り付けられ、適宜固定手段を用いて他方の壁部65dに密着するように固定される固定部F1と、この固定部F1の上端側から他方の側面42h側に向けて斜めに垂下するように延びる傾斜部F2と、この傾斜部F2の下端側から固定部F1側に向けて僅かに折り曲げられた屈曲先端部F3とを有する。
【0047】
ここで、板ばね65iが他方の壁部65dに取り付けられた状況下において、第2の延長部42eを板ばね65iと突起部65hとの間に挿入すると、板ばね65iは、傾斜部F2と屈曲先端部F3とが若干、他方の壁部65d側に弾性変形した状態で、傾斜部F2と屈曲先端部F3との境界部分である第2当接部分T2にて第2の延長部42eと当接する。
【0048】
すると、板ばね65iには一方の壁部65c側に向けて押圧力(弾性復帰力)が作用することから、第2の延長部42eが突起部65h側に常時、付勢され、第2の延長部42e(一方の側面42g)と突起部65hとは常時、離れることはない。これに伴い、第2の延長部42eと突起部65hとは第1当接部分T1にて点接触し、結果的に第2の延長部42eは突起部65hと板ばね65iとの間で常時、挟持されることになる。
【0049】
この際、第2の延長部42e(一方の側面42g)と突起部65hとが当接する第1当接部分T1と、第2の延長部42e(他方の側面42h)と板ばね65iとが当接する第2当接部分T2との位置関係に着目すると、本例の場合、第1当接部分T1と第2当接部分T2との双方がリードスクリュー部61cの軸方向Xと平行に延びる仮想ライン(仮想水平ライン)70上に位置していない構成を採用している。
【0050】
例えば、図7中、仮想ライン70に第1の接点部分T1が位置している場合、第2当接部分T2は、仮想ライン70には存在せず、仮想ライン70の下側に位置している。つまり、このことは、一対の壁部65c、65dの高さ方向(軸方向Xとは直交する方向)において、第1の当接部分T1と第2の当接部分T2とは同一の高さ位置に位置しておらず、第2の当接部分T2が第1の当接部分T1よりも下側に位置していることを意味する。
【0051】
防振部材66は、振動減衰機能を具備した軟質性の合成樹脂材料(例えばポリプロピレン樹脂)によって形成され、支持体62における平板部62aに対応するように設けられる略矩形平板状の基部66aを備える。この防振部材66は、ステッピングモータ61aの駆動時に生じる振動を、支持体62からハウジング50に至る際に減衰させる振動減衰機能を有している。
【0052】
そして、防振部材66における基部66aの4つの角部のうち、ハウジング50の後述する第1のボス部に対応する位置に設けられる第1の角部C1には、第1の耳部66bが、基部66aの板厚と略同一の板厚を有するように、基部66aの側方に突出形成されてなる。また、第1の角部C1と対角線方向であって、ハウジング50の後述する第2のボス部に対応する位置に設けられる第2の角部C2には、第2の耳部66cが、基部66aの板厚と略同一の板厚を有するように、基部66aの側方に突出形成されてなる。
【0053】
なお、66d、66eは、支持体62における第1、第2の螺合部62g、62hと各々連通するように設けられ、ネジS1のネジ部を基部66aの背後側から貫通させるための貫通孔からなる第1、第2のネジ孔であり、この第1、第2のネジ孔66d、66eは、基部66aの中央付近に位置しており、第1のネジ孔66dが第1のフランジ部62b側に設けられ、第2のネジ孔66eが第2のフランジ部62c側に設けられる。
【0054】
そして、防振部材66と支持体62との固定は、図4に示すようにネジS1のネジ部を基部66aの背後側から第1、第2のネジ孔66d、66eに各々貫通させ、各ネジ孔66d、66eを貫通したネジS1のネジ部の所要部が第1、第2の螺合部62g、62hにそれぞれ螺合されることで完了する。これにより支持体62と防振部材66とが第1の固定手段であるネジS1により固定される。
【0055】
なお、66fは、前記第1のボス部に設けられる後述する第3のネジ螺合部と連通するように設けられ、ネジS2のネジ部を基部66aの表面側から貫通させるための貫通孔からなる第3のネジ孔であり、この第3のネジ孔66fは、第1の耳部66bの所定箇所に形成されてなる。
【0056】
同様に、66gは、前記第2のボス部に設けられる後述する第4のネジ螺合部と連通するように設けられ、ネジS2のネジ部を基部66aの表面側から貫通させるための貫通孔からなる第4のネジ孔であり、この第4のネジ孔66gは、第2の耳部66cの所定箇所に形成されてなる。
【0057】
このように構成された位置調整手段43は、ステッピングモータ61aからの前記回転駆動力を受けてリードスクリュー部61cが回転駆動されると、リードスクリュー部61cに噛合されたナット63が軸方向Xに沿い往復移動する。そして、例えばナット63が、第1のフランジ部62b側に移動している場合、ナット63の第1側面63aには、これと面接触している第1の当接部65fを第1のフランジ部62b側に移動させるような推力が作用する。
【0058】
この推力の作用によって、動力伝達部材65が、ガイドシャフト64に案内された状態で、ナット63の移動に同期して軸方向Xに沿い第1のフランジ部62b側に平行移動する。すると、この動力伝達部材65の平行移動に伴い、突起部65hと板ばね65iとの間に介在している第2の延長部42eには保持部材42を回動させるような動力が伝達される。つまり、このことは、第2の延長部42eへの動力伝達により、保持部材42が回動軸線RAを中心として図4における矢印方向に回動することを意味している。
【0059】
なお、ナット63が、第1のフランジ部62b側ではなく第2のフランジ部62c側に移動する場合は、動力伝達部材65が、第2のフランジ部62c側に平行移動し、これにより第2の延長部42eには、保持部材42を回動軸線RAを中心として図4における矢印方向とは反対方向に回動させるような動力が作用することは言うまでもない。
【0060】
ハウジング50は、例えばアルミダイカストにて形成され、ともに断面略凹部形状からなる上側ケース51と下側ケース52とを備え、上側ケース51と下側ケース52とで形成される内部空間である空間部53において、液晶表示器20(液晶表示素子22)や第1反射器30、並びに凹面鏡41と保持部材42と位置調整手段43とから構成される第2反射器40を収納するものである(図2参照)。
【0061】
上側ケース体51には、凹面鏡41の配設位置の上部(車両10のフロントガラス13側)が開口する開口窓部51aが形成されており、この開口窓部51aには、開口窓部51aを塞ぐように透光部である透光性カバー54が配設される。
【0062】
透光性カバー54は、透光性の合成樹脂材料によって形成され、凹面鏡41で反射された表示光Lが透過(通過)する光透過性部材としての機能を有している。つまり、凹面鏡41によって反射された表示光Lは、ハウジング50に形成された透光性カバー54を通じてフロントガラス13に投影され、これにより表示像(虚像)Vの表示が行われることになる。
【0063】
一方、下側ケース体52における底部には、図4に示すように前記底部から防振部材66側に向けて突出する略円筒状からなる一対の第1、第2のボス部52a、52bが設けられる。
【0064】
このうち、第1のボス部52aは、ネジS2を螺合させるための第3のネジ螺合部52cを備え、第3のネジ螺合部52cは防振部材66に設けられた第3のネジ孔66fと連通している。他方、第2のボス部52bは、ネジS2を螺合させるための第4のネジ螺合部52dを備え、第4のネジ螺合部52dは防振部材66に設けられた第4のネジ孔66gと連通している。
【0065】
そして、ハウジング50(各ボス部52a、52b)と防振部材66との固定は、ネジS2のネジ部を基部66aの表面側から第3、第4のネジ孔66f、66gに各々貫通させ、各ネジ孔66f、66gを貫通してなるネジS2のネジ部の所要部が、各ボス部52a、52bに備えられる第3、第4のネジ螺合部52c、52dにそれぞれ螺合されることで完了する。これによりハウジング50(各ボス部52a、52b)と防振部材66とが第2の固定手段であるネジS2により固定される。
【0066】
以上のように本実施形態では、動力伝達部材65の一方の壁部65cには第2の延長部42e側に向けて突出する突起部65hが設けられ、動力伝達部材65の他方の壁部65dには板ばね65iが設けられ、突起部65hと第2の延長部42eとが当接する第1当接部分T1と、板ばね65iと第2の延長部42eとが当接する第2当接部分T2との双方が、リードスクリュー部61cの軸方向Xと平行に延びる仮想ライン70上に位置していない構成となっている。
【0067】
従って、板ばね65i(前記弾性復帰力)によって第2の延長部42eが一方の壁部65c側に押圧されたとき、第2の延長部42e(突出片42c)と突起部65hとは常時、当接して離れることはない。これにより突起部と突出片との間に従来、形成されていた前記微少なクリアランスの発生が抑制され、突起部65hと板ばね65iとの間に挟持される第2の延長部42eの固定信頼性を高めることができ、第2の延長部42eによる保持部材42への動力伝達時に保持部材42ががたつかず、フロントガラス13越しに利用者14が視認する表示像Vの像ぶれが発生する虞はなくなる。
【0068】
なお、本発明は、上述の実施形態及び図面によって限定されるものではない。本発明の要旨を変更しない範囲で、適宜、実施形態及び図面に変更(構成要素の削除も含む)を加えることが可能である。
【0069】
例えば、上述した実施形態では、一対の壁部65c、65dの前記高さ方向において、第2の当接部分T2が第1の当接部分T1よりも下側に位置していたが、第1当接部分T1と第2当接部分T2とは前記高さ方向にて同一の高さ位置に設けられていない構成となっていればよいものであり、例えば本実施形態の変形例として図8に示すように前記高さ方向にて第2の当接部分T2を第1の当接部分T1よりも上側に位置させてもよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0070】
30 第1反射器
40 第2反射器
41 凹面鏡(反射部材)
42 保持部材
42c 突出片
42d 第1の延長部
42e 第2の延長部(被動力伝達部)
42g 一方の側面(一方の面)
42h 他方の側面(他方の面)
43 位置調整手段
61 駆動手段
61a ステッピングモータ(駆動部材)
61c リードスクリュー部
62 支持体
63 ナット
64 ガイドシャフト
65 動力伝達部
65a 基部
65c 一方の壁部
65d 他方の壁部
65h 突起部
65i 板ばね(弾性部材)
66 防振部材
70 仮想ライン(仮想水平ライン)
L 表示光
RA 回動軸線
T1 第1当接部分
T2 第2当接部分
X 軸方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8