(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-01
(45)【発行日】2023-11-10
(54)【発明の名称】光分解方法および装置
(51)【国際特許分類】
C01B 32/40 20170101AFI20231102BHJP
B01D 53/047 20060101ALI20231102BHJP
C01B 32/50 20170101ALI20231102BHJP
【FI】
C01B32/40
B01D53/047
C01B32/50
(21)【出願番号】P 2019126751
(22)【出願日】2019-07-08
【審査請求日】2022-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100152294
【氏名又は名称】木村 雅宜
(72)【発明者】
【氏名】竹元 史敏
(72)【発明者】
【氏名】相浦 良徳
(72)【発明者】
【氏名】森本 幸裕
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 賢一
(72)【発明者】
【氏名】菱沼 宣是
(72)【発明者】
【氏名】平本 立躬
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-147411(JP,A)
【文献】特表2011-500309(JP,A)
【文献】特開昭56-063812(JP,A)
【文献】特開昭51-006895(JP,A)
【文献】TSUJI et al.,Photochemical Removal of SO2 and CO2 by 172 nm Xe2 and 146 nm Kr2 Excimer Lamps in N2 or Air at Atmospheric Pressure,Japanese Journal of Applied Physics,日本,2008年12月25日,Vol.47, No.12,Page.8943-8949
【文献】K.UENO et al.,Xeエキシマ光照射による一酸化炭素の分解,東海大学紀要工学部,2008年
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/40
B01D 53/047
C01B 32/50
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源を覆う処理空間を有するチャンバに対して、ガス導入口から二酸化炭素を含む処理対象ガスを、大気圧よりも高いガス圧で導入する工程(A)と、
前記処理対象ガスを前記処理空間に通流させながら、誘電体バリア放電を利用した
前記光源から放射される、波長140nm~150nmの間に主放射を有するエキシマ光を二酸化炭素を含む
前記処理対象ガスに照射
させて、当該二酸化炭素
の少なくとも一部を分解して一酸化炭素に変化させる
工程(B)と、
前記工程(B)を経て得られた処理済みのガスを、ガス排出口から前記チャンバの外部に排出する工程(C)とを有することを特徴とする光分解方法。
【請求項2】
燃焼機関の排ガスから二酸化炭素を抽出し、高濃度化ステップを経て、当該高濃度二酸化炭素を
前記処理対象ガスとすることを特徴
とする請求項1に記載の光分解方法。
【請求項3】
前記処理済みガスから一酸化炭素を分離するステップを経て、残留する二酸化炭素を再度
前記処理対象ガスとして前記
チャンバに導入することで、前記工程(A)を繰り返すことを特徴
とする請求項1に記載の光分解方法。
【請求項4】
前記誘電体バリア放電を利用した
前記光源から放射される前記エキシマ光を二酸化炭素を含む
前記処理対象ガスに照射した後、残存する酸素原子(O)、酸素分子(O2)およびオゾン(O3)から一酸化炭素を生成するステップを有することを特徴とする請求項1に記載の光分解方法。
【請求項5】
前記工程(B)の後、発生した一酸化炭素を吸着させるステップを有することを特徴とする請求項1に記載の光分解方法。
【請求項6】
前記工程(B)の後、発生した一酸化炭素を別の物体に変化させる反応容器に導くステップを有することを特徴
とする請求項1に記載の光分解方法。
【請求項7】
誘電体バリア放電を利用した発光原理でエキシマ光を放射する光源と、
前記光源を覆う処理空間を有するチャンバと、
少なくとも二酸化炭素を含むガスを
、処理対象ガスとして、
大気圧よりも高いガス圧で前記チャンバ内に導入するガス導入口と、
前記処理空間内を通流する前記処理対象ガスに前記エキシマ光が照射された後
に得られた、一酸化炭素を含む
処理済みガスを
前記チャンバの外部に排出するガス排出口と、
前記光源に対して電力を供給する電源と、を備え、
前記エキシマ光は、波長140nm~150nmの間に主放射を有する光であることを特徴とする二酸化炭素の光分解装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は光分解方法および装置に関する。特に、誘電体バリア放電を利用した光源からの放射光を使った光分解方法とその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、石油や石炭など化石燃料の燃焼量の増加に伴い、大気中における二酸化炭素の含有量は年々増えつつあり、特に、工業化の進んだ国においては、地球温暖化に与える影響は無視できない。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、誘電体バリア放電によって二酸化炭素から一酸化炭素を生成する方法が開示されている。
【0004】
この方法は、誘電体材料を介在させて対向配置する一対の電極間に、原料ガスである二酸化炭素を導入し、電極間に生じるプラズマ放電によって、二酸化炭素から一酸化炭素を作る方法である。特許文献1の
図1においては、一対の電極(外部電極4と内部電極5)の間に誘電体材料である同軸型リアクター3が構成され、この同軸型リアクターの内部に二酸化炭素を含む原料ガス8が導入された状態で、高周波電源6が起動すると、一対の電極間にプラズマ放電が発生する。そして、二酸化炭素が放電プラズマに曝されることにより一酸化炭素が生成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記方法では、原料ガスに二酸化炭素だけでなく窒素ガスを含む場合が多い。特に、火力発電所の燃焼排ガスは二酸化炭素(CO2)と窒素(N2)を高濃度で含んでおり、これを原料ガスとして、上記特許文献1に記載されるような誘電体バリア放電によるプラズマ放電を利用する方法の場合は、確かに、二酸化炭素そのものは分解できるものの、同時に、窒素(N2)からNOXを発生させるという問題が新たに生じる。
【0007】
NOXは窒素と酸素の化合物であり、発生時は一酸化窒素(NO)となるが、酸化して二酸化窒素となり、この二酸化窒素が人体に有害であって呼吸器系疾患をひき起こすことにもなりかねない。
【0008】
そこで、この発明が解決すべき課題は、地球温暖化を抑制するための光分解方法であるとともに、同時に、NOXを発生させることにない新しい方法と装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る光分解方法は、誘電体バリア放電を利用した光源から放射されるエキシマ光を二酸化炭素を含む処理対象ガスに照射することで、当該二酸化炭素を一酸化炭素に変化させることを特徴とする。
【0010】
さらに、燃焼機関の排ガスから二酸化炭素を抽出し、高濃度化ステップを経て、当該高濃度二酸化炭素を処理対象ガスとすることを特徴とする。
【0011】
さらに、前記光分解を終えた処理済みガスから一酸化炭素を分離するステップを経て、残留する二酸化炭素を再度処理対象ガスとして繰り返すことを特徴とする。
【0012】
さらに、前記誘電体バリア放電を利用した光源から放射されるエキシマ光を二酸化炭素を含む処理対象ガスに照射した後、残存する酸素原子(O)、酸素分子(O2)およびオゾン(O3)から一酸化炭素を生成するステップを有することを特徴とする。
【0013】
さらに、前記誘電体バリア放電を利用した光源から放射されるエキシマ光を二酸化炭素を含む処理対象ガスに照射した後、発生した一酸化炭素を吸着させるステップを有することを特徴とする。
【0014】
さらに、前記光分解を終えた処理対象ガスに含まれる一酸化炭素を別の物体に変化させる反応容器に導くステップを有することを特徴とする。
【0015】
さらに、前記光源は、波長140nm~150nmの間に主放射を有する光を放射するものであることを特徴とする。
【0016】
この発明に係る二酸化炭素の光分解装置は、少なくとも二酸化炭素を含むガスを処理対象ガスとして導入するガス導入口と、誘電体バリア放電を利用した発光原理でエキシマ光を放射するとともに当該エキシマ光を処理対象ガスに直接照射するための光源と、エキシマ光が照射された後であって少なくとも一酸化炭素を含むガスを処理済みガスとして排出するガス排出口と、少なくとも前記光源を覆うとともに処理空間を形成するための処理チャンバと、前記光源に対して電力を供給する電源と、よりなることを特徴とする。
【0017】
さらに、光分解装置の前段には、燃焼機関の排ガスから二酸化炭素を抽出し、この二酸化炭素を高濃度化する手段を有して、全体として二酸化炭素の光分解システムを形成していることを特徴とする。
【0018】
さらに、光分解装置の後段には、処理済みガスから一酸化炭素を分離する手段と、残留する二酸化炭素を再度処理対象ガスとして光分解装置に供給する手段を有して、全体として二酸化炭素の光分解システムを形成していることを特徴とする。
【0019】
さらに、光分解装置の後段には、誘電体バリア放電を利用した光源から放射されるエキシマ光を二酸化炭素を含む処理対象ガスに照射した後、残存する酸素原子(O)、酸素分子(O2)およびオゾン(O3)から一酸化炭素を生成する手段と有して、全体として二酸化炭素の光分解システムを形成していることを特徴とする。
【0020】
さらに、光分解装置には、誘電体バリア放電を利用した光源から放射されるエキシマ光を二酸化炭素を含む処理対象ガスに照射した後、発生した一酸化炭素を吸着させる手段と有することを特徴とする。
【0021】
さらに、光分解装置の後段には、処理済みガスに含まれる一酸化炭素を別の物体に変化させる反応容器を有して、全体として二酸化炭素の光分解システムを形成していることを特徴とする。
【0022】
さらに、光分解装置の光源は、波長140nm~150nmの間に主放射を有する光を放射するものであることを特徴とする。
【0023】
さらに、光分解装置の光源は、放電ガスとしてクリプトンを主成分とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
この発明によれば、誘電体バリア放電により発生するエキシマ光を、二酸化炭素に直接照射することで、二酸化炭素から一酸化炭素を生成することができ、かつ、プラズマ放電のようにエネルギの高いものではないのでNOXを発生させることもない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】この発明に係る光分解方法を説明するための装置の概念構成を示す。
【
図2】この発明に係る光分解方法の処理フローの概念構成を示す。
【
図3】この発明に係る光分解方法を説明するための装置の概念構成を示す。
【
図4】この発明に係る光分解方法を説明するための装置の概念構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る光分解方法および装置について、図面を参照して説明する。なお、以下の各図面はあくまで模式的に図示されたものであり、図面上の寸法比と実際の寸法比とは必ずしも一致していない。
【0027】
図1は本発明に係る光分解装置の一つの実施形態を示す模式図である。
この実施形態では、処理チャンバ10、この処理チャンバ10内に配置される光源20、同じく処理チャンバ10内に配置される
一酸化炭素吸着手段30および処理チャンバ10内のガスを循環させるガス循環手段40より構成される。
【0028】
チャンバ10は、例えば、ステンレスより構成される全体が箱型のケーシングであって、上部にガス導入口11、下部にガス排出口12が形成されている。図示略のガス導入器により処理対象ガスがガス導入口11からチャンバ10内に導入され、後述する分解処理を経た処理済みのガスがガス排出口12から外部に排出される。
【0029】
光源20は、誘電体バリア放電の発光原理を利用した光源であって、石英ガラスに代表される誘電体材料よりなる発光容器21と、この発光容器21の外表面に配置される一対の電極22a、22bより構成される。これら一対の電極22a、22bには、処理チャンバ10の外部に配置されるとともに、一対の電極22a、22bに対して電力を供給する電源23が給電線を介して電気的に接続されている。給電線は処理チャンバ10の壁において内外で通過している。
【0030】
発光容器21の内部には、誘電体バリア放電によってエキシマ光を発生するための放電用ガス、例えば、クリプトンガスが図示略のガス流過手段によって一定方向に流れる。そして、放電用ガスが流れている状態において、一対の電極22a、22bに電力が供給されたときに、当該放電用ガスを構成する元素がエキシマ状態になって真空紫外光(エキシマ光)を放射する。真空紫外光の波長は放電用ガスの種類によって一義的に決まるものであり、例えば、クリプトンガスの場合は波長146nmの光が発生する。発光容器21は当該放射波長の光を良好に透過することが条件となり、ガス導入口11から導入された原料ガスは、光源20の周囲において照射されることになる。ここで、一対の電極22a、22bは、光透過性材料からなる板状部材であってもよいし、板状部材の電極そのものに光透過用開口を形成するものであってもよいし、さらには、線状の金属部材を網状あるいはコイル状にして発光容器21に巻きつけるような形態であってもよい。
【0031】
光源としては、クリプトンを発光ガスとするものに限定されるだけではなく、例えば、キセノンガスを発光ガスとして波長172nmのエキシマ光を放射するものや、アルゴンガスを発光ガスとして波長126nmのエキシマ光を放射するものを使うこともできる。ただし、二酸化炭素の吸収係数は波長140nm~150nmに最大値を有しているので、クリプトンを発光ガスとする光源は本発明において適している。また、キセノンとネオンの混合ガスや低圧力のキセノンガスを用いる場合も147nm付近にキセノンの共鳴線による発光があるため本発明に適している。
【0032】
ここで、本発明のように、誘電体バリア放電によって発生するエキシマ光を二酸化炭素に直接照射させる方法の場合は、誘電体バリア放電自体を直接二酸化炭素に曝す方法(特許文献1)にくらべて、窒素分子に対する吸収が小さいため、窒素分子を分解できるだけのエネルギも小さくなるので、このため、窒素分子(N2)から窒素原子(N)を分解することはなく、あるいは、あっても実用レベルで見た場合に限りなく小さいものとすることができ、すなわち、NOXの発生を良好に抑制できる。
【0033】
次に、本装置における処理プロセスを説明する。まず、ガス導入口11から二酸化炭素(CO2)を含む原料ガスが導入されると、そのタイミングで光源20が点灯して、光源20から放射されるエキシマ光(真空紫外光)を二酸化炭素に直接照射できる。真空紫外光が照射された二酸化炭素(CO2)は、一酸化炭素(CO)と酸素原子(O)に分解される。このため、処理チャンバ10内の光源20の近傍には、高濃度の一酸化炭素(CO)と酸素原子(O)が混在する領域Sが形成される。なお、ガス導入口11からの二酸化炭素(CO2)の導入は大気圧よりも高くして処理チャンバ内に外気が入らないようにすることが望ましい。さらに、処理チャンバ11からエキシマ光の漏れ光が発生する場合は、人に対して照射しない構造が望ましい。例えば、人間の操作は処理チャンバとは別室で行うなどである。
【0034】
処理チャンバ10の内部であって、光源20よりも下流領域、ガス導入口11からガス排出口12に向う流路を考えた場合に、光源20よりもガス排出口12側の領域には、一酸化炭素吸着手段30が配置される。この一酸化炭素吸着手段30は、例えば、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)などを主成分とする金属、あるいはこれら金属の合金よりなる物質であって、例えば、部分的にコイル形状に形成されている。そして、電源32より給電されると当該金属部材は高温となり、チャンバ内に浮遊する一酸化炭素(CO)を吸着することができる。この一酸化炭素吸着手段30により、二酸化炭素から発生した一酸化炭素が、再び、酸素と結合して二酸化炭素に戻ることを効果的に防止できる。ただし、本発明の装置において、一酸化炭素吸着手段30は必須というわけではない。
【0035】
処理チャンバ10の内部には必要に応じてガス循環手段40が配置される。このガス循環手段40は、例えば、送風ファンよりなるもので、分解できなかった二酸化炭素(CO2)および分解された一酸化炭素(CO)が再び二酸化炭素に酸化した場合の当該二酸化炭素(CO2)を再び光源20近傍に送って光源20により光照射処理させるものである。
【0036】
処理チャンバ10の内部は、図に示すように、ガス導入口11とガス排出口12を開放させて、光照射処理を連続的に行う方法であってもよいが、ガス導入口11とガス排出口12に、例えば、シャッターを設けて、ガス導入後の一定時間においてチャンバ内を密閉空間として光照射処理を行ってもかまわない。
【0037】
光分解装置の前段には、燃焼機関の排ガスから二酸化炭素を抽出し、この二酸化炭素を高濃度化する手段(装置)を有して、全体として光分解システムを形成することができる。この高濃度CO2生成装置は、例えば、化学吸着法、物理吸着法、膜分離法などのCO2分離手段を用いることができ、発電所などの燃焼機関から送られる排気ガスから窒素(N2)や酸素(O2)と分離することで高濃度の二酸化炭素を生成することができる。なお、高濃度CO2生成装置は、本発明の目的とする二酸化炭素の光分解という意味において、原理的に必須というわけではないが、光分解装置での分解効率を高めるためには設けることが望ましい。
【0038】
光分解装置の後段には、処理済みガスから一酸化炭素を分離する手段と、残留する二酸化炭素を再度処理対象ガスとして光分解装置に供給する手段を有して、全体として光分解システムを形成することができる。処理済みガスから一酸化炭素を分離する手段(装置)は、例えば、CO-PSA法(圧力スイング吸着法)を用いることができる。これは圧力変動式の吸着法であって、吸着剤に含ませている特殊な化学物質とCOの選択的吸着反応を利用してCOを高純度で分離回収する方法であり、回収されたCOは種々の産業用途に用いることができる。他方、前述の化学吸着法、物理吸着法、固体吸着法、膜分離法などのCO2分離手段によって、CO2が選択的に化学反応することを利用して、処理済みガスからCO2を回収することで、COを高純度で分離することもできる。分離されたCOは種々の産業用途に用いることができる。
【0039】
また、残留する二酸化炭素を再度処理対象ガスとして光分解装置に供給する手段(装置)は、COを分離回収した後の残留ガス、すなわち、主成分である二酸化炭素を循環させるような機構となる。二酸化炭素は、直接、光分解装置に導入してもよいが、望ましくは、高濃度CO2生成装置に導くことが望ましい。
【0040】
光分解装置の後段には、誘電体バリア放電を利用した光源から放射されるエキシマ光を二酸化炭素を含む処理対象ガスに照射した後、残存する酸素原子(O)、酸素分子(O2)およびオゾン(O3)から一酸化炭素を生成する手段を有して、全体として光分解システムを形成することができる。この一酸化炭素を生成する手段(装置)は、光分解装置のガス排出口の後段に、別装置として、設けられるものであり、炭素を主成分とする加熱源を有することで、当該加熱源に、排気口から排出されるガスに含まれる、酸素原子(O)、酸素分子(O2)およびオゾン(O3)を接触させることで、一酸化炭素を生成する装置である。
【0041】
なお、残存する酸素原子(O)、酸素分子(O2)およびオゾン(O3)から一酸化炭素を生成する手段は、光分解装置の後段ではなく、光分解装置の処理チャンバ内に設けることも可能である。この場合は、
図1に示す
一酸化炭素吸着手段のような形態でコイルの部分が炭素にて構成されることになる。
【0042】
図2は、本発明に係る光分解方法を含むシステムでの工程フローチャートである。火力発電所などの燃焼機関から排出された二酸化炭素は、まず、高濃度CO2生成装置に導かれる。ここで、高濃度のCO2が生成される。なお、このステップは必須ではないが、後工程において、効率的にCO2を分解するためには設けたほうがよい。
【0043】
次に、高濃度に生成されたCO2は処理チャンバ10に導かれて、
図1において説明したプロセスで二酸化炭素を分解して一酸化炭素を生成する。
【0044】
処理チャンバ10のガス排出口からは残留CO2、一酸化炭素、酸素が排出される。CO分離装置は、これらを分別して、そのうち、一酸化炭素を別に排出するとともに、二酸化炭素を再び高濃度CO2生成装置に導き、以下同様のプロセスを繰り返すことになる。
【0045】
図3は本発明に係る光分解装置の他の実施形態の模式図である。
本実施形態は、
図1に示す装置は光源が1つであったのに対し、複数の光源を有する点で異なる。現実的には、大量の二酸化炭素を効率良く分解させるために、このように複数の光源を有する装置が効果的である。なお、全ての光源の点灯・消灯を同時に行うのではなく、配列順に応じて、時間差を設けて点灯、消灯させることで、効率的に一酸化炭素を発生させたり、二酸化炭素への酸化を防止することができる。なお、本実施形態においては、各光源は、放電用ガスを流過させるものではなく、誘電体材料からなる石英ガラスを容器として、放電用ガスを密封するものである。なお、
図3に示す構造において、
図1に示す構造、例えば、
一酸化炭素吸着手段やガス循環手段を用いることは当然可能である。複数光源の場合、ランプ周囲の領域Sが増えるうえ、領域Sの断面積を容易に増やすことができるため、ガスの圧力損失が減り、光分解装置の前段で必要な圧力を下げることができる。結果、システム全体運用での消費エネルギ効率を向上する事ができる。
【0046】
図4は、本発明に係る光分解システムの実施形態を示す模式図である。
本実施形態は、ガス排出口12から排出される一酸化炭素などの処理済みガスが反応容器50に導かれることを特徴としている。この反応容器50には水酸化ナトリウムを含む液体が含有されており、この水酸化ナトリウムの中に、一酸化炭素を導くことでギ酸を新たに生成することができる。ギ酸は非常に簡単な構造の有機物であり、有機合成化学における原料として利用されるほか、燃料電池における水素源などとしても利用することも可能である。
【0047】
10 処理チャンバ
11 ガス導入口
12 ガス排出口
20 光源
21 放電容器
22 電極
23 電源
30 一酸化炭素吸着手段
31 コイル
32 電源
40 ガス循環手段
50 反応容器